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JP6541448B2 - 振動型駆動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、振動体と被駆動体とを加圧接触させて振動体に振動を励振させることによって振動体と被駆動体とを相対的に移動させる振動型駆動装置に関する。
圧電素子等に代表される電気−機械エネルギ変換素子を用いた振動型駆動装置は、弾性体に電気−機械エネルギ変換素子を接合してなる振動体と被駆動体との間に作用する摩擦力を利用して、振動体と被駆動体とを相対的に移動させる駆動を行う。そのため、低速域において高い推力又はトルクを発生することができ、応答性も高いことから、ギヤやベルト等の機械的伝達手段を用いることなく、精密機器の駆動源として用いることができる。また、振動型駆動装置は、電気−機械エネルギ変換素子への電源の非投入時には、振動体と被駆動体との間の摩擦による保持力又は保持トルクが発生するため、ブレ−キ等の制動手段を用いることなく、多くの民生機器や産業機器への適用が図られている。
振動型駆動装置として、金属等からなる弾性体に圧電素子を接合して振動体を形成し、振動体に特定の振動モードを励起するために、圧電素子へ交流電圧を印加するものがある。例えば、圧電素子に位相の異なる2つ以上の交流電圧を印加して、弾性体における被駆動体との加圧接触面に楕円運動を生じさせることにより、弾性体と被駆動体とを相対的に回転移動させ或いは直進移動させている。
一例として、特許文献1には、円環状の振動体を用いた振動型駆動装置が開示されており、共振先鋭度が大きな金属材料(例えば、ステンレス等の鉄鋼材)からなる弾性体を用いた円環状の振動体が開示されている。圧電素子に曲げ振動等の撓み振動を発生させるためには、圧電素子を構成する圧電体(圧電セラミックス)に電位差を生じさせる必要がある。そのため、特許文献1では、圧電素子のGND部(グランド部(接地部))と弾性体とを、ハンダ等の導電性材料からなる導電接合部によって電気的に接続して弾性体を接地することで、弾性体の導電性を利用して圧電素子のGND電位への接続を実現している。
特開2007−159211号公報
上記特許文献1に記載された振動体のように、弾性体に導電性材料が用いられている場合には、圧電素子の電極部と弾性体とを電気的に接続することができる。しかし、弾性体のコストを下げるために、大量生産が可能な射出成形技術を用いて弾性体を樹脂材料で形成する場合がある。また、耐摩耗性の向上を目的として、弾性体にエンジニアセラミックスを用いる場合がある。
弾性体が、絶縁性、誘電性又は半導電性の材料からなる場合には、弾性体を介してGND電位へ接続することができない。そこで、例えば、圧電体にスルーホールを設け、圧電体における弾性体との接合面に形成される電極をスルーホールを介して反対側の面に引き出す方法が考えられる。しかしながら、従来のスルーホールを用いた構成では、圧電素子が弾性体と接合された後には、スルーホール内での導通が十分か否かを確認することができないという問題がある。
本発明は、電気−機械エネルギ変換素子の電極をGND電位へ接続する導通路の導電性を容易に検査することができる技術を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、振動体と被駆動体を備える振動型駆動装置であって、前記振動体は、主成分が電気的に絶縁性、誘電性または半導電性の材料からなる弾性体と、前記弾性体と接合される電気−機械エネルギ変換素子と、を有し、前記電気−機械エネルギ変換素子は、圧電体と、前記圧電体において前記弾性体と接合される面に設けられた第1の電極と、前記圧電体を介して前記第1の電極と対向するように設けられた複数の第2の電極および複数の第3の電極と、前記圧電体に設けられた貫通孔または前記圧電体の側面に設けられた溝部に配置された導電体を有する複数の第1の導通路と、を有し、前記複数の第1の導通路によりそれぞれ個別に、前記第1の電極と前記複数の第3の電極のうちの一部とが電気的に接続されていることを特徴とする振動型駆動装置である。
本発明によれば、弾性体と電気−機械エネルギ変換素子とを接合させた後の貫通孔内の導通検査を直接的に、且つ、容易に行うことができる。その際に、貫通孔の面積を小さく取ることによって、電気−機械エネルギ変換素子の空間的な利用効率を高めて、小型化或いは高密度での実装が可能となる。
本発明の実施形態に係る振動型駆動装置の概略構成を示す断面図、部分拡大図、振動型駆動装置を構成する弾性体の概略構成を示す斜視図である。 図1に示す振動型駆動装置が備える圧電素子の第1の構成例と第2の構成例を示す平面図である。 図1に示す振動型駆動装置が備える圧電素子の第3の構成例を示す平面図である。 図2及び図3に示す圧電素子に対して印加される交流電圧の一例と、電極間の電位差の一例を示す図である。 図1に示す振動型駆動装置が備える圧電素子の第1の電極構造を示す部分断面図である。 図1に示す振動型駆動装置が備える圧電素子の第2の電極構造を示す部分断面図である。 図1に示す振動型駆動装置が備える圧電素子の第3の電極構造及びその変形例に係る部分断面図である。 図1に示す振動型駆動装置が備える圧電素子の第4の電極構造及びその変形例に係る部分断面図である。
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態に係る振動型駆動装置1の概略構成を示す断面図である。図1(b)は、図1(a)中に破線で示す領域Cの拡大断面図である。図1(c)は、振動型駆動装置1を構成する弾性体2の概略構成を示す斜視図である。振動型駆動装置1の構成について、便宜上、互いに直交するx方向、y方向及びz方向を図1(a)に示す通りに定める。
振動型駆動装置1は、弾性体2、被駆動体3、防振ゴム4、回り止め部材5、ハウジング6、支持部材7、フランジ8、出力軸9、予圧部材10、押圧部材11、コイルバネ12、転がり軸受13M,13N、締結部材14、不織布16及び圧電素子30を備える。
2つの転がり軸受13M,13Nはそれぞれ、内輪13aと、外輪13bと、内輪13aと外輪13bに圧接して挟持されるボール13cとを有しており、外輪13bは筒状のハウジング6の内周側に嵌合されており、内輪13aは出力軸9に嵌合されている。出力軸9の軸受13N側の側面には雄ネジ部が設けられ、この雄ネジ部が環状の予圧部材10の内孔に設けられた雌ネジ部と螺合することにより螺合部S2が形成されている。予圧部材10は、転がり軸受13M,13Nの内輪13aを互いにz方向に引き寄せるように予圧を与えている。こうして、2つの転がり軸受13M,13Nのボール13cの転がりによって、ハウジング6と出力軸9とは、一点鎖線で示す回転中心として、ガタなく滑らかに、相対的に移動させることができる。本実施形態では、支持部材7(又はハウジング6)は不図示の支持部材に固定され、出力軸9がハウジング6に対して回転移動するものとする。
出力軸9の一端には、ネジやボルト等の締結部材14によってフランジ8が取り付けられている。フランジ8には環状の防振ゴム4が貼り付けられており、防振ゴム4は、出力軸9に嵌合された円板環状の被駆動体3と摩擦接触している。防振ゴム4の摩擦係数は大きいため、被駆動体3とフランジ8とは、防振ゴム4を介して滑ることなく一体的に回転することができ、一方で、防振ゴム4によって被駆動体3からフランジ8への不要な振動の伝達を抑制することができる。
ハウジング6を囲むように、環状の弾性体2と環状の圧電素子30とからなる振動体が配置されている。ハウジング6の外周に回り止め部材5が固定されており、回り止め部材5の側面においてラジアル方向に突出した爪部5aが弾性体2に設けられた溝2aに挿入されることによって、弾性体2の周方向での回転が規制されている。
弾性体2の裏面2bには電気−機械エネルギ変換素子である圧電素子30が接着剤によって接合されており、弾性体2と圧電素子30により振動体が形成されている。圧電素子30には、圧電素子30に電圧を供給する配線を有するフレキシブル基板15が接着剤によって貼り付けられている。
振動体を被駆動体3に対してz方向に押圧し、弾性体2と被駆動体3とを加圧接触させるための環状の押圧部材11は、ハウジング6の側面に配置された環状の支持部材7に支持されている。支持部材7の内周側面には雌ネジ部が設けられ、この雌ネジ部がハウジング6の外周側面に設けられた雄ネジ部と螺合して螺合部S1が形成されることにより、支持部材7はz方向で位置決めされ、ハウジング6に固定される。
押圧部材11には、z方向に延出する複数の棒状の突起部11bが周方向に等間隔に設けられている。また、支持部材7には、突起部11bが挿入される孔部7bが設けられている。突起部11bと孔部7bは、押圧部材11をz方向にガイドするガイドの役割を担う。複数の突起部11bにはそれぞれコイルバネ12が挿入されており、支持部材7のz方向位置を調節することによってコイルバネ12の圧縮長を調整することができ、これにより被駆動体3に対する弾性体2の押圧力を調節することができる。押圧部材11とフレキシブル基板15との間には、緩衝材としての不織布16が配置されている。
なお、被駆動体3に対して弾性体2を押し付ける手段として、ここではコイルバネ12を用いているが、これに限定されず、バネ性を有する種々の部品、例えば、皿バネ、ウェーブワッシャ、バネ座金、板バネ等を用いることもできる。
次に、振動型駆動装置1の各構成部品に適用される材料について説明する。弾性体2の主成分となる材料としては、金属のような良導体ではなく、電気的に絶縁性、誘電性又は半導電性である材料、具体的には、高靭性セラミックス、エンジニアリングプラスチック、半導体等が挙げられる。本実施形態において、部材Aの主成分とは、その部材Aを構成している物質のうち、半分以上を占める材料を指し、単物質でなくてもよい。したがって、弾性体2の主成分が電気的に絶縁性、誘電性又は半導電性の材料である、とは、弾性体2を構成する材料のうち半分以上が、電気的に絶縁性、誘電性又は半導電性の材料のいずれか1つ又は複数であればよいことを意味する。また、電気的に絶縁性、誘電性又は半導電性の材料からなる、とは、不純物として他の物質を含有する場合を含む。
高靭性セラミックスの一例として、部分安定化ジルコニア(PSZ)がある。エンジニアリングプラスチックの一例として、30重量%程度の炭素繊維を含有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK−CF30)等の繊維強化プラスチック(FRP)がある。半導体の一例として、炭化ケイ素(SiC)が挙げられる。
弾性体2が電気的に絶縁性、誘電性又は半導電性の材料からなる場合、弾性体2を用いた接地(フレキシブル基板15の電極との導通)がより困難となるため、本発明の効果はより顕著となる。
被駆動体3は、弾性体2との摩擦摺動において安定した摺動特性と耐摩耗特性を有することが望ましく、例えば、マグネシウム系アルミ合金の表面をアルマイト処理したものや窒化処理によって硬質化したものを用いることができる。また、アルミナ(酸化アルミニウム)や窒化ケイ素(Si)等のエンジニアリングセラミックス、上述したPEEK−CF30等のエンジニアリングプラスチックや部分安定化ジルコニア等を用いることもできる。なお、弾性体2と被駆動体3との間の摩擦状態を良好とするために、別途、不図示の摩擦部材を弾性体2と被駆動体3の少なくとも一方の摺動面上に設けてもよい。
防振ゴム4には、例えば、ブチルゴムが用いられる。不織布16は、羊毛等のフェルトやグラスウール等からなるものを用いることができる。フレキシブル基板15は、ポリイミド(PI)フィルムベースに、銅箔によって電気回路を形成したものであり、電気回路の露出部位は、酸化抑制のためにメッキ処理(例えば、金メッキ)されていることが望ましい。コイルバネ12は、一般的なバネ鋼材からなるものを用いることができるが、部分安定化ジルコニアや窒化ケイ素等のエンジニアリングセラミックスからなるものを用いることもできる。なお、その他の構成要素には、金属や樹脂、セラミックス等から選択された材料が、適宜、用いられる。
次に、圧電素子30の構成例について説明する。圧電素子30は、圧電体の対向する一対の面(例えば、表裏面)に電極が形成された構造を有し、ここでは、圧電体は圧電セラミックスであるとして説明する。但し、圧電体は、圧電セラミックスに限定されるものではない。
図2(a),(b)は、圧電素子30の第1の構成例を示す平面図であり、図2(c),(d)は、圧電素子30の第2の構成例を示す平面図である。図3(a),(b)は、圧電素子30の第3の構成例を示す平面図である。ここでは、圧電素子30として、弾性体2の周方向に7波長(7λ)分の正弦波状の波を形成する面外変形モードの振動を励振させる構成を取り上げる。図4(a)〜(c)は、図2及び図3に示す圧電素子に対して印加される交流電圧の例を示す図であり、図4(d)は、圧電素子の電極間に生じる電位差の例を示す図である。
最初に、図2(a),(b)に示す第1の構成例に係る圧電素子30Aの構成について説明する。圧電素子30Aは、平板環状の圧電セラミックスの表面と裏面のそれぞれに電極が形成された構造を有する。圧電セラミックスには、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等が用いられる。
圧電素子30Aにおいて、圧電セラミックスの裏面には、間隙部39を挟んで電極31(第1の電極),31A(第4の電極)が形成されている。また、圧電セラミックスの表面には、間隙部55を挟んで電極32,33,34,35,36,37(第2の電極、第3の電極)が形成されている。これらの電極31,31A,32,33,34,35,36,37は、金属薄膜であって、圧電セラミックスに、銀(Ag)やニッケル(Ni)等の金属を蒸着や印刷する等の周知の技術を用いて形成することができる。
ここでは、電極31として、間隙部39(電極31の一端と別の一端との間の隙間となる領域)により開ループ構造を有するものを示している。但し、これに限定されず、電極31は、全周に亘って形成された閉ループ構造を有するもの(間隙部39を設けずに電極31Aを電極31と導通させたもの)であってもよい。また、1つの間隙部39を設けることにより電極31,31Aを導通させて、C型の開ループ構造が形成されるようにしてもよい。なお、本実施形態において、部材Aが開ループ構造を有するとは、部材Aが環構造を有さないことを意味する。また、この場合の環構造とは、円環状に限定されず、形状内で始点から一方向に移動した結果、再び始点を通過するような構造であれば、どのような形状でもあってもよい。
電極32,33,34,35,36,37は、隙間である間隙部55を挟んで、独立して形成されている。電極32,33は、間隙部55を含めて半波長(λ/2)に相当する弧長を有し、電極34,35,36,37は、間隙部55を含めて4分の1波長(λ/4)に相当する弧長を有する。圧電素子30Aの圧電セラミックスにおいて電極32,34,36に対応する領域は、z方向の正方向(電極32,34,36から電極31へ向かう方向)に分極されている。また、圧電素子30Aの圧電セラミックスにおいて電極33,35,37に対応する領域は、z方向の負方向(電極31から電極33,35,37へ向かう方向)に分極されている。
図2(a),(b)において、圧電素子30Aには、圧電セラミックスの表裏面に形成された電極を電気的に接続するために、圧電セラミックスを貫通するように3カ所に貫通孔38が設けられている。貫通孔38は、圧電素子30Aにおいて相対的に歪みが小さい内径側に設けることが好ましく、例えば、圧電素子30Aの内外径の中心円Dの内側に設けられる。但し、ピッチ円Dの外部に設けることも可能である。
貫通孔38は、可能な限り小さく形成されることが好ましく、具体的には、機械加工によって貫通孔38を設ける場合には、圧電セラミックスの厚さが0.5[mm]程度であれば、直径を1[mm]以下(例えば、直径が0.5[mm])とすることが望ましい。
3つの貫通孔38のうちの1つは、電極37と電極31Aに対して設けられており、残りの2つはそれぞれ、電極34,36と電極31に対して設けられている。電極31と電極34,36とは、共通電極109及び非駆動電極110に置き換えて図5を参照して後述する通り、貫通孔38に充填された導電体112を利用して電気的に接続される。同様に、電極37と電極31Aもまた、貫通孔38に充填された導電体112を利用して電気的に接続される。なお、貫通孔38を、円筒状の穴として圧電セラミックスの外形に対して精度良く形成することにより、貫通孔38を圧電セラミックスの表裏に設ける電極、間隙部55及び間隙部39の相対的な位置決め手段として用いることができる。
例えば、電極31と接続された電極34,36のいずれか1つと、電極31Aと接続された電極37をDC基準電位又はGND電位とする。そして、図4(a)に示すA相交流電圧17を電極32に印加し、A相交流電圧17に対して位相がπ/2[rad]だけ遅れたB相交流電圧18を電極33に印加する。これにより、弾性体2に進行波が形成され、弾性体2の先端部(被駆動体3との接触面)に楕円運動が生じることにより、被駆動体3を摩擦駆動して回転させることができる。また、A相交流電圧17を電極33に印加し、B相交流電圧18を電極32に印加することにより、被駆動体3の回転方向を反転させることができる。
電極35は、振動検出用の電極として用いられる。振動体の歪みの大きさに比例して発生する電極31と電極35との電位差を、電極31と接続された電極34,36のいずれかとの電位差として取得することにより、振動体の振動状態を検出することができる。
続いて、図2(c),(d)に示す第2の構成例に係る圧電素子30Bの構成について説明する。第2の構成例に係る圧電素子30Bは、上述した第1の構成例に係る圧電素子30Aとは、電極パターンのみが異なるため、この相違点についてのみ説明し、共通する説明を省略する。
圧電素子30Bでは、圧電セラミックスの裏面全体に電極31(第1の電極)が形成され、圧電セラミックスの表面には、間隙部55を挟んで、電極41,42,43,44,45,46,47,48(第2の電極、第3の電極)が形成されている。電極41〜48は、間隙部55を含めて、4分の1波長(λ/4)に相当する弧長を有する。圧電素子30Bの圧電セラミックスにおいて電極41〜48に対応する領域は、z方向の正方向に分極されているが、z方向の負方向に分極されていてもよい。
圧電素子30Bの内外径の中心円Dの内側において、電極45,48には貫通孔38が設けられている。電極31と電極45,48とは、共通電極109及び非駆動電極110に置き換えて後述する通り、貫通孔38に充填された導電体112を利用して電気的に接続される。圧電素子30Bでは、電極31を共通電極とし、図4(b)に示されるA(+)相交流電圧19を電極41に印加し、A(+)相交流電圧19に対して位相がπ/2[rad]だけ遅れたB(+)相交流電圧20を電極42に印加する。また、B(+)相交流電圧20に対して位相がπ/2[rad]だけ遅れたA(−)相交流電圧21を電極43に、A(−)相交流電圧21に対して位相がπ/2[rad]だけ遅れたB(−)相交流電圧22を電極44に印加する。これにより、弾性体2に進行波が形成され、弾性体2の先端部(被駆動体3との接触面)に楕円運動が生じることにより、被駆動体3を摩擦駆動して回転させることができる。なお、A(+)相交流電圧19とA(−)相交流電圧21とを印加する電極を入れ替えることにより、被駆動体3の回転方向を反転させることができる。
電極46,47は、振動検出用の電極として用いられる。振動体の歪みの大きさに比例して発生する電極31と電極46,47との電位差を電極31と接続された電極45,48のいずれかの電極との電位差として取得することにより、振動体の振動状態を検出することができる。電極46,47は、互いに空間的に4分の1波長(λ/4)分だけシフトしているため、電極31をDC基準電位又はGND電位に接続することで2つの電極46,47間の電位を取得することができ、こうして、振動体のより詳細な振動情報を得ることができる。
なお、圧電素子30Bでは、電極41〜48の全てについての領域で圧電セラミックスを同一方向に分極する構成について説明した。しかし、これに限られず、圧電セラミックスにおいて電極41,42,45,46に対応する領域と電極43,44,47,48に対応する領域とで、分極方向を逆にしてもよい。この場合、電極41,43には図4(a)に示すA相交流電圧17を、電極42,44には図4(a)に示すB相交流電圧18をそれぞれ印加することで、同様の進行波を形成することができる。また、圧電素子30Bでは、共通電極である電極31と接続された電極45,48のいずれかを不図示の電圧発生手段のGND電位に接続することが好ましい。これにより、電極31の電位を安定させ、振動検出用の電極46,47からの信号の精度を高めることができる。また、弾性体2が僅かに導電性を有する材料からなる場合でも、弾性体2とこれに接触する部位にGND電位に対する電位差の発生を抑制することができる。
続いて、図3(a),(b)に示す第3の構成例に係る圧電素子30Cの構成について説明する。圧電素子30Cは、扇形状の圧電セラミックスの裏面に共通電極としての電極31(第1の電極)が形成され、圧電セラミックスの表面に間隙部55を挟んで、電極41,42,43,44,49,50,51(第2の電極、第3の電極)が形成された構造を有する。電極41〜44,50は、間隙部55を含めて、4分の1波長(λ/4)に相当する弧長を有する。電極49,51は、間隙部55を含めて、8分の1波長(λ/8)に相当する弧長を有する。
圧電素子30Cの圧電セラミックスにおいて電極41〜44,49〜51に対応する領域は、z方向の正方向に分極されているが、z方向の負方向に分極されていてもよい。圧電素子30Cの内外径の中心円Dの内側において、電極49,51には貫通孔38が設けられている。電極31と電極49,51とは、共通電極109及び非駆動電極110に置き換えて後述する通り、貫通孔38に充填された導電体112を利用して電気的に接続され、例えば、GND電位に接続される。圧電素子30Cへの交流電圧の印加方法は、圧電素子30Bの場合と同じであるので、ここでの説明を省略する。
電極50は、振動検出用の電極である。振動体の歪みの大きさに比例する電位を取得することで、振動体の振動状態を検出することができる。圧電素子30Cは、圧電素子30Bと比較して、駆動に用いる電極41〜44の面積が6分の1となっている。そのため、A(+)相交流電圧19、B(+)相交流電圧20、A(−)相交流電圧21及びB(−)相交流電圧22の電位振幅を、適宜、大きく設定することが好ましい。また、複数の圧電素子30Cを弾性体2に接着することによって振動体を構成してもよい。更に、圧電セラミックスにおいて電極41,42に対応する領域と電極43,44に対応する領域とで、分極方向を逆にしてもよい。その場合には、電極41,43にA相交流電圧17を印加し、電極42,44にB相交流電圧18を印加することにより、同様の進行波を形成することができる。
ところで、上記説明では、圧電素子30Aについて、図4(a)に示されるA相交流電圧17を電極32に、B相交流電圧18を電極33にそれぞれ印加し、電極31,31A,34,36,37をGND電位(又は、DC基準電位)に接続するとした。しかし、これに限定されるものではなく、電極31,31A,34,36,37に駆動電圧として交番電圧を印加してもよい。
また、圧電素子30Aは、図4(c)に示すA相交流電圧23、A相交流電圧に対し位相がπ[rad]だけ遅れたB相交流電圧24、A相交流電圧に対し位相がπ/2[rad]だけ進んだC相交流電圧25によって駆動することもできる。この場合、電極32にA相交流電圧23を、電極33にB相交流電圧24を、電極34,36,37にC相交流電圧25をそれぞれ印加してもよい。この場合、電極34,36,37と導通している電極31,31Aは、電極32,33間の共通電極であると同時に、C相交流電圧25を印加するための駆動電極となる。この方法では、電極31,32間の電位差は図4(d)に示すA−C相交流電圧26で示され、電極31,33間に与えられる電位差は、図4(d)に示すB−C相交流電圧27で示される。こうして、A−C相交流電圧26とB−C相交流電圧27との位相差をπ/2[rad]とすることで、弾性体に進行波を形成することができる。
A相交流電圧23,B相交流電圧24,C相交流電圧25の中心電位と振幅が等しいときには、図4(d)に示すように、A−C相交流電圧26とB−C相交流電圧27の振幅は、理論上、A相交流電圧23の振幅の1/2倍となる。これにより、入力電圧に制限がある場合であっても、入力電圧を大きくすることなく、圧電素子30Aに生じる電位差を大きくして、振動振幅を大きくすることが可能となる。なお、A−C相交流電圧26とB−C相交流電圧27の位相差が90度となる正弦波の設定方法はこれに限定されず、A相交流電圧23、B相交流電圧24及びC相交流電圧25に複数の周波数成分を重畳させた任意波形を設定する方法を用いることもできる。
また、圧電素子30B,30Cにおいて、電極31は電極45,48を介してGND電位に接続されるとしたが、これに限定されず、電極31は電極45,48を介して時間変動のないDC基準電位に接続してもよい。更に、電極31にその他の任意の波形形状を有する交流電位に接続することも可能であり、その際、電極31は電極41,43間及び電極42,44間の共通電極として機能する。
貫通孔38の形状は、開口面形状が円形である必要はなく、電極31とそれに対向する電極に通じる導通路が形成されていればよい。例えば、導通路は、圧電セラミックスの側面(内周面や外周面)に、U字状、V字状或いは矩形状に切り欠いた溝部を設け、この溝に導電体を固着させることによって形成されていてもよい。
次に、圧電素子30A〜30Cにおいて、貫通孔38を用いて裏面側の電極31(,31A)を表面側の電極と導通させる方法について、図5乃至図8を参照して説明する。なお、図5乃至図8の説明では、圧電素子30A〜30Cを総称して、圧電素子30として説明する。また、圧電素子30A〜30Cにおいて、圧電セラミックスの裏面側に設けられた電極(図2(a),(c)及び図3(a)に示す電極)については、以下に説明する通りに「共通電極」と言い換える。更に、圧電素子30A〜30Cにおいて、圧電セラミックスの表面側に設けられた電極(図2(b),(d)及び図3(b)に示す電極)については、以下に説明する通りに「非駆動電極」及び「駆動電極」と言い換えることとする。
図5(a)は、圧電素子30の第1の電極構造を示す部分断面図である。圧電素子30は、圧電セラミックス等の圧電体30pの表裏面にそれぞれ電極が形成された構造を有する。圧電体30pにおいて不図示の弾性体2と接合される面(裏面)には、共通電極109(第1の電極)が設けられている。また、圧電体30pにおいて不図示のフレキシブル基板15が接合される面(表面)には、非駆動電極110(第3の電極)及び駆動電極111(第2の電極)が設けられている。
共通電極109は、圧電素子30A〜30Cが備える電極31に相当する。非駆動電極110は、圧電素子30A〜30Cが備える電極34,36,37,45,48,49,51に相当し、GND電位への接続に用いられる。駆動電極111は、圧電素子30A〜30Cが備える電極32,33,35,41,42,43,44,46,47,50に相当し、励振用又は振動検出用の電極として用いられる。共通電極109、非駆動電極110及び駆動電極111と圧電素子30A〜30Cが備える各電極との間のこのような関係は、図6乃至図8を参照して説明する電極構造でも同様である。
共通電極109は、周方向において途切れることなく連続している。貫通孔38は、共通電極109と非駆動電極110とを結ぶように2カ所に設けられており、非駆動電極110間に2つの駆動電極111が設けられている。2つの非駆動電極110の間に設けられる駆動電極111の数に制限はなく、3つ以上であってもよい。また、貫通孔38を有する非駆動電極110が、間隙部55を介して隣り合うように設けられていてもよい。
貫通孔38の内部には、銀(Ag)を含有するペースト材等の導電体112が充填されており、導電体112によって導通路(第1の導通路)が形成され、共通電極109と非駆動電極110とは電気的に接続されている。圧電素子30を弾性体2に接合する際に圧電素子30に亀裂等が生じないように、導電体112は、共通電極109よりもz方向の正方向(厚さ方向)に盛り上がっていないことが望ましい。
なお、貫通孔38を用いた導通路、共通電極109、非駆動電極110及び駆動電極111を形成する方法は、特に限定されるものではない。例えば、圧電体30pに貫通孔38を形成した後に、貫通孔38の内部への導電体112の充填と、共通電極109、非駆動電極110及び駆動電極111の形成とをペースト材を用いて同時に行うことができる。また、圧電体30pに貫通孔38を形成して貫通孔38の内部へ導電体112を充填した後に、共通電極109、非駆動電極110及び駆動電極111を形成してもよい。或いは、共通電極109、非駆動電極110及び駆動電極111を形成した後に、貫通孔38を形成して導電体112を充填してもよい。更に、これらの方法で貫通孔38を用いた導通路と、これに導通する検査用電極を形成し、検査用電極を用いて導通路の導通検査を後述の通りに行った後に検査用電極を除去し、再度、必要な電極を形成してもよい。この場合、導通が確認された少なくとも1つの導通路に対して共通電極109と非駆動電極110とを設けた構成とすることもできる。
フレキシブル基板15によって非駆動電極110をGND電位に接続することにより、2カ所に設けられた貫通孔38内の導電体112を介して共通電極109はGND電位に接続される。したがって、弾性体2が、例えば、絶縁体や半導体、絶縁体又は半導体に導電性材料を含有させた複合材料のいずれかで形成されているために電気抵抗が大きく導電体として機能しない場合でも、圧電素子30の共通電極109をGND電位に容易に接続することができる。また、圧電素子30を弾性体2へ接着剤等を用いて接合することにより共通電極109が被覆された後でも、2つの非駆動電極110(第3の電極)にテスタのプローブを直接当てることで、共通電極109と非駆動電極110との間の導通と電気抵抗を確認することができる。
更に、共通電極109と非駆動電極110との間の導通検査後に2つの導電体112の一方で導通不良が発生しても、他方の導電体112と非駆動電極110を介して共通電極109をGND電位に接続することができる。これにより、圧電素子30(振動体)の信頼性を向上させることができる。なお、導電体112が充填されて、共通電極109と非駆動電極110とを電気的に接続する貫通孔38は、2カ所以上設けられていればよく、2カ所に限定されない。
共通電極109と非駆動電極110との間の導通検査後には、露出した導電体112の剥がれ落ち等を防止するために、共通電極109側は、速やかに弾性体2との接合を行うか又はポリイミドシート等によって被覆することが望ましい。また、非駆動電極110側には、速やかにフレキシブル基板15を接合することが望ましい。このことは、図6乃至図8を参照して説明する電極構造でも同様である。
貫通孔38を共通電極109と非駆動電極110とを電気的に接続する導通路として用いるための構成は、貫通孔38の内部全体に導電体112が充填された構成に限定されない。図5(b),(c)は、図5(a)中の領域Fの拡大図に相当し、貫通孔38を導通路として用いることができる別の構成を示している。
図5(b)には、貫通孔38の内壁にのみ導電体112を形成して、共通電極109と非駆動電極110とを電気的に接続する構成が示されている。このとき、管状の形状を有する導電体112の内部は、空洞であってもよいし、接着剤等の絶縁性樹脂が充填されていてもよい。
図5(c)には、貫通孔38の内部に棒材又は線からなる固体導体114が挿入されており、固体導体114を用いて共通電極109と非駆動電極110とを電気的に接続する構成が示されている。この場合、固体導体114と貫通孔38の内壁との間に接着剤等の樹脂又は銀ペースト等を、導電体であるか非導電体であるかを問わずに充填することによって、固体導体114を固定することが望ましい。例えば、圧電体30pに貫通孔38を形成した後に共通電極109を形成し、続いて、共通電極109が形成面の反対側の面から固体導体114を貫通孔38に挿入して固定する。その後、非駆動電極110を形成することによって、図5(c)の構造を実現することができる。
図6は、圧電素子30の第2の電極構造を示す部分断面図である。図5の電極構造では共通電極109がループ状に形成されていることに対して、図6の電極構造は、共通電極109のループを切断する間隙部141を有する点で異なるが、その他の構成は同じである。よって、以下、この相違点についてのみ説明する。
間隙部141は、図2(a)に示す電極31と電極31Aとの間に設けられた間隙部39に相当する絶縁部である。間隙部141は、共通電極109を形成する際に予め所定の領域をマスクしておくことにより形成してもよいし、共通電極109をループ状に形成した後にその一部を研磨等の機械加工によって除去することによって形成してもよい。
間隙部141の一方の端Hは、ある駆動電極111の端Jよりもx方向の正方向に位置し、間隙部141の他方の端Iは、端Jとx方向で対向する駆動電極111の端Kよりもx方向の負方向に位置することが望ましい。つまり、間隙部141の幅寸法Wcと間隙部55の幅寸法Weとに“Wc≦We”の関係が成立し、且つ、z方向で見たときに間隙部141全体が間隙部55に収まっていることが望ましい。
間隙部141は、圧電素子30において電界形成に寄与しない部位である。よって、間隙部141をz方向において間隙部55と対向する位置に設けると共に、間隙部141の幅寸法Wcを間隙部55の幅寸法Weよりも狭くすることにより、間隙部141による電界分布の変化を低減し、励振性能の低下を最小限に抑えることができる。
間隙部141と貫通孔38とを併用することにより、貫通孔38を基準として間隙部141と間隙部55との相対的な位置合わせを行うことができ、例えば、高精度の円形状の貫通孔38を形成することにより、より精密な位置決めを行うことができる。即ち、図2(a)の構成のように、貫通孔38を設けた後に、貫通孔38を基準として共通電極109を形成し、これと同様に、貫通孔38を基準として間隙部55が配置されるように非駆動電極110と駆動電極111を形成する。
間隙部141の位置と幅は、図6に示した形態に限定されない。即ち、z方向で見たときに間隙部141と間隙部55とが一部で重なる形態又は全く重ならない形態や、間隙部141の幅寸法Wcと間隙部55の幅寸法Weとの関係が“Wc>We”となっていても、貫通孔38の機能には影響が及ばない。
図7(a)は、圧電素子30の第3の電極構造を示す部分断面図である。図7(a)の電極構造は、図6の電極構造において共通電極109に対して設けられた間隙部141が、2つの間隙部172,173の間に電極171が設けられた構成に変更されている点で図6の電極構造と異なるが、その他の構成は同じである。よって、以下、この相違点についてのみ説明する。
共通電極109は、間隙部172,173及び電極171を除いて、円環状の圧電体30pの全周に亘って形成されている。間隙部172,173は、上述した間隙部141と同様の方法で形成することができ、電極171は共通電極109と同時に形成することができる。電極171は、換言すれば、共通電極109を間隙部172,173により分断した後の電極の1つである。
間隙部172の共通電極109側の端Hは、ある駆動電極111の端Jよりもx方向の正方向に位置し、間隙部173の共通電極109側の端Iは、端Jと対向する駆動電極111の端Kよりもx方向の負方向に位置することが望ましい。つまり、間隙部172,173と電極171を含めた領域の幅寸法Wcと間隙部55の幅寸法Weとに“Wc≦We”の関係が成立し、且つ、z方向で見たときに間隙部172,173と電極171を含めた領域が間隙部55に収まっていることが望ましい。
2つの間隙部172,173を設けることにより、共通電極109が開ループを形成しているかを判別するための検査を容易に行うことができる。つまり、2つの間隙部172,173と電極171の領域の幅寸法Wcは間隙部55の幅寸法Weよりも短いことが望ましいため、幅寸法Weが短くなるにしたがって間隙部172,173の幅も狭くなる。このとき、2つの間隙部172,173を形成する際の形成精度によっては、共通電極109が電極171を介して接続することにより閉ループを形成してしまうおそれがある。これに対して、共通電極109と電極171にテスタのプローブを直接当てることで、共通電極109が開ループとなっているか否かを容易に検査することができる。
間隙部172,173間にある電極171の電位は不定となるため、突発的な放電を避ける等の安全面から、電極171の全面を弾性体2によって被覆するか、貫通孔38を用いない方法でGND電位に接続することが望ましい。電極171を貫通孔38を用いずにGND電位に接地する方法としては、例えば、電極171と弾性体2との間に薄膜状の金属を挟み、この薄膜状の金属をGND電位に接続する方法がある。また、電極171と電気的に接続可能な導通路を弾性体2に局所的に設ける方法を用いることもできる。
共通電極109が開ループを形成していることが確認された後には、確実に共通電極109と電極171とを絶縁している間隙部172,173の一方を残して、他方にペースト状の導電材料等を塗布することにより、間隙部を1つだけとしてもよい。これによって、電極171が電位不定となる状況をなくすことができる。この方法は、後述する図8(a),(b)に示す構成についても、同様に適用することができる。
図7(a)の電極構造は、図7(b)に示す電極構造に変形することができる。即ち、間隙部172,173及び電極171の領域を非駆動電極110とz方向において対向する位置に設け、且つ、この非駆動電極110を貫通孔38に充填された導電体112によって共通電極109と電気的に接続した構成としてもよい。
この場合、非駆動電極110の幅寸法Wgと間隙部55の幅寸法Weとの和(=We+Wg)で示される領域とz方向で対向する範囲内に間隙部172,173及び電極171を形成すればよい。即ち、間隙部172,173及び電極171を含む領域を、励振用又は振動検出用に用いる駆動電極111に対向する位置を避けるように配置する。これにより、間隙部172,173を形成する際の寸法精度における誤差許容値を拡大させることができ、また、間隙部172,173及び電極171を含む領域が駆動のための電界形成に寄与しないことによる励振性能の低下を最小限に抑えることができる。
図8(a)は、圧電素子30の第4の電極構造を示す部分断面図である。図8(a)の電極構造と図6の電極構造との相違点の1つは、図6に示す共通電極109に対して設けられた間隙部141が、図8(a)では、絶縁部である2つの間隙部182,183の間に電極181(第4の電極)が設けられた構成に変更されている点である。また、図8(a)の電極構造と図6の電極構造との相違点の別の1つは、貫通孔38に充填された導電体112によって導通路(第2の導通路)が形成され、電極181と非駆動電極110(第3の電極)とが電気的に接続されている点である。よって、以下、これらの相違点についてのみ説明する。なお、電極181は、例えば、図2(a)に示した圧電素子30Aの電極31Aに対応する。
共通電極109は、間隙部182,183及び電極181を除く、円環状の圧電体30pの全周に亘って形成されている。間隙部182,183は、上述した間隙部141と同様の方法で形成することができ、電極181は共通電極109と同時に形成することができる。
間隙部182の共通電極109側の端Hは、ある駆動電極111の端Jよりもx方向の正方向にあることが望ましい。また、間隙部182,183及び電極181は、励振のための電界形成に寄与しない非駆動電極110及び間隙部55が形成されている領域とz方向において対向する領域に設けられることが望ましい。
2つの間隙部182,183の間に電極181を設ける構成は、上述した2つの間隙部172,173の間に電極171を設ける構成と同様の機能を有している。よって、図8(a)に示す電極構造もまた、図7(a)に示す電極構造と同じ効果を奏する。また、電極181は非駆動電極110と電気的に接続されてGND電位に維持されるため、電極181が不定電位となることはない。
ここで、電位不定電極では、圧電素子30の内部応力の変化に伴って電位が変動することによる逆圧電効果によって、見掛け上の剛性が変化する。部分的な剛性の変化によって振動体に生じる進行波を形成する2つの振動モードの共振周波数が異なってくることにより、振動型駆動装置の性能低下が生じる。これに対して、電極181をGND電位に維持することによって、この問題を回避することができる。
図8(a)の電極構造は、図8(b)に示す電極構造に変形することができる。具体的には、1つの非駆動電極110を、電気的に独立した幅の狭い2つの非駆動電極180へ変更する。更に、2つの非駆動電極180のうち一方を貫通孔38に充填された導電体112を介して共通電極109と電気的に接続すると共に、他方(第5の電極)を貫通孔38に充填された導電体112によって形成された導通路(第3の導通路)を介して電極181(第4の電極)と電気的に接続する。その際、間隙部182の幅と間隙部183の幅とを変えて、図8(b)では、間隙部182の端Hが駆動電極111の端Jよりもx方向の正方向に位置するようにしている。
図8(b)の電極構造では、図8(a)の電極構造と同じ効果が得られるだけでなく、図8(a)の電極構造と比べて、電界形成に寄与しない領域を減らすことができる。したがって、励振用又は振動検出用の電極に割り当てる領域の面積を拡大させて、駆動性能や制御性能を高めることが可能になる。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。さらに、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
例えば、上記実施形態では、貫通孔38を用いて裏面側の共通電極109を表面側の非駆動電極110と導通させる場合に、共通電極109をGND電位に接続する形態について説明した。しかし、これに限られず、共通電極109をDC基準電位に接続してもよいし、図4(c)に示したC相交流電圧25やその他の任意の波形を有する駆動電圧に接続してもよい。
また、上記実施形態は、テスタのプローブを2つの非駆動電極110又は非駆動電極110と非駆動電極180に直接当てることで導通検査を行う例について示したが、導通検査方法はこれに限られない。例えば、非駆動電極110又は非駆動電極180をGND電位に接続し、駆動電極111の容量やアドミタンスをインピーダンスアナライザ等により計測することにより、間接的に共通電極109と非駆動電極110との間の導通検査を実施することが可能である。
1 振動型駆動装置
2 弾性体
3 被駆動体
6 ハウジング
7 支持部材
9 出力軸
30,30A,30B,30C 圧電素子
30p 圧電体
39,55,141,172,173,182,183 間隙部
109 共通電極
110,180 非駆動電極
111 駆動電極
112 導電体
171,181 電極

Claims (14)

  1. 振動体と被駆動体を備える振動型駆動装置であって、
    前記振動体は、
    主成分が電気的に絶縁性、誘電性または半導電性の材料からなる弾性体と、
    前記弾性体と接合される電気−機械エネルギ変換素子と、を有し、
    前記電気−機械エネルギ変換素子は、
    圧電体と、
    前記圧電体において前記弾性体と接合される面に設けられた第1の電極と、
    前記圧電体を介して前記第1の電極と対向するように設けられた複数の第2の電極および複数の第3の電極と、
    前記圧電体に設けられた貫通孔または前記圧電体の側面に設けられた溝部に配置された導電体を有する複数の第1の導通路と、を有し、
    前記複数の第1の導通路によりそれぞれ個別に、前記第1の電極と前記複数の第3の電極のうちの一部とが電気的に接続されていることを特徴とする振動型駆動装置。
  2. 前記第1の電極と電気的に接続された、前記複数の第3の電極のうちの一部GND電位に接続されていることを特徴とする請求項に記載の振動型駆動装置。
  3. 前記第1の電極は、閉ループ構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の振動型駆動装置。
  4. 前記第1の電極は、開ループ構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の振動型駆動装置。
  5. 前記第1の電極は、開ループ構造を有し、
    前記第1の電極の一端と別の一端との間の領域は、前記複数の第2の電極の間に設けられた隙間と少なくとも一部で重なるように対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の振動型駆動装置。
  6. 前記第1の電極は、開ループ構造を有し、
    前記第1の電極の一端と別の一端との間の領域は、前記第2の電極と対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の振動型駆動装置。
  7. 前記圧電体において前記弾性体と接合される面に、前記第1の電極の一端と別の一端のそれぞれとの間に隙間を設けて形成された第4の電極を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の振動型駆動装置。
  8. 前記圧電体に設けられた貫通孔または前記圧電体の側面に設けられた溝部に配置された導電体を有する第2の導通路と、
    前記第2の導通路により、前記第4の電極と電気的に接続された、前記複数の第3の電極のうちの他の一部と、を有することを特徴とする請求項7に記載の振動型駆動装置。
  9. 前記第4の電極と電気的に接続された、前記複数の第3の電極のうちの他の一部が、GND電位に接続されていることを特徴とする請求項8に記載の振動型駆動装置。
  10. 第2の導通路が、前記圧電体に設けられた貫通孔に導電体が配置されることにより形成されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の振動型駆動装置。
  11. 前記圧電体において前記第2の電極が設けられている面に、前記弾性体の歪みの大きさに応じた電位を示す振動検出用の電極が設けられていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の振動型駆動装置。
  12. 前記圧電体に設けられた貫通孔または前記圧電体の側面に設けられた溝部に配置された導電体を有する第3の導通路と、
    前記第2の電極を変更することにより設けられた、前記第3の導通路により、前記第4の電極と電気的に接続された第5の電極と、を有することを特徴とする請求項に記載の振動型駆動装置。
  13. 前記圧電体において前記第2の電極が設けられている面は、電圧を印加するための配線を有するフレキシブル基板によって覆われていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の振動型駆動装置。
  14. 前記圧電体は、円環状の形状を有し、
    前記第1の導通路は、前記圧電体の内外径の中心円の内側に設けられた前記貫通孔の内部に前記導電体が配置されて形成されていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の振動型駆動装置。
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