以下、本発明に係る画像形成方法、および画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
●画像形成装置●
まず、本発明に係る画像形成装置について説明する。
本発明に係る画像形成装置は、例えばレーザプリンタ1000である。
図1に示すレーザプリンタ1000は、感光体ドラム1030の周りに、帯電装置1031、光走査装置1010、現像装置1130、転写装置1033およびクリーニングユニット1035が、感光体ドラム1030の回転方向に沿って上記の順に配置されている。
帯電装置1031は、帯電プロセスを実行する。光走査装置1010は、露光プロセスを実行する。現像装置1130は、現像プロセスを実行する。転写装置1033は、転写プロセスを実行する。クリーニングユニット1035は、電子写真プロセスを実行する。
また、転写装置1033とクリーニングユニット1035との間には、除電ユニット1034が配置されている。
現像装置1130は、トナーカートリッジ1036と、トナーカートリッジ1036から供給されるトナーを感光体ドラム1030の表面に付着させて感光体ドラム1030面の潜像をトナーによって可視化する現像ローラ1032を有している。
転写装置1033は、給紙トレイ1038から給紙コロ1037によって引き出される記録紙1040に、感光体ドラム1030面のトナー像を転写する。記録紙1040は、レジストローラ1039により先端が位置決めされ、感光体ドラム1030面のトナー像に同期して、定着装置1041に搬送される。定着装置1041でトナー像が定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042により排紙トレイ1043に送り出される。
また、レーザプリンタ1000は、通信制御装置1050と、プリンタ制御装置1060とを有する。
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコンなどの情報処理装置)との双方向の通信を制御する。
プリンタ制御装置1060は、不図示のCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)とを有する。また、プリンタ制御装置1060は、RAM(Random Access Memory)と、A/D(Analog/Digital)変換器とを有する。プリンタ制御装置1060は、上位装置からの要求に応じて各部を統括的に制御するとともに、上位装置からの画像情報を光走査装置1010に送る。
ROMには、CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及びこのプログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されている。
RAMは、CPUの作業用の一時書き込み可能なメモリである。
A/D変換器は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。
感光体ドラム1030は、円柱状の部材の潜像担持体であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。感光体ドラム1030は、不図示の駆動機構により図1における矢印方向に回転される。
帯電装置1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。帯電装置1031には、例えばオゾン発生の少ない接触式の帯電ローラや、コロナ放電を利用するコロナチャージャを用いることができる。
図2に示すように、帯電装置1031は、コロトロン型帯電装置であってもよい。
図3に示すように、帯電装置1031は、スコロトロン型帯電装置であってもよい。また、帯電装置1031は、不図示のローラ型帯電装置であってもよい。
以上説明したレーザプリンタ1000の構成要素は、プリンタ筐体1044の内部の所定位置に収容されている。
図1に戻り、複写機やレーザプリンタといった電子写真方式の画像形成装置において出力画像を得るためのプロセスを説明する。
光走査装置1010は、帯電装置1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、プリンタ制御装置1060からの画像情報に基づいて変調された光束により走査して露光する。光走査装置1010は、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した静電潜像を形成する。
光走査装置1010により形成された静電潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像装置1130の方向に移動する。なお、光走査装置1010の詳細については後述する。
トナーカートリッジ1036にはトナー(現像剤)が格納されている。トナーは、トナーカートリッジ1036から現像装置1130に供給される。
現像装置1130は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて、静電潜像を顕像化させる。トナーが付着した像(以下「トナー像」ともいう。)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写装置1033の方向に移動する。
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されている。
給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚ずつ取り出す。記録紙1040は、感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写装置1033との間隙に向けて、給紙トレイ1038から送り出される。
転写装置1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。トナー像が転写された記録紙1040は、定着装置1041に送られる。
定着装置1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここでトナーが定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次積層され、印刷物が製造される。
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、帯電装置1031に対向する位置に戻る。
本発明に係る画像形成装置において、帯電装置と、露光装置としての光走査装置と、感光体と、画像パターンを光出力に変換するための画像処理部とにより、静電潜像が形成される。
このように、電子写真方式では、帯電工程において潜像担持体の一つである感光体を均一に帯電させる。また、電子写真方式では、露光工程において感光体に光を照射して部分的に電荷を逃がす。このようにすることで、電子写真方式では、感光体に静電潜像を形成することができる。
●光走査装置の構成
次に、光走査装置1010の構成について説明する。
図4に示すように、光走査装置1010は、光源11と、コリメートレンズ12と、シリンドリカルレンズ13と、ミラー14と、ポリゴンミラー15と、第1走査レンズ21とを備える。また、光走査装置1010は、第2走査レンズ22と、ミラー24と、同期検知センサ26と、走査制御装置(不図示)とを備える。
光走査装置1010は、図38に示す光学ハウジング381の所定位置に組み付けられている。
なお、以下の説明において、感光体ドラム1030の長手方向(回転軸方向)に沿った方向をXYZ3次元直交座標系のY軸方向とし、ポリゴンミラー15の回転軸に沿った方向をZ軸方向とし、Y軸とZ軸の双方に垂直な方向をX軸方向とする。
また、以下の説明において、各光学部材の主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」とし、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」とする。
光源11には、半導体レーザ(LD:Laser Diode)や、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などを用いることができる。
図5において、光源11Aは、マルチビーム光源として、4個の半導体レーザ11A−kが配列されて構成される半導体レーザアレイである。また、光源11Aは、コリメートレンズ12の光軸方向に対して垂直に配置されている。
図6において、光源11Bは、発光部がY軸方向とZ軸方向とを含む平面上に配置された、例えば波長780nmの垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)である。
各発光部は、全ての発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときに、発光部間隔が等しくなるように配置されている。「発光部間隔」とは、2つの発光部の中心間距離をいう。
光源11Bは、複数の発光部を有する。例えば、光源11Bは、水平方向(主走査方向、Y軸方向)に3個、垂直方向(副走査方向、Z軸方向)に4個、計12個の発光部11B−kを有する。
光源11Bは、光走査装置1010に適用する場合に、一つの走査線上を水平方向に配置した3つの発光部により走査することで、垂直方向の4本の走査線を同時に走査することもできる。
図4に戻り、コリメートレンズ12は、光源11から射出された光の光路上に配置され、光を平行光または略平行光に屈折する。
シリンドリカルレンズ13は、ポリゴンミラー15の偏向反射面近傍に、コリメートレンズ12を通過した光をZ軸方向(副走査方向)にのみ集束する。
シリンドリカルレンズ13は、ポリゴンミラー15の反射面近傍に、主走査方向(Y軸方向)に長い線像として光源11から出射された光19を結像させる。
ミラー14は、シリンドリカルレンズ13を通過して結像した光をポリゴンミラー15に向けて反射する。
なお、光源11とポリゴンミラー15との間の光路上に配置されている光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。
ポリゴンミラー15は、感光体ドラム1030の長手方向(回転軸方向)に直交する回転軸まわりに回転する多面鏡である。ポリゴンミラー15の各鏡面は、偏向反射面である。
ポリゴンミラー15は、不図示の駆動用IC(Integrated Circuit)が不図示のモータ部に適切なクロックを与えることで、所望の速度で等速回転する。
ポリゴンミラー15は、モータ部により矢印方向に等速回転されると、偏向反射面で反射された複数の光ビームが、それぞれ偏向ビームとなって等角速度的に偏向される。
第1走査レンズ21と、第2走査レンズ22と、ミラー24と、同期検知センサ26は、走査光学系20を構成する。走査光学系20は、ポリゴンミラー15で偏向された光の光路上に配置される。
第1走査レンズ21は、ポリゴンミラー15で偏向された光の光路上に配置されている。
第2走査レンズ22は、第1走査レンズ21を介した光の光路上に配置されている。
ミラー24は、長尺平面鏡であり、第2走査レンズ22を介した光の光路を、感光体ドラム1030に向かう方向に折り曲げる。
すなわち、ポリゴンミラー15で偏向された光は、第1走査レンズ21と、第2走査レンズ22とを介して感光体ドラム1030に照射され、感光体ドラム1030表面に光スポットを形成する。
感光体ドラム1030表面の光スポットは、ポリゴンミラー15の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に沿って移動する。感光体ドラム1030表面上の光スポットの移動方向が「主走査方向」であり、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。
同期検知センサ26は、ポリゴンミラー15からの光を受光し、受光光量に応じた信号(光電変換信号)を走査制御装置に出力する。同期検知センサ26の出力信号は、「同期検知信号」ともいう。
光走査装置1010では、ポリゴンミラー15の1つの偏向反射面による走査で感光体ドラム1030の被走査面上の複数のラインを同時に走査する。各発光部の発光信号を制御する画像処理部7内のバッファメモリには、各発光部に対応する1ライン分の印字データが蓄えられている。
印字データは、ポリゴンミラー15のそれぞれの偏向反射面ごとに読み出され、潜像担持体としての感光体ドラム1030上の走査線上で印字データに対応して光ビームが点滅し、走査線にしたがって静電潜像が形成される。
図7に示すように、画像処理部7は、画像処理ユニット(IPU:Image Processing Unit)101と、コントローラ部102と、メモリ部103と、光書込出力部104と、スキャナ部105と、を備える。
コントローラ部102は、IPU101から画像データを受け取り、画像データに対して回転・リピート・集約・圧縮伸張などの処理を行う。コントローラ部102は、処理後の画像データを再度IPU101に出力する。
メモリ部103には、種々のデータを記憶して、必要に応じて呼び出すためのルックアップテーブルを用意しておく。
光書込出力部104は、制御ドライバにより点灯データに応じた光源11の光変調を行い、感光体ドラム1030に静電潜像を形成する。
光書込出力部104は、後述する階調処理部101fからの入力信号に基づいて、後述する時間集中露光による露光パターンを決定する。光書込出力部104は、露光パターンに基づいて静電潜像を形成する。
光書込出力部104により露光パターンを決定することで、画像処理ユニット101による後述する種々の画像処理後に露光パターンを決定することができる。すなわち、後述する時間集中露光により効果的な露光パターンを決定することができる。
形成された静電潜像は、上述の現像装置1130、転写装置1033などにより、記録紙に画像を形成する。
スキャナ部105は、画像を読み込み、この画像に基づいてRGB(Red Green Blue)データなどの画像データを生成する。
図8に示すように、画像処理ユニット101は、濃度変換部101aと、フィルタ部101bと、色補正部101cと、セレクタ部101dと、階調補正部101eと、階調処理部101fと、を備えている。
濃度変換部101aは、ルックアップテーブルを用いてスキャナ部105からのRGBの画像データを濃度データに変換して、フィルタ部101bに出力する。
フィルタ部101bは、濃度変換部101aから入力される濃度データに対して、平滑化処理やエッジ強調処理等の画像補正処理を施して、色補正部101cに出力する。
色補正部101cは、画像補正処理が施された濃度データに色補正(マスキング)処理を施す。
セレクタ部101dは、画像処理ユニット101の制御下で、色補正部101cから入力される画像データに対して、C(Cyan)、M(Magenta)、Y(Yellow)、K(Key Plate)のいずれかを選択する。セレクタ部101dは、選択したC、Y、M、Kのデータを階調補正部101eに出力する。
階調補正部101eには、セレクタ部101dから入力されるC、M、Y、Kのデータが予め格納されている。階調補正部101eは、入力データに対して線形な特性が得られるγカーブを設定する。
階調処理部101fは、階調補正部101eから入力される画像データに対してディザ処理等の階調処理を施して、信号を光書込出力部104に出力する。
●光書込出力部について
光書込出力部104は、光源を駆動して制御する。光書込出力部104は、例えばLDを駆動する制御装置である。
図9に示すように、光書込出力部104は、基準クロック生成回路422、画素クロック生成回路425、光源変調データ生成回路407、光源選択回路414、書込みタイミング信号生成回路415および同期タイミング信号発生回路417を備える。
なお、図9における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
基準クロック生成回路422は、光書込出力部104全体の基準となる高周波のクロック信号を生成する。
画素クロック生成回路425は、主にPLL(Phase Locked Loop)回路からなる。画素クロック生成回路425は、同期信号s19と基準クロック生成回路422からの高周波クロック信号とに基づいて、画素クロック信号を生成する。
画素クロック信号は、周波数が高周波クロック信号と同一であり、位相が同期信号s19と一致している。
画素クロック生成回路425は、画素クロック信号に画像データを同期させることで、走査ごとの書込み位置を制御することができる。
画素クロック信号は、駆動情報の1つとして光源駆動部410に供給されるとともに、光源変調データ生成回路407にも供給される。光源変調データ生成回路407に供給された画素クロック信号は、書込みデータs16のクロック信号として光源駆動部410に供給される。
光源選択回路414は、光源が複数ある場合に用いる回路であり、選択された発光部を指定する信号を出力する。この光源選択回路414の出力信号s14は、駆動情報の1つとして光源駆動部410に供給される。
●露光方法●
次に、本発明に係る画像形成方法の実施の形態における、露光方法について説明する。
本実施の形態に係る画像形成方法において、潜像形成に用いる光出力波形は、ライン画像やベタ画像を含む画像部に対して、目標とする画像濃度を得るのに必要な光出力値で所定時間だけ感光体を露光させる波形である。
なお、画像部とは、複数の画素から構成され、画像パターンにおいてトナーを付着させて画像を形成するための部分である。非画像部とは、画像パターンにおいてトナーを付着させず画像を形成しない部分である。
以下の説明において、目標とする画像濃度を「目標画像濃度」という。以下の説明において、目標画像濃度を得るために必要な所定光出力値を「目標露光出力値」という。目標画像濃度を得るために目標露光出力値で画像部の画素全体を露光させる所定時間を、「目標露光時間」という。
以下の説明において、目標露光出力値で目標露光時間だけ露光させる露光方法を、「標準露光」という。本実施の形態において、ベタ画像(solid image)とは、線画像に比較して大面積の画像部をいう。
以下の説明において、目標露光出力値より強い光出力値(第1光出力値)で目標露光時間より短い露光時間だけ感光体を露光させることを、「時間集中露光」(TC(Time Concentration)露光ともいう。)という。
図10に示すように、標準露光による露光方法(以下「露光方法1」という。)は、ライン画像やベタ画像を含む1画素(ドット)の画像部に対して、上述の通り目標露光出力値で目標露光時間だけ感光体を露光させる方法である。ここで、横軸は時間、縦軸は光量を示す。目標露光出力値を100%の光出力値とし、目標露光時間をDuty比100%とする。
図11に示すように、本実施の形態におけるTC露光による露光方法(以下「露光方法2」という。)は、目標露光出力値の200%の光出力値で目標露光時間に対してDuty比50%で感光体を露光させる。画像部の幅を1とすると、露光させる区間の幅は4/8画素である。
図12に示すように、本実施の形態におけるTC露光による露光方法(以下「露光方法3」という。)は、目標露光出力値の400%の光出力値で目標露光時間に対してDuty比25%で感光体を露光させる。画像部の幅を1とすると、露光させる区間の幅は2/8画素である。
図13は、本発明に係る画像形成方法のさらに別の実施の形態を示す模式図である。この露光方法(以下「露光方法4」という。)は、目標露光出力値の800%の光出力値で目標露光時間に対してDuty比12.5%で感光体を露光させる。画像部の幅を1とすると、露光させる区間の幅は1/8画素である。
以上説明した露光方法2〜4では、露光方法1と比較してパルス幅が狭い。つまり、露光方法2〜4では、露光方法1と同じ光量で露光させると形成される潜像が小さくなるため、潜像形成時の積分光量が同等となるようにパルス幅に応じて光量を制御している。
つまり、TC露光による露光方法は、標準露光による露光方法と比較して、短いパルス幅で強い光量により露光が行われる。
以上の説明では、露光方法2〜4は、いずれも積分光量が一定となるように光出力値を設定しているが、本発明に係る画像形成方法における光出力値は、これに限定されるものではない。
図14は、露光に用いるビームスポット径が主走査方向に70μm×副走査方向に90μmである場合の縦方向の潜像MTFの測定結果を示すグラフである。横軸は空間周波数、縦軸は潜像MTFを示す。露光方法2〜4は、露光方法1と比較して高周波数帯域まで潜像MTFが高い値を示している。
露光方法2〜4は、露光方法1と比較してより小径の潜像まで安定して形成することができる。特に、露光方法2〜4のうち、パルス幅の最も短い露光方法4は、小径の潜像を安定して形成することに適している。
また、露光方法2〜4は、露光方法1と比較して短いパルス幅かつ強い光量での露光を行うため、潜像解像力が向上する。つまり、露光方法2〜4によれば、従来の画像形成方法で用いる露光方法1と比較して、小径の潜像を安定して形成することができる。
本発明に係る画像形成方法におけるTC露光による露光方法は、高周波領域、すなわち小径での潜像安定性を重要視する場合に、小径のビームスポット径で従来の露光方法により露光した場合に対する優位性がある。ここで、出力画像の相違による最適なビームスポット径は、出力画像として要求される最大空間周波数での潜像MTFによって決定される。
TC露光による露光方法は、潜像電界ベクトルの幅が、他の手段に比べて狭いことが特徴である。すなわち、潜像電界ベクトルが増加する上に解像力が向上することを意味する。
また、本発明に係る画像形成方法では、パワー変調やパルス幅変調で光源を制御して露光した場合と異なり、積分光量が目標露光出力値で露光した場合と同等である。このため、本発明に係る画像形成方法では、トナーの付着量や全体の画像濃度が目標露光出力値で露光した場合と実質的に変わりがない。
以上のように、ベタ画像濃度を形成するときの目標露光出力値P0よりも大きな光出力値P1を照射することができるPM(Pulse Modulation)変調の場合において、光出力値の比率TCRを
TCR=P1/P0
と定義する。
この場合に、本実施の形態における露光方法は、縦ラインの幅を1/TCRに圧縮して、ベタ画像濃度時の目標露光出力値より強い光出力値で露光する。このようにすることで、本実施の形態における露光方法によれば、MTF解像度の高い画像を形成することができる。
本実施の形態に係る露光方法は、画像パターン内の画像を形成する画像部の狭い範囲を強い光で集中して露光させる。このようにすることで、本実施の形態に係る露光方法は、ビーム径サイズより小さい(ビーム径のサイズの影響が無視できない)微小サイズの出力画像パターンの忠実性を向上させるとともに、画像パターンを所望の画像濃度に調整することができる。
すなわち、本実施の形態に係る露光方法によれば、微小サイズの画像パターン形成と所望の画像濃度とを両立した画像を形成することができる。
また、本実施の形態に係る露光方法は、エッジ検出や文字情報認識など特別な処理を行わずに、任意の画像パターンに容易に適用することができる。
したがって、本実施の形態に係る露光方法によれば、画像データを光源変調データに変換する際にコンピュータからオブジェクト情報を取得することができない場合であっても画像パターンを生成することができる。
また、本実施の形態に係る露光方法によれば、画像データと光源変調データとを文字ごとに対応させることなく微小サイズの画像パターン形成と所望の画像濃度とを両立した画像を形成することができる
また、本実施の形態に係る露光方法は、PM変調とPWM(Pulse Width Modulation)変調とを組み合わせたPM+PWM変調を利用する。そして、本実施の形態に係る露光方法によれば、最大光出力を意図的に強めたTC露光を用いることにより、露光時の画像パターンの積分光量を標準露光と同じ値にすることもできる。
ここで、本実施の形態に係る露光方法によれば、深い潜像を形成することで画像パターンの画像濃度を変えずに画像パターンの解像力を高めることができる。
本実施の形態に係る露光方法は、画像パターンに含まれる画像部と非画像部との境界にある画像部内の1以上の画素(画素群)が非露光の画素となるように光出力値を設定する。ここで、画像パターンに含まれる画像部と非画像部との境界にある画像部内の非露光の画素群を、非露光画素群という。また、本実施の形態に係る露光方法は、非露光画素群に隣り合う(非露光画素群の近傍の)画素群への光出力値を、非露光画素群への光出力値を加算した光出力値で露光する。
すなわち、高出力露光画素に露光される光の光出力値から所定の光出力値を引いた値の総和は、所定の光出力値から非露光画素に露光される光の光出力値を引いた値の総和と等しい。
このようにすることで、潜像MTF解像度の高い露光パターンを形成することができる。
●ライン画像の形成例
次に、本実施の形態における露光方法により、ライン画像の露光パターンを決定する例について説明する。露光パターンとは、画像データに対応する画素1ドット毎における露光の光出力値のパターンである。
なお、以下の説明において、図中のY軸方向(主走査方向)を横方向とし、Z軸方向(副走査方向)を縦方向とする。
図15(a)は、標準露光によるライン画像の露光パターン400aである。露光パターン400aは、露光画素群411と非露光画素群412とからなる。露光画素群411は、標準露光される画素群である。非露光画素群412は、露光されない画素群である。露光画素群411は、ライン画像の画像部と一致する。非露光画素群412は、ライン画像の非画像部と一致する。
図15(b)は、ライン画像の画像部と非画像部との境界の1ドットを高出力露光画素群443とする露光パターン400bである。また、図15(c)は、ライン画像の画像部と非画像部との境界の2ドットを高出力露光画素群443とする露光パターン400cである。さらに、図15(d)は、ライン画像の画像部と非画像部との境界の3ドットを高出力露光画素群443とする露光パターン400dである。
高出力露光画素群443は、第1光出力値でTC露光させる画素群である。
図15(a)〜(d)に示す露光パターン400a〜400dは、いずれも最小画素が4800dpi、空間周波数が6c/mmである。露光パターン400a,400b,400c,400dは、8x8ドット(600dpi相当)ごとに縦ライン(Z軸方向のライン)の太線を形成する。
つまり、図15(a)に示す露光パターン400aには、600dpiの2本の縦ラインからなる露光画素群411と非露光画素群412とが含まれている。ここで、1画素の大きさは約5μmである。
本実施の形態に係る露光方法は、露光パターン400bにおいて、画像部と非画像部412との境界にある画素群(例えば、Y軸方向の1画素をZ軸方向に1列に並べた複数の画像)が非露光部441となるように光出力値を設定する。
そして、画像部と非画像部との境界の画素群(例えば、Y軸方向の1画素をZ軸方向の1列に並べた複数の画素群)を、高出力露光画素群443として設定する。
そして、TC露光の標準露光に対する変倍率が2であれば、高出力露光画素群443は2倍の光出力で露光する。この時、非露光部441は露光されないため、露光パターン400b全体の積分光量は露光パターン400aと同一である。
なお、非露光画素群441および高出力露光画素群443の画素数は、主走査方向または副走査方向において任意の画素数に設定することができる。
露光パターン400cは、非露光画素群441と高出力露光画素群443のY軸方向の幅がそれぞれ2画素である。また、露光パターン400dは、非露光画素群441と高出力露光画素群443のY軸方向の幅がそれぞれ3画素となるように設定されている。
図16において、横軸を図15におけるY軸方向のドット、縦軸をドットごとの光出力値を示す。また、ドット内の数値は、光出力値の倍数を示す。すなわち、“0”は非露光画素(光出力値が0である)、“1”は露光画素、“2”は光出力値が露光画素の2倍である高出力露光画素、“x”は任意の画素を示す。
図16(a)に示すように、標準露光による露光パターン400aは、Y軸方向において全てのドットの光出力値の倍数が1であり一律の光出力値で露光される。
一方、図16(b)に示すように、TC露光による露光パターン400bは、画像部と非画像部との境界にある画素(境界画素)が非露光画素となるため、非露光画素の光出力値の倍数が0(光出力値が0)である。また、露光パターン400bは、画像部と非画像部との境界の画素が高出力露光画素群となるため、高出力露光画素群の光出力値の倍数が2である。
図16(c)に示すように、標準露光による光出力値の波形(a)とTC露光による光出力値の波形(b)とを比較すると、標準露光による波形(a)の両端の画素がTC露光による波形(b)では非露光画素となる。
そして、標準露光による波形(a)の非露光画素群の光出力値がTC露光による波形(b)の両端部に相当する高出力露光画素群の光出力値に加算されている。つまり、高出力露光画素群は、画像パターンの端部の光出力値をあたかも内側に折り返して嵩上げするような処理である。
図17は、標準露光による画像パターンの潜像電界強度分布と、2ドット分を非露光画素群と高出力露光画素群とに置き換えたTC露光による画像パターンの潜像電界強度分布とを示す。
標準露光の潜像電界強度分布とTC露光の潜像電界強度分布とを比較すると、TC露光の方が電界強度のピーク部の幅が狭く電界強度の変化の傾きが大きい(エッジが急峻である)ため、より鮮明な画像形成が可能であることがわかる。
ここで、1ドットのみ加算する処理を1ドット処理モードとし、2ドット加算する処理を2ドット処理モードとする。以降、他のドットに光出力値を加算するドット数に応じて、異なるモード名で呼ぶものとする。上記は、2ドット処理モードの例である。
●画像データおよび照合パターンの照合
ここで、TC露光による露光パターンの決定フローについて説明する。画像形成装置1000は、光書込出力部104にあらかじめ記憶された複数の照合パターンを画像データと照合することにより、TC露光による露光パターン(以下、「TC露光パターン」という。)を決定する。
図18に示すように、照合パターン200は、それぞれの画素に0又は1の2値の値を持つ配列である。照合パターンは、例えば縦11画素、横11画素の正方形である。照合パターン200の中央にある画素は、注目位置210である。
照合パターン200は、画像データと照合される。照合パターン200の配列と画像データの配列とを照合し、画像データのうち照合パターン200と同一の配列を探索する。画像データのうち照合パターン200と同一の配列が検出されたとき、注目位置210に相当する画像データの画素、すなわち注目画素の露光強度が決定される。
なお、照合パターン200の画素数は、上記に限られるものではない。また、図18においては、照合パターン200は縦横に複数の画素を持つ2次元配列としたが、1次元配列でもよい。
照合パターン200の画素数は、多いほど様々なパターンを抽出できるため、より精密に露光強度を決定することができる。しかし、照合パターン200の画素数が多いほどゲート数の増加や応答性の低下につながるため、適宜設定するとよい。
図19は、照合パターン201a〜201dにより注目位置210a〜210dに対応する画像データの注目画素211について、2ドット処理モードでTC露光の露光パターンを決定する様子を示す。
照合パターン201a〜201dは、左から「01111×」の1次元配列である。なお、「×」は、任意の値であることを示す。
照合パターン201aの注目位置210aは、左から5つ目の画素である。照合パターン201bの注目位置210bは、左から4つ目の画素である。照合パターン201cの注目位置210cは、左から3つ目の画素である。照合パターン201dの注目位置210dは、左から2つ目の画素である。
図19における画像データは、照合パターン201a〜dと同一の配列を有するとする。
照合パターン201aが検出されたとき、注目画素211aの露光強度は「2」に決定される。照合パターン201bが検出されたとき、注目画素211bの露光強度は「2」に決定される。
照合パターン201cが検出されたとき、注目画素211cの露光強度は「0」に決定される。照合パターン201dが検出されたとき、注目画素211dの露光強度は「0」に決定される。
照合パターン201a〜201dが画像データに照合されることにより、この画像データに対応するTC露光パターンは「00022x」に決定される。
この処理は、画像データの左端が非露光画素となり、非露光部に隣接しTC露光による露光画素の端部が高出力露光画素群となっていることから「左折り返し処理」ともいう。
図20は、上述のような露光パターンを決定する処理を2次元画像に適用する模式図を示す。図20(a)において、画像データ500aは、全体が一律の光出力値で露光される画像部であり、画像部の枠外が非画像部である。
図20(b)は、画像データ500aに照合パターン201a〜201dを照合した後の露光パターン500bを示す。図20(c)は、照合パターン201a〜201dの左右を反転させた照合パターン201a’〜201d’を露光パターン500bに照合した後の露光パターン500cを示す。
この処理は、画像データの右端が非露光画素となり、非露光部に隣接しTC露光による露光画素の右端部が高出力露光画素群となっていることから「右折り返し処理」ともいう。
図20(d)は、照合パターン201a〜201dを90度回転させた照合パターンを露光パターン500cに照合した後の露光パターン500dを示す。回転させた照合パターン201ar〜204drは、すなわち上から「01111×」となっている。
この処理は、画像データの上端が非露光画素となり、非露光部に隣接しTC露光による露光画素の端部が高出力露光画素群となっていることから「上折り返し処理」ともいう。
このとき、注目画素211ar〜211drの露光強度が最大光出力であるとき、露光強度は当該照合パターンの照合前の強度をそのまま使用する。すなわち、領域500d−1および領域500d−2の画素の光出力値は、照合パターン201ar〜204drの照合の前において「2」である。
ここで、最大光出力が「2」であるとすると、領域500d−1および領域500d−2の画素の光出力値は、照合パターン201ar〜204drの照合の後も「2」である。
なお、露光パターン500dは元の画像データと形状が異なり、上下に領域500d−1および領域500d−2が形成する突部がある。しかし、端部の露光パターンの大きさはビームサイズに比べて十分小さい。したがって、領域500d−1および領域500d−2に対応する画像が形成されることはない。
図20(e)は、照合パターン201ar〜204drの上下を反転させた照合パターン201ar’〜204dr’を露光パターン500dに照合した後の露光パターン500eを示す。この場合も、注目画素211ar’〜211dr’の露光強度が最大光出力であるとき、露光強度は当該照合パターンの照合前の強度をそのまま使用する。
この処理は、画像データの下端が非露光画素となり、非露光部に隣接しTC露光による露光画素の下端部が高出力露光画素群となっていることから「下折り返し処理」ともいう。
図21は、図20の処理の流れを説明するフローチャートである。元の画像データ(元画像)500aを照合パターン201a〜201dと照合することにより「左折り返し処理」が行われ、露光パターン500bが決定される(ステップS11)。
「左折り返し処理」により決定された露光パターン500bは、「データ記憶1」の処理により保存される(ステップS12)。
露光パターン500bを照合パターン201a’〜201d’と照合することにより「右折り返し処理」が行われ、露光パターン500cが決定される(ステップS13)。
「右折り返し処理」により決定された露光パターン500cは、「データ記憶2」の処理により保存される(ステップS14)。
露光パターン500cを照合パターン201ar〜201drと照合することにより「上折り返し処理」が行われ、露光パターン500dが決定される(ステップS15)。
「上折り返し処理」により決定された露光パターン500dは、「データ記憶3」の処理により保存される(ステップS16)。
露光パターン500dを照合パターン201ar’〜201dr’と照合することにより「下折り返し処理」が行われ、露光パターン500eが決定される(ステップS17)。
「下折り返し処理」により決定された露光パターン500eは、「データ記憶4」の処理により保存される(ステップS18)。
光書込出力部104は、露光パターン500eの露光強度で各画素を露光することにより、潜像担持体上に静電潜像を形成する。
なお、図21の処理においては、左、右、上、下の順に折り返し処理を行ったが、異なる順番で行っても良い。
このように処理することで、潜像MTF解像度の高い画像を形成することができる。また、照合パターンを使用することにより回路上において加算処理や乗算処理といった単純演算をせずに光出力値を決定することができるので、処理速度を高速化することができる。
●両端折り返し処理
次に、左端および右端、または上端および下端の露光パターンを同時に決定する「両端折り返し処理」について説明する。
図22に示すように、画像データと8種類の照合パターン201a〜201dおよび201a’〜201d’を照合し、露光パターンを決定する。その後、データ記憶処理を行う。すなわち、図21において説明した露光パターンの決定フローでは「データ記憶1」および「データ記憶2」の処理を行っていたのに対し、両端折り返し処理ではデータ記憶処理が1回になる。
すなわち、両端折り返し処理におけるデータ記憶の回数は、図21において説明した決定フローの半分の回数になる。
図23は、両端折り返し処理をラインパターンに適用した模式図である。ラインパターンの幅が9ドット以上のラインについて、両端折り返し処理が適切に行われる様子を示している。
ドット状のパターンに適用する場合には、上述した左右の両端折り返し処理に加えて上下の両端折り返し処理を行うことができる。その際、左右の両端折り返し処理と上下の両端折り返し処理とはどちらを先に行ってもよい。
図21で説明したフローでは、右折り返し処理を行う際の照合パターン201a’〜201d’は、左折り返し処理後の露光パターン500bと照合される。これに対し、左右の両端折り返し処理を行う場合、照合パターン201a〜201dおよび201a’〜201d’は、すべて画像データ500aと照合される。したがって、左折り返し処理後の露光パターン500bを記憶することなく、右折り返し処理を行うことができる。
画像形成装置における処理速度の観点から、露光パターンの決定フローは、1画素当り1クロック以内で完了することが望ましい。データの記憶と呼び出しを複数回行うフローは、回路の処理速度が遅くなるか、膨大なメモリを必要とする。
両端折り返し処理によれば、両端の露光強度を同時に決定することにより、図20および図21において説明した露光パターンの決定フローに比べてデータ記憶の回数を減らすことができる。
●例外処理(1)
次に、両端折り返し処理の前に行う例外処理について説明する。
図24は、6ドットのラインパターンである画像データ225に対して、2ドット処理モードで両端折り返し処理を行ったときの露光パターン226である。
画像データに通常露光を行ったときの光出力値の積分値は、600%である。一方、露光パターン226に対応する露光強度の積分値は400%である。このように、両端折り返し処理により合計の光出力値の積分値が通常露光の積分値より低くなる。したがって、露光パターン226を露光すると、濃度が薄く、掠れた画像となってしまう。
そこで、両端折り返し処理において誤って非露光画素となってしまう画素を、例外処理により高出力露光画素に変換しておく。例外処理は、例えば両端折り返し処理とは異なる照合パターンを画像データと照合することにより、高出力露光画素に変換する画素を決定する処理である。
なお、例外処理は、画像データの画像部の幅が、両端折り返し処理における露光画素を非露光に変換する画素数、および露光画素を高出力露光画素に変換する画素数の和の2倍未満の露光画素数であるときに行うとよい。
2ドット処理モードの両端折り返し処理においては、非露光画素が2ドット、高出力露光画素が2ドットであるので、画素数の和は4ドットである。したがって、画像データの画像部の幅が8ドット未満であるとき、例外処理を行う。
図25(a)は、6ドットのラインパターンである画像データ225である。例外処理で使用する照合パターンは、画像データ225に対応している。すなわち、例外処理で使用する照合パターンは、右から「x01111110x」である。
図25(b)に示すように、例外処理によって画像部のうち右から2ドット目の画素225aを「2」、すなわち高出力露光画素に決定し、処理後パターン227を決定する。
図25(c)に示すように、処理後パターン227に、両端折り返し処理を行う。このとき、例外処理によって光出力値が決定された画素については、両端折り返し処理を行わない。したがって、画素225aの光出力値は、「2」のままである。
両端折り返し処理後の露光パターン228に対応する光出力値の積分値は600%となる。すなわち、例外処理を行うことにより、光出力値の積分値を低下させることなく両端折り返し処理を行うことができる。
上述の説明においては、一方向の折り返し処理を行ったが、左端および右端、または上端および下端の露光パターンを同時に決定する例外処理を行ってもよい。左端および右端の露光パターンを同時に決定する例外処理を「左右例外処理」という。上端および下端の露光パターンを同時に決定する例外処理を「上下例外処理」という。
図26に示すように、まず、元画像の各画素について、左右例外処理を行う(ステップS21)。
左右例外処理において光出力値が決定されなかった画素については、左右の両端折り返し処理を行う(ステップS22)。その後、データ記憶処理を行う(ステップS23)。
左右例外処理において光出力値が決定された画素については、左右の両端折り返し処理を行わず、データ記憶処理を行う(ステップS23)。
次いで、ステップS23で記憶された露光パターンについて、上下例外処理を行う(ステップS24)。
上下例外処理において光出力値が決定されなかった画素については、上下の両端折り返し処理を行う(ステップS25)。その後、データ記憶処理を行う(ステップS26)。
上下例外処理において光出力値が決定された画素については、上下の両端折り返し処理を行わず、データ記憶処理を行う(ステップS26)。
例外処理を行うことにより、幅の狭い画像に対してもかすれることがなく、高画質の画像形成を実現することができる。
●例外処理(2)
次に、本発明にかかる画像形成装置における例外処理の別の実施の形態について、先に説明した実施の形態と異なる部分を中心に説明する。本実施の形態は、左右の折り返し処理および例外処理については1次元配列の照合パターン、上下の折り返し処理および例外処理については2次元配列の照合パターンを使用する点において、これまでに説明した実施の形態と異なる。
2次元配列の照合パターンを用いた例外処理は、データ記憶処理を1回のみ行う露光パターンの決定フローにおいて特に有用である。
図27は、データ記憶処理を1回のみ行う露光パターンの決定フロー27を示す。
まず、元画像の各画素について、左右例外処理を行う(ステップS31)。
左右例外処理において光出力値が決定されなかった画素について、左右の両端折り返し処理を行う(ステップS32)。
次いで、左右の両端折り返し処理において光出力値が決定されなかった画素について、上下例外処理を行う(ステップS33)。
上下例外処理において光出力値が決定されなかった画素に、上下の両端折り返し処理を行う(ステップS34)。その後、データ記憶処理を行う(ステップS35)。
左右例外処理、左右の両端折り返し処理または上下例外処理において光出力値が決定された画素については、後段の処理は行わず、データ記憶処理を行う(ステップS35)。
ここで、すべての処理に1次元配列の照合パターンを用いて、上記決定フロー27を実行した場合に得られる露光パターンについて説明する。
図28(a)に示すように、角やT字状に入り組んでいる画像部について説明する。
図29(a)に示すような1次元の照合パターンを上下の両端折り返し処理に用いる。
図28(b)は、図28(a)に1次元の照合パターンを用いた両端折り返し処理を行った後の露光パターンを示す。太枠で囲まれた画素群281については、非露光画素となる。したがって、露光パターン全体の光出力値の積分値が、通常露光の光出力値の積分値よりも13%低下する。
光出力値の積分値が低下した原因は、左右の両端折り返し処理および上下の両端折り返し処理において、照合パターンを画像データと照合しているためである。
画素群281は、左右の両端折り返し処理において照合パターンと一致しない。したがって、左右の両端折り返し処理後における光出力値は1である。その後、画素群281は、上下の両端折り返し処理において、非露光画素に決定される。
正しい処理としては、露光画素が非露光画素に変換される場合、変換される画素群に隣接する露光画素が高出力露光画素に変換されることで露光強度の積分値が処理前後で一定になる。
上下の両端折り返し処理のみを行った場合は、画素群281および画素群282は非露光画素となり、画素群283が高出力露光画素に変換される。しかし、上下の両端折り返し処理の前に左右の両端折り返し処理を行っている本例では、画素群282および画素群283は、左右の両端折り返し処理により照合パターンが一致し、光出力値が決定されている画素群である。
したがって、画素群281を非露光画素としても、変換される画素群に隣接する画素が高出力露光画素に変換されない。すなわち、画素群281は、非露光画素に変換される必要はない。
このような場合、上下の両端折り返し処理に2次元配列の照合パターンを使用することで、隣接する画素が高出力露光画素に変換されない場合には非露光画素としないようにすることができる。
具体的には、2次元配列の照合パターンは、上下の両端折り返し処理により光出力値が決定される画素の、処理方向の画素数だけ、注目画素に隣接する画素の左右に「1」の配列を持つ照合パターンを使用するとよい。
言い換えれば、2次元配列の照合パターンは、対称で、対称軸上に注目画素が配置されているパターンである。2次元配列の1辺の画素数は、非露光画素および高出力露光画素に決定される連続する1列の画素数の和の2倍以上である。
図29(b)は、1画素を非露光画素とし、隣接する1画素を高出力露光画素とする場合に上下の両端折り返し処理に使用する2次元配列の照合パターン291を示す。したがって、注目画素291aに隣接する画素の左右に「1」の配列がそれぞれ2列ずつ配置されている。
図29(c)は、2画素を非露光画素とし、隣接する2画素を高出力露光画素とする場合に用いる照合パターン292である。したがって、注目画素292aに隣接する画素の左右に「1」の配列がそれぞれ4列ずつ配置されている。
図29(d)は、3画素を非露光画素とし、隣接する3画素を高出力露光画素とする場合に用いる照合パターン293である。したがって、注目画素293aに隣接する画素の左右に「1」の配列がそれぞれ6列ずつ配置されている。
図30に示すように、決定フロー30は、左右例外処理および左右の両端折り返し処理において1次元配列の照合パターンを用いる。上下例外処理および上下折り返し処理において2次元配列の照合パターンを用いる。
まず、元画像の各画素について、左右例外処理を行う(ステップS41)。
左右例外処理において光出力値が決定されなかった画素について、左右の両端折り返し処理を行う(ステップS42)。
次いで、左右の両端折り返し処理において光出力値が決定されなかった画素について、上下例外処理を行う(ステップS43)。
上下例外処理において光出力値が決定されなかった画素について、上下の両端折り返し処理を行う(ステップS44)。その後、データ記憶処理を行う(ステップS45)。
左右例外処理、左右の両端折り返し処理または上下例外処理において光出力値が決定された画素については、後段の処理は行わず、データ記憶処理を行う(ステップS45)。
図31は、図28(a)に対して照合パターン291を用いた上下の両端折り返し処理を含む決定フロー27を実行した後の露光パターンである。画素群281’の光出力値が1に決定されていることがわかる。
このように、左右の両端折り返し処理に1次元配列の照合パターンを用いて、上下の両端折り返し処理に1次元配列の照合パターンを用いることで、複雑な画像であっても正しく露光パターンを決定することができる。この方法により、高露光によって加算される光量の総和を、露光によって減算される光量の総和に等しくすることも可能である。
●露光方法(2)
次に、本発明に係る画像形成方法における露光方法の別の実施の形態について、先に説明した露光方法の例との相違点を中心に説明する。
本実施の形態に係る露光方法において、非露光画素、あるいは高出力露光画素とする画素数は、画像形成装置の性能、画像パターンにおける画像領域、画像パターンの形態(黒文字、白抜け文字、線種、図の形状など)に応じて、適宜使い分けてもよい。
図32は、露光パターンの光出力値の加算処理例を示す模式図である。同図に示すように、本実施の形態に係る露光方法は、4800dpiで形成される画像の露光パターンの1ドットから4ドットを非露光画素として他の画素に光出力値を加算する。
図32(a)は、1ドット処理モードの加算例を示す。また、図32(b)は、2ドット処理モードの加算例を示す。また、図32(c)は、3ドット処理モードの加算例を示す。さらに、図32(d)は、4ドット処理モードの加算例を示す。
図32(a)〜(d)に示すように、対称に配置された任意の数の露光画素について、仮想の対称軸を中心として折り返したときに対応する位置に露光画素があるか否かを照合する。このように、対称軸の反対側の画素に光出力値を加算することにより、反対側の画素の光出力値の数値が「2」になる。
図33は、別の加算処理を示す模式図である。
図33(a)は、3ドット処理モードの加算処理を示す。また、図33(b)は、3ドット処理モードの別の加算処理を示す。
図33(a),(b)に示すように、本実施の形態に係る露光方法は、先に説明した対称に配置された露光画素の光出力値の加算処理とは異なり、仮想の対称軸を中心として折り返したときに対応する位置に露光画素がない場合にも加算処理を行うことができる。
つまり、本実施の形態に係る露光方法は、加算処理を行う際に、加算する側の露光画素が既に光出力値の加算後の画素である場合には、加算可能な露光画素のみに加算処理を行うことができる。
具体的には、図33(a),(b)に示すように、3ドット処理モードで折り返し処理ができない場合は、2ドット処理モード、または1ドット処理モードで折り返し処理を行うことができる。
以上説明したように、本実施の形態に係る露光方法によれば、光出力値を加算した画素に対して再度加算しないように適切に処理することができる。
また、指定の処理モードより小さい画素数の折り返し処理について、大きい画素数の折り返し処理から順番に処理を行ってもよい。光源駆動部410は、処理モードを選択するセレクタ34を備える。
図34に示すように、4ドット処理モードが設定されているとき、セレクタ34はまず4ドット処理モードを選択する。光源駆動部410は、4ドット処理モード用の照合パターンとの照合を行う。照合パターンと一致した場合には、4ドット処理モードの折り返し処理を行う。
次に、セレクタ34は3ドット処理モードを選択する。光源駆動部410は、3ドット処理モード用の照合パターンとの照合を行う。照合パターンと一致した場合には3ドット処理モードの折り返し処理を行う。2ドット処理モードと1ドット処理モードについても同様に行う。
このように、指定の処理モードより小さい画素数の折り返し処理についても順番に処理を行うことにより、画像部の画素数が少なく指定の折り返し処理ができない部分についても、高画質な画像を形成することができる。
本発明に係る画像形成方法において、第1の画像品質(通常画質モード)と第2の画像品質との少なくとも2種類の画像品質を選択可能にすることもできる。第1の画像品質は、標準露光による画像品質である。
第2の画像品質は、以上説明した実施の形態に係る露光方法により、画像部の画素を構成する画素のうち、少なくとも非露光部との境界にある画素群について、第1の光出力値よりも高い光出力値で露光させる画像品質である。
●文字画像の形成例
次に、本実施の形態に係る露光方法を微小サイズ(3ポイント)の文字画像に適用した例について説明する。
図35は、本実施の形態の露光方法による文字画像の露光パターンを示す模式図である。同図(a)は、2ドット処理モードで決定された「画」の文字の露光パターンである。同図(b)は、標準露光のときの露光パターンである。
図36は、本実施の形態の露光方法による白抜き文字画像の露光パターンを示す模式図である。図36(a)は、標準露光のときの「画」の文字の白抜き露光パターンである。また、図36(b)は、4ドット処理モードで決定された露光パターンである。
本実施の形態に係る露光方法は、通常の着色文字だけでなく、色反転文字(白抜き文字)にも適用することができる。
本実施の形態に係る露光方法によれば、画像データから光源変調データに変換する際に、情報処理装置からオブジェクト情報を得られない場合でも、文字画像、反転文字画像、ディザ、線画像など様々な画像の露光パターンを生成することができる。
本実施の形態に係る露光方法は、画像データの特徴に応じて、露光パターンの処理モードを使い分けることで、さらに効果をあげることができる。
一般的に、図36に示す白抜き文字は、周辺が露光の影響を受けるため、白地の電界強度は小さくなり、白地が着色の中に埋もれやすい。このため、本実施の形態に係る露光方法では、高出力露光画素群と非露光部の画素数を大きく設定することで、時間集中露光による光出力値を高めるのが望ましい。
本実施の形態に係る露光方法は、中間調などディザ部において、他の処理との干渉でテクスチャやアーティファクトが出た場合には、高出力露光画素群と非露光部の画素数を小さくしてもよい。加算する画素数が1ドット、すなわち1ドット処理モードであれば、本実施の形態に係る露光方法によるデメリットはほとんどなく、弱電界の低減効果を得ることができる。
そのため、本実施の形態に係る露光方法は、高出力露光画素群への加算処理を行う対象の種類(文字あるいは線)を識別するタグ情報により、黒文字、白文字、ディザを識別できる場合には、高出力露光画素群と非露光部の画素数を適切に揃えることができる。
具体例として、通常文字や線画であれば、画像部と非画像部との境界にある露光側の画素にあらかじめタグをつける。一方、反転文字や反転線画であれば、画像部と非画像部との境界の非露光側画素にタグをつけ、それ以外のディザ等については、ディザをつけていない場合と同様にする。
そして、タグを付けた各画像について、黒文字や黒線を3ドット処理モード、白抜き文字や白抜き線を4ドット処理モード、ディザを2ドット処理モード、などとあらかじめ設定する。
図9に説明した光源変調データ生成回路407は、露光パターンの画像部と非画像部との境界画素を検出し、境界画素のタグビット(画像パターンの属性を特定する情報)からタグが0と1のいずれであるかを検出する。
タグビットが1である場合には、光源変調データ生成回路407は、黒文字や黒線と判断し、3ドット処理モードを実行する。
次に、タグビットが0である場合には、光源変調データ生成回路407は、白文字、白線と判断し、4ドット処理モードを実行する。
タグビットが0,1いずれでもない場合には、光源変調データ生成回路407は、ディザ部と判断して、2ドット処理モードを実行する。
このように、本実施の形態に係る露光方法は、受信した画像の画像パターン、または画像のタグビットなど、コントローラ側から提供される情報に基づいて、通常文字か反転文字かディザ部かを認識し、それぞれの画像に応じて最適な折り返し画素数を設定する。
本実施の形態に係る露光方法によれば、TC露光の光出力値に強弱をつけられるので、画像形成装置の能力を最大限発揮する最良の画像を提供することができる。
●静電潜像計測装置の構成
次に、本実施の形態に係る露光方法により形成された静電潜像の状態を確認することができる、静電潜像計測装置の構成について説明する。
図37に示す静電潜像計測装置300は、荷電粒子照射系400と、光走査装置1010と、試料台401と、検出器402と、LED403と、不図示の制御系と排出系と駆動用電源などを備えている。
荷電粒子照射系400は、真空チャンバ340内に配置されている。荷電粒子照射系400は、電子銃311と、引き出し電極312と、加速電極313と、コンデンサレンズ314と、ビームブランカ315と、仕切り板316とを有している。荷電粒子照射系400は、可動絞り317と、スティグメータ318と、走査レンズ319と、対物レンズ320とを有している。
以下の説明において、各レンズの光軸方向をc軸方向とし、c軸方向に直交する面内における互いに直交する2つの方向をa軸方向及びb軸方向として説明する。
電子銃311は、荷電粒子ビームとしての電子ビームを発生し、真空試料ステージ部384に照射させる。
引き出し電極312は、電子銃311の−c側に配置され、電子銃311で発生された電子ビームを制御する。
加速電極313は、引き出し電極312の−c側に配置され、電子ビームのエネルギーを制御する。
コンデンサレンズ314は、加速電極313の−c側に配置され、電子ビームを集束させる。
ビームブランカ315は、コンデンサレンズ314の−c側に配置され、電子ビームの照射をオン(ON)/オフ(OFF)させる。
仕切り板316は、ビームブランカ315の−c側に配置され、中央に開口を有している。
可動絞り317は、仕切り板316の−c側に配置され、仕切り板316の開口を通過した電子ビームのビーム径を調整する。
スティグメータ318は、可動絞り317の−c側に配置され、非点収差を補正する。
走査レンズ319は、スティグメータ318の−c側に配置され、スティグメータ318を介した電子ビームをab面内で偏向する。
対物レンズ320は、走査レンズ319の−c側に配置され、走査レンズ319を介した電子ビームを収束させる。対物レンズ320を介した電子ビームは、ビーム射出開口部321を通過して試料323の表面に照射される。
各レンズ等には、不図示の駆動用電源が接続されている。
なお、荷電粒子とは、電界や磁界の影響を受ける粒子をいう。荷電粒子を照射するビームは、電子ビームに代えて、例えばイオンビームを用いてもよい。この場合は、電子銃に代えて、液体金属イオン銃などが用いられる。
試料323は、感光体であり、導電性支持体、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、及び電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を有している。
電荷発生層は、電荷発生材料(CGM:Charge Generation Material)を含み、導電性支持体の+c側の面上に形成されている。電荷輸送層は、電荷発生層の+c側の面上に形成されている。
試料323は、表面(+c側の面)に電荷が帯電している状態で露光されると、電荷発生層の電荷発生材料によって光が吸収され、正負両極性のチャージキャリアがそれぞれ発生する。このキャリアは、電界によって、一方は電荷輸送層に、他方は導電性支持体に注入される。
電荷輸送層に注入されたキャリアは、電界によって電荷輸送層の表面にまで移動し、表面の電荷と結合して消滅する。これにより、試料323の表面(+c側の面)には、電荷分布、すなわち、静電潜像が形成される。
光走査装置1010は、光源、カップリングレンズ、開口板、シリンドリカルレンズ、ポリゴンミラー、走査光学系393などを有している。また、光走査装置1010は、ポリゴンミラーの回転軸に平行な方向に関して光を走査させるための走査機構(不図示)も有している。
走査光学系は、光源部、走査レンズ、光偏向器などを備えている。光偏向器は、例えばポリゴンスキャナ390である。
ポリゴンスキャナ390は、光学ハウジング381とともに、水平な平行移動台392の上に設けられている。
光走査装置1010から出射された光は、反射ミラー372、外部遮光筒385、ラビリンス部386、遮光部材387、内部遮光筒388およびガラス窓368を介して試料323の表面を照射する。
試料323の表面における光走査装置1010から射出される光の照射位置は、ポリゴンミラーでの偏向及び走査機構での偏向によって、c軸方向に直交する平面上の互いに直交する2つの方向に沿って変化する。
このとき、ポリゴンミラーでの偏向による照射位置の変化方向は主走査方向であり、走査機構での偏向による照射位置の変化方向は副走査方向である。ここでは、a軸方向が主走査方向、b軸方向が副走査方向となるように設定されている。
このように、静電潜像計測装置300は、光走査装置1010から射出される光によって試料323の表面を2次元的に走査することができる。すなわち、静電潜像計測装置300は、試料323の表面に2次元的な静電潜像を形成することが可能である。
図38に示すように、光走査装置1010は、真空チャンバ340の鉛直軸に対して45度の位置に、真空チャンバ340の内部に対して光束が外部から入射可能な入射窓が設置されている。すなわち、走査光学系393は、真空チャンバ340の外部に配置されている。
この構成により、ポリゴンミラーの駆動モータにより生じる振動や電磁波が電子ビームの軌道に影響を与えにくい。すなわち、ポリゴンミラーからの振動や電磁波が測定結果に及ぼす影響を抑制することができる。
検出器402は、試料323の近傍に配置され、試料323からの2次電子を検出する。
LED403は、試料323の近傍に配置され、試料323を照明する光を射出する。LED403は、測定後に試料323の表面に残留している電荷を消去するために用いられる。
なお、走査光学系393を保持する光学ハウジング381は、走査光学系393全体がカバー391で覆われていて、真空チャンバ内部へ入射する外光(有害光)を遮光するようにしてもよい。
走査光学系393において、走査レンズは、fθ特性を有している。すなわち、光偏光器が一定速度で回転しているときに、光ビームは像面に対して略等速に移動する。また、走査光学系において、ビームスポット径も略一定に走査することができる。
静電潜像計測装置300では、走査光学系が真空チャンバに対して離れて配置されている。したがって、ポリゴンスキャナ390等の光偏向器を駆動する際に発生する振動が直接真空チャンバ340に伝播されることによる影響は少ない。
走査光学系393を保持する除振台382と構造体383との間にダンパなどの防振手段が設けられていてもよい。防振手段が設けられていることで、真空チャンパ340へ伝達される振動をさらに軽減することができる。
走査光学系393を設けることにより、静電潜像計測装置300では、感光体の母線方向に対して、ラインパターンを含めた任意の潜像パターンを形成することができる。
所定の位置に潜像パターンを形成するために、光偏向手段からの走査ビームを検知する同期検知センサ26を有してもよい。
試料323の形状は、平面であっても曲面であってもよい。
上述のようなスキャニング機構を付けることにより、感光体の母線方向に対して、ラインパターンを含めた任意の潜像パターンを形成することができる。
●静電潜像計測の方法
次に、静電潜像計測の方法について説明する。
図39は、加速電圧と帯電電位との関係を示す模式図である。まず、静電潜像計測にあたり、静電潜像計測装置300では、感光体の試料323に電子ビームを照射させる。
加速電極313に印加される電圧である加速電圧|Vacc|として、試料323での2次電子放出比が1となる電圧よりも高い電圧が設定される。このように加速電圧を設定することにより、試料323では、入射電子の量が放出電子の量よりも上回るため電子が試料323に蓄積され、チャージアップを起こす。この結果、静電潜像計測装置300では、試料323の表面をマイナス電荷で一様に帯電させることができる。
図39に示すように、加速電圧と帯電電位との間には、一定の関係がある。このため、静電潜像計測装置300では、加速電圧と照射時間を適切に設定することにより、試料323の表面に、画像形成装置1000における感光体ドラム1030と同様な帯電電位を形成することができる。
照射電流の大きいほうが、短時間で目的の帯電電位に到達することができるため、ここでは照射電流を数nAとしている。
その後、静電潜像計測装置300では、静電潜像が観察できるように、試料323における入射電子量を1/100倍〜1/1000倍にする。
静電潜像計測装置300では、光走査装置500を制御して、試料323の表面を2次元的に光走査し、試料323に静電潜像を形成する。なお、光走査装置500は、試料323の表面に所望のビーム径及びビームプロファイルの光スポットが形成されるように調整されている。
静電潜像の形成に必要な露光エネルギーは、試料の感度特性によって決まるが、通常、2〜10mJ/m2程度である。感度が低い試料では、必要な露光エネルギーは10mJ/m2以上になる場合がある。帯電電位や必要な露光エネルギーは、試料の感光特性やプロセス条件に合わせて設定される。静電潜像計測装置300の露光条件は、画像形成装置1000に合わせた露光条件と同様である。
静電場の環境や電子軌道をあらかじめ計算しておき、その計算結果に基づいて検出結果を補正することにより、静電潜像のプロファイルを高精度に求めることができる。
以上説明したように、静電潜像計測装置300を用いることにより、静電潜像における電荷分布、表面電位分布、電界強度分布、および試料表面に直交する方向に関する電界強度を、それぞれ高精度に求めることができる。
●効果●
以上説明したように、本実施の形態に係る露光方法によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施の形態に係る露光方法によれば、短い時間に強い光出力で露光するTC露光を行うことで、空間集中型露光(ビームの小径化)と同等の効果を得ることができる。本実施の形態に係る露光方法によれば、面積が狭く深さのある静電潜像を形成することができるため、高解像な画像を形成することができる。
照合パターンを用いることにより、加算処理、乗算処理といった単純演算を行わずに露光パターンを決定することができ、処理の高速化を実現できる。
少なくとも上下折り返し処理に2次元配列の照合パターンを用いることにより、最短1クロック分で同時に複数の画素の処理を行うことができ、処理速度を大幅に向上することができる。
折り返し処理の前に例外処理を行うことで、幅の狭い画像に対しても掠れることなく高画質を実現することができる。
本実施の形態に係る露光方法によれば、画像や環境の条件に応じて処理モードなどの条件を使い分けることができる。
本実施の形態に係る露光方法は、入力された画像データの内側(中心部)に露光画素を集中させて、標準露光より強い光出力値で露光する。これにより、本実施の形態に係る露光方法によれば、微細な画像パターンであっても、所望の画像濃度で目標画像に忠実な画像を出力することができる。
本実施の形態に係る露光方法によれば、画像部と非画像部の境界となる画素を高出力露光画素群として露光部画素の光出力値を高めることにより、様々な画像パターンに対してTC露光を適用することができる。
本実施の形態に係る露光方法によれば、高出力露光画素群の光出力値が、所定の最大光出力値を越える場合には、隣接する画像画素に光出力値を分散させて露光する。これにより、本実施の形態に係る露光方法によれば、最大光出力値を高く設定できない場合であっても、画像濃度を維持し、高画質化を実現することができる。
本実施の形態に係る露光方法は、画像部と非画像部との境界にある画像部の画素を非露光画素に変換し、同時に、非露光画素に匹敵する光出力値を高出力露光画素群に隣接する画像部の画素に加算して露光する。このようにすることで、本実施の形態に係る露光方法によれば、文字画像、反転文字画像、ディザ、線画像など、様々な画像データにTC露光を適用することができる。
本実施の形態に係る露光方法によれば、高出力露光画素群の光出力値が最大光出力値を超える場合には、光出力値を加算しないため、例外処理を行うことが不要となり、簡易な処理で様々な画像にTC露光を適用することができる。
本実施の形態に係る露光方法によれば、高出力露光画素群に光出力値を加算する際に、その高出力露光画素群がすでに光出力値を加算した後である場合には、加算可能な画素数だけ処理を行うため、最適な条件でTC露光を行うことができる。
本実施の形態に係る露光方法は、画像処理回路、あるいはタグビットなどコントローラ側から提供される情報に基づいて、光源変調データ生成回路407が画像の状態を認識し、それぞれの画像に応じて最適な折り返し画素数を設定する。これにより、本実施の形態に係る露光方法によれば、画像形成装置の能力を最大限発揮する最良の画像を提供することが可能となる。
本実施の形態に係る露光方法によれば、ディザ部のように、画像パターンが隣り合い、潜像電界が小さくなりがちな領域が多い箇所について、弱電界領域を低減させ、ドット再現性を向上させることができる。
本実施の形態に係る露光方法によれば、静電潜像段階において画像の画質を改善するため、微小な文字画像、特に反転文字画像を安定して高画質を実現することができる。
本実施の形態に係る露光方法によれば、簡易な方法であるため、様々な画像に対して高速で処理することができる。
本実施の形態に係る露光方法によれば、PM+PWM変調を利用して、最大光出力値を意図的に強めることにより、標準露光とTC露光との積分光量を一致させることができるため、深い潜像を形成して解像力を高めることができる。
本実施の形態に係る画像形成装置によれば、本実施の形態に係る露光方法を現像して可視化することにより、高密度で高画質な画像形成装置を提供することができる。
本実施の形態に係る画像形成装置は、特にVCSELなどのマルチビーム走査光学系を搭載した画像形成装置に好適である。