以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて詳細に説明する。
《実施例1》
(1)画像形成部
図2は本実施例における画像形成装置100の概略構成を示した図である。この画像形成装置100は、タンデム方式、中間転写方式の電子写真カラープリンタである。装置本体の内部には、第1、第2、第3、第4の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdが併設されている。各画像形成部は各々異なった色(イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、ブラック(Bk)色)のトナー像が潜像、現像、転写のプロセスを経て形成される。
各画像形成部は、それぞれ専用の像担持体、本例では電子写真感光ドラム3a、3b、3c、3dを具備し、各感光ドラム上に各色のトナー像が形成される。各感光ドラムに隣接して中間転写体20が設置され、各感光ドラム上に形成された各色のトナー像が、中間転写体20上に1次転写され、2次転写部でシート(以下、用紙と記す)Pに転写される。
本実施例においては、上記の画像形成部Pa〜Pd、中間転写体20、2次転写部が、用紙Pに未定着のトナー像を形成する画像形成器である。さらにトナー像が転写された用紙Pは、定着装置(定着部)7で加熱及び加圧によりトナー像の定着処理を受ける。
定着装置7を出た1面目(表面)にプリント済の用紙Pは、片面プリントモードである場合には、フラッパー110により排出パス114側に導かれて、装置外の排出トレイ115に片面画像形成物(片面プリント、片面コピー)として排出される。両面プリントモードである場合には1面目プリント済の用紙Pはフラッパー110により後述する反転パス111に導かれる。
各感光ドラムの外周には、それぞれドラム帯電器2a、2b、2c、2d、現像器1a、1b、1c、1d、1次転写帯電器6a、6b、6c、6d及びクリーナ4a、4b、4c、4dが設けられている。
また、各感光ドラムの上方部にはレーザースキャナ5a、5b、5c、5dが設置されている。各レーザースキャナの内部には図示しない光源装置とポリゴンミラー等が設けられている。そして、各レーザースキャナは、光源装置から発せられたレーザー光を、ポリゴンミラーを回転して走査し、その走査光の光束を反射ミラーによって偏向し、図示しないfθレンズにより対応する感光ドラムの母線上に集光して露光する。これにより、各感光ドラム上に画像信号に応じた潜像が形成される。
現像器1a、1b、1c、1dには現像剤としてそれぞれY色、M色、C色、Bk色のトナーが、図示しない供給装置により所定量充填されている。各現像器は、それぞれ、対応する感光ドラム上の潜像を現像して、Y色トナー像、M色トナー像、C色トナー像及びBk色トナー像として可視化する。
中間転写体20は矢示の方向に感光ドラム3a、3b、3c、3dと同じ周速度をもって回転駆動されている。感光ドラム3a上に形成担持された上記第1色のY色トナー像は、感光ドラム3aと中間転写体20とのニップ部を通過する過程で中間転写体20の外周面に中間転写されていく。この中間転写は、1次転写帯電器6aによって中間転写体20に印加される1次転写バイアスにより形成される電界と圧力によりなされる。
以下、同様に、第2色のM色トナー像、第3色のC色トナー像、第4色のBk色トナー像が順次に中間転写体20上に重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー像が形成される。合成カラートナー像は、用紙Pの4辺端部より一定の余白部を残して形成される。中間転写体20に対する一次転写が終了した各感光ドラムは、それぞれのクリーナ4a、4b、4c、4dにより転写残トナーをクリーニング、除去され、引き続き次の潜像の形成以下に備えられる。
11は2次転写ローラであり、中間転写体20に対応し平行に軸受させて下面部に接触させて配設してある。2次転写ローラ11には、2次転写バイアス源によって所望の2次転写バイアスが印加されている。
中間転写体20上に重畳転写された合成カラートナー像の用紙Pへの転写は次のようになされる。即ち、給紙カセット10からレジストローラ12、転写前ガイドを通過して中間転写体20と2次転写ローラ11との当接ニップに所定のタイミングで記録材Pが給送され、同時に2次転写バイアスがバイアス電源からに印加される。この2次転写バイアスにより中間転写体20から用紙Pへ合成カラートナー像が一括して転写される。
用紙Pに対するトナー像の2次転写後に中間転写体20上に残留したトナー及びその他の異物は、中間転写体20の表面にクリーニングウェブ(不織布)30を当接して、拭い取るようにしている。トナー像の2次転写を受けた用紙Pは定着装置7へ順次導入され、用紙に熱と圧力を加えることで定着される。定着装置7を出た用紙Pは片面プリントモードである場合には、前述のように、フラッパー110により排出パス114側に導かれて排出トレイ115に排出される。
両面プリント(両面印刷)モードである場合には、1面目プリント済の用紙Pはフラッパー110により反転パス111に導かれる。その用紙Pは反転ローラ112により反転搬送(スイッチバック搬送)されて両面パス113へと導かれる。そして、用紙Pは再びレジストローラ12、転写前ガイドの経路を搬送されて、中間転写体20と2次転写ローラ11との当接ニップに表裏反転された状態で再導入される。これにより、用紙Pの2面目に対して未定着のトナー像が形成される。その用紙Pが定着装置に導入されて2面目の未定着のトナー像の定着処理を受ける。
これにより、両面画像形成物(両面プリント、両面コピー)が定着装置7を出て、片面プリントの場合と同様に、フラッパー110により排出パス114側に導かれて排出トレイ115に排出される。
(2)定着装置
図3は本実施例における定着装置7の要部の概略図である。この定着装置7はいわゆる下ベルト構成のベルト定着装置であり、加熱源721を有する定着回転体である定着ローラ71を備えた定着ローラ部70を有する。そして、定着ローラ71の下側に配設されている、無端ベルト状の定着ベルト731、加圧パッド部740等を備えた加圧ユニットである定着ベルトユニット73を有する。
定着ローラ71はアルミ等からなる芯金711の表層に設けられたシリコンゴムからなる弾性層712と、弾性層712の表層に設けられ、PFEチューブからなるトナーの離型性を高めるための離型層713が設けられている。また、定着ローラ内部には加熱源であるヒータ721が中心部近傍に配置されている。
定着ローラ71は、制御装置(制御部)8で制御される駆動モータ(駆動部)M1の駆動力が駆動伝達機構(不図示)を介して伝達されて、矢印Aの時計方向に所定の制御タイミングで所定の周速度で回転駆動される。
また、ヒータ721は給電部Vから電力が供給されて発熱することで定着ローラ71を内部から加熱する。そして、定着ローラ71の表面温度がサーミスタ722により検知されて、その検知温度情報が制御装置8にフィードバックされる。制御装置8はその検知温度情報に基づいて、定着ローラ71の表面温度が所定の温度に立ち上げられて維持されるように給電部Vからヒータ721への供給電力を制御する。本実施例においては、使用される用紙Pの坪量、普通紙・コート紙などの種類に応じて150〜180℃の範囲で切り替えて制御している。
定着ベルトユニット73において、後述するように、定着ローラ71に離接可能に圧接する加圧回転体である定着ベルト731は、入り口ローラ732、分離ローラ733及びステアリングローラ734により張架されている。分離ローラ733はSUS等の金属からなり、定着ベルト731を介して定着ローラ71と圧接している。
ステアリングローラ734は定着ベルト731に張りを与えるテンションローラとして機能する。また、ステアリングローラ734は一端が矢印Tの方向に移動可能となっており、制御装置8で制御されるステアリング機構(不図示)によりその一端が所定に移動されることにより、定着ベルト731の回転に伴う寄り移動の修正がなされる。
加圧パッド部740は、入り口ローラ732と分離ローラ733の間に配置されると共に、SUS等の金属からなるベース741と、加圧パッド742と、加圧パッド742と定着ベルト731との間に配置された摺動シート743とを備えている。摺動シート743はPIフィルム等からなるものであり、加圧パッド742はシリコンゴム等からなるものである。
入り口ローラ732と加圧パッド部740の間にはシリコンオイルが含浸されているオイルフェルト735が設けられている。そして、このオイルフェルト735により定着ベルト731の内面にオイルを塗布することにより、定着ベルト731と摺動シート743との摩擦力を低減している。
定着ベルト731が定着ローラ71に対して分離ローラ733と加圧パッド742の部分で所定の加圧力で圧接されて定着ローラ71と定着ベルト731との間にシート搬送方向Hにおいて幅広の定着ニップ(圧接部)Mが形成される。
本実施例の定着装置7においては、定着ベルト731は、定着ローラ71がA方向に回転するとき、不図示の駆動ギア列により同期して分離ローラ733がB方向に回転する。その結果、定着ベルト731は分離ローラ733の外周面との摩擦力により、C方向に循環回転する。分離ローラ733の駆動列は定着ベルトユニット73が定着ローラ71に圧接していても離間していても連結しており、定着ベルト731は常に回転動作をしている。
入り口ローラ732の内部には加熱源であるヒータ738が中心部近傍に配置されている。ヒータ738は給電部Vから電力が供給されて発熱して入り口ローラ732を内部から加熱する。この入り口ローラ732の熱により回転する定着ベルト731が加熱される。そして、入り口ローラ732の表面温度がサーミスタ737により検知され、その検知温度情報が制御装置8にフィードバックされる。制御装置8はその検知温度情報に基づいて、入り口ローラ732の表面温度が所定の温度に立ち上げられて維持されるように給電部Vからヒータ737への供給電力を制御する。
本実施例では入り口ローラ732の表面温度が100℃に立ち上げられて維持されるように加圧ベルトヒータ738への供給電力を制御している。
そして、定着ニップMに画像形成部の側から未定着のトナー像を担持した用紙Pが導入されて挟持搬送されることで、シート上のトナー像が加熱加圧されて定着される。即ち、定着ローラ71と定着ベルト731がトナー像を担持した用紙Pをその間のニップMで挟持搬送して加熱する回転体対である。定着ローラ71が用紙Pの未定着のトナー像の担持面側に対応する。定着ベルト731が用紙Pの未定着のトナー像の担持面側とは反対面側に対応する。
図4と5により、加圧ユニットである定着ベルトユニット73を定着ローラ71に離接可能に当接させる加圧機構(移動機構)75を説明する。加圧機構75は定着ベルトユニット73の両端側に設けられているが、図4、図5では片側の加圧機構75のみを示している。
図4は加圧機構75の加圧動作により定着ベルトユニット73が持ち上げられて定着ベルト731が定着ローラ71に所定に圧接する定着位置に移動されている状態時を示している。図5は加圧機構75の加圧解除動作により定着ベルトユニット73が持ち下げられて定着ベルト731が定着ローラ71から離間している待機位置(離間位置)に移動されている状態時を示している。
加圧機構75は、入り口ローラ732、分離ローラ733を回転自在に保持し、回動軸754を中心に回動可能なローラ加圧ホルダ751を備えている。また、加圧パッド部740を保持し、且つ回動軸を中心に回動可能なパッド加圧ホルダ752を備えている。さらに、ローラ加圧ホルダ751及びパッド加圧ホルダ752を下方より保持し、かつ回動軸754を中心に回動自在な加圧ホルダ753を備えている。
757は加圧ホルダ753とローラ加圧ホルダ751との間に配されたローラ加圧バネである。758は加圧ホルダ753とパッド加圧ホルダ752との間に配されたパッド加圧バネである。760は加圧カム761が固着された軸、759は加圧ホルダ753に設けられているカム受部であり、加圧カム761が当接する。
軸760は制御装置8で制御される駆動モータ(駆動部)M2の駆動力が駆動伝達機構(不図示)を介して伝達されて回転駆動される。即ち、加圧カム761が回転される。加圧カム761が、図4のように、大隆起部761aが上向きにされた回転角姿勢にされて停止されることで、加圧ホルダ753が回動軸754を中心に持ち上げ回動される。
これに伴い、ローラ加圧ホルダ751とパッド加圧ホルダ752も回動軸754を中心に持ち上げ回動される。この時、ローラ加圧バネ757とパッド加圧バネ758が共に圧縮される。この両バネ757と758の圧縮反力で、分離ローラ733と加圧パッド部740がそれぞれ定着ベルト731を介して定着ローラ71に対して所定の加圧力SF、PFで圧接した状態になる。即ち、定着ベルトユニット73が持ち上げられて定着ベルト731が定着ローラ71に所定に圧接した定着位置に移動されて保持される。
一方、加圧カム761が、図5のように、小隆起部761bが上向きにされた回転角姿勢にされて停止されることで、加圧ホルダ753が回動軸754を中心に持ち下げ回動される。これに伴い、ローラ加圧ホルダ751とパッド加圧ホルダ752も回動軸754を中心に持ち下げ回動される。これにより分離ローラ733と加圧パッド部740が定着ローラ71から離間する。ローラ加圧バネ757とパッド加圧バネ758は共に圧縮が解除される。即ち、定着ベルトユニット73が持ち下げられて定着ベルト731が定着ローラ71から離間した待機位置に移動されて保持される。
このように、加圧機構75は、定着回転体である定着ローラ70と加圧回転体である定着ベルト731を定着ニップMを形成するように圧接させた圧接状態(定着位置)と定着ニップMを解除させた離間状態(待機位置)とに転換する転換機構である。
制御装置8は、画像形成装置の待機状態時(スタンバイ時)等の非画像形成時には定着ベルトユニット73が図5のように待機位置に保持されるように加圧機構75の駆動モータM2を制御する。そして、画像形成動作時には定着ベルトユニット73が図4のように定着位置に保持されるように加圧機構75の駆動モータM2を制御する。
780は定着ニップMにおけるジャムシートを検知するシート有無検知センサである。このセンサ780は入り口ローラ732のシート搬送方向Hの上流側に設けられたシートガイド部材であるシートガイド770の部分に加圧ホルダ753の動作と関連付けて配設されている。センサ780は、支軸782を中心に揺動自在に設けられたレバー部材であるセンサレバー783と、検知部であるフォトインタラプタ784とを有している。センサ780の配設構成は本件発明の要点外であるので、その詳細説明は省略する。
定着ベルトユニット73の下方には、制御装置8で制御されるベルト冷却ファン(冷却器)790が配設されており、定着ベルト731へ向けて冷却風を吹き付けることにより定着ベルト731の表面温度を低下させる役割を担っている。
前述したように、定着ベルトユニット73の分離ローラ733の駆動列が、定着ベルトユニット73が定着ローラ71に圧接していても離間していても連結している。そのため、定着ベルト731は定着ローラ71が回転駆動されているときはそれに連動して回転動作をしている。これにより、ベルト冷却ファン790による冷却風が吹き付けられる定着ベルト領域が常に移動し、定着ベルト731の全体が冷却されるようになっている。
ベルト冷却ファン790は制御装置8により、その動作タイミングと動作条件を制御されており、サーミスタ737が検知する入口ローラ732の温度が一定値以上を超えた時に動作しており、本実施例ではその閾値を110℃としている。
ここで、前述したように、定着ローラ71と定着ベルト731が圧接している状態が長く続くと定着ベルト731の昇温が顕著化し、両面プリント時の表面のグロスが上がってしまう可能性がある。そして、マルチプリントにおいて、用紙と用紙の間隔が広がると、定着ローラ71と定着ベルト731の圧接状態が長く続くことになる。用紙と用紙の間隔が広がる場合の一つとして、両面プリント時に、マルチプリントジョブの最初の数枚と最後の数枚の用紙間隔が広がる場合が挙げられる。
図9は、片面プリント時の装置内の用紙P1の流れを模式的に表した図である。片面プリント時の用紙P1同士の間隔は、用紙サイズに応じて定められた間隔でもって給紙カセット10から順次に用紙P1が給紙され、トナー像の転写を受けた用紙Pは定着装置7へ導入された後、片面画像形成物として排出トレイ115に排出される。この場合の用紙間隔は比較的短いものとなっている。
図10は、両面プリント時のジョブ初期における装置内の用紙の流れを模式的に表した図である。両面プリント時の用紙P1同士の間隔は、定着装置7を一度通過した用紙P2が、反転ローラ112により反転されて両面パス113へと導かれる。そして、再び定着装置9へと導入されるときに、まだ定着装置7を通過していない用紙P1と用紙P1との間に挿入されるように搬送される。従って、両面プリント時の用紙間隔は、用紙1枚分以上の間隔となるように給紙カセット10から給紙タイミングが調整されている。
図11は、両面プリント時のジョブ中期における装置内の用紙の流れを模式的に表した図である。ジョブ中期においては、表面をプリントするために給紙カセット10から給紙される用紙P1と、一度定着装置7を通過し、裏面をプリントするために再度定着装置7へ導入される用紙P2とが交互に搬送される状態となる。この時、用紙P1と用紙P2との間の用紙間隔は、片面プリント時に用紙サイズに応じて定められた間隔と同等になる様になっている。表面と裏面との両方がプリントされた用紙P3は排出トレイ115に排出される。
図12は、両面プリント時のジョブ後期における装置内の用紙の流れを模式的に表した図である。ジョブ後期においては、表面へのプリントがすべて終了し、裏面へのプリントのために定着装置7へ導入される用紙P2のみが装置内にいる状態となる。この時の用紙間隔は用紙1枚分以上の間隔となっている。
以上のように、両面プリント時においては表面のプリントと裏面のプリントが交互に行われるよう用紙の搬送が行われるためジョブの初期と後期において用紙間隔が比較的広がった状態となる。
図13は上記で説明した、両面プリントジョブにおいて定着装置7に用紙が導入されるタイミングとそれに対応した定着ベルト表面温度の推移の一般的な状態を模式的に示したものである。
以下、表面へのプリントが広い用紙間隔でもって搬送される時間帯をジョブ初期T1、表面と裏面とへのプリントが交互に搬送される時間帯をジョブ中期T2、裏面へのプリントが広い用紙間隔でもって搬送される時間帯をジョブ後期T3と表現する。
このようにジョブ初期T1とジョブ後期T3では、用紙間隔が広がるため、用紙間において定着ローラ71と定着ベルト731が直接接触し、定着ベルト731の表面温度が上昇する。ジョブ中期においては表面と裏面が交互に導入されるため用紙間隔が狭まり、定着ベルト731の表面温度の上昇は緩和される。なお、ジョブ初期T1とジョブ後期T3の間に搬送される用紙の数は画像形成装置の用紙搬送スピード、装置の搬送経路長、用紙の搬送方向長さなどによって変化する。
最終的には、ジョブ後期T3の最終用紙が定着されるタイミングにおいて定着ベルト731の表面温度は高温点Pに到達する。つまり、定着ベルト731の表面温度が高温点P1に到達する付近においては、画像不良が発生する可能性がある。すなわち、両面プリント時のジョブ初期T1、ジョブ後期T3のように用紙間が広がる条件においては、より定着ベルト731の表面温度を冷却することが望まれる。
図6は、本実施例1の画像形成装置において、両面プリントを実施した時の定着装置7に用紙が導入されるタイミングとそれに対応した定着ベルト表面温度の推移を模式的に示したものである。この画像形成装置において両面プリントを実施した場合、ジョブ中期T2とジョブ後期T3との間にジョブ中断期T4を設ける。
ジョブ中期T2が終了したとき、制御装置8は駆動モータM2を動作させ、定着ベルトユニット73を図4の定着位置から図5の待機位置に移動させる。すると、定着ベルト表面温度は定着ローラ71からの熱移動が遮断されるため、温度が低下し始める。同時に装置内部の用紙の搬送を一旦停止して待機させる。
一定時間が経過したらジョブ中断期T4を終了し、駆動モータM2を動作させ、定着ベルトユニット73を図5の待機位置から図4の定着位置に移動させる。同時に一旦停止させていた用紙の搬送を再開し、ジョブ後期T3へ移行し、残りの用紙の定着を完了させ装置外へ搬出する。
このジョブ中断期T4を間に設けることにより、定着ベルト731の表面温度が一旦低下するため、その後ジョブ後期T3で再度定着ベルト731の表面温度は上昇し始めるが最終的な到達温度P2を低く抑えることができる。
本実施例においては、定着ベルト731の表面温度が130℃を超えてしまうと、用紙の表面と裏面とのグロス差が顕著になることが事前の検証で明らかになっている。ジョブ中断期T4の区間を5秒以上取ることにより、ジョブ後期T3での到達温度P2を115〜120℃程度に低減させることができ、表面と裏面のグロス差も問題ない範囲に収めることができた。
なお、ジョブ中断期T4の期間中にベルト冷却ファン790を動作させ、さらに冷却効果を促進させることも可能である。ベルト冷却ファン790を動作させると定着ベルト731へ向けて、およそ風量0.6m^3/minの冷却風が装置外から送り込まれ、冷却が行われる。
図1は以上の動作をフローチャートに表したものである。マルチの両面プリントがスタートした場合において(S1)、ジョブ中期T2が終了したら(S2)、制御装置8によって駆動モータM2を動作させる。これにより、定着ベルトユニット73を定着ローラ71から離間させる同時に、用紙の搬送を一旦停止させ待機させる(S3)。
定着ベルトユニット73が定着ローラ71から離間した状態(待機位置)を保ったまま一定時間経過させる(S4)。ここで定着ベルト731の表面温度を低下させ、再度、制御装置8により駆動モータM2を動作させ、定着ベルトユニット73を定着ローラ71に圧接させる(定着位置)。同時に、用紙の搬送を再開し(S4)、ジョブを完了させる。
本実施例においては、定着ベルトユニット73の離間、圧接動作にかかる時間と一定時間のウェイトを含めてジョブ中断期T4が5秒程度となっている。この時間は定着ベルト731の表面温度が十分冷却されるのに必要な時間を設ければよく、定着ベルト731の熱容量等で変動する冷却のされやすさ、離間、圧接動作にかかる時間などによって、適宜決定することができる。
用紙の表面(一方面)に画像形成する画像形成動作とその用紙の裏面(他方面)に画像形成する画像形成動作とで用紙の両面に画像形成する両面印刷を複数の用紙を連続的に導入して行う際に、制御装置8が行う上記の制御をまとめると次のとおりである。
画像形成器で表面に未定着のトナー像が形成された用紙と画像形成器で裏面に未定着のトナー像が形成された用紙とが交互に定着装置7に搬送される状態時がマルチの両面印刷のジョブ中期T2である。また、画像形成器で他方面に未定着のトナー像が形成された用紙が連続で前記定着部に搬送される状態時がマルチの両面印刷のジョブ後期T3である。
制御装置8は、ジョブ中期T2からジョブ後期T3に切り替わるタイミングにおいて、定着装置よりも用紙搬送方向(シート搬送方向)の上流側に残っている用紙の搬送を一旦停止する。そして、加圧機構75によって定着ローラ71および定着ベルト731を離間状態に転換して定着ベルト731の表面温度を低下させる制御モードを実行する。
以上の動作を設けることにより、定着ベルト731の表面温度の過昇温を抑制し、良好な画像をプリントする画像形成装置を提供することができる。
《実施例2》
以下、本発明を実施するための、別の最良の形態を詳細に説明する。なお、画像形成装置100の概略構成、定着装置7の概略構成は実施例1と同様であるため、詳細な説明を割愛する。
本実施例2では、図7に示されるように、マルチの両面プリント時においてジョブ初期T1とジョブ後期T3の間、ベルト冷却ファン790を強制的に動作させる。これにより、ジョブ初期T1とジョブ後期T3における定着ベルト731の表面温度の上昇を抑制している。
ベルト冷却ファン790の基本動作として、入り口ローラ732に当接しているサーミスタ737の検知する温度が一定値以上を超えた場合に動作するようしている。一方、定着ローラ71に定着ベルト731が直接接触することによって表面温度が上昇する場合、入口ローラ732の温度よりも、定着ベルト731の表面温度の方が高くなる。
そのため、サーミスタ737の温度でベルト冷却ファン790を動作させる制御では、定着ローラ71に定着ベルト731が直接接触している場合に動作しない場合がある。したがって、本実施例ではジョブ初期T1とジョブ後期T3の間ベルト冷却ファンを強制的に動作させている。その結果、定着ベルト731の表面温度の最終的な到達温度P3を100〜110℃程度に低く抑えることができ、用紙の表面と裏面とのグロス差が顕著になり始める130℃に対して十分低い値に収めることができる。
図8は以上の動作をフローチャートに表したものである。マルチの両面プリントが実施されたとき(S6)、ジョブ初期T1が開始されたタイミングで(S7)、ベルト冷却ファン790を強制的にONして定着ベルト731を冷却しながらプリント動作を行う(S8)。
ジョブがジョブ初期T1からジョブ中期T2に切り替わり、用紙の表面と裏面のプリントが交互に流れ始めたら(S9)、ベルト冷却ファン790の制御を元に戻し、サーミスタ737の温度によってOFFとONを切り替える動作にする(S10)。
続いて、ジョブ後期T3が開始されるタイミングで(S11)、またベルト冷却ファン790を強制的にONして定着ベルト731を冷却しながらプリント動作を行う動作に変更する(S12)。そして、ジョブ後期T3が終了したら(S13)、またベルト冷却ファン790の制御を元に戻す(S14)。
本実施例における、マルチの両面印刷を行う際に、制御装置8が行う上記の制御をまとめると次のとおりである。画像形成器で表面(一方面)に未定着のトナー像が形成された用紙が連続で定着装置7に搬送される状態時がマルチの両面印刷のジョブ初期T1である。また、画像形成器で裏面(他方面)に未定着のトナー像が形成された用紙が連続で定着装置7に搬送される状態時がマルチの両面印刷のジョブ後期T3である。制御装置8は、そのジョブ初期T1とジョブ後期T3との、いずれか、または双方において、ベルト冷却ファン790を動作させて定着ベルト731の表面温度を低下させる制御モードを実行する。
本実施例においては、用紙間隔が開くことがあらかじめ分かっているジョブ初期T1とジョブ後期T3にファンを動作させることにより、用紙間におけるベルト昇温を低減させることができる。
また、実施例1と比較して、ジョブ中断期T4を設けていないため、プリント生産性を落とすことなく、定着ベルト731表面温度の過昇温を抑制し、良好な画像をプリントする画像形成装置を提供することができる。
《その他の事項》
(1)定着装置の定着回転体と加圧回転体は、実施例の定着装置のように、定着回転体がローラ体であり、加圧回転体が無端のベルトである装置構成に限られない。定着回転体がベルトであり、加圧回転体がローラ体である装置構成、定着回転体と加圧回転体の両方がベルト若しくはローラ体である装置構成であってもよい。
(2)定着回転体と加圧回転体を圧接状態と離間状態とに転換する転換機構(加圧機構)は定着回転体を加圧回転体に対して接離移動させる構成であってもよい。また両者を互いに接離移動させる構成であってもよい。