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JP6749079B2 - 蒸着フィルム、包装材及び真空断熱体 - Google Patents

蒸着フィルム、包装材及び真空断熱体 Download PDF

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Description

本発明は、蒸着フィルム、包装材及び真空断熱体に関する。
従来、冷蔵庫、住宅断熱壁、貯湯タンク等に使用される断熱材としては、ポリウレタンフォームの単体が用いられていた。近年、これに代る断熱材として、ガスバリアフィルムで形成した外包材内に断熱体である芯材を真空状態で封入する真空断熱体が使用されている。このガスバリアフィルムは、少なくとも基材フィルムと、この基材フィルムに積層されるガスバリア層とを備えるものである。このガスバリア層は、高湿度下でもガスバリア性を有するものであり、主としてアルミニウム箔から形成される。
ところが、上記ガスバリアフィルムは、アルミニウムが熱の良導体であるため、ガスバリアフィルム中のアルミニウム箔を通過する熱量が大きく、断熱性能が低下してしまうという不都合がある。このような不都合を解消するために、ポリエステルフィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」ともいう)フィルム等の基材フィルムに、アルミニウム蒸着層やシリカ蒸着層等の金属蒸着層を積層することが考えられている。
これらの金属蒸着層は、厚みが数十nm〜百nmの薄い層であるために、蒸着時に蒸着抜けと称されるピンホール等の蒸着欠陥が生じやすく、また基材フィルムとの密着性を十分に確保することが難しい。そのため、上記金属蒸着層は、蒸着フィルムに屈曲力等の外力が作用することで、蒸着欠陥に起因してクラックが生じやすく、また基材フィルムからの剥離が生じやすい。具体的には、ガスバリアフィルム作製時の他、真空断熱体を製造する際の外包材の作製時や外包材への芯材の封入時等にガスバリアフィルムが屈曲されることで、金属蒸着層にクラックや剥離が発生しやすい。このようなクラックや剥離に起因し、従来のガスバリアフィルムにはガスバリア性が低下し易いという不都合がある。かかるガスバリア性の低下を抑制する方法として、基材フィルムに無機フィラーを含有させることで耐ピンホール性を向上させる方法(特開2002−310385号公報参照)、基材フィルムに表面処理を行うことで金属蒸着層に安定したバリア性を発現させる方法が知られている(特開2005−290108号公報参照)。
しかし、これらの技術を適用した蒸着フィルムであっても、蒸着抜けの発生を十分に抑制することができず、また基材フィルムと金属蒸着層との間の密着性が十分であるとは言い難い。そのため、従来の蒸着フィルムは、ガスバリア性の低下を抑制するために未だ改善の余地がある。加えて、環境面の観点からは、基材フィルムの成形時の臭気についての配慮も必要となる場合がある。
特開2002−310385号公報 特開2005−290108号公報
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、金属蒸着層における蒸着抜け及びクラック等の欠陥の発生を抑制すると共に基材フィルムに対する金属蒸着層の密着性に優れ、ガスバリア性の低下が抑制される蒸着フィルム、包装材及び真空断熱体を提供することにある。
上記課題を解決するためになされた発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH(A)」ともいう)を含有する基材フィルムと、この基材フィルムに積層される金属蒸着層とを備える蒸着フィルムであって、上記EVOH(A)が、示差屈折率検出器及び紫外可視吸光度検出器を備えるゲルパーミエーションクロマトグラフを用い、窒素雰囲気下、220℃、50時間熱処理後に測定した分子量が、下記式(1)で表される条件を満たすことを特徴とする。
(Ma−Mb)/Ma<0.45 ・・・(1)
Ma:示差屈折率検出器で測定されるピークの最大値におけるポリメタクリル酸メチル換算の分子量
Mb:紫外可視吸光度検出器で測定される波長220nmでの吸収ピークの最大値におけるポリメタクリル酸メチル換算の分子量
当該蒸着フィルムは、基材フィルムが含有するEVOH(A)として上記特定条件を満たすものを用いることで、金属蒸着層における蒸着欠陥の発生が抑制されると共に基材フィルムに対する金属蒸着層の密着性に優れる。また、当該蒸着フィルムは、金属蒸着層でのクラックや金属蒸着層の剥離が抑制されるためガスバリア性の低下が抑制される。
上記EVOH(A)が、示差屈折率検出器及び紫外可視吸光度検出器を備えるゲルパーミエーションクロマトグラフを用い、窒素雰囲気下、220℃、50時間熱処理後に測定した分子量が、下記式(2)で表される条件をさらに満たすとい。
(Ma−Mc)/Ma<0.45 ・・・(2)
Mc:紫外可視吸光度検出器で測定される波長280nmでの吸収ピークの最大値におけるポリメタクリル酸メチル換算の分子量
このように、EVOH(A)が上記条件をさらに満たすことで、蒸着欠陥の発生がより抑制されると共に、金属蒸着層の密着性により優れ、その結果、ガスバリア性の低下がより抑制される。
上記金属蒸着層が基材フィルムの両面に積層されているとよい。このように、基材フィルムの両面に金属蒸着層が積層されていることで、ガスバリア性がより向上する。
上記金属蒸着層のうち少なくとも一層の平均厚みとしては15nm以上150nm以下が好ましい。金属蒸着層の平均厚みを上記範囲の比較的薄層とすることで、金属蒸着層におけるクラックの発生や基材フィルムからの金属蒸着層の剥離を抑制することでガスバリア性を好適に確保しつつ、製造コストを低減できる。
本発明は、当該蒸着フィルムを備える包装材を含む。また、本発明は、当該蒸着フィルムを備える真空断熱体を含む。当該包装材及び当該真空断熱体は、当該蒸着フィルムを備えるため、金属蒸着層におけるクラックの発生や基材フィルムからの金属蒸着層の剥離が抑制される結果、ガスバリア性に優れる。
本発明の蒸着フィルムは、金属蒸着層における蒸着欠陥及びクラックの発生が抑制されると共に基材フィルムに対する金属蒸着層の密着性に優れるため、ガスバリア性の低下が抑制される。従って、当該蒸着フィルムは、包装材及び真空断熱体に好適に使用できる。
EVOHの分子量(対数値)と、示差屈折率検出器で測定されたシグナル値(RI)及び吸光度検出器(測定波長220nm及び280nm)で測定された吸光度(UV)との関係を模式的に示したグラフである。
<蒸着フィルム>
当該蒸着フィルムは、基材フィルムと、この基材フィルムに積層される金属蒸着層とを備える。当該蒸着フィルムは、金属蒸着層に積層される樹脂コート層、及びその他の層をさらに備えていてもよい。これらの層については、後に詳述する。なお、以下において例示される材料は、特に記載がない限り、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
当該蒸着フィルムの40℃、金属蒸着層側の湿度90%RH、基材フィルム側の湿度0%RHで測定した酸素透過度の上限としては、5mL/m・day・atmが好ましく、3mL/m・day・atmがより好ましく、2mL/m・day・atmがさらに好ましく、1mL/m・day・atmが特に好ましく、0.1mL/m・day・atmがさらに特に好ましい。酸素透過度を上記上限以下とすることで、当該蒸着フィルムを備える包装材によって形成される容器等の内部空間の真空度を維持できる期間が長くなる。ここで、酸素透過度(mL/m・day・atm)とは、蒸着フィルムを透過する酸素量(ml)を蒸着フィルム面積(m)、透過時間(day)及び蒸着フィルムの金属蒸着層側における酸素ガス圧力と基材フィルム側における酸素ガス圧力との差(atm)で割った値をいう。具体的には、酸素透過度が例えば「5mL/m・day・atm以下」である場合、酸素ガスの圧力差が1気圧のもとで、1日にフィルム1m当たりで5mLの酸素が透過することを表す。また、基材フィルムの両面に金属蒸着層が積層されている場合、上記酸素透過度は、40℃、一方の金属蒸着層側の湿度90%RH、他方の金属蒸着層側の湿度0%RHで測定するものとする。
当該蒸着フィルムに含まれる揮発分の含有量の下限としては、特に限定されないが、0.01質量%が好ましく、0.03質量%がより好ましく、0.05質量%がさらに好ましい。揮発分の含有量の上限としては、1.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、0.3質量%がさらに好ましい。
但し、当該蒸着フィルムを真空断熱体に適用する場合、当該蒸着フィルムにおける揮発分の含有量は、可能な限り小さいことが好ましい。これは、真空断熱体の真空部分に当該蒸着フィルムから発生する揮発分が侵入し、その結果、真空断熱体の内部の真空度が下がって断熱性能が低下するおそれがあるからである。
ここで、揮発分の含有量は、105℃で3時間乾燥前後の質量変化から下記式により求められる。
揮発分の含有量(質量%)=[(乾燥前質量−乾燥後質量)/乾燥後質量]×100
[基材フィルム]
基材フィルムは、EVOH(A)を含有する。この基材フィルムは、本発明の効果を損なわない限り、アルカリ金属塩、その他の成分等をさらに含有していてもよい。以下、EVOH(A)、アルカリ金属塩、及びその他の成分について詳述する。
[EVOH(A)]
EVOH(A)は、エチレンとビニルエステルとの共重合体をけん化したものである。EVOH(A)中のエチレン単位の含有量は、EVOH(A)を構成する全構造単位に対して、0モル%超である。上記エチレン単位の含有量の下限としては、EVOH(A)を構成する全構造単位に対して、3モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましく、25モル%が特に好ましい。上記エチレン単位の含有量の上限としては、EVOH(A)を構成する全構造単位に対して、60モル%が好ましく、55モル%がより好ましく、50モル%がさらに好ましく、40モル%が特に好ましい。
上記ビニルエステルとしては、工業的入手容易さ等の観点から酢酸ビニルが好適に用いられる。この酢酸ビニルは、通常不可避的不純物として少量のアセトアルデヒドを含有する。この酢酸ビニルのアセトアルデヒドの含有量としては、100ppm未満が好ましい。この酢酸ビニルのアセトアルデヒドの含有量の上限としては、60ppmがより好ましく、25ppmがさらに好ましく、15ppmが特に好ましい。酢酸ビニルのアセトアルデヒドの含有量を上記範囲とすることで、後述する式(1)を満たすEVOH(A)を調製し易くなる。ここで、各成分の含有量を「ppm」で表す場合、この「ppm」は各成分の含有量の質量割合を意味し、1ppmは0.0001質量%である。
上記EVOH(A)は、エチレン単位及びビニルアルコール単位以外に他の単量体に由来する単位を含んでいてもよい。他の単量体に由来する単位の含有量としては、EVOH(A)を構成する全構造単位に対して、0.0002モル%以上0.2モル%以下が好ましい。
EVOH(A)のビニルエステルに由来する構造単位のケン化度の下限としては、通常85mol%であり、90mol%が好ましく、98mol%がより好ましく、98.9mol%がさらに好ましい。このケン化度が上記下限未満であると、熱安定性が不十分となるおそれがある。ここで、EVOH(A)のケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。また、EVOH(A)がケン化度の異なる2種類以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体の混合物である場合、EVOH(A)のケン化度とは、上記2種類以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体の含有質量比により算出されるケン化度の平均値をいう。
EVOH(A)は、公知の方法でエチレンとビニルエステルとの共重合体を合成し、この共重合体をケン化することで合成することができる。上記共重合体の合成には、連鎖移動剤を使用してもよい。この連鎖移動剤としては、例えばアルキルチオール類等が挙げられる。
基材フィルムにおけるEVOH(A)の含有量の下限としては、通常95質量%であり、98質量%が好ましく、99質量%がより好ましく、99.5質量%がさらに好ましい。EVOH(A)の含有量を上記下限以上とすることで、EVOH(A)が有する有利な特性を十分に発揮できるため、基材フィルムのガスバリア性、耐油性等を向上できる。
(ピークトップ分子量(Ma))
ピークトップ分子量(Ma)は、窒素雰囲気下、220℃で50時間熱処理した後のEVOH(A)をゲルパーミションクロマトグラフィー(以下「GPC」という)を用いて分離し、このときにカラムから溶出されるEVOH(A)の図1に模式的に示すように示差屈折率検出器において測定されるシグナル(図1中の「RI」)のメインピークの最大値に対応する値である。本発明におけるピークトップ分子量(Ma)は、後述の方法により作成される検量線を用いて算出されるポリメタクリル酸メチル換算(以下、「PMMA換算」ともいう)の値である。
ピークトップ分子量(Ma)の下限としては、30,000が好ましく、35,000がより好ましく、40,000がさらに好ましく、50,000が特に好ましい。一方、ピークトップ分子量(Ma)の上限としては、100,000が好ましく、80,000がより好ましく、65,000がさらに好ましく、60,000が特に好ましい。
(吸収ピーク分子量(Mb)及び(Mc))
吸収ピーク分子量(Mb)及び(Mc)は、図1に模式的に示すようにピークトップ分子量(Ma)の測定と同じ条件でGPCによりEVOH(A)を分離し、紫外可視吸光度検出器において測定される特定波長でのシグナル(図1中の「UV」)の吸収ピークの最大値に相当する値である。この吸収ピーク分子量(Mb)及び(Mc)は、ポリメタクリル酸メチル換算の分子量である。なお、波長220nmにおける吸収ピークの分子量は、「Mb」として表記し、波長280nmにおける吸収ピークの分子量は「Mc」として表記する。
吸収ピーク分子量(Mb)の下限としては、30,000が好ましく、35,000がより好ましく、40,000がさらに好ましく、50,000が特に好ましい。一方、吸収ピーク分子量(Mb)の上限としては、75,000が好ましく、60,000がより好ましく、55,000がさらに好ましい。
吸収ピーク分子量(Mc)の下限としては、35,000が好ましく、40,000がより好ましく、45,000がさらに好ましく、48,000が特に好ましい。一方、吸収ピーク分子量(Mc)の上限としては、75,000が好ましく、55,000がより好ましく、50,000がさらに好ましい。
(検量線の作成)
検量線は、例えば標品としてAgilent Technologies社の単分散のPMMA(ピークトップ分子量:1,944,000、790,000、467,400、271,400、144,000、79,250、35,300、13,300、7,100、1,960、1,020、690)を測定し、示差屈折率検出器及び吸光度検出器のそれぞれについて作成する。検量線の作成には、解析ソフトを用いることが好ましい。なお、本測定のPMMAの測定においては、例えば1,944,000と271,400との両分子量の標準試料同士のピークが分離できるカラムを用いる。
(EVOH(A)の分子量相関)
EVOH(A)は、下記式(1)で表される条件を満たすものである。
(Ma−Mb)/Ma<0.45 ・・・(1)
式(1)の左辺(Ma−Mb)/Maとしては、0.40未満であることが好ましく、0.30未満がより好ましく、0.10未満がさらに好ましい。ここで、MaとMbとの差(Ma−Mb)が小さくなれば、図1における示差屈折率検出器から得られるメインピーク(PRI)と紫外可視吸光度検出器から得られる吸収ピーク(PUV(220nm))とが近接していることを意味する。逆に、分子量差(Ma−Mb)の値が大きくなれば、これら両ピーク(PRI、PUV(220nm))が離れていること意味する。すなわち、両ピーク(PRI、PUV(220nm))の分子量差(Ma−Mb)の値が大きい場合には、比較的低分子量の成分に波長220nmの紫外線を吸収する成分が多いことを意味する。そのため、EVOHが上記式(1)を満たさない場合、比較的低分子量の成分に波長220nmの紫外線を吸収する成分が多いことを意味する。そして、この場合、EVOH(A)を含有する樹脂組成物を用いた溶融成形時にEVOH(A)が熱劣化して着色やゲル化による増粘が生じ、得られた基材フィルムへの金属蒸着層の形成に影響が生じる。その結果、金属蒸着層における欠陥の発生や基材フィルムに対する金属蒸着層の密着性が低下し、ひいてはガスバリア性が低下するものと考えられる。
上述の式(1)を満たすことによる効果は、以下の理由により生じると考えられる。すなわち、EVOHは、脱水等の熱劣化を生じることにより、波長220nmの紫外線を吸収する炭素−炭素二重結合やカルボニル基を分子内に生じ、これらの基によって樹脂組成物のゲル化を促進する。上述のゲル化の促進作用は、熱劣化したEVOHの分子量に依存し、熱劣化したEVOHの分子量が大きい場合には上記促進作用が弱く、分子量が小さくなるほど上記促進作用が強くなる。そのため、EVOHが上述の式(1)を満たす場合、つまり熱劣化しても比較的高分子量を維持できる場合、金属蒸着層における欠陥の発生や基材フィルムに対する金属蒸着層の密着性の低下を抑制できると考えられる。
EVOH(A)は、好ましくは下記式(2)の条件を満たすものである。
(Ma−Mc)/Ma<0.45 ・・・(2)
式(2)の左辺(Ma−Mc)/Maとしては、0.40未満がより好ましく、0.30未満がさらに好ましく、0.15未満が特に好ましい。ここで、式(2)の左辺(Ma−Mc)/Maの値が大きくなれば、示差屈折率検出器から得られるメインピーク(PRI)と紫外可視吸光度検出器から得られる吸収ピーク(PUV(280nm))とが離れており、比較的低分子量の成分に波長280nmの紫外線を吸収する成分が多くなる。基材フィルムがこのような成分を含有する場合、金属蒸着層の形成に影響が生じ、その結果、金属蒸着層における欠陥の発生や基材フィルムに対する金属蒸着層の密着性が低下し、ひいてはガスバリア性が低下するものと考えられる。
上述の式(2)を満たすことによる効果は、以下の理由により生じると考えられる。すなわち、EVOHは、上述の熱劣化によって炭素−炭素二重結合やカルボニル基が分子内に生じた後、熱劣化がさらに進行することにより、波長280nmの紫外線を吸収する共役二重結合が分子内に生じ、この共役二重結合によって樹脂組成物の黄変を促進する。上述の黄変の促進作用は、上述のゲル化の促進作用と同様に、熱劣化したEVOHの分子量に依存し、熱劣化したEVOHの分子量が大きい場合には上記促進作用が弱く、分子量が小さくなるほど上記促進作用が強くなる。そのため、EVOHが上述の式(2)を満たす場合、つまり熱劣化が進行しても比較的高分子量を維持できる場合、金属蒸着層における欠陥の発生や基材フィルムに対する金属蒸着層の密着性の低下をより抑制できると考えられる。
(式(1)で表される条件を満たすEVOH(A)を調製する方法)
式(1)で表される条件を満たすEVOH(A)を調製する方法としては、従来のEVOHの調製において、
(A)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、ビニルエステルに含まれるラジカル重合禁止剤を予め除去する方法、
(B)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、ラジカル重合に用いるビニルエステルに含まれる不純物を特定量とする方法、
(C)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、重合温度を特定範囲とする方法、
(D)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、重合工程、又は上記重合工程後に未反応のビニルエステルを回収再利用する工程において有機酸を添加する方法、
(E)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、重合に用いる溶媒の不純物を特定量とする方法、
(F)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、重合に用いる溶媒とビニルエステルとの質量比(溶媒/ビニルエステル)を高める方法、
(G)エチレンとビニルエステルモノマーとをラジカル重合する際に使用するラジカル重合開始剤として、アゾニトリル系開始剤又は有機過酸化物系開始剤を用いる方法、
(H)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、ラジカル重合後にラジカル重合禁止剤を添加する場合の添加量を残存する未分解のラジカル重合開始剤に対して特定量とする方法、
(I)残存するビニルエステルが極力除去されたエチレンとビニルエステルとの共重合体のアルコール溶液をけん化反応に用いる方法、
(J)けん化に用いるエチレンとビニルエステルとの共重合体に酸化防止剤を添加する方法等
が挙げられ、(A)〜(J)を適宜組み合わせてもよい。また、(A)〜(J)により、式(2)で表される条件を満たすEVOH(A)を調製することもできる。(A)〜(J)の方法について以下で説明する。
((A)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、ビニルエステルに含まれるラジカル重合禁止剤を予め除去する方法)
上記ラジカル重合禁止剤としては、後述する(H)でラジカル重合後に添加するラジカル重合禁止剤として例示するものと同様のもの等が挙げられる。また、ラジカル重合禁止剤を除去する方法としては、カラムクロマトグラフィーを用いる方法、再沈法、蒸留法等が挙げられ、通常蒸留法が採用される。蒸留法によりラジカル重合禁止剤を除去する場合、ビニルエステルの沸点はラジカル重合禁止剤の沸点よりも低いため、蒸留塔頂部から重合禁止剤が除去されたビニルエステルを得ることができる。
((B)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、ラジカル重合に用いるビニルエステルに含まれる不純物を特定量とする方法)
ラジカル重合に用いるビニルエステルに含まれる不純物の合計含有量の下限としては、1ppmが好ましく、3ppmがより好ましく、5ppmがさらに好ましい。また、上記不純物の合計含有量の上限としては、1,200ppmが好ましく、1,100ppmがより好ましく、1,000ppmがさらに好ましい。
上記不純物としては、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン等のアルデヒド;このアルデヒドが溶媒のアルコールによりアセタール化したアセトアルデヒドジメチルアセタール、クロトンアルデヒドジメチルアセタール、アクロレインジメチルアセタール等のアセタール;アセトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステルなどが挙げられる。
なお、上記不純物のうちアセトアルデヒドは、酢酸ビニルの製造等で生じ易く、かつEVOH(A)が式(1)を満たすことを妨げ易い。そのため、本方法においては、特にアセトアルデヒドの含有量を低減するとよい。
((C)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、重合温度を特定範囲とする方法)
エチレンとビニルエステルとの共重合体の重合温度の下限としては、20℃が好ましく、40℃がより好ましい。一方、上記重合温度の上限としては、90℃が好ましく、70℃がより好ましい。
((D)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、アルコール溶媒を用い、かつ重合工程、又は重合工程後に未反応のビニルエステルを回収再利用する工程において有機酸を添加する方法)
本方法は、重合系への有機酸の添加により、ビニルエステルのアルコールによる加アルコール分解や微量の水分による加水分解を抑制することで、アセトアルデヒド等のアルデヒドの生成を抑制できる。上記有機酸としては、グリコール酸、グリセリン酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、サリチル酸等のヒドロキシカルボン酸;マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、シュウ酸、グルタル酸等の多価カルボン酸などが挙げられる。
上記有機酸の添加量の下限としては、1ppmが好ましく、3ppmがより好ましく、5ppmがさらに好ましい。上記有機酸の添加量の上限としては、500ppmが好ましく、300ppmがより好ましく、100ppmがさらに好ましい。
((E)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、重合に用いる溶媒の不純物を特定量とする方法)
重合に用いる溶媒の不純物の合計含有量の下限としては、1ppmが好ましく、3ppmがより好ましく、5ppmがさらに好ましい。上記不純物の合計含有量の上限としては、1,200ppmが好ましく、1,100ppmがより好ましく、1,000ppmがさらに好ましい。重合に用いる溶媒の不純物としては、例えば上述のビニルエステルに含まれる不純物として例示したもの等が挙げられる。
((F)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、重合に用いる溶媒とビニルエステルとの質量比(溶媒/ビニルエステル)を高める方法)
上記重合に用いる溶媒とビニルエステルとの質量比(溶媒/ビニルエステル)の下限としては、0.03が好ましい。一方、上記質量比(溶媒/ビニルエステル)の上限としては、例えば0.4である。
((G)エチレンとビニルエステルモノマーとをラジカル重合する際に使用するラジカル重合開始剤として、アゾニトリル系開始剤又は有機過酸化物系開始剤を用いる方法)
アゾニトリル系開始剤としては、例えば2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス−(2−シクロプロピルプロピオニトリル)等が挙げられる。有機過酸化物としては、例えばアセチルパーオキシド、イソブチルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(メトキシイソプロピル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
((H)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、ラジカル重合後にラジカル重合禁止剤を添加する場合の添加量を残存する未分解のラジカル重合開始剤に対して特定量とする方法)
ラジカル重合後にラジカル重合禁止剤を添加する場合の添加量としては、残存する未分解のラジカル重合開始剤に対して、5モル当量以下が好ましい。上記ラジカル重合禁止剤としては、例えば共役二重結合を有する分子量1,000以下の化合物であって、ラジカルを安定化させて重合反応を阻害する化合物等が挙げられる。具体的な上記ラジカル重合禁止剤としては、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3−エチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1−メトキシ−1,3−ブタジエン、2−メトキシ−1,3−ブタジエン、1−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−ニトロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、2−ブロモ−1,3−ブタジエン、フルベン、トロポン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、センブレン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、アビエチン酸等の2個の炭素−炭素二重結合の共役構造を含む共役ジエン;1,3,5−ヘキサトリエン、2,4,6−オクタトリエン−1−カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロール等の3個の炭素−炭素二重結合を含む共役構造を含む共役トリエン;シクロオクタテトラエン、2,4,6,8−デカテトラエン−1−カルボン酸、レチノール、レチノイン酸等の4個以上の炭素−炭素二重結合の共役構造を含む共役ポリエンなどのポリエンが挙げられる。なお、1,3−ペンタジエン、ミルセン、ファルネセン等のように、複数の立体異性体を有するものについては、そのいずれを用いても良い。上記ラジカル重合禁止剤としては、p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2−フェニル−1−プロペン、2−フェニル−1−ブテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、3,5−ジフェニル−5−メチル−2−ヘプテン、2,4,6−トリフェニル−4,6−ジメチル−1−ヘプテン、3,5,7−トリフェニル−5−エチル−7−メチル−2−ノネン、1,3−ジフェニル−1−ブテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−2−ペンテン、3,5−ジフェニル−5−メチル−3−ヘプテン、1,3,5−トリフェニル−1−ヘキセン、2,4,6−トリフェニル−4,6−ジメチル−2−ヘプテン、3,5,7−トリフェニル−5−エチル−7−メチル−3−ノネン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン等の芳香族系化合物も挙げられる。
((I)残存するビニルエステルが極力除去されたエチレンとビニルエステルとの共重合体のアルコール溶液をけん化反応に用いる方法)
残存モノマーの除去率の下限としては、99モル%が好ましく、99.5モル%がより好ましく、99.8モル%がさらに好ましい。残存モノマーを除去する方法としては、例えばカラムクロマトグラフィーを用いる方法、再沈法、蒸留法等が挙げられ、蒸留法が好ましい。蒸留法で残存モノマーを除去する場合、ラシヒリングを充填した蒸留塔の上部からエチレンとビニルエステルとの共重合体溶液を一定速度で連続的に供給し、蒸留塔下部よりメタノール等の有機溶媒蒸気を吹き込む。これにより、蒸留塔頂部より上記有機溶媒と未反応ビニルエステルとの混合蒸気を留出させることができ、蒸留塔底部より未反応のビニルエステルが除去されたエチレンとビニルエステルとの共重合体溶液を取り出すことができる。ここで、「残存モノマーの除去率」とは、エチレンとビニルエステルとの共重合体のアルコール溶液について除去処理前後のモノマー含有量を測定し、以下の式で算出される値である。
残存モノマーの除去率(モル%)={1−(除去後の残存モノマー含有量/除去前の残存モノマー含有量)}×100
((J)けん化に用いるエチレンとビニルエステルとの共重合体に酸化防止剤を添加する方法)
上記酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。上記酸化防止剤としては、これらの中でフェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤がより好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート等のアクリレート系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−)ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン基含有フェノール系化合物などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、例えばトリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン等のモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジアルキル(炭素数12〜15)ホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(ジフェニルモノアルキル(炭素数12〜15)ホスファイト)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスファイト等のジホスファイト系化合物などが挙げられる。リン系酸化防止剤としては、これらの中で、モノホスファイト系化合物が好ましい。
硫黄系酸化防止剤としては、例えばジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
エチレンとビニルエステルとの共重合体に酸化防止剤を添加する場合、酸化防止剤の含有量の下限としては、特に限定されないが、上記共重合体100質量部に対して、0.001質量部が好ましく、0.01質量部がより好ましい。一方、酸化防止剤の含有量の上限としては、特に限定されないが、上記共重合体100質量部に対して、5質量部が好ましく、1質量部がより好ましい。酸化防止剤の含有量が上記下限未満であると、式(1)を満たすEVOH(A)の調製が困難となるおそれがある。逆に、酸化防止剤の含有量が上記上限を超えると、含有量の増加によるコスト上昇等に見合う効果が得られないおそれがある。
なお、上記(A)、(C)〜(J)の方法でEVOH(A)を調製する場合、ビニルエステル(酢酸ビニル)中に含まれるアセトアルデヒドの含有量は上記範囲でなくてもよい。この場合のアセトアルデヒドの含有量の下限としては、150ppmが好ましく、250ppmがより好ましく、350ppmがさらに好ましい。このように、アセトアルデヒドの含有量を上記範囲とすることで、酢酸ビニルからアセトアルデヒドを除去する工程を省略できるため、製造コストを低減できる。なお、この場合のアセトアルデヒドの含有量の上限としては、特に限定されないが、例えば1,000ppmである。
(EVOH(A)の溶融粘度(メルトフローレート))
EVOH(A)のメルトフローレートの下限としては、0.5g/10minが好ましく、1.0g/10minがより好ましく、1.4g/10minがさらに好ましい。一方、EVOH(A)のメルトフローレートの上限としては、30g/10minが好ましく、25g/10minがより好ましく、20g/10minがさらに好ましく、15g/10minが特に好ましく、10g/10minがさらに特に好ましく、1.6g/10minが最も好ましい。EVOH(A)のメルトフローレートが上記下限未満である場合、又は上記上限を超える場合、基材フィルムへの成形性及び外観性が悪化するおそれがある。
なお、メルトフローレートは、JIS−K7210(1999)に準拠し、温度190℃、荷重2,160gで測定した値である。
[アルカリ金属塩]
アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、単独の金属種であってもよく、複数の金属種からなるものであってもよい。上記アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられるが、工業的入手の点からはナトリウム及びカリウムが好ましい。基材フィルムがアルカリ金属塩を含有することで、ロングラン性と多層構造体とした際の層間接着力とが向上する。
上記アルカリ金属塩を構成するアニオンとしては、例えば有機酸のアニオン等が挙げられる。上記有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、コハク酸、リノール酸、オレイン酸等の脂肪族カルボン酸;安息香酸、サリチル酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸;乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸等のヒドロキシカルボン酸;エチレンジアミン四酢酸などのカルボン酸やp−トルエンスルホン酸等のスルホン酸などが挙げられる。上記有機酸としては、これらの中でカルボン酸が好ましく、脂肪族カルボン酸がより好ましく、酢酸がさらに好ましい。
アルカリ金属塩としては、特に限定されないが、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩などが挙げられる。具体的なアルカリ金属塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げられる。アルカリ金属塩としては、これらの中で、有機酸のアルカリ金属塩が好ましく、酢酸ナトリウム及び酢酸カリウムがより好ましい。
基材フィルムがアルカリ金属塩を含有する場合、アルカリ金属塩の含有量の下限としては、金属換算で、1ppmが好ましく、5ppmがより好ましく、10ppmがさらに好ましく、80ppmが特に好ましい。一方、アルカリ金属塩の含有量の上限としては、金属換算で、1,000ppmが好ましく、800ppmがより好ましく、550ppmがさらに好ましく、250ppmが特に好ましく、150ppmがさらに特に好ましい。アルカリ金属塩の含有量が上記下限より小さいと、層間接着性が低下するおそれがある。逆に、アルカリ金属塩の含有量が上記上限を超えると、基材フィルムの着色の低減が困難となり、外観性が悪化するおそれがある。
[他の成分]
他の成分としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、高級脂肪族カルボン酸の多価金属塩、ヒンダードフェノール系化合物やヒンダードアミン系化合物等の熱安定剤、ポリアミドやポリオレフィン等の他の樹脂、ハイドロタルサイト化合物などが挙げられる。基材フィルムが他の成分を含有する場合、他の成分の合計含有量としては、通常1質量%以下である。
充填剤としては、例えばグラスファイバー、バラストナイト、ケイ酸カルシウム、タルク、モンモリロナイト等が挙げられる。
高級脂肪族カルボン酸の多価金属塩としては、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
なお、ゲル化対策として、例えば上記熱安定剤として例示したヒンダードフェノール系化合物及びヒンダードアミン系化合物、上記高級脂肪族カルボン酸の多価金属塩、ハイドロタルサイト化合物等を基材フィルムに添加してもよい。基材フィルムにゲル化対策のための化合物を添加する場合、その添加量としては、通常0.01質量%以上1質量%以下である。
基材フィルムの酸素透過度の上限としては、50mL・20μm/m・day・atmが好ましく、10mL・20μm/m・day・atmがより好ましく、5mL・20μm/m・day・atmがさらに好ましく、1mL・20μm/m・day・atmが特に好ましい。ここで、酸素透過度の値は、20℃、65%RHで測定した値である。また、基材フィルムの酸素透過度(mL・20μm/m・day・atm)とは、基材フィルムの平均厚みを20μmとしたときに、基材フィルムを透過する酸素量(ml)を基材フィルム面積(m)、透過時間(day)及び基材フィルムの一方の面側における酸素ガス圧力と他方の面側における酸素ガス圧力との差(atm)で除した値をいう。具体的には、基材フィルムの酸素透過度が例えば「50mL・20μm/m・day・atm」である場合、基材フィルムの平均厚みを20μmとしたときに、酸素ガスの圧力差が1気圧のもとで、1日にフィルム1m当たりで50mLの酸素が透過することを表す。
基材フィルムの平均厚みの下限としては、特に限定されないが、5μmが好ましく、7μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。基材フィルムの平均厚みの上限としては、特に限定されないが、30μmが好ましく、25μmがより好ましく、20μmがさらに好ましい。
[基材フィルムの製造方法]
基材フィルムは、例えば上述の成分を含有する樹脂組成物を用い、公知のフィルム形成方法を適用して製造することができる。
(樹脂組成物の製造方法)
上記樹脂組成物の製造方法としては、例えばEVOH(A)のペレットと共に、必要に応じて、アルカリ金属塩、及び他の成分を混合して溶融混練する方法、EVOH(A)のペレットを各成分が含まれる溶液に浸漬させる方法等が挙げられる。なお、ペレットと他の成分との混合には、例えばリボンブレンダー、高速ミキサーコニーダー、ミキシングロール、押出機、インテンシブミキサー等を用いることができる。
(樹脂組成物の溶融粘度(メルトフローレート))
上記樹脂組成物のメルトフローレートの下限としては、0.5g/10minが好ましく、1.0g/10minがより好ましく、1.4g/10minがさらに好ましい。一方、上記樹脂組成物のメルトフローレートの上限としては、30g/10minが好ましく、25g/10minがより好ましく、20g/10minがさらに好ましく、15g/10minが特に好ましく、10g/10minがさらに特に好ましく、1.6g/10minが最も好ましい。上記樹脂組成物のメルトフローレートが上記下限未満である場合、又は上記上限を超える場合、成形性及び外観性が悪化するおそれがある。
(基材フィルムの製造に適用するフィルム形成方法)
上記フィルム形成方法としては、特に限定されず、例えば溶融法、溶液法、カレンダー法等が挙げられ、これらの中で溶融法が好ましい。上記溶融法としては、キャスト法、インフレーション法等が挙げられ、これらの中でキャスト法が好ましい。
キャスト法によるフィルム形成の場合、延伸を行ってもよい。延伸方法としては、特に限定されるものではなく、一軸延伸、同時二軸延伸、及び逐次二軸延伸のいずれであってもよい。面積換算の延伸倍率の下限としては、8倍が好ましく、9倍がより好ましい。延伸倍率の上限としては、12倍が好ましく、11倍がより好ましい。延伸倍率が上記範囲であることで、フィルムの厚みの均一性、ガスバリア性及び機械的強度をより向上させることができる。これに対して、延伸倍率が上記下限未満であると、延伸斑が残りやすくなるおそれがある。一方、延伸倍率が上記上限を超えると、延伸時に基材フィルムの破断が生じやすくなるおそれがある。
延伸を行う場合、原反に予め含水させておくことが好ましい。これにより、連続延伸が容易となる。延伸前原反の含水率の下限としては、2質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましい。延伸前原反の含水率の上限としては、30質量%が好ましく、25質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。含水率が上記下限未満であると、延伸斑が残りやすく、また特にテンターで延伸する場合、グリップに近い部分の延伸倍率が高くなるためにグリップ近辺での破れが生じやすくなるおそれがある。一方、含水率が上記上限を超える場合、延伸された部分の弾性率が低くなり未延伸部分との差が十分でなくなることで、延伸斑が残り易くなるおそれがある。
延伸温度は、延伸前の原反の含水率、延伸方法によって多少異なるが、一般に50℃以上130℃以下とされる。延伸温度としては、延伸斑の少ない二軸延伸フィルムが得るためには、同時二軸延伸では70℃以上100℃以下が好ましく、逐次二軸延伸ではロールでの長手方向の延伸においては70℃以上100℃以下が好ましく、テンターでの幅方向の延伸においては80℃以上120℃以下が好ましい。
[金属蒸着層]
金属蒸着層は、当該蒸着フィルムにおいて主としてガスバリア性を確保するものである。この金属蒸着層は、基材フィルム上に積層されている。金属蒸着層は、基材フィルムの両面に積層されていても、基材フィルムの片面のみに積層されていてもよいが、基材フィルムの両面に積層されていることが好ましい。金属蒸着層を基材フィルムの両面に積層することで、ガスバリア性をより向上させ、ガスバリアの安定性が得られる。すなわち、一方の金属蒸着層に物理的衝撃等により欠陥が生じても、他方の金属蒸着層がバリア性を維持することにより、蒸着フィルムとしてのガスバリア性が好適に維持される。
金属蒸着層を形成する材料としては、例えばアルミニウム、珪素、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、これら1種又は2種以上の酸化物、炭化物、窒化物等が挙げられ、アルミニウムを単独又は併用することが好ましい。このように、金属蒸着層を形成する材料としてアルミニウムを使用することで、軽さ、柔軟性及び光沢性に富む蒸着フィルムを得ることができる。
金属蒸着層の平均厚みの下限としては、15nmが好ましく、20nmがより好ましく、30nmがさらに好ましく、60nmが特に好ましい。金属蒸着層の平均厚みの上限としては、200nmが好ましく、130nmがより好ましく、80nmがさらに好ましい。金属蒸着層の平均厚みが上記下限未満であると、ガスバリア性が不十分になるおそれがある。一方、金属蒸着層の平均厚みが上記上限を超えると、ヒートブリッジが発生し易くなり、断熱効果が低下するおそれがある。なお、金属蒸着層が複数の層から構成される場合、各層の平均厚みが上記範囲であることが好ましく、複数の金属蒸着層の合計平均厚みが上記範囲であることがより好ましい。ここで、金属蒸着層の平均厚みとは、電子顕微鏡により測定される金属蒸着層断面の任意の10点における厚みの平均値である。
金属蒸着層におけるアルミニウム粒子等の蒸着粒子の平均粒子径の下限としては、特に限定されないが、10nmが好ましく、15nmがより好ましく、20nmがさらに好ましい。蒸着粒子の平均粒子径の上限としては、150nmが好ましく、125nmがより好ましく、100nmがさらに好ましく、75nmが特に好ましく、50nmが最も好ましい。ここで、蒸着粒子の平均粒子径は、金属蒸着層表面を走査型電子顕微鏡で観察し、同一方向に存在する複数の蒸着粒子の最大径(定方向最大径)の合算値を測定粒子個数で除した平均値を意味する。また、平均粒子径は、蒸着粒子が粒塊を形成している場合、粒塊を構成する蒸着粒子の粒子径(一次粒子径)を意味する。
基材フィルムに金属蒸着層を形成する場合、以下の条件のうち少なくともいずれかを満たすことで、蒸着粒子の平均粒子径が150nm以下である金属蒸着層を形成することが可能となる。
(1)蒸着時の基材フィルムの表面温度を60℃以下にする
(2)蒸着前の基材フィルムに含まれる揮発分の含有量を1.1質量%以下にする
(3)蒸着前の基材フィルムの表面をプラズマ処理し改質する
これらの方法の中でも、条件(1)を満たすことが好ましく、条件(1)に加えて、条件(2)及び条件(3)のうちの少なくとも一方の条件をさらに満たすことがより好ましい。
蒸着を行う際の基材フィルムの表面温度の上限としては、上述のように60℃が好ましく、55℃がより好ましく、50℃がさらに好ましい。また、蒸着時の基材フィルムの表面温度の下限としては、特に限定されないが、0℃が好ましく、10℃がより好ましく、20℃がさらに好ましい。
蒸着前の基材フィルムに含まれる揮発分の含有量の下限としては、特に限定されないが、0.01質量%が好ましく、0.03質量%がより好ましく、0.05質量%がさらに好ましい。上記揮発分の上限としては、1.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、0.3質量%がさらに好ましい。ここで、揮発分の含有量は、105℃で3時間乾燥した乾燥前後の質量変化から、上述した蒸着フィルムの揮発分の含有量と同様の式により求められる。
蒸着前の基材フィルムの表面をプラズマ処理する方法としては、公知の方法を用いることができるが、大気圧プラズマ処理が好ましい。この大気圧プラズマ処理に用いる放電ガスとしては、例えば窒素ガス、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が挙げられる。上記放電ガスとしては、これらの中で、窒素、ヘリウム、及びアルゴンが好ましく、コスト低減の観点から窒素がより好ましい。
[樹脂コート層]
樹脂コート層は、蒸着フィルム製造後の工程、例えばラミネーション等のフィルム加工における屈曲等による金属蒸着層の損傷を抑制するものである。このような樹脂コート層を備える蒸着フィルムはガスバリア性の低下を抑制できる。樹脂コート層は、例えばビニルアルコール系重合体(エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール等)を含んでいてもよく、必要に応じて膨潤性無機層状ケイ酸塩を含んでいてもよい。
膨潤性無機層状ケイ酸塩は、樹脂コート層の強度を向上させるものである。この膨潤性無機層状ケイ酸塩としては、例えば膨潤性モンモリロナイト、膨潤性合成スメクタイト、膨潤性フッ素雲母系鉱物等が挙げられる。樹脂コート層におけるビニルアルコール系重合体に対する膨潤性無機層状ケイ酸塩の含有量の下限としては、特に限定されないが、固形分換算で、0.5質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましく、5質量%が特に好ましい。一方、膨潤性無機層状ケイ酸塩の含有量の上限としては、特に限定されないが、固形分換算で、55質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましく、20質量%が特に好ましい。上記膨潤性無機層状ケイ酸塩の含有量が上記下限未満であると、樹脂コート層の強度を十分に向上させることができないおそれがある。一方、膨潤性無機層状ケイ酸塩の含有量が上記上限を超えると、樹脂コート層の柔軟性が低下してクラック等の欠点を生じ易くなるおそれがある。
樹脂コート層の平均厚みの下限としては、特に限定されないが、効果的なガスバリア性を得るためには0.001μmが好ましい。樹脂コート層の平均厚みの上限としては、特に限定されないが、10μmが好ましく、2μmがより好ましい。
金属蒸着層に樹脂コート層を積層する方法としては、特に限定されないが、コーティング法、及びラミネート法が好ましい。コーティング方法としては、例えばダイレクトグラビア法、リバースグラビア法、マイクログラビア法、2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法;ドクターナイフ法;ダイコート法;ディップコート法;バーコーティング法;これらを組み合わせたコーティング法などが挙げられる。また、金属蒸着層と樹脂コート層との界面は、コロナ処理、アンカーコート剤等による処理が施されていてもよい。
[その他の層]
その他の層としては、例えば熱可塑性樹脂を主成分とする層(以下、「熱可塑性樹脂層」という)、紙層等が挙げられる。ここで、「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分を指す。
熱可塑性樹脂層は、基材フィルム、金属蒸着層、及び樹脂コート層のいずれに積層されていてもよい。また、熱可塑性樹脂層は、接着層として機能する層であってもよい。この熱可塑性樹脂層は、延伸フィルムから形成されていてもよく、未延伸フィルムから形成されていてもよく、コーティングにより形成されていてもよい。
上記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。
[用途]
当該蒸着フィルムは、EVOH(A)を含有する基材フィルム上に金属蒸着層を積層したものであるため、蒸着時の蒸着抜けの発生、ラミネーション等の蒸着フィルム加工時のクラックの発生を抑え、金属蒸着層の密着強度に優れる。このため、当該蒸着フィルムは、様々な用途に適用できる。当該蒸着フィルムの用途としては、例えば包装材、真空断熱体等が挙げられる。
<包装材>
当該包装材は、当該蒸着フィルムを備える。当該包装材は、例えば当該蒸着フィルム、又は当該蒸着フィルムを備える積層フィルム等を二次加工することで形成される。当該包装材は、当該蒸着フィルムを備えることで、ガスバリア性に優れ、変形や衝撃などの物理的ストレスを受けた際にもそのガスバリア性が維持される。
当該包装材は、少なくとも1層の当該蒸着フィルムと、少なくとも1層の他の層とを積層することによって形成されるとよい。他の層としては、例えばポリエステル層、ポリアミド層、ポリオレフィン層、紙層、無機蒸着フィルム層、エチレン−ビニルアルコール共重合体層(以下、「EVOH層」ともいう)、接着層等が挙げられる。当該包装材における層数及び積層順には特に制限はないが、ヒートシールが行われる場合には少なくとも最外層がヒートシール可能な層とされる。なお、ポリオレフィン層は、当該包装材が後述のラミネートチューブ容器等として構成される場合には顔料を含有していてもよい。
当該包装材は、例えば食品、飲料物、農薬や医薬等の薬品、医療器材、機械部品、精密材料等の産業資材、衣料などを包装するために使用される。特に、当該包装材は、酸素に対するバリア性が必要となる用途、包装材の内部が各種の機能性ガスによって置換される用途等に好ましく使用される。
当該包装材は、用途に応じて種々の形態、例えば縦製袋充填シール袋、真空包装袋、スパウト付パウチ、ラミネートチューブ容器、容器用蓋材等に形成される。
[縦製袋充填シール袋]
縦製袋充填シール袋は、例えば液体、粘稠体、粉体、固形バラ物、これらを組み合わせた形態の食品、飲料物等を包装するために使用される。縦製袋充填シール袋は、当該蒸着フィルムをヒートシールすることで形成される。ヒートシールが行われる場合、通常当該蒸着フィルムにおける縦製袋充填シール袋の内側となる層、又は縦製袋充填シール袋の内側となる層及び外側となる層の両方として、ヒートシール可能な層を配置することが必要である。ヒートシール可能な層が縦製袋充填シール袋の内側のみにある場合、通常胴体部は合掌貼りによりシールされる。ヒートシール可能な層が縦製袋充填シール袋の内側及び外側の両方にある場合、通常胴体部は封筒貼りによりシールされる。ヒートシール可能な層としては、ポリオレフィン層(以下、「PO層」ともいう)が好ましい。縦製袋充填シール袋の層構成としては、当該蒸着フィルム/ポリアミド層/PO層、当該蒸着フィルム/PO層、及びPO層/当該蒸着フィルム/PO層が好ましく、層間に接着層を設けてもよい。また、基材フィルムの片面にのみ金属蒸着層が形成されている当該蒸着フィルムを適用する場合、当該蒸着フィルムは、金属蒸着層が基材フィルムよりも外側に配置されるように積層されていても、金属蒸着層が基材フィルムより内側に配置されるように積層されていてもよい。当該包装材は、上述のようにガスバリア性に優れ、変形や衝撃などの物理的ストレスを受けた際にもそのガスバリア性が維持される。そのため、当該包装材の一例である縦製袋充填シール袋によれば、内容物の品質劣化を長期間にわたって抑制することができる。
[真空包装袋]
真空包装袋は、真空状態で包装することが望まれる用途、例えば食品、飲料物等の保存に使用される。真空包装袋の層構成としては、当該蒸着フィルム/ポリアミド層/PO層、及びポリアミド層/当該蒸着フィルム/PO層が好ましく、層間に接着層を設けてもよい。このような真空包装袋は、当該蒸着フィルムを備えることから、真空包装後に行われる加熱殺菌後のガスバリア性に特に優れる。
[スパウト付パウチ]
スパウト付パウチは、液状物質、例えば清涼飲料等の液体飲料、ゼリー飲料、ヨーグルト、フルーツソース、調味料、機能性水、流動食などを包装するために使用される。このスパウト付パウチの層構成としては、当該蒸着フィルム/ポリアミド層/PO層、及びポリアミド層/当該蒸着フィルム/PO層が好ましく、層間に接着層を設けてもよい。このようなスパウト付パウチは、当該蒸着フィルムを備えるため、ガスバリア性に優れ、変形や衝撃などの物理的ストレスを受けた際にもそのガスバリア性が維持される。そのため、上記スパウト付パウチは、輸送後及び長期保存後においても、内容物の変質を防ぐことが可能である。
[ラミネートチューブ容器]
ラミネートチューブ容器は、例えば化粧品、薬品、医薬品、食品、歯磨等を包装するために使用される。このラミネートチューブ容器の層構成としては、PO層/当該蒸着フィルム/PO層、及びPO層/顔料含有PO層/PO層/当該蒸着フィルム/PO層が好ましく、層間に接着層を設けてもよい。このようなラミネートチューブ容器は、当該蒸着フィルムを備えるためガスバリア性に優れ、変形や衝撃などの物理的ストレスを受けた際にもそのガスバリア性が維持される。
[容器用蓋材]
容器用蓋材は、畜肉加工品、野菜加工品、水産加工品、フルーツ等の食品などが充填される容器の蓋材である。この容器用蓋材の層構成としては、当該蒸着フィルム/ポリアミド層/PO層、及び当該蒸着フィルム/PO層が好ましく、層間に接着層を設けてもよい。このような容器用蓋材は、当該蒸着フィルムを備えるためにガスバリア性に優れ、変形や衝撃などの物理的ストレスを受けた際にもそのガスバリア性が維持されるため、内容物である食品の品質劣化を長期間にわたって抑制できる。
[真空断熱体]
当該真空断熱体は、当該蒸着フィルムを備え、保冷や保温が必要な用途に使用されるものである。当該真空断熱体としては、例えば外包材内にポリウレタンフォーム等の芯材が真空状態で封入されるものが挙げられる。外包材は、例えば少なくとも1層の当該蒸着フィルムと、少なくとも1層の他の層とを積層することによって形成される一対の積層フィルムをヒートシールすることで形成される。他の層としては、例えばポリエステル層、ポリアミド層、ポリオレフィン層、接着層等が挙げられ、ヒートシール可能な層であるポリオレフィン層を備えることが好ましい。外包材における層数及び積層順には特に制限はないが、最外層がヒートシール可能な層(例えばポリオレフィン層)とされることが好ましい。外包材の層構成としては、当該蒸着フィルム/ポリアミド層/PO層、及びポリアミド層/当該蒸着フィルム/PO層が好ましく、層間に接着層を設けてもよい。また、基材フィルムの片面にのみ金属蒸着層が形成されている当該蒸着フィルムを適用する場合、この当該蒸着フィルムは、金属蒸着層が基材フィルムよりも外側に配置されるように積層されていても、金属蒸着層が基材フィルムより内側に配置されるように積層されていてもよい。当該真空断熱体は、外包材が当該蒸着フィルムを備えるためにガスバリア性に優れる。従って、当該真空断熱体は、長期間にわたって断熱効果を保持できることから、冷蔵庫、給湯設備、炊飯器等の家電製品用の断熱材;壁部、天井部、屋根裏部、床部等に用いられる住宅用断熱材;車両屋根材;自動販売機等の断熱パネルなどに利用できる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
[EVOH(A)の合成]
[合成例1](EVOHペレットの合成)
(エチレン−酢酸ビニル共重合体の重合)
ジャケット、攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口及び開始剤添加口を備えた250L加圧反応槽に、酢酸ビニルを83kg、メタノールを14.9kg仕込み、60℃に昇温した後、反応液に窒素ガスを30分間バブリングして反応槽内を窒素置換した。次いで反応槽圧力(エチレン圧力)が4.0MPaとなるようにエチレンを導入した。反応槽内の温度を60℃に調整した後、開始剤として12.3gの2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社の「V−65」)をメタノール溶液として添加し、重合を開始した。重合中はエチレン圧力を4.0MPaに、重合温度を60℃に維持した。5時間後、酢酸ビニルの重合率が40%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽からエチレンを排気し、さらに反応液に窒素ガスをバブリングしてエチレンを完全に除去した。次いで減圧下で未反応の酢酸ビニルを除去した後、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVAc」と称する)を得た。合成に使用する酢酸ビニルは、下記表1に示す含有量のアセトアルデヒドを添加したものを用いた。
(けん化)
得られたEVAc溶液にメタノールを加え、濃度15質量%のEVAc溶液を得た。このEVAcのメタノール溶液253.4kg(溶液中のEVAcが38kg)に、水酸化ナトリウムを10質量%含むメタノール溶液76.6L(EVAc中の酢酸ビニルユニットに対してモル比0.4)を添加して60℃で4時間撹拌することにより、EVAcのけん化を行った。反応開始から6時間後、酢酸9.2kg及び水60Lを添加して上記反応液を中和し、反応を停止させた。
(洗浄)
中和した上記反応液を反応器からドラム缶に移して16時間室温で放置し、ケーキ状に冷却固化させた。その後、遠心分離機(国産遠心器株式会社の「H−130」、回転数1200rpm)を用いて、上記ケーキ状の樹脂を脱液した。次に、遠心分離機の中央部に、上方よりイオン交換水を連続的に供給しながら洗浄し、上記樹脂を水洗する工程を10時間行った。洗浄開始から10時間後の洗浄液の伝導度は、30μS/cm(東亜電波工業株式会社の「CM−30ET」で測定)であった。
(造粒)
上記洗浄後の樹脂を乾燥機を用いて60℃で48時間乾燥し、粉末状のEVOHを得た。乾燥した粉末状のEVOH20kgを水及びメタノール混合溶液(質量比:水/メタノール=4/6)43Lに溶解させ、80℃で12時間撹拌した。次に、撹拌を止めて溶解槽の温度を65℃に下げて5時間放置し、上述のEVOHの水及びメタノール溶液の脱泡を行った。そして、直径3.5mmの円形の開口部を有する金板から、5℃の水及びメタノール混合溶液(質量比:水/メタノール=9/1)中に押出してストランド状に析出させ、切断することで直径約4mm、長さ約5mmの含水EVOHペレットを得た。
(精製)
上記含水EVOHペレットを遠心分離機で脱液し、さらに大量の水を加え脱液する操作を繰り返し行って洗浄し、EVOHペレットを得た。得られたEVOHのケン化度は99モル%であった。
得られたEVOHのペレット20kgを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄した後、酢酸、酢酸ナトリウム、リン酸を含む水溶液で浸漬処理を行った。この浸漬処理用水溶液と樹脂組成物ペレットとを分離して脱液した後、熱風乾燥機に入れて80℃で4時間乾燥を行い、さらに100℃で16時間乾燥を行って、合成例1の樹脂組成物(酢酸ナトリウム含有EVOH)をペレットとして得た。
[合成例2〜5及び比較合成例1]
酢酸ビニルのアセトアルデヒド含有量、EVOHのエチレン含有量及びケン化度、並びに酢酸ナトリウム(アルカリ金属塩)の含有量を表1に示すようにした以外は合成例1と同様にして合成例2〜5及び比較合成例1の樹脂組成物をペレットとして得た。
以下に説明する方法にて、EVOHのケン化度及びエチレン含有量、並びにアルカリ金属含有量等の測定を行った。
[EVOHのエチレン含有量及びケン化度]
乾燥EVOHペレットを凍結粉砕により粉砕した。得られた粉砕EVOHを呼び寸法1mmのふるい(標準フルイ規格JIS−Z8801準拠)でふるい分けした。このふるいを通過したEVOH粉末5gを100gのイオン交換水中に浸漬し、85℃で4時間撹拌した後、脱液して乾燥する操作を二回行った。得られた洗浄後の粉末EVOHを用いて、下記の測定条件でH−NMRの測定を行い、下記解析方法でエチレン含有量及びケン化度を求めた。
(測定条件)
装置名 :超伝導核磁気共鳴装置(日本電子株式会社の「Lambda500」)
観測周波数 :500MHz
溶媒 :DMSO−d
ポリマー濃度 :4質量%
測定温度 :40℃及び95℃
積算回数 :600回
パルス遅延時間:3.836秒
サンプル回転速度:10Hz〜12Hz
パルス幅(90°パルス):6.75μsec
(解析方法)
40℃での測定では、3.3ppm付近に水分子中の水素のピークが観測され、EVOHのビニルアルコール単位のメチン水素のピークのうちの、3.1ppm〜3.7ppmの部分と重なった。一方、95℃での測定では、上記40℃で生じた重なりは解消するものの、4ppm〜4.5ppm付近に存在するEVOHのビニルアルコール単位の水酸基の水素のピークが、EVOHのビニルアルコール単位のメチン水素のピークのうちの、3.7ppm〜4ppmの部分と重なった。すなわち、EVOHのビニルアルコール単位のメチン水素(3.1ppm〜4ppm)の定量については、水又は水酸基の水素のピークとの重複を避けるために、3.1ppm〜3.7ppmの部分については、95℃の測定データを採用し、3.7ppm〜4ppmの部分については40℃の測定データを採用し、これらの合計値として当該メチン水素の全量を定量した。なお、水又は水酸基の水素のピークは測定温度を上昇させることで高磁場側にシフトすることが知られている。従って、以下のように40℃及び95℃の両方の測定結果を用いて解析した。上記の40℃で測定したスペクトルより、3.7ppm〜4ppmのケミカルシフトのピークの積分値(I)及び0.6ppm〜1.8ppmのケミカルシフトのピークの積分値(I)を求めた。
一方、95℃で測定したスペクトルより、3.1ppm〜3.7ppmのケミカルシフトのピークの積分値(I)、0.6ppm〜1.8ppmのケミカルシフトのピークの積分値(I)及び1.9ppm〜2.1ppmのケミカルシフトのピークの積分値(I)を求めた。ここで、0.6ppm〜1.8ppmのケミカルシフトのピークは、主にメチレン水素に由来するものであり、1.9ppm〜2.1ppmのケミカルシフトのピークは、未ケン化の酢酸ビニル単位中のメチル水素に由来するものである。これらの積分値から下記式(3)によりエチレン含有量を計算し、下記式(4)によりケン化度を計算した。
Figure 0006749079
Figure 0006749079
[アルカリ金属含有量]
アルカリ金属含有量の測定は、分光分析装置を用いて定量した。具体的には、乾燥EVOHペレット0.5gをアクタック社のテフロン(登録商標)製耐圧容器に添加し、硝酸(和光純薬工業社の精密分析用)5mLを添加した。30分放置後、ラプチャーディスク付きキャップリップにて容器に蓋をし、マイクロウェーブ高速分解システム(アクタック社の「スピードウェーブ MWS−2」)にて150℃、10分、次いで180℃、10分の処理を行って乾燥EVOHペレットを分解させた。なお、上述の処理では乾燥EVOHペレットの分解が完了できていない場合、処理条件を適宜調節した。得られた分解物を10mLのイオン交換水で希釈し、全液を50mLのメスフラスコに移しとり、イオン交換水で定容することで分解溶液を得た。ICP発光分光分析装置(パーキンエルマージャパン社の「Optima 4300 DV」)を用い、上記分解溶液をNaの波長589.592nmで定量分析することで、アルカリ金属含有量を測定した。
[溶融粘度(メルトフローレート)]
溶融粘度(メルトフローレート)は、JIS−K7210(1999)に準拠し、温度190℃、荷重2,160gで測定した。
[EVOH(A)の分子量の測定]
(測定サンプルの準備)
測定サンプルは、窒素雰囲気下、EVOH(A)を220℃で50時間加熱することで作製した。
(GPC測定)
GPC測定は、VISCOTECH社の「GPCmax」を用いて行った。分子量は、示差屈折率検出器及び紫外可視吸光度検出器で検出されるシグナル強度に基づいて算出した。示差屈折率検出器及び紫外可視吸光度検出器としては、VISCOTECH社の「TDA305」及び「UV Detector2600」を用いた。この吸光度検出器の検出用セルとしては、光路長が10mmのものを用いた。GPCカラムとしては、昭和電工株式会社の「GPC HFIP−806M」を用いた。また、解析ソフトとしては、装置付属の「OmniSEC(Version 4.7.0.406)」を用いた。
(測定条件)
測定サンプルを採取し、トリフルオロ酢酸ナトリウム20mmol/Lを含有するヘキサフルオロイソプロパノール(以下「HFIP」という)に溶解し、0.100wt/vol%溶液を調製した。測定には、0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した溶液を用いた。測定サンプルの溶解は、室温にて一晩静置することで行った。
移動相には、20mmol/Lトリフルオロ酢酸ナトリウム含有HFIPを用いた。移動相の流速は1.0mL/分とした。試料注入量は100μLとし、GPCカラム温度40℃にて測定した。
(検量線の作成)
標品として、Agilent Technologies社のポリメタクリル酸メチル(以下「PMMA」と略記する)(ピークトップ分子量:1,944,000、790,000、467,400、271,400、144,000、79,250、35,300、13,300、7,100、1,960、1,020又は690)を測定し、示差屈折率検出器及び吸光度検出器のそれぞれについて、溶出容量をPMMA分子量に換算するための検量線を作成した。各検量線の作成には、上記解析ソフトを用いた。なお、本測定においてはPMMAの測定において、1,944,000及び271,400の両分子量の標準試料同士のピークが分離できるカラムを用いた。
なお、示差屈折率検出器から得られるピーク強度は、「mV」で表され、標準サンプルとしてAmerican Polymer Standard Corp.社のPMMAサンプル(PMMA85K:重量平均分子量85,450、数平均分子量74,300、固有粘度0.309)を1.000mg/mL濃度として用いた場合のピーク強度は358.31mVであった。
また、紫外可視吸光度検出器から得られるピーク強度は吸光度(アブソーバンスユニット)で表され、紫外可視吸光度検出器の吸光度は解析ソフトにおいて、1アブソーバンスユニット=1,000mVに変換した。
<蒸着フィルムの作製>
[実施例1]
[基材フィルムの作製]
上記合成例1で得た樹脂組成物ペレット100質量部に対して、合成シリカ(富士シリシア化学株式会社の「サイリシア310P」;レーザー法で測定された平均粒子径2.7μm)を0.03質量部になるようにタンブラーを用いてドライブレンドを行い、240℃にて溶融し、ダイからキャスティングロール上に押出すと同時にエアーナイフを用いて空気を風速30m/秒で吹付け、平均厚み170μmの未延伸フィルムを得た。このフィルムを80℃の温水に10秒接触させ、テンター式同時二軸延伸設備により90℃にて縦方向に3.2倍、横方向に3.0倍延伸し、さらに170℃に設定したテンター内にて5秒間熱処理を行い、全幅3.6mの二軸延伸フィルム(基材フィルム)を得た。この基材フィルムを巻き返しながら、フィルム全幅における中央位置を中心にして幅80cmをスリットし、長さ4,000mのロールを得た。さらに、連続して基材フィルムを製膜し、長さ4,000mのロールを合計100本採取した。得られた基材フィルムの揮発分は0.15質量%であった。また、基材フィルムの作製時の臭気は無かった。この基材フィルムは、吸湿を防止するためにアルミニウム箔ラミネートフィルムで梱包した。
[金属蒸着層の形成]
基材フィルムに対して、バッチ式蒸着設備(日本真空技術株式会社の「EWA−105」)を用い、二軸延伸フィルムの表面温度38℃、二軸延伸フィルムの走行速度200m/分として二軸延伸フィルムの片面にアルミニウムを蒸着させることで蒸着フィルムを得た。金属蒸着層のアルミニウムの平均厚みは70nmであった。
得られた蒸着フィルムの蒸着欠点及び金属蒸着層の密着強度の評価は、いずれも良好であった。蒸着フィルムからの揮発分の含有量は、全てのロールにおいて同一であり、良好であった。
[実施例2〜5及び比較例1]
合成例2〜5及び比較合成例1の樹脂組成物ペレットを用いて、実施例1と同様に二軸延伸フィルム(基材フィルム)を作製し、さらに金属蒸着層を形成して蒸着フィルムを得た。実施例5については、二軸延伸フィルムの片面にアルミニウムを蒸着後、さらに二軸延伸フィルムの他方の面にもアルミニウムを蒸着した。実施例1〜5及び比較離1の蒸着フィルムについて、以下に示す方法にて、金属蒸着層の厚み、蒸着欠点数(蒸着欠点抑制性)、及び密着強度の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
[金属蒸着層の厚み]
蒸着フィルムをミクロトームでカットし、断面を露出させた。この断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(エス・アイ・アイナノテクノロジー社の「ZEISS ULTRA 55」)により観察すると共に反射電子検出器を用いて金属蒸着層の厚みを測定した。
[蒸着欠点抑制性の評価]
蒸着フィルムのロールをスリッターにかけて、フィルム下部から100Wの蛍光灯を当てながら巻きだし、幅0.5m、長さ2mの領域について異なる10箇所で蒸着欠点数を数え、その平均値を1mあたりの蒸着欠点数とした。蒸着欠点抑制性は、以下の基準で評価した。
A:20個/m以下
B:21個/m以上40個/m以下
C:41個/m以上60個/m以下
[密着強度の評価]
蒸着フィルムの金属蒸着層側の表面に、ドライラミネート用接着剤(三井化学株式会社の「タケラックA−385」と「タケラックA−50」とを6/1の質量比で混合し、固形分濃度23質量%の酢酸エチル溶液としたもの)を第一理化株式会社のバーコーターNo.12を用いてコートし、50℃で5分間熱風乾燥させた後、80℃に加熱したニップロールにて、PETフィルム(東洋紡株式会社の「E5000」:平均厚み12μm)とラミネートを行った。このとき、フィルムの半分の領域は、アルミホイルを挟むことでフィルム同士が貼りあわされない部分を設定した。その後、40℃で72時間養生し、ラミネートフィルムを得た。このラミネートフィルムをアルミ蒸着の境目を中心として100mm×15mmの短冊に裁断し、引っ張り試験機により引っ張り速度10mm/分にてT型剥離試験を5回行った。得られた測定値の平均値を密着強度とした。密着強度は以下の基準で評価した。
A:500g/15mm以上
B:450g/15mm以上500g/15mm未満
C:400g/15mm以上450g/15mm未満
Figure 0006749079
表1に示すように、基材フィルムを構成するEVOH(A)として特定条件を満たすものを用いることで、この基材フィルムを備える蒸着フィルムは、蒸着時に発生する蒸着抜けを抑えることができると共に密着強度に優れていた。
[実施例6]
実施例4の蒸着フィルムの片面にPETフィルム(東洋紡株式会社の「E5000」:平均厚み12μm)を積層すると共に蒸着フィルムのもう片面に無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)(三井化学東セロ株式会社の「RXC−21」:平均厚み50μm)を積層して積層フィルムを得た。この積層フィルムについて、以下の方法で酸素透過度を測定した。その結果を表2に示す。
[酸素透過度]
酸素透過度は、積層フィルムの一部を切り取った試料を用いて、JIS−K7126(等圧法)(2006)に準拠し、酸素透過率測定装置(モダンコントロール社の「MOCON OX−TRAN2/20」:検出限界値0.01mL/m・day・atm)を用いて測定した。測定条件は、温度が40℃、酸素供給側の湿度が90%RH、キャリアガス側の湿度が0%RH、酸素圧が1気圧、キャリアガス圧力が1気圧とした。積層フィルムの酸素透過率測定装置への設置方法は、基材フィルムの片面に金属蒸着層が形成された蒸着フィルムを用いた積層フィルムの場合、金属蒸着層の表面側を酸素供給側、基材フィルムの露出面側をキャリアガス側とした。基材フィルムの両面に金属蒸着層が形成された蒸着フィルムを用いた積層フィルムの場合は、酸素供給側とキャリアガス側とを選ばず設置した。
[実施例7〜9及び比較例2]
層構成を表2に示す通りとした以外は実施例6と同様にして積層フィルムを作製し、酸素透過度を測定した。その結果を表2に示す。なお、表2に示す蒸着PETフィルムとしては東レフィルム加工株式会社の「VM−PET 1510」(平均厚み12μm)を使用した。また、実施例9では実施例6における実施例4の蒸着フィルムの代わりに実施例5で得た蒸着フィルムを用いた。さらに、比較例2では実施例6における実施例4の蒸着フィルムの代わりに比較例1で得た蒸着フィルムを用いた。
Figure 0006749079
表2に示すように、実施例6〜9の積層フィルムは、比較例2の積層フィルムに比べて酸素透過度が低く、ガスバリア性に優れていた。
本発明の蒸着フィルムは、金属蒸着層における蒸着欠陥及びクラックの発生が抑制されると共に基材フィルムに対する金属蒸着層の密着性に優れるため、ガスバリア性の低下が抑制される。従って、当該蒸着フィルムは、包装材及び真空断熱体に好適に使用できる。

Claims (5)

  1. エチレン−ビニルアルコール共重合体を含有する基材フィルムと、この基材フィルムに積層される金属蒸着層とを備える蒸着フィルムであって、
    上記エチレン−ビニルアルコール共重合体が、
    示差屈折率検出器及び紫外可視吸光度検出器を備えるゲルパーミエーションクロマトグラフを用い、窒素雰囲気下、220℃、50時間熱処理後に測定した分子量が、下記式(1)で表される条件を満たし、
    上記金属蒸着層のうち少なくとも一層の平均厚みが、15nm以上80nm以下であることを特徴とする蒸着フィルム。
    (Ma−Mb)/Ma<0.10 ・・・(1)
    Ma:示差屈折率検出器で測定されるピークの最大値におけるポリメタクリル酸メチル換算の分子量
    Mb:紫外可視吸光度検出器で測定される波長220nmでの吸収ピークの最大値におけるポリメタクリル酸メチル換算の分子量
  2. 上記エチレン−ビニルアルコール共重合体が、
    示差屈折率検出器及び紫外可視吸光度検出器を備えるゲルパーミエーションクロマトグラフを用い、窒素雰囲気下、220℃、50時間熱処理後に測定した分子量が、下記式(2)で表される条件をさらに満たす請求項1に記載の蒸着フィルム。
    (Ma−Mc)/Ma<0.45 ・・・(2)
    Mc:紫外可視吸光度検出器で測定される波長280nmでの吸収ピークの最大値におけるポリメタクリル酸メチル換算の分子量
  3. 上記金属蒸着層が基材フィルムの両面に積層されている請求項1又は請求項2に記載の蒸着フィルム。
  4. 請求項1から請求項のいずれか1項に記載の蒸着フィルムを備える包装材。
  5. 請求項1から請求項のいずれか1項に記載の蒸着フィルムを備える真空断熱体。
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