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JP2021054795A - 低感水性歯科用組成物 - Google Patents

低感水性歯科用組成物 Download PDF

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JP2021054795A
JP2021054795A JP2020055202A JP2020055202A JP2021054795A JP 2021054795 A JP2021054795 A JP 2021054795A JP 2020055202 A JP2020055202 A JP 2020055202A JP 2020055202 A JP2020055202 A JP 2020055202A JP 2021054795 A JP2021054795 A JP 2021054795A
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meth
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勇生 門林
Yusei Kadobayashi
勇生 門林
啓史 八穴
Hiroshi Yaana
啓史 八穴
内田 潤
Jun Uchida
潤 内田
祐司 定金
Yuji Sadakane
祐司 定金
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Shofu Inc
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Abstract

【課題】口腔内の環境下のように水分が過剰にある状態でも十分な硬化性を発揮できる歯科用組成物を提供する。【解決手段】式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含む歯科用組成物。(RはHまたはメチル基、R2はC2〜6のアルキル基)【選択図】なし

Description

本発明は、歯科用組成物に関する。
歯科治療において、種々の歯科用組成物が使用されている。
特開2016−30752号公報には、フィラー、モノマー及び重合開始剤を含む歯科用複合材料用組成物である歯科用組成物が記載されている。歯科用複合材料用組成物は、歯科用充填修復材料、インレー、クラウン、ブリッジなどの歯冠補綴材料、支台歯築造用材料などに使用される。
特表2006−512466号公報には、酸を含有している少なくとも1つの多官能性のモノマーと、非反応性の充填剤と、重合系と、水とを含んでいる重合可能な複合材料である、プライマーを必要としない自己接着性のレジンセメントである歯科用組成物が記載されている。レジンセメントは、生体硬組織の、特に天然歯牙のエナメル質や象牙質等の基体にセラミックス、コンポジットレジンまたは金属材料からなる歯科用補綴修復材を接着させる場合に、各被着体に対して接着性を付与するために用いられる。
特開平06−345614号公報には、アクリレート系単量体、有機充填材、及びα−アミノアセトフェノン系光開始剤を含有する義歯床用樹脂組成物である歯科用組成物が記載されている。義歯床用樹脂組成物は、暫間インレー、クラウン、ブリッジ、個歯トレーの製作や義歯床の補修に用いられる。
国際公開第2007/135742号公報には、(a)ホスホン酸基含有重合性単量体、(b)多価カルボン酸基含有重合性単量体、(c)水、(d)水溶性有機溶媒、及び、(e)重合触媒を含む歯質接着プライマーである歯科用組成物が記載されている。歯質接着プライマーは、生体硬組織(天然歯牙のエナメル質や象牙質)等に接着するために歯科分野で用いられる。
特開2015−168672号公報及び特開2014−55115号公報には、リン酸系モノマーを用いた歯科用プライマーである歯科用組成物が記載されている。歯科用プライマーは、コンポジットレジンを接着させるために、歯牙修復物が破折した面の改質に用いられる。
特開2008−201726号公報及び国際公開第2010/010901号には、リン酸から誘導される酸性基を含有する重合性単量体と、多価金属イオンとを配合した接着性組成物である歯科用組成物が開示されている。接着性組成物は、修復材料、歯冠材料、補綴材料、予防材料、支台築造材料、根管材料等の歯科用材料をセラミックス、樹脂、コンポジットレジン、グラスアイオノマーセメント、生体硬組織(天然歯牙のエナメル質や象牙質)等に接着するために歯科分野で用いられる。
特開2017−105716号公報には、リン酸エッチング処理を実施しない象牙質のみならず、リン酸エッチング処理を実施した象牙質に対する接着性に優れる自己接着性歯科用コンポジットレジンが開示されている。コンポジットレジンは、歯牙に発症したう蝕を除去して窩洞を形成後、レジン系充填修復材料を充填するコンポジットレジン修復で用いられる。
特開2016−30752号公報 特表2006−512466号公報 特開平06−345614号公報 国際公開第2007/135742号 特開2015−168672号公報 特開2014−55115号公報 特開2008−201726号公報 国際公開第2010/010901号
近年、歯科用組成物の使用範囲が拡大してきている。しかしながら従来の歯科用組成物は、口腔内のような高湿潤の状況である水分を含んだ環境下や、吸水した被接着体上での硬化性が悪いという欠点がある。そのため、口腔内の環境下のように水分が過剰にある状態でも十分な硬化性を発揮できる歯科用組成物の開発が望まれている。
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意研究した結果、特定の構造を有する(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含む歯科用組成物を提供することにより、この課題を解決するに至った。本発明は上記知見に基づくものである。
本発明の歯科用組成物は、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含むものである。
Figure 2021054795
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、互いに同じでも異なってもよい。R2は、炭素数2〜6のアルキル基であり、互いに同じでも異なってもよい。)
本発明によれば、口腔内の環境下のように水分が過剰にある状態でも十分な硬化性を発揮できる歯科用組成物を提供することができる。
本発明の歯科用組成物は、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含むものである。本発明の歯科用組成物に用いられる成分(a)は、硬化性、特に水の存在下における硬化性を向上させるための必須の成分であり、下記式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーであれば何等制限なく用いることができる。
Figure 2021054795
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、互いに同じでも異なってもよい。R2は、炭素数2〜6のアルキル基であり、互いに同じでも異なってもよい。)
式(1)で示される成分(a)を具体的に例示すると、下記式(2)及び(8)で示されるものがある。
Figure 2021054795
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、互いに同じでも異なってもよい。)
Figure 2021054795
(式中、Rは水素原子である。)
本発明の歯科用組成物は、成分(a)が上記式(2)で示されるものであることが好ましく、上記式(8)で示されるものであることがより好ましい。本発明の歯科用組成物は、(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーとして、2官能以下の(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含まないことが好ましく、3官能以下の(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含まないことがより好ましく、上記式(1)で示されず、かつ、(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含まないことが最も好ましい。
本発明の歯科用組成物は、以下の条件(A)〜条件(E)のいずれかを満たすことが好ましい。
条件(A):成分(c):成分(a)以外のモノマーを含み、成分(a)及び成分(c)の合計量における成分(a)の割合が、0.1〜20重量%の範囲である。
条件(B):成分(h):ラジカル重合性モノマーを含み、成分(h)100重量部に対して、成分(a)を0.1〜20重量部含む。
条件(C):成分(f):重合触媒を含み、成分(a)及び成分(f)を除く歯科用組成物の成分の合計100重量部に対して、0.1〜20重量部の割合で含む。
条件(D):成分(p):有機溶媒、成分(g):シランカップリング剤、及び、成分(q):酸無水物及び/または弱酸性化合物を含む。
条件(E):成分(a)を、0.1〜20重量%の範囲で含む。
本発明の歯科用組成物は、種々の用途に用いることができ、例えば、歯科用複合材料用組成物、レジンセメント、義歯修復材料、歯質接着プライマー、歯科用プライマー、歯科用接着性組成物、歯質接着性組成物、歯科用接着性レジンセメント、自己接着性歯科用コンポジットレジン及び接着性組成物として使用することができる。
[歯科用複合材料用組成物]
本発明の歯科用組成物は、例えば歯科用複合材料用組成物とすることができる。歯科用複合材料用組成物は、一般に歯科用コンポジットレジンと呼ばれ、齲触等による歯牙欠損部の直接修復材料、インレー、クラウン、ブリッジなどの歯冠補綴修復材料、歯冠欠損部への支台歯築造材料など様々な用途に利用されている。
歯科用コンポジットレジンのような歯科用複合材料用組成物からなる複合材料は、フィラーとモノマーとを混合してペースト状に製造され、そのペースト状の複合材料は、包装容器に充填した状態で使用者である歯科医師や技工士に提供される。歯科用複合材料用組成物には、基本的にフィラーとモノマーを適した配合量で混合してペースト状の複合材料を製造し、その後包装容器に複合材料を充填している。複合材料の使用用途により不透明化剤や顔料などを配合することがある。歯科用複合材料用組成物からなる複合材料は、口腔内の修復物を修復するために用いられることが多く、口腔内の水の影響を受ける環境下で使用されることが多い材料である。
近年、歯科用コンポジットレジンのような歯科用複合材料用組成物からなる複合材料の使用範囲が拡大してきている。しかしながら従来の歯科用コンポジッ卜レジンは、口腔内のような高湿潤の状況である水分を含んだ環境下での硬化性は悪いという欠点がある。そのため、口腔内の環境下のように水分が過剰にある状態でも十分な硬化性を発揮できる歯科用コンポジットレジンのような歯科用複合材料の開発が望まれている。
歯科用複合材料用組成物の場合における本発明の歯科用組成物は、例えば、
成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー
成分(b):フィラー、
成分(c):成分(a)以外のモノマー、及び、
成分(d):重合開始剤をさらに含み、
成分(a)及び成分(c)の合計量における成分(a)の割合が、0.1〜20重量%の範囲である歯科用組成物とすることができる。
即ち、歯科用複合材料用組成物の場合における本発明の歯科用組成物は、フィラー、モノマー、及び、重合開始剤を含む歯科用複合材料用組成物であって、モノマーは、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含み、モノマー(の全量)における成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーの割合が、0.1〜20重量%の範囲である歯科用組成物である。好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは2〜10重量%の割合で含まれる。
この場合、成分(e):微粒子フィラーを更に含むことが好ましい。
本発明の歯科用組成物は、口腔内の環境下のように水分を含んだ過剰にある状態でも十分な硬化性を発揮できる歯科用コンポジットレジンのような歯科用複合材料を提供することができる。
[レジンセメント]
本発明の歯科用組成物は、例えばレジンセメントとすることができる。レジンセメントは、審美性を有する歯科用補綴修復材の接着用としての要望が高く、有機質、無機質及びまたは有機無機複合材料からなる充填剤と重合性モノマーやオリゴマーからなり、高い材料強度を達成するため、該フィラーの充填率は、およそ50重量%以上である。また、光の到達しない部位においても重合硬化するため、光重合に加えて、化学重合機能を有するデュアルキュアー型が主流となっている。
齲蝕等により比較的大きな損傷を受けた歯の修復には、セラミックス、コンポジットレジンまたは金属材料からなるクラウン、ブリッジ、インレーまたはアンレー等を、レジンセメントを用いて接着させる手法が一般的である。この時、レジンセメントの歯の硬組織への接着性を強固にするため、いわゆるプライマーと称される前処理材が用いられる。このレジンセメントには十分な接着力とその材料強度が要求される。さもないと過酷な口腔環境下での長期使用により当該修復物が脱落に至る可能性があるのみならず、レジンセメントと歯質の界面で間隙を生じ、そこから細菌が侵入して歯髄に悪影響を与えるおそれがあるためである。
歯の硬組織はエナメル質と象牙質からなり、臨床的には双方へのレジンセメントの接着が要求される。従来、接着性の向上を目的として、レジンセメントの適用に先立ち歯質の表面を前処理するプライマーが用いられてきた。このようなプライマーの働きは、歯の表面を脱灰し、微小な粗造面へ、レジンセメントが浸入することを容易にする。その後、レジンセメントが化学重合や光重合により硬化するという接着機構が考えられる。
一方、レジンセメントは従来、粉液タイプであったが、練和操作の煩雑さを回避するため、予めペースト化し、その2形態を練和するレジンセメントの要求が高まっている。このようなペーストとペーストを練和する操作は粉液練和と比較し、練和時間の短縮や術者の個人差が少ないため、臨床家にとって好ましい形態といえる。さらに、このようなレジンセメントは、歯科用合金などの光透過性の低い補綴修復材料に加え歯科用陶材などの光透過性に富む補綴修復材料にも用いることが出来るよう、光重合に加えて化学重合による、すなわちデュアルキュアーの重合硬化機能を有することが望まれる。
しかしながら、レジンセメントでの接着に先立ち、歯質、セラミックス、コンポジットレジン及び金属の各種被着体に、予め、各々の被着体専用のプライマーで処理しなければならなかった。臨床術式上、かかる種々の被着体に対しても、プライマー処理を必要としない、簡単な接着操作が望まれる。
近年、歯科用レジンセメントの使用範囲が拡大してきている。しかしながら従来の歯科用レジンセメントは、口腔内のような水分を含んだ環境下や、吸水した被接着体上での硬化性は悪く、そのため十分な接着性が得られないという欠点がある。そのため、吸水した被接着体上や、水分が過剰にある状態でもエナメル質及び象牙質の双方の歯質、ジルコニアやアルミナなどのセラミックス、陶材、金属など性質を異にするさまざまな被着体に対して、プライマーで前処理することなく、臨床上許容できる接着性を有する歯科用レジンセメントの開発が望まれている。
レジンセメントの場合における本発明の歯科用組成物は、例えば、
成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー
成分(b):フィラー、
成分(f):重合触媒
成分(g):シランカップリング剤、
成分(h):ラジカル重合性モノマー、及び、
成分(i):酸性基含有モノマーをさらに含み、
成分(h)100重量部に対して、成分(a)を0.1〜20重量部含む歯科用組成物とすることができる。
即ち、レジンセメントの場合における本発明の歯科用組成物は、フィラー、重合触媒、シランカップリング剤、ラジカル重合性モノマー、及び、酸性基含有モノマーを含む歯科用レジンセメントであって、ラジカル重合性モノマー100重量部に対して、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを0.1〜20重量部更に含む歯科用組成物である。
本発明の歯科用組成物は、被着体に特有のプライマーを使用することなく、吸水した試験片や、水分が過剰にある状態でもエナメル質や象牙質などの歯質や歯科用のセラミックス(陶材)、コンポジットレジン及び金属に対して十分な接着性を有する歯科用レジンセメントを提供することができる。
[義歯修復材料]
本発明の歯科用組成物は、例えば義歯修復材料とすることができる。義歯修復材料には、触媒を(メタ)アクリル重合体の粉材とモノマーの液材に分けて配合し、粉材と液材を練和することで重合が開始され硬化物を得る歯科用粉液型アクリル材料がある。しかしながら従来用いられていた歯科用粉液型アクリル材料のような義歯修復材料の硬化物は、重合体の曲げ強さが不十分であり、修復物への充填性においても、満足できるものではなかった。
また、従来の歯科用粉液型アクリル材料のような義歯修復材料の練和物を、筆を用いて修復物に充填した場合、義歯修復材料の練和物が修復物から離れ、筆に付着してくることが多かった。更に、口腔内に装着された義歯床は吸水しており、このような義歯床を補修する場合、義歯修復材料と義歯床との濡れ性が不十分となり、補修した部分が剥離することが多かった。
筆を用いて義歯修復材料の練和物を修復物に充填した場合、筆離れが良く容易に修復物に充填でき、口腔内のような水分を含んだ環境下や、吸水した補綴物上でも義歯修復材料の練和物の硬化体が優れた曲げ特性を維持できる義歯修復材料が求められていた。更に義歯修復材料を練和した後から、修復物への充填や歯冠の補修を完了するまでに必要な操作時間を確保しつつ、充填や補修が終了すると急激に硬化が進行する義歯修復材料が求められていた。
歯義歯修復材料の場合における本発明の歯科用組成物は、例えば、
成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー
成分(c):成分(a)以外のモノマー、
成分(j):(メタ)アクリル酸(共)重合体、及び、
成分(f):重合触媒をさらに含み、
成分(a)及び成分(c)の合計量における成分(a)の割合が、0.1〜20重量%の範囲であり、
成分(f)が、バルビツール酸誘導体とハロゲンイオン形成化合物との組み合わせ、及び、有機過酸化物とアミン化合物との組み合わせの少なくとも一方を含む歯科用組成物である。
即ち、歯義歯修復材料の場合における本発明の歯科用組成物は、モノマー、(メタ)アクリル酸(共)重合体、及び重合触媒を含む義歯修復材料であって、モノマーは成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含み、モノマーにおける成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーの割合が、0.1〜20重量%の範囲であり、重合触媒が、バルビツール酸誘導体とハロゲンイオン形成化合物との組み合わせ、及び、有機過酸化物とアミン化合物との組み合わせの少なくとも一方を含む歯科用組成物である。好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは2〜10重量%の範囲である。
この場合、成分(f)が、1-シクロヘキシル-5-プロピルバルビツール酸1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸及びトリオクチルメチルアンモニウムクロライドの組み合わせであることが好ましい。
この場合、成分(f)が、有機金属化合物をさらに含むことが好ましい。
この場合、液材と粉材を練和して用いる粉液型であって、液材に、成分(a)、成分(c)、及び、トリオクチルメチルアンモニウムクロライドを含み、粉材に、成分(j)、及び、1-シクロヘキシル-5-プロピルバルビツール酸を含むことが好ましい。
この場合、粉材は成分(b):フィラーをさらに含むことが好ましい。
本発明の歯科用組成物は、筆離れがよく、容易に修復物に充填できる。また、適切に歯科治療を施すことのできる時間を確保し、口腔内のような水分を含んだ環境下や、吸水した被接着体上でもその練和物の硬化体が優れた曲げ特性を維持でき、硬化後は硬化性に優れる為に、研磨などの最終仕上げを容易に実施することができる義歯修復材料の練和物を提供できる。
口腔内での作業である暫間インレー、クラウン、ブリッジの作製や補修は湿潤状態での作業となるが、そのような環境下で製作された補綴物であっても、本発明の歯科用組成物は、優れた硬化性を示し、かつ、物性の低下が生じにくい義歯修復材料を提供できる。また、本発明の歯科用組成物は、変色が発生せず、曲げ強度、圧縮強度の低下が軽減される義歯修復材料を提供できる。
[歯質接着プライマー]
本発明の歯科用組成物は、例えば歯質接着プライマーとすることができる。コンポジットレジンは長期的な耐久性や機械的特性が飛躍的に向上し、さらにフッ素徐放性やX線造影性等の特性も有してきたことから、う蝕の発症により歯質に欠損が生じた場合や歯冠修復物の破折や脱落等が生じた場合における歯質の機能的・審美的回復にコンポジットレジンが使用されるようになってきた。また、このコンポジットレジンは歯面コーティング材、フィーシャーシーラント、矯正用接着材、レジンコア材等の用途にまで使用が拡大してきている。しかし、これらのコンポジットレジン自体は歯質だけでなく、セラミックスや金属に対しても接着性を有していないことから、種々の接着材を併用することが必須となっている。特に歯質に対してはヒドロキシアパタイト等の無機成分を主成分とするエナメル質とコラーゲン等の有機成分を主成分とする象牙質の両方に対して優れた接着性を有することが接着材に求められてきている。
近年プライマーとボンディング材を組み合わせることにより、それらの接着層を十分硬化させて歯質接着性を向上させる数々の提案がなされている。
しかし、プライマー組成物の構成成分に起因した低い硬化性は根本的に改善できておらず、そのためエナメル質及び象牙質の両者に対する接着性と共に、その接着耐久性においても不十分な点が認められていた。
歯質接着プライマーを適用する際には防湿が重要であり、防湿しにくい症例においては、水分の影響により接着不良を起こすリスクが懸念される。
環境の温度や溶液の酸性度等により構成成分の加水分解による劣化や変質を受けにくい1液型の包装形態も可能な優れた貯蔵安定性を損なうことなく、水分が過剰にある状態でも十分な硬化性を発揮して、エナメル質及び象牙質に強固に接着する接着性と過酷な口腔内環境下においても耐えうる接着耐久性を発現させることができる歯質接着プライマーの開発が望まれている。
歯質接着プライマーの場合における本発明の歯科用組成物は、例えば、
成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー
成分(k):酸基含有モノマー、
成分(l):水、
成分(m):水溶性有機溶媒、及び、
成分(f):重合触媒をさらに含み、
成分(a)を、成分(a)及び成分(f)を除く歯科用組成物の成分の合計100重量部に対して、0.1〜20重量部の割合で含む歯科用組成物である。好ましくは1〜15重量部、さらに好ましくは2〜10重量部の範囲である。
即ち、歯質接着プライマーの場合における本発明の歯科用組成物は、酸基含有モノマー、水、水溶性有機溶媒、重合触媒、及び、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含み、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを、成分(a)及び成分(f)を除く歯質接着プライマーの成分の合計100重量部に対して、0.1〜20重量部の割合で含む歯科用組成物である。
この場合、成分(k)が成分(n):無機酸基含有モノマー、及び、成分(o):有機酸基含有モノマーを含み、成分(n)がリン及び/または硫黄を含むことが好ましい。
この場合、成分(k)が成分(n):無機酸基含有モノマー、及び、成分(o):有機酸基含有モノマーを含み、成分(o)がカルボン酸基含有モノマーであることが好ましい。
本発明の歯科用組成物は、環境の温度や溶液の酸性度等により構成成分の加水分解による劣化や変質を受けにくい1液型の包装形態も可能な優れた貯蔵安定性有を損なうことなく、水分が過剰にある状態における硬化性を向上させて、エナメル質及び象牙質に強固に接着する接着性と過酷な口腔内環境下においても耐えうる接着耐久性を発現させる歯質接着プライマーを提供することができる。
[歯科用プライマー]
本発明の歯科用組成物は、例えば歯科用プライマーとすることができる。近年、CADCAM技術を用いた切削加工により無機焼成体から作製された歯牙修復物を口腔内に装着する歯冠修復技法が多用されている。
無機焼成体は、ブロックやディスク形状の成形物で供給され、それをCADCAM技術により切削加工してクラウンやインレー、オンレイなどの歯牙修復物が作製される。切削された歯牙修復物は、口腔内の欠損歯牙に接着することで、口腔機能を回復させる。
また、口腔内を修復した歯牙修復物が破損した場合に、新たに歯牙修復物を作製して再修復を行う、または破折した面に接着材を用いてコンポジットなどで補修を行うこともできる。
この補修を行う場合においては、歯牙修復物が破折した面にコンポジットレジンを接着させることが必要となるため、歯牙修復物が破折した面を改質する歯科用プライマーが求められていた。
従来から無機焼成体を切削加工して作製された歯牙修復物は、その表面をシランカップリング剤を含む歯科用プライマーで表面改質を行い、セメントや接着材を用いて口腔内の修復する部位に接着させていた。しかし、シランカップリング剤を含むプライマーは、シランカップリング剤を活性化して効率良く歯牙修復物の表面を改質するために、使用前に酸性水溶液と混和する必要があった。これはシランカップリング剤が酸性成分との共存下においては安定な状態で存在することができず、保存安定性や棚寿命安定性が悪くなり、その結果歯牙修復物の接着性能が低下する状況にあるためである。そのためにシランカップリング剤と酸性成分は、それぞれ別々の包装形態に含んでおく必要があった。また酸性成分を含んでいない状態であってもシランカップリング剤を含む歯科用プライマーは、経時的に歯牙修復物の接着性能が低下する等の保存安定性や棚寿命安定性に問題があった。また、歯科用プライマーを適用する際には防湿が重要であり、防湿しにくい症例においては、水分の影響により接着不良を起こすリスクが懸念される。そこで吸水した被接着体上や水分が過剰にある状態でも十分な硬化性を発揮し、さらに優れた保存安定性や棚寿命安定性を有し、且つ使用前に酸性成分と混和することがない操作性に優れた歯牙修復物の表面を改質することができる歯科用プライマーが求められていた。
歯科用プライマーの場合における本発明の歯科用組成物は、例えば、
成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー
成分(p):有機溶媒、
成分(g):シランカップリング剤、及び、
成分(q):酸無水物及び/または弱酸性化合物を含む歯科用組成物である。
即ち、歯科用プライマーの場合における本発明の歯科用組成物は、歯牙修復物の表面を改質する為の歯科用プライマーであって、有機溶媒、シランカップリング剤、酸無水物及び/または弱酸性化合物、及び、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含む歯科用組成物である。
本明細書において「弱酸性化合物」とは、pH2以上の酸性化合物を指すものである。
この場合、成分(a)を、0.1〜20重量%の範囲で含むことが好ましい。より好ましくは1〜15重量%であり、最も好ましくは2〜10重量%である。
この場合、成分(q)が、カルボン酸、硫酸、硝酸及び/またはリン酸の酸無水物を含むことが好ましい。
この場合、成分(q)としてカルボン酸の酸無水物のみを含むことが好ましい。
この場合、成分(l):水を含まないことが好ましい。
この場合、強酸性化合物を含まないことが好ましい。本明細書において「強酸性化合物」とは、pH2未満の酸性化合物を指すものである。
この場合、歯科用プライマーと接着材のセットが提供される。この場合、接着材は重合性単量体、及び重合触媒を含むことが好ましい。接着材が充填材を含むことが好ましい。接着材が充填材を含む場合は一般的にはレジンセメントという。
この場合、歯科用プライマーと歯牙修復材とのセットが提供される。歯牙修復材は重合性単量体、重合触媒、及び充填材を含むことが好ましい。
この場合、重合性単量体、重合触媒及び/または充填剤が、接着材にのみ、または歯牙修復材にのみ含まれることが好ましい。
この場合、重合触媒を含まないことが好ましい。この場合においては、接着体や被接着体の表面を改質することが重要であるためである。
この場合、無機焼成体から切削加工された歯牙修復物の表面を改質する為の歯科用プライマーであって、成分(p):有機溶媒、成分(g):シランカップリング剤、成分(q):酸無水物及び/または弱酸性化合物、及び、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーのみからなることが好ましい。
本発明の歯科用組成物を用いた歯科用プライマーは、歯牙修復物の表面を改質でき、本発明の歯科用組成物を用いた歯科用プライマーで改質された歯牙修復物は、重合性単量体を含んだ接着材を介して、コンポジットレジンと接着することができる。特に本発明の歯科用組成物を用いた歯科用プライマーで改質された歯牙修復物は、吸水した被接着体上や、水分が過剰にある状態でも十分な硬化性を発揮し、接着耐久性に優れ、口腔内環境下でも接着を長期間維持することができる。更に本発明の歯科用組成物を用いた歯科用プライマーでは、棚寿命を延ばすことができた。
近年、CADCAM技術が歯科分野に導入され、無機焼成体であるブロックやディスクから切削加工により歯牙修復物を作製し、それを口腔内に適用する修復技法が臨床で応用されてきている。これらの歯牙修復物の表面は、従来から用いられているシランカップリング剤を含む歯科用プライマーでは十分に改質することができず、歯科用接着レジンセメントと組み合わせても十分な歯牙修復物の接着性が得られなかった。しかし、本発明の歯科用組成物を用いた歯科用プライマーを用いることで吸水した被接着体上や、水分が過剰にある状態でも十分な硬化性を発揮し、歯牙修復物の接着性が向上し、接着耐久性も向上した。
具体的には本発明の歯科用組成物を用いた歯科用プライマーを無機焼成体から切削加工された歯牙修復物の内面に塗布後、接着性レジンセメントの術式に合わせて接着作業を進めることで、吸水した被接着体上や、水分が過剰にある状態でも十分な硬化性を発揮し、接着耐久性に優れた接着が可能となった。
また、同じ歯牙修復物である硬化したコンポジットレジンの歯牙修復物の切削面は、コンポジットレジン中の無機フィラーが表面に露出していることから、無機焼成体からなる歯牙修復物と同様の扱いで、無機焼成体からなる歯牙修復物における効果を得ることができる。具体的には、本発明の歯科用組成物を用いた歯科用プライマーをコンポジットレジンの切削面に塗布後、接着材やコンポジットレジンの術式に合わせて補修作業を進めることで、吸水した被接着体上や、水分が過剰にある状態でも十分な硬化性を発揮し、接着耐久性に優れた接着が可能となる。
これらの接着効果ばかりでなく、本発明の歯科用組成物を用いた歯科用プライマーは長期の棚寿命期間を有し、接着安定性にも優れている。本発明の歯科用組成物を用いた歯科用プライマーは、陶材においても同様の効果を有する。
[歯科用接着性組成物]
本発明の歯科用組成物は、例えば歯科用接着性組成物とすることができる。近年、コンポジットレジンは長期的な耐久性や機械的特性が飛躍的に向上し、さらにフッ素徐放性やX線造影性等の特性も有してきたことから、う蝕の発症により歯質に欠損が生じた場合や歯冠修復物の破折や脱落等が生じた場合における歯質の機能的・審美的回復にコンポジットレジンが使用されるようになってきた。また、このコンポジットレジンは歯面コーティング材、フィーシャーシーラント、矯正用接着材、レジンコア材等の用途にまで使用が拡大してきている。しかし、これらのコンポジットレジン自体は歯質だけでなく、セラミックスや金属に対しても接着性を有していないことから、種々の接着材を併用することが必須となっている。特に歯質に対してはヒドロキシアパタイト等の無機成分を主成分とするエナメル質とコラーゲン等の有機成分を主成分とする象牙質の両方に対して優れた接着性を有することが接着材に求められてきている。さらに最近では、セラミックス、金属、樹脂、コンポジットレジン、グラスアイオノマーセメント等に対しても強固に接着することが課題となってきている。
従来の接着材においては、歯質表面をリン酸等の強力なエッチング材によって歯面処理を施した後、ボンディング材を塗布して歯質とコンポジットレジンを接着してきた。
また酸エッチング材を用いた接着方法は、エナメル質に対しては、酸エッチング材の脱灰による粗造面の形成とボンディング材の十分な浸透及び硬化に基づくマクロな機械的嵌合により接着性を示していた。一方、象牙質に対しては、酸エッチング材の脱灰によりスポンジ状のコラーゲン繊維が露出するために、ボンディング材のコラーゲン繊維への浸透が十分でなく、十分な接着性を得ることが困難であったが、象牙質への接着を向上させる種々に方法も開発されている。
しかし、接着材の物性などが劣るために、更なる実質的な強度を得ることができなかった。
近年、歯科用コンポジットレジンのような歯科用複合材料の使用範囲が拡大してきている。しかしながら従来の歯科用接着性組成物は、口腔内のような水分を含んだ環境下での硬化性は悪いという欠点がある。そのため、水分がある状態でも十分な硬化性を発揮して、エナメル質及び象牙質に強固に接着する接着性を発現させることができる歯科用接着性組成物の開発が望まれている。
歯科用接着性組成物の場合における本発明の歯科用組成物は、例えば、
成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー
成分(c):成分(a)以外のモノマー、及び、
成分(f):重合触媒をさらに含み、
成分(a)を、0.1〜20重量%の範囲で含む歯科用組成物である。
即ち、歯質接着性組成物の場合における本発明の歯科用組成物は、接着成分を配合したプライマーを用いる歯科用接着性組成物であって、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー、モノマー、重合触媒、を含み、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーが、0.1〜20重量%の割合で含まれる歯科用組成物である。好ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは2〜10重量%の割合で含まれる。20重量%を越えると他のモノマーの重合を阻害するために、接着特性に悪影響を与える恐れがある。一方、0.1重量%以下になると歯質に対する接着性において効果が認められない。
この場合、成分(r):親水性モノマー、及び、成分(s):疎水性モノマーをさらに含むことが好ましい。
この場合、水及び/または有機溶媒を含まないことが好ましい。
本発明の歯科用組成物は、水分が過剰にある状態でも十分な硬化性を発揮して、エナメル質及び象牙質に強固に接着する接着性を発現させる歯科用接着性組成物を提供することができる。
[歯質接着性組成物]
本発明の歯科用組成物は、例えば歯質接着性組成物とすることができる。近年、コンポジットレジンは長期的な耐久性や機械的特性が飛躍的に向上し、さらにフッ素徐放性やX線造影性等の特性も有してきたことから、う蝕の発症により歯質に欠損が生じた場合や歯冠修復物の破折や脱落等が生じた場合における歯質の機能的・審美的回復にコンポジットレジンが使用されるようになってきた。また、このコンポジットレジンは歯面コーティング材、フィーシャーシーラント、矯正用接着材、レジンコア材等の用途にまで使用が拡大してきている。しかし、これらのコンポジットレジン自体は歯質だけでなく、セラミックスや金属に対しても接着性を有していないことから、種々の接着材を併用することが必須となっている。特に歯質に対してはヒドロキシアパタイト等の無機成分を主成分とするエナメル質とコラーゲン等の有機成分を主成分とする象牙質の両方に対して優れた接着性を有することが接着材に求められてきている。
従来の接着材においては、歯質表面をリン酸等の強力なエッチング材によって歯面処理を施した後、ボンディング材を塗布して歯質とコンポジットレジンを接着してきた。しかし、酸エッチング材による歯面処理方法は歯面に塗布した酸を水洗により十分に取り除くことが必要であり、さらにその後乾燥させることも必要である等、煩雑な操作ステップが欠点とされていた。
また酸エッチング材を用いた接着方法は、エナメル質に対しては、酸エッチング材の脱灰による粗造面の形成とボンディング材の十分な浸透及び硬化に基づくマクロな機械的嵌合により十分な接着性を示していた。一方、象牙質に対しては、酸エッチング材の脱灰によりスポンジ状のコラーゲン繊維が露出するために、ボンディング材のコラーゲン繊維への浸透が十分でなく、十分な接着性を得ることが困難であった。
近年、歯科用コンポジットレジンのような歯科用複合材料の使用範囲が拡大してきている。しかしながら従来の接着性組成物では、エナメル質及び象牙質等の天然歯牙の歯質のような水分含有量の多い生体硬組織上での硬化性が悪く、そのため水分含有量の多い生体硬組織への十分な接着性が得られないという欠点がある。そのため、水分含有量の多い歯質、特に象牙質に強固に接着する接着性を発現させることができる歯質接着性組成物の開発が望まれている。
歯質接着性組成物の場合における本発明の歯科用組成物は、例えば、
成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー
成分(i):酸性基含有モノマー
成分(t):成分(a)及び成分(i)以外のモノマー、
成分(l):水及び/または成分(p):有機溶媒、及び、
成分(f):重合触媒をさらに含み、
成分(a)を、0.1〜20重量%の範囲で含む歯科用組成物である。
即ち、歯質接着性組成物の場合における本発明の歯科用組成物は、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー、酸性基含有モノマー、モノマー、水及び/または有機溶媒、重合触媒、を含み、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーが、0.1〜20重量%の割合で含まれる歯科用組成物である。好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは2〜10重量%の割合で含まれる。20重量%を越えると他のモノマーの重合を阻害するために、接着特性に悪影響を与える恐れがある。一方、0.1重量%未満になると歯質に対する接着性において効果が認められない。
この場合、成分(t)が成分(r):親水性モノマー、及び、成分(s):疎水性モノマーを含むことが好ましい。
本発明の歯科用組成物は、水分含有量の多い歯質、口腔内のような水分を含んだ環境下、吸水した被接着体においても強固に接着する接着性を発現させる歯科用接着性レジンセメントを提供することができる。
[歯科用接着性レジンセメント]
本発明の歯科用組成物は、例えば歯科用接着性レジンセメントとすることができる。レジンセメントは、審美性を有する歯科用補綴修復材の接着用としての要望が高く、有機質、無機質及びまたは有機無機複合材料からなる充填剤と重合性モノマーやオリゴマーからなり、高い材料強度を達成するため、該フィラーの充填率は、およそ50重量%以上である。また、光の到達しない部位においても重合硬化するため、光重合に加えて、化学重合機能を有するデュアルキュアー型が主流となっている。
齲蝕等により比較的大きな損傷を受けた歯の修復には、セラミックス、コンポジットレジンまたは金属材料からなるクラウン、ブリッジ、インレーまたはアンレー等をレジンセメントを用いて接着させる手法が一般的である。この時、レジンセメントの歯の硬組織への接着性を強固にするため、いわゆるプライマーと称される前処理材が用いられる。このレジンセメントには十分な接着力とその材料強度が要求される。さもないと過酷な口腔環境下での長期使用により当該修復物が脱落に至る可能性があるのみならず、レジンセメントと歯質の界面で間隙を生じ、そこから細菌が侵入して歯髄に悪影響を与えるおそれがあるためである。
歯の硬組織はエナメル質と象牙質からなり、臨床的には双方へのレジンセメントの接着が要求される。従来、接着性の向上を目的として、レジンセメントの適用に先立ち歯質の表面を前処理するプライマーが用いられてきた。このようなプライマーの働きは、歯の表面を脱灰し、微小な粗造面へ、レジンセメントが浸入することを容易にする。その後、レジンセメントが化学重合や光重合により硬化するという接着機構が考えられる。
一方、レジンセメントは従来、粉液タイプであったが、練和操作の煩雑さを回避するため、予めペースト化し、その2形態を練和するレジンセメントの要求が高まっている。このようなペーストとペーストを練和する操作は粉液練和と比較し、練和時間の短縮や術者の個人差が少ないため、臨床家にとって好ましい形態といえる。さらに、このようなレジンセメントは、歯科用合金などの光透過性の低い補綴修復材料に加え歯科用陶材などの光透過性に富む補綴修復材料にも用いることが出来るよう、光重合に加えて化学重合による、すなわちデュアルキュアーの重合硬化機能を有することが望まれる。
しかしながら、レジンセメントでの接着に先立ち、歯質、セラミックス、コンポジットレジン及び金属の各種被着体に、予め、各々の被着体専用のプライマーで処理しなければならなかった。臨床術式上、かかる種々の被着体に対しても、プライマー処理を必要としない、簡単な接着操作が望まれる。
また近年、歯科用コンポジットレジンのような歯科用複合材料の使用範囲が拡大してきている。しかしながら従来の歯科用レジンセメントでは、エナメル質及び象牙質等の天然歯牙の歯質のような水分含有量の多い生体硬組織上、口腔内のような水分を含んだ環境下、吸水した被接着体上での硬化性が悪く、そのため十分な接着性が得られないという欠点がある。そのため、水分含有量の多い歯質、口腔内のような水分を含んだ環境下、吸水した被接着体においても強固に接着する接着性を発現させることができる歯科用接着性レジンセメントの開発が望まれている。
歯科用接着性レジンセメントの場合における本発明の歯科用組成物は、例えば、
成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー
成分(b):フィラー、
成分(i):酸性基含有モノマー、
成分(u):硫黄原子含有モノマー、
成分(g):シランカップリング剤、
成分(d):重合開始剤、及び、
成分(v):成分(a)、び成分(i)及び成分(u)以外のモノマーをさらに含み、
成分(a)を、0.1〜20重量%の範囲で含む歯科用組成物である。
即ち、歯科用接着性レジンセメントの場合における本発明の歯科用組成物は、モノマー、フィラー、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー、酸性基含有モノマー、硫黄原子含有モノマー、シランカップリング剤、及び、重合開始材を含有し、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーが、0.1〜20重量%の範囲で含まれる歯科用組成物である。好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは2〜10重量%の割合で含まれる。20重量%を越えると他のモノマーの重合を阻害するために、接着特性に悪影響を与える恐れがある。一方、0.1重量%未満になると歯質に対する接着性において効果が認められない。
本発明の歯科用組成物は、水分含有量の多い歯質、口腔内のような水分を含んだ環境下、吸水した被接着体においても強固に接着する接着性を発現させる歯科用接着性レジンセメントを提供することができる。
[自己接着性歯科用コンポジットレジン]
本発明の歯科用組成物は、例えば自己接着性歯科用コンポジットレジンとすることができる。歯科臨床では、歯牙に発症したう蝕を除去して窩洞を形成後、レジン系充填修復材料を充填するコンポジットレジン修復が広く一般的に用いられている。コンポジットレジン修復では、天然歯類似の審美的な状態に再現できること、また一回の通院のみで治療が完結し患者への負担が軽減できることなどが特徴として挙げられる。
レジン系充填修復材料自体には歯牙に対する接着性がないため、この材料を用いた修復においては、歯科用接着システムの適用が必須となっている。歯科用接着システムは、歯牙のエナメル質及び象牙質に作用してレジン系充填修復材料と歯牙との間に介在することにより安定的にそれら両者を接着させる事ができる。現在市販されている歯科用接着システムには、歯牙の前処理としてリン酸を用いたエッチング処理を伴うもの(トータルエッチング型歯科用接着システム)、酸性基を有する重合性単量体を含んだ歯質用プライマーによる水洗不要の歯牙へのセルフエッチング処理を伴うもの(セルフエッチング型歯科用接着システム)の2種類がある。
近年、歯科用コンポジットレジンのような歯科用複合材料の使用範囲が拡大している。しかしながら従来の歯科用コンポジッ卜レジンは、エナメル質及び象牙質等の天然歯牙の歯質のような水分含有量の多い生体硬組織上での硬化性が悪く、そのため水分含有量の多い生体硬組織への十分な自己接着性が得られないという欠点がある。そのため、水分含有量の多い歯質、特に象牙質に強固に接着する自己接着性を発現させることができる歯科用コンポジッ卜レジンの開発が望まれている。
自己接着性歯科用コンポジットレジンの場合における本発明の歯科用組成物は、例えば、
成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー
成分(i):酸性基含有モノマー、
成分(w):光重合触媒、
成分(b):フィラーをさらに含み、
成分(a)を、0.1〜20重量%の範囲で含む歯科用組成物である。
即ち、自己接着性歯科用コンポジットレジンの場合における本発明の歯科用組成物は、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー、酸性基含有モノマー、光重合触媒、及び、フィラー、を含有し、成分(a)が、0.1〜20重量%の範囲で含まれる歯科用組成物である。好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは2〜10重量%の割合で含まれる。20重量%を越えると他のモノマーの重合を阻害するために、接着特性に悪影響を与える恐れがある。一方、0.1重量%以下になると歯質に対する接着性において効果が認められない。
この場合、成分(r):親水性モノマーをさらに含むことが好ましい。
この場合、成分(s):疎水性モノマーをさらに含むことが好ましい。
本発明の歯科用組成物は、水分含有量の多い歯質、特に象牙質に、過度の乾燥を行わなくても、強固に接着する自己接着性を発現させる自己接着性歯科用コンポジットレジンを提供することができる。
[接着性組成物]
本発明の歯科用組成物は、例えば接着性組成物とすることができる。コンポジットレジンは長期的な耐久性や機械的特性が飛躍的に向上し、さらにフッ素徐放性やX線造影性等の特性も有してきたことから、う蝕の発症により歯質に欠損が生じた場合や歯冠修復物の破折や脱落等が生じた場合における歯質の機能的・審美的回復にコンポジットレジンが使用されるようになってきた。また、このコンポジットレジンは歯面コーティング材、フィーシャーシーラント、矯正用接着材、レジンコア材等の用途にまで使用が拡大してきている。しかし、これらのコンポジットレジン自体は歯質だけでなく、セラミックスに対しても接着性を有していないことから、種々の接着材を併用することが必須となっている。特に最近では、セラミックス、樹脂、コンポジットレジン、グラスアイオノマーセメント等に対しても強固に接着し、かつ接着耐久性を有することが課題となってきている。
近年、歯科用コンポジットレジンのような歯科用複合材料の使用範囲が拡大してきている。しかしながら従来の接着性組成物は、口腔内のような水分を含んだ環境下や、吸水した被接着体上での硬化性は悪く、そのため十分な接着性が得られないという欠点がある。そのため、口腔内のような水分を含んだ環境下や、吸水した被接着体上でも、十分な硬化性を発揮して、強固な接着性と過酷な口腔内環境下においても耐えうる接着耐久性を発現させることができる接着性組成物の開発が望まれている。
接着性組成物の場合における本発明の歯科用組成物は、例えば、
成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー
成分(r):親水性モノマー
成分(s):疎水性モノマー
成分(f):重合触媒
成分(q):酸無水物及び/または弱酸性化合物、及び、
成分(g):シランカップリング剤をさらに含み、
成分(a)を、0.1〜20重量%の範囲で含む歯科用組成物である。
即ち、歯質接着プライマーの場合における本発明の歯科用組成物は、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー、親水性モノマー、疎水性モノマー、重合触媒、酸無水物及び/または弱酸性化合物、及び、シランカップリング剤を含み、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーが、0.1〜20重量%の割合で含まれる歯科用組成物である。好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは2〜10重量%の割合で含まれる。20重量%を越えると他のモノマーの重合を阻害するために、接着特性に悪影響を与える恐れがある。一方、0.1重量%以下になると歯質に対する接着性において効果が認められない。
この場合、成分(l):水及び/または成分(p):有機溶媒を含まないことが好ましい。
本発明の歯科用組成物は、口腔内のような水分を含んだ環境下や、吸水した被接着体上でも、十分な硬化性を発揮して、強固な接着性と過酷な口腔内環境下においても耐えうる接着耐久性を発現させることができるを発現させる接着性組成物を提供することができる。
次に本発明の歯科用組成物に含まれうる各種の成分について説明する。
本発明の歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合に用いられる成分(b):フィラーは特に限定されず、公知のフィラー、例えば無機フィラー及び/または有機フィラー及び/または有機−無機複合フィラー等が何等制限なく用いることができる。これらのフィラーの形状は球状、塊状、針状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の粒子形状でよく特に限定されない。よりペーストの安定性を得るためには、フィラーは球状であることが好ましい。フィラーの球状を示す円形度は、0.7〜1.0の範囲であり、より好ましくは0.9〜1.0の範囲、さらに好ましくは0.95〜1.00の範囲にある。
円形度の算出方法は光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(以下、SEMという)の撮影像を画像解析装置で処理することにより求めることができる。画像処理するサンプル数はフィラー50個以上とし、フィラーの面積とフィラーの周囲長から算出する。算出する計算式は円形度e=(4・π・S)/(L)であり、画像処理で得られたフィラーの面積S、及びシラン処理前のフィラーの周囲長Lから算出する。
無機フィラーとして具体的に例示すれば、石英、無定形シリカ、アルミニウムシリケート、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、種々のガラス類(溶融法によるガラス、ゾルーゲル法による合成ガラス、気相反応により生成したガラスなどを含む)、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、チッ化ケイ素、チッ化アルミニウム、チッ化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、ゼオライト等が挙げられる。これらの中でもナトリウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン等の重金属及び/またはフッ素を含むアルミノシリケートガラス、ボロシリケート、アルミノボレート、ボロアルミノシリケートガラス等が好ましい。これら無機フィラーの平均粒径は特に制限はないが、0.5〜10μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.7〜5μmの範囲である。
また、気相法により生成したアエロジルまたはゾル−ゲル反応等の溶液中から生成したシリカ−ジルコニア酸化物粒子等の超微粒子無機フィラーを成分(e):微粒子フィラーとして用いることができる。また、それらの超微粒子を凝集させた凝集性無機フィラー等を用いても何等問題はない。ここで、凝集性無機フィラーが複合材料混練時に解砕され平均粒径が1nm〜300nmとなる場合は超微粒子無機フィラーに分類され、平均粒径が1nm〜300nmに解砕されない場合は無機フィラーに分類される。
超微粒子無機フィラーは平均粒径が1nm〜300nmである。超微粒子無機フィラーは、限定するものではないが、コロイダルシリカ(商品名:アエロジルR972、アエロジル200、アエロジル380、アエロジル50、日本アエロジル社製、5〜50nm)が好ましい。
例えば、公知の無機質フィラーであるフルオロアルミノシリケートガラスフィラーは公知のガラス製造法により製造することができるが、好ましくは溶融法またはゾル−ゲル法により製造する。
溶融法としては、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硅酸アルミニウム、ムライト、硅酸カルシウム、硅酸ストロンチウム、硅酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム、フッ化ストロンチウム、リン酸アルミニウム、リン酸ナトリウム等から選択されたガラス原料を1000℃以上の高温で溶解し冷却後、粉砕して製造することができる。
本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合に使用し得るフルオロアルミノシリケートガラスとして好ましい組成は次のものである:
Figure 2021054795
これらのガラス中に含まれるフッ素量は好ましくは5から60モル%である。
上記組成物においては酸化カルシウムとしているが、いずれのアルカリ土類金属の酸化物も使用できる。アルカリ土類金属の少なくとも一部はランタン、ガドリニウムまたはイッテルビウム等のランタニド金属で置き換えてもよい。さらに、これらのガラスのうち、一部またはすべてのアルミナをアルミニウム以外のIII族の金属で置き換えてもよい。同様にして、ガラス中のシリカの一部を酸化ジルコニウムまたは酸化チタニウムで置き換えてもよい。ガラスにストロンチウム、ランタン、ガドリニウム、イッテルビウムまたはジルコニウムを含有する場合、ガラスはX線不透過性となる。
また、ゾル−ゲル法としては、例えば、可溶性アルミニウム化合物と可溶性シリコン化合物とを含有する第1溶液を、II族金属の可溶性化合物を含有する第2溶液と反応させ、得られたゲルを熱乾燥または凍結乾燥により乾燥させて回収する方法が挙げられる。この方法を使用すると、フラックス剤のごとき通常のガラスの製造に用いられる添加剤の使用を避け、比較的低い温度を用いることができることになる。このため、今までより透明度の高いガラスが得られる。
また、有機金属類または無機塩のアルコール溶液のごとき他の化合物をゾルの段階で添加して2価または3価金属イオンを含むガラスを得てもよい。
また、ゲル化速度を速めるために、酸性または塩基性溶媒をこのゾル−ゲル反応混合物へ添加してもよい。この方法により比較的低温にて均質な耐火性ガラスが得られる。
このゾル−ゲル法は、特にガドリニウムを導入したガラスの製造及び以下の5成分の製造に特に適している:
−CaO−Al−SiO−F(式中XはX線不透過性物質の酸化物、例えばGdである)
このような5成分ガラスは製造するのが難しい。しかしながらゾル−ゲル法によればガラスを容易に製造することが可能となる。CaO源としてイソブチルアルコールとエタノール中のアルミニウム第2ブトキシド(Asb)、SiO源としてテトラエチルシリケート、F源として40%フッ化水素酸、Gd源としてエタノール易溶性のGd(NOまたはメタノール溶液と置換してもよい。
さらに、酸化カルシウムは50℃でエタノールに溶解させた無水Ca(NOと置換してもよい。これらの溶液は50℃でかきまぜながら混合する。これをその後70℃で還流してもよい。乾燥後、物質を柔らかいうちに粉砕し、その後400から500℃の温度で乾燥させる。これを必要なサイズとなるようさらに粉砕する。
また、有機フィラーとしては重合性基を有するモノマーを重合することによって得ることができ、その種類は特に限定されない。有機フィラーを具体的に例示すると、ポリメチルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ジビニルベンゼン等の不飽和芳香族類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;ブタジエン、イソプレン等の重合性基を有するモノマーを単独でまたは複数で(共)重合させたものが挙げられる。特に好ましくは、歯科分野で既に公知である後述の重合性基を有するモノマーを重合させたものである。有機フィラーの製造方法においても特に制限はなく、重合性基を有するモノマーの乳化重合、懸濁重合及び分散重合等のいずれの方法でもよく、また、予め生成した重合体バルクを粉砕する方法でも行なう事ができる。
また、有機重合体中に無機粒子を含有した有機−無機複合フィラーを用いることもできる。有機重合体中に含有させる無機粒子としては、特に制限はなく公知のものが使用でき、例えば上述した無機フィラー等が挙げられる。有機−無機複合フィラーの製造方法においても、特に制限はなく、いずれの方法を採用することもできる。例えば、無機粒子の表面を有機物でのマイクロカプセル化やグラフト化する方法及び無機粒子の表面に重合性官能基や重合性開始基を導入後ラジカル重合させる方法、予め生成した無機粒子を含む重合体バルクを粉砕する方法等が挙げられる。これらの無機、有機及び有機−無機複合フィラーはそれぞれ単独で、または数種を組み合わせて用いることもできる。
有機フィラーまたは有機−無機複合フィラーの平均粒径は1〜100μmの範囲が好ましい。より好ましくは3〜50μm、さらに好ましくは5〜30μmである。これらの無機、有機及び有機−無機複合フィラーはそれぞれ単独で、または数種を組み合わせて用いることもできる。
無機、有機及び有機−無機複合フィラー等のフィラーは公知の方法により、その粒子表面を表面処理して、歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物に用いることができる。例えば界面活性剤、脂肪酸、有機酸、無機酸、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ポリシロキサン等による表面処理が挙げられる。これらの表面処理法はレジン成分とフィラー表面の濡れ性を向上させ、歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物に優れた諸特性を付与する点で好ましく、その要求特性に応じて適宜表面処理を選択することができる。また、それらフィラーを多機能化する目的でフィラー表面を特殊な表面処理剤及び/または特殊な表面処理法により表面処理を行っても何等制限はない。
好ましくは成分(g):シランカップリング剤で処理するシラン処理工程を経て得られるシラン処理フィラーを用いることが好ましい。また、シラン処理フィラーを一定期間保存するシラン処理フィラー保存工程を経ることが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定するものではないが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが好適に用いられ、特に好ましくは、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザンが用いられる。
有機溶媒としては、揮発性の水溶性有機溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。これら有機溶媒は必要に応じ複数を混合して用いることも可能である。生体に対する毒性を考慮すると、エタノール、イソプロピルアルコール及びアセトンが好ましい。
成分(b):フィラーの歯科用複合材料用組成物の場合の歯科用組成物中に占める割合は複合材料に求める材料特性の要求に応じてそれらの充填量を任意に設定することができる。歯科分野で一般に用いられるシーラント材、ボンディング材、プライマー、歯面処理剤、オペーク材及びセメント等の低粘性材料においては、材料の要求特性として高い流動性が必要とされることから、充填量を比較的低く設定する必要がある。そのため、歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物全体に対し5.0〜80.0重量部の範囲が好ましく、より好ましくは30.0〜70.0重量部の範囲である。また、コンポジットレジン及び前層冠レジン等の高粘性材料においては、材料の要求特性として形態調整後の形崩れが起らない形態賦与性が必要とされることから、充填量を比較的高く設定する必要がある。そのため、歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物全成分に対し50.0〜98.0重量部の範囲が好ましく、より好ましくは75.0〜98.0重量部の範囲である。
本発明の歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合に用いられる成分(c):成分(a)以外のモノマーは、限定するものではないが、一般に歯科用複合材料用組成物に用いられる公知の単官能性及び/または多官能性のモノマーを含む。好ましいモノマーとしては、アクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を有するモノマーである。次に具体的なモノマーの名称を説明する。
(メタ)アクリル酸基含有モノマーの例としては、
単官能性モノマー(未架橋性モノマー):メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のシラン化合物類;2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等の窒素含有化合物等、
芳香族系二官能性モノマー(架橋性モノマー):2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン等、
脂肪族系二官能性モノマー(架橋性モノマー):2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等、
三官能性モノマー(架橋性モノマー):トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等、
四官能性モノマー(架橋性モノマー):ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ウレタン系モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を有するモノマーとメチルシクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルメチルベンゼン、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物との付加物から誘導される二官能性または三官能性以上のウレタン結合を有するジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明の歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合に用いられる成分(c):成分(a)以外のモノマーは、目的に応じて、上記(メタ)アクリレート系モノマー以外のモノマー、例えば分子内に少なくとも1個以上の重合性基を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーを用いてもよい。成分(c):成分(a)以外のモノマーは、酸性基やフルオロ基等の置換基を同一分子内に有していてもよい。成分(c):成分(a)以外のモノマーは、単一成分であってもよいし、複数のモノマーからなるモノマーの混合物であってもよい。また、モノマーの粘性が室温で極めて高い場合、または固体である場合は、当該モノマーを低粘度のモノマーと組み合わせ、モノマーの混合物として使用するのが好ましい。前記の組み合わせにおいて、モノマーは、2種類または3種類以上を用いてもよい。
成分(c):成分(a)以外のモノマーは、単官能性モノマーのみを含んでいてもよく、多官能性モノマーをさらに含んでいてもよい。好ましいモノマーは、二官能性モノマーの芳香族化合物及び二官能性モノマーの脂肪族化合物を含む。より好ましくは、2,2−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン(Bis−GMA)及びトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)を含む。
歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合において、成分(c):成分(a)以外のモノマーは、歯質または卑金属接着性を、歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物に付与するために、モノマーの一部または全部としてリン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基等の酸基を分子内に含有した成分(i):酸性基含有モノマーを含んでよい。また、貴金属接着を向上させるために、成分(c):成分(a)以外のモノマーは、硫黄原子を分子内に含有した成分(u):硫黄原子含有モノマーを含んでよい。
これらのリン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基等の酸基を分子内に含有若しくは硫黄原子を分子内に含有したモノマーは全モノマー100重量%中、0.5〜20重量%配合することが好ましい。
前述のモノマーとしては、
カルボン酸基含有モノマー:(メタ)アクリル酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸及びその無水物、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレエート、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、p−ビニル安息香酸等;
リン酸基含有モノマー:2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンフォスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンフォスフェート等;
スルホン酸基含有モノマー:2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシベンゼンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸等;ならびに
硫黄原子を含有する成分(u):硫黄原子含有モノマー:トリアジンチオール基を有する(メタ)アクリレート、メルカプト基を有する(メタ)アクリレート、ポリスルフィド基を有する(メタ)アクリレート、チオリン酸基を有する(メタ)アクリレート、ジスルフィド環式基を有する(メタ)アクリレート、メルカプトジアチアゾール基を有する(メタ)アクリレート、チオウラシル基を有する(メタ)アクリレート、チイラン基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらモノマーは、単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。
本発明の歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物において高い物性を得る場合には、成分(i):酸性基含有モノマーを含まないことが好ましい。
歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物は、成分(r):親水性モノマーを含んでもよい。成分(r):親水性モノマーは、歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物に配合することにより、接着する界面に対する浸透性やぬれ性が向上し、接着性を増強させる効果がある。歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合、親水性モノマーは、親水性を示すモノマーであれば、ラジカル重合可能な不飽和基の種類に関係なく単官能性または多官能性のいずれにおいても、成分(a)に該当しなければ、何等制限なく使用することができる。親水性モノマーが有するラジカル重合可能な不飽和基の種類としては(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられるが、特に(メタ)アクリロイル基を不飽和基として有している親水性モノマーを用いることが好ましい。さらにこれらの親水性モノマーは、親水性を示すものであれば、分子内にカルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基及びスルホン酸基等の酸性基やアルキル基、ハロゲン、アミノ基、グリシジル基及び水酸基等のその他の官能基を併せて含有することもできる。
ここで言う「親水性モノマー」とは23℃の水100重量部に対する溶解性が10重量部以上であるモノマーを親水性モノマーと定義される。つまりサンプル瓶中で23℃に保った水100g中にモノマー10gを加えて10分間撹拌した後、放置する。10分間経過後、サンプル瓶中で混合した混合物を観察した時、混合物が均一に透明または半透明に溶解するモノマーを親水性モノマーとした。
親水性モノマーの中でもラジカル重合可能な不飽和基が(メタ)アクリロイル基である親水性モノマーを具体的に例示すると、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,2−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル−1,3−ジ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル−1,2−ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、2−トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリルクロライド、(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基の数が9以上のもの)等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの親水性モノマーは単独で、もしくは複数を組み合わせて使用することができる。
これら親水性モノマーの中でも23℃の水100重量部に対する溶解性が20重量部以上であるものが好ましく、より好ましくは23℃の水100重量部に対する溶解性が40重量部以上であるものを用いることである。それらを具体的に例示すると2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基の数が9のもの)、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基の数が14のもの)、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート(オキシエチレン基の数が23のもの)等が挙げられる。
これらの親水性モノマーが歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物に配合される量は歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物中に含まれる成分(r):親水性モノマーと成分(s):疎水性モノマーの合計重量100重量部に対して10〜90重量部の範囲が好ましく、より好ましくは20〜60重量部の範囲である。これらの範囲を逸脱すると接着する被着体面へのぬれ性が低下したり、重合性が悪くなったりして、接着性の低下を招く結果となる。
歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物は、成分(s):疎水性モノマーを含んでもよい。成分(s):疎水性モノマーは、疎水性を示すモノマーであれば、ラジカル重合可能な不飽和基の種類に関係なく単官能性または多官能性のいずれにおいても、成分(a)に該当しなければ、何等制限なく使用することができる。疎水性モノマーが有するラジカル重合可能な不飽和基の種類としては(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルミド基、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられるが、特に(メタ)アクリロイル基や(メタ)アクリルミド基を不飽和基として有している疎水性モノマーを用いることが好ましい。さらにこれらの疎水性モノマーは、疎水性を示すものであれば、分子内にカルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基及びスルホン酸基等の酸性基やアルキル基、ハロゲン、アミノ基、グリシジル基及び水酸基等のその他の官能基を併せて含有することもできる。
ここで言う「疎水性モノマー」とは23℃の水100重量部に対する溶解性が10重量部未満であるモノマーを疎水性モノマーと定義する。つまりサンプル瓶中で23℃に保った水100g中にモノマー10gを加えて10分間撹拌した後、放置する。10分間経過後、サンプル瓶中で混合した混合物を観察した時、混合物が相分離するモノマーを疎水性モノマーとした。
疎水性モノマーの中でもラジカル重合可能な不飽和基が(メタ)アクリロイル基である疎水性モノマーを具体的に例示すると、単官能基含有の疎水性モノマーとしてはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のシラン化合物類、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート等の窒素含有化合物等が挙げられる。
芳香族系二官能基含有の疎水性モノマーとしては2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
脂肪族系二官能基含有の疎水性モノマーとしてはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート等が挙げられる。
脂肪族系三官能基含有の疎水性モノマーとしてはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
脂肪族系四官能基含有の疎水性モノマーとしてはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
また、ウレタン系の疎水性モノマーとして具体的に例示すると、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロー2−ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を有するモノマーとメチルシクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルメチルベンゼン、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物との付加物から誘導される二官能または三官能以上の重合性基を有し、且つウレタン結合を有するジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、(メタ)アクリレート基を含有しているものであれば主鎖の短いモノマーだけでなく、主鎖の長いオリゴマー、プレポリマー及びポリマー等も何等制限なく使用することができる。
上記記載の疎水性モノマーはこれらに限定されるものではなく、また単独または複数を組み合わせて用いることもできる。
これらの疎水性モノマーの中でも23℃の水100重量部に対する溶解性が5重量部未満であるものが好ましく、より好ましくは23℃の水100重量部に対する溶解性が1重量部未満であり、具体的には2,2−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン(Bis‐GMA)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン(D‐2.6E)、ジ(メタクリロイルオキシ)−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジウレタン(UDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等を用いることが好ましい。
これらの疎水性モノマーが歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物に配合される量は歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物中に含まれる成分(r):親水性モノマーと成分(s):疎水性モノマーの合計重量100重量部に対して10〜90重量部の範囲が好ましく、より好ましくは40〜80重量部の範囲である。これらの範囲を逸脱すると接着する被着体面へのぬれ性が低下したり、重合性が悪くなったりして、接着性の低下を招く結果となる。
これらモノマーの歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物中に占める割合は複合材料に求める材料特性の要求に応じてそれらの充填量を任意に設定することができる。歯科分野で一般に用いられるシーラント材、ボンディング材、プライマー、歯面処理剤、オペーク材及びセメント等の低粘性材料においては、材料の要求特性として高い流動性が必要とされることから、充填量を比較的高く設定する必要がある。そのため、歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物全体に対し20重量部以上であることが好ましく、より好ましくは20.0〜95.0重量部、さらに好ましくは30.0〜70.0重量部の範囲である。また、コンポジットレジン及び前層冠レジン等の高粘性材料においては、材料の要求特性として形態調整後の形崩れが起らない形態賦与性が必要とされることから、充填量を比較的低く設定する必要がある。そのため、歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物全成分に対し2重量部以上であることが好ましく、より好ましくは50.0〜98.0重量部、さらに好ましくは75.0〜98.0重量部の範囲である。
本発明の歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合に用いられる成分(d):重合開始剤は、公知のラジカル発生剤を用いることができる。一般に、重合開始剤は、使用直前に混合することにより重合を開始させる化学重合開始剤、加熱や加温により重合を開始させる熱重合開始剤、光照射により重合を開始させる光重合開始剤に大別される。
本発明の歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合に用いられる重合開始剤の中でも化学重合開始剤としては、有機過酸化物/アミン化合物、有機過酸化物/アミン化合物/スルフィン酸塩、または有機過酸化物/アミン化合物/ボレート化合物からなるレドックス型の重合開始剤系、酸素や水と反応して重合を開始する有機金属型の重合開始剤系等が挙げられる。
上記有機過酸化物の例としては、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエード等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記有機過酸化物を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。
上記アミン化合物の例としては、アミン基がアリール基に結合した第二級または第三級アミンが挙げられ、具体的には、p−N,N’−ジメチル−トルイジン、N,N’−ジメチルアニリン、N’−β−ヒドロキシエチル−アニリン、N,N’−ジ(β−ヒドロキシエチル)−アニリン、p−N,N’−ジ(β−ヒドロキシエチル)−トルイジン、N−メチル−アニリン、p−N−メチル−トルイジン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記アミン化合物を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。
上記スルフィン酸塩類の例としては、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記スルフィン酸塩類を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。
上記ボレート化合物の例としては、トリアルキルフェニルホウ素及びトリアルキル(p−フロロフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記ボレート化合物を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。
また、上記有機金属型の重合開始剤の例としては、トリフェニルボラン、トリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物等の有機ホウ素化合物類等が、これに限定されるものではない。また、上記有機金属型の重合開始剤を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。
本発明の歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合に用いられる重合開始剤の中でも熱重合開始剤としては、上記有機過酸化物に加えて、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物類を用いることができる。
本発明の歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合に用いられる重合開始剤の中でも光重合開始剤は、光増感剤単独で用いてもよく、また光増感剤と光重合促進剤とを併用してもよい。上記光増感剤の例としては、ベンジル、カンファーキノン、α−ナフチル、アセトナフセン、p,p’−ジメトキシベンジル、p,p’−ジクロロベンジルアセチル、ペンタンジオン、1,2−フェナントレンキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン、ナフトキノン等のα−ジケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−メトキシチオキサントン、2−ヒドロキシチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;2−ベンジル―ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル―ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1等のα−アミノアセトフェノン類;ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジル(2−メトキシエチルケタール)等のケタール類;ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1−ピロリル)フェニル]−チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(ペンタンフルオロフェニル)−チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ジシロキシフェニル)−チタン等のチタノセン類等が挙げられる。
上記光重合促進剤の例としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、p−N,N−ジメチル−トルイジン、m−N,N−ジメチル−トルイジン、p−N,N−ジエチル−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッド、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドアミノエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、p−N,N−ジヒドロキシエチル−トルイジン、p−ジメチルアミノフェニルアルコール、p−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等の第三級アミン類;N−フェニルグリシン等の第二級アミン類;5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類;ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジバーサテート、ジオクチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチルエステル)塩、テトラメチル−1,3−ジアセトキシジスタノキサン等のスズ化合物類;ラウリルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等のアルデヒド化合物類;ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1−デカンチオール、チオサリチル酸等の含イオウ化合物等が挙げられる。
歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物に更に光重合促進能を向上させるために、さらにクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸、α−オキシイソ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、ジメチロールプロピオン酸等のオキシカルボン酸類を含んでいてよい。
本発明の歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合において用いられるこれらの重合開始剤は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、これらの重合開始剤は、重合形態や重合開始剤の種類に限定されず、組み合わせて用いることもできる。重合開始剤の添加量は、使用用途に応じて適宜選択することができる。一般には、重合開始剤の添加量は、全モノマーに対して0.1〜10重量部の範囲から選択される。
本発明の歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合において、好ましい重合開始剤は光重合開始剤である。光重合開始剤を含む歯科用複合材料用組成物は、空気の混入が少ない状態で、重合させることが比較的容易である。好ましい光重合開始剤は、α−ジケトンと第三級アミンとの組合せであり、さらに好ましくはカンファーキノンとp−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル等のアミノ基がベンゼン環に直結した芳香族アミンまたはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の分子内に二重結合を有する脂肪族アミン等との組合せである。歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物は、使用用途に応じて、クマリン系、シアニン系、チアジン系等の増感色素類、ハロメチル基置換−s−トリアジン誘導体、ジフェニルヨードニウム塩化合物等の光照射によりブレンステッド酸またはルイス酸を生成する光酸発生剤、第四級アンモニウムハライド類、遷移金属化合物類等も適宜使用することができる。
尚、歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物には製品特性に合わせて、着色顔料により着色されていてよい。前記の着色顔料は、無機顔料と有機顔料とに大別される。無機顔料の例としては、黄鉛、亜鉛鉛、バリウム黄等のクロム酸塩;紺青等のフェロシアン化物;銀朱、カドミウム黄、硫化亜鉛、アンチモン白、カドミウムレッド等の硫化物;硫酸バリウム、硫酸亜鉛、硫酸ストロンチウム等の硫酸塩;亜鉛華、チタン白、ベンガラ、鉄黒、酸化クロム等の酸化物;水酸化アルミニウム等の水酸化物;ケイ酸カルシウム、群青等のケイ酸塩;カーボンブラック、グラファイト等の炭素等が挙げられる。有機顔料の例としては、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY等のニトロソ系顔料;ナフトールS、リソールファストイエロー2G等のニトロ系顔料、パーマネントレッド4R、ブリリアントファストスカーレット、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー等の不溶性アゾ系顔料;リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD等の難溶性アゾ系顔料;ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、ピグメントスカーレット3B、ボルドー10B等の可溶性アゾ系顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー等のフタロシアニン系顔料;ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の塩基性染料系顔料;ピーコックブルーレーキ、エオシンレーキ、キノリンイエローレーキ等の酸性染料系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独でまたは複数を組み合わせて用いることができる。本発明の好ましい実施形態において、着色顔料は無機顔料であり、好ましくはチタン白、ベンガラ、鉄黒または黄酸化鉄等である。
歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物は、好ましくは、2−ヒドロキシ−4−メチルベンゾフェノンのような紫外線吸収剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)等の重合禁止剤、変色防止剤、抗菌剤、着色顔料、その他の公知の添加剤等の成分をさらに含んでいてもよい。歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物の包装形態は、特に限定されず、重合開始剤の種類、または使用目的により、1パック包装形態及び2パック包装形態、またはそれ以外の形態のいずれの形態であってもよく、用途に応じて適宜選択することができる。
歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物は、上述の成分(a)、成分(b)、成分(c)、成分(d)を混合して製造される。
歯科用複合材料用組成物としての歯科用組成物は、例えば、混合モノマー作製工程、混合モノマー保存工程、複合材料製造工程、複合材料保存工程、複合材料充填工程、少量保存容器保存工程という工程を少なくとも順次経て複合材料とすることができる。
本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合(以下、「レジンセメント」ともいう)に使用する成分(h):ラジカル重合性モノマーとしては、成分(i):酸性基含有モノマーに該当せず、かつ、成分(a)に該当しないラジカル重合性モノマーが全て用いられ、例えば、(メタ)アクリル酸エステル誘導体やアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、アルキルジ(メタ)アクリレート類、エポキシジ(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA―アルキルジ(メタ)アクリレート類、ウレタンジ(メタ)アクリレート類、ウレタントリ(メタ)アクリレート類、ウレタンテトラ(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、Si基を有する(メタ)アクリレート類、SH基または―S―S―基を有する(メタ)アクリレート類、スチレン誘導体が挙げられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ−2−メタクリロイロキシエチル−2,2,4−トリメチルへキサメチレンジカルバメート、2,2’−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、ジ(メタ)アクリロキシイソホロンジカルバメート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、γ―メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が例示される。特に好適なラジカル重合性モノマーはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチル−2,2,4―トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ(メタ)アクリロキシイソホロンジウレタン、2,2’−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート等であり、中でもとりわけエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ−2−メタクリロイロキシエチル−2,2,4−トリメチルへキサメチレンジカルバメート、2,2’−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが特に好適である。これらのラジカル重合性モノマーは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合における成分(h):ラジカル重合性モノマーの配合量は、成分(a)以外の成分の全量に対して、通常13.0〜45.0重量%、好ましくは15.0〜40.0重量%、さらに好ましくは20.0〜35.0重量%であり、13.0重量%未満ではペーストの粘性が高くなりすぎ、一方45.0重量%を超えるとペーストの粘性が低くなりすぎ、レジンセメントとしての使用に適したペースト性状が得られない場合がある。
本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合、成分(i):酸性基含有モノマーは、酸性基を有し、かつ、成分(a)に該当しない重合性モノマーであれば、何等制限無く用いることができる。また、成分(i):酸性基含有モノマーが有する酸性基を具体的に例示すると、リン酸基、ピロリン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、チオリン酸基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。成分(i):酸性基含有モノマーが有するラジカル重合可能な不飽和基の数(単官能性基または多官能性基)やその種類においても何等制限なく用いることができる。成分(i):酸性基含有モノマーが有する不飽和基を具体的に例示するとアクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられるが、これら不飽和基の中でもアクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を有している酸性基含有モノマーであることが好ましい。
これらの成分(i):酸性基含有モノマーは、分子内にアルキル基、ハロゲン、アミノ基、グリシジル基及び水酸基等のその他の官能基を併せて含有することもでき、また成分(i):酸性基含有モノマーは主鎖の短いモノマーだけでなく、主鎖の長いオリゴマー、プレポリマー等も何等制限なく用いることができる。さらに成分(i):酸性基含有モノマーが有する酸性基を部分的に中和された金属塩やアンモニウム塩または酸塩化物等とした成分(i):酸性基含有モノマーの誘導体も種々の被着体への接着性に悪影響を与えない程度であれば用いることができる。
本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合に用いることができる成分(i):酸性基含有モノマーを具体的に例示すると次の通りである。なお、本明細書においては、(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリロイルをもってアクリロイルとメタクリロイルの両者を包括的に表記するものとする。
リン酸基を有する酸性基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイルオキシメチルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシブチルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシヘキシルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシオクチルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシノニルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシデシルハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−ジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2´−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート等の酸性基含有モノマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、ピロリン酸基を有する酸性基含有モノマーとしては、ピロリン酸ジ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ピロリン酸ジ〔3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル〕、ピロリン酸ジ〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕、ピロリン酸ジ〔5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル〕、ピロリン酸ジ〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕、ピロリン酸ジ〔7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチル〕、ピロリン酸ジ〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕、ピロリン酸ジ〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕、ピロリン酸ジ〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕、ピロリン酸ジ〔12−(メタ)アクリロイルオキシドデシル〕、ピロリン酸テトラ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ピロリン酸トリ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕等の酸性基含有モノマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、カルボン酸基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、2−クロロ(メタ)アクリル酸、3−クロロ(メタ)アクリル酸、2−シアノ(メタ)アクリル酸、アコニット酸、メサコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ウトラコン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、1−ブテン1,2,4−トリカルボン酸、3−ブテン1,2,3−トリカルボン酸、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸及びその無水物、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネ−ト、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレエ−ト、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、p−ビニル安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシオクチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルオキシカルボニルフタル酸及びこれらの酸無水物、5−(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、6−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ヘキサンジカルボン酸、7−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ヘプタンジカルボン酸、8−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−オクタンジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−デカンジカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等の酸性基含有モノマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、ホスホン酸基を有する酸性基含有モノマーとしては、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3−ホスホノプロピオネ−ト、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネ−ト、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノプロピオネ−ト、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノアセテ−ト、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノアセテート等の酸性基含有モノマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、スルホン酸基を有する酸性基含有モノマーとしては、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレ−ト、4−(メタ)アクリロイルオキシベンゼンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸等の酸性基含有モノマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、これらの酸性基含有モノマーを単独または複合的に組み合わせて用いることができる。
本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合に用いることができる成分(i):酸性基含有モノマーとしては、特に、ホスホン酸基及び/またはリン酸エステル基を有する重合性モノマーを用いることが好ましい。ホスホン酸基及び/またはリン酸エステル基を有する重合性モノマーとしては、例えば、一般式〔I〕:
Figure 2021054795
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素原子数5〜10のアルキレン基を示し、Rは炭素原子数1〜6のアルキレン基を示す)
で示される重合性モノマーが挙げられる。
上記一般式〔I〕で示される具体的な化合物としては、例えば、下記のものが挙げられる。
Figure 2021054795
Figure 2021054795
Figure 2021054795
Figure 2021054795
また、本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合において使用する成分(i):酸性基含有モノマーとしては、化合物〔I〕に加え、2−(メタクリロキシ)エチルホスフェートやビス〔2−(メタクリロキシ)エチル〕ホスフェートなどのリン酸エステル基を有する重合性モノマーも有効である。
また、本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合において用いることができる(i):酸性基含有モノマーとしては、特に、2塩基酸のカルボキシル基を有する重合性モノマーを用いることが好ましい。2塩基酸のカルボキシル基を有する重合性モノマーとしては、例えば、例えば、1,4−ジ(メタ)アクリロキシエチルピロメリット酸、4−(メタ)アクリロキシブチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロキシデシルトリメリット酸、4−アクリロキシブチルトリメリット酸、11−(メタ)アクリロキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等が挙げられるが、特に4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸及び4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸無水物が好ましい。
なお、これらの酸性基含有モノマーを単独または複合的に組み合わせて用いることができる。
本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合、(i):酸性基含有モノマーとして、ホスホン酸基及び/またはリン酸エステル基を有する重合性モノマーと、2塩基酸のカルボキシル基を有する重合性モノマーとを有することが好ましい。
本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合における(i):酸性基含有モノマーの配合量は、成分(a)以外の成分の全量に対して、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.4〜12重量%、さらに好ましくは0.6〜7重量%であり、0.1重量%未満ではすべての被着体に対する接着性が低下し、一方8.0重量%を超えると象牙質に対する接着性が低下及び/または重合性モノマーの溶解性の低下が生じうる。
本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合に用いられる成分(g):シランカップリング剤は特に限定するものではないが、具体的には歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じものなどが好適に用いられ、特に好ましくは、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンが用いられる。本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合における成分(g):シランカップリング剤の配合量は、成分(a)以外の成分の全量に対して、0.1-15重量%、より好ましくは1-8重量%である。
本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合に用いられる成分(b):フィラーは特に限定されず、公知のフィラー、例えば無機フィラー及び/または有機フィラー及び/または有機−無機複合フィラー等が何等制限なく用いることができる。成分(b):フィラーの他の構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、フィラーの形状、円形度、無機フィラーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。
歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合、成分(b):フィラーは、平均粒径が0.1〜10μmのものが使用できる。好ましくは0.1〜5μmのものである。
この場合の有機フィラー及び有機−無機複合フィラーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。
無機、有機及び有機−無機複合フィラー等のフィラーは公知の方法により、その粒子表面を表面処理して、歯科用レジンセメントとしての歯科用組成物に用いることができる。
表面処理に用いることができる表面処理剤及び表面処理方法は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じとすることができる。
これらのフィラーを多機能化する目的でフィラー表面を特殊な表面処理剤及び/または特殊な表面処理法により表面処理を行っても何等制限はない。
また、フィラーは、重合性モノマーなどのレジン成分との親和性を向上させる目的から、常法によりシラン処理を施すことが望ましい。用いる(g):シランカップリング剤としては、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じとすることができる。
本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合における成分(b):フィラーの配合量は、成分(a)以外の成分の全量に対して、通常54.725〜80.0重量%、好ましくは57.0〜77.0重量%である。54.725重量%未満ではフィラーの沈降を生じ、いわゆる液浮き現象を生じ、一方80.0重量%を超えると、該ペーストの流動性が著しく乏しくなり、セメントとしての機能が低下する場合がある。
本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合に使用する成分(f):重合触媒は、(x)重合促進剤と成分(d):重合開始剤とからなり、さらに重合開始剤は、化学重合開始剤と光重合開始剤とからなる。
このうち(x)重合促進剤としては、例えば、バルビツール酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩及び芳香族第二級アミンまたは第三級アミン等が挙げられる。
バルビツール酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、例えば、5−n−ブチルバルビツール酸ナトリウム塩、5−n−ブチルバルビツール酸カルシウム塩、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸ナトリウム塩、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸カルシウム塩、1,3,5−トリメチルバルビツール酸ナトリウム塩、1,3,5−トリメチルバルビツール酸カルシウム塩等が挙げられる。
本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合における(x)重合促進剤としてのバルビツール酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩の配合量は、成分(a)以外の成分の全量に対して、通常0.025〜3.0重量%、好ましくは0.1〜2.0重量%、より好ましくは0.7〜1.5重量%である。0.025重量%未満の場合は硬化が不十分となり、一方3.0重量%を超えると硬化が急速に進行するため、適当な作業時間が得られない場合がある。
また、本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合における(x)重合促進剤としての芳香族第二級アミンまたは第三アミンとしては、例えば、N−ジメチルアニリン、N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N−メチル−p−トルイジン等が挙げられる。
本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合における(x)重合促進剤としての芳香族第二級アミンまたは第三アミンの配合量は、成分(a)以外の成分の全量に対して、通常0.025〜1.0重量%、好ましくは0.1〜0.8重量%、より好ましくは0.1〜0.5重量%である。0.025重量%未満の場合は硬化が不十分となり、一方1.0重量%を超えると硬化が急速に進行するため、適当な作業時間が得られない場合がある。
また、本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合における成分(d):重合開始剤のうち化学重合開始剤としては、例えば、下記の有機過酸化物:過酸化ベンゾイル、4,4’−ジクロロ過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロ過酸化ベンゾイル、ジラウリルペルオキシド、過酸化メチルエチルケトン、t−ブチルペルオキシマレイン酸及びコハク酸及びペルオキシド等が挙げられるが、特に好適なものはt−ブチルペルオキシマレイン酸、ペルオキシコハク酸、及び4,4’−ジクロロ過酸化ベンゾイルである。
また、本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合における成分(d):重合開始剤のうち光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアルミニウムクロリド、9,10−アントラキノン、カンファーキノン、ベンジル、4,4′−ジシクロベンジル、ジアセチル、(ビス)アシルホスフィンオキシド、モノアシルホスフィンオキシド類等の紫外線増感剤または可視光線増感剤等が挙げられる。
本発明の歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合における成分(d):重合開始剤の配合量は、成分(a)以外の成分の全量に対して、通常0.05〜2.0重量%、好ましくは0.1〜1.5重量%、より好ましくは0.1〜1.0重量%である。0.05重量%未満の場合は硬化が不十分となり、一方2.0重量%を超えると硬化が急速に進行するため、適当な作業時間が得られない場合がある。
歯科用レジンセメントとしての歯科用組成物は、例えば第一のペーストと第二のペーストを混合して使用するが、混合した後、好ましくは100〜600秒で硬化するものである。硬化時間が100秒未満では作業に必要な時間がとれず、一方600秒を超えると患者の負担が大きくなる。
歯科用レジンセメントとしての歯科用組成物は、棚寿命安定剤として、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンまたはブチル化ヒドロキシトルエン等を含んでもよい。
歯科用レジンセメントとしての歯科用組成物が棚寿命安定剤を含む場合の配合量は、成分(a)以外の成分の全量に対して、通常0.02〜0.2重量%、好ましくは0.03〜0.06重量%である。0.02重量%未満の場合はペーストの棚寿命が不十分となり、一方0.2重量%を超えると十分な硬化が得られない。
歯科用レジンセメントとしての歯科用組成物は、ツーペースト型とすることができるものであり、第一のペーストと第二のペーストからなり、使用時に両者を混合することによってレジンセメントの効果を奏功し得るものである。第一のペーストと第二のペーストとの混合比は重量比にて通常1:7〜7:1、好ましくは1:4〜4:1、より好ましくは1:2〜2:1、最も好ましくは1:1である。
歯科用レジンセメントとしての歯科用組成物は、成分(f):重合触媒が成分(x)重合促進剤と成分(d):重合開始剤とからなる場合は、成分(x)重合促進剤と成分(d):重合開始剤とが混合すると硬化が始まるため、使用するまで分離したツーペースト形態とする必要がある。
よって、前記した成分を第一または第二のいずれかまたは両者に配合する場合は、両者の混合比に応じた割合の前記した配合量を配合することができる。
したがって、本発明は、1の形態において、
第一のペーストが成分(b):フィラー、成分(g):シランカップリング剤、及び成分(x)重合促進剤を含み、
第二のペーストが成分(i):酸性基含有モノマー、成分(b):フィラー及び成分(d):重合開始剤を含み、
成分(h):ラジカル重合性モノマー及び上記式(1)で示される成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを、第一のペースト及び第二のペーストの一方または両方にそれぞれ含む、歯科用レジンセメントとしての歯科用組成物も提供する。
本発明の歯科用組成物が義歯修復材料の場合に用いられる成分(c):成分(a)以外のモノマーは、重合性基を持ったモノマーであれば特に限定されない。具体的には一般に歯科材料に用いられる公知の単官能性及び/または多官能性のモノマーを使用することができる。モノマーとしては、アクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸基含有モノマーであることが好ましい。
このようなモノマーは、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、単官能性モノマー(未架橋性モノマー)、芳香族系二官能性モノマー(架橋性モノマー)、脂肪族系二官能性モノマー(架橋性モノマー)、三官能性モノマー(架橋性モノマー)、四官能性モノマー(架橋性モノマー)、及び、ウレタン系モノマーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。
本発明の歯科用組成物が義歯修復材料の場合に用いられる(メタ)アクリル酸基含有モノマーは単一成分であってもよいし、複数の(メタ)アクリル酸基含有モノマーの混練物であってもよい。好ましい(メタ)アクリル酸基含有モノマーは、架橋性モノマーを含むことができる。より好ましくは、メチル(メタ)アクリレート(MMA)を含み、且つ1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(HDDMA)またはトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)の両方もしくは何れかを含むことが好ましい。
成分(c):成分(a)以外のモノマーは、目的に応じて、上記(メタ)アクリレート系モノマー以外のモノマー、例えば分子内に少なくとも1個以上の重合性基を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーを用いてもよい。(メタ)アクリレート系モノマー以外のモノマーは、酸性基やフルオロ基等の置換基を同一分子内に有していてもよい。本発明の歯科用組成物が義歯修復材料の場合において、成分(c):成分(a)以外のモノマーは、単一成分であってもよいし、複数のモノマーからなるモノマーの混合物であってもよい。また、モノマーの粘性が室温で極めて高い場合、または固体である場合は、当該モノマーを低粘度のモノマーと組み合わせ、モノマーの混合物として使用するのが好ましい。前記の組み合わせにおいて、モノマーは、2種類または3種類以上を用いてもよい。
成分(c):成分(a)以外のモノマーは、単官能性モノマーのみを含んでいてもよく、多官能性モノマーをさらに含んでいてもよい。好ましいモノマーは、二官能性モノマーの芳香族化合物及び二官能性モノマーの脂肪族化合物を含む。より好ましくは、2,2−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン(Bis−GMA)及びトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)を含む。
成分(c):成分(a)以外のモノマーは、モノマーの一部をリン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基等の酸基を分子内に含有したモノマーを含んでよい。成分(c):成分(a)以外のモノマーは、硫黄原子を分子内に含有した成分(u):硫黄原子含有モノマーを含んでよい。
これらのリン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基等の酸基を分子内に含有若しくは硫黄原子を分子内に含有した成分(u):硫黄原子含有モノマーは成分(c):成分(a)以外のモノマー100重量%中、0.5〜20重量%配合することが好ましい。
このようなモノマーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合におけるモノマーと同様の構成とすることができる。
また、成分(c):成分(a)以外のモノマーは(メタ)アクリル酸基含有モノマー及び/または成分(r):親水性モノマーを含むことが好ましい。親水性モノマーは、1分子中に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つの重合性不飽和基を有し、特に制限はなく、目的に応じて公知の化合物から適宜選択して用いることができる。ここでいう「親水性モノマー」とは、20℃における水への溶解度が50[g/100g-H2O]以上であることを意味し、20℃において水と任意の割合で相溶することが好ましい。
親水性モノマーを配合することにより、口腔内に装着された吸水した義歯床を補修する場合、義歯床との濡れ性を向上させることができる。
親水性モノマーの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,4−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3,4−トリヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。このうち、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
親水性モノマーは1種類のみを配合することもできるが、複数種類を混練して用いることができる。
本発明の歯科用組成物が義歯修復材料の場合に用いられる成分(j):(メタ)アクリル酸(共)重合体は、成分(c):成分(a)以外のモノマーに記載の(メタ)アクリル酸含有モノマーを用いた重合体若しくは共重合体である。その中でも、メチル(メタ)アクリレート及び/またはエチル(メタ)アクリレートの重合体または共重合体が好ましく、メチルメタクリレートとエチルメタクリレートの共重合体であることが特に好ましい。また、アクリル酸(共)重合体は単一でも複数でも何ら問題なく用いることができる。(メタ)アクリル酸(共)重合体の配合量は全モノマー100重量部に対し150〜200重量部が好ましい。また0.5〜5重量部、更には1〜3重量部の配合量を含むことが好ましい。
平均分子量は500以上である。10,000〜1,000,000の平均分子量が好ましく、100,000〜500,000のものが特に好ましい。粒度は20〜200μmであることが好ましい。粒径及び形状は特に限定はしないが、粉状であることが好ましい。
本発明の歯科用組成物が義歯修復材料の場合に用いられる成分(f):重合触媒は、バルビツール酸誘導体とハロゲンイオン形成化合物との組み合わせ、及び、有機過酸化物とアミン化合物との組み合わせの少なくとも一方を含む。
バルビツール酸誘導体を具体的に例示すると、例えば、バルビツール酸、1,3-ジメチルバルビツール酸、1,3-ジフェニルバルビツール酸、1,5-ジメチルバルビツール酸、5-ブチルバルビツール酸、5-エチルバルビツール酸、5-イソプロピルバルビツール酸、5-シクロヘキシルバルビツール酸、1,3,5-トリメチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-エチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-n-ブチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-イソブチルバルビツール酸、1,3-ジメチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-シクロペンチルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-シクロヘキシルバルビツール酸、1,3-ジメチル-5-フェニルバルビツール酸、1-シクロヘキシル-1-エチルバルビツール酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール酸、5-メチルバルビツール酸、5-プロピルバルビツール酸、1,5-ジエチルバルビツール酸、1-エチル-5-メチルバルビツール酸、1-エチル-5-イソブチルバルビツール酸、1,3-ジエチル-5-ブチルバルビツール酸、1-シクロヘキシル-5-メチルバルビツール酸、1-シクロヘキシル-5-エチルバルビツール酸、1-シクロヘキシル-5-プロピルバルビツール酸、1-シクロヘキシル-5-オクチルバルビツール酸、1-シクロヘキシル-5-ヘキシルバルビツール酸、5-ブチル-1-シクロヘキシルバルビツール酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール酸及びチオバルビツール酸類、ならびにこれらの塩(特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属類が好ましい)が挙げられ、これらバルビツール酸類の塩としては、例えば、5-ブチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5-トリメチルバルビツール酸ナトリウム及び1-シクロヘキシル-5-エチルバルビツール酸ナトリウムなどが挙げられる。
特に好適なバルビツール酸誘導体を具体的に例示すると、例えば、5-ブチルバルビツール酸、1,3,5-トリメチルバルビツール酸、1-シクロヘキシル-5-エチルバルビツール酸、1-シクロヘキシル-5-プロピルバルビツール酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール酸、及びこれらバルビツール酸類のナトリウム塩などが挙げられる。
バルビツール酸誘導体の配合量は全モノマー100重量部に対し0.1〜10重量部が好ましい。また0.5〜5重量部、更には1〜3重量部の配合量を含むことが好ましい。配合量が0.1重量部未満であると反応性に乏しく硬化性を得ることが出来ない。また配合量が10重量部を超えると硬化時間は一定であるにも拘わらず重合反応時の発熱量が著しく多くなる。
ハロゲンイオン形成化合物を具体的に例示すると、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジイソブチルアミンハイドロクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、トリエチルアミンハイドロクロライド、トリメチルアミンハイドロクロライド、ジメチルアミンハイドロクロライド、ジエチルアミンハイドロクロライド、メチルアミンハイドロクロライド、エチルアミンハイドロクロライド、イソブチルアミンハイドロクロライド、トリエタノールアミンハイドロクロライド、β−フェニルエチルアミンハイドロクロライド、アセチルコリンクロライド、2−クロロトリメチルアミンハイドロクロライド、(2−クロロエチル)トリエチルアンモニウムクロライド、テトラ−デシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイドが有り、これ等は1種または2種以上を混練して使用してもよい。
ハロゲンイオン形成化合物の配合量は全モノマー100重量部に対し0.1〜10重量部が好ましい。更に0.5〜5重量部、更には1〜3重量部の配合量を含むことが好ましい。配合量が0.1重量部未満であると反応性に乏しく硬化特性の優れた義歯修復材料を得ることが出来ない。また配合量が10重量部を超えると硬化時間は一定であるにも拘わらず重合反応時の発熱量が著しく多くなる。
好ましいバルビツール酸誘導体とハロゲンイオン形成化合物との組み合わせは、例えば、1-シクロヘキシル-5-プロピルバルビツール酸及びトリオクチルメチルアンモニウムクロライドの組み合わせである。
この場合の有機過酸化物は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じ有機過酸化物とすることができる。
この場合のアミン化合物は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じアミン化合物とすることができる。
この場合のスルフィン酸塩類は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じスルフィン酸塩類とすることができる。
成分(f):重合触媒が有機過酸化物とアミン化合物との組み合わせの場合のその含有量は、使用用途に応じて適宜選択することができるが、全モノマー100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲である。
本発明の歯科用組成物が義歯修復材料の場合に用いられる成分(f):重合触媒は、有機金属化合物をさらに含んでいてもよい。有機金属化合物を具体的に例示すると、銅(II)アセチルアセナート、アセチルアセトン銅、4−シクロヘキシル酪酸銅、酢酸第二銅、オレイン酸銅、グルコン酸銅、アセチルアセトンマンガン、ナフテン酸マンガン、オクチル酸マンガン、アセチルアセトンコバルト(III)、ナフテン酸コバルト、アセチルアセトンリチウム、酢酸リチウム、アセチルアセトン亜鉛、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトンニッケル、酢酸ニッケル、アセチルアセトンアルミニウム、アセチルアセトンカルシウム、アセチルアセトンクロム(III)、アセチルアセトン鉄(III)、ナフテン酸ナトリウム、レアアースオクトエートが有り、これ等は1種または2種以上を混練して使用してもよい。また、特に好ましいのは銅(II)アセチルアセナート、アセチルアセトン銅と、4−シクロヘキシル酪酸銅である。
これらの有機金属化合物の配合量は全モノマー100重量部に対し0.001〜1重量部であり、好ましくは0.001〜0.2重量部である。配合量が0.001重量部未満であると反応性に乏しく硬化性を得ることが出来ない。また配合量が1重量部を超えると有機金属化合物特有の変色が著しく、1重量部を超えると変色が見られる。例えばアセチルアセトン銅の場合には青色、アセチルアセトン鉄(III)の場合には赤褐色といった色を呈する。
義歯修復材料としての歯科用組成物は、例えば液材と粉材を練和して用いる粉液型義歯修復材料とすることができる。この場合、液材に、成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー、成分(c):成分(a)以外のモノマー、及び、トリオクチルメチルアンモニウムクロライドを含み、粉材に、成分(j):(メタ)アクリル酸(共)重合体、及び、1-シクロヘキシル-5-プロピルバルビツール酸を含むことができる。
義歯修復材料としての歯科用組成物は、成分(p):有機溶媒を含んでもよい。成分(p):有機溶媒は公知のものが使用でき、配合することにより、義歯修復材料としての歯科用組成物の練和物の粘性を下げる働きがあり、口腔内に装着された吸水した義歯床を補修する場合、義歯床との濡れ性を向上させることができる。具体的な成分(p):有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、酢酸エチル、イソプロピルエーテルなどが利用できる。メタノール、エタノール、アセトンが好ましく、エタノールが最も好ましい。成分(p):有機溶媒を含むことで粉材との練和も容易となり、湿潤状態の床用レジンへの濡れ性や、歯質への濡れ性を向上する効果が認められる。保存安定性も優れている。
成分(p):有機溶媒の配合量は、全モノマー100重量部に対して0.5〜20重量部を含むことができる。1〜5重量部を含むことが好ましい。成分(p):有機溶媒の配合量が0.5重量部以下の場合は、液材の粘度の低下や濡れ性の効果が大きく表れない。また、成分(p):有機溶媒の配合量が20重量部以上の場合は、物性の低下を招くことになる。
義歯修復材料としての歯科用組成物は、成分(b):フィラーをさらに含むことができる。粉液型義歯修復材料である場合には、成分(b):フィラーフィラーは粉材に含まれる。
成分(b):フィラーは特に限定されず、公知のフィラーを用いることができる。フィラーの配合により、耐摩耗性や曲げ特性を向上させることができる。成分(b):フィラーの他の構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、フィラーの形状、円形度、無機フィラーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。
この場合の超微粒子無機フィラー、有機フィラー及び有機−無機複合フィラーは、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。
無機、有機及び有機−無機複合フィラー等のフィラーは公知の方法により、その粒子表面を表面処理して用いることができる。
表面処理に用いることができる表面処理剤及び表面処理方法は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じとすることができる。
これらのフィラーを多機能化する目的でフィラー表面を特殊な表面処理剤及び/または特殊な表面処理法により表面処理を行っても何等制限はない。
フィラーの配合量は、全モノマー100重量部に対して、0.1〜100重量部配合することが好ましい。更に好ましくは、1〜10重量部である。
本発明の歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合に用いられる成分(k):酸基含有モノマーは、成分(n):無機酸基含有モノマー及び成分(o):有機酸基含有モノマーに大別される。
成分(n):無機酸基含有モノマーは、成分(a)に該当せず、かつ、無機酸基を持ったモノマーであれば特に限定されない。具体的には一般に歯科材料に用いられる公知の無機酸基含有モノマーを使用することができる。無機酸基含有モノマーが有する無機酸基を具体的に例示すると、リン酸基、ピロリン酸基、ホスホン酸基、チオリン酸基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合においては、成分(n):無機酸基含有モノマーは、リン及び/または硫黄を含むことが好ましい。
無機酸基含有モノマーが有する不飽和基を具体的に例示すると、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられるが、これら不飽和基の中でも(メタ)アクリロイル基を有している無機酸基含有モノマーであることが好ましい。
さらにこれらの無機酸基含有モノマーは、分子内にアルキル基、ハロゲン、アミノ基、グリシジル基及び/または水酸基等のその他の官能基を併せて有することもできる。
酸性基の一部または全部がアルカリ金属と塩を形成している無機酸基含有モノマーの重合体を用いることができ、不飽和基として(メタ)アクリロイル基を有する無機酸基含有モノマーを具体的に例示する。
リン酸基を有する無機酸基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイルオキシメチルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシブチルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシヘキシルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシオクチルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシノニルハイドロジェンホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシデシルハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−ジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2’−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、ピロリン酸基を有する無機酸基含有モノマーとしては、ピロリン酸ジ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]、ピロリン酸ジ[3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル]、ピロリン酸ジ[4−(メタ)アクリロイルオキシブチル]、ピロリン酸ジ[5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル]、ピロリン酸ジ[6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル]、ピロリン酸ジ[7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチル]、ピロリン酸ジ[8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル]、ピロリン酸ジ[9−(メタ)アクリロイルオキシノニル]、ピロリン酸ジ[10−(メタ)アクリロイルオキシデシル]、ピロリン酸ジ[12−(メタ)アクリロイルオキシドデシル]、ピロリン酸テトラ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]、ピロリン酸トリ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル] 等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、チオリン酸基を有する無機酸基含有モノマーとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンチオホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンチオホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンチオホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンチオホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンチオホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンチオホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンチオホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合において特に好ましい成分(n):無機酸基含有モノマーは、例えば、ホスホン酸基を有する無機酸基含有モノマーである。ホスホン酸基を有する無機酸基含有モノマー(ホスホン酸基含有モノマー)とは、分子中に少なくとも炭素原子に直結した一つの(-PO(OH)2)またはホスホン酸モノエステル基(-PO(OH)(OR))及び少なくとも一つの重合性不飽和基を持つモノマーを意味する。
つまり、これらの条件を満たすものであれば、いかなる官能基を分子内に有するものであっても何等制限なく使用することができる。また、ホスホン酸基含有モノマーは分子内に有するホスホン酸基またはホスホン酸モノエステル基の数や(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基等のラジカル重合可能な不飽和基の種類や数においても特に限定されない。
歯質接着プライマーとしての歯科用組成物中にホスホン酸基含有モノマーを含有することにより、特にエナメル質に対して優れた歯質接着性能を発揮することができる。また、ホスホン酸基含有モノマーはホスホン酸基がエステル結合により酸素原子と結合していないことから、水を共存させた酸性雰囲気下においても分子内における加水分解を受けにくく、貯蔵安定性に優れている。そのため、包装形態も2分割された2液型の包装形態だけでなく、1液型の包装形態にすることも可能である。
これらのホスホン酸基含有モノマーの中でも、歯質接着性と貯蔵安定性に優れた一般式(I):
Figure 2021054795
[式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素原子数5〜10のアルキレン基、Rは炭素原子数1〜6のアルキレン基を示す。]で示されるホスホン酸基含有モノマーを用いることが好ましい。
一般式(I)で示されるホスホン酸基含有モノマーを具体的に例示すると、以下の化合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2021054795
Figure 2021054795
Figure 2021054795
Figure 2021054795
これらのホスホン酸基含有モノマーの中でも、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルホスホノアセテート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノアセテート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルホスホノプロピオネート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3−ホスホノプロピオネ−ト等を用いることがより好ましい。
これらの無機酸基含有モノマーは、単独で、もしくは複数を組み合わせて使用することができる。
これらの成分(n):無機酸基含有モノマーの含有量は、歯質接着プライマーとしての歯科用組成物の使用用途または使用目的ならびに使用方法に応じて適宜選択することができるが、成分(f)及び成分(a)を除く歯質接着プライマーとしての歯科用組成物の成分の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜40.0重量部の範囲である。
これら無機酸基含有モノマーの含有量が40.0重量部を超えると、重合性に基因した硬化性が低下するために、接着特性に悪影響を与える。一方、無機酸基含有モノマーの含有量が0.1重量部未満になると、エナメル質に対する接着性において効果が認められない。
以上に無機酸基含有モノマーを示したが、これらに限定されるものではなく、またこれらの無機酸基含有モノマーを単独または複数を組み合わせて用いることができる。さらに、これらの無機酸基含有モノマーは主鎖の短いモノマーだけでなく、主鎖の長いオリゴマー、プレポリマー、及びポリマー等も何等制限なく用いることができる。
これらの無機酸基含有モノマーが有する酸性基を部分的に中和された金属塩やアンモニウム塩または酸塩化物等の無機酸基含有モノマーの誘導体も種々の被着体への接着性に悪影響を与えない程度であれば用いることができる。
本発明の歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合に用いられる成分(o):有機酸基含有モノマーは、成分(a)に該当せず、かつ、有機酸基を持ったモノマーであれば特に限定されない。具体的には一般に歯科材料に用いられる公知の有機酸基含有モノマーを使用することができる。有機酸基含有モノマーが有する有機酸基を具体的に例示すると、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、フェノール基、エノール基、チオフェノール基、オキシム基、芳香族スルホアミド基、第一級ニトロ基、及び、第二級アミド基、水酸基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
この場合、成分(o):有機酸基含有モノマーは、カルボン酸基含有モノマーであることが好ましい。
有機酸基含有モノマーが有する不飽和基を具体的に例示すると、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられるが、これら不飽和基の中でも(メタ)アクリロイル基を有している有機酸基含有モノマーであることが好ましい。
さらにこれらの有機酸基含有モノマーは、分子内にアルキル基、ハロゲン、アミノ基、グリシジル基及び/または水酸基等のその他の官能基を併せて有することもできる。
酸性基の一部または全部がアルカリ金属と塩を形成している有機酸基含有モノマーの重合体を用いることができ、不飽和基として(メタ)アクリロイル基を有する有機酸基含有モノマーを具体的に例示する。
また、モノカルボン酸基を有する酸性基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、2−クロロ(メタ)アクリル酸、3−クロロ(メタ)アクリル酸、2−シアノ(メタ)アクリル酸、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、p−ビニル安息香酸、5−(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、スルホン酸基を有する酸性基含有モノマーとしては、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレ−ト、4−(メタ)アクリロイルオキシベンゼンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合において特に好ましい成分(o):有機酸基含有モノマーは、例えば、多価カルボン酸基含有モノマーである。多価カルボン酸基含有モノマーとは、分子中に少なくとも2つ以上のカルボン酸基、あるいは水と容易に反応して2つ以上のカルボン酸基を生じる基と、少なくとも一つの重合性不飽和基を持つモノマーを意味する。
つまり、これらの条件を満たすものであれば、いかなる官能基を分子に有していても何等制限なく使用することができる。また、多価カルボン酸基含有モノマーは分子内に有する(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビニル基、アリル基等のラジカル重合可能な不飽和基の種類や数においても特に限定されない。歯質接着プライマーとしての歯科用組成物中に多価カルボン酸基含有モノマーを含有することにより、象牙質に対して優れた歯質接着性能を発揮することができる。
多価カルボン酸基含有モノマーを具体的に例示すると、アコニット酸、メサコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ウトラコン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、1−ブテン1,2,4−トリカルボン酸、3−ブテン1,2,3−トリカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸及びその無水物、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネ−ト、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレエ−ト、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシオクチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルオキシカルボニルフタル酸及びこれらの酸無水物、6−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ヘキサンジカルボン酸、8−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−オクタンジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−デカンジカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの多価カルボン酸基含有重合性モノマーは単独で、もしくは複数を組み合わせて使用することができる。これらの多価カルボン酸基含有モノマーの中でも、4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸及びその無水物、4−アクリロイルオキシエチルトリメリット酸及びその無水物等を用いることがより好ましい。
これらの成分(o):有機酸基含有モノマーの含有量は、歯質接着プライマーとしての歯科用組成物の使用用途または使用目的ならびに使用方法に応じて適宜選択することができるが、成分(f)及び成分(a)を除く歯質接着プライマーとしての歯科用組成物の成分の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜40.0重量部の範囲である。
これら有機酸基含有モノマーの含有量が40.0重量部を超えると重合性に基因した硬化性が低下するために、接着特性に悪影響を与える。一方、有機酸基含有モノマーの含有量が0.1重量部未満になると象牙質に対する接着性において効果が認められない。
以上に有機酸基含有モノマーを示したが、これらに限定されるものではなく、またこれらの有機酸基含有モノマーを単独または複数を組み合わせて用いることができる。さらに、これらの有機酸基含有モノマーは主鎖の短いモノマーだけでなく、主鎖の長いオリゴマー、プレポリマー、及びポリマー等も何等制限なく用いることができる。
これらの有機酸基含有モノマーが有する酸性基を部分的に中和された金属塩やアンモニウム塩または酸塩化物等の有機酸基含有モノマーの誘導体も種々の被着体への接着性に悪影響を与えない程度であれば用いることができる。
本発明の歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合における成分(k):酸基含有モノマーの含有量は、歯質接着プライマーとしての歯科用組成物の使用用途または使用目的ならびに使用方法に応じて適宜選択することができるが、成分(f)及び成分(a)を除く歯質接着プライマーの成分の合計100重量部に対して、好ましくは0.2〜80.0重量部の範囲である。
また、本発明の歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合において歯質に対する接着性をさらに増強させる場合、または貴金属等を含む各種被着体に対する接着性を付与する場合は、分子内に硫黄原子を含有した成分(u):硫黄原子含有モノマー、シラン化合物をそれぞれ単独で、または組み合わせて含むことができる。
歯質接着プライマーとしての歯科用組成物に貴金属に対する接着性を付与するためには、分子内に硫黄原子を含有した成分(u):硫黄原子含有モノマーを使用することも有効である。分子内に硫黄原子を含有したモノマーであれば、不飽和基の種類や数及びその他の官能基の有無等には何等関係なく用いることができる。
本発明の歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合に用いられる成分(u):硫黄原子含有モノマーは歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合における成分(u):硫黄原子含有モノマーとすることができる。
歯質接着プライマーとしての歯科用組成物にセラミックやコンポジットレジン等に対する接着性を付与するためには、分子内に少なくとも一つの重合性不飽和基を有するオルガノシラン化合物を使用することも有効である。分子内に重合性不飽和基を有したオルガノシラン化合物であれば、不飽和基の種類や数及びその他の官能基の有無等には何等関係なく用いることができる。重合性不飽和基を有したオルガノシラン化合物を具体的に例示するとビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニル(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらのオルガノシラン化合物を単独または複数を組み合わせて用いることができる。
本発明の歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合に必須成分として含まれる成分(l):水は、歯質接着プライマーとしての歯科用組成物中に含まれている成分(n):無機酸基含有モノマーや成分(o):有機酸基含有モノマー等の成分(k):酸基含有モノマーが有する酸性基を活性化して、歯質への脱灰作用を助長したり、歯質への浸透を促進させたりする働きがある。そのため、水は貯蔵安定性、生体適合性、重合性及び歯質接着性等に対して悪影響を及ぼすような不純物を含有していないものであれば何等制限なく使用することができる。好ましくは蒸留水またはイオン交換水を使用することである。
水は、歯質接着プライマーとしての歯科用組成物の使用用途または使用目的ならびに使用方法に応じて適宜含有量を選択することができるが、成分(f)及び成分(a)を除く歯質接着プライマーとしての歯科用組成物の成分の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜80.0重量部の範囲である。水の含有量が80.0重量部を越えると組成物が均一な状態を維持できずに分離する等の貯蔵安定性に悪影響を与える。一方、水の含有量が0.1重量部未満になると歯質を含めた各種被着体に対して十分な接着性を得ることができない。
本発明の歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合に必須成分として含まれる成分(m):水溶性有機溶媒は、歯質接着プライマーとしての歯科用組成物中に含まれている成分(n):無機酸基含有モノマーや成分(o):有機酸基含有モノマーを含む種々のモノマー、水、重合触媒及びその他の配合成分を任意の割合で相溶させる溶解促進材的な役割を有しているとともに、歯質接着プライマーとしての歯科用組成物の歯質への浸透を促進させる働きがある。また、歯質接着プライマーとしての歯科用組成物の液粘度を低下させ、容器からの滴下や接着させる部位への塗布等の操作性を向上させることができる。
この水溶性有機溶媒を具体的に例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノ−ル等のアルコール類、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物類等の水溶性有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではなく何等制限なく使用することができる。また、これらの水溶性有機溶媒は単独または数種を組み合わせて用いることができる。これらの水溶性有機溶媒の中でも水との相溶性に優れるメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン等が好ましく、より好ましくはアセトン、エタノールである。
有機溶媒の含有量は、歯質接着プライマーとしての歯科用組成物の使用用途または使用目的ならびに使用方法に応じて適宜選択することができるが、好ましくは成分(f)及び成分(a)を除く歯質接着プライマーとしての歯科用組成物の成分の合計100重量部に対して、0.1〜80.0重量部の範囲である。有機溶媒の含有量が80.0重量部を超えると歯質に対する接着性が低下する。一方、有機溶媒の含有量が0.1重量部未満になると組成物が均一な状態を維持できずに分離する等の貯蔵安定性に悪影響を与える。
本発明の歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合に必須成分として含まれる成分(f):重合触媒は特に限定されず、公知のラジカル発生剤が何等制限なく用いられる。重合触媒の種類としては、一般に使用直前に混合することにより重合を開始させるもの(化学重合触媒)、加熱や加温により重合を開始させるもの(熱重合触媒)、光照射により重合を開始させるもの(成分(w):光重合触媒)に大別されるが、いずれも単独または複数を組み合わせて用いることができる。
前述の化学重合触媒としては、有機過酸化物/アミン化合物または有機過酸化物/アミン化合物/スルフィン酸塩、有機過酸化物/アミン化合物/ボレート化合物からなるレドックス型の重合触媒系、酸素や水と反応して重合を開始する有機ホウ素化合物類、過硼酸塩類、過マンガン酸塩類、過硫酸塩類等の重合触媒系が挙げられ、さらにスルフィン酸塩類、ボレート化合物類及びバルビツール酸類も水及び/または酸性基を有するモノマーと共存させることにより重合を開始させることもできる。
この場合の有機過酸化物は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じ有機過酸化物とすることができる。
この場合のアミン化合物は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じアミン化合物とすることができる。
この場合のスルフィン酸塩類は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じスルフィン酸塩類とすることができる。
この場合のボレート化合物は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じスルフィン酸塩類とすることができる。
バルビツール酸類として具体的に例示すると、バルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3−ジフェニルバルビツール酸、1,5−ジメチルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、5−エチルバルビツール酸、5−イソプロピルバルビツール酸、5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−エチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−n−ブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−イソブチルバルビツール酸、1,3―ジメチル―バルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロペンチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸及びチオバルビツール酸類、ならびにこれらの塩(特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属類が好ましい)、例えば、5−ブチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5−トリメチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5−トリメチルバルビツール酸カルシウム及び1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸ナトリウムなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記バルビツール酸類を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。
歯質接着プライマーとしての歯科用組成物を単独で使用する場合は、これらの化学重合触媒を少なくとも二つ以上の包装形態に分割して含ませる必要がある。また、歯質接着プライマーとしての歯科用組成物を他の組成物ともに使用する場合は歯質接着プライマーとしての歯科用組成物が他の組成物と接触することにより化学重合が開始するように化学重合触媒を歯質接着プライマーとしての歯科用組成物と他の組成物の両方にそれぞれ含ませることもできる。
これらの化学重合触媒の中でも、スルフィン酸塩類、バルビツール酸類、有機過酸化物−第3級アミン等をそれぞれ単独または組み合わせて用いることが好ましく、より好ましくは有機過酸化物−第3級アミン、有機過酸化物−第3級アミン−バルビツール酸類、有機過酸化物−第3級アミン−スルフィン酸塩類を用いることである。
これらの化学重合触媒は成分(f)及び成分(a)を除く歯質接着プライマーとしての歯科用組成物の成分の合計100重量部に対して0〜15.0重量部の範囲で含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜10.0重量部の範囲で含有することである。
成分(w):光重合触媒としては、光増感剤のみの系からなるものまたは光増感剤/光重合促進剤の組み合わせからなるもの等が挙げられる。
また、上記光増感剤としては紫外線により重合が開始するものと可視光線により重合が開始するものに大別される。
成分(w):光重合触媒として用いることができる光増感剤を具体的に例示すると、ベンジル、カンファーキノン、α−ナフチル、アセトナフセン、p,p’−ジメトキシベンジル、p,p’−ジクロロベンジルアセチル、ペンタンジオン、1,2−フェナントレンキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン、ナフトキノン等のα−ジケトン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−メトキシチオキサントン、2−ヒドロキシチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、アセトインベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類、2−ベンジル―ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル―ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1等のα-アミノアセトフェノン類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジル(2−メトキシエチルケタール)等のケタール類、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1−ピロリル)フェニル]−チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(ペンタンフルオロフェニル)−チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ジシロキシフェニル)−チタン等のチタノセン類等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記光増感剤を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。
成分(w):光重合触媒として用いることができる光重合促進剤を具体的に例示すると、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッド、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドアミノエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノフェニルアルコール、p−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等の第三級アミン類、N−フェニルグリシン等の第2級アミン類、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5−トリメチルバルビツール酸カルシウム酸等のバルビツール酸類、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジバーサテート、ジオクチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチルエステル)塩、テトラメチル−1,3−ジアセトキシジスタノキサン等のスズ化合物類、ラウリルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等のアルデヒド化合物類、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1−デカンチオール、チオサルチル酸等の含イオウ化合物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記光重合促進剤を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。
さらに、光重合促進能の向上のために、上記光重合促進剤に加えて、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸、α−オキシイソ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、ジメチロールプロピオン酸等のオキシカルボン酸類を添加することが効果的である。
また、成分(w):光重合触媒を用いる場合は一つの包装形態または二つ以上に分割された包装形態であっても特に制限はない。これらの光重合触媒の中でも、α−ジケトンと第三級アミンまたはα−ジケトンとスズ化合物類の組み合わせが好ましく、より好ましくはカンファーキノンとp−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル等のアミノ基がベンゼン環に直結した芳香族第三級アミンまたはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の分子内に二重結合を有した脂肪族第三級アミン等の組み合わせ、さらにはカンファーキノンとジブチルスズジラウレートやジオクチルスズジラウレート等のスズ化合物類の組み合わせである。これらの成分(w):光重合触媒の含有量は成分(f)及び成分(a)を除く歯質接着プライマーとしての歯科用組成物の成分の合計100重量部に対して0.1〜15.0重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜10.0重量部の範囲で含有することである。最も好ましくは0.1〜8.0重量部の範囲で含有することである。
また、加熱や加温による熱重合触媒としては、上記有機過酸化物の他にアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物類が好適に使用されるが、これに限定されるものではない。また、これらの熱重合触媒を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。
さらに、使用用途に応じて他に、クマリン系、シアニン系、チアジン系等の増感色素類、ハロメチル基置換−s−トリアジン誘導体、ジフェニルヨードニウム塩化合物等の光照射によりブレンステッド酸またはルイス酸を生成する光酸発生剤、第四級アンモニウムハライド類、遷移金属化合物類等も適宜使用することができる。
歯質接着プライマーとしての歯科用組成物は、成分(s):疎水性モノマーを含むことができる。成分(s):疎水性モノマーとしては、成分(k)及び成分(a)を除いて、疎水性を示すモノマーであれば、ラジカル重合可能な不飽和基の種類に関係なく単官能性または多官能性のいずれにおいても、何等制限なく使用することができる。疎水性モノマーの他の構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、単官能基含有の疎水性モノマー、芳香族系二官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系二官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系三官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系四官能基含有の疎水性モノマー、ウレタン系の疎水性モノマー、及び、好ましい疎水性モノマーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。
疎水性モノマーが歯質接着プライマーとしての歯科用組成物に配合される量は成分(f):重合触媒及び成分(a)を除く歯質接着プライマーとしての歯科用組成物の成分の合計100重量部に対して1.0〜50.0重量部の範囲が好ましく、より好ましくは1.0〜30.0重量部の範囲である。これらの範囲を逸脱すると接着する被着体面へのぬれ性が低下したり、重合性に基因する硬化性が低下したりして、接着特性の低下を招く結果となる。
歯質接着プライマーとしての歯科用組成物は水と相溶しやすい成分(r):親水性モノマーを含まないことが好ましい態様である。親水性モノマーは歯質接着プライマーとしての歯科用組成物に含まれる疎水性成分と親水性成分を任意の割合で相溶させることができ、かつ接着する界面に対する浸透性やぬれ性を向上させて、接着性を増強させる効果がある。しかし、その一方で親水性モノマーは歯質接着プライマーとしての歯科用組成物が酸性雰囲気下であるため、加水分解による劣化や変質を受けやすく接着性の低下を引き起こすことがある。さらに親水性モノマーは元来硬化性に乏しく、また硬化した場合においても水と親和性が高いために加水分解を起こすなど、接着耐久性においても問題点が認められる。
ここでいう「親水性モノマー」とは、23℃の水100重量部に対する溶解性が10重量部以上であるモノマーを親水性モノマーと定義される。つまりサンプル瓶中で23℃に保った水100g中にモノマー10gを加えて10分間混合撹拌して放置した時、サンプル瓶中で混合物が均一に透明または半透明状態で相溶するモノマーを親水性モノマーとした。
親水性モノマーの他の構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、ラジカル重合可能な不飽和基が(メタ)アクリロイル基である親水性モノマーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができ、含まないことが好ましい親水性モノマーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合の好ましい親水性モノマーと同様の構成とすることができる。
歯質接着プライマーとしての歯科用組成物を増粘させて操作性を向上させる、または接着界面層に機械的な強度を付与して接着性を向上させることを目的として歯質接着プライマーとしての歯科用組成物に成分(b):フィラーを含むことができる。フィラーとしては特に限定されることなく、歯科用フィラーとして公知なものを用いることができる。例えば、無機フィラー及び/または有機フィラー及び/または有機−無機複合フィラー等が挙げられ、これらは1種または数種を組み合わせても何等制限なく用いることができる。
また、これらのフィラーの形状は球状、針状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の粒子形状で良く特に限定されない。さらにこれらのフィラーの粒子径も特に制限はないが、沈降や分離等の問題から0.001〜10μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは0.01〜5μmの範囲である。
これらのフィラーの中でも超微粒子である気相法により生成したアエロジルまたは超微粒子シリカ複合粒子であるゾル−ゲル反応等の溶液中から生成したシリカージルコニア酸化物粒子等は歯質接着プライマー中に配合することにより増粘剤として働くために、歯質接着プライマーとしての歯科用組成物にとっては効果的である。アエロジルを具体的に例示するとアエロジル200、アエロジルOX50、アエロジルR972、アエロジルR974、アエロジルR8200、アエロジルR711、アエロジルDT4、酸化アルミニウムC、二酸化チタンP25等が挙げられる。また、意図的にそれらの超微粒子を凝集させた凝集性無機フィラー等を用いても何等問題はない。
また、歯質接着プライマーとしての歯科用組成物の中には、2−ヒドロキシ−4−メチルベンゾフェノンのような紫外線吸収剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤、変色防止剤、抗菌材、着色顔料、その他の従来公知の添加剤等の成分を、必要に応じて任意に添加することができる。
歯質接着プライマーとしての歯科用組成物における使用方法は特に制限されずに、単独での使用だけでなく、エッチング材、プライマー、ボンディング材、セルフエッチングプライマー、セラミックプライマー、メタルプライマー、貴金属プライマー等のその他の組成物と適宜組み合わせて使用することができる。
歯質接着プライマーとしての歯科用組成物は組成物中に含まれる成分の構成により、貯蔵安定性に優れていることが特徴である。そのため1包装形態にすることができる。また、歯質接着プライマーとしての歯科用組成物に配合される成分割合、重合触媒の種類、使用方法または使用目的等により、二つ以上の複数の包装形態にすることもでき、適宜選択することができる。
本発明の歯科用組成物は、歯科用ディスクや歯科用ブロック等の無機焼成体からCAD/CAM技術を用いて切削加工された歯牙修復物の表面を改質する歯科用プライマーとすることができる。無機焼成体の材質は特に制限はないが、具体的にはシリカ、アルミナ、ジルコニアを主成分とする組成物が挙げられる。また無機焼成体から切削加工により作製された歯牙修復物は、顔料などを含んでも良い。
歯科用プライマーとしての歯科用組成物は、接着面に無機フィラーが露出しているコンポジットレジンにも用いることができる。
歯科用組成物は、築盛により製作された歯牙修復物にも用いることができる。この歯牙修復物は無機粉末を築盛後、焼成して得られ、一般に陶材と呼ばれている。
本発明の歯科用組成物が歯科用プライマーの場合に用いられる成分(p):有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、及びこれらの無水物、並びに、アセトン、メチルエチルケトンが用いられ、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、アセトンの無水物を用いることができる。より好ましくは、無水エタノール、アセトンである。さらに好ましくは無水エタノールである。有機溶媒の配合量は好ましくは70-99重量%、より好ましくは80-98重量%である。
本発明の歯科用組成物が歯科用プライマーの場合に用いられる成分(g):シランカップリング剤は特に限定するものではないが、具体的には歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じものなどが好適に用いられ、特に好ましくは、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンが用いられる。シランカップリング剤の配合量は0.1-15重量%、より好ましくは1-8重量%である。
本発明の歯科用組成物が歯科用プライマーの場合に用いられる成分(q):酸無水物及び/または弱酸性化合物のうち、弱酸性化合物は、pH2以上の弱酸性化合物であれば良いが、カルボン酸系の化合物が好ましく、カルボン酸系の化合物のみであることがより好ましい。カルボン酸系の化合物としては、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、イタコン酸、アコニット酸が好ましい。特にクエン酸、マレイン酸、イタコン酸の無水物が好ましい。弱酸性化合物は酸無水物であることが更に好ましい。
本発明の歯科用組成物が歯科用プライマーの場合に用いられる成分(q):酸無水物及び/または弱酸性化合物のうち、酸無水物は、カルボン酸のような有機酸の酸無水物のみでなく、硫酸、硝酸、リン酸といった無機酸の酸無水物も用いることができる。具体的な無機酸の酸無水物は硫酸の無水物として二硫酸(ピロ硫酸)、スルホン酸の無水物としてトリフルオロメタンスルホン酸無水物、硝酸の無水物として五酸化二窒素、リン酸の無水物としてピロリン酸(二リン酸)や五酸化二リン(十酸化四リン)、亜リン酸の無水物として三酸化二リンを用いることができる。
pH2以上の酸無水物であることが好ましく、酸無水物でもカルボン酸系の化合物が好ましく、カルボン酸系の化合物のみであることがより好ましい。カルボン酸系の化合物としては、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、イタコン酸、アコニット酸の化合物が好ましい。特にクエン酸、マレイン酸、イタコン酸の無水物が好ましい。酸無水物はカルボン酸、硫酸、硝酸、リン酸の酸無水物を含むことが好ましい。
成分(q):酸無水物及び/または弱酸性化合物の配合量は、0.1-5重量%、より好ましくは0.1-2重量%である。
歯科用プライマーとしての歯科用組成物には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ブチル化ヒドロキシトルエンなど酸化防止剤を適宜配合してもよい。またコロイダルシリカ、グリセリン、ポリエチレングリコール等の粘度調節剤を配合してゲル状にて使用してもよい。また、歯科用プライマーとしての歯科用組成物は成分(l):水を含まないことが好ましい。歯科用プライマーとしての歯科用組成物は他のモノマーを含まないことが好ましい。
歯科用プライマーとしての歯科用組成物とセットで用いられる接着材は、成分(a)及び/または成分(c):成分(a)以外のモノマー、及び成分(f):重合触媒を含み、歯科用プライマーとしての歯科用組成物とセットで用いられるレジンセメントは、成分(a)及び/または成分(c):成分(a)以外のモノマー、成分(f):重合触媒及び成分(b):フィラーを含むことが好ましい。歯科用プライマーとしての歯科用組成物と接着材またはレジンセメントのセットで用いられるコンポジットレジンは成分(a)及び/または成分(c):成分(a)以外のモノマー、及び成分(f):重合触媒、成分(b):フィラーを含む。
成分(c):成分(a)以外のモノマーは、重合性基を持ったモノマーであれば特に限定されない。具体的には一般に歯科材料に用いられる公知の単官能性及び/または多官能性のモノマーを使用することができる。好ましいモノマーとしては、アクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を有するモノマーである。
このようなモノマーは、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、単官能性モノマー(未架橋性モノマー)、芳香族系二官能性モノマー(架橋性モノマー)、脂肪族系二官能性モノマー(架橋性モノマー)、三官能性モノマー(架橋性モノマー)、四官能性モノマー(架橋性モノマー)、及び、ウレタン系モノマーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。
成分(c):成分(a)以外のモノマーは、目的に応じて、上記(メタ)アクリレート系モノマー以外のモノマー、例えば分子内に少なくとも1個以上の重合性基を有する単量体、オリゴマーまたはポリマーを用いてもよい。(メタ)アクリレート系モノマー以外のモノマーは、酸性基やフルオロ基等の置換基を同一分子内に有していてもよい。本発明の歯科用組成物が歯科用プライマーの場合において、成分(c):成分(a)以外のモノマーは、単一成分であってもよいし、複数のモノマーからなるモノマーの混合物であってもよい。また、モノマーの粘性が室温で極めて高い場合、または固体である場合は、当該モノマーを低粘度のモノマーと組み合わせ、モノマーの混合物として使用するのが好ましい。前記の組み合わせにおいて、モノマーは、2種類または3種類以上を用いてもよい。
成分(c):成分(a)以外のモノマーは、単官能性モノマーのみを含んでいてもよく、多官能性モノマーをさらに含んでいてもよい。好ましいモノマーは、二官能性モノマーの芳香族化合物及び二官能性モノマーの脂肪族化合物を含む。より好ましくは、2,2−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン(Bis−GMA)及びトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)を含む。
成分(c):成分(a)以外のモノマーは、モノマーの一部をリン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基等の酸基を分子内に含有したモノマーを含んでよい。成分(c):成分(a)以外のモノマーは、硫黄原子を分子内に含有した成分(u):硫黄原子含有モノマーを含んでよい。
これらのリン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基等の酸基を分子内に含有若しくは硫黄原子を分子内に含有した成分(u):硫黄原子含有モノマーは成分(c):成分(a)以外のモノマー100重量%中、0.5〜20重量%配合することが好ましい。
このようなモノマーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合におけるモノマーと同様の構成とすることができる。
成分(b):フィラーは特に限定されず、公知のフィラー、例えば無機フィラー及び/または有機フィラー及び/または有機−無機複合フィラー等が何等制限なく用いることができる。成分(b):フィラーの他の構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、フィラーの形状、円形度、無機フィラーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。
これら無機フィラーの平均粒径は特に制限はないが、0.1〜10μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜5μmの範囲である。
この場合の有機フィラー及び有機−無機複合フィラーは、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。
有機フィラーまたは有機−無機複合フィラーの平均粒径は0.1〜100μmの範囲が好ましい。より好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは2〜30μmである。これらの無機、有機及び有機−無機複合フィラーはそれぞれ単独で、または数種を組み合わせて用いることもできる。
無機、有機及び有機−無機複合フィラー等のフィラーは公知の方法により、その粒子表面を表面処理して用いることができる。
表面処理に用いることができる表面処理剤及び表面処理方法は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じとすることができる。
これらのフィラーを多機能化する目的でフィラー表面を特殊な表面処理剤及び/または特殊な表面処理法により表面処理を行っても何等制限はない。
成分(b):フィラーの配合量は、全モノマー100重量部に対して、0〜20重量部配合することが好ましい。
本発明の歯科用組成物が歯科用プライマーの場合の成分(f):重合触媒は特に限定されず、公知のラジカル発生剤を用いることができる。重合触媒は、使用直前に混合することにより重合を開始させる化学重合開始剤と、光照射により重合を開始させる光重合開始剤とに大別される。
重合触媒の中でも化学重合開始剤としては、有機過酸化物/アミン化合物、有機過酸化物/アミン化合物/スルフィン酸塩、または有機過酸化物/アミン化合物/ボレート化合物からなるレドックス型の重合開始剤系、酸素や水と反応して重合を開始する有機金属型の重合開始剤系等が挙げられる。
この場合の有機過酸化物は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じ有機過酸化物とすることができる。
この場合のアミン化合物は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じアミン化合物とすることができる。
この場合のスルフィン酸塩類は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じスルフィン酸塩類とすることができる。
この場合のボレート化合物は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じボレート化合物とすることができる。
この場合の有機金属型の重合開始剤は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じ有機金属型の重合開始剤とすることができる。
重合触媒の中でも光重合開始剤は、光増感剤単独で用いてもよく、また光増感剤と光重合促進剤とを併用してもよい。
この場合の光増感剤は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じ光増感剤とすることができる。
この場合の光重合促進剤は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じ光重合促進剤とすることができる。
これらの重合触媒は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、これらの重合触媒は、重合形態や重合触媒の種類に限定されず、組み合わせて用いることもできる。重合触媒の配合量は、使用用途に応じて適宜選択することができる。一般には、重合触媒の配合量は、モノマーに対して0.1〜10重量部の範囲から選択される。
好ましい光重合開始剤は、α−ジケトンと第三級アミンとの組合せであり、さらに好ましくはカンファーキノンとp−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル等のアミノ基がベンゼン環に直結した芳香族アミンまたはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の分子内に二重結合を有する脂肪族アミン等との組合せである。
本発明の歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合に用いられる成分(c):成分(a)以外のモノマーは、成分(a)に該当しなければ、いずれのモノマーも使用することができる。特に成分(r):親水性モノマー、及び成分(s):疎水性モノマーを含むことが好ましい。成分(r):親水性モノマー、及び成分(s):疎水性モノマーを歯科用接着性組成物としての歯科用組成物に配合することにより、歯質に塗布されたプライマーとの馴染みもよく、接着体とのなじみも良い為めに初期接着力、接着耐久性が向上する。成分(r):親水性モノマーは、歯科用接着性組成物に配合することにより、接着する界面に対する浸透性やぬれ性が向上し、接着性を増強させる効果がある。成分(r):親水性モノマーは、上記成分(a)に該当せず、親水性を示すモノマーであれば、ラジカル重合可能な不飽和基の種類に関係なく単官能性または多官能性のいずれにおいても、何等制限なく使用することができる。親水性モノマーの他の構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、ラジカル重合可能な不飽和基が(メタ)アクリロイル基である親水性モノマー、及び、好ましい親水性モノマーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。
これらの親水性モノマーが歯科用接着性組成物としての歯科用組成物に配合される量は歯科用接着性組成物としての歯科用組成物中に含まれる成分(r):親水性モノマーと成分(s):疎水性モノマーの合計重量100重量部に対して5〜90重量部の範囲が好ましく、より好ましくは5〜60重量部の範囲である。これらの範囲を逸脱すると接着する被着体面へのぬれ性が低下したり、重合性が悪くなったりして、接着性の低下を招く結果となる。
本発明の歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合に用いられる成分(s):疎水性モノマーは、上記成分(a)に該当せず、かつ、疎水性を示すモノマーであれば、ラジカル重合可能な不飽和基の種類に関係なく単官能性または多官能性のいずれにおいても、何等制限なく使用することができる。疎水性モノマーの他の構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、単官能基含有の疎水性モノマー、芳香族系二官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系二官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系三官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系四官能基含有の疎水性モノマー、ウレタン系の疎水性モノマー、及び、好ましい疎水性モノマーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。
疎水性モノマーが歯科用接着性組成物としての歯科用組成物に配合される量は歯科用接着性組成物としての歯科用組成物中に含まれる成分(r):親水性モノマーと成分(s):疎水性モノマーの合計重量100重量部に対して10〜95重量部の範囲が好ましく、より好ましくは40〜95重量部の範囲である。これらの範囲を逸脱すると接着する被着体面へのぬれ性が低下したり、重合性が悪くなったりして、接着性の低下を招く結果となる。
歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合においては、成分(c):成分(a)以外のモノマーは、50.0〜99.8重量%の割合で含まれ、好ましくは50.0〜97.5重量%の割合で含まれる。
本発明の歯科用接着性組成物は成分(i):酸性基含有モノマーを含まないことが好ましい。成分(i):酸性基含有モノマーを歯科用接着性組成物としての歯科用組成物に含むことで、物性の低下に繋がることがある。
本発明の歯科用接着性組成物としての歯科用組成物を用いる前にプライマーを用いて、接着面を改質することが必要である。プライマーに配合される接着成分は、成分(i):酸性基含有モノマーを少なくとも1種以上含有してもよい。
また、酸性基含有モノマーが有する酸性基の種類は特に限定されず、いずれの酸性基を有する酸性基含有モノマーであっても用いることができる。酸性基含有モノマーの他の構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合と同様の構成とすることができる。この場合における、リン酸エステルを有する酸性基含有モノマー、ピロリン酸基を有する酸性基含有モノマー、カルボン酸基を有するモノマー、ホスホン酸基を有する酸性基含有モノマー、スルホン酸基を有する酸性基含有モノマー、及び、好ましい酸性基含有モノマーは、歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合と同様の構成とすることができる。
チオリン酸基を有する酸性基含有モノマーとしては、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンジチオホスフェ−ト等の酸性基含有モノマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
以上に酸性基含有モノマーを示したが、これらに限定されるものではなく、またこれらの酸性基を有したモノマーを単独または複数を組み合わせて用いることができる。さらに酸性基含有モノマーは主鎖の短いモノマーだけでなく、主鎖の長いオリゴマー、プレポリマー、及びポリマー等も何等制限なく用いることができる。
酸性基含有モノマーが有する酸性基を部分的に中和された金属塩やアンモニウム塩または酸塩化物等の酸性基含有モノマーの誘導体も種々の被着体への接着性に悪影響を与えない程度であれば用いることができる。
これらの酸性基含有モノマーの中でも10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェ−ト、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノアセテート、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸及びその無水物、4−アクリロイルオキシエチルトリメリット酸及びその無水物等を用いることが好ましい。これらの酸性基含有モノマーは歯科用接着性組成物としての歯科用組成物の使用用途または使用目的並びに使用方法に応じて適宜プライマー中の含有量を選択することができるが、好ましくは0.1〜30重量%の範囲である。これら酸性基含有モノマーの含有量が30重量%を越えると他のモノマーの重合を阻害するために、接着特性に悪影響を与える恐れがある。一方、酸性基含有モノマーの含有量が0.1重量%未満になると歯質に対する接着性において効果が認められない。
貴金属に対する接着性を付与するために、プライマーに配合される接着成分は、分子内に硫黄原子を含有した成分(u):硫黄原子含有モノマーを使用することも歯科用接着性組成物としての歯科用組成物にとって有効である。分子内に硫黄原子を含有したモノマーであれば、不飽和基の種類や数及びその他の官能基の有無等には何等関係なく用いることができる。
不飽和基として(メタ)アクリロイル基を有した分子内に硫黄原子を含有した成分(u):硫黄原子含有モノマーを具体的に例示するとトリアジンチオール基を有する(メタ)アクリレート、メルカプト基を有する(メタ)アクリレート、ポリスルフィド基を有する(メタ)アクリレート、チオリン酸基を有する(メタ)アクリレート、ジスルフィド環式基を有する(メタ)アクリレート、メルカプトジアチアゾール基を(メタ)アクリレート、チオウラシル基を有する(メタ)アクリレート、チイラン基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの分子内に硫黄原子を含有した成分(u):硫黄原子含有モノマーを単独または複数を組み合わせて用いることができる。この分子内に硫黄原子を含有した成分(u):硫黄原子含有モノマーは使用用途または使用目的並びに使用方法に応じて適宜含有量を選択することができるが、好ましくは0.01〜10.0重量%の範囲である。これらの分子内に硫黄原子を含有した成分(u):硫黄原子含有モノマーの含有量が10.0重量%を越えると他のモノマーの重合を阻害するために、接着特性に悪影響を与える恐れがある。一方、このモノマーの含有量が0.01重量%未満になると貴金属に対して十分な接着性を得ることができない。
本発明の歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合に用いられる成分(f):重合触媒は、特に限定されず、公知のラジカル発生剤が何等制限なく用いられる。
成分(f):重合触媒は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合と同様の構成とすることができる。この場合における、化学重合触媒、有機過酸化物、アミン化合物、スルフィン酸塩類、ボレート化合物、及び、バルビツール酸類はそれぞれ、歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合と同様の構成とすることができる。
歯科用接着性組成物としての歯科用組成物を使用する場合はこれらの化学重合触媒を少なくとも二つ以上の包装形態に分割して含ませる必要がある。また、歯科用接着性組成物としての歯科用組成物がプライマーと接触することにより化学重合が開始するように化学重合触媒を歯科用接着性組成物としての歯科用組成物とプライマーの両方にそれぞれ含ませることもできる。
化学重合触媒の中でも、スルフィン酸塩類、バルビツール酸類、有機過酸化物−第3級アミン等をそれぞれ単独または組み合わせて用いることが好ましく、より好ましくは有機過酸化物−第3級アミン、有機過酸化物−第3級アミン−バルビツール酸類、有機過酸化物−第3級アミン−スルフィン酸塩類を用いることである。
これらの化学重合触媒は0.1〜15.0重量%の範囲で含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜10.0重量%の範囲で含有することである。
光重合触媒は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合と同様の構成とすることができる。この場合における、光増感剤、光重合促進剤、及び、オキシカルボン酸類はそれぞれ、歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合と同様の構成とすることができる。
また、光重合触媒を用いる場合の包装形態、及び、好ましい組み合わせはそれぞれ、歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合と同様の構成とすることができる。
成分(w):光重合触媒の含有量は0.1〜15.0重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜10.0重量%の範囲で含有することである。最も好ましくは0.1〜8.0重量%の範囲で含有することである。
歯科用接着性組成物としての歯科用組成物が含みうる熱重合触媒、増感色素類、光酸発生剤、第四級アンモニウムハライド類、遷移金属化合物類等は、歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合と同様の構成とすることができる。
歯科用接着性組成物としての歯科用組成物中に増粘剤として超微粒子である気相法により生成したアエロジルまたは超微粒子シリカ複合粒子であるゾル−ゲル反応等の溶液中から生成したシリカージルコニア酸化物粒子等を配合することできる。アエロジルを具体的に例示するとアエロジル200、アエロジルOX50、アエロジルR972、アエロジルR974、アエロジルR8200、アエロジルR711、アエロジルDT4、酸化アルミニウムC、二酸化チタンP25等が挙げられる。また、歯科用接着性組成物としての歯科用組成物の中には、2−ヒドロキシ−4−メチルベンゾフェノンのような紫外線吸収剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤、変色防止剤、抗菌材、着色顔料、その他の従来公知の添加剤等の成分を、必要に応じて任意に添加できる。
本発明の歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合における使用方法は、エッチング材、プライマー、セルフエッチングプライマー、セラミックプライマー、メタルプライマー、貴金属プライマー等のその他の処理材等と適宜組み合わせて使用することができる。
本発明の歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合における包装形態は、特に限定されず、歯科用接着性組成物としての歯科用組成物の保存安定性、歯科用接着性組成物としての歯科用組成物に配合される成分割合、重合触媒の種類、使用方法または使用目的等により、単一または二つ以上の複数包装でも何等制限なく、用途に応じて適宜選択することができる。
歯科用接着性組成物としての歯科用組成物は、成分(l):水や成分(p):有機溶媒を含むことで物性が低下することがある。
本発明の歯科用組成物が歯質接着性組成物の場合は、単独でまたは他の処理材と組み合わせて使用する際に、その接着性をさらに増強させるために成分(i):酸性基含有モノマーを少なくとも1種以上含有する。
酸性基含有モノマーが有する酸性基の種類は特に限定されず、いずれの酸性基を有する酸性基含有モノマーであっても成分(a)に該当しなければ、用いることができる。酸性基含有モノマーの他の構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、リン酸エステルを有する酸性基含有モノマー、ピロリン酸基を有する酸性基含有モノマー、カルボン酸基を有するモノマー、ホスホン酸基を有する酸性基含有モノマー、スルホン酸基を有する酸性基含有モノマー、チオリン酸基を有する酸性基含有モノマー、及び、好ましい酸性基含有モノマーは、歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合と同様の構成とすることができる。
これらの酸性基含有モノマーは歯質接着性組成物としての歯科用組成物の使用用途または使用目的並びに使用方法に応じて適宜含有量を選択することができるが、好ましくは0.1〜30重量%の範囲である。これら酸性基含有モノマーの含有量が30重量%を越えると他のモノマーの重合を阻害するために、接着特性に悪影響を与える恐れがある。一方、酸性基含有モノマーの含有量が0.1重量%になると歯質に対する接着性において効果が認められない。
本発明の歯科用組成物が歯質接着性組成物の場合に用いられる成分(t):成分(a)及び成分(i):酸性基含有モノマー以外のモノマーは、成分(a)及び成分(i)に該当しなければいずれのモノマーも使用することができる。特に成分(r):親水性モノマー、及び成分(s):疎水性モノマーを含むことが好ましい。成分(r):親水性モノマー、及び成分(s):疎水性モノマーを歯質接着性組成物としての歯科用組成物に配合することにより、歯質との馴染みも良い為めに初期接着力、接着耐久性が向上する。
成分(r):親水性モノマーは、歯質接着性組成物としての歯科用組成物に配合することにより、接着する界面に対する浸透性やぬれ性が向上し、接着性を増強させる効果がある。親水性重合性モノマーは、上記成分(a)及び成分(i)に該当せず、親水性を示すモノマーであれば、ラジカル重合可能な不飽和基の種類に関係なく単官能性または多官能性のいずれにおいても、何等制限なく使用することができる。親水性モノマーの他の構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、ラジカル重合可能な不飽和基が(メタ)アクリロイル基である親水性モノマー、及び、好ましい親水性モノマーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。
親水性モノマーが歯質接着性組成物としての歯科用組成物に配合される量は歯質接着性組成物としての歯科用組成物中に含まれる成分(r):親水性モノマーと成分(s):疎水性モノマーの合計重量100重量部に対して5〜90重量部の範囲が好ましく、より好ましくは20〜90重量部の範囲である。これらの範囲を逸脱すると接着する被着体面へのぬれ性が低下したり、重合性が悪くなったりして、接着性の低下を招く結果となる。
本発明の歯科用組成物が歯質接着性組成物の場合に用いられる成分(s):疎水性モノマーは、上記成分(a)及び成分(i)に該当せず、かつ、疎水性を示すモノマーであれば、ラジカル重合可能な不飽和基の種類に関係なく単官能性または多官能性のいずれにおいても、何等制限なく使用することができる。疎水性モノマーの他の構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、単官能基含有の疎水性モノマー、芳香族系二官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系二官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系三官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系四官能基含有の疎水性モノマー、ウレタン系の疎水性モノマー、及び、好ましい疎水性モノマーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。
疎水性モノマーが歯質接着性組成物としての歯科用組成物に配合される量は歯質接着性組成物としての歯科用組成物中に含まれる成分(r):親水性モノマーと成分(s):疎水性モノマーの合計重量100重量部に対して5〜90重量部の範囲が好ましく、より好ましくは10〜80重量部の範囲である。これらの範囲を逸脱すると接着する被着体面へのぬれ性が低下したり、重合性が悪くなったりして、接着性の低下を招く結果となる。
本発明の歯科用組成物が歯質接着性組成物の場合においては、成分(t):成分(a)及び成分(i)以外のモノマーは、50.0〜99.5重量%の割合で含まれ、好ましくは50.0〜97.5重量%の割合で含まれる。
歯質接着性組成物としての歯科用組成物に貴金属に対する接着性を付与するためには、分子内に硫黄原子を含有した成分(u):硫黄原子含有モノマーを使用することも有効である。分子内に硫黄原子を含有したモノマーであれば、不飽和基の種類や数及びその他の官能基の有無等には何等関係なく用いることができる。
不飽和基として(メタ)アクリロイル基を有した分子内に硫黄原子を含有した成分(u):硫黄原子含有モノマーは、歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合と同様の構成とすることができる。
この分子内に硫黄原子を含有した成分(u):硫黄原子含有モノマーは歯質接着性組成物としての歯科用組成物の使用用途または使用目的並びに使用方法に応じて適宜含有量を選択することができるが、好ましくは0.01〜10.0重量%の範囲である。これらの分子内に硫黄原子を含有した成分(u):硫黄原子含有モノマーの含有量が10.0重量%を越えると他のモノマーの重合を阻害するために、接着特性に悪影響を与える恐れがある。一方、このモノマーの含有量が0.01重量%未満になると貴金属に対して十分な接着性を得ることができない。
本発明の歯科用組成物が歯質接着性組成物の場合に用いられる成分(f):重合触媒は、特に限定されず、公知のラジカル発生剤が何等制限なく用いられる。
本発明の歯科用組成物が歯質接着性組成物の場合に用いられる成分(f):重合触媒は、特に限定されず、公知のラジカル発生剤が何等制限なく用いられる。
成分(f):重合触媒は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合と同様の構成とすることができる。この場合における、化学重合触媒、有機過酸化物、アミン化合物、スルフィン酸塩類、ボレート化合物、及び、バルビツール酸類はそれぞれ、歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合と同様の構成とすることができる。
歯質接着性組成物としての歯科用組成物を単独で使用する場合はこれらの化学重合触媒を少なくとも二つ以上の包装形態に分割して含ませる必要がある。
これらの化学重合触媒の中でも、スルフィン酸塩類、バルビツール酸類、有機過酸化物−第3級アミン等をそれぞれ単独または組み合わせて用いることが好ましく、より好ましくは有機過酸化物−第3級アミン、有機過酸化物−第3級アミン−バルビツール酸類、有機過酸化物−第3級アミン−スルフィン酸塩類を用いることである。
これらの化学重合触媒は0.1〜15.0重量%の範囲で含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜10.0重量%の範囲で含有することである。
光重合触媒は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合と同様の構成とすることができる。この場合における、光増感剤、光重合促進剤、及び、オキシカルボン酸類はそれぞれ、歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合と同様の構成とすることができる。
また、光重合触媒を用いる場合の包装形態、及び、好ましい組み合わせはそれぞれ、歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合と同様の構成とすることができる。
成分(w):光重合触媒の含有量は0.1〜15.0重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜10.0重量%の範囲で含有することである。最も好ましくは0.1〜8.0重量%の範囲で含有することである。
また熱重合触媒、増感色素類、光酸発生剤、第四級アンモニウムハライド類、遷移金属化合物類等は、歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合と同様の構成とすることができる。
本発明の歯科用組成物が歯質接着性組成物の場合に用いられる成分(l):水は、水の存在によって酸性基含有モノマーの分子内にある酸性基がイオン解離及び活性化し、歯質に存在するカルシウム等の金属元素や他の被着体に含まれる金属元素とキレート結合して接着性を向上または増強させることができる。
さらに成分(l):水が歯質接着性組成物としての歯科用組成物中において酸性基含有モノマーと共に酸反応性フィラーも配合される場合は、水の存在によって酸性基含有モノマーの分子内にある酸性基がイオン解離及び活性化し、前述した歯質や被着体に対して接着性を向上または増強させるだけでなく、酸反応性フィラーに含まれる金属元素である酸反応性元素ともキレート結合(酸−塩基反応)して、重合触媒とともに歯質接着性組成物としての歯科用組成物の硬化性を向上させることができる。
そのため水は歯質接着性組成物としての歯科用組成物の重合性(硬化性)や歯質または被着体への接着性に対して悪影響を及ぼすような不純物を含有していないものであれば何等制限なく使用することができる。好ましくは蒸留水またはイオン交換水を使用することである。
上記に記載した酸性基含有モノマーは既に記載したものと同一であっても、または異なっていても特に問題はなく、歯質接着性組成物としての歯科用組成物中に配合することができる。また歯質接着性組成物としての歯科用組成物が有する諸特性に悪影響を及ぼさない程度であれば、酸性基含有モノマーの代わり、またはその一部として酸性基含有モノマーの重合体も配合することもできる。
上記に記載した酸反応性フィラーはそのフィラー中に周期律表第1族、第2族及び第3族に属する金属元素である酸反応性元素を少なくとも1種または2種以上を含んでいるものであれば何等制限なく用いることができ、またこれらの含有量も特に限定されない。その酸反応性フィラーに含まれる酸反応性元素を具体的に例示するとナトリウム、カリウム、カルシウム、ストロンチウム、ランタン、アルミニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに酸反応性フィラーに含まれる酸反応性元素以外の元素の種類及び含有量についても特に制限はない。つまり、酸反応性フィラーは酸反応性元素を含むものであれば、その酸化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硅酸塩、フッ化物、窒化物、鉱物、ガラス等であっても何等制限されることなく用いることができる。これらの酸反応性フィラーを具体的に例示すると、アルミニウムシリケート、酸化アルミニウム、ガラス(溶融法によるガラス、気相反応により生成したガラス、ゾルーゲル法による合成ガラスなどを含む)、フッ化ストロンチウム、炭酸カルシウム、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、チッ化アルミニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの酸反応性フィラーは水に対して不溶性、難溶性、易溶性等のいずれの性質を示すものであっても何等問題なく、また酸反応性フィラーの形状も特に限定されずに球状、針状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の粒子形状のものを何等制限なく用いることができる。さらに酸反応性フィラーは単独または数種を組み合わせて用いることができる。
成分(l):水の含有量は、歯質接着性組成物としての歯科用組成物の使用用途または使用目的ならびに使用方法に応じて適宜含有量を選択することができるが、歯質接着性組成物としての歯科用組成物の成分の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜80.0重量部の範囲である。水の含有量が80.0重量部を越えると組成物が均一な状態を維持できずに分離する等の貯蔵安定性に悪影響を与える。一方、水の含有量が0.1重量部未満になると歯質を含めた各種被着体に対して十分な接着性を得ることができない。
本発明の歯科用組成物が歯質接着性組成物の場合に用いられる成分(p):有機溶媒は、歯質接着性組成物としての歯科用組成物中に配合される酸性基含有モノマーを含む種々のモノマー、重合触媒及びその他の配合成分を任意の割合で相溶させる溶解促進材的な役割があるとともに、歯質接着性組成物としての歯科用組成物の液粘度を低下させ、容器からの滴下や接着させる部位への塗布等の操作性を向上させることができる。歯質接着性組成物としての歯科用組成物中に配合されるこの有機溶媒を具体的に例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノ−ル等のアルコール類、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物類等の有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではなく何等制限なく使用することができる。また、これらの有機溶媒は単独または数種を組み合わせて用いることができる。
これらの有機溶媒の中でも水溶性の有機溶媒であるメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン等が好ましく、より好ましくはアセトン、エタノールである。
有機溶媒の含有量は、歯質接着性組成物としての歯科用組成物の使用用途または使用目的ならびに使用方法に応じて適宜選択することができるが、好ましくは歯質接着性組成物としての歯科用組成物の成分の合計100重量部に対して、0.1〜80.0重量部の範囲である。有機溶媒の含有量が80.0重量部を超えると歯質に対する接着性が低下する。一方、有機溶媒の含有量が0.1重量部未満になると組成物が均一な状態を維持できずに分離する等の貯蔵安定性に悪影響を与える。
超微粒子である気相法により生成したアエロジルまたは超微粒子シリカ複合粒子であるゾル−ゲル反応等の溶液中から生成したシリカージルコニア酸化物粒子等を配合することできる。アエロジルを具体的に例示するとアエロジル200、アエロジルOX50、アエロジルR972、アエロジルR974、アエロジルR8200、アエロジルR711、アエロジルDT4、酸化アルミニウムC、二酸化チタンP25等が挙げられる。
また、意図的にそれらの超微粒子を含むフィラーを凝集させた凝集性無機フィラー等を用いても何等問題はない。
また、歯質接着性組成物としての歯科用組成物の中には、2−ヒドロキシ−4−メチルベンゾフェノンのような紫外線吸収剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤、変色防止剤、抗菌材、着色顔料、その他の従来公知の添加剤等の成分を、必要に応じて任意に添加できる。
本発明の歯科用組成物が歯質接着性組成物の場合における使用方法は特に制限されないが、歯質に対しては単独で使用することが好ましく、他の被着体においてはエッチング材、プライマー、ボンディング材、セルフエッチングプライマー、セラミックプライマー、メタルプライマー、貴金属プライマー等のその他の処理材やボンディング材等と適宜組み合わせて使用することができる。
本発明の歯科用組成物が歯質接着性組成物の場合における包装形態は、特に限定されず、歯質接着性組成物としての歯科用組成物の保存安定性、歯質接着性組成物としての歯科用組成物に配合される成分割合、重合触媒の種類、使用方法または使用目的等により、単一または二つ以上の複数包装でも何等制限なく、用途に応じて適宜選択することができる。
本発明の歯科用組成物が歯科用接着性レジンセメントの場合に用いられる成分(i):酸性基含有モノマーは、酸性基含有モノマーが有する酸性基の種類は特に限定されず、いずれの酸性基を有する酸性基含有モノマーであっても、成分(a)に該当しなければ、用いることができる。酸性基含有モノマーの他の構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、リン酸エステルを有する酸性基含有モノマー、ピロリン酸基を有する酸性基含有モノマー、カルボン酸基を有するモノマー、ホスホン酸基を有する酸性基含有モノマー、スルホン酸基を有する酸性基含有モノマー、チオリン酸基を有する酸性基含有モノマー、及び、好ましい酸性基含有モノマーは、歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合と同様の構成とすることができる。
酸性基含有モノマーの配合割合は、歯科用接着性レジンセメントとしての歯科用組成物の使用目的により適宜に変化させてもよいが、成分(g):シランカップリング剤100重量部に対して、1.0〜50重量部の範囲で調製され、好ましくは2〜30重量部の範囲において調製される。
本発明の歯科用組成物が歯科用接着性レジンセメントの場合に用いられる成分(u):硫黄原子含有モノマーは、従来から歯科用硫黄原子含有モノマーとして使用されているモノマーを成分(a)及び成分(i)に該当しなければ、全て使用できる。成分(u):硫黄原子含有モノマーを含むことにより、歯科用接着性レジンセメントとしての歯科用組成物に、貴金属に対する接着性を付与することができる。なお、分子内に硫黄原子を含有したモノマーであれば、不飽和基の種類や数及びその他の官能基の有無等には何等関係なく用いることができる。
不飽和基として(メタ)アクリロイル基を有した分子内に硫黄原子を含有したモノマーを具体的に例示するとトリアジンチオール基を有する(メタ)アクリレート、メルカプト基を有する(メタ)アクリレート、ポリスルフィド基を有する(メタ)アクリレート、チオリン酸基を有する(メタ)アクリレート、ジスルフィド環式基を有する(メタ)アクリレート、メルカプトジアチアゾール基を(メタ)アクリレート、チオウラシル基を有する(メタ)アクリレート、チイラン基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの分子内に硫黄原子を含有したモノマーを単独または複数を組み合わせて用いることができる。特に好ましい化合物は、10−メタクリロキシデシル−6,8−ジチオクタネートまたは6-メタクリロキシヘキシル−6,8−ジチオクタネートである。この成分(u):硫黄原子含有モノマーは歯科用接着性レジンセメントとしての歯科用組成物の使用用途または使用目的並びに使用方法に応じて適宜含有量を選択することができるが、好ましくは0.01〜10.0重量%の範囲である。成分(u):硫黄原子含有モノマーの含有量が10.0重量%を越えると他のモノマーの重合を阻害するために、接着特性に悪影響を与える恐れがある。一方、成分(u):硫黄原子含有モノマーの含有量が0.01重量%未満になると貴金属に対して十分な接着性を得ることができない。
本発明の歯科用組成物が歯科用接着性レジンセメントの場合に用いられる成分(g):シランカップリング剤は特に限定するものではないが、セラミック材料に対する良好な接着を得るために歯科用接着性レジンセメントとしての歯科用組成物及び被着体材料中のモノマー成分と共重合あるいは化学結合の形成が可能な官能基を有するシランカップリング剤を用いることが好ましい。具体的には3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが好適に用いられ、特に好ましくは、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが用いられる。(g):シランカップリング剤の配合割合は、当該組成物の使用目的により適宜用いてもよいが、組成物全体に対して、0.5〜20重量部の範囲で調製され、好ましくは1〜10重量部の範囲で調製される。
本発明の歯科用組成物が歯科用接着性レジンセメントの場合に用いられる成分(v):成分(a)、成分(i)及び成分(u)以外のモノマーは、成分(a)、成分(i)及び成分(u)以外のモノマーであれば、自由に使用することができる。
本発明においては、成分(v):成分(a)、成分(i)及び成分(u)以外のモノマーは、好ましくは5〜99.0重量%の割合で含まれ、より好ましくは10〜90重量%の割合で含まれる。
成分(v):成分(a)、成分(i)及び成分(u)以外のモノマーを具体的に例示すると、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合におけるラジカル重合可能な不飽和基が(メタ)アクリロイル基である親水性モノマー、並びに、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合における単官能基含有の疎水性モノマー、芳香族系二官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系二官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系三官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系四官能基含有の疎水性モノマー、及び、ウレタン系の疎水性モノマーとすることができる。また、(メタ)アクリレート基を含有しているものであれば主鎖の短いモノマーだけでなく、主鎖の長いオリゴマー、プレポリマー及びポリマー等も何等制限なく使用することができる。
上記記載の成分(v):成分(a)、成分(i)及び成分(u)以外のモノマーはこれらに限定されるものではなく、また単独または複数を組み合わせて用いることもできる。
本発明の歯科用組成物が歯科用接着性レジンセメントの場合に用いられる成分(b):フィラーは、歯科用フィラーとして公知なもの、例えば無機フィラー及び/または有機フィラー及び/または有機−無機複合フィラー等が挙げられ、これらは1種または数種を組み合わせても何等制限なく用いることができる。また、これらのフィラーの形状は球状、針状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の粒子形状で良く特に限定されない。
無機フィラーとして具体的に例示すれば、石英、無定形シリカ、アルミニウムシリケート、酸化アルミニウム、X線遮断能を有した元素を含まない種々のガラス類(溶融法によるガラス、ゾルーゲル法による合成ガラス、気相反応により生成したガラスなどを含む)、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、チッ化ケイ素、チッ化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、水酸化カルシウム等が挙げられる。これら無機フィラーの平均粒子径は特に制限はないが、0.001〜10μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜5μmの範囲である。上記無機フィラーの中でも、超微粒子である気相法により生成したアエロジルまたは超微粒子シリカ複合粒子であるゾル−ゲル反応等の溶液中から生成したシリカージルコニア酸化物粒子等は歯科用接着性レジンセメントレジンセメント中に配合することにより増粘剤として働くために、本発明にとっては効果的である。アエロジルを具体的に例示するとアエロジル200、アエロジルOX50、アエロジルR972、アエロジルR974、アエロジルR8200、アエロジルR711、アエロジルDT4、酸化アルミニウムC、二酸化チタンP25等が挙げられる。
また、意図的にそれらの超微粒子を含むフィラーを凝集させた凝集性無機フィラー等を用いても何等問題はない。
この場合の有機フィラーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。これらの有機フィラーの平均粒子径は1〜100μmの範囲が好ましい。より好ましくは3〜50μm、さらに好ましくは5〜10μmである。
この場合の有機−無機複合フィラーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。これらの有機−無機複合フィラーの平均粒子径は0.1〜100μmの範囲が好ましい。より好ましくは0.1〜50μm、さらに好ましくは2〜30μmである。
種々のモノマーや水との濡れ性等を向上させる目的または他の目的で、フィラーである無機フィラー、有機フィラー、有機−無機複合フィラー等のそれぞれのフィラー表面を表面処理剤及び/または表面処理方法により表面処理を行い、歯科用接着性レジンセメントとしての歯科用組成物に用いることもできる。
表面処理に用いることができる表面処理剤及び表面処理方法は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じとすることができる。
これらのフィラーを多機能化する目的でフィラー表面を特殊な表面処理剤及び/または特殊な表面処理法により表面処理を行っても何等制限はない。
歯科用接着性レジンセメントとしての歯科用組成物中におけるこれらのフィラーの配合量は歯科用接着性レジンセメントとしての歯科用組成物に求める材料特性の要求に応じて任意に設定することができる。歯科用接着性レジンセメントとしての歯科用組成物においては、成分(b):フィラーは好ましくは1.0〜90.0重量%の割合で含まれ、より好ましくは2.5〜70重量%の割合で含まれる。
本発明で用いられる成分(d):重合開始剤は、一般に歯科用組成物で用いられている公知の化合物が何等制限無く使用される。重合開始剤は、一般に、熱重合開始剤と光重合開始剤に分類される。
光重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光増感剤を用いることができる。紫外線に対する光増感剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン化合物系、アセトインベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−メトキシチオキサントン、2−ヒドロキシチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、等のチオキサントン系化合物が挙げられる。また、可視光線で重合を開始する光増感剤は、人体に有害な紫外線を必要としないために好適に使用される。これらの例としては、ベンジル、カンファーキノン、α−ナフチル、アセトナフセン、p,p’−ジメトキシベンジル、p,p’−ジクロロベンジルアセチル、ペンタンジオン、1,2−フェナントレンキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン、ナフトキノン等のα−ジケトン類が挙げられる。好ましくは、カンファーキノンが用いられる。
また、上記光増感剤に光重合促進剤を組み合わせて用いることも好ましい。特に第三級アミン類を光重合促進剤として用いる場合には、芳香族基に直接窒素原子が置換した化合物を用いることがより好ましい。かかる光重合促進剤としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッド、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドアミノエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチルアミノフェニルアルコール、p−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2’−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等の第三級アミン類、また、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類及び、そのナトリウム塩、カルシウム塩などの金属塩類、さらに、ジブチル−錫−ジアセテート、ジブチル−錫−ジマレエート、ジオクチル−錫−ジマレエート、ジオクチル−錫−ジラウレート、ジブチル−錫−ジラウレート、ジオクチル−錫−ジバーサテート、ジオクチル−錫−S,S’−ビス−イソオクチルメルカプトアセテート、テトラメチル−1,3−ジアセトキシジスタノキサン等の錫化合物類等も使用できる。これらの光重合促進剤のうち少なくとも一種を選んで用いることができ、さらに二種以上を混合して用いることもできる。上記開始剤及び促進剤の添加量は適宜決定することができる。
さらに、光重合促進能の向上のために、第三級アミンに加えて、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸、α−オキシイソ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、ジメチロールプロピオン酸等のオキシカルボン酸類の添加が効果的である。
熱重合開始剤として具体的に例示すると、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエード等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物類が好適に使用される。
また、上記有機過酸化物とアミン化合物を組み合わせて用いることにより重合を常温で行うこともできる。このようなアミン化合物としては、アミン基がアリール基に結合した第二級または第三級アミンが、硬化促進の観点より好適に用いられる。例えば、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−β−ヒドロキシエチル−アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N−メチル−アニリン、N−メチル−p−トルイジンが好ましい。
上記有機過酸化物とアミン化合物の組合せに、さらにスルフィン酸塩またはボレートを組み合わせることも好適である。かかるスルフィン酸塩類としては、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。ボレートとしてはトリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p−フロロフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などが挙げられる。また、酸素や水との反応によりラジカルを発生するトリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物等の有機ホウ素化合物類は有機金属型の重合開始剤としても使用することができる。
歯科用接着性レジンセメントとしての歯科用組成物には、その他成分を適宜選択して加えることができるが、その用途に応じて添加成分、即ち、重合抑制材、顔料などが適宜配合されても良い。
歯科用接着性レジンセメントとしての歯科用組成物には、必要に応じて、公知の各種添加剤を配合することができる。かかる添加剤の例としては、重合禁止剤、着色剤、変色防止剤、蛍光剤、紫外線吸収剤、抗菌剤等が挙げられる。
重合抑制剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ブチル化ヒドロキシトルエン等が挙げられ、当該組成物の棚寿命の安定化に適している。
本発明の歯科用組成物が自己接着性歯科用コンポジットレジンの場合に用いられる(i):酸性基含有モノマーは、酸性基含有モノマーが有する酸性基の種類は特に限定されず、いずれの酸性基を有する酸性基含有モノマーであっても、成分(a)に該当しなければ、用いることができる。酸性基含有モノマーの他の構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、リン酸エステルを有する酸性基含有モノマー、ピロリン酸基を有する酸性基含有モノマー、カルボン酸基を有するモノマー、ホスホン酸基を有する酸性基含有モノマー、スルホン酸基を有する酸性基含有モノマー、チオリン酸基を有する酸性基含有モノマー、及び、好ましい酸性基含有モノマーは、歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合と同様の構成とすることができる。
酸性基含有モノマーは自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物の使用用途または使用目的並びに使用方法に応じて適宜含有量を選択することができるが、好ましくは0.1〜20.0重量%の範囲である。これら酸性基含有モノマーの含有量が20.0重量%を越えると他のモノマーの重合を阻害するために、接着特性に悪影響を与える恐れがある。一方、酸性基含有モノマーの含有量が0.1重量%以下になると歯質に対する接着性において効果が認められない。
本発明の歯科用組成物が自己接着性歯科用コンポジットレジンの場合は、成分(r):親水性モノマーを含んでもよい。成分(r):親水性モノマーは、自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物に配合することにより、接着する界面に対する浸透性やぬれ性が向上し、接着性を増強させる効果がある。親水性モノマーは、親水性を示すモノマーであれば、ラジカル重合可能な不飽和基の種類に関係なく単官能性または多官能性のいずれにおいても、成分(a)及び成分(i)に該当しなければ、何等制限なく使用することができる。親水性モノマーの他の構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、ラジカル重合可能な不飽和基が(メタ)アクリロイル基である親水性モノマー、及び、好ましい親水性モノマーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。
親水性モノマーが自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物に配合される量は自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物中に含まれる成分(r):親水性モノマーと成分(s):疎水性モノマーの合計重量100重量部に対して5〜90重量部の範囲が好ましく、より好ましくは10〜60重量部の範囲である。これらの範囲を逸脱すると接着する被着体面へのぬれ性が低下したり、重合性が悪くなったりして、接着性の低下を招く結果となる。
自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物は、成分(s):疎水性モノマーを含んでもよい。成分(s):疎水性モノマーは、疎水性を示すモノマーであれば、ラジカル重合可能な不飽和基の種類に関係なく単官能性または多官能性のいずれにおいても、成分(a)及び成分(i)に該当しなければ、何等制限なく使用することができる。疎水性モノマーの他の構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、単官能基含有の疎水性モノマー、芳香族系二官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系二官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系三官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系四官能基含有の疎水性モノマー、ウレタン系の疎水性モノマー、及び、好ましい疎水性モノマーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。
疎水性モノマーが自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物に配合される量は自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物中に含まれる成分(r):親水性モノマーと成分(s):疎水性モノマーの合計重量100重量部に対して5〜90重量部の範囲が好ましく、より好ましくは40〜90重量部の範囲である。これらの範囲を逸脱すると接着する被着体面へのぬれ性が低下したり、重合性が悪くなったりして、接着性の低下を招く結果となる。
自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物に貴金属に対する接着性を付与するためには、分子内に硫黄原子を含有した成分(u):硫黄原子含有モノマーを使用することも自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物にとって有効である。分子内に硫黄原子を含有したモノマーであれば、不飽和基の種類や数及びその他の官能基の有無等には何等関係なく用いることができる。
不飽和基として(メタ)アクリロイル基を有した分子内に硫黄原子を含有したモノマーは、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用接着性レジンセメントの場合と同様の構成とすることができる。この成分(u):硫黄原子含有モノマーは自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物の使用用途または使用目的並びに使用方法に応じて適宜含有量を選択することができるが、好ましくは0.01〜10.0重量%の範囲である。これらの分子内に硫黄原子を含有したモノマーの含有量が10.0重量%を越えると他のモノマーの重合を阻害するために、接着特性に悪影響を与える恐れがある。一方、このモノマーの含有量が0.01重量%未満になると貴金属に対して十分な接着性を得ることができない。
本発明の歯科用組成物が自己接着性歯科用コンポジットレジンの場合に用いられる成分(w):光重合触媒は、特に限定されず、公知の光重合触媒が何等制限なく用いられる。
光重合触媒は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合と同様の構成とすることができる。この場合における、光増感剤、光重合促進剤、及び、オキシカルボン酸類はそれぞれ、歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合と同様の構成とすることができる。
また、光重合触媒を用いる場合の包装形態、及び、好ましい組み合わせはそれぞれ、歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合と同様の構成とすることができる。
(w):光重合触媒の含有量は0.1〜15.0重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜10.0重量%の範囲で含有することである。最も好ましくは0.1〜8.0重量%の範囲で含有することである。
本発明の歯科用組成物が自己接着性歯科用コンポジットレジンの場合に用いられる成分(b):フィラーの構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用接着性レジンセメントの場合における成分(b):フィラーと同様の構成とすることができる。
この場合の無機フィラーは、歯科用組成物が歯科用接着性レジンセメントの場合における無機フィラーと同様の構成とすることができる。
この場合の有機フィラーは、平均粒子径が1〜1000μmの範囲が好ましい。より好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは2〜200μmである。また、この場合の有機フィラーの他の構成は、歯科用組成物が歯科用接着性レジンセメントの場合における有機フィラーと同様の構成とすることができる。
この場合の有機−無機複合フィラーは、平均粒子径が0.1〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは2〜30μmである。また、この場合の有機−無機複合フィラーの構成は、歯科用組成物が歯科用接着性レジンセメントの場合における有機−無機複合フィラーと同様の構成とすることができる。
種々のモノマーや水との濡れ性等を向上させる目的または他の目的で、フィラーである無機フィラー、有機フィラー、有機−無機複合フィラー等のそれぞれのフィラー表面を表面処理剤及び/または表面処理方法により表面処理を行い、自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物に用いることもできる。
表面処理に用いることができる表面処理剤及び表面処理方法は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じとすることができる。
これらのフィラーを多機能化する目的でフィラー表面を特殊な表面処理剤及び/または特殊な表面処理法により表面処理を行っても何等制限はない。
自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物中におけるこれらのフィラーの配合量は自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物に求める材料特性の要求に応じて任意に設定することができ、例えば5重量%〜80重量%、好ましくは50〜80重量%とすることができる。
本発明の歯科用組成物が自己接着性歯科用コンポジットレジンの場合は、成分(l):水及び/または成分(p):有機溶媒を含まないことが好ましい。成分(l):水及び/または成分(p):有機溶媒は自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物に存在すると、自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物に含まれる重合性成分の重合を阻害して、接着性や機械的特性の低下を引き起こす原因となる。
また、自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物の中には、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合における添加剤等の成分を、必要に応じて任意に添加できる。
自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物における使用方法は特に制限されずに、単独での使用だけでなく、エッチング材、プライマー、ボンディング材、セルフエッチングプライマー、セラミックプライマー、メタルプライマー、貴金属プライマー等のその他の処理材やボンディング材等と適宜組み合わせて使用することができる。
自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物における包装形態は、特に限定されず、自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物の保存安定性、自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物に配合される成分割合、重合触媒の種類、使用方法または使用目的等により、単一または二つ以上の複数包装でも何等制限なく、用途に応じて適宜選択することができる。
自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物は、X線造影性ガラスフィラーを含んでもよい。X線造影性ガラスフィラーに含むことができるX線遮断能を有する元素を具体的に例示すると周期律表第四周期のクロム、鉄、及び亜鉛、周期律表第5周期のストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、錫、及びテルル、周期律表第六周期のバリウム、ランタン、イッテリビウム、タンタル、タングステン、及びビスマス等の元素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でもX線造影性ガラスフィラーに含まれる好ましいX線遮断能を有する元素としてはストロンチウム、バリウム、ランタン、ジルコニウム、チタン等が挙げられる。
本発明の歯科用組成物が接着性組成物の場合に用いられる成分(r):親水性モノマーは、接着性組成物に配合することにより、接着する界面に対する浸透性やぬれ性が向上し、接着性を増強させる効果がある。親水性モノマーは、上記成分(a)に該当せず、親水性を示すモノマーであれば、ラジカル重合可能な不飽和基の種類に関係なく単官能性または多官能性のいずれにおいても、何等制限なく使用することができる。親水性モノマーの他の構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、ラジカル重合可能な不飽和基が(メタ)アクリロイル基である親水性モノマー、及び、好ましい親水性モノマーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。
親水性モノマーが接着性組成物としての歯科用組成物に配合される量は接着性組成物としての歯科用組成物中に含まれる成分(r):親水性モノマーと成分(s):疎水性モノマーの合計重量100重量部に対して5〜90重量部の範囲が好ましく、より好ましくは10〜60重量部の範囲である。これらの範囲を逸脱すると接着する被着体面へのぬれ性が低下したり、重合性が悪くなったりして、接着性の低下を招く結果となる。
本発明の歯科用組成物が接着性組成物の場合に用いられる成分(s):疎水性モノマーは、上記成分(a)に該当せず、かつ、疎水性を示すモノマーであれば、ラジカル重合可能な不飽和基の種類に関係なく単官能性または多官能性のいずれにおいても、何等制限なく使用することができる。疎水性モノマーの他の構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、単官能基含有の疎水性モノマー、芳香族系二官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系二官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系三官能基含有の疎水性モノマー、脂肪族系四官能基含有の疎水性モノマー、ウレタン系の疎水性モノマー、及び、好ましい疎水性モノマーは、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同様の構成とすることができる。
疎水性モノマーが接着性組成物としての歯科用組成物に配合される量は、接着性組成物としての歯科用組成物中に含まれる成分(r):親水性モノマーと成分(s):疎水性モノマーの合計重量100重量部に対して10〜95重量部の範囲が好ましく、より好ましくは40〜90重量部の範囲である。これらの範囲を逸脱すると接着する被着体面へのぬれ性が低下したり、重合性が悪くなったりして、接着性の低下を招く結果となる。
本発明の歯科用組成物が接着性組成物の場合においては、成分(r):親水性モノマーと成分(s):疎水性モノマーは、その合計量が30.0〜99.5重量%の割合で含まれ、好ましくは50.0〜97.5重量%の割合で含まれる。
本発明の歯科用組成物が接着性組成物の場合に用いられる成分(f):重合触媒は、特に限定されず、公知のラジカル発生剤が何等制限なく用いられる。成分(f):重合触媒は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、化学重合触媒、有機過酸化物、アミン化合物、スルフィン酸塩類、ボレート化合物、及び、バルビツール酸類はそれぞれ、歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合と同様の構成とすることができる。
接着性組成物としての歯科用組成物を単独で使用する場合は、化学重合触媒を少なくとも二つ以上の包装形態に分割して含ませる必要がある。また、接着性組成物としての歯科用組成物を他の処理材ともに使用する場合は、接着性組成物としての歯科用組成物が他の処理材と接触することにより化学重合が開始するように化学重合触媒を接着性組成物としての歯科用組成物と他の処理材の両方にそれぞれ含ませることもできる。
化学重合触媒の中でも、スルフィン酸塩類、バルビツール酸類、有機過酸化物−第3級アミン等をそれぞれ単独または組み合わせて用いることが好ましく、より好ましくは有機過酸化物−第3級アミン、有機過酸化物−第3級アミン−バルビツール酸類、有機過酸化物−第3級アミン−スルフィン酸塩類を用いることである。
これらの化学重合触媒は0.1〜15.0重量%の範囲で含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜10.0重量%の範囲で含有することである。
光重合触媒は、歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合と同様の構成とすることができる。この場合における、光増感剤、光重合促進剤、及び、オキシカルボン酸類はそれぞれ、歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合と同様の構成とすることができる。
また、光重合触媒を用いる場合の包装形態、好ましい組み合わせ、含有量はそれぞれ、歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合と同様の構成とすることができる。
また加熱や加温による熱重合触媒としては、上記有機過酸化物の他にアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物類が好適に使用されるが、これに限定されるものではない。また、これらの熱重合触媒を単独または数種を組み合わせて用いることもできる。
さらに、使用用途に応じて他に、クマリン系、シアニン系、チアジン系等の増感色素類、ハロメチル基置換−s−トリアジン誘導体、ジフェニルヨードニウム塩化合物等の光照射によりブレンステッド酸またはルイス酸を生成する光酸発生剤、第四級アンモニウムハライド類、遷移金属化合物類等も適宜使用することができる。
本発明の歯科用組成物が接着性組成物の場合に用いられる成分(g):シランカップリング剤は特に限定するものではないが、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合におけるシランカップリング剤と同様の構成とすることができる。シランカップリング剤の配合量は0.1-15重量%より好ましくは1-8重量%である。
本発明の歯科用組成物が接着性組成物の場合に用いられる成分(q):酸無水物及び/または弱酸性化合物のうち、弱酸性化合物は、歯科用組成物が歯科用プライマーの場合における弱酸性化合物と同様の構成とすることができる。
本発明の歯科用組成物が接着性組成物の場合に用いられる成分(q):酸無水物及び/または弱酸性化合物のうち、酸無水物は、歯科用組成物が歯科用プライマーの場合における酸無水物と同様の構成とすることができる。
pH2以上の酸無水物であることが好ましく、酸無水物でもカルボン酸系の化合物が好ましく、カルボン酸系の化合物のみであることがより好ましい。カルボン酸系の化合物としては、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、イタコン酸、アコニット酸の化合物が好ましい。特にクエン酸、マレイン酸、イタコン酸の無水物が好ましい。酸無水物はカルボン酸、硫酸、硝酸、リン酸の酸無水物を含むことが好ましい。
成分(q):酸無水物及び/または弱酸性化合物の配合量は、0.1-5重量%、より好ましくは0.1-2重量%である。
成分(l):水及び/または成分(p):有機溶媒は接着性組成物としての歯科用組成物に存在すると、接着性組成物に含まれる重合性成分の重合を阻害して、接着性や機械的特性の低下を引き起こす原因となる。そのため本発明の歯科用組成物が接着性組成物の場合は、特に酸性基含有モノマーを含まない場合には、成分(l):水及び/または成分(p):有機溶媒を含まないことが好ましい。接着性組成物としての歯科用組成物が、成分(l):水及び/または成分(p):有機溶媒を含む場合には、接着性組成物としての歯科用組成物を修復する部位に適用後、重合前及び/または重合過程において気銃等により十分乾燥して水及び有機溶媒を揮発させる必要がある。
本発明の歯科用組成物が接着性組成物の場合は、成分(b):フィラーを含むことができる。この場合の成分(b):フィラーの構成は、以下に説明する構成を除き、歯科用組成物が歯科用接着性レジンセメントの場合における成分(b):フィラーと同様の構成とすることができる。
この場合の無機フィラーは、歯科用組成物が歯科用接着性レジンセメントの場合における無機フィラーと同様の構成とすることができる。
この場合の有機フィラーは、平均粒子径が0.1〜200μmの範囲が好ましい。より好ましくは0.5〜150μm、さらに好ましくは1〜100μmである。また、この場合の有機フィラーの他の構成は、歯科用組成物が歯科用接着性レジンセメントの場合における有機フィラーと同様の構成とすることができる。
この場合の有機−無機複合フィラーは、平均粒子径が0.1〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは0.2〜30μmである。また、この場合の有機−無機複合フィラーの他の構成は、歯科用組成物が歯科用接着性レジンセメントの場合における有機−無機複合フィラーと同様の構成とすることができる。
種々のモノマーや水との濡れ性等を向上させる目的または他の目的で、フィラーである無機フィラー、有機フィラー、有機−無機複合フィラー等のそれぞれのフィラー表面を表面処理剤及び/または表面処理方法により表面処理を行い、接着性組成物としての歯科用組成物に用いることもできる。
表面処理に用いることができる表面処理剤及び表面処理方法は、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合と同じとすることができる。
これらのフィラーを多機能化する目的でフィラー表面を特殊な表面処理剤及び/または特殊な表面処理法により表面処理を行っても何等制限はない。
接着性組成物としての歯科用組成物中におけるこれらのフィラーの配合量は接着性組成物としての歯科用組成物に求める材料特性の要求に応じて任意に設定することができる。
また、接着性組成物としての歯科用組成物の中には、歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合における添加剤等の成分を、必要に応じて任意に添加できる。
接着性組成物としての歯科用組成物の使用方法は特に制限されずに、単独での使用だけでなく、エッチング材、プライマー、ボンディング材、セルフエッチングプライマー、セラミックプライマー、メタルプライマー、貴金属プライマー等のその他の処理材やボンディング材等と適宜組み合わせて使用することができる。
本発明の歯科用組成物が接着性組成物の場合における包装形態は、特に限定されず、接着性組成物としての歯科用組成物の保存安定性、接着性組成物としての歯科用組成物に配合される成分割合、重合触媒の種類、使用方法または使用目的等により、単一または二つ以上の複数包装でも何等制限なく、用途に応じて適宜選択することができる。
接着性組成物としての歯科用組成物は、X線造影性ガラスフィラーを含んでもよい。接着性組成物としての歯科用組成物に含まれるX線造影性ガラスフィラーは、自己接着性歯科用コンポジットレジンとしての歯科用組成物に含まれるX線造影性ガラスフィラーと同様の態様とすることができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に、且つ具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[1.歯科用複合材料用組成物]
歯科用組成物が歯科用複合材料用組成物の場合における特性確認試験の方法を以下に示す。
(硬化性試験)
歯科用複合材料用組成物を厚さ2mm、直径15mmの穴の空いた石膏型に充填し、水中に浸漬し、充填した歯科用複合材料用組成物の表面に、歯科用光照射器(松風社製、「ソリデライトII」)にて180秒間光照射して、歯科用複合材料用組成物を重合硬化させ、得られた硬化物のビッカース硬度(kgf/mm)を、下記の測定方法により求めた。
圧接した板ガラスを取り除き、板ガラスを圧接した側の硬化物(複合材料)の表面に、微小硬度計(明石製作所社製、商品コード「MVK−E」)にて荷重200gを10秒間かけてビッカース硬度を測定した。場所を変えて計3回測定し、3回の平均値を硬化物のビッカース硬度とした。
(接着試験方法)
屠殺後、抜去した牛歯下顎永久歯中切歯を24時間以内に冷凍保存したものを解凍後、歯根部の除去及び歯冠部の切断を行って牛歯細片を作製し、その牛歯細片をエポキシ樹脂にて包埋を行う。その包埋牛歯を注水下、#600番の耐水研磨紙にてエナメル質または象牙質を露出させて水洗する。
この露出したエナメル質または象牙質に直径4mmの穴の空いた両面テープを貼って接着面を規定する。その規定した接着面全体に松風ビューティボンドユニバーサルを十分に塗布して接着材面を作成する。その後、10秒間放置後、弱圧のエア乾燥を約3秒間行った後、さらにエアを強めて充分に乾燥させる。その後、37℃の水に15分間浸漬し、口腔内の湿潤状態を再現し、その接着材面にプラスチックモールド(内径4mm、高さ2mm)を固定して、実施例または比較例の歯科用複合材料用組成物をそのモールド内部に填入し、光重合照射器(グリップライトII:松風製)を用いて30秒間光照射を行い硬化させる。硬化後、モールドを除去して接着試験体を作製した。
この接着試験体を37℃蒸留水中に24時間浸漬後、インストロン万能試験機(インストロン5567、インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/min.にて剪断接着強さによる歯質接着性試験を行う。試料数は6個としその平均値を求めた。
[成分及び略称]
実施例中に使用されるした成分の略称を以下に示す。
〔その他の重合性単量体〕
・Bis−GMA:2,2-ビス(4-(3-(メタ)アクリロイルオキシ‐2-ヒドロキシプロ ポキシ)フェニル)
・UDMA:ジ(メタクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジウレタン
・TEGDM:トリエチレングリコールジメタクリレート
・HEMA:2−ヒドロキシエチルメタアクリレート
〔リン酸エステル基を有する重合性単量体〕
・2−MEP: 2−(メタクリロキシ)エチルホスフェート
・Bis−MEP: ビス〔2−(メタクリロキシ)エチル〕ホスフェート
・6−MHPA: (6−メタクリロキシ)ヘキシルホスホノアセテート
〔2塩基酸のカルボキシル基を有する重合性単量体〕
・4−AET: 4−アクリロキシエチルトリメリット酸
・4−MET: 4−メタクリロキシエチルトリメリット酸
〔アクリルアミド基を含有するモノマー〕
・FAM−401(富士フイルム株式会社製)
・FAM−201:(富士フイルム株式会社製)
〔フィラー〕
・ASGフィラー:アルミノシリケートガラスフィラー(平均粒径5μm)
〔超微粒子フィラー〕
・R−972
〔重合促進剤〕
・BBA・Na: 5−n−ブチルバルビツール酸ナトリウム塩
・EB:p-N,N‐ジメチルアミノ安息香酸エチル
・OT:ジオクチルスズジラウレート
〔重合開始剤〕
・CQ: カンファーキノン
〔重合禁止剤〕
・BHT: ブチル化ヒドロキシトルエン
複合材料の製造は以下の通りである。
(混合重合性単量体の調製)
表2記載の重合性単量体及び重合開始剤を、ブレードにて混合するミキサー(愛工舎製:BM)もしくはタンブラーミキサー(セイワ技研製:TM)にて混合する。
(シラン処理方法)
シラン処理調整製品:
シラン混合液a:シランカップリング剤のγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン3%、エチルアルコール77%、水20%
シラン混合液b:シランカップリング剤のγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30%、エチルアルコール69%、水1%
上記シラン混合液を作製し、フィラーに対して、シラン混合液aまたはシラン処理液bを処理するが、それぞれを噴霧して処理容器中で撹拌し混合した。混合後、シラン処理フィラーを熱風乾燥機中で、熟成した後、係留を行ない、その後冷却させ、シラン処理フィラー凝集物を得た。得られた熱処理物をヘンシェルミキサー中に入れ、解砕を行うことで、表面がポリ(オルガノ)シロキサンで被覆されたシラン処理フィラーa,bを作製した。
(複合材料の製造)
表3記載の通りの所定量の混合重合性単量体、充填材及び超微粒子フィラーを、ニーダー(井上製作所製:ND)もしくはプラネタリーミキサー(井上製作所製:PM)にて混合した。
(複合材料の評価)
複合材料の硬化性試験及び接着曲げ強さ試験を行った。
Figure 2021054795
Figure 2021054795
表3に示すように実施例1−1〜1−6では、硬化性試験及び接着曲げ強さ試験ともに優れた結果となり、口腔内のような水分が過剰にある状態でも十分な硬化性を発揮し、臨床上使用できることが認められた。一方、比較例1−1〜1−3では、硬化性試験及び接着試験のいずれにおいても十分な結果が得られず、口腔内のような水分が過剰にある状態での実用性が認められなかった。
[2.歯科用レジンセメント]
歯科用組成物が歯科用レジンセメントの場合における特性確認試験の方法を以下に示す。
(i)エナメル質及び象牙質接着強度測定
歯質は人歯に換えて新鮮抜去牛前歯を用い、その歯根部を除去後エポキシ樹脂包埋して用いた。同牛歯の唇面を、耐水研磨紙を用いて流水下にて研磨し、エナメル質及び象牙質を露出させ、SiC600番研磨後、水洗後1週間水中保存を行った。一方、接着試験用の治具、ステンレスロッド(直径4.15mm)は、その接着面を粒径約50μmのアルミナを用いてサンドブラスト処理し、水洗後、金属用プライマー「メタルリンク」〔株式会社松風製〕を塗布、10秒間自然乾燥させたものを用いた。SULZURMIXPAC社製ダブルシリンジに各々等量充填されたレジンセメントの第一のペーストと第二のペーストは、付属のスタティックミキサーを通過させることにより、練和されて押し出される。押し出されたペーストを歯質とステンレスロッドの間に介在させ、200gの荷重を加え接着させる。余剰ペーストを、マイクロブラシを用いて除去後、セメントラインに沿って、10秒間光照射を行う。光照射器は「グリップライトII」〔株式会社松風製〕を用いた。光照射の10分後荷重を除去し、同接着試験体(n=6)を37℃蒸留水中24時間浸漬後、インストロン万能試験機(インストロン5567、インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/minにて、歯質に対する剪断接着強度の測定を行った。
(ii)陶材接着強度測定
歯科用陶材「ヴィンテージハロー」〔株式会社松風製〕焼成物(φ11mm×8.5mm)の片方の平面をSiC600番研磨後、水洗し、粒径約50μmのアルミナを用いてサンドブラスト処理(0.1〜0.2MPa)後、水洗後1週間水中保存した。一方、接着試験用の治具、ステンレスロッド(直径4.55mm)は、接着面を粒径約50μmのアルミナを用いてサンドブラスト処理し、水洗後、金属用プライマー「メタルリンク」〔株式会社松風製〕を塗布、10秒間自然乾燥させたものを用いた。接着試験用の治具、ステンレスロッド(直径4.55mm)を用い、以下、(i)と同様の方法で、陶材に対する引張接着強度の測定を行った。
(iii)ジルコニア接着強度測定
日本ファインセラミックス株式会社製ジルコニア平板(15mm×15mm×1.8mm)の片方の平面をSiC600番研磨後、水洗後1週間水中保存、その後、粒径約50μmのアルミナを用いてサンドブラスト処理(0.2〜0.3MPa)後、水洗した。(ii)陶材の引張接着強度測定と、以下、同一の方法にて、ジルコニアに対する引張接着強度の測定を行った。
(iv)コンポジットレジン接着強度測定
カバーグラス上に内径15mm、高さ2mmの金枠を置き、コンポジットレジン「セラマージュ」〔株式会社松風製〕のペーストを充填し、上下両面にカバーグラスを介して圧接後、一方のカバーグラス面を上にし、「ツイン重合器」〔株式会社松風製〕にて、3分間光照射した。底面をサンドブラスト処理(0.1〜0.2MPa)後、水洗後1週間水中保存した。(ii)陶材の引張接着強度測定と、以下、同一の方法で、コンポジットレジンに対する引張接着強度の測定を行った。
(v)金合金接着強度測定
金合金「スーパーゴールドタイプ4」〔株式会社松風製〕の平板(15mm×15mm×2.1mm)片面をSiC600番研磨後、水洗し、その後、粒径約50μmのアルミナを用いてサンドブラスト処理(0.4〜0.5MPa)し、水洗後1週間水中保存した。(ii)陶材の引張接着強度測定と、以下、同様の方法にて、金合金に対する引張接着強度の測定を行った。
[成分及び略称]
実施例中に使用されるした成分の略称を以下に示す。
〔ラジカル重合性モノマー〕
・UDMA: ジ−2−メタクリロイルオキシエチル−2,2,4−トリメチルへキサメチレンジカルバメート
・3G: トリエチレングリコールジメタクリレート
・Bis-GMA: 2,2’−ビス〔4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン
・2−HEMA
〔酸性基含有モノマー〕
・2−MEP: 2−(メタクリロキシ)エチルホスフェート
・4−AET: 4−アクリロキシエチルトリメリット酸
・4−MET: 4−メタクリロキシエチルトリメリット酸
〔フィラー〕
・FASGフィラー: フルオロアルミノシリケートガラスフィラー
平均粒径1.8μm、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン8%シラン処理フィラー
・R−711: 超微粒子シリカフィラー
〔シランカップリング剤〕
・γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
〔重合促進剤〕
・BBA・Na: 5−n−ブチルバルビツール酸ナトリウム塩
・DEPT: N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン
〔重合開始剤〕
・BPO:過酸化ベンゾイル
・CQ: カンファーキノン
〔棚寿命安定剤〕
・BHT: ブチル化ヒドロキシトルエン
〔(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー〕
・FAM−401(富士フイルム株式会社製)
・FAM−201(富士フイルム株式会社製)
(1)レジンセメントの製造
表4の組成に基づき、第一のペースト及び第二のペーストからなる実施例2−1〜2−5及び比較例2−1〜2−3のツーペースト型のレジンセメントを製造した。

Figure 2021054795
(2)レジンセメントの特性評価
〔接着強度〕
各レジンセメントについて、エアー乾燥していない歯牙(エナメル質及び象牙質)試験体に対する剪断接着強度及びジルコニア、陶材、コンポジットレジン及び金合金の各試験体に対する引張接着強度を測定した。測定結果を表4に示す。
表4に示すように実施例2−1〜2−5では、全ての剪断接着試験及び全ての引張接着試験において優れた結果となり、口腔内のような水分が過剰にある状態や、吸水した試験片上においても十分な硬化性を発揮し、臨床上使用できることが認められた。一方、比較例2−1〜2−3では、いずれの試験においても十分な結果が得られず、口腔内のような水分が過剰にある状態や、吸水した試験片上での実用性が認められなかった。
[3.義歯修復材料]
歯科用組成物が義歯修復材料の場合における特性確認試験の方法を以下に示す。
(接着曲げ強さ試験方法)
評価目的:歯科汎用アクリルレジンとの接着曲げ強さを評価する。
評価方法:歯科汎用アクリルレジン(プロビナイス:松風社製)にて、試験片(10×2×2mm:直方体)を、水分存在下の石膏型内で作製し、37℃水に7日間浸漬し試験片を準備する。試験片を5mmの隙間を設けて固定する。次に、配合表に従い調製した粉材及び液材を、指定の比で混練し、義歯修復材料の混練物を調製する。試験片の5mmの隙間に筆を用いて充填する。充填した後、1時間放置し、バリ等除き、試験体(25×2×2mm:直方体型)とした。その試験体を37℃、24時間水中に浸漬した後に接着曲げ強さ試験を行った。
接着曲げ強さ試験は、インストロン万能試験機(インストロン5567,インストロン社製)を用い支点間距離20mm,クロスヘッドスピード1mm/minにて行った。なお、試験は試験体数10個で行い、その平均値をもって評価した。
(充填試験方法)
評価目的:湿潤した歯科汎用アクリルレジンへの濡れ性及び充填性を評価する。
評価方法:充填試験は前記接着曲げ強さ試験方法の「試験片の5mmの隙間に充填する」時に同時に評価した。評価基準は以下の通り。
A:試験片の隙間に隙間なく練和物を充填でき、筆ばなれが良好
B:試験片の隙間の隅角部に僅かに気泡が発生するものの、筆ばなれが良好
C:試験片の隙間の隅角部に気泡が発生し、筆ばなれも不良
(硬化性試験方法)
評価目的:義歯修復材料の練和物の操作時間を評価する。
評価方法:配合表(表5)に従い調製した粉材及び液材を、指定の練和比で30秒間練和した後餅状の練和物を0.5ml取り、約20gのガラス板上に乗せ、30秒の間、静置した。練和物の上にもう一枚の上記と同じ大きさのガラス板を乗せ、さらに静かに100gの分銅を乗せた。分銅を乗せた後、開始30秒後に重りを外し、円形の広がりを最大、最小直径の平均値として算出し、これをフロー値とした。この値の大きいものほど流動性良好と判断した。この静置時間を30秒、60秒、120秒、180秒と実施し流動性の変化を確認した。変化量の評価基準は、静置時間が30秒の時のフロー値に比べ、120秒後でフロー値の値が90%以上であって、150秒後でフロー値の値が50%以下であれば操作時間及び硬化時間に適しており評価(A)とし、120秒後でフロー値の値が90%未満であれば操作時間が短すぎるため評価(B)とし、150秒後でフロー値の値が50%を超えるのであれば硬化時間が長すぎるため評価(C)とした。
(変色性試験)
評価目的:義歯修復材料の硬化体の変色度合いを評価する。
評価方法:配合表(表5)に従い調製した粉材及び液材を、指定の練和比で30秒間練和した練和物を直径8mmの貫通孔を有する厚さ3mmのポリアセタール製型に、填入した後、貫通孔の両端をポリプロピレンフィルムで圧接し、5時間放置し、試験片を6個作製した。得られた試験片についてはその表面をバフ研磨を行い、水中24時間保存後の試料を初期浸漬体とした。その後、初期浸漬体の内5個を、80℃で7日間水中に浸漬した。浸漬後、水洗、乾燥した処理試験片として、初期浸漬体と変色度合を相対評価した。評価基準は以下の通りである。処理試験片を5個作製し、3人で最も多い評価を試験結果とした。
A:評価した処理試験片の変色度合が、初期浸漬体と同程度である。
B:評価した処理試験片の変色度合が、初期浸漬体の変色度合と比べて、僅かに変色した。
C:評価した処理試験片の変色度合が、初期浸漬体の変色度合と比べて、明らかに変色した。
[成分及び略称]
実施例中に使用されるした成分の略称を以下に示す。
〈液材成分〉
(メタ)アクリル酸基含有モノマー:メチルメタクリレート[MMA]
(メタ)アクリル酸基含有モノマー:2−エトキシエチルメタクリレート[2EEMA]
(メタ)アクリル酸基含有モノマー(架橋性):1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート[HDDMA]
(メタ)アクリル酸基含有モノマー(架橋性):2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート[HAPM]
親水性モノマー:2−ヒドロキシエチルメタクリレート[HEMA]
(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー:FAM−401(富士フイルム株式会社製)
(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー:FAM−201(富士フイルム株式会社製)
ハロゲンイオン形成化合物:トリオクチルメチルアンモニウムクロライド[TOMAC]
有機溶媒:エタノール[Et]
有機過酸化物:ベンゾイルパーオキサイド[BPO]
〈粉材成分〉
アクリル酸(共)重合体:PMMA-PEMA共重合体[PMMA-PEMA]
有機金属化合物:銅(II)アセチルアセナート[CAA]
バルビツール酸誘導体:1−シクロヘキシル-5-プロピルバルビツール酸[CPBA]
アミン化合物:N,N―ジメチルアニリン[DMA]
実施例及び比較例における各化合物の配合量と試験結果を以下の表5に示す。
Figure 2021054795
表5に示すように実施例3−1〜3−6では、比較例3−1〜3−3と比較して、他の物性を損ねることなく、接着曲げ強さ試験において高い強度を示した。
[4.歯質接着プライマー]
歯科用組成物が歯質接着プライマーの場合における特性確認試験の方法を以下に示す。
(1)歯質接着性試験
評価目的:
各種歯質接着プライマーを用いたエナメル質及び象牙質に対する歯質接着性の評価。
評価方法:
屠殺後、抜去した牛歯下顎永久歯中切歯を24時間以内に冷凍保存したものを解凍後、歯根部の除去及び歯冠部の切断を行って牛歯細片を作製し、その牛歯細片をエポキシ樹脂にて包埋を行う。その包埋牛歯を注水下、#600番の耐水研磨紙にてエナメル質または象牙質を露出させて水洗し、5秒間の乾燥エアーを吹き付け乾燥させる。この露出したエナメル質または象牙質に直径4mmの穴の空いた両面テープを貼って接着面を規定する。その規定した接着面に実施例または比較例で指定された接着術式により接着処理を行う。その後、その接着処理した面にプラスチックモールド(内径4mm、高さ2mm)を固定して、光重合型コンポジットレジン(ビューティフィル、株式会社松風製)をそのモールド内部に充填し、光重合照射器(グリップライトII、株式会社松風製)を用いて30秒間光照射を行い硬化させる。硬化後、モールドを除去し、それを接着試験体とする。この接着試験体を37℃蒸留水中に24時間浸漬後、インストロン万能試験機(インストロン5567、インストロン社製)を用いてクロスヘッドスピード1mm/分で剪断接着強さによる歯質接着性試験を行う。
(2)歯質接着耐久性試験
評価目的:
各種歯質接着プライマーを用いたエナメル質及び象牙質に対する歯質接着耐久性の評価。
評価方法:
歯質接着性試験と同様に接着試験体を作製した後、その接着性試験体を37℃蒸留水中に24時間浸漬する。その後、4℃及び60℃の恒温水槽に各1分間ずつ交互に浸漬するサーマルサイクルを2000サイクル実施する。サーマルサイクル終了後、この接着試験体をインストロン万能試験機(インストロン5567、インストロン社製)を用いて、クロスヘッドスピード1mm/分で剪断接着強さによる歯質接着性試験を行う。
(3)貯蔵安定性試験
評価目的:
調製した各種歯質接着プライマーを50℃の環境下で2週間保存し、その組成物を用いたエナメル質及び象牙質に対する歯質接着性の評価。
評価方法:
歯質接着性試験と同様の方法にて剪断接着強さによる歯質接着性試験を行う。
[成分及び略称]
実施例中に使用されるした成分の略称を以下に示す。
Bis-GMA:2,2−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン
UDMA:ジ(メタクリロイルオキシ)−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジウレタン
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
CQ:カンファーキノン
BPO:ペンゾイルパーオキサイド
DEPT:N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン
DMB:ジメチルアミノベンゾイックアシッド
MHPA:6−メタクリロイルオキシヘキシルホスホノアセテート
MHPP:6−メタクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート
META:4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物
MET:4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸
AETA:4−アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物
AET:4−アクリロイルオキシエチルトリメリット酸
FAM-401(富士フイルム株式会社製):(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー
FAM-201(富士フイルム株式会社製):(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー
A.プライマー組成物の調製
[1液型プライマー組成物(組成物4−1〜4−7)の調製]
表6に示した組成にて、1液型プライマー組成物(組成物4−1〜4−7)をそれぞれ調製し、実施例及び比較例に用いた。
Figure 2021054795
B.ボンディング材組成物の調製
[光重合型1液型ボンディング材組成物(組成物4−A及び4−B)の調製]
表7に示した組成にて、光重合型1液型ボンディング材組成物(組成物4−A及び4−B)をそれぞれ調製し、実施例及び比較例に用いた。
Figure 2021054795
[デュアル重合性2液型ボンディング材組成物(組成物4−C及び4−D)の調製]
表8に示した組成にて、デュアル重合型2液型ボンディング材組成物(組成物4−C及び4−D)をそれぞれ調製し、実施例及び比較例に用いた。
Figure 2021054795
C.歯質接着性評価
[実施例4−1〜4−5]
1液型プライマー組成物4−1〜4−5と、光重合型1液型ボンディング材組成物4−Aまたは4−Bとの組み合わせからなる2ステップタイプ接着システム(プライマー塗布/10秒放置/乾燥/ボンディング材塗布/10秒光照射)による接着処理を行った。
その後、光重合型コンポジットレジン(ビューティフィル、株式会社松風製)の充填操作を経て、歯質接着性試験、歯質接着耐久性試験及び貯蔵安定性試験を実施した。それぞれの結果を表9に示した。
表9に示すように、1液型プライマー組成物4−1〜4−5からなる接着システムはエナメル質及び象牙質に対して優れた歯質接着性(37℃24hr水中浸漬後)を有していることが認められた。また、サーマルサイクル2000回後の接着耐久性においてもエナメル質及び象牙質共に37℃24hr水中浸漬後の歯質接着性と比較して接着強度が低下することなく、優れた接着耐久性を有していることが認められた。さらに1液型プライマー組成物4−1〜4−5は50℃2週間の保存条件下においても加水分解による劣化や変質を受けることなく、初期の歯質接着性(37℃24hr水中浸漬後)を維持しており、優れた貯蔵安定性も認められた。
[比較例1〜2]
1液型プライマー組成物4−6〜4−7と、光重合型1液型ボンディング材組成物4−Aまたは4−Bとの組み合わせからなる2ステップタイプ接着システム(プライマー塗布/10秒放置/乾燥/ボンディング材塗布/10秒光照射)による接着処理を行い、実施例4−1〜4−5と同じ各種試験を実施した。それぞれの結果を表9に示した。
表9に示すように、1液型プライマー組成物4−6〜4−7を使用した接着システムは、歯質接着性、接着耐久性及び貯蔵安定性のいずれにおいても、1液型プライマー組成物4−1〜4−5を使用した接着システムと比較して、象牙質及びエナメル質の接着強度が低いことが認められた。
[実施例4−6〜4−7]
デュアル重合型2液型ボンディング材組成物4−Cまたは4−Dと、1液型プライマー組成物4−2の組み合わせからなる2ステップタイプ接着システム(プライマー塗布/10秒放置/乾燥/ボンディング材等量混和・塗布)による接着処理を行った。
その後、光重合型コンポジットレジン(ビューティフィル、株式会社松風製)の充填操作を経て、歯質接着性試験、歯質接着耐久性試験及び貯蔵安定性試験を実施した。それぞれ結果を表9に示した。
表9に示すように、1液型プライマー組成物4−2はデュアル重合型のボンディング材からなる接着システムにおいても、エナメル質及び象牙質に対して優れた歯質接着性(37℃24hr水中浸漬後)を有していることが認められた。また、サーマルサイクル2000回後の接着耐久性においてもエナメル質及び象牙質共に37℃24hr水中浸漬後の歯質接着性と比較して接着強度が低下することなく、優れた接着耐久性を有していることが認められた。さらに1液型プライマー組成物4−2は50℃2週間の保存条件下においても加水分解による劣化や変質を受けることなく、初期の歯質接着性(37℃24hr水中浸漬後)を維持しており、優れた貯蔵安定性も認められた。
Figure 2021054795
[5.歯科用プライマー]
歯科用組成物が歯科用プライマーの場合における特性確認試験の方法を以下に示す。
[接着試験方法]
・初期接着試験:接着試験体を37℃水中に24時間浸漬後、接着試験を行った。
・耐久接着試験:接着試験体を37℃水中に24時間浸漬後、以下の条件でサーマルサイクル試験を施し、接着試験を行った。サーマルサイクルの条件は5℃と50℃をそれぞれ、1分間の浸漬を1万回繰り返しとした。
・棚寿命試験:歯科用プライマーを調製後、5ccずつを密閉容器に採取し、23℃の冷暗所に1年間保存後、前記初期接着試験及びサーマルサイクル試験を行った。
なお、接着試験は大気圧下、23℃の条件で実施した。
[試料の調製]
下記の成分を用いて表10及び11記載の配合により通法に従い歯科用プライマー:P5−1〜P5−7、接着材:5−B、及びレジンセメント:5−RCを調製した。
(歯科用プライマー:P5−1〜P5−7)
・有機溶媒:無水エタノール、アセトン
・シランカップリング剤:γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメエキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
・酸無水物及び/または弱酸性化合物:無水クエン酸、無水マレイン酸、ピロリン酸
・強酸性化合物:リン酸
・(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー:FAM−401(富士フイルム株式会社製)、FAM−201(富士フイルム株式会社製)

(接着材:5−B)
・重合性単量体:2−ヒドロキシエチルメタアクリレート(2HEMA)、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート(2HPA)、2,2−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン(Bis−GMA)、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸の無水物(4MABT)
・重合触媒(光重合開始剤):カンファーキノンとp−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル

(レジンセメント:5−RC)
・重合性単量体:2−ヒドロキシエチルメタアクリレート(2HEMA)、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート(2HPA)、2,2−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン(Bis−GMA)、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリット酸の無水物(4MABT)
・重合触媒(化学重合触媒):過酸化ベンゾイル (BPO)とp−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル
・フィラー:シラン処理ガラス(平均粒径:3μm)、アエロジル(R972)
[二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス]
(被接着体及び接着体の調製)
CAD/CAMシステムまたはプレスシステムを用いて二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス(株式会社松風社製)から成型し、指示通りに焼成して、水洗後1週間水中保存した後に、二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス被接着体及び二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス接着体とした。二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス被接着体(大)の形状及び寸法は円柱形状で直径2cm厚さ1cmとした。二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス接着体(小)の形状及び寸法は円柱形状で直径0.5cm厚さ1cmとした。
(接着試験体の作製)
二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス被接着体(大)及び二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス接着体(小)にアルミナ(50μm)のサンドブラスト処理(0.2MPa,1秒間)後に、接着材5−Bを二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス接着体(小)に塗布後、それを二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス被接着体(大)に圧接→余剰接着材の除去→15分間放置して硬化させ接着試験体を作製した。(試験体数N=5)

[陶材]
(被接着体及び接着体の調製)
「ヴィンテージ LD」(株式会社松風社製)を用いて指示通りに築盛及び焼成して、水洗後1週間水中保存した後に、陶材被接着体及び陶材接着体とした。陶材被接着体(大)の形状及び寸法は円柱形状で直径2cm厚さ1cmとした。陶材接着体(小)の形状及び寸法は円柱形状で直径0.5cm厚さ1cmとした。
(接着試験体の作製)
陶材被接着体(大)及び陶材接着体(小)にアルミナ(50μm)のサンドブラスト処理(0.2MPa,1秒間)後に、歯科用プライマー:P5−1〜P5−7のいずれかを塗布・乾燥した。その後、レジンセメント(5−RC)を混和して陶材接着体(小)に塗布後、それを陶材被接着体(大)に圧接→余剰セメントの除去→15分間放置して硬化させ接着試験体を作製した。(試験体数N=5)

[コンポジット]
(被接着体の調製)
CAD/CAMシステムを用いてレジンディスク材料「松風ディスクHC」(株式会社松風社製)から切削加工して、水洗後1週間水中保存した後に、コンポジットレジン被接着体とした。コンポジットレジン被接着体の形状及び寸法は円柱形状で直径2cm厚さ1cmとした。
(接着試験体の作製)
コンポジットレジン被接着体に歯科用プライマー:P5−1〜P5−7のいずれかを塗布・乾燥した。その後、接着材(5−B)を塗布して30秒間光照射(グリップライト2:松風社製)を行なった。直径0.5cmの冶具を用いて接着面を規定し、そこにコンポジットレジン(ライトフィル2:松風社製)を充填後に30秒間光照射(グリップライト2:松風社製)を行いコンポジットレジンを硬化させ、接着試験体を作製した。(試験体数N=5)
Figure 2021054795
Figure 2021054795
Figure 2021054795
本発明の歯科用プライマーを用いた実施例5−1〜5−6(二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス同士のレジンセメント(5−RC)を用いた接着)、5−7〜5−12(コンポジットレジン被接着体への接着剤(5−B)を用いたコンポジットレジン(5−CR)の接着)、5−13〜5−18(陶材同士のレジンセメント(5RC)を用いた接着)は、接着する材質及び方法は異なるものの、「棚寿命試験」の有無に関係なく初期接着試験及び耐久接着試験の両者において接着力が安定していることが認められた。
一方、比較例5−1〜5−3は接着する材質及び方法は異なるものの、「棚寿命試験なし」において初期接着試験及び耐久接着試験共に一定の接着力であることが認められた。しかし、「棚寿命試験あり」において接着試験片は作製できるものの、初期接着試験の段階で既に接着体が脱落していることが認められた。
[6.歯科用接着性組成物]
歯科用組成物が歯科用接着性組成物の場合における特性確認試験の方法を以下に示す。
(1)歯質接着性試験
評価目的:
組成物における歯質接着性の評価。
評価方法:
屠殺後、抜去した牛歯下顎永久歯中切歯を24時間以内に冷凍保存したものを解凍後、歯根部の除去及び歯冠部の切断を行って牛歯細片を作製し、その牛歯細片をエポキシ樹脂にて包埋を行う。その包埋牛歯を注水下、#600番の耐水研磨紙にてエナメル質または象牙質を露出させて水洗する。
この露出したエナメル質または象牙質に直径4mmの穴の空いた両面テープを貼って接着面を規定する。その規定した接着面にフルオロボンドIIプライマーを内壁全体にプライマーを充分に塗布し、10秒間放置後、エア乾燥する。その後、実施例または比較例に記載の材料を調合し、被着面全体に充分に塗布し、10秒間放置する。その後、その接着処理した面にプラスチックモールド(内径4mm、高さ2mm)を固定して、光重合型コンポジットレジン「ビューティフィルII」をそのモールド内部に填入し、光重合照射器(グリップライトII:松風製)を用いて30秒間光照射を行い硬化させる。硬化後、モールドを除去して接着試験体を作製した。
この接着試験体を37℃蒸留水中に24時間浸漬後、インストロン万能試験機(インストロン5567、インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/min.にて剪断接着強さによる歯質接着性試験を行う。試料数は6個としその平均値を求めた。
[成分及び略称]
実施例中に使用されるした成分の略称を以下に示す。
Bis-GMA:2,2−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン
UDMA:2,2−ビス(4メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
CQ:カンファーキノン
Tin:ジブチルチンジラウリレート
R-972:アエロジルR−972
FAM-401(富士フイルム株式会社製):(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー
FAM-201(富士フイルム株式会社製):(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー
〔1液型組成物(組成物6−1〜6−9)の調製〕
表13に示した調合組成にて1液型組成物(組成物6−1〜6−9)をそれぞれ調製し、実施例及び比較例に用いた。
Figure 2021054795
〔実施例6−1〜6−7〕
表13に示す様に組成物6−1〜6−7はエナメル質及び象牙質のいずれに対しても優れた歯質接着性を有していることが認められた。
〔比較例6−1〜6−2〕
調製した1液型組成物6−8〜6−9(比較例6−1〜6−2)を用いて実施例6−1〜6−7と同様にそれぞれの試験を実施し、その結果をそれぞれ表13に示した。表13に示す様に組成物6−8〜6−9はエナメル質及び象牙質のいずれに対しても十分な歯質接着性が得られないことが認められた。
[7.歯質接着性組成物]
歯科用組成物が歯質接着性組成物の場合における特性確認試験の方法を以下に示す。
(1)歯質接着性試験
評価目的:
組成物における歯質接着性の評価。
評価方法:
屠殺後、抜去した牛歯下顎永久歯中切歯を24時間以内に冷凍保存したものを解凍後、歯根部の除去及び歯冠部の切断を行って牛歯細片を作製し、その牛歯細片をエポキシ樹脂にて包埋を行う。その包埋牛歯を注水下、#600番の耐水研磨紙にてエナメル質または象牙質を露出させて水洗する。
この露出したエナメル質または象牙質に直径4mmの穴の空いた両面テープを貼って接着面を規定する。その規定した接着面に実施例または比較例に記載の材料を調合し、被着面全体に充分に塗布し、10秒間放置する。その後、その接着処理した面にプラスチックモールド(内径4mm、高さ2mm)を固定して、光重合型コンポジットレジン「ビューティフィルIIをそのモールド内部に填入し、光重合照射器(グリップライトII:松風製)を用いて30秒間光照射を行い硬化させる。硬化後、モールドを除去して接着試験体を作製した。
この接着試験体を37℃蒸留水中に24時間浸漬後、インストロン万能試験機(インストロン5567、インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/min.にて剪断接着強さによる歯質接着性試験を行う。試料数は6個としその平均値を求めた。
[成分及び略称]
実施例中に使用されるした成分の略称を以下に示す。
UDMA:ジ(メタクリロイルオキシ)−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジウレタン
2.6E:ビスメタクリロイルエトキシフェニルプロパン
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
CQ:カンファーキノン
DMA:N, Nジメチルアニリンp-TSNa:p−トルエンスルフィン酸ナトリウム
R-972:アエロジルR−972
MHPA:(6-メタアクリロキシ)ヘキシルホスホノアセテート
META:4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物
MET:4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸
EtOH:エタノール
FAM-401:(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー(富士フイルム株式会社製)
FAM-201:(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー(富士フイルム株式会社製)
〔1液型組成物(組成物7−1〜7−7)の調製〕
表14に示した調合組成にて1液型組成物(組成物7−1〜7−7)をそれぞれ調製し、実施例及び比較例に用いた。
Figure 2021054795
〔実施例7−1〜7−5〕
調製した1液型組成物7−1〜7−5(実施例7−1〜7−5)を用いて他の処理材を用いず単独使用での歯質接着性試験をそれぞれ実施し、その結果をそれぞれ表14に示した。表14に示す様に組成物7−1〜7−5はエナメル質及び象牙質のいずれに対しても優れた歯質接着性を有していることが認められた。
〔比較例7−1〜7−2〕
調製した1液型組成物7−6〜7−7(比較例7−1〜7−2)を用いて実施例7−1〜7−5と同様にそれぞれの試験を実施し、その結果をそれぞれ表14に示した。表14に示す様に組成物7−6〜7−7はエナメル質及び象牙質のいずれに対しても十分な歯質接着性が得られないことが認められた。
[8.歯科用接着性レジンセメント]
歯科用組成物が歯科用接着性レジンセメントの場合における特性確認試験の方法を以下に示す。
酸化アルミニウムまたは、酸化ジルコニウムからなる歯科用セラミックス材料の例として、酸化アルミニウム平板(約15×15×2mm[日本ファインセラミックス(株)製])及び、酸化ジルコニウム平板(約15×15×2mm[日本ファインセラミックス(株)製])を使用し、引張接着強度試験を実施した。表15に示す重量比で混合して歯科用接着性レジンセメントの調合を行った。
約15×15×2mmの酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウム平板の平坦面を240番次いで、600番のシリコン・カーバイド紙[三共理化学(株)製]を用いて流水下で研磨し、平滑面を得たその後、平滑面にエアーアブレーション(50μmアルミナビーズ、2.5kgf/cm2圧)を行った後、水洗を行い被着体とした。一方、直径5mm×高さ10mmの円筒形ステンレス棒の接着面をエアーアブレーション(50μmアルミナビーズ、5kgf/cm圧)し、その後、超音波洗浄及びエアー乾燥を行い接着強さ測定用治具とした。実施例または比較例で調整したレジンセメントを被着体の接着面とステンレス棒の接着面に介在させ接着を行った。この際、余剰セメントをミニブラシで除去し、セメントマージンに「松風グリップライトII」を用いて10秒間光重合した。
全試験片6個を37℃水中に浸漬し、37℃水中24時間浸漬後に引張接着強さを測定した。接着強さの測定には、万能試験機(インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/分の条件で引張接着強さを測定した。なお、接着試験は全て23℃±1℃の室温で実施した。
ここで、レジンセメントとして、表15に示す重量比で調合し、混合して作製後、密閉状態とし23℃貯蔵環境で24時間以内に使用した場合の引張接着強さを、「初期」引張接着強さとした。また、歯科用接着性レジンセメントとして、表15に示す重量比で調合し、混合して作製後、密閉状態とし50℃貯蔵環境で2ヶ月間貯蔵後に使用した場合の引張接着強さを、「50℃2ヶ月間貯蔵後」引張接着強さとした。
二酸化珪素を主成分とする歯科用セラミックス材料の例として歯科用金属焼付用陶材[商品名「ヴィンテージハロー」 (株式会社松風製)]を使用し、円盤状(直径15.0×5.0mm)の焼成物を陶材焼成用真空電気炉[商品名「ツインマット」(株式会社松風製)]を使用して作製し、引張接着強度試験を実施した。表15に示す重量比で混合して歯科用接着性レジンセメントの調合を行った。
円盤状(直径15.0×5.0mm)の焼成物の平坦面を240番次いで、600番のシリコン・カーバイド紙[三共理化学(株)製]を用いて流水下で研磨し、平滑面を得たその後、水洗を行い被着体とした。
一方、直径5mm×高さ10mmの円筒形コバルタン(コバルトクロム合金:松風社製)棒の接着面をエアーアブレーション(50μmアルミナビーズ、5kgf/cm2圧)し、その後、超音波洗浄及びエアー乾燥を行い接着強さ測定治具とした。実施例または比較例で調整したレジンセメントを被着体の接着面とステンレス棒の接着面に介在させ接着を行った。この際、余剰セメントをミニブラシで除去し、セメントマージンに「松風グリップライトII」を用いて10秒間光重合した。
全試験片6個を37℃水中に浸漬し、37℃水中24時間浸漬後に引張接着強さを測定した。接着強さの測定には、万能試験機(インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/分の条件で引張接着強さを測定した。なお、接着試験は全て23℃±1℃の室温で実施した。
ここで、表15に示す重量比で歯科用接着性レジンセメントを調合し、混合して作製後、密閉状態とし23℃貯蔵環境で24時間以内に使用した場合の引張接着強さを、「初期」引張接着強さとした。また、密閉状態とし50℃貯蔵環境で2ヶ月間貯蔵後に使用した場合の引張接着強さを、「50℃2ヶ月間貯蔵後」引張接着強さとした。
歯科用貴金属材料の例として、金合金平板(約15×15×2mm[スーパーゴールドタイプ4(松風社製)])を使用し、引張接着強度試験を実施した。表15に示す重量比で混合して実施例または比較例で調整したレジンセメントの調合を行った。
約15×15×2mmの金合金平板の平坦面を600番のシリコン・カーバイド紙[三共理化学(株)製]を用いて流水下で研磨し、平滑面を得たその後、平滑面にエアーアブレーション(50μmアルミナビーズ、5.0kgf/cm2圧)を行った後、水洗を行い被着体とした。
一方、直径5mm×高さ10mmの円筒形ステンレス棒の接着面をエアーアブレーション(50μmアルミナビーズ、5kgf/cm圧)し、その後、超音波洗浄及びエアー乾燥を行い接着強さ測定治具とした。実施例または比較例で調整したレジンセメントを被着体の接着面とステンレス棒の接着面に介在させ接着を行った。この際、余剰セメントをミニブラシで除去し、セメントマージンに「松風グリップライトII」を用いて10秒間光重合した。
全試験片6個を37℃水中に浸漬し、37℃水中24時間浸漬後に引張接着強さを測定した。接着強さの測定には、万能試験機(インストロン社製)を用い、クロスヘッドスピード1mm/分の条件で引張接着強さを測定した。なお、接着試験は全て23℃±1℃の室温で実施した。
ここで、表15に示す重量比で歯科用接着性レジンセメントを調合し、混合して作製後、密閉状態とし23℃貯蔵環境で24時間以内に使用した場合の引張接着強さを、「初期」引張接着強さとした。また、表15に示す重量比で調合し、混合して作製後、密閉状態とし50℃貯蔵環境で2ヶ月間貯蔵後に使用した場合の引張接着強さを、「50℃2ヶ月間貯蔵後」引張接着強さとした。
[成分及び略称]
実施例中に使用されるした成分の略称を以下に示す。
3−MPTES:3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン
6−MHPA:6−メタクリロキシヘキシル−ホスホノアセテート
Bis-GMA:ビスフェノールAジグリシジルメタクリレート
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
CQ:カンファーキノン
DMBE:p−ジメチルアミノ安息香酸エチル
アルミニウムシリケートガラス:平均粒子径5μm、シラン処理品
R-972:微粒子ケイ酸[日本アエロジル(株)製]
FAM−401(富士フイルム株式会社製)
FAM−201(富士フイルム株式会社製)
(実験に使用した材料及び、装置)
酸化アルミニウム平板:約15×15×2mm[日本ファインセラミックス株式会社製]
酸化ジルコニウム平板:約15×15×2mm[日本ファインセラミックス株式会社製]
陶材料円盤状平板:直径15.0×5.0mm[歯科用金属焼付用陶材[商品名「ヴィンテージハロー」 (株式会社松風製)]]
金合金平板:約15×15×2mm[商品名「スーパーゴールドタイプ4」 (株式会社松風製)]
サーマルサイクル試験機:[東京技研株式会社製]
インストロン万能試験機[インストロン社製]
Figure 2021054795
[9.自己接着性歯科用コンポジットレジン]
歯科用組成物が自己接着性歯科用コンポジットレジンの場合における特性確認試験の方法を以下に示す。
(9−1)歯質接着性試験
評価目的:
組成物における歯質接着性の評価。
評価方法:
(歯質接着性試験1)
ウシ下顎前歯の唇面を流水下にて#80シリコン・カーバイド紙(日本研紙社製)で研磨して、象牙質の平坦面を露出させたサンプルを得た。得られたサンプルを流水下にて#1000のシリコン・カーバイド紙(日本研紙社製)でさらに研磨した。研磨終了後、水洗し、平滑面に、直径3mmの丸穴を有する厚さ約150μmの粘着テープを貼着し、接着面積を規定した。
下記実施例及び比較例で作製した歯科用コンポジットレジンを前記丸穴内に充填し、離型フィルム(ポリエステル)で被覆した。次いで、その離型フィルムの上にスライドガラスを載置して押しつけることで、歯科用コンポジットレジンの塗布面を平滑にした。続いて、離型フィルムを介して、歯科用コンポジットレジンに対して光重合照射器(グリップライトII:松風製)を用いて30秒間光照射を行い、歯科用コンポジットレジンを硬化させ接着試験体を作製した。
接着試験体を30分間室温で静置した後、蒸留水に浸漬した。接着試験体は計5個作製し、37℃に保持した恒温器内に24時間静置した。
接着試験体をの引張り接着強さを、万能試験機(島津製作所社製)にてクロスヘッドスピードを2mm/分に設定して測定し、平均値を引張り接着強さとした。
(歯質接着性試験2)
ウシ下顎前歯の唇面を流水下にて#80シリコン・カーバイド紙(日本研紙社製)で研磨して、象牙質の平坦面を露出させたサンプルを得た。得られたサンプルを流水下にて#1000のシリコン・カーバイド紙(日本研紙社製)でさらに研磨した。研磨終了後、市販の歯科用エッチング材(クラレノリタケデンタル社製、商品名「K エッチャント シリンジ」)を象牙質に塗布し、10秒間放置した後、水洗した。水洗後の平滑面に、直径3mmの丸穴を有する厚さ約150μmの粘着テープを貼着し、接着面積を規定した。その後、歯質接着性試験1と同様にして、リン酸エッチング処理を実施した象牙質に対する引張り接着強さを測定した。
[成分及び略称]
各組成の調製に用いた材料の略号は以下の通りである。
FAM-401:4官能(メタ)アクリルアミドモノマー(富士フイルム株式会社製)
FAM-201:2官能アクリルアミドモノマー(富士フイルム株式会社製)
MAEA:N−メタクリロイルオキシエチルアクリルアミド
MDP:10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
Bis-GMA:2,2−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
CQ:カンファーキノン
DABE:4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル
無機フィラー:シラン処理フィラー
BHT:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(安定剤(重合禁止剤))
(実施例9−1〜9−6及び比較例9−1〜9−3)
上記の材料を用いて、表16に記載の各成分の内、フィラー以外の成分を常温で混合し、均一な液状成分とした後、得られた液状成分とフィラー(粉末)とを混練することにより、実施例9−1〜9−6の自己接着性歯科用コンポジットレジン及び比較例9−1〜9−3の歯科用コンポジットレジンを調製した。次いで、これらの歯科用コンポジットレジンを用い、上記の方法に従って、リン酸エッチング処理を実施していない象牙質に対する引張り接着強さ、及び、リン酸エッチング処理を実施した象牙質に対する引張り接着強さを測定した。表16に、この歯科用コンポジットレジンの配合比(重量部)及び試験結果を示す。
Figure 2021054795
表16に示すように実施例9−1〜9−6では、リン酸エッチング有りの場合及び無しの場合のいずれにおいても、過度の乾燥を行わなくても、優れた自己接着性を有していることが認められた。一方、比較例9−1〜9−3では、リン酸エッチング有りの場合及び無しの場合のいずれにおいても、臨床上必要な自己接着性を得られず、実用性が認められなかった。
[10.接着性組成物]
歯科用組成物が接着性組成物の場合における特性確認試験の方法を以下に示す。
[接着試験方法]
・初期接着試験:接着試験体を37℃水中に24時間浸漬後、接着試験を行った。
・耐久接着試験:接着試験体を37℃水中に24時間浸漬後、以下の条件でサーマルサイクル試験を施し、接着試験を行った。サーマルサイクルの条件は5℃と50℃をそれぞれ、1分間の浸漬を1万回繰り返しとした。
・棚寿命試験:歯科用プライマーを調製後、5ccずつを密閉容器に採取し、23℃の冷暗所に1年間保存後、前記初期接着試験及びサーマルサイクル試験を行った。
なお、接着試験は大気圧下、23℃の条件で実施した。
[試料の調製]
下記の成分を用いて表17記載の配合により通法に従い接着材:10−B1〜10−B7を調製した。
(接着材:10−B1〜10−B7)
・シランカップリング剤:メチルトリクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
・酸無水物及び/または弱酸性化合物:無水クエン酸、無水マレイン酸、ピロリン酸
・(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマー:FAM−401(富士フイルム株式会社製)、FAM−201(富士フイルム株式会社製)
・重合性単量体:2−ヒドロキシエチルメタアクリレート(HEMA)、2,2−ビス(4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン(Bis−GMA)、ジ(メタクリロイルオキシ)−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジウレタン(UDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)
・重合触媒(光重合開始剤):カンファーキノンとp−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル
[二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス]
(被接着体及び接着体の調製)
CAD/CAMシステムまたはプレスシステムを用いて二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス(株式会社松風社製)から成型し、指示通りに焼成して、水洗後1週間水中保存した後に、二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス被接着体及び二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス接着体とした。二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス被接着体(大)の形状及び寸法は円柱形状で直径2cm厚さ1cmとした。二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス接着体(小)の形状及び寸法は円柱形状で直径0.5cm厚さ1cmとした。
(接着試験体の作製)
二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス被接着体(大)及び二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス接着体(小)にアルミナ(50μm)のサンドブラスト処理(0.2MPa,1秒間)後に、接着材10B1〜10B7のいずれかを二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス接着体(小)に塗布後、それを二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス被接着体(大)に圧接→余剰接着材の除去→15分間放置して硬化させ接着試験体を作製した。(試験体数N=5)

[陶材]
(被接着体及び接着体の調製)
「ヴィンテージ LD」(株式会社松風社製)を用いて指示通りに築盛及び焼成して、水洗後1週間水中保存した後に、陶材被接着体及び陶材接着体とした。陶材被接着体(大)の形状及び寸法は円柱形状で直径2cm厚さ1cmとした。陶材接着体(小)の形状及び寸法は円柱形状で直径0.5cm厚さ1cmとした。
(接着試験体の作製)
陶材被接着体(大)及び陶材接着体(小)にアルミナ(50μm)のサンドブラスト処理(0.2MPa,1秒間)後に、接着材10−B1〜10−B7のいずれかを陶材接着体(小)に塗布後、それを陶材被接着体(大)に圧接→余剰接着材の除去→15分間放置して硬化させ接着試験体を作製した。(試験体数N=5)

[コンポジット]
(被接着体の調製)
CAD/CAMシステムを用いてレジンディスク材料「松風ディスクHC」(株式会社松風社製)から切削加工して、水洗後1週間水中保存した後に、コンポジットレジン被接着体とした。コンポジットレジン被接着体の形状及び寸法は円柱形状で直径2cm厚さ1cmとした。
(接着試験体の作製)
コンポジットレジン被接着体に接着材10−B1〜10−B7のいずれかを塗布して30秒間光照射(グリップライト2:松風社製)を行なった。直径0.5cmの冶具を用いて接着面を規定し、そこにコンポジットレジン(ライトフィル2:松風社製)を充填後に30秒間光照射(グリップライト2:松風社製)を行いコンポジットレジンを硬化させ、接着試験体を作製した。(試験体数N=5)
Figure 2021054795
Figure 2021054795
実施例10−1〜10−6(二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックス同士の接着)、10−7〜10−12(コンポジットレジン被接着体へのコンポジットレジンの接着)、10−13−10−18(陶材同士の接着)は、接着する材質及び方法は異なるものの、「棚寿命試験」の有無に関係なく初期接着試験及び耐久接着試験の両者において接着力が安定していることが認められた。
一方、比較例10−1〜10−3は接着する材質及び方法は異なるものの、「棚寿命試験なし」において初期接着試験及び耐久接着試験共に一定の接着力であることが認められた。しかし、「棚寿命試験あり」において接着試験片は作製できるものの、初期接着試験の段階で既に接着体が脱落していることが認められた。
本明細書において、発明の構成要素が単数もしくは複数のいずれか一方として説明された場合、または、単数もしくは複数のいずれとも限定されずに説明された場合であっても、文脈上別に解すべき場合を除き、当該構成要素は単数または複数のいずれであってもよい。
本発明を図面及び詳細な実施の形態を参照して説明したが、当業者であれば、本明細書において開示された事項に基づいて種々の変更または修正が可能であることが理解されるべきである。従って、本発明の実施形態の範囲には、いかなる変更または修正が含まれることが意図されている。

Claims (15)

  1. 成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含む歯科用組成物。
    Figure 2021054795
    (式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、互いに同じでも異なってもよい。R2は、炭素数2〜6のアルキル基であり、互いに同じでも異なってもよい。)
  2. 以下の条件(A)〜条件(E)のいずれかを満たすことを特徴とする請求項1の歯科用組成物。
    条件(A):成分(c):成分(a)以外のモノマーを含み、成分(a)及び成分(c)の合計量における成分(a)の割合が、0.1〜20重量%の範囲である。
    条件(B):成分(h):ラジカル重合性モノマーを含み、成分(h)100重量部に対して、成分(a)を0.1〜20重量部含む。
    条件(C):成分(f):重合触媒を含み、成分(a)及び成分(f)を除く歯科用組成物の成分の合計100重量部に対して、0.1〜20重量部の割合で含む。
    条件(D):成分(p):有機溶媒、成分(g):シランカップリング剤、及び、成分(q):酸無水物及び/または弱酸性化合物を含む。
    条件(E):成分(a)を、0.1〜20重量%の範囲で含む。
  3. 成分(a):式(1)で示される(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーが、下記式(2)で示されるモノマーである請求項2の歯科用組成物。
    Figure 2021054795
    (式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、互いに同じでも異なってもよい。)
  4. 式(2)におけるRが全て水素原子である請求項3の歯科用組成物。
  5. 前記式(1)で示されず、かつ、(メタ)アクリルアミド基を含有するモノマーを含まない請求項1〜4のいずれかの歯科用組成物。
  6. 前記歯科用組成物は、
    成分(b):フィラー、
    成分(c):成分(a)以外のモノマー、及び、
    成分(d):重合開始剤をさらに含み、
    成分(a)及び成分(c)の合計量における成分(a)の割合が、0.1〜20重量%の範囲である歯科用複合材料用組成物である請求項1〜5のいずれかの歯科用組成物。
  7. 前記歯科用組成物は、
    成分(b):フィラー、
    成分(f):重合触媒
    成分(g):シランカップリング剤、
    成分(h):ラジカル重合性モノマー、及び、
    成分(i):酸性基含有モノマーをさらに含み、
    成分(h)100重量部に対して、成分(a)を0.1〜20重量部含むレジンセメントである請求項1〜5のいずれかの歯科用組成物。
  8. 前記歯科用組成物は、
    成分(c):成分(a)以外のモノマー、
    成分(j):(メタ)アクリル酸(共)重合体、及び、
    成分(f):重合触媒をさらに含み、
    成分(a)及び成分(c)の合計量における成分(a)の割合が、0.1〜20重量%の範囲であり、
    成分(f)が、バルビツール酸誘導体とハロゲンイオン形成化合物との組み合わせ、及び、有機過酸化物とアミン化合物との組み合わせの少なくとも一方を含む義歯修復材料である請求項1〜5のいずれかの歯科用組成物。
  9. 前記歯科用組成物は、
    成分(k):酸基含有モノマー、
    成分(l):水、
    成分(m):水溶性有機溶媒、及び、
    成分(f):重合触媒をさらに含み、
    成分(a)を、成分(a)及び成分(f)を除く歯科用組成物の成分の合計100重量部に対して、0.1〜20重量部の割合で含む歯質接着プライマーである請求項1〜5のいずれかの歯科用組成物。
  10. 前記歯科用組成物は、
    成分(p):有機溶媒、
    成分(g):シランカップリング剤、及び、
    成分(q):酸無水物及び/または弱酸性化合物をさらに含む歯牙修復物の表面を改質する為の歯科用プライマーである請求項1〜5のいずれかの歯科用組成物。
  11. 前記歯科用組成物は、
    成分(c):成分(a)以外のモノマー、及び、
    成分(f):重合触媒をさらに含み、
    成分(a)を、0.1〜20重量%の範囲で含む歯科用接着性組成物である請求項1〜5のいずれかの歯科用組成物。
  12. 前記歯科用組成物は、
    成分(i):酸性基含有モノマー
    成分(t):成分(a)及び成分(i)以外のモノマー、
    成分(l):水及び/または成分(p):有機溶媒、及び、
    成分(f):重合触媒をさらに含み、
    成分(a)を、0.1〜20重量%の範囲で含む歯質接着性組成物である請求項1〜5のいずれかの歯科用組成物。
  13. 前記歯科用組成物は、
    成分(b):フィラー、
    成分(i):酸性基含有モノマー、
    成分(u):硫黄原子含有モノマー、
    成分(g):シランカップリング剤、
    成分(d):重合開始剤、及び、
    成分(v):成分(a)、成分(i)及び成分(u)以外のモノマーをさらに含み、
    成分(a)を、0.1〜20重量%の範囲で含む歯科用接着性レジンセメントである請求項1〜5のいずれかの歯科用組成物。
  14. 前記歯科用組成物は、
    成分(i):酸性基含有モノマー、
    成分(w):光重合触媒、
    成分(b):フィラーをさらに含み、
    成分(a)を、0.1〜20重量%の範囲で含む自己接着性歯科用コンポジットレジンである請求項1〜5のいずれかの歯科用組成物。
  15. 前記歯科用組成物は、
    成分(r):親水性モノマー
    成分(s):疎水性モノマー
    成分(f):重合触媒
    成分(q):酸無水物及び/または弱酸性化合物、及び、
    成分(g):シランカップリング剤をさらに含み、
    成分(a)を、0.1〜20重量%の範囲で含む接着性組成物である請求項1〜5のいずれかの歯科用組成物。

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