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JP6684694B2 - 蛍光性エチレン−ビニルアルコール共重合体を有する多層構造体 - Google Patents

蛍光性エチレン−ビニルアルコール共重合体を有する多層構造体 Download PDF

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Description

本発明は、蛍光性エチレン−ビニルアルコール共重合体を有する多層構造体に関する。より詳しくは、エチレン−ビニルアルコール共重合体含有層の欠損を簡便かつ低コストで検知することができ、回収性に優れる蛍光性エチレン−ビニルアルコール共重合体を有する多層構造体に関する。
従来、蛍光性物質を含む樹脂組成物は様々な用途に用いられていた。例えば、紫外線照射により励起して発光する励起発光性物質を有する容器本体を使用した、異物及び形状異状の検知方法が開発されていた(特許文献1)。
また、太陽電池材料の封止材料、建築用ガラス板等の用途として用いられる樹脂組成物として、紫外線を吸収し可視光に変換可能な蛍光性物質を含む樹脂組成物が開発されていた(特許文献2)。
さらに、美麗感を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物として、蛍光を発する蛍光増白剤を含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物が開発されていた(特許文献3)。
特開2005−265812号公報 特開2015−221879号公報 特開2009−242644号公報
しかしながら、特許文献1では、紫外線照射による蛍光での容器密閉部の異状を検知できることについては言及されているものの、食品の賞味期限延長といった内容物保護に有効なエチレン−ビニルアルコール共重合体層の欠損を検知可能かどうかについては言及されていない。
特許文献2では、蛍光性物質と添加剤の種類と量については言及されているものの、蛍光性物質を含む熱可塑性樹脂組成物としてエチレン−ビニルアルコール共重合体は例示されておらず、またその積層体についての言及はされていない。さらに、欠損の検知を目的とした用途で使用することについては言及されていない。また、蛍光性物質含有エチレン−ビニルアルコール共重合体層を有する積層体についての言及もされていない。
特許文献3では、蛍光増白剤の添加量について言及されてはいるものの、その添加量の範囲で欠損検知に十分な蛍光性を有するかどうか、及び欠損検知に適する脂肪酸塩については言及されていない。
また、シート成形等の用途においては、成形物を得た後のシートの不要部(以下、「スクラップ」という。)を回収して再利用するといったことが行われる。しかしながら、スクラップの再利用時に樹脂組成物が劣化し、成形物にフィッシュアイのような欠点が生じるという問題がある。蛍光性物質含有エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリオレフィン等の他の樹脂との積層体からなるスクラップの回収性(フィッシュアイ)への影響については上記特許文献1〜3の全てにおいて言及されていない。
従って、バリア包装材料で最も重要なバリア層(エチレン−ビニルアルコール共重合体層)の欠損を検知できるとともに、回収に適した多層構造体について十分な知見は無かった。
本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体含有層の欠損を簡便にかつ低コストで検知することができ、回収性に優れる蛍光性エチレン−ビニルアルコール共重合体を有する多層構造体を提供することを目的とする。また、前記多層構造体における欠損検知方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、樹脂組成物(A)を含む層(X)と、熱可塑性樹脂(B)を含む層(Y)とを、それぞれ少なくとも1層以上有する多層構造体において、前記樹脂組成物(A)がエチレン−ビニルアルコール共重合体(C)(以下、「EVOH(C)」ともいう。)、蛍光性物質(D)、及び脂肪酸アルミニウム塩(E)を含み、前記樹脂組成物(A)中の前記蛍光性物質(D)の含有量と所定の値とし、前記蛍光性物質(D)と脂肪酸アルミニウム塩(E)のモル比(E/D)を特定することによって、前記課題を解決できることを見い出し、この知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の発明に関する。
[1]樹脂組成物(A)からなる層(X)と、熱可塑性樹脂(B)を含む層(Y)とを、それぞれ少なくとも1層以上有する多層構造体であって、前記樹脂組成物(A)がエチレン−ビニルアルコール共重合体(C)、蛍光性物質(D)、及び脂肪酸アルミニウム塩(E)を含み、前記樹脂組成物(A)中の前記蛍光性物質(D)の含有量が1〜20μmol/gであり、前記蛍光性物質(D)と脂肪酸アルミニウム塩(E)のモル比(E/D)が0.025〜0.50である多層構造体;
[2]前記蛍光性物質(D)が、クマリン又はクマリン誘導体である、[1]の多層構造体;
[3]前記脂肪酸アルミニウム塩(E)が、炭素数12〜24の高級脂肪酸アルミニウム塩(E1)である、[1]又は[2]の多層構造体;
[4]炭素数12〜24の高級脂肪酸アルミニウム塩(E1)が、ステアリン酸アルミニウムである、[1]〜[3]のいずれかの多層構造体;
[5]前記熱可塑性樹脂(B)が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、及びポリスチレンからなる群から選ばれる1種以上である、[1]〜[4]のいずれかの多層構造体;
[6]層(X)の少なくとも一方の面に層(Y)が接着層を介して積層された構造を有する、[1]〜[5]のいずれかの多層構造体;
[7][1]〜[6]のいずれかの多層構造体を含む、包装材;
[8][1]〜[6]のいずれかの多層構造体を含む、パイプ;
[9][1]〜[6]のいずれかの多層構造体を含む、燃料タンク;
[10][1]〜[6]のいずれかの多層構造体に紫外線を照射する、欠損検知方法。
本発明により、エチレン−ビニルアルコール共重合体含有層の欠損を簡便にかつ低コストで検知することができ、回収性に優れる蛍光性エチレン−ビニルアルコール共重合体を有する多層構造体を提供することができる。すなわち、本発明の多層構造体を用いることで、紫外線を照射するだけでエチレン−ビニルアルコール共重合体層の欠損が目視で識別可能となる。また、本発明の多層構造体は回収性に優れ、蛍光性物質含有エチレン−ビニルアルコール共重合体層と熱可塑性樹脂層の積層体(多層構造体)のスクラップ回収を容易にすることができる。
本発明の多層構造体は、樹脂組成物(A)からなる層(X)と、熱可塑性樹脂(B)を含む層(Y)とを、それぞれ少なくとも1層以上有する多層構造体であって、前記樹脂組成物(A)がエチレン−ビニルアルコール共重合体(C)(以下、「EVOH(C)」と略記する場合がある。)、蛍光性物質(D)、及び脂肪酸アルミニウム塩(E)を含み、前記樹脂組成物(A)中の前記蛍光性物質(D)の含有量が1〜20μmol/gであり、前記蛍光性物質(D)と脂肪酸アルミニウム塩(E)のモル比(E/D)が0.025〜0.50である。
なお、本明細書において、数値範囲(各成分の含有量、各成分から算出される値及び各物性等)の上限値及び下限値は適宜組み合わせ可能である。また、本明細書において、「欠損」とは、層が断裂した状態、あるいは層に穴が開いた状態、切れ目が入った状態等を意味する。
[層(X)]
層(X)は、樹脂組成物(A)からなる。樹脂組成物(A)は、EVOH(C)、蛍光性物質(D)、及び脂肪酸アルミニウム塩(E)を含む。樹脂組成物(A)は、実質的に、EVOH(C)、蛍光性物質(D)、及び脂肪酸アルミニウム塩(E)のみから構成されていてもよく、後述する他の成分を含んでいてもよい。なお、本明細書において、「実質的にある成分のみを含む」とは、当該成分以外の成分の含有量が10質量%未満であり、好ましくは5質量%未満であり、より好ましくは1質量%未満であり、さらに好ましくは0.5質量%未満であることを意味する。
[EVOH(C)]
EVOH(C)は、エチレン単位とビニルアルコール単位とを有する共重合体である。EVOH(C)は、例えば、エチレンとビニルエステルとを含む共重合体を、アルカリ触媒等を用いてケン化して得られる。ビニルエステルとしては、酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル及びバーサティック酸ビニル等)も使用できる。
EVOH(C)のビニルエステル成分のケン化度は、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、96モル%以上であることがさらに好ましく、98モル%以上であることが特に好ましく、99モル%以上であることが最も好ましい。ケン化度を上記下限以上とすることで、樹脂組成物(A)のガスバリア性を高めること等ができる。また、ケン化度の上限は99.99モル%であってもよい。ケン化度は1H−NMR測定等公知の方法により求めることができる。
EVOH(C)のエチレン単位含有量は、15モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、23モル%がさらに好ましい。また、エチレン単位含有量は、60モル%以下であることが好ましく、55モル%以下であることがより好ましく、50モル%以下であることがさらに好ましい。エチレン単位含有量が15モル%未満であると、樹脂組成物(A)の溶融成形性が低下するおそれがある。エチレン単位含有量が60モル%を超えると、樹脂組成物(A)のガスバリア性が低下するおそれがある。エチレン単位含有量は1H−NMR測定等公知の方法により求めることができる。
また、EVOH(C)は、本発明の目的が阻害されない範囲で、エチレンとビニルエステル及びそのケン化物以外の他の単量体由来の単位を有していてもよい。EVOH(C)が前記他の単量体単位を有する場合、EVOH(C)の全構造単位に対する前記他の単量体単位の含有量は、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましく、5モル%以下であることが特に好ましい。また、EVOH(C)が上記他の単量体由来の単位を有する場合、その下限値は0.05モル%であってもよいし0.10モル%であってもよい。前記他の単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和酸又はその無水物、塩、又はモノ若しくはジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等ビニルシラン化合物;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
樹脂組成物(A)中のEVOH(C)の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、98質量%以上であることが最も好ましい。また、樹脂組成物(A)中のEVOH(C)の含有量は、99.99質量%以下であることが好ましい。樹脂組成物(A)中のEVOH(C)の含有量が前記範囲内であることによって、本発明の多層構造体が高いガスバリア性を発揮することができる。
EVOH(C)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[蛍光性物質(D)]
蛍光性物質(D)としては、公知のものが特に制限なく使用できる。例えば、ピラゾリン、スチルベン、トリアジン、チアゾール、ベンゾオキサゾール、キサントン、トリアゾール、オキサゾール、チオフェン、クマリン及びそれらの誘導体が挙げられる。中でも、取り扱い性に優れるとともに、後述の脂肪酸アルミニウム塩(E)との相性がよく、紫外線から可視光への変換効率を一層向上させることが可能である観点から、クマリン又はクマリン誘導体が好ましい。
クマリン誘導体としては、下記一般式(I)
Figure 0006684694
(式中、R1は水素原子、C1〜C4アシル基、カルボキシ基、C1〜C20アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基の各基又は、N、S、及びOからなる群から選ばれるヘテロ原子を1つ又は2つ含む芳香族残基を表し、R2は水素原子、ヒドロキシ基、メチル基、クロロ基、ブロモ基、トリフルオロメチル基の各基を表し、R3、R4、R5、R6はそれぞれ独立して、水素原子、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、C1〜C4アルキル基、C1〜C4アルコキシ基、アミノ基、C1〜C4アルキル基で1つ又は2つ置換されていてもよい1級又は2級アミノ基、C1〜C4アシル基の各基を表す。)で表されるクマリン系化合物が例示される。具体的には、ヒドロキシクマリン、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等が挙げられる。このうち、ヒドロキシクマリン(上記一般式(I)においてR1、R2、R3、R4、R5、R6の少なくとも1つがヒドロキシ基であるクマリン系化合物)、特に4−ヒドロキシクマリンが好ましい。
樹脂組成物(A)中の蛍光性物質(D)の含有量は、1μmol/g以上であり、1.5μmol/g以上であることが好ましく、2μmol/g以上であることがより好ましい。また、樹脂組成物(A)中の蛍光性物質(D)の含有量は、20μmol/g以下であり、18μmol/g以下であることが好ましく、15μmol/g以下であることがより好ましく、12μmol/g以下であることが特に好ましい。蛍光性物質(D)の含有量が1μmol/g未満であると、層(X)の欠損を目視で識別することが困難となる。また、蛍光性物質(D)の含有量が20μmol/gより多いと、本発明の多層構造体のスクラップ回収性が悪化する。
[脂肪酸アルミニウム塩(E)]
樹脂組成物(A)は脂肪酸アルミニウム塩(E)を含む。脂肪酸アルミニウム塩(E)を蛍光性物質(D)と組み合わせて用いることで、層(X)中の蛍光性物質(D)の蛍光強度をさらに高めることができる。これによって、層(X)の欠損が目視で識別可能となる。さらに、脂肪酸アルミニウム塩(E)を含むことによって、本発明の多層構造体のスクラップにおいてフィッシュアイの形成を抑制することができる。
本発明において「脂肪酸アルミニウム」はモノ脂肪酸アルミニウム、ジ脂肪酸アルミニウム、トリ脂肪酸アルミニウムのいずれをも含む概念である。「脂肪酸」は、アルキル鎖の一部がヒドロキシ基で置換された脂肪酸であってもよい。脂肪酸アルミニウム塩(E)は、酢酸アルミニウム等の低級・中級脂肪酸アルミニウム塩であってもよいが、炭素数12〜24の高級脂肪酸アルミニウム塩(E1)であることが好ましい。高級脂肪酸の炭素数としては、13以上であることが好ましく、14以上であることがより好ましい。また、高級脂肪酸の炭素数としては22以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。炭素数12以上24以下の高級脂肪酸アルミニウム塩(E1)を用いることで、多層構造体のスクラップにおいてフィッシュアイの形成をより抑制することができる。
高級脂肪酸アルミニウム塩(E1)のうち特に好適なものとしては、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム又はモンタン酸アルミニウムが挙げられ、ステアリン酸アルミニウム又はパルミチン酸アルミニウムが好ましく、ステアリン酸アルミニウムがより好ましい。脂肪酸アルミニウム塩(E)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ステアリン酸アルミニウムは、側鎖RがCH3(CH216−のアルキル鎖とカルボキシ基から構成される有機分子が3個とアルミニウム1個から電気的に中性に構成された金属石鹸であり、樹脂に分散される材料として用途が様々である。なお、アルキル鎖の一部がヒドロキシ基で置換されたものを用いてもよい。例えば、12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウムを用いることもできる。
蛍光性物質(D)と脂肪酸アルミニウム塩(E)のモル比(E/D)は、0.025以上であり、0.05以上であることが好ましく、0.08以上であることがより好ましい。モル比(E/D)は、0.50以下であり、0.45以下であることが好ましく、0.40以下であることがより好ましい。モル比(E/D)が0.025未満であると、層(X)の欠損を目視で識別することが困難となる。また、モル比(E/D)が0.50を超えると、本発明の多層構造体のスクラップ回収性が悪化する。
[その他の成分]
樹脂組成物(A)は、他の成分として、EVOH(C)以外の他の樹脂や、蛍光性物質(D)及び脂肪酸アルミニウム塩(E)以外の他の添加剤を、本発明の効果が阻害されない範囲で含有していてもよい。
前記他の樹脂としては、例えばポリオレフィン等が挙げられる。但し、樹脂組成物(A)が前記他の樹脂を含む場合、樹脂組成物(A)中の全樹脂成分に対する前記他の樹脂の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。樹脂組成物(A)に含まれる樹脂成分が実質的にEVOH(C)のみから構成されていることで、ガスバリア性、スクラップの回収性をより良好なものとすることができる。
前記他の添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、ブロッキング防止剤、乾燥剤等の公知の添加剤を挙げることができる。但し、前記添加剤の含有量としては、EVOH(C)100質量部に対して、2質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。添加剤の含有量を少なくすることで、欠損を目視で確認することがより容易となり、スクラップの回収性をより良好なものとすることができる。
酸化防止剤としては、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3’,5−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
可塑剤としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化オレイン酸、ポリエチレンオキシド、カーボワックス等が挙げられる。
滑剤としては、エチレンビスステアリルアミド、ブチルステアレート、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
着色剤としては、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、酸化チタン、ベンガラ等が挙げられる。
充填剤としては、グラスファイバー、マイカ、バラストナイト等が挙げられる。
また、樹脂組成物(A)は、熱安定性あるいは粘度調整の観点で、種々の酸や、脂肪酸アルミニウム塩(E)の他に種々の金属塩等の化合物を含有していてもよい。前記種々の酸としては、カルボン酸、リン酸化合物、ホウ素化合物等が挙げられ、前記種々の金属塩としては、アルカリ金属塩又アルカリ金属塩等が挙げられる。なお、これらの化合物は、あらかじめEVOH(C)と混合して用いてもよい。
(カルボン酸及び/又はカルボン酸イオン)
カルボン酸及び/又はカルボン酸イオンは、樹脂組成物(A)に含有されることで、当該樹脂組成物の溶融成形時の耐着色性を向上させる。
カルボン酸は、分子内に1個以上のカルボキシ基を有する化合物である。また、カルボン酸イオンは、カルボン酸のカルボキシ基の水素イオンが脱離したものである。樹脂組成物(A)に含有されるカルボン酸は、モノカルボン酸でもよく、分子内に2個以上のカルボキシ基を有する多価カルボン酸化合物でもよく、これらの組み合わせであってもよい。なお、この多価カルボン酸には、重合体は含まれない。また、多価カルボン酸イオンは、多価カルボン酸のカルボキシ基の水素イオンの少なくとも1つが脱離したものである。カルボン酸のカルボキシ基はエステル構造であってもよく、カルボン酸イオンは金属と塩を形成していてもよい。
モノカルボン酸としては、特に限定されず、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、安息香酸、2−ナフトエ酸等が挙げられる。これらのカルボン酸は、ヒドロキシ基あるいはハロゲン原子を有していてもよい。また、カルボン酸イオンとしては、前記各カルボン酸のカルボキシ基の水素イオンが脱離したものが挙げられる。このモノカルボン酸(モノカルボン酸イオンを与えるモノカルボン酸も含む)のpKaとしては、組成物のpH調整能及び溶融成形性の点から、3.5以上が好ましく、4以上がより好ましい。このようなモノカルボン酸としてはギ酸(pKa=3.68)、酢酸(pKa=4.74)、プロピオン酸(pKa=4.85)、酪酸(pKa=4.80)等が挙げられるが、取扱い容易性等の観点から酢酸が好ましい。
また、多価カルボン酸としては、分子内に2個以上のカルボキシ基を有している限り特に限定されず、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アコニット酸等のトリカルボン酸;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸等の4個以上のカルボキシ基を有するカルボン酸;酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸、ムチン酸、タルトロン酸、シトラマル酸等のヒドロキシカルボン酸;オキサロ酢酸、メソシュウ酸、2−ケトグルタル酸、3−ケトグルタル酸等のケトカルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸、2−アミノアジピン酸等のアミノ酸等が挙げられる。なお、多価カルボン酸イオンとしては、これらの陰イオンが挙げられる。この中でもコハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸が入手容易である点から特に好ましい。
樹脂組成物(A)がカルボン酸及び/又はカルボン酸イオンを含有する場合、その含有量としては、溶融成形時の耐着色性の観点から、カルボン酸根換算で0.01μmol/g以上であることが好ましく、0.05μmol/g以上であることがより好ましく、0.5μmol/g以上であることがさらに好ましい。また、カルボン酸根換算で20μmol/g以下であることが好ましく、15μmol/g以下であることがより好ましく、10μmol/g以下であることがさらに好ましい。
(リン酸化合物)
樹脂組成物(A)は、さらにリン酸化合物を含有していてもよい。リン酸化合物は樹脂組成物(A)に含有されることで、当該樹脂組成物(A)の溶融成形時のロングラン性を向上させることができる。
リン酸化合物としては特に限定されず、例えば、リン酸、亜リン酸等の各種のリンの酸素酸若しくはその塩等が挙げられる。リン酸塩としては、例えば第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形で含まれていてもよく、その対カチオン種としても特に限定されないが、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好ましく、アルカリ金属塩がさらに好ましい。具体的には、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム又はリン酸水素二カリウムが、溶融成形時のロングラン性改善の点で好ましい。
樹脂組成物(A)がリン酸化合物を含有する場合、その含有量は、乾燥樹脂組成物中のリン酸根換算で1ppm以上であることが好ましく、5ppm以上であることがより好ましく、8ppm以上であることがさらに好ましい。また、リン酸根換算で500ppm以下であることが好ましく、200ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。リン酸化合物の含有量が前記範囲内であることによって、溶融成形時のロングラン性をより向上させることができる。
(ホウ素化合物)
ホウ素化合物は、樹脂組成物(A)に含有されることで、当該樹脂組成物(A)の溶融成形時のロングラン性を改善させることができ、その結果、ゲルあるいはブツ(溶融押出等を経て得られた成形物の外観に生じる欠陥)等の発生を抑制し外観特性を向上させることができる。詳細には、当該樹脂組成物にホウ素化合物が配合された場合、EVOH(C)とホウ素化合物との間にホウ酸エステルを生成すると考えられ、かかる樹脂組成物を用いることによって、ホウ素化合物を含有しない樹脂組成物よりもロングラン性を改善させることが可能である。
ホウ素化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、例えば、オルトホウ酸(H3BO3)、メタホウ酸、四ホウ酸等が挙げられる。ホウ酸エステルとしては、例えば、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチル等が挙げられる。ホウ酸塩としては、前記各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂等が挙げられる。これらの中でもオルトホウ酸が好ましい。
樹脂組成物(A)がホウ素化合物を含む場合、その含有量は、乾燥樹脂組成物中のホウ素化合物のホウ素元素換算で、5ppm以上であることが好ましく、10ppm以上であることがより好ましく、50ppm以上であることがさらに好ましい。また、ホウ素元素換算で、2000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以下であることがより好ましく、500ppm以下であることがさらに好ましく、300ppm以下であることが特に好ましい。ホウ素化合物の含有量が前記範囲内にあることによって、溶融成形時のロングラン性をより向上させることができる。
(アルカリ金属塩)
アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられるが、工業的入手の点からはナトリウム又はカリウムがより好ましい。樹脂組成物(A)がアルカリ金属を含むことで、ロングラン性と多層構造体とした際の層間接着力が向上する。
アルカリ金属塩としては、特に限定されないが、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、リン酸塩、金属錯体等が挙げられる。このアルカリ金属塩としては、具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸二水素リチウム、リン酸三リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げられる。この中でも、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸二水素ナトリウムが、入手容易である点から特に好ましい。
樹脂組成物(A)がアルカリ金属塩を含む場合、樹脂組成物(A)中のアルカリ金属塩の含有量は、乾燥樹脂組成物中において、2.5μmol/g以上であることが好ましく、3.5μmol/g以上であることがより好ましく、4.5μmol/g以上であることがさらに好ましい。また、アルカリ金属塩の含有量は、22μmol/g以下であることが好ましく、16μmol/g以下であることがより好ましく、10μmol/g以下であることがさらに好ましい。アルカリ金属塩の含有量が2.5μmol/g以上であると、本発明の多層構造体の層間接着性がより優れるため好ましい。また、アルカリ金属塩の含有量が22μmol/g以下であると、層(X)の外観がより良好になるため好ましい。
(アルカリ土類金属塩)
アルカリ土類金属としてはベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられるが、工業的入手の点からはマグネシウム又はカルシウムであることがより好ましい。樹脂組成物(A)がアルカリ土類金属を含むことで、本発明の多層構造体のスクラップ回収性が向上する。
樹脂組成物(A)は、本発明の多層構造体を成形する際にEVOH(C)、蛍光性物質(D)、及び脂肪酸アルミニウム塩(E)をドライブレンドして製造してもよいし、事前にEVOH(C)、蛍光性物質(D)、及び脂肪酸アルミニウム塩(E)をドライブレンドし溶融混練を行いペレット化して製造してもよい。
[層(Y)]
層(Y)は、熱可塑性樹脂(B)を含む。層(Y)は、実質的に、熱可塑性樹脂(B)のみから構成されていてもよい。
熱可塑性樹脂(B)としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体(炭素数4〜20のα−オレフィン)、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又はその共重合体であるポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエステルエラストマー;ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド;ポリスチレン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;アクリル系樹脂;ビニルエステル系樹脂;ポリウレタンエラストマー;ポリカーボネート;塩素化ポリエチレン;塩素化ポリプロピレンなどが挙げられる。上記の中でも、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、及びポリスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ポリオレフィンであることがより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
[多層構造体の構成]
本発明の多層構造体の構成の具体例を以下に示す。また、以下の具体例を複数層積層したり組み合わせたりしてもよい。なお、層(X)及び層(Y)はそれぞれ連続して複数層積層されていてもよい。
2層:層(Y)/層(X)、
3層:層(Y)/層(X)/層(Y)、層(Y)/接着層/層(X)、
4層:層(Y)/接着層/層(X)/接着層、接着層/層(Y)/接着層/層(X)、
5層:層(Y)/接着層/層(X)/接着層/層(Y)、層(X)/接着層/層(Y)/接着層/層(X)、層(Y)/接着層/層(X)/接着層/層(X)、接着層/層(Y)/接着層/層(X)/接着層
6層:層(Y)/接着層/層(X)/接着層/層(Y)/接着層
7層:層(Y)/接着層/層(X)/接着層/層(X)/接着層/層(Y)
本発明の多層構造体は、層(X)の少なくとも一方の面に層(Y)が接着層を介して積層された構造を有することが好ましく、層(X)の両面に層(Y)が接着層を介して積層された構造を有することがより好ましい。本発明の多層構造体がそのような構造を有することで、多層構造体の耐屈曲性等を高めることができる。
前記接着層に用いられる前記接着性樹脂としては、カルボン酸変性オレフィン系重合体からなる接着性樹脂が好ましい。前記カルボン酸変性オレフィン系重合体とは、オレフィン系重合体に、エチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物を化学的(例えば付加反応、グラフト反応により)結合させて得られるカルボキシ基を含有する変性オレフィン系重合体のことを意味する。また、前記オレフィン系重合体とは、ポリエチレン(低圧、中圧、高圧)、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ボリブテン等のポリオレフィン;オレフィンと該オレフィンとを共重合し得るコモノマー(ビニルエステル、不飽和カルボン酸エステル等)との共重合体(例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチルエステル共重合体等)を意味する。このうち直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルの含有量5〜55質量%)、エチレン−アクリル酸エチルエステル共重合体(アクリル酸エチルエステルの含有量8〜35質量%)が好適であり、直鎖状低密度ポリエチレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好適である。エチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸あるいはそのエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸、そのモノ又はジエステル、その無水物が挙げられ、エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物が好適である。具体的にはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル等が挙げられ、無水マレイン酸が好適である。
エチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物のオレフィン系重合体への付加量又はグラフト量(変性度)はオレフィン系重合体に対し0.01〜15質量%、好ましくは0.02〜10質量%である。エチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物のオレフィン系重合体への付加反応、グラフト反応は、例えば溶媒(キシレン等)、触媒(過酸化物等)の存在下でラジカル重合法などにより得られる。このようにして得られたカルボン酸変性ポリオレフィンの190℃、2160g荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)は0.2〜30g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10g/10分である。これらの接着性樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の多層構造体の成形方法は特に限定されないが、例えば押出ラミネート法、ドライラミネート法、押出ブロー成形法、共押出ラミネート法、共押出シート成形法、共押出パイプ成形法、共押出ブロー成形法、共射出成形法、溶液コート法等が挙げられる。溶融温度は、該共重合体の融点等により異なるが、190℃〜270℃程度が好ましい。なお、このような方法で得られた多層構成の積層体に対して、さらに真空圧空深絞り成形、ブロー成形等の方法により、EVOH(C)の融点以下の範囲で再加熱後、二次加工を施してもよい。
本発明の多層構造体は、包装材(例えば、飲食品、化粧品、医薬品)、パイプ、燃料タンク、タイヤ用チューブ材等、各種の成形物に成形される。本発明の多層構造体の形状は、特に限定されず、フィルム、シートであってもよく、容器であってもよい。
本発明の多層構造体をパイプとして用いる場合、有機液体輸送用パイプ材、暖房用温水パイプ材(床暖房用温水パイプ材等)等の用途が挙げられる。
本発明の多層構造体を燃料タンクに用いる場合、必要に応じて、例えばフィルター、残量計、バッフルプレート等が備えられる。前記燃料タンクは、本発明の多層構造体を備えることで、外観性、ガス遮断性、耐油性、スクラップ回収性等にも優れるため、燃料タンクとして好適に用いられる。ここで、燃料タンクとは、自動車、オートバイ、船舶、航空機、発電機、工業用又は農業用機器等に搭載された燃料タンク、又はこれら燃料タンクに燃料を補給するための携帯用燃料タンク、さらには燃料を補完するためのタンクを意味する。また、燃料としては、ガソリン、特にメタノール、エタノール又はMTBE等をブレンドした含酸素ガソリン等が代表例として挙げられるが、その他、重油、軽油、灯油等も含む。これらのうち、前記燃料タンクは、含酸素ガソリン用燃料タンクとして特に好適に用いられる。
また、前記燃料タンクは、帯電防止コーティングを行っていてもよい。帯電防止コーティングは、導電性フィラー、導電性繊維あるいは導電性樹脂を用いて行うことができる。導電性フィラーとしては、銅、ニッケル等の金属粉末が挙げられる。導電性繊維としては、鉄、ステンレス等の金属繊維;カーボンブラック、炭素繊維、特開平3−174018号公報等に記載の炭素フィブリル等が挙げられる。
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた態様を含む。
(欠損検知方法)
本発明の欠損検知は、本発明の多層構造体に紫外線を照射し、目視確認で行うことが可能である。層(X)に欠損を有する本発明の多層構造体に紫外線を照射すると、欠損部位が周囲より白く見えるため、容易に検知可能である。これは、欠損周辺部位の光が散乱するためであると予想される。このような特徴を有することで、層(X)が層(Y)に挟まれた構造を有している場合においても、層(X)の欠損を良好な感度で検知可能である。紫外線の照射は、特に限定されず、公知の紫外線の照射装置を使用することができる。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
[EVOH(C)のエチレン単位含有量及びケン化度]
日本電子社製の「JNM−GX−500型」を用い、溶媒にDMSO−d6を用いた1H−NMR測定により求めた。
[欠損検知試験]
(1)試験方法
実施例及び比較例で得られたEVOHペレットを用いて20mm押出機D2020(東洋精機製作所製、D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=2.0、スクリュー:フルフライト)にて、以下の条件でEVOH単層フィルムを作製した。
<EVOH単層フィルム製膜条件>
押出温度:C1/C2/C3/Die=175℃/220℃/220℃/220℃
スクリュー回転数:40rpm
吐出量 :1.2kg/hr
引取りロール温度:80℃
引取りロール速度:2.0m/min.
フィルム厚み :100μm
また、ユメリット1520F(宇部興産社製、ポリエチレン)を用いて、20mm押出機D2020(東洋精機製作所製、D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=2.0、スクリュー:フルフライト)にて、以下の条件でポリエチレン単層フィルムを得た。
<ポリエチレン単層フィルム製膜条件>
押出温度:C1/C2/C3/Die=160℃/200℃/200℃/200℃
スクリュー回転数:40rpm
吐出量 :1.2kg/hr
引取りロール温度:40℃
引取りロール速度:0.4m/min.
フィルム厚み :500μm
得られたEVOH単層フィルム及びポリエチレン単層フィルムを、それぞれA4サイズに切り出し、EVOH単層フィルムの中央に直径5mmの穴をあけた。この穴あきEVOH単層フィルムの両面にドライラミネート用接着剤を塗布し、ポリエチレン単層フィルム(500μm)/穴あきEVOH単層フィルム(100μm)/ポリエチレン単層フィルム(500μm)の構成でドライラミネートし、80℃で3分間乾燥した後、40℃で3日間養生を実施し、ラミネートフィルムを得た。なお、ドライラミネート用接着剤としては、タケラックA−385(武田薬品工業社製)を主剤、タケネートA−50(武田薬品工業社製)を硬化剤、酢酸エチルを希釈液として用い、接着剤の塗布量は4.0g/m2とした。
(2)分析方法
得られたラミネートフィルムにブラックライトEN−280L(スペクトロニクス社製)を用いて波長365nmの紫外線を照射し、EVOH層中の穴の鮮明度を確認し、以下の評価基準で欠損検知評価を行った。
<評価基準>
A:穴の輪郭がくっきり見える
B:穴がうっすらと見える
C:穴が見えない
[多層構造体の回収性評価]
(1)試験方法
EVOH層として実施例及び比較例で得られたEVOHペレットを、熱可塑性樹脂層としてユメリット1520F(宇部興産社製、ポリエチレン)を、接着層としてアドマーNF587(三井化学製、変性ポリオレフィン)をそれぞれ用い、熱可塑性樹脂層/接着層/EVOH層/接着層/熱可塑性樹脂層の3種5層共押出を行い、多層構造体を作製した。使用した押出機と条件を以下に示す。
押出機1[EVOH層]:
装置:単軸押出機「ラボME型CO−NXT」(東洋精機製作所製)
スクリュー径:20mmφ
スクリュー回転数:40rpm
シリンダー設定温度:220℃
ダイス幅:300mm
シート引取速度:1m/分
冷却ロール温度:60℃
押出機2[熱可塑性樹脂層]:
装置:単軸押出機「GT−32−A型」(プラスチック工学研究所製)
スクリュー径:32mmφ
スクリュー回転数:70rpm
シリンダー設定温度:220℃
押出機3[接着性樹脂層]:
装置:単軸押出機「ラボME型CO−NXT」(東洋精機製作所製)
スクリュー径:20mmφ
スクリュー回転数:40rpm
シリンダー設定温度:220℃
フィルム構成:
ポリエチレン層/接着層/EVOH/接着層/ポリエチレン=200μm/25μm/50μm/25μm/200μm(総厚み500μm)
得られた多層構造体を径8mmφメッシュの粉砕機で粉砕し、その粉砕物を用いて20mm押出機D2020(東洋精機製作所製、D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=2.0、スクリュー:フルフライト)にて、以下の条件で回収単層フィルムを得た。
押出温度:C1/C2/C3/Die=175℃/220℃/220℃/220℃
スクリュー回転数:40rpm
吐出量 :1.2kg/hr
引取りロール温度:80℃
引取りロール速度:2.0m/min.
フィルム厚み :100μm
(2)分析方法
得られた回収単層フィルムの概観を目視で確認し、欠点(フィッシュアイ)及び欠損(穴あき)について以下のように評価した。
<評価基準>
A:外観は美麗で、欠点がほとんど無い
B:外観に問題はないが、欠点が若干目立つ
C:欠点が多い
D:欠点が著しく多く、かつ、フィルムに穴あきが観察される
[実施例1]
EVOH(C)としてエバールF101(クラレ社製、EVOH、エチレン単位含有量32モル%、ケン化度99.6%、MFR1.6g/10分(190℃、2160g))を2000g、蛍光性物質(D)として4−ヒドロキシクマリンを0.97g(6000μmol)、脂肪酸アルミニウム塩(E)としてステアリン酸アルミニウムをアルミニウム換算で0.015g(554μmol)加え、ドライブレンドした後、二軸押出機にて溶融混練し、直径約3mm、長さ約3mmのEVOHペレットを作製した。表1に前記EVOHペレット中の蛍光性物質(D)の含有物質量及び蛍光性物質(D)に対する脂肪酸アルミニウム塩(E)のモル比を示す。
得られたEVOHペレットを用い、上記した欠損検知試験及び多層構造体の回収性評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2〜6及び比較例1〜5]
EVOH(C)、蛍光性物質(D)、及び脂肪酸アルミニウム塩(E)について、下記表1に記載される量及び種類を用いた以外は、実施例1と同様の方法でEVOHペレットを作製し、欠損検知試験及び多層構造体の回収性評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0006684694
上記結果から、本発明の多層構造体は、EVOH含有層の欠損を簡便にかつ低コストで検知することができ、フィッシュアイの発生も抑制できるため、蛍光性物質含有EVOH層と熱可塑性樹脂層の積層体(多層構造体)のスクラップ回収を容易にすることができることが確認できた。
脂肪酸アルミニウム塩(E)を含まない比較例1では、欠損の検知が容易ではなく、欠点も多く見られた。脂肪酸アルミニウム塩(E)の配合量が多すぎる比較例2では、欠点が多く見られた。蛍光性物質(D)の配合量が少なすぎる比較例3では、欠損の検知が容易ではなかった。蛍光性物質(D)の配合量が多すぎる比較例4では、欠点が多く見られた。脂肪酸アルミニウム塩(E)の代わりに、脂肪酸カルシウム塩を用いた比較例5では、欠損の検知が容易ではなかった。
本発明の多層構造体は、包装材、パイプ、燃料タンクの製造に有用である。

Claims (10)

  1. 樹脂組成物(A)からなる層(X)と、熱可塑性樹脂(B)を含む層(Y)とを、それぞれ少なくとも1層以上有する多層構造体であって、
    前記樹脂組成物(A)がエチレン−ビニルアルコール共重合体(C)、蛍光性物質(D)、及び脂肪酸アルミニウム塩(E)を含み、
    前記樹脂組成物(A)中の前記蛍光性物質(D)の含有量が1〜20μmol/gであり、
    前記蛍光性物質(D)と脂肪酸アルミニウム塩(E)のモル比(E/D)が0.025〜0.50である多層構造体。
  2. 前記蛍光性物質(D)が、クマリン又はクマリン誘導体である、請求項1に記載の多層構造体。
  3. 前記脂肪酸アルミニウム塩(E)が、炭素数12〜24の高級脂肪酸アルミニウム塩(E1)である、請求項1又は2に記載の多層構造体。
  4. 炭素数12〜24の高級脂肪酸アルミニウム塩(E1)が、ステアリン酸アルミニウムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層構造体。
  5. 前記熱可塑性樹脂(B)が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、及びポリスチレンからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層構造体。
  6. 層(X)の少なくとも一方の面に層(Y)が接着層を介して積層された構造を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層構造体。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層構造体を含む、包装材。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層構造体を含む、パイプ。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層構造体を含む、燃料タンク。
  10. 請求項1〜6のいずれか記載の多層構造体に紫外線を照射する、欠損検知方法。
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