JP6027401B2 - 塗工液、積層多孔フィルム、非水電解液二次電池用セパレータ、及び非水電解液二次電池 - Google Patents
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Description
また、特許文献5には、支持層である樹脂フィルムの上に高分子溶液の活性層を塗布した後、これを延伸することによって、支持層を乾式法、活性層を相分離法により多孔化してなる多成分系複合分離膜が提案されている。
また、特許文献6に記載の方法では、エマルションが無機粒子の表面との相互作用により不安定化し、塗工液がゲル化してしまう為、使用できる無機粒子が限られていた。
なお、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含し、特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
第一の本発明は、電解液膨潤性有機高分子の水系エマルションと、無機粒子とを含有し、さらに、アンモニア、アミン誘導体、アンモニアとアミン誘導体の混合物のいずれかを、1ppm以上、10000ppm以下含有する塗工液である。(以下、「本塗工液」と称することがある。)
本塗工液は電解液膨潤性有機高分子の水系エマルションを含むことが重要である。ここで「水系エマルション」とは、前記電解液膨潤性有機高分子が水に溶解している状態ではなく、乳化剤や分子中の親水基により水中で微細に乳化され分散している状態をいう。水系エマルションを含むことにより、環境負荷が小さく、また多孔性の基材に塗布する際の生産性に優れた塗工液を得ることができる。また、
本発明に用いる電解液膨潤性有機高分子は、定性的には炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジエチル等の炭酸エステル類、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等の環状エステル類の電解液によって膨潤し、これを保持する性能を有する有機高分子をいう。電解液膨潤性有機高分子を用いることにより、本塗工液を多孔性の基材に塗布して形成する被覆層が電極への接着性に優れる。
これらの中でも入手の容易さの観点から、PVDF系共重合体のエマルションがより好ましい。これらは、Kynar Aquatec(アルケマ社製)、VINYCOAT PVDF AQ(東日本塗料社製)などとして市販品を容易に入手することができる。
本塗工液は無機粒子を含有することが重要である。無機粒子を含有することにより、本塗工液を多孔性の基材に塗布して形成する被覆層が耐熱性と透気性に優れる。
なお、本実施の形態において「フィラーの平均粒径」とは、例えば画像解析装置を用いて、縦方向・横方向それぞれ2方向から当該フィラーを投影した場合の二次元的な投影像の短径と長径を平均した値を、各方向について算出した後にさらに平均した値として算出される。
なお、本実施の形態において「フィラーの比表面積」は定容量式ガス吸着法により測定される値である。
本塗工液は、アンモニア、アミン誘導体、アンモニアとアミン誘導体の混合物のいずれかを、1ppm以上、10000ppm以下含有していることが重要である。
前述の通り、従来の技術においてはエマルションと無機粒子の表面の反応により塗工液がゲル化し、流動性が低下して塗工が困難になるなどの課題を抱えていたが、本発明者らは特定の塗工液に、アンモニア、アミン誘導体、アンモニアとアミン誘導体の混合物のいずれかを、1ppm以上、10000ppm以下含有することによって、この課題を解決したのである。
前記アンモニア、アミン誘導体、アンモニアとアミン誘導体の混合物のいずれかの含有量が、1ppm以上であることで、ゲル化することがなく、無機粒子の分散性に優れた塗工液を得ることができる。一方、10000ppm以下であることにより、塗工後の積層多孔フィルムにアンモニアやアミン誘導体起因の臭気が残りにくく、その生産性や透気性などが十分維持される。
沸点が100℃以下のアミン誘導体としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ヒドラジンなどが挙げられる。中でも入手の容易さや、化学的な安定性の観点から、メチルアミンが好ましい。
本塗工液の溶媒は、電解液膨潤性有機高分子の水系エマルション、無機粒子、及び、アンモニア、アミン誘導体、アンモニアとアミン誘導体の混合物のいずれかを十分に分散させる観点から、水であることが好ましい。使用できる水としては、蒸留水、イオン交換水、工業用水、などが挙げられるが、不純物の観点と生産性の観点から、イオン交換水が好ましい。
また、水の塗工液中に占める割合は、40質量%以上、90質量%以下であることが好ましい。40質量%以上であることにより、塗工液に十分な流動性が付与され、塗工した際に均一な膜が得られる。一方、90質量%以下であることにより、塗工した際に速やか乾燥する。
本塗工液には、本発明の効果を損なわない範囲において、消泡や塗れ性改善のために水溶性有機溶剤を含有していても構わない。具体例としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどの低級ケトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド化合物が挙げられる。
第二の本発明は、第一の本発明の塗工液をポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの少なくとも片側表面に塗布して被覆層を形成してなる積層多孔フィルムである。
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムに用いるポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィンを重合した単独重合体または共重合体が挙げられる。また、これらの単独重合体または共重合体を2種以上混合することもできる。この中でもポリプロピレン系樹脂、または、ポリエチレン系樹脂を用いることが好ましく、特に、本発明の積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性などを維持する観点から、ポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂としては、ホモプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどα−オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、本発明の積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性などを維持する観点から、ホモポリプロピレンがより好適に使用される。
本発明に用いるポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレンを主成分とする共重合体、すなわち、エチレンとプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる1種または2種以上のコモノマーとの共重合体または多元共重合体あるいはその混合組成物が挙げられる。エチレン系重合体のエチレン単位の含有量は通常50質量%を超えるものである。
なお、密度の測定は密度勾配管法を用いてJIS K7112に準じて測定することができる。
MFRはJIS K7210に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定している。
本発明の積層多孔フィルムにおいて、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムはβ晶活性を有することが好ましい。β晶活性は、延伸前の膜状物においてβ晶を生成していたことを示す一指標と捉えることができる。延伸前の膜状物中にβ晶を生成していれば、フィラー等の添加剤を使用しない場合においても、延伸を施すことで微細孔が容易に形成されるため、透気特性を有する積層多孔フィルムを得ることができる。
β晶活性度(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
例えば、前記ポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレンの場合は、主に145℃以上160℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に160℃以上170℃以下に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。また、例えばエチレンが1〜4モル%共重合されているランダムポリプロピレンの場合は、主に120℃以上140℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に140℃以上165℃以下の範囲に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。
β晶活性度の上限値は特に限定されないが、β晶活性度が高いほど前記効果がより有効に得られるので100%に近いほど好ましい。
詳細には、ポリプロピレン系樹脂の融点を超える温度である170℃〜190℃の熱処理を施し、徐冷してβ晶を生成・成長させた積層多孔フィルムについて広角X線測定を行い、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来する回折ピークが2θ=16.0°〜16.5°の範囲に検出された場合、β晶活性が有ると判断している。
ポリプロピレン系樹脂のβ晶構造と広角X線回折に関する詳細は、Macromol.Chem.187,643−652(1986)、Prog.Polym.Sci.Vol.16,361−404(1991)、Macromol.Symp.89,499−511(1995)、Macromol.Chem.75,134(1964)、及びこれらの文献中に挙げられた参考文献を参照することができる。広角X線回折を用いたβ晶活性の詳細な評価方法については、後述の実施例にて示す。
また、仮に、ポリプロピレン系樹脂からなる層以外に、ポリプロピレン系樹脂を含有する層などを積層させる場合には、両層ともにβ晶活性を有することが好ましい。
本発明で用いるβ晶核剤としては以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば特に限定される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いても良い。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。そのほか核剤の具体的な種類については、特開2003−306585号公報、特開平06−289566号公報、特開平09−194650号公報に記載されている。
本発明においては、前述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤をポリオレフィン系樹脂多孔フィルムに適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性およびポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤または着色剤などの添加剤が挙げられる。
また開孔を促進するためや、成形加工性を付与するために、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、変性ポリオレフィン系樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂もしくはその変性体、エチレン系重合体、ワックス、または低分子量ポリプロピレンを添加しても構わない。
本発明において、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムは、単層でも積層でもよく、特に制限されるものではない。中でも、前記ポリオレフィン系樹脂を含む層(以下「A層」と称する場合がある)の単層、当該A層の機能を妨げない範囲で、当該A層と他の層(以降「B層」と称する場合がある)との積層が好ましい。例えば非水電解液二次電池用セパレータとして用いる際には、特開平04−181651号に記載されているような高温雰囲気化で孔閉塞し、電池の安全性を確保する低融点樹脂層を積層させることができる。
具体的にはA層/B層を積層した2層構造、A層/B層/A層、若しくは、B層/A層/B層として積層した3層構造などが例示できる。また、他の機能を持つ層と組み合わせて3種3層の様な形態も可能である。この場合、他の機能を持つ層との積層順序は特に問わない。更に層数としては4層、5層、6層、7層と必要に応じて増やしても良い。
次に本発明に用いるポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの製造方法について説明するが、本発明はかかる製造方法により製造されるポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのみに限定されるものではない。
無孔膜状物の多孔化方法としては、特に限定されることなく、湿式による一軸以上の延伸多孔化、乾式による一軸以上の延伸多孔化など、公知の方法を用いてもよい。延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて一軸延伸あるいは二軸延伸を行う。中でも、多孔構造制御の観点から逐次二軸延伸が好ましい。また必要に応じて、延伸の前後にポリオレフィン系樹脂組成物に含まれている可塑剤を溶剤によって抽出、乾燥させる方法も適用される。
(i)各層を多孔化したのち、多孔化された各層をラミネートしたり接着剤等で接着したりして積層する方法。
(ii)各層を積層して積層無孔膜状物を作製し、ついで当該無孔膜状物を多孔化する方法。
(iii)各層のうちいずれか1層を多孔化したのち、もう1層の無孔膜状物と積層し、多孔化する方法。
(iv)多孔層を作製した後、無機・有機粒子などのコーティング塗布や、金属粒子の蒸着などを行うことにより積層多孔フィルムとする方法。
本発明においては、その工程の簡略さ、生産性の観点から(ii)の方法を用いることが好ましく、なかでも2層の層間接着性を確保するために、共押出で積層無孔膜状物を作製した後、多孔化する方法が特に好ましい。
まずポリオレフィン系樹脂と、必要であれば熱可塑性樹脂、添加剤の混合樹脂組成物を作製する。例えば、ポリプロピレン系樹脂、β晶核剤、および所望によりその他添加物等の原材料を、好ましくはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等を用いて、または袋の中に全成分を入れてハンドブレンドにて混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー等、好ましくは二軸押出機で溶融混練後、カッティングしてペレットを得る。
使用するTダイのギャップは、最終的に必要なフィルムの厚み、延伸条件、ドラフト率、各種条件等から決定されるが、一般的には0.1〜3.0mm程度、好ましくは0.5〜1.0mmである。0.1mm以上であれば生産速度という観点から好ましく、また3.0mm以下であれば、ドラフト率が大きくなり過ぎないため生産安定性の観点から好ましい。
キャストロールによる冷却固化温度は本発明において非常に重要であり、膜状物中のポリオレフィン系樹脂のβ晶の比率を調整することができる。キャストロールの冷却固化温度は好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜140℃、更に好ましくは100〜130℃である。冷却固化温度を80℃以上とすることで、膜状物中のβ晶の比率を十分に増加させることができるために好ましい。また、150℃以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻き付いてしまうなどのトラブルが起こりにくく、効率よく膜状物化することが可能であるので好ましい。
延伸前の膜状物中のβ晶比率は、示差走査型熱量計を用いて、該膜状物を25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温させた際に、検出されるポリオレフィン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算される。
β晶比率(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
一方、横延伸での延伸温度は概ね100〜160℃、好ましくは110〜150℃、更に好ましくは120〜140℃である。また、好ましい縦延伸倍率は1.2〜10倍が好ましく、より好ましくは1.5〜8倍、更に好ましくは2〜7倍である。前記範囲内で横延伸することで、縦延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができる。
前記延伸工程の延伸速度としては、500〜12000%/分が好ましく、1500〜10000%/分がさらに好ましく、2500〜8000%/分であることが更に好ましい。
本発明の積層多孔フィルムの厚みは5〜100μmが好ましい。より好ましくは8〜50μm、更に好ましくは10〜30μmである。非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合、5μm以上であれば、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば電極の突起部分に大きな力がかかった場合でも、非水電解液二次電池用セパレータを突き破って短絡しにくく安全性に優れる。また、厚みが100μm以下であれば、積層多孔フィルムの電気抵抗を小さくすることができるので、電池の性能が十分に確保することができる。
透気度はフィルム厚み方向の空気の通り抜け難さを表し、具体的には100mlの空気が当該フィルムを通過するのに必要な数で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方がフィルムの厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方がフィルム厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とはフィルム厚み方向の孔のつながり度合いである。本発明の積層多孔フィルムの透気度が低ければ様々な用途に使用することができる。例えば非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合、透気度が低いということはリチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。
続いて、本発明の積層多孔フィルムを電池用セパレータとして収容している非水電解液二次電池について、図1に参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極は電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体としている。
前記捲回工程について詳しく説明する。電池用セパレータの片端をピンのスリット部の間に通し、ピンを少しだけ回転させて電池用セパレータの一端をピンに巻きつけておく。この時、ピンの表面と電池用セパレータの被覆層とが接触している。その後、電池用セパレータを間に挟むようにして正極と負極を配置し、捲回機によってピンを回転させて、正負極と電池用セパレータを捲回する。捲回後、ピンは捲回物から引き抜かれる。
塗工液100質量%に対する電解液膨潤性有機高分子の比率とした
塗工液100質量%に対する、無機粒子の比率とした。
塗工液100質量%に対する、アンモニア、アミン誘導体、または、アンモニアとアミン誘導体の混合物や、水酸化ナトリウム、塩酸などの比率とした。
各塗工液を#10のバーコーターにて、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム上に塗工した際の流動性について、以下の基準にて評価した。
○:流動性があり、問題なく塗工できる。
×:流動性を失っており、塗工が困難。
各塗工液を#10のバーコーターにて、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム上に塗工し、60℃で2分間乾燥したのち、JIS P8177に準拠して塗工後の透気度を測定し、以下の基準で評価した。
○:塗工後の透気度が1000秒/100mL未満。
×:塗工後の透気度が1000秒/100mL以上。
各塗工液を#10のバーコーターにて、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム上に塗工し、60℃で2分間乾燥したのち、イオン交換水に濡らしたpH試験紙を塗工面に接触することで、塗工後のpHを測定し、以下の基準で評価した。
○:塗工後のpHが6以上9未満であり、電解液との反応するおそれが少ない。
×:塗工後のpHが6未満、或いは9以上であり、電解液と反応するおそれがある。
積層多孔フィルムを縦60mm、横60mm角に切り出し、図2(A)に示すように中央部が40mmφの円状に穴の空いたアルミ板(材質:JIS A5052、サイズ:縦60mm、横60mm、厚さ1mm)2枚の間にはさみ、図2(B)に示すように周囲をクリップで固定した。
積層多孔フィルムをアルミ板2枚に拘束した状態で設定温度180℃、表示温度180℃である送風定温恒温器(ヤマト科学株式会社製、型式:DKN602)に入れ3分間保持した後、設定温度を100℃に変更し、10分以上の時間をかけて100℃まで徐冷を行った。表示温度が100℃になった時点で取り出し、アルミ板2枚に拘束した状態のまま25℃の雰囲気下で5分間冷却して得られたものについて、以下の測定条件で、中央部の40mmφの円状の部分について広角X線回折測定を行った。
・広角X線回折測定装置:株式会社マックサイエンス製、型番:XMP18A
・X線源:CuKα線、出力:40kV、200mA
・走査方法:2θ/θスキャン、2θ範囲:5°〜25°、走査間隔:0.05°、走査速度:5°/min
得られた回折プロファイルについて、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来するピークより、β晶活性の有無を以下のように評価した。
○:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出された場合(β晶活性あり)
×:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出されなかった場合(β晶活性なし)
なお、積層多孔フィルム片が縦60mm、横60mm角に切り出せない場合は、中央部に40mmφの円状の穴に積層多孔フィルムが設置されるように調整しても構わない。
ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、ノバテックPP FY6HA、密度:0.90g/cm3、MFR:2.4g/10分)と、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを準備した。このポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、β晶核剤を0.2質量部の割合で各原材料をブレンドし、東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径:40mmφ、L/D:32)に投入し、設定温度300℃で溶融混合後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットし、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを作製した。
前記膜状物を、縦延伸機を用いて縦方向に4.6倍延伸し、その後、横延伸機にて100℃で横方向に2倍延伸後、熱固定/弛緩処理を行い、コロナ表面処理を施すことで厚み20μmのポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを得た。得られたポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの透気度は200秒/100mLであった。
アルミナ(日本軽金属社製、LS−410、平均粒径:0.5μm)52.5質量部、イオン交換水42.1質量部、イソプロピルアルコール5.4質量部を混合し、これら混合物100質量部に対し、φ0.5mmジルコニアビーズ50質量部を加え、30分振盪後、ジルコニアビーズをろ過し、除去することで、固形分率52.5質量%のアルミナスラリーを得た。
得られたアルミナスラリー75質量部と、PVDF/アクリルエマルション(Kynar Aquatec ARC:固形分濃度40質量%)を2質量部、イオン交換水13質量部、1%アンモニア水溶液を10質量部混合することにより塗工液を作製した。
得られた塗工液を、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に、厚み5μmとなるように塗布して被覆層を形成し、積層多孔フィルムを得た。
得られた塗工液及び積層多孔フィルムの評価結果を表1にまとめた。
実施例1で得られたアルミナスラリー75質量部と、PVDF/アクリルエマルション(Kynar Aquatec ARC:固形分濃度40質量%)を2質量部、イオン交換水23質量部混合することにより塗工液を作製した。
得られた塗工液を、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に、厚み5μmとなるように塗布して被覆層を形成し、積層多孔フィルムを得た。
得られた塗工液及び積層多孔フィルムの評価結果を表1にまとめた。
実施例1で得られたアルミナスラリー75質量部と、PVDF/アクリルエマルション(Kynar Aquatec ARC:固形分濃度40質量%)を2質量部、イオン交換水13質量部、1%水酸化ナトリウム水溶液を10質量部混合することにより塗工液を作製した。
得られた塗工液を、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に、厚み5μmとなるように塗布して被覆層を形成し、積層多孔フィルムを得た。
得られた塗工液及び積層多孔フィルムの評価結果を表1にまとめた。
実施例1で得られたアルミナスラリー75質量部と、PVDF/アクリルエマルション(Kynar Aquatec ARC:固形分濃度40質量%)を2質量部、イオン交換水13質量部、1%塩酸水溶液を10質量部混合することにより塗工液を作製した。
得られた塗工液を、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に、厚み5μmとなるように塗布して被覆層を形成し、積層多孔フィルムを得た。
得られた塗工液及び積層多孔フィルムの評価結果を表1にまとめた。
PVDF/アクリルエマルション(Kynar Aquatec ARC:固形分濃度40質量%)を2質量部、イオン交換水88質量部、1%アンモニア水溶液を10質量部混合することにより塗工液を作製した。
得られた塗工液を、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に、厚み5μmとなるように塗布して被覆層を形成し、積層多孔フィルムを得た。
得られた塗工液及び積層多孔フィルムの評価結果を表1にまとめた。
比較例2で得た積層多孔フィルムは、アンモニア、アミン誘導体、アンモニアとアミン誘導体の混合物のいずれかの代わりに添加した水酸化ナトリウムが不揮発性の為、塗工乾燥後に積層多孔フィルム上に濃縮され、pHが著しく増大し、電解液との反応性の高いものであった。
比較例3で得た積層多孔フィルムは、アンモニア、アミン誘導体、アンモニアとアミン誘導体の混合物のいずれかの代わりに添加した塩酸により、かえって凝集・ゲル化が生じた。
比較例4で得た積層多孔フィルムは、塗工液に無機粒子が入っていない為、開孔基点が存在せず、塗工後の透気性を確保できなかった。
20 二次電池
21 正極板
22 負極板
24 正極リード体
25 負極リード体
26 ガスケット
27 正極蓋
31 アルミ板
32 サンプル
33 クリップ
34 フィルム縦方向
35 フィルム横方向
Claims (9)
- ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系共重合体、ポリアクリロニトリル(PAN)系共重合体、及び、ポリエチレンオキシド(PEO)系共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の電解液膨潤性有機高分子の水系エマルションと、無機粒子とを含有し、さらに、アンモニア、アミン誘導体、アンモニアとアミン誘導体の混合物のいずれかを、1ppm以上、10000ppm以下含有する塗工液。
- 前記電解液膨潤性有機高分子の塗工液中に占める割合が、0.3質量%以上、40質量%以下である、請求項1に記載の塗工液。
- 前記無機粒子が金属酸化物、または、金属水酸化物である、請求項1または2に記載の塗工液。
- 前記無機粒子の塗工液中に占める割合が、1質量%以上、60質量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗工液。
- 前記無機粒子の比表面積が、5m 2 /g以上、15m 2 /g未満である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗工液。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗工液をポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの少なくとも片側表面に塗布して被覆層を形成してなる積層多孔フィルム。
- 前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムがβ晶活性を有する、請求項6に記載の積層多孔フィルム。
- 請求項6または7に記載の積層多孔フィルムを用いた非水電解液二次電池用セパレータ。
- 請求項8に記載の非水電解液二次電池用セパレータを用いた非水電解液二次電池。
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