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JP6558572B2 - ステアリング装置 - Google Patents

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JP6558572B2 JP2015137046A JP2015137046A JP6558572B2 JP 6558572 B2 JP6558572 B2 JP 6558572B2 JP 2015137046 A JP2015137046 A JP 2015137046A JP 2015137046 A JP2015137046 A JP 2015137046A JP 6558572 B2 JP6558572 B2 JP 6558572B2
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Description

この発明は、ステアリング装置に関する。
下記特許文献1に記載されたステアリングコラムは、回動することによって所定の調整方向における位置調整が可能な調整部と、調整部を保持する保持部と、ツースプレートと、押圧部材と、クランプボルトとを含む。調整部には、ステアリングシャフトを保持するジャケットユニットが取り付けられている。保持部には、調整方向に並ぶ複数の歯が設けられている。ツースプレートにも、調整方向に並ぶ複数の歯が設けられている。クランプボルトは、押圧部材およびツースプレートに対して挿通されていて、調整部とともに回動可能である。
クランプボルトに取り付けられたレバーを操作することにより、押圧部材を保持部側へ移動させることができる。押圧部材が保持部側に移動すると、ツースプレートが押圧部材に押圧されることによって保持部へ向けて移動する。移動したツースプレートの歯が保持部の歯同士の隙間に入り込むと、保持部の歯とツースプレートの歯とが噛み合う。これにより、調整方向におけるジャケットユニットの位置が固定される。
米国特許出願公開第2009/0013817号明細書
特許文献1で定義された調整方向とは、ステアリングシャフトの軸方向に対して上下に交差する交差方向である。特許文献1に記載されたステアリングコラムのように歯同士を噛み合わせることによって交差方向におけるジャケットユニットの位置を固定する場合には、車両衝突などの大きな衝撃が発生してもジャケットユニットの位置がずれないように、歯同士を強固に噛み合わせることによって歯同士の噛合強度を向上させる必要がある。
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、ステアリングシャフトをコラムジャケットによって保持し、歯同士を噛み合わせることによってステアリングシャフトの軸方向に対する交差方向におけるコラムジャケットの位置を固定する構成において、歯同士の噛合強度の向上を図れるステアリング装置を提供することを目的とする。
請求項1記載の発明は、一端(3A)に操舵部材(11)が連結されるステアリングシャフト(3)と、前記ステアリングシャフトを保持し、前記ステアリングシャフトの軸方向(X)において前記一端とは反対側(X2)の支点(5C)まわりに回動可能なコラムジャケット(4)と、車体(2)に固定され、前記コラムジャケットを回動可能に支持するブラケット(6)と、前記ブラケットに対する前記コラムジャケットの回動を可能および不能とするために操作される操作部材(41)と、前記軸方向および前記軸方向に対して上下に交差する交差方向(C、Z)の両方に対する直交方向(Y)に延びる歯筋(72B)を有して前記交差方向に沿って並ぶ複数の第1歯(72)で構成され、前記ブラケットによって支持されており、前記軸方向に並ぶ一対の歯列(71)と、前記直交方向に延びる歯筋(82B)を有し、前記軸方向に離れた2箇所に少なくとも1つずつ設けられ、前記一対の歯列に噛み合い可能な第2歯(82)を有し、前記コラムジャケットとともに回動可能であり、前記操作部材の操作に応じて前記直交方向に移動可能なツース部材(66、43、45、89)とを含み、前記一対の歯列のうち、一方の歯列(71A)における前記第1歯の歯先角度(α)は、前記一方の歯列よりも前記支点から離れた他方の歯列(71B)における前記第1歯の歯先角度(β)と異なる、ステアリング装置(1)である。
請求項2記載の発明は、前記一方の歯列における前記第1歯の歯先角度は、前記他方の歯列における前記第1歯の歯先角度よりも小さい、請求項1に記載のステアリング装置である。
なお、上記において、括弧内の数字などは、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
請求項1に記載の発明によれば、2箇所の第2歯は、一対の歯列に噛み合い可能である。詳しくは、操作部材を操作してツース部材を移動させることによって第2歯を歯列に接近させて、歯列の第1歯と第2歯とが交差方向に交互に並ぶと、第1歯と第2歯とが噛み合う。これにより、コラムジャケットが支点まわりに回動できなくなるので、交差方向におけるコラムジャケットの位置が固定される。
一対の歯列のうち、一方の歯列における第1歯の歯先角度は、一方の歯列よりも支点から離れた他方の歯列における第1歯の歯先角度と異なる。これにより、一対の歯列と一対の第2歯とが噛み合った状態において、第2歯が一方の歯列の第1歯から受ける軸方向の力と、第2歯が他方の歯列の第1歯から受ける軸方向の力とに差が生じるので、ツース部材が軸方向において付勢される。そのため、第1歯と第2歯との間のガタが詰まるので、第1歯と第2歯とが強固に噛み合う。この結果、第1歯と第2歯との噛合強度の向上を図れる。
請求項2に記載の発明によれば、交差方向がコラムジャケットの回動軌跡に沿うチルト方向であって、一対の歯列のそれぞれにおいて複数の第1歯がチルト方向に沿って並ぶ場合には、支点に近い一方の歯列における第1歯のピッチは、一方の歯列よりも支点から離れた他方の歯列における第1歯のピッチよりも狭い。第1歯のピッチが狭くなるほど、噛み合った状態における第1歯と第2歯との接触領域が小さくなるので、一方の歯列の第1歯と第2歯との噛合強度は、他方の歯列の第1歯と第2歯との噛合強度よりも低くなる。
そこで、一方の歯列における第1歯の歯先角度は、他方の歯列における第1歯の歯先角度よりも小さくなるように設定される。これにより、第2歯が一方の歯列の第1歯から受ける軸方向の力が、第2歯が他方の歯列の第1歯から受ける軸方向の力よりも小さくなるので、ツース部材が軸方向において支点側へ付勢される。そのため、一方の歯列の第1歯と第2歯との間のガタが詰まるので、一方の歯列の第1歯と第2歯とが強固に噛み合う。この結果、一方の歯列の第1歯と第2歯との噛合強度の向上を図れる。
図1は、本発明の一実施形態に係るステアリング装置の概略構成を示す側面図である。 図2は、ステアリング装置の斜視図である。 図3は、図1におけるIII−III線に沿った断面図である。 図4は、左側のチルトロック機構の分解斜視図である。 図5は、図3においてV−V線に沿った断面図である。 図6は、図5においてVI−VI線に沿った断面図である。 図7は、噛み合った状態にある第1歯列と第2歯列とを示す模式図である。 図8は、図6においてステアリング装置1の解除状態を示した図である。 図9は、図5において第2歯列が第1歯列に乗り上げた状態を示した図である。 図10は、第1変形例に係るチルトロック機構の分解斜視図である。 図11は、第2変形例に係るチルトロック機構の分解斜視図である。 図12は、第3変形例に係るチルトロック機構の分解斜視図である。
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るステアリング装置1の概略構成を示す側面図である。図1において、紙面左側が、ステアリング装置1が取り付けられる車体2の前側であり、紙面右側が車体2の後側であり、紙面上側が車体2の上側であり、紙面下側が車体2の下側である。
図1を参照して、ステアリング装置1は、ステアリングシャフト3と、コラムジャケット4と、ロアーブラケット5と、アッパーブラケット6と、位置調整機構7と、テレスコロック機構8(後述する図2参照)と、チルトロック機構9とを主に含んでいる。
ステアリングシャフト3では、その後端である一端3Aに、ステアリングホイールなどの操舵部材11が連結される。ステアリングシャフト3において、その前端である他端3Bは、自在継手12、インターミディエイトシャフト13および自在継手14を順に介して、転舵機構15のピニオン軸16に連結されている。
転舵機構15は、ラックアンドピニオン機構などで構成されている。転舵機構15は、ステアリングシャフト3の回転が伝達されたことに応じて、タイヤなどの転舵輪(図示せず)を転舵させる。
ステアリングシャフト3は、車体2の前後方向に延びている。以下では、ステアリングシャフト3が延びる方向を、ステアリングシャフト3の軸方向Xという。軸方向Xは、他端3Bが一端3Aよりも低くなるように水平方向に対して傾斜している。軸方向Xにおいて一端3A側である後側には、符号X1を付し、軸方向Xにおいて一端3Aとは反対側である前側には、符号X2を付す。
軸方向Xに対する直交方向のうち、図1において紙面と垂直な方向を左右方向Yといい、図1において略上下に延びる方向を上下方向Zという。左右方向Yにおいて、図1の紙面の奥側は、右側Y1であり、紙面の手前側は、左側Y2である。上下方向Zにおいて、上側には、符号Z1を付し、下側には、符号Z2を付す。
なお、図1以外の各図において図1の軸方向X、後側X1、前側X2、左右方向Y、右側Y1、左側Y2、上下方向Z、上側Z1および下側Z2に対応する方向には、図1と同じ符号を付している。
ステアリングシャフト3は、軸方向Xに延びるアッパーシャフト20およびロアーシャフト21を含む。
アッパーシャフト20は、ロアーシャフト21よりも後側X1に位置し、ロアーシャフト21に対して同軸状に配置されている。アッパーシャフト20の後端20Aが、ステアリングシャフト3の一端3Aである。ロアーシャフト21の前端21Aが、ステアリングシャフト3の他端3Bである。ロアーシャフト21の後端部21Bは、アッパーシャフト20において円筒状に形成された前端部20Bに対して前側X2から挿入されている。
ロアーシャフト21は、スプライン嵌合やセレーション嵌合によってアッパーシャフト20に連結されている。そのため、アッパーシャフト20とロアーシャフト21とは、一体回転可能であるとともに、軸方向Xに沿って相対移動可能である。ロアーシャフト21に対するアッパーシャフト20の軸方向Xへの移動によって、ステアリングシャフト3は、軸方向Xに沿って伸縮可能である。
コラムジャケット4の全体は、軸方向Xへ延びる中空体である。コラムジャケット4は、ステアリングシャフト3を収容して保持している。コラムジャケット4は、軸方向Xに延びる筒状のアッパージャケット22およびロアージャケット23を含む。
アッパージャケット22は、ロアージャケット23よりも後側X1に位置している。アッパージャケット22の前端部22Aが、ロアージャケット23の後端部23Aに対して後側X1から挿入されている。この状態のアッパージャケット22は、ロアージャケット23に対して軸方向Xに相対移動できる。アッパージャケット22がロアージャケット23に対して相対移動することによって、コラムジャケット4の全体が軸方向Xに沿って伸縮可能である。
アッパージャケット22の後端部22Bは、軸受24によってアッパーシャフト20に連結されている。ロアージャケット23の前端部23Bは、軸受25によってロアーシャフト21に連結されている。これにより、コラムジャケット4は、軸受24および軸受25を介してステアリングシャフト3を回転自在に支持している。
互いに連結されたアッパーシャフト20およびアッパージャケット22は、ロアーシャフト21およびロアージャケット23に対して軸方向Xに移動可能である。これにより、コラムジャケット4は、ステアリングシャフト3とともに伸縮可能である。ここでのステアリングシャフト3およびコラムジャケット4の伸縮をテレスコといい、テレスコによるステアリングシャフト3の一端3A(つまり、一端3Aに連結される操舵部材11)の軸方向Xでの位置調整をテレスコ調整という。
ロアーブラケット5は、ロアージャケット23の前端部23Bの上側外周面に固定された左右一対の可動ブラケット5A(図2も参照)と、車体2に固定される固定ブラケット5Bと、左右方向Yに延びた中心軸5Cとを含んでいる。中心軸5Cは、一対の可動ブラケット5Aの間に架設されつつ固定ブラケット5Bを貫通している。これにより、ロアージャケット23の前端部23Bが車体2に連結されている。可動ブラケット5Aがロアージャケット23の前端部23Bに設けられていることから、中心軸5Cは、コラムジャケット4において前側X2へ偏った位置に配置されている。
可動ブラケット5Aは、固定ブラケット5Bによって、中心軸5Cまわりに回動可能に支持されている。そのため、コラムジャケット4全体は、ステアリングシャフト3を伴って、固定ブラケット5Bおよびアッパーブラケット6に対して、中心軸5Cまわりに上下に回動することができる。このように中心軸5Cを支点とするコラムジャケット4の回動をチルトといい、中心軸5Cを中心とする円弧に沿った略上下の方向をチルト方向Cという。チルト方向Cは、軸方向Xに対して上下に交差する交差方向であるとともに、左右方向Yに対して直交している。前述した上下方向Zは、軸方向Xに対して上下に交差する交差方向であるとともに、チルト方向Cに対する接線方向であり、左右方向Yに対して直交している。
チルトによる操舵部材11のチルト方向Cでの位置調整をチルト調整という。コラムジャケット4をチルト方向Cに沿って回動させることによって、チルト調整が可能になる。
なお、ロアージャケット23は、ロアーブラケット5を介して車体2に連結されることによって軸方向Xに移動できないので、テレスコ調整の際には、アッパージャケット22が実際に移動する。
アッパーブラケット6は、ロアージャケット23の後端部23Aを支持し、後端部23Aを車体2に連結するブラケットである。ステアリング装置1の斜視図である図2を参照して、アッパーブラケット6は、左右方向Yに薄くロアージャケット23の後端部23Aを挟んで対向する一対の側板30と、一対の側板30のそれぞれの上端部に連結され、上下方向Zに薄い連結板31とを一体的に含む。
一対の側板30において、左右方向Yから見て同じ位置には、チルト溝32が形成されている。チルト溝32は、チルト方向Cに沿って円弧状に延びている。連結板31は、一対の側板30よりも左右方向Yの両外側へ延びた部分を有しており、当該部分に挿通される図示しないボルトなどによって、アッパーブラケット6全体が車体2(図1参照)に固定される。
ロアージャケット23の上側外周面には、軸方向Xの全域に亘って延びて上下方向Zにロアージャケット23を貫通するスリット33が形成されている。また、ロアージャケット23の後端部23Aには、左右方向Yからスリット33を区画しつつ上側Z1に延び出た一対の延設部34が一体的に設けられている。各延設部34は、軸方向Xおよび上下方向Zに広がる板状であって左右方向Yに薄い。一対の延設部34は、一対の側板30の間に配置されていて、それぞれの延設部34は、左右方向Yにおいて同じ側に位置する側板30に対して左右方向Yから対向している。
図3は、図1におけるIII−III線に沿った断面図である。図3において、ステアリングシャフト3の中心軸3Cを通って上下方向Zに延びる仮想の平面を基準面3Dという。図3を参照して、一対の延設部34のそれぞれにおいて左右方向Yから見て同じ位置には、左右方向Yに延設部34を貫通する円形状の挿通穴35が形成されている。一対の延設部34の挿通穴35は、左右方向Yから見て、アッパーブラケット6の一対の側板30のチルト溝32の一部と重なっている。
位置調整機構7は、チルト調整およびテレスコ調整のために操舵部材11(図1参照)の位置のロックを解除したり、チルト調整やテレスコ調整を終えた操舵部材11の位置をロックしたりするための機構である。位置調整機構7は、締付軸としてのチルトボルト40と、操作部材41と、カム42と、移動部材43と、ナット44と、移動部材45と、針状ころ軸受46と、スラストワッシャ47とを含む。
チルトボルト40は、左右方向Yに延びる中心軸線40Aを有する金属製のボルトである。チルトボルト40では、左端部に頭部40Bが設けられ、外周面の右端部にねじ溝40Cが設けられている。チルトボルト40において頭部40Bよりも右側Y1の部分は、ステアリングシャフト3よりも上側Z1の位置において、一対の側板30のチルト溝32と一対の延設部34の挿通穴35とに挿通されている。この状態では、頭部40Bが左側Y2の側板30よりも左側Y2に位置し、ねじ溝40Cが右側Y1の側板30よりも右側Y1に位置している。
操作部材41は、把持可能なレバーなどである。操作部材41の基端部41Aには、左右方向Yに操作部材41を貫通する挿通穴41Bが形成されている。挿通穴41Bには、チルトボルト40の左端部が挿通されていて、基端部41Aはチルトボルト40に固定されている。そのため、運転者などの使用者は、操作部材41の長手方向において基端部41Aとは反対の把持部41Cを掴んで操作部材41を操作することができる。チルトボルト40は、操作部材41の操作に応じて、中心軸線40Aまわりに操作部材41と一体回転する。
カム42は、右側Y1から操作部材41の基端部41Aに隣接する環状の板部42Aと、板部42Aから左側Y2に延びる筒状のボス部42Bとを一体的に含む。板部42Aおよびボス部42Bのそれぞれの内周面が区画する空間には、チルトボルト40が挿通されている。ボス部42Bは、操作部材41の挿通穴41Bに挿通されている。カム42は、チルトボルト40および操作部材41と一体回転する。
図4は、左側Y2のチルトロック機構9の分解斜視図である。図4を参照して、移動部材43は、たとえば金属製の焼結体である。移動部材43は、第1押圧部51と、第2押圧部52と、ボス部53とを一体的に含む。
第1押圧部51は、左右方向Yに薄い板状であり、左右方向Yから見て略四角形状である。左右方向Yから見たときの第1押圧部51の略中央には、第1押圧部51を左右方向Yに貫通する円形状の貫通穴51Aが形成されている。第1押圧部51の右側面を第1押圧面54という。
第2押圧部52は、第1押圧面54から右側Y1に突出したブロック状であり、右側Y1から見て略円形状である。第2押圧部52の上下方向Zの両側には、軸方向Xおよび左右方向Yに沿って平坦な平坦面52Aが1つずつ形成されている。第2押圧部52の右側面を第2押圧面55という。第2押圧面55は、軸方向Xにおける外側へ膨出した略半円形状であり、軸方向Xに間隔を隔てて一対設けられている。第1押圧部51の貫通穴51Aは、第2押圧部52において一対の第2押圧面55の間の部分も左右方向Yに沿って貫通している。
ボス部53は、第2押圧部52において一対の第2押圧面55の間の部分から右側Y1に突出した小片状であり、右側Y1から見て略四角形状である。ボス部53において軸方向Xの両側の端面53Aは、チルト方向C、厳密には、チルト方向Cに対する接線方向に沿って平坦である。第2押圧部52における上側Z1の平坦面52Aは、ボス部53の上端面と面一になっており、第2押圧部52における下側Z2の平坦面52Aは、ボス部53の下端面と面一になっている。以下では、ボス部53の上端面および下端面を平坦面52Aの一部とみなすことにする。第1押圧部51の貫通穴51Aは、左右方向Yに沿ってボス部53も貫通している。ボス部53の右端面には、軸方向Xに沿ってボス部53を切り欠く切欠き53Bが形成されている。切欠き53Bは、軸方向Xにおける貫通穴51Aの両側に1つずつ設けられており、貫通穴51Aに連通している。そのため、ボス部53は、貫通穴51Aおよび切欠き53Bを境界として、上下に二分されている。
図3を参照して、移動部材43の貫通穴51Aには、チルトボルト40の左端部が、若干の遊びを持って挿通されている。移動部材43の第1押圧部51は、カム42の板部42Aに右側Y1から隣接している。板部42Aの右側面および第1押圧部51の左側面には、カム突起56が形成されている。
移動部材43のボス部53は、左側Y2の側板30のチルト溝32に挿通されている。ボス部53において軸方向Xの両側の端面53Aのそれぞれは、チルト溝32においてチルト方向Cに沿って平行に延びる一対の縁部32Aに沿っている(図4参照)。そのため、チルト溝32内での移動部材43の空転や、チルトボルト40との移動部材43の共回りが防止されている。
移動部材43の第2押圧部52の一対の第2押圧面55は、左側Y2の側板30の左側面においてチルト溝32の周辺部分に左側Y2から接触している。
チルトボルト40のねじ溝40Cには、ナット44が取り付けられている。ナット44と右側Y1の側板30との間には、移動部材45と、環状の針状ころ軸受46およびスラストワッシャ47とが、左側Y2からこの順に並んでいる。
移動部材45は、基準面3Dを中心として移動部材43を右側Y1に反転させたときの形状とほぼ一致する。ただし、移動部材43と異なり、移動部材45には、カム突起56が形成されていない。移動部材45において移動部材43の各部分と対応する箇所には、同じ符号を付して、当該箇所についての詳しい説明を省略する。
チルトボルト40の右端部は、移動部材45、針状ころ軸受46およびスラストワッシャ47のそれぞれに対して挿通されている。移動部材45の貫通穴51Aには、チルトボルト40の右端部が、若干の遊びを持って挿通されている。移動部材45のボス部53は、右側Y1のチルト溝32に挿通されている。移動部材43と同様に、チルト溝32内での移動部材45の空転や、チルトボルト40との移動部材45の共回りが防止されている。移動部材45の第2押圧部52の第2押圧面55は、右側Y1の側板30の右側面においてチルト溝32の周辺部分に右側Y1から接触している。
チルトボルト40は、アッパーブラケット6における左右の側板30のチルト溝32内において、移動部材43および45のそれぞれのボス部53とともに、チルト溝32に沿ってチルト方向Cに移動可能である。しかし、チルトボルト40は、コラムジャケット4のロアージャケット23の挿通穴35内では、中心軸線40Aまわりに回転可能であるものの、他の方向には移動できない。そのため、チルト調整のためにコラムジャケット4をチルトさせると、チルトボルト40は、コラムジャケット4とともにチルト方向Cに回動する。このように、アッパーブラケット6は、チルトボルト40を介してコラムジャケット4を回動可能に支持している。チルト調整は、ボス部53がチルト溝32内で移動可能な範囲で行われる。
使用者がテレスコ調整やチルト調整をした後に、操作部材41を操作して回転させると、カム42が回転し、カム42および移動部材43における互いのカム突起56が乗り上げる。これにより、移動部材43は、左右方向Yに延びるチルトボルト40に沿って右側Y1に移動し、第2押圧面55によって左側Y2の側板30の左側面を左側Y2から押圧する。すると、移動部材45が、チルトボルト40に沿って左側Y2に引き寄せられ、移動部材45の第2押圧面55が右側Y1の側板30の右側面を右側Y1から押圧する。これにより、移動部材43と移動部材45との左右方向Yにおける間隔が狭まり、一対の側板30は、移動部材43と移動部材45との間で左右方向Yの両側から締め付けられる。この状態では、各側板30と延設部34との間、および、締め付けに伴って縮径するロアージャケット23とアッパージャケット22との間が摩擦保持されるので、コラムジャケット4の回動および伸縮が不能となり、操舵部材11(図1参照)がチルト方向Cおよび軸方向Xに移動不能となる。
このように、チルト方向Cおよび軸方向Xにおいて操舵部材11の位置がロックされているときのステアリング装置1の状態をロック状態といい、ロック状態での左右方向Yにおける移動部材43および移動部材45のそれぞれの位置をロック位置という。なお、通常の運転時では、ステアリング装置1はロック状態にある。
ロック状態のステアリング装置1において、操作部材41を操作して先程とは逆方向へ回転させると、カム42が移動部材43に対して相対的に回転するので、カム42および移動部材43における互いのカム突起56の乗り上げが解除される。これにより、移動部材43がチルトボルト40に沿ってロック位置から左側Y2に移動する。移動部材43の移動に連動して、移動部材45は、チルトボルト40に沿って右側Y1へ移動する。これにより、移動部材43と移動部材45との間隔が広がり、移動部材43と移動部材45との間での一対の側板30の締め付けが解除される。この状態では、各側板30と延設部34との間、および、ロアージャケット23とアッパージャケット22との間の摩擦保持が解除されるので、コラムジャケット4の回動および伸縮が可能となり、操舵部材11がチルト方向Cおよび軸方向Xに移動可能となる。そのため、テレスコ調整やチルト調整が再び可能となる。
このように、チルト方向Cおよび軸方向Xにおいて操舵部材11の位置の固定が解除されているときのステアリング装置1の状態を解除状態といい、解除状態での左右方向Yにおける移動部材43および移動部材45のそれぞれの位置を解除位置という。
テレスコロック機構8は、筒状のロック部材57と、伝達部材58と、ロックプレート59とを含む。テレスコロック機構8は、ロック部材57の外周面の歯60とロックプレート59の歯61との噛み合いによって軸方向Xにおけるアッパージャケット22の位置を強固にロックしたり、噛み合いの解除によってアッパージャケット22のロックを解除したりする。ロック状態のステアリング装置1では、位置調整機構7によって摩擦力を用いて軸方向Xにおけるアッパージャケット22の位置がロックされるが、歯60と歯61との噛み合いによって、このロックがさらに強固になる。
チルトロック機構9は、ロック状態のステアリング装置1においてチルト方向Cにおけるコラムジャケット4の位置を強固にロックしたり、そのロックを解除したりするための機構である。チルトロック機構9は、一対の側板30のそれぞれの周辺に設けられている。
図4を参照して、左側Y2のチルトロック機構9は、前述した移動部材43と、左側Y2の側板30に設けられたツース係合部65と、ツース部材66と、弾性部材67と、スペーサ68とを含む。
ツース係合部65は、押出成型などによって左側Y2の側板30に一体形成されており、左側Y2の側板30の左側面から左側Y2に突出している。そのため、図4では、ツース係合部65は、左側Y2の側板30の裏に位置している。また、左側Y2の側板30の右側面には、押出成型の跡として、ツース係合部65にほぼ一致する大きさの窪み65Aが形成されている。ツース係合部65は、チルト溝32を軸方向Xの両側から挟むように一対設けられている。ツース係合部65は、チルト方向Cに沿って帯状に延びる保持部70と、保持部70からチルト溝32へ向けて突出する第1歯列71とを一体的に有する。ツース係合部65が軸方向Xに並んで一対存在するので、第1歯列71も軸方向Xに並んで一対存在する。一対の第1歯列71は、チルト溝32よりも前側X2に位置する一方の第1歯列71Aと、チルト溝32よりも後側X1に位置する他方の第1歯列71Bとを含む。第1歯列71Aは、コラムジャケット4の回動支点であるロアーブラケット5の中心軸5C(図1参照)に近い位置にあり、第1歯列71Bは、第1歯列71Aよりも中心軸5Cから離れた位置にある。
図5は、図3においてV−V線に沿った断面図である。図5を参照して、保持部70の左端面は、軸方向Xおよびチルト方向Cに平坦な被係合面70Aである。各第1歯列71は、円弧状のチルト方向Cに沿って等間隔で並ぶ複数の第1歯72で構成される。各第1歯72は、左側Y2から見て略三角形状であり、チルト溝32側を向く歯先72Aを有する。詳しくは、前側X2の第1歯列71Aにおけるそれぞれの第1歯72の歯先72Aは、後側X1を向いてチルト溝32を臨んでいる。後側X1の第1歯列71Bにおけるそれぞれの第1歯72の歯先72Aは、前側X2を向いてチルト溝32を臨んでいる。各第1歯72では、歯先72Aによって構成される歯筋72Bが左右方向Yに延びている(後述する図8も参照)。各第1歯72の左端面は、保持部70の被係合面70Aと面一になっている。
図4を参照して、ツース部材66は、一枚の金属板をプレス成型などによって加工することによって形成される。ツース部材66は、本体部74と、一対の第2歯列75と、一対のリブ76と、一対のばね部77とを一体的に含む。
本体部74は、左右方向Yに薄い板状であって、チルト方向Cに長手の略矩形状である。本体部74の右側面は、軸方向Xおよびチルト方向Cに平坦な係合面74Aである。
本体部74の軸方向Xおよび上下方向Zにおける略中央には、左右方向Yに本体部74を貫通する貫通穴78が形成されている。貫通穴78は、左右方向Yから見て、移動部材43の第2押圧部52とほぼ一致した大きさを有する略円形状である。そのため、本体部74において上下方向Zにおける貫通穴78の両端を区画する周縁部78Aは、第2押圧部52の平坦面52Aと平行に延びている。
第2歯列75は、本体部74の軸方向Xにおける両端縁に1つずつ設けられている。各第2歯列75は、チルト方向Cに沿って等間隔で並ぶ複数の第2歯82で構成されている。各第2歯82は、左右方向Yから見て略三角形状であり、軸方向Xにおける本体部74の外側を向く歯先82Aを有する。詳しくは、一対の第2歯列75のうち、本体部74の前端縁に設けられた前側X2の第2歯列75Aにおけるそれぞれの第2歯82の歯先82Aは、前側X2を向いている。本体部74の後端縁に設けられた後側X1の第2歯列75Bにおけるそれぞれの第2歯82の歯先82Aは、後側X1を向いている。各第2歯82では、歯先82Aによって構成される歯筋82Bが左右方向Yに延びている(後述する図8も参照)。各第2歯82の左端面は、本体部74の左側面の一部であり、各第2歯82の右端面は、本体部74の係合面74Aの一部である。
一対のリブ76は、本体部74の上下方向Zにおける両端部が左側Y2へ折り曲げられることによって構成される。そのため、リブ76は、上下方向Zに薄く、軸方向Xに沿って細長く延びている。
一対のばね部77のそれぞれは、上下方向Zに本体部74から離れるようにリブ76から突出する支持部83と、支持部83によって支持されて左右方向Yに弾性変形可能な変形部84とを有する。一対のばね部77のうち、上側Z1のばね部77の支持部83は、上側Z1のリブ76の後端部76Aから上側Z1に延びていて、下側Z2のばね部77の支持部83は、下側Z2のリブ76の前端部76Bから下側Z2に延びている。支持部83は、左右方向Yに薄い板状である。上側Z1のばね部77の変形部84は、支持部83の前端部から前側X2かつ右側Y1へ傾斜して延びている。下側Z2のばね部77の変形部84は、下側Z2の支持部83の後端部から後側X1かつ右側Y1へ傾斜して延びている。各変形部84の先端部には、右側Y1へ向けて押し出された凸状の接触部84Aが形成されている。
ツース部材66は、移動部材43の第1押圧部51と左側Y2の側板30との間に配置されている。図5においてVI−VI線に沿った断面図である図6を参照して、ツース部材66の本体部74の貫通穴78には、移動部材43の第2押圧部52が挿通されている。この状態で、ツース部材66は、第2押圧部52に対して左右方向Yに相対移動可能である。ただし、貫通穴78は、前述したように第2押圧部52とほぼ一致した大きさを有するので、移動部材43に対するツース部材66の相対回転が規制されている。
ツース部材66における本体部74の係合面74Aは、左側Y2の側板30の左側面において一対の第1歯列71に挟まれた領域に対向している(図4参照)。ツース部材66のばね部77の接触部84Aは、左側Y2の側板30の左側面に左側Y2から接触している(図5参照)。
弾性部材67は、たとえば皿ばねである。弾性部材67は、図6では右側Y1へ向かうにつれてチルトボルト40の径方向に広がる略円環状であるが、左側Y2へ向かうにつれて径方向に広がる略円環状であってもよい。
弾性部材67の中空部分には、移動部材43の第2押圧部52が挿通されている。弾性部材67は、ツース部材66と移動部材43の第1押圧部51との間に配置されている。弾性部材67の左端部の内周縁は、第2押圧部52の外周面において平坦面52A以外の部分(図4参照)に沿っている。弾性部材67の右端部は、ツース部材66の本体部74の左側面や第2歯列75の一部に接触している(図5参照)。
スペーサ68は、たとえば金属製の焼結体であり、左右方向Yに薄い円環状である(図4参照)。スペーサ68は、移動部材43の第2押圧部52に対して右側Y1から外嵌されている。スペーサ68の内周面は、第2押圧部52の外周面において平坦面52A以外の部分に沿っている(図5参照)。スペーサ68は、移動部材43の第1押圧部51と弾性部材67との間に配置されている。スペーサ68の左側面は、第1押圧部51の第1押圧面54に右側Y1から面接触している。スペーサ68の右側面は、その周方向における全域に亘って弾性部材67の左端部に左側Y2から接触している。
前述したように、コラムジャケット4とともにチルト方向Cに回動可能なチルトボルト40が、移動部材43の貫通穴51Aに挿通され、移動部材43の第2押圧部52が、ツース部材66、弾性部材67およびスペーサ68に対して挿通されている。そのため、チルト調整時には、ツース部材66、弾性部材67およびスペーサ68は、コラムジャケット4とともにチルト方向Cに回動する。
図3を参照して、右側Y1のチルトロック機構9は、前述した移動部材45を移動部材43の代わりに含み、左側Y2のチルトロック機構9と同様に、ツース係合部65と、ツース部材66と、弾性部材67と、スペーサ68とを含む。右側Y1のチルトロック機構9の移動部材45、ツース係合部65(図示せず)、ツース部材66、弾性部材67およびスペーサ68のそれぞれは、左側Y2のチルトロック機構9の移動部材43、ツース係合部65、ツース部材66、弾性部材67およびスペーサ68のそれぞれと、基準面3Dを挟んで対称になるように配置されている。
以下では、左側Y2のチルトロック機構9の動きについて説明するが、右側Y1のチルトロック機構9の動きは、左側Y2のチルトロック機構9の動きと左右の向きが逆である以外ではほとんど同じである。
まず、ステアリング装置1をロック状態にする際のチルトロック機構9の動作について説明する。図5および図6では、前述したロック状態にあるステアリング装置1が示されている。なお、以下の説明では、特に言及がない限り、ステアリング装置1をロック状態にする前の段階では、第1歯列71の第1歯72と第2歯列75の第2歯82とは、位相の一致によって、左右方向Yから見て互いに重ならない位置関係にあるものとする。
操作部材41(図3参照)を操作してステアリング装置1をロック状態にする際、移動部材43は、解除位置からロック位置に向けて右側Y1に移動する。ツース部材66は、スペーサ68および弾性部材67を介して移動部材43の第1押圧部51によって右側Y1へ移動させられる。そのため、ステアリング装置1がロック状態になると、図5および図6に示すように、ツース部材66は、アッパーブラケット6の左側Y2の側板30の左側面において一対の第1歯列71に挟まれた領域に到達する。これにより、ツース部材66の第2歯列75が第1歯列71に接近し、ツース部材66の本体部74の係合面74A(図6参照)が左側Y2の側板30の左側面に面接触する。この状態では、側板30における前側X2の第1歯列71Aの第1歯72と、ツース部材66における前側X2の第2歯列75Aの第2歯82とがチルト方向Cに交互に並んで互いに噛み合っている。また、後側X1の第1歯列71Bの第1歯72と、後側X1の第2歯列75Bの第2歯82とがチルト方向Cに交互に並んで互いに噛み合っている。
これにより、一対の第1歯列71と一対の第2歯列75とが1つずつ噛み合っている。そのため、この状態では、ツース部材66と一体移動するコラムジャケット4が回動できなくなるので、チルト方向Cにおけるコラムジャケット4の位置が固定される。したがって、ロック状態では、ロアージャケット23の延設部34とアッパーブラケット6の側板30との間の摩擦保持と、第1歯列71と第2歯列75との噛み合いとによって、アッパージャケット22のチルト方向Cにおける位置がさらに強固にロックされる。
ロック状態では、ツース部材66のばね部77の変形部84が、側板30に押し付けられることによって左右方向Yに弾性変形している。これにより、変形部84が元の状態に戻ろうとする復元力によって、図6に示すようにツース部材66全体が左側Y2の弾性部材67へ付勢されている。また、弾性部材67は、ツース部材66および移動部材43の第1押圧部51によって挟まれることで左右方向Yに圧縮されており、元の状態に戻ろうとする復元力を発生させている。
図1を参照して、車両衝突の際、車両が障害物に衝突する一次衝突の後に、運転者が操舵部材11に衝突する二次衝突が発生する。二次衝突では、操舵部材11に内蔵されたエアバッグが開いたり運転者がエアバッグに衝突したりすることで生じる反力によって、操舵部材11は、軸方向Xおよびチルト方向Cに衝撃を受ける。特に、チルト方向Cにおいては、操舵部材11がコラムジャケット4とともに上向きに移動しようとする。しかし、ステアリング装置1では、位置調整機構7によって軸方向Xおよびチルト方向Cにおけるコラムジャケット4の位置が保持されているのに加えて、チルトロック機構9によってチルト方向Cにおけるコラムジャケット4および操舵部材11の位置が強固に保持されている。したがって、二次衝突の際に、特に初期におけるコラムジャケット4の空走を抑えて、エアバッグのチルト方向Cの位置を適切に保持することができる。また、二次衝突の衝撃吸収のために操舵部材11が前側X2へ移動する場合には、操舵部材11を安定した姿勢で前進させることができるので、二次衝突時の離脱性能を安定化させることができる。チルトロック機構9によるこのようなコラムジャケット4の保持を、ポジティブロックという。
図7は、噛み合った状態にある第1歯列71と第2歯列75とを示す模式図である。図7を参照して、前述したように二次衝突においてコラムジャケット4が上向きに移動しようとすると、白抜き矢印で示すようにツース部材66も上向きに移動しようとする。また、二次衝突以外の通常状態においても、使用者が操舵部材11に上向きの強い力を加えることなどによって、コラムジャケット4およびツース部材66が上向きに移動しようとする。
ツース部材66が上向きに移動しようとすると、ツース部材66における前側X2の第2歯列75Aの第2歯82は、その歯面82Cにおいて、前側X2の第1歯列71Aの第1歯72から反力F1を受け、ツース部材66における後側X1の第2歯列75Bの第2歯82は、その歯面82Cにおいて、後側X1の第1歯列71Bの第1歯72から反力F2を受ける。反力F1やF2の向きは、歯面82Cと略直交している。また、反力F1における軸方向Xの分力Fx1は、後側X1を向き、反力F2における軸方向Xの分力Fx2は、前側X2を向いている。
ここで、中心軸5Cに近い前側X2の第1歯列71Aにおける各第1歯72の歯先角度αは、操舵部材11に近い後側X1の第1歯列71Bにおける各第2歯82の歯先角度βと異なる。歯先角度αおよびβは、各第1歯72において歯先72Aへ向けて互いに接近する一対の歯面72Cの交差角度である。
歯先角度αと歯先角度βとが異なることにより、一対の第1歯列71と一対の第2歯列75とが1つずつ噛み合った状態において、分力Fx1と分力Fx2とに差が生じる。これにより、ツース部材66が軸方向Xにおいて付勢される。そのため、第1歯72と第2歯82との間のガタが詰まるので、第1歯72と第2歯82とが強固に噛み合う。この結果、第1歯72と第2歯82との噛合強度の向上、換言すればポジティブロックの強度向上を図れる。
一対の第1歯列71のそれぞれにおいて複数の第1歯72がチルト方向Cに沿って並ぶ場合には、中心軸5Cに近い第1歯列71Aにおける第1歯72のピッチは、第1歯列71Aよりも中心軸5Cから離れた第1歯列71Bにおける第1歯72のピッチよりも狭い。これでは、第1歯72のピッチが狭くなるほど、噛み合った状態における第1歯72と第2歯82との接触領域が小さくなるので、第1歯列71Aの第1歯72と第2歯列75Aの第2歯82との噛合強度は、第1歯列71Bの第1歯72と第2歯列75Bの第2歯82との噛合強度よりも低くなる。そのため、ポジティブロックの強度は、第1歯列71Aの第1歯72と第2歯列75Aの第2歯82との噛合強度によって決まる。だが、寸法公差の影響により、噛み合った状態の第1歯72と第2歯82との間には隙間80が必然的に生じるので、この隙間80によるガタが噛合強度を低下させる虞がある。かといって、第1歯72や第2歯82の寸法精度を高めることによってガタを詰めるのであれば、コスト上昇が懸念される。
そこで、第1歯列71Aにおける第1歯72の歯先角度αは、第1歯列71Bにおける第1歯72の歯先角度βよりも小さくなるように設定される。たとえば、歯先角度αは60度であるときには、歯先角度βは70度である。
歯先角度αが歯先角度βよりも小さいことにより、第2歯82が第1歯列71Aの第1歯72から受ける軸方向Xの分力Fx1は、第2歯82が第1歯列71Bの第1歯72から受ける軸方向Xの分力Fx2よりも小さくなる。これにより、分力Fx1と分力Fx2との差によって、ツース部材66が軸方向Xにおいて中心軸5C側(前側X2)へ付勢される。そのため、第1歯列71Aの第1歯72と第2歯列75Aの第2歯82との間のガタが詰まるので、これらの第1歯72と第2歯82とが強固に噛み合う。この結果、第1歯列71Aの第1歯72と第2歯列75Aの第2歯82との噛み合い率が向上するので、これらの第1歯72と第2歯82との噛合強度の向上を図れる。
また、第1歯72や第2歯82の寸法精度を高めなくても、このように歯先角度αと歯先角度βとに差をつけるだけでガタを詰めて噛合強度を向上できるので、コスト上昇を回避できる。
なお、歯先角度βが歯先角度αよりも大きく設定されていることから、後側X1の第1歯列71Bの第1歯72と第2歯列75Bの第2歯82との接触領域は比較的大きいので、これらの第1歯72と第2歯82との噛合強度は十分に確保されている。
また、第1歯列71Aの第1歯72と噛み合う第2歯列75Aの第2歯82の歯先角度γと、第1歯列71Bの第1歯72と噛み合う第2歯列75Bの第2歯82の歯先角度θとを、歯先角度αおよびβの関係と同様に異ならせてもよい。歯先角度γおよびθは、各第2歯82において歯先82Aへ向けて互いに接近する一対の歯面82Cの交差角度である。前述したように歯先角度αを歯先角度βよりも小さくした場合には、歯先角度γを歯先角度θよりも小さくすればよい。なお、歯先角度αと歯先角度γとが同じであることが好ましく、同様に、歯先角度βと歯先角度θとが同じであることが好ましい。
次に、ステアリング装置1をロック状態から解除状態にする際のチルトロック機構9の動作について説明する。以下では、図6においてステアリング装置1の解除状態を示した図8も参照する。
操作部材41を操作してステアリング装置1を解除状態にする際、移動部材43は、ロック位置から左側Y2に移動する。移動部材43の左側Y2への移動に伴って、ツース部材66と移動部材43の第1押圧部51との間隔が広がるので、左右方向Yにおける弾性部材67の圧縮量が徐々に小さくなる。図8に示すようにステアリング装置1が解除状態になると、弾性部材67は、圧縮されていない状態になる。
前述したように、ステアリング装置1がロック状態にあるときには、ツース部材66のばね部77の変形部84が弾性変形しているため、ツース部材66全体は、変形部84の復元力によって左側Y2へ付勢されている。ステアリング装置1を解除状態にするために移動部材43が左側Y2に移動することによって弾性部材67が圧縮されていない状態になると、ツース部材66は、変形部84の復元力により、左側Y2へ移動する。これに伴い、ツース部材66の第2歯列75も左側Y2へ移動する。これにより、ステアリング装置1が解除状態になると、第2歯列75は、第1歯列71よりも左側Y2へ移動しており、第2歯列75と第1歯列71との噛み合いは、解除される。このときの移動部材43の左右方向Yにおける位置を解除位置という。
また、前述したように、解除状態では、アッパーブラケット6の側板30とロアージャケット23の延設部34との間の摩擦力も無くなっている。そのため、解除状態では、チルト方向Cにおけるコラムジャケット4の位置のロックが完全に解除されているので、操舵部材11のチルト調整が可能である。
図9は、図5において第2歯列75が第1歯列71に乗り上げた状態を示した図である。次に、第2歯列75が第1歯列71に乗り上げた状態で、使用者がステアリング装置1をロック状態にするために操作部材41を操作した場合を想定する。第2歯列75が第1歯列71に乗り上げた状態では、図9に示すように、左右方向Yから見て第1歯72と第2歯82とが位相の不一致によって互いに重なっている。そのため、第1歯列71と第2歯列75とが噛み合わずに、第2歯列75が第1歯列71に乗り上げる、いわゆるツースオンツースが発生している。ツースオンツースが発生しているときのステアリング装置1の状態をツースオンツース状態という。
ツースオンツース状態では、ロック状態と同様に、位置調整機構7(図1参照)によって、コラムジャケット4の位置がロックされ、操舵部材11は、チルト調整後の位置でロックされている。そのため、第1歯列71と第2歯列75とが噛み合うか否かにかかわらず、移動部材43のボス部53がチルト溝32内で移動可能な範囲において、無段階にチルト調整することができる。
また、ツースオンツース状態では、主に側板30と延設部34との間に摩擦力によってチルト方向Cにおけるコラムジャケット4の位置がロックされている。そのため、二次衝突などによる衝撃が当該摩擦力を上回った場合には、コラムジャケット4がチルト方向Cに回動しようとする。この場合、コラムジャケット4が第1歯72や第2歯82のピッチの約半分に相当する量だけチルト方向Cに回動すると、第1歯列71の第1歯72と第2歯列75の第2歯82とがチルト方向Cに交互に並ぶことにより、第2歯列75が第1歯列71に乗り上げなくなる。第2歯列75を有するツース部材66は、左右方向Yに圧縮された弾性部材67の復元力を受けているため、ツース部材66がアッパーブラケット6の側板30側へ移動し、第1歯列71と第2歯列75とが噛み合う。これにより、ステアリング装置1がツースオンツース状態からロック状態になるので、ポジティブロックにより、チルト方向Cへのコラムジャケット4の回動を防止できる。
なお、皿ばねを用いた弾性部材67とスペーサ68とを組み合わせることによって、前述した復元力をほぼ一定にすることができる。これにより、第2歯列75が第1歯列71に乗り上げた状態であったとしても、使用者は、操作部材41を途中で重く感じることなく最後までスムーズに操作することができる。もちろん、必要に応じて、弾性部材67およびスペーサ68を省略してもよい。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、第1歯列71は、前述した実施形態では、ツース係合部65の一部としてアッパーブラケット6の側板30に一体形成されることにより、アッパーブラケット6によって支持されているが、側板30とは別に形成されてもよい。また、第2歯列75を有するツース部材66は、移動部材43や移動部材45と一体化されてもよい。これらに関するチルトロック機構9の第1変形例〜第3変形例について以下に説明する。なお、以下の説明では、左側Y2のチルトロック機構9について説明するが、右側Y1のチルトロック機構9も左側Y2のチルトロック機構9と構造が同じである。
図10は、第1変形例に係るチルトロック機構の分解斜視図である。なお、図10ならびに後述する図11および図12では、今まで説明した部材と同じ部材には、同じ符号を付して、その説明を省略する。
第1変形例では、側板30とは別の部品として、ツース部材85が設けられている。ツース部材85は、左右方向Yから見て略矩形状であり、左右方向Yに薄い金属板である。左右方向Yから見たときのツース部材85の略中央部には、ツース部材85を左右方向Yに貫通するガイド溝85Aが形成されている。ガイド溝85Aはチルト方向Cに沿って延びている。一対の第1歯列71は、ガイド溝85Aを軸方向Xにおける両側から縁取るようにツース部材85に一体形成されている。前述した実施形態と同様に、それぞれの第1歯列71では、複数の第1歯72がチルト方向Cに沿って等間隔で並んでいる。
前側X2の第1歯列71Aの第1歯72の歯先72Aは、後側X1を向いてガイド溝85Aに露出され、後側X1の第1歯列71Bの第1歯72の歯先72Aは、前側X2を向いてガイド溝85Aに露出されている。いずれの第1歯72においても、歯筋72Bは、左右方向Yに沿って延びている。
ツース部材85において軸方向Xにおけるガイド溝85Aの両外側には、上下方向Zに沿って直線的に延びつつツース部材85を左右方向Yに貫通する挿通溝85Bが1つずつ形成されている。
挿通溝85Bとほぼ同じ形状の挿通溝30Aが、左側Y2の側板30において軸方向Xにおけるチルト溝32の両外側に1つずつ形成されている。挿通溝30Aは、上下方向Zに沿って直線的に延びつつ左側Y2の側板30を左右方向Yに貫通している。挿通溝85Bや30Aに沿って長手のブロック状の支持部材86が一対設けられる。支持部材86の左側面に設けられた凸部86Aが挿通溝85Bに右側Y1から挿通され、支持部材86の右側面に設けられた凸部86Bが挿通溝30Aに左側Y2から挿通されている。これにより、ツース部材85は、支持部材86を介して左側Y2の側板30によって支持されている。ツース部材85は、左側Y2の側板30から左側Y2に離れた状態で位置決めされていて、左右方向Yから見てガイド溝85Aとチルト溝32とが重なっている。ツース部材85が弾性を有するので、第1歯列71Aは左右方向Yに弾性変形できる。なお、支持部材86は、側板30とは別の部品であってもよいし、側板30と一体形成されてもよい。
前述したツース部材66(図4参照)は省略され、ツース部材66における一対の第2歯列75は、移動部材43に設けられている。そのため、第1変形例では、移動部材43がツース部材66の機能も兼ねる。この場合の第2歯列75は、移動部材43の第2押圧部52における軸方向Xの両側面に一体形成されている。前述した実施形態と同様に、それぞれの第2歯列75では、複数の第2歯82がチルト方向Cに沿って等間隔で並んでいる。前側X2の第2歯列75Aの第2歯82の歯先82Aは、前側X2を向き、後側X1の第2歯列75Bの第2歯82の歯先82Aは、後側X1を向いている。いずれの第2歯82においても、歯筋82Bは左右方向Yに沿って延びている。
第1変形例のチルトロック機構9では、前述した実施形態のチルトロック機構9と細部においてさらに異なっていてもよい。たとえば、第1変形例のチルトロック機構9では、移動部材43のボス部53が円筒状に形成されていて、ツース部材85のガイド溝85Aと側板30のチルト溝32とに対して挿通されている。また、弾性部材67は、チルトボルト40およびボス部53に対して外嵌されるコイルばねであって、ガイド溝85Aおよびチルト溝32に挿通されている。弾性部材67は、移動部材43の第2押圧部52とロアージャケット23における左側Y2の延設部34(図3参照)との間で圧縮されることによって、前述した復元力を発生させる。なお、第1変形例では、前述したスペーサ68を省略してもよい。
第1変形例の場合には、操作部材41を操作してステアリング装置1をロック状態にする際、移動部材43は、解除位置からロック位置に向けて右側Y1に移動する。ステアリング装置1がロック状態になると、ロック位置に到達した移動部材43の第2押圧部52は、ツース部材85のガイド溝85A内、つまり、一対の第1歯列71に挟まれた領域に到達する。この状態では、前側X2の第1歯列71Aの第1歯72と、移動部材43における前側X2の第2歯列75Aの第2歯82とがチルト方向Cに交互に並んで互いに噛み合う。また、後側X1の第1歯列71Bの第1歯72と、後側X1の第2歯列75Bの第2歯82とがチルト方向Cに交互に並んで互いに噛み合う。これにより、一対の第1歯列71と一対の第2歯列75とが1つずつ噛み合う。
そして、操作部材41を逆向きに操作してステアリング装置1をロック状態から解除状態にすると、移動部材43は、ロック位置から左側Y2に移動して解除位置に到達する。この際、弾性部材67の復元力によって、解除位置への移動部材43の移動が促進される。ステアリング装置1が解除状態になると、第2歯列75は、第1歯列71よりも左側Y2へ移動しており、第2歯列75と第1歯列71との噛み合いは、解除される。
なお、第2歯列75が第1歯列71に乗り上げた状態で、ステアリング装置1をロック状態にするために操作部材41を操作すると、第1歯列71Aは、第2歯列75に押圧されることによって、左側Y2の側板30へ向けて弾性変形する。これにより、ステアリング装置1は、前述したツースオンツース状態になる。
第1変形例においても、一対の第1歯列71のうち、前側X2の第1歯列71Aにおける各第1歯72の歯先角度αは、後側X1の第1歯列71Bにおける各第2歯82の歯先角度βと異なる。好ましくは、歯先角度αは、歯先角度βよりも小さくなるように設定されるとよい。これにより、二次衝突などの際には、移動部材43が前側X2へ付勢されることによって、第1歯列71Aの第1歯72と第2歯列75Aの第2歯82との間のガタが詰まるので、前述したようにこれらの第1歯72と第2歯82との噛合強度の向上を図れる。
図11は、第2変形例に係るチルトロック機構9の分解斜視図である。第2変形例に係るチルトロック機構9は、第1変形例に係るチルトロック機構9と細部が異なる。詳しくは、第2変形例に係るチルトロック機構9では、一対の第1歯列71は、ガイド溝85Aを縁取る位置ではなく、軸方向Xにおけるツース部材85の両側縁に一体形成されている。それぞれの第1歯列71では、複数の第1歯72がチルト方向Cに沿って等間隔で並んでいる。前側X2の第1歯列71Aの第1歯72の歯先72Aは、前側X2を向き、後側X1の第1歯列71Bの第1歯72の歯先72Aは、後側X1を向いている。いずれの第1歯72においても、歯筋72Bは左右方向Yに沿って延びている。
また、第2変形例では、移動部材43の第1押圧部51の軸方向Xにおける両端部が、折曲部51Bとして、右側Y1へ折り曲げられている。折曲部51Bは、一対設けられ、軸方向Xにおいて対向している。第2歯列75は、移動部材43において、第2押圧部52における軸方向Xの両側面ではなく、一対の折曲部51Bの互いの対向面に1つずつ一体形成される。それぞれの第2歯列75では、複数の第2歯82がチルト方向Cに沿って等間隔で並んでいる。前側X2の第2歯列75Aの第2歯82の歯先82Aは、後側X1を向き、後側X1の第2歯列75Bの第2歯82の歯先82Aは、前側X2を向いている。いずれの第2歯82においても、歯筋72Bは左右方向Yに沿って延びている。
第2変形例の場合には、操作部材41を操作してステアリング装置1をロック状態にする際、移動部材43は、解除位置からロック位置に向けて右側Y1に移動する。ステアリング装置1がロック状態になると、ロック位置に到達した移動部材43の第2押圧部52は、ツース部材85のガイド溝85A内に到達し、移動部材43の第1押圧部51における一対の折曲部51Bが軸方向Xにおける両側からツース部材85を挟む。この状態では、ツース部材85における前側X2の第1歯列71Aの第1歯72と、移動部材43における前側X2の第2歯列75Aの第2歯82とが、チルト方向Cに交互に並んで互いに噛み合う。また、後側X1の第1歯列71Bの第1歯72と、後側X1の第2歯列75Bの第2歯82とがチルト方向Cに交互に並んで互いに噛み合う。これにより、一対の第1歯列71と一対の第2歯列75とが1つずつ噛み合う。
そして、操作部材41を逆向きに操作してステアリング装置1をロック状態から解除状態にすると、第1変形例と同様に、第2歯列75と第1歯列71との噛み合いが解除される。第2変形例でも、第1変形例と同様に、ステアリング装置1をツースオンツース状態にすることができる。
第2変形例においても、前側X2の第1歯列71Aにおける各第1歯72の歯先角度αは、後側X1の第1歯列71Bにおける各第2歯82の歯先角度βと異なる。好ましくは、歯先角度αは、歯先角度βよりも小さくなるように設定されるとよい。ただし、第2変形例の場合には、噛み合った状態における第1歯列71と第2歯列75との前後の位置関係が、前述した実施形態や第1変形例とは逆になるので、二次衝突などの際には、前述した分力Fx1(図7参照)が前側X2を向き、前述した分力Fx2(図7参照)が後側X1を向く。歯先角度αが歯先角度βよりも小さい場合には分力Fx1が分力Fx2よりも小さくなるので、第2変形例では、移動部材43が後側X1へ付勢される。この場合でも、第1歯列71Aの第1歯72と第2歯列75Aの第2歯82との間のガタが詰まるので、前述したようにこれらの第1歯72と第2歯82との噛合強度の向上を図れる。
図12は、第3変形例に係るチルトロック機構9の分解斜視図である。第3変形例では、ロアーブラケット5の側板30のチルト溝32は、軸方向Xにおいて幅広であって、チルト方向Cに対する接線方向、つまり上下方向Zに沿って直線的に延びている。そのため、チルト調整の際に、チルトボルト40は、直線状のチルト溝32内において、チルト方向Cに沿って円弧状の軌跡上を移動できる。
また、第3変形例では、側板30とは別の部品として、第1ツース部材88と第2ツース部材89が設けられている。
第1ツース部材88は、左右方向Yから見て略矩形状であり、左右方向Yに薄い金属板である。左右方向Yから見たときの第1ツース部材88の略中央部には、第1ツース部材88を左右方向Yに貫通するガイド溝88Aが形成されている。ガイド溝88Aは、上下方向Zに沿って直線的に延びている。ガイド溝88Aは、軸方向Xにおいてチルト溝32よりも狭い。ガイド溝88Aには、チルトボルト40が挿通される。
左側Y2の側板30の左側面において上下方向Zにおけるチルト溝32の両外側には、左側Y2に突出しつつ軸方向Xに沿って直線状に延びるリブ状のガイド部90が1つずつ一体形成されている。第1ツース部材88は、上下のガイド部90の間に配置され、これらのガイド部90を介して側板30によって支持されている。第1ツース部材88は、ガイド部90に沿って軸方向Xにスライドできるが、軸方向X以外の方向へは移動できない。また、左側Y2の側板30の左側面において軸方向Xにおけるチルト溝32の両外側には、右側Y1へ窪みつつチルト溝32と平行に延びる受入溝91が1つずつ形成されている。
一対の第1歯列71は、軸方向Xにおける第1ツース部材88の両側縁に一体形成されている。前述した実施形態や第1変形例や第2変形例とは異なり、第3変形例におけるそれぞれの第1歯列71では、複数の第1歯72が、上下方向Zに沿って等間隔で直線状に並んでいる。前側X2の第1歯列71Aの第1歯72の歯先72Aは、前側X2を向き、後側X1の第1歯列71Bの第1歯72の歯先72Aは、後側X1を向いている。いずれの第1歯72においても、歯筋72Bは左右方向Yに沿って延びている。
第2ツース部材89は、軸方向Xに長手で左右方向Yに薄いブロック状に形成されていて、第1ツース部材88の左側Y2に配置される。軸方向Xにおける第2ツース部材89の略中央には、第2ツース部材89を左右方向Yに貫通する嵌合穴89Aが形成されている。嵌合穴89Aは、左右方向Yから見て、移動部材43の第2押圧部52と一致しており、嵌合穴89Aには第2押圧部52が左側Y2から嵌め込まれる。これにより、第2ツース部材89は移動部材43に一体化される。
第2ツース部材89の軸方向Xにおける両端部が、折曲部89Bとして、右側Y1へ折り曲げられている。折曲部89Bは、一対設けられ、軸方向Xにおいて対向している。第2歯列75は、一対の折曲部89Bの互いの対向面に1つずつ一体形成される。前側X2の第2歯列75Aの第2歯82の歯先82Aは、後側X1を向き、後側X1の第2歯列75Bの第2歯82の歯先82Aは、前側X2を向いている。いずれの第2歯82においても、歯筋82Bは左右方向Yに沿って延びている。第3変形例におけるそれぞれの第2歯列75では、第1歯列71と同様に、複数の第2歯82が、上下方向Zに沿って等間隔で直線状に並んでいる。
第3変形例のチルトロック機構9では、前述した実施形態のチルトロック機構9と細部においてさらに異なっていてもよい。たとえば、第3変形例のチルトロック機構9では、移動部材43の第2押圧部52が、右側Y1から見て略矩形状の輪郭を有し、移動部材43のボス部53が円筒状に形成されている。第2押圧部52は、第1ツース部材88のガイド溝88Aに嵌め込まれており、この状態では、上下方向Zに沿ってスライドできるが、その他の方向には移動できない。
また、弾性部材67は、左右方向Yから見て略矩形状の板ばねであって、左側Y2へ膨出するように湾曲している。左右方向Yから見たときの弾性部材67の中央には、略矩形状の嵌合穴67Aが形成されている。略矩形状の弾性部材67の四隅には、左側Y2へ折れ曲がって延びる爪状の係合部67Bが1つずつ一体形成されている。係合部67Bが第2ツース部材89に係合することによって、弾性部材67は、第2ツース部材89に位置決めされ、第2押圧部52が嵌合穴67Aに嵌め込まれることによって、弾性部材67は、移動部材43に位置決めされている。弾性部材67は、第1ツース部材88と第2ツース部材89との間で圧縮されることによって、前述した復元力を発生させる。なお、第3の変形例では、前述したスペーサ68を省略してもよい。
第3変形例の場合には、操作部材41を操作してステアリング装置1をロック状態にする際、移動部材43は、第2ツース部材89を伴って解除位置からロック位置に向けて右側Y1に移動する。移動部材43がロック位置に到達してステアリング装置1がロック状態になると、第2ツース部材89における一対の折曲部89Bが軸方向Xにおける両側から第1ツース部材88を挟む。この状態では、第1ツース部材88における前側X2の第1歯列71Aの第1歯72と、第2ツース部材89における前側X2の第2歯列75Aの第2歯82とが上下方向Zに交互に並んで互いに噛み合う。また、後側X1の第1歯列71Bの第1歯72と、後側X1の第2歯列75Bの第2歯82とが上下方向Zに交互に並んで互いに噛み合う。これにより、一対の第1歯列71と一対の第2歯列75とが1つずつ噛み合う。
そして、操作部材41を逆向きに操作してステアリング装置1をロック状態から解除状態にすると、移動部材43は、第2ツース部材89を伴ってロック位置から左側Y2に移動して解除位置に到達する。この際、弾性部材67の復元力によって、解除位置への移動部材43および第2ツース部材89の移動が促進される。ステアリング装置1が解除状態になると、第2歯列75は、第1歯列71よりも左側Y2へ移動しており、第2歯列75と第1歯列71との噛み合いは、解除される。この状態でコラムジャケット4をチルトさせると、第2ツース部材89が、チルト方向Cに沿った円弧状の軌跡上でチルトボルト40とともに回動する。この際、第2ツース部材89は、第1ツース部材88に対して、上下方向Zにおいては相対移動するものの、軸方向Xにおいては一体移動する。これにより、第1歯列71は、対応する第2歯列75と軸方向Xで同じ位置に常に配置される。そのため、前述した実施形態や第1変形例や第2変形例とは異なり、第1歯列71および第2歯列75が、チルト方向Cに沿った円弧状ではなく、上下方向Zに沿った直線状に延びていても、チルト調整後に第1歯列71と第2歯列75とが確実に噛み合うことができる。
なお、第2歯列75が第1歯列71に乗り上げた状態で、ステアリング装置1をロック状態にするために操作部材41を操作すると、第1歯列71Aは、左側Y2の側板30へ向けて弾性変形して左側Y2の側板30の受入溝91に受け入れられる。これにより、ステアリング装置1は、前述したツースオンツース状態になる。
第3変形例においても、前側X2の第1歯列71Aにおける各第1歯72の歯先角度αは、後側X1の第1歯列71Bにおける各第1歯72の歯先角度βと異なる。好ましくは、歯先角度αは、歯先角度βよりも小さくなるように設定されるとよい。二次衝突などの際には、第2変形例の移動部材43と同様に、第2ツース部材89が後側X1へ付勢される。これにより、第1歯列71Aの第1歯72と第2歯列75Aの第2歯82との間のガタが詰まるので、前述したようにこれらの第1歯72と第2歯82との噛合強度の向上を図れる。
なお、前述した実施形態や第1変形例〜第3変形例に限らず、第1歯72の歯筋72Bや第2歯82の歯筋82Bがチルトボルト40の中心軸線40Aと平行な左右方向Yに沿って延びる構成のチルトロック機構9であれば、本発明を適用できる。そのため、本発明は、前述した特許文献1に記載されたステアリングコラムにおける保持部およびツースプレートの歯にも適用できる。また、第2歯82は、複数で集まってチルト方向Cなどに沿って並ぶことによって一対の第2歯列75を構成しているが、歯列を構成しなくてもよい。要は、第2歯82は、軸方向Xに離れた2箇所に少なくとも1つずつ設けられて、一対の第1歯列71に噛み合うことができればよい。
チルトロック機構9は、アッパーブラケット6の右側Y1および左側Y2のいずれか一方に設けられていてもよい。
また、チルトロック機構9は、テレスコロック機構8を有さないステアリング装置や、テレスコ調整できないステアリング装置にも適用可能ある。
また、チルトロック機構9は、カプセル(図示せず)によってアッパーブラケット6の連結板31(図2参照)と車体2(図1参照)とを連結した構成のステアリング装置1にも適用可能である。二次衝突時には、カプセルおよび連結板31に跨って挿入された樹脂ピン(図示せず)が破断されることによって、アッパーブラケット6が車体2から離脱する。
また、ロアージャケット23は、一対の側板30の挟持により縮径してアッパージャケット22を保持する構成であればよく、たとえば、スリット33(図2参照)では前側X2が閉端となっていてもよい。また、ステアリング装置1は、ロアージャケット23に代えて、縮径せずにアッパージャケット22を保持する構成であってもよい。
また、ステアリング装置1は、操舵部材11の操舵が補助されないマニュアルタイプのステアリング装置に限らず、電動モータによって操舵部材11の操舵が補助されるコラムアシストタイプの電動パワーステアリング装置であってもよい。
1…ステアリング装置、2…車体、3…ステアリングシャフト、3A…一端、4…コラムジャケット、5C…中心軸、6…アッパーブラケット、11…操舵部材、41…操作部材、43…移動部材、45…移動部材、66…ツース部材、71…第1歯列、71A…一方(前側)の第1歯列、71B…他方(後側)の第1歯列、72…第1歯、72B…歯筋、82…第2歯、82B…歯筋、89…第2ツース部材、C…チルト方向、X…軸方向、X2…前側、Y…左右方向、α…歯先角度、β…歯先角度

Claims (2)

  1. 一端に操舵部材が連結されるステアリングシャフトと、
    前記ステアリングシャフトを保持し、前記ステアリングシャフトの軸方向において前記一端とは反対側の支点まわりに回動可能なコラムジャケットと、
    車体に固定され、前記コラムジャケットを回動可能に支持するブラケットと、
    前記ブラケットに対する前記コラムジャケットの回動を可能および不能とするために操作される操作部材と、
    前記軸方向および前記軸方向に対して上下に交差する交差方向の両方に対する直交方向に延びる歯筋を有して前記交差方向に沿って並ぶ複数の第1歯で構成され、前記ブラケットによって支持されており、前記軸方向に並ぶ一対の歯列と、
    前記直交方向に延びる歯筋を有し、前記軸方向に離れた2箇所に少なくとも1つずつ設けられ、前記一対の歯列に噛み合い可能な第2歯を有し、前記コラムジャケットとともに回動可能であり、前記操作部材の操作に応じて前記直交方向に移動可能なツース部材とを含み、
    前記一対の歯列のうち、一方の歯列における前記第1歯の歯先角度は、前記一方の歯列よりも前記支点から離れた他方の歯列における前記第1歯の歯先角度と異なる、ステアリング装置。
  2. 前記一方の歯列における前記第1歯の歯先角度は、前記他方の歯列における前記第1歯の歯先角度よりも小さい、請求項1に記載のステアリング装置。
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