以下に説明される小型3D奥行取得システムは、スマートフォンおよび他のモバイル機器の中に統合され得るように設計される。モバイルアプリケーションのために必要とされる小型化は、光学パターン投影および検出技術、ならびにシステム統合概念を含む新規な立体照明サブシステムに基づく。小型3D奥行取得システムは、直線状アレイMEMSリボン光学パターンプロジェクタに基づく。システムは、相対的に簡単な計算によって、独立して各ピクセルで奥行を推定する。
図1Aは、統合された3D奥行取得システムを装備されたモバイル電子機器105を示す。システムは、3Dシステムプロジェクタ110、3Dシステムカメラ115、および3Dシステムドライバ/インターフェース120を含む。ドライバ/インターフェースは、モバイル機器のアプリケーションプロセッサ125に3D性能を提供する。プロジェクタは3Dシステムの専用の構成要素であるが、一方、カメラは従来の写真およびビデオのためにもまた使用され得る。
図1Bは、顔認証シナリオの中で図1Aの機器を示す。ユーザが、彼または彼女の顔130に装置を向ける場合、奥行取得システムは、機器から顔の表面輪郭形状までの距離を示す3Dの点(x,y,z)の組を得取得する。このデータは、例えば、生体識別のための顔認証アルゴリズムの中で補助として使用され得る。
スマートフォン、タブレットまたは同様のモバイル機器は、その前面、後面またはさらに側面上にも3Dシステムプロジェクタおよびカメラを装備され得る。これらのセンサは、異なる目的のために最適化され得る。前方に向く3Dシステムは、電話がその所有者を腕の長さの距離で認証することを助けるために使用されることができ、一方、後方に向く3Dシステムは、例として、屋内ナビゲーションアプリケーションまたは状況認識アプリケーションのためのデータを提供することができる。
小型3D奥行取得システムプロジェクタおよびカメラは、他の種類の個人用アクセサリの中に埋設され得るように十分に小さい。図2は、1対の眼鏡205の中に統合された小型3D奥行取得システムを示す。図2の例では、3Dシステムプロジェクタ210および3Dシステムカメラ215が、角縁の眼鏡の対向するコーナの中に配置される。これらの構成要素は、1対の靴220の商標または寸法を識別するなど、オブジェクト測定および認証行動を実施するために眼鏡のつる内のプロセッサと通信することができる。
十分に小さく、モバイル電子機器の中に統合するためにさほど高価でない3D奥行取得システムは、多くの他の状況の中でもまた適する。例えば、図3はドアフレーム305の中に統合された小型3D奥行取得システムを示す。本明細書では、3Dシステムプロジェクタ310および3Dシステムカメラ315が、ドアフレームの頂部コーナに配置されるが、しかし、適切な他の取付け選択肢は多い。3D奥行取得技術を装備されるドアフレームは、人間、動物(犬320など)、または近くの他のオブジェクトを識別し、適切であるとしてアクセスを提供する。同様に、3D奥行取得システムは、車両の乗員を監視するために自動車のダッシュボードの中に統合され得る。自動システムが、例として自動システムが居眠りをして眠る運転者を検出する場合、ブレーキを適用することができる。
モバイル機器、個人用アクセサリ、固定設備、自動車または他の用途の中のいずれかの中で使用される3D奥行取得システムが、そのようなシステム用の高レベルブロック図である図4に図示される共通のシステムアーキテクチャを共有する。図4では、アプリケーションプロセッサ405が、3Dシステムドライバ/インターフェース410と通信する。ドライバインターフェースは、3Dシステムプロジェクタ415および3Dシステムカメラ420と通信する。アプリケーションプロセッサ405は、任意のプロセッサまたはグラフィック処理ユニットであることができる。例は、スマートフォン内の主アプリケーションプロセッサまたは自動車内の処理ユニットを含む。ドライバ/インターフェース、プロジェクタおよびカメラの説明および例が、以下で分かる。
図5は、小型3D奥行取得システム作動および構成要素の概念的ブロック図である。図5では、3Dシステムプロジェクタ510および3Dシステムカメラ515がドライバ/インターフェース520と協働して、3Dデータ表示オブジェクト500を得る。プロジェクタ510は、オブジェクトに対して1次元の空間変化を含む2次元パターン505を投影する。カメラ515は、基線距離でプロジェクタから離間された観点からパターンを観察する。(基線は、パターン内の空間変化の方向に垂直である。)カメラによって記録されたパターン525は、オブジェクトの表面形態によって歪んで見える。
オブジェクト上の各点は、時間と共に正弦波強度変化を含む光によって照明されるようにカメラに出現する。カメラが、プロジェクタと関連する共通の時間を共有し、それぞれが連続的な周期的モードで作動する。カメラの周波数(毎秒カメラ周期)は、プロジェクタの一時的周波数の2倍より大きい整数倍(すなわち3、4、5倍)である。各ピクセルで、カメラは各プロジェクタ周期中に、プロジェクタの一時的強度変調を3回、4回、または5回などサンプリングする。これらの測定は、カメラが各ピクセルで強度変調の一時的位相を決定することを可能にする。次いで、位相測定は、立体照明三角測量技術を使用して奥行を推定するために使用される。
以下により詳細に考察されるドライバ/インターフェース520の詳細は、MEMSリボンを3Dシステムプロジェクタ内の直線状アレイ空間光変調器の中のMEMSリボンを駆動するパルス密度変調器と、投影されたパターンの空間期間の迅速な再構成を可能にするメモリアドレシング技術と、ローリングシャッタカメラによる同期検波と、MEMSリボン用の低電圧駆動スキームと、MEMSリボンの擬似バイポーラ操作とを含む。
プロジェクタドライバ/インターフェースおよびレーザ光源を含むプロジェクタ光学構成要素が、図6に図示される。一実施形態では、これらの構成要素は、スマートフォン、タブレットまたは他の機器の中に統合され得るために十分小さい、3mm×6mm×10mmである体積605の中にパッケージにされる。この体積内の構成要素は、レーザ光源、直線状アレイMEMSリボン光学位相変調器、フーリエ面光学位相弁別器およびいくつかのレンズを含む。詳細には、図6では、レーザ610が赤外線内で発光するダイオードレーザである。レーザからの光が、ドライバ電子機器625によってパッケージにされている直線状アレイMEMSリボン光学位相変調器上に焦点を合わせる(x軸リレーシリンダレンズ615および視野レンズ620を経て)。一実施形態では、MEMSリボンアレイは約0.5mm×0.2mm×0.1mmの体積であり、各リボンが約200μm×4μm×0.1μmの体積であり、それらは図6の中に見ることができる。位相変調器によって反射される光が、光学位相弁別器として作動するアポダイゼーションフィルタ630上のインシデントである。弁別器は、MEMSリボン直線状アレイによって与えられた位相変調を振幅変調に変換する。次いで、投影レンズ(y軸投影シリンダ635およびx軸投影シリンダ640)および固定鏡645が、測定されるオブジェクトに向かって光を投影する。
図7は、図6のシステムなどの3D奥行取得システムプロジェクタについて光学原理を図示する。図7では、視野レンズ720が、1−D(すなわち、「直線状」)MEMSリボンアレイ725近傍に配置される。視野レンズの焦点距離は、fである。フーリエ面位相弁別器730が、MEMSリボンアレイからレンズの反対側上に、視野レンズからfだけ離間して配置される。投影レンズ735は、パターン750を投影する。パターン750は、1次元に空間変化を含む2次元パターンである。
フーリエ面位相弁別器は、例えば、2011年5月10日にBloomらに発行された米国特許第7,940,448号明細書の中で考察されており、参照としてその開示が組み込まれる*。(*この組込みは、124ページの「付記A」として本明細書に添付されている。)特に、本明細書で使用される位相弁別器は、米国特許第7,940,448号明細書の図10B、図16Aおよび図18の余弦波(位相相似)アポダイゼーションフィルタに類似する。一実施形態では、シュリーレンスリットが、余弦波透過関数の中央部分に接近する。アポダイゼーションフィルタの期間(またはシュリーレンスリットの幅)が、MEMS直線状アレイの中のリボンの空間に比例するように選択される。
これまでに説明された光学システムは、1次元に空間正弦波強度変化を含むパターンを投影する。パターンは、一時的正弦波強度変化を含むように出現する。しかし、パターンの時間的変調は、デジタル技術を使用して生成される。デジタルの時間的変調は、デジタル変調期間よりも実質的に長い統合時間を含むカメラを用いて観察される場合、滑らかに変化する正弦波変調として出現する。これらの原理は、小型3D奥行取得システムの中の電子信号および光学信号の概念的ブロック図である図8を参照して理解され得る。
図8は、正弦波の一時的光変調の出現がどのように生成されるのかを図示する。グラフ805が、時間の関数として、所望される光強度の正弦波変化を示す。この関数は、パルス密度変調、デジタル波形815として、3Dシステムドライバ/インターフェース810の中で記憶されまたは生成される。リボン駆動パターン波形815が、時間経過につれて、2つの値、1と0との間で交互に繰り返す。815で示される波形は、図示を容易にするために選択された、64回オーバサンプリングされた正弦波のパルス密度表示である。実施形態では、2048回オーバサンプリングされた正弦波のパルス密度表示が使用される。
ドライバ/インターフェースが、電気駆動信号をMEMSアレイの中のリボンに送信する。駆動パターン値が「1」であるときはいつも、アレイ中のリボンの複数の対が、820に示されるように等しい偏向に設定される。駆動パターン値が「0」であるときはいつも、アレイ内のリボンの対が、825に示されるように等しくない偏向に設定される。任意の特定のリボンの対において、一方のリボンが常に静止していることができ、一方、他方のリボンが2つの可能な偏向の1つに設定され、すなわち、他方のリボンが静止状態、または可動状態で偏向しているのと同じである。リボン駆動パターンがデジタルであるので、リボンは中間の偏向に設定されることは決してない。
820の中のように同じ偏向を含むリボンの複数対が、1−Dパターンの明るいストリップにつながり、一方、825の中のように等しくない変更を含むリボンの複数対が、1−Dパターンの暗いストリップにつながる。パターン対時間の特定のピクセルでの輝度が、830に示される。実際の光出力強度(デジタル光出力830)対時間が、デジタル関数であり、実際に、それはリボン駆動パターン815と同様のパルス密度変調表示である。デジタルリボン作動は、光出力対リボン駆動信号を表わすピクセル伝達関数を調節する必要性をなくす。MEMSリボンの高速認証は、それらがデジタル変調信号に忠実に従うことを可能にする。
ピクセルでのデジタル光出力が、デジタル期間(すなわち、デジタルパターンが「1」または「0」に留まる最も短い時間)よりも実質的に長い統合時間を含むカメラ835によって観察される場合、パターンの時間変化が、840に示されるような正弦波に見える。これは、カメラ統合時間が低域フィルタである、Σ−Δ変調の例である。本明細書で「実質的に」より長いというのは、5倍以上長いことを意味する。一実施形態では、投影された光パターンの2048の再構成が、4つのカメラ露出サイクルと同時に発生し、したがって、プロジェクタ速度はカメラサイクル速度よりも500倍以上より速い。一般的に、プロジェクタ速度は、カメラサイクル速度よりも100倍以上より速い。
MEMSアレイ内のリボンが対で配置される場合、同じ偏向を含むリボンは最大光出力を生成することができ、一方、異なる偏向を含むリボンは、投影システムから最小光出力を生成することができる。しかし、この挙動を逆転させる交番の位相弁別器設計が可能であり、すなわち、同じ偏向を含むリボンは最小光出力を生成することができ、一方、異なる偏向を含むリボンは最大光出力を生成することができる。これらの両方の手法によって、ピクセルの数(アナモルフィック光学系を経てストリップに分散することができる)は、リボンの数の半分である。
リボンの間の変化がピクセル出力を決定するように、リボンはさらに作動され得る。この場合、ピクセルの数はリボンの数に等しい。光学位相弁別器は、米国特許第7,940,448号明細書の中で考察されるように、この場合について設計され得る。
デジタル光出力830および一時的強度変化840は、実際の、感知された光強度対投影された2Dパターン内の1つのピクセルでの時間を説明する。パターンは、1つの空間次元における正弦波の変化をさらに含む。
正弦波の空間変化は、815などのデジタル信号をアレイ内の連続する各可動リボンに対して遅らせることによって生成される。例えば、パターン815は、アレイ内の第1の可動リボンに送信され得る。短い時間、Δt遅れて、同じパターンが第2の可動リボンへ送信される。短い時間、Δt遅れて、同じパターンが第3の可動リボンなどへ送信される。本明細書では、Δtはパターン815の1回の周期の時間よりも短い。
Δtに対して小さい値は、粗い解像度および奥行曖昧性間のより大きい距離をもたらす低い空間周波数投影パターンにつながる。一方で、Δtに対してより大きい値は、きめ細かい解像度および奥行曖昧性間のより小さい距離をもたらす高い空間周波数投影パターンにつながる。815などのデジタルパターンは、オンザフライで生成され、またはメモリから検索され得る。後者の場合、時間オフセットΔtは、メモリアドレス指定スキームによって生成され得る。図9Aおよび図9Bは、デジタルリボンデータ信号を生成するためのメモリアドレス指定方法を図示する。
図9Aは、デジタルパターン(図8の中のパターン815に類似する)がメモリから読み取られ、32個のドライブラインに同時に供給される例905を示す。パターンは、4096ビットの長さである。計算器910が、4096ビットメモリ空間による32ビットから32ビット駆動信号を選択する。第4096番目の32ビット信号が読み取られる後、計算器910は第1の32ビット信号に戻る。4096ビットパターンは、各可動リボンに対して同様であるが、しかし、連続するリボンについてオフセットされる。例の中の「1」の配置は、連続する可動リボンが、クロックサイクルにつき1ビットだけオフセットされる4096ビットパターンのコピーによって駆動されることを示すように意図される。図9Aの方法は、32ビット幅データにアクセスするために1つのメモリアドレス計算器を使用する。図9Aの方法を使用することによって駆動されるMEMSリボンに基づくプロジェクタから生成される光パターンの空間周波数を変化させるために、4096ビットメモリ空間による32ビットの中のデータが、可動リボン間のオフセットを変化させるために更新されなければならない。図9Aは、ピクセル(例えば、「ピクセル3」)についてのデータ、ならびに「バイアス」信号および「基板」信号についてのデータを示す。これらの追加の信号が、以下に説明される。
いくつかの奥行取得アプリケーションのために、投影されたパターンの空間周波数を迅速に変化させ得ることが望ましい。これによって、高精度の奥行データ取得(短い曖昧性距離を含む)と、低精度の奥行データ取得(長い曖昧性距離を含む)との間で迅速な切り替えが可能になる。
図9Bは、デジタルパターン(図8のパターン815に類似する)が、別の計算器を使用してメモリから読み取られる例915を示す。図示を容易にするために、各リボン駆動ラインについて1つずつ、3つの計算器だけが示されている。32のリボン駆動ラインが図9Aの中のように処理される予定であれば、そのとき32個の計算器が必要になる。この例では、各計算器が1つの、4096ビットメモリ空間925による1ビットを処理する。任意の特定の時間に、計算器が4096ビットシーケンスの中の異なるビットからデータを検索する。ここで、空間周波数を変化させることは、単に、異なる数のビットのデータを別々に読み取るために計算器を設定するという問題である。
投影されたパターンは、通常、ただ1つではなく、複数の正弦波空間強度変化の期間を含む。そういうわけで、存在するリボンと同数のリボン駆動信号を生成する必要はない。例えば、リボンアレイがN個の可動リボンを含み、それがK個の空間期間を含むパターンを投影するために使用されると想定されたい。N/Kだけの異なるリボン駆動信号が、パターンを生成するために必要である。これが、MEMSリボン配線図を図示する図10を参照して理解され得る配線の簡易化につながる。
図10では、リボン1005が、直線状アレイMEMSリボン光変調器の部分である。信号ライン1010が、デジタル駆動信号を0番目、k番目、2k番目など、アレイ内の可動リボンに伝える。同様に、別の信号ラインが別のデジタル駆動信号を1番目、(k+1)番目、(2k+1)番目など、可動リボンに伝える。別の信号ラインがやはり別のデジタル駆動信号を2番目、(k+2)番目、(2k+2)番目など、可動リボンに伝える。アレイ内にN個の可動リボンが存在することができるが、N/Kの信号ラインだけがそれを駆動するために必要とされる。これが、MEMS信号ライン配置図の相当な簡易化につながる。このスキームを使用して生成され得る最も低い空間周波数パターンが、各可動リボンが別個に処理されると仮定して達成され得る1期間パターンではなく、N/K期間を含む。一実施形態では、MEMSリボンアレイが128個の可動リボンを含み、32番目ごとのリボンが一緒に処理される(すなわち、上記の表示の中でN=128、K=32)。したがって、投影されたパターンの中の空間期間の最小の数は4である。
一実施形態では、リボン駆動電子機器は、同時係属のBloomらによる2012年10月22日に出願された米国特許第13/657,530号明細書の中に記載される低電圧リボン駆動技術を使用し、その開示は参照として組み込まれる*。(*この組込みは、20ページに「付記A」として本明細書に添付されている。)米国特許第13/657,530号明細書の中に記載されるように、本明細書で使用される低電圧リボン駆動スキームは、リボン非線形変位特性を利用するために、連続して加えられるDCバイアス電圧およびリボン制御信号に基づく。低電圧リボン駆動技術は、リボンドライバ電子機器をモバイル機器の中に通常見出されるCMOSデジタル電子機器に適合させる。バイアス電圧は、図9に関連して言及されるバイアス信号によって表わされる。
一実施形態では、リボン駆動電子機器は、2013年2月5日にYehおよびBloomに発行された米国特許第8,368,984号明細書の中に記載される擬似バイポーラリボン駆動技術をさらに使用し、その開示は参照として組み込まれる*。米国特許第8,368,984号明細書の中に記載されるように、本明細書で使用される擬似バイポーラリボン駆動スキームは、ユニポーラCMOS電子機器がMEMSリボン機器を駆動するために使用される場合、さもなければ発生し得る困難を回避するように設計されている。特に、擬似バイポーラ作動は、MEMSリボン機器内の表面電荷蓄積効果を低減し、またはなくする。基板電圧が、図9に関連して言及される基板信号によって表わされる。
小型3D奥行取得システムは、連続的に、またはバーストで作動することができる。図11は、システムバーストモード作動中の電力消費を図示するグラフである。グラフは、奥行取得システムの電力P対時間を描く。システム電力のほとんどが、レーザ光源によって消費されるが、しかし、より速い周期速度でカメラを作動させることもまた電力消費を増加させる。図11の例では、1つの作動モードでは、レーザ、プロジェクタシステムおよびカメラが連続的に作動し、1ユニットの電力を消費する。第2の作動モード、「バーストモード」では、システムは低デューティーサイクルで作動し、それは、8つある中の1ユニット時間だけの間でオンである。しかし、その1ユニットが「オン」時間中に、システム(主にレーザ)は8ユニットの電力を消費する。消費される平均電力は、両方の場合で同様である。
図11の例では、カメラは、バーストモードまたは平均モードで、プロジェクタシステムによって発光される同じ数の光子を収集する。しかし、バーストモードでは、カメラのシャッタが1/8の時間だけ開いているので、カメラによって収集される背景光子の数が8の因数によって低減される。したがって、騒音比率に対する信号は、約√8の因数によって改善される。さらに、カメラがより速い周期速度で作動する場合、バーストモードは、モーションアーチテクトを低減する。図11のデューティーサイクルの1:8または12.5%は、単なる例である。小型3D奥行取得システムは、例えば100%から1%未満までの範囲のデューティーサイクルで作動され得る。
小型3D奥行取得システムは、1次元に正弦波空間変化を含む2次元パターンを投影する。パターンは、時間内に正弦波変化をさらに含む。図12は、空間パターン位相と奥行との間の関係を図示する図である。図12では、要素「P」は3D奥行取得システムパターンプロジェクタであり、一方、要素「C」はカメラである。カメラは、基線距離dでプロジェクタから離間されている。プロジェクタPは、放射状扇形ストライプ1205によって図面の中で示される光パターンを発光する。図面の中のストライプパターンは、「オン/オフ(on/off)」または図示を容易にするために四角い波形を含む。実際のパターンは、正弦波空間変化を含む。Δθはパターンの1期間の角度範囲である。例えば、Δθは、カメラの視野角度をカメラから見えるパターン期間の数で割ることによって推定され得る。
図面の中で示されるz軸に沿った距離z0を考慮されたい。プロジェクタからこの点までの距離はrである。その点でのパターンの空間周波数は、図面内で示されるように、
方向を指すkベクトルによって説明される(逆格子空間)。kベクトルの大きさは、
によって得られる。kベクトルのz成分、k2は以下によって得られる。
近似値は、d<<z0について有効である。
カメラが検出できる空間位相における最初の検出可能な変化は、Δφminであると想定されたい。位相の中のこの変化は、以下による距離の変化に相当する。
パターン空間位相と距離との間の関係が与えられると、3D奥行取得システムが、オブジェクトでのパターンの空間位相を推定することによって、オブジェクト(そのカメラによって取得された画像の中のピクセルで出現する)までの距離を推定することができる。パターンの強度Iは、以下の形態を有する。
本明細書では、I0は最大パターン強度であり、ωはパターン時間的変調の角度周波数であり、tは時間であり、およびφは空間位相である。図13は、カメラ内の2つのピクセルでの位相測定を図示するグラフである。ピクセルは、正方形の添え字および三角形の添え字によって識別される。第1のピクセル(正方形の添え字)でのパターン強度は実線の曲線で示されるが、一方、第2のピクセル(三角形の添え字)でのパターン強度は破線の曲線で示される。
各ピクセルについてパターン強度の測定は、カメラ115、215、315、420、515、835または図12の中のカメラ「C」などの3D奥行取得システムカメラから得られる。一実施形態では、CMOSカメラのローリングシャッタが、パターン空間位相を得るために使用される。ローリングシャッタカメラからのデータが、1行ずつ連続的に読み出される。第1の行からのデータが、カメラ画像センサの最後の行からのデータに続いて、即座に読み出される。カメラサイクル時間は、全ての行を読み出すために必要とされる時間である。カメラは、ローリングシャッタサイクルに同期するタイミング信号を生成する。このタイミング信号は、プロジェクタパターンサイクルに対するトリガとして使用され得る。カメラは、各ピクセルで光子を収集することに関連する固有の積算時間を含む。画像センサピクセルの所与の行の中の全ての列が、積算時間の間に同時に光を収集する。積算時間は、MEMSリボンアレイプロジェクタによって投影される高速デジタル光変調信号上にローパスフィルタを効果的に課す。したがって、パルス密度変調光信号が、カメラによって測定される場合、正弦波時間変化を含むように出現する。
オブジェクト上に出現するパターンの位相φ、および相当するオブジェクトの奥行は、ピクセルごとに基づいて推定される。各測定は、他のピクセルで行われる測定から独立している。位相は、パターン変調信号の同期検波(すなわち、定期的インターバルでサンプリングすること)によって推定される。カメラタイミング信号を参照して、同位相測定および直角位相測定が、パターン信号位相を推定するために必要なデータを提供する。
図13の例では、測定が、ωt=0、π/2、3π/2、2πなどで、または正弦波期間ごとに4回実施される。第1のピクセル(正方形の添え字)でパターン強度の同位相測定が、ωt=πで行われた測定をωt=0で行われた測定から差し引くことによって得られる。パターンの直角位相測定は、ωt=3π/2で行われた測定をωt=π/2で行われた測定から差し引くことによって得られる。そのとき、位相は、同位相測定と直角位相測定との比率のタンジェントの逆関数である。同じ手順が、第2のピクセル(三角形の添え字)での位相を生成する。同様の計算が、各ピクセルで行われた同位相測定および直角位相測定について実施される。
位相を得るためには4つの測定が必要であるが、奥行データ更新サイクルを図示する図14に示されるように、位相推定は、新規な測定が利用可能であるときはいつでも更新され得る。図14では、正方形の中の「1」、「2」、「3」などが、図13に示されるように、ωtがπ/2だけ進むごとに行われる強度測定を表わす。同位相値(I1)および直角位相値(Q1)に基づいて、位相推定φnが4つの測定(0−3)後に利用可能である。第5の測定(「4」)が利用可能になる場合、新規な同位相値(I2)が計算される。次いで位相φn+1が、I2/Q1のタンジェントの逆関数として推定され得る。各新規な測定は、以前の値に取って代わる新規な同位相値および直角位相値をもたらす。
位相情報は、2つ以上のデータサイクルからさらに推定され得る。例えば、最も新しい8または12のデータ点が使用され得る。有限インパルス応答フィルタが、古い方の測定よりも新しい方の測定によりいっそう重みを加えるために適用されることが可能である。
図15は、小型3D奥行取得システム出力データ1505の例を示す。実際のデータは、3Dの点(x,y,z)である。3D複写または描画が、擬似光および擬似影の効果によって、図15の平面画像の中に生成されている。再生するために、図15に示される顔などの1組のデータ点が、以下のように得られる。3Dシステムプロジェクタが、赤外線光のパターンをオブジェクトの上に投影する。パターンは、時間内に、かつ1つの空間次元内で正弦波変化を有する。カメラが、画像を横切る各ピクセルでその位相を得るために、パターンをサンプリングする。奥行情報が、カメラのプロジェクタからの距離に部分的に依存する幾何学的関係に従って位相から計算する。
プロジェクタは、非常に小さい体積の中に収納され、スマートフォンおよびタブレットなどのモバイル機器の中への統合に適合する。一実施形態では、プロジェクタは3mm×6mm×10mmの体積の内部に嵌る。カメラは、モバイル機器の中にすでに統合されるカメラと同様であることができる。一実施形態では、カメラは、赤外線に高感度なローリングシャッタCMOSカメラである。
これまでに説明された小型3D奥行取得システムの複数の変形形態が可能である。3Dシステムパターンプロジェクタまたはカメラ、あるいはその両方が、いくつかの実施形態では変更され得る。
異なる種類の直線状アレイMEMSリボン光変調器が、パターンプロジェクタの中で使用され得る。米国特許第7,940,448号明細書または2007年10月23日にBloomに発行された米国特許第7,286,277号明細書(その開示が参照として組み込まれる。*)の中に説明される光変調器が、そのような代替形態の例である。(*この組込みが、104ページに「付記C」として本明細書に添付されている。)加えて、Texas Instruments Digital Mirror DeviceなどのMEMS2Dアレイ変調器が、前述の1次元空間変化を含むパターンを生成するために作動され得る。
MEMS光変調器に対する代替例として、垂直キャビティ面発光レーザ(VCSELS)などの発光素子の直線状アレイが、1次元空間変化を含むパターンを生成するために使用され得る。連続的光源を変調する強誘電体液晶アレイが、別の可能性である。さらに、光源は、レーザではなく、発光ダイオードであることができる。
グローバルシャッタカメラが、ローリングシャッタカメラの代わりに使用され得るが、何らかの潜在的データ収集時間が、カメラのリセット中に浪費されることを認める。プロジェクタ光源は、グローバルシャッタのリセット中にオフにされることができる。
ローリングシャッタカメラであれ、またはグローバルシャッタカメラであれ、位相推定は、パターンの時間的周期につき4つの測定ではなく、3つの測定を使用して得ることが可能である。3つのパターン強度測定、I1、I2、I3が、ωt=2π/3で離間されて行われる場合、位相が以下に従って推定される。
プロジェクタサイクルおよびカメラサイクルが、コモンタイミング信号、あるいはプロジェクタまたはカメラクロック周波数のいずれかから由来する信号からトリガされ得る。
開示される実施形態の上記の説明は、当業者が本発明を作製し、または使用することができるように提供される。これらの実施形態に対する様々な修正形態が、当業者にとって容易に明らかになり、本明細書に定義される原理が、本開示の範囲から逸脱せずに他の実施形態に応用され得る。したがって、本開示は本明細書に示される実施形態に限定されるようには意図されず、しかし、本明細書で開示される原理および新規な特徴に矛盾しない最も広い範囲に一致するように意図される。
本明細書に記載される全ての要素、部品およびステップが、含まれることが好ましい。これらの任意の要素、部品およびステップが、他の要素、部品およびステップによって置き換えられ、または当業者にとって明白であるので完全に削除されることが可能である。
概括的に、本文献は少なくとも以下を開示する。
小型3D奥行取得システムが、3Dシステムドライバ/インターフェースと、3Dシステムカメラと、3Dシステムプロジェクタとに基づく。システムは、スマートフォンおよびタブレットコンピュータなどのモバイル電子機器へ統合することに適合する。
概念
>>>本文献は、先の参照、例えば、概念X、概念X−1のシステムまたは概念X+1などを含む。先の参照は、本技術のこの開示をより良く理解するように意図されている。
数字の振られたフォーマットで概念が示される。
1 パターンプロジェクタと、
カメラと、
モバイル機器ドライバ/インターフェースと
を備える3次元奥行取得システムであって、
前記プロジェクタ、前記カメラおよび前記ドライバ/インターフェースがモバイル電子機器の中に統合され、
前記プロジェクタが、デジタル直線状アレイMEMSリボン光変調器および1次元だけに空間変化を含む2次元画像を投影するレンズシステムを含み、
前記MEMSリボン光変調器が、前記ドライバ/インターフェースからデジタル電子信号によって駆動され、前記信号が、正弦波のパルス密度変調表示を表わし、前記正弦波が時間的周期を特徴とする、3次元奥行取得システム。
2 前記カメラが、期間ごとに3回前記画像をサンプリングする、概念1に記載のシステム。
3 前記モバイル機器ドライバ/インターフェースが、前記3つの最も新しいカメラサンプルに基づいて、奥行データを前記モバイル電子機器の中のアプリケーションプロセッサに提供する、概念2に記載のシステム。
4 前記カメラが、期間ごとに4回前記画像をサンプリングする、概念1に記載のシステム。
5 前記モバイル機器ドライバ/インターフェースが、前記4つの最も新しいカメラサンプルに基づいて、奥行データを前記モバイル電子機器の中のアプリケーションプロセッサに提供する、概念4に記載のシステム。
6 前記パルス密度変調が、少なくとも64回で前記正弦波のオーバサンプリングを表示する、概念1−5または概念7−26に記載のシステム。
7 前記デジタル信号が、サーキュラメモリバッファの中に記憶される、概念1−6または概念10−26に記載のシステム。
8 前記画像が、前記メモリバッファの中に相対的オフセットによって選択される空間周波数を含む、概念7に記載のシステム。
9 前記アレイ内の隣接する可動リボン向けの信号が、前記メモリバッファの中のオフセットメモリアドレスから得られる、概念7に記載のシステム。
10 前記カメラから観察される場合、前記画像が正弦波一時的強度変化を含むように見えるように、前記カメラが統合時間を含む、概念1−9または概念11−26に記載のシステム。
11 前記デジタル信号が、CMOS論理レベルに適合する、概念1−10または概念12−26に記載のシステム。
12 前記デジタル電子信号が、擬似バイポーラMEMS駆動スキームに従う、概念1−11または概念13−26に記載のシステム。
13 前記デジタル電子信号が、リボン非線形変位特性を利用するために連続的に加えられるDCバイアス電圧および低電圧リボン制御信号を備える、概念1−12または概念14−26に記載のシステム。
14 前記直線状アレイMEMSリボン光変調器が、N個の可動リボンおよびK個の指定行を含み、NがKの整数倍である、概念1−13または概念16−26に記載のシステム。
15 前記画像が、空間期間のN/Kサイクルを特徴とする、概念14に記載のシステム。
16 前記カメラが、ローリングシャッタCMOSカメラである、概念1−15または概念18−26に記載のシステム。
17 前記カメラが、グローバルシャッタカメラである、概念1−15または概念18−26に記載のシステム。
18 前記プロジェクタが、ダイオードレーザ赤外線光源を備える、概念1−17または概念20−26に記載のシステム。
19 前記プロジェクタが、赤外線発光ダイオードを備える、概念1−17または概念20−26に記載のシステム。
20 前記プロジェクタおよびカメラが、コモンタイミング信号を共有する、概念1−19または概念21−26に記載のシステム。
21 前記プロジェクタおよびカメラが、100%未満の作動デューティーサイクルを含む、概念1−20または概念22−26に記載のシステム。
22 前記プロジェクタが、3mm×6mm×10mmの体積、またはそれより小さい体積の中に嵌る、概念1−21または概念23−26に記載のシステム。
23 前記モバイル機器ドライバ/インターフェースが、前記モバイル電子機器の中のアプリケーションプロセッサに奥行データを提供する、概念1−22または概念24−26に記載のシステム。
24 前記モバイル機器ドライバ/インターフェースが、新しいカメラサンプルの有限インパルス応答フィルタ機能に基づいて、奥行データを前記モバイル電子機器の中のアプリケーションプロセッサに提供する、概念1−23または概念25−26に記載のシステム。
25 前記モバイル電子機器が、携帯電話である、概念1−24に記載のシステム。
26 前記モバイル電子機器が、タブレットコンピュータである、概念1−24に記載のシステム。
27 パターンプロジェクタと、
カメラと、
モバイル機器ドライバ/インターフェースと
を備える3次元奥行取得システムであって、
前記プロジェクタ、前記カメラおよび前記ドライバ/インターフェースがモバイル電子機器の中に統合され、
前記プロジェクタが、空間光変調器および1次元だけに空間変化を含む2次元画像を投影するレンズシステムを含み、
前記光変調器が、前記ドライバ/インターフェースから電子信号によって駆動され、前記信号が、正弦波を表わし、前記正弦波が時間的周期を特徴とする、3次元奥行取得システム。
28 前記光変調器が、垂直共振面発光レーザのアレイを備える、概念27に記載のシステム。
29 前記光変調器が、強誘電体液晶を備える、概念27に記載のシステム。
30 前記光変調器が、発光ダイオードを備える、概念27に記載のシステム。
31 前記プロジェクタが、デジタルデータ信号によって駆動される、概念27−30または概念33−38に記載のシステム。
32 前記プロジェクタが、アナログデータ信号によって駆動される概念27−30または概念33−38に記載のシステム。
33 前記カメラが、期間ごとに3回前記画像をサンプリングする、概念27−32または概念37−38に記載のシステム。
34 前記モバイル機器ドライバ/インターフェースが、3つの最も新しいカメラサンプルに基づいて、奥行データを前記モバイル電子機器の中のアプリケーションプロセッサに提供する、概念33に記載のシステム。
35 前記カメラが、期間ごとに4回前記画像をサンプリングする、概念27−32または概念37−38に記載のシステム。
36 前記モバイル機器ドライバ/インターフェースが、前記4つの最も新しいカメラサンプルに基づいて、奥行データを前記モバイル電子機器の中のアプリケーションプロセッサに提供する、概念35に記載のシステム。
37 前記カメラが、ローリングシャッタCMOSカメラである、概念27−36に記載のシステム。
38 前記カメラが、グローバルシャッタカメラである、概念27−36に記載のシステム。
本開示は、一般に、光ディスプレイシステムおよび光学微小電気機械システム(MEMS)デバイスの分野に関する。
[背景技術]
投射型高精細テレビジョン(HDTV)、高解像度印刷、およびマスクレス半導体リソグラフィは、高精細光学ディスプレイ技術のいくつかの適用例である。おのおののケースにおいて、1次元または2次元的に配置された光変調器と付属の光学システムが、画像を形成する数百万のピクセルに配光する。一般的なタイプの光変調器としてはデジタルミラーデバイス、グレーティング光変調器、偏光変調器、液晶およびシリコン基板液晶パネルがある。それぞれのデザインに応じて、これらの光変調器は反射モードまたは透過モードで動作し得る。
MEMSリボンの構造は、いくつかの種類の光変調器で使用されており、その単純さにもかかわらず、光学画像形成システムについて多数の新しい設計を生み出している。光発想の発展は、ますます少ないリボンに依存して最終画像の各ピクセルを生成するシステムにつながってきた。例えば、初期のグレーティング光変調器はピクセルあたり6個ものリボンを使用しており、一方、偏光変調器はピクセルあたり2個のリボンを使用して実証さている。
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
[課題を解決するための手段]
MEMSリボンの構造は、直線状アレイ光変調器に最も多く見られる。直線状アレイは、その線画像出力がスキャナによって往復走査される際に、2次元画像を「描く」。直線状アレイは2次元アレイよりもはるかに少ないチップ面積を占め、レーザ光源のエタンデュにより緊密に適合する。ピクセルを形成するために必要なリボン数を削減することによって直線状アレイをより短くすることができれば、よりいっそうコンパクトなMEMS光変調器チップを作成することができる。
[図面の簡単な説明]
[図1]ディスプレイシステムのブロック図を示す。
[図2]反射型および透過型の直線状アレイ位相変調器の例を示す。
[図3A]微小機械リボンを示す。
[図3B]微小機械リボンを示す。
[図4A]反射型および透過型の変調器を用いた光学配置を示す。
[図4B]反射型および透過型の変調器を用いた光学配置を示す。
[図4C]反射型および透過型の変調器を用いた光学配置を示す。
[図5]直線状アレイ位相変調器に基づくディスプレイシステムを示す。
[図6]デジタル位相変調器の符号化方式の例を示す。
[図7]デジタル位相変調器の符号化方式の第2の例を示す。
[図8]アナログ位相変調器の符号化の例を示す。
[図9A]デジタルおよびアナログ位相変調方式の理解を助けるグラフである。
[図9B]デジタルおよびアナログ位相変調方式の理解を助けるグラフである。
[図10A]偏光および非偏光用の例示的な物体面弁別器とフーリエ面弁別器との間の関係を示す。
[図10B]偏光および非偏光用の例示的な物体面弁別器とフーリエ面弁別器との間の関係を示す。
[図11A]光学システムおよびフーリエ面フィルタ応答関数を示す。
[図11B]光学システムおよびフーリエ面フィルタ応答関数を示す。
[図12A]偏光用の例示的な光学システムを示す。
[図12B]偏光用の例示的な光学システムを示す。
[図13]サバール板を示す。
[図14]サバール板位相弁別器における偏光関係を示す。
[図15A]例示的な変調器−弁別器の配置を示す。
[図15B]例示的な変調器−弁別器の配置を示す。
[図16A]非偏光用の例示的な光学システムを示す。
[図16B]非偏光用の例示的な光学システムを示す。
[図17]フーリエ面弁別器の理解を助けるための様々な関数関係を示す。
[図18]フーリエ面弁別器の理解を助けるための様々な関数関係を示す。
[図19]交互走査において直線状アレイの出力をシフトする効果を示す。
[図20]直線状アレイディスプレイシステムの連続走査をインタリーブする1つの考えられる方法を示す。
[図21]2次元位相変調器アレイに有限差分を適用し得る方法を示す。
[図22A]実験的に得られた直線状アレイ位相変調器から出力された光の像を示す。
[図22B]実験的に得られた直線状アレイ位相変調器から出力された光の像を示す。
[発明を実施するための形態]
図1は、ディスプレイシステムのブロック図を示している。システムは、光源105、位相変調器110、光学システム115、およびラインスキャナ120を備えている。光源105は、レーザ、発光ダイオード、アーク灯または他の明るい光源である。位相変調器110は、光の位相を変化させる素子の直線状アレイを備えており、その素子は透過または反射で作用し得る。光学システム115は、位相変調器によって生成された位相ステップに対応するピクセルを生成する。光学システムは、これらの位相ステップが明ピクセルまたは暗ピクセルのいずれかに対応するように構成し得る。定義上、位相は2πごとに繰り返すため、最大の位相ステップはπである。さらに、デジタル(1つの明レベルと1つの暗レベル)またはアナログ(多数の階調レベル)動作が可能である。ラインスキャナ120は、線画像を往復走査することによって2次元画像を「描く」。
光学システムは、位相エッジ弁別器の役割を果たす。位相素子の直線状アレイが、1つの位相エッジ、すなわち位相の1ステップ増加または減少のいずれかを表わす場合、1ピクセルの線画像が生成される。n個の素子を有する直線状アレイは、n個のピクセルに対応するn個のエッジでプログラムすることができる。(素子の個数は、アレイの端の素子をカウントする方法に応じてn±1となる可能性があるが、それでも素子とピクセルの数は「同じ」ものとして参照する。)リボン変調器の場合、ピクセルあたりリボンが1個だけ必要である。さらに、先進技術によりリボンの2倍のピクセル、すなわちピクセルあたりリボン「半分」を可能にすることを以下に示す。
ディスプレイシステムについて次に詳しく説明する。先ず、変調器およびディスプレイの基本を示し、続いて画像データを変調器素子の位相設定に変換するための符号化方式の詳細を示す。次に、新たな光弁別器システムについて説明する。最後に、先進技術、2次元変調器への拡張、および実験結果について議論する。
変調器およびディスプレイの基本
図2は、反射型および透過型の直線状アレイ位相変調器の例を示している。位相変調器205は、素子206、207および208などの多数の個別反射素子を含んでいる。図には数十素子しか示していないが、実際の変調器は数百または数千素子を含み得る。例えばHDTV用途では、素子数は大抵の場合1,000から5,000の間である。変調器205内の各素子が光を反射する。隣り合った変調器素子によって反射される光の位相差は、素子を異なる高さにセットすることによって、すなわち図の面と垂直に移動させることによって実現され得る。ただし、反射素子は移動可能である必要はなく、例えばLCoS素子として実現されてもよい。変調器205内の素子は、長方形として描かれているが、正方形または別の形状でもよい。
位相変調器210は、素子211、212および213などの位相変調器の個々の素子が透過型であることを除けば、位相変調器205と非常によく似ている。これらの透過型素子は、それを通過する光に様々な位相を付与する。透過型素子は必ずしも移動できる必要はなく、例えば液晶として実現されてもよい。素子の数および形状などの位相変調器210の他の態様は、位相変調器205の場合と同じである。
図3Aおよび図3Bは、変調器205などの反射位相変調器の素子を作成するために使用され得るMEMSの構造の一例である微小機械リボンを示している。図3Aは、非偏向状態にあるリボンを示しており、一方、図3Bは距離Δzだけ偏向したリボンを示している。
図3Aおよび図3Bでは、MEMSリボン305は支持310によって基板320の近くで支持されている。典型的な用途において、リボンの寸法はおよそ長さ100μm(すなわちy方向)、幅10μm(すなわちx方向)、厚さ0.1μm(すなわちz方向)である。ただし、これらの寸法は様々な設計で大きく変化し得る。例えば、さきに挙げた寸法が5倍大きいかまたは小さいことは珍しいことではない。
図3Aは、リボン305に反射して光ビーム355として戻ってくる光ビーム350を示している。光ビーム350が距離Δzだけ偏向したリボンに反射する場合(図3Bに示すように)、反射ビーム355の位相は
だけ変化する。ここで、λはその光の波長である。アレイ内で隣り合ったリボンが距離Δz1およびΔz2だけ偏向している場合、隣り合ったリボンに反射する光の間の位相差は
である。
z方向におけるリボン305の偏向は、リボンと基板320との間に電圧を印加することによって実現されてもよい。リボンのサイズに応じて、数ナノ秒の小ささで高さが調節され得る。
点線矢印360は、リボン305が反射型ではなくて透過型であった場合に光ビーム350がたどるであろう経路を示している。大抵の場合、反射面で折り返されない光学システムを描くのが有用である。すなわち、反射面によって透過させられるかのように光ビームを描くことが有用であり得る。
図4A、図4Bおよび図4Cは、反射型および透過型の変調器を用いた光学配置を示す。図4Aでは、入力光ビーム405は、反射位相変調器410によって変調され、出力光ビーム415を形成する。ステアリングミラー420および422は、光ビームを、変調器に対して正確にではないがほぼ垂直な入射角で、変調器へおよび変調器から誘導する。図4Bでは、入力光ビーム425は反射変調器430によって変調され、出力光ビーム435を形成する。出力ビーム435はビームスプリッタ440によって入力ビーム425から分離される。図4Bに示す配置により、変調器を垂直な入射角で照射することができる。図4Cでは、入力光ビーム445は、透過変調器450によって変調され、出力ビーム455を形成する。
図5は、直線状アレイ位相変調器に基づくディスプレイシステムを示している。図5では、光源505が、直線状アレイ位相変調器515によって反射または透過されるまえにレンズ510を通過する光を放射する。位相変調器515は反射型でも透過型でもよく、図では、透過型であるかのように描かれており、挿入図520に模式的に示されている素子の直線状アレイのわずかなオフセットが、透過光に付与される位相差を示している。光学システム525は、位相差をスキャナ530によって反射された線画像に変換する。最終的に、スキャナ530は表示または印刷のために面540を横切って線画像535を走査する。例として、投射型ディスプレイでは、面540は観察側スクリーンである可能性があり、一方、リソグラフィシステムでは、面540はフォトレジストがコーティングされたウェハである可能性がある。リソグラフィおよび他の印刷用途においては、走査ミラーに変わる手段は、線画像を走査するのではなく面を動かすことである。システムによっては、回転プリズムが走査ミラーに取って代わり得る。
上述したように、ディスプレイシステムは、光源、位相変調器、光学システムおよびラインスキャナを備えている。位相変調器は、MEMSリボンまたは液晶変調器などの透過型または反射型素子の直線状アレイを含んでおり、その素子は垂直入射でまたは光軸を外れて光を照射され得る。光学システムは隣り合った変調器素子によって生成される位相差を線画像内のピクセルにおける輝度変化に変換する。線画像を走査して2次元画像を形成し得る。
符号化方式
画像データは、画像内の個々のピクセルの輝度を意味し、表示のためにディスプレイシステムへ送られる。符号化方式を使用して、画像データを直線状アレイ位相変調器内の変調器素子の位相設定に変換する。ここで説明する符号化方式は、デジタル信号伝送で使用される非ゼロ復帰逆転(NRZI)符号化に似ている。NRZIは、バイナリ信号を2つのレベルの物理的信号にマッピングする方法である。NRZI信号は、伝送されるビットが論理の1である場合に、クロックの境界で遷移し、伝送されるビットが論理の0である場合には遷移しない。(NRZIは、論理の0が遷移によって符号化され、論理の1がレベル不変によって符号化されるという、反対のルールを採用することもできる。)
図6は、デジタル位相変調器用の符号化方式の一例を示している。デジタル位相変調器は、隣り合った変調器素子間の位相差0またはπから暗ピクセルまたは明ピクセルを生成する。濃淡は、必要に応じて、パルス幅変調などの時間領域法によって実現され得る。
図6では、ビット605、606および607などのビットとしてデータを示しており、一方、変調器素子の位相は610、611および612などの線分で表わしている。線分は、その間の位相差πを表わす2つのポジションのいずれかに表示される。ビット615を、明ピクセルを示す「1」と考える。このビットは、変調器素子610と611との間のπの位相ずれとして符号化される。素子610と611のどちらが「アップ」または「ダウン」かについてはどちらでもよく、それらの位相の差だけが重要なのである。例えば、ビット607は、610と611とは逆の設定の素子で表わされているが、これもまた「1」である。「0」ビットは、同一の設定の隣り合った素子によって表わされる。
論理図620は、直線状アレイ位相変調器において次の素子の位相を正式に特定するための一手法を示している。例えば、全てが同一の位相を有する一連の位相変調器素子によって一連の暗ビット(「0」)が符号化されてきたと仮定する。引き続く明ビット(「1」)はどのように表わすべきか? 論理図620は、次の変調器素子の位相「bk」が、ビット「ak」の値(この例では「1」)および前の素子の位相(「bk-1」、ここで位相はπ=1となるように正規化される)から決定されることを示している。これは、「明ピクセルについては位相エッジを生成し、暗ピクセルについては位相を一定に保つ」ということである。そのため、図中の線分はビットの間の点線の境界をまたいでいる。
図7は、デジタル位相変調器用の符号化方式の第2の例を示している。この例は、符号化ルールが「暗ピクセルについては位相を反転させ、明ピクセルについては同じままにする」に変わったことを除いて、図6に示した例と同じである。デジタル変調器で図6または図7の符号化方式のどちらを使用するかの選択は、位相差を明ピクセルまたは暗ピクセルに変換する光弁別器システムに依存する。
図8は、アナログ位相変調器用の符号化の一例を示している。図6および図7と同様に、線分のポジションは、変調器素子の位相を表わしている。ただし、アナログ符号化では、素子は2πの範囲で調節することができる。この例では、より大きな位相差が、より明るいピクセル輝度に対応している。暗を意味する「0」のピクセルは隣り合ったピクセル間の位相差0によって表わされている。輝度「a]は、小さな位相差によって表わされており、一方、輝度「b」はより大きな位相差で表わされている。
図9Aおよび図9Bは、デジタル位相変調方式およびアナログ位相変調方式の理解を助けるグラフである。図9Aは、図6および図7に関連付けて説明したデジタル変調に関するものであり、一方、図9Bは、図8に関連付けて説明したアナログ変調に関するものである。図9Aでは、デジタルビット列(「111010」)が横軸に沿って示されており、変調器素子の位相が縦軸に沿って示されている。ビットは変調器素子の間の境界に表示されており、例示されるケースは、位相差によって「1」が表わされ、一方、位相に変化がないことによって「0」が表わされるケースである。したがって、表示される出力として「1」が望まれるときはいつも、グラフに縦線が現れる。
最初の「1」のビット(左からカウント)において、1番目と2番目の変調器素子の間の位相差πが縦線で示されている。2番目の「1」のビットにおいて、点線および湾曲した矢印は、2番目と3番目の変調器素子の間の所望の位相差πが、1番目と3番目の変調器素子の間の位相差2πを生成することによってか、またはそれらの素子間の位相差ゼロによってかのいずれかによって実現され得ることを示している。0および2πの位相シフトは同じことであり、反射型デジタル位相変調器内の素子は、λ/4を超えて移動する必要はない。ここで、λはその光の波長である。
図9Bでは、一連のアナログピクセル輝度(「abcdef」)を横軸に沿って示しており、変調器素子の位相を縦軸に沿って示している。ピクセルは変調器素子の間の境界における位相差から生成され、この例では、より大きな位相差がより大きなピクセル輝度に対応しているが、使用している光弁別器システムによってはその逆が当てはまる可能性がある。表示される出力として(暗ではない)ピクセルが望まれるときはいつも、グラフに縦線が現れる。
左から始まって、各素子の位相はピクセル「a」および「b」については増加するが、ピクセル「c」は、3番目と4番目の変調器素子の間の位相減少によって生成される。ピクセル「c」は、3番目と4番目の変調器素子の間の位相差が位相の増加から得られていたとすると、同じように明るいことになる。ピクセル「c」の輝度は、位相差の符号ではなく、大きさに依存する。
ピクセル「e」は5番目から6番目の変調器素子への位相の増加によって生成される。ただし、定義により位相は2πごとに繰り返す。点線および湾曲した矢印は、6番目の変調器素子を、所望の位相増加のモジュロ2πを表わすように設定することができる方法を示している。別の方法としては、6番目の素子の位相を、5番目の素子からの位相減少を表わすように設定することである。6番目の素子の絶対位相は2つのケースで異なるものの、ピクセル輝度は同じである。
図9Bは、アナログ位相変調器用に、いくつかの符号化戦略が可能であることを示唆している。1つの戦略は、変調器素子の間の位相差の符号を常に交互に入れ替えることである。すなわち、前の2つの素子の間の遷移が位相増加だった場合、次の2つの間の遷移は位相減少である。この戦略は、光学システムにおいて光を高い角度に誘導する傾向がある。別の戦略は、変調器素子の間の位相差の符号を常に同じに維持することである。すなわち、常に増加するか、または常に減少することである。当然ながら、位相は2πで「最初に戻る」。この戦略は、光を光学システムの軸の近くに誘導する傾向がある。3つ目の戦略は、変調器素子の間の位相差の符号をランダムに選択することである。
画像データを変調器素子用の位相設定に変換するため、デジタルおよびアナログ、ならびに各ケースにおいて、より大きな位相エッジまたはより小さな位相エッジのいずれかに対応する明ピクセルといった4つの一般的な方式を説明した。
光弁別器
光学システムは変調器によって生成された位相エッジを、表示のために走査して2次元画像を形成し得る線画像に変換する。このシステムは、光学システムの物体面とフーリエ面で行われる操作の間の双対関係に起因して多くの形態をとり得る光位相弁別器の役割を果たす。
図10Aおよび図10Bは、偏光および非偏光用の例示的な物体面およびフーリエ面弁別器の間の関係を説明している。図10Aは、光学システムの物体面におけるコンボリューションが、そのシステムのフーリエ面における掛け算と等しいことを示している。この関係は、様々な位相弁別システムを作るための指針として用いることができる。図10Bは、図10Aの関係を用いて少なくとも4つの異なった光学システムを構成することができることを示している。
偏光を用いたシステムの場合、弁別器は、物体面内のサバール板と偏光子、またはフーリエ面内のウォラストンプリズムと偏光子に基づき得る。非偏光を用いたシステムの場合、弁別器は、物体面内の厚いホログラム、またはフーリエ面内のアポダイゼーションフィルタに基づき得る。これらの光学配置の詳細を以下に説明するが、図10Aに示す関係に従う他の光学方式は疑いなく存在する。
図11Aおよび図11Bは、光学システムおよびフーリエ面フィルタの応答関数を示している。図11Aでは、線1105はシステムの物体面を表わしており、線1115はフーリエ面を表わしている。物体面およびフーリエ面は、レンズ1110の両側に、レンズから焦点距離だけ離れて存在している。矢印1120および1125は、短い距離だけ相隔たった正および負のデルタ関数をそれぞれ表わしている。
近接した正および負のデルタ関数と光変調器素子の直線状アレイとのコンボリューションは、デルタ関数の間の間隔が素子のセンター間の間隔と等しいかまたはそれより小さい場合に、隣り合った素子からの光の位相の間の差をサンプリングすることに等しい。したがって、図11Aは、位相変調器内の隣り合った素子の間のより大きな位相差が、より大きなピクセル輝度に対応するシステムを示している。
図11Bでは、線1155はシステムの物体面を表わしており、一方、線1165はフーリエ面を表わしている。物体面およびフーリエ面は、レンズ1160の両側に、レンズから焦点距離だけ離れて存在している。矢印1170および1175は、短い距離だけ相隔たった2つの正のデルタ関数をそれぞれ表わしている。
近接した正のデルタ関数と光変調器素子の直線状アレイとのコンボリューションは、デルタ関数の間の間隔が素子のセンター間の間隔と等しいかまたはそれより小さい場合に、隣り合った素子からの光の位相の間の類似度をサンプリングすることに等しい。したがって、図11Bは、位相変調器内の隣り合った素子の間のより小さな位相差が、より大きなピクセル輝度に対応するシステムを示している。
図10Aによれば、物体面におけるコンボリューションはフーリエ面における掛け算に相当する。したがって、物体面での近接した正および負のデルタ関数とのコンボリューションは、図11Aに示すフーリエ面におけるサイン関数の掛け算に相当する。物体面における近接した正のデルタ関数とのコンボリューションは、図11Bに示すフーリエ面におけるコサイン関数の掛け算に相当する。
図11Aに示す「サイン」のケースをさらに考えると、デルタ関数1120および1125が近接させられるにつれて、物体面において隣り合ったセグメント間の差をサンプリングすることは微分に近き、フーリエ面におけるサイン関数は1本の直線に近づき始める。言い換えれば、物体面における微分は、フーリエ面における線形勾配の掛け算と等しい。
図11Aに示すように、フーリエ面におけるサイン応答は、有限な横方向の大きさの光学システム内で切り取られる。物体面において対応する効果としては、デルタ関数1120および1125がシンク関数に拡張される。最終的に、物体面におけるデルタ関数(またはシンク関数)の間の間隔が位相変調器素子の間の間隔と一致する場合に、光学的効率が最大になる。図11Aのケースでは、ピクセル輝度はsin2(φ/2)に比例する。ここで、φは隣り合った位相変調器素子の間の位相差である。図11Bのケースでは、輝度はcos2(φ/2)に比例する。
図12Aおよび図12Bは、偏光用の例示的な光学システムを示している。図12Aのシステムは、フーリエ面の光学素子を使用しており、一方、図12Bのシステムは、物体面の光学素子を使用している。いずれのシステムも、図11Aのサイン応答または図11Bのコサイン応答を示すように構成し得る。
図12Aでは、線分1205は直線状アレイ光位相変調器の素子を表わしている。レンズ1210は、位相変調器素子とウォラストンプリズム1215との間に、焦点距離だけ離れて配置されている。ウォラストンプリズムは、偏光子1230と1235とによって挟まれている。図12Aでは、偏光子1230および1235は、クロスする偏光軸と共に描かれている。この構成は、図11Aのサイン応答を生じさせる。偏光子が平行の偏光軸で方向が合っていれば、図11Bのコサイン応答が得られることになる。
図12Bでは、線分1255は直線状アレイ位相変調器の素子を表わしている。レンズ1260は、位相変調器素子とフーリエ面1265との間に、焦点距離だけ離れて配置されている。サバール板1270は、レンズ1260と位相変調器素子1255との間に配置されている。サバール板は、偏光子1280と1285とによって挟まれている。図12Bでは、偏光子1280および1285はクロスする偏光軸と共に描かれている。この構成は、図11Aのサイン応答を生じさせる。偏光子が平行の偏光軸で方向が合っていれば、図11Bのコサイン応答が得られることになる。
図12Bのシステムについてここでさらに詳しく考える。図13はサバール板1305を示している。サバール板は、法面に対して45°の方向を向き互いに対して90°回転した光軸を有する2つの複屈折板で構成されている。1番目の板を伝搬した入射光ビームは、互いに離れた常光線と異常光線に分光される。2番目の板に入る時点で、常光線は異常光線になり、逆もまた同様である。2つのビームが斜め方向に沿って距離「d」だけ離れてサバール板から出現する。法線入射の場合、2つのビームの間の光路差はゼロである。
図14は、サバール板位相弁別器における偏光関係を示している。「0」と「1」の2つのシナリオを示している。シナリオ「0」では、サバール板1405は光軸1410を有している。軸1430および1435は、サバール板の両側、すなわち、1つは板よりも見る者に近い側に、1つは遠い側に配置された偏光子の偏光軸を表わしている。ドット1420の位置にあって、軸1430に沿って偏光された光ビームを考える。この光ビームは、サバール板によってドット1415および1425の位置で、光軸1410に対してそれぞれ垂直および平行な偏光を有する2つの成分ビームに分割される。これらの2つのビームを軸1435方向に沿った偏光子によって分解する場合、光は通過しない。シナリオ「0」は、位相変調器の隣り合った素子を、クロスした偏光子によって挟まれたサバール板を通して眺め、素子が位相のそろった光を放出するときの状況を示している。
シナリオ「1」では、ドット1425にある光が、ドット1415にある光と比べて位相がπシフトしてサバール板に到達する。ここで、サバール板の光軸に対して平行および垂直の偏光を有する光は軸1435に沿って偏光子によって分解され、成分が同じ位相で加わり、最大の光が伝送される。シナリオ「1」は、位相変調器の隣り合った素子を、クロスした偏光子によって挟まれたサバール板を通して眺め、素子が位相のそろっていない光を放出するときの状況を示している。
クロスした偏光子によって挟まれたサバール板を物体面に(変調器とレンズとの間に)配置することは、
のインパルス応答をもつ位相弁別器を構成する方法の1つである。ここで、pは図11Aにおける理想的なデルタ関数1120および1125に類似した正および負のシンク関数の間の距離である。x0はシンク関数の幅(第1のゼロクロス点)を決定し、x0がゼロになるときにデルタ関数が得られる。(偏光子がクロスではなく平行であった場合、インパルス応答は
となる。)図10B、図12および図16に要約する4つの弁別器のそれぞれが、これらのインパルス応答関数のいずれかを生成することができる。
h(x)のフーリエ変換H(k)は、+/−(λ/x0)で切り取られたサイン関数である。サイン関数が、図11Aの面1115にプロットされているように、+/−(λ/p)で切り取られた場合、対応する線画像のピクセル強度は、sin2(x−a)に比例する。ここで、「a]は直線状アレイの長さに沿った特定のピクセルの位置を表わしている。もし、サイン関数が光軸から+/−(λ/p)よりも遠く離れて切り取られたなら、線画像のピクセルはsin2(x)の空間的強度プロファイルを有するのではなく、四角になることになる。
図15Aおよび図15Bは、例示的な変調器−弁別器の配置を示している。図15の配置は、サインを検出するためのクロスした偏光子を備えた図12Bの弁別器素子を用いた、図4Aの軸から外れた配置である。位相変調器と図12Bのレンズ1260などのレンズ(図15には示されていない)との間にサバール板が配置されている。
図15Aでは、入力光ビーム1505は反射位相変調器1510によって変調されて出力光ビーム1515を形成する。ステアリングミラー1520および1522は、光ビームを変調器にほぼ垂直に、変調器からおよび変調器へ誘導する。偏光子1530および1535は、それぞれの偏光軸が互いに垂直で、サバール板1540の光軸に対して45°の方向に向けられている。入力光ビーム1505が、例えばレーザ光源のケースのようにすでに偏光されている場合、偏光子1530は不要である。
図15Bは、補償板1545を追加した図15Aと同じ配置を示している。この板は別のサバール板でもよいが、本明細書に記載されている光学システムの光位相弁別機能のいずれも実現する必要はない。しかしながら、その板は軸から外れた光について現れ得る副次的効果を低減するのに貢献し得る。
図16Aおよび図16Bは、非偏光用の例示的な光学システムを示している。これらは、それぞれ図10に関連して述べたアポダイゼーションフィルタと厚いホログラムである。図10Aは、フーリエ面における関数のフーリエ変換の掛け算が物体面におけるそれらの関数のコンボリューションに等しいことを示している。図16Aのシステムでは、直線状アレイ位相変調器からの光の電界プロファイルのフーリエ変換に、正弦波的に変化する光学密度をもつフィルタが掛け合わされる。これは、物体面における近接した正および負のデルタ関数(または実際ケースではシンク)と、変調器素子によって表わされる位相差とのコンボリューションに等しい。
図16Aでは、線分1605は直線状アレイ光位相変調器の素子を表わしている。レンズ1610は、位相変調器素子とアポダイゼーションフィルタ1615との間に、焦点距離だけ離れて配置されている。後述するように、フィルタは正弦波的に変化する光学密度およびその範囲の半分に渡る位相シフトを有している。図16Bでは、線分1655は直線状アレイ光位相変調器の素子を表わしている。レンズ1660は、位相変調器素子とフーリエ面1665との間に、焦点距離だけ離れて配置されている。厚いホログラム1670は物体面(ここに位相変調器の素子が置かれている)とレンズとの間に配置されている。Steven K. Caseは、通常は光学システムのフーリエ面にマスクを配置することによって実行されるフーリエ処理を、物体面に厚いホログラムを配置することによっても実行し得ることを指摘した(1979年、「物体面におけるフーリエ処理」、『Optics Letters』、4、pp286−288(”Fourier processing in the object plane”,Optics Letters, 4,286−288、1979))。彼は、ホログラムは物体波の空間周波数スペクトルに作用する線形フィルタであることを示している。物体面におけるハイパス空間周波数フィルタは、フーリエ面における微分に等しい。図10Aの関係を使用して、所望のフーリエ面のマスクを生成するための物体面のホログラムを設計し得る。
ここで、フィルタ1615などのアポダイゼーションフィルタを構成する方法を考える。図17は、フーリエ面弁別器の理解を助けるための様々な関数関係を示している。図17は、a〜dの4つのパネルを示している。パネル(a)は、図16Aに示されるようなシステムのフーリエ面に配置された場合に、そのシステムの物体面におけるエッジサンプリングの作用を提供することになる正弦波電界フィルタの関数形を示している。パネル(b)は、パネル(a)のフィールドプロファイルに対応する強度プロファイルを示している。すなわち、(b)にプロットされている関数は、(a)にプロットされている関数の2乗である。パネル(c)は、パネル(a)の正弦波形状(実線)とパネル(b)の強度プロファイルの平方根(点線)を比較している。強度の平方根(c)を正弦波形状(a)と一致させるため、光学フィルタは(d)に示されるような位相シフトと組み合わせて光学密度プロファイル(b)を有する板で構成することができる。プロファイル(d)は、例えば、極厚のガラスをフィルタの2分の1に付け加えることによって得られ得る。図17は、サイン(位相差)弁別用のアポダイゼーションフィルタを構成するための関数関係を示している。この概念は、Oti他による天体観測に適用されてきた(2005年、「光学微分コロナグラフ」、『アストロフィジカルジャーナル』、630、pp631−636(”The Optical Differentiation Coronagraph”, Astrophysical Journal, 630, 631−636, 2005))。
図18に示すようにコサイン(位相類似度)弁別用のフィルタを構成するために、同様の概念を用い得る。図18もフーリエ面弁別器の理解を助けるための様々な関数関係を示している。図18は、a〜dの4つのパネルを示している。パネル(a)は、図16Aに示されるようなシステムのフーリエ面に配置された場合に、そのシステムの物体面においてエッジサンプリング作用を提供することになる正弦波電界フィルタの関数形を示している。パネル(b)は、パネル(a)のフィールドプロファイルに対応する強度プロファイルを示している。すなわち、(b)にプロットされている関数は、(a)にプロットされている関数の2乗である。パネル(c)は、パネル(a)の正弦波形状(実線)とパネル(b)の強度プロファイルの平方根(点線)を比較している。強度の平方根(c)を正弦波形状(a)と一致させるため、光学フィルタは(d)に示されるような位相シフトと組み合わせて光学密度プロファイル(b)を有する板で構成することができる。プロファイル(d)は、例えば、極厚のガラスをフィルタの一部に付け加えることによって得られ得る。図18は、コサイン(位相類似度)弁別用のアポダイゼーションフィルタを構成するための関数関係を示している。
直線状アレイ位相変調器によって表わされる位相プロファイルを、線画像を形成する強度プロファイルに変換するための光弁別器を、偏光および非偏光の両方について説明してきた。さらに、弁別器は、光学システムの物体面またはフーリエ面に配置された光学部品で設計することができる。
先進技術
他の用途のために2次元アレイを使用して、および位相弁別器を使用して線画像をインタリーブすることは、これまで説明した原理の拡張である先進技術の例である。
これまで説明したディスプレイシステムは、そのピクセルが、隣り合った素子の間で生成される位相差の結果であるため、変調器素子の数と同じ数のピクセルを有する(走査された)線画像を生成する。インタリーブ技術を使用して、生成されるピクセル数を変調器素子の数の2倍に増やし得る。
図19は、交互走査に関して直線状アレイの出力をシフトする効果を示している。図19では、1905、1915、1925、1935などの正方形は、直線状アレイ位相変調器の素子を表わしている。これらの素子から発生する光の位相差が、グラフ1950に実線で図式的にプロットされているピクセル強度に変換される。ピクセル強度はsin2(Δφ/2)に比例する。ここで、Δφはアレイ素子の間の位相差である。グラフ1950に表わされるように、ピクセル強度対線画像に沿った位置は、sin2(x−a)に比例する。ここで「a」は直線状アレイの長さに沿った特定のピクセルの位置を表わしている。例えば、破線の正方形1910、1920、1930、1940で表わされるように、位相変調器アレイの素子を素子の周期の2分の1だけシフトした場合、対応するピクセルはシフトされていないアレイによって生成されるピクセルとインタリーブされる。これらのピクセルの強度は、グラフ1950に破線でプロットされており、cos2(x−a)に比例する。よって、本明細書に記載の弁別器を備えた直線状アレイ光位相変調器は、円滑にインタリーブすることができる線画像を生成することができる。これらの画像は、変調器素子の2倍のピクセルから構成されている。
図20は、直線状アレイディスプレイシステムの連続走査をインタリーブするために可能性のある1つの方法を示している。図20では、表示または印刷のために、スキャナ2030が線画像2035および2045を、面2040を横切って交互に走査する。線画像2035および2045は、矢印2050で示すように、線画像に対して平行にスキャナ2030をわずかに傾斜させることによってインタリーブし得る。インタリーブするための別の方法としては、線画像を互い違いにするために直線状位相変調器を交互の位置の間でわずかに移動させるということがある。これは、例えば位相変調器をピエゾアクチュエータで揺り動かすことによって実現され得る。
ここまで、説明したシステムおよび方法は、直線状アレイ光位相変調器に基づいてきた。しかしながら、これらのシステムおよび方法は、2次元位相変調器にも拡張し得る。2次元変調器は直線状アレイのアレイであると考えることができる。位相差(または位相類似度)弁別は、2次元アレイの1つの次元に沿って適用し得、アレイのもう一方の次元によって、線画像を走査する必要がなくなる。
図21は、有限差分を2次元位相変調器アレイに適用し得る方法を示している。図21では、正方形2105、2115、2125、2135など、および2106、2107、2108など、および2116、2117、2118など、および2126、2127、2128などが、2次元位相変調器アレイの素子を表わしている。こうしたアレイの一例は、液晶位相変調器である。光位相差弁別器を使用してライン2150、2152、2154などに沿った素子の間の位相差を検出すると、2次元画像が形成される。こういった画像からの代表的なピクセル強度が図の軸2151、2153、2155などにプロットされている。
図22Aおよび図22Bは、実験的に得られた、直線状アレイ位相変調器からの光出力の画像である。実験は、3.7μmピッチおよびπの位相シフトを生成するのに十分な行程長(例えば、図3BのΔzを参照)を有するMEMSリボン変調器で実施した。個々のリボン制御によって、単純な電子システムで任意のパターンが生成されることを可能にした。図では、線画像のピクセルに対応する光変調器素子の相対位相を示すために、測定された光出力に重ねて白い棒が描かれている。
本明細書、特に図10、図11、図12および図16に記載されている光弁別器は、ディスプレイ、印刷およびリソグラフィ以外の目的に使用し得る。こういった弁別器は、例えば光学データストレージの読み出しに使用し得る。光ディスク(コンパクトディスク、映像ディスクなど)に記録されたビットは、ディスク上のピットまたはランドで反射される光の差を検出する光学システムによって読み出される。ここで記載される位相差弁別器を使用して、例えば光ディスクからの複数の並列チャネルのデータを読み出し得る。
位相変調器の隣り合った素子の間の位相差を検出することに基づいたディスプレイシステムについて説明してきた。これらのシステムは位相変調器の素子と同じ数の表示画像のピクセルを生成する。場合によっては、インタリーブ技術を使用して2倍の数のピクセルが生成される。
本明細書での実施形態の開示から当業者は容易に理解するであろうように、現在存在しているかまたは開発される、本明細書に記載の対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たすかまたは実質的に同じ結果を達成するプロセス、機械、製造物、手段、方法またはステップを、本発明に準じて利用し得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、そのようなプロセス、機械、製造物、手段、方法またはステップを含むことを意図するものである。
システムおよび方法について上述した実施形態の例示は、全てを網羅することを意図しておらず、またシステムおよび方法を開示されるそのままの形態に限定することを意図するものでもない。システムおよび方法の具体的な実施形態および例は、例示の目的のために本明細書に記載しているのであって、当業者は理解するであろうように、システムおよび方法の範囲内で様々な同等な変更が可能である。本明細書に提供されるシステムおよび方法の教示は、上述のシステムおよび方法に対してのみならず、他のシステムおよび方法にも適用することができる。
一般に、以下の請求項において、使用される用語は、システムおよび方法を本明細書および請求項に開示される具体的な実施形態に限定するものと解釈されてはならず、本請求項にしたがって作用する全てのシステムを含むものと解釈されるべきである。したがって、システムおよび方法は開示によって限定されることはなく、代わりに、システムおよび方法の範囲は請求項によって完全に決定されるべきものである。
[書類名]特許請求の範囲
[請求項1]
光源と、
前記光源によって生成される光の位相を変調する素子の直線状アレイを含む位相変調器と、
隣り合った変調器素子からの光の間の位相差を線画像のピクセルに変換する光位相弁別器と、
画面を横切って前記線画像を走査して2次元画像を生成するスキャナと
を備えるディスプレイ。
[請求項2]
前記光源がレーザである、請求項1に記載のディスプレイ。
[請求項3]
前記光源が発光ダイオードである、請求項1に記載のディスプレイ。
[請求項4]
前記光源がアーク灯である、請求項1に記載のディスプレイ。
[請求項5]
前記位相変調器の前記素子が反射型である、請求項1に記載のディスプレイ。
[請求項6]
前記位相変調器の前記素子が微小電気機械リボンである、請求項5に記載のディスプレイ。
[請求項7]
前記位相変調器の前記素子が透過型である、請求項1に記載のディスプレイ。
[請求項8]
前記位相変調器の前記素子が液晶変調器である、請求項7に記載のディスプレイ。
[請求項9]
前記位相変調器が前記位相弁別器の物体面に存在し、かつ前記位相弁別器がサバール板を備える、請求項1に記載のディスプレイ。
[請求項10]
前記位相変調器が前記位相弁別器の物体面に存在し、かつ前記位相弁別器がウォラストンプリズムを備え、前記ウォラストンプリズムが前記位相弁別器のフーリエ面で作用する、請求項1に記載のディスプレイ。
[請求項11]
前記位相変調器が前記位相弁別器の物体面に存在し、かつ前記位相弁別器が厚いホログラムを備える、請求項1に記載のディスプレイ。
[請求項12]
前記位相変調器が前記位相弁別器の物体面に存在し、かつ前記位相弁別器がアポダイゼーションフィルタを備え、前記アポダイゼーションフィルタが前記位相弁別器のフーリエ面で作用する、請求項1に記載のディスプレイ。
[請求項13]
前記位相弁別器が物体面インパルス応答
(式中、pは前記位相変調器の素子の空間的周期であり、x0は定数である)をもつ、請求項1に記載のディスプレイ。
[請求項14]
前記位相弁別器が物体面インパルス応答
(式中、pは前記位相変調器の素子の空間的周期であり、x0は定数である)をもつ、請求項1に記載のディスプレイ。
[請求項15]
前記スキャナが揺動ミラーである、請求項1に記載のディスプレイ。
[請求項16]
前記スキャナが回転プリズムである、請求項1に記載のディスプレイ。
[請求項17]
前記線画像のピクセル数が変調器素子の数と同じである、請求項1に記載のディスプレイ。
[請求項18]
前記線画像の明ピクセルが隣り合った変調器素子の間の非ゼロ位相差に対応する、請求項1に記載のディスプレイ。
[請求項19]
前記線画像の暗ピクセルが隣り合った変調器素子の間の非ゼロ位相差に対応する、請求項1に記載のディスプレイ。
[請求項20]
前記スキャナの連続走査によって生成される線画像が、前記線画像に対して平行にずらせることによってインタリーブされる、請求項1に記載のディスプレイ。
[請求項21]
物体面およびフーリエ面を有するレンズと、
前記物体面に位置する位相変調器であって、前記変調器は空間的周期pを有する素子の直線状アレイを含み、素子に入射する光の位相を各素子が独立して変化させることができる位相変調器と、
前記位相変調器の前記素子からの光の位相をサンプリングする光学部品であって、前記部品は前記物体面において
(式中、xは前記直線状アレイに対して平行な空間座標であり、x0は定数である)で与えられるインパルス応答を有する光学部品と
を備える光学システム。
[請求項22]
前記光学部品が前記位相変調器と前記レンズとの間に位置するサバール板を備える、請求項21に記載のシステム。
[請求項23]
前記光学部品が前記フーリエ面に位置するウォラストンプリズムを備える、請求項21に記載のシステム。
[請求項24]
前記光学部品が前記位相変調器と前記レンズとの間に位置する厚いホログラムを備える、請求項21に記載のシステム。
[請求項25]
前記光学部品が前記フーリエ面に位置するアポダイゼーションフィルタを備える、請求項21に記載のシステム。
[請求項26]
前記光学部品が前記フーリエ面において
(式中、λは光の波長)で切り取られた1周期のサイン関数であるインパルス応答を有する、請求項21に記載のシステム。
[請求項27]
物体面およびフーリエ面を有するレンズと、
前記物体面に位置する位相変調器であって、前記変調器は空間的周期pを有する素子の直線状アレイを含み、素子に入射する光の位相を各素子が独立して変化させることができる位相変調器と、
前記位相変調器の前記素子からの光の前記位相をサンプリングする光学部品であって、前記部品は物体面において
(式中、xは前記直線状アレイに対して平行な空間座標であり、x0は定数である)で与えられるインパルス応答を有する光学部品と
を備える光学システム。
[請求項28]
前記光学部品が前記位相変調器と前記レンズとの間に位置するサバール板を備える、請求項27に記載のシステム。
[請求項29]
前記光学部品が前記フーリエ面に位置するウォラストンプリズムを備える、請求項27に記載のシステム。
[請求項30]
前記光学部品が前記位相変調器と前記レンズとの間に位置する厚いホログラムを備える、請求項27に記載のシステム。
[請求項31]
前記光学部品が前記フーリエ面に位置するアポダイゼーションフィルタを備える、請求項27に記載のシステム。
[請求項32]
前記光学部品が前記フーリエ面において
(式中、λは光の波長)で切り取られた1周期のコサイン関数であるインパルス応答を有する、請求項27に記載のシステム。
[請求項33]
その長さに沿って位相ステッププロファイルを生成することができる直線状アレイ位相変調器と、
前記位相ステッププロファイルを明ピクセルおよび暗ピクセルを含む線画像に変換する光位相弁別器とを備え、
前記線画像のピクセルは非ゼロ復帰逆転符号化で前記位相プロファイルにマップされる
光学システム。
[請求項34]
光源と、
前記光源によって生成される光の位相を変調する素子の2次元アレイを備える位相変調器と、
変調器素子からの光の間の位相差を2次元画像のピクセルに変換する光位相弁別器と
を備えるディスプレイ。
[請求項35]
前記2次元アレイが直線状アレイのアレイを備え、かつ前記位相差が位相差弁別器によってピクセル強度に変換される、請求項34に記載のディスプレイ。
[請求項36]
前記2次元アレイが直線状アレイのアレイを備え、かつ前記位相差が位相類似度弁別器によってピクセル強度に変換される、請求項34に記載のディスプレイ。
[請求項37]
前記位相変調器が液晶位相変調器である、請求項34に記載のディスプレイ。
[書類名]要約書
[要約]
ディスプレイシステムは直線状アレイ位相変調器および位相エッジ弁別器光学システムに基づいている。
[書類名]図面
[図1]
[図2]
[図3A]
[図3B]
[図4A]
[図4B]
[図4C]
[図5]
[図6]
[図7]
[図8]
[図9A]
[図9B]
[図10A]
[図10B]
[図11A]
[図11B]
[図12A]
[図12B]
[図13]
[図14]
[図15A]
[図15B]
[図16A]
[図16B]
[図17]
[図18]
[図19]
[図20]
[図21]
[図22A]
[図22B]
付記B(Appendix B)(米国特許出願第13/657,530号明細書)
[発明の名称]MEMSリボンアレイ光変調器用低電圧駆動
[技術分野]
本開示は、微小電気機械システム(MEMS)リボンアレイに基づく光変調器用電子駆動システムに関する。
[背景技術]
MEMSリボンアレイは、多くの異なる種類の高速光変調器の中で有益であると証明されてきた。MEMSリボンアレイに基づく異なる種類の光変調器のいくつかの例が、米国特許第7,054,051号明細書、米国特許第7,277,216号明細書、米国特許第7,286,277号明細書および米国特許第7,940,448号明細書の中に記載されている。
図1Aは、MEMSリボンアレイ105の概念的な図面である。リボン、例えば110、115は基板120の上方に取り付けられる。リボンと基板との間に電圧を印加することによって、リボンが基板に向かって偏向する。例えば、リボン110は偏向され、一方、リボン115は弛緩されている。アレイ中のMEMSリボンについての典型的な寸法は、数十から数百ミクロンの長さ、数ミクロンの幅、および1ミクロンの何分の1かの厚みである。リボンは、窒化ケイ素から作製され、アルミニウムによって被覆され得る。
MEMSリボンは、わずか10ナノ秒の間に弛緩状態と偏向状態との間で切り替えることができる。相当する速いピクセル切替え速度は、MEMSリボンの直線状アレイが2次元光変調器のジョブを行うことができることを意味する。直線状アレイ変調器によって生成されるライン画像は、2次元シーンを描くために左右に延びることができる。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]米国特許第7,054,051号明細書
[特許文献2]米国特許第7,277,216号明細書
[特許文献3]米国特許第7,286,277号明細書
[特許文献4]米国特許第7,940,448号明細書
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
高速リボンは、それらを駆動するために高速の電子信号を必要とする。典型的なMEMSアレイは、4分の1光学波長で偏向するために、基板から10〜15ボルトの電位差が必要である。何百メガヘルツで10〜15ボルトを切り替えることは、特別注文の電子ドライバ回路を必要とすることが多い特別なタスクである。MEMSリボンアレイが従来の高速デジタル電子回路によって駆動され得るならば、より便利になるであろう。MEMSとCMOS回路との間の統合がより緊密であるほど、例えば、MEMS直線状アレイが集積回路用の光学出力ステージとして考えられることにつながる可能性がある。
[図面の簡単な説明]
[図1A]MEMSリボンアレイの概念的図である。
[図1B]MEMSリボンに接続された信号電圧供給源およびバイアス電圧供給源を示す概略図である。
[図1C]MEMSリボンアレイおよび付随する光学素子、制御信号電圧供給源およびバイアス電圧供給源を含むMEMS光変調器の概念的ブロック図である。
[図2]図1Bに示されるようなMEMSリボンについての変位対電圧挙動を示す図である。
[図3]MEMS光変調器用のピクセル強度対電圧のグラフである。
[図4A]バイアスされないMEMSリボンアレイ内のリボン変位の概念的図である。
[図4B]バイアスされないMEMSリボンアレイに基づく光変調器についての変位対電圧のグラフである。
[図4C]バイアスされないMEMSリボンアレイに基づく光変調器についてのピクセル強度対変位のグラフである。
[図4D]バイアスされないMEMSリボンアレイに基づく光変調器についてのピクセル強度対電圧のグラフである。
[図5A]バイアスされたMEMSリボンアレイ内のリボン変位の概念的図である。
[図5B]バイアスされたMEMSリボンアレイに基づく光変調器についての変位対電圧のグラフである。
[図5C]バイアスされないMEMSリボンアレイに基づく光変調器についてのピクセル強度対電圧のグラフである。
[図6]最大ピクセル強度を得るために必要な電圧が、いずれの場合も1つに対して正規化されるように調整された、バイアスされたMEMSリボンアレイに基づく光変調器およびバイアスされないMEMSリボンアレイに基づく光変調器についてのピクセル強度対電圧のグラフである。
[図7A]リボン駆動スキームについての概略図である。
[図7B]MEMSリボンアレイ内のリボン変位の概念的図である。
[図8]従来の擬似バイポーラリボン駆動スキーム内の連続的フレームについてのタイミング図である。
[図9]バイアス電圧および信号電圧を使用する擬似バイポーラリボン駆動スキーム内の連続的フレームについてのタイミング図である。
[図10]バイアスされたMEMSリボンアレイに基づく光変調器およびバイアスされないMEMSリボンアレイに基づく光変調器について、測定されたピクセル強度対電圧のグラフである。
[図11]最大ピクセル強度を得るために必要な電圧が、いずれの場合も1つに対して正規化されるように調整された、バイアスされたMEMSリボンアレイに基づく光変調器およびバイアスされないMEMSリボンアレイに基づく光変調器について、測定されたピクセル強度対電圧のグラフである。
[発明を実施するための形態]
MEMSリボンアレイ光変調器用の低電圧駆動システムが、DCバイアス電圧およびリボン非線形変位特性を利用するために連続的に加えられる低電圧リボン制御信号に基づく。図1Bは、この配置の概略図を提供する。図1Bでは、MEMSリボン125が基板130の上方に吊設されている。制御信号電圧VSIG135およびバイアス電圧VBIAS140が、リボンと基板との間に組合された電圧を印加するために、直列に接続されている。リボンと基板との間の電位差によって、リボンが破線の曲線によって示されるようにΔzの量だけ基板に向かって偏向する。
図1Bは、信号電圧源およびバイアス電圧源に接続されたリボンを1つだけ示す。典型的なMEMSリボンアレイ光変調器では、全てのリボンがバイアス電圧源に接続される。例えば、多くの場合にアレイ内の1つ置きのリボンである、リボンのサブセットが、バイアス電圧源と直列に信号電圧源に接続される。このサブセット内のリボンは「可動」リボンと呼ぶことができるが、一方、信号電圧ではなく、バイアス電圧に接続されるリボンは「静止」リボンと呼ぶことができる。可動リボンは、互いに独立して偏向する。各可動リボンに印加される信号電圧が任意の他のリボンに印加される信号電圧と同様である場合があり、または異なる場合がある。事実上、各可動リボンは、それ自体の信号電圧源を有する。実際に、1つの信号電圧源が、多重化技術によって複数のリボンを駆動することができる。したがって、「信号電圧源」という用語が、異なる信号電圧を異なるリボンに供給することができる供給源を意味する。
図1Cは、MEMSリボンアレイおよび付随する光学素子、制御信号電圧供給源およびバイアス電圧供給源を含むMEMS光変調器の概念的ブロック図である。焦点レンズ、位相弁別器、ビームスプリッタ、走査ミラーなどの光学の詳細部品は、図面を分かり易くするために省かれている。変調器は、直列のバイアス電圧および信号電圧によって駆動されるMEMSリボンアレイを含む。図1C変調器のような変調器は、投影型ディスプレイ、マイクロディスプレイ、プリンタおよび数ある他の用途の中の3D奥行取得システム中に使用され得る。
MEMSリボン挙動をより接近して観察することは、図1Bおよび図1Cの直列に接続されたバイアス電圧供給源および制御信号電圧供給源がMEMSリボンアレイの低電圧作動につながる過程を説明することに役立つ。特に、図2は、図1Bに示されるようなMEMSリボンについて変位(すなわち、Δz)対電圧挙動を図示する。図2では、変位が、電圧が全く印加されない弛緩状態のリボンと基板との間の距離に正規化される。言い換えれば、変位が1に等しい場合、リボンは基板に接触する。電圧のユニットは、任意である。
破線は、リボンが電気的にコンデンサとして、および機械的にばねとして扱われるモデルに従って計算されたリボン変位を描いている。リボン変位が1/3に到達する場合、システムは不安定になり、リボンは基板までスナップダウンする。前記別の方法では、位相のスロープ対電圧曲線はその点で無限大になる。スナップダウンを回避するために、ほとんどのMEMSリボンアレイ機器は、スナップダウン電圧未満の電圧で作動される。
実線は、実際のリボン変位曲線に対する近似値を描く。この近似値では、変位は電圧の2乗に比例する。V2近似値が実際の変位を過小評価することが明白であるが、しかし、それがスナップダウン電圧から離れていることはかなり正確である。
コンデンサ−ばねモデルおよびそれに対するV2近似値の両方が、非線形挙動を表わす。電圧が上昇するにつれて、リボン1ユニットを偏向させるために必要な追加の電圧が減少する。図3は、MEMSリボンアレイに基づく、光学変調器のためのこの挙動の影響を図示する。図3はピクセル強度対電圧のグラフであり、その場合ピクセル強度は、多くの種類のMEMSリボン光変調器についての場合と同様に、リボン変位のサイン2乗に比例する。ピクセル強度は、その最大値まで正規化されるが、一方、電圧調整は、MEMSリボンアレイ機器の特徴を示す。図3では、リボンを4分の1光学波長(λ/4)偏向させるために必要な電圧ΔV1は、10Vである。これは、ピクセル強度
につながる。リボンをλ/4からλ/2変位まで偏向させるために必要な追加の電圧ΔV2は、I=0である場合、わずかに約4Vである。
次いで、電圧上でのピクセル強度の非線形依存性の利用が、さらに詳細に説明される。比較のために基線を設定するために、最初に、0バイアス電圧によるリボン挙動を考察されたい。図4Aは、バイアスされないMEMSリボンアレイ内のリボン変位の概念的図である。図4Aには、リボン405および410(断面で観察される)が、高さZ0で基板上方に静止している。リボン415および420(やはり断面で観察される)は、印加された電圧の影響下で基板に向かって偏向する。
図4B〜図4Dは、それぞれ、バイアスされないMEMSリボンアレイに基づく光変調器用の変位対電圧、ピクセル強度対変位、およびピクセル強度対電圧のグラフである。図4Bは、変位が電圧の2乗に比例するという近似値を使用して、リボン変位対電圧のグラフである。図4Cはピクセル強度対変位のグラフであり、その場合ピクセル強度が変位のサイン2乗に比例する。最後に、図4Dは、ピクセル強度対電圧のグラフであり、その場合ピクセル強度は、電圧の2乗のサイン2乗に比例する。
図4B〜図4Dのグラフは、ユニット電圧がユニット変位につながり、ユニット変位がユニットピクセル強度につながるように正規化される。(Z−Z0)=λ/4(4分の1波長)のリボン変位が、典型的なリボンに基づく光変調器の中で最大ピクセル強度につながるので、ユニット電圧およびユニット電圧が生成する変位が、「VQW」と表示されている。次いで図4A、図4Bおよび図4Dが、バイアスの影響を図示する図5A、図5Bおよび図5Cと比較され得る。
図5Aは、バイアスされたMEMSリボンアレイ内のリボン変位の概念的図である。図5Aでは、リボン505および510(断面で観察される)は、それらを高さZ0から高さZ1まで基板の上方に偏向させるDCバイアス電圧の影響下にある。リボン415および420(やはり断面で観察される)は、同じ電圧によってバイアスされ、追加の信号電圧の影響下でそれらは高さZ1からさらに基板に向かって偏向する。
図5Bは、リボン515および520についての変位対電圧のグラフである。図5Bでは、変位の目盛りが、バイアスされた高さZ1から開始する追加の変位を表示し、電圧の目盛りがDCバイアス電圧に印加された信号電圧を表示する。ユニット変位がλ/4のリボン移動に相当するように、変位の目盛りが正規化される。図5Bのユニット電圧が図4Bのユニット電圧と同じ大きさを有するように、電圧の目盛りは正規化される。
図5Aの中でリボンを高さZ1まで偏向させ、図5Bおよび図5Cに示される結果に影響を及ぼすDCバイアス電圧は、図4B、図4D、図5Bおよび図5Cのグラフの目盛り上でユニットの大きさを有する。この例では、バイアス電圧はVQW、すなわち(Z1−Z0)=λ/4である。図5Bは、追加のλ/4リボン変位を得るために必要な信号電圧(バイアス電圧に連続的に印加される)の大きさが約0.41であることを示す。これはZ0からZ1の第1のλ/4リボン変位を得るために必要な電圧の59%未満である。
図5Cは、ピクセル強度対電圧のグラフであり、その場合ピクセル強度は、電圧の2乗のサイン2乗に比例する。ユニットのピクセル強度が最大であるように、ピクセル強度目盛りは正規化される。電圧の目盛りは、DCバイアス電圧に印加された信号電圧を表示し、図5Bと同様の方法で正規化される。図5Cは、最大ピクセル強度を得るために必要な信号電圧(バイアス電圧に連続的に印加される)の大きさが約0.41であることを示す。これは図4Aのバイアスされないリボンなどのバイアスされないリボンを含む最大ピクセル強度を得るために必要な電圧の59%未満である。
図5A〜図5Cの例のために選択されたバイアス電圧は1つの可能性に過ぎない。より低いバイアス電圧は、特定の量でリボンを偏向させるために必要な追加の信号電圧のさほど飛躍的ではない減少をもたらす。バイアス電圧がより大きいと、追加の信号電圧に対してリボン偏向の感度がよりいっそう高くなる結果をもたらす。しかし、バイアス電圧が大きすぎる場合、スナップダウンが発生する可能性がある。
リボン変位対印加電圧の非線形特性によって、制御信号電圧の適切な範囲が暗から明まで全明変調につながるように、光変調器設計者がバイアス電圧を選択することが可能になる。これらの非線形特性の原因について、完全ではないが直観的な説明は、MEMSリボンのような帯電された物体上に力がF=qEによって与えられ、その場合qが電荷であり、Eが電界であるということに留意することによって得ることができる。リボン上に蓄積される電荷qがq=CVによって与えられ、その場合Cはリボンおよび基板システムの静電容量であり、Vはその間の電圧である。電界EがV/dによって与えられ、その場合Vはリボンと基板との間の電圧であり、dはその間の距離である。したがって、力FはVの2乗に依存し、すなわち、力FはV2に依存する。大ざっぱに言えば、バイアス電圧の影響は、リボン上に蓄積する電荷、およびVの1つの因子を供給するものと考えられ得る。次いで、信号電圧がVの追加的因子を供給する。これは、バイアス電圧が存在する場合、リボン変位が、印加される信号電圧にほぼ直線的に反応することを意味する。
リボン変位が、実際的にVの線形関数であるならば、そのときピクセル強度は、sin2(V2)ではなく、sin2(V)に比例するであろう。この極限に接近するリボン挙動が、図6に図示されている。図6は、最大ピクセル強度を得るために必要な電圧が、いずれの場合も1つに対して正規化されるように調整された、バイアスされたMEMSリボンアレイに基づく光変調器およびバイアスされないMEMSリボンアレイに基づく光変調器について、ピクセル強度対電圧のグラフである。言い換えれば、図6は、同じグラフ上に、図4Dの曲線(破線)および図5Cの曲線(実線)を示すが、しかし、図5Cの電圧は、最大ピクセル強度に到達するために必要な追加の信号電圧が、約0.41ではなくユニット電圧であるように調整されている。再調整が、暗から明の全範囲にわたって、強度対電圧曲線の関数形式を図示する。
図6の点線の曲線は、リボン変位がVの線形関数であるならば、光学変調器の中で得られることになるピクセル強度関数sin2(V)である。リボンがバイアスされる場合、それらの制御信号電圧に対する反応は、この線形状態により緊密に近似するということが、図6の中で理解され得る。デジタルアナログ変換器(DAC)がリボン制御信号を生成するために使用される場合、ピクセル強度の全範囲がアクセス可能な別々の出力電圧のDACの組にわたってより均等に分配されるので、図6の中の点線(sin2(V))または実線(バイアスされた)の曲線のようなピクセル強度関数が、破線(バイアスなし)の曲線にまさって好適である。
リボンと基板との間の電界の方向を定期的に変化させることによって、ユニポーラ電力供給を使用しても、潜在的に有毒なリボン帯電現象が回避されるということが、「Pseudo Bipolar MEMS Ribbon Drive(擬似バイポーラMEMSリボン駆動)」(2010年10月22日にYehおよびBloomによる米国特許第12/910,072号明細書)の中で指摘された。MEMS光変調器に供給されるビデオ情報の交互のフレーム中で、変化が行われることが多い。その出願の中で開示される方法は、電圧V下のリボンによって経験される力が電圧−V下で経験される力と同じであるという特性に依存している。(米国特許第12/910,072号明細書の中に使用される「bias ribbon(バイアスリボン)」という用語が、本明細書で考察されるバイアス電圧またはバイアスされたリボンとは異なる概念に言及しており、それと混同されるべきではないということに留意されたい。)
図7Aは、リボン駆動スキームについての概略図である。図7Aでは、コンデンサ705がMEMSリボンアレイの中の可動リボンの電気的特性を表示し、一方、コンデンサ710は、アレイの中の静止リボンの電気的特性を表示する。可動リボンは、異なるピクセル強度を生成するように偏向を変化させるリボンであるが、一方、静止リボンはそうではない。電圧源715および725は、それぞれ、可動リボンおよび静止リボンに接続されている。電圧源720は、リボンの共通の基板に接続されている。電圧源715、720および725は、VACTV(可動リボン)、VSUB(基板)およびVSTAT(静止リボン)である。電圧バイアスが以下に説明されるように使用される場合、これらの電圧供給源は、直列に接続されたバイアス電圧および信号電圧を含むことができる。
図4Aおよび図5Aに類似して、図7Bは、MEMSリボンアレイの中のリボン変位の概念的図である。静止リボンは変位Z2に留まるが、一方、可動リボンの変位がそれらに印加される電圧に依存して変化する。変位Z2は、必ずしもリボンの弛緩状態ではない。
図8は、低電圧作動を達成するためにリボンバイアス技術を利用しない擬似バイポーラリボン駆動スキーム内の連続的フレームについてのタイミング図である。(より詳細な考察について、YehおよびBloomを参照されたい。)タイミング図の中で、フレーム1、2および3は、リボンアレイが1組のライン画像のために構成される間の時間を表示する。フレーム1および3の間に、静止リボンおよび基板が接地に留まり、一方、可動リボンは、最大ピクセル強度に対して必要な電圧であるVMAXまでの電圧によって制御される。前述のように、この電圧は、典型的なMEMSリボンアレイについては約15Vと同じ程度であることができる。フレーム2の間に、可動リボンは接地に留まるが、一方、静止リボンおよび基板は、0とVMAXとの間で変化する。E電界はフレームごとに方向を切り替え、電荷の蓄積を防止するが、しかしバイアスをしないので制御電圧はやはり10〜15Vの範囲にある。
図9は、バイアス電圧および信号電圧を使用する擬似バイポーラリボン駆動スキーム内の連続的フレームについてのタイミング図である。ここで、各フレームの間、可動リボンが0からVSIGの間で変化し、静止リボンがVSIGまたは0に留まる。基板は、フレームごとに、−(VMAX−VSIG)からVMAXまでの範囲にわたって変化する。実際は、VSIGは約5V以下であることができるが、一方、VMAXは約10〜15Vであることができる。基板をバイアスすることによって、可動リボンを偏向させるために必要な制御電圧の大きさを低減する。制御電圧は、ビデオデータの各列につき変化するが、バイアス電圧はフレームごとに変化するだけである。したがって、バイアス電圧は、何千倍もより高速に変化することができる信号電圧と比較して「DC(直流)」と考えられる。
低減された信号電圧によるリボン制御を証明するために、MEMSリボンアレイを用いて実験が実施された。アレイ内のリボンは、アルミニウムで被覆された窒化ケイ素から作製され、長さ約250μm、幅約4μmおよび厚み約0.15μmであった。それらは、約0.45μmのエアギャップ、および厚み約2.75μmの絶縁二酸化ケイ素層によって導電性基板から分離された。(これらの距離のそれぞれは、MEMSリボンアレイの概念から逸脱せずに、プラスマイナス50%だけ変化することができる。)図10および図11は、実験の結果を図示する。
図10は、バイアスされたMEMSリボンアレイに基づく光変調器およびバイアスされないMEMSリボンアレイに基づく光変調器について、測定されたピクセル強度対電圧のグラフである。図10では、曲線1010が、バイアスされない電圧による従来のリボン駆動についてデータを表示する。曲線1005は、10Vバイアス電圧供給源と直列である制御信号によって駆動されるアレイについてデータを表示する。図面から、そのバイアスされた位置(約4V)を越えてリボンをλ/4だけ偏向させるために必要な制御信号電圧が、重要なことに、バイアスされないリボンをλ/4(約11V)だけ偏向させるために必要な電圧よりも小さい。
図11は、最大ピクセル強度を得るために必要な電圧が、いずれの場合も1つに対して正規化されるように調整された、バイアスされたMEMSリボンアレイに基づく光変調器およびバイアスされないMEMSリボンアレイに基づく光変調器について、測定されたピクセル強度対電圧のグラフである。(この図面は、図6に類似する。)図11では、曲線1105および1110が、図10の曲線1005および1010と同じデータを表示する。しかし、図11では、ユニット電圧が最大ピクセル強度を生成するように、各曲線についての電圧目盛りが正規化されている。図面から、バイアスされたリボンが、バイアスされないリボンよりもより直線的ピクセル強度反応を提供することが明らかである。これによって、明るい状態から暗い状態まで均等に輝度レベルにアクセスするための高分解能DACに対する必要性が減少する。
前述のように、リボンの非線形偏向特性が、それらを作動するために必要な制御信号電圧を減少させるために使用され得る。これらの技術は、複数の方法に拡大され得る。例えば、最良の光学的コントラストが、通常モード、すなわち、全てのリボンが同じバイアス電圧によってバイアスされ、交互の(「可動」)リボンが、連続的にバイアスを加えられた信号電圧によって制御されるモードで作動されるMEMSリボンアレイから得られる。しかし、MEMSリボンアレイは、このように作動される必要はない。例えば、全てのリボンが弛緩されている、ゼロ電圧状態にある場合でも、基板上方の静止リボンの高さが可動リボンの高さとは異なるように、固定(「静止」)リボンは製造され得る。
第2に、バイアス電圧に加えられる制御電圧は、陽電気またはさらにユニポーラである必要はない。可動リボンは中間の明状態にバイアスされ、次いで、全体に明から暗を通して、AC制御信号電圧によってバイアスされ得る。
最後に、透明な電極がリボン上方に配置され、電気的に基板に接続され得る。次いで、リボンと電極−基板との間に印加されるバイアス電圧が、リボンを全く偏向させずに、制御信号電圧に対するリボンの感度を高める効果を有する。
これら全ての技術の主題は、印加された電圧に対するMEMSリボンの感度を高め、それによってより低い信号電圧作動を可能にするために、DCバイアス電圧を使用することである。
開示される実施形態の上記の説明は、当業者が本発明を作製し、使用することができるように提供される。これらの実施形態に対して様々な修正形態が当業者にとってすぐに明らかになり、本明細書で定義される原理は、本開示の範囲から逸脱せずに他の実施形態に応用され得る。したがって、本開示は、本明細書で示される実施形態に限定されるようには意図されるのではなく、しかし、本原理および本明細書で開示される新規な特徴に矛盾しない最も広い範囲に一致するものと意図される。
[書類名]特許請求の範囲
[請求項1]
基板上方に吊設されたMEMSリボンのアレイと、
バイアス電圧源と、
信号電圧源と
を備えるMEMS光変調器であって、
前記バイアス電圧源、前記信号電圧源および前記アレイ内のリボンが直列に接続されて、前記バイアス電圧がゼロよりも大きい場合、信号電圧に対するリボンの偏向感度が高まるように、前記リボンと前記基板との間に全体的な電位差を生成する、MEMS光変調器。
[請求項2]
前記バイアス電圧が、前記アレイ内の各リボンに接続され、前記信号電圧源が前記アレイ内の前記リボンのサブセットに、前記バイアス電圧源と直列に接続される、請求項1に記載の変調器。
[請求項3]
前記サブセットが、前記アレイ内の1つ置きのリボンである、請求項2に記載の変調器。
[請求項4]
リボンと基板との間の電界の方向が定期的に交互になるように、前記バイアス電圧源および前記信号電圧源が、信号を変化させる、請求項1に記載の変調器。
[請求項5]
前記アレイ内の各リボンの長さ、幅および厚みが、それぞれ、約250μm、4μmおよび0.15μmであり、前記リボンが、窒化ケイ素および反射性金属被覆から作製される、請求項1に記載の変調器。
[請求項6]
MEMSリボンに基づく光変調器を駆動するための方法であって、
基板上方に吊設されたMEMSリボンのアレイを用意することであって、前記アレイが可動リボンと、静止リボンとを備えること、
信号電圧に対する前記リボンの偏向感度を高めるために、前記リボンの前記それぞれと前記基板との間にバイアス電圧を印加すること、
前記アレイ内の可動リボンに対して前記バイアス電圧と直列に信号電圧を印加すること、
および
各リボンに印加される前記信号電圧を変化させることによって、前記可動リボンの偏向を制御すること
を含む方法。
[請求項7]
前記アレイ内の1つ置きのリボンが、可動リボンである、請求項6に記載の方法。
[請求項8]
前記バイアス電圧源および前記信号電圧源を定期的に変化させることによって、リボンと基板との間の電界の方向を定期的に交互にすることをさらに含む、請求項6に記載の方法。
[書類名]要約書
[要約]
信号電圧を制御するために、直列バイアス電圧がMEMSリボンの感度を高める。印加された電圧上でのリボン偏向の非線形依存性によって、この効果が得られる。結果として生じるMEMSリボンの低電圧作動は、MEMSリボンを高速電子機器により適合させる。
[書類名]図面
[図1A](先行文献)
[図1B]
[図1C]
[図2]
[図3]
[図4A]
[図4B]
[図4C]
[図4D]
[図5A]
[図5B]
[図5C]
[図6]
[図7A]
[図7B]
[図8](先行文献)
[図9]
[図10]
[図11]
付記C(Appendix C)(米国特許第8,368,984号明細書)
[発明の名称]擬似バイポーラMEMSリボン駆動
[技術分野]
本開示は、全体に、微小電気機械システム(MEMS)光リボン装置用の電気的駆動方法の分野に関する。
[背景技術]
MEMSリボン装置は、グレーティングライトバルブ、干渉MEMS変調器、MEMS位相アレイおよびMEMS光学位相変調器を含む高速光変調器の複数の種類の中で使用される。これらの光変調器技術のそれぞれは、例えば、パーソナルディスプレイ、投影ディスプレイまたは印刷用途の中で採用され得る。
MEMSリボンは、それらが設計される特定の用途に依存して様々な形状および寸法に作製されるが、しかし、典型的なリボンは、長さ約50〜350ミクロン、幅約2〜10ミクロン、および厚み約0.1〜0.3ミクロンであることができる。リボンは、電界を加えることによってそれらが引き付けられる基板から約0.2〜0.5ミクロン離間して吊設される。これらの近似寸法のリボンは、わずか数十ナノ秒間に静止位置と偏向位置との間で移動することができる。
高速MEMSリボン装置は、リボンの直線状アレイが表示領域を横切って走査されるライン画像を変調するディスプレイ設計をもたらしてきた。リボンは非常に速く移動するので、リボンの直線状アレイはライン画像の連続を生成することができて、人間の観察者にちらつきを全く感じさせずに2次元画像を形成することができる。2次元ではなく、直線状に光を変調するので、アレイは、高価なシリコンチップという物的財産を効率的に使用する小型変調器をさらにもたらす。
したがって、MEMS直線状アレイ光変調器は、CMOS製造工程に統合するために魅力的な候補である。MEMS直線状アレイは、集積回路用の光学出力ステージであると考えることさえ可能である。多くのCMOS電子駆動チップがユニポーラ供給電圧によって作動するが、しかし、ユニポーラ駆動はリボン装置と共に必ずしもうまく機能するとは限らない。極端な場合、ユニポーラ電源から駆動されるリボンが、作動の数分後でさえも反応することができない。
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
したがって、必要とされるのは、リボンおよびCMOS電子機器が緊密に統合され得るように、ユニポーラ電源を使用して、MEMSリボン装置を駆動するためのロバスト方法である。
[図面の簡単な説明]
[図1A]MEMSリボンおよび基板の断面図である。
[図1B]図1Aに示される構造のための均等な回路を示す図である。
[図2A]異なる状態下で、リボンと基板との間の電界の方向を示す図である。
[図2B]異なる状態下で、リボンと基板との間の電界の方向を示す図である。
[図3]帰線時間を含む、50%放電デューティーサイクル駆動シナリオによる、擬似バイポーラにおける電圧および電界のグラフである。
[図4]50%未満の放電デューティーサイクルによる、擬似バイポーラ駆動シナリオにおける電圧のグラフである。
[図5A]電荷テストデータを示す図である。
[図5B]電荷テストデータを示す図である。
[発明を実施するための形態]
以下に説明される擬似バイポーラMEMSリボン駆動方法は、さもなければ、ユニポーラCMOS電子機器がMEMSリボン装置を駆動するために使用される場合に発生する可能性がある困難を回避するために設計される。MEMSリボン装置は、典型的には、高応力ストイキ窒化ケイ素(Si3N4)の蒸着を含む高温のケイ素半導体製造工程を使用して作製される。MEMSの中に高応力層を使用することは一般的ではないが、しかし、リボンの場合、ストイキ窒化ケイ素の高い引張応力が、リボンが急速に移動することを可能にする張力源である。
リボンと基板との間に電圧が印加される場合、リボンは基板に引き付けられる。リボン上に働く力は、生成される電界の2乗に比例する。窒化ケイ素は絶縁体であるので、リボンと二酸化ケイ素基板層との間のギャップは、それに隣接する導体を全く含まない。リボンと基板との間に電圧が印加される場合、絶縁体はギャップのどちら側にも表面電荷を蓄積する。これらの表面電荷が、ギャップ内の電界の強度を変化させ、所与の印加された電圧についてリボンの移動が経時的に変化する。
リボンに印加される電圧が常に同じ信号である場合、表面電荷が蓄積する。ユニポーラ電源による簡単な駆動回路は、この現象の原因となる。しかし、力が電界の信号から独立しているので、同じ大きさであるが反対方向の電界が、等しいリボン偏向を生成する。したがって、表面電荷蓄積現象は、一部の時間には一方の方向(例えば、リボンから基板まで)を向くが、残りの時間には反対方向に向く電界によって作動することによって低減され得る。擬似バイポーラMEMSリボン駆動方法の原理および詳細は添付の資料と連携して次に詳しく説明する。
図1Aは、MEMSリボンおよび基板の断面図である。図面の中で、高応力ストイキ窒化ケイ素105が、MEMSリボンの中の構造層である。リボンは、二酸化ケイ素層110がその上に成長したケイ素基板115から小さいギャップで分離されている。アルミニウム導電層120が、高温ステップが完了する後、バックエンド処理中に窒化リボン上に蒸着され得る。(他の工程が、同じ構造を作製するために使用され得る。)一例の構造では、リボンは、長さ約200ミクロン、幅約3ミクロンであり、層の厚みは、概ね、アルミニウムが600オーグストローム、ストイキ窒化ケイ素が1500オーグストローム、および二酸化ケイ素が2ミクロンである。窒化物層と酸化物層との間のエアギャップ(事前にアモルフォスケイ素犠牲層によって充填される)は、約0.4ミクロンである。(これらの寸法は、関係する規模の感覚を提供するためにのみ提供され、それらは限定するように意図されるのではない。)
図1Aの中の125、126、127、128、129、130、131および132など、プラス(+)およびマイナス(−)の符号は、構造内の電荷の蓄積を示す。特に、リボンと基板との間のギャップ内の125、126、127および128などの表面電荷が、接続部140を経てアルミニウム層に印加されるVRと接続部145を経てケイ素基板に印加されるVSとの間の電位差から発生する電界の大きさを変化させる。ユニポーラ駆動回路が使用される場合、VRは常にVSよりも大きい(または常に未満である)。バイポーラまたは擬似バイポーラ駆動回路が使用される場合、状態は、VR>VSとVR<VSとの間で交替する。
図1Bは、図1Aに示される構造に対して均等な回路である。図1Bでは、図1Aと同様に、VRおよびVSは、それぞれリボンに印加される電圧および基板に印加される電圧である。コンデンサC1、C2およびC3が、それぞれ窒化物層、エアギャップおよび酸化物層の静電容量を表わす。以下の、窒化物層の縁部の周りの漏れR1、エアギャップの周りの漏れR2、アルミニウム層から酸化物層までの漏れR3、酸化物層の表面に沿った漏れR4、および窒化物層からケイ素基板までの漏れR5という回路内の抵抗によって表わされる複数の高抵抗電流漏れ経路が存在する。他の漏れ経路および絶縁層内のトラップ電荷に起因する現象が起こり得るが、図1に図示される反対の符号による表面電荷の蓄積をもたらす可能性がある。
実際に、C1からC3まで、およびR1からR5までの正確な値を確認することは困難である可能性があるが、しかし、全体の構造が1つの漏れ抵抗を含む単一の平行なプレートコンデンサであると考えられる場合、そのとき、帯電時間定数は、T=RleakCairである。一例の構造では、Tは103秒までである。
図2Aおよび図2Bは、異なる状態下でリボンと基板との間の電界の方向を図示する。図2では、リボン205の概略断面図が基板210の近傍に示されている。図2Aでは、リボンと基板との間の電圧が、基板よりもリボンの方がより正に帯電されており、結果として生じる電界Eの方向が、リボンから基板へ向かう。図2Bでは、その反対が当てはまり、リボンと基板との間の電圧が、リボンよりも基板の方がより正に帯電されており、結果として生じる電界Eの方向が、基板からリボンへ向かう。しかし、Eの大きさが同じであるならば、そのとき、リボンと基板との間に働くE2に比例する力が、図2Aおよび図2Bの両方で同じである。
バイポーラ電源が利用可能である場合、図2Aのシナリオと図2Bのシナリオとの間の切替えは、例として、異なる極性の電圧源をリボンに接続するという事態であるが、一方で、基板は接地された状態に留まる。ユニポーラ電源だけが利用可能である場合、基板だけを常に接地している状態に残すのではなく、リボンおよび基板の両方の電位を制御することによって同じ現象を得ることができる。この作動モードは、「擬似バイポーラ」と呼ばれている。
図3は、帰線時間を含む、50%の放電デューティーサイクル駆動シナリオの擬似バイポーラによる、電圧および電界のグラフを示す。図3では、グラフ305がリボン電圧対時間を示し、一方、グラフ310は、基板電圧対時間を示す。グラフ315は、リボンと基板との間の電界の強さおよび極性を描く。図面の左手側から出発して、右に時間が経過するにつれて、電圧+Vが、持続時間t1の間、リボンに印加される。この時間中、基板電圧はゼロであり、リボンから基板へ向かう方向の電界は大きさEの正電気である。次いで、持続時間t2の間、リボンおよび基板に印加される電圧は両方ともゼロであり、それらの間の電界も同様である。次いで、電圧+Vが、持続時間t1の間、基板に印加される。この時間中、リボン電圧はゼロであり、リボンから基板へ向かう方向の電界は大きさEの負電気である。次いで、持続時間t2の間、リボンおよび基板に印加される電圧は両方とも+Vであり、間の電界はゼロである。その後、サイクルは繰り返す。
図3では、時間t1は、リボンと基板との間に生成される電界の2乗に比例する静電力によって、リボンが偏向される時間である。交互のt1時間の間、電界の方向は逆である。駆動スキームのこの特性が、リボン装置内の表面電荷の蓄積を低減し、またはなくする。電界が半分の時間に2つの方向のいずれかに向くので、放電デューティーサイクルは50%である。時間t1は、「フレーム」時間と呼ばれ、それは、画像データが、アレイ内でどのリボンがどれだけの量で偏向されるのかを決定する時間である。一例の設計では、t1は約14msである。時間t2の間、リボンおよび基板に印加される電圧は等しく、したがって、電界はゼロであり、表面電荷は蓄積しない。時間t2は、「帰線」時間と呼ばれ、それは、リボンが偏向されず、走査ミラーまたは他の走査機構が開始点に戻ることができる時間である。一例の設計では、t2は約3msである。
図3では、フレームデータは、かなり退屈な全て白色の画像をもたらす、フレーム時間全体に対して単純に最大のリボン偏向である。実際の画像についてのデータは、フレーム時間中、複雑な変調パターンを含むであろう。しかし、図3は、画像データの複雑さに関わらず、リボン偏向信号の極性を図示する。
画像データが、1つのフレームから次のフレームまで著しく異なるとすれば、図3の駆動スキームは、やはり帯電現象につながるであろう。実際に、これは小さい現象であるが、しかし、1度は正のリボンおよび接地された基板、1度は接地されたリボンおよび正の基板というように、連続して2度各画像フレームを表示することによって、これをなくすことができる。このようにして、画像データに関わらず、平均電界は常にゼロである。その代償は、フレーム速度は2倍になったが、しかしMEMSリボンが非常に速く移動するので、上昇したフレーム速度が、表示されるピクセルの数に依存して調節される可能性があるということである。
図4は、50%未満の放電デューティーサイクルを含む、擬似バイポーラ駆動シナリオによる電圧を図示する。図4では、グラフ405が、基板電圧対時間を示し、一方、グラフ410および415は電圧対、2つの隣接するリボン、ぞれぞれ「バイアス」リボンおよび「可動」リボンについての電圧対時間を示す。バイアスリボン420、可動リボン425および基板430が、ビデオ稼働時間の間440、および帰線空白時間の間445で概略的に図示されている。
全てのリボンアレイ装置が、バイアスリボンおよび可動リボンを使用するわけではない。使用される場合、バイアスリボンは、ビデオディスプレイシステムの中で暗レベルに対して静止微調整を行う方法を提供する固定リボンに取って代わる。バイアスリボンは、ビデオ稼働時間中でもやはり静止した状態に留まる。帰線空白時間中のその移動は、以下に説明される擬似バイポーラ駆動スキームの副産物である。
図4の左手側から出発して、右に時間が経過するにつれて、基板はゼロに等しく、電圧+V2がバイアスリボンに印加され、電圧+V3が可動リボンに印加される。これは、ビデオ稼働時間中に最大輝度ピクセルについての状態である。次いで、持続時間t4の間、バイアスリボンおよび可動リボンはゼロ電圧である。この帰線空白時間t4以内に、持続時間t5の間、電圧+V1が基板に印加される。次いで、ビデオ稼働時間t3中に、バイアスリボンおよび可動リボンに正電圧が印加され、基板にゼロ電圧が印加される状態に戻る。
ビデオ稼働時間t3の間、バイアスリボン420は、わずかに偏向されて、暗レベルを較正し、一方、可動リボン425は、表示されるべきビデオデータに従って偏向される。440で、可動リボンが、最大電圧+V3の印加に一致する最大偏向で図示されている。帰線空白時間t4の間に、バイアスリボンおよび可動リボンが同じ量で偏向され、暗状態を保証する。電界の方向は、ビデオ稼働時間と比較すると、帰線空白時間中は逆であり、したがって、表面電荷の蓄積を低減する。電圧が基板に印加される間の時間tsは、フレームの開始または終了時に擬似光信号の可能性を低減するために、全体の帰線空白時間t4よりもわずかに短い。一例の設計では、t3は約14msであり、t4は約3msであり、t2は約2msである。放電デューティーサイクルは、ts/(t3+t4)またはこの場合約12%である。(放電デューティーサイクルは、電界がビデオ稼働/帰線空白サイクル中に1つの特定の方向に向く間の時間の分数として定義される。定義によれば、放電デューティーサイクルは50%以下である。)
図4の擬似バイポーラ駆動スキームは放電デューティーサイクルが50%未満であるにも関わらず、良好な実験結果を提供した。いくつかのMEMSリボンアレイ装置探索テーブルが、所望の量だけリボンを偏向させるためにはどれだけの電圧が必要であるかを記憶するために使用される。図3の擬似バイポーラ駆動スキームは2つのそのような探索テーブル、1つの正のリボン電圧および1つの正の基板電圧を必要とする可能性がある。しかし、図4の擬似バイポーラ駆動スキームは1つの探索テーブルだけを必要とし、それは可動リボンがビデオ稼働時間中にそれに印加される正電圧を常に有するからである。
いくつかの場合、図3の擬似バイポーラ駆動スキームは、2進演算の特性を利用することによって、1つの探索テーブルだけによってもやはり作動され得る。ディスプレイのためのリボン偏向レベルが、例えばNビット2進数によって表示される場合、そのとき、極性フレームを交替させるためにそのようなレベルが、2N−1という2進表示からの引き算によって関連付けられる。一例として、リボンが正で、基板が接地されている作動の間、所望の量でリボンを偏向するために必要な電圧が、(10101101)によって表わされるならば、そのとき、リボンが接地され、基板が正の作動中に、同じ量でリボンを偏向させるために必要な相当する電圧は、(01010010)によって表わされる。2つのフレームの間の差は、リボン偏向電圧の2進法表示の中で、1を0と交換し、およびその逆に交換することによって決定され得る。
図4の擬似バイポーラ駆動スキーム内での電荷蓄積を防止することは、V1とV3との間の関係に依存する。通常は、V1がチップ上で利用できる最大電圧、例えば供給電圧であるように選択され、一方、V3はビデオ内容と共に絶えず変化する。一般に、V1とV3との間の差が大きいほど、tsはより短くなる可能性があるが、一方で表面電荷の蓄積をやはり防止する。
図5Aおよび図5Bは、電荷テストデータを示す。図5Aは、基板に対して、一定電圧が印加されるリボンについてのデータを示す。図5Bは、それぞれ図3および図4に図示される擬似バイポーラ駆動スキーム、50%放電デューティーサイクルおよび12%放電デューティーサイクルに従って駆動されるリボンについてのデータを示す。両方の図面の中で、水平軸はユニット時間内の時間であり、一方、垂直軸は、リボンに基づく光変調器のピクセル強度である。ピクセル強度は、リボンの偏向に直接関係する。
図5Aでは、三角形が、リボンに印加される一定電圧がオンにされた後、約1.75時間、2.5時間および3.5時間で取得されるデータ点を示す。一定の印加される電圧に反応するリボンの偏向は、時間が経過するにつれて確実に増加する。3.5時間後、このテスト中のリボンは印加される電圧の変化に、もはや反応しなかった。表面電荷の蓄積が、大きくなりすぎたのである。
図5Bでは、正方形が50%の放電デューティーサイクル下のリボンについて取得されたデータ点を示し、ダイヤ形が12%の放電デューティーサイクル下のリボンについて取得されたデータ点を示し、両方の場合に20時間以上の期間にわたる。図5Bの中の強度ユニットは、任意であり、正方形のデータ点がダイヤ形のデータ点よりも高い強度であるように見える事実に重要性はない。両方の組のデータ点が、擬似バイポーラ駆動スキームが一貫性のあるリボン偏向対数時間にわたって印加される電圧につながることを示す。各テストの終了時に、リボンが、テストの開始時に反応したのと同様に、印加された電圧に反応した。
擬似バイポーラ駆動スキームの実施形態が、接地に対する正電圧に関して説明された。しかし、明らかに負の電圧が使用され得る。
結果として、上記に説明される擬似バイポーラMEMSリボン駆動方法は、ユニポーラCMOS電子機器がMEMSリボン装置を駆動するために使用される場合に、さもなければ発生する可能性がある困難な点を回避するために設計される。MEMSリボン構造内の表面電荷の蓄積が低減され、またはなくなり、その結果、リボン反応の劣化が全くなしに、リボンは電気信号によって無限に制御され得る。
開示される実施形態の上記の説明は、当業者が本開示を作製し、使用することができるように提供される。これらの実施形態に対して様々な修正形態が当業者にとってすぐに明らかになり、本明細書で定義される原理は、本開示の範囲から逸脱せずに他の実施形態に応用され得る。したがって、本開示は、本明細書で示される実施形態に限定されるようには意図されるのではなく、しかし、本明細書で開示される原理および新規な特徴に矛盾しない最も広い範囲に一致するものと意図される。
[書類名]特許請求の範囲
[請求項1]
1組のリボンおよび共通電極を含むMEMSリボン装置であって、コンデンサとして形成される場合、時定数Tで帯電することを特徴とする装置を用意すること、および
第1の組の信号が、第1の組のリボン電圧、および前記第1の組のリボン電圧と同じ極性を含み、かつ前記第1の組のリボン電圧と大きさが等しいまたはより小さい第1の一定の共通電極電圧によって表示される第1の構成と、
第2の組の信号が、第2の組のリボン電圧、および前記第2の組のリボン電圧と同じ極性を含み、かつ前記第2の組のリボン電圧と大きさが等しいまたはより大きい第2の一定の共通電極電圧によって表示される第2の構成との2つの交互の構成で前記装置に駆動信号を送信すること
を含む、MEMSリボン装置を駆動するための方法。
[請求項2]
前記第2の組のリボン電圧が、
(a)前記第1の組のリボン電圧と、前記第1の構成の中の前記第2の組の信号を表示するために必要とされる前記第1の一定の共通電極電圧との間の差の大きさを決定すること、および
(b)前記第2の一定の共通電極電圧から(a)の中で決定された大きさを差し引くこと
によって決定される、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
全ての電圧が、接地に対して正である、請求項1に記載の方法。
[請求項4]
全ての電圧が、接地に対して負である、請求項1に記載の方法。
[請求項5]
前記第1の一定の共通電極電圧が、接地に対して約ゼロである、請求項1に記載の方法。
[請求項6]
前記第2の一定の共通電極電圧が、前記MEMSリボン装置が製造されるチップの供給電圧に概ね等しい、請求項1に記載の方法。
[請求項7]
前記共通電極が、前記MEMSリボン装置が製造されるチップの基板である、請求項1に記載の方法。
[請求項8]
前記第1の組の信号と前記第2の組の信号とが異なる、請求項1に記載の方法。
[請求項9]
前記第1の組の信号と前記第2の組の信号とが同じである、請求項1に記載の方法。
[請求項10]
前記第1の構成の中の前記信号が、画像データを表示する、請求項1に記載の方法。
[請求項11]
前記第1の構成の中の前記信号が、ビデオデータを表示する、請求項1に記載の方法。
[請求項12]
前記第2の構成の中の前記信号が、画像データを表示する、請求項1に記載の方法。
[請求項13]
前記第2の構成の中の前記信号が、ビデオデータを表示する、請求項1に記載の方法。
[請求項14]
前記信号が、前記時間の50%で前記第1の構成の中にあり、前記時間の50%で前記第2の構成の中にある、請求項1に記載の方法。
[請求項15]
前記信号が、前記時間の50%未満で前記第1の構成の中にある、請求項1に記載の方法。
[請求項16]
前記信号が、前記時間の50%未満で前記第2の構成の中にある、請求項1に記載の方法。
[請求項17]
前記信号が、画像フレームに分類される画像データを表示し、各画像フレームが、前記第1の構成で1回送信され、かつ前記第2の構成で1回送信される、請求項1に記載の方法。
[請求項18]
前記2つの信号の構成が、時間T未満で交替する、請求項1に記載の方法。
[請求項19]
前記リボンが、前記リボン内のストイキ窒化ケイ素層の中の引張応力に起因して、緊張状態にある、請求項1に記載の方法。
[書類名]要約書
[要約]
MEMSリボン装置を駆動するための擬似バイポーラ方法が、装置内の帯電現象を低減する。
[書類名]図面
[図1A]
[図1B]
[図2A]
[図2B]
[図3]
[図4]
[図5A]
[図5B]
付記D(Appendix D)(米国特許第7,286,277号明細書)
[発明の名称]偏光変調器
関連技術の相互参照
本出願は、2004年11月26日に出願された米国特許第10/904,766号明細書の一部継続出願である、2005年8月3日に出願された米国特許第11/161,452号明細書の一部継続出願であり、その両方が参照として本明細書に組み込まれる。
[技術分野]
本発明は、一般に、ビジュアルディスプレイ装置および光変調システムに関する。特に、本発明は、光学的偏光敏感装置を含む微分干渉光変調システムに関する。
[背景技術]
テレビや映画のプロジェクタなどのディスプレイ装置は、光を2次元パターンまたは画像へ分配するための変調器を組み込む場合が多い。例えば、映画リールのフレームは、プロジェクタランプからの白色光を、映画スクリーン上に画像を形成する形状および色へと変調する。現代のディスプレイにおいて、光変調器は、変調器を制御する電子信号に応じて画像中の個々のピクセルをオンおよびオフにするために用いられる。
テキサスインスツルメンツ(Texas Instruments)は、何百万もの極めて小さいミラーをその表面上に含むデジタルミラーデバイスと呼ばれる微小電気機械光変調器を導入した。各ミラーは画像中のピクセルに対応しており、かつチップ内の電子信号によってミラーが移動して光を異なる方向に反射して、明るいピクセルまたは暗いピクセルを形成する。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,710,732号明細書を参照されたい。スタンフォード大学およびSilicon Light Machinesは、光を明るいピクセルまたは暗いピクセルへと回折させるために回折格子をオンおよびオフにすることができるグレーティング光変調器と呼ばれる微小電気機械チップを開発した。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,311,360号明細書を参照されたい。
ディスプレイのためのこれらの反射光変調方式および回折光変調方式は両方とも、光変調器素子の2次元アレイを伴う。しかし、高速光変調器の直線状アレイ上に光が入射するディスプレイを形成することもできる。適切な拡大光学系および走査ミラーを用いると、2次元のように観察者に見せることができる直線状アレイが形成され得る。振動ミラーの走査作動により、光変調器の単一の列に、同じ分解能の本当の2次元表示を提供するために必要な変調器の多くの列のような働きをさせることができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,982,553号明細書を参照されたい。
Manhartは、グレーティングライトバルブアレイおよび干渉光システムを含むディスプレイ装置を導入した。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,088,102号明細書を参照されたい。Manhartにおいて、ディスプレイシステムは、表示されるべき画像を表わすための空間光変調器として、プレーナグレーティングライトバルブ(GLV)アレイを採用する。システムは、画像表示に関して、アレイの面と平行な面を通じて移動するGLVアレイの可動反射素子の位置に依存する。可動素子は、入射位相差波面から、表示されるべき画像を表わす反射位相変調波面を提供する。表示画像は、入射位相差波面から直接的にまたは間接的にやはり形成される基準波面と位相変調波面とを干渉的に組み合わせることによって提供される。
多くの微小電気機械光変調器はデジタルイメージング技術と適合する。デジタル情報が変調器へ電子的に送信され得る。例えば、一部の時間だけピクセルをオンにすることによりグレースケール画像が達成され得る。50%のデューティーサイクルで明から暗へと切り替えられるピクセルは、明と暗との間の半分の一定の強度を有するように観察者に見えるであろう。しかし、ピクセルは、約30Hzの人間の眼の臨界点滅周波数よりも速く、あるいはそれが点滅するように見えるよりも速く明状態または暗状態の間で切り換えられなければならない。したがって、ディスプレイ用の2次元デジタル光変調器は、明と暗との間の光レベルの範囲を表示するために、状態間で急速に切り替わらなければならない。
それを2次元として表わすために振動ミラーによって走査される1次元デジタル光変調器アレイは、速い切替え速度を含む変調器を組み込まなければならない。各変調器要素は、グレースケールの印象を与えるためにすばやくオンおよびオフに切り替わらなければならず、かつこの動作は、ミラーの走査周期内で1つのライン内のピクセルごとに繰り返されなければならない。グレーティング光変調装置は特に速い切替え速度を示す。これは、それらの機械的要素が非常に短い距離だけ移動するからである。グレーティング光変調器は、回折格子を形成するためにリボンが1つ置きに静電的に偏向される平行リボン構造を組み込んでいる。リボンは、光の1/4波長の距離を移動するだけで、格子をオンまたはオフに切り替える。また、1次元または2次元光変調器をデジタルモードではなくアナログモードで作動させることも可能である(多くの場合に所望される)。
Gudemanは、グレーティング光変調器に非常に類似する機械的構造に基づく干渉光変調器を提案した。これについては、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,466,354号明細書を参照されたい。Gudemanの光変調器は、リボン構造に基づくファブリー・ペロー(Fabry−Perot)干渉計の形状をなしている。
前述したテキサスインスツルメントのデジタルミラーデバイスおよびStanford/Silicon Light Machinesのグレーティング光変調装置によって代表される微小電気機械光変調器は、すでに幅広い商業的成功を享受してきており、他の関連する設計を生み出してきている。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,724,515号明細書を参照されたい。
デジタルミラーデバイスは、比較的遅く、したがって通常は2次元ミラーアレイとして供給される。通常、2次元変調器アレイは、1次元のアレイを作成するより高価であり、ミラーのために精巧なアドレス指定方式を必要とする。2次元アレイは、大きなチップ面積にわたって欠陥のないN×Nピクセルの製造を必要とするが、一方、同じ画像分解能を有する1次元アレイは、単一のライン内でチップ上にN個の作動ピクセルを必要とするだけである。
グレーティング光変調装置は、非常に高速であるが、回折に起因する限界を有している。グレーティング光変調器は、反射状態または反射構成と、回折状態とを含む。回折状態では、入射光が光学格子の+1および−1の回折次数へと回折される。しかし、これらの2つの次数では、約80%の光だけが集められる。
多くの望ましい特徴を有する干渉光変調器は、参照により本明細書に組み込まれる、2004年11月26日に出願された、米国特許第10/904,766号明細書の「Differential interferometric light modulator and image display device」に開示されている。その装置は、高速および高コントラストを特徴とする。干渉設計は、より高い回折次数で光が失われず(回折装置では問題となり得るため)、また回折光を非回折光から区別する必要がないことを意味する。
米国特許第10/904,766号明細書において、新規な光変調器は、光ビームを直交する偏光成分へ分割するために偏光プリズムを組み込んでいる。これらの偏光成分は、変調器内で等しくない距離を移動し、次いで、プリズム内で再結合されるようになっている。1つの偏光成分が他の偏光成分に対して位相シフトされると、再結合されたビームの全体の偏光が変えられる。次いで、再結合ビームの偏光が、偏光ビームスプリッタによって分解される。偏光ビームスプリッタから出力される光強度は、入射光ビームの偏光状態に依存し、次いで、入射光ビームの偏光状態は、偏光成分の相対的位相シフトに依存する。
直交する偏光成分を、設計された平らでない面上に集光させ、そこから反射させることによって、変調器における直交する偏光成分に位相シフトが与えられる。この位相シフト面は、わずかに異なる変位をなす領域を含み、それによって反射時に光ビームをわずかに異なる距離だけ移動させる。新規な微小電気機械システム(MEMS)リボンアレイ装置が提供され、その装置はリボン表面から反射される光ビームの位相シフトを変調するために用いられる。
一般化かつ改良された干渉光変調器は、2005年8月3日に出願された、米国特許第11/161,452号明細書の「Differential interferometric light modulator and image display system」に開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。光学的偏光変位装置、MEMS光位相シフト装置の設計、および、視野を向上させるための補償スキームが記載されている。
米国特許第11/161,452号明細書において、微分干渉光変調器および画像ディスプレイシステムは、偏光ビームスプリッタと、偏光変位装置と、MEMS光位相シフト装置とを備える。MEMS光位相シフト装置の直線状アレイは、ディスプレイにおけるピクセルのラインを変調することに役立つ。偏光ビームスプリッタは、干渉計において偏光子および検光子の両方として作動する。偏光変位装置は、偏光子からの偏光された光を、互いに平行に伝搬する直交する偏光成分へ分割する。MEMS光位相シフト装置、またはそのような装置のアレイは、偏光成分に対して相対的位相シフトを与え、かつそれらの偏光成分を偏光変位装置へ戻し、この偏光変位装置においてそれらの偏光成分が再結合され、検光子へ送られる。MEMS光位相シフト装置は、電子的に制御され、電子画像データ(光変調命令)を実際の光変調へ変換する。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]米国特許第4,710,732号明細書
[特許文献2]米国特許第5,311,360号明細書
[特許文献3]米国特許第5,982,553号明細書
[特許文献4]米国特許第6,088,102号明細書
[特許文献5]米国特許第6,466,354号明細書
[特許文献6]米国特許第6,724,515号明細書
[特許文献7]米国特許第10/904,766号明細書
[特許文献8]米国特許第11/161,452号明細書
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
しかし、さらなる開発が常に可能である。できる限りコンパクトな偏光変調器設計を有することが望ましいであろう。輝度および高コントラストは、ディスプレイの重要な特徴であり、継続的な改善を必要とする。ヘッドマウントディスプレイなどのいくつかの用途について、観察者の眼に接近して配置されるように設計されたビューアが必要とされる。
図面は、分かり易くするために発見を助ける。
[図面の簡単な説明]
[図1A]図1Aは、様々な偏光分離光学素子の概略図である。
[図1B]図1Bは、様々な偏光分離光学素子の概略図である。
[図1C]図1Cは、様々な偏光分離光学素子の概略図である。
[図1D]図1Dは、様々な偏光分離光学素子の概略図である。
[図2A]図2Aは、偏光変調器の設計を示す図である。
[図2B]図2Bは、偏光変調器の設計を示す図である。
[図3A]図3Aは、小型偏光変調器の設計を示す図である。
[図3B]図3Bは、小型偏光変調器の設計を示す図である。
[図4A]図4Aは、接近観察用の偏光変調器の設計を示す図である。
[図4B]図4Bは、接近観察用の偏光変調器の設計を示す図である。
[図5A]図5Aは、MEMS光位相シフト装置の概略図である。
[図5B]図5Bは、MEMS光位相シフト装置の概略図である。
[図5C]図5Cは、MEMS光位相シフト装置の概略図である。
[図6A]図6Aは、図5Aに示される装置の概略断面図である。
[図6B]図6Bは、図5Aに示される装置の概略断面図である。
[図7A]図7Aは、開口を含むMEMS光位相シフト装置の概略図である。
[図7B]図7Bは、開口を含むMEMS光位相シフト装置の概略図である。
[図8]図7Aに図示される開口よりも幅広い開口を有するMEMS光位相シフト装置の概略図である。
[発明を実施するための形態]
ディスプレイシステムは、テキスト、グラフィックス、および、他のビジュアルシーンの画像を形成するために光を操作する。光伝搬は、波動特性および偏光を含む複雑な様々な現象を含む。関連出願米国特許第10/904,766号明細書および、米国特許第11/161,452号明細書では、光波の位相をシフトするMEMS装置と組み合わされた偏光干渉計を備える新規な種類のディスプレイシステムが導入された。
これらの新規なシステムでは、MEMS光位相シフト装置の直線状アレイが、表示された画像中のピクセルのラインを変調することに役立つ。偏光ビームスプリッタは、干渉計における検光子および偏光子の両方の機能を果たし、一方、偏光変位装置は、偏光子からの偏光された光を直交する偏光成分へ分割する。MEMS光位相シフト装置アレイは、相対的位相シフトを偏光成分に対して与え、かつそれらの偏光成分を偏光変位装置へ戻す。偏光変位装置では、偏光成分が再び結合されて検光子へ送られる。MEMS光位相シフト装置は、電子的に制御され、電子画像データ(光変調命令)を実際の光変調へ変換する。
米国特許第10/904,766号明細書および米国特許第11/161,452号明細書に開示される干渉光変調器では、偏光変位の方向がMEMS光位相シフト装置におけるリボンまたはカンチレバーと平行である。このことは、特定のピクセルを形成する光が、単一のリボンまたはカンチレバーの異なる部分から反射された光から由来することを意味する。
本出願では、異なる光学的配置が開示されており、この配置においては、直交する偏光が、MEMS光位相シフト装置におけるリボンに対して垂直に変位される。したがって、表示されたピクセルを形成する光は、2つ以上のリボンまたはカンチレバーから反射される光から由来する。さらに、本明細書には、小型偏光変調器および接近観察用のディスプレイ用の光学的設計も開示されている。MEMS光位相シフト装置用の設計は、高パワーハンドリングのための最適化を含んで提供される。
偏光変調器ディスプレイは、表示された画像中のピクセルを変調するために干渉分光法に依存する。次いで、干渉分光法は、建設的干渉または相殺的干渉を生成するために光の位相を操作することに依存する。偏光変調器の重要な役目は、光の偏光成分を分離し、その結果、それらの偏光成分間の相対位相を変えることができるようにすることである。
図1A〜図1Dは、様々な偏光分離光学素子を概略的に示す。図1A〜図1Dに示される要素は、関連出願である米国特許第10/904,766号および米国特許第11/161,452号に導入されているが、追加の特徴が本明細書で説明される。
図1Aにはウォラストンプリズム(Wollaston prism)が示されている。図1Bは、1焦点距離だけ離れて配置されたレンズと組み合わせたウォラストンプリズムを示す。図1Cはサバール板(Savart plate)を示している。図1Dは一般化された偏光変位装置を示している。
図1Aに示すウォラストンプリズムは、入射光ビーム102を直交する偏光成分112および114に分割する。光ビーム112および114は、異なる角度でプリズムから出射するので、互いから無限に離れて伝搬する。ウォラストンプリズムは、光軸が矢印108および110によって示されるように配向された2片の材料104および106から構成される。
破線矢印116は、入射光ビーム102に対して垂直なウォラストンプリズムの並進が、光ビーム112および114の特性を変化させることを示している。並進は、ビーム間の位相差を変化させ、したがって、干渉計の設定点を調整するために使用され得る。加えて、プリズムは、紙面内で(すなわち、紙面に対して垂直な軸を中心に)傾けることができる。プリズムを傾けることは、分離角θの小さい調整を行うために使用され得る。この自由度は、MEMS光位相シフト装置における1つのリボンから隣のリボンまでの距離に偏光変位を合わせる場合に役立つ。
図1Bは、ウォラストンプリズムから1焦点距離だけ離間して配置されたレンズ160を示している。この状態は、システムから出射する直交する偏光ビーム156および158が互いに平行である点を除き、図1Aに示される状態に類似している。偏光変位装置がこの特性を含むこと、すなわち、光ビームが、それらが互いに対して平行に偏光変位装置を出ることは望ましい。そのようにして、ビームは、MEMS光位相シフト装置から反射すると、それらの経路を引き返す。間隔dは、θが小さい角度である場合、d=f・θにしたがって、焦点距離fおよび分離角θに関連する。
通常は、可能な場合はいつでも、2つの光学構成要素を1つの光学構成要素に置き換えることが有利である。そのような置き換えは、図1Cに示されるサバール板によって達成される。サバール板は、その上に入射する光の偏光成分に対して横方向の変位を与えるウォークオフ結晶の一実施例である(ウォラストンプリズムは、偏光成分に対して角度分離を与える複屈折プリズムの一実施例である)。図1Cでは、入力光ビーム122は、直交する偏光成分132および134へ分割される。サバール板は、光軸が矢印128および130によって示されるように配向された、2片の材料124および126から構成される。矢印130は、それがページ面内に位置していないことを示すために破線となっている。実際に、矢印は、ページ面と45度の角度をなしている。
距離L1およびL2は、サバール板の厚さが光ビーム132および134の特性を変えることを示している。これらの厚さは、干渉計の設定点を定めるように設計され得る。加えて、サバール板は、紙面内で(すなわち、紙面に対して垂直な軸を中心に)傾けられ得る。傾けることは、分離距離dの小さい調整を行うために使用され得る。この自由度は、MEMS光位相シフト装置における1つのリボンから隣のリボンまでの距離に偏光変位を合わせる場合に役立つ。
一般に、任意の装置は、図1Dに示される効果を含む限り、偏光変位装置として使用され得る。入射光ビーム162は、互いに直交するように偏光されている2つの平行光ビーム164および166に分離される。同等に、偏光ビーム164および166が入力と見なされる場合、装置がそれらの偏光ビームを1つのビーム162に結合する。次いで、ビーム162の偏光は、ビーム164および166の偏光成分の相対位相によって決定される。
本明細書、米国特許第10/904,766号明細書および米国特許第11/161,452号明細書に記載されているように、偏光変位装置は、レンズと組み合わせたウォラストンプリズム、ロションプリズムまたはセナルモンプリズム、サバール板あるいはその変形、あるいは同じ効果を含む任意の他の光学構成要素から作製され得る。
図2Aおよび図2Bは、偏光変調器の設計を示す。図2Aおよび図2Bは、垂直方向から見た同じ設計の透視図である。便宜上、図2Aを「上面」図と呼ぶことができ、一方図2Bを「側面」図と呼ぶことができる。
両方の図において、光源202からの光は、MEMS光位相シフト装置(MOPD)220から反射する前に、様々な光学素子を通して伝搬する。MOPD220から光源202に向かって戻る経路上で、光の一部が偏光ビームスプリッタ206によってレンズ208に向かって偏向される。これは図2Bだけに示されており、図2Aでは、レンズ208が偏光ビームスプリッタ206の背後に隠れている。
光源202からの光は、異なる面内で異なる場所に集光される。例えば、図2Aでは、光は、光源202からレンズ204に向かって発散している。実際に、光源は、光がレンズ204と212との間で平行になるように、レンズから約1焦点距離だけ離間して配置される。MOPD220は、レンズがMOPD220上で光を集光させるように、レンズ212から約1焦点距離だけ離間して配置される。しかし、図2Bの中で垂直方向から観察されると、光源202からの光は概ね平行になっている。したがって、光は、レンズ204を通過してレンズ204および212の組み合わされた焦点距離に概ね等しい距離だけ移動し、レンズ212を通過した後、MOPD220に到達する場合に概ね平行になる。
均等な説明は、MOPD220で光が、細幅のスリット状の断面に集光されるということである。MOPD220で、光は、図2Aの紙面に対して垂直方向に、かつ図2Bの紙面内で伸張している。以下に説明されるように、MOPD220内のリボンアレイのこの細長い照明は、光の効率的な使用およびディスプレイ内の対応する高い輝度について有利である。
ウォラストンプリズム210およびレンズ212は、米国特許第10/904,766号明細書および米国特許第11/161,452号明細書に記載されるような偏光変位装置を形成する。したがって、偏光変調器の作動原理を変えることなく、異なる偏光変位装置がそれらに取り替えられることができる。
図2Aおよび図2Bの中の光の細長の集光方向と光の偏光変位方向との間の空間的関係は、米国特許第10/904,766号明細書および米国特許第11/161,452号明細書に記載される以前の設計の空間的関係とは異なる。以前の設計では、偏光変位装置は、スリット形状の断面の長軸に対して垂直な方向にオフセットされたスリット形状ビームに光を分離した。本明細書では、偏光変位装置(すなわち、ウォラストンプリズム210およびレンズ212)は、スリット形状の断面の長軸に対して平行な方向にオフセットされるスリット形状ビームに光を分離する。これは、図2Bに点線で示されており、図2Bでは、点線がMOPD220で距離dだけ変位されるシステム内の光の部分を示す。この変位は、それが紙面に対して垂直であるので、図2Aでは見ることができない。
MOPD220に到達する光の偏光成分は、MOPD内のリボンに対して垂直にオフセットされる。これは図7Aにも示されており、例えばこの場合、領域734(濃い破線によって境界されている)は、リボン506または508に対して垂直な方向かつ紙面内で、リボンの幅だけオフセットされる直交する偏光を取り囲んでいる。
図2Aおよび図2Bでは、光源202が線光源であれば有益であるが、しかし線光源でない場合には、その形状はビーム成形光学系(図示せず)によって修正され得る。偏光ビームスプリッタ206は、それが偏光変位装置(ウォラストンプリズム210およびレンズ212)およびMOPD220と共に形成する干渉計の中で偏光子および検光子の両方として作動する。干渉計の2つのアームは、わずかに異なる経路でMOPDまで、かつMOPDから移動する直交する偏光によって形成される。
図2Aおよび図2Bでは、光源202は、レンズ204、偏光ビームスプリッタ206、ウォラストンプリズム210、レンズ212、およびMEMS装置220と一直線になっている。レンズ208に向かって偏光ビームスプリッタ206により反射される光は、2次元画像を形成するために走査され得るライン画像を形成する。しかし、レンズ208がその光を光学システムに集光することになる位置に光源を配置し、光源202が示されている場所にライン画像を形成することは完全に可能である。これらの2つの均等な配置の間の選択は、透過対反射において偏光ビームスプリッタにより達成されるコントラストなどの実用性、および使用される光源の形状に依存する。
図3Aおよび図3Bは、小型偏光変調器の設計を示している。図3Aおよび図3Bは、垂直方向から見た同じ設計の透視図である。便宜上、図3Aは「上面」図と呼ぶことができ、図3Bは「側面」図と呼ぶことができる。図中、光源302は、図3Aの斜めから見たときにはMOPD320の近傍の腰部分へと収束するが、しかし、図3Bの垂直方向の斜めから見た場合には平行となる光を提供する。適切な光源の例としては、円筒レンズ(図示せず)によって成形される線光源または点光源が含まれる。
PDD311は「偏光変位装置」であり、その用語は米国特許第11/161,452号明細書の中で定義される。その機能は、入射光ビームにおける直交する偏光成分を2つの平行な光ビームへオフセットすることである。偏光変位装置の一例は、ウォラストンプリズムまたはロションプリズムなどの偏光プリズムとレンズとの組み合わせである。MOPD320は「MEMS光位相シフト装置」であり、その用語は米国特許第11/161,452号明細書の中で定義されている。その機能は、電子的に制御可能な位相シフトを入射光に対して与えることである。多くのタイプのMOPDが米国特許第11/161,452号明細書の中で考察された。本明細書では、図5〜図8に関連して、1つのMOPDの詳細について考察される。
図3Bでは、レンズ308が、MOPD320から約1焦点距離だけ離間して配置される。図3Aでは、レンズが偏光ビームスプリッタ306の背後に隠れているので、図3Aにはレンズが示されていない。図3Bには、レンズ308の焦点面内の位置xに対する光強度Iのグラフ330がさらに描かれている。言い換えれば、グラフ330の点線のx軸およびMOPD320は両方とも反対方向ではあるが、レンズ308から約1焦点距離だけ離間している。2つの強度プロット332および336がグラフ330上に描かれている。要素340は、ダブルスリット開口または絞りである。
グラフ330の点線のx軸は、MOPD320についてフーリエ平面内に位置している。したがって、例えば、1つ置きのリボンが偏向される方形波パターンでMOPDが変調される場合、フーリエ平面での光強度は、概ねプロット332で示される光強度となる。MOPDが変調されない場合、すなわち、リボンが偏向されない場合には、フーリエ平面での光強度は、概ねプロット336で示される光強度となる。
これまでに説明された偏光変調器における暗状態と明状態との間で利用できるコントラストは、偏光間で区別する偏光ビームスプリッタの能力によって主に決定される。理想的な場合では、1つの偏光の全ての光が偏光ビームスプリッタによって透過されるが、一方、それに直交する偏光の全ての光が反射される。しかし、実際には、「誤った」偏光における何らかの光が意図せずに通って漏れ、または反射される。
ダブルスリット開口すなわち絞り340は、偏光変調器の中でコントラストを高めるために使用され得る。開口340がレンズ308のフーリエ平面に配置される場合、開口は、MOPD320が変調されない場合に光を遮るが、MOPDが変調される場合に光を通過させる。これは、偏光ビームスプリッタ306の偏光識別によってもたらされるコントラストを高める。
グラフ330の点線のx軸は、全体としてMOPDのフーリエ平面内に位置する。しかし、それは、MOPDで変調されるライン画像中のピクセルについての像平面ではない。レンズ308がMOPD320から1焦点距離に配置されると、ライン画像が無限遠に形成される。画像は、レンズ作製式1/d1+1/d2=1/f(この式では、d1およびd2は、レンズから測定される画像およびMOPDまでの距離)に従ってレンズをMOPDから離れるように移動させることにより、レンズにさらに近接させることができる。別法として、画像は、追加の光学系(図示せず)を用いて観察され得る。
図4Aおよび図4Bは、接近観察のための偏光変調器の設計を示している。そのような設計は、観察者の眼が装置に接近するヘッドマウントディスプレイに適している。
図4Aおよび図4Bは、垂直方向から見た同じ設計の透視図である。便宜上、図4Aを「平面」図と呼ぶことができ、一方、図4Bを「側面」図と呼ぶことができる。図中、光源402は、図4Aの斜めから見た場合には平行であるが、図4Bの垂直方向斜めから見た場合にはレンズ404に向かって発散する光を提供する。図4Bでは、光源は、レンズ404が光を平行にするようにある位置から光を発散し、すなわち、光源は、レンズ404から約1焦点距離だけ離れている。適した光源の例には、円筒レンズ(図示せず)によって成形される点光源または線光源が含まれる。
図中の要素406は、走査ミラーとしてとしても作動する薄い偏光ビームスプリッタである。その偏光ビームスプリッタは、図4Bの紙面に対して垂直な軸(図示せず)を中心に回転させることができる。図4Bの中の薄い偏光ビームスプリッタ406の近傍の曲がった矢印は、概ね走査の動きを示している。レンズ407は、MOPD420から約1焦点距離だけ離間して位置している。要素411は偏光変位装置である。
図4Aの透視図では、光は、レンズ404と407との間の腰部へ集光されるが、一方、図4Bの垂直透視図では、光は、これらの2つのレンズ間で依然として平行の状態である。焦点は、薄い偏光ビームスプリッタ406の位置と一致している必要はない。
観察者の眼は、要素424として図4Bに概略的に描かれている。眼のレンズが要素426である。レンズ407がMOPD420から1焦点距離に配置される場合、MOPDの像は無限遠に現れる。しかし、観察者の眼424内のレンズ426は、容易な観察のために眼の裏の網膜上に像を形成する。この像は、MOPDにおける電子的に制御される位相シフト面の直線状アレイによって変調される光の薄いシートから生じるライン画像である。薄い偏光ビームスプリッタ406が回転する場合、観察者の眼の網膜を横切ってライン画像が移動する。この走査動作は、ライン画像から2次元画像を生成するために使用される。
図5A〜図5CはMEMS光位相シフト装置を概略的に示す。図5Bおよび5Cは、表示された線に沿った図5Aの断面図である。図5A〜図5Cでは、要素502は基板すなわち支持基部であり、504は端部支持体であり、510は中間支持体である。要素506および508はリボン構造であり、506は中間支持体によって支持されるリボンであり、一方、508は中間支持体を伴わないリボンである。図5A〜図5Cには、8個のリボンだけが示されているが、一方、実際の装置は、数百または数千のリボンを含むことができる。図面は単なる概略図である。
図5Bは、図5Aに「5B」で記された断面で基板とリボンとの間に支持体が存在しないことを示している。逆に、図5Cは、図5Aに「5C」で記された断面で1つ置きのリボンのための支持体が存在することを示している。図5Aでは、断面「5C」はリボンの端部から約1/3の箇所に印されており、これは好ましい配置であるが、しかし他の設計も可能である。唯一重要な点は、支持体または他の手段によって1つ置きのリボンが補剛されているという点、および光がリボンによって反射される中央部に支持体がないという点である。
図5A〜図5Cに示されるタイプの装置は、米国特許第10/904,766号明細書に概説されるような任意の標準的なMEMS製造工程を使用して構成され得る。図面は一定の縮尺で描かれてはいないが、リボンが通常は約1〜100ミクロンの長さであり、リボンが約0.05〜0.5ミクロンだけ基板へ向けて屈曲することに留意することによって典型的な装置の寸法を理解することができる。
図6Aおよび図6Bは、図5Aに示される装置の「6A」および「6B」とそれぞれ印された部分での断面を概略的に示す。図6Aおよび図6Bの中の符号が付された要素の全ては、図5A〜図5Cの中の同様の符号が付された要素に対応している。電圧信号すなわち電源610は、図5に図示されていない。
リボン508によって例示されるように、その両端でのみ支持されるリボンに対して電圧が印加される場合、リボンは基板へ向けて屈曲する。リボンが偏向する距離Dは、図2〜図4の偏光変調器の中のMOPDの通常の動作時の光の約1/4波長である。逆に、リボン506によって例示されるように、中間支持体によって支持されるリボンに対して電圧が印加される場合、リボンは、支持されていない場合よりもはるかに小さく屈曲する。図6Bのリボン506は、全く屈曲していないように描かれているが、実際にはわずかに屈曲することができる。しかし、偏向は、支持体間の距離の非線形関数であるため、支持されたリボンと支持されていないリボンとでは、偏向は著しく異なり得る。
1つ置きのリボンを補剛するために支持体を使用する利点は、各リボンが同じ厚さであることができ、かつ同じ材料から作製され得るという点である。しかし、最終的な結果が同じである、すなわち1つ置きのリボンが、印加される電圧の影響下で異なる量だけ偏向されるならば、支持体以外の代替方法が使用され得る。
図7Aおよび図7Bは、開口を有するMEMS光位相シフト装置を概略的に示す。図7Aは、図5Aに示される図に類似するMOPDの図を示しており、一方、図7Bは、図6Aの中の図に類似する図を示している。しかし、図7では、開口722は、リボン構造上にわたって配置されている。
図7では、要素502〜要素610は、図5および図6の中で同様の符号が付された要素と同じである。要素710はスペーサである。要素720および722は、不透明コーティング722を含む透明シート720から開口構造を形成する。図7Aでは、開口構造720/722が切欠図の中で示されている。730によって表わされる斜線領域および点線は、MOPDに入射する細長の光ビームのおおよその範囲を示している。光線731は、伝搬方向に対して垂直な方向から見た光ビームをさらに表わす。
境界された領域732は、開口構造720/722を通過し、MOPDのリボンに入射する光の横方向の範囲を表わしている。境界された領域732内部で、濃い破線境界によって輪郭をつけられた領域734はMOPDの部分を示しており、この部分から反射された光は、図2〜図4に図示される任意の変調器など、偏光変調器から出力されるライン画像の中の単一のピクセルを構成する。
開口構造720/722は、ライン画像に寄与しない迷光がMOPDリボンによって反射されることを防止する。好適には、開口は、それから反射する偏光に影響を与えない。図7では、開口は、ガラスなどの透明基板上のパターン化された不透明コーティングによって形成されるように示されているが、しかし他の方法で形成されるが同じ機能を実施する開口を用いることもまた可能である。開口は、スペーサ710によってMOPDのリボンから離されている。開口を近視野に保つために、スペーサの厚みは〜w2/λ未満でなければならず、その場合、wは開口のサイズであり、λは光の波長である。
領域734は、この領域から反射光がライン画像中の単一のピクセルを形成するリボン装置の領域を表わす。領域734は、図では略正方形となるように示されているが、実際には矩形であることができる。領域の1つの辺の長さは、開口720/722の開放スロットの幅によって設定される。領域の垂直な辺の長さは、MOPD内の2つのリボンの幅に等しい。図2〜図4の偏光変調器内のPDDが、MOPDに入射する光の1つの偏光のためのオフセットを提供することを想起されたい。オフセットの大きさは、図1B〜図1D、図2Bの中の「d」によって示され、図3Bおよび図4Aの中の点線によって示されている。
偏光変調器は、オフセットがMOPD内のリボンの幅と一致するように設計される。そのようにして、偏光変調器内の干渉計は、MOPD内の隣接するリボンによって反射される光の位相を比較する。隣接する対のリボンの一方が移動し、同時に他方が静止した状態に留まると、リボンによって反射される光の位相が4πD/λだけ変化し、この場合、Dは、移動するリボンの変位であり、λは光の波長である。
図8は、図7Aに図示される開口よりも幅が広い開口を有するMEMS光位相シフト装置を概略的に示す。図8では、境界された領域832は、図7の中の対応する境界された領域732の約2倍の幅で描かれている。同様に、領域834は、正方形734ではなく矩形として表わされている。図面は、これらの領域の正確なアスペクト比を図示することを意図しておらず、しかし異なるアスペクト比を使用できることは重要である。光ビーム断面830は、対応するビーム730ほどは細長くない形状を含む。
全ての他の条件が同じ場合、図8の中のMOPDに入射する光は、図7Aの中の場合よりも幅広い領域にわたって広がっている。したがって、材料制限がMOPD上に向かう光の強度(単位面積当たりのパワー)を制限することを必要とする場合には、そのとき、図7Aの場合に比べてより大きなパワーが図8の中のMOPDに対して加えられることができる。図8は、より大きなパワー処理能力、したがって、図7Aの中に表示される画像よりも明るい表示画像をもたらすことができる能力を有する設計を表示する。円筒光学系の使用により、図8のように、より幅広い開口スロットを用いた動作のために入射光ビームを広げることができる。
本明細書で説明される偏光変調器は、細長のビーム断面の光を、直線状アレイMOPD上に集光する。直交する偏光は、細長のビーム断面の長軸と平行に変位される。高い輝度およびコントラストに最適な小型変調器設計が説明された。
本明細書中の実施形態の開示から当業者であれば容易に分かるように、本明細書に記載された対応する実施形態と概ね同じ機能を果たし、または概ね同じ結果を達成する現在既存のまたは後に開発されるプロセス、機械、製造、手段、方法またはステップが、本発明に従って利用され得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのようなプロセス、機械、製造、手段、方法またはステップをその範囲内に含むように意図されている。
システムおよび方法の図示の実施形態の上記の説明は、網羅的であるよう意図されているものではなく、またはシステムおよび方法を開示される正確な形態に限定しようと意図されるものではない。本明細書では、例示の目的で、システムおよび方法の特定の実施形態ならびにシステムおよび方法のための例が説明されているが、当業者であれば分かるように、システムおよび方法の範囲内で様々な均等な修正形態が可能である。本明細書で提供されるシステムおよび方法の教示は、上記に説明されるシステムおよび方法にだけでなく、他のシステムおよび方法にも適用され得る。
一般に、以下の特許請求の範囲の中で、使用される用語は、システムおよび方法を明細書および特許請求の範囲中に開示された特定の実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、しかし特許請求の範囲の下で作動する全てのシステムを含むように解釈されるべきである。したがって、システムおよび方法は開示によって限定されるのではなく、システムおよび方法の範囲は、専ら特許請求の範囲によって決定されるべきである。
[書類名]特許請求の範囲
[請求項1]
偏光ビームスプリッタと、
偏光変位装置と、
MEMS光位相シフト装置と
を備え、
光が、前記MEMS光位相シフト装置に到達する前に、前記MEMS光位相シフト装置におけるリボンに対して垂直に配向された細長断面のビームとして、前記偏光ビームスプリッタおよび前記偏光変位装置を通って伝搬する、偏光変調器。
[請求項2]
前記偏光変位装置が、直交する偏光を、前記細長断面の長軸と平行な方向にオフセットする、請求項1に記載の変調器。
[請求項3]
前記偏光ビームスプリッタが走査ミラーとしてさらに機能する、請求項2に記載の変調器。
[請求項4]
変調器から出力されるライン画像が、観察者による接近観察のために無限遠の近傍に集光される、請求項2に記載の変調器。
[請求項5]
迷光が前記MEMS光位相シフト装置に達することを妨げる開口をさらに備える、請求項2に記載の変調器。
[請求項6]
ライン画像におけるコントラストを高めるダブルスリット開口をさらに備える、請求項2に記載の変調器。
[請求項7]
前記MEMS光位相シフト装置が、交互に剛性を含む複数のリボンを備える、請求項2に記載の変調器。
[請求項8]
前記MEMS光位相シフト装置が、両端で支持される複数のリボンを備え、複数のリボンの中で交互にリボンが中間支持体によってさらに支持されている、請求項2に記載の変調器。
[書類名]要約書
[要約]
偏光変調器は、偏光ビームスプリッタが偏光子および検光子としての役割を有する干渉設計に基づいている。偏光変位装置は、直交する偏光をそれらの細長の断面の長軸に並行してシフトする。直線状のアレイMEMS光位相シフト装置によって直交する偏光に移送シフトが与えられる。光変調器の出力は、ライン画像であり、ライン画像を走査することで2次元画像を形成してもよい。輝度、コントラスト、設計の全体のコンパクトさに対する特徴が開示される。
[書類名]図面
[図1A]
[図1B]
[図1C]
[図1D]
[図2A]
[図2B]
[図3A]
[図3B]
[図4A]
[図4B]
[図5A]
[図5B]
[図5C]
[図6A]
[図6B]
[図7A]
[図7B]
[図8]