以下、本発明を実施するための形態の一例(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。また、以下の説明において、上下左右の方向は図1中に示す上下左右の方向を基準とし、前後の方向は図2中に示す前後の方向を基準とする。
まず、本発明の実施形態に係る開扉装置を説明する前に、本実施形態に係る開扉装置を備える冷蔵庫の全体構成について説明する。この「冷蔵庫」は、「開扉装置を備えた機器」に相当する。
≪冷蔵庫の全体構成≫
図1は、本発明の実施形態における冷蔵庫の正面図である。
図1に示すように、本実施形態の冷蔵庫1は、上方から、冷蔵室2と、左右に並べた製氷室3及び上段冷凍室4と、下段冷凍室5と、野菜室6と、を有している。なお、一例として、冷蔵室2及び野菜室6は、およそ3〜5℃の冷蔵温度帯の貯蔵室である。また、製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5は、およそ−18℃の冷凍温度帯の貯蔵室である。
冷蔵室2は、左右に分割された、前方側(図1の紙面手前側)に観音開きの、いわゆるフレンチ型の冷蔵室扉2a及び冷蔵室扉2bを備えている。冷蔵室扉2a,2bはヒンジ17a及びヒンジ17bのまわりに回動する。左右の冷蔵室扉2a,2b同士の隙間を閉鎖するために、冷蔵室扉2aの冷蔵室扉2bに近接した辺に沿って、回転シキリ18が設けられている。その構成は後に詳しく説明する。
製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、及び野菜室6は、それぞれ引き出し式の製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、及び野菜室扉6aを備えている。なお、以下の説明において、左右の冷蔵室扉2a,2b、製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、及び野菜室扉6aのそれぞれは、単に扉2a、扉2b、扉3a、扉4a、扉5a、及び扉6aと称せられる場合がある。
冷蔵庫1は、扉2a、扉2b、扉3a、扉4a、扉5a、及び扉6aのそれぞれの開閉状態を検知する扉センサ(図示省略)と、これらの扉2a,2b,3a,4a,5a,扉6aの少なくともいずれかが開放していると判定された状態が所定時間(例えば、1分間以上)継続された場合に、使用者にその旨を報知するアラーム(図示省略)と、冷蔵室2、上段冷凍室4、下段冷凍室5等の温度設定をする温度設定器(所定の操作部、表示部等を備える図1に示すコントロールパネル40)等を備えている。
また、冷蔵室扉2aには、左開扉スイッチ48aが設けられ、冷蔵室扉2bには、右開扉スイッチ48bが設けられている。
図2は、図1のA−A断面を模式的に示す側断面図である。
図2に示すように、冷蔵庫1の庫外と庫内は、内箱10aと外箱10bとの間に発泡断熱材(発泡ポリウレタン)を充填することにより形成される断熱箱体10により隔てられている。また、冷蔵庫1の断熱箱体10は複数の真空断熱材14を実装している。
庫内は、温度帯の異なる上下方向に配置された複数の貯蔵室が、断熱仕切壁11a、11bで断熱的に区画されている。即ち、上側の断熱仕切壁11aにより、冷蔵温度帯の貯蔵室である冷蔵室2と、冷凍温度帯の貯蔵室である上段冷凍室4及び製氷室3(図1参照)とが隔てられている。また、下側の断熱仕切壁11bにより、冷凍温度帯の貯蔵室である下段冷凍室5と、冷蔵温度帯の貯蔵室である野菜室6とが隔てられている。
扉2a,2bの庫内側には複数の扉ポケット13が設けられている。また、冷蔵室2は複数の棚12により縦方向に複数の貯蔵スペースに区画されている。
上段冷凍室4、下段冷凍室5及び野菜室6は、それぞれの貯蔵室の前方に設けられた扉4a,5a,6aの後方に、収納容器4b,5b,6bがそれぞれ設けられている。そして、扉4a,5a,6aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより、収納容器4b,5b,6bが引き出せるようになっている。図1に示す製氷室3にも同様に、扉3aの後方に、収納容器(図2中、符号3bで表示)が設けられ、扉3aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより、収納容器3bが引き出せるようになっている。
図2に示すように、扉2a,2b,3a,4a,5a,6aは、その周囲にドアパッキン15が設けられており、各扉2a,2b,3a,4a,5a,6aを閉じた際、冷蔵庫1の前面の開口周縁部と密着することで貯蔵空間(冷蔵室2、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、及び野菜室6)の内部を閉塞して密閉し、これらの貯蔵空間から外部への冷気の漏れを防止している。
図2に示すように、冷却器7は、下段冷凍室5の略背部に設けられた冷却器収納室8内に配置されている。冷却器7は、冷却器配管7dに多数のフィン(図示省略)が取り付けられて構成され、冷却器配管7d内の冷媒と空気との間で熱交換することができるようになっている。
冷却器7の上方には、庫内送風機9(例えば、モータ駆動するファン)が設けられている。冷却器7で熱交換して冷やされた空気(以下、この冷やされた低温の空気を「冷気」という)は、庫内送風機9によって冷蔵室送風ダクト22、野菜室送風ダクト25、製氷室送風ダクト26a、上段冷凍室送風ダクト26b及び下段冷凍室送風ダクト27を介して、冷蔵室2、野菜室6、製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5の各貯蔵室へ送られるようになっている。
図3は、冷蔵庫の庫内の構成を表す正面図である。
図3に示すように、冷蔵室2、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5及び野菜室6への各送風ダクトは、図3中、破線で示すように冷蔵庫1の各貯蔵室の背面側に設けられている。
冷却器7の冷気がどの貯蔵室へ送られるかは、冷蔵温度帯室冷気制御手段20及び冷凍温度帯室冷気制御手段21により制御されるようになっている。
ここで、冷蔵温度帯室冷気制御手段20は、独立した2つの開口部を備える所謂ツインダンパであり、第一の開口20aは冷蔵室送風ダクト22への送風を制御し、第二の開口20bは野菜室送風ダクト25への送風を制御するようになっている。また、冷凍温度帯室冷気制御手段21は、単独の開口部を備えたシングルダンパであり、製氷室送風ダクト26a(図2参照)、上段冷凍室送風ダクト26b(図2参照)及び下段冷凍室送風ダクト27(図2参照)への送風を制御するようになっている。
具体的には、冷蔵温度帯室冷気制御手段20の第一の開口20aが開状態のとき、冷気は、冷蔵室上流ダクト23(後述)及び冷蔵室送風ダクト22を経て冷蔵室2に送られる。つまり、冷気は、この冷蔵室送風ダクト22の延在方向に沿って複数設けられた吹出口2cから冷蔵室2に送られる。なお、冷蔵室2を冷却した冷気は、冷蔵室2の下部に設けられた戻り口2dから冷蔵室戻りダクト24を経て、冷却器収納室8の側方下部から冷却器収納室8に流入し、冷却器7と熱交換するようになっている。
冷蔵温度帯室冷気制御手段20の第二の開口20bが開状態のとき、冷気は、後記の冷蔵室上流ダクト23(図4参照)及び野菜室送風ダクト25を経て、吹出口6cから野菜室6に送られる。なお、野菜室6を冷却した冷気は、戻り口6d(図2参照)を経て、冷却器収納室8の下部から冷却器収納室8に流入し、冷却器7と熱交換するようになっている。ちなみに、野菜室6を循環する風量は、冷蔵室2を循環する風量や冷凍温度帯室冷気制御手段21を循環する風量に比べて少なくなっている。
冷凍温度帯室冷気制御手段21が開状態のとき、冷気は、製氷室送風ダクト26a(図2参照)や上段冷凍室送風ダクト26b(図2参照)を経て、吹出口3c,4cから製氷室3及び上段冷凍室4のそれぞれに送られる。また、冷気は、前記の下段冷凍室送風ダクト27(図2参照)を経て、吹出口5cから下段冷凍室5に送られる。このように、冷凍温度帯室冷気制御手段21は、後記の送風機カバー31(図4参照)の上方に取り付けられ、製氷室3への送風を容易にしている。
なお、製氷室3に前記の製氷室送風ダクト26a(図2参照)を介して送風された冷気及び上段冷凍室4に前記の上段冷凍室送風ダクト26b(図2参照)を介して送風された冷気は、下段冷凍室5に下降する。そして、この冷気は、下段冷凍室5に下段冷凍室送風ダクト27を介して送風された冷気と共に、下段冷凍室5の奥下方に設けられた後記の冷凍室戻り口28(図2参照)を介して、冷却器収納室8に流入し、冷却器7と熱交換するようになっている。
製氷室3及び上段冷凍室4、ならびに前記の下段冷凍室5を冷却した冷気は、下段冷凍室5の奥下方に設けられた冷凍室戻り口28を介して、冷却器収納室8に戻る。ちなみに、冷凍室戻り口28の横幅寸法は、冷却器7の左右の幅寸法とほぼ等しい。
図4は、図2の要部拡大説明図である。
図4に示すように、吹出口3c,4c,5cが形成されている冷凍温度帯室背面仕切29は、上段冷凍室4、製氷室3及び下段冷凍室5と、冷却器収納室8との間を区画する。
庫内送風機9が取り付けられている送風機支持部30は、冷却器収納室8と冷凍温度帯室背面仕切29との間を区画する。
送風機カバー31は、庫内送風機9の前面を覆うように配置されている。送風機カバー31と冷凍温度帯室背面仕切29との間には、庫内送風機9によって送風された冷気を吹出口3c、4c、5cに導くための、製氷室送風ダクト26a、上段冷凍室送風ダクト26b及び下段冷凍室送風ダクト27が形成されている。また、送風機カバー31の上部には、吹出口31aが形成されており、この吹出口31aに冷凍温度帯室冷気制御手段21が設けられている。
また、送風機カバー31は、庫内送風機9によって送風された冷気を冷蔵温度帯室冷気制御手段20側に送風する役目も果たしている。すなわち、送風機カバー31に設けられた冷凍温度帯室冷気制御手段21側に流れない冷気は、冷蔵室上流ダクト23を経由して冷蔵温度帯室冷気制御手段20側に導かれる。
また、送風機カバー31は、庫内送風機9の前面に整流部31bを備えている。整流部31bは、吹き出す冷気が引き起こす乱流を整流して、騒音の発生を防止するようになっている。
また、冷蔵温度帯室冷気制御手段20及び冷凍温度帯室冷気制御手段21が開状態のとき、大部分の冷気が冷凍温度帯室冷気制御手段21側に送られて、残りの他の冷気が冷蔵温度帯室冷気制御手段20側に導かれるように各送風ダクト26a,26b,27が構成されている。これにより、温度帯の異なる貯蔵室である冷凍温度帯室(製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5)及び冷蔵温度帯室(冷蔵室2及び野菜室6)に、1つの冷却器7で冷気を供給することができるようになっている。
以上説明したように、冷蔵庫1の各貯蔵室へ送風する冷気の切り替えは、冷蔵温度帯室冷気制御手段20及び冷凍温度帯室冷気制御手段21それぞれを適宜に開閉制御することにより行うことができるようになっている。
冷却器7の下方には、除霜手段である除霜ヒータ35が設置されており、除霜ヒータ35の上方には、除霜水が除霜ヒータ35に滴下することを防止するために、上部カバー36が設けられている。
冷却器7及びその周辺の冷却器収納室8の壁に付着した霜の除霜(融解)によって生じた除霜水は、冷却器収納室8の下部に備えられた樋32に流入した後に、排水管33を介して機械室50に配された蒸発皿34に達し、次に説明する圧縮機51(図3参照)や凝縮器52(図3参照)の熱により蒸発させられ、冷凍機外に排出されるようになっている。
図3に示すように、断熱箱体10の下部背面側には、機械室50が設けられている。機械室50には、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機51と、冷媒と空気とを熱交換させる凝縮器52と、凝縮器52における冷媒と空気の熱交換を促進させる庫外送風機53と、細管である減圧手段54と、が配置されている。
なお、圧縮機51、凝縮器52、減圧手段54は、冷却器7(蒸発器)と配管で接続され、冷媒が流通する冷媒経路(冷媒回路)が形成されるようになっている。
図2に示すように、冷蔵庫1の天井壁の上面側には、制御部として、CPU、ROMやRAM等のメモリ、インターフェース回路等を搭載した制御部である制御基板41が配置されている。冷蔵庫1には、冷蔵室2の温度を検出する冷蔵室温度センサ44、野菜室6の温度を検出する野菜室温度センサ45、冷凍温度帯室(製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5)の温度を検出する冷凍室温度センサ46、冷却器7の温度を検出する冷却器温度センサ47等の温度センサが設けられ、検出した温度が制御基板41に入力されるようになっている。
また、制御基板41は、扉2a,2b,3a,4a,5a,6aの開閉状態をそれぞれ検知する扉センサ(図示省略)、扉2aに設けられた前記のコントロールパネル40(図1参照)、扉2a,2bに設けられた前記の左開扉スイッチ48a(図1参照)、及び記の右開扉スイッチ48b(図1参照)と接続されている。
制御基板41は、前述のROMに予め搭載されたプログラムにより、圧縮機51のON/OFFや回転速度の制御、冷蔵温度帯室冷気制御手段20及び冷凍温度帯室冷気制御手段21を個別に駆動するそれぞれの駆動モータ(図示省略)の制御、庫内送風機9のON/OFFや回転速度の制御、庫外送風機53(図3参照)のON/OFFや回転速度等の制御、扉開放状態を報知するアラーム(図示省略)のON/OFF、開扉装置60の動作、等の制御を行うことにより、冷蔵庫全体の運転を制御することができるようになっている。
図2に示すように、冷蔵庫1の天井壁上面の前面、すなわち扉2a,2bに隣接して開扉装置60が設けられている。
図5は、図1のB方向から見た冷蔵庫の平面図である。
図5に示すように、開扉装置60は、扉2aと扉2bとにそれぞれ対応した突出部材61a、61bを備えている。突出部材61a、61bは、開扉装置60に収納された状態から扉2a,2bに向けて突出するように動作し、冷蔵室扉2a,2bの上端近傍を押して扉2a,2bを押し開く。
なお、扉2aは、特許請求の範囲にいう「第一の扉」に相当し、扉2bは、特許請求の範囲にいう「第二の扉」に相当する。
この開扉装置60については、後に更に詳しく説明する。
本実施形態においては、左側の扉2aに回転シキリ18が設けられている。
この回転シキリ18は、扉2aに設けられた回転シキリ支点19のまわりに回動自在に軸支されている。扉2aが閉じた際には回転シキリ18は、扉2aと平行に位置して扉2aと右側の扉2bの間の隙間を塞ぐ。
また、使用者が扉2aを開くと、回転シキリ18は図示しないカムの作用によって、回転シキリ支点19のまわりに扉2aと略直交する位置まで回動する。回転シキリ18は、扉2bと干渉することなく開く。
ここで、扉2aを開く際の好適な角度について扉2aを例にして説明する。
左側の扉2aに開扉装置60の突出部材61aが最大突出し量H2だけ作用した際に、最大開角度θdmaxで開いた扉2aを図5中、破線で表している。
突出部材61aのヒンジ17aからの距離をRdaとし、突出部材61aの最大突出し量をH2とすれば、突出部材61aが最も突き出した際の冷蔵室扉2aの開角度θdmaxは、θdmax=arctan(最大突出し量H2/距離Rda)となり、開扉装置60の突出部材61aの突出し量と、ヒンジ17aからの距離により定められる。
次に、この動作開角度θdmaxの好適な角度について説明する。
まず、扉2a,2bにそれぞれ設けられている閉じ手段としてのクローザについて説明する。
冷蔵庫1は、扉2a,2bを完全に閉じ切る前に、扉2a,2bを閉じる方向に付勢することによって、いわゆる半ドアを防止するクローザを備えている。このクローザは、次に説明するように、扉2a,2bが閉じる際に樹脂製の板ばね部材を一旦変形させて弾性歪エネルギを蓄積し、その蓄積したエネルギによって扉2a,2bを閉じる方向に付勢する構成となっている。これらのクローザは、左右の扉2a,2bで互いに対称の形状となっていること以外は同一の構造を有しているので、ここでは左側の扉2aのクローザについてのみ詳細に説明して右側の扉2bのクローザについてはその記載を省略する。
図6(a)から(c)は、冷蔵庫のクローザの動作説明図であり、扉を冷蔵庫の下側から見た様子を示す図である。
図6(a)から(c)に示すように、クローザ37は扉2aのヒンジ17aの下端部に設けられている。冷蔵庫1には固定されたクローザ受け金具38aが取り付けられており、その一部には滑らかな曲面形状で形成されたカム部38bが設けられている。
扉2aには樹脂等の弾性材料で形成された変形部39bを有するクローザ弾性体39aが設けられている。
図6(a)に示すように、扉2aがヒンジ17aまわりで反時計方向CCWに回動して角度ψ1まで閉じられると、クローザ弾性体39aの変形部39bはクローザ受け金具38aのカム部38bに接触する。そして、クローザ弾性体39aの変形部39bは矢印Fa方向の反力を受けてたわむ。
この力は扉2aのヒンジ17aに対しては時計回り方向、すなわち扉2aを開く方向に働くので、使用者は、閉じつつある扉2aからの反力が途中から重くなるように感じる。
図6(b)に示すように、扉2aが閉じられて開角度がψ2となり、クローザ弾性体39aとカム部38bとの接点が扉2aのヒンジ17aと同一線上になると(中性点に位置すると)、クローザ弾性体39aとカム部38bとの間の力Fbは、回転支点の方を向くのでモーメントとしては0となる。したがって、扉2aは、バランスして開閉のいずれの力も受けなくなる。
そして、クローザ弾性体39aとカム部38bとの接点が前記の中性点に至るまでに、クローザ弾性体39aは、たわんで弾性歪エネルギを蓄積する。
次いで、図6(c)に示すように、クローザ弾性体39aとカム部38bとの接点が中性点を過ぎても更に扉2aが閉じられると、クローザ弾性体39aにはカム部38bから矢印Fc方向の力が加わる。この力は、扉2aの回動支点に対して扉2aを閉じる方向(本図では反時計回りCCW)のモーメントを形成するので、扉2aはこのモーメントにより閉じられ方向に付勢されることとなる。
このようなクローザ37によれば、中性点である開角度がψ2未満の場合に、扉2aは閉じられる。したがって、開扉装置60によって扉2aを開く角度θdはψ2よりも大(θd>ψ2)であることが望ましい。つまり、開角度がθd>ψ2の関係にあれば、開扉装置60によって開いた扉2aがクローザ37によって閉方向に付勢されることはない。ちなみに、本実施形態の冷蔵庫1において、扉2aの開角度が、例えばψ2=10°程度であるとすれば、開扉装置60による扉2aの開角度θdは、15°から20°程度に設定することが望ましい。また、カム部38bと変形部39baとが作用しないように、開角度θdがψ1よりも大(θd>ψ1)となるように設定すると、開扉装置60による開扉動作が更に確実に行われるのでより望ましい。また、右側の扉2bについても、扉2aと同様に、開扉装置60による開角度θdがクローザ37の作用する角度よりも大(θd>ψ2、望ましくはθd>ψ1)とすることが好適である。
≪開扉装置≫
次に、本実施形態における開扉装置60について詳細に説明する。
図7は、本実施形態の開扉装置の斜視図である。図8は、開扉装置の平面図である。
以下の開扉装置60の説明における前後上下左右の方向は、この開扉装置60が取り付けられた冷蔵庫1(図2及び図3参照)の前後上下左右に一致させた、図7に示す前後上下左右の方向を基準とする。
図7及び図8に示すように、本実施形態の開扉装置60は、下半体であるケース62と上半体であるカバー69とで形成されるハウジング内に、モータ82と、減速歯車列83と、大歯車76と、一対の間欠駆動歯車78a,78bと、一対の突出部材61a,61bと、を主に備えて構成されている。
ちなみに、図7及び図8に示すように、突出部材61a,61bが、ケース62内からその外側に向けて突出していない状態を、開扉装置60の「初期状態」と称することがある。また、「初期状態」の開扉装置60における、減速歯車列83、大歯車76、間欠駆動歯車78a,78b、及び突出部材61a,61bの位置を、それらの「原点位置」と称することがある。
なお、間欠駆動歯車78aは、特許請求の範囲にいう「第一の間欠駆動歯車」に相当し、間欠駆動歯車78bは、特許請求の範囲にいう「第二の間欠駆動歯車」に相当する。また、突出部材61aは、特許請求の範囲にいう「第一の突出部材」に相当し、突出部材61bは、特許請求の範囲にいう「第二の突出部材」に相当する。
<モータ>
モータ82は回転モータであって、その回転軸が正逆両方向に回転するものであればその種類は特に制限はない。本実施形態でのモータ82としては、例えばブラシ式の直流モータであって、端子に印加する電圧の極性を反転することで正転方向と逆転方向との両方向に回転することができるものを想定している。
<減速歯車列>
減速歯車列83は、モータ82の回転を減速しつつ、その動力を大歯車76に伝達するものである。
本実施形態での減速歯車列83は、ウォームギヤ84と、ウォームホイール85と、第二の歯車87と、第三の大歯車88aと、第三の小歯車88bと、第四の大歯車90aと、第四の小歯車90bと、を備えている。
図9は、図8のC−C断面図である。
図8及び図9に示すように、ウォームギヤ84は、モータ82の回転軸に設けられ、第一の歯車であるウォームホイール85と噛み合っている。平歯車である第二の歯車87はウォームホイール85と一体に設けられ、ウォームホイール85と第二の歯車87は共にウォームホイール軸86のまわりに回転自在に軸支されている。
第二の歯車87は、第三の大歯車88a(図8参照)と噛み合い、この第三の大歯車88aは、第三の小歯車88b(図8参照)と一体になって第三の支軸89(図8参照)のまわりに回転自在に軸支されている。また、第三の小歯車88b(図8参照)は、第四の大歯車90aと噛み合っている。この第四の大歯車90aは、第四の小歯車90bと一体になって第四の支軸91のまわりに回転自在に軸支されている。また、第四の小歯車90bは、大歯車76の後記する歯76A,76B(図10参照)と噛み合っている。
つまり、減速歯車列83は、前記のように、モータ82の回転力を減速しつつ、大歯車76に伝達する構成となっている。
モータ82を回転させた際の、それぞれの歯車の回転方向の一例を図8の矢印にて示す。
ウォームギヤ84の回転方向は、一例としてウォームギヤ84に設けられた螺旋状の歯がこれと噛み合うウォームホイール85を、図8で表す平面視で左回りに回転させる方向を実線矢印で示している。例えばウォームギヤ84の歯が、一般的なネジとは逆の左ネジの螺旋である場合には、ウォームギヤ84の先端側から見てモータ82を時計回りに回転すればよく、本実施例においてはこのような回転方向を「正転方向」と称するものとする。
モータ82に印加する電圧の極性を逆にすることで、ウォームギヤ84を逆方向に回転した場合を破線矢印で図示しており、本実施例においてはこのような回転方向を「逆転方向」と称するものとする。
なお言うまでも無く、「正転」「逆転」というのは本実施形態の説明の便宜上のことであり、かかる表現に限定されるものではない。
このような減速歯車列83は、図8に示すように、大歯車76よりも背面寄りで(後方寄りで)、かつケース62の左右中央近傍に配置されている。また、モータ82は減速歯車列83に隣接してケース62の背面(後面)に沿って配置されている。また、減速歯車列83に対してモータ82の対面側には、図示しない配線コネクタや配線が配置される配線スペース81が設けられている。つまり、モータ82と減速歯車列83と配線スペース81とは、ケース62の背面(後面)に沿って並列する構成となっている。
なお、本実施形態でのモータ82は、減速歯車列83に対して図8で表す平面視で左側面寄りに配置したが、本発明はこのような配置に限定されるものではなく、右側面寄りに、又は中央寄りに配置することもできる。
<大歯車>
図10は、開扉装置の大歯車と間欠駆動歯車とを示す斜視図である。
図10に示すように、大歯車76の外周において角度θ0の範囲には、厚さ方向の全幅において歯車の歯76Aが設けられている。角度θ0の範囲外においては、厚さ方向にケース62に近接した側、すなわち図示下方略1/2にのみ歯76Aと連続した一連の歯76Bが全周にわたって設けられている。そして、図示上方略1/2には歯は設けられておらず、歯76Bの歯底円と同じか、又は歯底円よりも小さい円筒状の摺動面76Cが設けられている。摺動面76Cと全幅に設けられた歯76Aとの境界には、摺動面76Cよりも内周側に凹んだ切欠部76Dが設けられている。
大歯車76の歯76Aの対面側には、大歯車ストッパ76Eが設けられている。大歯車76が前記の原点位置から角度θ6回転すると、大歯車ストッパ76Eは大歯車76と共に角度θ6回転してカバーストッパ71に当接する。
ちなみに、カバーストッパ71は、図9に示すように、カバー69から大歯車76に向けて内側に凸となるように形成された切片である。
このメカストッパとしてのカバーストッパ71によって、大歯車76の回転角度範囲は、原点位置から±θ6までに制限されることとなる。
<間欠駆動歯車>
図11は、図8のD−D断面図である。
図10及び図11に示すように、間欠駆動歯車78a(第一の間欠駆動歯車)は、回転板中心74aのまわりに回動自在に軸支され、間欠駆動歯車78b(第二の間欠駆動歯車)は、回転板中心74bのまわりに回動自在に軸支されている。
間欠駆動歯車78aの周囲には、大歯車76の歯76A(図10参照)と噛み合う歯79a(図10参照)が形成されている。間欠駆動歯車78bの周囲には、大歯車76の歯76A(図10参照)と噛み合う歯79b(図10参照)が形成されている。また、間欠駆動歯車78aの周囲には、外周側に一部突出するストッパ部80a(第一のストッパ部)が形成されている。間欠駆動歯車78bの周囲には、外周側に一部突出するストッパ部80b(第二のストッパ部)が形成されている。このストッパ部80a,80bが大歯車76に近接する向きに間欠駆動歯車78a,78bを配置した際には、大歯車76と間欠駆動歯車78a,78bとは歯車としては噛み合っておらず、ストッパ部80a,80bは大歯車76の摺動面76C(図10参照)と摺動自在となっている。
また、ストッパ部80a,80bの先端面は、摺動面76Cの周面と合致した円弧状の凹面となっている。つまり、ストッパ部80a,80bの先端面(凹面)と、摺動面76Cの周面とは相互に嵌り合い、摺動面76Cの周面上で移動する間欠駆動歯車78a,78bは、回転しようとしてもロックした状態となって回転しない。
この状態で大歯車76が回動しても、間欠駆動歯車78a,78bのストッパ部80a,80bの先端面(凹面)は大歯車76の摺動面76Cを摺動するだけなので間欠駆動歯車78a,78bは回転しない。
図10に示すように、大歯車76の角度θ0の範囲に対して間欠駆動歯車78a,78bを対称に配置した場合を、ここでは大歯車76の「原点位置」と称することとする。この「原点位置」において、大歯車76に設けられた切欠部76Dから、ストッパ部80a,80bのうち切欠部76Dに近接した側の端部であるストッパ端部80Aa,80Abまでの角度をθ2とする。
そうすると、「原点位置」から時計回り、ないし反時計回りにそれぞれ角度θ2の範囲で大歯車76が回転する場合には、間欠駆動歯車78a,78bは回転駆動することなくロックした状態を保つ。
大歯車76の原点位置からの回転角度がθ2を超えると、摺動面76Cよりも凹んでいる切欠部76Dの内側にストッパ端部80Aが入り込むことで間欠駆動歯車78a,78bが回動可能となる。これにより大歯車76の歯76Aと間欠駆動歯車78a,78bの歯79a,79bとが順次噛み合う。そして、大歯車76は、間欠駆動歯車78a,78bにトルクを伝達しつつ間欠駆動歯車78a,78bを回転駆動する。
なお、大歯車76の歯76Aと間欠駆動歯車78a,78bの歯79a,79bとが噛み合う角度θ0の範囲は、特許請求の範囲にいう「第一の角度範囲」及び「第二の角度範囲」に相当する。つまり、間欠駆動歯車78aは、「第一の角度範囲」においてのみ大歯車76と噛み合って回転(回動)し、「第一の角度範囲」以外は大歯車76と噛み合わず回転(回動)しない。そして、間欠駆動歯車78bは、「第二の角度範囲」においてのみ大歯車76と噛み合って回転(回動)し、「第二の角度範囲」以外は大歯車76と噛み合わず回転(回動)しない。
そして、後記するように、モータ82からの駆動力は、大歯車76の回転方向が時計方向なのか反時計方向なのかに応じて、間欠駆動歯車78a,78bのいずれかに伝達されることとなる。
<回転板及び連結板>
図8及び図11に示すように、開扉装置60は、間欠駆動歯車78a,78bからの駆動力を突出部材61a,61bに伝達する、一対の回転板73a,73bと、一対の連結板65a,65bと、を備えている。
回転板73aは、間欠駆動歯車78aと一体になって回転板中心74aのまわりに回転自在に軸支され、回転板73bは、間欠駆動歯車78bと一体になって回転板中心74bのまわりに回転自在に軸支されている。
これらの回転板73a,73b及び連結板65a,65bは、図8及び図11に示すように、開扉装置60内で左右対称の形状となっていること以外は同一の構造を有しているので、ここでは左側の回転板73a及び連結板65aについてのみ詳細に説明して右側の回転板73b及び連結板65bについてはその記載を省略する。
図12は、開扉装置の回転板と連結板とを示す平面図である。
図12に示すように、回転板73a周囲には、連結板65aの歯101A〜101P(合計歯数13)に噛み合う歯102a〜102q(合計歯数14)が形成されている。
回転板73aの歯102a〜102qは、図12の平面視で回転板中心74aを中心にして右まわりで、この回転板中心74aから徐々に半径を拡大するよう形成されている。
更に具体的には、回転板73aに設けられた歯102aから歯102qまでの噛み合いピッチ円半径を、図12に示すraからrqとした場合に(aからqはアルファベット順に並ぶところ図中、rbからrpは図示省略)、ra<rb<rc<rd<re<rf<rg<rh<rj<rk<rm<rn<rp<rqの関係式を満たしている。
なお、回転板73aの歯102a〜102qの歯列が描く曲線は、アルキメデス螺旋、双曲螺旋、インボリュート曲線等とすることができるが、前記関係式を満足していれば、これらに限定されるものではない。
連結板65aは、図7及び図8に示すように、回転板73aの左側(ケース62の左右方向外側)に配置されている。
また、連結板65aは、略三角形状をなしており、第一の辺である左側面の一辺にはガイドレール66aと互いに摺動自在に嵌合する凹部ないしは凸部を備えている。また、第二の辺である前面側の一辺には、突出部材61aの後端部が接合されている。また、残りの第3の辺には、回転板73aが回転する際に、その歯102a〜102q(図12参照)と噛み合う歯101A〜101P(図12参照)が形成されている。つまり、図12に示すように、回転板73aの歯102a〜102qが回転板中心74aから徐々に半径を拡大するよう形成されているので、連結板65aの歯101A〜101Pの歯列は、前方から後方に向かうに従って、回転板73aの左側(ケース62の左右方向外側)に向かうように傾斜するテーパ状になっている。
回転板73aに設けられた歯102a〜102qは、連結板65aに設けられた歯101A〜101Pの前方と後方とを挟んで噛み合うので、回転板73aの歯数は連結板65aの歯数よりも1つ多く、前記したように、回転板73aの歯数は14、連結板65aの歯数は13となっている。
なお、回転板73aの歯数、及び連結板65aの歯数は、これら14及び13に限定されるものではないが、駆動側である回転板73aの歯数は、従動側である連結板65aの歯数よりも1つ多く設けることが望ましい。このように回転板73a及び連結板65aの歯数を設定することで、回転板73aの歯は、連結板65aの歯を常に両側から挟んで噛み合うこととなる。これにより回転板73aの時計回り及び反時計まわりの両方向の回転動作が安定し、回転板73aから連結板65aへの駆動力の伝達が効率よく行われることとなる。
本実施形態での回転板73aは、扉2a(図5参照)を開放する際に、図12の平面視で反時計回りに回転する。
図12に示すように、回転板73aの内周側の歯102aと歯102bとの間に、連結板65aの前端側の歯101Aが噛み合っている。この図12に示す回転板73a及び連結板65aの状態では、後記するように、突出部材61aが開扉装置60のケース62に引き込んだ状態となるので、図12に示す回転板73a及び連結板65aの位置は、前記の「原点位置」となる。
<突出部材>
図7及び図8に示すように、突出部材61a,61bは、例えば四角形等の多角形断面あるいは円形断面を有する細長いロッドであって、上半体のカバー69と下半体のケース62とで形成される前記ハウジング内の左側及び右側のそれぞれに沿うように配置されている。
突出部材61a,61bは、開扉装置60の前後方向に沿って移動可能なように、連結板65a,65bを介してガイドレール66a,66bに摺動可能に支持されている。
また、突出部材61a,61bの前端は、ケース62及びカバー69に跨るようにハウジング前面に設けられた開口63a,63b(図8参照)を介してハウジングの外側に臨んでいる。
突出部材61a,61bは、後に詳しく説明するが、扉2a,2bのそれぞれに向けて突出した後に元の位置に復帰するように構成されている。
また、突出部材61a,61bには、その長手方向に沿うように、例えばステンレス製の丸棒からなる補強部材68a,68bが取り付けられ、突出部材61a,61bは、この補強部材68a,68bにより補強されている。
これら突出部材61a,61bの前端には、先端部材64a,64bが設けられている。なお、先端部材64aと先端部材64bとは同じ構造を有しているので、ここでは先端部材64aについてのみ説明して先端部材64bの説明は省略する。
図13は、図9のE−E断面図である。
図13に示すように、先端部材64aは、前記ハウジングの前面に形成される開口63aを介してハウジングの外側に臨む突出部材61aの前端を覆うように配置されている。
先端部材64aは、例えばゴムのような柔軟な材質で形成されることが望ましい。また、先端部材64aの突出部材61aの側には、突出部材61aの全周にわたって開口63aをハウジングの外側から覆うように広がる薄肉部70が設けられている。この薄肉部70の突出部材61aの側の寸法は開口63aの寸法よりも大きくすると、突出部材61aをハウジング内に引き込んだ際に、薄肉部70が開口63aを塞いで、外部からハウジング内に水や塵埃が侵入するのを防止することができる。また、先端部材64aは、突出部材61aが突出動作を行って扉2aに当接する際の衝撃を低減することができる。
また、図8に示すように、開扉装置60には、開扉装置60を冷蔵庫1(図1参照)の上面に取り付けるための本体取付穴59が設けられている。この本体取付穴59は、ケース62の後角部の2箇所と、大歯車76の左右両側で大歯車中心軸77よりも前側で、回転板73aの回転板中心74a,74bとケース62の前端縁との略中間に位置するように左右対称に2箇所と、に設けられている。
図14は、図8のD−D断面である。
本体取付穴59を介して開扉装置60を冷蔵庫1に取り付ける方法としては、図14に示すように、ケース62とカバー69とをゴムブシュ58を介して挟み込み、冷蔵庫1の上面から突出した円筒状のボス57に段付きネジ56を用いて締め付ける方法が挙げられる。このような方法によって開扉装置60を冷蔵庫1に取り付けると、開扉装置60の駆動時に万一振動が発生するとしても、その振動が冷蔵庫1に伝達するのを防止することができる。
<スイッチレバー及び検知スイッチ>
図15(a)は、大歯車に係合するスイッチレバー及び検知スイッチを備える検知スイッチ動作部の斜視図であり、大歯車を斜め下方から見上げた様子を示す斜視図、図15(b)は、検知スイッチ動作部の分解斜視図である。図16は、開扉装置におけるカム部とスイッチレバーとの配置説明図である。なお、図15(a)及び図16は、原点位置における大歯車に係るスイッチレバーの状態を表している。
図15(a)及び(b)に示すように、検知スイッチ動作部は、大歯車76のカム部99に係合するスイッチレバー96a,96bと、検知スプリング97と、検知スイッチ95a,95bと、を主に備えて構成されている。
スイッチレバー96a,96bは、互いに対称形状の一対のレバー部材で形成され、長手方向の略中央部にそれぞれ軸支部98,98が形成されている。そして、軸支部98,98が共通の軸部材(図示省略)で支持されることにより、スイッチレバー96a,96b同士はこの軸部材まわりに個別に回動自在になっている。
図15(b)に示すように、スイッチレバー96a,96bの長手方向の一端側には、スイッチレバー96a,96b同士が向き合う面にスプリング突起96Ba,96Bb(図15(b)中、スイッチレバー96b側のスプリング突起96Bbは不図示)が形成されている。これらスプリング突起96Ba,96Bbの間には圧縮バネである検知スプリング97が架けられている。
また、スイッチレバー96a,96bの一端側には、スプリング突起96Ba,96Bbが形成される側とは反対側の面に、スイッチ突起96Aa,96Ab(図15(b)中、スイッチレバー96a側のスイッチ突起96Aaは不図示)が形成されている。
このスイッチ突起96Aa,96Abには、それぞれ検知スイッチ95a及び検知スイッチ95bが対向するように設けられている。この検知スイッチ95a,95bは、例えばタクトスイッチで構成されている。つまり、スイッチレバー96aのスイッチ突起96Abが検知スイッチ95aに接触するとスイッチONとなり、離れるとスイッチOFFとなる。また、スイッチレバー96bのスイッチ突起96Abが検知スイッチ95bに接触すると、スイッチONとなり、離れるとスイッチOFFとなる。
また、スイッチレバー96a,96bの長手方向の他端側には、スイッチレバー96a,96b同士が向き合う面にスイッチレバー先端部96Ca,96Cbが形成されている。このスイッチレバー先端部96Ca,96Cbは、スイッチレバー96a,96bの一端側に配置された検知スプリング97の反発力によって、次に説明する大歯車76(図15(a)参照)のカム部99(図15(a)参照)を挟持するようになっている。
図15(a)に示すように、大歯車76の下面には、大歯車76(大歯車中心軸77)と同軸にカム部99が形成されている。このカム部99は、互いに径の異なる2つの周面を有する厚みをもった略円盤形状の部材であり、径の大きい第一周面99aと、この第一周面99aよりも径の小さい第二周面99bとを有している。
そして、大歯車76と共にカム部99が回転すると、この第一周面99a及び第二周面99bには、スイッチレバー先端部96Ca,96Cbが摺接するようになっている。
つまり、スイッチレバー先端部96Caが第一周面99aに摺接すると、スイッチレバー96aのスイッチ突起96Abが検知スイッチ95aから離れてスイッチOFFとなる。また、スイッチレバー先端部96Caが第二周面99bに摺接すると、スイッチレバー96aのスイッチ突起96Abが検知スイッチ95aと接触してスイッチONとなる。
そして、スイッチレバー先端部96Cbが第一周面99aに摺接すると、スイッチレバー96bのスイッチ突起96Abが検知スイッチ95bから離れてスイッチOFFとなる。また、スイッチレバー先端部96Cbが第二周面99bに摺接すると、スイッチレバー96bのスイッチ突起96Abが検知スイッチ95bと接触してスイッチONとなる。
つまり、カム部99の第一周面99aはOFF面を形成し、第二周面99bはON面を形成することとなる。
図15(a)に示した原点位置においては、スイッチレバー先端部96Ca,96Cbは共に第一周面99a(OFF面)に接しており、スイッチレバー96a,96bは実線矢印で示す方向に移動した状態であり、スイッチ突起96Aa,96Abは検知スプリング97を押し縮めて検知スイッチ95a,95bから離れる方向に変位するので、検知スイッチ95a,95bは両方ともOFFとなる。
大歯車76が原点位置から回転して、スイッチレバー先端部96Ca,96Cbが第一周面99a(OFF面)から第二周面99b(ON面)に移動すると、スイッチレバー96a,96bは検知スプリング97の反力によって破線矢印で示す方向に移動し、スイッチ突起96Aa,96Abは、検知スイッチ95a,95bを押して検知スイッチ95a,95bを共にONにする。
本実施形態においては、2式のスイッチレバー96a,96bをそれぞれの検知スイッチ95a,95bに押圧してONにする作用を、ただ一つの検知スプリング97によって実現することができる。
すなわち、大歯車76を回転するとカム部99が回転するのでスイッチレバー96a,96bが回動し、大歯車76の回転角度に応じて、検知スイッチ95a,95bをON/OFFすることができる。
次に、大歯車76の回転角度とカム部99の形状の適切な形状と検知スイッチ95a,95bの好適なON/OFFの一例について説明する。図16は、開扉装置におけるカム部とスイッチレバーとの配置説明図である。なお、図16中、スイッチレバー96a,96bの軸支部のそれぞれは便宜上符号98a及び符号98bを付して個別に描いている。
図16に示すように、カム部99は、大歯車中心軸77を中心とする角度φ2の範囲においては、径の大きい第一周面99a(OFF面)を有し、それ以外の範囲においては径の小さい第二周面99b(ON面)を有している。
また、原点位置のスイッチレバー先端部96Ca,96Cb(図5(a)参照)は、大歯車中心軸77を中心に、角度φ1をなす2点でカム部99の第一周面99a(OFF面)と接している。
カム部99の第一周面99aは、スイッチレバー先端部96Ca,96Cbとの接点から、角度φ1の外側に角度θ1の範囲まで形成されており、図16に示した「原点位置」においては左右対称となって、θ1=(φ2−φ1)/2の関係式が成立する。
すなわち、図16に示した「原点位置」から大歯車76が時計回りに角度θ1だけ回転すると、スイッチレバー先端部96Cbは、第一周面99a(OFF面)から第二周面99b(ON面)に移動し、検知スイッチ95bはOFFからONに切り替わる。
更に時計回りに角度φ1だけ大歯車76が回転して、「原点位置」からの回転角度が(φ1+θ1)となると、検知スイッチ95bはOFFのままで、スイッチレバー先端部96Caは第一周面99a(OFF面)から第二周面99b(ON面)に移動する。つまり、検知スイッチ95aはOFFからONに切り替わる。
一方、「原点位置」から大歯車76が反時計回りに角度θ1だけ回転すると、スイッチレバー先端部96Caは、第一周面99a(OFF面)から第二周面99b(ON面)に移動する。つまり、検知スイッチ95aはOFFからONに切り替わる。
更に反時計回りに角度φ1だけ回転して、「原点位置」からの回転角度が(φ1+θ1)となると、検知スイッチ95aはOFFのままで、スイッチレバー先端部96Cbは第一周面99a(OFF面)から第二周面99b(ON面)に移動する。つまり検知スイッチ95bはOFFからONに切り替わる。
ここで、大歯車76ないしカム部99の「原点位置」からの回動角度が±θ1の範囲においては、検知スイッチ95a,95bは共にOFFであり、この角度±θ1の範囲を「原点範囲」と称することとする。
次に、大歯車76と間欠駆動歯車78a,78bと、カム部99と、スイッチレバー96a,96bとの位置関係について説明する。
図17(a)から(f)は、開扉装置における大歯車と間欠駆動歯車とスイッチレバーとの位置関係を模式的に示す平面図である。なお、図17(a)から(f)は、大歯車76を時計回りに回転させて左側の間欠駆動歯車78aを回転駆動して、左側の突出部材61aを突出させて左側の扉2aの開扉動作を行う動作を示している。また、図17(a)から(f)においては、大歯車76の摺動面76Cと、切欠部76Dと、間欠駆動歯車78の駆動に係る部分の歯76Aのみを示している。
図17(a)は、「原点位置」の状態を表しており、間欠駆動歯車78a,78bはそれぞれのストッパ部80a,80bの先端が摺動面76Cと嵌合してロックした状態にある。また、スイッチレバー先端部96Ca,96Cbは、カム部99の第一周面99a(OFF面)と接しており、検知スイッチ95a,95bは、共にOFFになっている(以下、この状態を「検知スイッチA/B=OFF/OFF」と称することがある)。
図17(b)は、「原点位置」から大歯車76が時計回りに角度θ1だけ回転した「原点外側移動」状態を表しており、間欠駆動歯車78a,78bはストッパ部80a,80bの先端が摺動面76Cと嵌合してロックした状態にある。また、スイッチレバー先端部96Caは、カム部99の第一周面99a(OFF面)と接しており、検知スイッチ95aは、OFFになっている。また、スイッチレバー先端部96Cbは、カム部99の第一周面99a(OFF面)から第二周面99b(ON面)に移動し、検知スイッチ95bは、OFFからONに切り替わっている。つまり、図17(b)の位置は、「原点範囲」の境界部を示している。ここで、切欠部76Daは、間欠駆動歯車78aのストッパ部80aにおけるストッパ端部80Aaに近接した位置まで移動する(以下、この状態を「検知スイッチA/B=OFF/ON」と称することがある)。
図17(c)は、更に大歯車76が角度θ2(>θ1)まで回転した状態を示している。つまり、間欠駆動歯車78aのストッパ部80aが切欠部76Daに入り込むことでロック状態が解除され、大歯車76は、間欠駆動歯車78aとの噛み合いが可能な状態となっている(「間欠歯車噛合」状態)。これにより間欠駆動歯車78aは、反時計方向に回転し始める。この際、スイッチレバー96a,96bは、図17(b)の状態から変化はなく、検知スイッチ95aはOFF、検知スイッチ95bはONのままとなる(検知スイッチA/B=OFF/ON)。
図17(d)は、更に大歯車76が角度θ3(>θ2)まで回動した状態を示しており、間欠駆動歯車78aは、大歯車76と噛み合って反時計方向に回転を継続している。また、間欠駆動歯車78aと一体となった回転板73aも回動するので、連結板65aを介して突出部材61aが前方に突き出す(「突出動作中」)。これにより突出部材61aは、開扉動作を行う。スイッチレバー96a,96bは、図17(b)ないし図17(c)の状態から変化はなく、検知スイッチ95aはOFF、検知スイッチ95bはONのままとなる(検知スイッチA/B=OFF/ON)。
図17(e)は、更に大歯車76が角度θ4(>θ3)まで回動した状態を示しており、突出部材61aは、その動作範囲のほぼ最大値の近くにまで突き出している(「突出完了直前」状態)。間欠駆動歯車78aは、概ね最大に回動した位置にある。スイッチレバー先端部96Caは、カム部99の第一周面99a(OFF面)から第二周面99b(ON面)に移動し、検知スイッチ95aは、OFFからONに切り替わる。検知スイッチ95bには変化がなくONのままである。検知スイッチ95aがOFFからONに切り替わったことが検知される(以下、この状態を「検知スイッチA/B=ON/ON」と称することがある)。この際、モータ82への通電が停止されれば、モータ82は減速しつつ停止する。
図17(f)は、更に大歯車76が角度θ5(>θ4)まで回転した状態を示しており、モータ82は停止し、突出部材61aは突出動作を完了して停止する(「突出完了停止」状態)。大歯車76及び間欠駆動歯車78aは、最も大きく回転した位置にある。スイッチレバー96a,96bは、図17(e)の状態から変化はなく、検知スイッチ95a,95bは、共にONのままとなる(検知スイッチA/B=ON/ON)。
その後、開扉装置60は、モータ82を逆転して大歯車76を反時計方向に回転することで、前記とは逆の、図17(f)から図17(a)に至る動作を行って、再び「原点位置」に復帰する。
ちなみに、右側の扉2bの開扉動作を行う際には、大歯車76を「原点位置」から図17(a)から(f)における回転方向とは逆の、反時計方向に大歯車76を回転させる。これにより間欠駆動歯車78b及びスイッチレバー96a,96bは、図17(a)から(f)とは左右対称の(鏡像の)動作を行う。つまり、間欠駆動歯車78bが時計回りに回転して右側の突出部材61bの突出動作を行って、右側の扉2bの開扉動作を行う。
次に、左側の扉2aの開扉動作と、右側の扉2bの開扉動作とを行う際の、カム部99の回転動作と、検知スイッチ95a,95bのON/OFF状態について更に具体的に説明する。
図18は、開扉装置の左側開扉動作の際の、カム部の回転動作と、検知スイッチのON/OFF状態を説明する図である。図19は、開扉装置の右側開扉動作の際の、カム部の回転動作と、検知スイッチのON/OFF状態を説明する図である。なお、図18及び図19は、大歯車76のカム部99の回転動作を、横軸を角度とした直線動作に変換して等価的に表現したもので、カム部99を左右に移動する矩形状の凸部として図示している。
図18は、図示左方への動きが大歯車76ないしカム部99の時計回り方向(CW方向)の回動と等価であり、図示右方への移動が反時計回り方向(CCW方向)の回動と等価であるように描かれている。
また、図19は、図17(a)から(f)で表した開扉動作と左右対称の開扉動作(右側の扉2bの開扉動作)におけるカム部99の反時計回りの回転動作を、「原点位置」から図示右方への移動動作として描かれている。
また、図18の(a)から(f)で示した各状態及び図19の(a)から(f)で示した各状態は、図17(a)から図17(f)における各状態に対応している。
図18の(a)の状態と図19の(a)の状態とは、共に同一の状態であって「原点位置」を示している。大歯車76すなわちカム部99の回動角θは0であり(θ=0)、カム部99は中心線(中央)に対して左右対称となる位置にある。カム部99の幅は、図16の角度φ2に対応した幅であり、検知スイッチ95a,95bは、図16の角度φ1に対応した幅で配置されている。また、「原点位置」においては検知スイッチ95a,95bは、カム部99と同様に中心線(中央)に対して左右対称となる位置に配置される。また、図16のθ1と図18ないし図19のθ1とは対応している。
次に、図18を参照しながら左側の扉2aの開扉動作(左開扉動作)について説明する。
図18の「(a)原点位置」の欄において、検知スイッチ95a,95b(図18中の表記は検知A、検知B)は、共に対応したスイッチレバー先端部96Ca,96Cbがカム部99の凸部(第一周面99a(OFF面))の範囲にある。つまり、前記したように、検知スイッチ95a,95bは、カム部99の凸部(第一周面99a(OFF面))上にあって、共にOFF状態であることを黒丸で示している(検知A/B=OFF/OFF)。
図18の「(b)原点外側移動」の欄においては、図17(b)に対応してカム部99が時計方向(CW方向)に角度θ1だけ回動して「原点範囲」の外にシフトした状態を示している。図18の「(b)原点外側」の欄において、検知スイッチ95b(検知B)がOFFからONに変化したことを、黒丸から白丸への位置変化として示している。
検知スイッチ95b(検知B)がOFFからONに変化したことで、大歯車76が「原点範囲」から外れて時計回りに回転していることが確認できる(検知A/B=OFF/ON)。
図18の「(c)間欠歯車噛合」の欄、及び図18の「(d)突出動作中」の欄においては、それぞれ図17(c)及び図17(d)に示す状態と同様に、カム部99がそれぞれ角度θ2からθ3にいたるまで時計回り(CW方向)に回転を継続していることを示している。つまり、間欠駆動歯車78aが大歯車76とかみあって回転し、突出部材61aが突出動作を行う。そして、突出部材61aは、左側の扉2aを開放し、検知スイッチ95a,95bは、OFF/ONの状態を保っている(検知A/B=OFF/ON)。
図18の「(e)突出完了直前」の欄は、図17(e)と同様に、大歯車76が更に時計方向(CW方向)に角度θ4(>θ3)まで回動して突出し動作が完了する直前の状態を示しており、開扉動作は概ね完了している。検知スイッチ95aは、OFFからONになるので、モータ82への通電を切って停止させる。検知スイッチ95a,95bはON/ONとなる(検知A/B=ON/ON)。
図18の「(f)突出完了・停止」の欄は、図17(f)と同様に、大歯車76が更に時計方向(CW方向)に最大動作角度である角度θ5(>θ4)まで回転して停止した状態を示している。モータ82は停止しており、突出動作は完了した状態となっている。検知スイッチ95a,95bはON/ONの状態を保っている(検知A/B=ON/ON)。最大動作角度θ5は、大歯車ストッパ76Eとカバーストッパ71によるメカストッパとで設定される大歯車76の回転角度範囲θ6よりも小さく設定される(θ5<θ6)。
次に、図19を用いて右側の扉2bの開扉動作について説明する。
図19の「(a)原点位置」の欄において、検知スイッチ95a,95bは、共に対応したスイッチレバー先端部96Ca,96Cbがカム部99の凸部(第一周面99a(OFF面))範囲にある。つまり、カム部99によってスイッチレバー96a,96bは、前記したように、カム部99の凸部に押されて変位してOFFになる。つまり、前記したように、検知スイッチ95a,95bは、カム部99の凸部(第一周面99a(OFF面))上にあって、共にOFF状態であることを黒丸で示している(検知A/B=OFF/OFF)。
図19の「(b)原点外側移動」の欄においては、図17(b)と左右対称にカム部99が反時計方向(CCW方向)に角度θ1だけ回動して「原点範囲」の外にシフトした状態を示している。図18の「(b)原点外側」の欄において、検知スイッチ95a(検知A)がOFFからONに変化したことを、黒丸から白丸への位置変化として示している。
検知スイッチ95aがOFFからONに変化したことで、大歯車76が「原点範囲」から外れて反時計方向(CCW方向)に回動していることが確認できる(検知A/B=ON/OFF)。
図19の「(c)間欠歯車噛合」の欄、及び図19の「(d)突出動作中」の欄においては、それぞれ図17(c)及び図17(d)に示す状態と左右対称に、カム部99がそれぞれ角度θ2からθ3にいたるまで反時計方向(CCW方向)に回転を継続していることを示している。つまり、間欠駆動歯車78bが大歯車76と噛み合って回転し、突出部材61bが突出し動作を行う。そして、突出部材61bは、右側の扉2bを開放し、検知スイッチ95a,95bはON/OFFの状態を保っている(検知A/B=ON/OFF)。
図19の「(e)突出完了直前」の欄は、図17(e)に示す状態と左右対称に大歯車76が更に反時計方向(CCW方向)に角度θ4(>θ3)まで回動して突出し動作が完了する直前の状態を示しており、開扉動作は概ね完了している。検知スイッチ95aはOFFからONになるので、モータ82への通電を切って停止させる。検知スイッチ95a,95bはON/ONとなる(検知A/B=ON/ON)。
図19の「(f)突出完了・停止」の欄は、図17(f)に示す状態と左右対称に、大歯車76が更に反時計方向(CCW方向)に最大動作角度である角度θ5(>θ4)まで回動して停止した状態を示している。モータ82は停止しており、突出動作は完了した状態となっている。検知スイッチ95a,95bはON/ONの状態を保っている(検知A/B=ON/ON)。
最大動作角度θ5は、大歯車ストッパ76Eとカバーストッパ71によるメカストッパとで設定される大歯車76の回転角度範囲θ6よりも小さく設定される(θ5<θ6)。
次に、図18及び図19により説明した大歯車76及びカム部99の動作による開扉動作及び検知スイッチ95a,95bのON/OFF状態の関係について、図20にまとめて示す。図20は、開扉装置の左側開扉動作及び右側開扉動作の際の、検知スイッチのON/OFF状態を説明する図である。
図20の(1)の欄は、左側の扉2aの開扉動作における図18の「(e)突出完了直前」の欄、及び図18の「(f)突出完了停止」の欄の状態と同じ状態を示し、検知スイッチ95a,95b(検知A/B)はON/ONとなっている。
図20の(2)の欄は、図18の「(b)原点外側移動」の欄、図18の「(c)間欠歯車噛合」の欄、及び図18の「(d)突出動作中」の欄で示した状態と同様の状態を示し、検知スイッチ95a,95b(検知A/B)はOFF/ONとなっている。
図20の(3)の欄は、図18の「(a)原点位置」の欄、及び図19の「(a)原点位置」の欄に示した状態と同様の状態を示し、検知スイッチ95a,95b(検知A/B)はOFF/OFFとなっている。
ここで、検知スイッチ95a,95bがOFF/OFFであれば、大歯車76及びカム部99が角度±θ1の範囲内にあり、大歯車76は左右いずれの間欠駆動歯車78a,78bとも噛合っていないので、左右の突出部材61a、61bはいずれも引き込んだ位置にあることが確認できる。したがって、検知スイッチ95a,95bが共にOFF/OFFであれば、開扉装置60は「原点範囲」にある、と確認できる。
図20の(4)の欄は、図19の「(b)原点外側移動」の欄、図19の「(c)間欠歯車噛合」の欄、及び図19の「(d)突出動作中」の欄で示した状態と同様の状態を示し、検知スイッチ95a,95b(検知A/B)はON/OFFとなっている。
図20の(5)の欄は、図19の「(e)突出完了直前」の欄で示した状態と同様の状態を示し、検知スイッチ95a,95b(検知A/B)はON/ONとなっている。
ちなみに、図20の(1)の欄及び図20の(5)の欄に示すように、検知スイッチ95a,95b(検知A/B)がON/ONであれば、開扉装置60による開扉動作が完了して、突出部材61a又は突出部材61bのいずれかが最大突出した状態にあることが確認できる。
次に、本実施形態における開扉装置60が左側の扉2aを開く際の動作について説明する。
「原点位置」の開扉装置60(図17(a)参照)では、図8に示したように、大歯車76はいずれの間欠駆動歯車78a,78bとも噛み合っておらず、左右の突出部材61a,61bは、まだ突出していない。検知スイッチ95a,95b(検知A/B))は、OFF/OFFになっている(図18(a)参照)。
図21から図25は、左側の突出部材の突出動作を説明するための平面図である。
図21に示すように、前記の「原点位置」(θ=0)の状態(図17(a)参照)から更にモータ82が正転方向に駆動して、大歯車76及びカム部99が「原点位置」から時計回りに角度θ1(図17(b)参照)となるように回転すると、大歯車76の切欠部76Daが間欠駆動歯車78aのストッパ部80aに近接した状態となる。この状態では、大歯車76はいずれの間欠駆動歯車78a,78bともまだ噛み合っておらず(図17(a)参照)、左右の突出部材61a,61bは、まだ突出していない。
検知スイッチ95aはOFFのままであり(図18(b)参照)、スイッチレバー先端部96Cbが、カム部99の第一周面99a(OFF面)から第二周面99b(ON面)に移動し(図17(c)参照)、検知スイッチ95bがOFFからONに切り替わる(図18(b)参照)。
図22に示すように、前記の状態(図21参照)から更にモータ82が正転方向に駆動して、大歯車76とカム部99が「原点位置」(θ=0)から時計回りに角度θ2(図17(c)参照)となるように回転すると、間欠駆動歯車78aは、大歯車76と噛み合って反時計回りに回転し始める。そして、間欠駆動歯車78aと一体になっている回転板73aも反時計回りに回転する。これにより回転板73aに噛み合う連結板65aは前方に向けて押し出される。連結板65aに接続された突出部材61aは前方に向けて突出動作を開始する。これにより左側の扉2aの開扉動作が開始する。
検知スイッチ95aはOFFであり、検知スイッチ95bはONである(図18(c)参照)。
図23に示すように、前記の状態(図22参照)から更にモータ82を正転方向に駆動して、大歯車76とカム部99が「原点位置」(θ=0)から時計回りに角度θ3(図17(d)参照)となるように回転すると、間欠駆動歯車78a及び回転板73aが反時計回りに更に回転する。間欠駆動歯車78aと一体になっている回転板73aも反時計回りに回転する。これにより連結板65aは更に前方に向けて押し出されて、突出部材61aは前方に向けて突出動作を継続する。
検知スイッチ95aはOFFであり、検知スイッチ95bはONである(図18(d)参照)。
図24に示すように、前記の状態(図23参照)から更にモータ82を正転方向に駆動して、大歯車76とカム部99が「原点位置」(θ=0)から時計回りに角度θ4(図17(e)参照)となるように回転し、間欠駆動歯車78a及び回転板73aが反時計回りに更に回転する。これにより連結板65aは更に前方に向けて押し出され、突出部材61aは予め設定した突出完了位置の直前に至る。
スイッチレバー96aのスイッチレバー先端部96Caは、第一周面99a(OFF面)から第二周面99b(ON面)に移動し、検知スイッチ95aは、OFFからONに切り替わる。つまり、検知スイッチ95a,95b(検知A/B)は、共にONとなる(図18(e)参照)。ちなみに、検知スイッチ95aがOFFからONになれば、左側の扉2aの開扉動作がほぼ完了したことが確認できるので、モータ82への通電が停止される。
前記の状態(図24参照)でモータ82への通電が停止されると、モータ82は減速しつつ停止する。モータ82が停止するまでの間は、大歯車76及びカム部99はその回転を継続する。
図25に示すように、前記の状態(図24参照)でモータ82への通電が停止してからモータ82が停止するまでの間に、大歯車76及びカム部99は、「原点位置」(θ=0)から時計回りに角度θ5(図17(f)参照)となるように回転する。そして、間欠駆動歯車78a及び回転板73aは、反時計回りに回転する。これにより左側の突出部材61aは、前記の状態(図24参照)よりも更に突出して最大突出量H2に達する。
検知スイッチ95a,95bの出力は共にONとなっている(図18(f)参照)。
開扉装置60は、図21から図25に示す一連の動作によって、左側の扉2aの開扉動作を行う際に、検知スイッチ95a,95bを、図20の(3)の「検知A/B=OFF/OFF」、図20の(2)の「検知A/B=OFF/ON」、図20の(1)の「検知A/B=ON/ON」の順番で切り替える。
開扉装置60は、このような図21から図25までの一連の工程によって左側の扉2aの開扉動作を終了する。
そして、開扉装置60は、モータ82を逆転方向に回転させて(反転させて)、前記の開扉動作の工程とは逆の、図25から図21の状態を経由して、図8の原点位置に戻る工程を行う。この戻り動作の際には、検知スイッチ95a,95b(検知A/B)は、突出部材61aの突出動作の完了を示す、検知A/B=ON/ONの状態から、突出部材61aの突出途中状態を示す、検知A/B=OFF/ONの状態を経て、「原点位置」を示す検知A/B=OFF/OFFの状態となる。すなわち、開扉装置60は、検知スイッチ95a,95bを、図20の(1)の「検知A/B=ON/ON」、図20の(2)の「検知A/B=OFF/ON」、図20の(3)の「検知A/B=OFF/OFF」の順番で切り替える。
次に、本実施形態における開扉装置60が右側の扉2bを開く際の動作について説明する。
図26から図30は、右側の突出部材の突出動作を説明するための平面図である。
図26に示すように、前記の「原点位置」(θ=0)の状態(図17(a)参照)から更にモータ82が逆転方向に駆動して、大歯車76及びカム部99が「原点位置」から反時計回りに角度θ1(図17(b)のθ1と同じ)となるように回転すると、大歯車76の切欠部76Dbが間欠駆動歯車78bのストッパ部80bに近接した状態となる。この状態では、大歯車76はいずれの間欠駆動歯車78a,78bともまだ噛み合っておらず、左右の突出部材61a,61bは、まだ突出していない。
検知スイッチ95bはOFFのままであり(図19(b)参照)、スイッチレバー先端部96Caが、カム部99の第一周面99a(OFF面)から第二周面99b(ON面)に移動し、検知スイッチ95aがOFFからONに切り替わる(図19(b)参照)。
図27に示すように、前記の状態(図26参照)から更にモータ82が逆転方向に駆動して、大歯車76とカム部99が「原点位置」(θ=0)から反時計回りに角度θ2(図17(c)のθ2と同じ)となるように回転すると、間欠駆動歯車78bは、大歯車76と噛み合って時計回りに回転し始める。そして、間欠駆動歯車78aと一体になっている回転板73bも時計回りに回転する。これにより回転板73bに噛み合う連結板65bは前方に向けて押し出される。連結板65bに接続された突出部材61bは前方に向けて突出動作を開始する。これにより右側の扉2bの開扉動作が開始する。
検知スイッチ95aはONであり、検知スイッチ95bはOFFである(図19(c)参照)。
図28に示すように、前記の状態(図27参照)から更にモータ82を逆転方向に駆動して、大歯車76とカム部99が「原点位置」(θ=0)から反時計回りに角度θ3(図17(d)のθ3と同じ)となるように回転すると、間欠駆動歯車78b及び回転板73bが時計回りに更に回転する。間欠駆動歯車78bと一体になっている回転板73bも時計回りに回転する。これにより連結板65bは更に前方に向けて押し出されて、突出部材61bは前方に向けて突出動作を継続する。
検知スイッチ95aはONであり、検知スイッチ95bはOFFである(図19(d)参照)。
図29に示すように、前記の状態(図28参照)から更にモータ82を逆転方向に駆動して、大歯車76とカム部99が「原点位置」(θ=0)から反時計回りに角度θ4(図17(e)のθ4と同じ)となるように回転し、間欠駆動歯車78b及び回転板73bが時計回りに更に回転する。これにより連結板65bは更に前方に向けて押し出され、突出部材61bは予め設定した突出完了位置の直前に至る。
スイッチレバー96bのスイッチレバー先端部96Cbは、第一周面99a(OFF面)から第二周面99b(ON面)に移動し、検知スイッチ95bは、OFFからONに切り替わる。つまり、検知スイッチ95a,95b(検知A/B)は、共にONとなる(図19(e)参照)。ちなみに、検知スイッチ95bがOFFからONになれば、右側の扉2bの開扉動作がほぼ完了したことが確認できるので、モータ82への通電が停止される。
前記の状態(図29参照)でモータ82への通電が停止されると、モータ82は減速しつつ停止する。モータ82が停止するまでの間は、大歯車76及びカム部99はその回転を継続する。
図30に示すように、前記の状態(図29参照)でモータ82への通電が停止してからモータ82が停止するまでの間に、大歯車76及びカム部99は、「原点位置」(θ=0)から反時計回りに角度θ5(図17(f)のθ5と同じ)となるように回転する。そして、間欠駆動歯車78b及び回転板73bは、時計方向に回転する。これにより右側の突出部材61bは、前記の状態(図29参照)よりも更に突出して最大突出量H2に達する。
検知スイッチ95a,95bの出力は共にONとなっている(図19(f)参照)。
開扉装置60は、図26から図30に示す一連の動作によって、右側の扉2bの開扉動作を行う際に、検知スイッチ95a,95bを、図20の(3)の「検知A/B=OFF/OFF」、図20の(4)の「検知A/B=ON/OFF」、図20の(5)の「検知A/B=ON/ON」の順番で切り替える。
開扉装置60は、このような図26から図30までの一連の工程によって右側の扉2bの開扉動作を終了する。
そして、開扉装置60は、モータ82を正転方向に回転させて(反転させて)、前記の開扉動作の工程とは逆の、図30から図26の状態を経由して、図8の原点位置に戻る工程を行う。この戻り動作の際には、検知スイッチ95a,95b(検知A/B)は、突出部材61bの突出動作の完了を示す、検知A/B=ON/ONの状態から、突出部材61bの突出途中状態を示す、検知A/B=ON/OFFの状態を経て、「原点位置」を示す検知A/B=OFF/OFFの状態となる。すなわち、開扉装置60は、検知スイッチ95a,95bを、図20の(5)の「検知A/B=ON/ON」、図20の(4)の「検知A/B=ON/OFF」、図20の(3)の「検知A/B=OFF/OFF」の順番で切り替える。
次に、本実施形態の開扉装置60が左側の扉2aを開いた後、これに引き続いて右側の扉2bをも開く開扉動作について説明する。
図31の(a)〜(e)は、本実施形態の開扉装置による左右の冷蔵室扉の開扉動作の説明図である。
図31(a)に示すように、開扉装置60は原点位置にあって、突出部材61a,61bは引き込んでおり、左右の扉2a,2bは閉じた状態である。
前記したように、使用者が左開扉スイッチ48a(図1参照)を操作すると、開扉装置60のモータ82(図8参照)が正転方向に回転する。
その結果、図31(b)に示すように、左側の扉2aに対応した突出部材61aが突出して、扉2aが時計回り(CW方向)に回動して開く。扉2aは、突出部材61aの突出速度に応じた時計回り(CW方向)の角速度をもつ。
図31(c)に示すように、扉2aは惰性で開き続ける。この際、ヒンジ17aと扉2aとの間には摩擦トルクがあるので、扉2aは徐々に減速しながら開く。一方、開扉装置60のモータ82が逆転方向に回転し、突出部材61aは引き込む。
次に、図31(d)に示すように、扉2aが90°開いた状態で、使用者が右開扉スイッチ48b(図1参照)を操作すると、前記したように、モータ82が逆転方向に回転する。これにより突出部材61bが突出すると、右側の扉2bは反時計回り(CCW方向)に回動して開く。扉2bは、突出部材61bの突出速度に応じた反時計回り(CCW方向)の角速度をもつ。
図31(e)に示すように、扉2bは惰性で開き続ける。この際、ヒンジ17bと扉2bとの間には摩擦トルクがあるので、扉2bは徐々に減速しながら開く。一方、開扉装置60のモータ82が正転方向に回転し、突出部材61bは引き込む。
以上説明したように、本実施形態による開扉装置60は、左開扉スイッチ48aを操作することで扉2aを開くことができると共に、右開扉スイッチ48bを操作することで扉2bを開くことができる。
次に、扉2a,2bを開く際の開扉力の特性について説明する。
図32は、閉鎖された冷蔵室扉を開く際の、扉の開角度と開扉力との関係を示すグラフである。
図32に示すように、グラフの横軸は扉2a,2bの開角度であり、θd=0が扉2a,2bが閉じた状態であり、θdmaxが最大開角度である。このθdmax(最大開角度)は、例えば扉2a,2bが図示しないストッパや、冷蔵庫1の設置場所に近接した図示しない壁面等に当接した場合の開角度を表す。θ1は、クローザ37(図6参照)が扉2a,2bに閉じ力を生じさせる角度ψ2(図6(b)参照)である。θ2は、開扉装置60の突出部材61a,61bによって扉2a,2bが押し開かれる角度である。
グラフの縦軸は扉2a,2bの開扉力を示す。この開扉力としては、例えばヒンジ17a,17b(図1参照)まわりのトルクでもよいし、又は扉2a,2bのヒンジ17a,17b(図1参照)から最も離れた扉端部、手掛け部等における引き力でもよい。
扉2a,2bのドアパッキン15(図2参照)は、図示しないマグネットを内蔵しており、断熱箱体10(図2参照)の前面に吸着して隙間が生じないようにしている。これにより扉2a,2bの開き始めは、クローザ負荷に加えてマグネットが吸着した断熱箱体10の前面からドアパッキン15を引き剥がすための開扉力(マグネット負荷)が必要となる。この引き剥しのための開扉力(マグネット負荷)は、扉2a,2bの開き始めは大きく、わずかでも開けばマグネットの吸着力(磁気力)は急激に低下するので開扉力は急激に小さくなる。
また、左側の扉2aには回転シキリ18が設けられているので、扉2aを開く際には回転シキリ18を回転シキリ支点19のまわりに回動させるための開扉力(回転シキリ負荷)が更に加わる。つまり、左側の扉2aは、右側の扉2bと比べて開き始めにおける開扉力が大となる。
支点摩擦負荷は、主にヒンジ17a,17bの摩擦抵抗により生じる摩擦トルクであるから、開角度の全範囲においてほぼ一様に生じる。
したがって、扉2a,2bの開扉力は、開き始めのθd=0において最大であり、クローザ範囲であるθ1までの間に急激に減少し、最大開角度であるθdmaxまではほぼ一様な摩擦トルクが生じる。
次に、開扉装置60によって扉2a,2bを開く際の、好適な開き特性(角速度特性、角度変位特性)について説明する。
使用者の左開扉スイッチ48a又は右開扉スイッチ48bの操作によって、前記のように、突出部材61a又は突出部材61bが動作すると、扉2a,2bは使用者に向かって開く。このとき扉2a,2bの動きに違和感がなく自然な印象が感じられるように、扉2a,2bを開くことが望ましい。
扉2a,2bは閉じた状態では言うまでもなく速度=0の停止状態であり、停止状態から開扉動作を行うには、速度が0から加速する加速度運動を行う。扉2a,2bは回転扉なので、その運動は角加速度運動であるが、説明を解かりやすくするために扉2a,2bは単に加速度運動を行うものとする。
使用者に自然な印象を与える開扉動作としては、突出部材61a,61bが突出動作を行っている間においては、扉2a,2bがスムーズな一様な加速を行うものが望ましい。ここで、「一様な加速を行う」とは等加速度運動を意味し、等加速度運動の間は速度が直線的に増加していく。
ここで、等加速度運動は自然界にある物体の運動として最も一般的なものなので、自然なものとして感じられる。例えば、自由落下の際の物体の運動は等加速度運動であり、あるいは摩擦のある面を滑りつつ減速する物体の運動は負の方向への等加速度運動である。
このように、物体が一定の力を受けながら加減速する運動は全て等加速度運動なので、日常的に目にしている運動であるためごく自然なものと感じられる。したがって、扉2a,2bは、等加速度運動に近似した開き動作を行うことで、自然な印象を与える開扉動作となる。
等加速度運動を行う物体の速度は、時間的に一定の割合で増加ないし減少する。したがって、本実施形態の開扉装置60においては、突出部材61a,61bの突出動作を、突出の当初は低速で、徐々に速度を増加させて、突出の終了の間際に最大速度が得られるように設定する。これにより突出部材61a,61bは、等加速度運動に近い扉2a,2bの加速感を得ることができる開扉動作を行い、開扉動作が自然に感じられる開扉装置60を実現する。
突出部材61a,61bの動作は直線運動であり、扉2a,2bは回転運動なので、その運動方向や単位も異なるが、後に詳しく説明するように、突出部材61a,61bの速度と扉2a,2bの角速度との間には比例関係がある。突出部材61a,61bが等加速度運動に近似した挙動を行うことで、扉2a,2bが好適な等角加速度運動に近似した挙動をする。
図33(a)は、冷蔵室扉を開く際の好ましい冷蔵室扉の角速度と開く時間との関係を示すグラフである。横軸は時間を示し、縦軸は扉2a,2bの角速度を示す。図33(b)は、冷蔵室扉の開角度と開く時間との関係を示すグラフである。横軸は時間を示し、縦軸は扉2a,2bの開角度を示す。
図33(a)に示すように、時間t=0では扉2a,2bは閉じられている。t=0からt1に至るまでの時間遅れののち、t=t1で開扉装置60に通電して開扉装置60を動作させると、t=t1からt2に至るまで、突出部材61a,61bは、扉2a,2b方向に突出する。t=t1からt2に至るまでは、扉2a,2bを加速しつつ開く加速範囲となる。すなわち、図31(a)から図31(b)における扉2aの動作、又は図31(c)から図31(d)における扉2bの動作は、この加速範囲の動作となる。
この加速範囲においては、角速度は時間と共に一様に増加するのでグラフは右上がりの直線となり、t=t2において最大の角速度ωdmaxとなる。
t=t2からt=t3に至るまでの間、扉2a,2bは突出部材61a,61bによる加速は行われない。t=t2からt=t3に至るまでの間は、扉2a,2bが惰性で開き続ける惰性範囲となる。
すなわち、図31(b)から図31(c)における扉2aの動作、又は図31(d)から図31(e)における扉2bの動作は、惰性範囲の動作となる。その惰性範囲の間、扉2a,2bは、ヒンジ17a,17bから摩擦抵抗を受けるので、惰性で開き続けると共に徐々に減速する。
摩擦抵抗は、一般的に質量と摩擦係数とを掛けて得られる一定の力であり、本実施形態のように回転ヒンジの場合には、扉2a,2bの質量を支持する部分の直径に応じて摩擦トルクが生じる。
扉2a,2bが惰性で開く間、一定の摩擦トルクによって減速するので、その惰性範囲の間の角速度は時間と共に一様に減少し、グラフは右下がりの直線となる。t=t3においてストッパ等に当接して扉2a,2bが停止するまでは、t=t2以降t=t3までの間は、負の方向への等加速度運動となる。
なお、ヒンジ17a,17bにおける摩擦係数が無視してよいほど小さい場合には、減速範囲において角速度は減少しないから、角速度は破線で示すように最大角速度ωdmaxのままで一定となる。
図33(b)に示す角度変位のグラフにおいて、時間t=t1からt2に至る加速範囲において、扉2a,2bの開角度θdは、下方に凸となる二次曲線的に増加する。また、時間t2からt3までの惰性範囲において、扉2a,2bの開角度θdは、上方に凸となる二次曲線的に増加する。そして、扉2a,2bの開角度θdは、t=t3において最大開角度θdmaxとなる。前記の下方に凸の二次曲線と上方に凸の二次曲線とは連続している。ここで、θdmaxとしては90゜ないしそれ以上の角度に設定すれば、扉2a,2bが食品の出し入れを行うのに十分に開かれるので、使いやすく好適である。
次に、開扉装置60によって冷蔵室扉2a,2bを開く際の、好適な開き動作時間について説明する。
一般に、人の反射時間は0.4秒から0.5秒であり、これは例えば自動車を運転している際に、危険を察知してブレーキが必要と判断した時点から、アクセルペダルから足を動かすまでの時間として知られている。
人は予見していない現象がこの反射時間よりも短時間に発生すると反応することができないので、そのような現象は高速すぎて唐突なものと感じ、違和感を覚える。したがって、開扉装置60を用いて扉2a,2bを開く際には、左開扉スイッチ48a又は右開扉スイッチ48bを操作してから、扉2a又は扉2bが開き始めて最大の速度ないし最大の角速度ωdmaxに到達するまでの動作時間t2を0.4秒以上に設定すれば、扉2a,2bが手前に開いてくる動作に対して使用者は反応することができるので、開扉動作を唐突と感じることがなく、自然な動作であると感じる。
左開扉スイッチ48a及び右開扉スイッチ48bの操作時としては、これらを手指で押した時点であってもよいし、これらから手指を離した時点であってもよい。しかし、これらから手指を離すよりも先に扉2a,2bが開き始めると、手指が開く扉2a,2bに押されて唐突な印象となる。よって、扉2a,2bは、左開扉スイッチ48a又は右開扉スイッチ48bから手指を離した後に開き始めるものが望ましい。
前記の時間t2を0.4秒以上とするためには、例えば使用者が左開扉スイッチ48a又は右開扉スイッチ48bを操作した後、0.1秒程度の時間遅れをもってt1となるタイミングで開き始めることが望ましい。そして、t1となった後にモータ82に通電して開き動作を開始し、最大の速度ないし最大の角速度ωdmaxに到達するまでの突出動作時間T=(t2−t1)を0.3秒以上に設定することが望ましい。
一方、動作時間t2が過大であると、開扉動作が不自然に遅いと感じられるので、動作時間t2は、最大でも人の反射時間よりもやや遅い程度の0.8秒以下となるように設定することが望ましい。このように設定することで、開扉装置60は、その開扉動作が速すぎて唐突にすぎることがなく、かつ遅すぎることもなく、適切な開扉動作を行うことができる。
すなわち、モータ82に通電して突出部材61a,61bが突出動作を開始し、扉2a,2bが開き始めて最大の速度ないし最大の角速度ωdmaxに到達するまでの突出動作時間Tは、0.3秒以上、0.7秒以下とすることが好適である。
前記したように、自然な扉開動作を実現するには、扉2a,2bの開き特性を等加速度ないし等角加速度運動に近似させることが望ましい。また、扉2a,2bが開き始めて最大速度ないし最大角速度に到達するまでの突出動作時間Tは、0.3秒以上、0.7秒以下に設定することが望ましい。また、開扉装置60は、モータ82に特段の速度制御を行うことなく、例えば一定の定格回転速度でモータ82を回転させることで、突出部材61a,61bに等加速度運動に近似した動作を行わせる構成が望ましい。
<突出部材動作>
次に、回転板73a,73bの回転動作により連結板65a,65bと突出部材61a,61bとが移動して扉2a,2bが開く動作について説明する。なお、以下では、扉2aが開く動作についてのみ説明し、この扉2aと同様に動作する扉2bについての説明は省略する。
図34の(a)から(f)は、開扉装置における回転板と連結板との動作説明図である。なお、図34の(a)から(f)中、符号raから符号rqは、連結板65aの連結板65aに設けられた歯101A〜101Pと、回転板73aに設けられた歯102a〜歯102qとの噛み合いピッチ円半径を表している。
図34(a)に示すように、回転板73aは原点位置にある。前記したように、左開扉スイッチ48aが使用者により操作されて回転板73aが反時計方向に回転を開始する。
図34(b)に示すように、回転板73aの歯102c,102dの間に、連結板65aの歯101Cが噛み合って、連結板65aが矢印方向に移動する。これにより、突出部材61aは、突出動作を行い始める。つまり、扉2aは開き始める。
図34(c)に示すように、回転板73aが更に回転し、回転板73aの歯102f,102gの間に、連結板65aの歯101Fが噛み合って連結板65aが矢印方向に更に移動する。
図34(d)に示すように、回転板73aが更に回転し、回転板73aの歯102j,102kの間に、連結板65aの歯101Jが噛み合って連結板65aが矢印方向に更に移動する。
図34(e)に示すように、回転板73aが更に回転し、回転板73aの歯102n,102pの間に、連結板65aの歯101Nが噛み合って連結板65aが矢印方向に更に移動する。
図34(f)に示すように、回転板73aが更に回転し、回転板73aの最も外周にある歯102qが連結板65aの後端にある歯101Pを前方に向けて押圧する。連結板65aは矢印方向に更に移動して最大突出量H2となるように突出部材61aを突出させる。突出部材61aの突き出し速度は最大速度となり、その直後に停止する。
そして、回転板73aは、前記したように、逆転方向に(時計回りに)回転して、図34(f)から図34(b)の状態を経て図34(a)に示した原点位置に復帰する。
次に、連結板65aと突出部材61aと扉2a,2bの速度特性について説明する。
前記したように、連結板65aと回転板73aのそれぞれに設けられた歯101Aから101P、及び歯102aから102qは、半径がraと最も小さい歯101Aと歯102aから噛み合いが始まる。最終的に半径が最大のrqに至るまで、半径が徐々に増加しつつ噛み合っていく。この際、回転板73aの回転動作は、連結板65aと突出部材61aの直線動作に変換される。
モータ82が一定速度の定格回転速度で回転し、減速歯車列83によって減速された適切な回転速度で回転板73aが回転した場合には、連結板65aと突出部材61aの移動速度は、動き始めは低速となる。その後、連結板65aと突出部材61aの移動速度は、徐々に加速して最後に最大速度になるような加速特性をもつ。この加速の程度は、回転板73aの最大半径rqと最小半径raとの比、すなわちrq/raで表される。
次に、突出部材61aの突出速度特性及び突出力特性について説明する。
図35(a)は、突出部材が突出する際の、速度と時間との関係を示すグラフである。横軸は時間であり、縦軸は突出部材の突出速度である。図35(b)は、突出部材が突出する際の、力と時間との関係を示すグラフである。横軸は時間であり、縦軸は突出部材の突出力である。なお、図35(a)及び(b)中、t=0は図34(a)の状態を示し、突出部材61aが動作し始めた時点である。Tは、突出部材61aが最大の速度ないし最大の角速度ωdmaxに到達するまでの時間[T=(t2−t1)]である(但し、t1は図34(a)の状態になるまでの時間であり、t2は図34(f)となるまでの時間である)。
回転板73aの回転速度をN(rpm)とすると、回転板の角速度ω(rad/s)は
ω=(N/60)×2π ・・・・(式1)
で表される。
この時の突出部材61aの速度は、連結板65aの歯101A〜101Pに噛み合う回転板73aの歯102a〜102qのピッチ円半径の接線方向速度となる。
したがって、図35(a)に示すt1(図34(a)の状態になるまでの時間)における突出部材61aの速度Vaは、ピッチ円半径raの部分の接線方向速度となるので、
Va=ω×ra=(N/60)×2π×ra ・・・・(式2)
となる。このVaはごく低速であり、速度0の停止状態から加速される。
また、図35(a)に示すt2(図34(f)の状態になるまでの時間)における突出部材61aの速度Vqは、ピッチ円半径rqの部分の接線方向速度となるので、
Vq=ω×rq=(N/60)×2π×rq ・・・・(式3)
となる。
式2と式3とから明らかなように、突出部材61aの突出速度は、回転板73aと連結板65aとの間で噛み合う歯のピッチ円半径に比例する。
また、前記のように、ピッチ円半径raからrqは、ra<rb<rc<rd<re<rf<rg<rh<rj<rk<rm<rn<rp<rqの関係があるので、例えばrb/raの比、rc/rbの比のように、隣接した歯のピッチ円半径が概ね一様に増加するようにすれば、回転板73aの角速度に比例して突出部材61aの突出速度は増加する。
したがって、この開扉装置60によれば、モータ82に特段の速度制御を行うことなく、例えば一定の定格回転速度でモータ82を回転させることで、突出部材61a,61bに等加速度運動に近似した動作を行わせることができる。
そして、この開扉装置60においては、前記したようにt=t2となると、モータ82停止により回転板73aが一旦停止し、その後、モータ82が逆回転することにより突出部材61aが原点に復帰する。
また、突出部材61aの突出力は、回転板73aと連結板65aとの間で噛み合う歯のピッチ円半径に反比例する。
つまり、突出部材61aの突出力は、図35(b)に示すように、t=t1における突出し力Paが最大値となる。また、突出部材61aの突出力は、連結板65aと噛み合う回転板73aのピッチ円半径がraからrqに増加するに伴って減少する。そして、突出部材61aの突出力は、t=t2において最小値Pqとなるような、一様な減少傾向をもつ。
なお、以上の説明においては、左側の突出部材61aの動作について説明したが、右側の突出部材61bについても左右対称となる以外は左側の突出部材61aと同様に動作する。
次に、開扉動作の際の突出部材61a,61bの突出速度と、扉2a,2bのヒンジ17a,17bから最も離れた扉端部における速度との関係について説明する。
図36(a)は、左側の突出部材を突き出す際の、突出部材の速度と左側冷蔵室扉の端部の速度との関係を示す説明図であり、図36(b)は、右側の突出部材を突き出す際の、突出部材の速度と右側冷蔵室扉の端部の速度との関係を示す説明図である。
図36(a)に示すように、突出部材61aの突出速度をV(mm/sec)、ヒンジ17aから突出部材61aまでの距離をRda(mm)、ヒンジ17aから最も離れた扉端部までの距離をLda(mm)、ヒンジ17aから最も離れた扉端部での接線方向速度をWa(mm/sec)、扉2aの角速度をωda(rad/sec)、とすると、次式(4)が成立する。
ωda=V/(2×π×Rda)=Wa/(2×π×Lda) ・・・・(式4)
ヒンジ17aから最も離れた扉端部での接線方向速度Waと、突出部材61aの突出速度Vとの関係は、
Wa=(Lda/Rda)×V ・・・・(式5)
となる。
つまり、接線方向速度Waは、ヒンジ17aを基準位置とした際の扉2aの幅と突出部材61aの取付位置との比(Lda/Rda)に比例する。
したがって、突出部材61aが等加速度運動に近似した運動を行えば、扉2aの扉端部も等加速度運動に近似した運動を行うので、自然な開き方を得ることができる。
接線方向速度Waの最大値Waqは、突出速度Vが最大値をとるV=Vqの場合であり、次式(6)
Waq=(Lda/Rda)×Vq ・・・・(式6)
で表される。
次に、扉2bの開扉動作の際の突出部材61aの突出速度と、扉2bのヒンジ17bから最も離れた扉端部における速度との関係について説明する。
図36(b)に示すように、突出部材61bの突出速度をV(mm/sec)、ヒンジ17bから突出部材61bまでの距離をRdb(mm)、ヒンジ17bから最も離れた扉端部までの距離をLdb(mm)、ヒンジ17bから最も離れた扉端部での接線方向速度をWb(mm/sec)、冷蔵室扉2bの角速度をωdb(rad/sec)、とすると、次式(7)が成立する。
ωdb=V/(2×π×Rdb)=Wb/(2×π×Ldb) ・・・・(式7)
ヒンジ17bから最も離れた扉端部での接線方向速度Wbと突出部材61bの突出速度Vとの関係は、
Wb=(Ldb/Rdb)×V ・・・・(式8)
となる。
つまり、接線方向速度Wbは、ヒンジ17bを基準位置とした際の扉2bの幅と突出部材61bの取付位置との比(Ldb/Rdb)に比例する。
したがって、突出部材61bが等加速度運動に近似した運動を行えば、扉2bの扉端部も等加速度運動に近似した運動を行うので、扉2bは自然な開き方を行うことができる。
接線方向速度Wbの最大値Wbqは、突出し速度Vが最大値をとるV=Vqの場合であり、次式(9)
Wbq=(Ldb/Rdb)×Vq ・・・・(式9)
で表される。
本実施形態の開扉装置60によれば、モータ82を正転方向に一定回転速度で回転すれば、突出部材61aは等加速度運動に近似した運動を行う。一方、モータ82を逆転方向に一定回転速度で回転すれば、突出部材61bは等加速度運動に近似した運動を行う。
したがって、開扉装置60は、特段の速度制御を行うことなく、モータ82を正転又は逆転方向に一定速度で回転すれば自然な開扉動作を行うことができる。
よって、この開扉装置60によれば、制御回路を簡素化することができる。また、開扉装置60によれば、安価な構成で開扉動作に自然な印象を与えることができる。
次に、開扉装置60と扉2aと扉2bの好適な配置について説明する。
再び図8に戻って、開扉装置60は、1つのモータ82の正転方向又は逆転方向に回転する際の駆動力を、大歯車76と間欠駆動歯車78a,78bとに伝達して扉2a,2bに対応した突出部材61a、61bの突出動作を行う。
突出部材61aの突出動作と突出部材61bの突出動作とは、駆動力、速度共に、摩擦抵抗やモータ82の正転方向と逆転方向の特性の相違等の誤差を除けば同一となる。すなわち、突出部材61aの突出速度と突出部材61bの突出速度は略等しく、その最大値は共に図35(a)に示すVq(mm/sec)とすることができる。
開扉装置60に設けられた突出部材61a,61bは、それぞれ扉2aと扉2bとに対向した位置にあって、扉2aと扉2bの両方を順次に開くことができる。
突出部材61a、61bは、開扉装置60のケース62の左側面と右側面に近接して配置されており、その間隔は図36に示すGであり、一定の値となる。このGの値は、例えば、150mmから180mm程度に設定することができる。
また、図示しないが、扉2aの幅Lda(図36(a)参照)と扉2bの幅Ldb(図36(b)参照)とが等しく(Lda=Ldb)、扉2a及び扉2bが左右対称である場合には、開扉装置60の左右中心を、扉2a,2bの扉境界72a,72b(図36(a)及び(b)参照)の中心と合致させて左右対称の位置に配置する。これにより、扉2aにおける突出部材61aとヒンジ17aの距離Rda(図36(a)参照)と、扉2bにおける突出部材61bとヒンジ17bの距離Rdb(図36(b)参照)とは、Rda=Rdbとなる。このような開扉装置60の配置は、扉2aと扉2bの開き方に相違が生じないので望ましい。
次に、扉2aと扉2bの幅が異なる場合の開扉装置60の好適な配置について説明する。
開扉装置60により扉2a,扉2bの開扉動作を行う際、使用者は冷蔵庫1の正面に立ち、扉2a,2bの扉境界72a,72b(図36(a)及び(b)参照)の前辺りから手を伸ばして左開扉スイッチ48a又は右開扉スイッチ48bを操作する。
使用者から見ると、開扉装置60が動作して扉2aが開く際には、扉2aのヒンジ17aから最も離れた扉端部が接線速度Waで自分に向って接近する動作となる。また、扉2bが開く際には、扉2bのヒンジ17bから最も離れた扉端部が接線速度Wbで自分に向かって接近する動作となる。
したがって、扉2a,2bの開扉動作に際しては、扉2a,2bの最大接線速度Waq,Wbq(図36(a)及び(b)参照)が略等しければ、使用者は扉2a,2bの開き速度を略等しいと感じる。したがって、扉2a,2bの幅が異なる場合にも、最大接線速度Waq=Wbqとなるような位置に開扉装置60を設けることが望ましい。そのような条件を満たす開扉装置60の配置位置について、次に説明する。
図36(a)及び図36(b)に示すように、突出部材61aと突出部材61bとの距離をG、扉境界72aから突出部材61aまでの距離をGa、扉境界72bから突出部材61bまでの距離をGb、とすると、扉境界72a,72b間の距離は、扉2a,2bの幅と比べて十分に小さいものとしてこれを無視することができる。つまり、次式(10)が成立する。
G=Ga+Gb ・・・・(式10)
また、図36(a)及び(b)に示すように、次式(11)及び次式(12)が成立することが明らかである。
Rda=Lda−Ga ・・・・(式11)
Rdb=Ldb−Gb ・・・・(式12)
また、前記式6より
Waq=(Lda/Rda)×Vq={Lda/(Lda−Ga)}×Vq ・・・・(式13)
が導かれ、(式9)より
Wbq=(Ldb/Rdb)×Vq={Ldb/(Ldb−Gb)}×Vq ・・・・(式14)
が導かれる。
そして、前記式13と前記式14とが等しくなる条件は、両式の右辺を等しいとおいて、
{Lda/(Lda−Ga)}=(Ldb/(Ldb−Gb)} ・・・・(式15)
となり、式を展開して更に(式10)を代入すると
Lda×{Ldb−(G−Ga)}=Ldb×(Lda−Ga)
Lda×(G−Ga)=Ldb×Ga
Lda×G=(Lda+Ldb)×Ga
ゆえに、Ga=G×{Lda/(Lda+Ldb)} ・・・・(式16)
となる。
式16の左辺のGaは、扉2aを開放する突出部材61aの扉境界72aからの距離である。したがって、このGaを、開扉装置60を冷蔵庫1に取り付ける際の代表寸法とすれば、前記式16の右辺は、開扉装置60の構成によって定まる突出部材61aと突出部材61bとの間の距離Gと、扉2aのヒンジ17aからの幅Ldaと、扉2bのヒンジ17bからの幅Ldbと、によって定まる定数となる。
すなわち、前記式16によって求められるGaの位置に突出部材61aが配置されるように開扉装置60を冷蔵庫1に設けることによって、突出部材61a,61bの突出速度が等しい場合に扉2a,2bの最大接線速度Waq,Wbqが等しくなる。これにより、使用者は扉2a,2bの開速度が概ね等しいと感じることができる。したがって、この開扉装置60によれば、扉2a,2bの幅が異なる場合であっても開扉動作のバランスが良く、自然な開扉動作を実現できる。
ここで、扉2a,2bの幅Lda,Ldb(図36(a)及(b)参照)が最大約500mmから最小約280mmまでの各種冷蔵庫1を用いて扉2a,2bの開速度を評価した。その結果、前記の最大接線速度Waq,Wbqを概ね700から1100mm/secとなるように設定すれば、使用者は扉2a,2bの開速度が速すぎることも遅すぎることもない適切な開扉動作として感じられる、ということが判明した。
ところで、図36(a)及び(b)に示した扉2aには、回転シキリ18が設けられている。したがって、扉2aを開く際には、回転シキリ負荷(図32参照)が加算されるので、開扉力が扉2bを開く場合よりも大である。したがって、扉2bを開く場合と比較して扉2aは開きにくい。そこで、開扉装置60の取り付け位置としては、前記Ga(式16参照)よりも、開扉装置60を扉2bの側に移動すること、言い換えれば図36(a)に示すRda寸法を大とすることが望ましい。これにより扉2aを開く際のヒンジ17aまわりのモーメントを大として、扉2aを開きやすくすることができる。
次に、突出部材61aによる突出力の特性について説明する。
前記したように、扉2a,2bの開き力特性(図32参照)は、扉2a,2bの開き始めはマグネットが吸着したドアパッキン15を引きはがすための開き力が必要なので開き力は大きい。しかし、わずかでも扉2a,2bが開けばマグネットの磁気吸着力は急激に低下するので、開き力は急激に小さくなる。
したがって、突出部材61aの好適な突出力の特性としては、開動作の開始時の突出力が最大となるような特性が望ましい。
図34(a)から(f)に示したように、連結板65aと回転板73aの歯の噛み合いは、最も小さいピッチ半径raで始まり、最も大きいピッチ半径rqにまで至る。その間、ピッチ半径が徐々に増加しながら、回転板73aの回転動作は、連結板65a及び突出部材61aの直線動作に変換される。
このような構成の開扉装置60によれば、前記のように、連結板65aから突出部材61aに伝達される突出力は、動き始めは大きく、徐々に低減して最後に最小となる。この突出力の低減程度は、前記のように、回転板73aの最小半径raと最大半径rqとの比(ra/rq)で表される。
また、このような構成の開扉装置60によれば、前記のように、突出動作時間Tを0.3秒以上0.7秒以下に設定することで、開動作を唐突と感じることがなく、かつ遅すぎることもなく、自然な動作であると感じる。
また、開扉装置60においては、前記したように、突出部材61aが突出動作を完了して扉2aが最大の速度ないし最大の角速度に至るまでの時間は、図34(a)から図34(f)の位置まで回転板73aが回動する突出動作時間Tに等しい。
この開扉装置60によれば、モータ82から回転板73aに至るまでの減速比を適切に設定し、前記のように、突出し動作時間Tを0.3秒以上0.7秒以下に設定することができる。したがって、開扉装置60は、開扉動作に適切な時間を要することで、唐突でなく自然な動作と感じられる開扉動作を実現できる。
次に、扉ポケット13に収納された食品の量の多少による開扉特性への影響について説明する。
開扉装置60は、開扉動作の突出動作時間Tが0.3秒以上になるように、減速歯車の減速比を設定しているので、扉ポケット13に食品が何も入っておらず、扉2a,2bの自重のみの最も軽量な場合であっても、突出動作時間Tは0.3秒以下にはならない。
したがって、開扉装置60によれば、扉2a,2bが0.3秒以下の短時間に加速して唐突に開くことはない。
また、扉ポケット13に、例えば5kgから10kg程度の多量の食品が収納されていると、扉2a,2bの自重のみの場合よりも慣性質量が大となる。しかし、この開扉装置60によれば、突出部材61aによる突出力が扉2aの開き始めに最大となるので、突出部材61aの突出速度は幾分低速になるものの、この速度低下の影響を使用者が明確に感じられない程度に低減することができる。
また、この開扉装置60によれば、突出動作時間Tを0.3秒以上、0.7秒以下に設定できるので、扉2a,2bの扉ポケット13に収納された食品量の多寡に関わらずに、開扉動作が遅すぎることや遅すぎることもない。したがって、開扉装置60によれば、扉2a,2bの開動作が唐突に感じられることはなく、自然な開扉動作を実現することができる。また、開扉装置60によれば、突出動作時間Tが0.3秒以上とすることで、開扉動作時の加速度が小さくなって、扉ポケット13に収納された食品に衝撃力が加わることもない。
また、この開扉装置60は、突出部材61a,61bが突出していない原点位置から、突出部材61a,61bが突出する構成となっているので、突出部材61a,61bが原点位置から後退することはない。つまり、この開扉装置60内には、突出部材61a、61bが後退するためのスペースが不要になるため、開扉装置60は、その小型化を図ることができる。また、この開扉装置60によれば、突出部材61a,61bを原点位置から更に後退する必要がないので、後退のための駆動力が不要となって駆動機構としての効率が高く、エネルギの無駄が少ない。また、開扉装置60によれば、限られたスペースの範囲内で突出部材61a,61bの動作量を大きくすることができるので、扉2a,2bの開動作が安定するという効果がある。
次に、開扉装置60の好適な構成の一例について説明する。
図37は、開扉装置の好適な一例を模式的に示す平面図である。なお、図37は、図8と異なって、回転板73a,73bの図示を省略し、大歯車76、連結板65を簡略化して描いている。
図37に示すように、連結板65a、65bは、平面視で、開扉装置60の後側(背面側)が先細で、内側が斜辺となる略直角三角形状をなしている。したがって、左右の連結板65a,65bに挟まれた空間の左右幅は、後側が最も広くなる。
その最も広い空間に、モータ82と減速歯車列83と配線スペース81とが、背面に沿って直列に配置されているので、その空間を最大に有効利用することができる。
また、モータ82及び減速歯車列83が背面に沿って配置されるので、モータ82の駆動音及び減速歯車列83から生じる噛み合い音は、使用者から最も遠い側から生じることとなる。よって、この開扉装置60によれば、低騒音を達成することができるという効果がある。
また、間欠駆動歯車78a,78b及び回転板73a,73bの回転中心である回転板中心74a,74bと、連結板65a,65bの第二の辺である前面側の一辺とは、ケース62の前面と背面との中間であるケース中間位置100に近接するように配置されている。このような配置とすることで、突出部材61a,61bが引き込んでいる際には、ケース62のケース中間位置100よりも背面側に連結板65a、65bが配置される。また、ケース62のケース中間位置100よりも前面側に突出部材61a、61bが配置される。
また、突出部材61a、61bの最大突出量H2は、概ね連結板65a、65bの長さと等しくなるので、図37中、破線で図示した突出部材61aが最大に突き出した場合には、連結板65aは、ケース中間位置100よりも前側に位置する。
このような開扉装置60によれば、ケース62の前後方向の長さが連結板65a、65bの前後方向長さの略2倍でよいので、ケース62の前後方向の長さを低減して、開扉装置60の小型化を図ることができるという効果がある。
また、この開扉装置60においては、大歯車76が減速歯車列83よりも前側に位置し、かつ間欠駆動歯車78a,78bよりも前側に位置するように配置することで、大歯車76の直径を拡大することができる。これにより、これらの歯車の噛み合いを確実にできると共に、大歯車76と間欠駆動歯車78a,78bとの噛み合い角度θ0,θ2,θ6(図10参照)の関係を適切に設定することができる、という効果がある。
また、この開扉装置60においては、大歯車76よりも前側にスイッチレバー96a,96bと検知スイッチ95a,95bを備えた検知部104を配置することで、検知部104が間欠駆動歯車78a,78bや回転板73a、73b(図8参照)等の駆動部分から離反して配置される。これにより、開扉装置60は、検知スイッチ95a,95bからの配線が前記の駆動部分から保護されるので信頼性が高い、という効果がある。また、大歯車76よりも前側に検知部104を配置することで、開扉装置60は、大歯車76に設けられたカム部99からスイッチレバー96a,96bを介した検知スイッチ95a,95bの適切なON/OFF動作が可能になる、という効果がある。
<ブロック図>
次に、開扉装置60を制御するための制御系の構成について説明する。
前記したように、制御基板41(図2参照)は、冷蔵庫1の天井壁の上面側に取り付けられている。
図38は、開扉装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図38に示すように、制御部としての制御基板41は、商用電源から所定電圧の直流等を生成する電源42に接続されている。また、制御基板41は、例えば温度調整を行う押しボタンスイッチ等の操作手段43aと、例えばLED等の表示手段43bと、を備えるコントロールパネル40に接続されている。
また、制御基板41は、温度センサ44,45,46,47、冷蔵温度帯室冷気制御手段20及び冷凍温度帯室冷気制御手段21からなる冷気制御手段、圧縮機51、開扉装置60、並びに扉センサ49とも接続され、これらの駆動と制御を行うように構成されている。なお、コントロールパネル40は、前記したように、扉2aの前面に配置されている。これにより、使用者が諸機能を変更したり、確認したりする場合に、その使い勝手が良好となっている。
また、制御基板41は、左開扉スイッチ48aと、右開扉スイッチ48bとに接続されている。左開扉スイッチ48a及び右開扉スイッチ48bは、前記したように、扉2a,2bに設けられている。使用者が左開扉スイッチ48a又は右開扉スイッチ48bを操作した場合には、その信号が制御基板41に送信されるようになっている。
また、制御基板41は、開扉装置60のモータ82と、検知スイッチ95a,95bとに接続されている。また、開扉装置60及び制御基板41の駆動に必要な電力は、電源42から供給される。
コントロールパネル40には扉が半ドア状態になっていることを使用者に知らせるための報知手段が配置されている。この報知手段としては、例えば、ブザー、ランプ等が挙げられる。
<初期化動作>
次に、実施形態の開扉装置60において、電源42を投入した際の初期化動作の制御について説明する。図39は、開扉装置の初期化動作の制御手順を示すフローチャートである。
図39に示すように、開扉装置60に電源が投入されることで制御部としての制御基板41が起動すると、この制御部は初期化プログラムを実行する。
まず、制御部は、検知スイッチ95a,95bや温度センサ44,45,46,47、扉センサ49の状態を確認して初期設定を開始する(ステップS101)。
次に、制御部は、検知スイッチ95a,95b(図39中、単に検知A/検知Bと称する)を確認し、OFF/OFFか否かを判断する(ステップS102)。この際、OFF/OFFであれば(ステップS102のYes)、図20(3)の状態であるから、大歯車76は原点位置にあることが確認でき、初期化プログラムを終了する。
また、検知スイッチ95a,95bがOFF/OFFでない場合には(ステップS102のNo)、制御部は、検知スイッチ95a,95bを確認して、ON/ONであるか否かを判断する(ステップS103)。そして、検知スイッチ95a,95bがON/ONであれば(ステップS103のYes)、図20(1)又は(5)の状態であるから、突出部材61a、61bのいずれかが最大突出量H2で突出した状態であることが確認できる。次のステップS104に移る。
ステップS104では、制御部は、モータ82を正転駆動、すなわち左側の突出部材61aが更に突出す方向に駆動する。
そして、制御部は、モータ82の過電流を検出した場合には(ステップS105のYes)、突出部材61aが最大突出量H2で突出した状態、すなわち図20(1)の状態であって、大歯車ストッパ76Eがカバーストッパ71に当接してモータ82が強制的に停止したと確認できるので、ステップS106に移る。
また、制御部は、モータ82の過電流を検出しなかった場合には(ステップS105のNo)、ステップS113に移って、検知スイッチ95b(図39中、検知Bと称する)が、ONからOFFになったか否かを確認する。そして、検知スイッチ95bがONのままであるときは(ステップS113のNo)、このステップS113を繰り返し、検知スイッチ95bがOFFになっていれば(ステップS113のYes)、後記するステップS114に移る。
なお、ステップS105では、モータ82の過電流が検出されたか否かの判断に代えて、所定時間が経由しても検知スイッチ95a,95bがON/ONのままであるか否かの判断を採用することもできる。
次に、ステップS106では、制御部は、電源の極性を反転し、モータ82の回転方向を反転して逆転方向、すなわち突出部材61aを引き込む方向に駆動する。
次いで、制御部は、所定時間経過後、検知スイッチ95a(図39中、検知Aと称する)が、ONからOFFになったか否かを確認し(ステップS107)、検知スイッチ95aがOFFになっていれば(ステップS107のYes)、ステップS108に移る。また、検知スイッチ95aがOFFになっていなければ(ステップS107のNo)、このステップS107の判断を繰り返す。
そして、制御部は、検知スイッチ95a,95bがOFF/ONであることを確認すると(ステップS108)、図20(2)の状態なのでステップS109に移る。
ステップS109では、制御部は、大歯車76が原点位置になく左側の間欠駆動歯車78aと噛合った位置にあることを確認する。
次いで、制御部は、モータ82を逆転方向に駆動し、突出部材61aを引き込む方向、すなわち大歯車76が原点方向に移動する側に駆動する(ステップS110)。
そして、制御部は、検知スイッチ95bがONからOFFになったか否かを確認し(ステップS111)、検知スイッチ95bがOFFになったら(ステップS111のYes)、図20(3)の状態である原点位置なので、ステップS112に移る。また、検知スイッチ95bがOFFになっていない場合には(ステップS111のNo)、ステップS110に戻る。
ステップS112では、モータ82を停止し、初期化プログラムを終了する。なお、ステップS111からステップS112への移行は、検知スイッチ95bがOFFになった後、所定の時間経過後に行うこともできる。
前記のステップS103において、制御部は、検知スイッチ95a,95bがON/ONではなく、OFF/ONであると確認した場合には、前記のステップS108に移る。
また、前記のステップS103において、制御部は、検知スイッチ95a,95bがON/ONではなく、OFF/ONであると確認した場合には、次のステップS114に移る。
ステップS114においては、制御部は、検知スイッチ95a,95bがON/OFFであることを確認すると、図20(4)の状態なのでステップS115に移る。
ステップS115では、制御部は、大歯車76が原点位置になく右側の間欠駆動歯車78bと噛合った位置にあることを確認する。
次いで、制御部は、モータ82を正転方向に駆動し、右側の突出部材61aを引き込む方向、すなわち大歯車76が原点方向に移動する側に駆動する(ステップS116)。
そして、制御部は、検知スイッチ95aがONからOFFになったか否かを確認し(ステップS117)、検知スイッチ95aがOFFになったら(ステップS117のYes)、図20(3)の状態である原点位置なので、ステップS118に移る。また、検知スイッチ95aがOFFになっていない場合には(ステップS117のNo)、ステップS116に戻る。
ステップS118では、モータ82を停止し、初期化プログラムを終了する。なお、ステップS117からステップS118への移行は、検知スイッチ95aがOFFになった後、所定の時間経過後に行うこともできる。
以上の制御部が行う初期化動作により、大歯車76は、間欠駆動歯車78a,78bのいずれとも噛合わない、「原点範囲」(検知A/B=OFF/OFF状態)となる。
<左側開扉動作>
次に、左側の扉2aを開く開扉動作(左側開扉動作)について説明する。
図40は、開扉装置の制御部が行う左側開扉動作の制御手順を示すフローチャートである。使用者が左開扉スイッチ48aを操作することによって制御基板41(制御部)は左側の扉2aの開扉プログラムを実行する。
まず、制御部は、検知スイッチ95a,95bの状態を監視して、開扉装置60が原点位置にあるか否か(検知A/BがOFF/OFFが否か)を確認した後(ステップS121)、次のステップ122に移る。なお、原点位置にない場合には、図示しないが、制御部は、前記の初期化プログラムを実行してからステップS122に移る。
ステップS122においては、制御部は、左開扉スイッチ48aが操作されたか否かを監視して、左開扉スイッチ48aが操作された場合には(ステップS122のYes)、ステップS123に移る。また、左開扉スイッチ48aが操作されていない場合には(ステップS122のNo)は、このステップS122の工程を繰り返す。
ステップS123においては、制御部は、モータ82を正転方向、すなわち大歯車76が原点位置から間欠駆動歯車78aと噛合う方向に回転する極性に通電する。
次いで、制御部は、検知スイッチ95bがOFFからONになったか否かを確認する(ステップS124)。そして、制御部は、検知スイッチ95bがONになった場合には(ステップS124のYes)、ステップS125に移る。検知スイッチ95bがONになっていない場合には(ステップS124のNo)、このステップS124を繰り返す。
ステップS125では、制御部は、大歯車76が正転方向に回動しており、左側の間欠駆動歯車78aと噛合った、図20(2)の状態にあることを確認した後、次のステップS126に移る。
ステップS126においては、制御部は、検知スイッチ95aがOFFからONになったか否かを監視する。そして、ONになった場合には(ステップS126のYes)、図20(1)の状態となるので、制御部はステップS127に移る。また、制御部は、検知スイッチ95aがONになっていない場合には(ステップS126のNo)、このステップS126を繰り返す。
制御部は、左突出部材61aが突出動作を完了したことを確認した後(ステップS127)、モータ82への印加電圧の極性を反転し、モータ82を逆転方向に回転させてから(ステップS128)、次のステップS129に移る。
ステップS129においては、制御部は、検知スイッチ95aがONからOFFになるのを監視する。そして、OFFになったら(ステップS129のYes)、図20(2)の状態となるので、引き込み動作中と確認して次のステップS130に移る。また、制御部は、検知スイッチ95aがOFFになっていない場合には(ステップS129のNo)、このステップS129を繰り返す。
ステップS130においては、制御部は、検知スイッチ95bがONからOFFになるか否かを監視する。そして、OFFになったら(ステップS130のYes)、図20(3)の状態となるので、ステップS131に移る。また、制御部は、検知スイッチ95bがOFFになっていない場合には(ステップS130のNo)、このステップS130を繰り返す。
ステップS131においては、制御部は、大歯車76が「原点範囲」に復帰したこと(検知A/BがOFF/OFF)を確認し、モータ82を停止して(ステップS132)、左側の扉2aを開く左側開扉動作を完了する。
<右側開扉動作>
次に、右側の扉2bを開く開扉動作(右側開扉動作)について説明する。
図41は、開扉装置の制御部が行う右側開扉動作の制御手順を示すフローチャートである。使用者が右開扉スイッチ48bを操作することによって制御基板41(制御部)は右側の扉2bの開扉プログラムを実行する。
まず、制御部は、検知スイッチ95a,95bの状態を監視して、開扉装置60が原点位置にあるか否か(検知A/BがOFF/OFFが否か)を確認した後(ステップS221)、次のステップ222に移る。なお、原点位置にない場合には、図示しないが、制御部は、前記の初期化プログラムを実行してからステップS222に移る。
ステップS222においては、制御部は、右開扉スイッチ48bが操作されたか否かを監視して、右開扉スイッチ48bが操作された場合には(ステップS222のYes)、ステップS223に移る。また、右開扉スイッチ48bが操作されていない場合には(ステップS222のNo)は、このステップS222の工程を繰り返す。
ステップS223においては、制御部は、モータ82を逆転方向、すなわち大歯車76が原点位置から間欠駆動歯車78bと噛合う方向に回転する極性に通電する。
次いで、制御部は、検知スイッチ95aがOFFからONになったか否かを確認する(ステップS224)。そして、制御部は、検知スイッチ95aがONになった場合には(ステップS224のYes)、ステップS225に移る。検知スイッチ95aがONになっていない場合には(ステップS224のNo)、このステップS224を繰り返す。
ステップS225では、制御部は、大歯車76が逆転方向に回動しており、右側の間欠駆動歯車78bと噛合った、図20(4)の状態にあることを確認した後、次のステップS226に移る。
ステップS226においては、制御部は、検知スイッチ95bがOFFからONになったか否かを監視する。そして、ONになった場合には(ステップS226のYes)、図20(5)の状態となるので、制御部はステップS227に移る。また、制御部は、検知スイッチ95bがONになっていない場合には(ステップS226のNo)、このステップS226を繰り返す。
制御部は、右側の突出部材61bが突出動作を完了したことを確認した後(ステップS227)、モータ82への印加電圧の極性を反転し、モータ82を正転方向に回転させてから(ステップS228)、次のステップS229に移る。
ステップS229においては、制御部は、検知スイッチ95bがONからOFFになるのを監視する。そして、OFFになったら(ステップS229のYes)、図20(4)の状態となるので、引き込み動作中と確認して次のステップS230に移る。また、制御部は、検知スイッチ95bがOFFになっていない場合には(ステップS229のNo)、このステップS229を繰り返す。
ステップS230においては、制御部は、検知スイッチ95aがONからOFFになるか否かを監視する。そして、OFFになったら(ステップS230のYes)、図20(3)の状態となるので、ステップS231に移る。また、制御部は、検知スイッチ95aがOFFになっていない場合には(ステップS230のNo)、このステップS230を繰り返す。
ステップS231においては、制御部は、大歯車76が「原点範囲」に復帰したこと(検知A/BがOFF/OFF)を確認し、モータ82を停止して(ステップS232)、右側の扉2bを開く右側開扉動作を完了する。
次に、左側の扉2aを開く際の、左開扉スイッチ48a、検知スイッチ95a,95bの各検知動作及びモータ82の回転動作、回転板73aと突出部材61aの動作手順について説明する。
図42は、開扉装置における左側開扉動作時の、開扉スイッチ、検知スイッチ、及びモータの各動作を示すタイミングチャートである。
図42に示すように、t=0における開扉装置60は、初期化が既に行われて、原点位置にある。
t=taまでに左開扉スイッチ48aが操作されてONとなる。本実施形態においては、左開扉スイッチ48aがONからOFFになった時点より、モータ82を正転方向に駆動する。モータ82が正転方向に回転するので大歯車76が時計回り(CW方向)に動作して、t=tbで検知スイッチ95bがOFFからONになる。
引き続きモータ82を正転方向である時計回り(CW方向)に回転すると、t=tcで大歯車76と間欠駆動歯車78aとが噛合う。間欠駆動歯車78aと回転板73aとが反時計回り(CCW方向)に回転し始め、突出部材61aが突出動作を開始して扉2aが開き始める。
t=tdにおいて、検知スイッチ95aがOFFからONになり、突出部材61aは最大突出量H2となる直前にあることが検知できる。これにより、t=teにおいては、モータ82を減速し、t=tfで停止させると、突出部材61aは最大突出量H2にて突出した状態となる。
その後、t=tgでモータ82を逆転方向に回転させ、大歯車76を反時計回り(CCW方向)に回転させることで、突出部材61aは引込み始める。
t=thで検知スイッチ95aがONからOFFになり、更にt=tjで突出部材61aは引き込んで、間欠駆動歯車78aと大歯車76との噛み合いは終了する。
t=tkで検知スイッチ95bがONからOFFになって、大歯車76が原点位置近傍にあることが確認できる。これにより、t=tmまでの所定時間経過してからモータ82を停止すれば、大歯車76は原点位置に復帰する。
以上により、開扉装置60による左側の扉2aの開扉動作が完了する。
次に、右側の扉2bを開く際の、右開扉スイッチ48b、検知スイッチ95a,95bの各検知動作及びモータ82の回転動作、回転板73bと突出部材61bの動作手順について説明する。
図43は、開扉装置における右側開扉動作時の、開扉スイッチ、検知スイッチ、及びモータの各動作を示すタイミングチャートである。
図43に示すように、t=0における開扉装置60は、初期化が既に行われて、原点位置にある。
t=taまでに右開扉スイッチ48bが操作されてONとなる。本実施形態においては、右開扉スイッチ48bがONからOFFになった時点より、モータ82を逆転方向に駆動する。モータ82が逆転方向に回転するので大歯車76が反時計回り(CCW方向)に動作して、t=tbで検知スイッチ95aがOFFからONになる。
引き続きモータ82を逆転方向である反時計回り(CCW方向)に回転すると、t=tcで大歯車76と間欠駆動歯車78bとが噛合う。間欠駆動歯車78bと回転板73bとが時計回り(CW方向)に回転し始め、突出部材61bが突出動作を開始して扉2bが開き始める。
t=tdにおいて、検知スイッチ95bがOFFからONになり、突出部材61bは最大突出量H2となる直前にあることが検知できる。これにより、t=teにおいては、モータ82を減速し、t=tfで停止させると、突出部材61bは最大突出量H2にて突出した状態となる。
その後、t=tgでモータ82を正転方向に回転させ、大歯車76を時計回り(CW方向)に回転させることで、突出部材61aは引込み始める。
t=thで検知スイッチ95bがONからOFFになり、更にt=tjで突出部材61bは引き込んで、間欠駆動歯車78bと大歯車76との噛み合いは終了する。
t=tkで検知スイッチ95aがONからOFFになって、大歯車76が原点位置近傍にあることが確認できる。これにより、t=tmまでの所定時間経過してからモータ82を停止すれば、大歯車76は原点位置に復帰する。
以上により、開扉装置60による右側の扉2bの開扉動作が完了する。
本実施形態の開扉装置60及びこれを備えた冷蔵庫1によれば、次のような効果を奏することができる。
本実施形態によれば、観音開き式の2枚の扉2a,2bを電動で開くことが可能であり、扉2a,2bの開き方が滑らかで唐突感がない。また、扉2a,2bの内側に収納された食品量の多寡による開き時間の差が少なく、安定して開扉動作を行うことができる。
また、本実施形態によれば、開扉装置60は、扉2a,2bの内側に収納された食品量の多寡に関わらずに、開扉動作が開始されてから最大速度に到達するまでの突出動作時間Tを0.3秒以上、0.7秒以下とすることができる。これにより開扉動作が速すぎて唐突に感じられることがなく、また開扉動作が遅すぎることもなく、開扉動作は適切で自然なものとなる。
また、本実施形態によれば、扉2a,2bが軽量の場合であっても、使用者による左開扉スイッチ48a、右開扉スイッチ48bの操作を検出してからの突出動作時間Tは、0.3秒未満とはならない。これにより開扉動作時の加速度が小さく、扉ポケット13に収納された食品に衝撃力が加わることもない。
また、本実施形態によれば、1つのモータ82の回転方向の回転方向に対応して左側の扉2a及び右側の扉2bを開くことができる。
具体的には、モータ82を正転方向に回転させて大歯車76と左側の間欠駆動歯車78aとを回転させ、これにより左側の突出部材61a(第一の突出部材)を突出させて左側の扉2aを開くことができる。
また、モータ82を逆転方向に回転させて大歯車76と右側の間欠駆動歯車78bとを回転させ、これにより右側の突出部材61b(第二の突出部材)を突出させて右側の扉2bを開くことができる。
また、本実施形態によれば、開扉装置60による扉2a,2bの開角度を、この扉2a,2bが閉じる方向に力を付与するクローザが機能する角度よりも大きくなるように設定したので、開扉装置60による開扉動作を確実に行うことができる。
また、本実施形態によれば、モータ82を一定の回転速度で回転することで、突出部材61a、61bを等加速度運動に近似した運動を行わせて突出させることができる。したがって、本実施形態によれば、モータ82の特段の速度制御を必要とせずに、簡素で安価な構成で自然な印象の開扉動作を行うことができる。
また、本実施形態によれば、扉2a,2bのヒンジ17a,17bから最も遠い扉端部の最大接線速度を、700〜1100mm/secとなるように設定することで、速すぎることも遅すぎることもない適切な開扉動作を実現することができる。
また、本実施形態によれば、突出部材61を突出方向にのみ動作し、後退しない構成としたので、突出部材61が後退するためのスペースが不要となり、小型化を図ることができる。
また、本実施形態によれば、突出している一方の突出部材61aを後退させてから、これに続いて他方の突出部材61bを突出させるので、従来の一方の突出部材の後退と他方の突出部材の突出とを同時に行うものと異なって、モータ等の駆動機構に係る負荷が少ない。よって、本実施形態によれば、従来のものと比較して駆動機構の効率が高く、エネルギの無駄が小ない。
また、本実施形態によれば、限られたスペースの範囲内で突出部材61a,61bの動作量を大きくすることができるので、扉2a,2bの開動作が安定する。
また、本実施形態によれば、大歯車76と一体に回転するカム部99に連関するスイッチレバー96a,96bと、検知スイッチ95a,95bと、により突出部材61a,61bの突出量を検出することができる。したがって、本実施形態によれば、簡素な構成で確実な突出量を検出するスイッチを構築することができる。
また、本実施形態によれば、突出部材61a,61bがケース62内に引き込まれた際に、突出部材61a,61bの先端に設けられた先端部材64a、64bの薄肉部70が、突出部材61a,61bが挿通されるケース62の開口63a,63bを塞ぐこととなる。したがって、本実施形態によれば、外部からケース62内に水や塵埃が侵入するのを防止することができる。また、先端部材64a,64bは、柔軟な材質で形成されているので、突出部材61a,61bが突出動作を行って扉2a,2bに当接する際の衝撃を低減することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
次に、突出部材61a,61bによって扉2a,2bの開扉動作を行う際の、突出部材61a,61bからの押し力を受ける扉2a,2bに設ける当接面の好適な形状について説明する。
図44(a)及び(b)は、突出部材が冷蔵室扉の平面状当接面に当接する際の動作説明図である。図45(a)及び(b)は、突出部材が冷蔵室扉の半円柱の周面からなる当接面に当接する際の動作説明図である。
図44(a)に示すように、扉2aを閉じた際に、突出部材61aと対向する当接面93は、突出部材61aの突出方向に直交した平面を有している。
開扉装置60が開扉動作を開始して、突出部材61aの先端は、当接面93と接触した状態となる。この際、当接面93は突出部材61aと直交しているから、突出力Pは当接面93と直交しており、突出部材61aに対して圧縮力となる。
図44(b)に示すように、扉2aが角度θdだけ開いた状態においては、突出部材61aに対して当接面93は角度θdだけ傾斜する。これにより突出し力Pは、法線方向分力P1と接線方向分力P2とに分解される。このうち接線方向分力P2は、突出部材61aに対して曲げモーメントMとなるので、突出部材61aに曲げ応力が発生する。また、曲げモーメントMによって連結板65aとガイドレール66aとの間がこじられて、押圧力が増加することで摩擦抵抗負荷が増加することも考えられる。
図45(a)に示すように、扉2aを閉じた際に、突出部材61aと対向する当接面93は、半円柱の周面で形成されている。
開扉装置60が開扉動作を開始して、突出部材61aの先端が当接面93と接触すると、当接面94と突出部材61aとの接触位置における突出し力Pは、当接面94と直交するので、図44(a)で示した平面からなる当接面94と同様に、突出部材61aに対して圧縮力となる。
図45(b)に示すように、当接面94は半円柱の周面で形成されているので、扉2aが開いて角度θdだけ傾斜したとしても、突出し力Pの方向は、当接面94と直交する。したがって、突出部材61aから当接面94に伝達される力は、突出部材61aに対して圧縮力となり、図44(b)に示す場合と異なって接線方向分力による曲げモーメントが生じない。よって、突出部材61aに曲げ応力が発生することがなく、また連結板65aとガイドレール66aとの間がこじられることがない。したがって、開扉装置60は、摩擦抵抗負荷が増加することもなく、信頼性が向上する。
なお、以上の説明は、左側の扉2aを開く場合について説明したが、右側の扉2bを開く場合についても左側の扉2aと左右対称となる以外は同様に構成することができ、同様の効果を奏することができる。
次に、水侵入の防止に好適な開扉装置の構成例について説明する。
図46は、防水リブを有する開扉装置の平面図である。なお、図46においては、図8と異なって、大歯車76と間欠駆動歯車78a,78bとを取り除いた状態を図示している。
図46に示すように、この開扉装置60は、ケース62内を、第一の範囲105、第二の範囲106、及び第三の範囲107に区画することができる。
第一の範囲105は、開扉装置60の左側における、突出部材61a、連結板65a、及び回転板73aの動作・回動範囲であり、便宜上、ハッチングを施している。
第三の範囲107は、開扉装置60の右側における、突出部材61b、連結板65b、及び回転板73bの動作・回動範囲であり、便宜上、ハッチングを施している。
第二の範囲106は、前記第一の範囲105と前記第三の範囲107との間に形成され、図示しない電気配線によって接続されるモータ82、検知スイッチ95a,95b、及び配線スペース81が配置される範囲である。
また、この開扉装置60は、ケース62内を区画するように、防水リブ55a及び防水リブ55bが形成されている。
防水リブ55aは、第一の範囲105と、第二の範囲106とを区画するように、その一端がケース62の前面と接続され、他端がケース62の背面と接続されている。
また、防水リブ55bは、第二の範囲106と、第三の範囲107とを区画するように、その一端がケース62の前面と接続され、他端がケース62の背面と接続されている。
ケース62には突出部材61a,61bが突出動作を行うための開口63a,63bが形成されているので、この開口63a,63bから水等の液体が第一の範囲105又は第三の範囲107に侵入した場合でも、この液体は防水リブ55a,55bによって第二の範囲106に侵入することを妨げることができる。
つまり、この開扉装置60によれば、モータ82、検知スイッチ95a,95b、及び配線スペース81を含む第二の範囲106への液体の侵入を防止することができるので、電気配線が液体によってショートすることを確実に防止することができ、信頼性が向上する。
次に、連結板65a及び回転板73aの変形例について説明する。
図47は、回転板及び連結板の変形例を示す平面図である。図48の(a)から(f)は、変形例に係る回転板及び連結板の動作説明図である。なお、図48の(a)から(f)中、符号raから符号rqは、連結板65aの連結板65aに設けられた歯201A〜201Pと、回転板73aに設けられた歯202a〜歯202qとの噛み合いピッチ円半径を表している。
図47に示すように、回転板73a周囲には、連結板65aの歯201A〜201P(合計歯数13)に噛み合う歯202a〜202q(合計歯数14)が形成されている。
回転板73aの歯202a〜202qは、図47の平面視で回転板中心74aを中心にして右まわりで、歯102bを除いて、この回転板中心74aから徐々に半径を拡大するよう形成されている。
更に具体的には、図48(a)から(f)に示すように、回転板73aに設けられた歯202aから歯202qまでの噛み合いピッチ円半径を、raからrqとした場合に、ra=rb<rc<rd<re<rf<rg<rh<rj<rk<rm<rn<rp<rqの関係式を満たすように設定している。
つまり、前記の図12に示す回転板73aでは、噛み合いピッチ円半径raとこれに隣接する噛み合いピッチ円半径rbとの関係が、ra<rbとなっているのに対して、図48(a)及び(b)に示すように、変形例に係る回転板73aでは、ra=rbとなっている。つまり、ra=rbとしたために、回転板73aに設けられた歯202a、歯202b、及び歯202cのピッチ円半径は等しい。
また、図47に示すように、連結板65aに設けられた歯201Aから歯201Bにわたる区間はテーパ状になっていない。
次に、変形例に係る回転板73a及び連結板65aの動作について説明する。
図48(a)に示すように、回転板73aは原点位置にある。前記したように、左開扉スイッチ48aが使用者により操作されて回転板73aが反時計方向に回転を開始する。
図48(b)に示すように、回転板73aの歯202c,202dの間に、連結板65aの歯201Cが噛み合って、連結板65aが前方(図48の紙面左側、以下図48において同じ)に移動する。これにより、突出部材61aは、突出動作を行い始める。つまり、扉2aは開き始める。
図48(c)に示すように、回転板73aが更に回転し、回転板73aの歯202f,202gの間に、連結板65aの歯201Fが噛み合って連結板65aが前方に更に移動する。
図48(d)に示すように、回転板73aが更に回転し、回転板73aの歯202j,202kの間に、連結板65aの歯201Jが噛み合って連結板65aが前方に更に移動する。
図48(e)に示すように、回転板73aが更に回転し、回転板73aの歯202n,202pの間に、連結板65aの歯201Nが噛み合って連結板65aが前方に更に移動する。
図48(f)に示すように、回転板73aが更に回転し、回転板73aの最も外周にある歯202qが連結板65aの後端にある歯201Pを前方に向けて押圧する。連結板65aは前方に更に移動して最大突出量H2(図25参照)となるように突出部材61aを突出させる。突出部材61aの突出速度は最大速度となり、その直後に停止する。
そして、回転板73aは、前記したように、逆転方向に(時計回りに)回転して、図48(f)から図48(b)の状態を経て図48(a)に示した原点位置に復帰する。
次に参照する図49(a)は、図47の変形例に係る回転板及び連結板に連関して突出部材が突出する際の、速度と時間との関係を示すグラフであり、(b)は、力と時間との関係を示すグラフである。なお、図49(a)及び(b)中、t=0は図48(a)の状態を示し、突出部材61aが動作し始めた時点である。Tは、突出部材61aが最大の速度ないし最大の角速度ωdmaxに到達するまでの時間[T=(t2−t1)]である(但し、t1は図48(a)の状態になるまでの時間であり、t2は図48(f)となるまでの時間である)。
図49(a)に示すように、図48(a)の状態になる時間t1から図48(b)の状態になる時間t4までは、突出部材61aは、速度Vaの等速運動を行う。これは、テーパ状になっていない連結板65aの歯201Aから歯201Bにわたる区間に、ピッチ円半径の等しい回転板73aの歯202a、歯202b、及び歯202cが噛み合うためである。ちなみに、突出部材61aの突出速度は、前記式2で示されるVaと等しい。
その後、図48(f)の状態になる時間t2までは、突出部材61aは、等加速度運動に近似した加速運動を行う。突出部材61aの速度Vqは、ピッチ円半径rqの部分の接線方向速度であり、前記式3で示されるVqと等しい。
図49(b)に示すように、図48(a)の状態になる時間t1から図48(b)の状態になる時間t4までは、突出部材61aの突出力は、最大値Paで一定である。その後、図48(f)の状態になる時間t2までは、突出部材61aの突出力は、連結板65aと噛み合う回転板73aのピッチ円半径がrcからrqに増加するに伴って減少する。そして、突出部材61aの突出力は、時間t2において最小値Pqとなるような、一様な減少傾向をもつ。
つまり、突出部材61aの動作は、突出動作の開始時点から速度がVと小さいものの、最大の突出力Paを一様に維持する時間t1からt4までの第一の区間と、速度が時間と共に増加し、かつ突出力が時間と共に減少する、時間3から時間t2までの第二の区間と、が連続する、屈曲した突出速度特性及び突出力特性を備える。
このような変形例に係る回転板73a及び連結板65aを備える開扉装置60は、扉2a,2bの開扉力は、開き始めのθd=0(図32参照)において最大となる特徴がある。したがって、突出部材61aの突出動作の開始時に最大の突出力を時間t1から時間t4まで維持すれば、確実にドアパッキン15を引き剥がして開扉動作を確実に行う効果がある。また、本実施形態での扉2aには、回転シキリ18を設けることを想定しているので、回転シキリ18を揺動するための開き力も確保でき、開扉動作を確実に行う効果がある。
前記実施形態では、冷蔵庫1の扉2a,2b,3a,4a,5a,6aのうち、扉2a,2bを開く開扉装置60について説明したが、本発明はこれに限定されずに、上下又は左右で互いに隣接し合う扉同士を開くものであってもよい。また、これらの扉は、観音開きのものに限定されずに、引出し式扉であってもよい。
また、前記実施形態では、開扉装置60を備える機器として、冷蔵庫1を例にとって説明したが、本発明は互いに隣接する複数の扉を有するものであれば、冷蔵庫1以外の電気機器や家具等であってもよい。
前記実施形態では、その回転軸が正逆両方向に回転するモータ82として、ブラシ式の直流モータを例にとって説明したが、本発明は、正逆両方向に回転するモータであれば特に制限はなく、例えばパルスモータ等を使用することもできる。