JP6556073B2 - 燃料電池システム - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、高温型の水素吸蔵合金が内蔵されたメインタンクと、低温型の水素吸蔵合金が内蔵されたサブタンクとを燃料電池に接続した燃料電池装置が開示されている。
同文献には、
(a)始動時には、サブタンクから放出される水素を用いて燃料電池の暖機運転を行い、これと同時に燃料電池からの排熱を用いてメインタンクを加熱する点、
(b)メインタンクの圧力が規定値に達した時には、メインタンクから放出される水素を用いて燃料電池の通常運転を行い、これと同時にメインタンクからサブタンクへ水素を充填する点、及び、
(c)これによって、内部エネルギーのみによる暖機運転から通常運転への迅速な移行が可能となる点
が記載されている。
同文献には、
(a)外部負荷の始動時には、副水素吸蔵合金から水素ガスが放出される点、
(b)外部負荷の運転中は、外部負荷の廃熱によってタンクを加熱する点、及び
(c)外部負荷の停止時には、副水素吸蔵合金が先に水素を吸蔵するため、低温始動が常に可能となる点
が記載されている。
同文献には、このような構成によって、運転開始時等の排熱温度が低い状態であっても、水素ガスを燃料電池に供給できる点が記載されている。
(1)前記燃料電池システムは、
燃料電池と、
第1水素貯蔵材料が充填されたメインタンクと、
第2水素貯蔵材料が充填された補給用タンクと、
第3水素貯蔵材料が充填された始動用タンクと、
前記メインタンク、前記補給用タンク、及び前記始動用タンクの内部温度を計測する温度計測手段と、
前記メインタンク又は前記始動用タンクから前記燃料電池への水素の供給、前記メインタンクから前記補給用タンクへの水素の補給、前記補給用タンクから前記始動用タンクへの水素の補給、及び前記始動用タンクから前記メインタンクへの水素の排出を適時に行うための水素供給手段と、
前記燃料電池の排熱を用いて、前記メインタンク及び/又は前記補給用タンクを加熱する熱交換手段と、
前記内部温度に基づき、前記水素供給手段及び前記熱交換手段を制御する制御手段と
を備えている。
(2)前記第1水素貯蔵材料の平均作動温度をT1a、前記第2水素貯蔵材料の平均作動温度をT2a、前記第3水素貯蔵材料の平均作動温度をT3aとした時に、前記平均作動温度は、T3a<T1a<T2aの関係を満たす。
(3)前記メインタンクの熱容量をX1、前記補給用タンクの熱容量をX2とした時に、前記熱容量は、X2<X1の関係を満たす。
[1. 燃料電池システム(1)]
図1に、本発明の第1の実施の形態に係る燃料電池システムの概略図を示す。図1において、燃料電池システム10は、
燃料電池12と、
第1水素貯蔵材料が充填されたメインタンク14と、
第2水素貯蔵材料が充填された補給用タンク16と、
第3水素貯蔵材料が充填された始動用タンク18と、
メインタンク14、補給用タンク16、及び始動用タンク18の内部温度を計測する温度計測手段(図示せず)と、
燃料電池12への水素の供給、並びに、各タンク間の水素の補給及び排出を適時に行うための水素供給手段と、
燃料電池12の排熱を用いて、メインタンク14及び/又は補給用タンク16を加熱する熱交換手段と、
各タンクの内部温度に基づき、水素供給手段及び熱交換手段を制御する制御手段(図示せず)と
を備えている。
燃料電池システム10は、メインタンク14、補給用タンク16、及び/又は、始動用タンク18の内部圧力を計測する圧力計測手段をさらに備えていても良い。
本発明において、燃料電池12の構造は特に限定されない。本発明は、水素を燃料とするあらゆる燃料電池12に対して適用することができる。燃料電池12としては、例えば、固体高分子型燃料電池、固体酸化物型燃料電池、アルカリ型燃料電池、リン酸型燃料電池などがある。燃料電池12は、特に、固体高分子型燃料電池が好ましい。
[1.2.1. 熱容量]
メインタンク14は、第1水素貯蔵材料(図示せず)を充填するためのタンクである。第1水素貯蔵材料には、高温作動型の材料が用いられるため、メインタンク14には、燃料電池12と熱交換を行うための熱交換器(図示せず)が設けられている。
メインタンク14は、定常運転時に燃料電池12に水素を供給するために用いられる。また、メインタンク14は、補給用タンク16(及び、始動用タンク18)に水素を補給し、システム停止時において補給用タンク16及び始動用タンク18をフル充填の状態に回復させるためにも用いられる。そのため、メインタンク14には、相対的に多量の第1水素貯蔵材料が充填されており、その熱容量X1は、各タンクの中で最大となっている。
メインタンク14の作動温度範囲は、定常運転が可能な限りにおいて、特に限定されない。しかし、想定外に環境温度が高くなることもあるので、メインタンク14の作動温度範囲は、燃料電池システム10の使用環境温度の高温側に合わせて設定するのが好ましい。換言すれば、第1水素貯蔵材料には、使用環境温度の上限値において、上限の水素圧力が得られる材料を選択するのが好ましい。水素貯蔵材料は、一般に、圧力ウィンドウが設定されると、水素放出能は、温度で一義的に定まる。また、圧力ウィンドウを固定した場合、上限の水素圧力が得られる温度Tmaxと、下限の水素圧力が得られる温度Tminの差ΔT(=Tmax−Tmin)の最大値は、材料によらずほぼ一定となる。
ここで、「最低作動温度」とは、下限の水素圧力が得られる温度Tminをいう。
なお、本発明において、「水素貯蔵材料の作動温度T」というときは、異なる材料間で水素吸蔵放出能の大小関係を比較するための温度であって、所定の水素吸蔵放出能が得られる温度をいう。「水素貯蔵材料の作動温度T」としては、上述した「最低作動温度」の他、例えば、「平均作動温度Ta」などがある。
「平均作動温度Ta」とは、上限の水素圧力が得られる温度(最高作動温度)Tmaxと、下限の水素圧力が得られる温度(最低作動温度)Tminの平均値(=(Tmax+Tmin)/2)をいう。
[1.3.1. 熱容量]
補給用タンク16は、第2水素貯蔵材料(図示せず)を充填するためのタンクである。第2水素貯蔵材料には、高温作動型の材料が用いられるため、補給用タンク16には、燃料電池12と熱交換を行うための熱交換器(図示せず)が設けられている。
補給用タンク16は、始動直後から定常運転に至るまでの過渡期において、始動用タンク18に水素を補給するために用いられる。補給用タンク16は、短時間で(すなわち、メインタンク14よりも先に)水素放出可能な状態にする必要がある。そのため、メインタンク14の熱容量をX1、補給用タンク16の熱容量をX2とした時に、熱容量は、X2<X1の関係を満たしている必要がある。好ましくは、X2≦0.1X1である。
なお、補給用タンク16は、1個のタンクからなるものでも良く、あるいは、複数個のサブタンクが連結しているものでも良い。この点については、後述する。
補給用タンク16の作動温度範囲は、メインタンク14より高温側に設定する。換言すれば、第1水素貯蔵材料の最低作動温度をT1min、第2水素貯蔵材料の最低作動温度をT2minとした時に、最低作動温度は、T1min<T2minの関係を満たしている必要がある。
T1<T2の関係を満たす場合において、補給用タンク16とメインタンク14がほぼ等温になった時には、メインタンク14の内部圧力は、補給用タンク16より高くなる。そのため、両者を連結すれば、メインタンク14から補給用タンク16に水素を補給することができる。例えば、第1水素貯蔵材料のT1maxが使用環境温度の上限温度である場合、第2水素貯蔵材料には、T2maxが使用環境温度の上限温度より高い材料を選択する。
但し、第2水素貯蔵材料のT2maxが高くなりすぎると、燃料電池12の排熱による水素放出ができなくなる。従って、第2水素貯蔵材料のT2maxは、燃料電池12の最大排熱温度以下である必要がある。
補給用タンク16は、メインタンク14が水素放出可能な温度となるまでの間、始動用タンク18の水素が枯渇しないように、始動用タンク18に水素を補給するためのものである。そのため、補給用タンク16の理論水素貯蔵量(すなわち、第2水素貯蔵材料の充填量)は、始動用タンク18の水素の枯渇を防ぐことが可能な量であれば良い。補給用タンク16の理論水素貯蔵量は大きくても良いが、理論水素貯蔵量を必要以上に大きくすると、かえって始動性が低下する。好適な理論水素貯蔵量については、後述する。
[1.4.1. 熱容量]
始動用タンク18は、第3水素貯蔵材料(図示せず)を充填するためのタンクである。第3水素貯蔵材料には、低温作動型の材料が用いられるため、始動用タンク18は、必ずしも熱交換器を必要としないが、熱交換器を設けても良い。また、始動用タンク18が環境温度に保持されるように、ファン等で始動用タンク18に外気を供給するのが好ましい。
始動用タンク18は、始動時に燃料電池12に水素を供給するために用いられる。始動用タンク18は、低温作動型の第3水素貯蔵材料が充填されているため、外部熱源が無い場合、あるいは、外部熱源からの熱量が少ない場合であっても、燃料電池12に水素を供給することができる。そのため、始動用タンク18の熱容量は、特に限定されない。
始動用タンク18の作動温度範囲は、メインタンク14より低温側に設定する。換言すれば、第1水素貯蔵材料の最低作動温度をT1min、第3水素貯蔵材料の最低作動温度をT3minとした時に、最低作動温度は、T3min<T1minの関係を満たしている必要がある。
T3<T1の関係を満たしているため、補給用タンク16及びメインタンク14の温度が低い場合であっても、燃料電池12に水素を供給し続けることができる。また、補給用タンク16及びメインタンク14の温度が十分に高くなると、補給用タンク16及びメインタンク14の内部圧力は、始動用タンク18より高くなる。そのため、これらを連結すれば、補給用タンク16(及び、メインタンク14)から始動用タンク18に水素を補給することができる。
燃料電池システム10の環境温度は、季節や使用条件などにより大きく変動する。環境温度が想定外に低くなった場合であっても、始動を可能とするためには、始動用タンク18の理論水素貯蔵量は大きいほど良い。しかし、始動用タンク18の理論水素貯蔵量が大きくなるほど、システムが大型化する。本発明では、この問題を解決するために、メインタンク14と始動用タンク18との間に、熱容量の小さな補給用タンク16を介在させている。この点が、従来とは異なる。
一方、Y2が過度に大きくなると、補給用タンク16が大型化し、熱容量が増大する。従って、Y2≦2Y3が好ましい。
温度計測手段(図示せず)は、メインタンク14、補給用タンク16、及び始動用タンク18の内部温度を計測するためのものである。計測された内部温度は、主として水素や排熱の流れの制御に用いられる。この点については、後述する。
燃料電池システム10は、メインタンク14、補給用タンク16、及び/又は、始動用タンク18の内部圧力を計測するための圧力計測手段をさらに備えていても良い。計測された内部圧力は、水素や排熱の流れの制御に用いることができる。
特に、燃料電池システム10は、始動用タンク18の内部圧力を計測する圧力計測手段20を備えているのが好ましい。始動用タンク18の内部温度及び内部圧力がわかると、始動用タンク18の水素充填率を算出することができる。算出された水素充填率は、熱交換手段の制御に用いることができる。この点については、後述する。
水素供給手段は、燃料電池12への水素の供給、並びに、各タンク間の水素の補給及び排出を適時に行うための手段である。より具体的には、水素供給手段は、
(a)メインタンク14又は始動用タンク18から燃料電池12への水素の供給、
(b)メインタンク14から補給用タンク16への水素の補給、
(c)補給用タンク16から始動用タンク18への水素の補給、及び
(d)始動用タンク18からメインタンク14への水素の排出
を適時に行うための手段である。
逆止弁26の設定圧は、目的に応じて最適な圧力を選択することができる。逆止弁26はメインタンク14の内部圧力が十分に高くなったところで開弁させるのが好ましいので、その設定圧は予め定められた圧力ウィンドウの下限値以上に設定するのが好ましい。図1に示す例では、逆止弁26の設定圧は、水素調圧弁24の設計下限圧力(例:0.1MPa)に設定されている。
逆止弁34の設定圧は、目的に応じて最適な圧力を選択することができる。逆止弁34はメインタンク14から補給用タンク14への水素の補給が可能となった時点で開弁させるのが望ましいので、その設定圧は予め定められた圧力ウィンドウの下限値未満であっても良い。図1に示す例では、逆止弁34の設定圧は、環境下限温度(例:−20℃)でのメインタンク14の作動圧力(例:0.03MPa)に設定されている。
逆止弁38の設定圧は、目的に応じて最適な圧力を選択することができる。逆止弁38は補給用タンク16の内部圧力が十分に高くなったところで開弁させるのが好ましいので、その設定圧は予め定められた圧力ウィンドウの下限値以上に設定するのが好ましい。図1に示す例では、逆止弁38の設定圧は、水素調圧弁24の設計下限圧力(例:0.1MPa)に設定されている。
逆止弁42の設定圧は、目的に応じて最適な圧力を選択することができる。逆止弁42は始動用タンク18が破損する前に開弁させるのが好ましいので、その設定圧は予め定められた圧力ウィンドウの上限値以下に設定するのが好ましい。図1に示す例では、逆止弁42の設定圧は、始動用タンク18の上限圧力(例:0.9MPa)に設定されている。
熱交換手段は、燃料電池12の排熱を用いて、メインタンク14及び/又は補給用タンク16を加熱するための手段である。始動直後においては、補給用タンク16のみを加熱する。これは、メインタンク14が適切な作動温度に昇温するまでの間、始動用タンク18の水素量を枯渇させないためである。
所定時間経過後、熱交換経路を切り替え、メインタンク14及び補給用タンク16の双方を加熱する。これは、メインタンク14及び補給用タンク16の温度を短時間で等温にするためである。定常運転に移行後は、メインタンク14及び補給用タンク16の双方を加熱してもよく、あるいは、メインタンク14のみを加熱しても良い。
さらに、水管46と水管48とは、バイパス水管50で接続されている。また、水管46とバイパス水管50との結合点には、三方弁52が設けられている。燃料電池12の冷却水は、循環ポンプ(図示せず)を介して、補給用タンク16−燃料電池12の二者間、又は、補給用タンク16−メインタンク14−燃料電池12の三者間を循環する。
制御手段は、各タンクの内部温度に基づき、水素供給手段及び熱交換手段を制御するための手段である。水素供給手段及び熱交換手段の制御に際し、各タンクの内部圧力を用いても良い。より具体的には、制御手段は、
(a)水素ガスの供給経路の切り替え、及び、
(b)燃料電池12からの排熱の供給経路の切り替え
を行う。
(a)始動用タンク18から供給される水素を用いて燃料電池12を始動させ、
(b)燃料電池12を始動させた後、燃料電池12からの排熱を用いて補給用タンク16を加熱し、
(c)補給用タンク16の圧力が始動用タンク18の圧力より高くなった後、補給用タンク16から始動用タンク18へ水素を補給し、
(d)一旦減少した始動用タンク18の水素充填率が予め定められたしきい値以上に回復した後、燃料電池12からの排熱を用いてメインタンク14を加熱し、
(e)メインタンク14と補給用タンク16との間の温度差が予め定められたしきい値未満となった後、メインタンク14から補給用タンク16に水素を補給し、
(f)メインタンク14の温度が予め定められたしきい値以上になった後、始動用タンク18から燃料電池12への水素の供給の停止、及びメインタンク14から燃料電池12への水素の供給の開始を行い、
(g)始動用タンク18の内部圧力が予め定められたしきい値以上になった時に、始動用タンク18からメインタンク14へ水素を排出する
ことができるように水素供給手段及び熱交換手段を制御するものが好ましい。
図2〜図6に、始動直後から運転停止後までの燃料電池システム10の運転方法を説明するための概略図を示す。
図2に、始動直後の水素及び排熱の流れの概略図を示す。低温環境下(例:−20℃〜0℃)で燃料電池システム10を始動させる場合、環境温度が低すぎるため、メインタンク14及び補給用タンク16の内部圧力は低く、所定の圧力の水素を供給することができない。このような場合には、図2に示すように、開閉バルブ30を空け、始動用タンク18から供給される水素を用いて燃料電池12を始動させる。第3水素貯蔵材料の作動温度範囲は、通常、使用環境温度の低温側に設定されているので、外部熱源が無い場合、あるいは、外部熱源からの熱量が少ない場合であっても水素を放出することができる。
図3に、補給用タンクから始動用タンクへの水素補給の概略図を示す。補給用タンク16を加熱すると、やがて補給用タンク16の温度が所定のしきい値(例:作動温度の下限値)を超え、補給用タンク16の内部圧力が上昇する。そして、補給用タンク16と始動用タンク18の差圧が逆止弁38の設定圧を超えると、図3に示すように、補給用タンク16から始動用タンク18に水素が補給され、補給された水素が燃料電池12に供給される。そのため、メインタンク14の加熱が完了する前に始動用タンク18の水素が枯渇することがない。
図4に、メインタンクから補給用タンクへの水素補給の概略図を示す。始動時に水素が消費されるため、始動用タンク18の水素充填率は一旦減少する。しかし、補給用タンク16からの水素の補給が開始されると、やがて始動用タンク18の水素充填率が回復する。始動用タンク18の水素充填率が所定のしきい値(例:80%)以上に回復した後、燃料電池12からの排熱を用いてメインタンク14を加熱する。この時点では、燃料電池12からの排熱量も多くなっているので、熱容量X1の大きなメインタンク14であっても、短時間で加熱することができる。
メインタンク14と補給用タンク16との間の温度差が所定のしきい値(例:5℃)未満になり、メインタンク14と補給用タンク16の差圧が逆止弁34の設定圧を超えると、メインタンク14から補給用タンク16(及び、始動用タンク18)に水素が補給される。
図5に、定常運転移行時の水素及び排熱の流れの概略図を示す。メインタンク14の温度が所定のしきい値(例:作動温度の下限値)以上になった後、始動用タンク18から燃料電池12への水素の供給を停止し、かつ、メインタンク14から燃料電池12への水素の供給を開始する。
図6に、始動用タンク18からメインタンク14への水素排出の概略図を示す。燃料電池システム10の停止中において、環境温度が過度に高くなると、始動用タンク18の内部圧力が上昇する。始動用タンク18とメインタンク14の差圧が逆止弁42の設定圧(例:0.9MPa)以上になった時には、図6に示すように、逆止弁42が開弁し、始動用タンク18からメインタンク14へ水素が排出される。
本発明に係る燃料電池システム10は、高温作動型のメインタンク14と低温作動型の始動用タンク18との間に、補給用タンク16を介在させている。補給用タンク16は、メインタンク14より高い作動温度域を有し、かつメインタンク14より熱容量が小さくなっている。そのため、メインタンク14から補給用タンク16及び始動用タンク18への水素の補給を迅速、かつ、効率的に行うことができる。また、これによって、メインタンク14が水素放出可能な温度に達する前に、始動用タンク18の水素が枯渇することがない。さらに、始動性を向上させるために、始動用タンク18の容量を大きくする必要がないので、システムの大型化や高コスト化を抑制することができる。その結果、低温から高温環境で作動する小型かつ安価なシステムを実現できる。また、低温環境でのシステムの効率、利便性が向上する。
本発明の第2の実施の形態に係る燃料電池システムは、複数個のサブタンクが連結した補給用タンクを備えている。この点が第1の実施の形態と異なる。補給用サブタンクは、ガス供給ラインに対して並列接続されていても良く、あるいは、直列接続されていても良い。
その他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[4.1.1. 並列接続]
図7に、複数個の補給用サブタンクが並列接続された補給用タンクの概略図を示す。図7において、補給用タンク16aは、第1補給用サブタンク62(1)〜第n補給用サブタンク62(n)(n≧2)が並列に接続されたものからなる。各補給用サブタンク62(k)(1≦k≦n)は、それぞれ分岐ガス管64、66に接続されている。また、分岐ガス管64、66は、それぞれ、タンク間ガス管32、36に接続されている。
さらに、各第k補給用サブタンク62(k)の熱容量X2(k)は、それぞれ、X2(k)<X1の関係を満たしている。なお、熱容量X2(k)は、必ずしもΣX2(k)<X1の関係を満たしている必要はない。これは、すべての補給用サブタンク62(k)を同時に加熱することが必ずしも必要ではなく、X1より小さい熱容量となる数の補給用サブタンク62(k)のみを加熱すれば、メインタンク14を加熱するより速く補給用サブタンク62(k)を昇温できるためである。
なお、各第k補給用サブタンク62(k)に、作動温度範囲が同一である第2水素貯蔵材料を充填し、かつ、各第k補給用サブタンク62(k)を同一温度に保持する場合、各第k補給用サブタンク62(k)の内部圧力は等しくなる。このような場合には、逆止弁68、69を省略することができる。
図示はしないが、補給用タンクは、複数個の補給用サブタンクが直列接続されたものでも良い。その他の点は、並列接続の場合と同様であるので、説明を省略する。
直列接続及び並列接続のいずれの場合も、各第k補給用サブタンク62(k)の理論水素貯蔵量は特に限定されないが、第1の実施の形態と同様の理由から、第1の実施の形態と同様の関係を満たしているのが好ましい。
すなわち、第k補給用サブタンク62(k)(1≦k≦n)の理論水素貯蔵量をY2(k)、始動用タンク18の理論水素貯蔵量をY3とした時に、理論水素貯蔵量は、Y3/2≦ΣY2(k)≦2Y3の関係を満たしているのが好ましい。
第2の実施の形態に係る燃料電池システムは、基本的には、第1の実施の形態と同様にして運転することができる。
但し、本実施の形態においては、選択熱交換手段及び選択加熱手段を用いて、第k補給用サブタンク62(k)のいずれか1以上が、熱交換ラインに選択的に接続される場合がある。その他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
第2の実施の形態に係る燃料電池システムは、複数個のサブタンクの連結体からなる補給用タンク16aを備えているので、以下のような効果が得られる。
(1)各サブタンクに作動温度範囲が同一である第2水素貯蔵材料が充填されており、かつ、選択熱交換手段及び選択加熱手段をさらに備えている場合には、始動用タンク18への水素の補給量を調節することができる。
例えば、環境温度が想定外に低くなった場合には、始動に時間がかかるため、すべてのサブタンクに燃料電池12の排熱を供給し、水素補給量を増大させることができる。一方、環境温度が相対的に高い場合には、少量の水素補給で定常状態に移行することができる。この場合、必要最小限のサブタンクのみを加熱すれば良いので、短時間でメインタンク14からの水素供給が可能となる。
(3)各サブタンクに作動温度が異なる第2水素貯蔵材料が充填されており、かつ、選択熱交換手段及び選択加熱手段を備えている場合には、燃料電池の発熱温度の変化に対応して適切なサブタンクのみを選択加熱できるという効果が得られる。
本発明の第3の実施の形態に係る燃料電池システムは、複数個のサブタンクが連結した始動用タンクを備えている。この点が第1の実施の形態と異なる。始動用サブタンクは、ガス供給ラインに対して直列接続されていても良く、あるいは、並列接続されていても良い。さらに、本実施の形態に係る燃料電池システムは、第2の実施の形態(すなわち、複数個のサブタンクからなる補給用タンク)と組み合わせても良い。
その他の点については、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
[5.1.1. 直列接続]
図8に、複数個の始動用サブタンクが直列接続された始動用タンクの概略図を示す。図8において、始動用タンク18aは、第1始動用サブタンク72(1)〜第p始動用サブタンク72(p)(p≧2)が直列に接続されたものからなる。各始動用サブタンク72(q)(1≦q≦p)は、タンク間ガス管74で接続されている。また、第1始動用サブタンク72(1)はタンク間ガス管36に接続され、第p始動用サブタンク72(p)はバイパス管28に接続されている。
なお、各第q始動用サブタンク72(q)に、作動温度範囲が同一である第3水素貯蔵材料を充填する場合、各第q始動用サブタンク72(q)の内部圧力は等しくなる。このような場合には、逆止弁76を省略することができる。
図9に、複数個の始動用サブタンクが並列接続された始動用タンクの概略図を示す。図9において、始動用タンク18bは、第1始動用サブタンク72(1)〜第p始動用サブタンク72(p)(p≧2)が並列に接続されたものからなる。各始動用サブタンク72(q)(1≦q≦p)は、それぞれ分岐ガス管78、80に接続されている。分岐ガス管78、80は、それぞれ、タンク間ガス管36、バイパス管28に接続されている。
なお、各第q始動用サブタンク72(q)に、作動温度範囲が同一である第3水素貯蔵材料を充填する場合、各第q始動用サブタンク72(q)の内部圧力は等しくなる。このような場合には、逆止弁76及び開閉バルブ82を省略することができる。
直列接続及び並列接続のいずれの場合も、各第q始動用サブタンク72(q)の理論水素貯蔵量は特に限定されないが、第1の実施の形態と同様の理由から、第1の実施の形態と同様の関係を満たしているのが好ましい。
すなわち、第k補給用サブタンク62(k)(1≦k≦n)の理論水素貯蔵量をY2(k)とする。なお、補給用タンク16が1個のタンクからなる場合(n=1の場合)には、補給用サブタンク16の理論水素貯蔵量をY2とする。また、第q始動用サブタンク72(q)の理論水素貯蔵量をY3(q)とする。この時、理論水素貯蔵量は、ΣY3(q)/2≦ΣY2(k)≦2ΣY3(q)の関係を満たしているのが好ましい。
第3の実施の形態に係る燃料電池システムは、基本的には、第1及び第2の実施の形態と同様にして運転することができる。
但し、本実施の形態においては、制御手段を介して、第q始動用サブタンク72(q)のいずれか1以上が、ガス供給ラインに選択的に接続される場合がある。その他の点については、第1及び第2の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
第3の実施の形態に係る燃料電池システムは、複数個のサブタンクの連結体からなる始動用タンク18a又は18bを備えているので、以下のような効果が得られる。
(1)各サブタンクに作動温度域が異なる第3水素貯蔵材料が充填されている場合、環境温度によらず、いずれか1以上のサブタンクは、水素発生可能な状態になっている。そのため、環境温度が想定外に低くなった場合であっても、燃料電池システム10を始動させることができる。
(2)各サブタンクに作動温度域が同一である第3水素貯蔵材料が充填されている場合、始動時における水素発生量を増大させることができる。そのため、始動用タンク18a又は18bの水素が枯渇する前に、メインタンク14を水素発生可能な状態にすることができる。
12 燃料電池
14 メインタンク
16 補給用タンク
18 始動用タンク
Claims (11)
- 以下の構成を備えた燃料電池システム。
(1)前記燃料電池システムは、
燃料電池と、
第1水素貯蔵材料が充填されたメインタンクと、
第2水素貯蔵材料が充填された補給用タンクと、
第3水素貯蔵材料が充填された始動用タンクと、
前記メインタンク、前記補給用タンク、及び前記始動用タンクの内部温度を計測する温度計測手段と、
前記メインタンク又は前記始動用タンクから前記燃料電池への水素の供給、前記メインタンクから前記補給用タンクへの水素の補給、前記補給用タンクから前記始動用タンクへの水素の補給、及び前記始動用タンクから前記メインタンクへの水素の排出を適時に行うための水素供給手段と、
前記燃料電池の排熱を用いて、前記メインタンク及び/又は前記補給用タンクを加熱する熱交換手段と、
前記内部温度に基づき、前記水素供給手段及び前記熱交換手段を制御する制御手段と
を備えている。
(2)前記第1水素貯蔵材料の平均作動温度をT1a、前記第2水素貯蔵材料の平均作動温度をT2a、前記第3水素貯蔵材料の平均作動温度をT3aとした時に、前記平均作動温度は、T3a<T1a<T2aの関係を満たす。
(3)前記メインタンクの熱容量をX1、前記補給用タンクの熱容量をX2とした時に、前記熱容量は、X2<X1の関係を満たす。 - 前記メインタンク、前記補給用タンク、及び/又は、前記始動用タンクの内部圧力を計測する圧力計測手段をさらに備えた請求項1に記載の燃料電池システム。
- 前記制御手段は、
(a)前記始動用タンクから供給される水素を用いて前記燃料電池を始動させ、
(b)前記燃料電池を始動させた後、前記燃料電池からの排熱を用いて前記補給用タンクを加熱し、
(c)前記補給用タンクの圧力が前記始動用タンクの圧力より大きくなった後、前記補給用タンクから前記始動用タンクへ水素を補給し、
(d)一旦減少した前記始動用タンクの水素充填率が予め定められたしきい値以上に回復した後、前記燃料電池からの排熱を用いて前記メインタンクを加熱し、
(e)前記メインタンクと前記補給用タンクとの間の温度差が予め定められたしきい値未満となった後、前記メインタンクから前記補給用タンクに水素を補給し、
(f)前記メインタンクの温度が予め定められたしきい値以上になった後、前記始動用タンクから前記燃料電池への水素の供給の停止、及び前記メインタンクから前記燃料電池への水素の供給の開始を行い、
(g)前記始動用タンクの内部圧力が予め定められたしきい値以上になった時に、前記始動用タンクから前記メインタンクへ水素を排出する
ことができるように前記水素供給手段及び前記熱交換手段を制御するものからなる請求項2に記載の燃料電池システム。 - 前記制御手段は、前記始動用タンクの内部温度及び内部圧力を用いて、前記始動用タンクの水素充填率を算出する算出手段を備えている請求項3に記載の燃料電池システム。
- 前記補給用タンクの理論水素貯蔵量をY2、前記始動用タンクの理論水素貯蔵量をY3とした時に、前記理論水素貯蔵量は、Y3/2≦Y2≦2Y3の関係を満たす請求項1から4までのいずれか1項に記載の燃料電池システム。
- 前記補給用タンクは、第1補給用サブタンク〜第n補給用サブタンク(n≧2)が並列又は直列に接続されたものからなり、
各第k補給用サブタンク(1≦k≦n)に充填されている前記第2水素貯蔵材料の平均作動温度T2a(k)は、それぞれ、T1a<T2a(k)の関係を満たし、
前記各第k補給用サブタンクの熱容量X2(k)は、それぞれ、X2(k)<X1の関係を満たす
請求項1から5までのいずれか1項に記載の燃料電池システム。 - 前記熱交換手段は、前記燃料電池と前記第1補給用サブタンク〜前記第n補給用サブタンクの全部又は一部との間で選択的に熱交換する選択熱交換手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記燃料電池の排熱を、前記第1補給用サブタンク〜前記第n補給用サブタンクの全部又は一部に選択的に供給する選択加熱手段をさらに備えた請求項6に記載の燃料電池システム。 - 前記各第k補給用サブタンク(1≦k≦n)には、それぞれ、第m補給用サブタンク(m≠k)から前記第k補給用サブタンクへの水素の逆流を防ぐための逆流防止手段が設けられている請求項6又は7に記載の燃料電池システム。
- 前記始動用タンクは、第1始動用サブタンク〜第p始動用サブタンク(p≧2)が並列又は直列に接続されたものからなり、
第q始動用サブタンク(1≦q≦p)に充填されている前記第3水素貯蔵材料の平均作動温度T3a(q)は、それぞれ、T3a(q)<T1aの関係を満たしている
請求項1から8までのいずれか1項に記載の燃料電池システム。 - 前記始動用タンクは、第1始動用サブタンク〜第p始動用サブタンク(p≧2)が並列又は直列に接続されたものからなり、
第q始動用サブタンク(1≦q≦p)に充填されている前記第3水素貯蔵材料の平均作動温度T 3a (q)は、それぞれ、T 3a (q)<T 1a の関係を満たしており、
前記第k補給用サブタンク(1≦k≦n)の理論水素貯蔵量をY 2 (k)、前記第q始動用サブタンク(1≦q≦p)の理論水素貯蔵量をY 3 (q)とした時に、前記理論水素貯蔵量は、ΣY 3 (q)/2≦ΣY 2 (k)≦2ΣY 3 (q)の関係を満たす請求項6から8までのいずれか1項に記載の燃料電池システム。 - 前記各第q始動用サブタンクには、それぞれ、第r始動用サブタンク(r≠q)から前記第q始動用サブタンクへの水素の逆流を防ぐための逆流防止手段が設けられている請求項9又は10に記載の燃料電池システム。
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