以下、液体噴射装置の一例として、液体であるインクを噴射して文字や図形等を含む画像を印刷するインクジェット式のプリンターの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、液体噴射装置7は、支持台712に支持されたシート状の媒体STを支持台712の表面に沿って搬送方向Yに搬送させる搬送部713と、搬送される媒体STに第1液体の一例としてのインクを噴射して印刷を行う印刷部720と、媒体STに着弾したインクを乾燥させるための発熱部717及び送風部718とを備えている。
支持台712、搬送部713、発熱部717、送風部718、及び印刷部720は、ハウジングやフレームなどによって構成されるプリンター本体11aに組み付けられている。プリンター本体11a内において、支持台712は媒体STの幅方向(図1では紙面と直交する方向)に延在している。
搬送部713は、搬送方向Yにおける支持台712の上流側及び下流側にそれぞれ配置されて搬送モーター749(図13参照)によって駆動される搬送ローラー対714a及び搬送ローラー対714bを備えている。さらに、搬送部713は、搬送方向Yにおける搬送ローラー対714aの上流側と搬送ローラー対714bの下流側とにそれぞれ配置されて媒体STを支持しながら案内する案内板715a及び案内板715bを備えている。
そして、搬送部713は、搬送ローラー対714a,714bが媒体STを挟持しながら回転することで、案内板715a、支持台712及び案内板715bの表面に沿って媒体STを搬送する。本実施形態では、媒体STは、供給リール716aにロール状に巻回されたロールシートRSから繰り出されることによって連続的に搬送される。そして、ロールシートRSから繰り出されて連続的に搬送される媒体STは、印刷部720によってインクが付着されて画像が印刷された後、巻取リール716bによってロール状に巻き取られる。
印刷部720は、媒体STの搬送方向Yと直交する媒体STの幅方向となる走査方向Xに沿って延設されたガイド軸721,722に案内されて、キャリッジモーター748(図13参照)の動力によって走査方向Xに往復移動可能なキャリッジ723を備えている。本実施形態において、走査方向Xは、搬送方向Y及び重力方向Zの双方と交差(一例として、直交)する方向である。
キャリッジ723には、インクを噴射する2つの液体噴射部1(1A,1B)と、液体噴射部1(1A,1B)に対してインクを供給する液体供給路727と、液体供給路727を通じて供給されたインクを一時貯留する貯留部730と、貯留部730に接続された流路アダプター728とが設けられている。貯留部730は、キャリッジ723に取り付けられた貯留部保持体725に保持されている。なお、本実施形態では、液体噴射部1からのインク滴(液滴)の噴射方向は重力方向Zである。
貯留部730は、液体噴射部1へインクを供給するための液体供給路727の途中位置に設けられた差圧弁731を備えている。差圧弁731は、その下流側に位置する液体噴射部1A,1Bでのインクの噴射(消費)に伴って下流側のインクの圧力が大気圧に対して所定の負圧になると開弁され、開弁により貯留部730から液体噴射部1A,1Bへインクが供給されて下流側の負圧が解消されると閉弁される。差圧弁731は、下流側のインクの圧力が高くなっても開弁することはなく、上流側(貯留部730側)から下流側(液体噴射部1側)へのインクの供給を許容する一方で下流側から上流側へのインクの逆流を抑制する一方向弁(逆止弁)として機能する。
液体噴射部1は、支持台712と重力方向Zに所定の間隔を置いて対向する姿勢で、キャリッジ723の下端部に取り付けられる。一方、貯留部730は、キャリッジ723に対して液体噴射部1と重力方向Zにおいて反対側となる上側に取り付けられる。
液体供給路727の一部を構成する供給チューブ727aの上流側端部は、往復移動するキャリッジ723に追従変形可能である複数本のインク供給チューブ726の下流側端部と、キャリッジ723の一部に取り付けられた接続部726aを介して接続されている。また、供給チューブ727aの下流側端部は、貯留部730よりも上側の位置で、流路アダプター728に接続されている。したがって、例えばインクを収容した図示しないインクタンクからのインクが、インク供給チューブ726、供給チューブ727a、及び流路アダプター728を介して貯留部730に供給される。
印刷部720では、キャリッジ723が走査方向Xに移動(往復移動)する過程で、支持台712上の媒体STに対して液体噴射部1の複数のノズル21(図3参照)の開口からインクを噴射する。そして、媒体STに着弾したインクを加熱して乾燥させるための発熱部717は、液体噴射装置7において支持台712から重力方向Zに所定長の間隔を置いた上方位置に配設されている。そして、印刷部720は、発熱部717と支持台712との間を走査方向Xに沿って往復移動可能となっている。
発熱部717は、支持台712の延在方向と同じ走査方向Xに沿って延設された赤外線ヒーターなどの発熱部材717a及び反射板717bを備えており、図1において一点鎖線矢印で示すエリアに放射される赤外線等の熱(例えば輻射熱)によって媒体STに付着したインクを加熱する。また、送風によって媒体STに付着したインクを乾燥させる送風部718は、液体噴射装置7において印刷部720が往復移動可能な間隔を支持台712との間に空けた上方位置に配置されている。
キャリッジ723における貯留部730と発熱部717との間の位置には、発熱部717からの伝熱を遮る遮熱部材729が設けられている。この遮熱部材729は、例えばステンレススチールやアルミニウムなどの熱伝導性のよい金属材料で形成され、少なくとも貯留部730の発熱部717に面する上面部を覆っている。
液体噴射装置7では、貯留部730は少なくともインク種ごとに設けられている。そして、本実施形態の液体噴射装置7は、着色インクが貯留された貯留部730を備え、カラー印刷及び白黒印刷が可能になっている。着色インクのインク色は、一例として、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイトとなっている。各着色インクには、防腐剤が含まれている。
なお、ホワイトインクは、例えば媒体STが透明又は半透明のフィルムであったり、濃色の媒体であったりした場合、カラー印刷を行う前の下地印刷(ベタ印刷または塗り潰し印刷ともいう)などに使用される。もちろん、使用される着色インクは、任意に選択でき、例えばシアン、マゼンタ、イエローの3色でもよい。また、着色インクは、上記3色の他、例えばライトシアン、ライトマゼンタ、ライトイエロー、オレンジ、グリーン、グレーなどのうち少なくとも1色をさらに追加することもできる。
図2に示すように、キャリッジ723の下端部に取り付けられた2つの液体噴射部1A,1Bは、走査方向Xに所定の間隔だけ離れ、且つ搬送方向Yに所定の距離だけずれるように配置されている。また、キャリッジ723の下端部において、2つの液体噴射部1A,1Bの走査方向Xにおける間となる位置には、温度センサー711が設けられている。
液体噴射部1A,1Bが走査方向Xに移動可能な移動領域は、媒体STの印刷時に液体噴射部1A,1Bのノズル21からインクを着弾可能な印刷領域PAと、走査方向Xに移動可能な液体噴射部1A,1Bが搬送中の媒体STと対峙しない印刷領域PAの外側の領域である非印刷領域RA,LAとを含む。走査方向Xにおいて印刷領域PAと対応する領域は、媒体STに着弾したインクを加熱により定着させる発熱部717が設けられた加熱領域HAとなっている。
支持台712上を搬送される最大幅の媒体STに対して液体噴射部1A,1Bから噴射したインク滴を着弾させることが可能な走査方向Xの最大幅の領域は、印刷領域PAとなっている。すなわち、液体噴射部1A,1Bから媒体STに対して噴射されたインク滴は印刷領域PA内に着弾する。なお、印刷部720が縁なし印刷機能を有する場合、印刷領域PAは、搬送される最大幅の媒体STの範囲よりも走査方向Xに若干広くなる。
非印刷領域RA,LAは、走査方向Xにおける印刷領域PAの両側(図2ではそれぞれ右側と左側)に存在する。図2において印刷領域PAの左側に位置する非印刷領域LAには、液体噴射部1のメンテナンスを行うための流体噴射装置775が設けられている。一方、図2において印刷領域PAの右側に位置する非印刷領域RAには、ワイパーユニット750と、フラッシングユニット751と、キャップユニット752と、が設けられている。
流体噴射装置775、ワイパーユニット750、フラッシングユニット751及びキャップユニット752は、液体噴射部1のメンテナンスを行うためのメンテナンス装置710を構成する。そして、走査方向Xにおいてキャップユニット752がある位置は、液体噴射部1A,1BのホームポジションHPとなっている。
<ヘッドユニットの構成について>
次に、ヘッドユニット2の構成について詳述する。
液体噴射部1は、インクの色毎(液体の種類毎)に設けられた複数(本実施形態では4つ)のヘッドユニット2を有する。
図3に示すように、1つのヘッドユニット2には、インクを噴射するためのノズル21の開口が一方向(本実施形態では搬送方向Y)に一定のノズルピッチで多数個(例えば180個)並ぶことで、ノズル列NLを構成している。
本実施形態では、1つのヘッドユニット2に、走査方向Xにならぶ2列のノズル列NLが設けられることにより、1つの液体噴射部1には、互いに接近して位置する2列ずつが走査方向Xに一定の間隔で配列された合計8列のノズル列NLがそれぞれ形成される。なお、2つの液体噴射部1は、互いのノズル列NLを構成する多数個のノズル21を走査方向Xに投影したときに、互いの端部同士のノズル21間も同じノズルピッチになりうる搬送方向Yの位置関係になっている。
図4に示すように、ヘッドユニット2は、ヘッド本体11、ヘッド本体11の一方面(上面)側に固定された流路形成部材40等の複数の部材を備える。ヘッド本体11は、流路形成基板10と、流路形成基板10の一方面(下面)側に設けられた連通板15と、連通板15の流路形成基板10とは反対面(下面)側に設けられたノズルプレート20と、流路形成基板10の連通板15とは反対側(上側)に設けられた保護基板30と、連通板15のノズルプレート20が設けられた面側に設けられたコンプライアンス基板45とを具備する。
流路形成基板10は、ステンレス鋼やNiなどの金属、ZrO2あるいはAl2O3を代表とするセラミック材料、ガラスセラミック材料、MgO、LaAlO3のような酸化物などを用いることができる。本実施形態では、流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなる。
図5に示すように、流路形成基板10には、一方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁によって区画された圧力発生室12がインクを吐出する複数のノズル21が並設される方向に沿って並設されている。流路形成基板10には、圧力発生室12が搬送方向Yに並設された列が複数列(本実施形態では2列)、走査方向Xに並ぶように設けられている。
流路形成基板10には、圧力発生室12の搬送方向Yの一端部側に、当該圧力発生室12よりも開口面積が狭く、圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を付与する供給路等が設けられていてもよい。
図4及び図5に示すように、流路形成基板10の一方面(下面)側には、連通板15と、ノズルプレート20とが重力方向Zに積層されている。すなわち、液体噴射部1は、流路形成基板10の一方面に設けられた連通板15と、連通板15の流路形成基板10とは反対面側に設けられたノズル21が形成されたノズルプレート20とを具備する。
連通板15には、圧力発生室12とノズル21とを連通するノズル連通路16が設けられている。連通板15は、流路形成基板10よりも大きな面積を有し、ノズルプレート20は流路形成基板10よりも小さい面積を有する。このように連通板15を設けることによってノズルプレート20のノズル21と圧力発生室12とを離せるため、圧力発生室12の中にあるインクは、ノズル21からインク中の水分が蒸発することにより増粘しにくくなる。また、ノズルプレート20は圧力発生室12とノズル21とを連通するノズル連通路16の開口を覆うだけでよいので、ノズルプレート20の面積を比較的小さくすることができ、コストの削減を図ることができる。
図5に示すように、連通板15には、共通液室(マニホールド)100の一部を構成する第1マニホールド部17と、第2マニホールド部18(絞り流路、オリフィス流路)とが設けられている。第1マニホールド部17は、連通板15を厚さ方向(連通板15と流路形成基板10との積層方向となる重力方向Z)に貫通して設けられている。第2マニホールド部18は、連通板15を厚さ方向に貫通することなく、連通板15のノズルプレート20側に開口して設けられている。
さらに、連通板15には、圧力発生室12の搬送方向Yの一端部に連通する供給連通路19が、圧力発生室12毎に独立して設けられている。この供給連通路19は、第2マニホールド部18と圧力発生室12とを連通する。
このような連通板15としては、ステンレスやニッケル(Ni)などの金属、またはジルコニウム(Zr)などのセラミックス等を用いることができる。なお、連通板15は、流路形成基板10と線膨張係数が同等の材料が好ましい。すなわち、連通板15として流路形成基板10と線膨張係数が大きく異なる材料を用いた場合、加熱や冷却されることで、流路形成基板10及び連通板15に反りが生じてしまう。本実施形態では、連通板15として流路形成基板10と同じ材料、すなわち、シリコン単結晶基板を用いることで、熱による反りや熱によるクラック、剥離等の発生を抑制することができる。
ノズルプレート20の両面のうちインク滴を吐出する面(下面)、すなわち圧力発生室12とは反対側の面を液体噴射面20aと称し、液体噴射面20aに開口するノズル21の開口部をノズル開口と称する。
ノズルプレート20としては、例えば、ステンレス(SUS)等の金属、ポリイミド樹脂のような有機物、又はシリコン単結晶基板等を用いることができる。なお、ノズルプレート20としてシリコン単結晶基板を用いることで、ノズルプレート20と連通板15との線膨張係数を同等として、加熱や冷却されることによる反りや熱によるクラック、剥離等の発生を抑制することができる。
一方、流路形成基板10の連通板15とは反対面側には、振動板50が形成されている。本実施形態では、振動板50として、流路形成基板10側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜51と、弾性膜51上に設けられた酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜52と、を設けている。なお、圧力発生室12等の液体流路は、流路形成基板10を一方面側(ノズルプレート20が接合された面側)から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力発生室12等の液体流路の他方面は、弾性膜51によって画成されている。
流路形成基板10の振動板50上には、本実施形態の圧力発生手段である、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを有するアクチュエーター(圧電アクチュエーター)130が設けられている。ここで、アクチュエーター130は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。
一般的には、アクチュエーター130の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極を圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極60を複数のアクチュエーター130に亘って連続して設けることで共通電極とし、第2電極80をアクチュエーター130毎に独立して設けることで個別電極としている。
もちろん、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。なお、上述した例では、振動板50が弾性膜51及び絶縁体膜52で構成されたものを例示したが、勿論これに限定されるものではない。例えば、振動板50として弾性膜51及び絶縁体膜52の何れか一方を設けたものであってもよく、また、振動板50として弾性膜51及び絶縁体膜52を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、アクチュエーター130自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
圧電体層70は、分極構造を有する酸化物の圧電材料からなり、例えば、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型酸化物からなることができ、鉛を含む鉛系圧電材料や鉛を含まない非鉛系圧電材料などを用いることができる。
さらに、このようなアクチュエーター130の個別電極である第2電極80には、供給連通路19とは反対側の端部近傍から引き出され、振動板50上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90の一端部がそれぞれ接続されている。
また、リード電極90の他端部には、アクチュエーター130を駆動するための駆動回路120が設けられた可撓性配線基板の一例である配線基板121が接続されている。配線基板121は、可撓性(フレキシブル)のあるシート状のもの、例えば、COF基板等を用いることができる。
配線基板121の一方面には、後述するヘッド基板300の第1端子311に電気的に接続する第2端子(配線端子)122が複数個並設された第2端子列123が形成されている。本実施形態の第2端子122は、走査方向Xに沿って複数個並設されて第2端子列123をなしている。なお、配線基板121には、駆動回路120を設けなくてもよい。つまり、配線基板121は、COF基板に限定されず、FFC、FPC等であってもよい。
流路形成基板10のアクチュエーター130側の面には、流路形成基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、アクチュエーター130を保護するための空間である保持部31を有する。
保持部31は、保護基板30を厚さ方向である重力方向Zに貫通することなく、流路形成基板10側に開口する凹形状を有する。また、保持部31は、走査方向Xに並設されたアクチュエーター130で構成される列毎に独立して設けられている。すなわち、保持部31は、アクチュエーター130の走査方向Xに並設された列を収容するように設けられており、アクチュエーター130の列毎、すなわち2つが搬送方向Yに並設されている。このような保持部31は、アクチュエーター130の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
保護基板30は、厚さ方向である重力方向Zに貫通した貫通孔32を有する。貫通孔32は、搬送方向Yに並設された2つの保持部31の間に複数のアクチュエーター130の並設方向である走査方向Xに亘って設けられている。つまり、貫通孔32は、複数のアクチュエーター130の並設方向に長辺を有した開口とされている。リード電極90の他端部は、この貫通孔32内に露出するように延設され、リード電極90と配線基板121とが貫通孔32内で電気的に接続されている。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。また、流路形成基板10と保護基板30との接合方法は特に限定されず、例えば、本実施形態では、流路形成基板10と保護基板30とは接着剤(図示せず)を介して接合されている。
このような構成のヘッドユニット2は、複数の圧力発生室12に連通する共通液室100をヘッド本体11と共に画成する流路形成部材40を備えている。流路形成部材40は、平面視において上述した連通板15と略同一形状を有し、保護基板30に接合されると共に、上述した連通板15にも接合されている。具体的には、流路形成部材40は、保護基板30側に流路形成基板10及び保護基板30が収容される深さの凹部41を有する。この凹部41は、保護基板30の流路形成基板10に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、凹部41に流路形成基板10等が収容された状態で凹部41のノズルプレート20側の開口面が連通板15によって封止されている。これにより、流路形成基板10の外周部には、流路形成部材40とヘッド本体11とによって第3マニホールド部42が画成されている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18と、流路形成部材40とヘッド本体11とによって画成された第3マニホールド部42と、によって本実施形態の共通液室100が構成されている。
すなわち、共通液室100は、第1マニホールド部17、第2マニホールド部18及び第3マニホールド部42を具備する。また、本実施形態の共通液室100は、搬送方向Yにおいて、2列の圧力発生室12の両外側に配置されており、2列の圧力発生室12の両外側に設けられた2つの共通液室100は、ヘッドユニット2内では連通しないようにそれぞれ独立して設けられている。すなわち、本実施形態の圧力発生室12の列(走査方向Xに並設された列)毎に1つの共通液室100が連通して設けられている。言い換えると、ノズル群毎に共通液室100が設けられている。もちろん、2つの共通液室100は、連通していてもよい。
このように、流路形成部材40は、ヘッド本体11に供給されるインクの流路(共通液室100)を形成する部材であり、共通液室100に連通した導入口44を有している。すなわち、導入口44は、ヘッド本体11に供給されるインクを共通液室100に導入する入口となる開口部である。
また、流路形成部材40には、保護基板30の貫通孔32に連通して配線基板121が挿通される接続口43が設けられている。そして、配線基板121の他端部は、貫通孔32及び接続口43の貫通方向、すなわち、重力方向Zであって、インク滴の噴射方向とは反対側に延設されている。
なお、このような流路形成部材40の材料としては、例えば、樹脂や金属等を用いることができる。ちなみに、流路形成部材40として、樹脂材料を成形することにより、低コストで量産することができる。
また、連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口する面には、コンプライアンス基板45が設けられている。このコンプライアンス基板45は、平面視において上述した連通板15と略同じ大きさを有し、ノズルプレート20を露出する第1露出開口部45aが設けられている。そして、このコンプライアンス基板45が第1露出開口部45aによってノズルプレート20を露出した状態で、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18の液体噴射面20a側の開口を封止している。すなわち、コンプライアンス基板45が共通液室100の一部を画成している。
このようなコンプライアンス基板45は、本実施形態では、封止膜46と、固定基板47と、を具備する。封止膜46は、可撓性を有するフィルム状の薄膜(例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等により形成された厚さが20μm以下の薄膜)からなり、固定基板47は、ステンレス鋼(SUS)等の金属等の硬質の材料で形成される。この固定基板47の共通液室100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、共通液室100の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49となっている。本実施形態では、1つの共通液室100に対応して1つのコンプライアンス部49が設けられている。すなわち、本実施形態では、共通液室100が2つ設けられているため、ノズルプレート20を挟んで搬送方向Yの両側に2つのコンプライアンス部49が設けられている。
このような構成のヘッドユニット2では、インクを噴射する際に、導入口44を介してインクを取り込み、共通液室100からノズル21に至るまで流路内部をインクで満たす。その後、駆動回路120からの信号に従い、圧力発生室12に対応する各アクチュエーター130に電圧を印加することにより、アクチュエーター130と共に振動板50をたわみ変形させる。これにより、圧力発生室12内の圧力が高まり所定のノズル21からインク滴が噴射される。
<液体噴射部の構成について>
次に、ヘッドユニット2を有する液体噴射部1について詳細に説明する。
図6に示すように、液体噴射部1は、4つのヘッドユニット2と、ヘッドユニット2を保持すると共にヘッドユニット2にインクを供給するホルダー部材を含む流路部材200と、流路部材200に保持されたヘッド基板300と、可撓性配線基板の一例である配線基板121とを備えている。
なお、図7には、シール部材230及び上流流路部材210の図示を省略した液体噴射部1の平面図を示す。
図8に示すように、流路部材200は、上流流路部材210と、ホルダー部材の一例である下流流路部材220と、上流流路部材210と下流流路部材220との間に配置されるシール部材230とを具備する。
上流流路部材210は、インクの流路となる上流流路500を有している。本実施形態では、上流流路部材210は、第1上流流路部材211と、第2上流流路部材212と、第3上流流路部材213とが重力方向Zに積層されて構成されている。そして、これらの各部材には、第1上流流路501、第2上流流路502、第3上流流路503が設けられ、これらが連結することで上流流路500が構成されている。
なお、上流流路部材210はこのような態様に限定されるものではなく、単一の部材であっても、2以上の複数の部材で構成されていてもよい。また、上流流路部材210を構成する複数の部材の積層方向も特に限定されず、走査方向X、搬送方向Yであってもよい。
第1上流流路部材211は、下流流路部材220とは反対面側に、インク(液体)が保持されたインクタンクやインクカートリッジなどの液体保持手段に接続される接続部214を有する。本実施形態では、接続部214として針状に突出したものとした。なお、接続部214には、インクカートリッジなどの液体保持部が直接接続されてもよく、また、インクタンクなどの液体保持部がチューブ等の供給管などを介して接続されてもよい。
第1上流流路部材211には、第1上流流路501が設けられている。第1上流流路501は、接続部214の頂面に開口し、後述する第2上流流路502の位置に応じて、重力方向Zに延びる流路や、重力方向Zに直交する方向、すなわち走査方向X及び搬送方向Yを含む面内に延びる流路等で構成されている。また、第1上流流路部材211の接続部214の周囲には、液体保持部を位置決めするためのガイド壁215(図6参照)が設けられている。
第2上流流路部材212は、第1上流流路部材211の接続部214とは反対面側に固定されて、第1上流流路501に連通する第2上流流路502を有する。また、第2上流流路502の下流側(第3上流流路部材213側)には、第2上流流路502よりも内径が広く拡幅された第1液体溜まり部502aが設けられている。
第3上流流路部材213は、第2上流流路部材212の第1上流流路部材211とは反対側に設けられている。また、第3上流流路部材213には、第3上流流路503が設けられている。第3上流流路503の第2上流流路502側の開口部分は、第1液体溜まり部502aに応じて拡幅された第2液体溜まり部503aとなっている。第2液体溜まり部503aの開口部分(第1液体溜まり部502aと第2液体溜まり部503aとの間)には、インクに含まれる気泡や異物を除去するためのフィルター216が設けられている。これにより、第2上流流路502(第1液体溜まり部502a)から供給されたインクは、フィルター216を介して第3上流流路503(第2液体溜まり部503a)に供給される。
フィルター216としては、例えば、金網や樹脂性の網等の網目状体、多孔質体や、微細な貫通孔を穿設した金属板を用いることができる。網目状体の具体的な例としては、金属メッシュフィルターや金属繊維、例えばSUSの細線をフェルト状にしたもの、あるいは、圧縮焼結させた金属焼結フィルターや、エレクトロフォーミング金属フィルター、電子線加工金属フィルター、レーザービーム加工金属フィルターなどを用いることができる。特に、バブルポイント圧力(フィルター開孔で形成されたメニスカスが壊れる圧力)がばらつかないことが好ましく、高精細な穴径を有するフィルターは適当である。また、フィルターの濾過粒度は、インク中の異物をノズル開口に到達させないようにするために、例えばノズル開口が円形の場合、ノズル開口の直径よりも小さいことが好ましい。
フィルター216として、ステンレスのメッシュフィルターを採用する場合、インク中の異物をノズル開口に到達させないようにするために、フィルターの濾過粒度がノズル開口(例えばノズル開口が円形の場合、ノズル開口の直径20μm)よりも小さい綾畳織(濾過粒度10um)が好ましく、この場合、インク(表面張力28mN/m)で発生するバブルポイント圧力(フィルター開孔で形成されたメニスカスが壊れる圧力)は、3〜5kPaである。また、綾畳織(濾過粒度5um)を採用した場合にインクで発生するバブルポイント圧力(フィルター開孔で形成されたメニスカスが壊れる圧力)は、0〜15kPaである。
第3上流流路503は、第2液体溜まり部503aよりも下流側(第2上流流路とは反対側)で2つに分岐されており、第3上流流路503は第3上流流路部材213の下流流路部材220側の面に第1排出口504A及び第2排出口504Bとして開口している。以下、第1排出口504A及び第2排出口504Bを区別しない場合は排出口504と称する。
すなわち、1つの接続部214に対応する上流流路500は、第1上流流路501、第2上流流路502及び第3上流流路503を有し、上流流路500は、下流流路部材220側に2つの排出口504(第1排出口504A及び第2排出口504B)として開口する。言い換えると、2つの排出口504(第1排出口504A及び第2排出口504B)は、共通する流路に連通して設けられている。
また、第3上流流路部材213の下流流路部材220側には、下流流路部材220側に向かって突出する第3突起部217が設けられている。第3突起部217は、第3上流流路503毎に設けられており、第3突起部217の先端面に排出口504が開口して設けられている。
このような上流流路500が設けられた第1上流流路部材211、第2上流流路部材212及び第3上流流路部材213は、例えば、接着剤や、溶着等によって一体的に積層されている。なお、第1上流流路部材211、第2上流流路部材212及び第3上流流路部材213をネジやクランプ等で固定することもできるが、第1上流流路501から第3上流流路503に至るまでの接続部分からインク(液体)が漏出するのを抑制するためにも、接着剤や溶着等で接合するのが好ましい。
本実施形態では、1つの上流流路部材210に4つの接続部214を設け、1つの上流流路部材210には4つの独立した上流流路500が設けられている。そして、各上流流路500には、4つのヘッドユニット2のそれぞれに対応してインクが供給される。一つの上流流路500は2つに分岐し、後述する下流流路600に連通してヘッドユニット2の2つの導入口44のそれぞれに接続されている。
なお、本実施形態では、上流流路500がフィルター216よりも下流(下流流路部材220側)で2つに分岐した構成を例示したが、特にこれに限定されず、フィルター216よりも下流側で上流流路500が3つ以上に分岐されていてもよい。また、1つの上流流路500がフィルター216よりも下流で分岐されていなくてもよい。
下流流路部材220は、上流流路部材210に接合され、上流流路500に連通する下流流路600を有するホルダー部材の一例である。本実施形態に係る下流流路部材220は、第1部材の一例である第1下流流路部材240と、第2部材の一例である第2下流流路部材250とから構成されている。
下流流路部材220は、インクの流路となる下流流路600を有する。本実施形態に係る下流流路600は、形状の異なる2種の下流流路600A及び下流流路600Bで構成されている。
第1下流流路部材240は、ほぼ平板状に形成された部材である。また、第2下流流路部材250は、上流流路部材210側の面に凹部として第1収容部251、上流流路部材210とは反対側の面に凹部として第2収容部252が設けられた部材である。
第1収容部251は、第1下流流路部材240が収容される程度の大きさとされている。また、第2収容部252は、4つのヘッドユニット2が収容される程度の大きさとされている。本実施形態に係る第2収容部252は、4つのヘッドユニット2を収容可能である。
第1下流流路部材240には、上流流路部材210側の面に、第1突起部241が複数個形成されている。各第1突起部241は、上流流路部材210に設けられた第3突起部217のうち、第1排出口504Aが設けられた第3突起部217に対向して設けられている。本実施形態では、4つの第1突起部241が設けられている。
また、第1下流流路部材240には、重力方向Zに貫通し、第1突起部241の頂面(上流流路部材210に対向する面)に開口した第1流路601が設けられている。第3突起部217と第1突起部241とは、シール部材230を介して接合され、第1排出口504Aと第1流路601とが連通している。
また、第1下流流路部材240には、重力方向Zに貫通した第2貫通孔242が複数個形成されている。各第2貫通孔242は、第2下流流路部材250に形成された第2突起部253が挿通される位置に形成されている。本実施形態では、4つの第2貫通孔242が設けられている。
さらに、第1下流流路部材240には、ヘッドユニット2に電気的に接続された配線基板121が挿通される第1挿通孔243が複数個形成されている。具体的には、各第1挿通孔243は、重力方向Zに貫通し、第2下流流路部材250の第2挿通孔255と、ヘッド基板300の第3挿通孔302とに連通するように形成されている。本実施形態では4つのヘッドユニット2に設けられた各配線基板121に対応して4つの第1挿通孔243が設けられている。また、第1下流流路部材240には、ヘッド基板300側に突出し、受け面を有する支持部245が設けられている。
第2下流流路部材250には、第1収容部251の底面に、第2突起部253が複数個形成されている。各第2突起部253は、上流流路部材210に設けられた第3突起部217のうち第2排出口504Bが設けられた第3突起部217に対向して設けられている。本実施形態では、4つの第2突起部253が設けられている。また、第2下流流路部材250には、重力方向Zに貫通し、第2突起部253の頂面及び第2収容部252の底面(ヘッドユニット2に対向した面)に開口した下流流路600Bが設けられている。第3突起部217と第2突起部253とは、シール部材230を介して接合され、第2排出口504Bと下流流路600Bとが連通している。
また、第2下流流路部材250には、重力方向Zに貫通した第3流路603が複数個形成されている。各第3流路603は、第1収容部251及び第2収容部252の底面に開口している。本実施形態では、4つの第3流路603が設けられている。
第2下流流路部材250の第1収容部251の底面には、第3流路603に連続した溝部254が複数個形成されている。この溝部254は、第1収容部251に収容された第1下流流路部材240に封止されることで、第2流路602を構成する。すなわち、第2流路602は、溝部254と第1下流流路部材240の第2下流流路部材250側の面とで画成された流路である。なお、この第2流路602が請求項に記載する第1部材と第2部材との間に設けられた流路に相当する。
さらに、第2下流流路部材250には、ヘッドユニット2に電気的に接続された配線基板121が挿通される第2挿通孔255が複数個形成されている。具体的には、各第2挿通孔255は、重力方向Zに貫通し、第1下流流路部材240の第1挿通孔243とヘッドユニット2の接続口43に連通するように形成されている。本実施形態では4つのヘッドユニット2に設けられた各配線基板121に対応して4つの第2挿通孔255が設けられている。
下流流路600Aは、上述した第1流路601、第2流路602及び第3流路603が連通して形成されたものである。ここで、第2流路602は、第1下流流路部材240の一方面に形成された溝が第2下流流路部材250により封止されることで形成されている。このような第1下流流路部材240と第2下流流路部材250とを接合することで、第2流路602を下流流路部材220内に容易に形成することができる。
また、第2流路602は、水平方向に延在した流路の一例である。第2流路602が水平方向に延在しているとは、第2流路602の延在方向に、走査方向X又は搬送方向Yの成分(ベクトル)が含まれていることをいう。第2流路602が水平方向に延在していることで、重力方向Zにおける液体噴射部1の高さを小型化することができる。仮に、第2流路602が水平方向に対して傾いていると、若干液体噴射部1の高さを要してしまう。
ちなみに、第2流路602の延在方向とは、第2流路602内のインク(液体)が流れる方向のことである。したがって、第2流路602は、水平方向(重力方向Zに直交する方向)に設けられているものも、重力方向Z及び水平方向(走査方向X及び搬送方向Yの面内方向)に交差して設けられているものも含む。本実施形態では、第1流路601及び第3流路603を重力方向Zに沿って設け、第2流路602を水平方向(搬送方向Y)に沿って設けるようにした。なお、第1流路601と第3流路603とは、重力方向Zに交差する方向に設けられていてもよい。
もちろん、下流流路600Aは、これに限定されず、第1流路601、第2流路602、第3流路603以外の流路が存在してもよい。また、下流流路600Aは、第1流路601、第2流路602及び第3流路603から構成されず、一本の流路から構成されていてもよい。
下流流路600Bは、上述したように、第2下流流路部材250を重力方向Zに貫通した貫通孔として形成されている。もちろん、下流流路600Bはこのような態様に限定されず、例えば、重力方向Zに交差する方向に沿って形成されていてもよいし、下流流路600Aのように複数の流路を連通させて構成したものであってもよい。
このような下流流路600A及び下流流路600Bは一つのヘッドユニット2に対して一つずつ形成されている。すなわち下流流路部材220には、下流流路600Aと下流流路600Bの一組が計4つ設けられている。
下流流路600Aの両端の開口のうち、第1排出口504Aが連通される第1流路601の開口を第1流入口610とし、第2収容部252に開口する第3流路603の開口を第1流出口611とする。
下流流路600Bの両端の開口のうち、第2排出口504Bが連通される下流流路600Bの開口を第2流入口620とし、第2収容部252に開口する下流流路600Bの開口を第2流出口621とする。以降、下流流路600A及び下流流路600Bを区別しない場合は、下流流路600と称する。
図6に示すように、下流流路部材220(ホルダー部材)は、ヘッドユニット2を下方の側で保持する。具体的には、下流流路部材220の第2収容部252には、複数(本実施形態では4つ)のヘッドユニット2が収容されている。
図8に示すように、ヘッドユニット2には導入口44が2つずつ設けられている。下流流路600(下流流路600A及び下流流路600B)の第1流出口611及び第2流出口621は、各導入口44の開口する位置に合わせて下流流路部材220に設けられている。
ヘッドユニット2の各導入口44は、第2収容部252の底面部に開口した下流流路600の第1流出口611及び第2流出口621に連通するように位置合わせされている。ヘッドユニット2は、各導入口44の周囲に設けられた接着剤227により第2収容部252に固定されている。このようにヘッドユニット2が第2収容部252に固定されることで、下流流路600の第1流出口611及び第2流出口621と導入口44とが連通し、ヘッドユニット2にインクが供給されるようになっている。
下流流路部材220(ホルダー部材)は、ヘッド基板300が上方の側で載置される。具体的には、下流流路部材220の上流流路部材210側の面には、ヘッド基板300が載置されている。ヘッド基板300は、配線基板121が接続され、該配線基板121を介して液体噴射部1の噴射動作等を制御する回路や抵抗などの電装部品が実装された部材である。
図6に示すように、ヘッド基板300の上流流路部材210側の面には、配線基板121の第2端子列123が電気的に接続される第1端子(電極端子)311が複数個並設された第1端子列310が形成されている。本実施形態の第1端子311は、走査方向Xに沿って複数個並設されて第1端子列310をなしている。本実施形態では、この第1端子列310が、配線基板121に電気的に接続される実装領域の一例となる。
また、ヘッド基板300には、ヘッドユニット2に電気的に接続された配線基板121が挿通される第3挿通孔302が複数個形成されている。具体的には、各第3挿通孔302は、重力方向Zに貫通し、第1下流流路部材240の第1挿通孔243に連通するように形成されている。本実施形態では4つのヘッドユニット2に設けられた各配線基板121に対応して4つの第3挿通孔302が設けられている。
さらに、ヘッド基板300には、重力方向Zに貫通した第3貫通孔301が設けられている。第3貫通孔301は、第1下流流路部材240の第1突起部241及び第2下流流路部材250の第2突起部253が挿通されるものである。本実施形態では、合計8つの第3貫通孔301が第1突起部241及び第2突起部253に対向するように設けられている。
なお、ヘッド基板300に形成する第3貫通孔301の形状は上述したような態様に限定されない。例えば、第1突起部241及び第2突起部253が挿通される共通の貫通孔を挿通孔としてもよい。すなわち、ヘッド基板300は、下流流路部材220の下流流路600と、上流流路部材210の上流流路500とを接続する際の妨げとならないように挿通孔や切り欠き等が形成されていればよい。
図8に示すように、ヘッド基板300と上流流路部材210との間には、シール部材230が設けられている。シール部材230の材料としては、液体噴射部1に用いられるインク等の液体に対して耐液体性を有し、且つ弾性変形可能な材料(弾性材料)、例えば、ゴムやエラストマー等を用いることができる。
シール部材230は、重力方向Zに貫通した連通路232及び下流流路部材220側に突出した第4突起部231が形成された板状の部材である。本実施形態では、連通路232及び第4突起部231は、各上流流路500及び下流流路600に対応して8つ形成されている。
シール部材230の上流流路部材210側には、第3突起部217が挿入される環状の第1凹部233が設けられている。第1凹部233は、第4突起部231に対向する位置に設けられている。
第4突起部231は、下流流路部材220側に突出しており、下流流路部材220の第1突起部241及び第2突起部253に対向する位置に設けられている。第4突起部231の頂面(下流流路部材220に対向する面)には、第1突起部241及び第2突起部253が挿入される第2凹部234が設けられている。
連通路232は、シール部材230を重力方向Zに貫通し、一端が第1凹部233に開口し、他端が第2凹部234に開口している。そして、第1凹部233に挿入された第3突起部217の先端面と、第2凹部234に挿入された第1突起部241及び第2突起部253の先端面との間で、第4突起部231が重力方向Zに所定の圧力が印加された状態で保持されている。したがって、上流流路500と下流流路600とは連通路232を介して密封された状態で連通されている。
下流流路部材220の第2収容部252側(下側)には、カバーヘッド400が取り付けられている。カバーヘッド400は、ヘッドユニット2が固定され、下流流路部材220に固定される部材であり、ノズル21を露出する第2露出開口部401が設けられている。本実施形態では、第2露出開口部401は、ノズルプレート20を露出する大きさ、つまり、コンプライアンス基板45の第1露出開口部45aと略同じ開口を有する。
カバーヘッド400は、コンプライアンス基板45の連通板15とは反対面側に接合されており、コンプライアンス部49の流路(共通液室100)とは反対側の空間を封止する。このようにコンプライアンス部49をカバーヘッド400で覆うことにより、コンプライアンス部49が媒体STに接触しても破壊されるのを抑制することができる。また、コンプライアンス部49にインク(液体)が付着するのを抑制して、カバーヘッド400の表面に付着したインク(液体)を例えばワイパーブレード等で払拭することができ、媒体STをカバーヘッド400に付着したインク等で汚すのを抑制することができる。なお、特に図示していないが、カバーヘッド400とコンプライアンス部49との間の空間は、大気開放されている。もちろん、カバーヘッド400は、ヘッドユニット2毎に独立して設けられていてもよい。
<メンテナンス装置の構成について>
次に、メンテナンス装置710の構成について詳述する。
図9に示すように、非印刷領域RAは、ワイパーユニット750が設けられた払拭領域WAと、フラッシングユニット751が設けられた受容領域FAと、キャップユニット752が設けられたメンテナンス領域MAとを含む。すなわち、非印刷領域RAには、払拭領域WA、受容領域FA、及びメンテナンス領域MAが、走査方向Xにおいて印刷領域PA(図2参照)側から、払拭領域WA、受容領域FA、メンテナンス領域MAの順で配置されている。
ワイパーユニット750は、液体噴射部1を払拭する払拭部材750aを有している。本実施形態の払拭部材750aは可動式であり、ワイピングモーター753の動力で払拭動作を行う。フラッシングユニット751は、液体噴射部1が噴射したインク滴を受容する液体受容部751aを有している。
本実施形態の液体受容部751aはベルトによって構成され、ベルトのフラッシングによるインク汚れ量が規定量を超えたとみなしうる所定時期に、フラッシングモーター754の動力によりベルトを移動させる。なお、フラッシングとは、ノズル21の目詰まりなどを予防及び解消する目的で全ノズル21から印刷とは無関係にインク滴を強制的に噴射(排出)する動作をいう。
キャップユニット752は、液体噴射部1A,1Bが図9に二点鎖線で示すようにホームポジションHPに位置しているときに、ノズル21の開口を囲うように液体噴射部1A,1Bに接触可能な2つのキャップ部752aを有する。2つのキャップ部752aは、キャッピングモーター755の動力で、ホームポジションHPにある液体噴射部1に接触する接触位置と、液体噴射部1から離れた退避位置との間で移動可能に構成されている。
ワイパーユニット750は、ワイピングモーター753の動力により搬送方向Yに沿って延びる一対のレール758上を往復移動可能な可動式の筐体759を備えている。筐体759内には、払拭方向(搬送方向Yに同じ)に所定の距離を隔てて位置する繰出軸760と巻取軸761とがそれぞれ回転可能に支持されている。繰出軸760は未使用の布シート762が形成する繰出ロール763を支持し、巻取軸761は使用済みの布シート762が形成する巻取ロール764支持する。
繰出ロール763と巻取ロール764の間に位置する布シート762は、筐体759の上面中央部の図示しない開口から上方へ一部突出した状態にある押圧ローラー765の上面に巻き掛けられ、押圧ローラー765に巻き掛けられた部分で半円筒状(凸状)の払拭部材750aを形成している。この払拭部材750aは上方へ付勢された状態にある。
筐体759は、繰出ロール763及び巻取ロール764を収容するカセットと、レール758に案内されてワイピングモーター753の動力で図示しない動力伝達機構(例えばラック・アンド・ピニオン機構)を介して払拭方向(本実施形態では搬送方向Yに沿う方向)に往復移動可能なホルダーとから構成される。筐体759は、ワイピングモーター753が正転と逆転で駆動されることにより、図9に示す退避位置と、払拭部材750aが液体噴射部1を払拭し終える払拭位置との間を搬送方向Yに一往復移動する。
このとき、筐体759の往動動作が終わると、動力伝達機構がワイピングモーター753と巻取軸761とを動力伝達可能に接続する状態に切り換わり、ワイピングモーター753が逆転駆動するときの動力によって筐体759の復動動作と布シート762の巻取ロール764への所定量の巻き取り動作とが行われる。2つの液体噴射部1A,1Bは払拭領域WAに対して順次に移動され、筐体759の一往復移動による2つの液体噴射部1A,1Bに対するワイピングは払拭領域WAに移動された片方ずつ個別に行われる。
フラッシングユニット751は、搬送方向Yに対峙する互いに平行な駆動ローラー766及び従動ローラー767と、駆動ローラー766及び従動ローラー767間に巻き掛けられた無端状のベルト768とを備えている。ベルト768は、走査方向Xにノズル列NLが8列分(2列×4列分)以上の幅を有しており、液体噴射部1A,1Bの各ノズル21から噴射されたインクを受容する液体受容部751aを構成する。この場合、ベルト768の外周面は、インクを受容する液体受容面769となる。
フラッシングユニット751は、ベルト768の下側に、液体受容面769に保湿液を供給可能な保湿液供給部(図示略)と、液体受容面769に付着した廃インク等を保湿状態で掻き取る液体掻取り部(図示略)とを備えており、液体受容面769で受容された廃インクは液体掻取り部によってベルト768から除去される。このため、ベルト768の周回移動により、液体受容面769におけるノズル21と対向する受容範囲が更新される。
キャップユニット752は、2つの液体噴射部1A,1Bに接触してそれぞれノズル21が開口する開口領域である液体噴射面20a(図3参照)を囲む閉空間を形成可能な2つのキャップ部752aを有している。各キャップ部752aは、キャッピングモーター755の動力で、液体噴射部1に接触可能な接触位置と、液体噴射部1から離れた退避位置との間を移動する。各キャップ部752aは、1つの吸引用キャップ770と4つの保湿用キャップ771とを備えている。各保湿用キャップ771は、液体噴射部1に接触して2列ずつのノズル列NL(図3参照)を囲む閉空間を形成するキャッピングを行うことにより、ノズル21の乾燥を抑制する。
吸引用キャップ770はチューブ772を介して吸引ポンプ773と接続されている。そして、吸引用キャップ770が液体噴射部1に接触して密閉空間を形成する状態で吸引ポンプ773を駆動することで、吸引用キャップ770内に生じる負圧の作用により、ノズル21から増粘インクや気泡等がインクとともに吸引されて排出される、所謂吸引クリーニングが行われる。
こうした吸引クリーニングは、液体噴射部1A,1Bに対して2列分のノズル列NLずつ行われる。吸引クリーニングを行うと、ノズル21から排出されたインクの液滴が液体噴射部1に付着するので、吸引クリーニングの実行後には、付着した液滴等を除去するために、払拭部材750aによるワイピングを行うことが好ましい。また、払拭部材750aがワイピングを行うと、液体噴射部1に付着していた異物や気泡がノズル21内に押し込まれてメニスカスが破壊されたり、吐出不良を生じたりするおそれがある。そのため、ワイピングの実行後にはフラッシングを行うことにより、ノズル21内に混入した異物を排出するとともに、ノズル21内のインクメニスカスを整えることが好ましい。
<流体噴射装置の構成について>
次に、流体噴射装置775の構成について詳述する。
図10に示すように、流体噴射装置775は、液体噴射部1に対して、空気(気体)及び第2液体(洗浄液)のうちの少なくとも一方を噴射可能に構成されている。そして、流体噴射装置775は、空気と第2液体とを一緒に噴射させることで、空気と第2液体とが混合された混合流体を噴射することが可能になっている。
第2液体は、使用するインクの主溶媒と同じにすることが好ましい。本実施形態では、インクの溶媒が水である水系レジンインクを採用しているため、第2液体として純水を使用しているが、例えばインクの溶媒が溶剤である場合は第2液体としてインクと同じ溶媒を使用することが好ましい。また、第2液体として、純水に防腐剤を含有させた液体を用いてもよい。
なお、第2液体に含有させる防腐剤は、インクに含有される防腐剤と同じであることが好ましく、例えば、芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、PROXEL GXL)などが挙げられる。防腐剤として、泡立ち難さの観点からPROXELを採用する場合には、第2液体に対する含有量を0.05質量パーセント以下にすることが好ましい。
流体噴射装置775は噴射ユニット777を備え、噴射ユニット777は混合流体を噴射可能な噴射口778jを有する流体噴射ノズル778を備えている。流体噴射ノズル778は、混合流体を噴射方向F(例えば、液体噴射面aと直交する上方)に向けて噴射するように配置されている。流体噴射ノズル778は、噴射方向Fに向けて第2液体が噴射される液体噴射ノズル780と、噴射方向Fに向けて空気が噴射されるとともに液体噴射ノズル780を囲む円環状の気体噴射ノズル781とを備えている。
すなわち、液体噴射ノズル780及び気体噴射ノズル781は、いずれも噴射方向Fに向けて開口している。液体噴射ノズル780の開口径は、インクが付着して固化することを考慮すると、液体噴射部1のノズル21の開口径よりも十分大きいことが好ましく、例えば0.4mm以上であることが好ましい。本実施形態では、液体噴射ノズル780の開口径を1.1mmに設定している。
また、本実施形態の流体噴射ノズル778には、第2液体と空気とが混合される混合部KAが流体噴射ノズル778の外部に位置する、いわゆる外部混合型のものが採用されている。したがって、混合部KAは、液体噴射ノズル780の開口及び気体噴射ノズル781の開口と隣接する所定の空間によって構成される。流体噴射ノズル778には、エアポンプ782からの空気を供給するための気体流路783aを形成する気体供給管783が連結されている。気体流路783aは、気体噴射ノズル781と連通している。
気体供給管783の途中位置にはエアポンプ782から供給される空気の圧力を調整する圧力調整弁784が設けられている。本実施形態の流体噴射装置775では、エアポンプ782から流体噴射ノズル778に供給される空気の圧力が200kPa以上となるように設定されている。気体供給管783における圧力調整弁784と流体噴射ノズル778との間の位置には、流体噴射ノズル778に供給される空気中の塵埃等を除去するためのエアフィルター785が設けられている。
また、流体噴射ノズル778には、液体収容部の一例としての貯留タンク787に収容された第2液体を供給するための液体流路788aを形成する液体供給管788が連結されている。液体流路788aは、液体噴射ノズル780と連通している。貯留タンク787の上端部には貯留タンク787内の液体収容空間SKを大気開放する大気開放管789が設けられ、大気開放管789には開閉弁の一例としての第1電磁弁790が設けられている。
したがって、第1電磁弁790が開弁されると液体収容空間SKが大気開放管789を介して大気と連通する連通状態となる一方、第1電磁弁790が閉弁されると液体収容空間SKが大気と連通しない非連通状態となる。すなわち、第1電磁弁790は、開閉動作することで、液体収容空間SKを連通状態と非連通状態との間で切り替え可能に構成されている。
また、貯留タンク787は、第2液体を収容するとともにプリンター本体11a(図1参照)に着脱自在に装着される洗浄液カートリッジ791と供給管792を介して接続されている。供給管792の途中位置には、洗浄液カートリッジ791内の第2液体を貯留タンク787に供給するための液供給ポンプ793が設けられている。供給管792における液供給ポンプ793と貯留タンク787との間の位置には、供給管792を開閉するための第2電磁弁794が設けられている。
図11及び図12に示すように、噴射ユニット777は、有底略矩形箱状のベース部材800と、ベース部材800内に配置されて流体噴射ノズル778を支持する支持部材801と、ベース部材800内に配置されて流体噴射ノズル778及び支持部材801を収容する矩形筒状のケース802とを備えている。流体噴射ノズル778は支持部材801に固定され、支持部材801及びケース802はベース部材800内を搬送方向Yに沿って個別に往復移動可能に構成されている。
図11に示すように、噴射ユニット777は、洗浄モーター803と、洗浄モーター803の駆動力を支持部材801に伝達する伝達機構804と、印刷領域PA側の端部に立設された側板805とを備えている。そして、支持部材801は、洗浄モーター803の駆動力が伝達機構804を介して伝達されることで、流体噴射ノズル778と一緒に搬送方向Yに沿って往復移動される。この場合、ケース802は、支持部材801によって内側から押圧された場合に、支持部材801と一緒に搬送方向Yに沿って往復移動される。
ケース802には、ケース802の上端開口を塞ぐ相手部材の一例としてのカバー部材806が取着されている。カバー部材806の上面における流体噴射ノズル778の移動領域の一部と重力方向Zにおいて重なる位置には、搬送方向Yに延びる矩形状の貫通孔807が形成されている。カバー部材806の上面には、貫通孔807を囲む矩形枠状のリップ部808が設けられている。側板805におけるケース802側の面には、ケース802が搬送方向Yに沿って往復移動する際にケース802を案内する案内部(図示略)が設けられている。
図12に示すように、案内部(図示略)は、ケース802が液体噴射部1A,1Bと対応する位置でそれぞれ上昇し、リップ部808が互いに接近して位置する2列のノズル列NLを囲んだ状態で液体噴射部1に接触するように、ケース802を案内する。
なお、本実施形態では、重力方向Zにおける流体噴射ノズル778と液体噴射部1との距離は、約5mmに設定されており、図1に示す支持台712に支持された媒体STと液体噴射面20aとの距離(約1mm)よりも長くなっている。
<液体噴射装置の電気的構成について>
次に液体噴射装置7の電気的構成について説明する。
図13に示すように、液体噴射装置7は、液体噴射装置7を統括的に制御する制御部810を備えている。制御部810は、リニアエンコーダー811と電気的に接続されている。リニアエンコーダー811は、図1に示すキャリッジ723の背面側にガイド軸722に沿って延びるように設けられたテープ状の符号板と、キャリッジ723に固定されて符号板に穿孔された一定ピッチのスリットを透過した光を検出するセンサーとを備えている。
制御部810は、リニアエンコーダー811から図1に示す印刷部720の移動量に比例する数のパルスを入力し、その入力したパルスの数を、印刷部720がホームポジションHP(図2参照)から離れるときに加算し、ホームポジションHPに近づくときに減算することで、印刷部720の走査方向Xにおける位置を把握する。
制御部810には、ロータリーエンコーダー812が電気的に接続されている。ロータリーエンコーダー812は、洗浄モーター803の出力軸に取着された円板状の符号板と、符号板に穿孔された一定ピッチのスリットを透過した光を検出するセンサーとを備えている。
制御部810は、ロータリーエンコーダー812から支持部材801の移動量に比例する数のパルスを入力し、その入力したパルスの数を、支持部材801が待機位置(図15に示す位置)から離れるときに加算し、待機位置に近づくときに減算することで、支持部材801(流体噴射ノズル778)の搬送方向Yにおける位置を把握する。
制御部810は、駆動回路813を介してアクチュエーター130と電気的に接続され、アクチュエーター130を駆動制御する。制御部810は、アクチュエーター130の駆動による振動板50の残留振動の周期に基づいて各ノズル21の目詰まりを把握する。
制御部810は、モーター駆動回路814,815,816,817,818,819を介してそれぞれ洗浄モーター803、キャリッジモーター748、搬送モーター749、ワイピングモーター753、フラッシングモーター754、及びキャッピングモーター755と電気的に接続されている。そして、制御部810は、モーター803,748,749,753,754,755をそれぞれ駆動制御する。
制御部810は、ポンプ駆動回路820,821,822を介してそれぞれ吸引ポンプ773、エアポンプ782、及び液供給ポンプ793と電気的に接続されている。そして、制御部810は、ポンプ773,782,793をそれぞれ駆動制御する。制御部810は、弁駆動回路823,824を介してそれぞれ第1電磁弁790及び第2電磁弁794と電気的に接続されている。そして、制御部810は、電磁弁790,794をそれぞれ駆動制御する。
<メンテナンス装置によるメンテナンス動作について>
次に、液体噴射装置7の作用について、特においてメンテナンス装置710が液体噴射部1に対して行うメンテナンス動作に着目して説明する。
外部機器等を通じて制御部810に印刷データが入力されると、制御部810は印刷データを基にキャリッジモーター748を駆動して印刷部720が走査方向Xに移動する途中で液体噴射部1A,1Bの各ノズル21からインク滴を媒体STの表面に向かって噴射する。すると、この噴射されたインク滴が媒体STの表面に着弾することで、媒体STの表面に画像等が印刷される。
媒体STの印刷中は、全ノズル21のうちインク滴を噴射しないノズル21内のインクの増粘等を防ぐ目的で、所定の時期(例えば10〜30秒の範囲内の所定時間経過毎)に印刷部720は受容領域FAへ移動し、全ノズル21からインク滴を噴射して排出するフラッシングを行う。
また、所定の吸引クリーニング条件を満たすと、制御部810は、キャリッジモーター748を制御し、印刷部720をホームポジションHPに移動させて吸引クリーニングを行う。吸引クリーニングは、ノズル列NLを囲うように液体噴射部1に吸引用キャップ770を接触させて密閉空間を形成した状態で吸引ポンプ773を駆動させて吸引用キャップ770内に負圧を作用させることで、ノズル21から所定量のインクを吸引して増粘インクや気泡等を除去する。
吸引クリーニングの終了後、制御部810は、印刷部720を払拭領域WAに移動させて、払拭部材750aで液体噴射部1を払拭するワイピングを実行させることで、ノズル21から排出されて液体噴射部1に付着した液滴等を除去する。また、ワイピングの実行後、制御部810は、印刷部720を受容領域FAに移動させて、液体受容部751aに向かってフラッシングを行うことにより、ノズル21内のメニスカスを整える。
その後、制御部810は、アクチュエーター130の駆動による振動板50の残留振動の周期に基づいて各ノズル21の目詰まりを検出する。ここで、吸引クリーニングの終了後に各ノズル21の目詰まりを検出するのは、特に、インクに、加熱することにより硬化する合成樹脂を含んだレジンインクやUV(紫外線)照射により硬化するUVインクを用いた場合、吸引クリーニングを行っても目詰まりが解消されないノズル21が発生することがあるからである。なお、ここでいう目詰まりとは、ノズル21内のインクが固化して詰まった状態だけでなく、ノズル21のメニスカスに膜が張るようにインクが固まったり、ノズル21内、圧力発生室12内、及びノズル連通路16内のインクが増粘したりすることによりノズル21から正常にインクを吐出(噴射)することができない状態も含む。
そして、全ノズル21の目詰まりが検出されない場合に印刷ジョブ待ち状態であると、制御部810は、印刷部720を印刷領域PAへ移動させて媒体STの印刷を行う。一方、全ノズル21の中で目詰まりしているノズル21が検出されると、制御部810は、走査方向XにおけるホームポジションHP側とは反対側の非印刷領域LAに印刷部720を移動させ、目詰まりしているノズル21内を流体噴射装置775によって洗浄することで、ノズル21の目詰まりを解消させるためのノズル洗浄を行う。
そして、流体噴射装置775がノズル洗浄を行う場合、目詰まりしているノズル21と流体噴射ノズル778とが重力方向Zにおいて対向するように、これらの位置を合わせる。この場合、目詰まりしているノズル21と流体噴射ノズル778との走査方向X(ノズル列NLの延びる方向と直交する方向)の位置合わせは印刷部720の移動によって行い、目詰まりしているノズル21と流体噴射ノズル778との搬送方向Y(ノズル列NLの延びる方向)の位置合わせは流体噴射ノズル778の移動によって行う。
詳しくは、目詰まりしているノズル21が液体噴射部1Aにある場合、図12に示すように、印刷部720の走査方向Xの位置合わせを行った後、リップ部808が目詰まりしているノズル21を含むノズル列NLを囲んだ状態で液体噴射面20aに接触するように、支持部材801を介してケース802を移動させる。続いて、流体噴射ノズル778の液体噴射ノズル780が目詰まりしたノズル21と対向するように支持部材801を介して流体噴射ノズル778を移動させて流体噴射ノズル778の搬送方向Yの位置を合わせる。
このとき、流体噴射ノズル778から混合流体が噴射される前の通常状態では、第1電磁弁790が開弁されて液体収容空間SKが大気と連通する連通状態になるとともに第2電磁弁794が閉弁された状態になっている。
この状態では、図10に示すように、液体流路788aにおける第2液体の気液界面KKの高さHは、流体噴射ノズル778の先端の高さを0としたときに、−100〜−1000mmとなるように設定されることが好ましい。本実施形態では、流体噴射ノズル778の先端の高さを0としたときの高さHが−150mmとなるように設定されている。
そして、図10及び図12に示す状態で、エアポンプ782を駆動して空気を流体噴射ノズル778に供給すると、気体噴射ノズル781から空気が噴射される。この空気の噴射によって発生する負圧によって液体流路788aの第2液体が吸い上げられて液体噴射ノズル780から噴射される。これにより、混合部KAで空気と第2液体とが混合されて混合流体が発生し、この混合流体が目詰まりしたノズル21を含む液体噴射面20aの一部の領域に噴射される。
この混合流体にはノズル21の開口よりも小さい液滴状(例えば、ノズルの開口が円形で、液滴の形状を球形とした場合、ノズルの開口径より小さい直径20μm以下)の液滴状の第2液体(この小径の第2液体の液滴を小液滴DSという、図16参照)が多数含まれており、このときの流体噴射ノズル778からの混合流体の噴射速度は毎秒40m以上となるように設定されている。この小液滴DSの運動エネルギーは、印刷時のインクの吐出動作やフラッシング動作によってノズル21内の気液界面に伝わるエネルギーでは破壊できない程度に気液界面で固化した膜状のインクを破壊可能な運動エネルギーと同等以上であることが好ましい。
すなわち、流体噴射装置775が噴射口778jからノズル21に向けて噴射する第2液体の小液滴DSの質量と当該小液滴DSのノズル21の開口位置における飛翔速度の2乗との積は、ノズル21の開口から噴射されるインク滴の質量と当該インク滴の飛翔速度の2乗との積よりも大きくなるように設定される。
また、目詰まりしたノズル21(このノズル21が開口する開口領域)に対する流体噴射装置775の小液滴DSを含む混合流体の噴射は、目詰まりしたノズル21と連通する圧力発生室12のインクが、当該圧力発生室12と対応するアクチュエーター130の駆動による振動板50の振動によって加圧された状態で行うことが好ましい。そして、流体噴射ノズル778から混合流体が目詰まりしたノズル21に噴射されると、混合流体中のノズル21の開口よりも小さい液滴状の第2液体がノズル21の開口を通してノズル21内に進入して目詰まりした部分に衝突する。
すなわち、ノズル21の開口よりも小さい液滴状の第2液体がノズル21内で固まったインクに衝突する。このときの第2液体による固まったインクに対する衝撃によって当該固まったインクが破壊され、ノズル21の目詰まりが解消される。このとき、この目詰まりが解消されたノズル21と連通する圧力発生室12内のインクは加圧されているので、当該ノズル21内に進入した混合流体が、圧力発生室12を経由して液体噴射部1A内の奥へと進入することが抑制される。
そして、流体噴射ノズル778からの混合流体の噴射を停止させる場合には、まず、流体噴射ノズル778から混合流体が噴射されている状態で第1電磁弁790を閉弁することで、液体収容空間SKを大気と連通する連通状態から大気と連通しない非連通状態に切り替える。すると、液体収容空間SKが負圧になるので、この負圧の作用により、液体噴射ノズル780から噴射されている第2液体が液体流路788aに引き込まれる。
これにより、液体流路788aにおける第2液体の気液界面KK(貯留タンク787の水頭面)は、混合部KAよりも下方側(貯留タンク787側)に位置するようになる。そして、エアポンプ782を停止すると、気体噴射ノズル781から空気が噴射されなくなる。この場合、エアポンプ782は、液体流路788aにおける第2液体の気液界面KKが混合部KAよりも下方側に位置した状態で停止されるので、液体流路788a内の第2液体が混合部KAを越えて気体噴射ノズル781内に進入することが抑制される。
さらにこの場合、エアポンプ782から液体流路788aを介した気体噴射ノズル781への空気の供給を停止した後も、第1電磁弁790の閉弁状態が維持され、液体収容空間SKの非連通状態が維持される。なお、ノズル21を洗浄した後の不要な第2液体やノズル21から洗い流された不要なインクなどは、ケース802内からベース部材800内へと流れ落ちてベース部材800が有する廃液口(図示略)から廃液タンク(図示略)に回収される。
また、目詰まりしているノズル21が液体噴射部1Bにもある場合、図14に示すように、液体噴射部1Aの場合と同様に、リップ部808が液体噴射部1Bの目詰まりしているノズル21を含むノズル列NLを囲んだ状態で液体噴射面20aに接触するように、支持部材801を介してケース802を移動させる。そして、液体噴射部1Aの場合と同様に、第1電磁弁790を開弁した状態で混合流体を液体噴射部1Bの目詰まりしているノズル21に噴射して当該ノズル21の目詰まりを解消する。
なお、流体噴射ノズル778からの目詰まりしたノズル21を含む液体噴射部1A,1Bへの混合流体の噴射は、時間間隔を置いて複数回行うようにしてもよい。この場合、時間間隔は一定であってもよいし一定でなくてもよい。このようにすれば、液体噴射部1A,1Bに噴射された混合流体が泡状になってノズル21の開口を塞いだ場合でも、混合流体の噴射の停止中にノズル21の開口を塞いだ泡状の混合流体が液滴状に戻る。このため、先に液体噴射部1A,1Bに噴射されて泡状になってノズル21の開口を塞いだ混合流体によって、後から液体噴射部1A,1Bに噴射された混合流体中の液滴のノズル21内への進入が阻まれることを抑制することができる。なお、第2液体として防腐剤を含まない純水を用いれば、こうした泡立ちは抑制される。
そして、図15に示すように、流体噴射装置775による液体噴射部1A,1Bの目詰まりしたノズル21の洗浄が終了した後は、流体噴射ノズル778から混合流体が噴射されている状態で支持部材801を待機位置に移動させて、流体噴射ノズル778をカバー部材806の上壁における貫通孔807と対応しない位置と対向させる。このとき、流体噴射ノズル778とカバー部材806の上壁との間には僅かな隙間が形成される。
すると、液体噴射ノズル780を囲む円環状の気体噴射ノズル781から噴射される空気がカバー部材806の上壁にぶつかって当該上壁に沿って流れることで、円環状の気体噴射ノズル781から噴射される空気の内側、すなわち液体噴射ノズル780の上側の圧力が上昇する。そして、この液体噴射ノズル780の上側の上昇した圧力によって、液体流路788a内の第2液体が下方(貯留タンク787側)に向けて押圧される。すなわち、液体流路788a内における第2液体の気液界面KKが混合部KAよりもずっと下方へ押し下げられた状態となる。
この状態で、エアポンプ782を停止すると、気体噴射ノズル781から空気が噴射されなくなる。この場合、エアポンプ782は、液体流路788aにおける第2液体の気液界面KKが混合部KAよりも下方側に位置した状態で停止されるので、液体流路788a内の第2液体が混合部KAを越えて気体噴射ノズル781内に進入することが抑制される。
その後、印刷部720は、ホームポジションHP側へ移動され、液体噴射部1A,1Bの各ノズル21の開口からインクを排出する吸引クリーニングやフラッシングが行われることで、液体噴射部1A,1B内に残留する第2液体や気泡などが除去される。そして、このときの吸引クリーニングやフラッシングは、インクの排出量(消費量)の少ない軽度のもので済む。なぜなら、混合流体の目詰まりしたノズル21への噴射は、上述のように目詰まりしたノズル21と連通する圧力発生室12内のインクが加圧された状態で行われたので、混合流体が圧力発生室12を経由して液体噴射部1A,1B内の奥へと進入(逆流)することが抑制されたからである。
(第2実施形態)
次に、液体噴射装置の第2実施形態について、図を参照して説明する。
なお、第2実施形態において第1実施形態と同じ符号を付したものは第1実施形態と同様の構成を備えるので説明を省略し、以下においては第1実施形態と異なる点を中心に説明を行う。
図16に示すように、本実施形態の液体噴射装置が備える流体噴射装置775Dは、流体噴射ノズル778が流体を噴射する方向が変更可能に構成される。ここで、ノズル21が開口する開口面(液体噴射面20a)に対してほぼ直交する第1噴射方向S1に流体を噴射するときの流体噴射ノズル778の位置を第1ポジションP1という。また、液体噴射面20aに対して斜めに交差する第2噴射方向S2に流体を噴射するときの流体噴射ノズル778の位置を第2ポジションP2といい、液体噴射面20aに対して平行をなす第3噴射方向S3に流体を噴射するときの流体噴射ノズル778の位置を第3ポジションP3という。
また、流体噴射装置775Dにおいては、流体噴射ノズル778に第2液体を供給する液体供給管788に、供給管831を介して液体タンク832が接続されている。液体タンク832には、界面活性剤が貯留される。また、供給管831には、開状態になったときに液体タンク832と液体供給管788を連通状態にさせる一方で、閉状態になったときに液体タンク832と液体供給管788を非連通状態にさせる開閉弁833が設けられている。そして、開閉弁833が開状態のときに流体噴射ノズル778から混合流体が噴射されると、その噴射によって生じる負圧によって液体タンク832内の界面活性剤が吸い出されて、第2液体に混合される。すなわち、流体噴射装置775Dにおいて、開閉弁833を開状態とすることで、流体噴射ノズル778は気体、第2液体及び界面活性剤の混合流体を噴射する。
さらに、本実施形態の液体噴射装置は、流体噴射装置775Dとは別に、流体噴射装置775Bを備える。流体噴射装置775Bは、エアポンプ782Bと、エアポンプ782Bに下流端が接続される気体供給管783Bと、貯留タンク787Bと、貯留タンク787Bに下流端が接続される液体供給管788Bと、気体供給管783B及び液体供給管788Bの上流端がそれぞれ接続される流体噴射ノズル778Bと、を有する。そして、流体噴射装置775Bの貯留タンク787Bには、撥液成分を含有する第3液体を貯留される。
流体噴射装置775Bは、撥液成分を含有する第3液体を含む流体を噴射可能であればよく、第1実施形態の流体噴射装置775と同様の構成を採用してもよいし、構成の一部を変更してもよい。流体噴射装置775Bは、例えば、非印刷領域LAまたは非印刷領域RAに配置され、液体噴射面20aに対して斜めに交差する第2噴射方向S2に流体を噴射可能なように、流体噴射ノズル778Bが第2ポジションP2に配置される。
<流体噴射装置によるメンテナンス動作について>
次に、液体噴射装置の作用について、特にメンテナンス装置710が液体噴射部1に対して行うメンテナンス動作に着目して説明する。
流体噴射装置775Dは、目的に応じて、第1モードのノズル洗浄、第2モードの液体噴射面洗浄、第3モードの気体吹き付け、第4モードの泡付着または第6モードの流体注入を選択的に実行する。また、流体噴射装置775Bは所定のタイミングで第5モードの撥液処理を実行する。
図17に示すように、第1モードのノズル洗浄では、第1実施形態で詳述したのと同様に、ノズル21の目詰まりの解消を目的として、ノズル21が開口する開口領域(液体噴射面20a)に対して、流体噴射ノズル778がノズル21の開口よりも小さい第2液体の小液滴DSを含む流体を噴射する第1流体噴射を行う。すなわち、第1モードでは、流体噴射ノズル778を第1ポジションP1に配置するとともに開閉弁833を閉状態として、目詰まりの生じた特定のノズル21をターゲットとして、第2液体と気体の混合流体を高速かつ高圧で第1噴射方向S1に短時間噴射する。
次に、第2モードの液体噴射面洗浄では、液体噴射面20aの洗浄を目的として、液体噴射部1の液体噴射面20aに対して、流体噴射ノズル778が小液滴DSより最小液滴径(液滴が球形とした場合)が大きい第2液体の大液滴DLを含む流体を噴射する第2流体噴射を行う。なお、ノズル21から噴射される最大径(液滴が球形とした場合)のインク滴DMと比較すると、小液滴DSはインク滴DMよりも液滴径が小さく、大液滴DLはインク滴DMよりも液滴径が大きい。
第2モードでは、流体噴射ノズル778を第2ポジションP2に配置するとともに開閉弁833を閉状態として、液体噴射面20aのノズル21が開口しない部分をターゲットとして、第2液体と気体の混合流体を第1モードよりも低速かつ低圧で第2噴射方向S2に所定時間噴射する。
すなわち、流体噴射装置775Dが第1流体噴射において噴射口778jから流体を噴射する方向を第1噴射方向S1とし、流体噴射装置775Dが第2流体噴射において噴射口778jから流体を噴射する方向を第2噴射方向S2とすると、液体噴射面20aに対する第2噴射方向S2の交差角度は、液体噴射面20aに対する第1噴射方向S1の交差角度よりも小さいことが好ましい。このようにすれば、流体噴射ノズル778が噴射した流体がノズル21内に入りにくいので、ノズル21内に形成されたインクのメニスカスが壊れにくい。
なお、ノズル21内に形成されたインクのメニスカスが壊れたり乱れたりした場合には、フラッシング等を行うことでメニスカスを整えることができるが、メニスカスを整えるために時間を要したりインクを消費したりするので、メンテナンス動作によってメニスカスを破壊したり乱したりしないことが望ましい。
第2流体噴射(液体噴射面洗浄)では、流体噴射装置775Dが噴射口778jから流体を噴射する第2噴射方向S2において、噴射口778jから液体噴射面20aまでの距離を、第1流体噴射を行うときよりも長くすると、液体噴射面20aに到達したときの液滴の飛翔速度を低下させることができる。このようにすれば、流体噴射ノズル778が噴射した流体がノズル21内に入ったとしても、ノズル21内に形成されたインクのメニスカスが壊れにくいので、好ましい。
ここで、液体噴射面20aに付着したインク等の付着物が固化している場合などには、払拭部材750aが液体噴射面20aを払拭すると、固化物が液体噴射面20aに摺接してしまうことがある。そして、液体噴射面20aには、インク滴の付着を抑制するために、撥液剤を塗布して撥液膜を形成するなど、撥液性を高める撥液処理が施されていることが多い。そのため、固化物が付着した液体噴射面20aを払拭部材750aが払拭すると、固化物が引きずられて撥液膜に傷が付き、撥液効果が低下してしまうことがある。その点、流体噴射装置775Dが行う第2モードのメンテナンスでは、第2液体で液体噴射面20aの洗浄を行うので、撥液膜に傷をつけることなく、液体噴射面20aに付着した異物(インクや塵埃など)を除去することが可能となる。
また、払拭部材750aで液体噴射面20aを払拭すると、液体噴射面20aに付着していた異物や気泡がノズル21内に押し込まれてしまい、かえって液滴の噴射不良が生じてしまうことがある。これに対して、液体噴射面20aに第2液体を噴射して洗浄する場合には、ノズル21内に異物が押し込まれないので、好ましい。
なお、流体噴射ノズル778が第1流体噴射等によって噴射した第2液体が液体噴射面20aに付着した状態で、払拭部材750aによるワイピングを行ってもよい。すなわち、メンテナンス動作として、流体噴射装置775Dが液体噴射部1においてノズル21が開口する開口領域(液体噴射面20a)に対して流体噴射を行って第2液体を付着させた後、その第2液体との接触により湿潤した払拭部材750aによって開口領域の払拭を行う。この構成によれば、液体噴射面20aに付着した汚れが第2液体に溶けて落ちやすくなるとともに、払拭部材750aの液体噴射面20aに対する摩擦抵抗が低減されて、撥液膜に傷がつきにくくなる。このワイピングに際しては、液体噴射部1または払拭部材750aに第2液体が付着していればよいので、第2流体噴射に限らず、ワイピングに先だって流体噴射装置775,775Dが液体噴射部1または払拭部材750aに向けて第2液体または第2液体を含む混合流体を噴射すればよい。
この場合には、流体噴射ノズル778が、開口領域(液体噴射面20a)を含まない非開口領域(例えば、カバーヘッド400の部分)に第2液体を含む流体を噴射するようにしてもよい。すなわち、メンテナンス動作として、流体噴射装置775Dが非開口領域に対して第2流体噴射等の流体噴射を行って液体噴射部1に第2液体を付着させた後、払拭部材750aが第2流体で濡れた非開口領域に接触し、さらにその接触により第2流体で濡れた払拭部材750aが開口領域の払拭を行う。このように、ノズル21が開口する開口領域を避けて流体を噴射するようにすれば、液体噴射部1を濡らすために流体噴射ノズル778が噴射した流体によるメニスカスの破壊が抑制されるので、好ましい。
次に、第3モードの気体吹き付けでは、液体噴射面20aに付着した異物(特に、固化していないインク滴や塵埃など)の除去を目的として、液体噴射部1の液体噴射面20aに対して、流体噴射ノズル778が気体のみの噴射を行う。すなわち、流体噴射装置775Dは、気体、第2液体または気体及び第2液体の混合流体の3種を選択的に噴射口778jから噴射可能であるので、そのうちの気体のみを噴射して、液体噴射面20aに付着した異物を吹き飛ばす。
第3モードにおいて流体噴射装置775Dが噴射口778jから気体を噴射する方向を気体噴射方向(第3噴射方向S3)とすると、液体噴射面20aに対する第3噴射方向S3の角度θは、0°≦θ<90°とすることが好ましい。また、液体噴射面20aに対する第3噴射方向S3の角度θが小さく(例えば、θ=0°)、噴射した気体がノズル21のメニスカスを乱す虞が小さいときには、気体を高速かつ高圧で噴射する方が、異物の除去効率が高いので、好ましい。
すなわち、流体噴射ノズル778からの気体の噴射方向を第3噴射方向S3とすれば、流体噴射ノズル778が噴射した気体がノズル21内に入りにくいので、ノズル21内に形成されたインクのメニスカスが壊れにくいという点で、好ましい。そして、第3モードでは、液体噴射面20aに物体が摺接することがないので、撥液膜に傷をつけることなく、送風により液体噴射面20aに付着した異物(インクや塵埃など)を除去することが可能となる。
また、気体の噴射による異物の除去は、払拭部材750aを移動させて行うワイピングよりも短時間で行うことができるため、例えば印刷領域PAにおける印刷動作の途中で定期的に液体噴射部1を非印刷領域LAに移動して、液体噴射面20aに付着したインク滴等を気体で吹き飛ばして除去する、というメンテナンスを行うことが可能となる。その他、気体の噴射であれば、払拭部材750aが接触できない部分(例えば、カバーヘッド400と液体噴射面20aの段差部分や隙間部分)などに付着した異物も除去することが可能となる。
さらに、気体噴射方向(第3噴射方向S3)は、ノズル列NLが延びる方向に沿うようにすると、吹き飛ばされたインク(第1液体)が他の色のインクを噴射する隣の列のノズル21に入って混色することが避けられるので、好ましい。
次に、第4モードの泡付着では、液体噴射部1に泡状の第2液体を付着させることを目的として、流体噴射ノズル778が第2噴射方向S2に気体、第2液体及び界面活性剤の混合流体を噴射する。第4モードでは、流体噴射ノズル778を第1ポジションP1に配置するとともに開閉弁833を開状態として、流体噴射ノズル778から噴射する第2液体に界面活性剤を混合させ、第1噴射方向S1に噴射した流体を液体噴射面20aまたは非開口領域(例えば、カバーヘッド400の部分)に所定時間衝突させることにより、第2液体を起泡させる。なお、第4モードでは、流体噴射ノズル778から噴射する第2液体に界面活性剤を混合することにより、液体の泡立ちが促進される。
第2液体と界面活性剤との混合比率は、貯留タンク787における第2液体と液体タンク832における界面活性剤との水頭差を変化させることによって調整することが可能である。また、第4モードでは、第2モードと同様に、小液滴DSより最小液滴径が大きい第2液体の大液滴DLを含む流体を第1モードよりも低速かつ低圧で噴射すると、ノズル21のメニスカスを乱しにくいので、好ましい。また、第4モードでは、第1モードのノズル洗浄としての流体噴射よりも長い時間、第2液体を含む流体の噴射を継続することにより、第2液体を効率的に泡状にすることができる。
なお、第1実施形態の流体噴射装置775においても、第2液体として純水に防腐剤を含有させた液体を用いた場合には、その防腐剤に含まれる成分の作用によって、液体噴射部1に衝突した第2液体が泡状になることがある。そのため、このような場合には、噴射する第2液体に界面活性剤を混合しなくてもよい。
そして、図18に示すように、流体噴射装置775Dが液体噴射部1に泡BU(泡状の第2液体)を付着させた後、その泡状の第2液体に払拭部材750aまたは払拭部材750Bを接触させて、払拭部材750Bが被払拭領域を払拭する。すなわち、流体噴射装置775Dは、液体噴射部1に対して泡状の第2液体を付着させる液体付着装置として機能する。このようにすれば、払拭部材750aが液体噴射面20aに摺接する際の摩擦抵抗が泡BUによって低減されて、撥液膜に傷がつきにくくなるので、好ましい。なお、本実施形態では、ワイピングを行う払拭部材750Bとして、弾性変形可能な板状部材を例示しているが、第1実施形態で示した布シートからなる払拭部材750aであっても、同様の作用を得ることができる。
液体噴射部1の払拭部材750Bにより払拭される部分を被払拭領域とすると、被払拭領域には、液体噴射部1においてノズル21が開口する開口領域(液体噴射面20a)及び含む開口領域の外側に位置する非開口領域(カバーヘッド400)とを含む。すなわち、払拭部材750Bは、液体噴射面20aだけでなく、その外側のカバーヘッド400の部分の払拭も行うことが好ましい。そして、ワイピング前に流体噴射装置775Dが泡BU(泡状の第2液体)を付着させる領域は、開口領域でもよいし、非開口領域でもよいし、それら両方の領域であってもよい。
ところで、図19に示すように、保湿用キャップ771や吸引用キャップ770が非開口領域であるカバーヘッド400に接触することでキャッピングを行う場合、液体噴射部1にキャップ770,771が接触したときに、液体噴射部1に付着していた液体が、キャップ770,771が接触する環状の接触領域に集まることがある。
すると、キャッピングの解除によりキャップ770,771が液体噴射部1から離れた後、液体噴射部1の接触領域に、キャップ770,771の接触跡(リップマークともいう)が残ることがある。そのため、キャッピングの実行時にキャップ770,771が接触する接触領域を被払拭領域に含み、その接触領域に流体噴射装置775Dが泡BU(泡状の第2液体)を付着させた後にワイピングを行うと、接触跡を除去することができるので、好ましい。
その他、図19に示すように、流体噴射装置775Dが第1,第2または第4モードでの混合流体の噴射によって液体噴射部1に第2液体の液滴または泡BUを付着させた状態で、その付着した第2液体を閉空間に含むように、保湿用キャップ771が液体噴射部1に接触してキャッピングを行ってもよい。このようにすれば、保湿用キャップ771が形成する密閉空間内に収容された第2液体によって密閉空間の湿度を高く保つことができるので、ノズル21の保湿効果を高めたり、保湿時間を長くしたりすることが可能になる。
この場合、流体噴射装置775Dは、液体噴射部1に対して第2液体を付着させる液体付着装置として機能する。なお、流体噴射装置775Dにおいては、第2液体に気体を混合して噴射することにより、第2液体の液滴径を小さくしたり、液滴の飛翔速度や噴射の圧力を高めたりすることができる。そのため、液体噴射部1に対して第2液体を付着させる用途で流体噴射装置775Dを用いる場合には、噴射する流体に気体を混合しなくてもよいし、第2液体を液滴にして飛翔させなくてもよい。
ここで、流体噴射装置775Dが噴射した流体が液体噴射部1に対して直角に近い角度で勢いよく衝突すると、液体噴射部1にぶつかったときに衝突して周囲に飛散しやすくなる。その点、流体の噴射方向Fと液体噴射部1との交差角度を小さくすることにより、流体が液体噴射部1に接触したときの飛散を抑制して、効率よく第2液体を液体噴射部1に付着させることができる。そのため、液体噴射部1に第2液体の液滴を付着させるためには第2噴射方向S2に流体を噴射する方が好ましい。一方、液体噴射部1において第2液体を泡立てるためには、第2液体に気体を含ませた状態で、その混合流体を第1噴射方向S1に噴射する方が好ましい。
なお、図19に示すように、保湿用キャップ771が非開口領域であるカバーヘッド400に接触することでキャッピングを行うのに先だって液体噴射部1に第2液体を付着させる場合、カバーヘッド400に向けて流体噴射装置775Dが第2液体を噴射すれば、噴射された第2液体によってノズル21のメニスカスを壊すことがないので、好ましい。一方、流体噴射装置775Dの噴射により液体噴射面20aに第2液体を付着させれば、ノズル21により近い位置に第2液体を存在させることができるので、保湿効果を高めることができる。
さらに、流体噴射装置775Dによる第1流体噴射等の実行後に払拭部材750aまたは払拭部材750Bがワイピングを行って液体噴射部1の清掃を行った上で、流体噴射装置775Dの第2流体噴射等の実行によって液体噴射部1に第2液体が付着しているときに、保湿用キャップ771がキャッピングを行うことが好ましい。すなわち、第2液体で湿潤させた状態でワイピングを行うことにより液体噴射部1に付着した異物を除去した上でキャッピングを行うことにより、キャッピングをしている間に液体噴射部1に付着した異物が固着することを抑制することができる。
図20に示すように、ノズル21に近い位置に泡状の第2液体を付着させると、その泡BUが消えたあとにノズル21のメニスカス表面Sfに第2液体の膜Meが形成され、その膜Meが乾燥防止膜として機能する。そのため、長時間キャッピングを行う場合や、環境温度が高い場合などには、液体噴射面20aに泡状の第2液体を付着させた状態でキャッピングを行うとよい。また、長時間キャッピングを行う場合には、第2液体に界面活性剤を混合して起泡させた泡BUを付着させておくと、界面活性剤の作用により泡BUが割れにくくなるので、第2液体の泡BUをより長時間ノズル21の近くに存在させておくことができる。
さらに、図19に示すように保湿用キャップ771内に液体を吸収保持可能な吸収材774を収容しておけば、液体噴射部1に付着した第2液体の液滴や泡BUが保湿用キャップ771のリップ部や側壁を伝い落ちた場合にも、その伝い落ちた第2液体を吸収材774に吸収させて、保持させることができる。
また、キャッピングに際して、液体噴射部1に付着した第2液体が、できるだけ長い時間液体噴射部1に保持されるように、液体噴射部1の保湿用キャップ771によって囲まれる部分(例えばカバーヘッド400の部分など)に、溝や凹部を形成してもよい。このようにして液体噴射部1に付着した第2液体をノズル21に近い位置に保持しておけば、ノズル21を効率よく保湿することが可能になる。
さらに、液体噴射面20aはインク滴の付着や固化を抑制するために撥液性が高いことが好ましいが、その周囲に位置するカバーヘッド400などの撥液性を液体噴射面20aよりも低くしておけば、液体噴射面20aへの液滴の付着を抑制しつつ、カバーヘッド400に保湿のための第2液体を保持することができる。
なお、保湿効果を高めるために、フラッシング等により保湿用キャップ771内にインク(廃インク)を入れた後にキャッピングを行うようにしてもよい。この場合にも、インク等に含まれる分散媒または溶媒(一例として水等)の蒸発または揮発により、保湿用キャップ771内に開口するノズル21の乾燥が抑制される。その他、液体噴射部1に保湿のための液体を付着させるローラー等を別途備えるようにしてもよい。
また、吸引用キャップ770がカバーヘッド400に接触することでキャッピングを行う場合には、吸引クリーニング後に液体噴射部1に付着した液体が速やかに吸引用キャップ770側に移動することが好ましい。そのため、特に吸引用キャップ770のカバーヘッド400に接触するリップ部分は、カバーヘッド400よりも撥液性が低くなるように設定しておくとよい。
次に、第5モードの撥液処理では、撥液膜に傷がついた場合などに、液体噴射面20aの撥液性能を回復させるためのメンテナンス動作として、流体噴射装置775Bが液体噴射面20aに対して小液滴DSよりも最小液滴径が大きい第3液体の液滴を含む流体を第2噴射方向S2に噴射する。このとき、第3液体を気体とともに噴射することにより、第3液体の液滴を広い範囲に拡散させることができる。なお、第3液体の液滴を液体噴射面20aに付着させた後に、ワイピングを行って第3液体を液体噴射面20aの全域に均一に塗り広げるようにしてもよい。
次に、第6モードの流体注入メンテナンスは、複数のノズル21のうちの一のノズル21の開口を通じて液体噴射部1内に流体を注入する注入工程と、注入工程により注入された流体の圧力により、液体噴射部1内のインクを含む流体を複数のノズル21のうちの他のノズル21の開口を通じて排出させる排出工程と、を備える。
すなわち、液体噴射部1は、液体供給路727を介して供給される第1液体(インク)を貯留可能な共通液室100及び共通液室100に連通するとともに共通液室100から供給される第1液体を媒体に対して噴射可能な複数のノズル21を有する。そして、流体噴射装置775Dが、複数のノズル21のうちの一のノズル21の開口を通じて液体噴射部1内に流体を注入し、第1液体(インク)を含む流体を複数のノズル21のうちの他のノズル21の開口を通じて排出させる流体注入メンテナンスを行う。この点で、流体噴射装置775Dは、気体及び第2液体のうち少なくとも一方の流体をノズル21の開口を通じて液体噴射部1内に注入可能な流体注入装置として機能する。
注入工程では、図21に示すように、液体噴射部1の共通液室100内に混入した異物を排出するために、流体噴射装置775Dの流体噴射ノズル778を用いて、ノズル列NLを構成する複数のノズル21うちの一部のノズル21の開口を通じて流体を注入する。例えば、流体噴射装置775Dにより、流体噴射ノズル778を第1ポジションP1に配置するとともに開閉弁833を閉状態として、ノズル21の開口に向けて、ノズル21の開口径よりも直径が小さい第2液体の小液滴DSを含む流体を第1噴射方向S1に高速かつ高圧で第1モードよりも長時間噴射する。
すなわち、流体注入装置として機能する流体噴射装置775Dは、第2液体を噴射可能な噴射口778jを有し、この噴射口778jが液体噴射部1から離れた状態において、噴射口778jから流体を噴射することにより、複数のノズル21のうちの少なくとも一のノズルの開口に流体を注入する。
ノズル21から注入された流体は、複数のノズル21に連通する共通液室100内を流れて、共通液室100内にあったインクを異物と共に他のノズル21から押し出す(排出工程)。なお、共通液室100内に混入した異物の例としては、気泡の他、第1モードのノズル洗浄に伴って破壊され、ノズル21内奥側に入り込んだ膜(インクの固化物)の破片等が挙げられる。
第6モードは、その噴射時間が第1モードよりも長い点を除いて、その他の主要な噴射条件は第1モードと同じであるため、第1モードのノズル洗浄のための流体噴射の噴射時間を継続することにより、第1モードと第6モードの流体噴射を連続的に実行することができる。この場合、流体注入装置(流体噴射装置775D)は、ノズル21の開口径よりも直径が小さい第2液体の小液滴DSを含む流体を噴射することにより、複数のノズル21のうちの一のノズル21の開口を通じて液体噴射部1内に流体を注入することになる。
注入工程の際、共通液室100の上流側に、液室内の圧力が液室の外側の空間の圧力より所定の圧力(例えば1kPa)低くなると開弁する差圧弁731(一方向弁)があると、ノズル21から注入された流体が上流側に逆流しないので、排出工程において共通液室100内の異物を第1液体とともに他のノズル21から効率よく排出させることができる。すなわち、液体供給路727において、液体の流通を規制可能な供給規制部として機能する差圧弁731を備える場合、この差圧弁731が液体の上流への流通を規制した状態において、流体噴射装置775Dが流体注入メンテナンスを行うことが好ましい。例えば、差圧弁731に代えて、任意に開閉操作可能な開閉弁が設けられている場合には、その開閉弁を閉弁した状態で流体注入メンテナンスを行うことが好ましい。
また、液体供給路727において、共通液室100と差圧弁731との間にはフィルター216があるので、流体をノズル21内に注入しても、その流れによって異物(膜のかけらなど)が第2上流流路502(図8参照)の方に流入することが抑制される。
流体注入メンテナンスにおいて、流体噴射装置775Dが一のノズル21に流体を注入するときには、その流体を注入するノズル21とは別のノズル21に対応するアクチュエーター130を駆動させてもよい。流体が注入されないノズル21においては、共通液室100内の圧力が多少変動しても、その圧力変動がメニスカス耐圧の範囲であれば、ノズル21からインクが漏出しないようになっている。このような構成においても、アクチュエーター130を駆動させてノズル21が連通する圧力発生室12を加圧することにより、そのノズル21からインクが押し出されるので、メニスカスを破壊してノズル21から液体を流出させることができる。
ここで、フィルター216の上流側の面には、濾過した固形物などの異物がたまって付着していることがある。この場合、流体注入メンテナンスにおいて下流側から注入された液体が第2液体溜まり部503aから第1液体溜まり部502aに逆流することで、フィルター216の上流側の面に付着した異物がフィルター216から分離されることが期待される。
これにより、吸引クリーニングなど、下流側への流れでは取れなかったフィルター216の付着物が、流体注入メンテナンス動作に続いて行われる吸引クリーニングで除去することが可能になる。なお、差圧弁731の液室を形成する壁面の一部が可撓性を有する場合などには、差圧弁731により上流側への液体の流れが規制されていても、壁面の撓み変位により変動する容量の分の液体が第2液体溜まり部503aから第1液体溜まり部502aに流動するので、付着物がフィルター216から離れる可能性が高い。
なお、第6モードにおいては、共通液室100内に図21に矢印で示す一方向への流れを生じさせるために、共通液室100の長手方向における一端側(図21では左端側)のノズル21から流体を注入し、他端側(図21では右端側)のノズル21から液体が排出されるようにするとよい。
第6モードでは、液体噴射部1内に異物を排出することができればよいので、気体、第2液体、または、気体及び第2液体の混合流体のうち、何れの流体を噴射してもよい。そして、何れの流体を噴射した場合にも、液体噴射部1内にインク(第1液体)と異なる流体が混入することになるため、第6モードのメンテナンスを行った後には、吸引用キャップ770及び吸引ポンプ773を用いた吸引クリーニングを行い、ノズル21内に第1液体を充填することにより混入した流体を液体噴射部1から排出するとよい。すなわち、供給規制部(差圧弁731)が液体の流通を規制した状態で流体噴射装置775Dが流体注入メンテナンスを行った後、差圧弁731が規制を解除した状態で、液体供給路727の上流側からインクを供給してノズル21の開口まで第1液体を充填する。
以上説明したような第2〜第6モードを含む液体噴射部1のメンテナンス動作は、所定時間印刷を行う毎、あるいは所定量媒体STを搬送する毎に、適切なモードを選択して行ってもよい。あるいは、開口面(液体噴射面20a)の状態をセンサー等によって検出し、例えば液体噴射面20aに異物が付着している場合には第2モードを選択するなど、その検出状況に応じてモードを選択してメンテナンスを行うようにしてもよい。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1モードでは、流体噴射装置775Dが開口領域に対して第1流体噴射を行うことにより、ノズル21の開口よりも小さい第2液体の小液滴DSをノズル21内に導入して、ノズル21の目詰まりを解消するためのメンテナンスであるノズル洗浄を行うことができる。一方、流体噴射装置775Dが液体噴射部1に対して行う第2モードの第2流体噴射では、小液滴DSより最小液滴が大きい第2液体の液滴DLが噴射されるため、同液滴DLはノズル21内に入り込みにくい。そのため、第2モードにおいては、目詰まりしていないノズル21に第2液体の液滴DLが入ることによって、そのノズル21内に形成されたメニスカスが破壊されることが抑制される。したがって、液体を噴射可能なノズル21を有する液体噴射部1のメンテナンスを効率よく行うことができる。
(2)第2モードでは、流体噴射装置775Dが開口領域に対して第2流体噴射を行うことにより、第2液体の液滴DLがノズル21内のメニスカスを破壊することを抑制しつつ、開口領域の洗浄を行うことができる。また、流体噴射装置775Dが開口領域に対して第2流体噴射を行うことにより、液体噴射部1の開口領域に第2液体が付着する。よって、その後に払拭部材750Bが開口領域の払拭を行うことにより、液体噴射部1に付着した第2液体によって払拭部材750Bを湿潤させた状態で開口領域のメンテナンス(ワイピング)が行われる。これにより、乾燥した状態で払拭部材750Bが開口領域を払拭する場合よりも摩擦抵抗が小さくなるので、払拭動作により開口領域にかかる負荷を低減することができる。また、開口領域に固着した固着物を第2液体により湿潤させることにより、固着物が第2液体に溶解するので、払拭部材750Bによる払拭によって、開口領域に固着した異物を効率よく除去することができる。
(3)第2モードでは、流体噴射装置775Dが非開口領域に対して第2流体噴射を行うことにより、第2液体の液滴DLがノズル21内のメニスカスを破壊することを抑制しつつ、非開口領域の洗浄を行うことができる。また、この第2流体噴射の後に払拭部材750Bが非開口領域に接触することにより、払拭部材750Bを第2液体で湿潤させることができる。そのため、その後に払拭部材750Bが開口領域の払拭を行うことにより、乾燥した状態で開口領域を払拭する場合よりも開口領域にかかる負荷を低減しつつ、開口領域に付着した異物を除去することができる。
(4)第2液体の主成分を純水とすることにより、ノズル21内に第2液体が入った場合にも、ノズル21内にある第1液体の第2液体と混ざることによる変質を抑制することができる。また、主成分である純水に防腐剤を含有させた場合には、流体噴射装置775,775D内に保持された第2液体の腐敗を抑制することができる。
(5)流体噴射装置775Bが撥液成分を含有する第3液体を含む流体を噴射することにより、液体噴射部1に第3液体を付着させて、液体噴射部1の撥液性を向上させることができる。そして、液体噴射部1の撥液性を向上させることにより、液体噴射部1が媒体STに向けてノズル21から第1液体を噴射することにより第1液体の微小なミストが意図せずに発生し、そのミストが液体噴射部1に付着した場合にも、液体噴射部1への第1液体の固着を抑制することができる。
(6)第2モードにおいて流体噴射装置775Dが第2流体噴射を行うときの噴射口778jから液体噴射部1までの距離が、第1モードにおいて第1流体噴射を行うときよりも長いので、第2流体噴射により液体噴射部1に到達する第2液体の液滴の飛翔速度が相対的に遅くなる。これにより、第2液体がノズル21内に入りにくくなり、また、入ったとしてもメニスカスに衝突するときの衝撃が低減されるので、メニスカスの破壊を抑制することができる。また、液滴の飛翔速度が速いと、液体噴射部1に勢いよく衝突して周囲に飛散してしまう虞があるが、液滴の飛翔速度を遅くすることにより、液体噴射部1に接触したときの飛散を抑制して、効率よく第2液体を液体噴射部1に付着させることができる。
(7)ノズル21が開口する開口面(液体噴射面20a)に対する第2噴射方向S2の交差角度は、開口面に対する第1噴射方向S1の交差角度よりも小さいので、第2流体噴射で噴射された第2液体の液滴DLはノズル21内に入りにくい。そのため、第2モードでは、第2流体噴射によるノズル21のメニスカスの破壊を抑制することができる。
(8)ノズル21が開口する開口面(液体噴射面20a)に対する気体噴射方向(第3噴射方向S3)の角度は0°≦θ<90°であるので、噴射口778jから噴射された気体がノズル21内に入ってメニスカスを乱すことが抑制される。また、開口面に対する角度を小さくした状態で流体噴射装置775Dが気体を液体噴射部1に噴射することにより、気体を開口面に沿って流動させて、液体噴射部1に付着した付着物を吹き飛ばして効率よく除去することができる。
(9)噴射口778jやノズル21から噴射された液滴の運動エネルギーは、その液滴の質量と所定位置における当該液滴の飛翔速度の2乗との積によって求められる。そして、液体噴射部1がノズル21から噴射する第1液体の液滴の運動エネルギーが大きければ、ノズル21に軽度の目詰まりが生じていたとしても、その液滴が有するエネルギーによってその目詰まりを解消することができる。一方、ノズル21に重度の目詰まりが生じている場合には、ノズル21から第1液体の液滴を噴射するためのエネルギーによってその目詰まりを解消することができない。その点、上記第1モードでは、流体噴射装置775Dが噴射口778jからノズル21に向けて噴射する小液滴DSのノズル21の開口位置における運動エネルギーが、ノズル21から第1液体の液滴を噴射するエネルギーよりも大きい。そのため、ノズル21の開口から第1液体の液滴を噴射する噴射動作によって解消できないノズル21の目詰まりを、流体噴射装置775Dが噴射する第2液体の小液滴DSがノズル21内に入るときの運動エネルギーによって解消することができる。
(10)流体噴射装置775Dが液体噴射部1の開口領域に対して第1流体噴射を行うときに、液体噴射部1においてアクチュエーター130が駆動して、ノズル21と連通する圧力発生室12内を加圧することにより、ノズル21内の圧力が高まる。すると、流体噴射装置775Dが噴射した第2液体の小液滴DSがノズル21の内奥側に入り込みにくくなる。そのため、液体噴射部1におけるノズル21の開口に膜が張っているときに、流体噴射装置775Dが噴射する第2液体の小液滴DSをノズル21の開口に張った膜に衝突させて膜を破壊する一方で、その破壊された膜などの異物がノズル21内に入り込むことが抑制される。したがって、ノズル21の外側から液滴を噴射して目詰まりを解消する場合にも、その液滴や異物のノズル21内への混入を抑制することができる。
(11)キャップ771がキャッピングをするのに先だって、液体付着装置(流体噴射装置775D)が液体噴射部1に第2液体を付着させるので、キャップ771がキャッピングをして閉空間を形成したときに、ノズル21の近くに第2液体を存在させることができる。そのため、ノズル21の近くで蒸発する第2液体によって、効率よくノズル21の保湿を行うことができる。
(12)液体付着装置(流体噴射装置775D)が噴射口778jから第2液体を噴射することで液体噴射部1に第2液体を付着させることができるので、液体噴射部1と離れた位置に流体噴射装置775Dを配置することができる。
(13)液体付着装置(流体噴射装置775D)が噴射する第2液体に気体を混合することにより、第2液体をより微小な液滴にして飛翔させることができる。そして、そのように微小な液滴を噴射することにより、液体噴射部1の所定の領域に対して、第2液体を均一に付着させることができる。
(14)ノズル21が開口する開口領域に第2液体を付着させると、ノズル21内に第2液体が入り込んで第1液体と混ざってしまう虞がある。その点、液体噴射部1における開口領域を含まない非開口領域に第2液体を付着させるようにすれば、ノズル21内に第2液体が入らないようにすることができる。
(15)液体付着装置(流体噴射装置775D)が開口領域に対して第2液体の小液滴DSを噴射することにより、小液滴DSをノズル21内に導入して、ノズル21の目詰まりを解消するためのメンテナンスであるノズル洗浄を行うことができる。このとき、ノズル21内に入らなかった第2液体は開口領域に付着するので、その付着した第2液体を閉空間に含むようにキャッピングを行うことで、保湿のために第2液体を消費したり、別途第2液体を液体噴射部1に付着させるための動作を行ったりすることなく、ノズル21の保湿を行うことができるので、効率がよい。
(16)液体付着装置(流体噴射装置775D)による第1流体噴射の実行後にワイピングを行うことにより、第1流体噴射で開口領域に付着した第2液体とともに、開口領域に付着していた異物を除去することができるので、効率よく液体噴射部1のメンテナンスを行うことができる。また、流体噴射装置775Dによる第2流体噴射の実行によって液体噴射部1の洗浄を行うことができるとともに、その第2流体噴射の実行によって液体噴射部1に第2液体が付着しているときにキャッピングを行うことにより、別途第2液体を液体噴射部1に付着させるための動作を行う必要がない。また、第1流体噴射では、ノズル21内に小液滴DSを導入してその詰まりを解消するため、第1流体噴射の実行後には、ノズル21内のメニスカスが乱れた状態になっている可能性が高い。これに対して、第2流体噴射では、小液滴DSより最小液滴が大きい液滴を噴射するので、第2液体がノズル21内に入ってメニスカスを壊す可能性が小さい。そのため、第2流体噴射の実行後にキャッピングを行えば、第1流体噴射の実行後にキャッピングを行う場合よりも、メニスカスが乱れた状態でノズル21が放置されることを抑制することができる。
(17)払拭部材750Bが払拭する被払拭領域に液体付着装置(流体噴射装置775D)が第2液体を付着させることにより、被払拭領域に付着した異物を第2液体に溶かして、効率よく異物を除去することができる。また、第2液体を泡状にすることにより、払拭部材750Bが被払拭領域に接触する際の摩擦抵抗が低減されるので、払拭部材750Bによって液体噴射部1を払拭する際に、液体噴射部1にかかる負荷を低減することができる。
(18)流体噴射装置775Dにおいては、第2液体に気体を混合することにより、噴射口778jから噴射する流体に気体を含ませることができるので、第4モードにおいて、被払拭領域に接触した第2液体を効率よく泡状にすることができる。
(19)第1モードのノズル洗浄では、ノズル21内に小液滴DSを導入してその詰まりを解消することができる。そして、ノズル洗浄では、流体を噴射する噴射継続時間を短くすることにより、第2液体が泡状になることを抑制し、泡によってノズル21内に小液滴DSが入りにくくならないようにする。一方、第4モードでは、流体を噴射する噴射継続時間を長くすることにより、第2液体を泡状にすることができるので、ノズル洗浄のための液体付着装置(流体噴射装置775D)を、第2液体を泡状にするための装置として兼用することができる。
(20)ワイピングの対象となる被払拭領域が、液体噴射部1においてノズル21が開口する開口領域を含み、その開口領域を払拭部材750Bが払拭することにより、ノズル21の開口付近に付着した異物を除去することができる。
(21)第2液体がノズル21内に入ると、ノズル21のメニスカスが乱れたり、ノズル21内の第1液体と第2液体が混ざってしまったりする虞がある。その点、液体付着装置(流体噴射装置775D)が開口領域の外側に位置する非開口領域に泡状の第2液体を付着させる場合には、ノズル21内への第2液体の混入を抑制することができる。
(22)液体噴射部1にキャップ770,771が接触したときに、液体噴射部1に付着していた液体が、キャップ770,771との接触部分に集まることにより、キャップ770,771が液体噴射部1から離れた後に、液体噴射部1にキャップ770,771の接触跡が残ることがある。その点、キャップ770,771が接触する接触領域を含む領域に液体付着装置(流体噴射装置775D)が泡状の第2液体を付着させ、その領域を払拭部材750Bが払拭することにより、液体噴射部1に付いたキャップ770,771の接触跡を効率よく除去することができる。
(23)第2液体が含有する芳香族ハロゲン化合物、メチレンジチオシアナートおよび含ハロゲン窒素硫黄化合物のうち少なくとも1つを含む防腐剤の効果により、第2液体の腐敗を好適に抑制することができる。
(24)流体注入メンテナンスでは、流体注入装置(流体噴射装置775D)が、一のノズル21の開口を通じて液体噴射部1内に流体を注入することにより、複数のノズル21やそれらノズル21が連通する共通液室100内にある異物を、共通液室100内にある第1液体とともに、他のノズル21の開口から排出させることができる。したがって、複数のノズル21を有する液体噴射部1内に存在する異物を排出することができる。
(25)流体注入メンテナンスの実行時に供給規制部(差圧弁731)が液体の流通を規制した状態にすることにより、流体注入装置(流体噴射装置775D)がノズル21から注入した流体が上流側に流れないので、注入した流体を他のノズル21から効率よく排出させることができる。
(26)流体注入メンテナンスの後に、液体供給路727の上流側から第1液体を供給してノズル21の開口まで第1液体を充填する過程で、充填される第1液体と入れ替わりに流体噴射装置775Dがノズル21から注入した第2液体が排出されるので、第2液体とともに共通液室100内にある異物を排出することができる。また、こうしてノズル21の開口まで第1液体を充填することにより、次の液体噴射動作に備えることができる。
(27)流体注入メンテナンスでは、供給規制部(差圧弁731)と共通液室100との間に位置するフィルター216により、ノズル21から注入された流体の流れにのって異物が差圧弁731の方に流れるのを抑制することができる。また、ノズル21から注入された流体がフィルター216の下流側から圧力を付与することにより、フィルター216の上流側にたまった固形物等をフィルター216から剥がすことができる。
(28)流体注入メンテナンスの実行時に、流体注入装置(流体噴射装置775D)が流体を注入したノズル21とは別の他のノズル21に対応するアクチュエーター130を駆動させることにより、他のノズル21からの流体の排出を促進することができる。
(29)流体注入装置(流体噴射装置775D)が第2液体を噴射する噴射口778jは液体噴射部1から離れた位置に配置されるので、液体噴射部1が噴射する第1液体の噴射口778jに対する付着を抑制することができる。
(30)流体注入装置(流体噴射装置775D)がノズル21の開口よりも小さい第2液体の小液滴DSを含む流体を噴射することにより、その小液滴DSが衝突するエネルギーによってノズル21の目詰まりを解消することができる。そして、ノズル21の目詰まりの原因となっていた異物がノズル21内奧の共通液室100に入った場合には、流体注入装置(流体噴射装置775D)が行う流体注入メンテナンスによってその異物を排出することができる。したがって、ノズル21の目詰まりを解消するための装置を(流体噴射装置775D)で兼用する分、ノズル21の目詰まりを解消するための装置を別途設ける場合よりも、液体噴射装置7の構成を簡素化することができる。
なお、上記各実施形態は以下に示す変更例のように変更してもよい。また、上記各実施形態と下記の各変更例は、それぞれ任意に組み合わせて用いることもできる。
・図22に示す第1変更例のように、一の差圧弁731から供給流路732を通じてインクが供給される2つの液体噴射ヘッド3(3A,3B)を有する液体噴射部1(1C)がある場合に、液体噴射ヘッド3A,3Bのメンテナンスを上記流体噴射装置775,775B,775Dによって行ってもよい。また、液体噴射部1Cにおいては、一方の液体噴射ヘッド3Aの全ノズル21から流体を注入して他方の液体噴射ヘッド3Bの全ノズル21から液体を排出させる流体注入メンテナンスを行うこともできる。
この場合、流体注入メンテナンスのために、図22に示すような液体注入装置835を用いて液体を注入してもよい。すなわち、液体注入装置835は、注入用の液体を貯留する貯留部836と、液体噴射ヘッド3のノズル21が開口する閉空間を形成可能なキャップ837と、貯留部836とキャップ837を接続する接続流路838と、貯留部836の液体をキャップ837に向けて加圧供給する供給ポンプ839と、を備える。そして、キャップ837を例えば液体噴射ヘッド3Aに接触させて閉空間を形成し、供給ポンプ839を駆動させて閉空間内に注入用の液体を加圧供給する。すると、図22に矢印で示すように、閉空間内の加圧された液体がノズル21の開口から入って、液体噴射ヘッド3Aの共通液室100、供給流路732及び他方の液体噴射ヘッド3Bの共通液室100を流れて、液体噴射ヘッド3Bのノズル21から液体が異物とともに排出される。
・図23に示す第2変更例のように、外部混合型の流体噴射ノズル778の代わりに、液体流路788aから供給される第2液体と気体流路783aから供給される空気とを混合して混合流体を生成する混合部KAを内部に有する、いわゆる内部混合型の流体噴射ノズル778Bを用いてもよい。この場合、混合部KAで生成された混合流体は、流体噴射ノズル778Bの先端(上端)に設けられた噴射口778jから噴射される。
・上記第2実施形態における各モードの流体噴射については、その噴射方向、噴射速度、液滴径及び噴射圧力を任意に変更することができる。例えば、第1実施形態と同様の流体噴射装置775を用いて、各モードの流体噴射を第1噴射方向S1に行ってもよい。
・流体噴射ノズル778からのノズル21を含む液体噴射部1A,1Bへの混合流体の噴射を行う前に、ノズル21を含む液体噴射部1A,1Bに対して第2液体を噴射するようにしてもよい。この場合、液体噴射ノズル780からの第2液体の噴射は液供給ポンプ793を用いてもよいが、液体供給管788の途中位置に液体噴射ノズル780から第2液体を噴射させるためのポンプを別途設けることが好ましい。このようにすれば、ノズル21を含む液体噴射部1A,1Bに対して、先に第2液体を噴射して後から当該第2液体に空気を混入して混合流体を噴射するようになるので、ノズル21を含む液体噴射部1A,1Bに対して空気のみが噴射されることを抑制することができる。したがって、ノズル21を含む液体噴射部1A,1Bに噴射された空気がノズル21の開口から液体噴射部1A,1B内の奥へ進入することを抑制することができる。また、この場合、ノズル21を含む液体噴射部1A,1Bへの混合流体の噴射を停止する場合においても、先に空気の噴射を停止して後から第2液体の噴射を停止することで、ノズル21を含む液体噴射部1A,1Bに対して空気のみが噴射されることを抑制することができる。
・キャリッジ723に設けられた温度センサー711(図2参照)を用いて、流体噴射装置775B,775Dにおける流体の噴射不良を検知するようにしてもよい。すなわち、流体噴射装置775,775Dの流体噴射ノズル778または流体噴射装置775Bの流体噴射ノズル778Bから温度センサー711に向けて液体または液体を含む流体を噴射して、そのときの温度センサー711の検出結果に基づいて、流体噴射装置775B,775Dにおける流体の噴射不良を検知する。
具体的には、流体噴射ノズル778,778Bから適切に液体が噴射されていれば、その液体が温度センサー711に接触することで温度センサー711が冷やされるので、温度センサー711が温度の低下を検出することにより、流体噴射ノズル778,778Bから適切に液体が噴射されていることを検知することができる。一方、流体噴射装置775,775Dが噴射動作を行ったにもかかわらず温度センサー711の温度が低下しない場合には、流体噴射ノズル778,778Bの目詰まりや液体切れなどにより、液体の噴射不良が生じていると判断することが可能である。
・インクタンク(図示略)内のインクを貯留部730に供給するための加圧ポンプを設け、流体噴射ノズル778からの目詰まりしたノズル21への混合流体の噴射中における目詰まりしたノズル21と連通する圧力発生室12内のインクの加圧は、差圧弁731を開放した状態で上記加圧ポンプによって行うようにしてもよい。
・流体噴射ノズル778からのノズル21を含む液体噴射部1A,1Bへの混合流体の噴射を行う前に、液体噴射部1A,1Bのノズル21を含まない領域に対して第2液体を噴射するようにしてもよい。また、流体噴射ノズル778からのノズル21を含む液体噴射部1A,1Bへの混合流体の噴射を行う前に、流体噴射ノズル778が液体噴射部1A,1Bと対向しない位置で第2液体を噴射するようにしてもよい。このようにしても、ノズル21を含む液体噴射部1A,1Bに対して空気のみが噴射されることを抑制することができる。
・第2液体である第2液体は、純水のみ(防腐剤を含有しない純水)によって構成してもよい。このようにすれば、第2液体がノズル21内のインクに混ざった場合に、第2液体がインクへ悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
・目詰まりしているノズル21に混合流体を噴射する場合に、目詰まりしているノズル21と対応するアクチュエーター130を印刷時のインクの吐出時やフラッシング時と同じように駆動してもよい。このようにしても、目詰まりしているノズル21内に混合流体が進入することを抑制することができる。
・目詰まりしているノズル21に混合流体を噴射する場合に、目詰まりしているノズル21以外のノズル21と対応するアクチュエーター130を駆動して目詰まりしているノズル21以外のノズル21と対応する圧力発生室12をそれぞれ加圧するようにしてもよい。このようにすれば、目詰まりしているノズル21以外のノズル21内に混合流体が進入することを抑制することができる。
・流体噴射装置775は、非印刷領域RAに配置してもよい。
・非印刷領域LAにおける流体噴射装置775と印刷領域PAとの間に、液体噴射部1A,1Bの液体噴射面20aを払拭するワイパーを別途設けるようにしてもよい。このようにすれば、流体噴射装置775による液体噴射部1A,1Bへの混合流体の噴射後に、印刷領域PAを横切って印刷部720をホームポジションHP側へ移動させる前に混合流体(第2液体)で濡れた液体噴射面20aを上記ワイパーで払拭することができる。したがって、印刷領域PAでの印刷部720の移動中に液体噴射面20aに付着した混合流体(第2液体)が垂れることを抑制することができる。
・エアポンプ782の代わりに、工場などの設備のエアコンプレッサーを用いてもよい。この場合、気体供給管783における圧力調整弁784とエアフィルター785との間の位置に、気体流路783aを大気開放可能な3方向電磁弁を設けて、流体噴射装置775の不使用時に気体流路783aを大気開放するようにしてもよい。
・制御部810が目詰まりの検出履歴に基づいて吸引クリーニングを所定回数行っても目詰まりが解消されないノズル21を検出した場合には、一時的にこの目詰まりが解消されないノズル21を使用せずに、代わりに他の正常なノズル21でインクを噴射して印刷を行う、いわゆる補完印刷を行うようにしてもよい。この場合、補完印刷後に吸引クリーニングを所定回数行っても目詰まりが解消されないノズル21を流体噴射装置775,775Dで洗浄して目詰まりを解消するようにしてもよい。
・使用頻度が極めて低い色(種類)のインクを噴射するノズル列NL(ノズル21)は、普段のメンテナンス(吸引クリーニング、フラッシング、及びワイピングなど)を行わずに、使用するときが来たときに流体噴射装置775,775Dで洗浄して目詰まりを解消するようにしてもよい。このようにすれば、使用頻度が極めて低い色(種類)のインクの吸引クリーニングやフラッシングでの消費量が低減されるので、当該インクを節約することができる。
・流体噴射ノズル778からの目詰まりしたノズル21への混合流体の噴射中には、必ずしも目詰まりしたノズル21と連通する圧力発生室12の加圧を行う必要はない。
・ノズル21の開口よりも小さい第2液体の液滴の質量と当該液滴のノズル21の開口位置における飛翔速度の2乗との積は、必ずしもノズル21の開口から噴射されるインク滴の質量と当該インク滴の飛翔速度の2乗との積よりも大きくする必要はない。
・液体噴射部が噴射する液体はインクに限らず、例えば機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体などであってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射して記録を行う構成にしてもよい。
・媒体は用紙に限らず、プラスチックフィルムや薄い板材などでもよいし、捺染装置などに用いられる布帛であってもよい。
次に、第1液体としてのインク(着色インク)について以下に詳述する。
液体噴射装置7に使用されるインクは、組成上、樹脂を含有し、1気圧下での沸点が290℃のグリセリンを実質的に含有しない。インクがグリセリンを実質的に含むと、インクの乾燥性が大幅に低下してしまう。その結果、種々の媒体、特にインク非吸収性又は低吸収性の媒体において、画像の濃淡ムラが目立つだけではなく、インクの定着性も得られない。さらに、インクは、1気圧下相当での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類(上記グリセリンを除く)を実質的に含まないことが好ましい。
ここで、本明細書における「実質的に含まない」とは、添加する意義を十分に発揮する量以上含有させないことを意味する。これを定量的に言えば、グリセリンを、インクの総質量(100質量%)に対して、1.0質量%以上含まないことが好ましく、0.5質量%以上含まないことがより好ましく、0.1質量%以上含まないことがさらに好ましく、0.05質量%以上含まないことがさらにより好ましく、0.01質量%以上含まないことが特に好ましい。そして、グリセリンを0.001質量%以上含まないことが最も好ましい。
次に、上記インクに含まれるか、又は含まれ得る添加剤(成分)について説明する。
[1.色材]
インクは、色材を含んでもよい。上記色材は、顔料及び染料から選択される。
[1−1.顔料]
色材として顔料を用いることにより、インクの耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。無機顔料としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、及び酸化シリカが挙げられる。
有機顔料としては、特に限定されないが、例えば、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料、及びアゾ系顔料が挙げられる。有機顔料の具体例としては、下記のものが挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15:34、16、18、22、60、65、66、C.I.バットブルー4、60が挙げられる。中でも、C.I.ピグメントブルー15:3及び15:4のいずれかが好ましい。
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、254、264、C.I.ピグメントバイオレット19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。中でも、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、及びC.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される一種以上が好ましい。
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、155、167、172、180、185、213が挙げられる。中でもC.I.ピグメントイエロー74、155、及び213からなる群から選択される一種以上が好ましい。
なお、グリーンインクやオレンジインク等、上記以外の色のインクに用いられる顔料としては、従来公知のものが挙げられる。
顔料の平均粒子径は、ノズル21における目詰まりを抑制することができ、かつ、吐出安定性が一層良好となるため、250nm以下であることが好ましい。なお、本明細書における平均粒子径は、体積基準のものである。測定方法としては、例えば、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、日機装社(Nikkiso Co., Ltd.)製のマイクロトラックUPA)が挙げられる。
[1−2.染料]
色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。色材の含有量は、インクの総質量(100質量%)に対して、0.4〜12質量%であることが好ましく、2質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましい。
[2.樹脂]
インクは、樹脂を含有する。インクが樹脂を含有することにより、媒体上に樹脂被膜が形成され、結果としてインクを媒体上に十分定着させて、主に画像の耐擦性を良好にする効果を発揮する。このため、樹脂エマルジョンは熱可塑性樹脂であることが好ましい。樹脂の熱変形温度は、ノズル21の目詰まりを起こしにくく、媒体の耐擦性を持たせられるという有利な効果が得られるため、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。
ここで、本明細書における「熱変形温度」は、ガラス転移温度(Tg)又は最低造膜温度(Minimum Film forming Temperature;MFT)で表された温度値とする。つまり、「熱変形温度が40℃以上」とは、Tg又はMFTのいずれかが40℃以上であればよいことを意味する。なお、MFTの方がTgよりも樹脂の再分散性の優劣を把握しやすいため、当該熱変形温度はMFTで表された温度値であることが好ましい。樹脂の再分散性に優れたインクであると、インクが固着しないためノズル21が目詰まりしにくくなる。
上記熱可塑性樹脂の具体例として、特に限定されないが、ポリ(メタ)アクリル酸エステル又はその共重合体、ポリアクリロニトリル又はその共重合体、ポリシアノアクリレート、ポリアクリルアミド、及びポリ(メタ)アクリル酸などの(メタ)アクリル系重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、及びポリスチレン、並びにそれらの共重合体、並びに石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、及びテルペン樹脂などのポリオレフィン系重合体、ポリ酢酸ビニル又はその共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、及びポリビニルエーテルなどの酢酸ビニル系又はビニルアルコール系重合体、ポリ塩化ビニル又はその共重合体、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、及びフッ素ゴムなどの含ハロゲン系重合体、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン又はその共重合体、ポリビニルピリジン、及びポリビニルイミダゾールなどの含窒素ビニル系重合体、ポリブタジエン又はその共重合体、ポリクロロプレン、及びポリイソプレン(ブチルゴム)などのジエン系重合体、並びにその他の開環重合型樹脂、縮合重合型樹脂、及び天然高分子樹脂が挙げられる。
樹脂の含有量は、インクの総質量(100質量%)に対し、1〜30質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。含有量が上記範囲内である場合、形成される上塗り画像の光沢性及び耐擦性を一層優れたものとすることができる。また、上記インクに含有させてもよい樹脂としては、例えば、樹脂分散剤、樹脂エマルジョン、及びワックス等が挙げられる。
[2−1.樹脂エマルジョン]
インクは、樹脂エマルジョンを含んでもよい。樹脂エマルジョンは、媒体が加熱される際、好ましくはワックス(エマルジョン)と共に樹脂被膜を形成することで、インクを媒体上に十分定着させて画像の耐擦性を良好にする効果を発揮する。上記の効果により樹脂エマルジョンを含有するインクで媒体を印刷した場合、インクは特にインク非吸収性又は低吸収性の媒体上で耐擦性に優れたものとなる。
また、バインダーとして機能する樹脂エマルジョンは、インク中にエマルジョン状態で含有される。バインダーとして機能する樹脂をエマルジョン状態でインク中に含有させることにより、インクの粘度をインクジェット記録方式において適正な範囲に調整しやすく、かつ、インクの保存安定性及び吐出安定性を高めることができる。
樹脂エマルジョンとしては、以下に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、及び塩化ビニリデンの単独重合体又は共重合体、フッ素樹脂、及び天然樹脂が挙げられる。中でも、メタアクリル系樹脂及びスチレン−メタアクリル酸共重合体系樹脂のいずれかが好ましく、アクリル系樹脂及びスチレン−アクリル酸共重合体系樹脂のいずれかがより好ましく、スチレン−アクリル酸共重合体系樹脂がより一層好ましい。なお、上記の共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、及びグラフト共重合体のうちいずれの形態であってもよい。
樹脂エマルジョンの平均粒子径は、インクの保存安定性及び吐出安定性を一層良好にするため、5nm〜400nmの範囲であることが好ましく、20nm〜300nmの範囲であることがより好ましい。樹脂の中でも樹脂エマルジョンの含有量は、インクの総質量(100質量%)に対して、0.5〜7質量%の範囲であることが好ましい。含有量が上記範囲内であると、固形分濃度を低くすることができるため、吐出安定性を一層良好にすることができる。
[2−2.ワックス]
インクは、ワックスを含んでもよい。インクがワックスを含むことにより、インク非吸収性及び低吸収性の媒体上でのインクの定着性がより優れたものとなる。ワックスは、中でもエマルジョンタイプのものがより好ましい。上記ワックスとしては、以下に限定されないが、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、及びポリオレフィンワックスが挙げられ、中でも後述するポリエチレンワックスが好ましい。なお、本明細書において、「ワックス」とは、主に、後述する界面活性剤を使用して、固体ワックス粒子を水中に分散させたものを意味する。
上記インクがポリエチレンワックスを含むことにより、インクの耐擦性を優れたものとすることができる。ポリエチレンワックスの平均粒子径は、インクの保存安定性及び吐出安定性を一層良好にするため、5nm〜400nmの範囲であることが好ましく、50nm〜200nmの範囲であることがよき好ましい。
ポリエチレンワックスの含有量(固形分換算)は、互いに独立して、インクの総質量(100質量%)に対して、0.1〜3質量%の範囲であることが好ましく、0.3〜3質量%の範囲であることがより好ましく、0.3〜1.5質量%の範囲であることがさらに好ましい。含有量が上記範囲内であると、インク非吸収性又は低吸収性の媒体上においてもインクを良好に固化・定着させることができ、かつ、インクの保存安定性及び吐出安定性を一層優れたものとすることができる。
[3.界面活性剤]
インクは、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤として、以下に限定されないが、例えばノニオン系界面活性剤が挙げられる。ノニオン系界面活性剤は、媒体上でインクを均一に拡げる作用がある。このため、ノニオン系界面活性剤を含むインクを用いて印刷を行った場合、滲みの殆ど無い高精細な画像が得られる。このようなノニオン系界面活性剤としては、以下に限定されないが、例えば、シリコン系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル系、多環フェニルエーテル系、ソルビタン誘導体、及びフッ素系の界面活性剤が挙げられ、中でもシリコン系界面活性剤が好ましい。
界面活性剤の含有量は、インクの保存安定性及び吐出安定性が一層良好なものとなるため、インクの総質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上3質量%以下の範囲であることが好ましい。
[4.有機溶剤]
インクは、公知の揮発性の水溶性有機溶剤を含んでもよい。ただし、上述のとおり、インクは、有機溶剤の一種であるグリセリン(1気圧下での沸点が290℃)を実質的に含まず、また1気圧下相当での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類(上記グリセリンを除く)を実質的に含まないことが好ましい。
[5.非プロトン性極性溶媒]
インクは、非プロトン性極性溶媒を含んでもよい。インクに非プロトン性極性溶媒を含有することにより、インクに含まれる上述の樹脂粒子が溶解するため、印刷の際にノズル21の目詰まりを効果的に抑制することができる。また、塩化ビニル等の媒体を溶解させる性質があるので、画像の密着性が向上する。
非プロトン性極性溶媒については、特に限定されないが、ピロリドン類、ラクトン類、スルホキシド類、イミダゾリジノン類、スルホラン類、尿素誘導体、ジアルキルアミド類、環状エーテル類、アミドエーテル類から選択される一種以上を含むことが好ましい。ピロリドン類の代表例としては、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンがあり、ラクトン類の代表例としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンがあり、スルホキシド類の代表例としてはジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシドがある。
イミダゾリジノン類の代表例としては、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンがあり、スルホラン類の代表例としては、スルホラン、ジメチルスルホランがあり、尿素誘導体の代表例としては、ジメチル尿素、1,1,3,3−テトラメチル尿素がある。ジアルキルアミド類の代表例としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドがあり、環状エーテル類の代表例としては1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランがある。
中でも、上述した効果の観点からピロリドン類、ラクトン類、スルホキシド類、アミドエーテル類が特に好ましく、2−ピロリドンが最も好ましい。上記の非プロトン性極性溶媒の含有量は、インクの総質量(100質量%)に対して、3〜30質量%の範囲であることが好ましく、8〜20質量%の範囲であることがより好ましい。
[6.その他の成分]
インクは、上記の成分に加えて、防かび剤、防錆剤、及びキレート化剤などをさらに含んでもよい。
次に、第2液体に混合される界面活性剤の成分について説明する。
界面活性剤としては、アルキルアミン塩類、および第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤;ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、および脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン等の両イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、およびポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤等を用いることができるが、これらの中でも特に、アニオン性界面活性剤もしくはノニオン性界面活性剤が好ましい。
界面活性剤の含有量は、第2液体の総質量に対して0.1〜5.0質量%であるのが好ましい。さらに、気泡性および気泡後の消泡性の観点から界面活性剤の含有量は、第2液体の総質量に対して0.5〜1.5質量%であるのが好ましい。なお、界面活性剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。また、第2液体に含有される界面活性剤は、インク(第1液体)に含有される界面活性剤と同じであることが好ましく、例えば、インク(第1液体)に含有される界面活性剤がノニオン性界面活性剤の場合、ノニオン性界面活性剤としては、以下に限定されないが、例えば、シリコン系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル系、多環フェニルエーテル系、ソルビタン誘導体、及びフッ素系の界面活性剤が挙げられ、中でもシリコン系界面活性剤が好ましい。
特に、ロスマイルス法を用いた起泡直後および起泡5分後の泡高さが前記範囲(起泡直後の泡高さが50mm以上、起泡5分後の泡高さが5mm以下)になるようにするためには、界面活性剤として、アセチレンジオールに付加モル数4〜30でエチレンオキサイド(EO)が付加した付加物を用い、該付加物の含有量を洗浄液全重量に対して0.1〜3.0重量%とすることが好ましい。さらに、ロスマイルス法を用いた起泡直後および起泡5分後の泡高さが前記好ましい範囲(起泡直後の泡高さが100mm以上、起泡5分後の泡高さが5mm以下)になるようにするためには、アセチレンジオールに付加モル数10〜20でエチレンオキサイド(EO)が付加した付加物を用い、該付加物の含有量を洗浄液全重量に対して0.5〜1.5重量%とすることが好ましい。但し、アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物の含有量が多すぎると、臨界ミセル濃度に達し、エマルションとなってしまう恐れがある。
界面活性剤は、記録媒体上で水性インクを濡れ広がりやすくする機能を有する。本発明で用いることのできる界面活性剤に特に制限はなく、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、および脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、およびポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩類、および第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;フッ素系界面活性剤などを用いることができる。
なお、界面活性剤は洗浄液(第2液体)と凝集物との間の界面活性効果により凝集物を細分化して分散させる効果がある。また、洗浄液の表面張力を下げる働きがあるため、凝集物と液体噴射面20aとの間に洗浄液が侵入しやすくなり、凝集物を液体噴射面20aから剥離しやすくする効果がある。
界面活性剤は親水部と疎水部を同一分子中に持つ化合物であれば、いずれも好適に用いることができる。具体例としては、下記式(I)〜(IV)で表わされるものが好ましい。すなわち、下記式(I)のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、式(II)のアセチレングリコール系界面活性剤、下記式(III)のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤ならびに式(IV)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系界面活性剤が挙げられる。
(Rは分岐していても良い炭素数6〜14の炭化水素鎖、k:5〜20)
(Rは分岐してもよい炭素数6〜14の炭化水素鎖、nは5〜20)
(Rは炭素数6〜14の炭化水素鎖、m、nは20以下の数)
前記式(I)〜(IV)の化合物以外では、例えばジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類を用いることができるが、特にジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。