JP6551468B2 - 加飾シート及び加飾樹脂成形品 - Google Patents
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Description
(1)積層体の全光線透過率が1%以上、30%以下である。
(2)積層体を30%加熱伸長した際の積層体の全光線透過率が、積層体を加熱伸長する前の全光線透過率の±30%以内の値である。
(3)積層体のヘイズ値が20%以上、80%以下である。
(4)積層体を30%加熱伸長した際の積層体のヘイズ値が、積層体を加熱伸長する前のヘイズ値の±30%以内の値である。
本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
項1. 少なくとも、基材層と、金属薄膜層とが積層された積層体からなり、
前記積層体の全光線透過率が1%以上、30%以下であり、
前記積層体を30%加熱伸長した際の前記積層体の全光線透過率が、前記積層体を加熱伸長する前の全光線透過率の±30%以内の値であり、
前記積層体のヘイズ値が20%以上、80%以下であり、
前記積層体を30%加熱伸長した際の前記積層体のヘイズ値が、前記積層体を加熱伸長する前のヘイズ値の±30%以内の値である、加飾シート。
項2. 前記積層体を50%加熱伸長した際の前記積層体の全光線透過率が、前記積層体を加熱伸長する前の全光線透過率の±30%以内の値であり、
前記積層体を50%加熱伸長した際の前記積層体のヘイズ値が、前記積層体を加熱伸長する前のヘイズ値の±30%以内の値である、項1に記載の加飾シート。
項3. 前記積層体を100%加熱伸長した際の前記積層体の全光線透過率が、前記積層体を加熱伸長する前の全光線透過率の±30%以内の値であり、
前記積層体を100%加熱伸長した際の前記積層体のヘイズ値が、前記積層体を加熱伸長する前のヘイズ値の±30%以内の値である、項1または2に記載の加飾シート。
項4. 前記積層体を30%加熱伸長した際の前記積層体の全光線透過率が、1%以上、30%以下であり、
前記積層体を30%加熱伸長した際の前記積層体のヘイズ値が、20%以上、80%以下である、項1〜3のいずれかに記載の加飾シート。
項5. 前記金属薄膜層が、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金からなる群から選択された少なくとも1種の金属により形成されている、項1〜4のいずれかに記載の加飾シート。
項6. 前記金属薄膜層の光学濃度(OD)値が、0.3〜1.8である、項1〜5のいずれかに記載の加飾シート。
項7. 前記金属薄膜層の上に表面保護層を有する、項1〜6のいずれかに記載の加飾シート。
項8. 前記金属薄膜層と前記表面保護層との間にプライマー層を有する、項7に記載の加飾シート。
項9. 前記基材層と前記金属薄膜層との間に接着層を有する、項1〜8のいずれかに記載の加飾シート。
項10. 前記金属薄膜層と前記表面保護層との間に透明フィルム層を有する、項1〜9のいずれかに記載の加飾シート。
項11. 少なくとも、成形樹脂層と、項1〜10のいずれかに記載の加飾シートとが積層された加飾樹脂成形品であって、
前記加飾シートの基材層が前記成形樹脂層側に位置するようにして、前記加飾シートが積層されてなる、加飾樹脂成形品。
項12. 前記加飾樹脂成形品は、全光線透過率が1%以上、30%以下であり、ヘイズ値が20%以上、80%以下である、項11に記載の加飾樹脂成形品。
本発明の加飾シートは、少なくとも、基材層と、金属薄膜層とが積層された積層体からなり、以下の(1)〜(4)の要件を充足することを特徴とする。
(1)積層体の全光線透過率が1%以上、30%以下である。
(2)積層体を30%加熱伸長した際の積層体の全光線透過率が、積層体を加熱伸長する前の全光線透過率の±30%以内の値である。すなわち、加飾シートを構成する積層体を長さ方向(厚み方向と垂直方向)に30%加熱伸長した際の積層体の全光線透過率の変化率が±30%以内である。
(3)積層体のヘイズ値が20%以上、80%以下である。
(4)積層体を30%加熱伸長した際の積層体のヘイズ値が、積層体を加熱伸長する前のヘイズ値の±30%以内の値である。すなわち、加飾シートを構成する積層体を長さ方向(厚み方向と垂直方向)に30%加熱伸長した際の積層体のヘイズ値の変化率が±30%以内である。
本発明の加飾シートは、少なくとも、基材層1と、金属薄膜層2とを有する積層構造を有する。本発明の加飾シートにおいて、金属薄膜層2の上には、加飾シートの耐傷付き性、耐候性を向上させることなどを目的として、必要に応じて、表面保護層を設けてもよい。基材層1と金属薄膜層2との間には、これらの層間の密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて、接着層5を設けてもよい。また、基材層1と金属薄膜層2との間には、これらの層間の密着性を高めることや、金属薄膜層2に隣接する層による金属薄膜層2の劣化を抑制することなどを目的として、必要に応じて、第2のプライマー層6を設けてもよい。また、金属薄膜層2の上には、金属薄膜層2の金属調にさらに光沢性を付与すること等を目的として、必要に応じて、カラークリア層7を設けてもよい。また、第1のプライマー層3の上には、加飾シートの成形性を高めることなどを目的として、必要に応じて、透明フィルム層9などを設けてもよい。表面保護層4の直下には、表面保護層4とその下に形成される層との密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて、第1のプライマー層3を設けてもよい。さらに、基材層1の下に、第2の接着層10などを設けてもよい。
[基材層1]
基材層1は、本発明の加飾シートにおいて支持体としての役割を果たす樹脂シート(樹脂フィルム)により形成されている。基材層1に使用される樹脂成分については、特に制限されず、三次元成形性や成形樹脂層との相性等に応じて適宜選定すればよいが、本発明の上記(1)〜(4)の要件を充足する観点から、好ましくは、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある);アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET)等が挙げられる。これらの中でも、ABS樹脂が三次元成形性の観点から好ましい。基材層1を形成する樹脂成分としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、基材層1は、これら樹脂の単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層シートで形成されていてもよい。
接着層5は、基材層1と後述の金属薄膜層2などとの密着性を向上させるため、必要に応じて、基材層1と金属薄膜層2との間に設けられる層である。後述の通り、基材層1と金属薄膜層2との間に第2のプライマー層6を設ける場合、基材層1と第2のプライマー層6との間に接着層5を設けることができる。
第2のプライマー層6は、金属薄膜層2とその下に位置するとの密着性を向上することや、金属薄膜層2の下に位置する層に含まれる成分(例えば塩素成分など)による金属薄膜層2の劣化を抑制することなどを目的として、必要に応じて設けられる層である。第2のプライマー層6は、例えば、基材層1と金属薄膜層2との間、上述の接着層5を有する場合には、接着層5と金属薄膜層2との間に設けられる。第2のプライマー層6は、基材層1と金属薄膜層2などとを密着させる機能を有する。基材層1と第2のプライマー層6との間に上記の接着層5が設けられている場合は、接着層5が基材層1と第2のプライマー層6とを密着させており、第2のプライマー層6が接着層5と金属薄膜層2とを密着させている。第2のプライマー層6を形成する素材は、これらの層間の密着性を向上させ得るものであれば、特に限定されないが、本発明の上記(1)〜(4)の要件を充足する観点から、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル−ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂が挙げられる。
[金属薄膜層2]
金属薄膜層2は、基材層1の上に設けられ、加飾シートに金属表面と同様な金属調の意匠を付与する層である。本発明において、金属薄膜層2は、光透過性を有する。すなわち、金属薄膜層2は、本発明の加飾シートに対して基材層1側の光源から光が照射された際に、照射された光の少なくとも一部が金属薄膜層2を透過し、金属薄膜層2の表面において透過光による意匠性を認識できるものである。
表面保護層4は、加飾シートの耐傷付き性、耐候性などを高めることを目的として、必要に応じて、加飾シートの最表面に設けられる層である。表面保護層4を形成する素材は、特に限定されないが、通常は樹脂が用いられ、本発明の上記(1)〜(4)の要件を充足する観点から、好ましくは電離放射線硬化性樹脂が用いられる。また、本発明の上記(1)〜(4)の要件を充足する観点から、表面保護層4として、後述の透明フィルム層9を構成する樹脂フィルムと同様の樹脂フィルムにより形成することも好ましい。表面保護層4は、例えば電離放射線硬化性樹脂または当該樹脂フィルムの1層により形成されていてもよいし、これらの2層以上により形成されていてもよい。以下、表面保護層4の形成に用いられる電離放射線硬化性樹脂について詳述する。
表面保護層4の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、表面保護層4の形成において好適に使用される。
使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
表面保護層4を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物には、表面保護層4に備えさせる所望の物性に応じて、または本発明の上記(1)〜(4)の要件を充足する目的で、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、マット剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができ、例えばマット剤としてはシリカ粒子や水酸化アルミニウム粒子等が挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
表面保護層4の硬化後の厚みについては、特に制限されないが、本発明の上記(1)〜(4)の要件を充足する観点から、例えば、1〜1000μm、好ましくは1〜50μm、更に好ましくは1〜30μmが挙げられる。このような範囲の厚みを満たすと、耐傷付き性、耐候性等の表面保護層としての十分な物性が得られると共に、電離放射線を均一に照射することが可能であるため、均一に硬化することが可能となり、経済的にも有利になる。更に、表面保護層4の硬化後の厚みが前記範囲を充足することによって、加飾シートの三次元成形性が一層向上するため自動車内装用途等の複雑な三次元形状に対して高い追従性を得ることができる。このように、本発明の加飾シートは表面保護層4の厚みを従来のものより厚くしても、十分に高い三次元成形性が得られることから、特に表面保護層4に高い膜厚を要求される部材、例えば車両外装部品等の加飾シートとしても有用である。
表面保護層4の形成は、例えば、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、金属薄膜層2、第1のプライマー層3などの表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
第1のプライマー層3は、表面保護層4とその下に位置する層との密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて、表面保護層4の下に設けられる層である。第1のプライマー層3は、例えば、表面保護層4と金属薄膜層2との間、表面保護層4と後述のカラークリア層7との間、表面保護層4と後述の透明フィルム層9との間などに設けられる。第1のプライマー層3を形成する素材は、これらの層間の密着性を向上させ得るものであれば、特に限定されないが、本発明の上記(1)〜(4)の要件を充足する観点から、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル−ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂が挙げられる。
カラークリア層7は、金属薄膜層2の金属調にさらに光沢などを持たせること等を目的として、必要に応じて、金属薄膜層2の上に設けられる層である。カラークリア層7を形成する素材としては、特に限定されないが、本発明の上記(1)〜(4)の要件を充足する観点から、例えば、着色剤などにより着色された透明樹脂が挙げられる。着色剤としては、特に制限はないが、例えば、着色顔料、染料などが挙げられる。また、透明樹脂としては、特に制限はないが、本発明の上記(1)〜(4)の要件を充足する観点から、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル−ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。カラークリア層7の厚みは、特に限定されないが、本発明の上記(1)〜(4)の要件を充足する観点から、通常0.5〜4μm程度、好ましくは1〜3μm程度である。カラークリア層7の形成方法は、特に制限されないが、例えば、第1のプライマー層3、金属薄膜層2、透明フィルム層9、第3のプライマー層8、表面保護層4などのうちカラークリア層7と隣接する層の表面上に上記の樹脂を塗布する方法などが挙げられる。
第3のプライマー層8は、カラークリア層7とその下に位置する層との密着性を高めること等を目的として、必要に応じて、カラークリア層7の下に設けられる層である。第3のプライマー層8は、例えば、カラークリア層7と金属薄膜層2との間や、カラークリア層7と後述の透明フィルム層9との間に設けられる。第3のプライマー層8を形成する素材は、これらの層間の密着性を向上させ得るものであれば、特に限定されないが、本発明の上記(1)〜(4)の要件を充足する観点から、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル−ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂が挙げられる。
透明フィルム層9は、本発明の加飾シートの耐傷付き性や耐候性を高めると共に、成形性を高める支持体としての役割を果たし、必要に応じて、金属薄膜層2の上に設けられる樹脂フィルムである。透明フィルム層9を備えることで成形性が高まり、加飾シートを三次元成形した際に金属薄膜層2にクラックが発生しにくくなるので、伸展性に富むスズ、インジウム、クロム以外の金属(例えばアルミニウムなど)を用いて金属薄膜層2を形成する場合には、透明フィルム層9を備えることが好ましい。透明フィルム層9を形成する樹脂フィルムとしては、加飾シートの成形性を高め、金属薄膜層2による金属調の意匠を隠蔽するものでなければ、特に限定されないが、本発明の上記(1)〜(4)の要件を充足する観点から、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、またはアクリル樹脂などのフィルムが挙げられる。透明フィルム層9の厚みは、特に限定されないが、本発明の上記(1)〜(4)の要件を充足する観点から、通常15〜200μm程度、好ましくは30〜150μm程度である。透明フィルム層9を形成する方法は、特に制限されないが、例えば、表面保護層4、第1のプライマー層3、金属薄膜層2、カラークリア層7、第3のプライマー層8などのうち透明フィルム層9に隣接する層の表面上に上記の樹脂フィルムを積層する方法などが挙げられる。
第2の接着層10は、加飾シートと成形樹脂との接着性や密着性を向上させることなどを目的として、基材層1の裏面に必要に応じて設けられる層である。第2の接着層10を形成する樹脂としては、加飾シートと成形樹脂との接着性や密着性を向上させることができるものであれば、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに成形樹脂を一体化させることにより成形されてなるものである。すなわち、本発明の加飾樹脂成形品は、少なくとも、成形樹脂層と、本発明の加飾シートとが積層された加飾樹脂成形品であって、加飾シートの基材層1が成形樹脂層7側に位置するようにして、加飾シートが積層されてなる。本発明の加飾樹脂成形品は、少なくとも、成形樹脂層と、基材層と、金属薄膜層と積層体からなり、必要に応じて、上述の接着層5、第1のプライマー層3、第3のプライマー層8、カラークリア層7、第2のプライマー層3、表面保護層4、透明フィルム層9などの少なくとも1層がさらに設けられていてもよい。
本発明の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び
成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を射出成形型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する一体化工程。
本発明の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、加飾シートの基材層の表面が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する予備成形工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂を射出、充填して固化させることにより樹脂成形体を形成し、樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる一体化工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す取出工程。
(加飾シートの作製)
剥離シートとしての2軸延伸ポリエチレンテレフタレートシート(東洋紡績社製のA5101、厚み25μm)の上に、アクリル−ウレタンブロック共重合樹脂を塗工して、厚み2μmの透明な第1のプライマー層を形成した。次に、第1のプライマー層上に、同じくアクリル−ウレタンブロック共重合樹脂を塗工して、カラークリア層(厚み2μm)、第3のプライマー層(厚み2μm)を順に形成した。次に、第3のプライマー層の表面上にスズを蒸着して光学濃度値(OD)が1.2の金属薄膜層を形成した。次に、金属薄膜層の上に、ポリエステル系樹脂を塗工して第2のプライマー層(厚み2μm)を形成した。次に、第2のプライマー層の上に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を厚み2μmとなるように塗工して接着層を形成した。次に、接着層の上に厚み400μmのABS樹脂からなるシートを接触させて基材層を形成し、剥離層/第1のプライマー層/カラークリア層/第3のプライマー層/金属薄膜層/第2のプライマー層/接着層/基材層がこの順に積層された積層体を得た。
実施例1〜8及び比較例1〜6の加飾シート、当該加飾シートを90℃に加熱して50%、100%にそれぞれ加熱伸長した加飾シートについて、それぞれ、全光線透過率及びヘイズ値(実測値)をJIS K 7136に準拠し、ヘイズメーターで測定した。なお、全光線透過率及びヘイズ値の測定は、加飾シートの基材層側(裏面側)から光を照射して測定した値である。また、加熱伸長した加飾シートについて、加熱伸長前からの全光線透過率及びヘイズ値の変化率を、それぞれこれらの測定値から算出した。結果を表1に示す。
実施例1〜8及び比較例1〜6で得られた加飾シートを、次の工程によりインサート成形に供し、得られた加飾樹脂成形品の平滑面及び曲げR面の外観差の評価を行った。
〔真空成形工程〕
実施例1〜8及び比較例1〜6で得られた加飾シートが軟化する所定の温度(180℃)になるまでヒーターで加熱し、加熱され軟化した加飾シートに真空成形金型(最大伸長率150%)を押し付け、同時に真空成形金型から真空ポンプで空気を吸引し、加飾シートを真空成形金型にしっかりと密着させた。次に、真空成形金型に密着した加飾シートを冷却して、成形した加飾シートから真空成形金型をはずし、次に固定枠から成形された加飾シートをはずした。
真空成形工程で得られた加飾シートの余分な部分を切り取り、所望の形状にトリミングする工程を行った。なお、トリミング工程は、レーザー、ダイカット型等を用いて行うことができるが、設備の観点から汎用されるダイカット型を用いてトリミングした。
トリミング工程でトリミングされた加飾シートを、射出成形金型にはめ込み、基材層側に射出樹脂(透明ABS樹脂)を打ち込んだ。最後に射出成形金型から取り出して、加飾樹脂成形品を得た。得られた加飾樹脂成形品の平滑面及び曲げR面の外観差の評価を以下の基準により行った。
○:加飾成形品において、平滑面と曲げ部の色・艶等の外観上の差異が全くない
△:加飾成形品において、平滑面と曲げ部の色・艶等の外観上の差異が多少あるが、実用上問題ない
×:加飾成形品において、平滑面と曲げ部の色・艶等の外観上の差異が大きく、実用できるものではない
上記で得られた加飾成形品について、下記のバックライト消灯時の表面保護層側の外観を目視で観察した。メタリック感を以下の基準により評価した。
○:色目が金属に近く、輝度も十分ある。
△:色目が金属に近く、輝度もある。
× : 金属感がなく、輝度がない。
上記で得られた加飾樹脂成形品について、射出樹脂側(裏面側)の表面から3cm距離をおき、自動車用ルームランプ(RGBカラーLEDライト)をバックライト光源として白色光を点灯した。次に、表面保護層側の面(表面)から、分光放射照度計CL−500A(コニカミノルタ製)を用いて、JIS Z8726:1990に従って加飾樹脂成形品の平均演色評価数Raを測定した。この測定結果から、光源色の発現性を以下の基準により評価した。
◎:平均演色評価数Ra が、80以上であり、光源色の発現性に極めて優れている
○:平均演色評価数Ra が、60以上であり、光源色の発現性に優れている
△:平均演色評価数Ra が、40以上であり、実用上問題がない
×:平均演色評価数Ra が、40未満であり、実用できるものではない
上記で得られた加飾樹脂成形品について、成形樹脂側(裏面側)の表面から3cm距離をおき、自動車用ルームランプ(RGBカラーLEDライト)をバックライト光源として白色光を点灯した。次に、表面保護層側の面(表面)から、加飾樹脂成形品の光透過性(光源の見え方)を目視で観察した。光源の目立ちを以下の基準により評価した。
○:光源の点灯時において、光源の形状・シルエットが全く見えず、優れた意匠性を有する
△:光源の点灯時において、光源の形状・シルエットが多少見えるが、意匠性は実用上問題ない
×:光源の点灯時において、光源の形状・シルエットが見え、意匠性の観点から実用には向かない
××:バックライト灯光時時、光源の形状・ニュアンスがはっきりと見え、意匠性の観点から実用できるものではない
2…金属薄膜層
3…第1のプライマー層
4…表面保護層
5…接着層
6…第2のプライマー層
7…カラークリア層
8…第3のプライマー層
9…透明フィルム層
Claims (9)
- 少なくとも、基材層と、金属薄膜層とが積層された積層体からなり、
前記金属薄膜層の上に、マット剤を含む表面保護層を有し、
前記積層体の全光線透過率が1%以上、30%以下であり、
前記積層体を30%加熱伸長した際の前記積層体の全光線透過率が、前記積層体を加熱伸長する前の全光線透過率の±30%以内の値であり、
前記積層体のヘイズ値が20%以上、80%以下であり、
前記積層体を30%加熱伸長した際の前記積層体のヘイズ値が、前記積層体を加熱伸長する前のヘイズ値の±30%以内の値である、三次元成形用加飾シート。 - 前記積層体を50%加熱伸長した際の前記積層体の全光線透過率が、前記積層体を加熱伸長する前の全光線透過率の±30%以内の値であり、
前記積層体を50%加熱伸長した際の前記積層体のヘイズ値が、前記積層体を加熱伸長する前のヘイズ値の±30%以内の値である、請求項1に記載の三次元成形用加飾シート。 - 前記積層体を100%加熱伸長した際の前記積層体の全光線透過率が、前記積層体を加熱伸長する前の全光線透過率の±30%以内の値であり、
前記積層体を100%加熱伸長した際の前記積層体のヘイズ値が、前記積層体を加熱伸長する前のヘイズ値の±30%以内の値である、請求項1または2に記載の三次元成形用加飾シート。 - 前記積層体を30%加熱伸長した際の前記積層体の全光線透過率が、1%以上、30%以下であり、
前記積層体を30%加熱伸長した際の前記積層体のヘイズ値が、20%以上、80%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の三次元成形用加飾シート。 - 前記金属薄膜層が、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金からなる群から選択された少なくとも1種の金属により形成されている、請求項1〜4のいずれかに記載の三次元成形用加飾シート。
- 前記金属薄膜層の光学濃度(OD)値が、0.3〜1.8である、請求項1〜5のいずれかに記載の三次元成形用加飾シート。
- 前記金属薄膜層と前記表面保護層との間にプライマー層を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の三次元成形用加飾シート。
- 前記基材層と前記金属薄膜層との間に接着層を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の三次元成形用加飾シート。
- 前記金属薄膜層と前記表面保護層との間に透明フィルム層を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の三次元成形用加飾シート。
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