JP6507744B2 - 塩化ビニル系食品包装用フィルム - Google Patents
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Description
そのため、その包装用フィルムには、透明性、防曇性、機械特性などの特性だけでなく、高ストレッチ自動包装機に対する適性も要求されている。つまり、フィルムロールからフィルムを円滑に巻き出すことができ、トレイとの滑り性が良好であり、かつストレッチした際にフィルムが破れることなく包装できる必要がある。さらに、時間が経過しても、寸法安定性に優れていることが要求される。
本発明に用いる塩化ビニル系樹脂(A)としては、任意の平均重合度の塩化ビニル系樹脂を用いることができる。好ましくは、塩化ビニル系樹脂(A)の平均重合度は、1,000〜1,500である。平均重合度が1,000以上であれば、十分な機械強度を得ることができる。一方、平均重合度が1,500以下であれば、溶融粘度の増加に伴う発熱が生じることなく、分解による着色の発生を無くすことができる。
本発明のフィルムは、アジピン酸ジ直鎖アルキル化合物(B)を配合することにより、フィルムの寸法安定性と解反力のバランスを最適化することができる。
化合物(B)の直鎖アルキルは、n−C6H13、n−C8H17、n−C10H21の混合物であることが好ましい。また、その混合比率は、n−C6H13が40~60モル%、n−C8H17が10〜30モル%、n−C10H21が20〜40モル%が好ましく、n−C6H13が45〜55モル%、n−C8H17が15〜25モル%、n−C10H21が25〜35モル%がより好ましい。
本発明のフィルムは、前記化合物(B)を除く重量平均分子量が1,000未満の脂肪族二塩基酸エステル化合物(C)を配合することで、フィルム表面に適度にブリードアウトし、フィルムの解反力を低減することで優れた包装適性を発現することができる。
化合物(C)の具体例としては、アジピン酸ジメチル(DMA)、アジピン酸ジブチル(DBA)、アジピン酸ジイソブチル(DIBA)、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOZ)、セバシン酸ジメチル(DMS)、セバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOS)等が挙げられる。
本発明のフィルムは、エポキシ化植物油(D)を配合することにより、過剰なブリードアウトを生じることなく、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)の柔軟化と熱安定性の向上を図ることができる。
エポキシ化植物油(D)の具体例としては、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化綿実油、エポキシ化落花生油、エポキシ化紅花油、エポキシ化ブドウ種子油、エポキシ化オリーブ油等を挙げることができ、これらを単独、又は、2種類以上の混合物として使用することができる。この中でも特に塩化ビニル系樹脂との相溶性の点から、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油を用いることが好ましい。
本発明に用いる各成分の配合割合としては、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、前記化合物(B)を20質量部以上35質量部以下の割合で配合することが好ましく、下限は、22質量部以上であることがより好ましく、25質量部以上であることがさらに好ましい。一方、上限は、33質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。かかる範囲で前記化合物(B)を配合することにより、ラップフィルムの寸法安定性と解反力のバランスを最適化することができる。
(化合物(C)の配合質量部)/(化合物(B)の配合質量部) 式(1)
が、0.20以上0.45以下であることが重要である。下限は、0.23がより好ましく、0.25がさらに好ましい。一方、上限は、0.43がより好ましく、0.40がさらに好ましい。
式(1)の値が0.20以下、つまり、化合物(B)に対して化合物(C)の配合量が少な過ぎる場合、化合物(B)が十分にフィルム表面に露出することができないため、十分な解反力が得られない場合がある。一方、式(1)の値が0.45以上、つまり、化合物(B)に対して化合物(C)の配合量が多過ぎる場合、化合物(C)のフィルム表面へのブリードアウトが過剰となり、フィルムの寸法安定性を損なう場合がある。
<熱安定剤>
本発明のフィルムは、製造工程での熱安定性を向上させるため、熱安定剤を配合することが好ましく、中でも、有害重金属を含まない観点からCa−Zn系安定剤が好ましい。 Ca−Zn系安定剤とは、カルシウムの脂肪酸塩と亜鉛の脂肪酸塩の混合物である。脂肪酸の具体例としては、ベヘニン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、安息香酸等があげられ、目的に応じて2種以上組み合わせて使用することも可能である。
また、カルシウムと亜鉛の比率は、質量比で1:1〜1:5が好ましく、1:1.5〜1:4がより好ましく、1:2〜1:3が更に好ましい。亜鉛のカルシウムに対する比率が1より少ないとカルシウム塩特有の赤味が出てしまい、一方、亜鉛の比率がカルシウムに対して5よりも多いと、成形加工中に生成する塩化亜鉛が塩化ビニル系樹脂の分解触媒となり、「亜鉛焼け」と呼ばれる急激な黒化、分解が生じる。
また、本発明のフィルムは、防曇性を付与するために、多価アルコールと脂肪酸とのエステル化合物を添加することが好ましい。例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンアルキルエーテル等を挙げることができ、単独若しくは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
エステル化合物の添加量が0.1質量部以上であれば、十分な防曇性を発現させることでき、例えば食品容器等を包装して保存した際にフィルムに水滴が発生し、内容物の確認が出来なくなるという不具合を無くすことができる。他方、5.0質量部以下であれば、フィルム表面への多価アルコールと脂肪酸とのエステル化合物の過剰なブリードアウトを抑えることができ、包装適性を満足させることができる。
さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、本樹脂組成物に対して、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料等の添加剤を配合することができる。
本発明のフィルムの製造方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂(A)、アジピン酸ジ直鎖アルキル(n−C6,8,10の混合)化合物(B)、前記化合物(B)を除く分子量1,000未満の脂肪族二塩基酸エステル化合物(C)、エポキシ化植物油(D)、及び、その他添加剤を、V型ブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサーなどの混合機により混合する方法や、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダなどの混練機によりそれを混練する方法、あるいは、混合機と混練機を組み合わせて、それを混合・混練した後、例えば、Tダイ法やインフレーション法などによりフィルムを製造することができる。
本発明のフィルムの解反力は、フィルム幅350mmあたり80gf以上190gf以下であることが好ましい。解反力の下限としては、90gf以上であることがより好ましく、100gf以上であることがさらに好ましい。一方、上限としては、180gf以下であることがより好ましく、170gf以下であることがさらに好ましい。解反力がかかる範囲内であれば、自動包装機で食品等を包装する際、フィルムの巻出し性が良好であり、生産性に優れる。
先ず、ロール巻き管に芯棒を水平に通してロールが自由回転できる状態とし、そのフィルム端をロールの垂直上方に引き上げフィルム全幅均等に固定担持してセットする。その後、ロールを垂直下方へ降下させ、フィルムがロールから解反する力を測定する。
本発明においては、幅350mmのフィルムロールをセットし、ストログラフ式、もしくはオートグラフ式引張試験機を用い、500mm/分の速度で500mmの距離を降下させた間の解反する力の強弱変化を計測し、その力が強くなったときの値、すなわち、計測グラフ上の各頂点の値の平均値を解反力とした。
(1)包装適性
ポリプロピレン製のトレイにシシャモ8尾を盛り付け、(株)イシダ製Wmini−UNI機により雰囲気温度23℃、包装速度35パック/分で包装し、包装適性を以下の基準で判定した。
○:シワ及び破れがなく包装できた
×:シワ、破れ、張り不足の何れかが発生した
紙管に巻いた350mm幅1000m長のフィルムロールを雰囲気温度40℃、相対湿度60%の恒温恒湿槽にフィルムロールを立てて10日間保管した後のフィルムの幅方向への寸法変化値を測定し、以下の基準で判定した。
○:変化なし、または10mm以下
×:10mmよりも大
解反力測定法を用い、幅350mmのフィルムロールをセットし、オートグラフ式引張試験機を用い、500mm/分の速度で500mmの距離を降下させた間の解反する力の強弱変化を計測し、その力が強くなったときの値、すなわち、計測グラフ上の各頂点の値の平均値を算出した。
[塩化ビニル系樹脂(A)]
(A)−1:塩化ビニル単独重合体、平均重合度1300
(B)−1:アジピン酸ジ直鎖アルキル、アルキルの混合モル比n−C6H13:n−C8H17:n−C10H21=48:23:29
(C)−1:アジピン酸ジイソノニル、分子量:398
(D)−1:エポキシ化大豆油
(E)−1:脂肪酸Ca塩と脂肪酸Zn塩の混合物、Ca:Zn質量比=1:2
(A)−1を100質量部、(B)−1を30質量部、(C)−1を10質量部、(D)−1を10質量部、(E)−1を1質量部の割合でスーパーミキサーに投入した後、攪拌しながら材料温度を常温から130℃まで昇温し、加熱混合した後、70℃まで冷却した時点で取り出して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、Tダイ(幅350mm、ギャップ0.4mm)を装着したΦ40mm単軸押出機(L/D=20)にて、樹脂温度200℃で押出成形して、厚み0.01mmのフィルムを得た。
得られたフィルムについて包装適性、寸法安定性、及び、解反力の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、(C)−1の割合を7質量部とした以外は実施例1と同様の方法でフィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、(B)−1の割合を28質量部、(C)−1の割合を12質量部とした以外は実施例1と同様の方法でフィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、(B)−1の割合を23質量部、(D)−1の割合を15質量部とした以外は実施例1と同様の方法でフィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、(B)−1の割合を35質量部、(C)−1の割合を3質量部とした以外は実施例1と同様の方法でフィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、(B)−1の割合を15質量部、(C)−1の割合を25質量部とした以外は実施例1と同様の方法でフィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
一方、比較例1は、化合物(B)に対する化合物(C)の配合質量部が少なく、フィルムの巻き出しに力を要し、ロールからのフィルム巻出し時に安定性を欠き、包装時にトラブル発生した。比較例2は、化合物(C)の配合量が多く、寸法安定性が劣る結果となった。
Claims (4)
- ポリ塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、アジピン酸ジ直鎖アルキル(n−C6H13、n−C8H17、n−C10H21の混合物)化合物(B)を25質量部以上35質量部以下、化合物(B)を除く重量平均分子量1,000未満の脂肪族二塩基酸エステル化合物(C)を5質量部以上20質量部以下、エポキシ化植物油(D)を5質量部以上20質量部以下をそれぞれ含有してなり、(B)、(C)、(D)の配合量の合計が35質量部以上55質量部以下であり、かつ(B)の配合質量部に対する(C)の配合質量部の割合が0.20以上0.45以下であることを特徴とする食品包装用フィルム。
- 前記化合物(B)の直鎖アルキルの割合が、n−C6H13が40〜60モル%、n−C8H17が10〜30モル%、n−C10H21が20〜40モル%である請求項1に記載の食品包装用フィルム。
- 解反力がフィルム幅350mm当たり80gf以上190gf以下である請求項1または2に記載の食品包装用フィルム。
- 化合物(C)が、アジピン酸ジイソノニルである請求項1〜3の何れかに記載の食品包装用フィルム。
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