JP6693479B2 - 静電潜像現像用トナー及び2成分現像剤 - Google Patents
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Description
静電潜像現像用トナーが、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子を、複数含む。トナー母粒子は、複合コアと、複合コアの表面を覆うシェル層とを備える。複合コアは、トナーコアと、複数の有機粒子と、複数の多面体状の磁性粒子との複合体である。複数の有機粒子はそれぞれ、離型剤を含有し、トナーコアの表面に付着している。複数の磁性粒子は、トナーコアの表面に付着している磁性粒子と、有機粒子の表面に付着している磁性粒子とを含む。磁性粒子の量は、トナーコア100質量部に対して、0.5質量部以上2.0質量部以下である。トナー粒子の断面撮影像において、磁性粒子全体のうちシェル層から突出する部分の面積割合は、10%以上75%以下である。以下、トナー粒子の断面撮影像において、磁性粒子全体のうちシェル層から突出する部分の面積割合を、「磁性粒子の突出量」と記載する場合がある。なお、磁性粒子の突出量の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。
トナーコアは、結着樹脂を含有する。トナーコアは、必要に応じて、結着樹脂以外に、内添剤(例えば、離型剤、着色剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)を含有していてもよい。シェル層は、実質的に樹脂から構成される。低温で溶融するトナーコアを、耐熱性に優れるシェル層(樹脂膜)で覆うことで、トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図ることが可能になる。シェル層を構成する樹脂中に添加剤が分散していてもよい。シェル層は、複合コアの表面全体を覆っていてもよいし、複合コアの表面を部分的に覆っていてもよい。
<好適な熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂の好適な例としては、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体又はメタクリル酸エステル重合体等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N−ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、又はウレタン樹脂が挙げられる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂等)を使用してもよい。
(結着樹脂)
トナーコアでは、一般に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。結着樹脂として複数種の樹脂を組み合わせて使用することで、結着樹脂の性質(より具体的には、水酸基価、酸価、Tg、又はTm等)を調整することができる。結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。
トナーコアは、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。着色剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは、離型剤を含んでいてもよい。離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。
トナーコアは、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
前述の基本構成を有するトナーでは、トナーコアの表面に、複数の有機粒子が付着している。有機粒子は、離型剤と、樹脂とを含有している。
前述の基本構成を有するトナーでは、磁性粉(複数の磁性粒子)が複合コアを構成する。磁性粒子が、トナーコアの表面と有機粒子の表面との両方に付着している。磁性粒子は、多面体状(より具体的には、六面体状、八面体状、又は十二面体状等)の外形を有する。磁性粒子の円形度(1次粒子の個数平均値)は、0.75以上0.96以下であることが好ましい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、又はニッケル等)もしくはその合金、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、又は二酸化クロム等)、又は強磁性化処理が施された材料(より具体的には、熱処理により強磁性が付与された炭素材料等)を好適に使用できる。1種類の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
前述の基本構成を有するトナーでは、シェル層が、複合コアの表面を覆っている。シェル層は、樹脂を含有する。
トナー母粒子の表面に外添剤(詳しくは、複数の外添剤粒子を含む粉体)を付着させてもよい。外添剤は、内添剤とは異なり、トナー母粒子の内部には存在せず、トナー母粒子の表面(トナー粒子の表層部)のみに選択的に存在する。例えば、トナー母粒子(粉体)と外添剤(粉体)とを一緒に攪拌することで、トナー母粒子の表面に外添剤粒子を付着させることができる。トナー母粒子と外添剤粒子とは、互いに化学反応せず、化学的ではなく物理的に結合する。トナー母粒子と外添剤粒子との結合の強さは、攪拌条件(より具体的には、攪拌時間、及び攪拌の回転速度等)、外添剤粒子の粒子径、外添剤粒子の形状、及び外添剤粒子の表面状態などによって調整できる。
前述の基本構成を有するトナーを容易かつ好適に製造するためには、例えば、次に示すトナーコア準備工程、コア外添工程、及びシェル層形成工程を含むトナーの製造方法が好ましい。
トナーコアの作製方法の好適な例としては、粉砕法又は凝集法が挙げられる。これらの方法は、結着樹脂中に内添剤を良好に分散させ易い。
トナーコアの表面に有機粒子を固定化して、第1複合コア(トナーコアと有機粒子との複合体)を得た後、得られた第1複合コアの表面に、複数の多面体状の磁性粒子を固定化する。磁性粒子は、トナーコアの表面と有機粒子の表面との両方に付着する。これにより、第2複合コア(トナーコアと有機粒子と磁性粒子との複合体)が得られる。第2複合コアが、前述の基本構成における複合コアに相当する。こうして得られた複合コアでは、複数の有機粒子と、複数の多面体状の磁性粒子とが、トナーコア側から、複数の有機粒子、複数の磁性粒子の順に積み重なる態様で、トナー母粒子の表層部に存在する。全ての有機粒子が磁性粒子よりもトナーコア側に位置する。すなわち、有機粒子よりもトナーコア側に位置する磁性粒子は存在しない。トナー母粒子は、トナーコア側から有機粒子、磁性粒子の順で積み重なった有機粒子及び磁性粒子の積重体を有するが、トナーコア側から磁性粒子、有機粒子の順で積み重なった磁性粒子及び有機粒子の積重体を有しない。
次に、得られた第2複合コアの表面にシェル層を形成する。以下、シェル層の形成方法の好適な例について説明する。なお、シェル層形成時におけるトナーコア成分(特に、結着樹脂及び離型剤)の溶解又は溶出を抑制するためには、水性媒体中でシェル層を形成することが好ましい。水性媒体は、水を主成分とする媒体(より具体的には、純水、又は水と極性媒体との混合液等)である。水性媒体は溶媒として機能してもよい。水性媒体中に溶質が溶けていてもよい。水性媒体は分散媒として機能してもよい。水性媒体中に分散質が分散していてもよい。水性媒体中の極性媒体としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール又はエタノール等)を使用できる。水性媒体の沸点は約100℃である。
測定装置として、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いた。測定装置を用いて試料の吸熱曲線を測定することにより、試料のTg(ガラス転移点)を求めた。具体的には、試料(例えば、樹脂)約10mgをアルミ皿(アルミニウム製の容器)に入れて、そのアルミ皿を測定装置の測定部にセットした。また、リファレンスとして空のアルミ皿を使用した。吸熱曲線の測定では、測定部の温度を、測定開始温度25℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温させた(RUN1)。その後、測定部の温度を200℃から25℃まで10℃/分の速度で降温させた。続けて、測定部の温度を再び25℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温させた(RUN2)。RUN2により、試料の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)を得た。得られた吸熱曲線から、試料のTgを読み取った。吸熱曲線中、比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度(オンセット温度)が試料のTg(ガラス転移点)に相当する。
測定装置として、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いた。測定装置を用いて試料の吸熱曲線を測定することにより、試料のMp(融点)を求めた。具体的には、試料(例えば、離型剤又は樹脂)約15mgをアルミ皿に入れて、そのアルミ皿を測定装置の測定部にセットした。また、リファレンスとして空のアルミ皿を使用した。吸熱曲線の測定では、測定部の温度を、測定開始温度30℃から170℃まで10℃/分の速度で昇温させた。昇温中、試料の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)を測定した。得られた吸熱曲線から、試料のMpを読み取った。吸熱曲線中、融解熱による最大ピーク温度が試料のMp(融点)に相当する。
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(例えば、樹脂)をセットし、ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて、試料のS字カーブ(縦軸:ストローク、横軸:温度)を求めた。続けて、得られたS字カーブから試料のTmを読み取った。S字カーブにおいて、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度が、試料のTm(軟化点)に相当する。
試料(詳しくは、そのTHF可溶分)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。測定装置としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)を用いた。カラムとしては、有機溶媒SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)用カラム(東ソー株式会社製「TSKgel GMHXL」、充填剤:スチレン系ポリマー、カラムサイズ:内径7.8mm×長さ30cm、充填剤粒子径:9μm)を直列に2本組み合わせたポリスチレンゲルカラムを使用した。検出器としては、RI(屈折率)検出器を用いた。
(非結晶性ポリエステル樹脂の合成)
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置(攪拌羽根)を備えた容量5Lの反応容器を油浴にセットし、その容器内に、BPA−PO(ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物)1575gと、BPA−EO(ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物)163gと、フマル酸377gと、触媒(酸化ジブチル錫)4gとを入れた。続けて、容器内を窒素雰囲気にした後、容器内容物を攪拌しながら、油浴を用いて容器内の温度を220℃に昇温させた。そして、窒素雰囲気かつ温度220℃の条件で、副生水を留去しながら、容器内容物を8時間反応(詳しくは、重合反応)させた。
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置(攪拌羽根)を備えた容量5Lの反応容器を油浴にセットし、その容器内に、1,6−ヘキサンジオール132gと、1,10−デカンジカルボン酸230gと、1,4−ベンゼンジオール0.3gと、触媒(酸化ジブチル錫)1gとを入れた。続けて、容器内を窒素雰囲気にした後、容器内容物を攪拌しながら、油浴を用いて容器内の温度を200℃に昇温させた。そして、窒素雰囲気かつ温度200℃の条件で、副生水を留去しながら、容器内容物を5時間反応(詳しくは、重合反応)させた。
前述の手順で得た非結晶性ポリエステル樹脂86質量部と、前述の手順で得た結晶性ポリエステル樹脂15質量部と、着色剤(カーボンブラック:三菱化学株式会社製「MA−100」)5質量部と、離型剤(合成エステルワックス:日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−3」)5質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて混合した。
日本画像学会から提供される標準キャリアN−01(負帯電極性トナー用標準キャリア)100質量部と、試料(トナーコア)7質量部とを、混合機(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製「ターブラー(登録商標)ミキサーT2F」)を用いて、回転速度96rpmの条件で30分間混合した。続けて、得られた混合物における試料の摩擦帯電量を、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS−2A」)を用いて測定した。詳しくは、Q/mメーターの測定セルに混合物(標準キャリア及び試料)0.10gを投入し、投入された混合物のうち試料(トナーコア)のみを篩(金網)を介して10秒間吸引した。そして、式「吸引された試料の総電気量(単位:μC)/吸引された試料の質量(単位:g)」に基づいて、試料(トナーコア)の帯電量(単位:μC/g)を算出した。
試料(トナーコア)0.2gと、イオン交換水80gと、濃度1質量%のノニオン界面活性剤(日本触媒株式会社製「K−85」、成分:ポリビニルピロリドン)20gとを、マグネットスターラーを用いて混合した。続けて、液中に試料を均一に分散させて、分散液を得た。続けて、得られた分散液に希塩酸を加えて、分散液のpHを4に調整し、pH4の分散液を得た。そして、ゼータ電位・粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「Delsa Nano HC」)を用いて、電気泳動法(より詳しくは、レーザードップラー方式の電気泳動法)により、温度25℃かつpH4の分散液中の試料(トナーコア)のゼータ電位を測定した。
(有機粒子Aの作製:ワックス分散液の調製)
温度80℃のイオン交換水80質量部と、合成エステルワックス(日油株式会社製「ニッサンエレクトールWEP−3」)20質量部と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムと、ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテルとを、高圧剪断乳化装置(エム・テクニック株式会社製「クレアミックス(登録商標)CLM−2.2S」)に投入した。続けて、その高圧剪断乳化装置を用いて、投入された材料に乳化処理を行った。その結果、エステルワックス粒子を含むワックス分散液が得られた。得られたワックス分散液に含まれるエステルワックス粒子の個数平均1次粒子径は、420nmであった。個数平均1次粒子径の測定には、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−950V2」)を用いた。
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置(攪拌羽根:3枚の後退翼)を備えた反応容器(容量2L、内径120mm)を油浴にセットし、その容器内に、上記のようにして得たワックス分散液35質量部と、イオン交換水328質量部とを添加した。続けて、容器内に窒素を流しながら、油浴を用いて容器内容物の温度を80℃まで昇温させた。その後、濃度2質量%過酸化水素水溶液6.4質量部と濃度2質量%アスコルビン酸水溶液6.4質量部とを容器内に加えた。
濃度2.0mol/LでFe2+を含む硫酸第一鉄塩水溶液50Lと、濃度5.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液40.0Lと、濃度0.20mol/Lのリン酸ナトリウム水溶液10Lとを反応容器に加えて混合した。反応容器内の混合物を85℃に加熱して、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩懸濁液を調製した。
水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩懸濁液を調製した後、懸濁液の温度を85℃に維持しつつ、調製された懸濁液のpHを10から6に変更した以外は、磁性粉M−1の調製方法と同様にして、磁性粉M−2を得た。
温度計(熱電対)、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置(攪拌羽根:3枚の後退翼)を備えた反応容器(容量2L、内径120mm)を油浴にセットし、その容器内に、イオン交換水328質量部を添加した。続けて、容器内に窒素を流しながら、油浴を用いて容器内容物の温度を80℃まで昇温させた。その後、濃度2質量%過酸化水素水溶液6.4質量部と濃度2質量%アスコルビン酸水溶液6.4質量部とを容器内に加えた。
トナーTA−1〜TA−9及びTB−1〜TB−5の各々の製造では、前述の手順で作製したトナーコアに対して下記コア外添を行い、得られた複合コアの表面にシェル層を形成した。トナーTB−6の製造では、下記コア外添を行わず、前述の手順で作製したトナーコアの表面にシェル層を形成した。
前述の手順で作製したトナーコア100質量部と、有機粒子(前述の手順で作製した有機粒子A)5質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」、上羽根:高循環用のY1羽根、下羽根:高循環・高負荷用のS0羽根)を用いて、周波数57Hz、ジャケット温度20℃の条件で5分間混合した。その後、上記FMミキサーに、表1に示す種類及び量の磁性粉(各トナーに定められた磁性粉M−1又はM−2)を加えて、周波数57Hz、ジャケット温度20℃の条件でさらに表1中の「混合時間」に示す時間だけ混合した。例えば、トナーTA−1の製造では、FMミキサーを用いて、トナーコア100質量部と有機粒子5質量部とを5分間混合して複合化した後、そのFMミキサーに1.0質量部の磁性粉M−1を加えて、さらに2分間混合した。
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコを準備し、フラスコをウォーターバスにセットした。続けて、フラスコ内にイオン交換水300mLを入れて、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内容物のpHを4に調整した。
上記のようにして得られたトナー母粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いてろ過(固液分離)した。その結果、ウェットケーキ状のトナー母粒子が得られた。その後、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に再分散させた。さらに、分散とろ過とを5回繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。なお、トナーTA−1の製造において、洗浄後のろ液の量は、後述する乾燥工程を経て得たトナー母粒子(乾燥したトナー母粒子)100質量部に対して、97質量部であった。また、トナーTA−1の製造において、洗浄後のろ液のTOC(全有機炭素)濃度は8mg/L以下であった。TOC濃度の測定には、オンラインTOC計(株式会社島津製作所製「TOC−4200」、酸化方式:680℃燃焼触媒酸化方式、検出方式:NDIR方式)を用いた。
続けて、洗浄されたトナー母粒子(粉体)を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させて、トナー母粒子のスラリーを得た。続けて、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。その結果、乾燥したトナー母粒子(粉体)が得られた。
続けて、容量10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて、回転速度3000rpm、ジャケット温度20℃の条件で、上記のようにして得たトナー母粒子100質量部と、乾式シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」)1.0質量部とを、5分間混合した。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤が付着した。その後、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別を行った。その結果、多数のトナー粒子を含むトナー(トナーTA−1〜TA−9及びTB−1〜TB−6)が得られた。
トナー(測定対象:トナーTA−1〜TA−9及びTB−1〜TB−6のいずれか)を常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散させ、温度40℃の雰囲気で2日間硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物を染色した後、ダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製「EM UC6」)を用いて切り出し、薄片試料を得た。続けて、得られた薄片試料の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製「JSM−6700F」)を用いて撮影した。
上記のようにして得たトナー粒子の断面撮影像を、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析することで、シェル層の厚さを計測した。具体的には、1個のトナー粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線上の、シェル層と交差する4箇所の長さを測定した。続けて、測定された4箇所の長さの算術平均値を、その1個のトナー粒子のシェル層の厚さとした。測定対象(トナー)に含まれる20個のトナー粒子についてそれぞれシェル層の厚さを測定し、20個の個数平均値を測定対象(トナー)の測定値(シェル層の厚さ)とした。
上記のようにして得たトナー粒子の断面撮影像を、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析することで、磁性粒子の突出量を計測した。少なくとも一部がシェル層で覆われている磁性粒子を測定対象とした。シェル層で全く覆われていない磁性粒子、及びトナー母粒子から脱離した磁性粒子は、それぞれ測定対象には含めなかった。具体的には、磁性粒子の突出部の面積を磁性粒子全体の面積で除算することで、磁性粒子の突出量を得た。百分率(質量%)で表記する場合には、算出された値(=磁性粒子の突出部の面積/磁性粒子全体の面積)を100倍すればよい。1つのトナー粒子について視野を変えながら20個の磁性粒子の各々について磁性粒子の突出量を測定した。そして、測定された20個の磁性粒子の突出量の算術平均値を、その1個のトナー粒子の測定値(磁性粒子の突出量)とした。測定対象(トナー)に含まれる10個のトナー粒子についてそれぞれ磁性粒子の突出量を測定した。10個のトナー粒子の個数平均値を、測定対象(トナー)の評価値(磁性粒子の突出量)とした。
各試料(トナーTA−1〜TA−9及びTB−1〜TB−6)の評価方法は、以下のとおりである。
トナー(評価対象:トナーTA−1〜TA−9及びTB−1〜TB−6のいずれか)2gを容量20mLのポリエチレン製容器に入れて、その容器を、55℃に設定された恒温器内に3時間静置した。その後、恒温器から取り出したトナーを室温(約25℃)まで冷却して、評価用トナーを得た。
凝集度=100×篩別後のトナーの質量/篩別前のトナーの質量
現像剤用キャリア(FS−C5250DN用キャリア)100質量部と、トナー(評価対象:トナーTA−1〜TA−9及びTB−1〜TB−6のいずれか)5質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、2成分現像剤を調製した。
現像剤用キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「FS−C5300DN」用キャリア)100質量部と、トナー(評価対象:トナーTA−1〜TA−9及びTB−1〜TB−6のいずれか)10質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、評価用現像剤を得た。続けて、所定の環境(H/H環境、N/N環境、又はL/L環境)下に評価用現像剤を24時間静置した。H/H環境は、高温高湿環境(温度32.5℃、湿度80%RH)であった。N/N環境は、常温常湿環境(温度24℃、湿度50%RH)であった。L/L環境は、低温低湿環境(温度10℃、湿度10%RH)であった。その後、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS−2A」)を用いて、次に示す条件で評価用現像剤中のトナーの帯電量を測定した。
Q/mメーターの測定セルに現像剤(キャリア及びトナー)0.10gを投入し、投入された現像剤のうちトナーのみを篩(金網)を介して10秒間吸引した。そして、式「吸引されたトナーの総電気量(単位:μC)/吸引されたトナーの質量(単位:g)」に基づいて、現像剤中のトナーの帯電量(単位:μC/g)を算出した。
初期の評価と同じ評価機を用いて、所定の環境(H/H環境、N/N環境、又はL/L環境)下において、印字率5%で10000枚連続印刷する耐刷試験を行った。H/H環境、N/N環境、及びL/L環境はそれぞれ、前述の環境であった。耐刷試験後、評価機の現像装置から取り出した現像剤中のトナーの帯電量を測定した。また、耐刷試験後、同じ環境(上記所定の環境)下で、評価機を用いて、ソリッド部と空白部とを含むサンプル画像を記録媒体(評価用紙)に形成し、形成された画像について、画像濃度(ID)を測定した。帯電量及び画像濃度(ID)の各々の測定方法及び評価基準は、初期の評価と同じである。
トナーTA−1〜TA−9及びTB−1〜TB−6の各々の評価結果を、表3及び表4に示す。表3は、定着性(最低定着温度及び定着幅)、耐熱保存性(凝集度)、及びダッシュマークの有無(○:無し、×:有り)を示している。表4は、帯電量(環境別に初期及び耐刷後の各々のトナー帯電量)、及びID(環境別に初期及び耐刷後の各々の画像濃度)を示している。なお、表3及び表4において、「H/H」は温度32.5℃かつ湿度80%RHを、「N/N」は温度24℃かつ湿度50%RHを、「L/L」は温度10℃かつ湿度10%RHを、それぞれ意味する。表4中、「→」の左側は初期の測定値を、「→」の右側は耐刷試験後の測定値を、それぞれ示している。
10a トナー母粒子
11 トナーコア
12 シェル層
13 有機粒子
15 外添剤粒子
P 凸部
Claims (8)
- トナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子を、複数含む、静電潜像現像用トナーであって、
前記トナー母粒子は、複合コアと、前記複合コアの表面を覆うシェル層とを備え、
前記複合コアは、トナーコアと、複数の有機粒子と、複数の多面体状の磁性粒子との複合体であり、
前記複数の有機粒子はそれぞれ、離型剤を含有し、前記トナーコアの表面に付着しており、
前記複数の磁性粒子は、前記トナーコアの表面に付着している磁性粒子と、前記有機粒子の表面に付着している磁性粒子とを含み、
前記磁性粒子の量は、前記トナーコア100質量部に対して、0.5質量部以上2.0質量部以下であり、
前記トナー粒子の断面撮影像において、前記磁性粒子全体のうち前記シェル層から突出する部分の面積割合は、10%以上75%以下である、静電潜像現像用トナー。 - 前記シェル層の厚さは、20nm以上70nm以下であり、
前記複数の有機粒子の個数平均1次粒子径は、80nm以上150nm以下であり、
前記複数の磁性粒子の個数平均1次粒子径は、100nm以上120nm以下である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。 - 前記シェル層は、ガラス転移点50℃以上90℃以下の第1樹脂を含有し、
前記有機粒子が、ガラス転移点90℃以上110℃以下の第2樹脂を含有する、請求項2に記載の静電潜像現像用トナー。 - 前記有機粒子は、前記離型剤として、エステルワックス及び炭化水素ワックスからなる群より選択される1種以上の離型剤を含有し、
前記有機粒子は、前記第2樹脂として、1種以上のスチレン系モノマーと、1種以上の(メタ)アクリル酸エステルと、アクリル酸とを含む単量体の重合物を含有し、
前記シェル層は、前記第1樹脂として、1種以上のスチレン系モノマーと、1種以上の(メタ)アクリル酸エステルと、アクリル酸とを含む単量体の重合物を含有する、請求項3に記載の静電潜像現像用トナー。 - 前記トナーコアは、非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記トナーコアは、粉砕コアである、請求項5に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記シェル層は、下地となる前記トナーコアの表面と前記有機粒子の表面とに沿った形態を有する樹脂膜であり、
前記トナー母粒子の表面は、前記トナーコアの表面における前記有機粒子の有無に応じた凹凸を有し、
前記有機粒子の量は、前記トナーコア100質量部に対して、0.5質量部以上30質量部以下であり、
前記有機粒子に含有される前記離型剤の量は、前記有機粒子全部の質量に対して1質量%以上30質量%以下であり、
前記トナーコアの内部には、磁性粉が存在せず、
前記シェル層は、膜の内部に離型剤を含まない、請求項1〜6のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。 - 請求項1〜7のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナーと、摩擦により前記トナーを正に帯電させ得るキャリアとを含む、2成分現像剤。
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