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JP6435092B2 - 変性ポリオレフィン系樹脂 - Google Patents

変性ポリオレフィン系樹脂 Download PDF

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JP6435092B2 JP2013236713A JP2013236713A JP6435092B2 JP 6435092 B2 JP6435092 B2 JP 6435092B2 JP 2013236713 A JP2013236713 A JP 2013236713A JP 2013236713 A JP2013236713 A JP 2013236713A JP 6435092 B2 JP6435092 B2 JP 6435092B2
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Description

本発明は、リチウムイオン電池外装を構成する金属箔と樹脂フィルムとの接着性に優れ、電解液に対して耐久性を有し、溶液の低温保管安定性に優れる電池外装材接着剤用変性ポリオレフィン系樹脂を提供する。
一般的なリチウムイオン二次電池は、正極、負極、非水電解質及びセパレーターで構成されている。これらを包装する外装材は、プレス加工された鋼板、アルミ板からなる金属缶が使用されてきたが、近年では電池の軽量化、高い形状自由度が得られるアルミラミネートフィルムの利用が拡大している。
アルミラミネートフィルムを外装材とする電池は、携帯電話、高機能携帯電話(スマートフォン)、ノート型コンピューター、タブレット型コンピューター、デジタルカメラ、電子書籍、などの民生用小型電子機器、また、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、などの電動車両に幅広く使用されている。
このアルミラミネートフィルムは、耐熱性のポリエステル樹脂やポリアミド樹脂などからなる外層、アルミニウム箔などからなる中間層(バリア層)に、ポリオレフィン樹脂などからなる内層からなる積層構成が一般的である。なお、内層は、内層同士を熱溶着させ、電池としてパウチ状に密閉するために、ヒートシール性を有することが要求される。
外層と中間層との接着には、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、などの一般的な接着剤が使用される。一方、中間層と内層との接着には、酸変性ポリプロピレン系接着剤が用いられることが知られている(特許文献1、特許文献2)。
また、酸変性ポリオレフィン樹脂を内層として、バリア層に直接ラミネートする方法が用いられることもある。
特開2011−256339号公報 特開2010−086744号公報
しかしながら、特許文献1及び2に開示されている酸変性ポリプロピレン系接着剤(重合時にコモノマーを含有させたランダムポリプロピレン)は、融点あるいは軟化点が110℃から165℃の範囲にある。酸変性ポリプロピレンを中間層と内層との接着剤として、ラミネートして使用する場合には、内層に使用されるポリオレフィン樹脂の融点以上に加熱溶解する必要がある。特許文献1及び2の酸変性ポリプロピレン系接着剤を用いる場合には、加熱により内層(ポリオレフィン樹脂)基材の形状が変形する問題が発生する。
また、従来の酸変性ポリプロピレン系接着剤は溶剤溶解性が悪いため、塗布して使用することが困難であるとともに、溶液の安定性(特に低温での安定性)に劣るといった問題を有している。
一方、融点が110℃以上の酸変性ポリプロピレン系接着剤の代わりに110℃未満の酸変性ポリプロピレン系接着剤を用いた場合には、内層基材の形状の変形、溶剤溶解性、溶液の安定性は改善されるものの、耐電解液性の低下などの新たな問題が発生する。
そこで、本発明は、リチウムイオン電池外装材を構成する各層との接着性に優れ、電解液に対する耐久性を有し、かつ溶液の安定性に優れるリチウムイオン電池外装材接着剤用の変性ポリオレフィン系樹脂を提供することを目的とする。
本発明は、以下の[1]〜[4]を提供する。
[1]成分(A):ポリオレフィン樹脂が、成分(B):α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び成分(C):(メタ)アクリル酸エステルでグラフト変性されている変性ポリオレフィン系樹脂を含有し、
変性ポリオレフィン系樹脂の示差走査型熱量計(DSC)による融点が70℃〜90℃であり、かつ、重量平均分子量が100,000〜200,000である、
耐溶剤性を有する変性ポリオレフィン系樹脂。
[2]成分(C)が、少なくとも一般式(I)で示される化合物を含む上記[1]記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
CH2=CR1COOR2・・・(I)
(式(I)中、R1=H又はCH3、R2=Cn2n+1、n=8〜18の整数)
[3]成分(A)が、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む上記[1]又は[2]に記載の変性ポリオレフィン樹脂。
[4]変性ポリオレフィン系樹脂中の、成分(B)のグラフト重量及び成分(C)のグラフト重量のうち少なくとも一方が0.1〜10重量%である上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
本発明によれば、接着性に優れ、電解液に対する耐久性を有し、さらに溶液の安定性にも優れる変性ポリオレフィン系樹脂を提供することができる。
図1は、本発明のリチウムイオン電池外装材の第1の例の断面図を模式的に示す図である。 図2は、本発明のリチウムイオン電池外装材の第2の例の断面図を模式的に示す図である。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、成分(A):ポリオレフィン樹脂が、成分(B):α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び成分(C):(メタ)アクリル酸エステルでグラフト変性されている変性ポリオレフィン系樹脂を含有する。変性ポリオレフィン系樹脂の示差走査型熱量計(DSC)による融点は70℃〜90℃であり、重量平均分子量が100,000〜200,000である。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂が優れた効果が発現する理由は次のように推測される。一般に、変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量が小さいと、電解液等の溶剤に対して十分な耐久性(耐溶剤性)が得られにくく、一方、重量平均分子量が大きいと、良好な接着性が得られにくくなる。また、変性ポリオレフィン系樹脂の分子量分布が広いと、上記の重量平均分子量が小さい場合の影響と大きい場合の影響の両方が出るおそれがある。更に、変性ポリオレフィン系樹脂の融点が低いと、電解液等の溶剤に対して十分な耐久性(耐溶剤性)が得られにくく、一方、融点が高いと、基材の形状の変形を発生させない比較的低温での接着性、良好な溶剤溶解性、低温での溶液の安定性が得られにくい傾向がある。
これに対して、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、成分(B)及び(C)に由来するグラフト成分を含み、かつ融点及び重量平均分子量が所定の範囲であるため、優れた効果を発現していると考えられる。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、成分(A)に成分(B)及び成分(C)をグラフト重合することで得ることができる。変性ポリオレフィン系樹脂の合成方法は、公知の方法で行うことが可能であり、製造の際には成分(D):ラジカル発生剤を用いてもよい。例えば、成分(A)、(B)及び(C)の混合物を、トルエン等の有機溶剤に加熱溶解し、成分(D):ラジカル発生剤を添加する溶液法、或いは、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等の混練機を使用して、成分(A)、(B)、(C)及び(D)を添加し、加熱下で溶融混練反応により変性ポリオレフィン系樹脂を得る方法が挙げられる。成分(A)、(B)、(C)及び(D)は、一括添加しても、逐次添加してもよい。
本発明において、変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、100,000〜200,000であり、好ましくは110,000〜190,000であり、より好ましくは120,000〜180,000である。重量平均分子量が100,000以上であることにより、電池の電解液に対する十分な耐久性を得ることができる。200,000以下であることにより、接着剤を使用する際に十分な溶剤溶解性を得ることができる。実施例を含む本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準物質:ポリスチレン)によって測定し、算出された値である。
本発明において、変性ポリオレフィン系樹脂の示差走査型熱量計(以下、DSC)による融点(以下、Tm)は、70℃〜90℃であり、71℃〜89℃であることが好ましく、より好ましくは73℃〜87℃である。融点が70℃以上であることにより、充分な接着強度を得ることができる。一方、融点が90℃以下であることにより、基材の形状の変形を発生させない比較的低温での接着性が良好であり、溶液安定性が良好であり、低温での十分な保管安定性を得ることができる。
本発明におけるDSCによるTmの測定は、例えば以下の条件で行うことができる。JIS K7121−1987に準拠し、DSC測定装置(セイコー電子工業製)を用い、約5mgの試料を150℃で10分間加熱融解状態を保持後、10℃/分の速度で降温して−50℃で安定保持した後、更に10℃/分で150℃まで昇温して融解した時の融解ピーク温度を測定し、該温度をTmとして評価する。尚、後述の実施例におけるTmは前述の条件で測定されたものである。
成分(A)としてのポリオレフィン樹脂は、特に限定されないが、エチレン又はプロピレンの単独重合体、エチレン又はプロピレンとその他のコモノマー(例えばブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ブテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数2以上のコモノマーが例示される。好ましくは2〜6のα−オレフィンコモノマーのランダム共重合体又はブロック共重合体、コモノマーを2種類以上重合した共重合体等であり、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体がより好ましい。
成分(B)はα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体である。α,β−不飽和カルボン酸及びその誘導体としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、無水ハイミック酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどが例示され、無水マレイン酸が好ましい。成分(B)は、α,β−不飽和カルボン酸及びその誘導体から選ばれる1種以上の化合物であればよく、α,β−不飽和カルボン酸1種以上とその誘導体1種以上の組み合わせ、α,β−不飽和カルボン酸2種以上の組み合わせ、α,β−不飽和カルボン酸の誘導体2種以上の組み合わせであってもよい。
変性ポリオレフィン系樹脂中の成分(B)のグラフト重量は、変性ポリオレフィン系樹脂を100重量%とした場合に、0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは、0.5〜4重量%である。グラフト重量が0.1重量%以上であることにより、得られる変性ポリオレフィン系樹脂の、金属被着体などの材料に対する接着性を保つことができる。グラフト重量が10重量%以下であることにより、グラフト未反応物の発生を防止することができ、樹脂被着体に対する十分な接着性を得ることができる。
成分(B)のグラフト重量%は、公知の方法で測定することができる。例えば、アルカリ滴定法或いはフーリエ変換赤外分光法によって求めることができる。
成分(C)は(メタ)アクリル酸エステルである。(メタ)アクリル酸エステルはアクリル酸又はメタクリル酸のエステルであり、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
成分(C)は、一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましく、一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルであることがより好ましい。
CH2=CR1COOR2 ・・・(I)
これにより変性ポリオレフィン系樹脂を合成する際のポリオレフィン樹脂(A)からの分子量低下を抑制するとともに、分子量分布を狭くすることができ、変性ポリオレフィン系樹脂の溶剤溶解性、溶液の低温安定性、接着剤組成物中の他樹脂との相溶性、接着性を向上させることができる。一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルは単独でも複数種でも任意の割合で混合して使用することができる。
一般式(I)中、R1はH又はCH3を表し、CH3であることが好ましい。R2はCn2n+1を表す。nは8〜18の整数を表し、nは8〜15であることが好ましく、8〜14であることがより好ましく、8〜13であることが更に好ましい。式(I)で示される化合物としては、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートが好ましく、ラウリルメタクリレート、オクチルメタクリレートがより好ましい。
変性ポリオレフィン系樹脂中の成分(C)のグラフト重量は、変性ポリオレフィン系樹脂を100重量%とした場合に、0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは、0.5〜4重量%である。グラフト重量が0.1重量%以上であることにより、変性ポリオレフィン系樹脂の分子量分布を十分狭い範囲に保つことができる。すなわち、高分子量部分の悪影響を防止して、溶剤溶解性、溶液の低温安定性及び他樹脂との相溶性を良好に保持することができる。また、低分子量部分の悪影響を防止して、接着力を向上させることができる。グラフト重量が10重量%以下であることにより、グラフト未反応物の発生を防止し、樹脂被着体に対する接着性を良好に保持することができる。
成分(C)のグラフト重量%は、公知の方法で測定することができる。例えば、フーリエ変換赤外分光法或いは1H−NMRによって求めることができる。
変性ポリオレフィン系樹脂中の成分(B)のグラフト重量及び成分(C)のグラフト重量のうちのいずれかが0.1〜10重量%であることが好ましく、両方が0.1〜10重量%であることがより好ましい。
本発明では、用途や目的に応じて、本発明の特性を損なわない範囲で、成分(B)、(C)以外のグラフト成分を併用することができる。使用可能なグラフト成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、成分(C)以外の(メタ)アクリル酸誘導体(例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等)が挙げられる。変性ポリオレフィン系樹脂中の成分(B)、(C)以外のグラフト成分は、単独であってもよいし、或いは複数種の組み合わせで併用してもよく、合計のグラフト重量が成分(B)、(C)の合計のグラフト重量を超えないことが好ましい。
成分(D)としてのラジカル発生剤は、公知のラジカル発生剤の中より適宜選択することができ、有機過酸化物系化合物が好ましい。有機過酸化物系化合物としては例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,4−ビス[(t−ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート等が挙げられ、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド及びジラウリルパーオキサイドが好ましい。成分(D)は、単独のラジカル発生剤でもよいし、複数種のラジカル発生剤の組み合わせであってもよい。
グラフト重合反応における成分(D)の添加量は、成分(B)の添加量及び成分(C)の添加量の合計(重量)に対し、1〜100重量%であることが好ましく、より好ましくは、10〜50重量%である。1重量%以上であることにより、十分なグラフト効率を保持することができる。100重量%以下であることにより、変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量の低下を防止することができる。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、硬化剤と組み合わせて組成物として用いてもよい。硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリアミン化合物、ポリオール化合物、或いはそれらの官能基が保護基でブロックされた架橋剤が例示される。硬化剤は単独であってもよいし、或いは複数種の組み合わせであってもよい。硬化剤の配合量は、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂中のα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の含有量により適宜選択できる。又、硬化剤を配合する場合は、目的に応じて有機スズ化合物、第三級アミン化合物、等の触媒を併用することができる。又、本発明の接着剤は、所望の効果を阻害しない範囲でポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等の公知の接着剤が配合されていてもよい。
本発明において耐溶剤性とは、他の溶剤に接した場合にも性能(例えば接着性)が失われないことを意味する。本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は上記構造を有することにより、常温を含む広い温度範囲(例えば、−30℃〜90℃)における耐溶剤性を有する。そのため、電池外装材の接着剤として用いた場合に、電池保管又は使用環境における温度変化、特に、充電又は放電に伴う電池構成材料の化学的な温度上昇、夏期、自動車内等の常温より高い温度範囲において接着性等を保つことができる。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、耐溶剤性を有する。溶剤は電解液に用いられる溶剤であることが好ましく、電解液に用いられる有機溶剤であることがより好ましい。電解液に用いられる有機溶剤としては、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル等の炭酸エステル系溶剤が例示される。電解液は、溶剤の他に、ヘキサフルオロリン酸リチウム塩等の無機固体電解質を含んでいてもよい。電解液は1種の溶剤でもよいし、2種以上の溶剤の混合液であってもよい。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、上記構造を有することにより、溶液としての安定性、特に低温での安定性を発揮することができる。また、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、金属、樹脂のいずれにも優れた接着性を発揮することができ、その接着性は高温時にも発揮され得る。これらの点でも電池外装材の接着剤として有用である。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、金属箔とフィルム(ポリオレフィン樹脂フィルムなど)、金属箔同士、フィルム同士の接着性(中でも低温における接着性)、溶液安定性及び電解液に対する耐久性に優れるので、アルミラミネートフィルム等のラミネートフィルムにおける接着剤として有用である。該ラミネートフィルムは、リチウムイオン二次電池用の電池外装材として用いることができる。また、リチウムイオン二次電池と同様の電気化学セル構造を有し、同等の性能が要求される、コンデンサー、電気二重層キャパシター等の外装材として用いることができる。
本発明のリチウムイオン電池外装材の第1の例としては、外層、中間層及び内層をこの順に備え、中間層と内層の間に、上記本発明の変性ポリオレフィン系樹脂を含有する接着剤を含む接着層を有する積層体を有する態様が挙げられる。図1は、本発明のリチウムイオン電池外装材の第1の例の断面図を模式的に示す図である。図1のリチウムイオン電池外装材100においては、外層11、接着層12、中間層(バリア層)13、接着層14及び内層15が順次積層されている。
本発明のリチウムイオン電池外装材の第2の例としては、外層、中間層及び内層をこの順に備え、内層が本発明の接着剤を含み、内層が中間層にラミネートされている積層体を有する態様が挙げられる。図2は、本発明のリチウムイオン電池外装材の第2の例の断面図を模式的に示す図である。図2のリチウムイオン電池外装材200においては、外層21、接着層22、中間層(バリア層)23及び内層24が順次積層されている。
外層11は絶縁性を有する樹脂から構成されることが好ましく、ポリエステル、ポリアミドなどが例示される。外層11は、単独の層であってもよく、2層以上からなってもよい。
接着層12は、外層11と中間層13を接着する層である。接着層12に含まれる接着剤は、特に限定されず、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂を含有する接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤などが例示される。
中間層(バリア層)13は金属箔からなることが好ましい。金属箔としてはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の金属を含む金属箔が例示され、アルミニウム、アルミニウム合金を含む金属箔が好ましい。中間層13は、単独の層であってもよく、2層以上からなってもよい。
接着層14は、中間層13と内層15とを接着する層であり、上記本発明の変性ポリオレフィン系樹脂を含有する接着剤を含む。
内層15は、熱溶着性を有する樹脂であることが好ましい。このような樹脂としては、ポリオレフィン樹脂が例示される。内層15は、単独の層であってもよく、2層以上からなってもよい。
外層21、接着層22、中間層23の定義及び例はそれぞれ外層11、接着層12、中間層13の定義及び例と同様である。内層24は本発明の変性ポリオレフィン系樹脂を含有する接着剤を含み、中間層23に直接ラミネートされる。内層24は、単独の層であってもよく、2層以上からなってもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明のリチウムイオン電池外装材を含む。本発明の変性ポリオレフィン系樹脂を含む電池外装材を用いたリチウムイオン二次電池は、例えば、正極、負極、非水電解質及びセパレーターが本発明の電池外装材で包装された構造を有していればよい。
次に本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレン−エチレン共重合体(プロピレン成分88モル%、エチレン成分12モル%、重量平均分子量150,000、Tm=74℃)100重量部をトルエン400g中に加熱溶解させた後、系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸1.5重量部、ラウリルメタクリレート1.8重量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド1重量部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した後、反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、重量平均分子量が125,000、Tm=74℃、無水マレイン酸のグラフト重量が1.3重量%、ラウリルメタクリレートのグラフト重量が1.6重量%の変性ポリオレフィン系樹脂を得た。
なお、無水マレイン酸のグラフト重量は、アルカリ滴定法により測定し、ラウリルメタクリレートのグラフト重量は、1H−NMRにより測定した。
(実施例2)
プロピレン−ブテン共重合体(プロピレン成分80モル%、ブテン成分20モル%、重量平均分子量250,000、Tm=88℃)100重量部、無水マレイン酸3.5重量部、オクチルメタクリレート3.5重量部、ジラウリルパーオキサイド2重量部を、170℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応した。押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去し、重量平均分子量が180,000、Tm=88℃、無水マレイン酸のグラフト重量が3.1重量%、オクチルメタクリレートのグラフト重量が3.0重量%の変性ポリオレフィン系樹脂を得た。
(比較例1)
実施例1のプロピレン−エチレン共重合体を重量平均分子量90,000とした以外は、実施例1と同様の方法で変性した。得られた変性ポリオレフィン系樹脂は、重量平均分子量が75,000、Tm=74℃、無水マレイン酸のグラフト重量が1.3重量%、ラウリルメタクリレートのグラフト重量が1.5重量%であった。
(比較例2)
実施例1のプロピレン−エチレン共重合体をプロピレン成分92モル%、エチレン成分8モル%、重量平均分子量220,000、Tm=120℃とした以外は、実施例1と同様の方法で変性した。得られた変性ポリオレフィン系樹脂は、重量平均分子量が165,000、Tm=120℃、無水マレイン酸のグラフト重量が1.1重量%、ラウリルメタクリレートのグラフト重量が1.3重量%であった。
(比較例3)
実施例2のオクチルメタクリレートを0重量部とした以外は、実施例2と同様の方法で変性した。得られた変性ポリオレフィン系樹脂は、重量平均分子量が88,000、Tm=88℃、無水マレイン酸のグラフト重量が2.9重量%であった。
(評価試験)
実施例1〜2及び比較例1〜3で得られた変性ポリオレフィン系樹脂について、それぞれ15重量%となるようにシクロヘキサン溶液試料を調製し、実施例1及び比較例2〜3では、ヘキサメチレンジイソシアネート(1wt%ジブチル錫ジラウレート含有)を当量比[イソシアネート基/カルボキシル基]=1.5となるように均一混合し、実施例2及び比較例1では、イソホロンジアミンを当量比[アミノ基/カルボキシル基]=1.5となるように均一混合した。得られた溶液試料について、以下の手順で性能評価を実施した結果を表1に示した。
<試験1:溶液安定性試験>
溶液試料を密閉したガラス瓶に入れ、5℃で7日間静置保管した後、目視にて外観評価した。
<試験2:ラミネート接着強度試験>
アルミ箔上に樹脂乾燥膜厚2μmとなるように#16のマイヤーバーで溶液試料を接着剤として塗布し、180℃で10秒間乾燥した。塗布済みのアルミ箔を無延伸ポリプロピレン(CPP)シートと貼合し、120℃×3秒間、200kPaの条件で熱圧着を行い、15mm幅に切り出した試験片を作製した。試験片を23℃、相対湿度50%で24時間恒温恒湿保管後、180度方向剥離、剥離速度100mm/minの条件でラミネート接着強度を測定した。
<試験3:電解液耐性試験>
電解液は、炭酸エチレン:炭酸ジエチル:炭酸ジメチル=1:1:1(重量比)に1mol/Lの濃度でヘキサフルオロリン酸リチウムを添加したものを用いた。試験1と同様の方法で作成した試験片を、当該の電解液中に70℃で7日間浸漬し、試験1と同様の方法でラミネート接着強度を測定した。
Figure 0006435092
表1から明らかな通り、本発明が提供する変性ポリオレフィン系樹脂は、リチウムイオン電池外装を構成する金属箔と樹脂フィルムとの接着性に優れ、電解液に対して耐久性を有し、溶液の低温保管安定性を同時に有する。
100、200 電池外装材
11、21 外層
12、22 接着層
13、23 中間層(バリア層)
14 接着層
15、24 内層

Claims (3)

  1. 成分(A):ポリオレフィン樹脂が、成分(B):α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、及び成分(C):(メタ)アクリル酸エステルでグラフト変性されている変性ポリオレフィン系樹脂を含有し、
    変性ポリオレフィン系樹脂の示差走査型熱量計(DSC)による融点が74℃〜88℃であり、重量平均分子量が125,000〜180,000であり、
    成分(B)のグラフト重量が変性ポリオレフィン系樹脂を100重量%とした場合に、1.3〜3.1重量%であり、かつ、
    成分(C)のグラフト重量が変性ポリオレフィン系樹脂を100重量%とした場合に、1.6〜3.0重量%である、
    耐溶剤性を有する、アルミニウム部材塗布及び/又はアルミニウム部材積層用の変性ポリオレフィン系樹脂。
  2. 成分(C)が、少なくとも一般式(I)で示される化合物を含む請求項1記載の変性ポリオレフィン系脂。
    CH2=CR1COOR2・・・(I)
    (式(I)中、R1=H又はCH3、R2=Cn2n+1、n=8〜18の整数)
  3. 成分(A)が、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
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