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JP6432203B2 - 積層多孔フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、包装用、衛生用、畜産用、農業用、建築用、医療用、分離膜、光拡散板、及び電池用セパレータとして利用でき、特に、非水電解液二次電池用セパレータとして好適に利用できる積層多孔フィルムの製造方法に関する。
多数の微細連通孔を有する高分子多孔体は、超純水の製造、薬液の精製、水処理等に使用する分離膜、衣類、衛生材料等に使用する防水透湿性フィルム、あるいは二次電池等に使用する電池用セパレータ等各種の分野で利用されている。
二次電池はOA、FA、家庭用電器又は通信機器等のポータブル機器用電源として幅広く使用されている。特に機器に装備した場合に容積効率がよく機器の小型化及び軽量化につながることからリチウムイオン二次電池を使用したポータブル機器が増加している。
一方、大型の二次電池はロードレベリング、UPS、電気自動車をはじめ、エネルギー、環境問題に関連する多くの分野において研究開発が進められている。これらの中でも大容量、高出力、高電圧及び長期保存性に優れているという理由から、非水電解液二次電池の1種であるリチウムイオン二次電池が様々な用途に利用されている。
リチウムイオン二次電池の使用電圧は通常4.1Vから4.2Vを上限として設計されている。このような高電圧では水溶液は電気分解を起こすので電解液として使うことができない。そのため、高電圧でも耐えられる電解液として有機溶媒を使用したいわゆる非水電解液が用いられている。非水電解液用溶媒としては、より多くのリチウムイオンを存在させることができる高誘電率有機溶媒が用いられ、該高誘電率有機溶媒としてプロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の有機炭酸エステル化合物が主に使用されている。溶媒中でリチウムイオン源となる支持電解質として、6フッ化リン酸リチウム等の反応性の高い電解質を溶媒中に溶解させて使用している。
リチウムイオン二次電池には内部短絡の防止の点から、正極と負極の間にセパレータが介在されている。該セパレータにはその役割から当然絶縁性が要求される。また、リチウムイオンの通路となる透気性と電解液の拡散、保持機能を付与するために微細孔構造である必要がある。これらの要求を満たすため、セパレータとしては多孔性フィルムが使用されている。
最近の電池の高容量化に伴い、電池の安全性に対する重要度が増してきている。電池用セパレータの安全性に寄与する特性として、シャットダウン特性(以下、「SD特性」とも称する)がある。このSD特性は、100〜150℃程度の高温状態になると微細孔が閉塞され、その結果、電池内部のイオン伝導が遮断されるため、その後の電池内部の温度上昇を防止できるという機能である。この時、多孔性フィルムの微細孔が閉塞される温度のうち最も低い温度をシャットダウン温度(以下、「SD温度」とも称する)という。電池用セパレータとして使用する場合は、このSD特性を具備していることが必要となる。
しかしながら、近年リチウムイオン二次電池の高エネルギー密度化、高容量化に伴い、通常のシャットダウン機能が十分に機能せず、電池内部の温度が従来のセパレータの材料として用いられるポリエチレンの融点である130℃前後を超え、更に上昇し、セパレータの熱収縮に伴う破膜によって、両極が短絡するおそれがある。そこで、安全性を確保するため、セパレータには現在のSD特性よりも更に高い耐熱性が要求されている。
前記要求に対し、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に、金属酸化物と樹脂バインダーとを含む多孔層からなる被覆層を備えた多層多孔フィルム(特許文献1〜5)が提案されている。これらの発明は、多孔フィルム上にαアルミナ等の無機微粒子を高充填させた被覆層を設けているため、異常発熱を起こしてSD温度を越えて温度が上昇し続けた際においても、両極の短絡を防ぐことができ、安全性に優れる方法とされている。
特開2004−227972号公報 特開2008−186721号公報 国際公開2008/149986号 特開2008−305783号公報 国際公開2012/023199号 国際公開2012/165580号
前述の発明において、多孔フィルム上に被覆層を形成するためには、フィラー及び樹脂バインダーを溶媒に分散させた塗工液を該多孔フィルムの表面に塗布し、乾燥させる必要がある。しかしながら、該方法においては、樹脂バインダーが被覆層の表面に偏析し、多孔フィルムと被覆層との界面側の樹脂バインダーが相対的に減少し、その結果、多孔フィルムと被覆層との間の剥離強度が低下するという問題があった。
この問題に対し、本発明者らは低温で時間をかけて乾燥させることで樹脂バインダーの偏析を抑え、多孔フィルムと被覆層との間の剥離強度を向上させる方法を特許文献6にて提案している。
しかしながら、乾燥時間の短縮や生産性の向上の観点から、さらなる改良が望まれていた。
本発明の課題は、前記問題点を解決することにある。すなわち、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム上にフィラー及び樹脂バインダーを含んでなる塗工液を塗布した後、乾燥して被覆層を形成し、積層多孔フィルムを得る方法において、短い乾燥時間でも、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムと被覆層とが優れた密着性を有する積層多孔フィルムを得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は前記課題を鑑みて鋭意検討を行った結果、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム上にフィラー及び樹脂バインダーを含んでなる塗工液を塗布した後、乾燥して被覆層を形成する際に、特定の乾燥条件を採用することによって、係る課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に、フィラー及び樹脂バインダーを含有する塗工液を塗布した後、以下の条件にて熱風乾燥することにより、該多孔フィルム上に被覆層を形成することを特徴とする積層多孔フィルムの製造方法。
<乾燥条件>
40 ≦ T ≦ 100
0.1 ≦ V−V ≦ 2.5
(T:乾燥雰囲気温度[℃])
(V:塗工面とは反対側の面の風速[m/s])
(V:塗工面側の風速[m/s])
[2]前記塗工液の溶媒が、水、又は水と炭素数1〜4のアルコールとの混合溶媒である、前記[1]に記載の積層多孔フィルムの製造方法。
[3]前記樹脂バインダーが、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、及びポリアクリル酸誘導体から選ばれる1種以上である、前記[1]又は[2]に記載の積層多孔フィルムの製造方法。
[4]前記被覆層において、前記フィラーと前記樹脂バインダーとの総量に対する前記フィラーの含有量が、80質量%以上、99.9質量%以下である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の積層多孔フィルムの製造方法。
[5]前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを構成する樹脂が、少なくともポリプロピレン系樹脂を含む、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の積層多孔フィルムの製造方法。
[6]前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムと前記被覆層との引き剥がし強度が4N/18mm以上である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の積層多孔フィルムの製造方法
本発明によれば、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムと被覆層との密着性が向上した積層多孔フィルムを、生産性良く製造することができる。
また、本発明により得られる積層多孔フィルムは、耐熱性や透気性にも優れ、特に非水電解液二次電池用セパレータとして用いた際に優れた特性を発揮することができる。
本発明により得られる積層多孔フィルムを収容している電池の概略的断面図である。 引き剥がし強度を測定する方法を説明する概略図である。
以下、本発明の積層多孔フィルムの製造方法、及び、本発明により製造される積層多孔フィルム、非水電解液二次電池用セパレータ及び非水電解液二次電池の実施形態について説明する。
なお、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含し、特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100質量%を含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
[積層多孔フィルムの製造方法]
以下に、本発明の積層多孔フィルムの製造方法において使用する各成分について説明する。
<ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム>
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを構成するポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、及びプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等のα−オレフィンを重合した単独重合体又は共重合体が挙げられる。また、これらの単独重合体又は共重合体を2種以上混合することもできる。これらの中でもポリプロピレン系樹脂、又はポリエチレン系樹脂を用いることが好ましく、特に、本発明の積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性等を維持する観点から、ポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
(ポリプロピレン系樹脂)
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂としては、ホモプロピレン(プロピレン単独重合体)、又はプロピレンとエチレン、及び1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセン等のα−オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられる。これらの中でも、本発明の積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性等を維持する観点から、ホモポリプロピレンがより好適に使用される。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が、好ましくは80〜99%、より好ましくは83〜98%、更に好ましくは85〜97%であるものを使用することができる。アイソタクチックペンタッド分率が前記下限値以上であるとフィルムの機械的強度が向上する。一方、アイソタクチックペンタッド分率の上限については現時点において工業的に得られる上限値で規定しているが、将来的に工業レベルで更に規則性の高い樹脂が開発された場合についてはこの限りではない。
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造の割合を意味する。
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)は13C−NMRの測定結果に基づき算出され、メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules8,687,(1975))に準拠する。
また、ポリプロピレン系樹脂の分子量分布を示すパラメータであるMw/Mnは、2.0〜10.0が好ましく、2.0〜8.0がより好ましく、2.0〜6.0が更に好ましい。Mw/Mnがこの範囲内であると押出成形性が向上すると共に、積層多孔フィルムの機械的強度も向上する。
ポリプロピレン系樹脂のMw/MnはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定される。
前記ポリプロピレン系樹脂の密度は、0.890〜0.970g/cm3が好ましく、0.895〜0.970g/cm3がより好ましく、0.900〜0.970g/cm3が更に好ましい。密度が0.890g/cm3以上であれば適度なSD特性を有することができる。一方、0.970g/cm3以下であれば適度なSD特性を有することができる他、延伸性を維持することができる。
ポリプロピレン系樹脂の密度は、密度勾配管法を用いてJIS K7112(1999年)に準じて測定される。
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、0.5〜15g/10分が好ましく、1.0〜10g/10分がより好ましく、1.5〜8.0g/10分が更に好ましく、2.0〜6.0g/10分が特に好ましい。MFRを0.5g/10分以上とすることで、成形加工時の樹脂の溶融粘度が高く、十分な生産性を確保することができる。一方、15g/10分以下とすることで、得られる積層多孔フィルムの機械的強度を十分に保持することができる。
ポリプロピレン系樹脂のMFRはJIS K7210(1999年)に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
なお、前記ポリプロピレン系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、懸濁重合法、溶融重合法、塊状重合法、気相重合法、またラジカル開始剤を用いた塊状重合法等が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、商品名「ノバテックPP」、「WINTEC」(以上、日本ポリプロ株式会社製)、「ノティオ」、「タフマーXR」(以上、三井化学株式会社製)、「ゼラス」、「サーモラン」(以上、三菱化学株式会社製)、「住友ノーブレン」、「タフセレン」(以上、住友化学株式会社製)、「プライムポリプロ」、「プライムTPO」(以上、株式会社プライムポリマー製)、「Adflex」、「Adsyl」、「HMS−PP(PF814)」(以上、サンアロマー株式会社製)、「バーシファイ」、「インスパイア」(以上、ダウケミカル株式会社製)等市販されている商品を使用できる。
(ポリエチレン系樹脂)
本発明に用いることができるポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレンを主成分とする共重合体等が挙げられる。
エチレンを主成分とする共重合体としては、エチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等の炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸エステル;共役ジエン、非共役ジエン等の不飽和化合物の中から選ばれる1種以上のコモノマーとの共重合体又は多元共重合体あるいはその混合組成物が挙げられる。エチレン系重合体のエチレン単位の含有量は通常50質量%を超えるものである。
これらのポリエチレン系樹脂の中では、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンの中から選ばれる1種以上のポリエチレン系樹脂が好ましく、高密度ポリエチレンがより好ましい。
前記ポリエチレン系樹脂の密度は、0.910〜0.970g/cm3が好ましく、0.930〜0.970g/cm3がより好ましく、0.940〜0.970g/cm3が更に好ましい。密度が0.910g/cm3以上であれば適度なSD特性を有することができる。一方、0.970g/cm3以下であれば適度なSD特性を有することができる他、延伸性が維持される。
ポリエチレン系樹脂の密度は、密度勾配管法を用いてJIS K7112(1999年)に準じて測定される。
また、前記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、0.03〜30g/10分が好ましく、0.3〜10g/10分がより好ましい。MFRが0.03g/10分以上であれば成形加工時の樹脂の溶融粘度が十分に低いため生産性に優れる。一方、30g/10分以下であれば、十分な機械的強度を得ることができる。
ポリエチレン系樹脂のMFRはJIS K7210(1999年)に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
ポリエチレン系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えば、チーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法が挙げられる。ポリエチレン系樹脂の重合方法として、一段重合、二段重合、もしくはそれ以上の多段重合等があり、いずれの方法のポリエチレン系樹脂も使用可能である。
(他の成分)
本発明においては、前述した樹脂の他、本発明の効果を阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤を前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムに適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性及びポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの諸物性を改良、調整する目的で添加される、耳等のトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂;シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子;カーボンブラック等の顔料;難燃剤;耐候性安定剤;耐熱安定剤;帯電防止剤;溶融粘度改良剤;架橋剤;滑剤;核剤;可塑剤;老化防止剤;酸化防止剤;光安定剤;紫外線吸収剤;中和剤;防曇剤;アンチブロッキング剤;スリップ剤;着色剤等の添加剤が挙げられる。
また開孔を促進するためや、成形加工性を付与するために、本発明の効果を阻害しない範囲で、各種樹脂や、ワックス等の低分子量化合物を添加してもよい。
(ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの層構成)
本発明において、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムは、単層でも積層でもよく、特に制限されるものではない。例えば、前記ポリオレフィン系樹脂を含む層(以下「P層」とも称する)の単層、当該P層の機能を妨げない範囲で、当該P層と他の層(以下「Q層」とも称する)との積層とすることができる。例えば非水電解液二次電池用セパレータとして用いる際には、特開平04−181651号に記載されているような高温雰囲気下で孔閉塞し、電池の安全性を確保する低融点樹脂層を積層させることができる。
具体的にはP層、Q層を積層した2層構造、P層、Q層、P層、もしくは、Q層、P層、Q層として積層した3層構造等が例示できる。また、他の機能を有する層と組み合わせて3種3層の様な形態も可能である。この場合、他の機能を有する層との積層順序は特に問わない。更に層数としては4層、5層、6層、7層と必要に応じて増やしてもよい。
なお、本発明に用いるポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの物性は、層構成や積層比、各層の組成、製造方法によって自由に調整できる。
(ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの製造方法)
次に本発明に用いるポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの製造方法について説明するが、本発明はかかる製造方法により製造されるポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのみに限定されるものではない。
具体的には、前記ポリオレフィン系樹脂を用いて、溶融押出によりポリオレフィン系樹脂無孔膜状物(以下、「無孔膜状物」とも称する)を作製し、当該無孔膜状物を延伸することにより厚さ方向に連通性を有する微細孔を多数形成した多孔フィルムを得ることができる。
無孔膜状物の作製方法は特に限定されず公知の方法を用いてよいが、例えば押出機を用いて熱可塑性樹脂組成物を溶融し、Tダイから押出し、キャストロールで冷却固化するという方法が挙げられる。またチューブラー法により製造した無孔膜状物を切り開いて平面状とする方法も適用できる。
無孔膜状物の多孔化方法としては、特に限定されることなく、湿式による一軸以上の延伸多孔化、乾式による一軸以上の延伸多孔化等、公知の方法を用いてもよい。延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法等の手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて一軸以上の延伸を行う。中でも、多孔構造制御の観点から逐次二軸延伸が好ましい。
また必要に応じて、延伸の前後にポリオレフィン系樹脂組成物に含まれている可塑剤を溶剤によって抽出、乾燥させる方法も適用される。
なお、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムにポリプロピレン系樹脂を用いる場合には、前記無孔膜状物にいわゆるβ晶を生成させることが好ましい。無孔膜状物中にβ晶を生成していれば、フィラー等の添加剤を使用しない場合においても、延伸を施すことで微細孔が容易に形成されるため、優れた透気特性を有するポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを得ることができる。
ポリプロピレン系樹脂の無孔膜状物中にβ晶を生成させる方法としては、前記ポリプロピレン系樹脂のα晶の生成を促進させる物質を添加しない方法や、特許第3739481号公報に記載されているように過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレンを添加する方法、及び組成物にβ晶核剤を添加する方法等が挙げられる。
(β晶核剤)
β晶核剤としては以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成及び成長を増加させるものであれば特に限定される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いてもよい。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウム等に代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウム等に代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルー等に代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期律表第2族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物等が挙げられる。そのほか核剤の具体的な種類については、特開2003−306585号公報、特開平08−144122号公報、特開平09−194650号公報に記載されている。
β晶核剤の市販品としては、新日本理化株式会社製β晶核剤「エヌジェスターNU−100」、β晶核剤の添加されたポリプロピレン系樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン「Bepol B−022SP」、Borealis社製ポリプロピレン「Beta(β)−PP BE60−7032」、Mayzo社製ポリプロピレン「BNX BETAPP−LN」等が挙げられる。
前記ポリプロピレン系樹脂に添加するβ晶核剤の割合は、β晶核剤の種類又はポリプロピレン系樹脂の組成等により適宜調整することが必要であるが、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、0.0001〜5質量部が好ましく、0.001〜3質量部がより好ましく、0.01〜1質量部が更に好ましく、0.1〜0.8質量部が特に好ましい。
β晶核剤の割合がポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.0001質量部以上であれば、製造時において十分にポリプロピレン系樹脂のβ晶を生成、成長させることができ、非水電解液二次電池用セパレータとして用いる際にも十分なβ晶活性が確保でき、所望の透気性能が得られる。また、β晶核剤の割合がポリプロピレン系樹脂100質量部に対して5質量部以下であれば、製造コストと得られる効果とのバランスに優れるほか、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム表面へのβ晶核剤のブリード等がなく好ましい。
また、本発明において、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを、前述のとおりP層、Q層を積層した2層構造、P層、Q層、P層等として積層した3層構造、又は4層以上の構造とする場合、その製造方法は、多孔化と積層の順序等によって以下の3つに大別される。
(i)各層を多孔化したのち、多孔化された各層をラミネートしたり接着剤等で接着したりして積層する方法。
(ii)各層を積層して積層無孔膜状物を作製し、ついで当該無孔膜状物を多孔化する方法。
(iii)各層のうちいずれか1層を多孔化したのち、もう1層の無孔膜状物と積層し、多孔化する方法。
本発明においては、その工程の簡略さ、生産性の観点から(ii)の方法を用いることが好ましく、なかでも2層の層間接着性を確保するために、共押出で積層無孔膜状物を作製した後、多孔化する方法が特に好ましい。
以下に、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの好適な製造方法を説明する。
まず、ポリオレフィン系樹脂と、必要に応じて使用される熱可塑性樹脂、添加剤との混合樹脂組成物を作製する。例えば、ポリプロピレン系樹脂、β晶核剤、及び所望によりその他添加物等の原材料を、好ましくはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等を用いて、又は袋の中に全成分を入れてハンドブレンドにて混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー等、好ましくは二軸押出機で溶融混練後、カッティングしてペレットを得る。
前記のペレットを押出機に投入し、Tダイ押出用口金から押出して無孔膜状物を成形する。Tダイの種類としては特に限定されない。例えば本発明のポリオレフィン系樹脂多孔フィルムが2種3層の積層構造をとる場合、Tダイは2種3層用マルチマニホールドタイプでもよく、2種3層用フィードブロックタイプでもよい。
使用するTダイのギャップは、最終的に必要なフィルムの厚み、延伸条件、ドラフト率、各種条件等から決定されるが、一般的には0.1〜3.0mm程度であり、0.5〜1.0mmが好ましい。Tダイのギャップを0.1mm以上とすることで生産速度を向上させることができる。また、3.0mm以下とすることでドラフト率が大きくなり過ぎないため生産安定性を向上させることができる。
押出成形において、押出加工温度は混合樹脂組成物の流動特性や成形性等によって適宜調整されるが、概ね180〜350℃が好ましく、200〜330℃がより好ましく、220〜300℃が更に好ましい。180℃以上の場合、溶融樹脂の粘度が十分に低く成形性に優れ生産性を向上させることができる。一方、350℃以下にすることにより、樹脂組成物の劣化、ひいては得られる積層多孔フィルムの機械的強度の低下を抑制できる。
キャストロールによる冷却固化温度によっても、無孔膜状物中のポリオレフィン系樹脂のβ晶の比率を調整することができる。冷却固化温度は、80〜150℃が好ましく、90〜140℃がより好ましく、100〜130℃が更に好ましい。冷却固化温度を80℃以上とすることで無孔膜状物中のβ晶の比率を十分に増加させることができる。また、150℃以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻き付いてしまう等のトラブルが起こり難く、効率よく膜状物化することが可能となる。
次いで、得られた無孔膜状物を延伸する。延伸工程としては、少なくとも二軸延伸することが好ましい。二軸延伸は同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよいが、各延伸工程で延伸条件(倍率、温度)を簡便に選択でき、多孔構造を制御し易い逐次二軸延伸がより好ましい。
なお、本明細書中、膜状物及びフィルムの長手方向を「縦方向」、長手方向に対して垂直方向を「横方向」と称する。また、長手方向への延伸を「縦延伸」、長手方向に対して垂直方向への延伸を「横延伸」と称する。
逐次二軸延伸を行う場合、延伸温度は、用いる樹脂組成物の組成、結晶融解ピーク温度、結晶化度等に応じて適宜変更すればよいが、縦延伸での延伸温度は0〜130℃が好ましく、10〜120℃がより好ましく、20〜110℃が更に好ましい。また、縦延伸倍率は、2〜10倍が好ましく、3〜8倍がより好ましく、4〜7倍が更に好ましい。
前記範囲内で縦延伸を行うことで、延伸時の破断を抑制しつつ、適度な空孔起点を発現させることができる。
一方、横延伸での延伸温度は100〜170℃が好ましく、110〜160℃がより好ましく、120〜155℃が更に好ましい。また、横延伸倍率は、1.2〜10倍が好ましく、1.5〜8倍がより好ましく、2〜7倍が更に好ましい。
前記範囲内で横延伸することで、縦延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができる。
前記延伸工程の延伸速度としては、500〜12,000%/分が好ましく、1,500〜10,000%/分がより好ましく、2,500〜8,000%/分が更に好ましい。
このようにして得られたポリオレフィン系樹脂多孔フィルムは、寸法安定性の改良を目的として熱処理を施すことが好ましい。この際、熱処理温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは140℃以上である。熱処理温度が100℃以上であれば、寸法安定性を向上させることができる。一方、熱処理温度は好ましくは170℃以下、より好ましくは165℃以下、更に好ましくは160℃以下である。熱処理温度が170℃以下であれば、熱処理によってポリオレフィン系樹脂の融解が起こり難く、多孔構造を良好に維持することができる。
なお、本明細書において、寸法安定性の改良を目的とする熱処理を「熱固定」と称する場合がある。
また、熱処理工程中には、必要に応じて1〜20%の弛緩処理を施してもよい。なお、熱処理後、均一に冷却して巻き取ることにより、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムが得られる。
また、層間接着性を向上させる目的で、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの表面に、コロナ処理、プラズマ処理、化学的酸化処理等の表面処理を施すことが好ましい。表面処理を行なう工程は、前記のポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの製造工程において、押出成形工程の後であってもよいし、縦延伸工程の後であってもよいし、横延伸工程の後であってもよい。中でも、生産ラインの短縮や生産性の向上の観点から、横延伸工程の後であることが好ましい。
<被覆層>
本発明により製造する積層多孔フィルムは、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に、フィラー及び樹脂バインダーを含有する被覆層を有する。
(フィラー)
本発明に用いることができるフィラーとしては無機フィラー、有機フィラー等が挙げられるが、特に制約されるものではない。
本発明に用いることができる無機フィラーの例としては、具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム等の金属硫酸塩;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、酸化チタン等の金属酸化物;塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化銀、塩化カルシウム等の金属塩化物;タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト等の粘土鉱物、更にはチタン酸バリウム等が挙げられる。中でも本発明により製造する積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして用いた場合、電池に組み込んだ際に化学的に不活性であるという観点で、金属酸化物がより好ましく、アルミナが特に好ましい。
本発明に用いることができる有機フィラーの例としては、超高分子量ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、メラミン、ベンゾクナミン等の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でも、本発明により製造する積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして用いた場合における、耐電解液膨潤性の観点より、架橋ポリスチレン等が好ましい。
前記フィラーの平均粒径の下限としては、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.2μm以上である。一方、上限として好ましくは3.0μm以下、より好ましくは1.5μm以下である。前記平均粒径を0.01μm以上とすることで、本発明により製造する積層多孔フィルムが十分な耐熱性を発現することができるため好ましい。また、前記平均粒径を3.0μm以下とすることで、前記被覆層におけるフィラーの粒子の分散性が向上するという観点から好ましい。
なお、本実施の形態において「フィラーの平均粒径」とは、例えば画像解析装置を用いて、任意の方向(方向Zとする)から当該フィラーを投影した場合の二次元的な投影像の短径と長径を平均した値と、前記方向Zと直交する任意の方向(方向Xとする)から当該フィラーを投影した場合の二次元的な投影像の短径と長径を平均した値とを、平均した値として算出される。算出に用いるフィラーの個数は50個以上であればよい。
前記フィラーの比表面積は、5m2/g以上、30m2/g未満であることが好ましい。比表面積が5m2/g以上であれば、本発明により製造する積層多孔フィルムを非水電解液二次電池にセパレータとして組み込む際に電解液の浸透が速くなり、生産性が良好となるため好ましい。また、比表面積が30m2/g未満であれば、本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池にセパレータとして組み込む際に電解液成分の吸着を抑えられるため好ましい。
なお、本実施の形態において「フィラーの比表面積」は定容量式ガス吸着法により測定される値である。
前記被覆層において、前記フィラーと前記樹脂バインダーとの総量に対するフィラーの含有量は、80質量%以上、99.9質量%以下が好ましい。フィラーの含有率は92質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、98質量%以上が特に好ましい。フィラーの含有率がこの範囲内であることにより、前記被覆層が優れた透気性と密着性を維持することができる。
(樹脂バインダー)
本発明に用いる樹脂バインダーとしては、前記フィラーと、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムとを良好に接着でき、電気化学的に安定で、かつ積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合に有機電解液に対して安定であれば、特に制限されるものではない。具体的には、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアラミド、ポリオキシエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル由来の構造単位が0〜20モル%のもの)、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のエチレン−アクリル酸共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン−トリクロロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリメタクリル酸及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルセルロース、ポリビニルアルコール、シアノエチルポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリN−ビニルアセトアミド、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、マレイン酸変性ポリオレフィン等が挙げられる。これらの樹脂バインダーは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても構わない。
これらの樹脂バインダーの中でもポリオキシエチレン、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸及びその誘導体、マレイン酸変性ポリオレフィンが水中でも比較的安定であることからより好ましく、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸誘導体がより好ましい。
(酸成分)
本発明における被覆層の形成に用いられる塗工液には、酸成分を含有していることが望ましい。当該酸成分は、本発明により製造される積層多孔フィルムにおいては、酸そのものとして被覆層に残存していても良いし、被覆層中のアルカリ性不純物と反応して形成された塩として残存していても良い。酸成分の添加は被覆層の均一性を向上する効果がある。
前記酸成分は、25℃希薄水溶液下における第一酸解離定数(pKa1)が5以下であり、かつ第二酸解離定数(pKa2)が存在しないか又は7以上であることが好ましい。このような特性を有する酸成分の例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸等の低級1級カルボン酸;硝酸、亜硝酸等のニトロ酸;過塩素酸、次亜塩素酸等のハロゲンオキソ酸;塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸等のハロゲン化イオン;燐酸、サリチル酸、グリコール酸、乳酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸等、が挙げられる。これらの中でも、少量添加でpHを下げられる点、入手の容易性、酸の安定性が高いという観点で、蟻酸、酢酸、硝酸、塩酸、燐酸が好ましい。酸成分が上述の条件を満たすことで、アルミナの凝集を抑え、被覆層の形成に用いられる塗工液のポットライフを向上するという効果がある。
本発明における被覆層の形成に用いられる塗工液には、前記酸成分を10質量ppm以上、10,000質量ppm以下含有していることが好ましい。前記酸成分の含有量は30質量ppm以上、9,000質量ppm以下がより好ましく、50質量ppm以上、8,000質量ppm以下が更に好ましい。
含有量が10質量ppm以上であれば、均一性に優れた塗膜が得られるという効果があるため好ましい。また、含有量が10,000質量ppm以下であれば、非水電解液二次電池の性能に悪影響を与えないため好ましい。
(被覆層の形成方法)
本発明の積層多孔フィルムの製造方法においては、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に前記塗工液を塗布した後、乾燥することによって被覆層を形成する。
本発明の製造方法において、塗工液の溶媒は非水溶性の金属酸化物及び金属塩から選ばれる1種以上の金属成分を適度に均一かつ安定に分散させ、また、樹脂バインダーを適度に均一かつ安定に溶解又は分散させることが可能な溶媒を用いることが好ましい。
このような溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、水、ジオキサン、アセトニトリル、炭素数1〜4のアルコール、グリコール類、グリセリン、乳酸エステル等が挙げられる。炭素数1〜4のアルコールとしては、炭素数1〜4の1価のアルコールが好ましく、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコールから選ばれる1種以上がより好ましい。なお、本発明において溶媒として水を用いる場合、溶媒中の水の含有量は、塗工液の粘度安定性を向上させる観点から、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上がより更に好ましい。
これらの溶媒の中でもコスト面、環境負荷の点で水、又は水と炭素数1〜4のアルコールとの混合溶媒が好ましく、水と炭素数1〜4の1価のアルコールとの混合溶媒がより好ましく、水とイソプロピルアルコールとの混合溶媒が更に好ましい。
前記非水溶性の金属酸化物及び金属塩から選ばれる1種以上の金属成分を溶媒に分散させる方法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌法等が挙げられる。なお、前記金属成分を分散させる際に前記樹脂バインダーを同時に溶解又は分散させてもよい。
前記フィラー及び前記樹脂バインダーを溶媒に分散させて塗工液を作製する際、その塗工液の安定性を向上し、かつ、粘性の最適化をするために分散助剤、安定剤、増粘剤等をその前後で添加してもよい。
本発明の製造方法において、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの表面に塗工液を塗布する工程としては、押出成形の後、延伸前であってもよいし、縦延伸工程の後であってもよいし、横延伸工程の後であってもよいが、後述するように、本発明の製造方法における乾燥条件をより実効あらしめるために、横延伸工程の後に塗布することが特に好ましい。
前記塗布工程における塗布方式としては、必要とする層厚や塗布面積を実現できる方式であれば特に限定されない。このような塗布方法としては、例えば、バーコーター法、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等が挙げられる。
また、前記塗工液は、その用途に照らし、塗布後に乾燥する工程を繰り返すことで被覆層を積層することもできるが、本発明の製造方法における乾燥条件をより実効あらしめる観点や、生産性の向上、コスト等の観点から、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に1回塗布することが好ましい。
なお、例えば本発明の製造方法を用いてポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に被覆層を積層した後、再度本発明の製造方法を用いて、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの当該被覆層を積層した面と反対の面にも被覆層を積層し、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの両面に被覆層を有する積層多孔フィルムを得ることもできる。
(乾燥雰囲気温度)
本発明の製造方法においては、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に塗工液を塗布した後、溶媒を除去するために乾燥する際の乾燥条件が重要である。
まず、積層多孔フィルムを固定しながら乾燥する工程において、乾燥雰囲気温度が40℃以上、100℃以下であることが重要である。乾燥雰囲気温度は、45℃以上、95℃以下がより好ましく、50℃以上、90℃以下が更に好ましい。
乾燥雰囲気温度が40℃以上であることで、乾燥時間を短縮するという効果がある。一方、乾燥雰囲気温度が100℃以下であることで、得られる積層多孔フィルムの熱収縮によるシワ入りを抑えるという効果がある。
(乾燥風速)
また、積層多孔フィルムを固定しながら乾燥する工程において、塗工面側の風速(VC)よりも、塗工面とは反対側の面の風速(VB)が大きく、その差(VB−VC)が0.1m/s以上、2.5m/s以下であることが重要である。より好ましくは、0.3m/s以上、2.0m/s以下であり、更に好ましくは、0.5m/s以上、1.5m/s以下である。
B−VCが0.1m/s以上であることで、被覆層の厚みのゆらぎや乾燥ムラを抑えることができ、その結果、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムと被覆層の密着性が向上するという効果がある。一方、VB−VCが2.5m/s以下であることで、乾燥工程において積層多孔フィルムの搬送ロールへの貼り付きを抑え、シワ入りを抑えるという効果がある。
なお、この場合において、VBは0.1m/s以上、12.5m/s以下が好ましく、0.2m/s以上、10m/s以下がより好ましく、0.3m/s以上、8.5m/s以下が更に好ましい。
また、VCは0m/s以上、10m/s以下が好ましく、0.02m/s以上、8m/s以下がより好ましく、0.05m/s以上、6m/s以下が更に好ましい。
本発明において、VB−VCの風速差を調整する方法に特に制限はないが、送風口を2個以上有する装置、具体的にはフィルムの一方の面に対して送風することができる送風口と、フィルムの他方の面に対して送風することができる送風口とを備える乾燥機を用い、各送風口の風量を本発明の風速差を満たすように調整することにより、本発明を実施することができる。
<積層多孔フィルムの形状及び物性>
本発明の製造方法により得られる積層多孔フィルムの厚みは、好ましくは5〜100μm、より好ましくは8〜50μm、更に好ましくは10〜30μmである。厚みが5μm以上であれば、本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば電極の突起部分に大きな力がかかった場合でも、非水電解液二次電池用セパレータを突き破って短絡しにくく安全性に優れる。また、厚みが100μm以下であれば、積層多孔フィルムの電気抵抗を小さくすることができるので、電池の性能を十分に確保することができる。
また、被覆層の厚みは、耐熱性の観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上、特に好ましくは3μm以上である。一方で上限としては、連通性の観点から、好ましくは90μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下である。
本発明の製造方法により得られる積層多孔フィルムにおいて、空孔率は30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましい。空孔率が30%以上であれば、連通性を確保し透気特性に優れた積層多孔フィルムとすることができる。
一方、上限については70%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下が更に好ましい。空孔率が70%以下であれば、積層多孔フィルムの強度を十分に保持することができ、ハンドリングの観点からも好ましい。
本発明の製造方法により得られる積層多孔フィルムの透気度は1,000秒/100mL以下が好ましく、10〜800秒/100mLがより好ましく、10〜500秒/100mLが更に好ましい。透気度が1,000秒/100mL以下であれば、積層多孔フィルムに連通性があることを示し、優れた透気性能を示すことができるため好ましい。
透気度はフィルム厚み方向の空気の通り抜け易さを表し、具体的には100mLの空気が当該フィルムを通過するのに必要な時間で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方がフィルムの厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方がフィルム厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とはフィルム厚み方向の孔のつながり度合いである。本発明の積層多孔フィルムの透気度が低ければ様々な用途に使用することができる。例えば非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合、透気度が低いということはリチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。
積層多孔フィルムの透気度は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
本発明の製造方法により得られる積層多孔フィルムは、非水電解液二次電池用セパレータとして使用する際に、SD特性を有することが好ましい。具体的には、135℃で5秒間加熱後の透気度は、好ましくは10,000秒/100mL以上、より好ましくは25,000秒/100mL以上、更に好ましくは50,000秒/100mL以上である。135℃で5秒間加熱後の透気度が10,000秒/100mL以上であると、異常発熱時において空孔が速やかに閉塞し、電流が遮断されるため、電池の破裂等のトラブルを回避することができる。
本発明の製造方法により得られる積層多孔フィルムの150℃における収縮率は、縦方向と横方向のいずれにおいても10%未満が好ましく、9%未満がより好ましく、8%未満が更に好ましい。前記150℃における収縮率が10%未満であれば、SD温度を超えて異常発熱した際においても、寸法安定性がよく、耐熱性を有することを示唆しており、破膜を防ぎ、内部短絡温度を向上することができる。該収縮率の下限としては特に限定しないが、0%以上がより好ましい。
積層多孔フィルムの収縮率は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
本発明の製造方法により得られる積層多孔フィルムは、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムと被覆層の密着性に優れる。被覆層の密着性は後述の実施例に記載の方法で測定される引き剥がし強度で評価することができ、引き剥がし強度が大きいほど密着性に優れたフィルムとなる。
引き剥がし強度は4N/18mm以上であることが耐熱収縮性やフィルムの搬送トラブルや外観不良を軽減できるという点で好ましい。一方、上限については特に制限されないが、例えば8N/18mm以下である。
[非水電解液二次電池用セパレータ及び非水電解液二次電池]
続いて、本発明の製造方法により得られる積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして収容している非水電解液二次電池について、図1を参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極は非水電解液二次電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体とする。
前記捲回工程について詳しく説明する。電池用セパレータの片端をピンのスリット部の間に通し、ピンを少しだけ回転させて電池用セパレータの一端をピンに巻きつけておく。この時、ピンの表面と電池用セパレータの被覆層とが接触している。その後、電池用セパレータを間に挟むようにして正極と負極を配置し、捲回機によってピンを回転させて、正負極と電池用セパレータを捲回する。捲回後、ピンは捲回物から引き抜かれる。
前記正極板21、電池用セパレータ10及び負極板22を一体的に巻き付けた捲回体を有底円筒状の電池ケース内に収容し、正極及び負極のリード体24、25と溶接する。ついで、前記電解質を電池缶内に注入し、電池用セパレータ10等に十分に電解質が浸透した後、電池缶の開口周縁にガスケット26を介して正極蓋27を封口し、予備充電、エージングを行い、筒型の非水電解液二次電池を作製する。
電解液としては、リチウム塩を電解液とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる。有機溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、プロピオン酸メチルもしくは酢酸ブチル等のエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランもしくは4−メチル−1,3−ジオキソラン等のエーテル類、又はスルホラン等が挙げられ、これらを単独で又は二種類以上を混合して用いることができる。中でも、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0mol/Lの割合で溶解した電解質が好ましい。
負極としてはアルカリ金属又はアルカリ金属を含む化合物をステンレス鋼製網等の集電材料と一体化させたものが用いられる。前記アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム又はカリウム等が挙げられる。前記アルカリ金属を含む化合物としては、例えばアルカリ金属とアルミニウム、鉛、インジウム、カリウム、カドミウム、スズもしくはマグネシウム等との合金、更にはアルカリ金属と炭素材料との化合物、低電位のアルカリ金属と金属酸化物もしくは硫化物との化合物等が挙げられる。負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭等を用いることができる。
正極としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウムもしくはクロム酸化物等の金属酸化物、二硫化モリブデン等の金属硫化物等が活物質として用いられ、これらの正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレン等の結着剤等を適宜添加した合剤を、ステンレス鋼製網等の集電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の積層多孔フィルムの製造方法について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、積層多孔フィルムの長手方向を「縦方向」、長手方向に対して垂直方向を「横方向」と称する。
<実施例及び比較例>
(ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの作製)
ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ株式会社製「ノバテックPP FY6HA」、密度:0.90g/cm3、MFR:2.4g/10分、Mw/Mn:3.22)と、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを準備した。このポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、β晶核剤を0.2質量部の割合で各原材料をブレンドし、東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径(直径):40mm、L/D:32)に投入し、設定温度300℃で溶融混合後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットし、ポリプロピレン系樹脂のペレットを作製した。
前記ペレットを用いて、口金より押出し、127℃のキャスティングロールで冷却固化させて膜状物を作製した。
前記膜状物を、縦延伸機を用いて105℃で縦方向に4.6倍延伸し、その後、横延伸機にて150℃で横方向に2.1倍延伸後、153℃で熱固定を行った。続いて弛緩処理を行い、更にVETAPHONE社製ジェネレータCP1を使用し、出力0.4kW・速度10m/minでコロナ表面処理を施すことでポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを得た。
[実施例1]
アルミナ(日本軽金属株式会社製「LS−410」、平均粒径:0.5μm)52.6質量部、イソプロピルアルコール5.3質量部、イオン交換水42.1質量部を混合してビーズミル処理を行うことにより分散液を得た。使用したビーズミルの条件は下記のとおりであった。
装置 :アイメックス株式会社製「NVM−1.5」
ビーズ:直径0.5mmジルコニア製 充填率85%
周速 :10m/s
吐出量:350mL/min
得られた分散液61.8質量部、5質量%ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製「PVA−124」)水溶液9.9質量部、イオン交換水28.3質量部を混合し、全量に対し、70質量ppmとなるよう塩酸を加えることで、固形分濃度33質量%の被覆層形成用の分散液を得た。
得られた被覆層形成用の分散液を前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムに#12番手のバーコーターを用いて塗布した後、外寸32cm×40cm、内寸22cm×35cm、厚み15mmの紙製の枠2枚に挟み込んだ。
次いで、乾燥機(株式会社大栄科学精器製作所製:DK−1M)を用いて前記フィルムの乾燥を行った。該乾燥機は、装置内部の天井面側と底面側とにそれぞれ熱風を送風する送風口を有している。したがって、フィルムを装置内部の中央に設置すると、装置の天井面側の送風口から送風される熱風がフィルムの天井面側を流通し、また、装置の底面側の送風口から送風される熱風がフィルムの底面側を流通する。本実施例においては、装置内部の底面側の送風口に40cm×40cmのステンレス板を用いて熱風を部分的に遮断することにより風速を調整した。なお、実施例1においては装置内の温度を60℃に保った。
そして、前記フィルムを紙枠2枚の間に挟み、塗工液を塗布した塗布面を装置内部の底面側に向けた状態で乾燥させた。
得られた積層多孔フィルムについて下記の評価を行い、その結果を表1にまとめた。
[比較例1]
前記フィルムの塗布面を装置内部の天井面側に向けた状態で乾燥させたこと以外は実施例1と同様にして積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムについて下記の評価を行い、その結果を表1にまとめた。
[比較例2]
乾燥機内にステンレス板を設置せず、熱風を遮断しなかったこと以外は、実施例1と同様にして積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムについて下記の物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
[比較例3]
乾燥機に入れず、25℃の室温で乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムについて下記の物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
[比較例4]
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムについて下記の物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
<測定方法及び評価方法>
(1)乾燥風速
外寸32cm×40cm、内寸22cm×35cm、厚み15mmの紙製の枠2枚の間に、長さ37.5cm、幅18cmのポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを挟み込み、これを乾燥機(株式会社大栄科学精器製作所製:DK−1M)内に設置した。次いで、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの装置内部の天井面側、及び装置内部の底面側の風速を、それぞれ無指向性プローブを取り付けた風速計(日本KANOMAX株式会社製:クリモマスター風速計)にて測定した。なお、風速はポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの中央部分において測定した。
(2)乾燥時間
長さ37.5cm、幅18cmのポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に塗工液を塗布することにより得られた積層フィルムを、塗布後すぐに前述の紙製の枠2枚に挟み込み乾燥機に設置した。乾燥開始後15秒おきに積層フィルムを取り出し、塗工面の乾燥状態を目視にて確認し、端面の塗りムラを除いた塗工面全面が乾燥するまでこれを繰り返した。乾燥機に設置してから塗工面の乾燥が完了するまでの時間を乾燥時間とした。
(3)引き剥がし強度
作製した積層多孔フィルムについて、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムと被覆層との引き剥がし強度をJIS Z0237(2009年)に準拠して測定した。
まず、積層多孔フィルムを横50mm×縦150mmに切り出してサンプルとし、当該サンプルの縦方向にテープ42(図2)として、セロハンテープ(ニチバン株式会社製、JIS Z1522、幅:18mm)を貼付け、該セロハンテープの粘着面とは反対側の面同士が重なるように180°に折り返し、該サンプルから25mm剥がした。
次に、引張試験機(株式会社インテスコ製、インテスコIM−20ST)の下部チャックに剥がした部分のサンプルの片端を固定し、上部チャックに該セロハンテープを固定し、試験速度300mm/分にて引き剥がし強度を測定した(図2)。測定後、最初の25mmの長さの測定値は無視し、試験片から引き剥がされた50mmの長さの引き剥がし強度測定値を平均し、引き剥がし強度とした。
(4)密着性
密着性は、以下の評価基準にしたがって評価した。
○:引き剥がし強度が4N/18mm以上の場合。
×:引き剥がし強度が4N/18mm未満の場合。
(5)積層多孔フィルムの総厚み
積層多孔フィルムの総厚みは、1/1000mmのダイアルゲージにて、積層多孔フィルムの面内を不特定に5箇所測定し、その平均値として算出した。
(6)被覆層の厚み
被覆層の厚みは、被覆層形成後の積層多孔フィルムの総厚みと、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの厚みとの差として算出した。
(7)透気度(ガーレー値)
透気度は、JIS P8117(2009年)に準拠して測定した。
(8)150℃における収縮率
まず、実施例及び比較例で作製した積層多孔フィルムを長さ150mm×幅10mmのサイズに切り出し、長さ方向に100mmの間隔で2点印を入れてサンプルを作製した。次いで、150℃に設定したオーブン(タバイエスペック株式会社製「タバイギヤオーブンGPH200」)に該サンプルを入れ、1時間静置した。該サンプルをオーブンから取り出して冷却した後、印を入れた2点間の長さ(mm)を測定し、以下の式にて収縮率を算出した。
収縮率(%)={(100−加熱後の長さ)/100}×100
以上の測定は、積層多孔フィルムの縦方向、横方向についてそれぞれ行った。
(9)耐熱性
耐熱性は、以下の評価基準にしたがって評価した。
○:150℃、1時間における収縮率が、縦方向と横方向のいずれも10%未満の場合。
×:150℃、1時間における収縮率が、縦方向と横方向のいずれかが10%以上の場合。
Figure 0006432203
表1より明らかなように、実施例1では短い乾燥時間で密着性に優れる積層多孔フィルムを得ることができた。
一方、比較例1、2で得た積層多孔フィルムは、実施例に比べ、密着性に劣るフィルムとなった。
比較例3で得た積層多孔フィルムは、密着性には優れるものの、乾燥雰囲気温度が低いため、乾燥時間が長く、生産性の低いものであった。
比較例4のポリオレフィン系樹脂多孔フィルムは、被覆層が積層されていないため、耐熱性が不十分であった。
本発明の製造方法により得られる積層多孔フィルムは、透気特性が要求される種々の用途に応用することができる。具体的には、リチウムイオン二次電池用セパレータ;使い捨て紙オムツ、生理用品等の体液吸収用パットもしくはベッドシーツ等の衛生材料;手術衣もしくは温湿布用基材等の医療用材料;ジャンパー、スポーツウエアもしくは雨着等の衣料用材料;壁紙、屋根防水材、断熱材、吸音材等の建築用材料;乾燥剤;防湿剤;脱酸素剤;使い捨てカイロ;鮮度保持包装もしくは食品包装等の包装材料等の資材として極めて好適に利用できる。
10 非水電解液二次電池用セパレータ
20 二次電池
21 正極板
22 負極板
24 正極リード体
25 負極リード体
26 ガスケット
27 正極蓋
41 サンプル
42 テープ
43 滑り止め
44 上部チャック
45 下部チャック

Claims (6)

  1. ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に、フィラー及び樹脂バインダーを含有する塗工液を塗布した後、以下の条件にて熱風乾燥することにより、該多孔フィルム上に被覆層を形成することを特徴とする積層多孔フィルムの製造方法。
    <乾燥条件>
    40 ≦ T ≦ 100
    0.1 ≦ V−V ≦ 2.5
    (T:乾燥雰囲気温度[℃])
    (V:塗工面とは反対側の面の風速[m/s])
    (V:塗工面側の風速[m/s])
  2. 前記塗工液の溶媒が、水、又は水と炭素数1〜4のアルコールとの混合溶媒である、請求項1に記載の積層多孔フィルムの製造方法。
  3. 前記樹脂バインダーが、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、及びポリアクリル酸誘導体から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の積層多孔フィルムの製造方法。
  4. 前記被覆層において、前記フィラーと前記樹脂バインダーとの総量に対する前記フィラーの含有量が、80質量%以上、99.9質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層多孔フィルムの製造方法。
  5. 前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを構成する樹脂が、少なくともポリプロピレン系樹脂を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層多孔フィルムの製造方法。
  6. 前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムと前記被覆層との引き剥がし強度が4N/18mm以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層多孔フィルムの製造方法。
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