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JP6577370B2 - 車両前部構造 - Google Patents

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Description

本発明は、車両前部構造に関する。
下記特許文献1には、フロントサイドメンバの前端部の外側面に車両幅方向外側へ突出するガセットを配設する技術が開示されている。なお、ガセットは、平面視で直角三角形状に形成されている。また、フロントサイドメンバの前端部とバンパリインフォースメントとの間には、衝突荷重の入力により軸圧縮変形するクラッシュボックスが介在されている。ガセットの前端位置は、フロントサイドメンバとクラッシュボックスとの接続位置と同じか、又は当該接続位置よりも車両後方側へ下がった位置に設定されている。さらに、ガセットの後端部とパワーユニットとが車両前後方向にオーバーラップするように両者の位置関係が設定されている。
上記構成によれば、微小ラップ衝突時になると、バリアからの衝突荷重をガセットで受け、更に入力された衝突荷重をガセットの後端からフロントサイドメンバの車両幅方向外側の側面に入力させる。これにより、フロントサイドメンバが車両幅方向内側へ屈曲し(内折れし)、屈曲部がパワーユニットを車両幅方向内側(反衝突側)へ押し込む。その結果、パワーユニットに車両幅方向内側(反衝突側)への横力が発生し、バリアをすり抜けることができる。
特開2013−212757号公報
しかしながら、上記先行技術による場合、フロントサイドメンバの前端部の車両幅方向外側の側面から車両幅方向外側へ張出すガセットを設ける構成になっているため、ヘッドライト等の周辺部品のレイアウトに制約が生じる。すなわち、車両の意匠の自由度が制限される。従って、上記先行技術は、この点において改善の余地がある。
本発明は上記事実を考慮し、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突発生時又は発生予知時にパワーユニットに反衝突側への横力を生じさせることができ、しかも車両の意匠の自由度を高めることができる車両前部構造を得ることが目的である。
請求項1記載の本発明に係る車両前部構造は、車両前部の両サイドに車両前後方向を長手方向として配置された左右一対のフロントサイドメンバと、前記左右一対のフロントサイドメンバの間に配置されたパワーユニットと、前記左右一対のフロントサイドメンバにおける前記パワーユニットとの対向位置にそれぞれ設けられ、非作動時には前記パワーユニットから離間した位置に打撃部が保持され、作動時には前記パワーユニットの対向面を打撃部が車両幅方向内側へ向けて強打する打撃手段と、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突の発生を予知する衝突予知センサと、通常の車両走行時には前記打撃手段を非作動状態とし、前記衝突予知センサによる検出結果に基づいて微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突の発生が不可避であると判断した場合には、衝突側の前記フロントサイドメンバに設けられた前記打撃手段を作動させる制御部と、を有している。
請求項1記載の本発明によれば、左右一対のフロントサイドメンバにおけるパワーユニットとの対向位置には、打撃手段がそれぞれ設けられている。
ここで、通常の車両走行時には、制御部によって、左右一対の打撃手段は非作動状態とされる。このため、左右一対の打撃手段の打撃部は、パワーユニットから離間した位置に保持される。
この状態から、衝突予知センサによる検出結果に基づいて、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突の発生が不可避であると制御部によって判断された場合には、制御部によって、衝突側のフロントサイドメンバに設けられた打撃手段(以下、単に「衝突側の打撃手段」と称す。)が作動される。これにより、当該衝突側の打撃手段の打撃部が、パワーユニットにおける打撃手段との対向面を車両幅方向内側へ向けて強打する。その結果、パワーユニットに衝突側と反対側のフロントサイドメンバ側へ向かう横力が発生し、バリアをすり抜けることが可能となる。
しかも、本発明では、打撃手段を作動させてパワーユニットに横力を発生させる構成を採用し、フロントサイドメンバの車両幅方向外側の側面に、車両幅方向外側へ張出す突出部を設ける構成を採用していない。このため、周辺部品のレイアウトに制限が生じることもない。
請求項2記載の本発明に係る車両前部構造は、車両前部の両サイドに車両前後方向を長手方向として配置された左右一対のフロントサイドメンバと、前記左右一対のフロントサイドメンバの間に配置されたパワーユニットと、前記左右一対のフロントサイドメンバにおける前記パワーユニットとの対向位置にそれぞれ設けられ、非作動時には前記パワーユニットから離間した位置に打撃部が保持され、作動時には前記パワーユニットの対向面を打撃部が車両幅方向内側へ向けて強打する打撃手段と、通常の車両走行時には前記打撃手段を非作動状態とし、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突発生時又は発生予知時には衝突側の前記フロントサイドメンバに設けられた前記打撃手段を作動させる制御部と、を有し、前記打撃手段は、車体に固定されると共に前記制御部によってその作動が制御され、作動することによってガスを発生するインフレータと、前記フロントサイドメンバにおける前記パワーユニットとの対向位置に折り畳まれた状態で配置され、前記インフレータから供給されたガスにより前記パワーユニット側へ膨張展開して当該パワーユニットの対向面を打撃するエアバッグと、を含んで構成されている。
請求項2記載の本発明によれば、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突発生時又は衝突予知時になると、制御部によってインフレータが作動される。これにより、ガスが発生し、当該ガスは折り畳まれた状態のエアバッグ内へ供給される。その結果、エアバッグがパワーユニット側へ瞬時に膨張展開し、パワーユニットにおけるエアバッグとの対向面を打撃する。
このように打撃手段がインフレータ及びエアバッグを含んで構成されているため、設計時にエアバッグの内圧を任意に設定することができる。つまり、設計時にエアバッグによる打撃力の大きさ、ひいてはパワーユニットに発生させる横力の大きさを任意に設定することができる。しかも、エアバッグは折り畳みが可能であるので、設置スペース的にも有利である。
請求項3記載の本発明に係る車両前部構造は、車両前部の両サイドに車両前後方向を長手方向として配置された左右一対のフロントサイドメンバと、前記左右一対のフロントサイドメンバの間に配置されたパワーユニットと、前記左右一対のフロントサイドメンバにおける前記パワーユニットとの対向位置にそれぞれ設けられ、非作動時には前記パワーユニットから離間した位置に打撃部が保持され、作動時には前記パワーユニットの対向面を打撃部が車両幅方向内側へ向けて強打する打撃手段と、通常の車両走行時には前記打撃手段を非作動状態とし、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突発生時又は発生予知時には衝突側の前記フロントサイドメンバに設けられた前記打撃手段を作動させる制御部と、を有し、前記打撃手段は、車体に固定されると共に前記制御部によってその作動が制御され、作動することによって推進力を発生するアクチュエータと、前記フロントサイドメンバにおける前記パワーユニットとの対向位置に格納された状態で保持され、剛体で構成されると共に前記アクチュエータによって発生した推進力が作用することにより前記パワーユニット側へ伸長して当該パワーユニットの対向面を打撃する伸長部材と、を含んで構成されている。
請求項3記載の本発明によれば、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突発生時又は衝突予知時になると、制御部によってアクチュエータが作動される。これにより、推進力が発生し、当該推進力はフロントサイドメンバにおけるパワーユニットとの対向位置に格納された状態で保持されている伸長部材に作用する。その結果、剛体で構成された伸長部材がパワーユニット側へ瞬時に伸長し、パワーユニットにおける伸長部材との対向面を打撃する。
このように打撃手段がアクチュエータ及び剛体で構成された伸長部材を含んで構成されているため、エアバッグのようにパワーユニットを打撃した際にパワーユニットから受ける反力によって外形が変化する(変形する)ことはない。このため、パワーユニットを打撃したときの応答性が良い。
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両前部構造は、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突発生時又は発生予知時にパワーユニットに反衝突側への横力を生じさせることができ、しかも車両の意匠の自由度を高めることができるという優れた効果を有する。
請求項1記載の本発明に係る車両前部構造は、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突の予知に続いて当該衝突が発生した場合に、当該衝突の度合いを軽減することができるという優れた効果を有する。
請求項2記載の本発明に係る車両前部構造は、パワーユニットに効果的に横力を発生させることができると共に車両搭載性にも優れるという優れた効果を有する。
請求項3記載の本発明に係る車両前部構造は、パワーユニットに迅速に横力を発生させることができるという優れた効果を有する。
第1実施形態に係る車両前部構造の要部をエアバッグ装置の非作動状態で示す平面図である。 図1に示されるエアバッグ装置が作動した状態を示す図1に対応する平面図である。 図1に示されるエアバッグ装置の分解斜視図である。 第2実施形態に係る車両前部構造を示しており、(A)はアクチュエータが作動する前の状態を示す平面図であり、(B)はアクチュエータが作動した状態を示す(A)に対応する平面図である。
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図3を用いて、本発明の第1実施形態に係る車両前部構造について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
<全体構成>
図1に示されるように、車両前部10のパワーユニット室12には、パワーユニット14が配設されている。また、車両前部10の両サイドには、左右一対のフロントサイドメンバ16がパワーユニット14を挟むように車両前後方向を長手方向として配設されている。なお、図1には、乗員側から見て左側のフロントサイドメンバ16のみが図示されている。各フロントサイドメンバ16は、パワーユニット室12側に配置されたフロントサイドメンバインナ18と、その車両幅方向外側に配置されたフロントサイドメンバアウタ20とをスポット溶接等によって接合することにより、矩形閉断面構造に形成されている。
なお、図1に示されるフロントサイドメンバ16では、フロントサイドメンバインナ18及びフロントサイドメンバアウタ20がいずれもハット形の断面形状とされているが、断面形状はこれに限らない。例えば、ハット形の断面形状のフロントサイドメンバインナ又はアウタに平板状のフロントサイドメンバアウタ又はインナをスポット溶接等によって接合することで、矩形閉断面構造のフロントサイドメンバを構成してもよい。
上述したフロントサイドメンバ16の前端部には、矩形平板状の第1取付プレート22が接合されている。さらに、フロントサイドメンバ16の車両前方側には、中空直方体形状のクラッシュボックス24が配設されている。クラッシュボックス24は一例として金属製とされており、所定値以上の軸圧縮荷重が作用すると圧縮塑性変形するようになっている。なお、このクラッシュボックス24は中空矩形の閉断面構造とされているが、これに限らず、六角形状や八角形状等の筒状体で構成してもよい。
上記構成のクラッシュボックス24の後端部には矩形平板状の第2取付プレート26が接合されている。第2取付プレート26は第1取付プレート22に重ね合わされて、ボルト28及びナット30で締結固定されている。
上述した左右一対のクラッシュボックス24の車両前方側には、フロントバンパリインフォースメント32が配設されている。フロントバンパリインフォースメント32は、車両幅方向を長手方向として配置されている。左右のクラッシュボックス24の前端部がフロントバンパリインフォースメント32の後端面に図示しない締結手段によって締結固定されている。
<要部構成>
次に、本実施形態に係る車両前部構造の要部の構成について詳細に説明する。
図1及び図3に示されるように、上述したフロントサイドメンバ16の前部の車両幅方向内側には、「打撃手段」としてのエアバッグ装置34が配設されている。具体的に説明すると、フロントサイドメンバインナ18は、パワーユニット室12側を向く側壁部18Aと、側壁部18Aの上縁から車両幅方向外側へ屈曲された上壁部18Bと、側壁部18Aの下縁から車両幅方向外側へ屈曲されて上壁部18Bと平行に延出された下壁部(図示省略)と、を備えている。
フロントサイドメンバインナ18の側壁部18Aにおける車両前後方向の前部側(パワーユニット14の側部と車両幅方向に対向する部位)には、所定径寸法のインフレータ挿通孔36が形成されている。さらに、側壁部18Aには、インフレータ挿通孔36の周囲に、複数個のボルト挿通孔38が形成されている。
一方、エアバッグ装置34は、作動することにより大量のガスを発生する扁平な円柱形状のインフレータ40と、通常は折り畳まれた状態とされ、インフレータ40から供給されたガスによって膨張展開する「打撃部」としての金属製のエアバッグ42と、を主要部として構成されている。
一例として、インフレータ40の内部には、燃焼することによりガスを発生する図示しないガス発生剤が充填されている他、燃焼後の砕片を除去するフィルタやガス冷却用のクーラント等が配設されている。これにより、インフレータ40の軸芯部に設けられたスクイブ(点火装置)に通電されると、ガス発生剤が燃焼して大量のガスが複数のガス噴出孔44から噴出されるようになっている。なお、上記インフレータ40は扁平な円柱形状のディスクタイプのインフレータであったが、これに限らず、略円柱形状のインフレータを採用してもよい。また、上記インフレータ40では、ガス発生剤を用いてガスを発生させる方式を採用したが、これに限らず、高圧ガス封入方式のインフレータやガス発生剤と高圧ガスの両方を使ったハイブリッド方式のインフレータを採用してもよい。
上述したインフレータ40の軸方向中間部には、環状のフランジ部40Aが一体に形成されている。フランジ部40Aには、フロントサイドメンバインナ18の側壁部18Aに形成されたボルト挿通孔38と同軸上に複数個のボルト挿通孔46が形成されている。
一方、エアバッグ42は金属製とされており、一例として、鋼板やアルミニウム合金板等の金属板をプレス加工することにより構成されている。なお、この種のエアバッグをメタルエアバッグということがある。エアバッグ42は、作動後(展開完了後)の状態では中空の略直方体形状を成しており(図2参照)、作動前の状態では車両前後方向及び車両上下方向に位置する側壁部が蛇腹状に折り畳まれて薄型の直方体形状になっている(図3参照)。このエアバッグ42の基部には、円形のインフレータ挿入孔48が形成されている。そして、インフレータ40のアッパケース側がインフレータ挿入孔48からエアバッグ42内へ挿入され、同じくエアバッグ42内に挿入された図示しないリングプレート(リテーナ)から突出するスタッドボルトを、エアバッグ42及びインフレータ40のフランジ部40Aのボルト挿通孔46の順に挿通させ、フロントサイドメンバインナ18の車両幅方向外側からナット締めすることにより、エアバッグ装置34がフロントサイドメンバインナ18に取り付けられている。なお、本実施形態では、エアバッグ42を金属製としたが、これに限らず、樹脂製としてもよい。
次に、上述したエアバッグ装置34の作動システムについて説明する。インフレータ40のスクイブ(点火装置)は、「制御部」としてのECU(Electronic Control Unit)50と電気的に接続されている。また、ECU50は、衝突検知センサ52とも電気的に接続されている。
衝突検知センサ52の種類としては、一例として加速度センサを用いることが可能である。加速度センサを複数用いることにより、衝突したことの他、衝突形態等を検知することができる。例えば、車両前部10の車両幅方向両側に配設された左右一対のフロントサイドメンバ16の前端部付近に図示しないフロントサテライトセンサをそれぞれ配設すると共に、センタコンソールの下方のフロアに図示しないフロアセンサを配設する手法を採用することができる。
左右のサテライトセンサによって略同等で所定の閾値を超える加速度が検出されれば、自車両がフルラップ前面衝突したと判断することができる。また、左右のサテライトセンサのいずれか一方側のみで、所定の閾値以上の大きな加速度が検出された場合は、自車両がオフセット衝突したと判断することができる。さらに、基準となる閾値を予め複数設定しておき、左右のサテライトセンサのいずれか一方側のみで、より高い方の閾値を超える加速度を検出した場合には、検出されたサテライトセンサ側で微小ラップ衝突が発生したと判断することができる。また、左右のサテライトセンサとフロアセンサとによってそれぞれ検出された加速度の波形から斜突したか否かを判断することができる。以上説明した例では、加速度センサを使った衝突判定システムであったが、これに限らず、他の手法によって衝突形態を判定してもよい。
さらに、衝突形態について補足説明すると、「斜突(MDB斜突、オブリーク衝突)」とは、例えばNHTSAにて規定される斜め前方からの衝突(一例として、衝突相手方との相対角15°、車幅方向のラップ量35%程度の衝突)とされる。この実施形態では、一例として相対速度90km/hrでの斜突が想定されている。なお、NHTSAとは、米国の国家道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration)の略称である。また、微小ラップ衝突とは、自動車の前面衝突のうち、例えばIIHSにおいて規定される衝突相手方との車幅方向のラップ量が25%以下の衝突とされる。例えば、車体骨格であるフロントサイドメンバよりも車両幅方向外側へのオフセット前面衝突が微小ラップ衝突に該当する。この実施形態では、一例として相対速度64km/hrでの微小ラップ衝突が想定されている。なお、IIHSとは、米国道路安全保険協会(Insurance Institute for Highway Safety)の略称である。さらに、「フルラップ前面衝突」とは、試験車を時速55km/hrでコンクリート製の障壁(バリア)に正面衝突させたときの衝突とされる。
(本実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
通常の車両走行時には、ECU50によって、左右一対のエアバッグ装置34は非作動状態とされる。このため、左右一対のエアバッグ装置34のエアバッグ42は、パワーユニット14から離間した位置に保持される。
この状態から、図2に示されるように、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突発生時になると、衝突検知センサ52による検出結果に基づいて、ECU50が乗員側から見て車両前部10の右側又は左側において微小ラップ衝突した又は斜突したと判断する。これにより、ECU50は衝突側のフロントサイドメンバ16に搭載されたエアバッグ装置34のインフレータ40のスクイブ(点火装置)に通電し、インフレータ40を作動させる。インフレータ40が作動すると、大量のガスが発生する。発生したガスは折り畳まれた状態のエアバッグ42内へ供給され、当該エアバッグ42をパワーユニット14側へ膨張させる。なお、エアバッグ42は、フロントサイドメンバインナ18の側壁部18Aに反力を取ってパワーユニット14側へ膨張展開する。
これにより、当該衝突側のエアバッグ42が、パワーユニット14におけるエアバッグ装置34との対向面を車両幅方向内側へ向けて強打する。その結果、パワーユニット14に衝突側と反対側のフロントサイドメンバ16側へ向かう横力Fが発生し、バリア54をすり抜けることが可能となる。
しかも、本実施形態では、エアバッグ装置34を作動させてパワーユニット14に横力を発生させる構成を採用し、フロントサイドメンバ16の車両幅方向外側の側面に、車両幅方向外側へ張出す突出部を設ける構成を採用していない。このため、例えば、ヘッドライト等の周辺部品のレイアウトに制限が生じることもない。
以上より、本実施形態に係る車両前部構造は、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突発生時にパワーユニット14に反衝突側への横力Fを生じさせることができ、しかも車両(特には車両前部10)の意匠の自由度を高めることができる。
また、本実施形態では、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突発生時になると、ECU50によってインフレータ40が作動される。これにより、ガスが発生し、当該ガスは折り畳まれた状態のエアバッグ42内へ供給される。その結果、エアバッグ42がパワーユニット14側へ瞬時に膨張展開し、パワーユニット14におけるエアバッグ42との対向面を打撃する。
このように本実施形態では、パワーユニット14を強打する打撃手段を、インフレータ40及びエアバッグ42を含んで構成されたエアバッグ装置34としたので、設計時にエアバッグ42の内圧を任意に設定することができる。つまり、設計時にエアバッグ42による打撃力の大きさ、ひいてはパワーユニット14に発生させる横力Fの大きさを任意に設定することができる。しかも、エアバッグ42は折り畳みが可能であるので、設置スペース的にも有利である。その結果、本実施形態によれば、パワーユニット14に効果的に横力を発生させることができる。
〔第2実施形態〕
以下、図4を用いて、本発明の第2実施形態に係る車両前部構造について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
図4(A)、(B)に示されるように、この第2実施形態では、第1実施形態のエアバッグ装置34に代えて、「打撃手段」としての伸長装置60を備えている点に特徴がある。
伸長装置60は、車両前後方向に離間して配置された一対のアクチュエータ62と、前後一対のアクチュエータ62に跨って配設された「打撃部」としての伸長部材64と、によって構成されている。
一対のアクチュエータ62は、車体としてのフロントサイドメンバインナ18にそれぞれ固定されており、ECU50によってその作動が制御されている。一例として、アクチュエータ62には、ガスジェネレータ(以下、適宜「GG」と称す。)やインフレータ(ガス発生装置)を用いることができる。
一方、伸長部材64は、剛体とされており、矩形平板状の頂部64Aと、頂部64Aの裏面側から車両幅方向外側へ延出された一対のロッド64Bと、によって構成されている。各ロッド64Bは、アクチュエータ62の軸芯部に軸方向(車両幅方向)移動可能に挿入されている。さらに、ロッド64Bの先端部(アクチュエータ62内に挿入された側の端部)には、図示しないピストンが取り付けられている。ピストンとアクチュエータ62の底部との間の空間にGGやインフレータのガスが供給されることにより、伸長部材64がパワーユニット14側へ瞬時に移動するようになっている。
(作用・効果)
上記構成によれば、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突発生時になると、図4(B)に示されるように、ECU50によってアクチュエータ62が作動される。これにより、推進力が発生し、当該推進力はフロントサイドメンバ16におけるパワーユニット14との対向位置に格納された状態で保持されている伸長部材64のピストンに作用する。その結果、剛体で構成された伸長部材64がパワーユニット14側へ瞬時に伸長し、パワーユニット14における伸長部材64との対向面を打撃する。
このように打撃手段がアクチュエータ62及び剛体で構成された伸長部材64を含んで構成された伸長装置60としたので、エアバッグのようにパワーユニット14を打撃した際にパワーユニット14から受ける反力によって外形が変化する(変形する)ことはない。このため、パワーユニット14を打撃したときの応答性が良い。その結果、本実施形態によれば、パワーユニット14に迅速に横力Fを発生させることができる。
〔上記実施形態の補足説明〕
上述した本実施形態では、実際に衝突したことを衝突検知センサ52で検出して打撃手段を作動させる構成を採ったが、これに限らず、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突の発生を予知した時点で打撃手段を作動させるようにしてもよい。
すなわち、図1等に二点鎖線で付記した例では、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突の発生を予知する衝突予知センサ70を備えている。衝突予知センサ70としては、カメラやミリ波レーダ等を利用することができる。衝突予知センサ70はECU50に電気的に接続されている。
上記構成(システム)によれば、衝突予知センサ70による検出結果に基づいて微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突の発生が不可避であるとECU50によって判断された場合には、ECU50は打撃手段(第1実施形態のエアバッグ装置34や第2実施形態の伸長装置60を作動させる。このため、衝突が起こる以前にパワーユニット14に反衝突側への横力Fを生じさせ、自車両を反衝突側へ移動させ始めることができる。その結果、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突の予知に続いて当該衝突が発生した場合に、当該衝突の度合いを軽減することができる。
また、上述した実施形態では、打撃手段としてエアバッグ装置34、伸長装置60を挙げたが、これに限らず、作動することにより、パワーユニットの側面を強打してパワーユニットに横力を発生させることができる構成であれば、適用可能である。
10 車両前部
14 パワーユニット
16 フロントサイドメンバ(車体)
34 エアバッグ装置(打撃手段)
40 インフレータ
42 エアバッグ
50 ECU(制御部)
52 衝突検知センサ
60 伸長装置(打撃手段)
62 アクチュエータ
64 伸長部材
70 衝突予知センサ

Claims (3)

  1. 車両前部の両サイドに車両前後方向を長手方向として配置された左右一対のフロントサイドメンバと、
    前記左右一対のフロントサイドメンバの間に配置されたパワーユニットと、
    前記左右一対のフロントサイドメンバにおける前記パワーユニットとの対向位置にそれぞれ設けられ、非作動時には前記パワーユニットから離間した位置に打撃部が保持され、作動時には前記パワーユニットの対向面を打撃部が車両幅方向内側へ向けて強打する打撃手段と、
    微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突の発生を予知する衝突予知センサと、
    通常の車両走行時には前記打撃手段を非作動状態とし、前記衝突予知センサによる検出結果に基づいて微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突の発生が不可避であると判断した場合には、衝突側の前記フロントサイドメンバに設けられた前記打撃手段を作動させる制御部と、
    を有する車両前部構造。
  2. 車両前部の両サイドに車両前後方向を長手方向として配置された左右一対のフロントサイドメンバと、
    前記左右一対のフロントサイドメンバの間に配置されたパワーユニットと、
    前記左右一対のフロントサイドメンバにおける前記パワーユニットとの対向位置にそれぞれ設けられ、非作動時には前記パワーユニットから離間した位置に打撃部が保持され、作動時には前記パワーユニットの対向面を打撃部が車両幅方向内側へ向けて強打する打撃手段と、
    通常の車両走行時には前記打撃手段を非作動状態とし、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突発生時又は発生予知時には衝突側の前記フロントサイドメンバに設けられた前記打撃手段を作動させる制御部と、
    を有し、
    前記打撃手段は、
    車体に固定されると共に前記制御部によってその作動が制御され、作動することによってガスを発生するインフレータと、
    前記フロントサイドメンバにおける前記パワーユニットとの対向位置に折り畳まれた状態で配置され、前記インフレータから供給されたガスにより前記パワーユニット側へ膨張展開して当該パワーユニットの対向面を打撃するエアバッグと、
    を含んで構成されている、
    両前部構造。
  3. 車両前部の両サイドに車両前後方向を長手方向として配置された左右一対のフロントサイドメンバと、
    前記左右一対のフロントサイドメンバの間に配置されたパワーユニットと、
    前記左右一対のフロントサイドメンバにおける前記パワーユニットとの対向位置にそれぞれ設けられ、非作動時には前記パワーユニットから離間した位置に打撃部が保持され、作動時には前記パワーユニットの対向面を打撃部が車両幅方向内側へ向けて強打する打撃手段と、
    通常の車両走行時には前記打撃手段を非作動状態とし、微小ラップ衝突及び斜突のいずれかの衝突発生時又は発生予知時には衝突側の前記フロントサイドメンバに設けられた前記打撃手段を作動させる制御部と、
    を有し、
    前記打撃手段は、
    車体に固定されると共に前記制御部によってその作動が制御され、作動することによって推進力を発生するアクチュエータと、
    前記フロントサイドメンバにおける前記パワーユニットとの対向位置に格納された状態で保持され、剛体で構成されると共に前記アクチュエータによって発生した推進力が作用することにより前記パワーユニット側へ伸長して当該パワーユニットの対向面を打撃する伸長部材と、
    を含んで構成されている、
    両前部構造。
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