以下、本発明に係る画像形成方法、および画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
●画像形成装置●
まず、本発明に係る画像形成装置について説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の実施の形態を示す中央断面図である。同図には、本発明に係る画像形成装置としてのレーザプリンタ1000の概略構成が示されている。
レーザプリンタ1000は、感光体ドラム1030の周りに、帯電、露光、現像、転写、クリーニングという電子写真プロセスを実行するための装置が、感光体ドラム1030の回転方向に沿って上記の順に配置されている。具体的に、帯電プロセスを実行する帯電装置1031、露光プロセスを実行する光走査装置1010、現像プロセスを実行する現像装置1032、転写プロセスを実行する転写装置1033、クリーニングプロセスを実行するクリーニングユニット1035を有する。ここで、転写装置1033とクリーニングユニット1035との間には、除電ユニット1034が配置されている。
現像装置1032は、トナーカートリッジ1036と、トナーカートリッジ1036から供給されるトナーを感光体ドラム1030の表面に付着させて感光体ドラム1030面の潜像をトナーによって可視化する現像ローラ(不図示)を有している。
転写装置1033は、給紙トレイ1038から給紙コロ1037によって引き出される記録紙1040に、感光体ドラム1030面のトナー像を転写する。記録紙1040は、レジストローラ1039により先端が位置決めされ、感光体ドラム1030面のトナー像に同期して、定着装置1041を経て、排紙ローラ1042により排紙トレイ1043に送り出される。
また、レーザプリンタ1000は、通信制御装置1050と、プリンタ制御装置1060とを有する。
なお、以上説明したレーザプリンタ1000の構成要素は、プリンタ筐体1044の内部の所定位置に収容されている。
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコンなどの情報処理装置)との双方向の通信を制御する。
プリンタ制御装置1060は、不図示のCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)とを有する。また、プリンタ制御装置1060は、RAM(Random Access Memory)と、A/D(Analog/Digital)変換器とを有する。ここで、プリンタ制御装置1060は、上位装置からの要求に応じて各部を統括的に制御するとともに、上位装置からの画像情報を光走査装置1010に送る。
ROMには、CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及びこのプログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されている。
RAMは、CPUの作業用の一時書き込み可能なメモリである。
A/D変換器は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。
感光体ドラム1030は、円柱状の部材の潜像担持体であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。そして、感光体ドラム1030は、不図示の駆動機構により図1における矢印方向に回転される。
帯電装置1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。ここで、帯電装置1031には、例えばオゾン発生の少ない接触式の帯電ローラや、コロナ放電を利用するコロナチャージャを用いることができる。
図2は、画像形成装置のコロトロン型帯電装置を示す模式図である。また、図3は、画像形成装置のスコロトロン型帯電装置を示す模式図である。ここで、帯電装置1031は、図2に示すコロトロン型帯電装置であってもよいし、図3に示すスコロトロン型帯電装置であってもよいし、不図示のローラ型帯電装置であってもよい。
図1に戻り、光走査装置1010は、帯電装置1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、プリンタ制御装置1060からの画像情報に基づいて変調された光束により走査して露光する。光走査装置1010は、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した静電潜像を形成する。
光走査装置1010により形成された静電潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像装置1032の方向に移動する。なお、光走査装置1010の詳細については後述する。
トナーカートリッジ1036にはトナー(現像剤)が格納されている。トナーは、トナーカートリッジ1036から現像装置1032に供給される。
現像装置1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて、静電潜像を顕像化させる。ここで、トナーが付着した像(以下「トナー像」ともいう。)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写装置1033の方向に移動する。
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されている。
給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚ずつ取り出す。記録紙1040は、感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写装置1033との間隙に向けて、給紙トレイ1038から送り出される。
転写装置1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。トナー像が転写された記録紙1040は、定着装置1041に送られる。
定着装置1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここでトナーが定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次積層され、印刷物が製造される。
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、帯電装置1031に対向する位置に戻る。
本発明に係る画像形成装置において、帯電装置と、露光装置としての光走査装置と、感光体と、画像パターンを光出力に変換するための画像処理部とにより、静電潜像が形成される。
複写機やレーザプリンタといった電子写真方式における出力画像を得るためのプロセスは、以下のとおりである。すなわち、電子写真方式では、帯電工程において潜像担持体の一つである感光体を均一に帯電させる。また、電子写真方式では、露光工程において感光体に光を照射して部分的に電荷を逃がす。このようにすることで、電子写真方式では、感光体に静電潜像を形成することができる。
●光走査装置の構成
次に、画像形成装置を構成する光走査装置1010の構成について説明する。
図4は、光走査装置1010の例を示す模式図である。同図に示すように、光走査装置1010は、光源11と、コリメートレンズ12と、シリンドリカルレンズ13と、折り返しミラー14と、ポリゴンミラー15と、第1走査レンズ21とを備える。また、光走査装置1010は、第2走査レンズ22と、折り返しミラー24と、同期検知センサ26と、走査制御装置(不図示)とを備える。
ここで、光走査装置1010は、光学ハウジング(不図示)の所定位置に組み付けられている。
なお、以下の説明において、感光体ドラム1030の長手方向(回転軸方向)に沿った方向をXYZ3次元直交座標系のY軸方向とし、ポリゴンミラー15の回転軸に沿った方向をZ軸方向とし、Y軸とZ軸の双方に垂直な方向をX軸方向とする。
また、以下の説明において、各光学部材の主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」とし、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」とする。
光源11は、例えば2次元配列された複数の発光部(不図示)を有している。ここで、各発光部は、全ての発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときに、発光部間隔が等しくなるように配置されている。
ここで、光源11には、半導体レーザ(LD:Laser Diode)や、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などを用いることができる。
図5は、光走査装置1010の光源の例を示す模式図である。同図において、光源11Aは、マルチビーム光源として、4個の半導体レーザが配列されて構成される半導体レーザアレイである。また、光源11Aは、コリメートレンズ12の光軸方向に対して垂直に配置されている。
図6は、光走査装置1010の光源の別の例を示す模式図である。同図において、光源11Bは、発光点がY軸方向とZ軸方向とを含む平面上に配置された、例えば波長780nmの垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)である。
光源11Bは、例えば、水平方向(主走査方向、Y軸方向)に3個、垂直方向(副走査方向、Z軸方向)に4個、計12個の発光点を有する。
なお、光源11Bは、光走査装置1010に適用する場合に、一つの走査線上を水平方向に配置した3つの発光点により走査することで、垂直方向の4本の走査線を同時に走査することもできる。
ここで、以下の説明において、「発光部間隔」とは、2つの発光部の中心間距離をいう。
図4に戻り、コリメートレンズ12は、光源11から射出された光の光路上に配置され、光を平行光または略平行光に制御する。
シリンドリカルレンズ13は、ポリゴンミラー15の偏向反射面近傍に、コリメートレンズ12を通過した光をZ軸方向(副走査方向)にのみ集束する。
シリンドリカルレンズ13は、折り返しミラー14の反射面近傍に、主走査方向(Y軸方向)に長い線像として光源11から出射された光を結像させる。
折り返しミラー14は、シリンドリカルレンズ13を通過して結像した光をポリゴンミラー15に向けて反射する。
なお、光源11とポリゴンミラー15との間の光路上に配置されている光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。
ポリゴンミラー15は、感光体ドラム1030の長手方向(回転軸方向)に直交する回転軸まわりに回転する多面鏡である。ここで、ポリゴンミラー15の各鏡面は、偏向反射面である。
ポリゴンミラー15は、不図示の駆動用IC(Integrated Circuit)が不図示のモータ部に適切なクロックを与えることで、所望の速度で等速回転する。
ポリゴンミラー15は、モータ部により矢印方向に等速回転されると、偏向反射面で反射された複数の光ビームが、それぞれ偏向ビームとなって等角速度的に偏向される。
第1走査レンズ21と、第2走査レンズ22と、折り返しミラー24と、同期検知センサ26は、走査光学系を構成する。走査光学系は、ポリゴンミラー15で偏向された光の光路上に配置される。
第1走査レンズ21は、ポリゴンミラー15で偏向された光の光路上に配置されている。
第2走査レンズ22は、第1走査レンズ21を介した光の光路上に配置されている。
折り返しミラー24は、長尺平面鏡であり、第2走査レンズ22を介した光の光路を、感光体ドラム1030に向かう方向に折り曲げる。
すなわち、ポリゴンミラー15で偏向された光は、第1走査レンズ21と、第2走査レンズ22とを介して感光体ドラム1030に照射され、感光体ドラム1030表面に光スポットを形成する。
感光体ドラム1030表面の光スポットは、ポリゴンミラー15の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に沿って移動する。ここで、感光体ドラム1030表面上の光スポットの移動方向が「主走査方向」であり、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。第1走査レンズ21と第2走査レンズ22の少なくとも一方は、等速度的に偏向される光ビームと感光体ドラム1030の表面で等速度的に移動させるfθ機能を有している。
同期検知センサ26は、ポリゴンミラー15からの光を受光し、受光光量に応じた信号(光電変換信号)を走査制御装置に出力する。ここで、同期検知センサ26の出力信号は、「同期検知信号」ともいう。
図4に示すように、光走査装置1010では、ポリゴンミラー15の1つの偏向反射面による走査で感光体ドラム1030の被走査面上の複数のラインを同時に走査する。各発光点の発光信号を制御する画像処理部内のバッファメモリには、各発光点に対応する1ライン分の印字データが蓄えられている。
印字データは、ポリゴンミラー15のそれぞれの偏向反射面ごとに読み出され、潜像担持体としての感光体ドラム1030上の走査線上で印字データに対応して光ビームが点滅し、走査線にしたがって静電潜像が形成される。
図7は、画像形成装置の画像処理部を示すブロック図である。同図に示すように、画像処理部は、画像処理ユニット(IPU:Image Processing Unit)101と、コントローラ部102と、メモリ部103と、光書込出力部104と、スキャナ部105と、を備える。
コントローラ部102は、画像データに対して回転・リピート・集約・圧縮伸張などの処理を行ったあと、処理後の画像データを再度IPUに出力する。
メモリ部103には、種々のデータを記憶するためのルックアップテーブルを用意しておく。
光書込出力部104は、制御ドライバにより点灯データに応じて、光源11の光変調を行い、感光体ドラム1030に静電潜像を形成する。ここで、光書込出力部104は、後述の階調処理部からの入力信号に基づいて静電潜像を形成する。形成された静電潜像は、上述の現像装置1032、転写装置1033などにより、記録紙に画像を形成する。
スキャナ部105は、画像を読み込み、この画像に基づいてRGB(Red Green Blue)データなどの画像データを生成する。
図8は、画像処理部の画像処理ユニット101を示すブロック図である。同図に示すように、画像処理ユニット101は、濃度変換部101aと、フィルタ部101bと、色補正部101cと、セレクタ部101dと、階調補正部101eと、階調処理部101fと、を備えている。
濃度変換部101aは、ルックアップテーブルを用いてスキャナ部105からのRGBの画像データを濃度データに変換して、フィルタ部101bに出力する。
フィルタ部101bは、濃度変換部101aから入力される濃度データに対して、平滑化処理やエッジ強調処理等の画像補正処理を施して、色補正部101cに出力する。
色補正部101cは、色補正(マスキング)処理を施す。
セレクタ部101dは、画像処理ユニット101の制御下で、色補正部101cから入力される画像データに対して、C(Cyan)、M(Magenta)、Y(Yellow)、K(Key Plate)のいずれかを選択する。セレクタ部101dは、選択したC、Y、M、Kのデータを階調補正部101eに出力する。
階調補正部101eには、セレクタ部101dから入力されるC、M、Y、Kのデータが予め格納されている。階調補正部101eには、入力データに対してリニアな特性が得られるγカーブを設定する。
階調処理部101fは、階調補正部101eから入力される画像データに対してディザ処理等の階調処理を施して、信号を光書込出力部104に出力する。
●光源駆動部
次に、本発明に係る画像形成方法を実行する本発明に係る画像形成装置の光源駆動部について説明する。
図9は、図1の画像形成装置を構成する光源駆動部を示す回路図である。同図に示すように、光源駆動部410は、電流源201〜204とスイッチSW1〜SW4とメモリ205を有する。また、光源駆動部410は、光源変調データ生成回路(画像処理回路)407と接続している。
本発明に係る画像形成方法を実行する本発明に係る画像形成装置では、画像部における主走査方向の位置に対応して(画像部の露光開始からの時間に対応して)光出力値を変化させながら露光を行う。図9に示す構成により、光源駆動部410は、パルス幅変調と光量変調(PWM+PW変調)とを同時に実行することによって光源駆動電流を生成することができる。
一般的に、電流波形は、バイアス電流(Ibi)と基本パターン電流(Iop)とオーバーシュート電流(Iov1、Iov2)とを加算することで生成される。
電流源201は、オーバーシュート電流Iov1を生成する。また、電流源202は、オーバーシュート電流Iov2を生成する。また、電流源203は、基本パターン電流Iopを生成する。さらに、電流源204は、バイアス電流Ibiを生成する。
ここで、光源駆動部410が生成する電流値は、光源変調データ生成回路407からの電流値制御信号により、電流源201〜204が制御されて決定される。
スイッチSW1〜SW4は、電流源201〜204に対応して設けられる。スイッチSW1〜SW4は、光源変調データ生成回路407からの光源変調信号により制御される。スイッチSW1〜SW4は、電流源201〜204の流れを制御して、光源駆動部410が生成するパルスのパターンを生成する。
メモリ205は、記憶部に相当し、光源駆動電流生成時に必要な情報が格納される。光源変調データ生成回路407は、メモリ205の情報を参照する。
光源駆動部410によれば、光源変調データから得られた光源変調信号を電流に変換することができるため、本実施の形態に係る画像形成装置では、光出力と点灯時間を同時に制御可能なPM+PWM変調を生成することができる。
図10は、図9の光源駆動制御部を示すブロック図である。同図に示すように、光源駆動制御部1019は、基準クロック生成回路422と、画素クロック生成回路425とを備える。また、光源駆動制御部1019は、光源変調データ生成回路407と、光源選択回路414と、書込みタイミング信号生成回路415と、同期タイミング信号発生回路417とを備える。
なお、図10における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
基準クロック生成回路422は、光源駆動制御部1019全体の基準となる高周波クロック信号を生成する。
画素クロック生成回路425は、主にPLL(Phase Locked Loop)回路からなる。画素クロック生成回路425は、同期信号s19と基準クロック生成回路422からの高周波クロック信号とに基づいて、画素クロック信号を生成する。
ここで、画素クロック信号は、周波数が高周波クロック信号と同一であり、位相が同期信号s19と一致している。
したがって、画素クロック生成回路425は、画素クロック信号に画像データを同期させることで、走査ごとの書込み位置を制御することができる。
ここで、生成された画素クロック信号は、駆動情報の1つとして光源駆動部410に供給されるとともに、光源変調データ生成回路407にも供給される。光源変調データ生成回路407に供給された画素クロック信号は、書込みデータs16のクロック信号として使われる。
光源選択回路414は、光源が複数の場合に用いる回路であり、選択された発光部を指定する信号を出力する。この光源選択回路414の出力信号s14は、駆動情報の1つとして光源駆動部410に供給される。
図11は、図1の画像形成装置の各部の動作時期を示すタイミングチャートである。同図において、s19は同期検知センサ26からの出力信号(同期信号)を示す。また、s15は書込みタイミング信号生成回路415の出力信号(LGATE信号)を示す。また、s14は光源選択回路414の出力信号を示す。さらに、s16は光源変調データ生成回路407の出力である書込みデータを示す。
光源変調データ生成回路407は、本発明に係る画像形成装置の光源駆動部に相当する。すなわち、光源変調データ生成回路407は、画像処理ユニット(IPU)などからの画像情報に基づいて、発光部毎の書込みデータs16を作成する。書込みデータs16は、駆動情報の1つとして、画素クロック信号のタイミングにより光源駆動部410に供給される。
ここで、光源変調データ生成回路407は、本実施の形態に係る露光方法による潜像を形成するために、画像処理ユニットからの画像パターン情報やタグ情報に基づいて画像データをPM+PWM信号による露光パターンに変換する。
●画像形成方法●
次に、本発明に係る画像形成方法の実施の形態における、露光方法について説明する。
本実施の形態に係る画像形成方法において、潜像形成に用いる光出力波形は、ライン画像やベタ画像を含む画像部に対して、目標とする画像濃度を得るのに必要な光出力値で所定時間だけ感光体を露光させる波形である。
なお、画像部とは、複数の画素から構成され、画像パターンにおいてトナーを付着させて画像を形成するための部分である。また、非画像部とは、画像パターンにおいてトナーを付着させず画像を形成しない部分である。
以下の説明において、目標とする画像濃度を「目標画像濃度」という。また、以下の説明において、目標画像濃度を得るために必要な所定光出力値を「目標露光出力値」という。また、以下の説明において、目標画像濃度を得るために目標露光出力値で画像部の画素全体を露光させる所定時間を、「目標露光時間」という。
また、以下の説明において、目標露光出力値で目標露光時間だけ露光させる露光方法を、「標準露光」という。さらに、本実施の形態において、ベタ画像(solid image)とは、線画像に比較して大面積の画像部をいう。
さらに、以下の説明において、目標露光出力値より強い光出力値(第1光出力値)で目標露光時間より短い露光時間だけ感光体を露光させることを、「時間集中露光」という。
なお、以下の説明において、時間集中露光のことをTC(Time Concentration)露光ともいう。
図12は、参考例と本発明に係る画像形成方法により形成される潜像径を示すグラフである。同図において、標準露光で露光した参考例の露光方法と、時間集中露光で露光した本実施の形態の露光方法との、ドット密度が1200dpiの2ドットの潜像電荷分布をシミュレーションした結果を示す。ここで、時間集中露光では、画像画素への光出力値を目標露光出力値の400%で露光した。
図12に示す潜像電荷分布は、ビームスポット径70x90μmの時間集中露光の潜像径とビームスポット径55x55μmの標準露光の潜像径が同等であることを示している。つまり、本実施の形態によれば、時間集中露光を用いることで、標準露光のビームスポット径を小径化することと同等の効果を得ることができる。
図13は、参考例における露光方法の例を示す模式図である。同図に示すように、参考例の標準露光による露光方法(以下「露光方式1」という。)は、ライン画像やベタ画像を含む1ドットの画像部に対して、上述の通り目標露光出力値で目標露光時間だけ感光体を露光させる波形である。ここで、目標露光出力値を100%の光出力値とし、目標露光時間をDuty比100%とする。
図14は、本発明に係る画像形成方法の例を示す模式図である。同図に示すように、本実施の形態における時間集中露光による露光方法(以下「露光方式2」という。)は、目標露光出力値の200%の光出力値で目標露光時間に対してDuty比50%で感光体を露光させる。ここで、画像部の幅を1とすると、露光させる区間の幅は4/8画素である。
図15は、本発明に係る画像形成方法の別の例を示す模式図である。同図に示すように、本実施の形態における時間集中露光による露光方法(以下「露光方式3」という。)は、目標露光出力値の400%の光出力値で目標露光時間に対してDuty比25%で感光体を露光させる。ここで、画像部の幅を1とすると、露光させる区間の幅は2/8画素である。
図16は、本発明に係る画像形成方法のさらに別の例を示す模式図である。同図に示すように、本実施の形態における時間集中露光による露光方法(以下「露光方式4」という。)は、目標露光出力値の800%の光出力値で目標露光時間に対してDuty比12.5%で感光体を露光させる。ここで、画像部の幅を1とすると、露光させる区間の幅は1/8画素である。
以上説明した露光方式2〜4では、露光方式1と比較してパルス幅が狭い。つまり、露光方式2〜4では、露光方式1と同じ光量で露光させると形成される潜像が小さくなるため、潜像形成時の積分光量が同等となるようにパルス幅に応じて光量を制御している。
つまり、時間集中露光による露光方式2〜4では、標準露光による露光方式1と比較して、短いパルス幅で強い光量により露光が行われる。
なお、以上の説明では、露光方式2〜4は、いずれも積分光量が一定となるように光出力値を設定しているが、本発明に係る画像形成方法における光出力値は、これに限定されるものではない。
本実施の形態において、露光に用いるビームスポット径が主走査方向に70μm×副走査方向に90μmである場合に、後述する評価方法により、上述のように1画素より狭いパルス幅で露光を行ったときの潜像形成能力を評価する。このようにすることで、本実施の形態において、露光に用いるビームスポット径を変えずに潜像解像力を向上することができる露光方法を検討する。
図17は、露光方法の相違による空間周波数特性を示すグラフである。同図に示すように、露光方式2〜4は、露光方式1と比較して高周波数帯域まで潜像MTF(Modulation Transfer Function)が高い値を示している。
図17のグラフは、露光方式2〜4は、露光方式1と比較してより小径の潜像まで安定して形成することができることを示している。特に、露光方式2〜4のうち、パルス幅の最も短い露光方式4は、小径の潜像を安定して形成することに適していることを示している。
また、図17のグラフは、露光方式2〜4によれば、露光方式1と比較して短いパルス幅かつ強い光量での露光を行うため、潜像解像力が向上することを示している。つまり、本発明に係る画像形成方法で用いる露光方式2〜4によれば、従来の画像形成方法で用いる露光方式1と比較して、小径の潜像を安定して形成することができることを示している。
図18は、潜像円径とビームスポット径(ビームサイズ)との関係を示すグラフである。同図は、潜像ドット密度を示す潜像MTFが80%となる潜像円相当径と、ビームスポット径との関係とを示す。同図に示すように、潜像解像力とビームスポット径とはほぼ比例して推移する。
本発明に係る画像形成方法における時間集中露光による露光方法は、高周波領域、すなわち小径での潜像安定性を重要視する場合に、小径のビームスポット径で従来の露光方法により露光した場合に対する優位性がある。ここで、出力画像の相違による最適なビームスポット径は、出力画像として要求される最大空間周波数での潜像MTFによって決定される。
さらに注目すべきは、潜像電界ベクトルの幅が、他の手段に比べて狭いことが特徴であり、潜像電界ベクトルを増加させた上に解像力が向上されていることを意味する。
また、本発明に係る画像形成方法では、パワー変調やパルス幅変調で光源を制御して露光した場合と異なり、積分光量が目標露光出力値で露光した場合と同等である。このため、本発明に係る画像形成方法では、トナーの付着量や全体の画像濃度が目標露光出力値で露光した場合と実質的に相違ない。
図19は、縦方向の潜像MTFの測定結果を示すグラフである。同図において、図15に示した第1光出力値が目標露光出力値の400%の値で露光した縦ライン画像を実際に紙出力してMTF解析した値を示している。同図は、いずれのライン幅においても、本実施の形態における露光方法は、従来方式による露光方法よりもMTFが高いことを示している。
特に、MTFは、高周波になるに従って高くなるという効果が顕著に現れている。
以上のように、ベタ画像濃度を形成するときの目標露光出力値P0よりも大きな光出力値P1を照射することができるPM変調の場合において、光出力値の比率TCRを
TCR=P1/P0
と定義する。
この場合に、本実施の形態における露光方法は、縦ラインの幅を1/TCRに圧縮して、ベタ画像濃度時の目標露光出力値より強い光出力値で露光する。このようにすることで、本実施の形態における露光方法によれば、MTF解像度の高い画像を形成することができる。
本実施の形態に係る露光方法は、画像パターン内の画像を形成する画像部の狭い範囲を強い光で集中して露光させる。このようにすることで、本実施の形態に係る露光方法は、ビーム径サイズより小さい(ビーム径のサイズの影響が無視できない)微小サイズの出力画像パターンの忠実性を向上させるとともに、画像パターンを所望の画像濃度に調整することができる。
すなわち、本実施の形態に係る露光方法によれば、微小サイズの画像パターン形成と所望の画像濃度とを両立した出力画像を形成することができる。
また、本実施の形態に係る露光方法は、エッジ検出や文字情報認識など特別な処理を行わずに、任意の画像パターンに容易に適用することができる。
したがって、本実施の形態に係る露光方法によれば、画像データを光源変調データに変換する際にコンピュータからオブジェクト情報を取得することができない場合であっても画像パターンを生成することができる。
また、本実施の形態に係る露光方法によれば、画像データと光源変調データとを文字ごとに対応させることなく微小サイズの画像パターン形成と所望の画像濃度とを両立した出力画像を形成することができる
また、本実施の形態に係る露光方法は、PM(Phase Modulation)変調とPWM(Pulse Width Modulation)変調とを組み合わせたPM+PWM変調を利用する。そして、本実施の形態に係る露光方法によれば、最大光出力を意図的に強めた時間集中露光を用いることにより、露光時の画像パターンの積分光量を標準露光と同じ値にすることもできる。
ここで、本実施の形態に係る露光方法によれば、深い潜像を形成することで画像パターンの画像濃度を変えずに画像パターンの解像力を高めることができる。
本実施の形態に係る露光方法は、画像パターンに含まれる画像部と非画像部との境界にある画像部内の1以上の画素(画素群)が非露光の画素となるように光出力値を設定する。ここで、画像パターンに含まれる画像部と非画像部との境界にある画像部内の非露光の画素群を、非露光画素群という。また、本実施の形態に係る露光方法は、非露光画素群に隣り合う(非露光画素群の近傍の)画素群への光出力値を、非露光画素群への光出力値を加算した光出力値で露光する。
このようにすることで、本実施の形態に係る露光方法によれば、高画質な画像パターンを形成することができる。
●ライン画像の形成例
次に、本実施の形態における露光方法により、ライン画像を形成する例について説明する。なお、以下の説明において、図中のY軸方向(主走査方向)を横方向とし、Z軸方向(副走査方向)を縦方向とする。
図20は、本発明に係る第1の露光方法のライン画像の露光パターンの例を示す模式図である。同図(a)は、標準露光によるライン画像の露光パターン400aである。
また、図20(b)は、画像部と非画像部412との境界の1ドットを高出力露光画素群443とするライン画像の露光パターン400bである。また、図20(c)は、画像部と非画像部412との境界の2ドットを高出力露光画素群443とするライン画像の露光パターン400cである。さらに、図20(d)は、画像部と非画像部412との境界の3ドットを高出力露光画素群443とするライン画像の露光パターン400dである。
図20において、(a),(b),(c),(d)に示す露光パターン400a,400b,400c,400dは、いずれも最小画素が4800dpi、空間周波数が6c/mmである。露光パターン400a,400b,400c,400dは、8x8ドット(600dpi相当)ごとに縦ライン(Z軸方向のライン)の太線を形成する。
つまり、図20(a)に示す露光パターン400aには、600dpiの2本の縦ラインからなる露光部(画像部と一致)411と非画像部412とが含まれている。ここで、1画素の大きさは約5μmである。
本実施の形態に係る露光方法は、露光パターン400bにおいて、画像部と非画像部412との境界にある画素群(例えば、Y軸方向の1画素をZ軸方向に1列に並べた複数の画像)が非露光部441となるように光出力値を設定する。ここで、以降の例を含めて、非露光部441は、上述の非露光画素群に対応する。そして、本実施の形態に係る露光方法は、露光部411と非露光部441との境界の画素群(例えば、Y軸方向の1画素をZ軸方向の1列に並べた複数の画素群)を、高出力露光画素群443として設定する。
そして、本実施の形態に係る露光方法は、時間集中露光の標準露光に対する変倍率が2であれば、高出力露光画素群443は2倍の光出力で露光する。この時、非露光部441は露光されないため、露光パターン400b全体の積分光量は露光パターン400aと同一である。
なお、本実施の形態に係る露光方法において、非露光部441と高出力露光画素群443との画素数を、主走査方向または副走査方向において任意の画素数に設定することができる。
露光パターン400cは、非露光部441と高出力露光画素群443がY軸方向の2画素の幅となるように設定されている。また、露光パターン400dは、非露光部441と高出力露光画素群443がY軸方向の3画素の幅となるように設定されている。
図21は、図20のライン画像の露光パターンの光出力値の例を示す模式図である。ここで、同図(a)は、図20(a)の露光パターン400aの光出力値を示す模式図である。また、同図(b)は、図20(b)の露光パターン400bの光出力値を示す模式図である。さらに、同図(c)は、同図(a)と(b)に示した光出力値を重ね合わせた模式図である。
図21において、横軸を図10におけるY軸方向のドット、縦軸をドットごとの光出力値を示す。また、同図において、ドット内の数値は、光出力値の倍数を示す。
図21(a)に示すように、標準露光による露光パターン400aは、Y軸方向において全てのドットの光出力値の倍数が1であり一律の光出力値で露光される。
一方、図21(b)に示すように、時間集中露光による露光パターン400bは、画像部と非画像部との境界にある画素(境界画素)が非露光部となるため、非露光部の光出力値の倍数が0(光出力値が0)である。また、露光パターン400bは、画像部と非露光部との境界の画素が高出力露光画素群となるため、高出力露光画素群の光出力値の倍数が2である。
また、図21(c)に示すように、標準露光による光出力値の波形(a)と時間集中露光による光出力値の波形(b)とを比較すると、標準露光による波形(a)の両端部が時間集中露光による波形(b)では非露光部となる。
そして、標準露光による波形(a)の非露光部の光出力値が時間集中露光による波形(b)の両端部に相当する高出力露光画素群の光出力値に加算されている。つまり、高出力露光画素群は、画像パターンの端部の光出力値をあたかも内側に折り返して嵩上げするような処理である。
図22は、図20の露光パターンの潜像電界強度分布を示すグラフである。同図において、標準露光による画像パターンの潜像電界強度分布と、2ドット分を非露光画素群と高出力露光画素群とに置き換えた時間集中露光による画像パターンの潜像電界強度分布とを示す。
図22に示すように、標準露光の潜像電界強度分布と時間集中露光の潜像電界強度分布とを比較すると、時間集中露光の方が電界強度のピーク部の幅が狭く電界強度の変化の傾きが大きい(エッジが急峻である)ため、画像形成に有利であることがわかる。
●ドット画像の形成例
以上説明した本実施の形態に係る露光方法は、上述のライン画像に限らず、ドット画像、あるいは文字画像に適用することができる。
図23は、第1の露光方法のドット画像の露光パターンの例を示す模式図である。同図(a)は、標準露光によるドット画像の露光パターン500aである。同図(a)において、露光パターン500aは、露光部501全体が、一律の光出力値で露光される画像部であり、画像部の枠外が非画像部である。
ここで、図23(a)に示すように、露光パターン500aは、4800dpiの24ドット(600dpiに換算すると3ドット)角である。
また、図23(b)は、非露光部541との境界の2ドットを高出力露光画素群543a,bとするドット画像の露光パターン500bである。また、図23(c)は、非露光部541との境界の2ドットを高出力露光画素群543a,bとするライン画像の露光パターン500cの別の例である。さらに、図23(d)は、非露光部541との境界の2ドットを高出力露光画素群543a,b,cとするライン画像の露光パターン500dのさらに別の例である。
図23(b)に示すように、露光パターン500bは、画像部の画素のうちY軸方向とZ軸方向ともに両端の2ドットを非露光部541とする。また、露光パターン500bの高出力露光画素群543a,543b,543cは、露光部501と非画像部とに隣接するY,Z軸方向の2ドット分の画素の光出力値が加算される。
この場合に、露光部の四隅の高出力露光画素群543bの光出力値は、Y,Z軸方向の非露光部541の双方の光出力値が加算されるため、露光部501の光出力値の4倍(高出力露光画素群543aの2倍)となる。
ただし、本実施の形態に係る露光方法を実行する画像形成装置において、標準露光の4倍の光出力値を設定することが困難な場合もある。
この場合には、光出力値の最大値(以下「最大光出力値」という。)をあらかじめ設定し、その最大光出力値の範囲内で光出力値を制限することができる。例えば、最大光出力値は、標準露光の光出力値の3倍や2倍に設定してもよい。
このように最大光出力値を設定する場合には、積分光量が標準露光の場合と比較して若干変更されるものの、最大光出力値の影響を受ける画素の画像パターン全体に占める割合が少ないため、形成される画像の濃度としては、あまり変わらないといえる。
ただし、画像パターンのドットサイズが小さく、高出力露光画素群に用いられる画素数が多い場合には、最大光出力値の影響を受ける画素の割合が無視できないことがあるため、実現するためのコストと要求される画質との兼ね合いで適否を選択すればよい。
図23(c)は、最大光出力値を標準露光の3倍とした場合の露光パターン500cである。同図に示すように、露光パターン500cは、本来であれば標準露光の4倍の光出力値で露光される高出力露光画素群543bの光出力値を標準露光の3倍にする。
ここで、露光パターン500cは、積分光量を標準露光と同じにするために、高出力露光画素群543bに隣接する、最大光出力値に到達していない画素の一部の画素を、高出力露光画素群543cとして露光部501側に設けて光出力値を分散する。
図23(d)は、最大光出力値を標準露光の2倍とした場合の露光パターン500dである。同図に示すように、露光パターン500dは、本来であれば標準露光の4倍の光出力値で露光される高出力露光画素群543bの光出力値を、高出力露光画素群543aと同じく標準露光の2倍にする。
ここで、露光パターン500dは、積分光量を標準露光と同じにするために、高出力露光画素群543cに加えて、高出力露光画素群543bに隣接し、かつ、最大光出力値に到達していない画素である、非露光部541側の露光部501aに光出力値を分散する。
図24は、第1の露光方法のドット画像の露光パターンの別の例を示す模式図である。同図(a)は、標準露光によるドット画像の露光パターン600aである。同図(a)において、露光パターン600aは、露光部601全体が、一律の光出力値で露光される画像部であり、画像部の枠外が非画像部である。
ここで、図24(a)に示すように、露光パターン600aは、4800dpiの12ドット角である。
また、図24(b)は、非露光部641との境界の2ドットを高出力露光画素群643a,bとするドット画像の露光パターン600bである。また、図24(c)は、非露光部641との境界の2ドットを含む露光部全体を高出力露光画素群643aとするライン画像の露光パターン600cの例である。さらに、図24(d)は、非露光部641との境界の2ドットを高出力露光画素群643aとするライン画像の露光パターン600dのさらに別の例である。
図24(b)に示すように、露光パターン600bは、画像部の画素のうちY軸方向とZ軸方向ともに両端の2ドットを非露光部641とする。また、露光パターン600bの高出力露光画素群643a,643bは、露光部601と非画像部とに隣接するY,Z軸方向の2ドット分の画素の光出力値が加算される。
この場合に、露光部の四隅の高出力露光画素群643bの光出力値は、Y,Z軸方向の非露光部641の双方の光出力値が加算されるため、露光部601の光出力値の4倍(高出力露光画素群643aの2倍)となる。
図24(c)は、最大光出力値を標準露光の3倍とした場合の露光パターン600cである。同図に示すように、露光パターン600cは、露光パターン600bであれば標準露光の4倍の光出力値で露光される高出力露光画素群643bの光出力値を標準露光の3倍にする。
ここで、露光パターン600cは、積分光量を標準露光と同じにするために、高出力露光画素群643aに光出力値を分散する。つまり、露光パターン600cは、露光部全体が標準露光の光出力値の3倍で露光される高出力露光画素群643aとなる。
図24(d)は、最大光出力値を標準露光の2倍とした場合の露光パターン600dである。同図に示すように、露光パターン600dは、露光部全体を高出力露光画素群643aとする。
ここで、露光パターン600dは、積分光量を標準露光と同じにするために、高出力露光画素群643aに隣接し、かつ、最大光出力値に到達していない画素である、非露光部641側の露光部601aに光出力値を分散する。
図25は、第1の露光方法のドット画像の露光パターンのさらに別の例を示す模式図である。同図(a)は、標準露光によるドット画像の露光パターン700aである。同図(a)において、露光パターン700aは、露光部701全体が、一律の光出力値で露光される画像部であり、画像部の枠外が非画像部である。
ここで、図25(a)に示すように、露光パターン700aは、4800dpiの8ドット(600dpiに換算すると1ドット)角である。
また、図25(b)は、非露光部741との境界の2ドットを高出力露光画素群743とするドット画像の露光パターン700bである。また、図15(c)は、非露光部741との境界の2ドットを含む露光部全体を高出力露光画素群743aとするライン画像の露光パターン700cの別の例である。
図25(b)に示すように、露光パターン700bは、画像部の画素のうちY軸方向とZ軸方向ともに両端の2ドットを非露光部741とする。つまり、露光パターン700bの高出力露光画素群743は、露光部全体にわたり、非露光部741のY,Z軸方向の2ドット分の画素の光出力値が加算される。
この場合に、高出力露光画素群743の光出力値は、Y,Z軸方向の非露光部741の双方の光出力値が加算されるため、露光パターン700aの露光部701の光出力値の4倍となる。
図25(c)は、最大光出力値を標準露光の2倍とした場合の露光パターン700cである。同図に示すように、露光パターン700cは、露光パターン700bであれば標準露光の4倍の光出力値で露光される高出力露光画素群743a,bの光出力値を標準露光の2倍にする。
ここで、露光パターン700cは、積分光量を標準露光と同じにするために、高出力露光画素群743bに光出力値を分散する。つまり、露光パターン600cは、積分光量を標準露光と同じにするために、高出力露光画素群743aに隣接し、かつ、最大光出力値に到達していない画素である、非露光部741側の高出力露光画素群743bに光出力値を分散する。
●屈曲部を有する画像の形成例
図26は、第1の露光方法の屈曲部を有する画像の露光パターンの例を示す模式図である。同図は、より一般的な画像パターンを想定した、屈曲部を有するくびれ形状の画像パターンの例を示す。このような画像パターンの場合には、1つの画像パターンを2つ以上に分割して処理してもよい。同図は、1つの画像パターンの光出力値を2箇所に均等に分配して、3つの光出力値を設定する例である。
図26(a)は、標準露光による画像の露光パターン800aである。同図(a)において、露光パターン800aは、露光部801全体が、一律の光出力値で露光される画像部であり、画像部の枠外が非画像部802である。
ここで、図26(a)に示すように、露光パターン800aは、4800dpiの24ドット(600dpiに換算すると3ドット)角である。
また、図26(b)は、非露光部841との境界の2ドットを高出力露光画素群843a,bとするドット画像の露光パターン800bである。また、図26(c)は、非露光部841との境界の2ドットを高出力露光画素群843a,bとするライン画像の露光パターン800cの別の例である。さらに、図26(d)は、非露光部841との境界の2ドットを高出力露光画素群843a,bとするライン画像の露光パターン800dのさらに別の例である。
図26(b)に示すように、露光パターン800bは、画像部の画素のうちY軸方向とZ軸方向ともに両端の2ドットを非露光部841とする。また、露光パターン800bの高出力露光画素群843a,843bは、露光部801と非露光部841とに隣接するY,Z軸方向の2ドット分の画素の光出力値が加算される。
この場合に、露光部801の四隅の高出力露光画素群843bの光出力値は、Y,Z軸方向の非露光部841の双方の光出力値が加算されるため、露光部801の光出力値の4倍(高出力露光画素群843aの2倍)となる。
また、露光パターン800bの屈曲部は、非露光部841の光出力値の分配先が複数個所になる。このため、高出力露光画素群843cの光出力値は、露光部801の1.5倍となる。
図26(c)は、最大光出力値を標準露光の3倍とした場合の露光パターン800cである。同図に示すように、露光パターン800cは、先に説明した露光パターン500cと同様に、高出力露光画素群843cを露光部801側に設けて光出力値を分散する。
図26(d)は、最大光出力値を標準露光の2倍とした場合の露光パターン800dである。同図に示すように、露光パターン800dは、先に説明した露光パターン500dと同様に、非露光部841側に露光部801aを設けて光出力値を分散する。
●露光方法のフローチャート
図27は、本実施の形態に係る露光方法のフローチャートである。同図に示すように、本実施の形態に係る露光方法を実行する、光源変調データ生成回路407は、画像パターンを生成した情報処理装置から受信し、画像パターンから画像部と非画像部との境界部にある任意の画素数の画素(境界画素)を検出する(S101)。
光源変調データ生成回路407は、検出した境界画素について非露光部として特定する、エッジ折り返し処理を行う(S102)。
光源変調データ生成回路407は、非露光部と露光部との境界部にある画素(隣接画素)を高出力露光画素群として露光するため、非露光部を露光するための光出力値を加算する処理を行う(S103)。
光源変調データ生成回路407は、露光パターンの高出力露光画素群の光出力値が、最大光出力値以下であるか否かを判断する(S104)。
高出力露光画素群の光出力値が、最大光出力値以下であれば(S104:Yes)、光源変調データ生成回路407は、S108の処理に移行する。
高出力露光画素群の光出力値が、最大光出力値以上であれば(S104:No)、光源変調データ生成回路407は、最大光出力値以上の高出力露光画素群に隣接する画素に光出力値を分散して、新たな高出力露光画素群を生成する(S105)。
光源変調データ生成回路407は、光出力値の分散後の露光パターンの高出力露光画素群の光出力値が、最大光出力値以下であるか否かを判断する(S106)。
高出力露光画素群の光出力値が、最大光出力値以下であれば(S106:Yes)、光源変調データ生成回路407は、S108の処理に移行する。
高出力露光画素群の光出力値が、最大光出力値以上であれば(S106:No)、光源変調データ生成回路407は、最大光出力値以上の高出力露光画素群に隣接する非露光部側(外側境界)の画素に光出力値を割り振り、新たな露光部を生成する(S107)。
露光パターンへの高出力露光画素群の設定処理、および光出力値の分散と割り振り処理の終了後、光源変調データ生成回路407は、生成した露光パターンを光書き込み出力部に出力(指示)して(S108)、処理を終了する。
以上説明したように、本実施の形態に係る露光方法によれば、様々な形態の画像を、高画質化な印刷物として形成することができる。
●露光方法(2)
次に、本発明に係る画像形成方法の第2の露光方法について、先に説明した露光方法との相違点を中心に説明する。
第2の露光方法は、画像部と非画像部との境界の画素の光出力値を露光部側に加算する処理の別の例を示す。つまり、第2の実施の形態に係る露光方法は、高出力露光画素群が最大光出力値に達した画素について、光出力値の加算処理を行わず、本来の露光パターンを露光する。
図28は、第2の露光方法のドット画像の露光パターンの例を示す模式図である。
図28(a)は、標準露光によるドット画像の露光パターン900aである。同図(a)において、露光パターン900aは、露光部901全体が、一律の光出力値で露光される画像部であり、露光部901の枠外が非画像部である。
ここで、図28(a)に示すように、露光パターン900aは、4800dpiの24ドット(600dpiに換算すると3ドット)角である。
図28(b)は、非露光部941との境界の2ドットを高出力露光画素群943a,bとするドット画像の露光パターン900bである。また、図28(c)は、非露光部941との境界の2ドットを高出力露光画素群943とするライン画像の露光パターン900cの別の例である。さらに、図28(d)は、非露光部941との境界の2ドットを高出力露光画素群943a,b,cとするライン画像の露光パターン900dのさらに別の例である。
ここで、本実施の形態に係る露光方法において、時間集中露光は標準露光の200%の光出力値で行い、最大光出力値は標準露光の2倍を上限とする。露光の際の走査方向は、図28におけるY軸方向(左→右)の後にZ軸方向(上→下)の順で逐次折り返す。
図28(b)に示すように、露光パターン900bは、画像部の画素のうちY軸方向の両端の2ドットを非露光部941とする。また、露光パターン900bの高出力露光画素群943aは、露光部901と非画像部とに隣接するY軸方向の2ドット分の画素の光出力値が加算される。このとき、両端の高出力露光画素群943aは、既に上述の最大光出力値に達しているため、Z軸方向の光出力値の加算は行わない。
図28(c)は、露光部901のZ軸方向の一端に高出力露光画素群943bを設ける場合の露光パターン900cである。また、図28(d)は、露光部901のZ軸方向の両端に高出力露光画素群943bを設ける場合の露光パターン900dである。
ここで、Z軸方向にも高出力露光画素群943bを設ける場合に、Y軸方向に高出力露光画素群943を設けているため、そのまま非露光部941bの光出力値を角部の高出力露光画素群943cに加算してしまうと、最大光出力値を上回ってしまう。
そこで、本実施の形態に係る露光方法では、最大光出力値を上回る部分の高出力露光画素群943cについては、光出力値の加算処理を行わない。
このようにすれば、最大光出力を超えることがないため、様々な画像パターンに対して例外なく本実施の形態に係る露光方法を行うことができる。
なお、図28(c),(d)の露光パターン900c、900dは、元の画像パターンと同一形状の露光パターン900aと形が違って見えるが、光出力値の加算量はビームサイズに比べて十分小さいため、突起のような画像が形成されることはない。
つまり、本実施の形態に係る露光方法によれば、実質的にはドット画像の角部を4倍の光出力値により露光したのと同等な出力画像を形成することができる。
従来行われていた露光パターンの細線化や太線化は、細線化や太線化のために画像データを削ってしまうので、画像が薄くなっていた。
また、従来行われていた露光パターンの細線化や太線化は、画像データを削りすぎるとデータが無くなってしまうので、小さいサイズの画像パターンに対応するために例外処理を作らなければならならず、対応するのが困難であった。
これに対して、本実施の形態に係る露光方法は、画像データに対応する露光パターンの光出力値を削ることなく、他の画素に高出力露光画素群として光出力値を加算(移動)している。つまり、本実施の形態に係る露光方法によれば、画像が掠れたりすることなく、高画質な画像を形成することができる。
●露光方法(3)
次に、本発明に係る画像形成方法における第3の露光方法の例について、先に説明した露光方法の例との相違点を中心に説明する。
本実施の形態に係る露光方法において、非露光部、あるいは高出力露光画素群とする画素数は、画像形成装置の性能、画像パターンにおける画像領域、画像パターンの形態(黒文字、白抜け文字、線種、図の形状など)に応じて、適宜使い分けてもよい。
図29は、第3の露光方法の露光パターンの光出力値の加算処理例を示す模式図である。同図に示すように、本実施の形態に係る露光方法は、4800dpiで形成される画像の露光パターンの1dotから4dotを非露光部として他の画素に光出力値を加算する。同図において、“0”が非露光画素(光出力値が0である)、“1”、“2”が露光画素(光出力値の係数が1または2である)、“x”が任意の画素を示す。
ここで、1ドットのみ加算する処理を1dot処理モードとし、2ドット加算する処理を2dot処理モードとする。以降、他のドットに光出力値を加算するドット数に応じて、処理モードのモード名が変化する。
図29(a)は、1dot折り返し処理の加算例を示す。また、図29(b)は、2dot折り返し処理の加算例を示す。また、図29(c)は、3dot折り返し処理の加算例を示す。さらに、図29(d)は、4dot折り返し処理の加算例を示す。
図29(a)〜(d)に示すように、本実施の形態に係る露光方法は、対称に配置された任意の数の露光画素について、仮想の対称軸を中心として折り返したときに対応する位置に露光画素があるか否かを判断するパターンマッチングを行う。このように、パターンマッチングを行い、対称軸の反対側の画素に光出力値を加算することにより、反対側の露光画素の数値が“2”になる。
図30は、第3の露光方法の露光パターンの光出力値の別の加算処理例を示す模式図である。
図30(a)は、3dot折り返し処理の加算例を示す。また、図30(b)は、3dot折り返し処理の別の加算例を示す。
図30(a),(b)に示すように、本実施の形態に係る露光方法は、先に説明した対称に配置された露光画素の加算処理とは異なり、仮想の対称軸を中心として折り返したときに対応する位置に露光画素がない場合にも加算処理を行うことができる。
つまり、本実施の形態に係る露光方法は、加算処理を行う際に、加算する側の露光画素が既に光出力値の加算後の画素である場合には、加算可能な露光画素のみに加算処理を行うことができる。
具体的には、図30(a),(b)に示すように、3dot処理モードで3dot折り返しできない場合は、2dotだけ、または1dotだけ加算処理を行うことができる。
このように処理することにより、本実施の形態に係る露光方法によれば、折り返しによる加算処理を行う露光画素数を多くした場合でも、非露光部により露光パターン変形することなく、様々な形態の画像を、高画質化な印刷物として形成することができる。
図31は、第3の露光方法を示すブロック図である。同図に示すように、本実施の形態に係る露光方法は、情報処理装置などで生成した画像データ(元画像)を受信した光源変調データ生成回路407は、セレクタにより、4dot〜1dot折り返し処理モードのいずれかの処理を行うかを選択する。
4dot折り返し処理モードの場合には、光源変調データ生成回路407は、パターンマッチングで4dot折り返せるか否かの検索を行い、一致した場合には4dot折り返す変換処理を行う。
4dot折り返し処理モードによりパターンマッチングで検索が終了した後、光源変調データ生成回路407は、3dot折り返せるか否かをパターンマッチングで検索を行い、一致した場合には3dot折り返す変換処理を行う。光源変調データ生成回路407は、このような処理を1dot折り返し処理モードまで逐次実行する。
ここで、2dot折り返し処理モードが適用されている場合には、光源変調データ生成回路407は、セレクタにより、4dot,3dot折り返し処理モードの処理を行うことなく、2dot折り返せるか否かの検索を行う。2dot折り返せる場合には、光源変調データ生成回路407は、2dot折り返す変換処理を行う。
このようにすることで、本実施の形態に係る露光方法は、1〜4dot折り返し処理モードを1つの判断処理により行うことができる。
以上説明したように、本実施の形態に係る露光方法によれば、上記の条件でパターンマッチングを行い光出力値の加算処理を行うことで、光出力値を加算した画素に対して再度加算しないように適切に処理することができる。
なお、本発明に係る画像形成方法において、第1の画像品質(通常画質モード)と第2の画像品質との少なくとも2種類の画像品質を選択可能にすることもできる。ここで、第1の画像品質は、画像部の画素全体を目標露光出力値で目標露光時間だけ露光させる画像品質である。また、第2の画像品質は、以上説明した実施の形態に係る露光方法により、画像部の画素を構成する画素のうち、少なくとも非露光部との境界にある画素群について、第1の光出力値よりも高い光出力値で露光させる画像品質である。
●文字画像の形成例
次に、本実施の形態に係る露光方法により、微小サイズ(3ポイント)の文字画像に展開した例について説明する。
図32は、本実施の形態の露光方法による文字画像の露光パターンを示す模式図である。同図(a)は、画像部と非画像部との境界の2dotを非露光部とし、露光部と非露光部との境界の2dotを高出力露光画素群として露光した露光パターンである。また、同図(b)は、標準露光により露光された「画」の文字の露光パターンである。
図33は、本実施の形態の露光方法による白抜き文字画像の露光パターンを示す模式図である。同図(a)は、標準露光により露光された「画」の文字の白抜き露光パターンである。また、同図(b)は、画像部と非画像部との境界の4dotを非露光部とし、露光部と非露光部との境界の4dotを高出力露光画素群として露光した露光パターンである。
図32,33に示すように、本実施の形態に係る露光方法は、通常の着色文字だけでなく、色反転文字(白抜き文字)にも適用することができる。
つまり、本実施の形態に係る露光方法によれば、画像データから光源変調データに変換する際に、情報処理装置からオブジェクト情報を得られない場合でも、文字画像、反転文字画像、ディザ、線画像など様々な画像の露光パターンを生成することができる。
また、本実施の形態に係る露光方法は、画像パターンの特徴に応じて、露光パターンの折り返し処理モードを使い分けることで、さらに効果をあげることができる。
一般的に、図33に示す白抜け反転文字は、周辺が露光の影響を受けるため、白地の電界強度は小さくなり、白地が着色の中に埋もれやすい。このため、本実施の形態に係る露光方法では、高出力露光画素群と非露光部の画素数を大きく設定することで、時間集中露光による光出力値を高めるのが望ましい。
また、本実施の形態に係る露光方法は、中間調などディザ部において、他の処理との干渉でテクスチャやアーティファクトが出た場合には、高出力露光画素群と非露光部の画素数を小さくしてもよい。加算する画素数が1dotであれば、本実施の形態に係る露光方法によるデメリットはほとんどなく、弱電界の低減効果を得ることができる。
そのため、本実施の形態に係る露光方法は、高出力露光画素群への加算処理を行う対象の種類(文字あるいは線)を識別するタグ情報により、黒文字、白文字、ディザを識別できる場合には、高出力露光画素群と非露光部の画素数を適切に揃えることができる。
具体例として、通常文字や線画であれば、画像部と非画像部との境界にある露光側の画素にあらかじめタグをつける。一方、反転文字や反転線画であれば、画像部と非画像部との境界の非露光側画素にタグをつけ、それ以外のディザ等については、ディザをつけていない場合と同様にする。
そして、タグを付けた各画像について、黒文字や黒線を3dot折り返し処理モード、白抜き文字や白抜き線を4dot折り返し処理モード、ディザを2dot折り返し処理モード、などとあらかじめ設定する。
まず、図10に説明した光源変調データ生成回路407は、露光パターンの画像部と非画像部との境界画素を検出し、境界画素のタグビット(画像パターンの属性を特定する情報)からタグが0と1のいずれであるかを検出する。
ここで、タグビットが1である場合には、光源変調データ生成回路407は、黒文字や黒線と判断し、3dot折り返し処理モードを実行する。
次に、タグビットが0である場合には、光源変調データ生成回路407は、白文字、白線と判断し、4dot折り返し処理モードを実行する。
タグビットが0,1いずれでもない場合には、光源変調データ生成回路407は、ディザ部と判断して、2dot折り返し処理モードを実行する。
このように、本実施の形態に係る露光方法は、受信した画像の画像パターン、または画像のタグビットなど、コントローラ側から提供される情報に基づいて、通常文字か反転文字かディザ部かを認識し、それぞれの画像に応じて最適な折り返し画素数を設定する。
つまり、本実施の形態に係る露光方法によれば、時間集中露光の光出力値に強弱をつけられるので、画像形成装置の能力を最大限発揮する最良の画像を提供することができる。
本発明の画像形成方法の露光方法について実施例を説明する。なお、以下の説明において、画像データと画像データを構成する画素の配列は、簡略化のため、1次元の画像データにて示している。
図34に示すように、画像データ50において画像部51を構成する画素に記載されている数値「1」は、その画素が所定光出力値で露光されることを示している。また、画像データ50において非画像部52を構成する画素に記載されている数値「0」は、露光されない画素(非露光画素)であることを示している。本実施例に係る露光方法では、画像データ50において画像部51を構成する画素のうち、所定の画素を注目画素53として特定する。
注目画素53を特定した後、本実施例に係る露光方法では、画像部51と非画像部52との境界(エッジ)に位置する境界画素群54を検出する。境界画素群54を検出するには、画像部51を構成する所定光出力値で露光される画素に隣接する画素が、非画像部52である箇所を探し出せばよい。
本実施例に係る露光方法では、検出された境界画素群54について、画像データ50のパターンの種類(文字・線画像、白抜き画像、ティザ処理画像など)を特定するための情報である、画像識別情報を取得する。画像識別情報は、画像部51を構成する画素と非画像部52を構成する画素の双方から取得する。境界画素群54を構成する2つの画素に含まれる画像識別情報が各画素について1ビットの場合、各画素に含まれる画像識別情報は、「0」または「1」である。つまり、2つの画素を含む境界画素群54から得られる画像識別情報の組み合わせは、図34に示すように「Mode1」「Mode2」「Mode3」「Mode4」の4通りである。
本実施例に係る露光方法では、この画像識別情報に基づいて画像データ50の種類を特定し、特定した画像データ50の種類に基づいて露光方法の処理モードを決定する。
本実施例に係る露光方法では、その画像識別情報に基づいて、注目画素53を非露光画素または高出力露光画素に変換することを含めて、画像部51に対する露光処理の処理モードを決定する。図34において、画像部51に含まれる注目画素53は、画像部51を構成する他の画素の光出力値(所定光出力値)より高い光出力値で露光する。図34において、注目画素53は、所定光出力値「1」よりも高い光出力値「2」で露光される。
以上の処理により、本実施例に係る露光方法では、境界画素群54とその付近における潜像電界値の変化の度合い(潜像電界値の傾き)を変更する。
図35(a)に示すように、境界画素群54は、画像部51を構成する画素を所定光出力値より高い光出力値で露光する高出力露光画素群55と、画像部51を構成しつつ露光しない非露光画素群56とに変換される。図35(b)に示すように、本実施例の露光方法では、境界画素群54に含まれる高出力露光画素群55と非露光画素群56との画素数の違いにより複数の処理モードがある。図35(b)において、画像データ50に含まれる画像部51を構成する全ての画素に対する光出力値が一定の露光方法を通常露光とする。
なお、以下の説明において、画像データ50のエッジ部にあたる境界画素群54を検出し、境界画素群54を非露光画素群56と高出力露光画素群55とに区分して露光する処理を、折り返し処理ともいう。図35(b)において、処理モードがMode1である場合には、高出力露光画素群55と非露光画素群56がともに1ドットであるため、1ドットの折り返し処理という。同様に、処理モードがMode2である場合には2ドットの折り返し処理、Mode3である場合には3ドットの折り返し処理という。
本実施例に係る露光方法において、高出力露光画素群55の光出力値が所定光出力値の200%であれば、標準露光の積算光量とTC露光の積算光量とが等しくなる。
ここで、
TC比率=高出力露光の光出力値/標準露光の光出力値
と定義する。
TC比率が200%未満であれば、全体の画像濃度がやや薄めになり、TC比率200%を超えれば、全体の画像濃度がやや濃くなる。TC比率は、要求される画質に応じて適切に設定することができる。
また、高出力露光画素群55と非露光画素群56の画素の数は、異なる数であってもよい。つまり、非露光画素群56の画素数1に対し高出力露光画素群55の画素数2、非露光画素群56の画素数2に対し高出力露光画素群55の画素数4、非露光画素群56の画素数3に対し高出力露光画素群55の画素数3などとしてもよい。この場合において、高出力露光画素群55の画素数が非露光画素群56の画素数の2倍となる関係になっているため、TC比率150%のときに積分光量が標準露光の積分光量と等しくなる。
図36は、実施例1における露光パターン(図35(b)に示した標準露光(Normal)、Mode1、Mode2、Mode3)の潜像電界強度分布を示すグラフである。図36の条件は、600dpiで2dotのライン(4800dpiで16dotのライン)をTC比率200%で露光した場合で求めている。
図37は、図36のグラフの電界強度ゼロ付近の拡大図である。図36と図37によれば、処理モードによって潜像電界強度が異なっていることがわかる。ここで、画像部51のエッジの急峻度合いをグラフの傾きとして計算すると、1μmあたりの平均傾きは、
Normal:4.29E+04 [V/m]
Mode1:4.36E+04 [V/m]
Mode2:4.54E+04 [V/m]
Mode3:4.83E+04 [V/m]
となる。
つまり、Mode1,Mode2,Mode3と折り返し量が大きくなるにしたがって、潜像電界強度の傾きが急峻となる。このように、本実施例に係る露光方法では、高出力露光画素群55の画素数が異なる処理モードを複数設定することで、電界強度の急峻度を変えることができるため、対象となる画像データ50の種類に対応した適切な露光処理を行うことができる。
図38は、実施例1における露光方法の処理を示すフローチャートである。露光方法を実行する画像形成装置では、画像データ50に含まれる画素のうち所定の画素を注目画素53と定め、この注目画素53が画像部51内の露光する画素であるか否かを判断する(S201)。注目画素53が露光する画素ではない場合には(S201:NO)、処理を終了する。
注目画素53が露光する画素である場合には、画像形成装置では、画像データ50内の画像部51と非画像部52とのエッジ部にあたる境界画素群54を探索する(S202)。画像形成装置では、画像データ50から境界画素群54を検出して、検出した境界画素群54の画素に格納されている画像識別情報を取得する(S203)。
画像形成装置では、検出した境界画素群54の画像識別情報に基づいて、露光方法の処理モードを決定する(S204)。
画像形成装置では、決定した処理モードに基づいて、高出力露光画素群55と非露光画素群56を特定して、境界画素群54とその付近の折り返し処理(エッジ折り返し処理)を行う(S205)。
画像形成装置では、決定した処理モードに基づいて、注目画素53の光出力値を決定して(S206)、処理を終了する。
本発明の画像形成方法の露光方法について別の実施例を説明する。
本実施例に係る露光方法では、取得される画像識別情報は、少なくとも非露光画素群56に含まれる連続する1列の画素群の数と高出力露光画素群55に含まれる連続する1列の画素群の数の和だけ境界画素群54から離れた画素に含まれている。つまり、画像識別情報は、境界画素群54の最大折り返し量(高出力露光画素群55の量)の2倍以上、画像部51のエッジから離れた画素まで含まれていることが望ましい。
例えば、非露光画素群56の一列の画素群の数が2、高出力露光画素群55の一列の画素群の数が4の場合には、最低でも6画素群だけの画像識別情報が必要である。
図39(a)は、本実施例に係る露光方法における文字・線画像の画像パターンの画像データ50の画像部51と非画像部52の一例を示す。また、図39(b)は、その画像データの画像識別情報51Tを示し、図39(c)が高出力露光画素群55と非露光画素群56とを示している。
図40(a)は、本実施例に係る露光方法における白抜け文字・線画像の画像パターンの画像データ50の画像部51と非画像部52の一例を示す。また、図40(b)は、白抜け文字・線画像の画像データの画像識別情報51Tを示し、図40(c)が高出力露光画素群55と非露光画素群56とを示している。
図41(a)は、本実施例に係る露光方法におけるティザ処理画像の画像パターンの画像データ50の画像部51と非画像部52の一例を示す。図41(b)は、ティザ処理画像の画像データ50の画像識別情報51Tを示し、図41(c)が高出力露光画素群55と非露光画素群56とを示している。
図39から図41の例において、非露光画素群56の一列の画素群の数が2、高出力露光画素群55の一列の画素群の数が4の場合には、少なくとも6画素群だけの画像識別情報51Tが必要である。また、非露光画素群56の一列の画素群の数が3、高出力露光画素群55の一列の画素群の数が3の場合には、少なくとも6画素群だけの画像識別情報51Tが必要である。
非露光画素群56の一列の画素群の数が4、高出力露光画素群55の一列の画素群の数が4の場合には、少なくとも8画素群だけの画像識別情報51Tが必要である。また、非露光画素群56の一列の画素群の数が4、高出力露光画素群55の一列の画素群の数が8の場合には、少なくとも12画素群だけの画像識別情報51Tが必要である。
図42を参照して、本発明の画像形成方法の露光方法についてさらに別の実施例を説明する。本実施例では、本発明の画像形成方法の露光方法における画像データの境界画素群の検出方法を、高出力露光画素群55の画素数と非露光画素群56の画素数の和が6の場合を例に説明する。
本実施例に係る露光方法では、画像データ50の中心にある注目画素53を基準として、図42(a)から順に図42(f)に示すような十字状のパターンマッチングを行う。
図42(a)のパターンマッチングでは、注目画素53の上下左右方向に隣り合う4画素を参照画素57として、エッジ部であるか否か判定する。検出した参照画素57からエッジが検出されれば、注目画素53からエッジとの距離が1画素と特定される。このとき、4画素の参照画素57のいずれからもエッジが検出されなければ、図42(b)のパターンマッチングを行う。
図42(b)のパターンマッチングでは、図42(a)と比較して、注目画素53から上下左右に1画素ずつ離れる方向に参照画素57を設定して、エッジ部であるか否かを判定している。検出した参照画素57からエッジが検出されれば、注目画素53からエッジとの距離が2画素と特定される。このとき、検出した参照画素57のいずれからもエッジが検出されなければ、図42(c)のパターンマッチングを行う。
図42(c)のパターンマッチングでは、図42(b)と比較して、注目画素53から上下左右に1画素ずつ離れる方向に参照画素57を設定して、エッジ部であるか否かを判定している。検出した参照画素57からエッジが検出されれば、注目画素53からエッジとの距離が3画素と特定される。このとき、検出した参照画素57のいずれからもエッジが検出されなければ、図42(d)のパターンマッチングを行う。
以上のようなパターンマッチングを、例えば図42(f)に示すように注目画素53から5画素離れた参照画素57までの所定の回数Nだけ、エッジが検出されるまで実行する。
パターンマッチングを実行する回数Nは、高出力露光画素群55と非露光画素群56のドット数の総和である。つまり、高出力露光画素群55が3ドットであり、非露光画素群56のドット数が3ドットの場合には、N=6となる。
なお、パターンマッチングをN回実行して、いずれの参照画素57からもエッジ部が検出されない場合には、注目画素53の近傍に画像部51のエッジはないと判断して、それに対応した処理を行う。
以上説明したように、本実施例に係る露光方法では、画像データの注目画素からエッジまでの距離を、上下左右4か所の近い方から順に検出することができる。
図43に示すフローチャートに基づいて、本発明の画像形成方法の露光方法のさらに別の実施例を説明する。本実施例に係る露光方法では、2次元の任意の画像データに対して、1ビットの画像識別情報に基づいて3種類の画像パターンを識別する。
本実施例に係る露光方法では、画像文字・線画像部(黒文字)、白抜け文字・線画像(白文字)、ディザ処理画像(ディザ)、対象外の画像を識別する。
画像データの光出力値が1のとき、注目画素の画像識別情報が1であれば黒文字である。注目画素の光出力値は、1のときには画像部であり、0のときは非画像部である。画像識別情報は、1のときはタグあり、0のときはタグなしである。また、Xは任意の値とする。
画像形成装置では、注目画素の光出力値が0であるか否かを判定する(S301)。注目画素の光出力値が0であれば(S301:YES)、画像識別情報の値にかかわらず注目画素は非画像部なので0を出力(S305)して処理を終了する。
注目画素の光出力値が1である場合には(S301:NO)、画像識別情報の値が1であるか否かを判断する(S302)。画像識別情報の値が1であれば(S302:YES)、注目画素は黒文字であると判断できる(S306)。
注目画素の光出力値が1であり画像識別情報の値が1ではない場合には(S302:NO)、画像形成装置では、注目画素に隣接する4画素を参照画素として特定する。画像形成装置では、参照画素のいずれか一つに(光出力値,画像識別情報)=(0,0)となる画素、つまりティザ画像であることを特定する情報が含まれているか否かを判断する(S303)。参照画素のいずれか一つに(光出力値,画像識別情報)=(0,0)となる画素が含まれていれば(S303:YES)、ディザ画像であると判断できる(S307)。
参照画素のいずれもが(光出力値,画像識別情報)=(0,0)となる画素ではない場合には(S303:NO)、参照画素のいずれか一つが(X,1)となる画素、つまり白文字であることを特定する情報が含まれているか否かを判断する(S304)。参照画素のいずれか一つに(光出力値,画像識別情報)=(X,1)となる画素が含まれていれば(S304:YES)、白文字であると判断できる(S308)。
参照画素のいずれもが(光出力値,画像識別情報)=(X,1)となる画素ではない場合には(S304:NO)、注目画素から上下左右方向に1画素ずつ離れた4画素を参照画素として、任意の回数NだけS303とS304の処理を繰り返す(S309)。
任意の回数NだけS303とS304の処理を繰り返した場合には(S309:YES)、処理を終了する。
以上のようにすることで、本実施例に係る露光方法では、1ビットの画像識別情報に基づいて3種類の画像を識別することができる。
●静電潜像計測装置の構成
次に、本実施の形態に係る露光方法により形成された静電潜像の状態を確認することができる、静電潜像計測装置の構成について説明する。
図44は、静電潜像計測装置を示す中央断面図である。
静電潜像計測装置300は、荷電粒子照射系400と、光走査装置1010と、試料台401と、検出器402と、LED403と、不図示の制御系と排出系と駆動用電源などを備えている。
荷電粒子照射系400は、真空チャンバ340内に配置されている。ここで、荷電粒子照射系400は、電子銃311と、引き出し電極312と、加速電極313と、コンデンサレンズ314と、ビームブランカ315と、仕切り板316とを有している。また、荷電粒子照射系400は、可動絞り317と、スティグメータ318と、走査レンズ319と、対物レンズ320とを有している。
なお、以下の説明において、各レンズの光軸方向をc軸方向とし、c軸方向に直交する面内における互いに直交する2つの方向をa軸方向及びb軸方向として説明する。
電子銃311は、荷電粒子ビームとしての電子ビームを発生させる。
引き出し電極312は、電子銃311の−c側に配置され、電子銃311で発生された電子ビームを制御する。
加速電極313は、引き出し電極312の−c側に配置され、電子ビームのエネルギーを制御する。
コンデンサレンズ314は、加速電極313の−c側に配置され、電子ビームを集束させる。
ビームブランカ315は、コンデンサレンズ314の−c側に配置され、電子ビームの照射をオン(ON)/オフ(OFF)させる。
仕切り板316は、ビームブランカ315の−c側に配置され、中央に開口を有している。
可動絞り317は、仕切り板316の−c側に配置され、仕切り板316の開口を通過した電子ビームのビーム径を調整する。
スティグメータ318は、可動絞り317の−c側に配置され、非点収差を補正する。
走査レンズ319は、スティグメータ318の−c側に配置され、スティグメータ318を介した電子ビームをab面内で偏向する。
対物レンズ320は、走査レンズ319の−c側に配置され、走査レンズ319を介した電子ビームを収束させる。対物レンズ320を介した電子ビームは、ビーム射出開口部321を通過して試料323の表面に照射される。
各レンズ等には、不図示の駆動用電源が接続されている。
なお、荷電粒子とは、電界や磁界の影響を受ける粒子をいう。ここで、荷電粒子を照射するビームは、電子ビームに代えて、例えばイオンビームを用いてもよい。この場合は、電子銃に代えて、液体金属イオン銃などが用いられる。
試料323は、感光体であり、導電性支持体、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、及び電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を有している。
電荷発生層は、電荷発生材料(CGM:Charge Generation Material)を含み、導電性支持体の+c側の面上に形成されている。電荷輸送層は、電荷発生層の+c側の面上に形成されている。
試料323は、表面(+c側の面)に電荷が帯電している状態で露光されると、電荷発生層の電荷発生材料によって光が吸収され、正負両極性のチャージキャリアがそれぞれ発生する。このキャリアは、電界によって、一方は電荷輸送層に、他方は導電性支持体に注入される。
電荷輸送層に注入されたキャリアは、電界によって電荷輸送層の表面にまで移動し、表面の電荷と結合して消滅する。これにより、試料323の表面(+c側の面)には、電荷分布、すなわち、静電潜像が形成される。
光走査装置1010は、光源、カップリングレンズ、開口板、シリンドリカルレンズ、ポリゴンミラー、走査光学系などを有している。また、光走査装置1010は、ポリゴンミラーの回転軸に平行な方向に関して光を走査させるための走査機構(不図示)も有している。
光走査装置1010から出射された光は、反射ミラー372及び窓ガラス368を介して試料323の表面を照射する。
試料323の表面における光走査装置1010から射出される光の照射位置は、ポリゴンミラーでの偏向及び走査機構での偏向によって、c軸方向に直交する平面上の互いに直交する2つの方向に沿って変化する。このとき、ポリゴンミラーでの偏向による照射位置の変化方向は主走査方向であり、走査機構での偏向による照射位置の変化方向は副走査方向である。ここでは、a軸方向が主走査方向、b軸方向が副走査方向となるように設定されている。
このように、静電潜像計測装置300は、光走査装置1010から射出される光によって試料323の表面を2次元的に走査することができる。すなわち、静電潜像計測装置300は、試料323の表面に2次元的な静電潜像を形成することが可能である。
ところで、光走査装置1010は、ポリゴンミラーの駆動モータにより生じる振動や電磁波が電子ビームの軌道に影響を与えないように、真空チャンバ340の外に設けられている。これにより、測定結果に及ぼす外乱の影響を抑制することができる。
検出器402は、試料323の近傍に配置され、試料323からの2次電子を検出する。
LED403は、試料323の近傍に配置され、試料323を照明する光を射出する。LED403は、測定後に試料323の表面に残留している電荷を消去するために用いられる。
なお、走査光学系を保持する光学ハウジングは、走査光学系全体をカバーで覆い、真空チャンバ内部へ入射する外光(有害光)を遮光するようにしてもよい。
走査光学系において、走査レンズは、fθ特性を有しており、光偏光器が一定速度で回転しているときに、光ビームが像面に対して略等速に移動する構成となっている。また、走査光学系において、ビームスポット径も略一定に走査することができるように構成されている。
静電潜像計測装置300では、走査光学系が真空チャンバに対して離れて配置されるので、ポリゴンスキャナ等の光偏向器を駆動する際に発生する振動が直接真空チャンバ340に伝播されることによる影響は少ない。
なお、走査光学系を保持する不図示の構造体にダンパなどの防振手段を設けることで、さらに高い防振効果を得ることができる。
走査光学系を設けることにより、静電潜像計測装置300では、感光体の母線方向に対して、ラインパターンを含めた任意の潜像パターンを形成することができる。
なお、所定の位置に潜像パターンを形成するために、光偏向手段からの走査ビームを検知する同期検知センサ26を有してもよい。
また、試料の形状は、平面であっても曲面であってもよい。
●静電潜像計測の方法
次に、静電潜像計測の方法について説明する。
図45は、加速電圧と帯電との関係を示す模式図である。まず、静電潜像計測にあたり、静電潜像計測装置300では、感光体の試料323に電子ビームを照射させる。
図45に示すように、加速電極313に印加される電圧である加速電圧|Vacc|として、試料323での2次電子放出比が1となる電圧よりも高い電圧が設定される。このように加速電圧を設定することにより、試料323では、入射電子の量が放出電子の量よりも上回るため電子が試料323に蓄積され、チャージアップを起こす。この結果、静電潜像計測装置300では、試料323の表面をマイナス電荷で一様に帯電させることができる。
図46は、加速電圧と帯電電位との関係を示すグラフである。同図に示すように、加速電圧と帯電電位との間には、一定の関係がある。このため、静電潜像計測装置300では、加速電圧と照射時間を適切に設定することにより、試料323の表面に、画像形成装置1000における感光体ドラム1030と同様な帯電電位を形成することができる。
なお、照射電流の大きいほうが、短時間で目的の帯電電位に到達することができるため、ここでは照射電流を数nAとしている。
その後、静電潜像計測装置300では、静電潜像が観察できるように、試料323における入射電子量を1/100倍〜1/1000倍にする。
静電潜像計測装置300では、光走査装置500を制御して、試料323の表面を2次元的に光走査し、試料323に静電潜像を形成する。なお、光走査装置500は、試料323の表面に所望のビーム径及びビームプロファイルの光スポットが形成されるように調整されている。
ところで、静電潜像の形成に必要な露光エネルギーは、試料の感度特性によって決まるが、通常、2〜10mJ/m2程度である。なお、感度が低い試料では、必要な露光エネルギーは10mJ/m2以上になる場合がある。つまり、帯電電位や必要な露光エネルギーは、試料の感光特性やプロセス条件に合わせて設定される。ここで、静電潜像計測装置300の露光条件は、画像形成装置1000に合わせた露光条件と同様に設定されている。
そこで、このような場合には、静電場の環境や電子軌道をあらかじめ計算しておき、その計算結果に基づいて検出結果を補正することにより、静電潜像のプロファイルを高精度に求めることができる。
以上説明したように、静電潜像計測装置300を用いることにより、静電潜像における電荷分布、表面電位分布、電界強度分布、及び試料表面に直交する方向に関する電界強度を、それぞれ高精度に求めることができる。
●効果●
以上説明したように、本実施の形態に係る露光方法によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施の形態に係る露光方法によれば、短い時間に強い光出力で露光する、時間集中露光(TC露光)を行うことで、空間集中型露光(ビームの小径化)と同等の効果を得ることができる。本実施の形態に係る露光方法によれば、面積が狭く深さのある静電潜像を形成することができるため、高解像な画像を形成することができる。
また、本実施の形態に係る露光方法によれば、画像や環境の条件に応じて露光パターンなどの条件を使い分けることができる。
また、本実施の形態に係る露光方法は、入力された画像データの内側(中心部)に露光パターンを集中させて、標準露光より強い光出力値で露光する。これにより、本実施の形態に係る露光方法によれば、微細な画像パターンであっても、所望の画像濃度で目標画像に忠実な画像を出力することができる。
また、本実施の形態に係る露光方法によれば、画像部と非画像部の境界となる画素を高出力露光画素群として露光部画素の光出力値を高めることにより、様々な画像パターンに対して時間集中露光を適用することができる。
また、本実施の形態に係る露光方法によれば、高出力露光画素群の光出力値が、所定の最大光出力値を越える場合には、隣接する画像部画素に光出力を分散させて露光する。これにより、本実施の形態に係る露光方法によれば、最大光出力値を高く設定できない場合であっても、画像濃度を維持し、高画質化を実現することができる。
また、本実施の形態に係る露光方法は、画像部と非画像部との境界にある画像部の画素を非露光部に変換し、同時に、非露光部に匹敵する光出力値を高出力露光画素群に隣接する画像部の画素に加算して露光する。このようにすることで、本実施の形態に係る露光方法によれば、文字画像、反転文字画像、ディザ、線画像など、様々な画像パターンに時間集中露光を適用することができる。
また、本実施の形態に係る露光方法によれば、高出力露光画素群の光出力値が最大光出力値を超える場合には、光出力値を加算しないため、例外処理を行うことが不要となり、簡易な処理で様々な画像に時間集中露光を適用することができる。
また、本実施の形態に係る露光方法によれば、高出力露光画素群に光出力値を加算する際に、その高出力露光画素群がすでに光出力値を加算した後である場合には、加算可能な画素数だけ処理を行うため、最適な条件で時間集中露光を行うことができる。
また、本実施の形態に係る露光方法は、画像処理回路、あるいはタグビットなどコントローラ側から提供される情報に基づいて、光源変調データ生成回路407が画像の状態を認識し、それぞれの画像に応じて最適な折り返し画素数を設定する。これにより、本実施の形態に係る露光方法によれば、画像形成装置の能力を最大限発揮する最良の画像を提供することが可能となる。
特に、本実施の形態に係る露光方法によれば、ディザ部のように、画像パターンが隣り合い、潜像電界が小さくなりがちな領域が多い箇所について、弱電界領域を低減させ、ドット再現性を向上させることができる。
また、本実施の形態に係る露光方法によれば、静電潜像段階において画像の画質を改善するため、微小な文字画像、特に反転文字画像を安定して高画質を実現することができる。
また、本実施の形態に係る露光方法によれば、簡易な方法であるため、様々な画像に対して高速で処理することができる。
さらに、本実施の形態に係る露光方法によれば、PM+PWM変調を利用して、最大光出力値を意図的に強めることにより、標準露光と時間集中露光との積分光量を一致させることができるため、深い潜像を形成して解像力を高めることができる。
また、本実施の形態に係る画像形成装置によれば、本実施の形態に係る露光方法を現像して可視化することにより、高密度で高画質な画像形成装置を提供することができる。
本実施の形態に係る画像形成装置は、特にVCSELなどのマルチビーム走査光学系を搭載した画像形成装置に好適である。