以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る造形装置10の一例を示す。図1(a)は、造形装置10の要部の構成の一例を示す。
本例において、造形装置10は、積層造形法により立体物50を造形する装置(立体物造形装置)である。この場合、積層造形法とは、例えば、複数の層を重ねて立体物50を造形する方法である。また、立体物50とは、例えば、三次元構造物のことである。
尚、以下の説明をする点を除き、造形装置10は、公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。また、造形装置10は、例えば、公知のインクジェットプリンタの構成の一部を変更した装置であってよい。例えば、造形装置10は、紫外線硬化型インク(UVインク)を用いる二次元画像印刷用のインクジェットプリンタの一部を変更した装置であってよい。また、造形装置10は、図示した構成以外にも、例えば、立体物50の造形や着色等に必要な各種構成を更に備えてよい。
本例において、造形装置10は、吐出ユニット12、主走査駆動部14、造形台16、副走査駆動部18、積層方向駆動部20及び制御部22を備える。吐出ユニット12は、立体物50の材料となる液滴(インク滴)を吐出する部分であり、所定の条件に応じて硬化するインクのインク滴を吐出し、硬化させることにより、立体物50を構成する各層を重ねて形成する。
また、本例では、インクとして、例えば、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インクを用いる。この場合、インクとは、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体のことである。また、インクジェットヘッドとは、例えば、インクジェット方式で液滴を吐出する吐出ヘッドのことである。また、吐出ユニット12は、紫外線光源により紫外線を照射することにより、紫外線硬化型インクの層を硬化させる。
また、立体物50の造形時において、吐出ユニット12は、立体物50の周囲にサポート層を形成してもよい。この場合、サポート層とは、例えば、造形中の立体物50の外周を囲むことで立体物50を支持する積層構造物であり、立体物50の造形完了後に、例えば水により溶解除去される。吐出ユニット12のより具体的な構成及び動作については、後に更に詳しく説明をする。
主走査駆動部14は、吐出ユニット12に主走査動作(Y走査)を行わせる駆動部である。この場合、吐出ユニット12に主走査動作を行わせるとは、例えば、吐出ユニット12が有するインクジェットヘッドに主走査動作を行わせることである。また、主走査動作とは、例えば、予め設定された主走査方向(図中のY方向)へ移動しつつインク滴を吐出する動作である。また、本例において、主走査駆動部14は、第1方向走査駆動部の一例である。この場合、第1方向走査駆動部とは、例えば、インク滴を吐出しながら予め設定された第1の方向へ造形台16に対して相対的に移動する第1方向走査をインクジェットヘッドに行わせる駆動部のことである。
また、本例において、主走査駆動部14は、キャリッジ102及びガイドレール104を有する。キャリッジ102は、造形台16と対向させて吐出ユニット12を保持する保持部である。この場合、造形台16と対向させて吐出ユニット12を保持するとは、例えば、インク滴の吐出方向が造形台16へ向かう方向になるように、吐出ユニット12を保持することである。また、主走査動作時において、キャリッジ102は、吐出ユニット12を保持した状態で、ガイドレール104に沿って移動する。ガイドレール104は、キャリッジ102の移動をガイドするレール状部材であり、主走査動作時において、制御部22の指示に応じて、キャリッジ102を移動させる。
尚、主走査動作における吐出ユニット12の移動は、立体物50に対する相対的な移動であってよい。そのため、造形装置10の構成の変形例においては、例えば、吐出ユニット12の位置を固定して、例えば造形台16を移動させることにより、立体物50の側を移動させてもよい。
造形台16は、造形中の立体物50を支持する台状部材であり、吐出ユニット12におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の立体物50を上面に載置する。本例において、造形台16は、少なくとも上面が上下方向(図中のZ方向)へ移動可能な構成を有しており、積層方向駆動部20に駆動されることにより、立体物50の造形の進行に合わせて、上面を移動させる。また、これにより、吐出ユニット12におけるインクジェットヘッドと造形台16との間の距離であるヘッド台間距離を適宜変化させ、造形途中の立体物50における被造形面と、吐出ユニット12との間の距離(ギャップ)を調整する。この場合、ヘッド台間距離とは、より具体的に、例えば、インクジェットヘッドにおいてノズルが形成されているノズル面と、造形台16の上面との間の距離であってよい。また、立体物50の被造形面とは、例えば、吐出ユニット12により次のインクの層が形成される面のことである。
副走査駆動部18は、吐出ユニット12に副走査動作(X走査)を行わせる駆動部である。この場合、吐出ユニット12に副走査動作を行わせるとは、例えば、吐出ユニット12が有するインクジェットヘッドに副走査動作を行わせることである。また、副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向(図中のX方向)へ造形台16に対して相対的に移動する動作である。また、本例において、副走査駆動部18は、第2方向走査駆動部の一例である。この場合、第2方向走査駆動部とは、例えば、第1の方向と直交する第2の方向へ造形台16に対して相対的にインクジェットヘッドを移動させる駆動部のことである。また、副走査方向は、第2の方向の一例である。副走査動作は、第2方向走査の一例である。
また、より具体的に、副走査駆動部18は、例えば、副走査方向における吐出ユニット12の位置を固定して、造形台16を移動させることにより、インクジェットヘッドに副走査動作を行わせる。また、副走査駆動部18は、副走査方向における造形台16の位置を固定して、吐出ユニット12を移動させることにより、インクジェットヘッドに副走査動作を行わせてもよい。
積層方向駆動部20は、主走査方向及び副走査方向と直交する積層方向(図中のZ方向)へ吐出ユニット12又は造形台16の少なくとも一方を移動させる駆動部である。この場合、積層方向とは、例えば、積層造形法において複数の層が積層される方向のことである。また、積層方向へ吐出ユニット12を移動させるとは、例えば、吐出ユニット12におけるインクジェットヘッドを積層方向へ移動させることである。積層方向へ造形台16を移動させるとは、例えば、造形台16における少なくとも上面の位置を移動させることである。また、積層方向駆動部20は、積層方向へ吐出ユニット12又は造形台16の少なくとも一方を移動させることにより、Z方向への走査(Z走査)をインクジェットヘッドに行わせ、ヘッド台間距離を変化させる。
より具体的に、図中に示した構成において、積層方向駆動部20は、例えば、積層方向における吐出ユニット12の位置を固定して、造形台16を移動させる。また、積層方向駆動部20は、積層方向における造形台16の位置を固定して、吐出ユニット12を移動させてもよい。
制御部22は、例えば造形装置10のCPUであり、造形装置10の各部を制御することにより、立体物50の造形の動作を制御する。制御部22は、例えば造形すべき立体物50の形状情報や、カラー画像情報等に基づき、造形装置10の各部を制御することが好ましい。本例によれば、立体物50を適切に造形できる。尚、立体物50を造形するより具体的な動作については、後に更に詳しく説明をする。
続いて、吐出ユニット12のより具体的な構成及び動作について、説明をする。図1(b)は、吐出ユニット12のより詳細な構成の一例を示す。本例において、吐出ユニット12は、複数の有色インク用ヘッド202y、202m、202c、202k(以下、有色インク用ヘッド202y〜kと記載する)、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、サポート材用ヘッド210、複数の紫外線光源220、及び平坦化ローラユニット222を有する。
有色インク用ヘッド202y〜k、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、及びサポート材用ヘッド210は、インクジェット方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。また、本例において、有色インク用ヘッド202y〜k、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、及びサポート材用ヘッド210は、例えば、紫外線硬化型インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドであり、副走査方向(X方向)における位置を揃えて、主走査方向(Y方向)へ並んで配設される。
尚、有色インク用ヘッド202y〜k、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、及びサポート材用ヘッド210としては、例えば、公知のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。また、これらのインクジェットヘッドは、造形台16と対向する面に、複数のノズルが副走査方向へ並ぶノズル列を有する。これにより、各インクジェットヘッドのノズルは、造形台16へ向かう方向へインク滴を吐出する。また、複数のノズルが並ぶノズル方向は、主走査方向と直交する方向になる。また、インクジェットヘッドの構成の変形例においては、主走査方向とノズル列方向とが直交以外の角度で交差する構成を用いること等も考えられる。
また、有色インク用ヘッド202y〜k、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、及びサポート材用ヘッド210の並び方については、図示した構成に限らず、様々に変更してもよい。例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらして配設してもよい。また、吐出ユニット12は、例えば、各色の淡色や、R(赤)G(緑)B(青)やオレンジ等の色用のインクジェットヘッド等を更に有してもよい。
有色インク用ヘッド202y〜kは、互いに異なる色の有色のインクのインク滴をそれぞれ吐出するインクジェットヘッドである。本例において、有色インク用ヘッド202y〜kは、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色の紫外線硬化型インクのインク滴を吐出する。また、本例において、有色インク用ヘッド202y〜kは、着色用のインク滴を吐出するインクジェットヘッドである着色用ヘッドの一例である。
造形材用ヘッド204は、立体物50の内部の造形に用いるインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドであり、例えば、立体物50において着色がされない領域の造形に用いるインクのインク滴を吐出する。本例において、造形材用ヘッド204は、所定の色の造形用インク(モデル材MO)のインク滴を吐出する。造形用インクは、例えば造形専用のインクであってよい。また、本例において、造形用インクは、CMYKインクの各色とは異なる色のインクである。造形用インクとしては、例えば、白色のインク又はクリアインク等を用いることも考えられる。
白インク用ヘッド206は、白色(W)のインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。また、クリアインク用ヘッド208は、クリアインクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。この場合、クリアインクとは、透明色(T)であるクリア色のインクである。
サポート材用ヘッド210は、サポート層の材料を含むインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。本例において、サポート層の材料としては、立体物50の造形後に水で溶解可能な水溶性の材料を用いることが好ましい。また、この場合、造形後に除去されるものであるため、立体物50を構成する材料よりも紫外線による硬化度が弱く、分解しやすいい材料を用いることが好ましい。また、サポート層の材料としては、例えば、サポート層用の公知の材料を好適に用いることができる。
複数の紫外線光源220は、紫外線照射部の一例であり、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発生する。紫外線光源220としては、例えば、UVLED(紫外LED)等を好適に用いることができる。また、紫外線光源220として、メタルハライドランプや水銀ランプ等を用いることも考えられる。
また、本例において、複数の紫外線光源220のそれぞれは、間に有色インク用ヘッド202y〜k、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、及びサポート材用ヘッド210を挟むように、吐出ユニット12における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。より具体的に、例えば、図中に符号UV1を付して示した一方の紫外線光源220は、吐出ユニット12の一端側に配設される。また、図中に符号UV2を付して示した一方の紫外線光源220は、吐出ユニット12の他端側に配設される。
平坦化ローラユニット222は、立体物50の造形中に形成される紫外線硬化型インクの層を平坦化するための構成である。本例において、平坦化ローラユニット222は、有色インク用ヘッド202y〜k、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、及びサポート材用ヘッド210の並びと、他方側の紫外線光源220(UV2)との間に配設される。これにより、平坦化ローラユニット222は、有色インク用ヘッド202y〜k、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、及びサポート材用ヘッド210の並びに対し、副走査方向の位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。
また、本例において、平坦化ローラユニット222は、平坦化ローラ302、ブレード304、及びインク回収部306を有する。平坦化ローラ302は、インクジェットヘッドにより形成されるインクの層を平坦化する平坦化手段の一例であり、例えば主走査動作時において、インクの層の表面と接触することでインクの層を平坦化する。また、ブレード304は、平坦化ローラ302が掻き取ったインクを平坦化ローラ302から引き剥がすブレード部材である。インク回収部306は、ブレード304が平坦化ローラ302から引き剥がしたインクを回収する回収部である。以上の構成により、吐出ユニット12は、制御部22の指示に応じて、立体物50を造形する動作を行う。
続いて、本例において立体物50を造形するより具体的な動作等について、更に詳しく説明をする。図2は、本例において立体物50を造形する動作の一例を示す。本例において、造形装置10は、例えば、立体物50の造形をマルチパス方式で行う。この場合、マルチパス方式で造形を行うとは、例えば、立体物50を構成するそれぞれのインクの層の形成をマルチパス方式で行うことである。また、それぞれのインクの層をマルチパス方式で形成するとは、例えば、一のインクの層を形成する動作において、造形中の立体物50の同じ位置に対して、インクジェットヘッドに複数回の主走査動作を行わせることである。また、同じ位置に対してインクジェットヘッドに複数回の主走査動作を行わせるとは、例えば、副走査動作を間に挟んで、インクジェットヘッドに複数回の主走査動作を行わせることである。
また、マルチパス方式でインクの層を形成する方法としては、より具体的に、例えば、2次元の画像を印刷する印刷装置(2Dプリンタ)においてマルチパス方式で印刷を行う場合と同一又は同様に行うことが考えられる。また、造形装置10で立体物を造形する場合、マルチパス方式でインクの層を形成する具体的な方法として、その他にも、様々な方法を用いることが考えられる。
ここでは、説明の便宜上、先ず、副走査動作における送り量を所定のパス幅に設定する方式(大ピッチパス方式)でマルチパス方式の動作を行う場合について、説明をする。この場合、副走査動作における送り量とは、1回の副走査動作におけるインクジェットヘッド(有色インク用ヘッド202y〜k等)の造形台16(図1参照)に対する相対移動量のことである。また、大ピッチパス方式以外のマルチパス方式の動作については、後に詳しく説明をする。
図2(a)は、立体物50を構成するインクの層を形成する動作の一例を示す。図2(a)においては、図示の便宜上、吐出ユニット12(図1参照)における複数のインクジェットヘッド(有色インク用ヘッド202y〜k、造形材用ヘッド204、白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、及びサポート材用ヘッド210)のうちのいずれかに対応するインクジェットヘッドをインクジェットヘッド200として示している。また、図示は省略したが、吐出ユニット12における他のインクジェットヘッドは、インクジェットヘッド200として示したインクジェットヘッドと共に造形台16に対して相対的に移動することにより、主走査動作及び副走査動作等を行う。
大ピッチパス方式でインクの層を形成する場合、一のインクの層を形成する動作において、インクの層の各位置に対し、主走査駆動部14(図1参照)は、予め設定された複数のパス数分の主走査動作をインクジェットヘッド200に行わせる。また、副走査駆動部18(図1参照)は、予め設定された回数の主走査動作が行われる毎に、所定のパス幅分だけ、造形台16に対して相対的にインクジェットヘッド200を移動させる。また、この場合、パス幅は、例えば、副走査方向におけるノズル列の長さをパス数で除した幅に設定される。ノズル列の長さとは、例えば、副走査動作を行うインクジェットヘッド200におけるノズル列の長さである。
また、図2(a)においては、パス数を4として、大ピッチパス方式でインクの層を形成する場合について、インクジェットヘッド200の動作の例を示している。また、説明をより簡略化するため、主走査方向の一方の向き(図中の右側)への主走査動作のみを行い、かつ、1回の主走査動作を行う毎に副走査動作を行う場合について図示を行った。この場合、各回の主走査動作を行った後、少なくとも次回の主走査動作を行う前に、主走査方向において主走査動作時と反対の向きへインクジェットヘッド200を移動させて、インクジェットヘッド200を元の位置に復帰させる。
より具体的に、この場合、例えば、先ず、副走査方向における位置を符号Aを付したインクジェットヘッド200の位置にして主走査動作を行うことにより、立体物50において矢印402aで示した領域に対し、主走査動作を行う。また、これにより、図中の領域404aに対し、1回目の主走査動作を行う。
また、その後、副走査動作を行い、副走査方向におけるインクジェットヘッド200の位置を符号Bを付したインクジェットヘッド200の位置に変更する。そして、この位置で主走査動作を行うことにより、立体物50において矢印402bで示した領域に対し、主走査動作を行う。また、これにより、領域404aに対する2回目の主走査動作と、領域404bに対する1回目の主走査動作とを行う。
また、その後、副走査動作を行い、副走査方向におけるインクジェットヘッド200の位置を符号Cを付したインクジェットヘッド200の位置に変更する。そして、この位置で主走査動作を行うことにより、立体物50において矢印402cで示した領域に対し、主走査動作を行う。また、これにより、領域404aに対する3回目の主走査動作と、領域404bに対する2回目の主走査動作と、領域404cに対する1回目の主走査動作とを行う。
また、その後、副走査動作を行い、副走査方向におけるインクジェットヘッド200の位置を符号Dを付したインクジェットヘッド200の位置に変更する。そして、この位置で主走査動作を行うことにより、立体物50において矢印402dで示した領域に対し、主走査動作を行う。また、これにより、領域404aに対する4回目の主走査動作と、領域404bに対する3回目の主走査動作と、領域404cに対する2回目の主走査動作と、領域404dに対する1回目の主走査動作とを行う。
以上の動作により、領域404aに対する4回の主走査動作が完了し、予め設定された厚さのインクの層が形成される。また、その後の主走査動作及び副走査動作を同様に繰り返すことにより、他の領域においても、同じ厚さのインクの層が形成される。
このように構成すれば、例えば、マルチパス方式による立体物50の造形を適切に行うことができる。また、この場合、例えば副走査方向における立体物50の幅がノズル列の長さよりも大きい場合等にも、シリアル方式でインクジェットヘッド200を駆動して、立体物を適切に造形することができる。
尚、この構成において、パス幅については、ノズル列の長さをパス数で除した幅と厳密に同一とする場合に限らず、ノズル列の長さをパス数で除した幅と実質的に等しい幅であってよい。この場合、実質的に等しい幅であるとは、例えば、動作の都合や各種の設計上の意図等により設定した調整分や、許容される誤差量等を除いて、パス幅と、ノズル列の長さをパス数で除した幅とが等しいことである。また、より具体的には、例えば、同じ位置への各回の主走査動作について、副走査方向におけるインク滴の着弾位置をノズルピッチ未満の範囲でずらす場合等において、このズレ量等を除いて両者を等しくする場合等が考えられる。
図2(b)は、同じ領域に対する各回の主走査動作で形成されるインクのトッドの並び方の一例を示す図であり、各回の主走査動作で副走査方向におけるインク滴の着弾位置をノズルピッチ未満の範囲でずらす場合について、インクのトッドの並び方の一例を示す。図中において、1パス記録と示した線は、1回目の主走査動作で主走査方向へ並べて形成されたインクのドットを示す。また、2パス記録と示した線は、2回目の主走査動作で主走査方向へ並べて形成されたインクのドットを示す。3パス記録と示した線は、3回目の主走査動作で主走査方向へ並べて形成されたインクのドットを示す。4パス記録と示した線は、4回目の主走査動作で主走査方向へ並べて形成されたインクのドットを示す。
このように構成すれば、例えば、副走査方向における造形の解像度について、一のノズル列中のノズルの間隔(ノズルピッチ)よりも高い解像度に設定することができる。また、これにより、高い解像度での造形を適切に行うことができる。
以上のように、本例によれば、例えば、主走査駆動部14によりインクジェットヘッド200に主走査動作を行わせ、副走査駆動部18により造形台16に対して相対的にインクジェットヘッド200を移動させることにより、立体物50を構成するそれぞれのインクの層(2次元スライス層)を適切に形成できる。また、この場合、図1を用いて説明をしたように、積層方向駆動部20によりインクジェットヘッド200と造形台16との間の距離を適宜変化させることにより、複数のインクの層を適切に重ねることができる。また、これにより、積層造形法で適切に立体物50を造形できる。
ここで、図2においては、上記のように、大ピッチパス方式でのマルチパス方式で一のインクの層を形成する場合の動作を示している。そして、この場合、一のインクの層を形成する間において、副走査動作におけるインクジェットヘッド200の相対移動の方向は、副走査方向における一方の向きに設定される。
しかし、本例においては、積層造形法により複数のインクの層を重ねて形成する。そして、この場合、副走査駆動部18は、副走査動作におけるインクジェットヘッド200の相対移動の向きについて、例えばインクの層毎に変更する。より具体的に、例えば、連続する2層のインクの層の形成時において、下のインクの層の形成時のインクジェットヘッド200の相対移動の向きを副走査方向における一方の向きにした場合、上のインクの層の形成時のインクジェットヘッド200の相対移動の向きを副走査方向における他方の向きにすることが考えられる。
このように構成した場合、副走査駆動部18によりインクジェットヘッド200を相対移動させる向きについて、一方の向きのみではなく、一方及び他方の向きの双方向にすることができる。また、これにより、例えば副走査方向におけるインクジェットヘッド200の相対移動について、初期位置へ復帰させる動作等に要する無駄な時間を省くことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、造形に要する時間を短縮し、造形速度を適切に高速化することができる。また、この場合、例えば、主走査動作時や副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動速度については、例えば従来の構成と同程度であってもよい。そのため、造形速度の高速化による造形の精度の低下も生じにくいと考えられる。
また、主走査動作及び副走査動作のより具体的な制御については、インクジェットヘッド200によりインク滴を吐出すべき位置を示す造形データに基づいて制御を行うことが好ましい。副走査動作時におけるインクジェットヘッド200の相対移動の向きや、このような具体的な制御等については、後に更に詳しく説明をする。また、副走査駆動部18の動作について、より一般化して示した場合、一部の主走査動作に続いて、副走査方向における一方の向きへ造形台16に対して相対的にインクジェットヘッド200を移動させ、かつ、他の少なくとも一部の主走査動作に続いて、副走査方向における他方の向きへ造形台16に対して相対的にインクジェットヘッド200を移動させる動作であるといえる。
また、図2(a)等においては、主走査動作について、説明をより簡略化するため、インクジェットヘッド200の移動の向きを一方の向きのみにする場合について説明を行った。しかし、以下において説明をする動作において、主走査動作の向きについては、主走査方向における一方及び他方の向きの双方向にしてもよい。この場合、主走査駆動部14は、インクジェットヘッド200に、主走査方向における一方の向きの主走査動作と、他方の向きの主走査動作とを行わせる。このように構成すれば、例えば、立体物50の造形をより高速に行うことができる。
続いて、マルチパス方式の動作について、更に詳しく説明をする。上記においては、マルチパス方式の動作の例として、大ピッチパス方式について、説明をした。しかし、マルチパス方式の動作としては、大ピッチパス方式以外の方式を用いることも考えられる。
図3及び図4は、マルチパス方式の動作を行う様々な方式について説明をする図であり、ノズル列の解像度が150dpiのインクジェットヘッド200を用いて、パス数を4として、600dpiの解像度(密度)でインクの層を形成する場合の動作の例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、造形装置10の構成及び動作は、図1及び図2を用いて説明をした場合と同一又は同様である。
図3(a)は、造形に用いるインクジェットヘッド200の構成の一例を示す。図示した構成において、インクジェットヘッド200は、副走査方向と平行なノズル列方向に複数のノズルが並ぶノズル列を有する。また、複数のノズルは、1/150インチの一定の間隔(ノズルピッチP)で並ぶ。そのため、ノズル列の長さは、(総ノズル数−1)×1/150インチになる。
図3(b)は、大ピッチパス方式のマルチパス方式でインクの層を形成する動作の一例を示す図である。上記においても説明をしたように、大ピッチパス方式とは、例えば、パス数をnとした場合に、副走査動作での送り量について、ノズル列の長さLhの1/n(=Lh/n)にする方式である。また、図3(b)においては、パス数を4とした場合について図示をしている。そのため、この場合、副走査動作での送り量は、ノズル列の長さLhの1/4(=Lh/4)になる
また、この図において、インクジェットヘッド200のノズル列を4等分した各領域の横に記した丸囲みの数字は、ノズル列中の各領域を区別するための数字である。また、インクジェットヘッド200の右側に示した図は、主走査動作と副走査動作とを繰り返す動作の一例を示す図であり、1回目の主走査動作(第1Pass)からN回目の主走査動作(第NPass)について、造形中の立体物の各領域と、その領域に対してインク滴を吐出するノズル列中の領域との関係を示している。この場合、ノズル列中の領域とは、上記の丸囲みの数字で区別して示した領域である。また、図の上側に記載した説明は、各回の主走査動作時やその前後に行う動作を示している。また、図の右側には、完了列長として、主走査動作を行った回数と、インクの層の形成が完了した領域の長さとの関係を示している。
図示のように動作を行うことにより、大ピッチパス方式のマルチパス方式でインクの層を適切に形成することができる。また、複数の層を積層して形成することにより、立体物を適切に造形することができる。また、図2に関連しても説明をしたように、大ピッチパス方式のマルチパス方式でインクの層を形成する場合、副走査駆動部18は、副走査動作におけるインクジェットヘッド200の相対移動の向きについて、例えばインクの層毎に変更する。
図4(a)は、小ピッチパス方式のマルチパス方式でインクの層を形成する動作の一例を示す図である。小ピッチパス方式とは、例えば、パス数をnとした場合に、副走査動作での送り量について、ノズル列の長さLhの1/n(=Lh/n)よりも小さくする方式である。また、小ピッチパス方式については、大ピッチパス方式のように副走査動作の送り量を一定にして一のインクの層を形成するのではなく、より小さな送り量の副走査動作を挟んだ主走査動作を所定のパス数分だけ行う動作と、その後にノズル列の長さに対応する所定の送り量での副走査動作とを繰り返すことで一のインクの層を形成する動作であるといえる。また、図4(a)においては、より具体的に、より小さな送り量の副走査動作を行う場合の送り量について、ノズルピッチPよりも小さく、かつ、P/nの整数倍にした場合の例を示している。
また、この図において、丸囲みの数字等の記号や、説明の文字等は、図3(b)と同一又は同様の事項を示している。図示のように動作を行うことにより、小ピッチパス方式のマルチパス方式でインクの層を適切に形成することができる。また、複数の層を積層して形成することにより、立体物を適切に造形することができる。また、この場合、完了列長の比較から分かるように、例えば、大ピッチパス方式で造形を行う場合と比べ、より少ない主走査動作の回数でインクの層を形成することができる。また、これにより、例えば、造形速度をより高速化することができる。
ここで、小ピッチパス方式について、より一般化して示した場合、予め設定された回数の主走査動作が行われる毎に、副走査駆動部18(図1参照)により、副走査方向におけるノズル列の長さをパス数で除した幅よりも小さな距離である副走査方向移動距離だけ、造形台16に対して相対的に副走査方向へインクジェットヘッドを移動させる方式であるといえる。また、この場合、副走査方向移動距離は、ノズル列中で隣接するノズル間の副走査方向における距離であるノズルピッチ副走査方向成分の整数倍と、ノズルピッチ副走査方向成分未満の距離とを足した距離であるといえる。ノズルピッチ第2方向成分の整数倍とは、例えば、ノズルピッチ副走査方向成分と、0以上の整数との積のことである。このように構成すれば、例えば、副走査方向における解像度について、ノズルピッチ副走査方向成分よりも小さな距離の対応する高い解像度を適切に実現することができる。
また、図4(a)においては、小ピッチパス方式の動作の一例として、造形しようとする立体物の幅(副走査方向における長さ)がノズル列の長さ(Lh)よりも大きい場合について、図示をしている。そのため、この場合、4回の主走査動作を行う毎に、ノズル列の長さLhと等しい距離を送り量とする副走査動作を行っている。また、より一般化して示した場合、例えば、ノズル列の長さLh分の領域に対してパス数分の主走査動作を行った後に、ノズル列の長さLhに対応する距離だけ、副走査方向へ造形台16に対して相対的にインクジェットヘッド200を移動させているといえる。また、この場合、インクジェットヘッド200の移動後、更に、パス数分の主走査動作を行う。このように構成すれば、例えば、立体物のサイズが大きい場合にも、立体物の造形を適切に行うことができる。
しかし、例えば立体物の幅がノズル列の長さLhよりも小さい場合、このような大きな距離の副走査動作を行うことなく、立体物の幅全体に対して同時にノズル列からインク滴を吐出することも考えられる。このように構成すれば、例えば、ライン型のインクジェットヘッドを用いる場合と同様にして、マルチパスでの造形を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、立体物の造形をより高速に行うことができる。
また、小ピッチパス方式の動作を行う場合、副走査動作におけるインクジェットヘッド200の相対移動の向きについては、例えば大ピッチパス方式の場合と同様に、インクの層毎に変えることが考えられる。特に、ノズル列の長さLhと等しい距離を送り量とする副走査動作については、インクジェットヘッド200の相対移動の向きについて、インクの層毎に変えることが好ましい。また、例えば、パス数分の主走査動作を行うための小さな送り量の副走査動作については、一のインクの層を形成する動作の中で、双方向で行ってもよい。
図4(b)は、全面順次パス方式のマルチパス方式でインクの層を形成する動作の一例を示す図である。全面順次パス方式とは、例えば、同じ回の主走査動作をインクの層の全面に対して順次行う方式である。また、この場合、同じ回の主走査動作とは、例えば、一のインクの層を形成する動作において、同じ位置に対して複数回行う主走査のうち、同じ回の主走査動作のことである。
また、この図において、丸囲みの数字等の記号や、説明の文字等は、図3(b)と同一又は同様の事項を示している。図示のように動作を行うことにより、全面順次パス方式のマルチパス方式でインクの層を適切に形成することができる。また、複数の層を積層して形成することにより、立体物を適切に造形することができる。また、この場合、完了列長の比較から分かるように、例えば、大ピッチパス方式で造形を行う場合と比べ、より少ない主走査動作の回数でインクの層を形成することができる。また、これにより、例えば、造形速度をより高速化することができる。
ここで、全面順次パス方式について、より一般化して示した場合、例えば、一のインクの層を形成する動作において、1回の主走査動作が行われる毎に、副走査駆動部18により、副走査方向におけるノズル列の長さ分の距離だけ、造形台16に対して相対的に副走査方向へインクジェットヘッド200を移動させる動作であるといえる。また、この場合、一のインクの層を形成すべき領域の全体に対し、例えば、1回目の主走査動作を行った後に、インクの層の各位置に対し、インクジェットヘッド200に2回目の主走査動作を行う。
また、この場合、副走査動作において副走査方向へインクジェットヘッド200を移動させる距離は、例えば、副走査方向におけるノズル列の長さと等しい距離である。また、パス数が3以上である場合、3回目以降の各回の主走査動作については、例えば、前回の主走査動作がインクの層の全体に対して行われた後に行う。このように構成すれば、全面順次パス方式での造形をより適切に行うことができる。
ここで、全面順次パス方式でインクの層を形成する場合、副走査駆動部18は、インクジェットヘッド200の相対移動の向きについて、例えば、一のインクの層を形成すべき領域の全体に対して同じ回の主走査動作を行う毎(パス毎)に変える。また、この場合、副走査動作において副走査方向へインクジェットヘッド200を移動させる距離は、副走査方向におけるノズル列の長さと実質的に等しい距離であってよい。
また、副走査駆動部18の動作に関し、1回の主走査動作が行われる毎にインクジェットヘッド200を相対移動させるとは、例えば、同じ回の主走査動作(例えば、1回目又は2回目等の主走査動作)を各位置に対して行う動作中にその回の主走査動作が行われる毎にインクジェットヘッド200を相対移動させることである。そのため、ある回(例えば1回目)の主走査動作を領域の全体に対して行った後に、次の回(例えば2回目)の主走査動作を開始するタイミングにおいては、その間に副走査方向へインクジェットヘッド200を相対移動させないことも考えられる。
以上のように、マルチパス方式の具体的な動作としては、様々な方式を用いることができる。また、本例においては、いずれの方式のマルチパス方式で造形を行う場合にも、副走査動作におけるインクジェットヘッド200の相対移動について、一方及び他方の向きの双方向で行っている。そこで、以下、副走査動作時におけるインクジェットヘッド200の相対移動の向きや、具体的な制御等については、更に詳しく説明をする。
図5及び図6は、双方向の副走査動作について更に詳しく説明をする図である。この場合、双方向の副走査動作とは、例えば、副走査動作時のインクジェットヘッド200の相対移動の向きを副走査方向における一方及び他方の向きの双方向にすることである。
図5(a)は、以下において説明をする動作で用いるインクジェットヘッド200の構成、及び、造形する立体物50の構成の一例を示す。このインクジェットヘッド200は、例えば、図1〜4を用いて説明をした各構成において用いるインクジェットヘッドと同一又は同様のインクジェットヘッドであってよい。
また、図示した場合において、インクジェットヘッド200におけるノズル列の長さLhは、64mmである。そのため、パス数を4回とした場合、ノズル列の長さをパス数で除した長さ(Lh/4)は、16mmになる。また、図示した場合において造形する立体物50は、逆さのカップ形状の立体物であり、開口部となる部分を下向きにした状態で、造形台16上に形成される。また、この場合、カップの内部になる領域には、サポート層が形成される。また、この場合、断面Aと示した位置は、図5(b)、図6(a)、(b)に示す造形断面に対応する位置である。また、この造形断面は、直径が120mmの円型状になっている。また、図5(b)、図6(a)、(b)は、副走査動作におけるインクジェットヘッド200の移動の向きを双方向にした場合の動作の例を示す図であり、大ピッチパス方式、小ピッチパス方式、及び全面順次パス方式のそれぞれでインクの層を形成する場合について、各回の主走査動作の後に行う副走査動作でのインクジェットヘッド200の移動の向きを示す。尚、以下の説明において、移動の向きとは、相対移動の向きのことであってよい。
より具体的に、例えば、図5(b)においては、大ピッチパス方式での動作に関し、連続する2つのインクの層を形成する動作について、それぞれのインクの層を形成する1〜11番目の主走査動作の合間に行う副走査動作の向きについて、数字を付した矢印で示している。また、この場合、それぞれのインクの層の形成する動作として、造形を制御する造形データの端と主走査動作の開始位置とを合わせて、複数回の主走査動作を行う。
例えば、一のインクの層の形成時において、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動方向を一方の向き(往路方向)に設定し、図3(b)を用いて説明をした場合と同一又は同様にして、インクの層を形成する。例えば、図示した場合においては、造形データの左端の位置から主走査動作を開始する。そして、各回の主走査動作を行う毎に、ノズル列の長さをパス数で除した距離である16mmだけ、副走査方向における一方の向き(図中の右側)へインクジェットヘッド200を移動させる。また、同様にして主走査動作と副走査動作とを繰り返し、11回の主走査動作を行うことで、1層目のインクの層が完成する。
また、その後、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動方向を他方の向き(復路方向)に設定し、図3(b)を用いて説明をした場合と同一又は同様にして、インクの層を形成する。この場合、造形データの右端の位置から主走査動作を開始する。また、この場合も、各回の主走査動作を行う毎に、16mmだけ、副走査方向における他方の向き(図中の左側)へインクジェットヘッド200を移動させる。また、これにより、例えば、11回の主走査動作を行うことで、2層目のインクの層が完成する。
ここで、大ピッチパス方式での動作を行う場合、上記においても説明をしたように、例えば、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動の向きについて、インクの層毎に反対にする。そのため、この場合、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動の向きについて、連続する2のインクの層の間で反対になるように設定することになる。
また、この場合、単に双方向で副走査動作を行うのみではなく、造形データの端(右端及び左端のそれぞれ)の位置から主走査動作を開始することにより、主走査動作を開始する走査初期位置について、例えば必要な主走査動作の回数を最小にするように、適切に設定できる。また、これにより、造形の速度をより適切に高速化することができる。
また、このような走査初期位置の設定について、より一般化して示した場合、例えば、一のインクの層の形成時に行う複数回の主走査動作のうち、少なくとも最初の主走査動作を行う場合にインクジェットヘッド200を配置する副走査方向における位置について、造形データに基づき、一のインクの層を形成するためにインク滴を吐出すべき位置の端に合わせて設定するといえる。また、このような動作は、例えば、副走査方向におけるインクジェットヘッド200の移動の向きが同じ向きに設定されている間に行われる複数回の主走査動作のうち、少なくとも最初の主走査動作を行う場合にインクジェットヘッド200を配置する副走査方向における位置について、造形データに基づき、一のインクの層を形成するためにインク滴を吐出すべき位置の端に合わせて設定する動作であると考えることもできる。
このように構成した場合、例えば、それぞれのインクの層毎に走査初期位置を設定して、インクの層を形成するために必要な主走査動作の回数を適切に低減することができる。また、これにより、例えば、インクの層を形成すべき領域に合わせて、複数回の主走査動作をより適切に行うことができる。そのため、このように構成すれば、双方向(往路及び復路)の副走査動作について、副走査方向における造形データの端部から造形動作を開始することにより、造形に要する時間を適切に短縮できる。また、これにより、例えば、造形の速度をより適切に高速化することができる。
尚、この構成は、副走査方向において、一方及び他方の向きでのインク滴の吐出開始位置(例えば所定の往路方向及び復路方向への各副走査動作における記録開始端)について、それぞれのインクの層に対応するデータの開始端(スライス層における往路、復路のそれぞれのデータの開始端)に合わせた構成である。また、走査初期位置について、一のインクの層を形成するためにインク滴を吐出すべき位置の端に合わせて設定するとは、例えば、インク滴を吐出すべき位置の端の位置が最初の主走査動作の走査範囲内になるように、走査初期位置を設定することである。
また、この場合、例えば、上記のように、インクの層を形成するために必要な主走査動作の回数が最小になるように、走査初期位置を設定することが好ましい。より具体的には、例えば、走査初期位置でのインクジェットヘッド200の端とインク滴を吐出すべき位置の端の位置が一致するように、走査初期位置を設定することが考えられる。この場合、走査初期位置でのインクジェットヘッド200の端とは、副走査方向への移動時に後方側になる端のことである。また、走査初期位置でのインクジェットヘッド200の端とインク滴を吐出すべき位置の端の位置については、所定の余裕分を開けて一致させてもよい。また、造形中の立体物50を支えるサポート層を立体物50の周囲に形成する場合、インク滴を吐出すべき位置の端とは、サポート層を形成する領域を含めて考えた場合の端とすることが好ましい。
また、図6(a)においては、小ピッチパス方式での動作に関し、同じ領域に対して連続して行うパス数(4回)分の主走査動作の合間に行う副走査動作の向きについて、数字を付した矢印で示している。この場合、一のインクの層の形成時には、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動方向を一方の向き(往路方向)に設定し、図4(a)を用いて説明をした場合と同一又は同様にして、インクの層を形成する。また、この場合も、それぞれのインクの層の形成は、造形を制御する造形データの端と主走査動作の開始位置とを合わせて行う。
より具体的に、この場合、造形データの左端の位置から主走査動作を開始して、間に小ピッチの副走査動作を挟みつつ、パス数分である4回の主走査動作を行う。そして、その後、ノズル列の長さ分の64mmだけ副走査方向における一方の向き(図中の右側)へインクジェットヘッド200を移動させる。また、図示した場合においては、このような動作を2回繰り返すことにより、ノズル列の長さの2倍の領域である128mmの範囲にインクの層を形成することができる。従って、この場合、上記の動作を2回行うことで1層目のインクの層が完成する。
また、その後、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動方向を他方の向き(復路方向)に設定し、図4(a)を用いて説明をした場合と同一又は同様にして、インクの層を形成する。また、この場合、造形データの右端の位置から主走査動作を開始する。
より具体的に、この場合、造形データの右端の位置から主走査動作を開始して、間に小ピッチの副走査動作を挟みつつ、パス数分である4回の主走査動作を行う。そして、その後、ノズル列の長さ分の64mmだけ副走査方向における他方の向き(図中の左側)へインクジェットヘッド200を移動させる。この場合も、1層目と同様に、上記の動作を2回行うことで2層目のインクの層が完成する。また、上記以外の点について、図6(a)に示した動作は、図5(b)に示した動作と同一又は同様に行ってよい。
このように構成すれば、例えば、小ピッチパス方式での造形を適切に行うことができる。また、この場合も、それぞれの向きでの副走査動作を行う場合について、造形データの端に合わせて走査初期位置を設定することにより、造形の速度を適切に高速化することができる。
また、図6(b)においては、全面順次パス方式での動作に関し、同じ領域に対して連続して行うパス数(4回)分の主走査動作の合間に行う副走査動作の向きについて、数字を付した矢印で示している。また、この場合、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動の向きについては、インクの層毎ではなく、全面に対して同じ回の主走査動作を行う毎(パス毎)に変化させる。また、この場合も、それぞれのインクの層の形成は、造形を制御する造形データの端と主走査動作の開始位置とを合わせて行う。
より具体的に、この場合、造形データの左端の位置から主走査動作を開始して、図4(b)を用いて説明をした場合と同一又は同様にして、インクの層の全面に対する1回目の主走査動作(1パス目)を行う。また、この場合、1回の主走査動作を行う毎に、ノズル列の長さ分の64mmだけ副走査方向における一方の向き(図中の右側)へインクジェットヘッド200を移動させる。また、図示した場合においては、この動作を2回繰り返すことにより、ノズル列の長さの2倍の領域である128mmの範囲に対し、1回目の主走査動作を行うことができる。また、これにより、インクの層の全面に対し、1回目の主走査動作が完了する。
また、その後、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動方向を他方の向き(復路方向)に設定し、インクの層の全面に対する2回目の主走査動作(2パス目)を行う。この場合、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動方向以外は1パス目と同一又は同様にして、各動作を行ってよい。これにより、インクの層の全面に対し、2回目の主走査動作が完了する。
また、その後、副走査動作時のインクジェットヘッド200の移動方向を順次反対にして、1パス目及び2パス目と同一又は同様の動作を行う。また、これにより、インクの層の全面に対し、3回目及び4回目の主走査動作(3パス目及び4パス目の動作)が完了する。また、上記以外の点について、図6(b)に示した動作は、図5(b)及び図6(a)に示した動作と同一又は同様に行ってよい。
このように構成すれば、例えば、全面順次パス方式での造形を適切に行うことができる。また、この場合も、それぞれの向きでの副走査動作を行う場合について、造形データの端に合わせて走査初期位置を設定することにより、造形の速度を適切に高速化することができる。
ここで、上記においても説明をした具体的なマルチパス方式のうち、大ピッチパス方式については、例えば、2次元の画像を印刷する印刷装置(2Dプリンタ)で広く行われているマルチパス方式と同一又は同様の方式と考えることができる。しかし、小ピッチパス方式や全面順次パス方式については、大ピッチパス方式と比べると、一般的な方式ではないといえる。そこで、以下、小ピッチパス方式及び全面順次パス方式の動作について、更に詳しく説明をする。
図7及び図8は、小ピッチパス方式の動作について更に詳しく説明をする図である。図7(a)は、インクジェットヘッド200の構成の一例を示す図である。図示したインクジェットヘッド200は、図3〜6を用いて説明をした構成におけるインクジェットヘッド200と同一又は同様の構成を有するインクジェットヘッドであり、複数のノズルが150dpiの解像度で並ぶノズル列を有する。
図7(b)及び図8は、小ピッチパス方式の動作について、1〜6回目の主走査動作(Y走査:第1パス記録〜第6パス記録)で形成するインクのドットの様子と、主走査動作の合間に行う副走査動作(X走査)との一例を示す。図7(b)及び図8においては、パス数を4回とした場合の動作の一例を示している。また、図示の便宜上、各回の主走査動作で形成するインクのドットについて、網掛け模様を異ならせて示している。また、図7(b)及び図8においては、パス数分の主走査動作を行うための小さな送り量の副走査動作について、一のインクの層を形成する動作の中で双方向で行う場合について図示している。
より具体的に、図示した場合においては、先ず、造形データの端の位置と走査初期位置とを合わせた状態から、1回目の主走査動作(第1パス記録)を行い、インクジェットヘッド200の各ノズルから必要な位置へインク滴を吐出する。また、これにより、立体物において既に形成済みのインクの層の上に、インクのドットを形成する。また、その後、送り量をノズルピッチの半分に設定して、図中の右側へインクジェットヘッド200を相対移動させる副走査動作を行う。
また、この副走査動作に続いて、2回目の主走査動作(第2パス記録)を行い、1回目の主走査動作で形成したインクのドットに対して副走査方向における位置をずらして、インクのドットを形成する。また、その後、送り量をノズルピッチの1/4に設定して、前回の副走査動作とは反対に、図中の左側へインクジェットヘッド200を相対移動させる副走査動作を行う。
また、この副走査動作に続いて、3回目の主走査動作(第3パス記録)を行い、1回目及び2回目の主走査動作で形成したインクのドットに対して副走査方向における位置をずらして、インクのドットを形成する。また、その後、送り量をノズルピッチの1/2に設定して、前回の副走査動作とは反対に、図中の右側へインクジェットヘッド200を相対移動させる副走査動作を行う。
また、この副走査動作に続いて、4回目の主走査動作(第4パス記録)を行い、1〜3回目の主走査動作で形成したインクのドットに対して副走査方向における位置をずらして、インクのドットを形成する。また、これにより、副走査方向における幅がノズル列の長さ分の領域について、パス数分の主走査動作が終了し、この領域を形成する動作が完了する。
そして、小ピッチパス方式においては、この領域を形成する動作が完了した後、次の領域に対する形成の動作を行う。より具体的に、4回目の主走査動作を行った後には、送り量をノズル列の長さと同じに設定して、副走査動作を行う。この場合、例えば、図示のように、図中の右側へインクジェットヘッド200を相対移動させる。
また、この副走査動作に続いて、5回目の主走査動作(第5パス記録)を行う。また、図示した場合において、この主走査動作は、この領域に対する最初の主走査動作である。そのため、5回目の主走査動作以降の動作については、副走査方向における位置以外は1回目の主走査動作以降と同一又は同様に行うことが考えられる。例えば、5回目の主走査動作の後には、例えば、送り量をノズルピッチの半分に設定して、図中の右側へインクジェットヘッド200を相対移動させる副走査動作を行う。
また、この副走査動作に続いて、副走査方向における位置以外は2回目の主走査動作以降と同一又は同様にして、6回目の主走査動作を行う。また、その後も、造形データがある範囲内で、上記の動作を繰り返す。
このように構成すれば、例えば、立体物を構成するそれぞれのインクの層について、小ピッチパス方式により適切に形成することができる。また、積層方向駆動部20(図1参照)により積層方向の位置を順次ずらして複数のインクの層を重ねて形成することにより、立体物を適切に形成することができる。
また、この場合、副走査動作におけるインクジェットヘッド200の移動の向きを双方向にすることにより、上記においても説明をしたように、立体物の造形速度を適切に高速化できる。また、この場合、より具体的には、例えば、送り量をノズル列の長さと同じに設定する副走査動作について、例えばインクの層毎に反対の向きにして、双方向にすることが好ましい。このよう構成すれば、例えば、立体物の造形速度を適切に高速化できる。
また、図から明らかなように、上記の動作においては、2回目の主走査動作で形成するインクのドットの副走査方向における位置について、1回目の主走査動作で形成したインクのドットのすぐ隣の位置ではなく、その後の主走査動作で形成されるインクのドットが形成される隙間を空けた位置にしている。これは、例えば1回目の主走査動作で形成したインクのドットのすぐ隣の位置に2回の主走査動作でインクのドットを形成した場合、副走査方向における一方側のみが既に形成されているインクのドットと接触する状態で、新たなインクのドットを形成することになるためである。この場合、例えば、形成されるインクのドットの形状について、対称性が崩れ、造形の精度に影響が生じるおそれもある。
これに対し、上記のようにしてインクのドットを形成した場合、2回目の主走査動作で形成するインクのドットについて、より対称性の高い形状で適切に形成することができる。また、この場合、3回目や4回目の主走査動作で形成するインクのドットについては、副走査方向における両側に既にインクのドットが形成されている状態で新たなインクのドットを形成することになるため、対称性が崩れることもない。そのため、このように構成すれば、例えば、より高い精度で立体物の造形を適切に行うことができる。
また、上記においては、小さい送り量での副走査動作を行う場合の送り量について、ノズルピッチの1/4又は1/2等として、ノズルピッチ未満にする場合について、説明をした。しかし、この場合の送り量については、ノズルピッチより大きくすることも考えられる。より具体的には、例えば、ノズルピッチの1/4又は1/2等のノズルピッチ未満の距離に対し、ノズルピッチの整数倍(例えば、1〜3倍程度)の距離を足した送り量を用いること等が考えられる。このように構成した場合も、小ピッチパス方式での動作を適切に行うことができる。また、この場合、それぞれのインクの層において、副走査方向において隣接するインクのドットを異なるノズルで形成することになる。そのため、例えば吐出特性に異常が生じている不良ノズル等が存在する場合にも、その影響を適切に低減することができる。
図9及び図10は、全面順次パス方式の動作について、一のインクの層を形成するために各位置に対して行う1〜4回目の主走査動作(Y走査:第1パス記録〜第4パス記録)で形成するインクのドットの様子と、主走査動作の合間に行う副走査動作(X走査)との一例を示す。また、この場合も、図7及び図8を用いて説明をした場合と同様に、パス数を4回とした場合の動作の一例を示している。また、図示の便宜上、各回の主走査動作で形成するインクのドットについて、網掛け模様を異ならせて示している。また、この場合も、図7(a)に示した構成のインクジェットヘッド200を用いる。
より具体的に、図示した場合においては、先ず、造形データの端の位置と走査初期位置とを合わせた状態から、1回目の主走査動作(第1パス記録)を行い、インクジェットヘッド200の各ノズルから必要な位置へインク滴を吐出する。また、これにより、立体物において既に形成済みのインクの層の上に、インクのドットを形成する。また、図9及び図10においては、図中の左側の端の領域から1回目の主走査動作を開始する場合を図示している。そのため、その後、送り量をノズル列の長さと同じに設定して、図中の右側へインクジェットヘッド200を相対移動させる副走査動作を行う。
また、この副走査動作に続いて、次の領域に対する1回目の主走査動作を行う。また、その後、インクの層を形成すべき領域の副走査方向における長さ(X方向の造形サイズ)に応じて、図中の右方向へのノズル列の長さ分の副走査動作と、主走査動作とを繰り返し、全面に対する1回目の主走査動作を行う。
続いて、図中の右側の端の領域から、2回目の主走査動作(第2パス記録)を開始する。この場合、造形データの端の位置と走査初期位置とを合わせた状態から、2回目の主走査動作を行い、1回目の主走査動作で形成したインクのドットの間に、インクのドットを形成する。その後、送り量をノズル列の長さと同じに設定して、図中の左側へインクジェットヘッド200を相対移動させる副走査動作を行う。
また、この副走査動作に続いて、次の領域に対する2回目の主走査動作を行う。また、その後、インクの層を形成すべき領域の副走査方向における長さに応じて、図中の左方向へのノズル列の長さ分の副走査動作と、主走査動作とを繰り返し、全面に対する2回目の主走査動作を行う。
続いて、図中の左側の端の領域から、3回目の主走査動作(第3パス記録)を開始する。この場合、造形データの端の位置と走査初期位置とを合わせた状態から、3回目の主走査動作を行い、1回目及び2回目の主走査動作で形成したインクのドットの間に、インクのドットを形成する。その後、送り量をノズル列の長さと同じに設定して、図中の右側へインクジェットヘッド200を相対移動させる副走査動作を行う。
また、この副走査動作に続いて、次の領域に対する3回目の主走査動作を行う。また、その後、インクの層を形成すべき領域の副走査方向における長さに応じて、図中の右方向へのノズル列の長さ分の副走査動作と、主走査動作とを繰り返し、全面に対する3回目の主走査動作を行う。
続いて、図中の右側の端の領域から、4回目の主走査動作(第4パス記録)を開始する。この場合、造形データの端の位置と走査初期位置とを合わせた状態から、4回目の主走査動作を行い、1〜3回目の主走査動作で形成したインクのドットの間(例えば、1回目及び4回目の主走査動作で形成したインクのドットの間)に、インクのドットを形成する。その後、送り量をノズル列の長さと同じに設定して、図中の左側へインクジェットヘッド200を相対移動させる副走査動作を行う。
また、この副走査動作に続いて、次の領域に対する4回目の主走査動作を行う。また、その後、インクの層を形成すべき領域の副走査方向における長さに応じて、図中の左方向へのノズル列の長さ分の副走査動作と、主走査動作とを繰り返し、全面に対する4回目の主走査動作を行う。
このように構成すれば、例えば、立体物を構成するそれぞれのインクの層について、全面順次パス方式により適切に形成することができる。また、積層方向駆動部20(図1参照)により積層方向の位置を順次ずらして複数のインクの層を重ねて形成することにより、立体物を適切に形成することができる。
また、この場合も、副走査動作におけるインクジェットヘッド200の移動の向きを双方向にすることにより、上記においても説明をしたように、立体物の造形速度を適切に高速化できる。また、2回目の主走査動作で形成するインクのドットの副走査方向における位置について、1回目の主走査動作で形成したインクのドットから離間した位置にすることにより、対称性の高いインクのドットを形成し、造形の精度を適切に高めることができる。
続いて、造形装置10の構成や動作の様々な変形例について、説明をする。上記においては、マルチパス方式における各回の主走査動作で形成するインクのドットに並びについて、主に、例えば図2を用いて説明をしたように、造形データ内で連続したライン状になる場合を説明した。しかし、各回に主走査動作で形成するインクのドットの並び方については、設定されたパス数(例えば4パス)で完成する様々な構成を用いることが考えられる。この場合、例えば、2次元の画像を印刷する印刷装置で用いられている各種の公知のマスク等を用いること等が考えられる。
また、上記において、説明をした各構成についても、様々な変形を行うことができる。例えば、上記において説明をした各構成のように、双方向の副走査動作を行う場合、副走査動作時のインクジェットヘッドの相対移動の向き(送り方向)を切り替えることにより、インクジェットヘッドの移動量に誤差が生じることも考えられる。また、その結果、造形の精度に差が生じるおそれもある。より具体的には、例えば、送り方向の向きを切り替えるタイミング等において、バックラッシにより精度のムラが生じること等が考えられる。
そのため、双方向の副走査動作を行う場合には、インクジェットヘッドを相対移動させる前に、一旦逆方向への移動を行い、その後に副走査動作を行うことが好ましい。この場合、例えば、いずれの方式で造形を行う場合にも、一方及び他方の向きの副走査動作(往路及び復路の副走査動作)のそれぞれを行う前に、一旦逆方向へインクジェットヘッドを相対移動(走査)させてから、一方又は他方の向きの副走査動作を行うことが好ましい。
また、このような構成について、より一般化して示した場合、副走査駆動部18(図1参照)の動作について、少なくとも一部の連続する2回の副走査動作の間において、2回のうちの後の回の副走査動作において造形台16(図1参照)に対して相対的にインクジェットヘッドを移動させる向きとは反対の向きへ、造形台16に対して相対的にインクジェットヘッドを一時的に移動させる動作であるといえる。このように構成すれば、バックラッシの影響等を適切に抑えることができる。また、これにより、より高い精度でより適切に立体物を造形できる。
尚、反対方向へインクジェットヘッドを移動させる距離については、例えば、バックラッシの影響を抑えるという目的に合わせて適宜設定することが好ましい。また、反対方向へインクジェットヘッドを移動させる距離については、例えば、次に行う副走査動作におけるインクジェットヘッドの移動量よりも少ない距離等に設定することが好ましい。また、次に行う副走査動作においては、反対方向へインクジェットヘッドを移動させた距離分も含めてインクジェットヘッドを移動させることが好ましい。この場合、例えば、図1〜10を用いて説明をした各構成における送り量に対し、反対方向へインクジェットヘッドを移動させた距離を加えた距離を送り量に設定することが考えられる。
また、インクジェットヘッドを反対の向きへ一時的に移動させる動作は、少なくとも、インクジェットヘッドの相対移動の向きを切り替えるタイミングにおいて、切り替え後の副走査動作を行う前に行うことが好ましい。また、インクジェットヘッドを反対の向きへ一時的に移動させる動作は、毎回の副走査動作時に行ってもよい。
また、バックラッシの影響は、副走査動作での送り量が小さい場合に特に問題になりやすい。そのため、例えば小ピッチパス方式を用いる場合において、小さな送り量での副走査動作を行う場合には、インクジェットヘッドを反対の向きへ一時的に移動させる動作を行うことが特に好ましい。このように構成すれば、ノズルピッチ未満の精度での副走査動作について、より高い精度でより適切に行うことができる。
また、双方向で副走査動作を行う場合、様々な要因により、副走査動作の向きを一方向のみにする場合と比べ、造形の精度が低下することも考えられる。例えば、有色インク用ヘッド202y〜k(図1参照)を用いて着色された立体物を造形する場合、副走査動作
の向きによって、インク滴の着弾の仕方に差が生じることも考えられる。また、その結果、表現される色に影響が生じるおそれがある。
そのため、双方向で副走査動作を行う場合においても、立体物の一部については、副走査動作の向きを一方の向きのみにして形成することも考えられる。また、この場合、より具体的には、例えば、立体物において着色をする領域(着色領域)の形成時に行う副走査動作の向きについて、一方の向きのみにすること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、より高い精度が求められる着色領域について、高い精度で適切に形成できる。また、この場合も、着色領域以外の部分(着色されない造形領域)等については双方向の副走査動作を行って形成することにより、全体での造形速度を適切に高速化できる。
また、このような構成について、より一般化して示した場合、例えば、一方及び他方の向きの副走査動作を行う構成について、一方の向きの副走査動作を間に挟んで主走査動作を行う場合、有色インク用ヘッド202y〜k及び造形材用ヘッド204(図1参照)の両方にインク滴を吐出させ、他方の向きの副走査動作を間に挟んで主走査動作を行う場合、有色インク用ヘッド202y〜k及び造形材用ヘッド204のうちの、造形材用ヘッド204のみにインク滴を吐出させる構成であるといえる。このように構成すれば、例えば、有色インク用ヘッド202y〜kにより吐出するインク滴の着弾位置の精度を適切に高めることができる。また、造形材用ヘッド204については、双方向の副走査動作いずれを行う場合にもインク滴を吐出させることにより、造形の速度を適切に高めることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、着色された立体物を造形する場合において、造形の速度をより適切に高速化することができる。
尚、図1に示した構成においては、有色インク用ヘッド202y〜k及び造形材用ヘッド204以外にも、更に多くのインクジェットヘッド(白インク用ヘッド206、クリアインク用ヘッド208、及びサポート材用ヘッド210)を用いている。これらのインクジェットヘッドについては、造形材用ヘッド204と同様に、双方向の副走査動作いずれを行う場合にもインク滴を吐出させることが好ましい。
また、図1等に関連をして説明をしたように、本例において、造形装置10は、主走査動作及び副走査動作に加え、インクの層の積層方向(Z方向)への走査を行う。また、より具体的に、積層方向への走査として、立体物50の造形の進行に合わせて、積層方向駆動部20(図1参照)により、造形台16の上面の位置を変化させる。そして、この場合、例えば、一のインクの層を形成する毎に、一のインクの層の厚さとして予め設定された厚さ分だけ、インクジェットヘッドと造形台との間の距離であるヘッド台間距離を大きくする。
また、本例においては、平坦化ローラユニット222における平坦化ローラ302(図1参照)を用いて、インクの層を平坦化する。この場合、インクの層を平坦化するとは、例えば、一のインクの層の厚さとして予め設定された厚さを超えた部分のインクを除去することである。また、より具体的には、例えば、平坦化ローラユニット222がインクジェットヘッドよりも後方側になる向きで行う主走査動作時において、予め設定されたインクの層の厚さの高さ(積層方向における位置)で、インクの層を平坦化する。そして、このような場合、ヘッド台間距離について、平坦化の動作を考慮して設定すること等も考えられる。
より具体的に、インクジェットヘッドを用いてインクの層を形成する場合、例えば、各回の主走査動作を行う毎に、その回の主走査動作で形成したインクのドットを硬化させることが考えられる。また、平坦化ローラ302により平坦化を行う場合、平坦化ローラ302は、一のインクの層を形成する動作の中で、硬化していないインクを掻き取ることにより、インクの表面を平坦化する。また、この場合、平坦化を行う主走査動作においては、先に行われた主走査動作で形成されたインクのドットが既に硬化している状態で、平坦化を行うことになる。しかし、この場合、平坦化の動作において、例えば平坦化ローラ302と、既に硬化しているインクのドットが接触すると、例えば硬化したインクが削られ、余分なカス等が発生するおそれがある。
そのため、ヘッド台間距離の設定においては、このような問題が生じないように設定することがより好ましい。そして、このような設定としては、例えば、一のインクの層を形成する動作において、平坦化を行う主走査動作を同じ領域に対して複数回行う場合について、平坦化を行う毎にヘッド台間距離を徐々に大きくすること等が考えられる。より具体的に、例えば、パス数を4としてインクの層を形成し、かつ、各回の主走査動作で平坦化を行う場合、最初の主走査動作(第1パス記録)時にインクのドットの高さを25μmにして平坦化を行う場合、ヘッド台間距離を25μmに設定する。また、次の主走査動作(第2パス記録)時には、ヘッド台間距離を少し広げ26μmにする。また、次の主走査動作(第3パス記録)時には、ヘッド台間距離を更に少し広げ27μmにする。また、次の主走査動作(第4パス記録)時には、ヘッド台間距離を更に少し広げ28μmにする。このように構成すれば、硬化したインクのドットに平坦化ローラ302が接触することを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、余分なカスの発生等を防ぎ、より適切に平坦化を行うことができる。また、このような構成については、例えば、一のインクの層をマルチパス方式で形成する場合において、後に行う主走査動作時では前に行った主走査動作時よりもインクの厚さ(インクのドットの高さ)が大きくなるように積層方向駆動部20による走査量(Z走査値)を変える構成と考えることもできる。
ここで、このようにしてヘッド台間距離を変化させる場合の動作について、更に詳しく説明をする。図11は、ヘッド台間距離を変化させる積層方向への走査について説明をする図である。図11(a)は、積層方向への走査の一例を示す。
図11(a)に示した場合においては、図2を用いて説明をした場合と同様に、主走査方向における一方の向きでのみ、主走査動作を行う。また、図中にキャリッジ戻りと示したタイミングでは、インク滴を吐出させずに、インクジェットヘッドを元の位置へ戻す移動のみを行う。
また、この場合、図1を用いて説明をしたように、吐出ユニット12における平坦化ローラユニット222(図1参照)により、主走査動作時にインクの層を平坦化する。より具体的に、図11(a)に示した場合においては、各回の主走査動作(1パス記録〜4パス記録)の動作と同時に、平坦化ローラユニット222による平坦化を行う。
これにより、主走査動作において、主走査駆動部14(図1参照)は、主走査方向における一方の向きへインクジェットヘッドを移動させる。また、一のインクの層を形成する動作において、造形中の立体物の同じ位置に対し、一方の向きへインクジェットヘッドを移動させる主走査動作を複数回行わせる。更に、平坦化ローラユニット222における平坦化ローラ302は、この一方の向きの主走査動作において、インクジェットヘッドと共に移動して、インクの層を平坦化する。また、一のインクの層が形成される毎に、積層方向駆動部20(図1参照)は、インクの層の厚さ分だけ、造形台16を下げる。これにより、積層方向駆動部20は、吐出ユニット12におけるインクジェットヘッドと造形台16との間の距離であるヘッド台間距離について、当該一のインクの層の形成開始前と比べて、インクの層の厚さ分だけ大きくする。
また、主走査動作時の造形台16の高さの設定については、更に、一のインクの層を形成する動作において、予め設定された回数の主走査動作を行う毎に造形台16を少し下げる動作(パス間段差方式の動作)を行う。また、これにより、一のインクの層を形成する動作の中で行う一方の向きの複数回の主走査動作のそれぞれにおいて、後で行う主走査動作時のヘッド台間距離を、先に行う主走査動作時のヘッド台間距離よりも大きくする。すなわち、本例においては、一のインクの層を形成するために複数回の主走査動作を行う間に、ヘッド台間距離について、段差をつけて、徐々に変化させる。
また、この場合、造形台16を少し下げる場合の移動量については、一のインクの層の厚さよりも小さくすることが好ましい。すなわち、一のインクの層を形成する動作の中で行う一方の向きの複数回の主走査動作に対して、副走査駆動部18は、ヘッド台間距離について、インクの層の厚さよりも小さな距離だけ互いに異ならせることが好ましい。より具体的に、図11(a)に示した場合において、副走査駆動部18は、1回の主走査動作が行われる毎に、次の回の主走査動作時のヘッド台間距離を2μmだけ大きく設定する。このように構成すれば、ヘッド台間距離の変化に適切に段差をつけて、徐々に変化させることができる。また、これにより、例えば、平坦化が可能な範囲内で、ヘッド台間距離をより適切に変化させることができる。
また、この場合、インク滴を吐出せずにインクジェットヘッドを移動させるタイミング(キャリッジ戻り時)では、インクジェットヘッドと造形台16との間の距離を大きく開けた状態(戻り時逃げの状態)で、インクジェットヘッドを移動させる。このように構成すれば、インクジェットヘッドと立体物との間の無用な接触等を適切に避けることができる。戻り時逃げの距離は、例えば150μm程度にすることが考えられる。
また、一のインクの層の形成が完了した後には、一のインクの層の厚さ分(例えば25μm)だけ造形台16を下げ、次のインクの層を形成する動作に合わせてヘッド台間距離を調整する。また、この場合、一のインクの層の厚さ分だけ造形台16を下げるとは、例えば、図中に示すように、各層の形成時に行う最初の主走査動作(1パス記録)を行う場合の造形台16の高さについて、一のインクの層の厚さ分だけ変化させることである。
このように構成した場合、例えば、一のインクの層を形成するための主走査動作時のヘッド台間距離について、例えば主走査動作を行う毎に徐々に大きくすることができる。そのため、例えば、平坦化の動作において、先の主走査動作時に形成されたインクのドットが平坦化ローラ302と接触することを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、余分なカスの発生等を防ぎ、より適切に平坦化を行うことができる。
また、この場合、カスの発生等を防ぐことにより、例えば、平坦化ローラ302へのインクの付着をより適切に防ぐことができる。より具体的には、例えば、平坦化手段として平坦化ローラ302を用い、平坦化ローラ302が掻き上げたインクをブレード304(図1参照)により除去する場合、余分なカスが発生すると、ブレード304にカスが溜まり、インクを適切に除去できなくなるおそれがある。これに対し、このように構成すれば、例えば、平坦化ローラ302やブレード304へのインクの付着を適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、平坦化により回収した余剰なインクの流れをより良好にし、インクの処理を安定化させることができる。また、インクの回収経路における詰り等を適切に防ぐこともできる。
また、先の主走査動作で形成したインクのドットと平坦化ローラ302とが接触した場合、例えば余計な振動等が生じて、平坦化の結果に影響が生じることも考えられる。例えば、平坦化ローラ302により平坦化を行う場合、平坦化ローラ302が振動すると、平坦化後のインクの表面に余分な凹凸等が生じるおそれがある。これに対し、このように構成した場合、例えば、このような凹凸の発生等を適切に防ぐこともできる。
また、この場合、主走査動作毎にヘッド台間距離を少しずつ変化させることにより、例えば、立体物の表面を滑らかにすることもできる。より具体的には、例えば、立体物の表面が緩斜面状の場合等においても、等高線状の目立つ段差等が発生することを防ぎ、表面を滑らかにした造形をより適切に行うことができる。
尚、主走査動作を行う毎に変化させるヘッド台間距離の変化量は、2μmに限らず、必要な精度や装置の構成等に応じて適宜設定することが好ましい。この変化量については、例えば、1層のインクの厚さや、1層内で同時に層形成をするために使用するインクの種類等に応じて設定することが好ましい。また、平坦化ローラ302と硬化したインクのドットとの接触を防ぎ、かつ、適切に平坦化を行うためには、主走査動作を行う毎に変化させるヘッド台間距離の変化量について、例えば、0.5〜5μm程度とすることが好ましい。
また、ヘッド台間距離を広げる動作は、必ずしも各回の主走査動作を行う毎に行わなくてもよい。この場合、例えば、予め設定された主走査動作を行う毎にヘッド台間距離を広げることが考えられる。例えば、平坦化を行う複数回の主走査動作のうち、少なくとも一部の複数回の主走査動作について、後で行う主走査動作時のヘッド台間距離を先に行うヘッド台間距離よりも大きくすることが考えられる。また、より具体的には、例えば、図11(a)を用いて説明をした場合と同様に、パス数を4回とする場合、2回目の主走査動作(2パス記録)を行った後にのみ、ヘッド台間距離を変化させてもよい。この場合、1回目及び2回目の主走査動作時には、ヘッド台間距離を同じにする。また、3回目及び4回目の主走査動作時には、ヘッド台間距離を同じにする。また、この場合、ヘッド台間距離について、例えば5μm程度等にすることが好ましい。
また、主走査動作の向きについては、主走査方向の一方の向きのみではなく、往路及び復路の双方向で行うことも考えられる。また、この場合、積層方向への走査等についても、主走査動作を行う向きに合わせて行うことが考えられる。
図11(b)は、積層方向への走査の他の例を示す図であり、双方向の主走査動作を行う場合の積層方向への走査の例を示す。尚、以下において説明をする点を除き、図11(b)に示した積層方向への走査は、図11(a)に示した積層方向への走査と同一又は同様である。
この場合、一のインクの層を形成する動作において、一方の向きへの複数回の主走査動作(例えば、図中の1パス記録、3パス記録に対応する主走査動作)について、造形台16の高さを同じにはせず、主走査動作を行う毎に造形台16を少し下げる動作を行う。この場合、一方の向きへの複数回の主走査動作とは、例えば、平坦化ローラユニット222の平坦化ローラ302により平坦化を行う主走査動作である。また、この場合も、他方の向きへの複数回の主走査動作(例えば、図中の2パス記録、4パス記録に対応する主走査動作)については、戻り時逃げの分だけ造形台16を下げた状態で、同じ高さで主走査動作を行ってよい。
このように構成した場合、例えば、主走査動作を双方向で行うことにより、立体物の造形をより高速に行うことができる。また、このように構成した場合も、一のインクの層を形成するための一方の向きの主走査動作時のヘッド台間距離について、例えば主走査動作を行う毎に徐々に大きくすることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、平坦化の動作において、先の主走査動作時に形成されたインクのドットが平坦化ローラ302と接触することを適切に防ぐことができる。また、これにより、インクの層を適切かつ十分に平坦化することができる。更には、この場合、他方の向きの主走査動作時には平坦化を行わず、ヘッド台間距離を同じ距離に設定することにより、例えば造形装置10の構成や制御を適切に簡略化することができる。
ここで、図1を用いて説明をした構成を用いる場合、上記のように、例えば、一方の向きへの主走査動作時にのみ平坦化を行う構成になる。しかし、造形装置10の構成及び動作の変形例においては、例えば、双方向の主走査動作を行い、かつ、一方の向きの主走査動作時のみではなく、他方の向きの主走査動作時にも平坦化を行ってもよい。この場合、例えば、主走査方向の一方側及び他方側に平坦化ローラユニット222を有する吐出ユニット12(図1参照)を用い、主走査動作時に後方側になる平坦化ローラユニット222の平坦化ローラ302により平坦化を行うことが考えられる。また、この場合、主走査動作時にインクジェットヘッドを移動させる向きによらず、主走査動作を行う毎に造形台16を下げ、ヘッド台間距離を徐々に大きくすることが好ましい。
このように構成した場合も、主走査動作を行う毎にヘッド台間距離を徐々に大きくすることにより、例えば、先の主走査動作時に形成されたインクのドットが平坦化ローラ302と接触することを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、余分なカスの発生等を防ぎ、より適切に平坦化を行うことができる。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。