まず、本発明の実施形態に係る冷蔵庫の全体構成について説明する。
≪冷蔵庫の全体構成≫
図1は、本発明の実施形態における冷蔵庫の正面図である。図1に示すように、本実施形態の冷蔵庫1は、上方から、冷蔵室2(貯蔵室)と、左右に並べた製氷室3及び上段冷凍室4と、下段冷凍室5(貯蔵室)と、野菜室6(貯蔵室)と、を有している。なお、一例として、冷蔵室2及び野菜室6は、およそ3〜5℃の冷蔵温度帯の貯蔵室である。また、製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5は、およそ−18℃の冷凍温度帯の貯蔵室である。
冷蔵室2は、左右に分割された、前方側(図1の紙面手前側)に観音開きの、いわゆるフレンチ型の冷蔵室扉2a及び冷蔵室扉2bを備えている。冷蔵室扉2a,2bはヒンジ17a及びヒンジ17bのまわりに回動する回動扉である。左右の冷蔵室扉2a,2b同士の隙間を閉鎖するために、冷蔵室扉2aの冷蔵室扉2bに近接した辺に沿って、回動仕切り18が設けられている。
製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、及び野菜室6は、それぞれ前後に移動する引き出し扉として製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、及び野菜室扉6aを備えている。なお、以下の説明において、左右の冷蔵室扉2a,2b、製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、及び野菜室扉6aのそれぞれは、単に扉2a、扉2b、扉3a、扉4a、扉5a、及び扉6aと称せられる場合がある。
冷蔵庫1は、扉2a、扉2b、扉3a、扉4a、扉5a、及び扉6aのそれぞれの開閉状態を検知する扉センサ(図示省略)と、これらの扉2a,2b,3a,4a,5a,及び扉6aの少なくともいずれかが開放していると判定された状態が所定時間(例えば、1分間以上)継続された場合に、使用者にその旨を報知するアラーム(図示省略)と、冷蔵室2、上段冷凍室4、下段冷凍室5等の温度設定をする温度設定器(所定の操作部、表示部等を備える図1に示すコントロールパネル40等)を備えている。
また、冷蔵室扉2aには、左開扉スイッチ48aが設けられ、冷蔵室扉2bには、右開扉スイッチ48bが設けられている。これらの左開扉スイッチ48a及び右開扉スイッチ48bは、扉2a、2bの前面を構成するガラス材又は樹脂材と平面をなすように構成される。すなわち、静電容量式のタッチスイッチによって構成する。また、下段冷凍室扉5aと野菜室扉6aにも開扉スイッチ49が設けられており、これらの扉スイッチ49は機械式のスイッチ機構によって構成する。尚、この構成以外に、例えば扉2a、2bの前面を鋼板で構成する場合は、機械式のスイッチ機構、さらに扉5a、6aの前面をガラス材で構成する場合は静電容量式のタッチスイッチによって構成する。なお、扉スイッチ48a、48b、49は、これら以外にも、圧電素子、電気素子、機械要素等、あらゆるスイッチの構成を採用することができる。
図2は、図1のA−A断面を模式的に示す側断面図である。図2に示すように、冷蔵庫1の庫外と庫内は、内箱10aと外箱10bとの間に発泡断熱材(発泡ポリウレタン)を充填することにより形成される断熱箱体10により隔てられている。また、冷蔵庫1の断熱箱体10は複数の真空断熱材14を実装している。
庫内は、温度帯の異なる上下方向に配置された複数の貯蔵室が、断熱仕切壁11a、11bで断熱的に区画されている。即ち、上側の断熱仕切壁11aにより、冷蔵温度帯の貯蔵室である冷蔵室2と、冷凍温度帯の貯蔵室である上段冷凍室4及び製氷室3(図1参照)とが隔てられている。また、下側の断熱仕切壁11bにより、冷凍温度帯の貯蔵室である下段冷凍室5と、冷蔵温度帯の貯蔵室である野菜室6とが隔てられている。
扉2a,2bの庫内側には複数の扉ポケット13(扉収納部)が設けられている。また、冷蔵室2は複数の棚12により縦方向に複数の貯蔵スペースに区画されている。
上段冷凍室4、下段冷凍室5及び野菜室6は、それぞれの貯蔵室の前方に設けられた扉4a,5a,6aの後方に、収納容器4b,5b,6bがそれぞれ設けられている。そして、扉4a,5a,6aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより、収納容器4b,5b,6bが引き出せるようになっている。図1に示す製氷室3にも同様に、扉3aの後方に、収納容器(図2中、符号3bで表示)が設けられ、扉3aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより、収納容器3bが引き出せるようになっている。
図2に示すように、扉2a,2b,3a,4a,5a,6aは、その周囲にドアパッキン15が設けられており、各扉2a,2b,3a,4a,5a,6aを閉じた際、冷蔵庫1の前面の開口周縁部と密着することで貯蔵空間(冷蔵室2、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、及び野菜室6)の内部を閉塞して密閉し、これらの貯蔵空間から外部への冷気の漏れを防止している。
図2に示すように、冷却器7は、下段冷凍室5の略背部に設けられた冷却器収納室8内に配置されている。冷却器7は、冷却器配管7dに多数のフィン(図示省略)が取り付けられて構成され、冷却器配管7d内の冷媒と空気との間で熱交換することができるようになっている。
冷却器7の上方には、庫内送風機9(例えば、モータ駆動するファン)が設けられている。冷却器7で熱交換して冷やされた空気(以下、この冷やされた低温の空気を「冷気」という)は、庫内送風機9によって冷蔵室送風ダクト22、野菜室送風ダクト25、製氷室送風ダクト26a、上段冷凍室送風ダクト26b及び下段冷凍室送風ダクト27を介して、冷蔵室2、野菜室6、製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5の各貯蔵室へ送られるようになっている。
図2に示すように、冷蔵庫1の天井壁の上面側には、制御部として、CPU、ROMやRAM等のメモリ、インターフェース回路等を搭載した制御部である制御基板41が配置されている。冷蔵庫1には、冷蔵室2の温度を検出する冷蔵室温度センサ44、野菜室6の温度を検出する野菜室温度センサ45、冷凍温度帯室(製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5)の温度を検出する冷凍室温度センサ46、冷却器7の温度を検出する冷却器温度センサ47等の温度センサが設けられ、検出した温度が制御基板41に入力されるようになっている。
また、制御基板41は、扉2a,2b,3a,4a,5a,6aの開閉状態をそれぞれ検知する扉センサ(図示省略)、扉2aに設けられた前記のコントロールパネル40(図1参照)、扉2a,2bに設けられた前記の左開扉スイッチ48a(図1参照)、及び前記の右開扉スイッチ48b(図1参照)、扉5a,6aに設けられた開前記の扉スイッチ49(図1参照)と接続されている。
制御基板41は、前述のROMに予め搭載されたプログラムにより、圧縮機51のON/OFFや回転速度の制御、冷蔵温度帯室冷気制御手段20及び冷凍温度帯室冷気制御手段21を個別に駆動するそれぞれの駆動モータ(図示省略)の制御、庫内送風機9のON/OFFや回転速度の制御、扉開放状態を報知するアラーム(図示省略)のON/OFF、回動扉開装置60の動作、等の制御を行うことにより、冷蔵庫全体の運転を制御することができるようになっている。
図2に示すように、冷蔵庫1の天井壁上面の前面、すなわち扉2a,2bに隣接して冷蔵室扉2a、2b用の回動扉開装置60が設けられている。
次に野菜室6を例に野菜室扉6a用の開扉装置(引き出し扉開装置)500について説明する。尚、冷凍室5についても同様の構成である。
≪引き出し式扉の開扉装置≫
図3は、図2と同様の断面図であるが、冷凍室扉5a及び野菜室扉6aの開扉装置(引き出し扉開装置)500について詳細を説明する図である。
<開扉装置の構成>
野菜室6の扉6a、収納容器6bは、扉枠400によって手前に引き出し自在に支持されている。扉枠400の前側には、野菜室6を閉鎖方向に引き込む閉じ付勢手段であるクローザ420が設けられている。一旦開いた野菜室扉6aを閉じる際、開き量が例えば50mm以下になったら、図示しない傾斜に掛かる野菜室扉6a自身の重量によって、野菜室6aに奥側に引き込む力を与える。これにより、野菜室扉6aを閉じる動作を補助して、野菜室扉6aの全周に設けられたマグネットパッキン14が、冷蔵庫本体1と吸着するまで扉を閉じて、いわゆる扉の半開状態を防止できる。
そして、野菜室6の底部には開扉装置500が設けられている。開扉装置500は、冷蔵庫本体1側に固定して設けられた、第二の駆動源であるモータ24と、モータ24の回転を減速する減速機構とを備えた冷蔵庫本体1側の駆動装置600と、野菜室扉6aとともに移動するように設けられた連結部材700とを備えている。具体的に、本実施例では連結部材700が左右の扉枠400の間を接続するように設置された補強部材410に設けられている。冷蔵庫本体1側の駆動装置600から、連結部材700に対して、扉枠400の移動方向に力を加えて野菜室扉6aを開閉する構成である。冷蔵庫本体1側の駆動装置600と連結部材700の詳細な構成と機能については後述する。
そして、野菜室6内には、該野菜室6が完全に閉じられているか否か(すなわち、野菜室扉6aが閉鎖状態であるか否か)を検出して、後述するように制御基板41にその信号を送るように構成された、第一の扉状態検知手段510を設ける。この第一の扉状態検知手段510の設置方法としては、磁気検知センサ512を冷蔵庫本体1側の駆動装置600に設け、磁気検知センサ512を作動させる磁石511を連結部材700に設ける。これにより、野菜室6が完全に閉じられているか否か(すなわち、野菜室扉6aが閉鎖状態であるか否か)を確実に検出できる。
<多段加速リンクの構成>
次に、本体側の駆動装置600と、補強部材410に設けられた連結部材700とを備えた開扉装置500の構成について、図4から図9を用いて詳細に説明する。ここで、開扉装置500は野菜室6に設けられているものとして以下、説明するが、冷凍室5についても同様の構成である。なお、前述した図1から図3と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図4は、本発明の実施例における引き出し扉開装置の構成を示す平面図である。図5は、本発明の実施例における連結部材の構成を示す斜視図である。図6は、本発明の実施例における駆動伝達部材の構成を示す斜視図である。
図4から図6において、400は前述した引き出し扉(図3の野菜室扉6a)の左右に設けられた扉枠であり、この左右の扉枠400を接続するように設置された補強部材410を備えている。そして、補強部材410には後述する連結部材700が設けてあり、この連結部材700が、冷蔵庫本体1側に取り付けられた駆動装置600(図3参照)の駆動伝達部材640から駆動力を受けることにより、引き出し扉(図3の野菜室扉6a)の開閉を自動的に行うように構成される
冷蔵庫本体1側のモータ600(図3参照)においては、回転出力軸である駆動軸620の周りに、回転自在に回転駆動体である駆動伝達部材640が軸支されている。この駆動伝達部材640には、引き出し扉(図3の野菜室扉6a)の開放を行えるように、回転方向に向かって回転中心からの距離を除々に変化させた位置に配置された複数の開扉押し部660が設けてある。
この開扉押し部660には、例えば、8箇所の押し部が設けてあり、駆動軸620からの距離に応じて距離r1に第一の押し部661,距離r2に第二の押し部662,距離r3に第三の押し部663,距離r4に第四の押し部664,距離r5に第五の押し部665,距離r6に第六の押し部666,距離r7に第七の押し部667,距離r8に第八の押し部668が設けられており、それぞれの押し部は略平面形状をなし、かつ駆動軸620から略放射線上の一部にある。ここで、r1<r2<r3<r4<r5<r6r<r7<r8であるとする。
また、この駆動伝達部材640には、前記引き出し扉(図3の野菜室扉6a)の閉じこみを行えるように閉扉押し部670を設けてある。
そして、後述する連結部材700の構成を簡略化できように、閉扉押し部670の回転中心からの距離r9を、前述した複数の開扉押し部660のうち回転中心から一番遠い距離にある押し部、例えば第八の押し部668と、ほぼ同じ距離に設定してある。
連結部材700は、補強部材410に固定するための係止部710と、引き出し扉(図3の野菜室扉6a)の開閉を行うように構成された開扉部730と閉扉部720とを一体若しくは別体に構成する。
そして、この連結部材の開扉部730には、前述した駆動伝達部材640に配置された複数の開扉押し部660に対応する位置に配置された複数の階段状の受け面(例えば、731の第一の受け面から738の第八の受け面までの8段の面)を設ける。これにより、駆動伝達部材640の回転運動を、矢印CCW方向に回転して、連結部材700を直線運動に変化させることによって、引き出し扉(図3の野菜室扉6a)の開放を行えるように構成する。
また、連結部材700の閉扉部720には、前述した駆動伝達部材640に設けられた閉扉押し部670に対応する位置に、閉扉受け面722を設ける。これにより、駆動伝達部材640は引き出し扉を開放するときと反対向きの矢印CW方向に回転して、連結部材700を直線運動に変化させることによって、引き出し扉(図3の野菜室扉6a)の閉じこみを行えるように構成してある。換言すれば、閉め方が不十分な状態(半ドア開放状態)の引き出し扉を閉じこむことのできる閉扉押し部670を駆動伝達部材640に設け、閉扉押し部670の回転運動を連結部材700の直線運動に変化させることによって、半ドア開放状態の引き出し扉の閉じこみを行えるように構成してある。
なお、詳細は後述するが、駆動伝達部材640の回転運動により、閉扉押し部670が連結部材700と当接しないように空間721を設ける。
駆動伝達部材640の原点位置を検知する回転検知手段の一例としては、図4に図示したように、前記駆動伝達部材640自身に設けられた磁石531と、磁石531の磁力を感知してスイッチング動作を行うように構成された磁気検知センサ532とで構成する駆動伝達部材640の位置検知手段530がある。なお、磁気検知センサ532を本体側のモータ600に設ける構成にすれば、磁気検知センサ532の配線や信号線を冷蔵庫本体1側のモータ600と共用できるので、簡易な構成となる。
<駆動装置の構成>
図7において、モータ24の回転軸にはモータピニオン25が設けられており、アイドラ26と噛み合って減速される。アイドラ26とアイドラピニオン27とは一体として回転し、アイドラピニオン27はアイドラ28と噛み合っている。アイドラ28とアイドラピニオン29と一体として回転し、アイドラピニオン29は駆動ギヤ30と噛み合って減速される。駆動軸620と駆動ギヤ30とは連結されており、このようなギヤの構成によりモータ24の回転速度は例えば1/100程度に減速され、駆動軸620に設けられた駆動伝達部材640を回転させる。
本実施例においては、アイドラ28とアイドラピニオン29との間にはトルク制限手段31を設け、駆動伝達部材640に過大な外力が加えられた場合、トルク制限手段31が介在してアイドラ28とアイドラピニオン29とが互いにすべることで、冷蔵庫本体1側のモータ600の破損を防止できる。なお、駆動手段であるモータ600は、制御手段である制御回路(図示せず)によって、駆動を制御される。これにより、引き出し扉の開閉動作の信頼性を向上している。
そして、回転検知手段32の一例として、駆動軸620に回転検知手段32を設けて、駆動軸620の回転位置を検出できる構成としている。このような回転検知手段32の一例は、軸の回転によってその抵抗値が変化する可変抵抗器である。また、回転検知手段32の他の一例としては、図4に図示した磁石531と、磁石531の磁力を感知してスイッチング動作を行う磁気検知センサ532とで構成する駆動伝達部材640の位置検知手段530がある。
<開き動作>
次に、本発明による開扉装置500により野菜室扉6aを開く際の動作の詳細について図8を用いて説明する。図8は本発明の実施例における引き出し式扉の開扉装置500の開き動作を説明する図である。なお、前述した図1から図7と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図8において、(a)は後述する原点位置であり、野菜室6が閉じられている状態を示している。そして、(b)(c)(d)(e)(f)の順に動作することで野菜室6を開放する動作を示している。
先ず、図8(a)の原点位置について説明する。(a)において、実線で図示する連結部材700は図示左端が引き込み位置34に合致し、野菜室扉6a(図3の6a)が閉鎖された位置にある。冷蔵庫においては、開扉装置500が備えられているとしても、野菜室扉6aを何らかの理由で使用者が手で引き出す場合もある。または、故障によって開扉装置500が動作しない場合などにおいては、使用者が手動で自在に開閉できることが望ましい。
野菜室扉6aが閉じられた状態から使用者が手動で野菜室扉6aを引き出して開いたとすると、野菜室扉6aに設けられている連結部材の開扉部730が図示左側に移動して、破線の位置となる。破線の位置においては各符号には「′」を付加して記す。ここで、駆動伝達部材640が図8(a)の実線で示す位置にあり、連結部材700が図示左方に移動するときに、最上端部680と最も近接する連結部材700の図示最下端部740との間に隙間δ4がある。これによって、連結部材700の開扉部730が図示左方に移動しても最上端680と最下端部740とが接触しない位置関係にある。また、後述する駆動伝達部材640の第一の押し部661と連結部材の開扉部730の第一の受け面731との間に隙間δ3を有しており、野菜室扉6aが閉じられた状態において、第一の押し部661と第一の受け面731とが接触しない位置関係にある。これにより、使用者が手動で野菜室扉6aを開閉する際に連結部材700と駆動伝達部材640とが接触しないので、自在に野菜室扉6aを開閉することができる。
このような駆動伝達部材640の位置を本発明では原点位置40にある、と称するものとする。
ここで、駆動伝達部材640は駆動軸620のまわりに回転自在である。また、連結部材700の開扉部730は図示左右方向に移動自在に支持されている。また、連結部材700の開扉部730は野菜室扉6a側に備えられている。すなわち、連結部材700の開扉部730の左方向への動きが野菜室扉6aの開き動作を示している。なお、野菜室扉6aが閉じられている状態における連結部材700の図示左端の位置を示す基準線を引き込み位置34として表す。
そして、駆動が開始されると、図8(b)に示すように、駆動伝達部材640は矢印CCW方向に回転し、第一の押し部661が第一の受け面731と接し、連結部材700の開扉部730に対しては、矢印23b方向の力が加わる。このとき、第一の押し部661は、駆動軸620から図4に示した距離r1の位置にあるので、第一の押し部661から連結部材700の開扉部730に伝えられる力は、駆動軸620に加わるトルクをTとすれば、T/r1となる。この力を、野菜室扉6aのマグネットパッキンを引き剥がす力と、クローザ420による引込力と、野菜室扉6aの自重および収納された食品の質量を加速する力の合力よりも大なるように設定する。これにより、マグネットパッキンの吸着を引き剥がして、連結部材の開扉部730は野菜室扉6aとともに図示左方向に移動して、野菜室6は開き始める。
さらに駆動伝達部材640がCCW方向に回転した図8(c)の状態においては、第二の押し部662が第二の受け面732と接し、第一の押し部661は第一の受け面731からは離反する。すなわち、第二の押し部662は駆動軸620から図4に示した距離r2の位置にあり、かつr2>r1となるようにしていて第一の押し部661よりも第二の押し部662の方が回転中心である駆動軸620からの距離が離れているので回転の周速が速い。そのため、第二の押し部662が第二の受け面732と当接した後は、第一の押し部661は第一の受け面731からは離反するのである。この状態において、第二の押し部662は第二の受け面732に接して、矢印23cの力を与える。このとき、第二の押し部662は駆動軸620から図4に示した距離r2の位置にあるので、第二の押し部662から第二の受け面732を介して連結部材700の開扉部730に伝えられる力は、駆動軸620に加わるトルクをTとすれば、T/r2となる。この力は図8(b)の状態で矢印23bの方向に第一の押し部661により連結部材700の開扉部730に加わる力よりも小なのであるが、マグネットパッキンは既に引き剥がされているので、このときに加わる力はクローザ13による引込力と、野菜室扉6aの自重および収納された食品の質量をさらに加速する力の合力よりも大なるように設定すればよく、連結部材700の開扉部730は野菜室扉6aとともにさらに図示左方向に移動して、野菜室6の開き動作を継続する。
さらに駆動伝達部材640がCCW方向に回転した(d)の状態においては、第三の押し部663が第三の受け面733と接し、第二の押し部662は第二の受け面732からは離反する。すなわち、第三の押し部663は駆動軸620から図4に示した距離r3の位置にあり、かつr3>r2となるようにしていて第二の押し部662よりも第三の押し部663の方が回転中心である駆動軸620からの距離が離れているので回転の周速が速い。そのため、第三の押し部663が第三の受け面733と当接した後は、第二の押し部662は第二の受け面732からは離反するのである。この状態において、第三の押し部663は第三の受け面733に接して、矢印23dの力を与える。このとき、第三の押し部663は駆動軸620から図4に示した距離r3の位置にあるので、第三の押し部663から第三の受け面733を介して連結部材の開扉部730に伝えられる力は、駆動軸620に加わるトルクをTとすれば、T/r3となる。この力は図8(c)の状態で矢印23cの方向に第二の押し部662により連結部材700の開扉部730に加わる力よりも小なのであるが、野菜室扉6aは既に開き動作を行っていて矢印23dの方向に移動しているので、野菜室扉6aは容器12と収納された食品も含めた自重と速度に応じた運動量をもっており、その運動量と第三の押し部663から第三の受け面733に伝達される力とによってクローザ13による引っ張り力に抗して開き動作をさらに継続することができる。
さらに駆動伝達部材640がCCW方向に回転して、上記と同様に、順次第四の押し部664が第四の受け面734と接し、次に、第五の押し部665が第五の受け面735と接し、次に、第六の押し部666が第六の受け面736と接し、次に、第七の押し部667が第七の受け面737と接し(図8(e)の状態)、次に、第八の押し部668が第八の受け面738と接する(図8(f)の状態)ことにより、野菜室扉6aの開き動作を継続することができる。
そして、図8(f)の状態以降は、駆動伝達部材640は連結部材700の開扉部730からほぼ離反する状態を示している。
以上の図8(a)の状態から図8(f)の状態に至るまでの連結部材700の移動量33の範囲が、連結部材700の開扉部730が駆動伝達部材640から力を受ける範囲である開き駆動範囲、となる。ここで、この連結部材700の開扉部730の移動量33はクローザ420による引込量である閉じ付勢範囲よりも大なるように設定すると好適である。すなわち、閉じ付勢範囲であるクローザによる引き込みストロークが50mmであって連結部材700の開扉部730の移動量33が60mm以上あるとすれば、(図8(f)に示した位置で連結部材の開扉部730が停止、すなわち野菜室扉6aが停止したとしても、クローザ420によって開いたばかりの野菜室扉6aが閉じられることがないためである。
また、連結部材700の開扉部730の移動量33を、例えば、引き出し扉(図3の野菜室扉6a)全開放寸法の1/4以上となるように、つまり、前述したクローザ420による引込量である閉じ付勢範囲よりも大きくなるように、設定すれば、クローザ420によって開いたばかりの野菜室扉6aが閉じられることがない構成となる。
また、全開放寸法の1/4以上、引き出し扉を開放すれば、自動で、引き出し容器6b(図3の容器6b)内の貯蔵食品が判る程度に開放できるので、冷蔵庫の使い勝手が向上する。
なお、図8(f)の状態よりも野菜室扉6aが開放されて連結部材700の開扉部730が図示左方に移動すると、連結部材700の開扉部730は駆動伝達部材640からの駆動力は受けないのであるが、野菜室扉6aは矢印23f方向への速度を持っているので、扉枠400(図3の400)のもつ摩擦負荷によって徐々に減速して停止するまでは、開き動作を継続する。このように動作するので、野菜室扉6aの開き量は連結部材700の開扉部730の移動量33よりも大きくなる。
上記説明したように、野菜室扉6aの開き動作時には開き方向への駆動力を加え続けるのではなく、開き始めだけ駆動力を加え、その後は駆動力の範囲で得た移動速度が扉枠400のもつ摩擦力によって徐々に減速しながら停止する動作を実現できるので、扉の直前に使用者が立っていた場合、あるいは物が置いてあった場合に、野菜室扉6aが当たったとしても開き方向への駆動力が加わっていないので安全である。
上記説明したように、野菜室扉6aの開き動作時には開き方向への駆動力を加え続けるのではなく、開き始めだけ駆動力を加え、その後は駆動力の範囲で得た移動速度が扉枠400のもつ摩擦力によって徐々に減速しながら停止する動作を実現できるので、扉の直前に使用者が立っていた場合、あるいは物が置いてあった場合に、野菜室扉6aが当たったとしても開き方向への駆動力が加わっていないので安全である。
上記の動作により野菜室扉6aが開放された後(図8(f)の後)、駆動伝達部材640はさらにCCW方向への回転を継続し、図8(a)の状態、つまり原点位置40に至って回転を停止する。なお、言うまでも無くこの際には連結部材700は図8(a)の実線に示す位置ではなく、野菜室扉6aは開いているので図示左方の、例えば破線の位置に移動した状態である。
<閉じ動作>
野菜室扉6aを閉じた場合に、何らかの理由でマグネットパッキン14が吸着されるまで野菜室扉6aが閉じずに、マグネットパッキン14と冷蔵庫本体1との間に隙間ができる、所謂、半ドア状態になることがある。このように半ドア状態になった際の開扉装置500の動作について、図9を用いて説明する。
図9は本発明による開扉装置500が野菜室扉6aを閉鎖する際の動作を示す図であり、(a)は野菜室扉6aが閉鎖されていなくて、連結部材700の図示左端が引込位置34よりも、閉じ動作を行うことが可能となる閉じ駆動範囲である開き量35だけ移動した状態にあることを示している。野菜室扉6aにはクローザ420が設けられているものとすれば、通常はクローザ420の生じる引き込み力によって、野菜室扉6aは引き込まれて閉じられるのであるが、食品の一部が引っかかる等、何らかの理由で扉枠400の動作が一時的に渋くなって引き込まれない場合が稀に生じる。
ここで、駆動伝達部材640を駆動軸620の周りに矢印CW方向に回転すると、駆動伝達部材640の閉扉押し部670が、連結部材700の閉扉部720を構成する空間721内を回転して、連結部材の閉扉部720を構成する閉扉受け面722に当接する(図9(b))。
そして、駆動伝達部材640を矢印CW方向にさらに回転させると、閉扉押し部670によって、閉扉受け面722が矢印36方向に押されて移動するので、連結部材700の図示左端が引込位置34に至るまで移動する(図9(c))。
この図9(c)に示した位置というのはマグネットパッキン14が冷蔵庫本体1に吸着するまで野菜室扉6aが完全に閉じられた位置にあることを示している。
その後、駆動伝達部材640は矢印CCW方向に回転して図9(d)の状態となり、図8(a)に示したと同様な原点位置40まで回転させて停止する。
上記のように動作することにより、野菜室扉6aが完全には閉じずに所謂半ドア状態になっていたとしても、駆動伝達部材640を野菜室扉6aが開く場合とは反対方向に回転させることによって、連結部材700に対して野菜室扉6aを閉じる方向の力を加えて閉じることができるので、半ドアを防止することができるので好適である。
先に説明したように、野菜室扉6aを開く際の力はマグネットパッキン15を引き剥がす力とクローザ420による引き込み力との合計以上の力が必要となるが、閉じる際にはマグネットパッキン15を引き剥がす力は不用であり、さらにクローザ420による引き込み力が生じているので、本発明による開扉装置500によって加える閉じ力は、開き力と比べれば弱い力で十分である。本実施例によれば、野菜室扉6aを閉じる際には最も駆動軸20から遠方にある第八の押し部668と、ほぼ同じ距離にした閉扉押し部670によって、連結部材の閉扉部720を押す構成なので、駆動軸620に加わる駆動トルクが仮に開き時と同一であるとしても、閉じ力は開き力と比べてr1/r9(図4参照)だけ小さくなるので好適である。
次に冷蔵室扉2a、2bの回動扉開装置60の動作と構造について説明する。
≪冷蔵室扉の開扉装置≫
図10は、図1のB方向から見た冷蔵庫の平面図である。
<開扉装置の構成>
図10に示すように、回動扉開装置60は、扉2aと扉2bとにそれぞれ対応した押出部材61a、61bを備えている。押出部材61a、61bは、回動扉開装置60に収納された状態から扉2a,2bに向けて突出するように動作し、冷蔵室扉2a,2bの上端近傍を押して扉2a,2bを押し開く。
次に、本実施形態における冷蔵庫の回動扉開装置60について詳細に説明する。図11は、回動扉開装置60の平面図である。図12は、図11のC−C断面図である。
以下の回動扉開装置60の説明における前後上下左右の方向は、この回動扉開装置60が取り付けられた冷蔵庫1(図1及びび図2参照)の前後上下左右に一致させた、図11に示す前後上下左右の方向を基準とする。
図10及び図11に示すように、本実施形態の回動扉開装置60は、下半体であるケース62と上半体であるカバー69とで形成されるハウジング内に、第一の駆動源であるモータ82と、減速歯車列83と、大歯車76と、一対の間欠駆動歯車78a,78bと、一対の押出部材61a,61bと、を主に備えて構成されている。
ちなみに、図11に示すように、押出部材61a,61bが、ケース62内からその外側に向けて突出していない状態を、回動扉開装置60の「初期状態」と称することがある。また、「初期状態」の回動扉開装置60における、減速歯車列83、大歯車76、間欠駆動歯車78a,78b、及び押出部材61a,61bの位置を、それらの「原点位置」と称することがある。
モータ82は回転モータであって、その回転軸が正逆両方向に回転するものであればその種類は特に制限はない。本実施形態でのモータ82としては、例えばブラシ式の直流モータであって、端子に印加する電圧の極性を反転することで正転方向と逆転方向との両方向に回転することができるものを想定している。
<減速歯車の構成>
減速歯車列83は、モータ82の回転を減速しつつ、その動力を大歯車76に伝達するものである。
本実施形態での減速歯車列83は、ウォームギヤ84と、ウォームホイール85と、第二の歯車87と、第三の大歯車88aと、第三の小歯車88bと、第四の大歯車90aと、第四の小歯車90bと、を備えている。
図12は、図11のC−C断面図である。
図11及び図12に示すように、ウォームギヤ84は、モータ82の回転軸に設けられ、第一の歯車であるウォームホイール85と噛み合っている。平歯車である第二の歯車87はウォームホイール85と一体に設けられ、ウォームホイール85と第二の歯車87は共にウォームホイール軸86のまわりに回転自在に軸支されている。
第二の歯車87は、第三の大歯車88a(図11参照)と噛み合い、この第三の大歯車88aは、第三の小歯車88b(図11参照)と一体になって第三の支軸89(図11参照)のまわりに回転自在に軸支されている。また、第三の小歯車88b(図11参照)は、第四の大歯車90aと噛み合っている。この第四の大歯車90aは、第四の小歯車90bと一体になって第四の支軸91のまわりに回転自在に軸支されている。また、第四の小歯車90bは、大歯車76の後記する歯76A,76Bと噛み合っている。
つまり、減速歯車列83は、前記のように、モータ82の回転力を減速しつつ、大歯車76に伝達する構成となっている。
モータ82を回転させた際の、それぞれの歯車の回転方向の一例を図11の矢印にて示す。
ウォームギヤ84の回転方向は、一例としてウォームギヤ84に設けられた螺旋状の歯がこれと噛み合うウォームホイール85を、図11で表す平面視で左回りに回転させる方向を実線矢印で示している。例えばウォームギヤ84の歯が、一般的なネジとは逆の左ネジの螺旋である場合には、ウォームギヤ84の先端側から見てモータ82を時計回りに回転すればよく、本実施例においてはこのような回転方向を「正転方向」と称するものとする。
モータ82に印加する電圧の極性を逆にすることで、ウォームギヤ84を逆方向に回転した場合を破線矢印で図示しており、本実施例においてはこのような回転方向を「逆転方向」と称するものとする。
なお言うまでもなく、「正転」「逆転」というのは本実施形態の説明の便宜上のことであり、かかる表現に限定されるものではない。
<押出部材の構成>
図11に示すように、押出部材61a,61bは、例えば四角形等の多角形断面あるいは円形断面を有する細長いロッドであって、上半体のカバー69と下半体のケース62とで形成される前記ハウジング内の左側及び右側のそれぞれに沿うように配置されている。
押出部材61a,61bは、回動扉開装置60の前後方向に沿って移動可能なように、連結板65a,65bを介してガイドレール66a,66bに摺動可能に支持されている。
また、押出部材61a,61bの前端は、ケース62及びカバー69に跨るようにハウジング前面に設けられた開口63a,63b(図11参照)を介してハウジングの外側に臨んでいる。尚、押出部材61a,61bは、扉2a,2bのそれぞれに向けて突出した後に元の位置に復帰するように構成されている。
<動作説明>
次に、回動扉開装置60が左側の扉2aを開く際の動作について図13と図14を用いて説明する。図13は、扉の開動作の制御手順を示すフローチャートである。使用者が左開扉スイッチ48aを操作することによって制御基板41(制御部)は左側の扉2aの開扉プログラムを実行する。図14は、回動扉開装置による開動作中の各段階における扉の位置と、押し出し負荷検知を行なうタイミングと、モータ通電率との関係を示す動作説明図である。尚、本実施例では、押し出し負荷の検知手段として、モータ82の電流値を検知する方式を用いている。
前述の通り、「初期状態」の回動扉開装置60における、減速歯車列83、大歯車76、間欠駆動歯車78a,78b、及び押出部材61a,61bの位置は「原点位置」であり、左右の押出部材61a,61bは、まだ突出していない。この時点では回動扉が動作していないため、ドアパッキン15が冷蔵庫1の前面の開口周縁部に密着しており、クローザが作用している状態である(図13及び図14中のA点)。
ここで、使用者が左開扉スイッチ48aを操作すると、制御基板41(制御部)は左側の扉2aの開扉プログラムが実行される(図13のステップS121のYes)。
モータ82の通電率は、通電開始時の急激な通電による過電流を防ぐために、通電率を0から所定の通電率aまで徐々に大きくしていくソフトスタートを経る。所定の通電率aにて正転方向に駆動(図13ステップS122)して、大歯車76及びカム部99が「原点位置」(図16(a)参照)から時計回りに回転すると、大歯車76の凹部76Daが間欠駆動歯車78aのストッパ部80aに近接した状態となる(図16(b)参照)。この状態では、大歯車76はいずれの間欠駆動歯車78a,78bともまだ噛み合っておらず、左右の押出部材61a,61bは、まだ突出していない(図13及び図14中のB点)。
尚、モータ82への通電が開始された後(図13のステップS122)、モータ82の電流を検知しない時間として予め設定された時間t1の計測が開始される(図13のステップS123)。
更に、モータ82が正転方向に駆動して、大歯車76及びカム部99が「原点位置」から時計回りに回転すると、間欠駆動歯車78aは、大歯車76と噛み合って反時計回りに回転し始める(図16(c)参照)。そして、間欠駆動歯車78aと一体になっている回転板73aも反時計回りに回転する(図16(d)参照)。これにより、回転板73aに噛み合う連結板65aは前方に向けて押し出される。連結板65aに接続された押出部材61aは前方に向けて突出動作を開始する。これにより左側の扉2aの開扉動作が開始する。
更にモータ82を時間t1が経過(図13のステップS124のYes)するまで正転方向に駆動して、大歯車76とカム部99が「原点位置」から時計回りに回転すると、連結板65aは更に前方に向けて押し出されて、ドアパッキン15が冷蔵庫1の前面の開口周縁部から離れて、前記クローザが作用しない位置まで回動扉が動作する(図13及び図14中のC点)。
尚、モータ82の電流値を検知しない区間としてあらかじめ設定された時間t1は、冷蔵庫1の前面の開口周縁部と密着しているドアパッキン15の密着状態を解除して、クローザが作用しない位置まで扉が回動する時間とすることが重要である。冷蔵庫1の前面の開口周縁部に対するドアパッキン15の密着状態を解除する際、扉2aの開放動作の中で最も大きな力を要する。例えば、ドアパッキン15は樹脂で構成した柔軟性部材(図示せず)の内部に永久磁石等の磁性体(図示せず)を有する構成であり、冷蔵庫1の外殻は鋼板等の鉄を基礎とする合金で構成している。この構成において、ドアパッキン15を冷蔵庫1の前面の開口周縁部に近づけると、ドアパッキン15の磁性体が開口周縁部に磁力によって引き付けられて密着する。
すなわち、扉2aが実際に開放を開始するまでは、主にドアパッキン15が開口周縁部に磁力によって密着することに起因した負荷が押出部材61aに作用する。換言すると、扉2aの開放動作の開始時(図14のB点−C点の区間)は、扉収納部の負荷よりも、ドアパッキン15の密着状態を解除する負荷が支配的となる。よって、時間t1の間はモータ82の電流値を検知せずに、所定の通電率aでモータ82を駆動する。なお、時間t1の間はモータ82の電流値を検知していてもよく、この場合は検知した電流値に基づくモータ82の通電率の制御は行わないが、モータ82が正常に動作しているかを確認することに適している。
さらに、クローザが作用しない位置まで回動扉が動作すると、押出部材61aにかかる押し出し負荷は、扉収納部の負荷とヒンジの摩擦による負荷量となり、クローザの応力を受けている状態と比較し、安定した負荷を検知することが可能である。
時間t1が経過し、安定した負荷を検知することができるC点から、制御基板41に搭載されるモータ電流検知手段50b(図17参照)にてモータ82の電流値のサンプリングを開始する(図13のステップS125)。
尚、モータ82の電流値のサンプリングが開始されたステップS125の後、モータ82の電流値をサンプリングする時間としてとして予め設定された時間t2の計測が開始される(図13のステップS126)。
更にモータ82を時間t2が経過(図13のステップS127のYes)するまでモータ82の電流値のサンプリングを継続しつつ、正転方向に駆動する。これにより、押出部材61aは前方に向けて突出動作が継続し、左側の扉2aの開扉動作が継続される。
モータ82の電流値のサンプリングにおいて、モータ電流サンプリング時間として予め設定された時間t2(図13及び図14のC点−D点区間)だけモータ電流をサンプリングした結果の平均値を算出して、算出した電流値の平均値に基づいて制御装置50c(図17参照)で計算を行い、D点以降にモータに通電するモータ通電率bを算出する(図13のステップS128)。
本算出結果により、D点以降はモータ駆動手段50a(図17参照)を用いて増減したモータ通電率bにて動作させる(図13のステップS129)。
更にモータ82は、通電率bで駆動する時間として予め設定された時間t3(図13及び図14のD点−E点区間)だけ通電率bにて正転方向に駆動し、押出部材61aは前方に向けて突出動作を継続し、左側の扉2aの開扉動作が継続される。
尚、通電率bでモータ82の駆動が開始されたステップS129の後、通電率bで駆動する時間としてとして予め設定された時間t3の計測が開始される(図13のステップS130)。
時間t3が経過し、通電率bで駆動する時間としてとして予め設定された時間t3が経過(図13のステップS131のYes)すると、モータ82の通電を停止させ、左側の扉2aを開く際の動作が終了する(図13のステップS132。図13及び図14のE点)。
尚、本実施形態における回動扉開装置60が右側の扉2bを開く際の動作は、左側の扉2aを開く際の動作と同様であり、モータ82の回転方向が逆となる。尚、左右の扉2a,2bに設定する各通電率および各設定時間をそれぞれの扉に個別に設けることで、より安定した制御が可能となる。例えば、右側の扉2aと左側の扉2bにおいて、扉の大きさや重量が異なる場合、回動軸であるヒンジ17a,17bから押出部材61a,61bが扉2a,2bに接する位置までの距離が異なる場合、回動仕切り18の有無、扉収納部である扉ポケット13の収納容量の違い等によって、扉の負荷は異なるため、想定される負荷の範囲に応じた通電率及び設定時間を各扉に設けておくことが好適である。
<スイッチレバー及び検知スイッチ>
前述の実施例に加え、押出部材61a,61bの突出位置を検出可能とする検知スイッチ95a,95bを用いた構成を説明する。検知スイッチ95a,95bによって、より精度の高い開扉制御が可能となる。
図15(a)は、大歯車に係合するスイッチレバー及び検知スイッチを備える検知スイッチ動作部の斜視図であり、大歯車を斜め下方から見上げた様子を示す斜視図、図15(b)は、検知スイッチ動作部の分解斜視図である。なお、図15(a)は、原点位置における大歯車に係るスイッチレバーの状態を表している。
図15(a)及び図15(b)に示すように、検知スイッチ動作部は、大歯車76のカム部99に係合するスイッチレバー96a,96bと、検知スプリング97と、検知スイッチ95a,95bと、を主に備えて構成されている。
スイッチレバー96a,96bは、互いに対称形状の一対のレバー部材で形成され、長手方向の略中央部にそれぞれ軸支部98が形成されている。そして、軸支部98が共通の軸部材(図示省略)で支持されることにより、スイッチレバー96a,96b同士はこの軸部材まわりに個別に回動自在になっている。
図15(b)に示すように、スイッチレバー96a,96bの長手方向の一端側には、スイッチレバー96a,96b同士が向き合う面にスプリング突起96Ba,96Bb(図15(b)中、スイッチレバー96b側のスプリング突起96Bbは不図示)が形成されている。これらスプリング突起96Ba,96Bbの間には圧縮バネである検知スプリング97が架けられている。
また、スイッチレバー96a,96bの一端側には、スプリング突起96Ba,96Bbが形成される側とは反対側の面に、スイッチ突起96Aa,96Ab(図15(b)中、スイッチレバー96a側のスイッチ突起96Aaは不図示)が形成されている。
このスイッチ突起96Aa,96Abには、それぞれ検知スイッチ95a及び検知スイッチ95bが対向するように設けられている。この検知スイッチ95a,95bは、例えばタクトスイッチで構成されている。つまり、スイッチレバー96aのスイッチ突起96Abが検知スイッチ95aに接触するとスイッチONとなり、離れるとスイッチOFFとなる。また、スイッチレバー96bのスイッチ突起96Abが検知スイッチ95bに接触すると、スイッチONとなり、離れるとスイッチOFFとなる。
また、スイッチレバー96a,96bの長手方向の他端側には、スイッチレバー96a,96b同士が向き合う面にスイッチレバー先端部96Ca,96Cbが形成されている。このスイッチレバー先端部96Ca,96Cbは、スイッチレバー96a,96bの一端側に配置された検知スプリング97の反発力によって、次に説明する大歯車76(図15(a)参照)のカム部99(図15(a)参照)を挟持するようになっている。
図15(a)に示すように、大歯車76の下面には、大歯車76(大歯車中心軸77)と同軸にカム部99が形成されている。このカム部99は、互いに径の異なる2つの周面を有する厚みをもった略円盤形状の部材であり、径の大きい第一周面99aと、この第一周面99aよりも径の小さい第二周面99bとを有している。
そして、大歯車76と共にカム部99が回転すると、この第一周面99a及び第二周面99bには、スイッチレバー先端部96Ca,96Cbが摺接するようになっている。
つまり、スイッチレバー先端部96Caが第一周面99aに摺接すると、スイッチレバー96aのスイッチ突起96Abが検知スイッチ95aから離れてスイッチOFFとなる。また、スイッチレバー先端部96Caが第二周面99bに摺接すると、スイッチレバー96aのスイッチ突起96Abが検知スイッチ95aと接触してスイッチONとなる。
そして、スイッチレバー先端部96Cbが第一周面99aに摺接すると、スイッチレバー96bのスイッチ突起96Abが検知スイッチ95bから離れてスイッチOFFとなる。また、スイッチレバー先端部96Cbが第二周面99bに摺接すると、スイッチレバー96bのスイッチ突起96Abが検知スイッチ95bと接触してスイッチONとなる。
つまり、カム部99の第一周面99aはOFF面を形成し、第二周面99bはON面を形成することとなる。
図15(a)に示した原点位置においては、スイッチレバー先端部96Ca,96Cbは共に第一周面99a(OFF面)に接しており、スイッチレバー96a,96bは実線矢印で示す方向に移動した状態であり、スイッチ突起96Aa,96Abは検知スプリング97を押し縮めて検知スイッチ95a,95bから離れる方向に変位するので、検知スイッチ95a,95bは両方ともOFFとなる。
大歯車76が原点位置から回転して、スイッチレバー先端部96Ca,96Cbが第一周面99a(OFF面)から第二周面99b(ON面)に移動すると、スイッチレバー96a,96bは検知スプリング97の反力によって破線矢印で示す方向に移動し、スイッチ突起96Aa,96Abは、検知スイッチ95a,95bを押して検知スイッチ95a,95bを共にONにする。
本実施形態においては、2式のスイッチレバー96a,96bをそれぞれの検知スイッチ95a,95bに押圧してONにする作用を、ただ一つの検知スプリング97によって実現することができる。
すなわち、大歯車76を回転するとカム部99が回転するのでスイッチレバー96a,96bが回動し、大歯車76の回転角度に応じて、検知スイッチ95a,95bをON/OFFすることができる。
次に、大歯車76と間欠駆動歯車78a,78bと、カム部99と、スイッチレバー96a,96bとの位置関係について説明する。
図16(a)から(f)は、回動扉開装置における大歯車と間欠駆動歯車とスイッチレバーとの位置関係を模式的に示す平面図である。なお、図16(a)から(f)は、大歯車76を時計回りに回転させて左側の間欠駆動歯車78aを回転駆動して、左側の押出部材61aを突出させて左側の扉2aの開扉動作を行う動作を示している。また、図16(a)から(f)においては、大歯車76の摺動面76Cと、凹部76Dと、間欠駆動歯車78の駆動に係る部分の歯76Aのみを示している。
図16(a)は、「原点位置」の状態を表しており、間欠駆動歯車78a,78bはそれぞれのストッパ部80a,80bの先端が摺動面76Cと嵌合してロックした状態にある。また、スイッチレバー先端部96Ca,96Cbは、カム部99の第一周面99a(OFF面)と接しており、検知スイッチ95a,95bは、共にOFFになっている(以下、この状態を「検知スイッチA/B=OFF/OFF」と称することがある)。
図16(b)は、「原点位置」から大歯車76が時計回りに角度θ1だけ回転した「原点外側移動」状態を表しており、間欠駆動歯車78a,78bはストッパ部80a,80bの先端が摺動面76Cと嵌合してロックした状態にある。また、スイッチレバー先端部96Caは、カム部99の第一周面99a(OFF面)と接しており、検知スイッチ95aは、OFFになっている。また、スイッチレバー先端部96Cbは、カム部99の第一周面99a(OFF面)から第二周面99b(ON面)に移動し、検知スイッチ95bは、OFFからONに切り替わっている。つまり、図16(b)の位置は、「原点範囲」の境界部を示している。ここで、凹部76Daは、間欠駆動歯車78aのストッパ部80aにおけるストッパ端部80Aaに近接した位置まで移動する(以下、この状態を「検知スイッチA/B=OFF/ON」と称することがある)。
図16(c)は、更に大歯車76が角度θ2(>θ1)まで回転した状態を示している。つまり、間欠駆動歯車78aのストッパ部80aが凹部76Daに入り込むことでロック状態が解除され、大歯車76は、間欠駆動歯車78aとの噛み合いが可能な状態となっている(「間欠歯車噛合」状態)。これにより間欠駆動歯車78aは、反時計方向に回転し始める。この際、スイッチレバー96a,96bは、図16(b)の状態から変化はなく、検知スイッチ95aはOFF、検知スイッチ95bはONのままとなる(検知スイッチA/B=OFF/ON)。
図16(d)は、更に大歯車76が角度θ3(>θ2)まで回動した状態を示しており、間欠駆動歯車78aは、大歯車76と噛み合って反時計方向に回転を継続している。また、間欠駆動歯車78aと一体となった回転板73aも回動するので、連結板65aを介して押出部材61aが前方に突き出す(「突出動作中」)。これにより押出部材61aは、開扉動作を行う。スイッチレバー96a,96bは、図16(b)ないし図16(c)の状態から変化はなく、検知スイッチ95aはOFF、検知スイッチ95bはONのままとなる(検知スイッチA/B=OFF/ON)。
図16(e)は、更に大歯車76が角度θ4(>θ3)まで回動した状態を示しており、押出部材61aは、その動作範囲のほぼ最大値の近くにまで突き出している(「突出完了直前」状態)。間欠駆動歯車78aは、概ね最大に回動した位置にある。スイッチレバー先端部96Caは、カム部99の第一周面99a(OFF面)から第二周面99b(ON面)に移動し、検知スイッチ95aは、OFFからONに切り替わる。検知スイッチ95bには変化がなくONのままである。検知スイッチ95aがOFFからONに切り替わったことが検知される(以下、この状態を「検知スイッチA/B=ON/ON」と称することがある)。この際、モータ82への通電が停止されれば、モータ82は減速しつつ停止する。
図16(f)は、更に大歯車76が角度θ5(>θ4)まで回転した状態を示しており、モータ82は停止し、押出部材61aは突出動作を完了して停止する(「突出完了停止」状態)。大歯車76及び間欠駆動歯車78aは、最も大きく回転した位置にある。スイッチレバー96a,96bは、図16(e)の状態から変化はなく、検知スイッチ95a,95bは、共にONのままとなる(検知スイッチA/B=ON/ON)。
その後、回動扉開装置60は、モータ82を逆転して大歯車76を反時計方向に回転することで、前記とは逆の、図16(f)から図16(a)に至る動作を行って、再び「原点位置」に復帰する。
<制御系回路の構成>
次に、引き出し扉開装置500と、回動扉開装置60を制御するための制御系の構成について説明する。
前記したように、制御基板41(図2参照)は、冷蔵庫1の天井壁の上面側に取り付けられている。
図17は、開扉装置の制御系の構成を示す回路図である。図17に示すように、冷蔵庫1の制御基板41には、商用電源からフィルタ回路42、コンバータ回路45、スイッチング電源回路52、制御装置50C、開扉装置500、60を駆動するモータ駆動回路53、モータ電流検知手段50b、回路切替スイッチ部54を備えている。なお、コンバータ回路45の出力側にインバータ回路および圧縮機が接続されているが、図17では省略してある。また、制御装置50Cには、扉スイッチ48a、48b、49の信号が入力されている。これ以外にも制御装置50Cには、扉センサ49、温度センサ44,45,46,47、コントロールパネル40、冷蔵温度帯室冷気制御手段20及び冷凍温度帯室冷気制御手段21を個別に駆動するそれぞれの駆動モータが接続されているが、図17では省略してある。
フィルタ回路42は、商用電源から供給される交流電圧をフィルタリングしてコンバータ回路45に出力するものである。コンバータ回路45は、フィルタリングされた交流電圧を整流して直流電圧に変換する整流回路43と、この整流回路43で変換された直流電圧を平滑する平滑回路44とから構成されている。
スイッチング電源回路52は、コンバータ回路45で生成された直流電圧が一次側に印加され、当該直流電圧より低い直流電圧を制御用電源として生成して二次側に出力するものである。スイッチング電源回路52は複数種類の直流電圧、例えば、庫内用電源として12V、5V、インバータ用電源として15V、5Vなどを生成して二次側に出力するものであるが、図17では庫内用電源の12V、5Vの直流電圧を二次側に出力することを表示してある。この場合、12Vの直流電圧はモータ駆動回路53の電源として、5Vの直流電圧には制御装置50Cの電源として接続されており、モータ駆動回路53は、制御装置50Cから出力される信号により駆動する。さらにモータ駆動回路53が駆動時に出力される電圧は、各開扉装置500、60、のモータ600、82、へ印加可能なように並列接続されている。但し、各モータ600、82、への同時通電による過電流を防ぐため、モータ駆動回路53の出力+側にはC接点の回路切替スイッチ部54が2段階で接続されており、これにより、同時通電を防ぐ構成とする。また、各回路切替スイッチ部54は制御装置50Cと接続され、制御装置50Cは、各扉スイッチ48a、48b、49の信号を常時監視しており、スイッチ入力が入ると制御装置50Cから所定の回路切替スイッチ部54へ信号を出力して制御する。
ここで、C接点とは、A接点とB接点が組み合わされたものである。A接点は、通常開いており、回路に電気が流れておらず、スイッチ切り替えで接点がつながり電気が流れる。B接点は、A接点と逆に通常閉じて回路に電気が流れており、スイッチ切替で接点が離れて回路が開く。
尚、上記実施例によれば回路切替スイッチ部54を2段階で接続することで、3つの開扉装置500、60を2つの回路切替スイッチ部54で制御可能となる。これにより、従来より切替手段が減るため、安価な構成となる。また、回路切替スイッチ部54は2段階に限ったものではなく、開扉装置の数にあわせて増減することが有効である。
本実施形態では、冷蔵室扉2a,2bは単一のモータ(第一の駆動源82)で駆動する回動扉開装置60によって開放される。下段冷凍室扉5aと野菜室扉6aは、第二の駆動源(モータ)24で駆動する各扉に対応した複数の引き出し扉開装置(開扉装置)500,500によってそれぞれ開放される。
そして、一の回路切替スイッチ部54にて、回動扉開装置60を駆動するかの切り替えを行い、さらに一の回路切替スイッチ部54と直列に接続した他の回路切替スイッチ部54にて、下段冷凍室扉5aと野菜室扉6aをそれぞれ開放する引き出し扉開装置(開扉装置)500,500の駆動を切り換える。
次にモータ駆動回路53の内部構成について説明する。
図17に示すモータ駆動回路53内部には4つのバイポーラトランジスタまたはMOSFET等の駆動素子55で構成されており、その接続はHブリッジ接続とする。これにより各モータ600、82へ印加される電圧の極性を変えることでモータの回転方向を変更することが可能となる。
具体的には、4つの駆動素子55は各々制御装置50Cの信号により制御されており、制御装置50Cから仮に図中A接続とD接続の駆動素子55を動作させた場合、モータ駆動回路53の12V電源から実線矢印方向に電流が流れ、モータ側は+端子から出力される。逆に図中B接続とC接続の駆動素子55を動作させた場合、モータ駆動回路53の12V電源から破線矢印方向に電流が流れ、モータ側は−端子から出力される。よって電流の流れが変わるため、モータへ印加される電圧の極性も変化することが可能となる。
尚、モータの回転方向を変えるのは前述した左右に分割した観音開きの冷蔵室扉2a、2bの場合、モータの回転方向で開く扉を選択が可能な構成と、引き出し扉5a、6aの場合、モータの回転方向で開き動作と閉じ動作が選択可能な構成を採用するためである。
また、モータ駆動時に発生した電流は、モータ電流検知手段56を経由してGND(0V)へ流す際に、検知した電流量を制御装置50Cへフィードバックすることが可能となる。(図示せず)これにより前述した扉の重量、ドアパッキン15の密着状態、収納容量によって変化する負荷量にあわせてモータへの通電時間または通電率を変えて制御することが可能となる。
以上の本実施形態では、回動軸まわりに回動して貯蔵室2を開閉する回動扉と、前後に移動して貯蔵室を開閉する引き出し扉と、前記回動扉を開放する回動扉開装置と、前記引き出し扉を開放する引き出し扉開装置と、前記回動扉と前記引き出し扉にそれぞれ開放指示する複数の開扉スイッチと、前記複数の開扉スイッチの少なくとも一つから信号を受付けて前記回動扉開装置又は前記引き出し扉開装置を制御する制御部と、を備え、前記回動扉開装置は第一の駆動源を備え、前記引き出し扉開装置は、第二の駆動源を備え、前記第一の駆動源と前記第二の駆動源を共通に駆動する駆動回路と、前記駆動回路の出力経路を切り替える回路切替スイッチ部と、を備え、前記回路切替スイッチ部はC接点により前記第一の駆動源と前記第二の駆動源への通電経路を切り替える。これにより、駆動回路を簡易化しつつ複数の扉を開放することができる。
また、前記第二の駆動源を複数有し、前記第一の駆動源と前記第二の駆動源の合計数よりも1つ少ない数の前記回路切替スイッチ部を直列接続して備える。これにより、各扉の駆動源に対応して駆動の切り替えを効率的に行うことができる。
また、駆動回路は4つの制御素子を備え、前記制御素子はHブリッジ型の回路構成とし、前記第一の駆動源と前記第二の駆動源へ通電される電圧の極性を変えることで正転又は逆転する。これにより、駆動回路をより簡易化して各扉を効率的に開放することができる。
次に、本発明の第2実施形態の冷蔵庫について図18を用いて説明する。図18は本発明の第2実施形態の冷蔵庫の制御のタイムチャート図である。この第2実施形態は、次に述べる点で第1実施形態と相違するものであり、その他の点については第1実施形態と基本的には同一であるので、重複する説明を省略する。
第2実施形態の特徴として、信頼性に対する保護制御について記載する。信頼性としては、使用者が下段冷凍室扉5a又は野菜室扉6aを引き出し扉開装置(開扉装置)500,500で開けようとした時、回路切替スイッチ部54が何らかの理由で切替動作しなかった場合、冷蔵室扉2a、2bを開放する側に電流が流れて回動扉開装置60を駆動する。そのため、使用者が意図しない扉(冷蔵室扉2a,2b)が開く場合が想定される。そこで、下段冷凍室扉5a又は野菜室扉6aの動作中に冷蔵室扉2a,2bを開放する回動扉開装置60が動作したら、回動扉開装置60の動作を停止させる制御を行う。
次に使用者が意図しない扉が開いてしまう条件について詳細を以下説明する。
前述した図17に示す冷蔵室扉2a,2bを開放する回動扉開装置60と接続される回路切替スイッチ部54について、仮に回路切替スイッチ部54の初期状態(制御装置50Cから切替指令信号が出力されていない場合)をスイッチ接点が回動扉開装置60側へ接続された状態とすると、その場合に何らかの電気的な要因により接点溶着、または、制御装置50C側から信号経路断線等が発生した場合、回路切替スイッチ部54は切替を実施できない。さらに、制御装置50Cは回路切替スイッチ部54へ信号を出力すると同時に、モータ駆動回路53へ信号を出力する。駆動回路から発生した電圧は、故障して切替ができない状態の回路切替スイッチ部54を経由して回動扉開装置60のモータ82へ印加される。よってこの状態で使用者が冷蔵室扉2a,2b以外の扉5a,6aに備わる各扉スイッチ49を操作した場合、制御装置50Cは扉5a,6aを開放しようと回路切替スイッチ54、モータ駆動回路53を制御するが、実際には使用者が意図しない冷蔵室扉2a,2bが開放されてしまう。
次に上記状態を回避するための保護制御について説明する。
図18には前述した扉5a,6aに備わる各扉スイッチ49を押した場合の開き動作及び半ドアを防ぐ閉じ動作の制御タイムチャート図を示す。
まず、図18(a)によって開き動作の保護制御について説明する。各扉スイッチ49が押された場合(図18(a)中の(A))、通常であれば回路切替スイッチ部54へ切替指令が行われるが、前述したとおり接点の切替が正常にできないと、回路切替スイッチ部54は回動扉開装置60側のモータ82へ接続された状態となる。そして、モータ駆動回路53は通常の制御通りに駆動待ち時間t4経過後、制御装置50Cからの出力信号によりモータ82を正転動作する(図18(a)中の(B))。モータ82を備える回動扉開装置60は、前述した図16に示すようにモータ82回転時の位置を検知するための検知スイッチ95a,95bを備えている。図16(b)は、「原点位置」から大歯車76が時計回りに角度θ1だけ回転した「原点外側移動」状態を表しており、この場合、検知スイッチ95bはOFFからONに切り替わっている。尚、この時点で押出部材61aは突出していない。
次に図18に戻り、制御装置50Cは、図16で説明した検知スイッチ95a,95bの入力信号状態を常時監視する。スイッチOFF状態でHi信号が入力され、ON状態でLo信号へ変化する。モータ82は図16(b)の状態となった時点(図18(a)中の(C))で制御装置50Cへ入力される検知スイッチ95bの信号がHiからLo信号へ変化する。制御装置50Cは検知スイッチに変化があると、即時にモータ駆動回路53への制御信号を停止へ切替える(図188a)中の(D))。
また、図18(b)の閉じ動作は、上記図18(a)の開き動作に対して、制御装置50Cからの出力信号が逆転方向へ出力されることで検知スイッチ95aに変化がある。この場合でも、制御装置50Cは即時にモータ駆動回路53への制御信号を停止へ切替える(図18(b)中の(D))。
尚、本実施形態によれば回路切替スイッチ54が故障しても扉開装置60に備わる検知スイッチにより使用者の意図しない扉が開くことを回避することができる。
以上の本実施形態では、前記駆動機構は前記第一の駆動源又は前記第二の駆動源の駆動状態により変化する検知スイッチ部を備え、前記制御部は、前記検知スイッチ部から所定の信号変化があった場合、前記駆動回路を停止する。これにより、駆動回路を簡易化しつつ、扉の開放動作における信頼性を高めることができる。