以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る機械式自動マニュアル変速機を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1は、本実施形態に係る機械式自動マニュアル変速機のギヤ配列の一例を示す図である。機械式自動マニュアル変速機は、インプットシャフト10と、インプットシャフト10と同軸に配置されたアウトプットシャフト11と、これらインプットシャフト10及び、アウトプットシャフト11と平行に配置されたカウンタシャフト12とを備えている。また、機械式自動マニュアル変速機は、インプットシャフト10の回転数を検出する入力回転数センサ91と、アウトプットシャフト11の回転数を検出する出力回転数センサ92とを備えている。
例えば、入力回転数センサ91により検出された回転数によると、インプットメインギヤ13、1速メインギヤM1、2速メインギヤM2、3速メインギヤM3、4速メインギヤM4、及び第4スリーブ51の回転数を、直接又は介在するギヤのギヤ比に基づいて特定することができる。
また、出力回転数センサ92により検出された回転数によると、第1スリーブ24、第2スリーブ34、第3スリーブ44、及び6速カウンタギヤC6の回転数を、直接又は介在するギヤのギヤ比に基づいて特定することができる。
インプットシャフト10には、インプットメインギヤ13が一体回転可能に設けられている。アウトプットシャフト11には、入力側から順に、4速メインギヤM4、3速メインギヤM3、2速メインギヤM2、1速メインギヤM1、リバースメインギヤRM、6速メインギヤM6が設けられている。4速メインギヤM4、3速メインギヤM3、2速メインギヤM2、1速メインギヤM1、及びリバースメインギヤMRは、アウトプットシャフト11に相対回転可能に設けられ、6速メインギヤM6はアウトプットシャフト11に一体回転可能に設けられている。
カウンタシャフト12には、入力側から順に、インプットメインギヤ13と噛合するインプットカウンタギヤ14、4速メインギヤM4と噛合する4速カウンタギヤC4、3速メインギヤM3と噛合する3速カウンタギヤC3、2速メインギヤM2と噛合する2速カウンタギヤC2、1速メインギヤM1と噛合する1速カウンタギヤC1、アイドラギヤ15を介してリバースメインギヤMRと噛合するリバースカウンタギヤCR、6速メインギヤM6と噛合する6速カウンタギヤC6が設けられている。インプットカウンタギヤ14、4速カウンタギヤC4、3速カウンタギヤC3、2速カウンタギヤC2、1速カウンタギヤC1、及びリバースカウンタギヤCRは、カウンタシャフト12に一体回転可能に設けられ、6速カウンタギヤC6はカウンシャフト12に相対回転可能に設けられている。
第1シンクロ機構20は、アウトプットシャフト11に固定された第1ハブ21と、インプットメインギヤ13に固定されたインプットドグギヤ22と、4速メインギヤM4に固定された4速ドグギヤ23と、第1ハブ21に回転不能且つ軸方向に移動可能に取り付けられた第1スリーブ24と、第1スリーブ24と各ドグギヤ22,23との間にそれぞれ介装された一対のシンクロナイザリング(ブロックリング)SRとを備えている。第1スリーブ24の外周凹溝には、第1スリーブ24を軸方向に移動させる第1シフトフォークF1が係合されている。
第1スリーブ24が図中矢印A方向に移動してインプットドグギヤ22とスプライン噛合すると、動力伝達経路はインプットシャフト10からアウトプットシャフト11に直結となり、アウトプットシャフト11は5速相当で回転する。第1スリーブ24が図中矢印B方向に移動して4速ドグギヤ24とスプライン噛合すると、動力伝達経路はインプットメインギヤ13、インプットカウンタギヤ14、4速カウンタギヤC4、4速メインギヤM4となり、アウトプットシャフト11は4速相当で回転する。
第2シンクロ機構30は、アウトプットシャフト11に固定された第2ハブ31と、3速メインギヤM3に固定された3速ドグギヤ32と、2速メインギヤM2に固定された2速ドグギヤ33と、第2ハブ31に回転不能且つ軸方向に移動可能に取り付けられた第2スリーブ34と、第2スリーブ34と各ドグギヤ32,33との間にそれぞれ介装された一対のシンクロナイザリングSRとを備えている。第2スリーブ34の外周凹溝には、第2スリーブ34を軸方向に移動させる第2シフトフォークF2が係合されている。
第2スリーブ34が図中矢印A方向に移動して3速ドグギヤ32とスプライン噛合すると、動力伝達経路はインプットメインギヤ13、インプットカウンタギヤ14、3速カウンタギヤC3、3速メインギヤM3となり、アウトプットシャフト11は3速相当で回転する。第2スリーブ34が図中矢印B方向に移動して2速ドグギヤ34とスプライン噛合すると、動力伝達経路はインプットメインギヤ13、インプットカウンタギヤ14、2速カウンタギヤC2、2速メインギヤM2となり、アウトプットシャフト11は2速相当で回転する。
第3シンクロ機構40は、アウトプットシャフト11に固定された第3ハブ41と、1速メインギヤM1に固定された1速ドグギヤ42と、リバースメインギヤMRに固定されたリバースドグギヤ43と、第3ハブ41に回転不能且つ軸方向に移動可能に取り付けられた第3スリーブ44と、第3スリーブ44と各ドグギヤ42,43との間にそれぞれ介装された一対のシンクロナイザリングSRとを備えている。第3スリーブ44の外周凹溝には、第3スリーブ44を軸方向に移動させる第3シフトフォークF3が係合されている。
第3スリーブ44が図中矢印A方向に移動して1速ドグギヤ42とスプライン噛合すると、動力伝達経路はインプットメインギヤ13、インプットカウンタギヤ14、1速カウンタギヤC1、1速メインギヤM1となり、アウトプットシャフト11は1速相当で回転する。第3スリーブ44が図中矢印B方向に移動してリバースドグギヤ44とスプライン噛合すると、動力伝達経路はインプットメインギヤ13、インプットカウンタギヤ14、リバースカウンタギヤCR、アイドラギヤ15、リバースメインギヤMRとなり、アウトプットシャフト11は逆回転する。
第4シンクロ機構50は、カウンタシャフト12に固定された第4ハブ51と、6速カウンタギヤC6に固定された6速ドグギヤ52と、第4ハブ51に回転不能且つ軸方向に移動可能に取り付けられた第4スリーブ54と、第4スリーブ54と6速ドグギヤ52との間に介装されたシンクロナイザリングSRとを備えている。第4スリーブ54の外周凹溝には、第4スリーブ54を軸方向に移動させる第4シフトフォークF4が係合されている。
第4スリーブ54が図中矢印A方向に移動して6速ドグギヤ52とスプライン噛合すると、動力伝達経路はインプットメインギヤ13、インプットカウンタギヤ14、6速カウンタギヤC6、6速メインギヤM6となり、アウトプットシャフト11は6速相当で回転する。
本実施形態に係る機械式自動マニュアル変速機は、後述するシフト装置60により変速が行われる。
次に、図2〜4に基づいて、本実施形態のシフト装置60の詳細構成を説明する。
図2に示すように、シフト装置60は、互いに平行に延びる第1シフトシャフト61Aと、第2シフトシャフト61Bとを備えている。
第1シフトシャフト61Aの一端側には、変速段を1速又はリバースに選択的に切り替えるための第1シフトブロック62が連結されている。また、第1シフトシャフト61Aの他端側には、第3シフトフォークF3が固定されている。第1シフトシャフト61Aの第1シフトブロック62と第3シフトフォークF3との間には、第2シフトフォークF2が軸方向に移動可能に設けられている。この第2シフトフォークF2には、変速段を3速又は2速に選択的に切り替えるための第3シフトブロック64が連結されている。
第2シフトシャフト61Bの一端側には、第1シフトフォークF1が軸方向に移動可能に設けられている。この第1シフトフォークF1には、変速段を5速又は4速に選択的に切り替えるための第2シフトブロック63が連結されている。また、第2シフトシャフト61Bの後端側には、第4シフトフォークF4が固定されている。第2シフトシャフト61Bの第1シフトフォークF1と第4シフトフォークF4との間には、変速段を6速に切り替えるための第4シフトブロック65が連結されている。
図3に示すように、第1シフトレバー66及び、第2シフトレバー67は、略L字状に屈曲して形成されており、支持シャフト70に回転自在に軸支されている。第1シフトレバー66の一端部は、第1シフトブロック62の凹部に係合され、第2シフトレバー67の一端部は、第2シフトブロック63の凹部に係合されている。
第3シフトレバー68及び、第4シフトレバー69は、略L字状に屈曲して形成されており、支持シャフト71に回転自在に軸支されている。第3シフトレバー68の一端部は、第3シフトブロック64の凹部に係合され、第4シフトレバー69の一端部は、第4シフトブロック65の凹部に係合されている。
これら第1〜4シフトレバー66〜69は、運転室に設けられた操作レバー90の操作に応じて、各アクチュエータ72〜75により支持シャフト70,71を中心に回動されることで、各シフトブロック62〜65をシフト移動させる。
第1及び第2シフトレバー66,67は、第1セレクトアクチュエータ72によりセレクトされると共に、第1シフトアクチュエータ73によりシフト回動される。第3及び第4シフトレバー68,69は、第2セレクトアクチュエータ74によりセレクトされると共に、第2シフトアクチュエータ75により回動される。
第1、第2セレクトアクチュエータ72,74は、セレクト用モータ72A,74Aと、セレクト用モータ72A,74Aのモータギヤ72B,74Bと噛合するセレクトギヤ72C,74Cが設けられた筒体72D,74Dとを備えている。筒体72D,74Dの外周面には、セレクト用モータ72A,74Aの駆動により筒体72D,74Dが回動されると、各シフトレバー66〜69の他端部と選択的に係合される一対の突起部74E(筒体72Dの突起部は図示を省略)が設けられている。
第1、第2シフトアクチュエータ73,75は、シフト用モータ73A,75Aと、シフト用モータ73A,75Aの回転軸に連結されたボールネジ73B,75Bとを備えている。第1、第2シフトアクチュエータ73,75には、筒体72D,74Dのボールネジ73B,75Bに対する相対移動量(以下、シフトストローク量という)を検出するシフトストロークセンサ93(図4にのみ示す)が設けられている。シフトストロークセンサ93により検出されたシフトストローク量(移動位置情報の一例)は、スリーブ(24,34,44,54)の移動位置と対応しており、スリーブの位置を特定することができる。
各ボールネジ73B,75Bは、筒体72D,74Dに嵌挿されたナット部73C(図4にのみ示す)と螺合すると共に、その両端部をインターロックプレート73D,75Dによって支持されている。インターロックプレート73D,75Dには、筒体72D,74Dの突起部74Eをシフト方向にスライド移動可能に収容するガイド溝75E(インターロックプレート73Dのガイド溝は図示を省略)が設けられている。
シフト用モータ73A,75Aの駆動によりボールネジ73B,75Bが回転すると、シフトレバー66〜69が回動される。これにより、シフトブロック62〜65がシフト方向に移動され、ニュートラル位置から所定段へのギヤイン動作又は、所定段からニュートラル位置へのギヤ抜き動作が行われるように構成されている。ここで、シフトレバー66〜69、シフトブロック62〜65、及びシフトフォークF1〜F4が移動機構部に相当する。
セレクト用モータ72A,74Aと、シフト用モータ73A,75Aとは、変速機ECU100によって駆動が制御される。
次に、ニュートラル位置から4速への同期結合及びギヤイン動作の一例を説明する。他の変速段やリバースへの同期結合及びギヤイン動作も同様のため、詳細な説明は省略する。
操作レバー90がニュートラル位置から4速のセレクト位置まで操作されると、変速機ECU100がセレクト用モータ72Aを駆動して、第2シフトレバー67がセレクトされる。さらに、操作レバー90が4速のシフト位置まで操作されると、変速機ECU100がシフト用モータ73Aを駆動して、ボールネジ73Bの回転に伴い、第2シフトブロック63が第1シフトフォークF1と一体にシフト方向に移動を開始する。すなわち、図5に示すように、第1シフトフォークF1と係合する第1スリーブ24が、ニュートラル位置から4速ドグギヤ23に向けて移動を開始する。なお、図5中において、符号24Gは第1スリーブ24のスプライン歯、符号SGはシンクロナイザリングSRのシンクロ歯、符号23Gは4速ドグギヤ23のドグ歯をそれぞれ示している。
図6(A)に示すように、第1スリーブ24のシフト移動によりスプライン歯24GがシンクロナイザリングSRのシンクロ歯SGと接触すると、シンクロナイザリングSRに同期荷重が生じる(以下、各スリーブ24,34,44,54とシンクロナイザリングSRとが接触する時点を同期開始と称する)。このように、シンクロナイザリングSRに同期荷重が生じた状態が維持されて、結果として、第1スリーブ24と4速ドグギヤ23との回転が同期される。(以下、各スリーブ24,34,44,54と変速ギヤ(変速ギヤのドグギヤ)との回転が同期される時点を同期終了と称し、同期開始から同期終了までの間を同期中と称する)。
第1スリーブ24と4速ドグギヤ23との回転が同期されると、図6(B)に示すように、スプライン歯24Gがシンクロ歯SGを掻き分けることで、第1スリーブ24はシフト方向に向けて移動を再開する。
その後、図6(C)に示すようにスプライン歯24Gとドグ歯23Gとが噛合を開始し、さらに、図6(D)に示すように、スプライン歯24Gとドグ歯23Gとが完全に噛合されることで、4速のギヤイン動作が終了するようになっている。
変速機ECU100は、いわゆる電子制御ユニットであって、CPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。
図7は、本発明の一実施形態に係る変速機電子制御ユニット及び関連する構成を示す機能ブロック図である。
変速機ECU100は、タイミング検出部102と、同期位置記憶部101と、アクチュエータ制御手段及びアクセル開度判定手段の一例としてのモータ制御部103と、制限値記憶手段の一例としての制御値記憶部104とを一部の機能要素として有する。これら各機能要素は、本実施形態では一体のハードウェアである変速機ECU100に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
同期位置記憶部101は、各スリーブ(24,34,44,54)が移動してシンクロナイザリングSRと接触する位置に関する情報(接触位置情報)を記憶する。本実施形態では、各スリーブについて、各スリーブが接触する対象となるそれぞれのシンクロナイザリングSRとの接触位置情報を記憶する。本実施形態では、スリーブがシンクロナイザリングSRと接触した際におけるシフトストロークセンサ93により検出されているシフトストローク量を接触位置情報としている。したがって、スリーブを移動させた際に、シフトストロークセンサ93により検出されているシフトストローク量が、記憶しているシフトストローク量に近づくと、接触位置(すなわち、同期開始位置)に近づいていることがわかる。
制御値記憶部104は、同期中において、シフト用モータ73A,75Aの推力を制御するための制御値を記憶する。本実施形態では、各スリーブにより結合する各変速ギヤ(具体的には、各変速ギヤに対応するシンクロナイザリング)のそれぞれに対応する制御値を記憶している。本実施形態では、シフト用モータ73A,75Aに対する、同期中における、出力を上げる側の制御値の制限値を記憶する。この制限値は、同期中においては、この制限値を超えて、シフト用モータ73A,75Aの出力を上げる制御値を使用してはならないことを意味している。したがって、値が大きくなるほど出力が大きくなる制御値であれば、制限値は上限値であり、小さくなるほど出力が大きくなる制御値であれば、制限値は下限値である。
制限値は、この制限値で制御した場合に、同期対象のシンクロナイザリングSRの単位時間あたりの吸収エネルギーが所定値を超えないような制御値に設定されている。
ここで、シンクロナイザリングSRとスリーブとの回転数差と、シンクロナイザリングSRのイナーシャを考慮することにより、シンクロナイザリングSRの単位時間あたりの吸収エネルギーが所定値を超えないように制御する場合における、許容される最小の同期時間、許容される最大の押し付け荷重(モータの推力)、許容されるスリーブの移動速度等について把握することができる。したがって、許容される最小の同期時間、許容される最大の押し付け荷重、許容されるスリーブの移動速度を満たす範囲内の制御値(例えば、それらを満たす限界の制御値)を制限値とすることができる。
タイミング検出部102は、シンクロナイザリングSRと、スリーブとが接触する直前の時点(同期開始直前)となったことを検出する。本実施形態では、タイミング検出部102は、シフトストロークセンサ93のシフトストローク量と、同期位置記憶部101に記憶された接触位置情報とに基づいて、シンクロナイザリングと、スリーブとが接触する時点の直前であるか否かを判定する。
具体的には、タイミング検出部102は、シフトストロークセンサ93のシフトストローク量と、接触位置情報の値との差が所定値以内になった場合に、同期開始直前であると判定する。タイミング検出部102は、同期開始直前であると判定した場合には、同期開始直前である旨をモータ制御部103に通知する。また、タイミング検出部102は、シフトストロークセンサ93のシフトストローク量と、接触位置情報の値とが一致した場合には、同期開始であると判定し、同期開始である旨をモータ制御部103に通知する。
タイミング検出部102は、変速ギヤ(スリーブと結合させる対象のギヤ)とスリーブとの回転数差がなくなる直前の時点(同期終了直前)となったことを検出する。本実施形態では、タイミング検出部102は、インプットシャフト10の回転数と、アウトプットシャフト11の回転数とに基づいて、変速ギヤの回転数と、スリーブの回転数との回転数差を特定し、その回転数差が所定値以下となったか否かを判定し、回転数差が所定値以下となった場合に、スリーブとが接触する直前の時点(同期終了直前)であると検出する。タイミング検出部102は、同期終了直前であると判定した場合には、同期終了直前である旨をモータ制御部103に通知する。また、タイミング検出部102は、変速ギヤの回転数と、スリーブの回転数との回転数差がなくなった場合には、同期終了であると判定し、同期終了である旨をモータ制御部103に通知する。
モータ制御部103は、図示しないシフトポジションセンサから逐次操作レバー90の位置を取得しており、セレクト操作が行われた場合には、操作レバー90の位置に応じて、セレクト用モータ72A,74Aを駆動させて、その位置でシフト操作可能な変速段への変速に使用するシフトレバー(シフトレバー67〜69のいずれか)を回動可能な状態とする。
また、モータ制御部103は、図示しないシフトポジションセンサから逐次操作レバー90の位置を取得しており、操作レバー90により、シフト操作が行われた場合には、シフト用モータ73A,75Aを駆動させて、シフト操作の対象の変速段に対応するシフトレバーを回動させる以下に示す変速制御を行う。
モータ制御部103は、シフト操作が行われた直後には、比較的大きな推力を発生させるように、シフト用モータ73A,75Aを制御する。シフト用モータ73A,75Aの制御は、例えば、供給電流の制御である。
また、モータ制御部103は、タイミング検出部102から同期開始直前である旨の通知を受けた場合には、シンクロナイザリングSRと、スリーブとが接触するまでの間、シフト用モータ73A,75Aの推力を、直前の推力よりも低下させる。これにより、シンクロナイザリングSRとスリーブとの接触時における異音の発生を低減することができるとともに、シンクロナイザリングSRに与える衝撃を低減することができる。
また、モータ制御部103は、タイミング検出部102から同期開始である旨の通知を受けた場合、すなわち、同期中においては、シフト用モータ73A,75Aの推力を、上昇させる制御を行う。本実施形態では、モータ制御部103は、制御値記憶部104に記憶された制限値の範囲内の制御値に基づいて、シフト用モータ73A,75Aの推力を制御する。
例えば、モータ制御部103は、機械式自動マニュアル変速機を搭載した車両の図示しないアクセル開度センサから入力されるアクセル開度が所定の閾値以上であるか否かを判定し、所定の閾値以上である場合には、制御値記憶部104に記憶された制限値に基づいて、シフト用モータ73A,75Aの推力を制御する制限値制御を実行する一方、所定の閾値以上でない場合には、制御値記憶部104に記憶された制限値で制御するよりも同期時間が長くなる制御値に基づいて、シフト用モータ73A,75Aの推力を制御する長同期時間制御を実行する。なお、長同期時間制御における、シフト用モータ73A,75Aの推力は、制限値制御における推力よりも小さくなっている。この結果、アクセル開度が閾値以上であり、運転者が変速の早期完了を望んでいると考えられる状況においては、シンクロナイザリングSRへの負荷を一定以下に維持しつつ、早期に変速を完了させることができる一方、アクセル開度が閾値未満である状況においては、シンクロナイザリングSRへの負荷をより低減させることができる。
また、モータ制御部103は、同期終了直前である旨の通知を受けた場合に、変速ギヤとスリーブとの回転数差がなくなるまでの間、アクチュエータの推力を、直前の推力よりも低下させる。これにより、シンクロナイザリングSRと変速ギヤとの同期が終了する際における異音の発生を低減することができる。
ここで、同期終了直前から同期終了まで推力を低下させることによる効果について説明する。変速ギヤとスリーブとの同期が終了すると、同期中に発生していた同期荷重がなくなり、推力の全部がスリーブの前進に寄与することとなり、スリーブに加えられる力の状態が変化する。このため、推力を一定にしていると、スリーブに加えられる力の状態変化が急激となり、スリーブを急速に移動させようとして異音が発生してしまう。これに対して、本実施形態で示したように、同期終了直前から同期終了まで推力を低下させると、同期終了時におけるスリーブに加えられる力の状態変化を抑制することができ、スリーブの急激な移動を抑制し、異音の発生を低減することができる。
また、モータ制御部103は、タイミング検出部102から同期終了である旨の通知を受けた場合には、シフト用モータ73A,75Aの推力を、上昇させる。
次に、本発明の一実施形態に係る変速機ECU100による変速制御処理について説明する。
図8は、本発明の一実施形態に係る変速制御処理のフローチャートである。
変速制御処理は、例えば、変速機ECU100のモータ制御部103が、図示しないシフトポジションセンサからの操作レバー90の位置に基づいて、シフト操作を検出した場合に開始される。
モータ制御部103は、シフト用モータ73A,75Aに比較的大きな推力を発生させる制御(初期推力制御)を開始する(S11)。
初期推力制御が開始されると、タイミング検出部102は、同期開始直前となったか否かを検出し(S12)、同期開始直前となっていない場合(S12:NO)には、処理を繰り返し実行する。
一方、同期開始直前となったことを検出した場合(S12:YES)には、タイミング検出部102は、モータ制御部103に同期開始直前となった旨を通知し、通知を受けたモータ制御部103が、シフト用モータ73A,75Aに直前の推力(初期推力制御時の推力)よりも小さい推力を発生させる制御(同期前推力制御)を開始する(S13)。このように、シフト用モータ73A,75Aの推力を小さくするので、シンクロナイザリングSRとスリーブとの接触時における異音の発生を低減することができるとともに、シンクロナイザリングSRに与える衝撃を低減することができる。
次いで、タイミング検出部102は、同期開始となったか否かを検出し(S14)、同期開始となっていない場合(S14:NO)には、処理を繰り返し実行する。
一方、同期開始となったことを検出した場合(S14:YES)には、タイミング検出部102は、モータ制御部103に同期開始となった旨を通知し、通知を受けたモータ制御部103が、図示しないアクセル開度センサから入力されるアクセル開度が所定の閾値以上であるか否かを判定する(S15)。
この結果、アクセル開度が所定の閾値以上である場合(S15:YES)には、モータ制御部103が、制御値記憶部104に記憶された制限値に基づいて、シフト用モータ73A,75Aを制御する制限値制御を開始する(S16)。これにより、アクセル開度が閾値以上であり、運転者が変速の早期完了を望んでいると考えられる状況において、シンクロナイザリングSRへの負荷を一定以下に維持しつつ、早期に変速を完了させることができることとなる。
一方、アクセル開度が所定の閾値以上でない場合(S15:NO)には、モータ制御部103は、制御値記憶部104に記憶された制限値で制御するよりも同期時間が長くなる制御値に基づいて、シフト用モータ73A,75Aを制御する長同期時間制御を開始する(S17)。長同期時間制御におけるシフト用モータ73A,75Aの推力は、制限値制御における推力よりも小さくなっている。したがって、シンクロナイザリングSRへの負荷を低減させることができる。
ステップS16又はステップS17の制御が開始された後、タイミング検出部102は、同期終了直前となったか否かを検出し(S18)、同期終了直前となっていない場合(S18:NO)には、処理を繰り返し実行する。
一方、同期終了直前になったことを検出した場合(S18:YES)には、タイミング検出部102は、モータ制御部103に同期終了直前となった旨を通知し、通知を受けたモータ制御部103が、シフト用モータ73A,75Aに直前の推力(制限値制御及び長同期時間制御の推力)よりも小さい推力を発生させる制御(同期終了推力制御)を開始する(S19)。これにより、変速ギヤとスリーブとの同期が終了する際における異音の発生を低減することができる。
次いで、タイミング検出部102は、同期終了となったか否かを検出し(S20)、同期終了となっていない場合(S20:NO)には、処理を繰り返し実行する。
一方、同期終了になったことを検出した場合(S20:YES)には、タイミング検出部102は、モータ制御部103に同期終了となった旨を通知し、通知を受けたモータ制御部103が、スリーブと、変速ギヤのドグギヤとが完全に噛合うまで、シフト用モータ73A,75Aに直前の推力(同期終了推力制御時の推力)よりも大きい推力を発生させる制御(ギアイン時推力制御)を行い(S21)、変速制御処理を終了する。
次に、変速制御時における推力、スリーブの移動量、及びスリーブと変速ギヤとの回転数差の時間変化の一例について説明する。
図9は、本発明の一実施形態に係る変速制御時におけるアクチュエータの推力の時間変化の一例を示す図である。図10は、本発明の一実施形態に係る変速制御時におけるスリーブの移動量の時間変化の一例を示す図である。図11は、本発明の一実施形態に係る変速制御時におけるスリーブと変速ギヤとの回転数差の時間変化の一例を示す図である。
アクチュエータ(正確には、シフト用モータ73A,75A)の推力は、図9に示すように、時刻T0に変速制御が開始されると、一定の値で制御される。そして、同期開始直前の時刻T1にシフト用モータ73A,75Aの推力は、直前よりも小さい推力に制御される。これにより、シンクロナイザリングSRとスリーブとの接触時における異音の発生を低減することができるとともに、シンクロナイザリングSRに与える衝撃を低減することができる。
同期開始の時刻T2になると、シフト用モータ73A,75Aの推力は、直前よりも大きい推力に制御される。時刻T2において、アクセル開度が所定の閾値以上の場合には、制限値制御が開始される。制限値制御においては、制御値記憶部104に記憶されている制限値に基づいて制御が行われる。制限値制御が行われた場合には、同期終了直前の時刻T3にシフト用モータ73A,75Aの推力は、直前よりも小さい推力に制御される。これにより、シンクロナイザリングSRと変速ギヤとの同期が終了する際における異音の発生を低減することができる。
同期終了の時刻T4になると、シフト用モータ73A,75Aの推力は、直前よりも大きい推力に制御される。そして、時刻T5にスリーブが変速ギヤのドグギヤと完全に噛合う状態となる。
一方、時刻T2において、アクセル開度が所定の閾値以上でない場合には、長同期時間制御が開始される。長同期時間制御においては、制御値記憶部104に記憶された制限値で制御するよりも同期時間が長くなる制御値に基づいて制御が行われる。長同期時間制御におけるシフト用モータ73A,75Aの推力は、制限値制御における推力よりも小さくなっている。この結果、シンクロナイザリングSRへの負荷を制御値制御に比して低減させることができる。なお、長同期時間制御を行った場合には、同期時間は、制限値制御を行った場合に比して長くなる。長同期時間制御が行われた場合には、同期終了直前の時刻T6にシフト用モータ73A,75Aの推力は、直前よりも小さい推力に制御される。これにより、シンクロナイザリングSRと変速ギヤとの同期が終了する際における異音の発生を低減することができる。
同期終了の時刻T7になると、シフト用モータ73A,75Aの推力は、直前よりも大きい推力に制御される。そして、時刻T8にスリーブが変速ギヤのドグギヤと完全に噛合う状態となる。
スリーブは、図10に示すように、時刻T0に変速制御が開始されると、一定の速度で移動する。同期開始直前の時刻T1にシフト用モータ73A,75Aの推力が、直前よりも小さい推力に制御されるので、スリーブの移動速度は低下する。スリーブは、時刻T2にシンクロナイザリングSRと接触する。スリーブは、シンクロナイザリングSRと接触すると、同期が終了するまで、すなわち、制限値制御を行った場合には、時刻T4になるまで、長同期時間制御を行った場合には、時刻T7になるまで移動しない。同期が終了すると、スリーブは、変速ギヤのドグギヤと噛合うように移動し(ギヤインし)、制限値制御を行った場合には時刻T5に、長同期時間制御を行った場合には時刻T8に、変速ギヤのドグギヤと完全に噛合う位置に到達する。
スリーブと変速ギヤとの回転数差は、図11に示すように、時刻T0に変速制御が開始されても、スリーブがシンクロナイザリングSRと接触するまで、すなわち、時刻T2になるまで、変化しない。スリーブがシンクロナイザリングSRと接触すると、制限値制御を行った場合には、徐々に回転数差が少なくなり、時刻T4で回転数差がなくなる。時刻T4以降は、回転数差がない状態が維持される。
一方、長同期時間制御を行った場合には、徐々に回転数差が少なくなり、時刻T7で回転数差がなくなる。長同期時間制御を行った場合における同期中の回転数差の単位時間当たりの減少量は、制限値制御を行った場合に比して少なくなっている。すなわち、シンクロナイザリングSRに吸収されるエネルギー量が少ないことを意味しており、シンクロナイザリングSRに対する負荷が制限値制御に比して抑制されていることがわかる。なお、時刻T7以降は、回転数差がない状態が維持される。
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
例えば、上記実施形態では、スリーブの移動位置情報として、筒体72D,74Dのボールネジ73B,75Bに対するシフトストローク量を用いていたが、本発明はこれに限られず、例えば、シフト用モータ73A,75Aの回転量であってもよく、シフトレバーの回動量であってもよく、スリーブの軸方向の移動量であってもよく、要は、スリーブの位置を特定することができる情報であればよい。なお、これらの場合には、用いる移動位置情報を検出可能なセンサを変速機に備える必要がある。
また、上記実施形態では、入力回転数センサ91により検出された回転数と、出力回転数センサ92により検出された回転数とにより、変速ギヤの回転数と、スリーブの回転数との回転数差を特定していたが、本発明はこれに限られず、変速ギヤの回転数と、スリーブの回転数とをセンサにより直接検出するようにして、それら回転数により回転数差を特定してもよく、また、変速ギヤの回転数と、スリーブの回転数とを特定できる別の部位の回転数を用いて回転数差を特定してもよい。例えば、エンジン回転数センサにより検出されるエンジン回転数や、プロペラシャフトの回転数を用いてもよい。
また、上記実施形態では、スリーブを移動させるアクチュエータとしてモータを用いていたが、本発明はこれに限られず、油圧を用いたアクチュエータとしてもよい。