上述したチョップドストランドマットの製造工程にあっては、最終的に得られるチョップドストランドマットの厚みや強度等をなるべく一定にするため、予めガラスチョップドストランドを均等に分散した状態で堆積させる必要がある。しかしながら、特許文献1に記載のように、実際に、長手寸法の互いに異なるガラスチョップドストランドを混在させてシート状に堆積する場合には、ガラスチョップドストランドの分布が偏る傾向が強い。すなわち、相対的に長手寸法の大きいガラスチョップドストランドを相対的に長手寸法の小さいガラスチョップドストランド中に均等に分散させた状態を安定的に再現することが難しい。そのため、最終的に得られるチョップドストランドマットにおいて、ガラスチョップドストランドが相対的に疎となる部分の強度が相対的に密となる部分の強度に比べて大幅に低下するおそれがある。従って、特許文献1に記載の手段では依然として軽量化と高強度化を両立させるには不十分であった。
上記の問題は、何も自動車用天井材にチョップドストランドマットを適用する場合に限ったことではなく、他の用途の繊維強化複合材にチョップドストランドマットを適用する場合にも同様に起こり得る。
さらにいえば、シート状に堆積したガラスチョップドストランドを次工程に搬送し、又はマット状に成形するために一旦梱包体で梱包した場合においても、ガラスチョップドストランド同士が現状の形態を維持しようとする力が弱いと、均等かつ無秩序に分散した状態が崩れるおそれが高まるため、好ましくない。
以上の事情に鑑み、本明細書では、ガラスチョップドストランドの分布が偏る事態を可及的に防止して、軽量化と高強度化を共に達成することのできるチョップドストランドマットとその製造方法及び製造装置、ガラスチョップドストランド梱包体、並びに自動車用内装材を提供することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
前記課題の解決は、本発明に係るチョップドストランドマットにより達成される。すなわち、このマットは、多数のガラスチョップドストランドが互いに固着してなるチョップドストランドマットであって、ガラスチョップドストランドは、第一のガラスチョップドストランドと、第一のガラスチョップドストランドの1.8倍以上でかつ2.2倍以下の長手寸法を有する第二のガラスチョップドストランドとを有するもので、チョップドストランドマットからガラスチョップドストランドを100本以上含む任意のサイズのマット片を切り出した場合に、このマット片に、第二のガラスチョップドストランドがガラスチョップドストランド100本に対して1本以上でかつ5本以下の割合で含まれる点をもって特徴付けられる。
本発明者らが、ガラスチョップドストランドの長手寸法と、その強度及び分散性との関係についての研究を行った結果、互いに長手寸法の異なる二種類のガラスチョップドストランドを混在させ、かつ相対的に長手寸法の大きい方のガラスチョップドストランドの含有割合を一定の範囲までに留めることで、分散性が良好で、かつ長手寸法の大きい方のガラスチョップドストランドが有する強度を十分に発揮可能となることを見出した。すなわち、チョップドストランドマットの強度向上には、当該マットを構成するガラスチョップドストランドの長寸法化が有効であることは既にわかっていたが、長手寸法が相対的に大きいチョップドストランドの含有割合を多くすると、ガラスチョップドストランドをシート状に堆積させる際、均等に分散させることが難しくなる。そのため、分散状態に起因して低強度領域が部分的に生じ、結果としてチョップドストランドマットの強度低下を招いていた。この点、本発明者らは、相対的に長手寸法の小さいガラスチョップドストランド(第一のガラスチョップドストランド)に対する、長手寸法の大きいガラスチョップドストランド(第二のガラスチョップドストランド)の長手寸法比率を適正な範囲に設定すると共に、その含有割合を従来よりも低く抑えることで、双方のガラスチョップドストランドの分散状態が改善され、チョップドストランドマットとしての強度向上が達成されることを知得するに至った。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、チョップドストランドマットを構成するガラスチョップドストランドが、第一のガラスチョップドストランドと、第一のガラスチョップドストランドの1.8倍以上でかつ2.2倍以下の長手寸法を有する第二のガラスチョップドストランドとを有するものとした。また、チョップドストランドマットからガラスチョップドストランドを100本以上含む任意のサイズのマット片を切り出した場合に、このマット片に、第二のガラスチョップドストランドがガラスチョップドストランド100本に対して1本以上でかつ5本以下の割合で含まれるようにした。第二のガラスチョップドストランドの長手寸法が第一のガラスチョップドストランドの長手寸法の1.8倍未満だと、第二のガラスチョップドストランドによる補強効果を十分に得ることができない。また、2.2倍を超えると、たとえ上述のように第二のガラスチョップドストランドの含有割合を低く抑えていたとしても、分散性が良好でないため好ましくない。一方、第二のガラスチョップドストランドの上記含有割合が1本未満になると、相対的に短いガラスチョップドストランドが疎となる領域を相対的に長いガラスチョップドストランドがカバーする効果が見込めず、また5本を超えると、たとえ第二のガラスチョップドストランドの長手寸法比の上限を上述のように規定していたとしても、分散性の悪化を免れ得ない。そのため、例えば引張り強度の分布が大きくばらつき、チョップドストランドマットの引き出し時にちぎれ(断裂)などを生じるおそれが高まる。以上の理由より、上述の範囲に第二のガラスチョップドストランドの長手寸法比率及び含有割合を設定することで、良好な分散効果と、相対的に長手寸法の大きい第二のガラスチョップドストランドが有する補強効果を共に享受することができる。従って、薄肉化により軽量化を図りつつも、所要の強度(引張り強さ)を安定的に発揮することのできるチョップドストランドマットを提供することが可能となる。
また、本発明に係るチョップドストランドマットは、マット片に、第一のガラスチョップドストランドがガラスチョップドストランド100本に対して95本以上でかつ99本以下の割合で含まれるものであってもよい。
このように、第二のチョップドストランドだけでなく、第一のチョップドストランドの含有割合についても適正な範囲を設定することで、相対的に短いほうの第一のガラスチョップドストランドが有する補強効果を確実に享受することができる。従って、チョップドストランドマットの軽量化と高強度化をより安定的に再現することが可能となる。
また、本発明に係るチョップドストランドマットは、マット片に、第二のガラスチョップドストランドがガラスチョップドストランド100本に対して2本以上でかつ4本以下の割合で含まれるものであってもよい。
このように、第二のガラスチョップドストランドの含有割合をさらに適正な範囲に設定することで、相対的に長手寸法の大きい第二のガラスチョップドストランドをより均等に分散させることができる。また、相対的に長手寸法の大きい第二のガラスチョップドストランドの含有割合(本数比率)を上述の範囲に限定することで、相対的に長手寸法の小さい第一のガラスチョップドストランドの分散状態にも悪影響を及ぼす事態をより確実に防止することができる。従って、長短双方のガラスチョップドストランドの分散状態をより良好なものとして、強度的なばらつきがなく優れた引張り強さを安定的に発揮することのできるチョップドストランドマットを提供することが可能となる。
また、この場合、本発明に係るチョップドストランドマットは、マット片に、第一のガラスチョップドストランドがガラスチョップドストランド100本に対して96本以上でかつ98本以下の割合で含まれるものであってもよい。
このように、第一のチョップドストランドの含有割合についてもより適正な範囲に設定することで、相対的に短いほうの第一のガラスチョップドストランドが有する補強効果をより確実に享受することができる。従って、チョップドストランドマットの軽量化と高強度化をより一層高いレベルで安定的に再現することが可能となる。
また、本発明に係るチョップドストランドマットは、第一のガラスチョップドストランドの長手寸法が3.0cm以上でかつ8.0cm以下であるものであってもよい。
チョップドストランドマットの実際上の提供形態(サイズ、厚みなど)を考慮した場合、第一のガラスチョップドストランドを上述の範囲に設定するのがよい。このように各ガラスチョップドストランドの長手寸法を設定することで、想定される用途に幅広く対応可能な重量としつつも十分な引張り強さを発揮することが可能となる。
また、本発明に係るチョップドストランドマットは、目付け量が50g/m2以上でかつ200g/m2以下であるものであってもよい。
目付け量が50g/m2に満たない場合、ガラスチョップドストランド同士の絡み合い及び固着の箇所が不足するために、十分な大きさの引張り強さを得ることが難しい。一方、目付け量が200g/m2を超える場合、チョップドストランドマットを備えた繊維強化複合材の重量が過大となるため、その用途(自動車用天井材など)によっては、強度以外に必要とされる特性(自動車全体の軽量化、燃費向上)を満たさないおそれが生じる。よって、長短双方のガラスチョップドストランドの長手寸法比率及び含有割合を上述の範囲に設定し、かつ目付け量を上述の範囲に設定することで、軽量でかつ引張り強さにも優れると共に、汎用性も兼ね備えたチョップドストランドマットを提供することが可能となる。
また、以上の説明に係るチョップドストランドマットは、上述の通り、軽量化と高強度化を共に達成し得るものであるから、例えば上記チョップドストランドマットと、シート状の基材とを備え、シート状の基材の少なくとも一方の表面にチョップドストランドマットを固定してなる繊維強化複合材として好適に提供することが可能である。
あるいは、以上の説明に係るチョップドストランドマットは、上述の通り、軽量化と高強度化を共に達成し得るものであるから、例えば上記チョップドストランドマットと、発泡樹脂シートとを備え、発泡樹脂シートの少なくとも一方の表面にチョップドストランドマットを貼り合わせてなる自動車用内装材として好適に提供することが可能である。
また、前記課題の解決は、本発明に係るチョップドストランドマットの製造方法によっても達成される。すなわち、この製造方法は、ガラスチョップドストランドをシート状に堆積させる堆積工程と、ガラスチョップドストランドのシート状堆積物に結合剤を散布して加熱した後、結合剤を冷却固化することによってシート状堆積物のガラスチョップドストランドを相互に固着させて、チョップドストランドマットを得る成形工程とを備えたチョップドストランドマットの製造方法であって、ガラスチョップドストランドは、第一のガラスチョップドストランドと、第一のガラスチョップドストランドの1.8倍以上でかつ2.2倍以下の長手寸法を有する第二のガラスチョップドストランドとを有するもので、堆積工程において、シート状堆積物からガラスチョップドストランドを100本以上含む任意のサイズのシート片を取り出した場合に、このシート片に、第二のガラスチョップドストランドがガラスチョップドストランド100本に対して1本以上でかつ5本以下の割合で含まれるように、第一のガラスチョップドストランド及び第二のガラスチョップドストランドを堆積させる点をもって特徴付けられる。
このように、本発明に係る製造方法では、シート状に堆積させるべきガラスチョップドストランドが、第一のガラスチョップドストランドと、第一のガラスチョップドストランドの1.8倍以上でかつ2.2倍以下の長手寸法を有する第二のガラスチョップドストランドとを有するものとした。また、シート状堆積物からガラスチョップドストランドを100本以上含む任意のサイズのシート片を取り出した場合に、このシート片に、第二のガラスチョップドストランドがガラスチョップドストランド100本に対して1本以上でかつ5本以下の割合で含まれるように、第一のガラスチョップドストランド及び第二のガラスチョップドストランドを堆積させるようにした。上述のように第二のガラスチョップドストランドの長手寸法比率及び含有割合を設定することで、本発明に係るチョップドストランドマットと同様、良好な分散効果と、相対的に長手寸法の大きい第二のガラスチョップドストランドが有する補強効果を共に享受することができる。従って、薄肉化により軽量化を図りつつも、所要の強度(引張り強さ)を安定的に発揮することのできるチョップドストランドマットを製造することが可能となる。
また、本発明に係るチョップドストランドマットの製造方法は、堆積工程が、連続的に引き出されるガラスストランドを切断して、第一のガラスチョップドストランドを得ると共に、第一のガラスチョップドストランドをコンベア上に堆積させる第一切断堆積工程と、ガラスストランドを切断して、第二のガラスチョップドストランドを得ると共に、第二のガラスチョップドストランドをコンベア上に堆積させる第二切断堆積工程とを有し、第一切断堆積工程と第二切断堆積工程とが、コンベアによるガラスチョップドストランドの搬送方向で互いに異なる位置に配設されているものであってもよい。
このように、互いに長手寸法の異なる第一のガラスチョップドストランドと第二のガラスチョップドストランドの取得及びコンベア上への堆積をそれぞれ別個の切断堆積工程で実施し、かつこれら別個の切断堆積工程をコンベアによる搬送方向で互いに異なる位置に配設することで、比較的容易に各ガラスチョップドストランドのコンベア上への供給割合を設定することができる。よって、シート状のガラスチョップドストランドにおける、第一及び第二のガラスチョップドストランドの含有割合を容易に設定でき、軽量かつ高強度なチョップドストランドマットを製造することが可能となる。
また、この場合、本発明に係るチョップドストランドマットの製造方法は、第一切断堆積工程において、複数の切断刃を外周面に等間隔に設けた第一のカッターローラによってガラスストランドを切断し、第二切断堆積工程において、第一のカッターローラよりも広い間隔で複数の切断刃を外周面に設けた第二のカッターローラによってガラスストランドを切断するものであってもよい。
各切断堆積工程に設置するカッターローラの刃構造を上述のように構成することで、カッターローラの回転速度(ガラスストランドの引き込み速度)を同一に揃えつつも、第一のガラスチョップドストランドの長手寸法に対する第二のガラスチョップドストランドの長手寸法の比率を正確に設定することができる。よって、双方のガラスチョップドストランドの長手寸法及びその比率を高精度かつ安定的に設定することが可能となる。
また、本発明に係るチョップドストランドマットの製造方法は、堆積工程が、ガラスストランドを、複数の切断刃を外周面に等間隔に設けた第三のカッターローラによって切断して、ガラスチョップドストランドを得ると共に、ガラスチョップドストランドをコンベア上に堆積させる第三切断堆積工程を有し、第三のカッターローラに設けた複数の切断刃のうち少なくとも一つの切断刃を、残りの切断刃よりもその長手方向に短い短切断刃とし、第三切断堆積工程において、ガラスストランドを第三のカッターローラに対してその回転軸方向にスライドさせることで、短切断刃によるガラスストランドの切断の有無を切り替えるものであってもよい。なお、ガラスストランドを第三のカッターローラの短切断刃の長手方向にスライドさせる動作には、第三のカッターローラをその回転軸方向に固定とし、切断対象となるガラスストランドを第三のカッターローラの回転軸方向にスライドさせる動作だけでなく、ガラスストランドを第三のカッターローラの回転軸方向に固定し、第三のカッターローラをその回転軸方向にスライドさせる動作が含まれるものとする。
上述のようにカッターローラの切断刃を構成すれば、ガラスストランドのスライド速度及び位置と、コンベアの搬送速度とを適切に設定するだけで、長手寸法の比率を正確に設定した長短双方のガラスチョップドストランドを同一の切断堆積工程で得ることができる。よって、切断堆積工程ごとに切断及び堆積させるガラスチョップドストランドの長手寸法を固定するよりも、切断堆積工程の数(ひいてはカッターローラの数)を減らすことができ、設備スペース及びコストの削減につながる。
また、前記課題の解決は、本発明に係るチョップドストランドマットの製造装置によっても達成される。すなわち、この製造装置は、複数の切断刃を外周面に設けたカッターローラと、カッターローラの下方に配設され、カッターローラでガラスストランドを切断して得たガラスチョップドストランドをシート状に堆積させるコンベアと、コンベア上に堆積したガラスチョップドストランドのシート状堆積物に結合剤を散布する散布装置と、結合剤を散布したシート状堆積物を加熱する加熱装置と、加熱装置で加熱したシート状堆積物を冷却並びに圧延する冷却圧延装置とを備えたチョップドストランドマットの製造装置であって、ガラスチョップドストランドが、第一のガラスチョップドストランドと、第一のガラスチョップドストランドの1.8倍以上でかつ2.2倍以下の長手寸法を有する第二のガラスチョップドストランドとを有するもので、シート状堆積物からガラスチョップドストランドを100本以上含む任意のサイズのシート片を取り出した場合に、このシート片に、第二のガラスチョップドストランドがガラスチョップドストランド100本に対して1本以上でかつ5本以下の割合で含まれる点をもって特徴付けられる。
このように、本発明に係る製造装置では、シート状に堆積させるべきガラスチョップドストランドが、第一のガラスチョップドストランドと、第一のガラスチョップドストランドの1.8倍以上でかつ2.2倍以下の長手寸法を有する第二のガラスチョップドストランドとを有するものとした。また、シート状堆積物からガラスチョップドストランドを100本以上含む任意のサイズのシート片を取り出した場合に、このシート片に、第二のガラスチョップドストランドがガラスチョップドストランド100本に対して1本以上でかつ5本以下の割合で含まれるようにした。上述のように第二のガラスチョップドストランドの長手寸法比率及び含有割合を設定することで、本発明に係るチョップドストランドマットとその製造方法と同様、良好な分散効果と、相対的に長手寸法の大きい第二のガラスチョップドストランドが有する補強効果を共に享受することができる。従って、薄肉化により軽量化を図りつつも、所要の強度(引張り強さ)を安定的に発揮することのできるチョップドストランドマットを製造することが可能となる。
また、前記課題の解決は、本発明に係るチョップドストランド梱包体によっても達成される。すなわち、この梱包体は、ガラスチョップドストランドの集合体が梱包体によって梱包されてなるガラスチョップドストランド梱包体であって、ガラスチョップドストランドは、第一のガラスチョップドストランドと、第一のガラスチョップドストランドの1.8倍以上でかつ2.2倍以下の長手寸法を有する第二のガラスチョップドストランドとを有するもので、ガラスチョップドストランドの集合体からガラスチョップドストランドを100本以上含む任意のサイズの小集合体を取り出した場合に、この小集合体に、第二のガラスチョップドストランドがガラスチョップドストランド100本に対して1本以上でかつ5本以下の割合で含まれる点をもって特徴付けられる。
このように、本発明に係るチョップドストランド梱包体では、梱包体によってその集合体が梱包されるガラスチョップドストランドが、第一のガラスチョップドストランドと、第一のガラスチョップドストランドの1.8倍以上でかつ2.2倍以下の長手寸法を有する第二のガラスチョップドストランドとを有するものとした。また、ガラスチョップドストランドの集合体からガラスチョップドストランドを100本以上含む任意のサイズの小集合体を取り出した場合に、この小集合体に、第二のガラスチョップドストランドがガラスチョップドストランド100本に対して1本以上でかつ5本以下の割合で含まれるようにした。上述のように第二のガラスチョップドストランドの長手寸法比率及び含有割合を設定することで、これらガラスチョップドストランドの集合体からチョップドストランドマットを製造した場合に、本発明に係るチョップドストランドマットとその製造方法及び製造装置と同様、良好な分散効果と、相対的に長手寸法の大きいガラスチョップドストランドが有する補強効果を共に享受することができる。従って、薄肉化により軽量化を図りつつも、所要の強度(引張り強さ)を安定的に発揮することのできるチョップドストランドマットを提供することが可能となる。
以上に述べたように、本発明によれば、ガラスチョップドストランドの分布が偏る事態を可及的に防止して、チョップドストランドマットの軽量化と高強度化を共に達成することが可能となる。
以下、本発明に係るチョップドストランドマットとその製造方法及び製造装置の第一実施形態を、図1〜図3を参照して説明する。
本実施形態に係るチョップドストランドマットの製造方法は、図1に示すように、ガラスチョップドストランド1をシート状に堆積させる堆積工程S1と、シート状に堆積したガラスチョップドストランド1をマット状に成形して、チョップドストランドマット2を得る成形工程S2とを備える。ここで、堆積工程S1は、第一切断堆積工程S11と、第二切断堆積工程S12とを有し、成形工程S2は、シート状に堆積してなるガラスチョップドストランド1のシート状堆積物3に結合剤4を散布する散布工程S21と、結合剤4が散布されたシート状堆積物3を加熱する加熱工程S22、及び加熱したシート状堆積物3を冷却すると共に圧延する冷却圧延工程S23とを有する。
また、この際に用いられるチョップドストランドの製造装置10は、例えば図1に示すように、ケーキ5から連続的に引き出されるガラスストランド6を切断する複数の切断装置11,12と、各切断装置11,12でガラスストランド6を切断して得たガラスチョップドストランド1をシート状に堆積させた状態で所定の方向aに搬送するコンベア(第一コンベア13〜第三コンベア15)と、ガラスチョップドストランド1のシート状堆積物3に結合剤4を散布する散布装置16と、結合剤4が散布されたシート状堆積物3を加熱する加熱装置17と、加熱されたシート状堆積物3を冷却及び圧延する冷却圧延装置18とを備えるものである。以下、切断装置11,12を中心に製造装置10の各要素の詳細を説明する。
複数の切断装置11,12は、ガラスストランド6から第一のガラスチョップドストランド1aを得るための第一切断装置11と、第一のガラスチョップドストランド1aより長手寸法の大きい第二のガラスチョップドストランド1bを得るための第二切断装置12とに区別される。
ここで、第一切断装置11は、図2に示すように、外周面に複数の切断刃19を設けた第一のカッターローラ20と、第一のカッターローラ20と反対方向に回転するゴムローラなどの弾性ローラ21とを有する。複数の切断刃19は、本実施形態では、第一のカッターローラ20の回転軸方向に伸びるもので(図1を参照)、円周方向に等間隔に配設されている(図2を参照)。これら第一のカッターローラ20と弾性ローラ21とがそれぞれ所定の位置に配設されることで、第一のカッターローラ20と弾性ローラ21との間に送り込んだガラスストランド6がケーキ5から連続的に引き出されると共に、所定の長手寸法に切断されるようになっている。
また、第二切断装置12は、図2に示すように、外周面に複数の切断刃19を設けた第二のカッターローラ22と、第二のカッターローラ22と反対方向に回転する弾性ローラ21とを有する。これら第二のカッターローラ22と弾性ローラ21とがそれぞれ所定の位置に配設されることで、第二のカッターローラ22と弾性ローラ21との間に送り込んだガラスストランド6がケーキ5から連続的に引き出されると共に、所定の長手寸法に切断されるようになっている。
ここで、複数の切断刃19が、第二のカッターローラ22の回転軸方向bに伸び(図1を参照)、かつ第二のカッターローラ22の円周方向に等間隔に配設されている(図2を参照)点は第一のカッターローラ20と同じである。一方、第二のカッターローラ22に設けられた切断刃19の円周方向の間隔は、第一のカッターローラ20における切断刃19の円周方向の間隔よりも大きい(図2を参照)。従って、第二のカッターローラ22に設けられる切断刃19の数は、第一のカッターローラ20に設けられる切断刃19の数よりも多い。本実施形態では、図2に示すように、第二のカッターローラ22に設けられた切断刃19の円周方向の間隔は、第一のカッターローラ20に設けられた切断刃19の円周方向の間隔の二倍に設定されている。従って、第二のカッターローラ22に設けられた切断刃19の数は、第一のカッターローラ20に設けられた切断刃19の数の二倍となっている。
上記構成の第一切断装置11と第二切断装置12は、互いに第一コンベア13によるシート状のガラスチョップドストランド1の搬送方向aで互いに異なる位置に配設されている。また、その配設数は、第一のガラスチョップドストランド1aと第二のガラスチョップドストランド1bとの混合比率によって適宜設定され、第一切断装置11が第二切断装置12よりも多く設置される。各カッターローラ20,22が本実施形態に係る構造をなす場合、例えば第一切断装置11を95〜99個、第二切断装置12を1〜5個設置する形態が考えられる。あるいは第一切断装置11を47〜49個、第二切断装置12を1〜4個設置する形態が考えられる。
なお、ガラスチョップドストランド1(1a,1b)の搬送方向aにおける第一及び第二切断装置11,12の配設位置は任意であり、例えば図1に示すように、堆積工程S1の最も下流側に第二切断堆積工程S12(第二切断装置12)を配設してもよいし、図示は省略するが、堆積工程S1の最も上流側に第二切断堆積工程S12を配設してもよい。もちろん、堆積工程S1の搬送方向aの中央付近に第二切断堆積工程S12を配設することも可能である。
以下、本発明に係るチョップドストランドマットの製造方法の一例を説明する。
まず、図示は省略するが、堆積工程S1に供給されるガラスストランド6の製造方法の一例を説明する。最初に、予め調整したガラスの原料を熔融炉にて均質に熔融し、得られた均質な状態の熔融ガラスを白金製のプッシングに導入する。次いで、プッシングに設けられた多数本のノズルから、μmオーダー(例えば3μm以上でかつ30μm以下、好ましくは6μm以上でかつ25μm以下)の直径を有するガラスフィラメントを連続的に引き出して成形する。
ここで、ガラスフィラメントの原料(すなわち熔融ガラスの原料)としては、ガラスフィラメントとして公知のガラスが使用可能であり、例えばガラスのフィラメント化を容易に行うことができ、かつガラスフィラメントとしての特性にも優れたEガラス(例えばアルカリ成分の含有率が2.0wt%以下)が好適に使用可能である。もちろん、これ以外の種類のガラスを使用することもでき、例えば耐アルカリ性を示すARガラス、耐酸性を有するCガラス、低誘電率を示すDガラス、高誘電率を示すHガラス、高強度及び高弾性率を示すTガラス、高弾性率を示しベリリウムを含有するMガラス、低誘電率及び低誘電正接を示すNEガラスなどを使用することも可能である。
引き出したガラスフィラメントの表面に、所定の組成(例えば固形分50wt%のポリ酢酸ビニルエマルジョンが6wt%、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが0.3wt%、第4級アンモニウム塩が0.5wt%、イオン交換水が93.2wt%)に調整した集束剤を、その付着量が一定の割合(例えば0.3wt%以上でかつ0.5wt%以下)となるようにガラスフィラメントに塗布する。集束剤を塗布した多数本のガラスフィラメントを適当な集束手段(例えばカーボン製のシュー)を用いて集束することで、所定太さ(例えば後述するストランド番手Sc[tex]で示す場合、18tex以上でかつ30tex以下)のガラスストランド6を得る。なお、集束剤としては、上記以外にも、ガラスフィラメント用として公知の組成(有機成分)を有するものが使用できることはもちろんである。
次いで、このガラスストランド6を、適当な巻き取り手段によりケーキ5として巻き取ると共に、このケーキ5を必要に応じて所定時間乾燥させて、ガラスフィラメントの表面に集束剤を定着させる。
乾燥工程を終えた各ケーキ5の内周側から連続的に解舒された各ガラスストランド6を、対応する第一切断装置11の第一のカッターローラ20と弾性ローラ21との間、及び第二切断装置12の第二のカッターローラ22と弾性ローラ21との間に順次送り込む。この際、各カッターローラ20,22と、弾性ローラ21とを共に回転状態とすることで、ガラスストランド6がケーキ5から連続的に引き出されると共に、それぞれ所定の長手寸法に切断される。
この際、第二切断装置12によりガラスストランド6を切断して得られる第二のガラスチョップドストランド1bは、その長手寸法L2が、第一切断装置11によりガラスストランド6を切断して得られる第一のガラスチョップドストランド1aの長手寸法L1の1.8倍以上でかつ2.2倍以下となるように、長手寸法比率が設定される。従って、例えば第一のガラスチョップドストランド1aの長手寸法L1が30mm以上でかつ80mm以下の範囲に調整される場合、第二のガラスチョップドストランド1bの長手寸法L2は54mm以上でかつ176mm以下となるように調整される。本実施形態のように、第二のカッターローラ22に設けられた切断刃19の円周方向の間隔が、第一のカッターローラ20に設けられた切断刃19の円周方向の間隔の二倍であるとき、第二のガラスチョップドストランド1bの長手寸法L2は、第一のガラスチョップドストランド1aの長手寸法L1の二倍に設定される(図2を参照)。
また、この際、第一切断装置11及び第二切断装置12の直下に配設した第一コンベア13上に堆積してなるシート状のガラスチョップドストランド1から、ガラスチョップドストランド1を100本以上含む任意のサイズのシート片を取り出した場合に、このシート片に、第二のガラスチョップドストランド1bがガラスチョップドストランド1100本に対して1本以上でかつ5本以下の割合で含まれるように、第一のガラスチョップドストランド1a及び第二のガラスチョップドストランド1bを第一コンベア13上に落下及び堆積させる。なお、この際、図示は省略するが、第一コンベア13の搬送面をネット状とし、当該搬送面の下方から適当な吸気手段で吸気しながら、第一及び第二のガラスチョップドストランド1a,1bの分散堆積を行うようにしてもよい。吸気することで、第一及び第二のガラスチョップドストランド1a,1bがより均等に第一コンベア13上に分散される効果が期待できる。
上述のようにして互いに異なる二種類の長手寸法に切断されたガラスチョップドストランド1(第一のガラスチョップドストランド1a,及び第二のガラスチョップドストランド1b)は、第一コンベア13上で、均一に分散した状態でシート状に堆積し、シート状堆積物3として下流側に搬送される。このシート状堆積物3は、第一コンベア13の下流側に配設された第二コンベア14上に移載されると共に、第二コンベア14上を移動するシート状堆積物3に対して、例えばビスフェノール系不飽和ポリエステル樹脂を主成分として含む粉粒状の結合剤4を散布する。この際、ガラスチョップドストランド1に対する結合剤4の付着量が所定の割合(例えば1wt%以上でかつ15wt%以下、好ましくは8wt%以上でかつ16wt%以下)となるように、結合剤4の散布量を調整して、シート状堆積物3に結合剤4を均等に散布する。
そして、結合剤4が散布された状態のシート状堆積物3を第二コンベア14から第三コンベア15上に移載し、第三コンベア15の搬送路上に設けた加熱装置17により、シート状堆積物3を所定温度にまで加熱する。これにより、散布された粉粒状の結合剤4が軟化溶融し、シート状堆積物3を構成するガラスチョップドストランド1の表面に溶融して付着した状態となる。
次いで、加熱済みのシート状堆積物3を加熱装置17から搬出し、冷却圧延装置18まで搬送することで(例えば冷却圧延装置18を構成する水冷プレスローラ間を通過させることで)、シート状堆積物3の冷却及びプレスを行う。この冷却圧延作業を行うことによって、溶融状態の結合剤4が固化し、結合剤4を介して第一のガラスチョップドストランド1a,1a同士、又は第一のガラスチョップドストランド1aと第二のガラスチョップドストランド1bが互いに固着した状態となる。また、プレスによりシート状堆積物3が所定の厚みに成形される。以上より、チョップドストランドマット2が成形される。本実施形態では、このチョップドストランドマット2をその下流端で巻取ることで、チョップドストランドマット2のロール体7を得る。なお、この際のチョップドストランドマット2の目付け量は、例えば目付け量で50g/m2以上でかつ200g/m2以下に設定され、好ましくは70g/m2以上でかつ160g/m2以下に設定され、より好ましくは80g/m2以上でかつ120g/m2以下に設定される。
以上の工程を経て得たチョップドストランドマット2は、ガラスチョップドストランド1が、第一のガラスチョップドストランド1aと、第一のガラスチョップドストランドの長手寸法L1の1.8倍以上でかつ2.2倍以下の長手寸法L2を有する第二のガラスチョップドストランド1bとを有するもので、チョップドストランドマット2からガラスチョップドストランド1を100本以上含む任意のサイズのマット片を切り出した場合に、このマット片に、第二のガラスチョップドストランド1bが100本のガラスチョップドストランド1に対して1本以上でかつ5本以下の割合で含まれる。従って、当然に、チョップドストランドマット2全体に、第二のガラスチョップドストランド1bは、ガラスチョップドストランド1の100本当たりに1本以上でかつ5本以下の割合で含まれる。
従って、このチョップドストランドマット2は、図3に示すように、第一のガラスチョップドストランド1a,1a同士(又は第一及び第二のガラスチョップドストランド1a,1b)が偏りなく絡み合っており、かつこれらの間の結合点8(接着点)がチョップドストランドマット2の表面に均等に分布している。よって、チョップドストランドマット2全体として均質な構造をなす。
このように、本発明に係るチョップドストランドマット2の製造方法及び製造装置10では、第一コンベア13上に堆積されるガラスチョップドストランド1が、第一のガラスチョップドストランド1aと、第一のガラスチョップドストランド1aの長手寸法L1の1.8倍以上でかつ2.2倍以下の長手寸法L2を有する第二のガラスチョップドストランド1bとを有するものとした。また、シート状堆積物3からガラスチョップドストランド1を100本以上含む任意のサイズのシート片を取り出した場合に、このシート片に、第二のガラスチョップドストランド1bが100本のガラスチョップドストランド1に対して1本以上でかつ5本以下の割合で含まれるように、第一のガラスチョップドストランド1a及び第二のガラスチョップドストランド1bを堆積させるようにした。上述のように第二のガラスチョップドストランド1bの長手寸法比率及び含有割合を設定することで、良好な分散効果と、相対的に長手寸法の大きい第二のガラスチョップドストランド1bが有する補強効果を共に享受することができる。従って、薄肉化により軽量化を図りつつも、所要の強度(引張り強さ)を安定的に発揮することのできるチョップドストランドマット2を製造することが可能となる。
また、上述のように、本発明に係るチョップドストランドマット2を巻き取ってロール体7とした場合にあっては、ロール体7からチョップドストランドマット2を解舒して引き出すことで、二次成形体(後述する自動車用天井材など)に使用されるが、この際、上述のようにチョップドストランドマット2が偏りなく均等な強度(引張り強さ)を有するものである場合、引き出し時に、強度的に弱い部分からちぎれ(断裂)が発生する事態を確実に防止して、円滑な引き出しが可能となる。また、円滑に引き出せるのであれば、ちぎれに注意して慎重に引き出さずに済むため、作業性も向上する。
また、本発明に係るチョップドストランドマット2であれば、十分に軽量かつ高強度であるから、例えばチョップドストランドマット2と、図示しない発泡樹脂シートとを備え、発泡樹脂シートの少なくとも一方の表面にチョップドストランドマット2を貼り合わせてなる自動車用天井材として好適に提供することが可能である。
具体的には、上述した条件で成形したチョップドストランドマット2に、フェノール系、メラミン系、あるいはイソシアネート系の接着剤を含浸させた後、表皮(自動車の室内側)、上記チョップドストランドマット2、発泡ポリウレタンシート、上記チョップドストランドマット2(表皮側のチョップドストランドマット2と同一種類のチョップドストランドマット2)、及び保護シート(自動車の天井側)を記載順に重ね合わせて積層体を作成する。然る後、この積層体をプレス装置に投入し、所定の形状にプレス成形した後、周囲をトリミングすることで、例えばその断面厚み寸法が3mm以上でかつ30mm以下の自動車用天井材を得る。
この際、従来のチョップドストランドマットを用いた自動車用天井材であれば、上述のプレス成形時、シェード等の開口部や深絞りのコーナー部において、ヒケと呼ばれる表面のしわが生じる欠陥が発生する場合がある。これに対して、本発明に係るチョップドストランドマット2を用いた自動車用天井材であれば、各ガラスチョップドストランド1a,1bの均等な分布により、均等な強度(引張り強さ)を発揮することが可能となる。従って、上述したヒケ等の欠陥を生じることなく高品位の自動車用天井材を提供することが可能となる。
以上、本発明に係るチョップドストランドマットとその製造方法及び製造装置の一実施形態(第一実施形態)を説明したが、このマットとその製造方法及び製造装置は、当然に本発明の範囲内において任意の形態を採ることができる。
例えば第一実施形態では、各切断装置11,12を構成するカッターローラ20,22として何れも、外周面に同一形状及び同一長さの切断刃19を円周方向に等間隔に設けたものを開示したが、もちろんこれ以外の構成を採ることも可能である。図4はその一例(本発明の第二実施形態)を示すもので、同図に係る第三切断装置23は、外周面に複数の切断刃19a,19bを設けた第三のカッターローラ24と、第三のカッターローラ24と反対方向に回転する弾性ローラ21とを有する。これら第三のカッターローラ24と弾性ローラ21とがそれぞれ所定の位置に配設されることで、第三のカッターローラ24と弾性ローラ21との間に送り込んだガラスストランド6がケーキ5(図1を参照)から連続的に引き出されると共に、所定の長手寸法に切断されるようになっている。
ここで、複数の切断刃19a,19bが、第三のカッターローラ24の回転軸方向に伸びる点、及び円周方向に等間隔に配設される点は何れも、第一及び第二のカッターローラ20,22と同じである。一方、第三のカッターローラ24に設けられた複数の切断刃19a,19bは、相対的にその長手方向に長い長切断刃19aと、長切断刃19aよりもその長手方向に短い(例えば半分程度の長さの)短切断刃19bとに区別される。短切断刃19bは、長切断刃19aに比べて少数であり、例えば図4に示すように、全切断刃19a,19b中、1枚又は2枚程度とされる。この場合、例えばガラスストランド6を第三のカッターローラ24の回転軸方向bにスライドさせるスライド機構(図示は省略)を設けることで、ガラスストランド6を連続的に引き出しながら、第三切断装置23によって、切断により得られるガラスチョップドストランド1の長手寸法を切り替えることが可能となる。
すなわち、例えば図示しないスライド機構によってガラスストランド6を第三のカッターローラ24の回転軸方向bに沿って短切断刃19bが設けられた側にスライドさせた状態(図4中、二点鎖線で示す位置)では、ガラスストランド6は、第三のカッターローラ24の全周にわたって等間隔に設けられた長切断刃19aと短切断刃19bとにより、常に一定の長手寸法L1に切断される。すなわち、第一のガラスチョップドストランド1aのみが得られる。これに対して、ガラスストランド6を第三のカッターローラ24の回転軸方向bに沿って短切断刃19bが設けられていない側、図4でいえば短切断刃19bの欠落部位25を通過する側にスライドさせた状態(図4中、実線で示す位置)では、ガラスストランド6は、長切断刃19aによってのみ切断され、短切断刃19bによる切断は回避される。よって、ガラスストランド6が短切断刃19bの欠落部位25を通過する期間においては、欠落部位25を介して相対的に広い間隔で円周方向に隣り合う長切断刃19a,19aにより、第一のガラスチョップドストランド1aよりも長手寸法の大きい第二のガラスチョップドストランド1bが得られる。ガラスストランド6が短切断刃19bの欠落部位25を通過しない期間においては、ガラスストランド6は、所定の間隔で円周方向に隣り合う長切断刃19a,19aで切断されるので、第一のガラスチョップドストランド1aが得られる。
従って、上記構成の第三のカッターローラ24を用いることで、例えば第二のカッターローラ22を省略し、かつ第一のカッターローラ20の個数を減らしつつも、本発明に係る含有割合のシート状堆積物3を形成することができ、これにより製造装置10のスペース及びコストの削減を図ることが可能となる。
もちろん、カッターローラの構成は上記実施形態には限られない。必要とされる各ガラスチョップドストランド1a,1bの本数比率(含有割合)に応じて、切断刃19(19a,19b)の形状、本数、各カッターローラ20,22,24の個数、配置順などを適宜設定することが可能である。例えば図2に示す第一のカッターローラ20において、その外周面に設けられた複数の切断刃19のうち少なくとも一つを取り除いた形態のものを使用することも可能である。
あるいは図示は省略するが、予め所定の長手寸法に切断した第一のガラスチョップドストランド1aと第二のガラスチョップドストランド1bとを別個に用意し、これら第一及び第二のガラスチョップドストランド1a,1bを本発明に係る本数比率に混合したものを、第一コンベア13上にシート状に堆積させるようにしてもかまわない。
また、以上の説明では、本発明に係るチョップドストランドマットを自動車用天井材に適用した場合を例示したが、もちろんこれ以外の用途に適用することも可能である。例えば天井材以外の自動車用内装材に適用することも可能であり、その他にも、電子工業等の各種精密ハウジング構成体や建築用材料、工業用途の各種構成部材など、種々の繊維強化複合材の補強用途として好適に適用が可能である。
以下、本発明に係るチョップドストランドマット、及びこのチョップドストランドマットを備えた自動車用天井材の性能評価についての実験内容を説明する。
まず、表1に示すように、本発明の実施例である試料No.1から試料No.5、並びに比較例である試料No.6と試料No.7に係る、計七種類のチョップドストランドマットを作成した。具体的には、共にEガラスで形成される第一のガラスチョップドストランドと第二のガラスチョップドストランドのうち、第二のガラスチョップドストランドの長手寸法L2を、表1に示すように、第一のガラスチョップドストランドの長手寸法L1の1.8倍以上でかつ2.2倍以下とし、かつ、第一のガラスチョップドストランドと第二のガラスチョップドストランドとからなるガラスチョップドストランド100本に対して第二のガラスチョップドストランドが1本以上でかつ5本以下の割合で含まれるチョップドストランドマット(試料No.1〜試料No.5に係るチョップドストランドマット)と、各ガラスチョップドストランドの長手寸法比及び含有割合の少なくとも一方が上記範囲から外れるガラスチョップドストランド(試料No.6及び試料No.7に係るチョップドストランドマット)をそれぞれ作成した。上記各試料に係るチョップドストランドマットのストランド番手Sc[tex]、目付け量[g/m2]、結合剤の付着量[wt%]、及び引張り強さ[N]はそれぞれ表1に示す通りである。
このうち、ストランド番手Sc[tex]の測定は、以下の手順で行った。まず各試料に係るチョップドストランドマットを620℃で30分間加熱(して結合剤を焼却)した後、各チョップドストランドマットからガラスチョップドストランドを50本抜き取り、その平均長手寸法L[mm]を測定すると共に、感量が0.1mg以下の秤で、抜き取った全てのガラスチョップドストランドの総質量W[g]を測定した。最後に、下記の数式1に基づきストランド番手Sc[tex]を算出した。なお、ストランド番手Sc[tex]は、ストランドの長手寸法1000m当たりのグラム単位での質量で表されるため、数式1では、平均長手寸法Lの単位をミリメートル[mm]からメートル[m]に換算している。
また、結合剤の付着量の測定は、以下の手順で行った。まず、JIS R3420(2006)に準拠して各試料に係るチョップドストランドマットの強熱減量を計測する。次に、各試料の作成に使用したガラスストランドケーキの強熱減量を上記と同一の方法で計測する。そして、各試料に係るチョップドストランドマットの強熱減量から対応するガラスストランドケーキの強熱減量を差し引くことで、最終的に各試料に係るガラスチョップドストランドにおける結合剤の付着量(質量%)を算出した。
また、引張り強さの測定は、以下の手順で行った。まず各試料に係るチョップドストランドマットから幅150mm、長さ300mmのマット片を幅方向に8枚、及び長さ方向に5列採取し、採取した各マット片を引張り試験片とした。次に、各試験片の引張り強さ試験をJIS 3420(2006)に準拠して、チャック間距離200mm、引張り速度200mm/minの条件下で実施することで、引張り強さ[N]を得た。表1には、引張り強さの平均値と標準偏差を示している。
このようにして各試料に係るチョップドストランドマットを作成し、各特性の評価を行った後、各チョップドストランドマットを有する自動車用天井材(各試料)を作成する。その手順を以下に示す。まず、各試料に係るチョップドストランドマットにイソシアネート系の接着剤を含浸させた後、表皮(自動車の室内側)、上記チョップドストランドマット、発泡ポリウレタンシート、上記チョップドストランドマット(表皮材側のチョップドストランドマットと同一種類のチョップドストランドマット)、及び保護シート(自動車の天井側)を記載順に重ね合わせて積層体を作成する。然る後、この積層体をプレス装置に投入し、所定の形状にプレス成形した後、周囲をトリミングすることで、各試料に係る自動車用天井材を得た。
また、以上のようにして作成した各試料に係る自動車用天井材の品質(ちぎれ、ヒケ)を評価した。すなわち、上記自動車用天井材をプレス成形するに際して、ロール状に巻き取った状態のチョップドストランドマットを引き出す際にちぎれ(断裂)が生じた回数と、自動車用天井材のプレス成形後に各試料の表皮側にヒケが発生した数量を目視により計測した。結果を表1に示す。
表1に示すように、本発明に係る組成(各ガラスチョップドストランドの長手寸法比、含有割合)を有するチョップドストランドマットによれば、安定した引張り強さ(引張り強さの平均値:175〜190N、標準偏差:40〜45)を示すことが判明した。また、本発明に係るガラスチョップドストランドを備えた自動車用天井材によれば、ちぎれの発生もほとんどないことから、強度不足を懸念することなく軽量化(薄肉化)が可能になることが判明した。加えて、本発明に係るプレス成形品(自動車用天井材)によれば、その表面にヒケが認められなかったことから、優れた外観品位を有することが判明した。