JP6565577B2 - ポリカーボネート樹脂、及びそれよりなる光学フィルム - Google Patents
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Description
また、従来のポリカーボネート樹脂は主にビスフェノールAをモノマーに用いられてきたが、近年、イソソルビド(ISB)をモノマー成分としたポリカーボネート樹脂が開発されている。ISBを用いたポリカーボネート樹脂は耐熱性や光学特性等の諸特性に優れており、位相差フィルム等の光学用途やガラス代替用途等への利用が検討されている(例えば、特許文献2、3参照)。また、ISBはバイオマス資源から得られるジヒドロキシ化合物であり、焼却処分しても二酸化炭素の排出量増加に寄与しないカーボンニュートラルな材料であることにも興味が持たれている。
性の向上に大きく寄与するため、フィルムの材料として用いられる樹脂には、靱性や溶融加工性などの特性がまず要求される。さらに、延伸によって大きな複屈折が発現するように、つまり固有(極限)複屈折が大きくなるような分子設計を考えることも重要である。
即ち本発明は以下を要旨とする。
[1] 下記式(1)又は(2)で表される構造単位を含有し、構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、下記式(1)又は(2)で表される構造単位を1重量%以上、18重量%以下含有するポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーボネート樹脂から作成された延伸フィルムの、波長450nmにおける位相差(R450)の、波長550nmにおける位相差(R550)に対する比(R450/R550)の値が、0.98以上、1.01以下であるポリカーボネート樹脂。
素数4〜10のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のビニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のエチニル基、置換基を有する硫黄原子、置換基を有するケイ素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。ただし、R4〜R9のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。)
[2] ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、下記式(3)で表される構造単位を10重量%以上、75重量%以下含有する、[1]に記載のポリカーボネート樹脂。
[4] ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、芳香族化合物に由来する構造単位を25重量%以下含有する[1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を成形してなる透明フィルム。
[6] 成形温度280℃以下で、溶融製膜法により成形してなる、[5]に記載の透明フィルム。
[7] [5]又は[6]に記載のフィルムを少なくとも一方向に延伸してなる位相差フィルム。
けでなく、エステル結合で連結された部分も含むポリカーボネート樹脂のことを言う。
本発明は、下記式(1)又は(2)で表される構造単位を含有するポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、下記式(1)又は(2)で表される構造単位を1重量%以上、18重量%以下含有し、該ポリカーボネート樹脂から作成された延伸フィルムの、波長450nmにおける位相差(R450)の、波長550nmにおける位相差(R550)に対する比である波長分散(R450/R550)の値が、0.98以上、1.01以下であるポリカーボネート樹脂にある。
カーボネート樹脂の固有複屈折が低下することによって配向複屈折が低下するため、高配向性、或いは薄膜化が求められる用途への適用が困難となる。
(オリゴフルオレン構造単位)
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記式(1)又は(2)で表される構造単位から選ばれる構造単位を含有する。尚、下記式(1)及び(2)で表される構造単位を「オリゴフルオレン構造単位」と称することがある。
含有量は、ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、上限は18重量%以下であり、16重量%以下が好ましく、14重量%以下が特に好ましい。一方、前記式(1)及び(2)で表される構造単位の含有量は、ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、下限として1重量%以上含有することが好ましく、2重量%以上含有することがより好ましく、3重量%以上が特に好ましい。
メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基等の直鎖状のアルキレン基;メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチルメチレン基、プロピルメチレン基、(1−メチルエチル)メチレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基、2−エチルエチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、1,1−ジメチルエチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、3−メチルプロピレン基等の、分岐鎖を有するアルキレン基。ここで、R1及びR2における分岐鎖の位置は、フルオレン環側の炭素が1位となるように付与した番号により示した。
メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基等の直鎖状のアルキレン基;メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチルメチレン基、プロピルメチレン基、
(1−メチルエチル)メチレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基、2−エチルエチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、1,1−ジメチルエチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、3−メチルプロピレン基等の分岐鎖を有するアルキレン基。
[A]
本発明のポリカーボネート樹脂は下記式(3)で表される構造単位を含有していることが好ましい。
塩基性安定剤としては、例えば、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations2005)における1族又は2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩及び脂肪酸塩;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド及びブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物;ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピロリジン、ピペリジン、3−アミノ−1−プロパノール、エチレンジアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール及びアミノキノリン等;アミン系化合物、並びにジ−(tert−ブチル)アミン及び2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
安定剤の量が少なすぎるとジヒドロキシ化合物Aの変質を防止する効果が得られない可能性があり、多すぎるとジヒドロキシ化合物Aの変性を招く場合があるので、ジヒドロキシ化合物Aに対して、0.0001重量%〜0.1重量%であることが好ましく、より好ましくは0.001重量%〜0.05重量%である。
本発明のポリカーボネート樹脂においては、前述した構造単位以外の構造単位を含んでいてもよく(以下、「その他の構造単位」と称することがある。)、その他の構造単位を含有するモノマーとしては、例えば、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、アセタール環を含有するジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール類、芳香族成分を含有するジヒドロキシ化合物、ジエステル化合物等が挙げられる。
エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の直鎖脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物;ネ
オペンチルグリコール、ヘキシレングリコール等の分岐脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物。
1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、リモネン等のテルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物等に例示される、脂環式炭化水素の1級アルコールであるジヒドロキシ化合物;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−アダマンタンジオール、水添ビスフェノールA、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール等に例示される、脂環式炭化水素の2級アルコール及び3級アルコールであるジヒドロキシ化合物。
前記式(8)において、好ましくはR10及びR11は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の有機基である。R10及びR11の炭素数1〜30の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デキル基、ウンデキル基、ドデキル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の直鎖又は分岐の鎖状アルケニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基、エチニル基、メチルエチニル基、1−プロピオニル基等のアルキニル基、フェニル基、ナフチル基、トルイル基等のアリール基、メトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、チエニル基、ピリジル基、フリル基等の複素環基が挙げられる。これらの内、ポリマー自体の安定性の観点から、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が好ましく、ポリマーの光学特性や耐候性、耐熱性と機械物性のバランスの観点から、アルキル基、シクロアルキル基が特に好ましい。
芳香族成分を含有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、以下のジヒドロキシ化合物を用いることができる。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3−フェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)メタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、7,7’−ジメチル−6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−ヒドロキシナフチル)フルオレン等の芳香族ビスフェノール化合物;2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフ
ェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフチル)フルオレン等の芳香族基に結合したエーテル基を有するジヒドロキシ化合物。
その他の構造単位を導入するためのジヒドロキシ化合物やジエステル化合物は、得られるポリカーボネート樹脂の要求性能に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリカーボネート樹脂中のその他の構造単位の含有量は、ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、下限として0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がさらに好ましく、3重量%以上が特に好ましい。一方、ポリカーボネート樹脂中のその他の構造単位の含有量は、ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、上限として60重量%以下が好ましく、50重量%以下がさらに好ましく、40重量%以下が特に好ましい。その他の構造単位は主にポリカーボネート樹脂の耐熱性の調整や、柔軟性や靱性の付与の役割を担うため、含有量が少なすぎると、ポリカーボネート樹脂
の機械特性や溶融加工性が悪くなり、含有量が多すぎると、耐熱性や光学特性が悪化するおそれがある。
本発明のポリカーボネート樹脂に含有される上記の構造単位の連結基は、下記式(9)で表される炭酸ジエステルを重合することで導入される。
A3およびA4は、置換又は無置換の芳香族炭化水素基であることが好ましく、無置換の芳香族炭化水素基がより好ましい。尚、脂肪族炭化水素基の置換基としては、エステル基、エーテル基、カルボン酸、アミド基、ハロゲンが挙げられ、芳香族炭化水素基の置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が挙げられる。
また、前記式(5)で表されるジエステルモノマーと前記式(9)で表される炭酸ジエステルを両方用いて重合反応を行う場合には、前記式(5)のA1、A2及び前記式(9)のA3、A4がすべて同じ構造であると、重合反応中に脱離する成分が同じであり、その成分を回収して再利用しやすい。また、重合反応性と再利用での有用性の観点から、A1〜A4はフェニル基であることが特に好ましい。尚、A1〜A4がフェニル基である場合、重合反応中に脱離する成分はフェノールである。
本発明のポリカーボネート樹脂は、一般に用いられる重合方法で製造することができる。例えば、ホスゲンやカルボン酸ハロゲン化物を用いた溶液重合法又は界面重合法や、溶媒を用いずに反応を行う溶融重合法を用いて製造することができる。これらの製造方法のうち、溶媒や毒性の高い化合物を使用しないことから環境負荷を低減することができ、また、生産性にも優れる溶融重合法によって製造することが好ましい。
金属部の腐食の原因ともなり得る。溶融重合法によって得られるポリカーボネート樹脂は溶媒を含有しないため、加工工程や製品品質の安定化にとっても有利である。
また、重縮合反応の重合速度は、ヒドロキシ基末端と、エステル基末端或いはカーボネート基末端とのバランスによって制御される。そのため、特に連続式で重合を行う場合は、未反応モノマーの留出によって末端基のバランスが変動すると、重合速度を一定に制御することが難しくなり、得られるポリカーボネート樹脂の分子量の変動が大きくなるおそれがある。ポリカーボネート樹脂の分子量は溶融粘度と相関するため、得られたポリカーボネート樹脂を成形する際に、溶融粘度が変動し、均一な寸法の成形品が得られない等の問題を招くおそれがある。
る。本発明の位相差フィルムにおいては、位相差の波長分散性はポリカーボネート樹脂中のフルオレン系モノマーとその他の共重合成分との比率によって制御されるため、重合中に比率が崩れると、設計どおりの光学特性が得られなくなるおそれがある。
具体的に、第1段目の反応における反応条件としては、以下の条件を採用することができる。即ち、重合反応器の内温は、通常130℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上、かつ、通常250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下の範囲で設定する。また、重合反応器の圧力は、通常70kPa以下(以下、圧力とは絶対圧力を表す。)、好ましくは50kPa以下、より好ましくは30kPa以下、かつ、通常1kPa以上、好ましくは3kPa以上、より好ましくは5kPa以上の範囲で設定する。また、反応時間は、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、かつ、通常10時間以下、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下の範囲で設定する。
第1段目の反応においては、反応圧力を低くするほど重合反応を促進することができるが、一方で未反応モノマーの留出が多くなってしまう。未反応モノマーの留出の抑制と、減圧による反応の促進を両立させるためには、還流冷却器を具備した反応器を用いることが有効である。特に未反応モノマーの多い反応初期に還流冷却器を用いるのがよい。
化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、テトラフェニルホウ酸セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩。これらのうち、重合活性と得られるポリカーボネート樹脂の色相の観点から、リチウム化合物を用いることが好ましい。
前記重合触媒の使用量は、通常、重合に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol〜300μmol、好ましくは0.5μmol〜100μmolである。前記重合触媒として、長周期型周期表第2族の金属およびリチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を用いる場合、特にマグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物を用いる場合には、金属量として、前記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、通常、0.1μmol以上、好ましくは0.3μmol以上、特に好ましくは0.5μmol以上の前記重合触媒を使用する。また、前記重合触媒の使用量は、30μmol以下がよく、好ましくは20μmol以下であり、特に好ましくは10μmol以下である。
樹脂の着色や分解を招く可能性がある。
このようにして得られた本発明のポリカーボネート樹脂の分子量は還元粘度で表すこと
ができる。ポリカーボネート樹脂の還元粘度が低すぎると成形品の機械強度が小さくなる可能性がある。そのため、還元粘度は通常0.20dL/g以上であり、0.25dL/g以上であることが好ましい。一方、ポリカーボネート樹脂の還元粘度が大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性が低下する傾向がある。そのため、還元粘度は、通常0.80dL/g以下であり、0.70dL/g以下であることが好ましく、0.60dL/g以下であることがより好ましい。尚、還元粘度は、実施例の項でも詳述の通り、溶媒として塩化メチレンを用い、試料濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度計を用いて測定する。
。通常は、モノヒドロキシ化合物の含有量を1重量ppmまで低減することにより、前記の問題を十分に抑制することができる。
重合終盤の圧力を低下させる場合には、反応の圧力を下げすぎると分子量が急激に上昇して、反応の制御が困難になる場合があるため、ポリカーボネート樹脂の末端基濃度をヒドロキシ基末端過剰かエステル基末端過剰にして、末端基バランスを偏らせて製造することが好ましい。末端基バランスは全ジヒドロキシ化合物と全ジエステル化合物の仕込みのモル比により調節することができる。
本発明により、高い固有複屈折を有するポリカーボネート樹脂を得ることが可能となる。高い固有複屈折を有するポリカーボネート樹脂は、延伸などの加工により発現する複屈折が大きくなるため、所望の位相差を得るためにフィルムの膜厚を小さくすることが可能となり、ディスプレイの厚みを薄くしたり、使用する材料の量を減らしてコストを低減したりすることが可能となる。この効果の点では、後述する延伸条件において発現する波長550nmにおける複屈折(Δn)が0.0072以上であるような、好ましいポリカーボネート樹脂を得ることが可能となる。また、より好ましくは0.0075以上であるポリカーボネート樹脂を、更に好ましくは0.008以上であるポリカーボネート樹脂を得ることも可能である。。
本発明のポリカーボネート樹脂には本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる熱安定剤、酸化防止剤、触媒失活剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、染顔料、衝撃改良剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、核剤、難燃剤、無機充填剤、発泡
剤等が含まれても差し支えない。
本発明のポリカーボネート樹脂には、必要に応じて、溶融加工時等における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。かかる熱安定剤としては、通常知られるヒンダードフェノール系熱安定剤および/又はリン系熱安定剤が挙げられる。
これらの熱安定剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂を100重量部とした場合、0.0001重量部以上が好ましく、0.0005重量部以上がより好ましく、0.001重量部以上がさらに好ましく、また、1重量部以下が好ましく、0.5重量部以下がより好ましく、0.2重量部以下がさらに好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂に、重合反応で用いた触媒を中和し、失活させるために酸性化合物を添加することで、色調や熱安定性を向上することができる。触媒失活剤として用いられる酸性化合物としては、カルボン酸基やリン酸基、スルホン酸基を有する化合物、又はそれらのエステル体などを用いることができるが、特に下記式(10)又は(11)で表される部分構造を含有するリン系化合物を用いることが好ましい。
ホスホン酸としては、ホスホン酸(亜リン酸)、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、ビニルホスホン酸、デシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、メチレンジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、プロピルホスホン酸無水物などが挙げられる。
ン酸ジプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ビス(ブトキシエチル)、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ジイソトリデシル、リン酸ジオレイル、リン酸ジステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸ジベンジルなどのリン酸ジエステル、又はジエステルとモノエステルの混合物、クロロリン酸ジエチル、リン酸ステアリル亜鉛塩などが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂への前記リン系化合物の添加量が少なすぎると、触媒失活や着色抑制の効果が不十分であり、多すぎるとかえってポリカーボネート樹脂が着色してしまったり、特に高温高湿度下での耐久試験において、ポリカーボネート樹脂が着色しやすくなる。前記リン系化合物の添加量は、重合反応に用いた触媒量に対応した量を添加する。重合反応に用いた触媒の金属1molに対して、前記リン系化合物はリン原子の量として0.5倍mol以上、5倍mol以下が好ましく、さらに0.7倍mol以上、4倍mol以下が好ましく、特に0.8倍mol以上、3倍mol以下が好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂は、機械特性や耐溶剤性等の特性を改質する目的で、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、AS、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等の合成樹脂やゴム、エラストマー等の1種又は2種以上と混練して、ポリマーアロイとしてもよい。
[位相差フィルムの製造方法]
(未延伸フィルムの製造方法)
本発明のポリカーボネート樹脂を用いて、未延伸フィルムを製膜する方法としては、ポリカーボネート樹脂を溶媒に溶解させてキャストした後、溶媒を除去する流延法や、溶媒を用いずにポリカーボネート樹脂を溶融させて製膜する溶融製膜法を採用することができる。溶融製膜法としては、具体的にはTダイを用いた溶融押出法、カレンダー成形法、熱プレス法、共押出法、共溶融法、多層押出、インフレーション成形法等がある。未延伸フィルムの製膜方法は特に限定されないが、流延法では残存溶媒による問題が生じるおそれがあるため、好ましくは溶融製膜法、中でも後の延伸処理のし易さから、Tダイを用いた溶融押出法が好ましい。
にポリマーフィルターを取り付け、ポリカーボネート樹脂を濾過した後に、ダイスから押し出してフィルムを成形する方法が好ましい。その際、押出機やポリマーフィルター、ダイスを配管でつなぎ、溶融ポリカーボネート樹脂を移送する必要があるが、配管内での熱劣化を極力抑制するため、滞留時間が最短になるように各設備を配置することが重要である。また、押出後のフィルムの搬送や巻き取りの工程はクリーンルーム内で行い、フィルムに異物が付着しないように最善の注意が求められる。
未延伸フィルムは、厚みによらず、当該フィルムそのものの全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。透過率が前記下限以上であれば、着色の少ないフィルムが得られ、偏光板と貼り合わせた際、偏光度や透過率の高い円偏光板となり、画像表示装置に用いた際に、高い表示品位を実現することが可能となる。尚、本発明のフィルムの全光線透過率の上限は特に制限はないが通常99%以下である。
前記未延伸フィルムを延伸配向させることにより、位相差フィルムを得ることができる。延伸方法としては縦一軸延伸、テンター等を用いる横一軸延伸、あるいはそれらを組み合わせた同時二軸延伸、逐次二軸延伸等、公知の方法を用いることができる。延伸はバッチ式で行ってもよいが、連続で行うことが生産性において好ましい。さらにバッチ式に比
べて、連続式の方がフィルム面内の位相差のばらつきの少ない位相差フィルムが得られる。
歪み速度(%/分)={延伸速度(mm/分)/原反フィルムの長さ(mm)}×100
本発明の位相差フィルムは、波長550nmにおける面内の複屈折(Δn)が0.007以上であると好ましく、0.0075以上がより好ましく、0.008以上が特に好ましい。位相差は、フィルムの厚み(d)と複屈折(Δn)に比例するため、複屈折を前記特定の範囲にすることにより、薄い膜厚で所望の位相差を発現させることが可能となり、薄型の機器に適合するフィルムを容易に作製することができる。高い複屈折を発現させるためには、延伸温度を低くする、延伸倍率を高くする等して、ポリマー分子の配向度を上げなければならないが、そのような延伸条件ではフィルムが破断しやすくなるため、用いるポリカーボネート樹脂が靱性に優れているほど有利である。
50nmで測定した位相差(R550)に対する比である波長分散(R450/R550)の値は0.98以上、1.01以下である。
前記波長分散の値がこの範囲外の場合には、色相の波長依存性が大きくなり、可視領域のすべての波長において光学補償がなされなくなり、偏光板や表示装置に光が通り抜けることによる着色やコントラストの低下等の問題が生じる。
ポリカーボネート樹脂試料を塩化メチレンに溶解させ、精密に0.6g/dLの濃度のポリカーボネート樹脂溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間t0、及び溶液の通過時間tを測定した。得られたt0及びtの値を用いて次式(i)により相対粘度ηrelを求め、さらに、得られた相対粘度ηrelを用いて次式(ii)により比粘度ηspを求めた。
ηrel=t/t0 (i)
ηsp=(η−η0)/η0=ηrel−1 (ii)
その後、得られた比粘度ηspを濃度c[g/dL]で割って、還元粘度ηsp/c[dL/g]を求めた。
ペレット状のポリカーボネート樹脂試料を90℃で5時間以上、真空乾燥させた。乾燥したペレットを用いて、(株)東洋精機製作所製キャピラリーレオメーターで測定を行った。測定温度は240℃とし、剪断速度9.12〜1824sec−1間で溶融粘度を測定し、91.2sec−1における溶融粘度の値を用いた。尚、オリフィスには、ダイス径がφ1mm×10mmLのものを用いた。以下の実施例および比較例において、溶融粘度が2000Pa・s以上5300Pa・s以下であるものを、溶融成形性するのに適した粘度を有する、成形性に優れたものであると評価した。
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製示差走査熱量計DSC6220を用いて測定した。約10mgのポリカーボネート樹脂試料を同社製アルミパンに入れて密封し、50mL/分の窒素気流下、昇温速度20℃/分で30℃から250℃まで昇温した。3分間温度を保持した後、30℃まで20℃/分の速度で冷却した。30℃で3分保持し、再び200℃まで20℃/分の速度で昇温した。2回目の昇温で得られたDSCデータより、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度である、補外ガラス転移開始温度を求め、それをガラス転移温度とした。以下の実施例および比較例において、ガラス転移点が133℃以上であるものを、耐熱性が高く優れたものであると評価した。
定
ポリカーボネート樹脂試料約1gを精秤し、塩化メチレン5mLに溶解して溶液とした後、総量が25mLになるようにアセトンを添加して再沈殿処理を行った。次いで、該処理液について液体クロマトグラフィーにより測定した。
・装置:(株)島津製作所製
システムコントローラ:CBM−20A
ポンプ:LC−10AD
カラムオーブン:CTO−10ASvp
検出器:SPD−M20A
分析カラム:Cadenza CD−18 4.6mmφ×250mm
オーブン温度:60℃
・検出波長:220nm
・溶離液:A液:0.1%リン酸水溶液、B液:アセトニトリル
A/B=50/50(vol%)からA/B=0/100(vol%)まで10分間でグラジエント、A/B=0/100(vol%)で5分間保持
・流量:1mL/min
・試料注入量:10μL
ポリカーボネート樹脂中の各化合物の含有量は、各化合物について、それぞれ濃度を変更した溶液を調製し、上記の液体クロマトグラフィーと同じ条件で測定を行って検量線を作成し、絶対検量線法により算出した。
90℃で5時間以上、真空乾燥をしたポリカーボネート樹脂ペレットを、いすず化工機(株)製単軸押出機(スクリュー径25mm、シリンダー設定温度:220℃〜270℃)を用い、Tダイ(幅200mm、設定温度:200〜270℃)から押し出した。押し出したフィルムを、チルロール(設定温度:120〜170℃)により冷却しつつ巻取機でロール状にし、未延伸フィルムを作製した。
未延伸フィルムから、長さ40mm、幅8mmの長方形の試験片を切り出して測定試料とした。波長656nm(C線)、589nm(D線)、486nm(F線)の干渉フィルターを用いて、(株)アタゴ製多波長アッベ屈折率計DR−M4/1550により各波長の屈折率nC、nD、nFを測定した。測定は界面液としてモノブロモナフタレンを用い、20℃で行った。アッベ数νdは次の式で計算した。
νd=(1−nD)/(nC−nF)
アッベ数が大きいほど、屈折率の波長依存性が小さいことを表す。
前述の溶融押出法により、膜厚約100μmの未延伸フィルムを作製し、日本電色工業(株)製濁度計COH400を用いて全光線透過率を測定した。
He−Neレーザー、偏光子、補償板、検光子、光検出器からなる複屈折測定装置と振動型粘弾性測定装置(レオロジー社製DVE−3)を組み合わせた装置を用いて測定した。(詳細は、日本レオロジー学会誌Vol.19,p93−97(1991)を参照。)
前記の未延伸フィルムから長さ20mm、幅5mmの試験片を切り出し、粘弾性測定装置に固定し、25℃の室温で貯蔵弾性率E’を周波数96Hzにて測定した。同時に、出射されたレーザー光を偏光子、試料、補償板、検光子の順に通し、光検出器(フォトダイ
オード)で拾い、ロックインアンプを通して角周波数ω又は2ωの波形について、その振幅とひずみに対する位相差を求め、ひずみ光学係数O’を求めた。このとき、偏光子と検光子の方向は直交し、またそれぞれ、試料の伸長方向に対してπ/4の角度をなすように調整した。光弾性係数Cは、貯蔵弾性率E’とひずみ光学係数O’を用いて次式より求めた。
C=O’/E’
以下の実施例および比較例において、光弾性係数が19×10−12Pa−1以下であるものを、使用環境の変化によるフィルムの伸び縮みによる光学物性の変化が小さく優れたものであると評価した。
前記の未延伸フィルムから長さ125mm、幅50mmの試験片を切り出した。バッチ式二軸延伸装置(アイランド工業社製二軸延伸装置BIX−277−AL)を用いて、延伸速度300%/分、及び延伸倍率2倍の条件で前記試験片の自由端一軸延伸を行い、位相差フィルムを得た。延伸温度はポリカーボネート樹脂のガラス転移温度+10℃とし、そこからフィルムが破断する条件まで1℃ずつ温度を下げていった。破断する一つ手前の温度条件で得られた延伸フィルムの中央部を長さ4cm、幅4cmに切り出し、王子計測機器(株)製位相差測定装置KOBRA−WPRを用いて、測定波長450、500、550、590、630nmで位相差を測定し、波長分散性を測定した。波長分散性は450nmと550nmで測定した位相差R450とR550の比(R450/R550)と、630nmと550nmで測定した位相差R630とR550の比(R630/R550)で示した。
複屈折Δn=R550[nm]/(フィルム厚み[mm]×106)
以下の実施例および比較例において、複屈折Δnが0.072以上であるものを、フィルムの薄膜化を実現することが可能であり、優れたものであると評価した。
本発明は、様々な物性のバランスを取れるように材料設計されたポリカーボネート樹脂、それを成形してなる透明フィルム、および延伸されてなる位相差フィルムを提供するものであるので、上記の評価結果が何れも同時に優れている。
[合成例1]ビス[9−(2−フェノキシカルボニルエチル)フルオレン−9−イル]メタン(下記式(12))の合成
[合成例2]1,2−ビス[9−(3−ヒドロキシプロピル)−フルオレン−9−イル]メタン(下記式(13))の合成
[合成例3]ビス(9−ヒドロキシメチルフルオレン−9−イル)メタン(下記式(14))の合成
上記の合成例1〜合成例3の化合物は、特開2015−25111に記載の方法に従い合成した。
合成例4の化合物は、特開2014−114281に記載の方法に従い合成した。
ジムロートを備えた500mLの反応容器を窒素置換した後、myo−イノシトール30g(167mmol)、DMF200mL、p−トルエンスルホン酸一水和物863mg、ジメトキシシクロヘキサン75mLを投入し、100℃で3時間攪拌した。40℃まで冷却した後、トリエチルアミン2.5mLを加え、反応溶媒であるDMFを減圧留去した。その後酢酸エチル250mLを加え、5%炭酸ナトリウム水溶液300mLで分液を実施した後、イオン交換水300mLで1回洗浄した。得られた有機相から溶媒を減圧留去し、酢酸エチル50mL/n−ヘキサン70mLで晶析を実施し、得られた白色沈殿を濾過した。その後再び酢酸エチル50mL/n−ヘキサン70mLで晶析を実施した。得られた固体を60℃で真空乾燥5時間実施することで、目的化合物を9.8g(収率17
.2%)得た。
以下の実施例、及び比較例で用いた化合物の略号等は以下の通りである。
・BF1:ビス[9−(2−フェノキシカルボニルエチル)フルオレン−9−イル]メタン
・BF2:1,2−ビス[9−(3−ヒドロキシプロピル)−フルオレン−9−イル]メタン
・BF3:ビス(9−ヒドロキシメチルフルオレン−9−イル)メタン
・SBI:6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン
・DCMI:DL−2,3:5,6−ジ−O−シクロヘキシリデン−myo−イノシトール
・ISB:イソソルビド(ロケットフルーレ社製、商品名:POLYSORB)
・CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス、トランス混合物、SKケミカル社製)
・TCDDM:トリシクロデカンジメタノール(オクセア社製)
・SPG:スピログリコール(三菱ガス化学(株)製)
・BPA:2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(三菱化学(株)製)
・BHEPF:9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)
・BCF:9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)
・DPC:ジフェニルカーボネート(三菱化学(株)製)
ISB 54.24重量部(0.371mol)、TCDDM 25.26重量部(0.059mol)、BF1 11.28重量部(0.0018mol)、DPC 103.30重量部(0.482mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物8.81×10−4重量部(5.00×10−6mol)を反応容器に投入し、反応装置内を減圧窒素置換した。窒素雰囲気下、150℃で約10分間、攪拌しながら原料を溶解させた。反応1段目の工程として220℃まで30分かけて昇温し、60分間常圧にて反応した。次いで圧力を常圧から13.3kPaまで90分かけて減圧し、13.3kPaで30分間保持し、発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。次いで反応2段目の工程として熱媒温度を15分かけて240℃まで昇温しながら、圧力を0.10kPa以下まで15分かけて減圧し、発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。所定の撹拌トルクに到達後
、窒素で常圧まで復圧して反応を停止し、生成したポリエステルカーボネートを水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。得られたポリエステルカーボネートのペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例1は、好ましいガラス転移温度及び溶融粘度を有しているので耐熱性、溶融加工性、機械物性に優れている。また、フェノール残存量も低いので、成形時における成形機への汚染や成形品の外観不良を防止することができ、生産性に優れる。そして、高配向性(Δn)、低光弾性係数、高屈折率と優れた光学特性も有している。
ISB 50.70重量部(0.347mol)、SPG 30.20重量部(0.099mol)、BF1 11.28重量部(0.018mol)、DPC 91.80重量部(0.429mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物7.86×10−4重量部(4.46×10−6mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、ポリエステルカーボネートのペレットを得た。得られたポリエステルカーボネートのペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例2は、実施例1と同様に優れた耐熱性、溶融加工性、機械物性、及び光学特性を有している。特に、光弾性係数が低く、光学特性に優れるだけでなく、適切なガラス転移温度、溶融粘度を有する点で優れるので、高温高湿度環境下での使用等に適している。
ISB 52.62重量部(0.360mol)、CHDM 20.28重量部(0.141mol)、BF1 21.14重量部(0.033mol)、DPC 100.20重量部(0.468mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物8.82×10−4重量部(5.01×10−6mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、ポリエステルカーボネートのペレットを得た。得られたポリエステルカーボネートのペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例3は、実施例1と同様に優れた耐熱性、溶融加工性、機械物性、及び光学特性を有している。特に、実施例1に比べて、高複屈折であるので、フィルムとした際に所望の位相差を発現させるために必要な膜厚を薄くすることができるので、薄膜化が求められる部材により適している。
ISB 74.54重量部(0.510mol)、BF1 18.33重量部(0.029mol)、DPC 103.14重量部(0.481mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物8.99×10−4重量部(5.10×10−6mol)を用い、停止撹拌トルクを実施例1よりも高くし、より高い溶融粘度まで重合を進行させた以外は実施例1と同様の方法で、ポリエステルカーボネートのペレットを得た。得られたポリエステルカーボネートのペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例4は、実施例1と同様に優れた耐熱性、溶融加工性、機械物性、及び光学特性を有している。特に、実施例の中でも、優れたガラス転移温度を実現できているので、耐熱性、溶融加工性のバランスに極めて優れており、高温高湿度の環境下での使用に特に適している。
ISB 68.72重量部(0.470mol)、SBI 8.05重量部(0.026mol)、BF1 15.51重量部(0.024mol)、DPC 101.15重量部(0.472mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物8.74×10−4重量部(4.96×10−6mol)を用い、停止撹拌トルクを実施例1よりも高くした以外は実施例1と同様の方法で、ポリエステルカーボネートのペレットを得た。得られた
ポリエステルカーボネートのペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例5は、実施例1と同様に優れた耐熱性、溶融加工性、機械物性、及び光学特性を有している。特に、実施例の中でも、高いガラス転移温度を有しているので、極めて耐熱性に優れている。また、フェノール残存量も極めて少ないため、成形時における成形機への汚染や成形品の外観不良を防止することができる。
ISB 68.78重量部(0.471mol)、DCMI 8.05重量部(0.024mol)、BF1 15.51重量部(0.024mol)、DPC 100.70重量部(0.470mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.74×10−3重量部(9.89×10−6mol)を用い、停止撹拌トルクを実施例1よりも高くした以外は実施例1と同様の方法で、ポリエステルカーボネートのペレットを得た。得られたポリエステルカーボネートのペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例6は、実施例1と同様に優れた耐熱性、溶融加工性、機械物性、及び光学特性を有している。特に、実施例の中でも、高いガラス転移温度と低い光弾性係数を有しているので、耐熱性、光学特性に極めて優れている。
ISB 59.63重量部(0.408mol)、CHDM 25.22重量部(0.175mol)、DPC 126.12重量部(0.589mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.54×10−4重量部(8.74×10−7mol)を用い、最終重合温度を220℃とした以外は実施例1と同様の方法で、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
比較例1は、実施例に比べてガラス転移温度が低いため、耐熱性に劣るだけでなく、溶融粘度も小さいため例えば、高い温度が必要とされるプロセスでの成形に適していないという点で熱加工性にも劣っている。
ISB 54.65重量部(0.374mol)、TCDDM 31.46重量部(0.160mol)、DPC 115.59重量部(0.540mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.41×10−4重量部(8.01×10−7mol)を用い、最終重合温度を220℃とした以外は実施例1と同様の方法で、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
比較例2は、比較例1同様、実施例に比べてガラス転移温度が低いため、耐熱性に劣るだけでなく、溶融粘度も小さいため例えば、高い温度が必要とされるプロセスでの成形に適していないという点で加工性にも劣っている。
ISB 40.22重量部(0.275mol)、CHDM 13.54重量部(0.094mol)、BHEPF 34.60重量部(0.079mol)、DPC 96.93重量部(0.452mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物7.89×10−4重量部(4.48×10−6mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
ISB 29.85重量部(0.204mol)、CHDM 27.88重量部(0.193mol)、BCF 29.89重量部(0.079mol)、DPC 104.12重量部(0.486mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物4.20×10−3重量部(2.38×10−5mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
ISB 55.18重量部(0.378mol)、BHEPF 33.04重量部(0.075mol)、DPC 98.00重量部(0.457mol)、及び触媒として酢酸カルシウム1水和物7.98×10−4重量部(4.53×10−6mol)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、ポリカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂のペレットを用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
日本ゼオン(株)製ZEONOR 1420R(シクロオレフィンポリマー)を用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
比較例6は、実施例に比べて、配向性に劣っている。そのため、フィルムとした際の所望の位相差を発現させるためには膜厚を厚くしなければならず、薄膜化が求められる部材には適していない。
三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製ノバレックス7022R(BPAポリカーボネート)を用いて、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
比較例7は、溶融粘度が高いため、高い温度が必要とされるプロセスでの成形に適していない。また、光弾性係数が極めて大きいため、光学特性にも優れない。
特開2015−25111の実験例1に従って、ポリカーボネート樹脂を合成し、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
特開2015−25111の実験例4に従って、ポリカーボネート樹脂を合成し、前述の各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
ィルムとした際の所望の位相差を発現させるためには膜厚を厚くしなければならず、薄膜化が求められる部材には適していない。また、比較例9は光弾性係数が大きく、光学特性に優れない。また、フェノール残存量も多く、成形工程での成形機の汚染や成形品の外観不良を引き起こすため、生産性に優れず、好ましくない。また比較例9は、意外にも波長分散性が正の方向に大きくなってしまっている。これはオリゴフルオレン構造単位中のカルボニル基とフルオレン環との距離が近すぎて、カルボニル基の立体障害によって、フルオレン環が好ましい方向に配向できなくなっていることが推測される。前述したとおり、理想的な光学物性を発現するためにはオリゴフルオレン構造単位の分子設計が重要となる。
Claims (7)
- 下記式(1)又は(2)で表される構造単位を含有し、構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、下記式(1)又は(2)で表される構造単位を1重量%以上、18重量%以下含有するポリカーボネート樹脂であって、
該ポリカーボネート樹脂から作成された延伸フィルムの、波長450nmにおける位相差(R450)の、波長550nmにおける位相差(R550)に対する比(R450/R550)の値が、0.98以上、1.01以下であり、
前記ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、下記式(3)で表される構造単位を50重量%以上含有するポリカーボネート樹脂。
- ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、前記式(3)で表される構造単位を50重量%以上、75重量%以下含有する、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂。
- ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、アセタール環を含有するジヒドロキシ化合物、オキシアルキレングリコール、芳香族ジヒドロキシ化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物に由来する構造単位を0.1重量%以上、60重量%以下含む、請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂。
- ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の重量の合計量を100重量%とした際に、芳香族化合物に由来する構造単位を25重量%以下含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂を成形してなる透明フィルム。
- 成形温度280℃以下で、溶融製膜法により成形してなる、請求項5に記載の透明フィルム。
- 請求項5又は請求項6に記載のフィルムを少なくとも一方向に延伸してなる位相差フィルム。
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