図1は、本発明が適用される建設機械としてのショベル(掘削機)を示す側面図である。ショベルの下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはバケット6が取り付けられている。作業要素としてのブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの一例である掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3にはキャビン10が設けられ且つエンジン11等の動力源及びコントローラ30等が搭載される。
コントローラ30はショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。本実施例では、コントローラ30はCPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムをCPUに実行させて各種機能を実現する。
図2は、図1のショベルに搭載される油圧回路の構成例を示す概略図である。本実施例では、油圧回路は、主に、第1ポンプ14L、第2ポンプ14R、回生用油圧モータ14A、コントロールバルブ17、アキュムレータ85、及び油圧アクチュエータを含む。油圧アクチュエータは、主に、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、及び旋回用油圧モータ21を含む。また、油圧アクチュエータは、左側走行用油圧モータ及び右側走行用油圧モータを含んでいてもよい。
ブームシリンダ7は、ブーム4を昇降させる油圧シリンダであり、ボトム側油室とロッド側油室との間には再生弁7aが接続され、ボトム側油室側には保持弁7bが設置される。また、アームシリンダ8は、アーム5を開閉させる油圧シリンダであり、ボトム側油室とロッド側油室との間には再生弁8aが接続され、ロッド側油室側には保持弁8bが設置される。また、バケットシリンダ9は、バケット6を開閉させる油圧シリンダであり、ボトム側油室とロッド側油室との間には再生弁9aが接続される。再生弁7a、8a、9aは何れもコントロールバルブ17の外部に設置され、例えば、関連する油圧シリンダに隣接して設置される。
旋回用油圧モータ21は、上部旋回体3を旋回させる固定容量型油圧モータであり、ポート21L、21Rがそれぞれリリーフ弁22L、22Rを介して作動油タンクTに接続され、シャトル弁22Sを介して開閉弁22Gに接続され、且つ、チェック弁23L、23Rを介して作動油タンクTに接続される。
リリーフ弁22Lは、ポート21L側の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、ポート21L側の作動油を作動油タンクTに排出する。また、リリーフ弁22Rは、ポート21R側の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、ポート21R側の作動油を作動油タンクTに排出する。
シャトル弁22Sは、ポート21L側及びポート21R側のうちの圧力が高い方の作動油を開閉弁22Gに供給する。
開閉弁22Gは、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁であり、旋回用油圧モータ21(シャトル弁22S)からアキュムレータ85に流れる作動油の流路の開口面積を調整可能な電磁弁である。本実施例では、開閉弁22Gは、その流路を連通させることで旋回用油圧モータ21の吐出側から流出する作動油がアキュムレータ85内に流入できるようにする。また、その流路を遮断することで旋回用油圧モータ21の吐出側から流出する作動油がアキュムレータ85内に流入できないようにする。また、旋回用油圧モータ21の吐出側の作動油の圧力がアキュムレータ85内の作動油の圧力より低い場合に開口面積を調整して吐出側の作動油の圧力を高めてその作動油がアキュムレータ85内に流入できるようにする。
チェック弁23Lは、ポート21L側の圧力が反対側の圧力より低くなった場合に開き、作動油タンクT又は回生用油圧モータ14Aからポート21L側に作動油を補給する。チェック弁23Rは、ポート21R側の圧力が反対側の圧力より低くなった場合に開き、作動油タンクT又は回生用油圧モータ14Aからポート21R側に作動油を補給する。このように、チェック弁23L、23Rは、旋回用油圧モータ21の制動時に吸い込み側ポートに作動油を補給する補給機構を構成する。
第1ポンプ14Lは、作動油タンクTから作動油を吸い込んで吐出する油圧ポンプである。本実施例では斜板式可変容量型油圧ポンプである。また、第1ポンプ14Lはレギュレータ14Laに接続される。レギュレータ14Laはコントローラ30からの指令に応じて第1ポンプ14Lの斜板傾転角を変更して第1ポンプ14Lの押し退け容積(1回転当たりの吐出量)を制御する。但し、レギュレータ14Laは、第1ポンプ14Lの吐出圧、第2ポンプ14Rの吐出圧等に応じて油圧的に第1ポンプ14Lの吐出量を変化させる構成であってもよい。第2ポンプ14Rについても同様である。
回生用油圧モータ14Aは、油圧アクチュエータから流出する作動油が有するエネルギを回生してエンジンをアシストする油圧モータであり、本実施例では斜板式可変容量型油圧モータである。なお、回生用油圧モータ14Aは、油圧ポンプ(第3ポンプ)としても機能し得る。
回生用油圧モータ14Aは、第1ポンプ14L及び第2ポンプ14Rと同様にレギュレータ14Aaに接続される。レギュレータ14Aaは、コントローラ30からの指令に応じて回生用油圧モータ14Aの斜板傾転角を変更して回生用油圧モータ14Aの押し退け容積を制御する。また、レギュレータ14Aaは、回生用油圧モータ14Aの押し退け容積(斜板傾転角)をゼロに設定可能であってもよい。作動油を消費(吸い込み及び吐出)することなく回転できるようにするためであり、また、回生用油圧モータ14Aを通過する作動油の流れを遮断できるようにするためである。
回生用油圧モータ14Aの下流(吐出側)にはチェック弁88を介して切替弁86及びリリーフ弁90が配置される。
切替弁86はコントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、切替弁86は、回生用油圧モータ14Aと旋回用油圧モータ21との間の連通・遮断を切り替え可能な2ポート2位置の電磁弁である。具体的には、切替弁86は、第1位置にある場合に回生用油圧モータ14Aと旋回用油圧モータ21との間を連通させ、第2位置にある場合にその連通を遮断する。
チェック弁88は回生用油圧モータ14Aの吐出側ポートに流入する作動油の流れを遮断する。本実施例では、チェック弁88は旋回用油圧モータ21から回生用油圧モータ14Aへの作動油の流れを遮断する。
リリーフ弁90は、回生用油圧モータ14Aの吐出側の圧力が所定のリリーフ圧に達した場合に開き、その吐出側の作動油を作動油タンクに排出する。
回生用油圧モータ14Aの上流(吸い込み側)には切替弁87を介してアキュムレータ85が配置される。また、回生用油圧モータ14Aの上流(吸い込み側)はチェック弁89を介して作動油タンクTにも接続される。
アキュムレータ85は、旋回用油圧モータ21から流出する作動油を蓄積する油圧装置である。本実施例では、アキュムレータ85は、開閉弁22Gにより作動油の蓄積が制御され、且つ、切替弁87により作動油の放出が制御される。アキュムレータ85の使用圧力は、例えば、15〜30MPaの範囲内とされる。アキュムレータ85の使用圧力はリリーフ弁22L、22Rのリリーフ圧より低い。
切替弁87はコントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、切替弁87は、アキュムレータ85と回生用油圧モータ14Aとの間の連通・遮断を切り替え可能な2ポート2位置の電磁弁である。具体的には、切替弁87は、第1位置にある場合にアキュムレータ85と回生用油圧モータ14Aとの間を連通させ、第2位置にある場合にその連通を遮断する。
チェック弁89は作動油タンクTに流出する作動油の流れを遮断する。本実施例では、チェック弁89はアキュムレータ85から回生用油圧モータ14Aへ流れる作動油の一部が作動油タンクTに流出するのを防止する。なお、チェック弁89は、回生用油圧モータ14Aが第3ポンプとして機能する場合には、作動油タンクTから第3ポンプへの作動油の流れを遮断しない。
以上の構成により、旋回用油圧モータ21の吐出側ポート、シャトル弁22S、開閉弁22G、アキュムレータ85、切替弁87、回生用油圧モータ14A、チェック弁88、切替弁86、チェック弁23L、23R、及び、旋回用油圧モータ21の吸い込み側ポートを繋ぐ旋回回生回路は一方向流れの閉ループを形成する。
また、本実施例では、第1ポンプ14L、第2ポンプ14R、及び回生用油圧モータ14Aは、それぞれの駆動軸が機械的に連結される。具体的には、それぞれの駆動軸は、変速機13を介して所定の変速比でエンジン11の出力軸に連結される。そのため、エンジン回転数が一定であれば、それぞれの回転数も一定となる。但し、第1ポンプ14L、第2ポンプ14R、及び回生用油圧モータ14Aは、エンジン回転数が一定であっても回転数を変更できるよう、無段変速機等を介してエンジン11に接続されてもよい。
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。また、コントロールバルブ17は、主に、可変ロードチェック弁51〜53、合流弁55、統一ブリードオフ弁56L、56R、遮断弁80、及び流量制御弁170〜173を含む。
流量制御弁170〜173は、油圧アクチュエータに流出入する作動油の向き及び流量を制御する弁である。本実施例では、流量制御弁170〜173のそれぞれは、対応する操作レバー等の操作装置が生成するパイロット圧を左右何れかのパイロットポートで受けて動作する4ポート3位置のスプール弁である。操作装置は、操作量(操作角度)に応じて生成したパイロット圧を、操作方向に対応する側のパイロットポートに作用させる。
具体的には、流量制御弁170は、旋回用油圧モータ21に流出入する作動油の向き及び流量を制御するスプール弁であり、流量制御弁171は、アームシリンダ8に流出入する作動油の向き及び流量を制御するスプール弁である。
また、流量制御弁172は、ブームシリンダ7に流出入する作動油の向き及び流量を制御するスプール弁であり、流量制御弁173は、バケットシリンダ9に流出入する作動油の向き及び流量を制御するスプール弁である。
可変ロードチェック弁51〜53は、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、可変ロードチェック弁51〜53は、流量制御弁171〜173のそれぞれと第1ポンプ14L及び第2ポンプ14Rのうちの少なくとも一方との間の連通・遮断を切り替え可能な2ポート2位置の電磁弁である。なお、可変ロードチェック弁51〜53は、第1位置において、ポンプ側に戻る作動油の流れを遮断するチェック弁を有する。具体的には、可変ロードチェック弁51は、第1位置にある場合に流量制御弁171と第1ポンプ14L及び第2ポンプ14Rのうちの少なくとも一方との間を連通させ、第2位置にある場合にその連通を遮断する。可変ロードチェック弁52及び可変ロードチェック弁53についても同様である。
合流弁55は、合流切替部の一例であり、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、合流弁55は、第1ポンプ14Lが吐出する作動油(以下、「第1作動油」とする。)と第2ポンプ14Rが吐出する作動油(以下、「第2作動油」とする。)とを合流させるか否かを切り替え可能な2ポート2位置の電磁弁である。具体的には、合流弁55は、第1位置にある場合に第1作動油と第2作動油とを合流させ、第2位置にある場合に第1作動油と第2作動油とを合流させない。
統一ブリードオフ弁56L、56Rは、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、統一ブリードオフ弁56Lは、第1作動油の作動油タンクTへの排出量を制御可能な2ポート2位置の電磁弁である。統一ブリードオフ弁56Rについても同様である。この構成により、統一ブリードオフ弁56L、56Rは、流量制御弁170〜173のうちの関連する流量制御弁の合成開口を実現できる。具体的には、合流弁55が第2位置にある場合に、統一ブリードオフ弁56Lは流量制御弁170及び流量制御弁171の合成開口を実現でき、統一ブリードオフ弁56Rは流量制御弁172及び流量制御弁173の合成開口を実現できる。また、統一ブリードオフ弁56Lは、第1位置にある場合にコントローラ30からの指令に応じてその合成開口の開口面積を調整する可変絞りとして機能し、第2位置にある場合にその合成開口を遮断する。統一ブリードオフ弁56Rについても同様である。
遮断弁80は、コントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、遮断弁80は、旋回減速の際に旋回用油圧モータ21の吐出側から作動油タンクTに流れる作動油の流路を遮断可能な電磁弁である。具体的には、遮断弁80は、流量制御弁170と作動油タンクTとの間の流路を連通させる第1位置とその流路を遮断する第2位置とを切り替え可能な2ポート2位置の電磁弁である。
なお、可変ロードチェック弁51〜53、合流弁55、統一ブリードオフ弁56L、56R、及び遮断弁80のそれぞれは、パイロット圧駆動のスプール弁であってもよい。
圧力センサS1はアキュムレータ85内の作動油の圧力を検出する。圧力センサS2Lは旋回用油圧モータ21のポート21L側の作動油の圧力を検出する。圧力センサS2Rは旋回用油圧モータ21のポート21R側の作動油の圧力を検出する。圧力センサS1、S2L、S2Rのそれぞれは検出値をコントローラ30に対して出力する。
次に図3を参照し、流量制御弁170の構成例について説明する。図1のショベルは、流量制御弁170の制御弁オーバーライド機構を備える。図3は制御弁オーバーライド機構の構成例を示す。
制御弁オーバーライド機構は、操作装置の操作量に応じて動作する制御弁を、操作装置の操作量とは無関係に動作させる機構である。本実施例では、制御弁オーバーライド機構は、原則的に旋回操作装置としての旋回操作レバー26の操作量に応じて動作する流量制御弁170を、例外的に旋回操作レバー26の操作量とは無関係に動作させる。
制御弁オーバーライド機構は、主に、流量制御弁170の左パイロットポート170Lに関連する電磁弁81L及びシャトル弁82Lと、流量制御弁170の右パイロットポート170Rに関連する電磁弁81R及びシャトル弁82Rとを含む。
電磁弁81L、81Rはコントローラ30からの指令に応じて動作する弁である。本実施例では、電磁弁81Lは、コントロールポンプ15とシャトル弁82Lとの間を遮断する第1位置とそれらの間を連通させる第2位置とを切り替え可能な2ポート2位置の電磁弁である。電磁弁81Rについても同様である。コントロールポンプ15は、例えば、固定容量型油圧ポンプである。
シャトル弁82L、82Rは、2つの入力と1つの出力を有する弁であり、2つの入力のそれぞれで受ける作動油の圧力のうち高い方の圧力を1つの出力に供給する。具体的には、シャトル弁82Lは、旋回操作レバー26に接続される側(図3のシャトル弁82Lの下側)の作動油の圧力と電磁弁81Lに接続される側(上側)の作動油の圧力のうちの高い方の圧力を左パイロットポート170Lに供給する。シャトル弁82Rについても同様である。
旋回操作レバー26は、コントロールポンプ15が吐出する作動油の圧力である一次圧を用いてパイロット圧としての二次圧(<一次圧)を生成する。例えば、旋回操作レバー26は、図3の右方向に傾けられると、流量制御弁170の右パイロットポート170Rに作用するパイロット圧を生成する。本実施例では、旋回操作レバー26の右方向への傾斜角が大きいほど大きいパイロット圧が生成され、流量制御弁170の左方向へのストローク量も大きくなる。旋回操作レバー26が左方向に傾けられた場合も同様である。
流量制御弁170の左パイロットポート170Lに作用するパイロット圧は圧力センサS3Lで検出され、流量制御弁170の右パイロットポート170Rに作用するパイロット圧は圧力センサS3Rで検出される。
一方、電磁弁81Rが第2位置に切り替えられると、シャトル弁82Rの上側の作動油の圧力が一次圧(>二次圧)まで増大する。そのため、シャトル弁82Rは、旋回操作レバー26の操作量及び操作方向にかかわらず、流量制御弁170の右パイロットポート170Rに一次圧を作用させる。一次圧は、旋回操作レバー26が生成する二次圧よりも高いためである。その結果、流量制御弁170は左方向へ移動して右弁位置に切り替えられ、第1ポンプ14L及び第2ポンプ14Rの少なくとも一方から旋回用油圧モータ21に流れる作動油の流路(PCポート)の開口面積が最大となる。また、旋回用油圧モータ21から作動油タンクTに流れる作動油の流路(CTポート)の開口面積も最大となる。電磁弁81Lが第2位置に切り替えられた場合も同様である。その場合、流量制御弁170は右方向へ移動して左弁位置に切り替えられる。
また、電磁弁81L及び電磁弁81Rが第2位置に切り替えられた場合、流量制御弁170は、旋回操作レバー26が操作されているか否かにかかわらず、中立弁位置に戻される。左パイロットポート170L及び右パイロットポート170Rのそれぞれに同じ一次圧が作用するためである。
以上の構成により、制御弁オーバーライド機構は、旋回操作レバー26が操作されているか否かにかかわらず、流量制御弁170を3つの弁位置のうちの何れかに強制的に切り替えることができる。
例えば、コントローラ30は、旋回減速状態が検出された場合等、所定の開始条件が満たされた場合に、上述のように電磁弁81L又は電磁弁81Rを第1位置に切り替えて流量制御弁170を強制的に左弁位置又は右弁位置に移動させてもよい。旋回減速状態に適した所望の油圧回路の状態を実現するためである。この場合、コントローラ30は、旋回減速状態が検出されなくなった場合等、所定の解除条件が満たされた場合に、第2位置に切り替えられた電磁弁81L又は電磁弁81Rを第1位置に戻してもよい。流量制御弁170による作動油の流路の開口面積の拡大を解除することで油圧回路を元の状態に戻すためである。
或いは、コントローラ30は、旋回減速状態が検出された場合等、所定の開始条件が満たされた場合に、上述のように電磁弁81L及び電磁弁81Rを第1位置に切り替えて流量制御弁170を強制的に中立弁位置に移動させてもよい。旋回減速状態に適した所望の油圧回路の状態を実現するためである。この場合、コントローラ30は、旋回減速状態が検出されなくなった場合等、所定の解除条件が満たされた場合に、第2位置に切り替えられた電磁弁81L及び電磁弁81Rを第1位置に戻してもよい。流量制御弁170による作動油の流路の遮断を解除することで油圧回路を元の状態に戻すためである。
旋回減速状態が検出された場合は、例えば、旋回操作レバー26が中立位置方向に戻された場合等である。旋回減速状態が検出されなくなった場合は、例えば、旋回用油圧モータ21の吸い込み側の作動油の圧力が旋回用油圧モータ21の吐出側の作動油の圧力を上回った場合、旋回操作レバー26が保持状態になった場合等である。旋回操作レバー26の保持状態は、例えば、所定時間に亘って旋回操作レバー26のレバー操作量の変化がない状態である。
次に、図4を参照し、旋回加速時における図2の油圧回路の状態を説明する。なお、図4の太実線は回生用油圧モータ14A及び旋回用油圧モータ21のそれぞれの吸い込み側に流入する作動油の流れを示す。また、太点線は回生用油圧モータ14A及び旋回用油圧モータ21のそれぞれの吐出側から流出する作動油の流れを示す。
コントローラ30は、操作装置が生成するパイロット圧を検出する圧力センサ等の操作検出部の出力に基づいてショベルに対する操作者の操作内容を判断する。例えば、コントローラ30は、圧力センサS3L、S3Rの出力に基づいて旋回操作レバー26の操作内容を判断する。
そして、コントローラ30は、旋回操作が行われたと判断すると、旋回操作レバー26の操作量に応じて第1作動油を流量制御弁170に供給する。流量制御弁170は、旋回操作レバー26の操作量に応じたパイロット圧を受けて右弁位置に移動し、第1作動油を旋回用油圧モータ21の吸い込み側ポート21Rに流入させる。また、旋回用油圧モータ21の吐出側ポート21Lから流出する作動油を作動油タンクTに排出する。
また、コントローラ30は、ネガティブコントロール制御、ポジティブコントロール制御、ロードセンシング制御、馬力制御等のポンプ吐出量制御に基づき、旋回操作レバー26の操作量に対応する第1ポンプ14Lの吐出量指令値を決定する。そして、コントローラ30は、対応するレギュレータ14Laを制御して第1ポンプ14Lの吐出量が指令値通りとなるように制御する。
また、コントローラ30は、切替弁87に対して指令を出力し、切替弁87を第1位置に切り替える。また、回生用油圧モータ14Aに対して指令を出力し、回生用油圧モータ14Aの回転速度がエンジン11のアシストに適した回転速度となるように回生用油圧モータ14Aの斜板傾転角を調整する。切替弁87が第1位置に切り替えられると、アキュムレータ85は、回生用油圧モータ14Aに向けて作動油を放出する。回生用油圧モータ14Aは、アキュムレータ85から放出された作動油を受けて回転する。このように、コントローラ30は、アキュムレータ85に蓄積された作動油を回生用油圧モータ14Aの回転動力に用いることでエンジン11をアシストでき、エンジン負荷を低減できる。
なお、コントローラ30は、アキュムレータ85に作動油が十分に蓄積されていない場合、切替弁87を第2位置で維持したまま、回生用油圧モータ14Aを第3ポンプとして機能させてもよい。この場合、第3ポンプとしての回生用油圧モータ14Aは、エンジン11によって回転駆動され、作動油タンクTから吸い込んだ作動油を旋回用油圧モータ21に向けて吐出してもよい。
また、コントローラ30は、エンジン負荷が大きい旋回加速時ばかりでなく、旋回加速時以外の任意のタイミングで切替弁87を第1位置に切り替えて回生用油圧モータ14Aを回転させることでエンジン11をアシストしてもよい。
次に、図5を参照し、旋回減速時に旋回用油圧モータ21から流出する作動油をアキュムレータ85に蓄積する処理(以下、「蓄積処理」とする。)について説明する。図5は蓄積処理の流れを示すフローチャートである。コントローラ30は、所定の制御周期で繰り返しこの蓄積処理を実行する。
最初に、コントローラ30はショベルが旋回減速状態にあるか否かを判定する(ステップST1)。本実施例では、コントローラ30は、旋回操作レバー26が中立位置方向に戻されたと判断した場合にショベルが旋回減速状態にあると判定する。コントローラ30は、圧力センサS3L、S3Rの出力に基づいて旋回操作レバー26のレバー操作量及びレバー操作方向を検出して旋回操作レバー26が中立位置方向に戻されたか否かを判断する。但し、コントローラ30は、レゾルバ、ロータリエンコーダ等の旋回速度検出装置の出力に基づいてショベルが旋回減速状態にあるか否かを判定してもよい。
ショベルが旋回減速状態にあると判定した場合(ステップST1のYES)、コントローラ30は、旋回用油圧モータ21の吐出側の作動油の圧力(吐出側圧)とアキュムレータ85内の作動油の圧力(アキュムレータ圧)とを比較する(ステップST2)。本実施例では、コントローラ30は、圧力センサS1、S2L、S2Rの出力に基づいて吐出側圧がアキュムレータ圧以下であるか否かを判定する。吐出側圧は、ショベルが旋回減速状態にある場合に大きくなる。上部旋回体3の慣性によって旋回用油圧モータ21の回転(吐出側ポート21Lからの作動油の吐出)が継続される一方で、CTポートの開口面積の縮小により作動油タンクTへの流出が抑制或いは遮断されて吐出側ポートの作動油が圧縮されるためである。また、旋回操作レバー26が中立位置方向に戻る速度が大きいほど吐出側圧は大きい。旋回操作レバー26が中立位置方向に戻る速度が大きいほどCTポートの開口面積の縮小度合いが大きいためである。
吐出側圧がアキュムレータ圧以下であると判定した場合(ステップST2のYES)、コントローラ30は背圧制御を実行する(ステップST3)。例えば、旋回操作レバー26が中立位置方向に戻るときの操作角速度が小さい場合に吐出側圧はアキュムレータ圧以下となる。
背圧制御は、旋回用油圧モータ21の吸い込み側の作動油の圧力(吸い込み側圧又は背圧)を調整して旋回用油圧モータ21の制動トルクを調整する制御である。制動トルクは、吐出側圧と吸い込み側圧との間の差圧と旋回用油圧モータ21の押し退け容積との積として導き出される。旋回用油圧モータ21の押し退け容積は固定値である。そのため、コントローラ30は、例えば、吐出側圧の変化に応じて第1ポンプ14Lの吐出量を調整して吸い込み側圧(背圧)を調整することで差圧を調整でき、ひいては旋回用油圧モータ21の制動トルクを調整できる。実現すべき制動トルク、すなわち実現すべき差圧は、例えば、旋回操作レバー26のレバー操作量に応じて決定される。そのため、実現すべき吸い込み側圧(背圧)も旋回操作レバー26のレバー操作量に応じて決定される。例えば、コントローラ30は、レバー操作量と差圧との対応関係を記憶するルックアップテーブルを参照し、現在のレバー操作量に対応する差圧を導き出す。ルックアップテーブルは、例えば、内部メモリ等に予め記憶されている。或いは、コントローラ30は、所定の計算式を用いて現在のレバー操作量等から実現すべき差圧を動的に導き出してもよい。
背圧制御を実行する場合、コントローラ30は、制御弁オーバーライド機構の電磁弁81L、81Rの一方を第2位置にする。例えば、図3の右方向に傾けてられていた旋回操作レバー26が中立位置方向に戻された場合、コントローラ30は、電磁弁81Rを第2位置にしてコントロールポンプ15とシャトル弁82Rとの間の流路を連通させる。その結果、流量制御弁170は、旋回操作レバー26のレバー操作量とは無関係に左方向にストロークして右弁位置に切り替わる。そして、第1ポンプ14L及び第2ポンプ14Rの少なくとも一方から旋回用油圧モータ21に流れる作動油の流路(PCポート)の開口面積が最大となる。また、旋回用油圧モータ21から作動油タンクTに流れる作動油の流路(CTポート)の開口面積も最大となる。
その上で、コントローラ30は、遮断弁80に制御指令を出力して流量制御弁170と作動油タンクTとの間の流路を遮断し、開閉弁22Gに制御指令を出力して旋回用油圧モータ21の吐出側とアキュムレータ85との間の流路を連通させる。旋回用油圧モータ21から流出する作動油を作動油タンクTではなくアキュムレータ85に流入させるためである。このとき、コントローラ30は、開閉弁22Gが形成する開口面積を調整して排出側圧を調整する。また、コントローラ30は、レギュレータ14Laに制御指令を出力して第1ポンプ14Lの吐出量を調整することで吸い込み側圧を調整する。旋回用油圧モータ21の制動トルクを旋回操作レバー26のレバー操作量に応じた値にするためである。また、排出側圧をアキュムレータ圧以上に調整するためである。なお、開閉弁22Gの開口面積の調整は省略されてもよい。この場合、開閉弁22Gの開口面積は最大とされ、旋回用油圧モータ21の制動トルクは第1ポンプ14Lの吐出量の調整のみによって実現される。
一方、ショベルが旋回減速状態にないと判定した場合(ステップST1のNO)、或いは、吐出側圧がアキュムレータ圧より大きいと判定した場合(ステップST2のNO)、コントローラ30は通常制御を実行する(ステップST4)。例えば、旋回操作レバー26が中立位置方向に戻るときの操作角速度が大きい場合に吐出側圧はアキュムレータ圧より大きくなる。
通常制御は、旋回操作レバー26のレバー操作量に応じて流量制御弁170を動かす制御である。
通常制御を実行する場合、コントローラ30は、制御弁オーバーライド機構の電磁弁81L、81Rを第1位置にしてコントロールポンプ15とシャトル弁82L、82Rとの間の流路を遮断する。その結果、流量制御弁170は、旋回操作レバー26のレバー操作量に応じてストロークする。例えば、図3の右方向に旋回操作レバー26が傾けられた場合、流量制御弁170は左方向にストロークする。ストローク量は旋回操作レバー26の傾斜角が大きいほど大きい。また、図3の右方向に傾けてられていた旋回操作レバー26が中立位置に戻された場合、流量制御弁170は中立弁位置に戻る。
次に、図6を参照し、傾斜位置にある旋回操作レバー26を急激に中立位置に戻した場合等、旋回減速時に通常制御を実行する場合における図2の油圧回路の状態を説明する。なお、図6の太実線は旋回用油圧モータ21の吸い込み側に流入する作動油の流れを示す。また、太点線は旋回用油圧モータ21の吐出側から流出する作動油の流れを示す。
旋回操作レバー26が中立位置に戻されると、流量制御弁170は中立弁位置に切り替わる。中立弁位置に戻った流量制御弁170は、旋回用油圧モータ21と第1ポンプ14Lとの間の連通、及び、旋回用油圧モータ21と作動油タンクTとの間の連通を遮断する。そのため、旋回用油圧モータ21の吐出側ポート21Lの作動油の圧力は増大する。上部旋回体3の慣性によって旋回用油圧モータ21の回転(吐出側ポート21Lからの作動油の吐出)が継続され且つ作動油タンクTへの流出が遮断されて吐出側ポート21Lの作動油が圧縮されるためである。
このとき、コントローラ30は、開閉弁22Gに対して指令を出力し、開閉弁22Gを第1位置に切り替える。開閉弁22Gが第1位置に切り替えられると、吐出側ポート21Lの作動油はアキュムレータ85に向かって流出する。そして、アキュムレータ85は旋回用油圧モータ21から流出する作動油を蓄積する。
一方、旋回用油圧モータ21の吸い込み側ポート21Rの作動油の圧力は低下する。上部旋回体3の慣性によって旋回用油圧モータ21の回転(吸い込み側ポート21Rへの作動油の吸い込み)が継続され且つ第1ポンプ14Lからの流入が遮断されて吸い込み側ポート21Rの作動油が不足するためである。
旋回用油圧モータ21の吸い込み側ポート21Rの作動油の圧力が低下すると、チェック弁91及びチェック弁23Rを通じて作動油タンクTからの作動油が補給される。
このとき、コントローラ30は、切替弁86に対して指令を出力し、切替弁86を第1位置に切り替えてもよい。切替弁86が第1位置に切り替えられると、回生用油圧モータ14Aは旋回用油圧モータ21の吸い込み側ポート21Rに向けて作動油を吐出できる。そのため、回生用油圧モータ14Aは、吸い込み側ポート21Rでのキャビテーションの発生を防止できる。チェック弁91は回生用油圧モータ14Aから作動油タンクTへの作動油の流れを遮断する。
以上の構成により、図2の油圧回路は、旋回操作レバー26を急激に中立位置に戻した場合等、旋回減速時に通常制御を実行する場合に旋回用油圧モータ21から流出する作動油をアキュムレータ85に蓄積できる。また、任意のタイミングでその蓄積した作動油を回生用油圧モータ14Aに向けて放出できる。そのため、回生用油圧モータ14Aは、エンジン負荷が大きい場合等、任意のタイミングで回生エネルギを再使用してエンジン11をアシストでき、ショベルの運動性能を向上させることができる。
また、旋回回生回路が一方向流れの閉ループを形成しているため、リーク等によってその閉ループから出た分の作動油を補うだけで旋回回生回路を機能させることができ、エンジン出力をほとんど使わずに旋回回生回路を継続的に機能させることができる。
次に、図7を参照し、傾斜位置にある旋回操作レバー26を緩やかに中立位置方向に戻した場合等、旋回減速時に背圧制御を実行する場合における図2の油圧回路の状態を説明する。なお、図7の太実線は旋回用油圧モータ21の吸い込み側に流入する作動油の流れを示す。また、太点線は旋回用油圧モータ21の吐出側から流出する作動油の流れを示す。
旋回操作レバー26が中立位置方向に戻されると、コントローラ30は圧力センサS3L、S3R(図3参照。)の出力に基づいてショベルが旋回減速状態にあると判定する。ショベルが旋回減速状態にあると判定すると、コントローラ30は圧力センサS1、S2L、S2Rの出力に基づいて吐出側圧がアキュムレータ圧以下であるか否かを判定する。
そして、吐出側圧がアキュムレータ圧以下であると判定すると、コントローラ30は背圧制御を実行する。
具体的には、コントローラ30は、制御弁オーバーライド機構の電磁弁81R(図3参照。)を第2位置にしてコントロールポンプ15とシャトル弁82Rとの間の流路を連通させる。その結果、流量制御弁170は、旋回操作レバー26のレバー操作量とは無関係に左方向にストロークして右弁位置に切り替わる。そして、第1ポンプ14Lから旋回用油圧モータ21に流れる作動油の流路(PCポート)の開口面積が最大となる。
その上で、コントローラ30は、遮断弁80に制御指令を出力して流量制御弁170と作動油タンクTとの間の流路を遮断し、開閉弁22Gに制御指令を出力して旋回用油圧モータ21の吐出側とアキュムレータ85との間の流路を連通させる。その結果、旋回用油圧モータ21から流出する作動油は作動油タンクTではなくアキュムレータ85に流入する。このとき、コントローラ30は、開閉弁22Gが形成する開口面積を調整して排出側圧を調整する。また、コントローラ30は、レギュレータ14Laに制御指令を出力して第1ポンプ14Lの吐出量を調整することで吸い込み側圧を調整する。旋回用油圧モータ21の制動トルクを旋回操作レバー26のレバー操作量に応じた値にするためである。また、排出側圧をアキュムレータ圧以上に調整するためである。
以上の構成により、図2の油圧回路は、比較的大きな制動トルクで上部旋回体3の旋回を急停止させる場合ばかりでなく、比較的小さな制動トルクで旋回速度を徐々に低減させる場合にも、旋回用油圧モータ21から流出する作動油をアキュムレータ85に蓄積できる。そして、特に操作者が旋回操作レバー26を最大傾斜位置と中立位置との間の中間位置で維持するときに良好な旋回操作性を実現できる。
次に図8を参照し、蓄積処理を実行する際の各種物理量の時間的推移について説明する。図8は蓄積処理を実行する際のレバー操作量、吐出側圧、吸い込み側圧、吐出側圧と吸い込み側圧との差圧、吸い込み流量、及び旋回速度の時間的推移を示すタイムチャートである。実線及び一点鎖線は背圧制御を実行する場合の各種物理量の時間的推移を示し、破線は背圧制御の代わりに通常制御を実行する場合の各種物理量の時間的推移を示す。
図8(A)は旋回操作レバー26のレバー操作量の時間的推移を示す。本実施例では、旋回操作レバー26は既に最大操作量まで操作されており、時刻t1に至るまで最大操作量が維持される。そして、時刻t1において中立位置に戻す操作が開始され、実線又は破線の推移では時刻t2において中立位置(レバー操作量ゼロ)に至り、一点鎖線の推移では時刻t3において中立位置に至る。
図8(B)は吐出側圧の時間的推移を示し、図8(C)は吸い込み側圧の時間的推移を示し、図8(D)は吐出側圧と吸い込み側圧との差圧の時間的推移を示す。また、図8(E)は旋回用油圧モータ21の吸い込み側に流入する作動油の流量である吸い込み流量の時間的推移を示し、図8(F)は旋回速度の時間的推移を示す。
最初に破線の推移を参照して背圧制御を実行せずに通常制御を実行する場合の各種物理量の時間的推移について説明する。時刻t1において旋回操作レバー26を中立位置に戻す操作が開始されると、流量制御弁170は旋回操作レバー26のレバー操作量の減少に伴い中立弁位置に向かって移動する。コントローラ30は流量制御弁170を強制的に移動させることはない。また、遮断弁80を第1位置として流量制御弁170と作動油タンクTとの間の流路を連通させる。油圧回路の状態は、例えば、図4に示すように旋回加速時と同様の状態になる。
旋回操作レバー26が中立位置になるまでは流量制御弁170は右弁位置又は左弁位置と中立弁位置との間の中間位置にある。すなわち、第1ポンプ14Lと旋回用油圧モータ21との間の流路(PCポート)の開口面積、及び、旋回用油圧モータ21と作動油タンクTとの間の流路(CTポート)の開口面積を、レバー操作量に応じた大きさに調整している。
そのため、図4に示すように、第1ポンプ14Lが吐出する作動油が旋回用油圧モータ21の吸い込み側に流入し、且つ、旋回用油圧モータ21の吐出側から流出する作動油が作動油タンクTに排出されている。
その結果、レバー操作量に見合う制動トルクを発生させるべく、吐出側圧は図8(B)の破線で示すように増加し、吸い込み側圧は図8(C)の破線で示すように低下し、その差圧は図8(D)の破線で示すように減速側に増加する。減速側は、吐出側圧が吸い込み側圧よりも高い側を意味し、加速側は吐出側圧が吸い込み側圧よりも低い側を意味する。
吸い込み流量は図8(E)の破線で示すようにPCポートの開口面積の減少に従って減少する。旋回速度は図8(F)の破線で示すようにレバー操作量の減少に従って減少する。
このように、背圧制御を実行せずに通常制御を実行する場合、ショベルに搭載された油圧回路は旋回用油圧モータ21から流出する作動油をアキュムレータ85に流入させることができない。旋回用油圧モータ21から流出する作動油が作動油タンクTに排出されてしまうためである。
そこで、本発明の実施例に係るショベルでは、コントローラ30が背圧制御を実行し、上部旋回体3の旋回を比較的緩やかに減速・停止させる場合にも旋回用油圧モータ21から流出する作動油をアキュムレータ85に流入させる。
ここで実線の推移を参照して背圧制御を実行する場合の各種物理量の時間的推移の1例について説明する。この例では、レバー操作量、差圧、及び旋回速度の時間的推移は通常制御を実行する場合と同じである。すなわち、背圧制御を実行する場合のショベルの挙動は通常制御を実行する場合と同じである。
時刻t1において旋回操作レバー26を中立位置に戻す操作が開始されると、コントローラ30は、通常制御の場合と異なり、制御弁オーバーライド機構(図3参照。)を用いて流量制御弁170を左右何れかのストロークエンドまで移動させる。また、遮断弁80に制御指令を出力して流量制御弁170と作動油タンクTとの間の流路を遮断し、開閉弁22Gに制御指令を出力して旋回用油圧モータ21の吐出側とアキュムレータ85との間の流路を連通させる。油圧回路の状態は、例えば、図7に示す状態になる。
その結果、吐出側圧は、図8(B)の実線で示すように、通常制御の場合よりも高い圧力まで増加する。作動油タンクTへの流出が遮断されるためである。その圧力は、例えば、リリーフ弁22L、22Rのリリーフ圧Prより僅かに低い圧力である。一方で、吸い込み側圧は、通常制御の場合と異なり、図8(C)の実線で示すように増加する。第1ポンプ14Lが吐出する作動油を押し込むためである。
また、コントローラ30は、通常制御のときの差圧(制動トルク)と同じ差圧(制動トルク)を実現すべく、吐出側圧が増大した分だけ吸い込み側圧を増大させる。その結果、吸い込み流量は、図8(E)の実線で示すように、通常制御の場合よりも押し込み分だけ多めに推移しながら徐々に減少する。
このように、背圧制御を実行する場合、ショベルに搭載された油圧回路は、通常制御の場合と同じ差圧(減速トルク)及び旋回速度を実現しながら、旋回用油圧モータ21から流出する作動油をアキュムレータ85に流入させることができる。
次に一点鎖線の推移を参照して背圧制御を実行する場合の各種物理量の時間的推移の別の1例について説明する。
この例では、レバー操作量は前述の2つの例に比べて緩やかに中立位置に戻され、時刻t2よりも遅い時刻t3で中立位置に至る。そのため、吐出側圧は、図8(B)の一点鎖線で示すように、時刻t3まで実線の推移と同じレベルを維持する。また、吸い込み側圧は、図8(C)の一点鎖線で示すように、時刻t1を過ぎたあたりで実線の推移よりも高めに推移し、且つ、実線の推移よりも長く高い状態を維持する。そのため、差圧(減速トルク)は、図8(D)の一点鎖線で示すように、時刻t1を過ぎたあたりで実線の推移よりも低めに推移し、且つ、実線の推移よりも長くゼロより高いレベルを維持する。
その結果、吸い込み流量は、図8(E)の一点鎖線で示すように、時刻t1を過ぎたあたりで実線の推移よりも高めに推移し、且つ、実線の推移よりも長くゼロより高いレベルを維持する。また、旋回速度は、図8(F)の一点鎖線で示すように、時刻t1を過ぎたあたりで実線の推移よりも高めに推移し、且つ、実線の推移よりも長くゼロより高いレベルを維持する。
このように、コントローラ30は、操作者が旋回操作レバー26を緩やかにと中立位置に戻す場合であっても、レバー操作量に見合う減速トルク及び旋回速度を実現しながら、旋回用油圧モータ21から流出する作動油をアキュムレータ85に流入させることができる。
次に、図9を参照し、図1のショベルに搭載される油圧回路の別の構成例について説明する。図9の油圧回路は、主に、アームシリンダ8に流出入する作動油の向き及び流量が2つの流量制御弁171A、171Bによって制御される点、ブームシリンダ7のボトム側油室に流出入する作動油の流量が2つの流量制御弁172A、172Bによって制御される点、合流切替部が合流弁ではなく可変ロードチェック弁によって構成される点(合流弁が省略される点)で、図2の油圧回路と異なるがその他の点で共通する。そのため、共通点の説明を省略しながら、相違点を詳細に説明する。共通の構成要素は同じ参照符号で参照される。
流量制御弁171A、171Bは、アームシリンダ8に流出入する作動油の向き及び流量を制御する弁であり、図2の流量制御弁171に対応する。具体的には、流量制御弁171Aは、第1作動油をアームシリンダ8に供給し、流量制御弁171Bは、第2作動油をアームシリンダ8に供給する。したがって、アームシリンダ8には、第1作動油と第2作動油とが同時に流入し得る。
流量制御弁172Aは、ブームシリンダ7に流出入する作動油の向き及び流量を制御する弁であり、図2の流量制御弁172に対応する。
流量制御弁172Bは、ブーム上げ操作が行われた場合に、ブームシリンダ7のボトム側油室に第1作動油を流入させる弁であり、ブーム下げ操作が行われた場合には、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油を第1作動油に合流させることができる。
流量制御弁173は、バケットシリンダ9に流出入する作動油の向き及び流量を制御する弁であり、図2の流量制御弁173に対応する。
可変ロードチェック弁50、51A、51B、52A、52B、53は、流量制御弁170、171A、171B、172A、172B、173のそれぞれと第1ポンプ14L及び第2ポンプ14Rのうちの少なくとも一方との間の連通・遮断を切り替え可能な2ポート2位置の弁である。これら6つの可変ロードチェック弁は、それぞれが連動して動作することで合流切替部としての機能を果たし、図2の合流弁55の機能を実現できる。そのため、図9の油圧回路では図2の合流弁55が省略される。
統一ブリードオフ弁56L、56Rは、第1作動油の作動油タンクTへの排出量を制御可能な2ポート2位置の弁であり、図2の統一ブリードオフ弁56L、56Rに対応する。
なお、図9の6つの流量制御弁は何れも6ポート3位置のスプール弁であり、図2の流量制御弁と違い、センターバイパスポートを有する。そのため、図9の統一ブリードオフ弁56Lは流量制御弁171Aの下流に配置され、統一ブリードオフ弁56Rは流量制御弁171Bの下流に配置される。
切替弁62Aは、ブームシリンダ7から排出される作動油を回生用油圧モータ14Aの吸い込み側に流入させるか否かを切り替え可能な3ポート3位置の弁である。具体的には、切替弁62Aは、第1位置(左弁位置)にある場合にブームシリンダ7のボトム側油室と回生用油圧モータ14Aの吸い込み側との間を連通させ、第2位置(右弁位置)にある場合にブームシリンダ7のロッド側油室と回生用油圧モータ14Aの吸い込み側との間を連通させ、第3位置(中立弁位置)にある場合にそれらの間の連通を遮断する。
切替弁62Bは、ブームシリンダ7のロッド側油室から排出される作動油を作動油タンクTに排出するか否かを切り替え可能な2ポート2位置の可変リリーフ弁である。具体的には、切替弁62Bは、第1位置にある場合にブームシリンダ7のロッド側油室と作動油タンクTとの間を連通し、第2位置にある場合にその連通を遮断する。なお、切替弁62Bは、第1位置において、作動油タンクTからの作動油の流れを遮断するチェック弁を有する。
切替弁62Cは、ブームシリンダ7のボトム側油室から排出される作動油を作動油タンクTに排出するか否かを切り替え可能な2ポート2位置の可変リリーフ弁である。具体的には、切替弁62Cは、第1位置にある場合にブームシリンダ7のボトム側油室と作動油タンクTとの間を連通し、第2位置にある場合にその連通を遮断する。なお、切替弁62Cは、第1位置において、作動油タンクTからの作動油の流れを遮断するチェック弁を有する。
次に、図10を参照し、ブーム下げ操作時における図9の油圧回路の状態を説明する。なお、図10の太実線はブームシリンダ7のロッド側油室に流入する作動油の流れを示す。また、太点線はブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油の流れを示す。
コントローラ30は、例えば、ブーム下げ操作が行われたと判断すると、可変ロードチェック弁52A及び切替弁62Aを第1位置に切り替える。流量制御弁172Aは、ブーム操作レバーの操作量に応じたパイロット圧を受けて右弁位置に移動し、第2作動油をブームシリンダ7のロッド側油室に流入させる。また、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油を切替弁62A経由でアキュムレータ85又は回生用油圧モータ14Aの吸い込み側に流入させる。なお、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油を再生弁7a経由でロッド側油室に再生してもよい。
また、図9の油圧回路は、アームシリンダ8、バケットシリンダ9等のブームシリンダ7以外の他の油圧アクチュエータから流出する作動油をアキュムレータ85又は回生用油圧モータ14Aの吸い込み側に流入させる構成であってもよい。
次に図11を参照し、傾斜位置にある旋回操作レバー26を中立位置方向に戻した場合等、旋回減速時に背圧制御を実行する場合における図9の油圧回路の状態を説明する。なお、図11の太実線は旋回用油圧モータ21の吸い込み側に流入する作動油の流れを示す。また、太点線は旋回用油圧モータ21の吐出側から流出する作動油の流れを示す。
旋回操作レバー26が中立位置方向に戻されると、コントローラ30は圧力センサS3L、S3R(図3参照。)の出力に基づいてショベルが旋回減速状態にあると判定する。ショベルが旋回減速状態にあると判定すると、コントローラ30は圧力センサS1、S2L、S2Rの出力に基づいて吐出側圧がアキュムレータ圧以下であるか否かを判定する。
そして、吐出側圧がアキュムレータ圧以下であると判定すると、コントローラ30は背圧制御を実行する。
具体的には、コントローラ30は、制御弁オーバーライド機構の電磁弁81R(図3参照。)を第2位置にしてコントロールポンプ15とシャトル弁82Rとの間の流路を連通させる。その結果、流量制御弁170は、旋回操作レバー26のレバー操作量とは無関係に左方向にストロークして右弁位置に切り替わる。そして、第1ポンプ14Lから旋回用油圧モータ21に流れる作動油の流路の開口面積が最大となる。
その上で、コントローラ30は、遮断弁80に制御指令を出力して流量制御弁170と作動油タンクTとの間の流路を遮断し、開閉弁22Gに制御指令を出力して旋回用油圧モータ21の吐出側とアキュムレータ85との間の流路を連通させる。その結果、旋回用油圧モータ21から流出する作動油は作動油タンクTではなくアキュムレータ85に流入する。このとき、コントローラ30は、開閉弁22Gが形成する開口面積を調整して排出側圧を調整する。また、コントローラ30は、レギュレータ14Laに制御指令を出力して第1ポンプ14Lの吐出量を調整することで吸い込み側圧を調整する。旋回用油圧モータ21の制動トルクを旋回操作レバー26のレバー操作量に応じた値にするためである。また、排出側圧をアキュムレータ圧以上に調整するためである。
以上の構成により、図9の油圧回路は、図2の油圧回路と同様に、比較的大きな制動トルクで上部旋回体3の旋回を急停止させる場合ばかりでなく、比較的小さな制動トルクで旋回速度を徐々に低減させる場合にも、旋回用油圧モータ21から流出する作動油をアキュムレータ85に蓄積できる。
また、図9の油圧回路は、図2の油圧回路による効果に加え、ブーム下げ操作時にブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油を回生用油圧モータ14Aの吸い込み側に供給できるという追加的な効果を有する。
また、図9の油圧回路は、旋回回生回路が一方向流れの閉ループを形成しているため、リーク等によってその閉ループから出た分の作動油をブームシリンダ7からの作動油で補うだけで旋回回生回路を機能させることができ、エンジン出力を使わずに旋回回生回路を継続的に機能させることができる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。