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JP6654519B2 - 1剤型の歯科用重合性組成物 - Google Patents

1剤型の歯科用重合性組成物 Download PDF

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JP6654519B2
JP6654519B2 JP2016131021A JP2016131021A JP6654519B2 JP 6654519 B2 JP6654519 B2 JP 6654519B2 JP 2016131021 A JP2016131021 A JP 2016131021A JP 2016131021 A JP2016131021 A JP 2016131021A JP 6654519 B2 JP6654519 B2 JP 6654519B2
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Description

本発明は、1剤型の歯科用重合性組成物に関する。
歯科分野においては、(メタ)アクリレート等の重合性単量体を含み、重合性単量体が重合することにより硬化する原理を応用した歯科用重合性組成物が広く用いられている。歯科用重合性組成物の具体的な形態としては、例えば、歯科用プライマー、歯科用接着剤、歯科用セメント、歯科用コート材、歯科用コンポジットレジン、歯科用硬質レジン、歯科切削加工用レジン材料、歯科用暫間修復材等が挙げられる。
例えば、歯科用プライマーは、歯科用接着剤、歯科用セメント等を歯面に塗布する前に予め歯面に塗布することで、歯面に対する接着性を向上させることができる。また、歯面の他に、金属、セラミックス、レジン等の様々な材料の補綴物に、歯科用接着剤、歯科用セメント等を塗布する場合があるが、歯科用プライマーに様々な成分を添加することで、補綴物に対する接着性を向上させることができる。
特許文献1には、酸基を有する(メタ)アクリレートと、水と、水溶性で揮発性の有機溶剤と、バナジウム化合物とを含む歯科用プライマーが開示されている。
特許文献2には、a)鉄化合物、銅化合物およびコバルト化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の金属化合物、b)酸性基を持つ重合性モノマーおよびc)水、または水と水混和性有機溶媒を含有することを特徴とする、歯質表面を処理するためのプライマー組成物が開示されている。
特開2010−280630号公報 特開平8−40819号公報
しかしながら、1剤型の歯科用重合性組成物の保存安定性を向上させることが望まれている。
例えば、1剤型の歯科用重合性組成物がエタノール、アセトン等の有機溶媒と、バナジウム化合物を含む場合、保存安定性が低下する。
また、エタノール、アセトン等の有機溶媒と、銅化合物を含む1剤型の歯科用重合性組成物を製造すると、沈降が発生する。
そこで、本発明の一態様は、保存安定性に優れる1剤型の歯科用重合性組成物を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、1剤型の歯科用重合性組成物において、サッカリン化合物、銅化合物と、(メタ)アクリレートと、有機溶媒を含み、前記サッカリン化合物は、一般式
Figure 0006654519
(式中、Mは、水素原子又はアルカリ金属原子であり、Rは、炭素数が1〜5のアルキル基、炭素数が2〜5の不飽和鎖式炭化水素基、ハロゲン原子、シリル基又はアルキルシリル基であり、nは、0〜4の整数である。ただし、nが2〜4である場合、複数のRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
で表される化合物であり、前記有機溶媒の含有量が30〜90質量%である
本発明の一態様によれば、保存安定性に優れる1剤型の歯科用重合性組成物を提供することができる。
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
<歯科用重合性組成物>
歯科用重合性組成物は、サッカリン化合物、銅化合物及び(メタ)アクリレートを含む。
なお、歯科用重合性組成物は、1剤型及び2剤型のいずれであってもよい。
歯科用重合性組成物の具体的な形態としては、例えば、歯科用プライマー、歯科用接着剤、歯科用セメント、歯科用コート材、歯科用コンポジットレジン、歯科用硬質レジン、歯科切削加工用レジン材料、歯科用暫間修復材等が挙げられる。
ここで、歯科用重合性組成物が歯科用プライマーである場合、歯科用プライマーは、化学重合開始剤における酸化剤を含む歯科用接着剤や歯科用セメント(例えば、特開2010−229165号公報、特開2010−215824号公報参照)と組み合わせて用いることが好ましい。
<サッカリン化合物>
本願明細書及び特許請求の範囲において、サッカリン化合物とは、サッカリン、サッカリンの塩、サッカリン誘導体又はサッカリン誘導体の塩を意味する。
サッカリン化合物は、歯科用重合性組成物の製造時に沈降が発生するのを抑制することができる。
サッカリン化合物は、一般式
Figure 0006654519
(式中、Mは、水素原子又はアルカリ金属原子であり、Rは、炭素数が1〜5のアルキル基、炭素数が2〜5の不飽和鎖式炭化水素基、ハロゲン原子、シリル基又はアルキルシリル基であり、nは、0〜4の整数である。ただし、nが2〜4である場合、複数のRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
で表される化合物であることが好ましく、サッカリン、サッカリンリチウム、サッカリンナトリウム又はサッカリンカリウムであることがさらに好ましい。
なお、サッカリン化合物は、二種以上併用してもよい。
歯科用重合性組成物中のサッカリン化合物の含有量は、0.5〜4質量%であることが好ましく、1〜2.5質量%であることがさらに好ましい。歯科用重合性組成物中のサッカリン化合物の含有量が0.5質量%以上であることにより、歯科用重合性組成物の製造時に沈降が発生するのをさらに抑制することができ、4質量%以下であることにより、その他の成分の含有量を確保することができ、歯科用重合性組成物としての性能が向上する。
<銅化合物>
本願明細書及び特許請求の範囲において、銅化合物は、後述する化学重合開始剤における還元剤又は光重合促進剤として機能する。
銅化合物としては、特に限定されないが、アセチルアセトン銅(II)、4−シクロヘキシル酪酸銅(II)、酢酸銅(II)、オレイン酸銅(II)、硫酸銅(II)、塩化銅(II)、グルコン酸銅(II)、オレイン酸銅(II)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム銅(II)、塩化銅(II)、硝酸銅(II)、酢酸銅(II)、アクリル酸銅(II)、メタクリル酸銅(II)等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
歯科用重合性組成物中の銅化合物の含有量は、0.05〜0.5質量%であることが好ましく、0.1〜0.3質量%であることがさらに好ましい。歯科用重合性組成物中の銅化合物の含有量が0.05質量%以上であることにより、歯科用重合性組成物の保存安定性を向上させることができ、0.5質量%以下であることにより、その他の成分の含有量を確保することができ、歯科用重合性組成物としての性能が向上する。
<(メタ)アクリレート>
本願明細書及び特許請求の範囲において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各種モノマー、オリゴマーあるいはプレポリマーを意味し、(メタ)アクリロイルオキシ基を1個以上有する。また、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、メタクリロイルオキシ基及び/又はアクリロイルオキシ基を意味する。
(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、1,3,5−トリス[1,3−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2−プロポキシカルボニルアミノヘキサン]−1,3,5−(1H,3H,5H)トリアジン−2,4,6−トリオン、2,2−ビス−4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−フェニルプロパン、N,N'−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラメタクリレート、2,2'−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンと2−オキシパノンとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとからなるウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとからなるウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート等が挙げられる。
歯科用重合性組成物中の(メタ)アクリレートの含有量は、0.5〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがさらに好ましい。歯科用重合性組成物中の(メタ)アクリレートの含有量が0.5質量%以上であることにより、歯科用重合性組成物の接着性が向上し、70質量%以下であることにより、その他の成分の含有量を確保することができ、歯科用重合性組成物としての性能が向上する。
(メタ)アクリレートとして、酸基を有する(メタ)アクリレートを使用することもできる。
酸基を有する(メタ)アクリレートは、本実施形態の歯科用重合性組成物に、歯質や、歯科用修復物の材料であるジルコニア、アルミナ等のセラミックスや、貴金属を含む合金に対する接着性を付与する効果がある。
酸基を有する(メタ)アクリレートは、リン酸基、チオリン酸基又はカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましく、例えば、1分子中にリン酸基、チオリン酸基又はカルボキシル基を1個又は複数個有する(メタ)アクリレートを使用できる。
リン酸基又はチオリン酸基は、カルボキシル基よりも強い酸性を示すことから、歯面のスメアー層を溶解させる効果や歯質を脱灰させる効果が高く、特に、エナメル質に対して、接着性を向上させる効果が高い。
リン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニルハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−ジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−フェニルハイドロジェンホスフェート、ビス[5−{2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニル}ヘプチル]ハイドロジェンホスフェート等が挙げられる。中でも、接着性の向上及び(メタ)アクリレート自体の安定性の点から、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェートが特に好ましい。
チオリン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンチオホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンチオホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンチオホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンチオホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンチオホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンチオホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンチオホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンチオホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンチオホスフェート、13−(メタ)アクリロイルオキシトリデシルジハイドロジェンチオホスフェート、14−(メタ)アクリロイルオキシテトラデシルジハイドロジェンチオホスフェート、15−(メタ)アクリロイルオキシペンタデシルジハイドロジェンチオホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンチオホスフェート、17−(メタ)アクリロイルオキシヘプタデシルジハイドロジェンチオホスフェート、18−(メタ)アクリロイルオキシオクタデシルジハイドロジェンチオホスフェート、19−(メタ)アクリロイルオキシノナデシルジハイドロジェンチオホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンチオホスフェート等が挙げられる。中でも、接着性の向上及び(メタ)アクリレート自体の安定性の点から10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェートが特に好ましい。
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートとしては、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリット酸無水物、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシピロメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。中でも、接着性の向上の点から、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物が特に好ましい。
なお、酸基を有する(メタ)アクリレートは、二種以上併用してもよい。
歯科用重合性組成物中の酸基を有する(メタ)アクリレートの含有量は、2〜30質量%であることが好ましく、4〜20質量%であることがさらに好ましい。歯科用重合性組成物中の酸基を有する(メタ)アクリレートの含有量が2質量%以上であることにより、歯科用重合性組成物の接着性が向上し、30質量%以下であることにより、その他の成分の含有量を確保することができ、歯科用重合性組成物としての性能が向上する。
(メタ)アクリレートとして、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤を使用することもできる。
(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤としては、特に限定されないが、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
歯科用重合性組成物中の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤の含有量は、0.5〜5質量%であることが好ましく、1.5〜3質量%であることがさらに好ましい。歯科用重合性組成物中の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランカップリング剤の含有量が0.5質量%以上であることにより、歯科用重合性組成物の接着性が向上し、5質量%以下であることにより、その他の成分の含有量を確保することができ、歯科用重合性組成物としての性能が向上する。
<有機溶媒>
本実施形態の歯科用重合性組成物は、有機溶媒をさらに含んでいてもよい。
有機溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブ、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、エタノール、アセトン、イソプロパノール、ブタノールが好ましい。
歯科用重合性組成物中の有機溶媒の含有量は、30〜90質量%であることが好ましく、60〜80質量%であることがさらに好ましい。歯科用重合性組成物中の有機溶媒の含有量が30質量%以上であることにより、歯科用重合性組成物の乾燥性を向上させることができ、90質量%以下であることにより、その他の成分の含有量を確保することができ、歯科用重合性組成物としての性能が向上する。
<水>
本実施形態の歯科用重合性組成物は、水をさらに含んでいてもよい。
歯科用重合性組成物中の水の含有量は、20〜50質量%であることが好ましく、25〜35質量%であることがさらに好ましい。歯科用重合性組成物中の水の含有量が20質量%以上であることにより、歯面をエッチングすることができ、50質量%以下であることにより、歯科用重合性組成物の乾燥性を向上させることができる。
なお、シランカップリング剤を含む歯科用重合性組成物は、水を実質的に含まないことが好ましい。
本願明細書及び特許請求の範囲において、水を実質的に含まないとは、水の含有量が0.5質量%以下であることを意味する。シランカップリング剤を含む歯科用重合性組成物中の水の含有量が0.5質量%以下であることにより、歯科用重合性組成物のシランカップリング剤の分解を抑えることができる。
シランカップリング剤を含む歯科用重合性組成物中の水の含有量は、0.4質量%以下であることがさらに好ましく、0.3質量%以下であることが特に好ましい。
<重合開始剤>
本実施形態の歯科用重合性組成物は、重合開始剤をさらに含んでいてもよい。
(メタ)アクリレートの重合開始方法としては、特に限定されないが、熱、可視光、電磁波(赤外線、紫外線、X線等)、電子線等により、重合開始に必要なエネルギーを供給する方法が挙げられる。
ただし、(メタ)アクリレートの重合開始方法によらず、本実施形態の歯科用重合性組成物が重合開始剤をさらに含むことにより、(メタ)アクリレートの重合開始に必要なエネルギーを大きく下げることができ、かつ重合反応の制御が容易になる。
重合開始剤としては、化学重合開始剤を用いることができる。
化学重合開始剤としては、酸化剤と還元剤との組み合わせを用いることができる。酸化剤を含む一方の剤と、還元剤を含む他方の剤を混合することにより、(メタ)アクリレートの重合が開始し、硬化する2剤型の歯科用重合性組成物とすることができる。
なお、歯科用重合性組成物が歯科用プライマー又は1剤型の接着剤である場合、歯科用プライマー又は1剤型の接着剤は、化学重合開始剤における酸化剤と還元剤の一方のみを含み、両方を含まないことが好ましい。歯科用プライマー又は1剤型の接着剤中に化学重合開始剤における酸化剤と還元剤の両方が存在すると、(メタ)アクリレートの重合が開始しやすくなり、歯科用プライマー又は1剤型の接着剤の保存安定性が低下するためである。
化学重合開始剤における酸化剤としては、特に限定されないが、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物、過酸化水素、過硫酸塩等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
歯科用重合性組成物中の化学重合開始剤における酸化剤の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることがさらに好ましい。歯科用重合性組成物中の化学重合開始剤における酸化剤の含有量が0.1質量%以上であることにより、歯科用重合性組成物の接着性が向上し、10質量%以下であることにより、歯科用重合性組成物の保存安定性が向上する。
化学重合開始剤における還元剤としては、特に限定されないが、アミン化合物、スルフィン酸類、チオ尿素類、システイン類、アスコルビン酸類等を挙げることができる。
アミン化合物としては、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、トリエチルアミン、N−エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン化合物、N−フェニルグリシン等を挙げることができる。
スルフィン酸類としては、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルホニルクロライド、p−トルエンスルホニルフルオライド、o−トルエンスルホニルイソシアネート、p−アセトアミドベンゼンスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。
チオ尿素類としては、チオ尿素及びチオ尿素の誘導体が挙げられる。
チオ尿素の誘導体としては、エチレンチオ尿素、N−メチルチオ尿素、N−エチルチオ尿素、N−プロピルチオ尿素、N−ブチルチオ尿素、N−ラウリルチオ尿素、N−フェニルチオ尿素、N−シクロヘキシルチオ尿素、N,N−ジメチルチオ尿素、N,N−ジエチルチオ尿素、N,N−ジプロピルチオ尿素、N,N−ジ−ブチルチオ尿素、N,N−ジラウリルチオ尿素、N,N−ジフェニルチオ尿素、N,N−ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、N−アセチルチオ尿素、N−ベンゾイルチオ尿素、1−アリル−3−(2−ヒドロキシエチル)−2−チオ尿素、1−(2−テトラヒドロフルフリル)−2−チオ尿素等を挙げることができる。
システイン類としては、システイン及びシステインの誘導体が挙げられる。
システインの誘導体としては、システインメチル、システインエチル、N−メチルシステイン、N−エチルシステイン、N−アセチルシステイン、N,N−ジメチルシステイン、N,N−ジエチルシステイン、N,N−ジアセチルシステイン、グルタチオン等を挙げることができる。
アスコルビン酸類としては、アスコルビン酸及びアスコルビン酸の塩が挙げられる。
アスコルビン酸の塩としては、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸カリウム等を挙げることができる。
なお、化学重合開始剤における還元剤は、二種以上併用してもよい。
歯科用重合性組成物中の化学重合開始剤における還元剤の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることがさらに好ましい。歯科用重合性組成物中の化学重合開始剤における還元剤の含有量が0.1質量%以上である場合、又は、10質量%以下である場合は、歯科用重合性組成物の接着性がさらに向上する。
また、重合開始剤としては、化学重合開始剤に代えて、又は、化学重合開始剤と共に、光重合開始剤を用いることもできる。歯科用重合性組成物が光重合開始剤を含むことにより、光を照射することにより硬化する特性を歯科用重合性組成物に与えることができる。
光重合開始剤としては、特に限定されないが、ケトン系化合物、α−ジケトン系化合物、ケタール系化合物、アントラキノン系化合物、チオキサントン系化合物、ベンゾインアルキルエーテル系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物等が挙げられる。
ケトン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
α−ジケトン系化合物としては、例えば、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、アセナフテンキノン、9,10−フェナントラキノン等が挙げられる。
ケタール系化合物としては、例えば、ベンジルケタール、ジアセチルケタール、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルビス(β−フェニルエチル)ケタール、ベンジルビス(2−メトキシエチル)ケタール、4,4'−ジメチル(ベンジルジメチルケタール)等が挙げられる。
アントラキノン系化合物としては、例えば、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン等が挙げられる。
チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキシド、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライド等が挙げられる。
ベンゾインアルキルエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
アシルホスフィンオキシド系化合物としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
歯科用重合性組成物中の光重合開始剤の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることがさらに好ましい。歯科用重合性組成物中の光重合開始剤の含有量が0.1質量%以上であることにより、歯科用重合性組成物の接着性が向上し、10質量%以下であることにより、歯科用重合性組成物の保存安定性が向上する。
重合開始剤として、光重合開始剤を用いる場合、光重合促進剤を併用してもよい。
光重合促進剤としては、特に限定されないが、N,N−ジメチル−p−トルイジン、トリエタノールアミン、トリルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等の3級アミン、バルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1,3,5−トリエチルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸等のバルビツール酸誘導体等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
歯科用重合性組成物中の光重合促進剤の含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.2〜1質量%であることがさらに好ましい。歯科用重合性組成物中の光重合促進剤の含有量が0.1質量%以上である場合、又は、5質量%以下である場合は、歯科用重合性組成物の接着性がさらに向上する。
<その他のシランカップリング剤>
歯科用重合性組成物は、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の何れも有さないその他のシランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。
その他のシランカップリング剤としては、特に限定されないが、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルチオプロピルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルチオプロピルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルチオプロピルトリエトキシシラン、トリエトキシシリルチオペンチルトリメトキシシラン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
歯科用重合性組成物中のその他のシランカップリング剤の含有量は、1〜5質量%であることが好ましく、2〜4質量%であることがさらに好ましい。歯科用重合性組成物中のその他のシランカップリング剤の含有量が1質量%以上であることにより、歯科用重合性組成物の接着性が向上し、5質量%以下であることにより、その他の成分の含有量を確保することができ、歯科用重合性組成物としての性能が向上する。
<その他の成分>
歯科用重合性組成物は、重合禁止剤、フィラーをさらに含んでいてもよい。
重合禁止剤としては、特に限定されないが、ジブチルヒドロキシトルエン、2,6−t−ブチル−2,4−キシレノール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
歯科用重合性組成物中の重合禁止剤の含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.2〜1質量%であることがさらに好ましい。歯科用重合性組成物中の重合禁止剤の含有量が0.1質量%以上である場合、又は、5質量%以下である場合は、歯科用重合性組成物の保存安定性が向上する。
フィラーは、有機フィラー及び無機フィラーのいずれであってもよいが、無機フィラーであることが好ましい。
無機フィラーとしては、特に限定されないが、シリカ粉末、ヒュームドシリカ、アルミナ粉末、ガラス粉末(例えば、バリウムガラス粉末、フルオロアルミノシリケートガラス粉末)等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
無機フィラーは、必要に応じて、シランカップリング剤等の表面処理剤で処理されていてもよい。
歯科用重合性組成物中のフィラーの含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがさらに好ましい。歯科用重合性組成物中のフィラーの含有量が0.1質量%以上である場合、又は、20質量%以下である場合は、歯科用重合性組成物の接着性がさらに向上する。
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
<実施例1−1〜1−8>
表1に示す配合[質量%]で、酸基を有さないメタクリレート、酸基を有するメタクリレート、シランカップリング剤、有機溶媒、銅化合物、サッカリン化合物、重合禁止剤を混合することにより、プライマーを作製した。
<比較例1−1、1−2>
表2に示す配合[質量%]で、酸基を有さないメタクリレート、酸基を有するメタクリレート、有機溶媒、銅化合物又はバナジウム化合物、重合禁止剤を混合することにより、プライマーを作製した。
なお、表1、2における略称の意味は、以下の通りである。
UDMA:ジ−2−メタクリロイルオキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
MDTP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート
VAA:バナジルアセチルアセトナート
サッカリンNa:サッカリンナトリウム
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン
次に、プライマーの保存安定性及び接着性を評価した。
<保存安定性>
各実施例及び比較例のプライマーを高密度ポリエチレン製の容器に入れて密封し、温度60℃の環境下で2週間放置した後の変化を目視により確認した。保存安定性の判定基準は、以下のとおりである。
○:プライマーのゲル化又は変色が確認された場合
×:プライマーのゲル化及び変色の何れも確認されなかった場合
<接着性>
牛歯象牙質を#320耐水研磨紙により研磨し、平坦にした研磨面に、直径が2.5mmの穴が開いている厚さが100μmのポリテトラフルオロエチレン製のシールを貼り付け、被着面の面積を規定した。引張試験用治具として、#120耐水研磨紙により研磨した後、サンドブラスト処理を行った、直径が10mmのステンレスロッドを使用した。牛歯象牙質の被着面に各実施例及び比較例のプライマーを塗布し、10秒間放置した後、エアーブローにより乾燥させた。
ステンレスロッドに歯科用セメントとしての、ジーセムセラスマート(ジーシー社製)の練和物を適量塗布し、これを牛歯象牙質の被着面に圧接した。余剰のセメントを探針で除去した後、温度37℃、湿度95%RHの環境下で1時間放置し、さらに37℃の蒸留水中に23時間浸漬して試験体とした。
得られた試験体について、精密万能試験機オートグラフAG−I(島津製作所社製)を用いて、クロスヘッドスピード1mm/分の条件で引張試験を実施し、引張接着強さの平均値を求めた。接着性の判定基準は、以下のとおりである。
○:引張接着強さの平均値が8MPa以上である場合
×:引張接着強さの平均値が8MPa未満である場合
表1、2に、プライマーの保存安定性及び接着性の評価結果を示す。
Figure 0006654519
Figure 0006654519
表1、2から、実施例1−1〜1−8のプライマーは、保存安定性が高いことがわかる。
これに対して、比較例1−1では、サッカリン化合物を添加していないため、沈降が発生し、プライマーを作製することができなかった。
比較例1−2のプライマーは、バナジルアセチルアセトナートを含むため、保存安定性が低い。
<実施例2−1〜2−3>
表3に示す配合[質量%]で、酸基を有さないメタクリレート、酸基を有するメタクリレート、有機溶媒、水、銅化合物、サッカリン化合物、光重合開始剤、光重合促進剤、フィラー、重合禁止剤を混合することにより、接着剤を作製した。
<比較例2−1〜2−3>
表4に示す配合[質量%]で、酸基を有さないメタクリレート、酸基を有するメタクリレート、有機溶媒、水、銅化合物又はバナジウム化合物、光重合開始剤、光重合促進剤、フィラー、重合禁止剤を混合することにより、接着剤を作製した。
なお、表1、2における略称以外の表3、4における略称の意味は、以下の通りである。
GDMA:2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロイルオキシプロパン
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
4−META:4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物
CQ:カンファーキノン
TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド
EPA:4−ジメチルアミノ安息香酸エチル
アルミナ粉末:アエロキサイドAluC(日本アエロジル社製)
ヒュームドシリカ:アエロジル(登録商標)R812(日本アエロジル社製)
次に、接着剤の保存安定性及び接着性を評価した。
<保存安定性>
各実施例及び比較例の接着剤を高密度ポリエチレン製の容器に入れて密封し、温度60℃の環境下で2週間放置した後の変化を目視により確認した。保存安定性の判定基準は、以下のとおりである。
○:接着剤のゲル化又は変色が確認された場合
×:接着剤のゲル化及び変色の何れも確認されなかった場合
<接着性>
牛歯象牙質を#320耐水研磨紙により研磨し、平坦にした研磨面に、直径が2.5mmの穴が開いている厚さが100μmのポリテトラフルオロエチレン製のシールを貼り付け、被着面の面積を規定した。引張試験用治具として、#120耐水研磨紙にて研磨した後、サンドブラスト処理を行った、直径が10mmのステンレスロッドを使用した。牛歯象牙質の被着面に各実施例及び比較例の接着剤を塗布し、10秒間放置した後、エアーブローにより乾燥させた。
ステンレスロッドに歯科用セメントとしての、ジーセムセラスマート(ジーシー社製)の練和物を適量塗布し、これを牛歯象牙質の被着面に圧接した。余剰のセメントを探針で除去した後、温度37℃、湿度95%RHの環境下で1時間放置し、さらに37℃の蒸留水中に23時間浸漬して試験体とした。
得られた試験体について、精密万能試験機オートグラフAG−I(島津製作所社製)を用いて、クロスヘッドスピード1mm/分の条件で引張試験を実施し、引張接着強さの平均値を求めた。接着性の判定基準は、以下のとおりである。
○:引張接着強さの平均値が8MPa以上である場合
×:引張接着強さの平均値が8MPa未満である場合
表3、4に、接着剤の保存安定性及び接着性の評価結果を示す。
Figure 0006654519
Figure 0006654519
表3、4から、実施例2−1〜2−3の接着剤は、保存安定性が高いことがわかる。
これに対して、比較例2−1、2−2では、サッカリン化合物を添加していないため、沈降が発生し、接着剤を作製することができなかった。
比較例2−3の接着剤は、バナジルアセチルアセトナートを含むため、保存安定性が低い。
参考例3−1〜3−3>
表5に示す配合[質量%]で、酸基を有さないメタクリレート、酸基を有するメタクリレート、化学重合開始剤、フィラーを混合することにより、ペースト1を作製した。
表5に示す配合[質量%]で、酸基を有さないメタクリレート、チオ尿素誘導体、銅化合物、サッカリン化合物、フィラー、光重合開始剤、重合禁止剤を混合することにより、ペースト2を作製した。
以上により、ペースト1及びペースト2からなるセメントを得た。
<比較例3−1、3−2>
表6に示す配合[質量%]で、酸基を有さないメタクリレート、酸基を有するメタクリレート、化学重合開始剤、フィラーを混合することにより、ペースト1を作製した。
表6に示す配合[質量%]で、酸基を有さないメタクリレート、チオ尿素誘導体、銅化合物、フィラー、光重合開始剤、重合禁止剤を混合することにより、ペースト2を作製した。
以上により、ペースト1及びペースト2からなるセメントを得た。
なお、表1〜4における略称以外の表5、6における略称の意味は、以下の通りである。
CHP:クメンヒドロペルオキシド
NBTU:N−ベンゾイルチオ尿素
IA:6−tert−ブチル−2,4−キシレノール
また、表5、6におけるシリカ粉末、ガラス粉末は、以下のようにして作製した。
(シリカ粉末の作製方法)
平均粒径が4μmの硅砂粉末に、ビニルエトキシシランの10質量%エタノール溶液20gを加えた後、乳鉢を用いて、充分混合した。次に、蒸気乾燥器を用いて、110℃で2時間乾燥させ、シリカ粉末を得た。
(ガラス粉末の作製方法)
酸化アルミニウム21質量%、無水ケイ酸44質量%、フッ化カルシウム12質量%、リン酸カルシウム14質量%及び炭酸ストロンチウム9質量%からなる原料を充分混合した後、高温電気炉を用いて、1200℃で5時間保持し、溶融させた。次に、冷却した後、ボールミルを用いて、10時間粉砕した。さらに、200メッシュ(ASTM)のふるいを通過させ、原料粉末を得た。原料粉末100gに、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランの10質量%エタノール溶液20gを加えた後、乳鉢を用いて、充分混合した。次に、蒸気乾燥器を用いて、110℃で2時間乾燥させ、ガラス粉末を得た。
次に、セメントの保存安定性及び接着性を評価した。
<保存安定性>
各実施例及び比較例の各ペーストを高密度ポリエチレン製の容器に入れて密封し、温度60℃の環境下で2週間放置した後の変化を目視により確認した。保存安定性の判定基準は、以下のとおりである。
○:ペーストのゲル化又は変色が確認された場合
×:ペーストのゲル化及び変色の何れも確認されなかった場合
<接着性>
牛歯象牙質を#320耐水研磨紙により研磨し、平坦にした研磨面に、直径が2.5mmの穴が開いている厚さが100μmのポリテトラフルオロエチレン製のシールを貼り付け、被着面の面積を規定した。引張試験用治具として、#120耐水研磨紙により研磨した後、サンドブラスト処理を行った、直径が10mmのステンレスロッドを使用した。
ステンレスロッドに各実施例及び比較例のセメントの練和物を適量塗布し、これを牛歯象牙質の被着面に圧接した。余剰のセメントを探針で除去した後、温度37℃、湿度95%RHの環境下で1時間放置し、さらに37℃の蒸留水中に23時間浸漬して試験体とした。
得られた試験体について、精密万能試験機オートグラフAG−I(島津製作所社製)を用いて、クロスヘッドスピード1mm/分の条件で引張試験を実施し、引張接着強さの平均値を求めた。接着性の判定基準は、以下のとおりである。
○:引張接着強さの平均値が6MPa以上である場合
×:引張接着強さの平均値が6MPa未満である場合
表5、6に、セメントの保存安定性及び接着性の評価結果を示す。
Figure 0006654519
Figure 0006654519
表5、6から、参考例3−1〜3−3のセメントは、保存安定性が高いことがわかる。
これに対して、比較例3−1、3−2では、サッカリン化合物を添加していないため、沈降が発生し、ペースト2を作製することができなかった。

Claims (4)

  1. サッカリン化合物、銅化合物と、(メタ)アクリレートと、有機溶媒を含み、
    前記サッカリン化合物は、一般式
    Figure 0006654519
    (式中、Mは、水素原子又はアルカリ金属原子であり、Rは、炭素数が1〜5のアルキル基、炭素数が2〜5の不飽和鎖式炭化水素基、ハロゲン原子、シリル基又はアルキルシリル基であり、nは、0〜4の整数である。ただし、nが2〜4である場合、複数のRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
    で表される化合物であり、
    前記有機溶媒の含有量が30〜90質量%であることを特徴とする1剤型の歯科用重合性組成物。
  2. 水を実質的に含まない歯科用プライマーであることを特徴とする請求項1に記載の1剤型の歯科用重合性組成物。
  3. 前記(メタ)アクリレートは、酸基を有する(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の1剤型の歯科用重合性組成物。
  4. シランカップリング剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の1剤型の歯科用重合性組成物。
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