以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1(A)〜(C)は、本発明の第1実施形態におけるシールドトンネルの構築方法を示す。
尚、本実施形態では、便宜上、トンネル掘進方向を前進方向として前後左右を規定している。また本実施形態では、いわゆる泥土圧式のシールド掘進機を例にとってシールド掘進機の構成を説明するが、シールド掘進機の種類はこれに限らない。
シールドトンネルの施工に用いられるシールド掘進機1は、その本体を成す円筒状のスキンプレート2と、スキンプレート2の前端部に設けられる掘削用のカッタヘッド3と、カッタヘッド3の後方に離間してスキンプレート2に配置されるシールド隔壁(バルクヘッド)4とを含んで構成される。
カッタヘッド3はシールド隔壁4に回転自在に支持されている。カッタヘッド3は、シールド隔壁4の後面に設置された駆動用モータ(図示せず)を駆動源として、回転しながら地山を掘削する。
カッタヘッド3とシールド隔壁4との間には、これらとスキンプレート2とによりカッタチャンバ(図示せず)が区画形成されている。このカッタチャンバ内では、カッタヘッド3による掘削で生じた掘削土砂が滞留する。シールド掘進機1は、このカッタチャンバ内の掘削土砂をシールド隔壁4の後方に搬出するスクリューコンベア(図示せず)を備えている。
シールド掘進機1は、カッタヘッド3及びシールド隔壁4の後方のスキンプレート2内にエレクタ装置(図示せず)を備える。このエレクタ装置は、円弧状断面を有するセグメント7を組立ててセグメントリングを構築すると共に、隣接するセグメントリング同士をトンネル軸方向で連結することで円筒状の覆工体8を構築する。
シールド掘進機1のスキンプレート2より内側には、複数の推進ジャッキ5が、スキンプレート2の内面に沿ってスキンプレート2の周方向に互いに間隔を空けて配置されている。推進ジャッキ5は、シリンダとロッドとにより構成される油圧ジャッキであり、伸縮自在である。推進ジャッキ5のシリンダは、その前端がスキンプレート2に固定されており、後端側にて、推進ジャッキ5のロッドが進出・退入可能となっている。推進ジャッキ5のロッドの後端部を既設のセグメント7に当接させた状態で推進ジャッキ5を伸長作動させることにより、シールド掘進機1は推進力を得ることができる。このようにして、推進ジャッキ5は、既設のセグメント7から反力を取ってシールド掘進機1を推進させる。
覆工体8内におけるシールド掘進機1の後方には牽引棒9を介して後続台車10が連結されている。後続台車10には、シールド掘進機1を作動させるための油圧機器や電気設備等が設けられている。ここで、図1は、後続台車10が1つの台車のみで構成される例を示している。一方、後述する図10は、後続台車10が複数の台車(後述する図10では4つの台車10a〜10d)によって構成される例を示している。
図1に示すように、覆工体8の底部には枕木11が横架されている。枕木11の上面側には、後続台車10が走行するための左右一対のレール12がトンネル軸方向に沿って敷設されている。ここで、軌道13は、枕木11とレール12とにより構成されている。後続台車10は軌道13上(特にレール12上)を走行可能である。
シールド掘進機1には、図示しないヒンジ機構を介して、牽引棒9の前端が取り付けられている。牽引棒9の後端は、図示しないヒンジ機構を介して、後続台車10の先頭部に取り付けられている。これにより、牽引棒9は、シールド掘進機1に対して左右方向に揺動することができ、更に、後続台車10は、牽引棒9に対して左右方向に揺動することができる。
後続台車10は、レール12によって案内されながら、牽引棒9を介してシールド掘進機1により牽引されつつ、シールド掘進機1の掘進に追従して、軌道13上を前進する。
次に、シールドトンネルの構築方法について図1を用いて説明する。
まず、図1(A)及び(B)に示すように、推進ジャッキ5を短縮した状態で、スキンプレート2内にて前述のエレクタ装置を用いて、セグメント7を組み立てて、新たなセグメントリングを構築する。この新たなセグメントリングは覆工体8を構成するものである。
次に、図1(C)に示すように、推進ジャッキ5を伸長作動させることにより、シールド掘進機1を推進させる。
このようにセグメントリングの構築とシールド掘進機1の推進とを繰り返すことで、覆工体8を含むシールドトンネルが構築される。
図1に示すように、後続台車10の上部には、測量機20が設けられている。測量機20は、いわゆる自動追尾式の測距測角儀(トータルステーション)である。ここで、測量機20は本発明の「第1の測距測角儀」に対応するものである。測量機20は後続台車10に設けられて後続台車10と一体的に移動可能であるので、測量機20はシールド掘進機1の掘進に追従して移動し得る。
シールド掘進機1には複数のターゲットTA1,TA2(後述する図5(A)及び図6(A)参照)が設けられている。ターゲットTA1,TA2は反射プリズム等により構成されている。尚、本実施形態では、シールド掘進機1に設けられるターゲットが2つであるが、この他、3つ以上であってもよいことは言うまでもない。
測量機20は、ターゲットTA1,TA2をそれぞれ自動で視準し得る(すなわち自動視準し得る)。この自動視準に関する技術ついては、例えば特許第5196725号公報に記載されているように周知であるので、その説明を省略する。
覆工体8内における後続台車10の後方(すなわち後続台車10より坑口側)には、複数の基準点24a,24b(後述する図5(A)及び図6(A)参照)が設けられている。基準点24a,24bは反射プリズム等により構成されている。尚、本実施形態では、覆工体8内に設けられる基準点が2つであるが、この他、3つ以上であってもよいことは言うまでもない。
測量機20は、基準点24a,24bをそれぞれ自動で視準し得る(すなわち自動視準し得る)。
図2は、地中(トンネル坑内)におけるシールド掘進機1の位置を測量するための位置測量システム30の概略構成を示す。
位置測量システム30は、測量機20と、推進ジャッキ5の伸長量を測定する伸長量測定センサ31と、処理装置32と、記録装置33と、表示装置34と、を備える。位置測量システム30のうち、処理装置32と、記録装置33と、表示装置34とについては、例えば、後続台車10か、又は、トンネル工事現場の詰所等に配置され得る。
測量機20と処理装置32とは信号線41を介して接続されている。伸長量測定センサ31と処理装置32とは信号線42を介して接続されている。処理装置32と記録装置33とは信号線43を介して接続されている。処理装置32と表示装置34とは信号線44を介して接続されている。尚、本実施形態では、測量機20と、伸長量測定センサ31と、処理装置32と、記録装置33と、表示装置34とを信号線41〜44で接続することで相互間の通信を行っているが、この他、信号線41〜44の少なくとも1つを無線通信機器(送信機及び受信機)に変更して相互間の無線通信を行うようにしてもよい。
処理装置32は、CPU、メモリ、ハードディスク等を備え、各種演算処理を行う。処理装置32は、トンネル設計上の座標系設定部51と、座標情報記憶部52と、後続台車移動距離算出部53と、測量機移動距離算出部54と、測量機位置特定部55と、シールド掘進機位置特定部56と、時計57とを有する。
本実施形態において、トンネル設計上の座標系設定部51は、後述する図5(B)及び図6(B)に示すように、原点からx軸に沿ってxが増加する方向(x方向)を北向きとし、かつ、原点からy軸に沿ってyが増加する方向(y方向)を東向きとする、トンネル設計上の2次元座標系(直交座標系)を設定する。尚、本実施形態では、トンネル設計上の座標系設定部51が、トンネル設計上の2次元座標系を設定しているが、この他、トンネル設計上の座標系設定部51がトンネル設計上の3次元座標系を設定してもよいことは言うまでもない。
また、本実施形態において、トンネル設計上の座標系設定部51は、x方向(北向き)をトンネル設計上の基準方向として設定している。
座標情報記憶部52は、トンネル設計上の座標系設定部51にて設定された座標系における軌道13(特にレール12)の敷設位置(座標)を記憶している。すなわち、座標情報記憶部52は、軌道13(特にレール12)の線形データを記憶している。ここで、軌道13(特にレール12)の線形データは、本発明の「移動データ」に含まれ得る。
尚、座標情報記憶部52は、トンネル設計上の座標系設定部51にて設定された座標系における基準点24a,24bの位置(座標)を更に記憶している。
後続台車移動距離算出部53は、伸長量測定センサ31にて測定された推進ジャッキ5の伸長量に基づいて、後続台車10の移動距離を算出する。
測量機移動距離算出部54は、後続台車移動距離算出部53にて算出された後続台車10の移動距離に基づいて、測量機20の移動距離を算出する。尚、本実施形態では、測量機20が後続台車10に設けられて後続台車10と一体的に移動可能であるので、測量機20の移動距離は後続台車10の移動距離に一致している。
測量機位置特定部55は、トンネル設計上の座標系設定部51にて設定された座標系における測量機20の位置(座標)及び基準方向(例えば、後述する図5(B)及び図6(B)に示す基準方向S0,S1及び角度θ0,θ1)を特定する。
シールド掘進機位置特定部56は、トンネル設計上の座標系設定部51にて設定された座標系におけるシールド掘進機1の位置(座標)及び向き(例えばどの方位を向いているか)を特定する。また、シールド掘進機位置特定部56は、特定したシールド掘進機1の位置及び向きと時計57から得られる時刻とを関連付けて、シールド掘進機1の位置及び向きの時系列データを生成する。ここで、本実施形態では、特定されるシールド掘進機1の位置(座標)が、後述する図5(A)及び図6(A)に示す求点K(カッタヘッド3の中央の先端部分)の位置(座標)であるとして以下説明するが、特定されるシールド掘進機1の位置(座標)は、カッタヘッド3の中央の先端部分の位置(座標)に限らない。
記録装置33はプリンタと記憶装置との少なくとも一方を含む。記録装置33がプリンタを含む場合には、当該プリンタによって、前述のシールド掘進機1の位置及び向きの時系列データが紙等に印刷される。記録装置33が記憶装置を含む場合には、当該記憶装置が、前述のシールド掘進機1の位置及び向きの時系列データを記憶する。
表示装置34は、前述のシールド掘進機1の位置及び向きの時系列データを表示するものであり、例えばディスプレイである。
図3は、本実施形態におけるシールド掘進機1の位置測量方法を示すフローチャートである。このフローは、シールド掘進機1の掘進開始前の掘進停止時から掘進の開始を経て掘進が完了するまでの、シールド掘進機1の位置測量方法を示している。また、このフローは1セグメントリング分の掘進毎に繰り返され得る。
まず、シールド掘進機1の掘進停止時において、ステップS1にて、測量機20の位置P0及び基準方向S0を特定する。
この測量機20の位置P0及び基準方向S0の特定について、図5(A)及び(B)を用いて説明する。
図5(A)は、平面視での、掘進開始前(掘進停止時)のシールド掘進機1の位置測量方法を示す。図5(B)は、トンネル設計上の座標系設定部51にて設定された座標系における測量機20の位置P0及び基準方向S0を示す。
シールド掘進機1の掘進停止時には、測量機20から基準点24a,24bを自動視準して測距・測角して、後方交会法を用いて、測量機20の位置P0(座標(x0,y0))及び基準方向S0を特定する。具体的には、例えば、測量機20からそれより後方の基準点24a,24bを自動視準して、既知の基準点24a,24b間の距離と、測量機20によって測定される測量機20から基準点24aまでの距離と、測量機20によって測定される測量機20から基準点24bまでの距離とに基づいて、測量機20の位置P0(座標(x0,y0))及び基準方向S0を特定する。
ここで、「測量機20の基準方向」とは、トンネル設計上の基準方向(本実施形態ではx方向(北向き))から測量機20を見たときの角度(トンネル設計上の基準方向から右回りの角度)を意味する。すなわち、図5(B)に示すように、測量機20の基準方向S0は、トンネル設計上の基準方向(本実施形態ではx方向(北向き))から測量機20を見たときの角度(トンネル設計上の基準方向から右回りの角度)θ0に対応する。
ここで、角度θ0は以下の式(1)により算出され得る。
θ0=arctan(y0/x0) (1)
尚、前述のステップS1における測量機20の位置P0及び基準方向S0の特定では、前述のトンネル設計上の座標系設定部51、座標情報記憶部52、及び測量機位置特定部55が用いられ得る。
図3のステップS2では、シールド掘進機1の位置(求点Kの位置)とシールド掘進機1の向きとを特定する。
具体的には、ステップS2では、まず、図5(A)に示すように、測量機20からターゲットTA1を自動視準して、測量機20からターゲットTA1までの距離と、ターゲットTA1の視準角とを測定し、この測定結果と、前述のステップS1にて特定された測量機20の位置P0及び基準方向S0とに基づいて、ターゲットTA1の位置(座標)を特定する。換言すれば、測量機20からターゲットTA1を自動視準して、測量機20からターゲットTA1までの距離と、ターゲットTA1の視準角とを測定することで、ターゲットTA1の測量機20からの相対位置(例えば測量機20を原点とし、基準方向S0を基準方向(基準)とする極座標系などの座標系における位置座標)を検出し、この検出された相対位置と、前述のステップS1にて特定された測量機20の位置P0及び基準方向S0とに基づいて、前述の直交座標系におけるターゲットTA1の位置(絶対位置)を特定する。
次に、測量機20からターゲットTA2を自動視準して、測量機20からターゲットTA2までの距離と、ターゲットTA2の視準角とを測定し、この測定結果と、前述のステップS1にて特定された測量機20の位置P0及び基準方向S0とに基づいて、ターゲットTA2の位置(座標)を特定する。換言すれば、測量機20からターゲットTA2を自動視準して、測量機20からターゲットTA2までの距離と、ターゲットTA2の視準角とを測定することで、ターゲットTA2の測量機20からの相対位置(例えば測量機20を原点とし、基準方向S0を基準方向(基準)とする極座標系などの座標系における位置座標)を検出し、この検出された相対位置と、前述のステップS1にて特定された測量機20の位置P0及び基準方向S0とに基づいて、前述の直交座標系におけるターゲットTA2の位置(絶対位置)を特定する。
ここで、ステップS2において、「視準角」とは、測量機20の基準方向(ステップS2では基準方向S0)からターゲットTA1,TA2を見たときの角度(基準方向S0から右回りの角度)を意味する。図5(A)に示すように、例えばターゲットTA2の視準角α0は、基準方向S0からターゲットTA2を見たときの角度(例えば、基準方向S0から右回りの角度)に対応する。
例えば、ターゲットTA2の位置(座標)を(X0,Y0)とし、かつ、測量機20からターゲットTA2までの距離をLとすると、x座標X0及びy座標Y0は以下の式(2)及び(3)により算出され得る。
X0=x0+Lcos(θ0+α0) (2)
Y0=y0+Lsin(θ0+α0) (3)
前述の式(2)及び(3)より、測量機20の位置(前述の直交座標系における座標(x0,y0))及び基準方向S0(前述の直交座標系における角度θ0)と、ターゲットTA2の測量機20からの相対位置(前述の極座標系における座標(L,α0))とに基づいて、ターゲットTA2の位置(前述の直交座標系における座標(X0,Y0))を特定できることが明らかである。
このターゲットTA2の位置の特定と同様にターゲットTA1の位置も特定され得る。
次に、特定されたターゲットTA1,TA2の位置に基づいて、シールド掘進機1の位置(求点Kの位置)とシールド掘進機1の向きとを特定する。
求点Kについては、ターゲットTA1,TA2と位置関係(相互間の距離)が既知かつ不変であるので、ターゲットTA1,TA2の位置が特定されると、それに応じて求点Kの位置が一義的に定まる。シールド掘進機1の向きについても、ターゲットTA1,TA2の位置が特定されると、それに応じて一義的に定まる。
尚、前述のステップS2におけるシールド掘進機1の位置(求点Kの位置)とシールド掘進機1の向きとの特定では、前述のシールド掘進機位置特定部56が用いられ得る。
次に、図3のステップS3に進み、推進ジャッキ5の伸長作動を開始して、シールド掘進機1の掘進を開始する。
ステップS4では、掘進中におけるシールド掘進機1の位置(座標)及び向きのリアルタイムに測定する(シールド掘進機1の位置の自動測量を行う)。このリアルタイム測定について、図4、図6、及び図7を用いて説明する。
図4は、掘進中のシールド掘進機1の位置測量方法を示すフローチャートである。
図6(A)は、平面視での、掘進中のシールド掘進機1の位置測量方法を示す。図6(B)は、トンネル設計上の座標系設定部51にて設定された座標系における測量機20の位置P0,P1及び基準方向S0,S1を示す。
図7は、推進ジャッキ5の伸長量JLと測量機20の移動距離SD及び後続台車10の移動距離CDとの関係を示す。
本実施形態では、今回のシールド掘進機1の位置測量を行うために、過去のシールド掘進機1の位置測量時に特定された測量機20の位置(座標)及び基準方向を用いる。特に本実施形態では、今回のシールド掘進機1の位置測量を行うために、前回のシールド掘進機1の位置測量時に特定された測量機20の位置(座標)及び基準方向を用いる。ここにおいて、図4に示すステップS11〜S13に関する以下の説明では、前回のシールド掘進機1の位置測量時から今回のシールド掘進機1の位置測量時までに測量機20の位置P0及び基準方向S0が位置P1及び基準方向S1に変わった場合について説明する(図5及び図6参照)。
まず、ステップS11にて、前回のシールド掘進機1の位置測量時から今回のシールド掘進機1の位置測量時までのシールド掘進機1の推進ジャッキ5の伸長量JLに基づいて、前回のシールド掘進機1の位置測量時から今回のシールド掘進機1の位置測量時までの後続台車10の移動距離CDを算出し、この後続台車10の移動距離CDに基づいて、前回のシールド掘進機1の位置測量時から今回のシールド掘進機1の位置測量時までの測量機20の移動距離SDを算出する。この測量機20の移動距離SDの算出には、図7に示す図(推進ジャッキ5の伸長量JLと測量機20の移動距離SD及び後続台車10の移動距離CDとの関係を示す図)が用いられる。図7に示すように、推進ジャッキ5の伸長量JLが長くなるほど、測量機20の移動距離SD及び後続台車10の移動距離CDが長くなる。これは、前回のシールド掘進機1の位置測量時から今回のシールド掘進機1の位置測量時までの間に推進ジャッキ5が伸長した量(伸長量JL)に応じた移動距離CD分、後続台車10が軌道13上を走行すること、及び、測量機20が後続台車10に設けられてそれと一体的に移動可能であることに基づくものである(すなわち測量機20の移動距離SDと後続台車10の移動距離CDとは同じ距離になる)。この測量機20の移動距離SDの算出には、前述の後続台車移動距離算出部53及び測量機移動距離算出部54が用いられ得る。
また、ステップS11では、座標情報記憶部52から、軌道13(特にレール12)の線形データが測量機位置特定部55に読み込まれる。従って、測量機位置特定部55は、ステップS11にて、前回のシールド掘進機1の位置測量時から今回のシールド掘進機1の位置測量時までの測量機20の移動距離SDと軌道13(特にレール12)の線形データとを含む移動データを取得することができる。
次に、ステップS12では、測量機位置特定部55にて、今回のシールド掘進機1の位置測量時における測量機20の位置P1及び基準方向S1を特定する。
今回のシールド掘進機1の位置測量時における測量機20の位置P1(座標(x1,y1))については、以下の式(4)及び(5)により算出され得る。
x1=x0+dx (4)
y1=y0+dy (5)
前述の式(4)において、「dx」は、前回のシールド掘進機1の位置測量時から今回のシールド掘進機1の位置測量時までの測量機20の位置変化量のx成分に対応する。また、前述の式(5)において、「dy」は、前回のシールド掘進機1の位置測量時から今回のシールド掘進機1の位置測量時までの測量機20の位置変化量のy成分に対応する。これら「dx」及び「dy」は、ステップS11にて取得された、前回のシールド掘進機1の位置測量時から今回のシールド掘進機1の位置測量時までの測量機20の移動距離SDと軌道13(特にレール12)の線形データとを含む移動データに基づいて算出され得る。これは、この移動データに基づいて、前回のシールド掘進機1の位置測量時から今回のシールド掘進機1の位置測量時までの間に、後続台車10が軌道13(特にレール12)に沿って、どの方向にどれだけ移動したかを把握できること、及び、測量機20が後続台車10に設けられてそれと一体的に移動可能であることに基づくものである。
今回のシールド掘進機1の位置測量時における測量機20の基準方向S1に対応する角度(トンネル設計上の基準方向から測量機20を見たときの角度)θ1については、図6(B)の図示と前述の式(4)及び(5)とに基づく以下の式(6)より算出され得る。
θ1=arctan(y1/x1)
=arctan{(y0+dy)/(x0+dx)} (6)
従って、ステップS12では、前回のシールド掘進機1の位置測量時の測量機20の位置P0及び基準方向S0(角度θ0)を前述の移動データに基づいて変更することにより、今回のシールド掘進機1の位置測量時の測量機20の位置P1及び基準方向S1(角度θ1)を特定している。
次に、ステップS13にて、今回のシールド掘進機1の位置測量時におけるシールド掘進機1の位置(求点Kの位置)とシールド掘進機1の向きとを特定する。
具体的には、ステップS13では、まず、図6(A)に示すように、測量機20からターゲットTA1を自動視準して、測量機20からターゲットTA1までの距離と、ターゲットTA1の視準角とを測定し、この測定結果と、前述のステップS12にて特定された測量機20の位置P1及び基準方向S1とに基づいて、ターゲットTA1の位置(座標)を特定する。換言すれば、測量機20からターゲットTA1を自動視準して、測量機20からターゲットTA1までの距離と、ターゲットTA1の視準角とを測定することで、ターゲットTA1の測量機20からの相対位置(例えば測量機20を原点とし、基準方向S1を基準方向(基準)とする極座標系などの座標系における位置座標)を検出し、この検出された相対位置と、前述のステップS12にて特定された測量機20の位置P1及び基準方向S1とに基づいて、前述の直交座標系におけるターゲットTA1の位置(絶対位置)を特定する。
次に、測量機20からターゲットTA2を自動視準して、測量機20からターゲットTA2までの距離と、ターゲットTA2の視準角とを測定し、この測定結果と、前述のステップS12にて特定された測量機20の位置P1及び基準方向S1とに基づいて、ターゲットTA2の位置(座標)を特定する。換言すれば、測量機20からターゲットTA2を自動視準して、測量機20からターゲットTA2までの距離と、ターゲットTA2の視準角とを測定することで、ターゲットTA2の測量機20からの相対位置(例えば測量機20を原点とし、基準方向S1を基準方向(基準)とする極座標系などの座標系における位置座標)を検出し、この検出された相対位置と、前述のステップS12にて特定された測量機20の位置P1及び基準方向S1とに基づいて、前述の直交座標系におけるターゲットTA2の位置(絶対位置)を特定する。
ここで、ステップS13において、「視準角」とは、測量機20の基準方向(ステップS13では基準方向S1)からターゲットTA1,TA2を見たときの角度(基準方向S1から右回りの角度)を意味する。図6(A)に示すように、例えばターゲットTA2の視準角α1は、基準方向S1からターゲットTA2を見たときの角度(例えば、基準方向S1から右回りの角度)に対応する。
例えば、ターゲットTA2の位置(座標)を(X1,Y1)とし、かつ、測量機20からターゲットTA2までの距離をLとすると、x座標X1及びy座標Y1は以下の式(7)及び(8)により算出され得る。
X1=x1+Lcos(θ1+α1) (7)
Y1=y1+Lsin(θ1+α1) (8)
前述の式(7)及び(8)より、測量機20の位置(前述の直交座標系における座標(x1,y1))及び基準方向S1(前述の直交座標系における角度θ1)と、ターゲットTA2の測量機20からの相対位置(前述の極座標系における座標(L,α1))とに基づいて、ターゲットTA2の位置(前述の直交座標系における座標(X1,Y1))を特定できることが明らかである。
このターゲットTA2の位置の特定と同様にターゲットTA1の位置も特定され得る。
次に、特定されたターゲットTA1,TA2の位置に基づいて、前述のステップS2と同様に、シールド掘進機1の位置(求点Kの位置)とシールド掘進機1の向きとを特定する。
以上のようにして、今回のシールド掘進機1の位置測量時におけるシールド掘進機1の位置(求点Kの位置)とシールド掘進機1の向きと特定することができる。
図3のステップS5では、シールド掘進機1による1セグメントリング分の掘進が完了したか否かを判定し、まだ1セグメントリング分の掘進が完了していない場合には、ステップS6に進み、待ち時間wtの経過後に、前述のステップS4に戻る。ここで、待ち時間wtとは、図4に示したフローを実行する時間間隔に対応するものである。例えば、待ち時間wtとして30秒が設定されている場合には、シールド掘進機1による掘進中に、図4に示すフローが30秒毎に実行され得る。この場合において、例えば、シールド掘進機1の掘進が3cm/分で進む場合には、シールド掘進機1が1.5cm進む毎にシールド掘進機1の位置(座標)及び向きが測定され得る。
尚、前述のステップS11〜S13に関する説明では、前回のシールド掘進機1の位置測量時から前回のシールド掘進機1の位置測量時までに測量機20の位置P0及び基準方向S0が位置P1及び基準方向S1に変わった場合について説明したが、前回のシールド掘進機1の位置測量時から前回のシールド掘進機1の位置測量時までに測量機20の位置Pk(kは任意の自然数)及び基準方向Skが位置Pk+1及び基準方向Sk+1に変わった場合にも同様であることは言うまでもない。
シールド掘進機1による1セグメントリング分の掘進が完了すると、図3に示すフローが終了する。
本実施形態によれば、シールド掘進機1の位置測量方法は、シールド掘進機1に設けられたターゲットTA1,TA2を視準し、かつ、シールド掘進機1の掘進に追従して移動する第1の測距測角儀(測量機20)を用いて、シールド掘進機1の掘進中にシールド掘進機1の位置を測量する方法である。このシールド掘進機1の位置測量方法は、過去の測量時から今回の測量時までの第1の測距測角儀(測量機20)の移動距離SDを含む移動データを取得すること(ステップS11)、過去の測量時の第1の測距測角儀(測量機20)の位置P0及び基準方向S0(角度θ0)を移動データに基づいて変更することにより、今回の測量時の第1の測距測角儀(測量機20)の位置P1及び基準方向S1(角度θ1)を特定すること(ステップS12)、今回の測量時において、第1の測距測角儀(測量機20)からターゲットTA1,TA2を視準して、ターゲットTA1,TA2の第1の測距測角儀(測量機20)からの相対位置(L,α1)を検出すること、及び、特定された第1の測距測角儀(測量機20)の位置P1及び基準方向S1(角度θ1)と、検出されたターゲットTA1,TA2の第1の測距測角儀(測量機20)からの相対位置(L,α1)とに基づいて、シールド掘進機1の位置(求点Kの位置)を特定すること(ステップS13)、を含む。これにより、シールド掘進機1の位置を測量する毎に複数の基準点24a,24bを第1の測距測角儀(測量機20)から視準して第1の測距測角儀(測量機20)の位置を検出することが不要になるので、シールド掘進機1の位置測量の手間を減らすことができ、ひいては、シールド掘進機1の位置測量を効率良く行うことができる。
また本実施形態によれば、シールド掘進機1の掘進中に短い時間間隔で(例えば30秒毎に)継続して第1の測距測角儀(測量機20)の位置及び基準方向を把握することができるので、第1の測距測角儀(測量機20)を用いてシールド掘進機1の位置測量を短い時間間隔で(例えば30秒毎に)繰り返し行うことができる。ゆえに、掘進中のシールド掘進機1の位置をリアルタイムに測量することができるので、その結果を掘進中のシールド掘進機1の掘進方向制御(例えば推進ジャッキ5の圧力制御)に直ちに反映することができる。
また本実施形態によれば、第1の測距測角儀(測量機20)は、シールド掘進機1の掘進に追従して移動する後続台車10に設けられている。第1の測距測角儀(測量機20)の移動距離SDは、過去の測量時から今回の測量時までの後続台車10の移動距離CDに基づいて算出される(ステップS11)。これにより、第1の測距測角儀(測量機20)の移動距離SDを直接的に測定することなく、簡易に当該移動距離SDを把握することができる。
また本実施形態によれば、後続台車10の移動距離CDは、過去の測量時から今回の測量時までのシールド掘進機1の推進ジャッキ5の伸長量JLに基づいて算出される(ステップS11)。これにより、後続台車10の移動距離CDを直接的に測定することなく、簡易に当該移動距離CDを把握することができる。
ところで、例えば、測量機20を用いて掘進中にシールド掘進機1の位置測量を30秒毎に繰り返し行う場合において、仮にシールド掘進機1の掘進速度が3cm/分あるとすると、シールド掘進機1及び後続台車10が1.5cm進む毎にシールド掘進機1の位置(座標)及び向きが測定され得る。このような短い移動距離CDを検出するためには、シールド掘進機1の推進ジャッキ5の伸長量JLに基づいて後続台車10の移動距離CDを算出することが好ましい。
また本実施形態によれば、後続台車10は、シールドトンネル内に敷設された軌道13上を走行可能である。前述の移動データは、後続台車10が走行する軌道13の線形データを含む。これにより、測量機位置特定部55は、過去の測量時から今回の測量時までの測量機20の移動距離SDと軌道13の線形データとを含む移動データを取得して、今回の測量時における測量機20の位置及び基準方向を特定することができる。
また本実施形態によれば、第1の測距測角儀(測量機20)は、シールド掘進機1の掘進が停止されているときに、シールドトンネル内における後続台車10より坑口側に設けられた基準点24a,24bを視準する(ステップS1)。これにより、シールド掘進機1の掘進開始に先立って、前回の掘進時に生じた第1の測距測角儀(測量機20)の位置及び基準方向の誤差を較正(リセット)することができる。
また本実施形態によれば、前記過去の測量時は、前回の測量時である。これにより、シールド掘進機1の位置測量を行う度に、当該測量の基準となる第1の測距測角儀(測量機20)の位置及び基準方向を更新することができる。
尚、本実施形態では前記過去の測量時が前回の測量時であるが、前記過去の測量時は前回の測量時に限らない。例えば、前記過去の測量時が前々回の測量時であってもよい。
また、本実施形態にて特定され得るシールド掘進機1の位置及び向きについては、2次元座標系におけるものに限らず、3次元座標系におけるものであってもよい。
次に、本発明の第2実施形態について、図8及び図9を用いて説明する。
図8は、本実施形態における位置測量システム30の概略構成を示す。
図9は、本実施形態における後続台車10の車軸の回転角度RAと測量機20の移動距離SD及び後続台車10の移動距離CDとの関係を示す。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
位置測量システム30は、前述の伸長量測定センサ31の代わりとして、ロータリーエンコーダ61を備える。ロータリーエンコーダ61は後続台車10の車軸の回転の変位(回転角度)を測定するものである。ロータリーエンコーダ61の回転軸は後続台車10の車軸に直結されている。ロータリーエンコーダ61と処理装置32とは信号線45を介して接続されている。尚、本実施形態では、ロータリーエンコーダ61と処理装置32とを信号線45で接続することで相互間の通信を行っているが、この他、信号線45を無線通信機器(送信機及び受信機)に変更して相互間の無線通信を行うようにしてもよい。
本実施形態において、後続台車移動距離算出部53は、ロータリーエンコーダ61にて測定された後続台車10の車軸の回転角度に基づいて、後続台車10の移動距離を算出する。
本実施形態では、前述の図4のステップS11にて、前回のシールド掘進機1の位置測量時から今回のシールド掘進機1の位置測量時までの後続台車10の車軸の回転角度RAに基づいて、前回のシールド掘進機1の位置測量時から今回のシールド掘進機1の位置測量時までの後続台車10の移動距離CDを算出し、この後続台車10の移動距離CDに基づいて、前回のシールド掘進機1の位置測量時から今回のシールド掘進機1の位置測量時までの測量機20の移動距離SDを算出する。この測量機20の移動距離SDの算出には、図9に示す図(後続台車10の車軸の回転角度RAと測量機20の移動距離SD及び後続台車10の移動距離CDとの関係を示す図)が用いられる。図9に示すように、後続台車10の車軸の回転角度RAが大きくなるほど、測量機20の移動距離SD及び後続台車10の移動距離CDが長くなる。これは、前回のシールド掘進機1の位置測量時から今回のシールド掘進機1の位置測量時までの間における後続台車10の車軸の回転角度RAに応じた移動距離CD分、後続台車10が軌道13上を走行すること、及び、測量機20が後続台車10に設けられてそれと一体的に移動可能であることに基づくものである(すなわち測量機20の移動距離SDと後続台車10の移動距離CDとは同じ距離になる)。この測量機20の移動距離SDの算出には、前述の後続台車移動距離算出部53及び測量機移動距離算出部54が用いられ得る。
特に本実施形態によれば、後続台車10の移動距離CDは、ロータリーエンコーダ61により測定された、過去の測量時から今回の測量時までの後続台車10の車軸の回転角度RAに基づいて算出される(ステップS11)。それゆえ、本実施形態では、前述の第1実施形態のようにシールド掘進機1の推進ジャッキ5の伸長量JLに基づいて後続台車10の移動距離CDを算出する場合と比べて、後続台車10の移動距離CDを直接的に測定できる。従って、後続台車10は牽引棒9を介してシールド掘進機1に牽引されるが、本実施形態では後続台車10の移動距離CDの測定において牽引棒9による影響を受けないので、後続台車10の移動距離CDの測定の精度を向上させることができる。
ところで、例えば、測量機20を用いて掘進中にシールド掘進機1の位置測量を30秒毎に繰り返し行う場合において、仮にシールド掘進機1の掘進速度が3cm/分あるとすると、シールド掘進機1及び後続台車10が1.5cm進む毎にシールド掘進機1の位置(座標)及び向きが測定され得る。このような短い移動距離CDを検出するためには、ロータリーエンコーダ61により測定された後続台車10の車軸の回転角度RAに基づいて後続台車10の移動距離CDを算出することが好ましい。
次に、本発明の第3実施形態について、図10及び図11を用いて説明する。
図10(A)〜(C)は、本実施形態におけるシールドトンネルの構築方法を示す。尚、図10(A)〜(C)は図1(A)〜(C)に対応するものである。
図11は、本実施形態における位置測量システム30の概略構成を示す。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
本実施形態では、後続台車10が複数(図10(A)〜(C)では4つ)の台車10a〜10dによって構成される。台車10a〜10dはトンネル軸方向に沿って直列に連結されている。台車10a〜10dは、隣接する台車同士で相対的に左右方向に揺動可能なように、連結手段を介して直列に連結されている。
台車10a〜10dのうち最も前側の台車10aの上部に測量機20が設けられている。台車10a〜10dのうち最も後側の台車10dの上部に、測量機20とは別の測量機21が設けられている。測量機21は、いわゆる自動追尾式の測距測角儀(トータルステーション)である。ここで、測量機21は本発明の「第2の測距測角儀」に対応するものである。測量機21は後続台車10に設けられて後続台車10と一体的に移動可能であるので、測量機21はシールド掘進機1の掘進に追従して移動し得る。測量機21は、基準点24a,24bをそれぞれ自動視準し得る。
測量機20,21には、それぞれ、ターゲット(図示せず)が設けられている。これらターゲットは反射プリズム等により構成されている。
図11に示すように、本実施形態では、位置測量システム30は測量機21を更に備える。測量機21と処理装置32とは信号線46を介して接続されている。尚、本実施形態では、測量機21と処理装置32とを信号線46で接続することで相互間の通信を行っているが、この他、信号線46を無線通信機器(送信機及び受信機)に変更して相互間の無線通信を行うようにしてもよい。
測量機位置特定部55は、トンネル設計上の座標系設定部51にて設定された座標系における測量機20,21の位置(座標)及び基準方向を特定する。
本実施形態において、前述の図3のステップS1では、測量機20,21の位置(座標)及び基準方向を特定する。
本実施形態のステップS1において測量機21の位置及び基準方向を特定する方法は、前述の第1実施形態におけるステップS1での測量機20の位置P0及び基準方向S0の特定方法と同様である。すなわち、測量機21から基準点24a,24bを自動視準して測距・測角して、後方交会法を用いて、測量機21の位置及び基準方向を特定する。
本実施形態のステップS1において測量機20の位置及び基準方向を特定する方法について以下説明する。
測量機20から測量機21のターゲットを自動視準し、かつ、測量機21から測量機20のターゲットを自動視準して、測量機20,21の各々が測距・測角を行うことで、測量機20,21間の相対的な位置関係が把握され得る。ここで、前述のように、測量機21から基準点24a,24bを自動視準して測距・測角して、後方交会法を用いて、測量機21の位置及び基準方向を特定することができるので、これを前述の測量機20,21間の相対的な位置関係に反映させることで、測量機20の位置及び基準方向を特定することができる。
特に本実施形態によれば、後続台車10は、直列に連結された複数の台車10a〜10dによって構成されている。台車10a〜10dのうちシールド掘進機1に最も近い側の台車10aに第1の測距測角儀(測量機20)が設けられている。台車10a〜10dのうちシールド掘進機1から最も遠い側の台車10dに、第1の測距測角儀(測量機20)とは別の第2の測距測角儀(測量機21)が設けられている。これにより、後続台車10が長くて第1の測距測角儀(測量機20)から基準点24a,24bを直接的に視準することが難しい場合において、第2の測距測角儀(測量機21)から基準点24a,24bを視準することができる。
また本実施形態によれば、第2の測距測角儀(測量機21)は、シールド掘進機1の掘進が停止されているときに、シールドトンネル内における後続台車10より坑口側に設けられた基準点24a,24bを視準する(ステップS1)。これにより、シールド掘進機1の掘進開始に先立って、前回の掘進時に生じた第1の測距測角儀(測量機20)の位置及び基準方向の誤差を、第2の測距測角儀(測量機21)を用いて較正(リセット)することができる。
次に、本実施形態の変形例について、図12を用いて説明する。
図12(A)〜(C)は、本変形例におけるシールドトンネルの構築方法を示す。尚、図12(A)〜(C)は図11(A)〜(C)に対応するものである。
本変形例では、後続台車10が1つの台車のみで構成されている。後続台車10の前側の上部に測量機20が設けられている。後続台車10の後側の上部に測量機21が設けられている。
本変形例によれば、後続台車10におけるシールド掘進機1に近い側に第1の測距測角儀(測量機20)が設けられており、後続台車10におけるシールド掘進機1から遠い側に、第1の測距測角儀(測量機20)とは別の第2の測距測角儀(測量機21)が設けられている。これにより、第1の測距測角儀(測量機20)から基準点24a,24bを直接的に視準することが難しい場合において、第2の測距測角儀(測量機21)から基準点24a,24bを視準することができる。
尚、前述の第1〜第3実施形態では、前述のシールド掘進機1の位置測量方法によって測量されるシールド掘進機1の位置(座標)が求点K(カッタヘッド3の中央の先端部分)の位置(座標)であるとして説明したが、測量されるシールド掘進機1の位置(座標)は、カッタヘッド3の中央の先端部分の位置(座標)に限らない。例えば、測量されるシールド掘進機1の位置(座標)は、ターゲットTA1又はTA2の位置(座標)であってもよい。
また、前述の第1〜第3実施形態では泥土圧式のシールド掘進機1を用いて説明したが、シールド掘進機1の種類はこれに限らず、例えば、泥水式のシールド掘進機であってもよい。また、前述の第1〜第3実施形態で使用した測距測角儀は、ターゲットを自動視準することを前提としたが、同様の機能を有する他の位置測定方法であってもよい。
また、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
尚、出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
シールド掘進機に設けられたターゲットを視準し、かつ、前記シールド掘進機の掘進に追従して移動する第1の測距測角儀を用いて、前記シールド掘進機の掘進中に前記シールド掘進機の位置を測量する方法であって、
過去の測量時から今回の測量時までの前記第1の測距測角儀の移動距離を含む移動データを取得すること、
前記過去の測量時の前記第1の測距測角儀の位置及び基準方向を前記移動データに基づいて変更することにより、今回の測量時の前記第1の測距測角儀の位置及び基準方向を特定すること、
今回の測量時において、前記第1の測距測角儀から前記ターゲットを視準して、前記ターゲットの前記第1の測距測角儀からの相対位置を検出すること、及び、
前記特定された前記第1の測距測角儀の位置及び基準方向と、前記検出された前記ターゲットの前記第1の測距測角儀からの相対位置とに基づいて、前記シールド掘進機の位置を特定すること、
を含む、シールド掘進機の位置測量方法。
[請求項2]
前記第1の測距測角儀は、前記シールド掘進機の掘進に追従して移動する後続台車に設けられており、
前記第1の測距測角儀の移動距離は、前記過去の測量時から今回の測量時までの前記後続台車の移動距離に基づいて算出される、請求項1に記載のシールド掘進機の位置測量方法。
[請求項3]
前記後続台車の移動距離は、前記過去の測量時から今回の測量時までの前記シールド掘進機の推進ジャッキの伸長量に基づいて算出される、請求項2に記載のシールド掘進機の位置測量方法。
[請求項4]
前記後続台車は、シールドトンネル内に敷設された軌道上を走行可能であり、
前記移動データは、前記後続台車が走行する前記軌道の線形データを更に含む、請求項2又は請求項3に記載のシールド掘進機の位置測量方法。
[請求項5]
前記第1の測距測角儀は、前記シールド掘進機の掘進が停止されているときに、前記シールドトンネル内における前記後続台車より坑口側に設けられた基準点を視準する、請求項2〜請求項4のいずれか1つに記載のシールド掘進機の位置測量方法。
[請求項6]
前記後続台車における前記シールド掘進機に近い側に前記第1の測距測角儀が設けられており、
前記後続台車における前記シールド掘進機から遠い側に、前記第1の測距測角儀とは別の第2の測距測角儀が設けられている、請求項2〜請求項4のいずれか1つに記載のシールド掘進機の位置測量方法。
[請求項7]
前記後続台車は、直列に連結された複数の台車によって構成されており、
前記複数の台車のうち前記シールド掘進機に最も近い側の台車に前記第1の測距測角儀が設けられており、
前記複数の台車のうち前記シールド掘進機から最も遠い側の台車に、前記第1の測距測角儀とは別の第2の測距測角儀が設けられている、請求項2〜請求項4のいずれか1つに記載のシールド掘進機の位置測量方法。
[請求項8]
前記第2の測距測角儀は、前記シールド掘進機の掘進が停止されているときに、前記シールドトンネル内における前記後続台車より坑口側に設けられた基準点を視準する、請求項6又は請求項7に記載のシールド掘進機の位置測量方法。
[請求項9]
前記過去の測量時は、前回の測量時である、請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載のシールド掘進機の位置測量方法。