以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
本発明の一態様の有機化合物は、ピリジン骨格の2位と6位にピリミジン骨格の2位が結合した2,2’−(ピリジン−2,6−ジイル)ビピリミジン骨格を有し、当該2,2’−(ピリジン−2,6−ジイル)ビピリミジン骨格に炭素数10乃至16の縮環構造を有するアリール基が少なくとも一つ結合している構造を有する。なお、上記縮環構造を有するアリール基は、フェニレン基を介して結合していても良い。
当該構造を有する有機化合物は、電子輸送性が良好であるため、発光素子の電子輸送層、電子注入層及びホスト材料として好適に用いることができる。また、当該有機化合物は耐熱性が高く、信頼性の良好な発光素子を提供することができる。
また、タンデム型の発光素子などに用いられる電荷発生層の陽極側に接する層に上記構造を有する本発明の一態様の有機化合物を用いると、発光素子の駆動時間の蓄積に伴う輝度低下を小さく抑えることが可能となるため、発光素子の信頼性を向上させることができるため特に好ましい。また、クロストークを抑制することも可能となり、表示品質の良好な表示装置を提供することが容易となる。電荷発生層に関しては後に述べる発光素子の説明において詳しく解説する。
これら2,2’−(ピリジン−2,6−ジイル)ビピリミジン骨格に炭素数10乃至16の縮環構造を有するアリール基が少なくとも一つ結合している有機化合物は下記一般式(G1)で表すこともできる。
但し、一般式(G1)中、Ar1及びAr2はフェニレン基を表し、n及びmはそれぞれ独立に0又は1を表す。R1乃至R3はそれぞれ独立に水素、炭素数6乃至16のアリール基のいずれかを表し、少なくとも一つは炭素数10乃至16の縮環構造を有するアリール基である。R4乃至R9はそれぞれ独立に水素、炭素数1乃至6のアルキル基及び炭素数6乃至10のアリール基のいずれかを表す。
一般式(G1)で表される有機化合物は、R1及びR2が共にナフチル基である構造を有する有機化合物が耐熱性に優れるため好ましい。すなわち、下記一般式(G2)で表される有機化合物が好ましい。
但し、一般式(G2)中、Ar1及びAr2はフェニレン基を表し、n及びmはそれぞれ独立に0又は1を表す。R3乃至R9はそれぞれ独立に水素、炭素数1乃至6のアルキル基及び炭素数6乃至10のアリール基のいずれかを表す。
上記一般式(G2)で表される有機化合物は、R3が水素であることが好ましい。また、R6及びR7が水素であることが好ましい。
なお、上記一般式(G2)においてR4及びR5はフェニル基であることが好ましい。
また、上記一般式(G2)で表される有機化合物は、m及びnが0又は1のどちらでも良好な特性を示すが、特にm及びnが1である場合、電子輸送層に当該有機化合物を用い、それが電荷発生層又は中間層に接して設けられた際に寿命の良好な発光素子を得ることが可能となる。
また、一般式(G1)で表される有機化合物において、R3がピレニル基である有機化合物が耐熱性に優れるため好ましい。すなわち、本発明の一態様の有機化合物は、下記一般式(G3)で表される有機化合物である。
但し、一般式(G3)中、R4乃至R11はそれぞれ独立に水素、炭素数1乃至6のアルキル基及び炭素数6乃至10のアリール基のいずれかを表す。
上記一般式(G3)で表される有機化合物においては、R4及びR5、R10及びR11がフェニル基であることが化合物の化学的安定性を保ち、電荷の注入に適切なLUMO準位を実現できるため好ましい。
また、上記一般式(G3)で表される有機化合物において、R6及びR7、R8及びR9が水素であることが化合物の立体構造にねじれを生じさせにくく、電荷輸送性が良くなるため好ましい。
なお、上記一般式(G3)で表される有機化合物は電荷発生層の陽極側に接する層に使用することによって、特に有効にクロストークが抑制され、表示品質の良好な表示装置を得ることができる。
上記炭素数1乃至6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びシクロヘキシル基等を挙げることができる。
また、上記炭素数6乃至16のアリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基、アントラセニル基、ペリレニル基及びピレニル基などを挙げることができ、上記炭素数6乃至10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などを挙げることができる。また、上記炭素数10乃至16の縮環構造を有するアリール基としては、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基、アントラセニル基、ペリレニル基及びピレニル基などを挙げることができる。
以上のような構成を有する有機化合物の具体例としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
上記一般式(G1)で表される有機化合物は、以下に示す合成スキームのように、ハロゲン化ピリジン化合物(A1)とピリミジンボロン酸(A2)、(A2’)とをカップリングすることにより得られる。あるいは、ピリジンジカルボキサミジン化合物とカルコン誘導体を塩基の存在下、溶媒中で反応することにより合成することもできる。
なお、上記合成スキームにおいて、Q1及びQ2はハロゲンを表す。また、B1、B2はボロン酸またはボロン酸エステルまたは環状トリオールボレート塩等を表す。環状トリオールボレート塩はリチウム塩の他に、カリウム塩、ナトリウム塩を用いても良い。また、Ar1及びAr2はフェニレン基を表し、n及びmはそれぞれ独立に0又は1を表す。R1乃至R3はそれぞれ独立に水素、炭素数6乃至16のアリール基のいずれかを表し、少なくとも一つは縮環構造を有するアリール基である。R4乃至R9はそれぞれ独立に水素、炭素数1乃至6のアルキル基及び炭素数6乃至10のアリール基のいずれかを表す。
Q1及びQ2で表されるハロゲンの種類によりボロン酸との反応は、順番を任意に選択可能、もしくは同時に進行させることも可能である。また、上述の化合物(A1)、(A2)は、様々な種類が市販されているか、あるいは合成可能であるため、一般式(G1)で表される有機化合物は数多くの種類を合成することができる。したがって、本発明の一態様の有機化合物は、バリエーションが豊富であるという特徴がある。
以上、本発明の一態様の有機化合物の合成方法の一例について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、他のどのような合成方法によって合成されても良い。
(実施の形態1)
本実施の形態では本発明の一態様の有機化合物を用いた発光素子の詳細な構造の例について図1(A)を用いて以下に説明する。
本実施の形態における発光素子は、一対の電極間に複数の層からなるEL層を有し、当該複数の層のいずれかに本発明の一態様の有機化合物を含む。本実施の形態において、発光素子は、第1の電極101と、第2の電極102と、第1の電極101と第2の電極102との間に設けられたEL層103とから構成されている。なお、本形態では第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極102は陰極として機能するものとして、以下説明をする。
第1の電極101は陽極として機能するため、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。作製方法の例としては、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成する方法などがある。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することもできる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。グラフェンも用いることができる。なお、後述する複合材料をEL層103における第1の電極101と接する層に用いることで、仕事関数に関わらず、電極材料を選択することができるようになる。
EL層103は積層構造を有することが好ましい。この積層構造については、当該積層構造のいずれかに本発明の一態様の有機化合物が含まれていれば他は特に限定されない。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、キャリアブロック層、電荷発生層等を適宜組み合わせて構成することができる。本実施の形態では、EL層103は、図1(A)に示すような第1の電極101の上に順に積層した正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115を有する構成及び図1(B)に示すような第1の電極101の上に順に積層した正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電荷発生層116を有する構成の2種類の構成について説明する。このうち、発光層のホスト材料、電子輸送層、又は電子注入層として、本発明の一態様の有機化合物を用いる構成が好ましいが、これに限られることはない。各層を構成する材料について以下に具体的に示す。
正孔注入層111は、正孔注入性の高い物質を含む層である。モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:H2Pc)や銅フタロシアニン(CuPC)等のフタロシアニン系の化合物、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’−ビス{4−[ビス(3−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−N,N’−ジフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、或いはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層111を形成することができる。
また、正孔注入層111として、正孔輸送性の物質にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることができる。なお、正孔輸送性の物質にアクセプター性物質を含有させたものを用いることにより、電極の仕事関数に依らず電極を形成する材料を選ぶことができる。つまり、第1の電極101として仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数の小さい材料も用いることができるようになる。アクセプター性物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F4−TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(HAT−CN)等の電子吸引基(ハロゲン基やシアノ基)を有する化合物を挙げることができる。特に、HAT−CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
複合材料に用いる正孔輸送性の物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。以下では、複合材料における正孔輸送性の物質として用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
例えば、芳香族アミン化合物としては、N,N’−ジ(p−トリル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’−ビス{4−[ビス(3−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−N,N’−ジフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。
また、複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、他に、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
また、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14から42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
なお、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
また、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)等の高分子化合物を用いることもできる。
正孔注入層を形成することによって、正孔の注入性が良好となり、駆動電圧の小さい発光素子を得ることが可能となる。
なお、正孔注入層は、上述したアクセプター材料を単独、または他の材料と混合した材料を用いることで形成しても良い。この場合、アクセプター材料が正孔輸送層から電子を引き抜き、正孔輸送層に正孔注入することができる。アクセプター材料は引き抜いた電子を陽極へ輸送する。
正孔輸送層112は、正孔輸送性の物質を含む層である。正孔輸送性の物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、正孔輸送性が高く、主に10−6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。また、上述の複合材料における正孔輸送性の物質として挙げた有機化合物も正孔輸送層112に用いることができる。また、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。なお、正孔輸送性の物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
発光層113は、蛍光発光物質を含み蛍光発光を呈する層であっても、りん光発光物質を含み蛍光発光を呈する層、熱活性化遅延蛍光(TADF)を示す物質を含みTADFを呈する層であってもいずれでも構わない。また、発光層113は単層であっても、異なる発光物質が含まれる複数の層からなっていても良い。
発光層113において、蛍光発光物質として用いることが可能な材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。また、これ以外の蛍光発光物質も用いることができる。
5,6−ビス[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−2,2’−ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6−ビス[4’−(10−フェニル−9−アントリル)ビフェニル−4−イル]−2,2’−ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’−ビス〔4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニル−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス[3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(略称:TBP)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPPA)、N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’−ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2−(2−{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)、2−{2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2−{2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2−(2,6−ビス{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2−{2,6−ビス[2−(8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)などが挙げられる。特に、1,6FLPAPrnや1,6mMemFLPAPrnのようなピレンジアミン化合物に代表される縮合芳香族ジアミン化合物は、ホールトラップ性が高く、発光効率や信頼性に優れているため好ましい。
発光層113において、りん光発光物質として用いることが可能な材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
トリス{2−[5−(2−メチルフェニル)−4−(2,6−ジメチルフェニル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル−κN2]フェニル−κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(mpptz−dmp)3])、トリス(5−メチル−3,4−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz)3])、トリス[4−(3−ビフェニル)−5−イソプロピル−3−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrptz−3b)3])のような4H−トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス[3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1−mp)3])、トリス(1−メチル−5−フェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1−Me)3])のような1H−トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、fac−トリス[1−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−フェニル−1H−イミダゾール]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrpmi)3])、トリス[3−(2,6−ジメチルフェニル)−7−メチルイミダゾ[1,2−f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(dmpimpt−Me)3])のようなイミダゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2−[3’,5’−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト−N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CF3ppy)2(pic)])、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。これらは青色のりん光発光を示す化合物であり、440nmから520nmに発光のピークを有する化合物である。
また、トリス(4−メチル−6−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)3])、トリス(4−t−ブチル−6−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)3])、(アセチルアセトナト)ビス(6−メチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(6−tert−ブチル−4−フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[6−(2−ノルボルニル)−4−フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(nbppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[5−メチル−6−(2−メチルフェニル)−4−フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpmppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6−ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)2(acac)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−Me)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5−イソプロピル−3−メチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr−iPr)2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)3])、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)2(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)2(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(bzq)3])、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)3])、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)2(acac)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは主に緑色のりん光発光を示す化合物であり、500nm〜600nmに発光のピークを有する。なお、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。
また、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6−ビス(3−メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dibm)])、ビス[4,6−ビス(3−メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dpm)])、ビス[4,6−ジ(ナフタレン−1−イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(d1npm)2(dpm)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(acac)])、ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(piq)3])、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)2(acac)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)のような白金錯体や、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(DBM)3(Phen)])、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(TTA)3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは、赤色のりん光発光を示す化合物であり、600nmから700nmに発光のピークを有する。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得られる。
また、以上で述べたりん光性化合物の他、様々なりん光性発光物質を選択し、用いてもよい。
TADF材料としてはフラーレン及びその誘導体、プロフラビン等のアクリジン誘導体、エオシン等を用いることができる。またマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリン等も用いることができる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、以下の構造式に示されるプロトポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF2(Proto IX))、メソポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF2(Meso IX))、ヘマトポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF2(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル−フッ化スズ錯体(SnF2(Copro III−4Me))、オクタエチルポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF2(OEP))、エチオポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF2(Etio I))、オクタエチルポルフィリン−塩化白金錯体(PtCl2OEP)等も挙げられる。
また、以下の構造式に示される2−ビフェニル−4,6−ビス(12−フェニルインドロ[2,3−a]カルバゾール−11−イル)−1,3,5−トリアジン(PIC−TRZ)等のπ電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有する複素環化合物も用いることができる。該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が高く、好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環のドナー性とπ電子不足型複素芳香環のアクセプター性が共に強くなり、S1準位とT1準位のエネルギー差が小さくなるため、特に好ましい。
続いて、発光層のホスト材料としては様々なキャリア輸送材料を用いることができる。当該キャリア輸送材料としては、例えば以下に示すような正孔輸送性を有する物質や、電子輸送性を有する物質などを用いることができる。もちろん、以下に挙げる物質以外の正孔輸送性を有する材料や電子輸送性を有する材料、バイポーラ性を有する材料も用いることができる。
正孔輸送性を有する材料としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4−フェニル−3’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’−ジフェニル−4’’−(9−フェニル−9−H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4−(1−ナフチル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4、4’−ジ(1−ナフチル)−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9−ジメチル−N−フェニル−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]−フルオレン−2−アミン(略称:PCBAF)、N−フェニル−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]−スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物や、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)−9−フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール)(略称:PCCP)などのカルバゾール骨格を有する化合物や、4,4’,4’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P−II)、2,8−ジフェニル−4−[4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP−III)、4−[4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]−6−フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP−IV)などのチオフェン骨格を有する化合物や、4,4’,4’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P−II)、4−{3−[3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi−II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物やカルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。
電子輸送性を有する材料としては、本発明の一態様の有機化合物の他、例えば、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体や、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)などのポリアゾール骨格を有する複素環化合物や、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)、2−[3’−(ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq−II)、2−[3’−(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、4,6−ビス[3−(フェナントレン−9−イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6−ビス〔3−(4−ジベンゾチエニル)フェニル〕ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm−II)などのジアジン骨格を有する複素環化合物や、3,5−ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5−トリ[3−(3−ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物が挙げられる。上述した中でも、ジアジン骨格を有する複素環化合物やピリジン骨格を有する複素環化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンやピラジン)骨格を有する複素環化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
なお、ホスト材料は複数種の物質を混合した材料であっても良く、混合したホスト材料を用いる場合は、電子輸送性を有する材料と、正孔輸送性を有する材料とを混合することが好ましい。電子輸送性を有する材料と、正孔輸送性を有する材料を混合することによって、発光層113の輸送性を容易に調整することができ、再結合領域の制御も簡便に行うことができる。正孔輸送性を有する材料と電子輸送性を有する材料の含有量の比は、正孔輸送性を有する材料:電子輸送性を有する材料=1:9〜9:1とすればよい。
また、これら混合された材料同士で励起錯体を形成しても良い。当該励起錯体は発光材料の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈する励起錯体を形成するような組み合わせを選択することで、エネルギー移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため好ましい。また、駆動電圧も低下するため好ましい。
以上のような構成を有する発光層113は、真空蒸着法での共蒸着や、ホスト材料と発光物質の混合溶液として、グラビア印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、スピンコート法やディップコート法などを用いて作製することができる。
電子輸送層114は、電子輸送性を有する物質を含む層である。電子輸送性を有する物質としては、上記ホスト材料に用いることが可能な電子輸送性を有する物質として挙げたものを用いることができる。本発明の一態様の有機化合物も好適に用いることができる。特に、少なくとも電子輸送層114の電子注入層115と接する部分に本発明の一態様の有機化合物が含まれていると、発光素子の信頼性が向上するため好ましい。
また、電子輸送層114と発光層113との間に電子キャリアの移動を制御する層を設けても良い。これは上述したような電子輸送性の高い材料に、電子トラップ性の高い物質を少量添加した層であって、電子キャリアの移動を抑制することによって、キャリアバランスを調節することが可能となる。このような構成は、発光層を電子が突き抜けてしまうことにより発生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
また、電子輸送層114と第2の電極102との間に、第2の電極102に接して電子注入層115を設けてもよい。電子注入層115としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を用いることができる。例えば、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させたものを用いることができる。また、電子注入層115にエレクトライドを用いてもよい。該エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。なお、電子注入層115として、電子輸送性を有する材料からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有させたものを用いることにより、第2の電極102からの電子注入が効率良く行われるためより好ましい。なお、この電子輸送性を有する材料としては、本発明の一態様の有機化合物を用いることがさらに好ましい。
また、電子注入層115の代わりに電荷発生層116を設けても良い(図1(B))。電荷発生層116は、電位をかけることによって当該層の陰極側に接する層に正孔を、陽極側に接する層に電子を注入することができる層のことである。電荷発生層116には、上述の正孔注入層111を構成することができる材料として挙げた複合材料による層(P型層117)が含まれる。またP型層117は、上述したアクセプター材料と正孔輸送材料を含む膜とを積層して構成しても良い。P型層に電位をかけることによって、電子輸送層114に電子が、陰極である第2の電極102に正孔が注入され、発光素子が動作する。この際、電子輸送層114の電荷発生層116に接する位置に、本発明の一態様の有機化合物を含む層が存在することによって、発光素子の駆動時間の蓄積に伴う輝度低下が抑制され、寿命の長い発光素子を得ることができる。
なお、電荷発生層116はP型層117の他に電子リレー層118及び電子注入バッファ層119のいずれか一又は両方がもうけられていることが好ましい。
電子リレー層118は少なくとも電子輸送性を有する物質を含み、電子注入バッファ層119とP型層117との相互作用を防いで電子をスムーズに受け渡す機能を有する。電子リレー層118に含まれる電子輸送性を有する物質のLUMO準位は、P型層117におけるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層114における電荷発生層116に接する層に含まれる物質のLUMO準位との間となるように形成する。具体的なエネルギー準位の数値としては、電子リレー層118における電子輸送性を有する物質のLUMO準位は−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下とするとよい。なお、電子リレー層118における電子輸送性を有する物質としてはフタロシアニン系の材料又は金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
電子注入バッファ層119には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
また、電子注入バッファ層119が、電子輸送性を有する物質とドナー性物質を含んで形成される場合には、ドナー性物質として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性を有する物質としては、先に説明した電子輸送層114を構成する材料と同様の材料を用いて形成することができる。また、本発明の一態様の有機化合物を用いることもできる。
第2の電極102を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、リチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等の元素周期表の第1族または第2族に属する元素、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。しかしながら、第2の電極102と電子輸送層との間に、電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を第2の電極102として用いることができる。
これら導電性材料は、真空蒸着法やスパッタリング法などの乾式法、インクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能である。また、ゾル−ゲル法を用いて湿式法で形成しても良いし、金属材料のペーストを用いて湿式法で形成してもよい。
また、EL層103の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法またはスピンコート法など用いても構わない。
また上述した各電極または各層を異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
以上のような構成を有する発光素子は、第1の電極101と第2の電極102との間に生じた電位差により電流が流れ、発光性の高い物質を含む層である発光層113において正孔と電子とが再結合し、発光するものである。
発光層で生じた光は、第1の電極101または第2の電極102のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極101または第2の電極102のいずれか一方または両方は、透光性を有する電極で構成する。第1の電極101のみが透光性を有する電極である場合、発光は第1の電極101を通って取り出される。また、第2の電極102のみが透光性を有する電極である場合、発光は第2の電極102を通って取り出される。第1の電極101および第2の電極102がいずれも透光性を有する電極である場合、発光は第1の電極101および第2の電極102を通って、両方から取り出される。
なお、第1の電極101と第2の電極102との間に設けられる層の構成は、上記のものには限定されない。しかし、発光領域と電極やキャリア注入層に用いられる金属とが近接することによって生じる消光が抑制されるように、第1の電極101および第2の電極102から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成が好ましい。
また、発光層113に接する正孔輸送層や電子輸送層、特に発光層113における再結合領域に近い方に接するキャリア輸送層は、発光層で生成した励起子からのエネルギー移動を抑制するため、そのバンドギャップが発光層を構成する発光物質もしくは、発光層に含まれる発光中心物質が有するバンドギャップより大きいバンドギャップを有する物質で構成することが好ましい。
続いて、複数の発光ユニットを積層した構成の発光素子(以下、積層型素子ともいう)の態様について、図1(C)を参照して説明する。この発光素子は、第1の電極と第2の電極との間に、複数の発光ユニットを有する発光素子である。一つの発光ユニットは、図1(A)で示したEL層103と同様な構成を有する。つまり、図1(A)で示した発光素子は、1つの発光ユニットを有する発光素子であり、本実施の形態では、複数の発光ユニットを有する発光素子ということができる。
図1(C)において、第1の電極501と第2の電極502との間には、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512が積層されており、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512との間には電荷発生層513が設けられている。第1の電極501と第2の電極502はそれぞれ図1(A)における第1の電極101と第2の電極102に相当し、図1(A)の説明で述べたものと同じものを適用することができる。また、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512は同じ構成であっても異なる構成であってもよい。
電荷発生層513は、第1の電極501と第2の電極502に電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入する機能を有する。すなわち、図1(C)において、第1の電極の電位の方が第2の電極の電位よりも高くなるように電圧を印加した場合、電荷発生層513は、第1の発光ユニット511に電子を注入し、第2の発光ユニット512に正孔を注入するものであればよい。
電荷発生層513は、上述の電荷発生層116と同様の構成で形成することが好ましい。有機化合物と金属酸化物の複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。なお、発光ユニットの陽極側の面が電荷発生層513に接している場合は、電荷発生層513が発光ユニットの正孔注入層の役割も担うことができるため、発光ユニットは正孔輸送層を設けなくとも良い。
また、電子注入バッファ層119を設ける場合、当該層が陽極側の発光ユニットにおける電子注入層の役割を担うため、当該発光ユニットには重ねて電子注入層を形成する必要はない。
なお、発光ユニットに含まれる層のうち、電荷発生層513の陽極側の面に接する層に本発明の一態様の有機化合物が含まれることによって、駆動時間の蓄積に伴う輝度劣化を抑制することが可能となり、信頼性の良好な発光素子を得ることができる。
図1(C)では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層513で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度発光を可能とし、さらに長寿命な素子を実現できる。また、低電圧駆動が可能で消費電力が低い発光装置を実現することができる。
また、それぞれの発光ユニットの発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光ユニットを有する発光素子において、第1の発光ユニットで赤と緑の発光色、第2の発光ユニットで青の発光色を得ることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。
なお、上記構成は、他の実施の形態や本実施の形態中の他の構成と適宜組み合わせることが可能である。
以上のような構成を有する本実施の形態における発光素子は、信頼性の良好な発光素子とすることができる。また、耐熱性の良好な発光素子とすることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子を用いた発光装置について説明する。
本実施の形態では、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子を用いて作製された発光装置について図2を用いて説明する。なお、図2(A)は、発光装置を示す上面図、図2(B)は図2(A)をA−BおよびC−Dで切断した断面図である。この発光装置は、発光素子の発光を制御するものとして、点線で示された駆動回路部(ソース線駆動回路)601、画素部602、駆動回路部(ゲート線駆動回路)603を含んでいる。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
なお、引き回し配線608はソース線駆動回路601及びゲート線駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
次に、断面構造について図2(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース線駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
素子基板610はガラス、石英、有機樹脂、金属、合金、半導体などからなる基板を用いて作製すればよい。
画素や駆動回路に用いられるトランジスタの構造は特に限定されない。例えば、逆スタガ型のトランジスタとしてもよいし、スタガ型のトランジスタとしてもよい。また、トップゲート型のトランジスタでもボトムゲート型トランジスタでもよい。トランジスタに用いる半導体材料は特に限定されず、例えば、シリコン、ゲルマニウム、炭化シリコン、窒化ガリウム等を用いることができる。または、In−Ga−Zn系金属酸化物などの、インジウム、ガリウム、亜鉛のうち少なくとも一つを含む酸化物半導体を用いてもよい。
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、又は一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
ここで、上記画素や駆動回路に設けられるトランジスタの他、後述するタッチセンサ等に用いられるトランジスタなどの半導体装置には、酸化物半導体を適用することが好ましい。特にシリコンよりもバンドギャップの広い酸化物半導体を適用することが好ましい。シリコンよりもバンドギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ状態における電流を低減できる。
上記酸化物半導体は、少なくともインジウム(In)又は亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。また、In−M−Zn系酸化物(MはAl、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)で表記される酸化物を含む酸化物半導体であることがより好ましい。
特に、半導体層として、複数の結晶部を有し、当該結晶部はc軸が半導体層の被形成面、または半導体層の上面に対し垂直に配向し、且つ隣接する結晶部間には粒界を有さない酸化物半導体膜を用いることが好ましい。
半導体層としてこのような材料を用いることで、電気特性の変動が抑制され、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
また、上述の半導体層を有するトランジスタはその低いオフ電流により、トランジスタを介して容量に蓄積した電荷を長期間に亘って保持することが可能である。このようなトランジスタを画素に適用することで、各表示領域に表示した画像の階調を維持しつつ、駆動回路を停止することも可能となる。その結果、極めて消費電力の低減された電子機器を実現できる。
トランジスタの特性安定化等のため、下地膜を設けることが好ましい。下地膜としては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜などの無機絶縁膜を用い、単層で又は積層して作製することができる。下地膜はスパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法(プラズマCVD法、熱CVD法、MOCVD(Metal Organic CVD)法など)、ALD(Atomic Layer Deposition)法、塗布法、印刷法等を用いて形成できる。なお、下地膜は、必要で無ければ設けなくてもよい。
なお、FET623は駆動回路部601に形成されるトランジスタの一つを示すものである。また、駆動回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成すれば良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
また、画素部602はスイッチング用FET611と、電流制御用FET612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成されているが、これに限定されず、3つ以上のFETと、容量素子とを組み合わせた画素部としてもよい。
なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成することができる。
また、後に形成するEL層等の被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、ネガ型の感光性樹脂、或いはポジ型の感光性樹脂のいずれも使用することができる。
第1の電極613上には、EL層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極613に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、またはケイ素を含有したインジウム錫酸化物膜、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
また、EL層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。EL層616は、実施の形態1で説明したような構成を含んでいる。また、EL層616を構成する他の材料としては、低分子化合物、または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)であっても良い。
さらに、EL層616上に形成され、陰極として機能する第2の電極617に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれらの合金や化合物(MgAg、MgIn、AlLi等)等)を用いることが好ましい。なお、EL層616で生じた光が第2の電極617を透過させる場合には、第2の電極617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、ケイ素を含有したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
なお、第1の電極613、EL層616、第2の電極617でもって、発光素子が形成されている。当該発光素子は本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子である。なお、画素部は複数の発光素子が形成されてなっているが、本実施の形態における発光装置では、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子と、それ以外の構成を有する発光素子の両方が含まれていても良い。
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される場合もある。封止基板には凹部を形成し、そこに乾燥材を設けることで水分の影響による劣化を抑制することができ、好ましい構成である。
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
図2には示されていないが、第2の電極上に保護膜を設けても良い。保護膜は有機樹脂膜や無機絶縁膜で形成すればよい。また、シール材605の露出した部分を覆うように、保護膜が形成されていても良い。また、保護膜は、一対の基板の表面及び側面、封止層、絶縁層、等の露出した側面を覆って設けることができる。
保護膜には、水などの不純物を透過しにくい材料を用いることができる。したがって、水などの不純物が外部から内部に拡散することを効果的に抑制することができる。
保護膜を構成する材料としては、酸化物、窒化物、フッ化物、硫化物、三元化合物、金属またはポリマー等を用いることができ、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、ハフニウムシリケート、酸化ランタン、酸化珪素、チタン酸ストロンチウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化スカンジウム、酸化エルビウム、酸化バナジウムまたは酸化インジウム等を含む材料や、窒化アルミニウム、窒化ハフニウム、窒化珪素、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ニオブ、窒化モリブデン、窒化ジルコニウムまたは窒化ガリウム等を含む材料、チタンおよびアルミニウムを含む窒化物、チタンおよびアルミニウムを含む酸化物、アルミニウムおよび亜鉛を含む酸化物、マンガンおよび亜鉛を含む硫化物、セリウムおよびストロンチウムを含む硫化物、エルビウムおよびアルミニウムを含む酸化物、イットリウムおよびジルコニウムを含む酸化物等を含む材料を用いることができる。
保護膜は、段差被覆性(ステップカバレッジ)の良好な成膜方法を用いて形成することが好ましい。このような手法の一つに、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法がある。ALD法を用いて形成することができる材料を、保護膜に用いることが好ましい。ALD法を用いることで緻密な、クラックやピンホールなどの欠陥が低減された、または均一な厚さを備える保護膜を形成することができる。また、保護膜を形成する際に加工部材に与える損傷を、低減することができる。
例えばALD法を用いて保護膜を形成することで、複雑な凹凸形状を有する表面や、タッチパネルの上面、側面及び裏面にまで均一で欠陥の少ない保護膜を形成することができる。
以上のようにして、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子を用いて作製された発光装置を得ることができる。
本実施の形態における発光装置は、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子を用いているため、良好な特性を備えた発光装置を得ることができる。具体的には、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子は耐熱性の良好な発光素子であるため、耐熱性の良好な発光装置とすることができる。また、量産しやすい発光素子であり、安価な発光装置を提供することができる。
図3には白色発光を呈する発光素子を形成し、着色層(カラーフィルタ)等を設けることによってフルカラー化した発光装置の例を示す。図3(A)には基板1001、下地絶縁膜1002、ゲート絶縁膜1003、ゲート電極1006、1007、1008、第1の層間絶縁膜1020、第2の層間絶縁膜1021、周辺部1042、画素部1040、駆動回路部1041、発光素子の第1の電極1024W、1024R、1024G、1024B、隔壁1025、EL層1028、発光素子の第2の電極1029、封止基板1031、シール材1032などが図示されている。
また、図3(A)では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)は透明な基材1033に設けている。また、黒色層(ブラックマトリックス)1035をさらに設けても良い。着色層及び黒色層が設けられた透明な基材1033は、位置合わせし、基板1001に固定する。なお、着色層、及び黒色層は、オーバーコート層1036で覆われている。また、図3(A)においては、光が着色層を透過せずに外部へと出る発光層と、各色の着色層を透過して外部に光が出る発光層とがあり、着色層を透過しない光は白、着色層を透過する光は赤、緑、青となることから、4色の画素で映像を表現することができる。
図3(B)では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)をゲート絶縁膜1003と第1の層間絶縁膜1020との間に形成する例を示した。このように、着色層は基板1001と封止基板1031の間に設けられていても良い。
また、以上に説明した発光装置では、FETが形成されている基板1001側に光を取り出す構造(ボトムエミッション型)の発光装置としたが、封止基板1031側に発光を取り出す構造(トップエミッション型)の発光装置としても良い。トップエミッション型の発光装置の断面図を図4に示す。この場合、基板1001は光を通さない基板を用いることができる。FETと発光素子の陽極とを接続する接続電極を作製するまでは、ボトムエミッション型の発光装置と同様に形成する。その後、第3の層間絶縁膜1037を電極1022を覆って形成する。この絶縁膜は平坦化の役割を担っていても良い。第3の層間絶縁膜1037は第2の層間絶縁膜と同様の材料の他、他の公知の材料を用いて形成することができる。
発光素子の第1の電極1024W、1024R、1024G、1024Bはここでは陽極とするが、陰極であっても構わない。また、図4のようなトップエミッション型の発光装置である場合、第1の電極を反射電極とすることが好ましい。EL層1028の構成は、実施の形態1においてEL層103として説明したような構成とし、且つ、白色の発光が得られるような素子構造とする。
図4のようなトップエミッションの構造では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)を設けた封止基板1031で封止を行うことができる。封止基板1031には画素と画素との間に位置するようにブラックマトリックス1035を設けても良い。着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)やブラックマトリックスはオーバーコート層によって覆われていても良い。なお封止基板1031は透光性を有する基板を用いることとする。また、ここでは赤、緑、青、白の4色でフルカラー表示を行う例を示したが特に限定されず、赤、黄色、緑、青の4色や赤、緑、青の3色でフルカラー表示を行ってもよい。
トップエミッション型の発光装置では、マイクロキャビティ構造の適用が好適に行える。マイクロキャビティ構造を有する発光素子は、第1の電極を反射電極、第2の電極を半透過・半反射電極とすることにより得られる。反射電極と半透過・半反射電極との間には少なくともEL層を有し、少なくとも発光領域となる発光層を有している。
なお、反射電極は、可視光の反射率が40%乃至100%、好ましくは70%乃至100%であり、かつその抵抗率が1×10−2Ωcm以下の膜であるとする。また、半透過・半反射電極は、可視光の反射率が20%乃至80%、好ましくは40%乃至70%であり、かつその抵抗率が1×10−2Ωcm以下の膜であるとする。
EL層に含まれる発光層から射出される発光は、反射電極と半透過・半反射電極とによって反射され、共振する。
当該発光素子は、透明導電膜や上述の複合材料、キャリア輸送材料などの厚みを変えることで反射電極と半透過・半反射電極の間の光学的距離を変えることができる。これにより、反射電極と半透過・半反射電極との間において、共振する波長の光を強め、共振しない波長の光を減衰させることができる。
なお、反射電極によって反射されて戻ってきた光(第1の反射光)は、発光層から半透過・半反射電極に直接入射する光(第1の入射光)と大きな干渉を起こすため、反射電極と発光層の光学的距離を(2n−1)λ/4(ただし、nは1以上の自然数、λは増幅したい発光の波長)に調節することが好ましい。当該光学的距離を調節することにより、第1の反射光と第1の入射光との位相を合わせ発光層からの発光をより増幅させることができる。
なお、上記構成においては、EL層に複数の発光層を有する構造であっても、単一の発光層を有する構造であっても良く、例えば、上述のタンデム型発光素子の構成と組み合わせて、一つの発光素子に電荷発生層を挟んで複数のEL層を設け、それぞれのEL層に単数もしくは複数の発光層を形成する構成に適用してもよい。
マイクロキャビティ構造を有することで、特定波長の正面方向の発光強度を強めることが可能となるため、低消費電力化を図ることができる。なお、赤、黄、緑、青の4色の副画素で映像を表示する発光装置の場合、黄発光による輝度向上効果のうえ、全副画素において各色の波長に合わせたマイクロキャビティ構造を適用できるため良好な特性の発光装置とすることができる。
本実施の形態における発光装置は、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子を用いているため、良好な特性を備えた発光装置を得ることができる。具体的には、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子は耐熱性の良好な発光素子であるため、耐熱性の良好な発光装置とすることができる。
ここまでは、アクティブマトリクス型の発光装置について説明したが、以下からはパッシブマトリクス型の発光装置について説明する。図5には本発明を適用して作製したパッシブマトリクス型の発光装置を示す。なお、図5(A)は、発光装置を示す斜視図、図5(B)は図5(A)をX−Yで切断した断面図である。図5において、基板951上には、電極952と電極956との間にはEL層955が設けられている。電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。また、パッシブマトリクス型の発光装置においても、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子を用いており、耐熱性の良好な発光装置とすることができる。
以上、説明した発光装置は、マトリクス状に配置された多数の微小な発光素子をそれぞれ制御することが可能であるため、画像の表現を行う表示装置として好適に利用できる発光装置である。
また、本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子を照明装置として用いる例について図6を参照しながら説明する。図6(B)は照明装置の上面図、図6(A)は図6(B)におけるe−f断面図である。
本実施の形態における照明装置は、支持体である透光性を有する基板400上に、第1の電極401が形成されている。第1の電極401は実施の形態1における第1の電極101に相当する。第1の電極401側から発光を取り出す場合、第1の電極401は透光性を有する材料により形成する。
第2の電極404に電圧を供給するためのパッド412が基板400上に形成される。
第1の電極401上にはEL層403が形成されている。EL層403は実施の形態1におけるEL層103の構成、又は発光ユニット511、512及び電荷発生層513を合わせた構成などに相当する。なお、これらの構成については当該記載を参照されたい。
EL層403を覆って第2の電極404を形成する。第2の電極404は実施の形態1における第2の電極102に相当する。発光を第1の電極401側から取り出す場合、第2の電極404は反射率の高い材料によって形成される。第2の電極404はパッド412と接続することによって、電圧が供給される。
以上、第1の電極401、EL層403、及び第2の電極404を有する発光素子を本実施の形態で示す照明装置は有している。当該発光素子は発光効率の高い発光素子であるため、本実施の形態における照明装置は消費電力の小さい照明装置とすることができる。
以上の構成を有する発光素子が形成された基板400と、封止基板407とをシール材405、406を用いて固着し、封止することによって照明装置が完成する。シール材405、406はどちらか一方でもかまわない。また、内側のシール材406(図6(B)では図示せず)には乾燥剤を混ぜることもでき、これにより、水分を吸着することができ、信頼性の向上につながる。
また、パッド412と第1の電極401の一部をシール材405、406の外に伸張して設けることによって、外部入力端子とすることができる。また、その上にコンバーターなどを搭載したICチップ420などを設けても良い。
以上、本実施の形態に記載の照明装置は、EL素子に本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子を用いており、信頼性の良好な照明装置とすることができる。また、耐熱性の良好な照明装置とすることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子をその一部に含む電子機器の例について説明する。本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子は耐熱性が良好であり、信頼性の良好な発光素子である。その結果、本実施の形態に記載の電子機器は、信頼性の良好な発光部を有する電子機器とすることが可能である。
上記発光素子を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を以下に示す。
図7(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置は、筐体7101に表示部7103が組み込まれている。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。表示部7103により、映像を表示することが可能であり、表示部7103は、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。
テレビジョン装置の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
図7(B1)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。なお、このコンピュータは、実施の形態1で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して表示部7203に用いることにより作製される。図7(B1)のコンピュータは、図7(B2)のような形態であっても良い。図7(B2)のコンピュータは、キーボード7204、ポインティングデバイス7206の代わりに第2の表示部7210が設けられている。第2の表示部7210はタッチパネル式となっており、第2の表示部7210に表示された入力用の表示を指や専用のペンで操作することによって入力を行うことができる。また、第2の表示部7210は入力用表示だけでなく、その他の画像を表示することも可能である。また表示部7203もタッチパネルであっても良い。二つの画面がヒンジで接続されていることによって、収納や運搬をする際に画面を傷つける、破損するなどのトラブルの発生も防止することができる。
図7(C)は携帯型遊技機であり、筐体7301と筐体7302の2つの筐体で構成されており、連結部7303により、開閉可能に連結されている。筐体7301には、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子をマトリクス状に配列して作製された表示部7304が組み込まれ、筐体7302には表示部7305が組み込まれている。また、図7(C)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部7306、記録媒体挿入部7307、LEDランプ7308、入力手段(操作キー7309、接続端子7310、センサ7311(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン7312)等を備えている。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、少なくとも表示部7304および表示部7305の両方、または一方に本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子をマトリクス状に配列して作製された表示部を用いていればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。図7(C)に示す携帯型遊技機は、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型遊技機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図7(C)に示す携帯型遊技機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
図7(D)は、携帯端末の一例を示している。携帯端末は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯端末は、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子をマトリクス状に配列して作製された表示部7402を有している。
図7(D)に示す携帯端末は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力することができる構成とすることもできる。この場合、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部7402の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
また、携帯端末内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯端末の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1乃至実施の形態3に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
以上の様に本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子を備えた発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子を用いることにより耐熱性が高く、信頼性の良い電子機器を得ることができる。
図8は、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子をバックライトに適用した液晶表示装置の一例である。図8に示した液晶表示装置は、筐体901、液晶層902、バックライトユニット903、筐体904を有し、液晶層902は、ドライバIC905と接続されている。また、バックライトユニット903には、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子が用いられおり、端子906により、電流が供給されている。
本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子を液晶表示装置のバックライトに適用したことにより、消費電力の低減されたバックライトが得られる。また、実施の形態1に記載の発光素子を用いることで、面発光の照明装置が作製でき、また大面積化も可能である。これにより、バックライトの大面積化が可能であり、液晶表示装置の大面積化も可能になる。さらに、実施の形態2に記載の発光素子を適用した発光装置は従来と比較し厚みを小さくできるため、表示装置の薄型化も可能となる。
図9は、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子を、照明装置である電気スタンドに用いた例である。図9に示す電気スタンドは、筐体2001と、光源2002を有し、光源2002として、実施の形態3に記載の照明装置が用いられている。
図10は、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子を、室内の照明装置3001として用いた例である。本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子は耐熱性の高い発光素子であるため、耐熱性の良い照明装置とすることができる。また、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子は大面積化が可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子は、薄型であるため、薄型化した照明装置として用いることが可能となる。
本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子は、自動車のフロントガラスやダッシュボードにも搭載することができる。図11に実施の形態1に記載の発光素子を自動車のフロントガラスやダッシュボードに用いる一態様を示す。表示領域5000乃至表示領域5005は本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子を用いて設けられた表示である。
表示領域5000と表示領域5001は自動車のフロントガラスに設けられた本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子を搭載した表示装置である。本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子は、第1の電極と第2の電極を透光性を有する電極で作製することによって、反対側が透けて見える、いわゆるシースルー状態の表示装置とすることができる。シースルー状態の表示であれば、自動車のフロントガラスに設置したとしても、視界の妨げになることなく設置することができる。なお、駆動のためのトランジスタなどを設ける場合には、有機半導体材料による有機トランジスタや、酸化物半導体を用いたトランジスタなど、透光性を有するトランジスタを用いると良い。
表示領域5002はピラー部分に設けられた本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子を搭載した表示装置である。表示領域5002には、車体に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界を補完することができる。また、同様に、ダッシュボード部分に設けられた表示領域5003は車体によって遮られた視界を、自動車の外側に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、死角を補い、安全性を高めることができる。見えない部分を補完するように映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。
表示領域5004や表示領域5005はナビゲーション情報、速度計や回転計、走行距離、燃料、ギア状態、エアコンの設定など、その他様々な情報を提供することができる。表示は使用者の好みに合わせて適宜その表示項目やレイアウトを変更することができる。なお、これら情報は表示領域5000乃至表示領域5003にも設けることができる。また、表示領域5000乃至表示領域5005は照明装置として用いることも可能である。
本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子は耐熱性の高い発光素子とすることができる。このことから、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子は真夏など、非常に高温の環境におかれる可能性の高い車載用の発光装置又は照明装置として好適に用いることができる。
図12(A)及び図12(B)は2つ折り可能なタブレット型端末の一例である。図12(A)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表示部9631b、表示モード切替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モード切替えスイッチ9036、留め具9033、を有する。なお、当該タブレット端末は、本発明の一態様の有機化合物を含む発光素子を備えた発光装置を表示部9631a、表示部9631bの一方又は両方に用いることにより作製される。
表示部9631aは、一部をタッチパネル領域9632aとすることができ、表示された操作キー9637に触れることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネル領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタンを表示することができる。
また、タッチパネル領域9632aとタッチパネル領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
また、表示モード切替えスイッチ9034は、縦表示または横表示などの表示の向きを切替え、白黒表示やカラー表示の切替えなどを選択できる。省電力モード切替えスイッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
また、図12(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
図12(B)は、閉じた状態であり、本実施の形態におけるタブレット型端末では、筐体9630、太陽電池9633、充放電制御回路9634、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636を備える例を示す。なお、図12(B)では充放電制御回路9634の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成について示している。
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態にすることができる。したがって、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
また、この他にも図12(A)及び図12(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の一面または二面に設けられていると効率的なバッテリー9635の充電を行う構成とすることができるため好適である。
また、図12(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について図12(C)にブロック図を示し説明する。図12(C)には、太陽電池9633、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9638、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9638、スイッチSW1乃至SW3が、図12(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633で充電された電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9638で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、発電手段は特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段によってバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよく、発電手段を有さなくとも良い。
また、上記表示部9631を具備していれば、図12に示した形状のタブレット型端末に限定されない。
<合成例1>
本実施例では、構造式(100)として示した2,2’−(ピリジン−2,6−ジイル)ビス[4−(2−ナフチル)−6−フェニルピリミジン](略称:2,6(N−PPm)2Py)の合成方法について説明する。2,6(N−PPm)2Pyの構造を以下に示す。
<ステップ1:2,6−ピリジンジカルボキサミジン2塩酸塩の合成>
2,6−ピリジンジカルボニトリル5.0g(39mmol)、メタノール(脱水)75mLを300mL三口フラスコに入れた。この混合物にナトリウムメトキシド194mg(3.6mmol)を加え、窒素気流下、室温で24時間撹拌した。所定時間経過後、この混合物に塩化アンモニウム4.1g(77mmol)を加え、窒素気流下、室温で24時間撹拌した。反応終了後、この混合物に酢酸エチルを加えて超音波を照射して塊を粉砕し、吸引ろ過をして目的物の白色固体を8.6g、収率93%で得た。核磁気共鳴法(NMR)により得られた白色固体が2,6−ピリジンジカルボキサミジン2塩酸塩であることを確認した。ステップ1の反応スキームを(a−1)に示す。
<ステップ2;3−(2−ナフチル)−1−フェニル−2−プロペン−1−オンの合成>
2−ナフトアルデヒド10.0g(64mmol)、エタノール300mL、3M水酸化ナトリウム水溶液30mLを500mL三口フラスコに入れた。この混合物にアセトフェノン7.7g(64mmol)を滴下して加え、窒素気流下、室温で72時間撹拌し、反応させた。反応後、反応混合物を吸引ろ過し、固体を得た。この固体をメタノールで洗浄し、黄色固体を12.8g、収率77%で得た。核磁気共鳴法(NMR)により得られた黄色固体が3−(2−ナフチル)−1−フェニル−2−プロペン−1−オンであることを確認した。ステップ2の反応スキームを(b−1)に示す。
<ステップ3;2,2’−(ピリジン−2,6−ジイル)ビス[4−(2−ナフチル)−6−フェニルピリミジン](略称:2,6(N−PPm)2Py)の合成>
2,6−ピリジンジカルボニトリル3.7g(15.5mmol)、3−(2−ナフチル)−1−フェニル−2−プロペン−1−オン8.0g(31mmol)、エタノール140mL、水47mLを1000mL三口フラスコに入れた。この混合物に水酸化ナトリウム3.7g(93mmol)を加え、窒素気流下、23時間加熱還流し、反応させた。反応終了後、この混合物に水とクロロホルムを加えて抽出操作を行った。得られた有機層を水、飽和食塩水で洗浄した。有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。当該混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して固体を得た。固体をシリカカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、まずジクロロメタンを用い、次いで、ジクロロメタン:酢酸エチル=1:1を用い、最後に、酢酸エチルを用いた。得られた目的物のフラクションを濃縮して、固体を得た。得られた固体にエタノールを加えて、吸引ろ過し、固体を得た。得られた固体をトルエン/エタノールの混合溶媒で再結晶し、白色固体を0.56g、収率6%で得た。得られた固体0.56gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製の条件は、圧力7.0×10−3Pa、325℃、23時間とした。昇華精製後、目的物の白色固体を0.40g、回収率71%で得た。ステップ3の合成スキームを下記式(c−1)に示す。
上記ステップ3で得られた白色固体のプロトン(1H)を核磁気共鳴法(NMR)により測定した。以下に得られた値を示す。また、1H−NMRチャートを図13に示す。図13(B)は図13(A)における7ppmから9.5ppmの範囲を拡大して示したチャートである。これより、本合成例において、上述の構造式(100)で表される本発明の一態様の有機化合物である2,6(N−PPm)2Pyが得られたことがわかった。
1H−NMR.δ(CDCl3):7.54(t,2H),7.59−7.66(m,8H),7.96(d,2H),8.06(t,4H),8.21(t,1H),8.36(s,2H),8.51(d,4H),8.59(d,2H),8.97(s,2H),9.01(d,2H)
得られた2,6(N−PPm)2Pyの熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。測定には高真空差動型示差熱天秤(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、TG−DTA2410SA)を用いた。常圧、昇温速度10℃/min、窒素気流下(流速200mL/min)の条件で測定したところ、重量と温度の関係(熱重量測定)から、500℃までに重量減少は見られず、良好な耐熱性を示すことがわかった。
また、得られた2,6(N−PPm)2Pyを液体クロマトグラフ質量分析(Liquid Chromatography Mass Spectrometry,略称:LC/MS分析)によって分析した。LC/MS分析は、LC(液体クロマトグラフィー)分離をウォーターズ社製Acquity UPLC(登録商標)により、MS分析(質量分析)をウォーターズ社製Xevo G2 Tof MSにより行った。LC分離で用いたカラムはAcquity UPLC(登録商標) BEH C8 (2.1×100mm 1.7μm)、カラム温度は40℃とした。移動相は移動相Aをアセトニトリル、移動相Bを0.1%ギ酸水溶液とした。また、サンプルは任意の濃度の2,6(N−PPm)2Pyをクロロホルムに溶解し、アセトニトリルで希釈して調整し、注入量は5.0μLとした。
LC分離には移動相の組成を変化させるグラジエント法を用い、測定開始後0分から1分までが、移動相A:移動相B=60:40、その後組成を変化させ、測定開始後10分における移動相Aと移動相Bとの比が移動相A:移動相B=95:5となるようにした。組成はリニアに変化させた。
MS分析では、エレクトロスプレーイオン化法(ElectroSpray Ionization(略称:ESI))によるイオン化を行った。この時のキャピラリー電圧は3.0kV、サンプルコーン電圧は30Vとし、検出はポジティブモードで行った。以上の条件でイオン化されたm/z=640.25の成分を衝突室(コリジョンセル)内でアルゴンガスと衝突させてプロダクトイオンに解離させた。アルゴンに衝突させる際のエネルギー(コリジョンエネルギー)は70eVとした。なお、測定する質量範囲はm/z=100〜1200とした。図14に、解離させたプロダクトイオンを飛行時間(TOF)型MSで検出した結果を示す。
図14の結果から、2,6(N−PPm)2Pyは、主としてm/z=385付近、154付近、104付近にプロダクトイオンが検出されることがわかった。なお、図14に示す結果は、2,6(N−PPm)2Pyに由来する特徴的な結果を示すものであることから、混合物中に含まれる2,6(N−PPm)2Pyを同定する上での重要なデータであるといえる。
なお、m/z=385付近のプロダクトイオンは、2,6(N−PPm)2Pyからナフタレンが2つ脱離した状態のカチオンであり、2,2’−(ピリジン−2,6−ジイル)ビス(4−フェニルピリミジン)を含んだプロダクトイオンと推察できる。また、m/z=154付近のプロダクトイオンはさらにベンゼンが1つとフェニルピリミジンが1つ脱離した状態のカチオンであり、m/z=104付近のプロダクトイオンはさらにピリミジンもしくはピリジン環が開裂した状態のカチオンと推定される。これらの結果は、2,6(N−PPm)2Pyが、ベンゼン、ナフタレン、フェニルピリミジン、ピリジン環とピリミジン環を含んでいることを示唆するものである。
<合成例2>
本実施例では、構造式(200)として示した2,2’−(ピリジン−2,6−ジイル)ビス{4−[4−(2−ナフチル)フェニル]−6−フェニルピリミジン}(略称:2,6(NP−PPm)2Py)の合成方法について説明する。2,6(NP−PPm)2Pyの構造を以下に示す。
<ステップ1:2,6−ピリジンジカルボキサミジン2塩酸塩の合成>
合成例1のステップ1と同様に合成した。
<ステップ2;4−ブロモカルコンの合成>
4−ブロモベンズアルデヒド13.0g(70.0mmol)、アセトフェノン8.4g(70.0mmol)、エタノール100mL、3M水酸化ナトリウム水溶液30mLを300mL三口フラスコに入れ、窒素気流下、室温で17時間撹拌した。反応後、反応混合物を吸引ろ過して固体を得、この固体をエタノールで洗浄した。黄色固体を17.5g、収率87%で得た。核磁気共鳴法(NMR)により得られた黄色固体が4−ブロモカルコンであることを確認した。ステップ2の合成スキームを下記式(b−2)に示す。
<ステップ3;2,2’−(ピリジン−2,6−ジイル)ビス[4−(4−ブロモフェニル)−6−フェニルピリミジン]の合成>
2,6−ピリジンジカルボキサミジン2塩酸塩5.0g(21.2mmol)、4−ブロモカルコン17.5g(60.9mmol)、エタノール175mL、水58mLを500mL三口フラスコに入れた。この混合物に水酸化ナトリウム5.1g(127mmol)を加え、窒素気流下、11時間加熱還流して反応させた。反応終了後、この反応溶液に水とクロロホルムを加えて、抽出操作を行った。得られた有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。得られた油状物をシリカカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、まず、ジクロロメタンを用い、次いで、ジクロロメタン:酢酸エチル=4:1を用いた。得られた目的物のフラクションを濃縮して、固体を得た。得られた固体に酢酸エチルを加えて超音波を照射して塊を粉砕し、吸引ろ過をして白色固体を4.4g、収率29%で得た。核磁気共鳴法(NMR)により、得られた白色固体が2,2’−(ピリジン−2,6−ジイル)ビス[4−(4−ブロモフェニル)−6−フェニルピリミジン]であることを確認した。ステップ3の合成スキームを下記式(c−2)に示す。
<ステップ4;2,2’−(ピリジン−2,6−ジイル)ビス{4−[4−(2−ナフチル)フェニル]−6−フェニルピリミジン}(略称:2,6(NP−PPm)2Py)の合成>
2,2’−(ピリジン−2,6−ジイル)ビス[4−(4−ブロモフェニル)−6−フェニルピリミジン]2.4g(3.5mmol)、2−ナフタレンボロン酸1.5g(8.8mmol)、リン酸三カリウム1.9g(8.8mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(S−phos)0.086g(0.21mmol)、トルエン50mLを300mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換し、フラスコ内を減圧しながら攪拌し、この混合物を脱気した。脱気後、フラスコ内を窒素置換し、酢酸パラジウム(II)0.024g(0.11mmol)を加え、窒素気流下、100℃で16時間攪拌して反応させた。得られた反応混合物を吸引ろ過して固体を得た。さらに、得られた固体を水とエタノールで洗浄した。得られた固体にトルエンを加えて、加熱することで溶解させ、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855、以下同じ)、アルミナ、セライトの順で積層した濾過補助剤を通してろ過した。得られたろ液を濃縮し、固体を得た。得られた固体をトルエンで再結晶し、白色固体を2.1g、収率75%で得た。得られた固体1.9gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。圧力1.6×10−3Paの条件で、415℃で14.5時間加熱して行った。昇華精製後、目的物の白色固体を1.7g、回収率86%で得た。ステップ4の合成スキームを下記式(d−2)に示す。
上記ステップ4で得られた白色固体のプロトン(1H)を核磁気共鳴法(NMR)により測定した。以下に得られた値を示す。また、1H−NMRチャートを図15に示す。図15(B)は図15(A)の横軸を7.2ppmから9.1ppmの範囲で拡大して示したチャートである。これらの結果より、本合成例において、上述の構造式(200)で表される本発明の一態様の有機化合物である2,6(NP−PPm)2Pyが得られたことがわかった。
1H−NMR.δ(CDCl3):7.47−7.54(m,4H),7.59−7.66(m,6H),7.82−7.88(m,8H),8.00(d,4H),8.16−8.21(m,3H),8.30(s,2H),8.48(d,4H),8.63(d,4H),8.98(d,2H)
得られた2,6(NP−PPm)2Pyの熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。測定には高真空差動型示差熱天秤(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、TG−DTA2410SA)を用いた。常圧、昇温速度10℃/min、窒素気流下(流速200mL/min)の条件で測定したところ、重量と温度の関係(熱重量測定)から、500℃までに重量減少は見られず、良好な耐熱性を示すことがわかった。
LC/MS分析は、LC(液体クロマトグラフィー)分離をウォーターズ社製Acquity UPLC(登録商標)により、MS分析(質量分析)をウォーターズ社製Xevo G2 Tof MSにより行った。LC分離で用いたカラムはAcquity UPLC(登録商標) BEH C8 (2.1×100mm 1.7μm)、カラム温度は40℃とした。移動相は移動相Aをアセトニトリル、移動相Bを0.1%ギ酸水溶液とした。また、サンプルは任意の濃度の2,6(NP−PPm)2Pyをクロロホルムに溶解し、アセトニトリルで希釈して調整し、注入量は5.0μLとした。
LC分離には移動相の組成を変化させるグラジエント法を用い、測定開始後0分から1分までが、移動相A:移動相B=65:35、その後組成を変化させ、測定開始後10分における移動相Aと移動相Bとの比が移動相A:移動相B=95:5となるようにした。組成はリニアに変化させた。
MS分析では、エレクトロスプレーイオン化法(ElectroSpray Ionization(略称:ESI))によるイオン化を行った。この時のキャピラリー電圧は3.0kV、サンプルコーン電圧は30Vとし、検出はポジティブモードで行った。以上の条件でイオン化されたm/z=792.31の成分を衝突室(コリジョンセル)内でアルゴンガスと衝突させてプロダクトイオンに解離させた。アルゴンを衝突させる際のエネルギー(コリジョンエネルギー)は70eVとした。なお、測定する質量範囲はm/z=100〜1200とした。図16に、解離させたプロダクトイオンを飛行時間(TOF)型MSで検出した結果を示す。
図16の結果から、2,6(NP−PPm)2Pyは、主としてm/z=461付近にプロダクトイオンが検出されることがわかった。なお、図16に示す結果は、2,6(NP−PPm)2Pyに由来する特徴的な結果を示すものであることから、混合物中に含まれる2,6(NP−PPm)2Pyを同定する上での重要なデータであるといえる。
なお、m/z=461付近のプロダクトイオンは、2,6(NP−PPm)2Pyからナフタレン、およびフェニルナフタレンが脱離した状態のカチオンであり、2,2’−(ピリジン−2,6−ジイル)(4−フェニルピリミジン)(4,6−ジフェニルピリミジン)を含んだプロダクトイオンと推察できる。この結果は、2,6(NP−PPm)2Pyが、ナフタレン、およびフェニルナフタレンを含んでいることを示唆するものである。
<合成例3>
本実施例では、構造式(300)として示した2,2’−[4−(1−ピレニル)ピリジン−2,6−ジイル]ビス(4,6−ジフェニルピリミジン)(略称:Prn−2,6(P2Pm)2Py)の合成方法について説明する。Prn−2,6(P2Pm)2Pyの構造を以下に示す。
<ステップ1:4−クロロ−2,6−ピリジンジカルボキサミジン2塩酸塩の合成>
4−クロロ−2,6−ピリジンジカルボニトリル15.0g(91.7mmol)、メタノール(脱水)200mLを500mL三口フラスコに入れた。この混合物にナトリウムメトキシド456mg(8.4mmol)を加え、窒素気流下、室温で16時間撹拌した。所定時間経過後、塩化アンモニウム9.8g(183mmol)を加え、窒素気流下、室温で2日間撹拌した。反応後、反応混合物を濃縮し、酢酸エチルを加えた後、超音波を照射して塊を粉砕し、吸引ろ過をして白色固体を18.7g、収率75%で得た。核磁気共鳴法(NMR)により得られた白色固体が4−クロロ−2,6−ピリジンジカルボキサミジン2塩酸塩であることを確認した。ステップ1の合成スキームを下記式(a−3)に示す。
<ステップ2;2,2’−(4−クロロ−ピリジン−2,6−ジイル)ビス(4,6−ジフェニルピリミジン)の合成>
4−クロロ−2,6−ピリジンジカルボキサミジン2塩酸塩10.0g(37.0mmol)、カルコン23.1g(110mmol)、エタノール305mL、水87mLを1000mL三口フラスコに入れた。この混合物に水酸化ナトリウム8.9g(222mmol)を加え、窒素気流下、18時間加熱還流した。反応終了後、この反応溶液に水とクロロホルムを加えて、抽出操作を行った。得られた有機層を水、飽和食塩水で洗浄した後、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。得られた油状物をシリカカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、まず、ジクロロメタンを用い、次いで、ジクロロメタン:酢酸エチル=4:1を用いた。得られた目的物のフラクションを濃縮して、固体を得た。得られた固体にエタノールを加えて超音波を照射して塊を粉砕し、吸引ろ過をして白色固体を1.6g、収率8%で得た。核磁気共鳴法(NMR)により得られた白色固体が2,2’−(4−クロロ−ピリジン−2,6−ジイル)ビス(4,6−ジフェニルピリミジン)であることを確認した。ステップ2の合成スキームを下記式(b−3)に示す。
<ステップ3;2,2’−[4−(1−ピレニル)ピリジン−2,6−ジイル]ビス(4,6−ジフェニルピリミジン)(略称:Prn−2,6(P2Pm)2Py)の合成>
2,2’−(4−クロロ−ピリジン−2,6−ジイル)ビス(4,6−ジフェニルピリミジン)1.2g(2.1mmol)、1−ピレンボロン酸0.617g(2.5mmol)、リン酸三カリウム1.1g(5.2mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(S−phos)0.052g(0.125mmol)、トルエン100mLを反応容器に入れ、反応容器内を窒素置換し、減圧しながら攪拌することで脱気した。脱気後、反応容器内を窒素置換し、酢酸パラジウム(II)0.028g(0.126mmol)を加え、窒素気流下、100℃で14時間攪拌した。反応混合物にトルエンを加え、セライト、アルミナ、セライトの順で積層した濾過補助剤を通してろ過した。さらに、濾過補助剤をトルエン:酢酸エチル=9:1の混合溶媒2Lで洗浄した。得られたろ液を濃縮し、固体を得た。得られた固体をシリカカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、トルエン:酢酸エチル=10:1の混合溶媒を用いた。得られた目的物のフラクションを濃縮して、固体を得た。得られた固体をトルエンで再結晶し、淡黄色固体を0.47g、収率30%で得た。
上記ステップで得られた固体と同様の操作で得られた固体を合わせて0.71gとし、トレインサブリメーション法により昇華精製した。圧力4.7×10−3Paの条件で、350℃で7時間加熱して行った。昇華精製後、目的物の淡黄色固体を0.47g、回収率66%で得た。得られた固体0.45gを再度、昇華精製した。圧力3.5×10−2Paの条件で、365℃で7時間加熱して行った。昇華精製後、目的物の淡黄色固体を0.32g、回収率71%で得た。ステップ3の合成スキームを下記式(c−3)に示す。
上記ステップ3で得られた淡黄色固体のプロトン(1H)を核磁気共鳴法(NMR)により測定した。以下に得られた値を示す。また、1H−NMRチャートを図17に示す。図17(B)は図17(A)の横軸を7.5ppmから8.5ppmの範囲で拡大して示したチャートである。このことから、本合成例において、上述の構造式(300)で表される本発明の一態様の有機化合物であるPrn−2,6(P2Pm)2Pyが得られたことがわかった。
1H−NMR.δ(CDCl3):7.55−7.60(m,12H),8.08(t,1H),8.13(d,1H),8.20(s,2H),8.23−8.27(m,6H),8.39(d,1H),8.45−8.47(m,8H),9.18(s,2H)
得られたPrn−2,6(P2Pm)2Pyの熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。測定には高真空差動型示差熱天秤(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、TG−DTA2410SA)を用いた。常圧、昇温速度10℃/min、窒素気流下(流速200mL/min)の条件で測定したところ、重量と温度の関係(熱重量測定)から、500℃までに重量減少は見られず、良好な耐熱性を示すことがわかった。
LC/MS分析は、LC(液体クロマトグラフィー)分離をウォーターズ社製Acquity UPLC(登録商標)により、MS分析(質量分析)をウォーターズ社製Xevo G2 Tof MSにより行った。LC分離で用いたカラムはAcquity UPLC(登録商標) BEH C8 (2.1×100mm 1.7μm)、カラム温度は40℃とした。移動相は移動相Aをアセトニトリル、移動相Bを0.1%ギ酸水溶液とした。また、サンプルは任意の濃度のPrn−2,6(P2Pm)2Pyをクロロホルムに溶解し、アセトニトリルで希釈して調整し、注入量は5.0μLとした。
LC分離には移動相の組成を変化させるグラジエント法を用い、測定開始後0分から1分までが、移動相A:移動相B=70:30、その後組成を変化させ、測定開始後10分における移動相Aと移動相Bとの比が移動相A:移動相B=95:5となるようにした。組成はリニアに変化させた。
MS分析では、エレクトロスプレーイオン化法(ElectroSpray Ionization(略称:ESI))によるイオン化を行った。この時のキャピラリー電圧は3.0kV、サンプルコーン電圧は30Vとし、検出はポジティブモードで行った。以上の条件でイオン化されたm/z=740.28の成分を衝突室(コリジョンセル)内でアルゴンガスと衝突させてプロダクトイオンに解離させた。アルゴンを衝突させる際のエネルギー(コリジョンエネルギー)は70eVとした。なお、測定する質量範囲はm/z=100〜1200とした。図18に、解離させたプロダクトイオンを飛行時間(TOF)型MSで検出した結果を示す。
図18の結果から、Prn−2,6(P2Pm)2Pyは、主としてm/z=535付近、508付近にプロダクトイオンが検出されることがわかった。なお、図18に示す結果は、Prn−2,6(P2Pm)2Pyに由来する特徴的な結果を示すものであることから、混合物中に含まれるPrn−2,6(P2Pm)2Pyを同定する上での重要なデータであるといえる。
なお、m/z=535付近のプロダクトイオンは、Prn−2,6(P2Pm)2Pyにおける一方のピリミジン環が開裂した状態のカチオンと推定され、m/z=508付近のプロダクトイオンはさらにCNが脱離し、Prn−2,6(P2Pm)2Pyにおけるジフェニルピリミジンが脱離した状態のカチオンと推定される。この結果は、Prn−2,6(P2Pm)2Pyが、ジフェニルピリミジンを含んでいることを示唆するものである。
本実施例では、構造式(100)として示し、合成例1で合成した2,2’−(ピリジン−2,6−ジイル)ビス[4−(2−ナフチル)−6−フェニルピリミジン](略称:2,6(N−PPm)2Py)を用いた発光素子1、構造式(200)として示し、合成例2で合成した2,2’−(ピリジン−2,6−ジイル)ビス{4−[4−(2−ナフチル)フェニル]−6−フェニルピリミジン}(略称:2,6(NP−PPm)2Py)を用いた発光素子2及び2,2’−(ピリジン−2,6−ジイル)ビス(4,6−ジフェニルピリミジン)(略称:2,6(P2Pm)2Py)を用いた比較発光素子1について説明する。発光素子1、発光素子2及び比較発光素子1において用いた有機化合物の構造式を以下に示す。
(発光素子1の作製方法)
まず、ガラス基板上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。ここで、第1の電極101は、発光素子の陽極として機能する電極である。
次に、基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
次に、第1の電極101が形成された面が下方となるように、第1の電極101が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により上記構造式(i)で表される9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層111を形成した。その膜厚は、50nmとし、PCzPAと酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=PCzPA:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
次に、正孔注入層111上に、PCzPAを10nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層112を形成した。
さらに、正孔輸送層112上に、上記構造式(ii)で表される9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)と上記構造式(iii)で表されるN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)とを、重量比1:0.04(=CzPA:1,6mMemFLPAPrn)となるように25nm共蒸着して発光層113を形成した。
その後、発光層113上にCzPAを膜厚10nmとなるように製膜し、さらに上記構造式(100)で表される2,6(N−PPm)2Pyを膜厚15nmとなるように成膜して電子輸送層114を形成した。
電子輸送層114を形成したら、その後、酸化リチウム(Li2O)を0.1nmの膜厚となるように蒸着し、電子注入バッファ層を形成し、上記構造式(v)で表される銅フェナントロリン(略称:CuPc)を2nmの膜厚となるように成膜して電子リレー層を形成した。その後、PCzPAと酸化モリブデンとを20nm共蒸着することでP型層を形成した。その重量比は4:2(=PCzPA:酸化モリブデン)となるように調整した。なお、電子注入バッファ層、電子リレー層及びP型層を総称して電荷発生層と称する場合がある。
最後に、陰極として機能する第2の電極102として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子1を作製した。
(発光素子2の作製方法)
発光素子2は発光素子1の電子輸送層における2,6(N−PPm)2Pyを上記構造式(200)で表される2,6(NP−PPm)2Pyに変えた他は発光素子1と同様に作製した。
(比較発光素子1の作製方法)
比較発光素子1は発光素子1の電子輸送層における2,6(N−PPm)2Pyを上記構造式(v)で表される2,6(P2Pm)2Pyに変えた他は発光素子1と同様に作成した。
発光素子1、発光素子2及び比較発光素子1の素子構造を以下の表にまとめる。
発光素子1、発光素子2及び比較発光素子1を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時にUV処理、80℃にて1時間熱処理)を行った後、これら発光素子の信頼性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
発光素子1、発光素子2及び比較発光素子1の1000cd/m2付近における主要な特性を表2に示す。
表2より、いずれの発光素子も良好な特性の青色発光素子であることがわかった。
また、初期輝度5000cd/m2とし、電流密度一定の条件における駆動時間に対する輝度の変化を表すグラフを図19に示す。図19で示すように、本発明の発光素子である発光素子1及び発光素子2は、比較発光素子1よりも明らかに良好な信頼性を示した。このように、電荷発生層を有する発光素子において、当該電荷発生層の陽極側に接する層に本発明の一態様の有機化合物を有する発光素子は非常に良好な信頼性を示すことがわかった。比較発光素子1で用いている2,6(P2Pm)2Pyと発光素子1、発光素子2で用いている2,6(N−PPm)2Py、2,6(NP−PPm)2Pyとはよく似た構造を有しているが、最も重要な差異は、炭素数10のアリール基であるナフチル基の有無である。このアリール基があることによって、2,6(N−PPm)2Py、2,6(NP−PPm)2Pyを用いた発光素子1及び発光素子2は良好な信頼性を有する発光素子とすることができた。
また、2,6(N−PPm)2Py、2,6(NP−PPm)2Pyは耐熱性も良好であるため、発光素子1及び発光素子2は耐熱性の良好な発光素子である。
また、発光素子1及び発光素子2に設けられた電子注入バッファ層、電子リレー層及びP型層からなる電荷発生層は、タンデム型の発光素子を作製する際に発光ユニット間に設けられる電荷発生層と同様の構造を有している。すなわち、タンデム型の発光素子においても、当該電荷発生層の陽極側に接する層に本発明の一態様の有機化合物を用いることによって、発光素子1及び発光素子2と同様に寿命の良好な発光素子とすることが可能となる。
本実施例では、構造式(200)として示し、合成例2で合成した2,2’−(ピリジン−2,6−ジイル)ビス{4−[4−(2−ナフチル)フェニル]−6−フェニルピリミジン}(略称:2,6(NP−PPm)2Py)を用いた発光素子3について説明する。発光素子3において用いた有機化合物の構造式を以下に示す。
(発光素子3の作製方法)
まず、ガラス基板上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。ここで、第1の電極101は、発光素子の陽極として機能する電極である。
次に、基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
次に、第1の電極101が形成された面が下方となるように、第1の電極101が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により上記構造式(i)で表される9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層111を形成した。その膜厚は、50nmとし、PCzPAと酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=PCzPA:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
次に、正孔注入層111上に、PCzPAを10nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層112を形成した。
さらに、正孔輸送層112上に、上記構造式(ii)で表される9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)と上記構造式(iii)で表されるN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス〔3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)とを、重量比1:0.04(=CzPA:1,6mMemFLPAPrn)となるように25nm共蒸着して発光層113を形成した。
その後、発光層113上に上記構造式(200)で表される2,6(NP−PPm)2Pyを膜厚25nmとなるように成膜して電子輸送層114を形成した。
電子輸送層114を形成したら、その後、酸化リチウム(Li2O)を0.1nmの膜厚となるように蒸着し、電子注入バッファ層を形成し、上記構造式(v)で表される銅フェナントロリン(略称:CuPc)を2nmの膜厚となるように成膜して電子リレー層を形成した。その後、PCzPAと酸化モリブデンとを20nm共蒸着することでP型層を形成した。その重量比は4:2(=PCzPA:酸化モリブデン)となるように調整した。なお、電子注入バッファ層、電子リレー層及びP型層を総称して電荷発生層と称する場合がある。
最後に、陰極として機能する第2の電極102として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子3を作製した。
発光素子3の素子構造を以下の表にまとめる。
発光素子3を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時にUV処理、80℃にて1時間熱処理)を行った後、この発光素子の信頼性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
発光素子3の1000cd/m2付近における主要な特性を表4に示す。
表4より、発光素子3は良好な特性の青色発光素子であることがわかった。
また、初期輝度5000cd/m2とし、電流密度一定の条件における駆動時間に対する輝度の変化を表すグラフを図20に示す。図20で示すように、本発明の発光素子である発光素子3は非常に良好な信頼性を示した。このように、電荷発生層を有する発光素子において、当該電荷発生層の陽極側に接する層に本発明の一態様の有機化合物を有する発光素子は非常に良好な信頼性を示すことがわかった。
また、2,6(NP−PPm)2Pyは耐熱性も良好であるため、発光素子3は耐熱性の良好な発光素子である。
また、発光素子3に設けられた電荷発生層は、タンデム型の発光素子を作製する際に、発光ユニット間に設けられる電荷発生層と同様の構造を有している。すなわち、タンデム型の発光素子において、当該電荷発生層の陽極側に接する層に本発明の一態様の有機化合物を用いることによって、発光素子3と同様に寿命の良好な発光素子とすることが可能となる。