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JP6429723B2 - レーザレーダ装置及び観測方法 - Google Patents

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Description

この発明は、大気の風速や風向を計測するレーザレーダ装置及び観測方法に関し、特に風車に搭載されるレーザレーダ装置及び観測方法に関するものである。
遠隔点に存在する物体の位置を計測する装置として、レーダ装置が知られている。
レーダ装置は、電磁波や音波などの波動を空間に放射したのち、観測対象である物体に反射されて戻ってきた波動を受信し、その波動を解析することで、レーダ装置から物体までの距離や角度を計測するものである。
レーダ装置の中でも、大気中に浮遊する微小なエアロゾルを観測対象とし、エアロゾルに反射されて戻ってきた波動の位相回転量から、エアロゾルが動く速度を風速として計測する気象レーダ装置が知られている。
また、気象レーダ装置の中でも、特に電磁波として光を用いるレーザレーダ装置は、放射するビームの広がりが極めて小さく、高い角度分解能で物体を観測することが可能であるため、風向風速レーダとして使用されている(例えば、非特許文献1を参照)。
一般的なレーザレーダ装置では、レーザ光を大気中に放射したのち、大気中のエアロゾルに反射されて戻ってきたレーザ光、即ち、大気中のエアロゾルの移動速度に伴ってドップラー周波数シフトを受けているレーザ光を受信し、そのレーザ光とローカル光のヘテロダイン検波を行うことで、風速に相当するドップラー信号を検出するようにしている。
このようなレーザレーダ装置は、一般的にドップラーライダと呼ばれており、大気中における各高度のエアロゾルに反射されて戻ってきたレーザ光を時間毎に区切り、時間毎に区切ったレーザ光であるレンジビン内で、微小間隔のコヒーレント積分を行うようにしている。
レーザレーダ装置が、レンジビン内でコヒーレント積分を行う際、レーザ光を区切る時間は距離分解能に相当するため、風速の空間変動を詳細に把握するには、レーザ光を区切る時間を短くする必要があるが、コヒーレント積算の時間を短くすると、得られる信号量が低下するため、観測可能な距離が短くなるトレードオフの関係がある。
コヒーレント積算の時間を短くしても、観測可能な距離が短くならないようにするために、コヒーレント積分を実施したのち、レンジビン内でコヒーレント積分結果をフーリエ変換し、そのフーリエ変換結果をインコヒーレント積分することで、信号対雑音比(以降、「SNR(Signal to NOise Ratio)」と称する)の向上を図る手法がある。一般的に、N回のインコヒーレント積分を実施した場合、SNRが、√Nだけ向上することが知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。
一般的なレーザレーダ装置では、レンジビン内でコヒーレント積分を行うことでスペクトル信号を得ると、そのスペクトル信号が最大になる周波数であるドップラーシフト量を特定し、そのドップラーシフト量から風速を算出するようにしている。また、風向を算出するようにしている。
以下の特許文献3には、レーザレーダ装置により算出された風速及び風向を用いて、風車を制御することで、風力発電の効率を高める技術が開示されている。
風力発電の効率を高めるには、風車に到来している風の向きを正確に把握して、風車の向きを風向に合わせる必要があるため、風車のブレードの後方にレーザレーダ装置が設置されることが多い。
特開2006−284260号公報(段落番号[0013]) 特開2002−168948号公報(段落番号[0029]) 特開2004−301116(段落番号[0043])
気象と大気のレーダーリモートセンシング ISBN 4−87698−653−3
従来のレーザレーダ装置は以上のように構成されているので、風速及び風向を算出することができる。しかし、風車のブレードの後方にレーザレーダ装置が設置される場合、風車のブレードの回転角度によっては、大気中に放射したレーザ光がブレードによって遮光されることがあり、レーザ光がブレードによって遮光された場合には、風速及び風向を算出することができなくなる。このとき、風速及び風向の算出が行えない原因が、レーザ光がブレードによって遮光されたことであることを特定することができないという課題があった。
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、風速の算出が行えない原因を特定することができるレーザレーダ装置及び観測方法を得ることを目的とする。
この発明に係るレーザレーダ装置は、レーザ光をパルス変調して第1のパルスを生成するとともに、第1のパルスよりパルス幅が狭い第2のパルスを生成する光変調部と、風車のブレードの後方に設置され、第1及び第2のパルスを大気に放射したのち、観測対象又はブレードに反射されて戻ってきたパルスの反射光を受信する送受光学系と、送受光学系により受信された第1のパルスの反射光から、レンジビン毎のスペクトル信号を算出して、レンジビン毎のスペクトル信号を積算するスペクトル積算部と、送受光学系により受信された第2のパルスの反射光から、レンジビン毎のスペクトル信号を算出するスペクトル信号算出部と、スペクトル積算部により積算されたスペクトル信号から観測対象の速度である風速を算出する風速算出部とを設け、遮光状態検知部が、スペクトル信号算出部により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号のうち、ブレードが存在しているレンジビン内のスペクトル信号における各周波数成分の中に、信号対雑音比が第1の閾値以上の周波数成分が存在していれば、ブレードによってパルスが遮光されている状態であることを認定し、風車制御部が、遮光状態検知部によりパルスの遮光状態が認定されていない場合、風速算出部により算出された風速を用いて、風車を制御するようにしたものである。
この発明によれば、遮光状態検知部が、スペクトル信号算出部により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号のうち、ブレードが存在しているレンジビン内のスペクトル信号における各周波数成分の中に、信号対雑音比が第1の閾値以上の周波数成分が存在していれば、ブレードによってパルスが遮光されている状態であることを認定するように構成したので、風速の算出が行えない原因として、ブレードによってパルスが遮光されている状態であるか否かを確認することができる効果がある。
この発明の実施の形態1によるレーザレーダ装置を示す構成図である。 風車に対するレーザレーダ装置の設置状態を示す説明図である。 光変調部から出力される大気観測用パルス及びブレード検出用パルスの一例を示す説明図である。 この発明の実施の形態1によるレーザレーダ装置の信号処理装置を示す構成図である。 信号処理装置がコンピュータで構成される場合のハードウェア構成図である。 信号処理装置の処理内容を示すフローチャートである。 レーザレーダ装置から放射されるパルスのパルス幅と観測可能距離との関係を示す説明図である。 装置異常が発生しているときの受信SNRを示す説明図である。 この発明の実施の形態1によるレーザレーダ装置の光変調部を示す構成図である。 この発明の実施の形態2によるレーザレーダ装置を示す構成図である。 この発明の実施の形態2によるレーザレーダ装置の信号処理装置を示す構成図である。 この発明の実施の形態3によるレーザレーダ装置の信号処理装置を示す構成図である。 ブレード角度検出装置が実装されている風車を示す説明図である。 この発明の実施の形態4によるレーザレーダ装置を示す構成図である。 この発明の実施の形態4によるレーザレーダ装置の信号処理装置を示す構成図である。 この発明の実施の形態5によるレーザレーダ装置を示す構成図である。
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面にしたがって説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるレーザレーダ装置を示す構成図であり、図2は風車に対するレーザレーダ装置の設置状態を示す説明図である。
特に、図2(a)はレーザレーダ装置の送受光学系から放射されたパルスが風車のブレードによって遮光されている状態を示し、図2(b)はレーザレーダ装置の送受光学系から放射されたパルスが風車のブレードによって遮光されていない状態を示している。
図1及び図2において、風車1はブレード2を備えており、風によってブレード2が回転すると、ブレード2の回転軸と連結されている発電機の回転軸が回転して、電気を発電するものである。
レーザレーダ装置3は風車1のブレード2の後方に設置されており、パルスを風車1の前方方向に放射したのち、大気中に浮遊する微小なエアロゾル(観測対象)に反射されて戻ってきたパルスの反射光を受信し、その反射光の受信信号からエアロゾルの移動速度である風速を算出する装置である。
風向風速計4は風車1のブレード2の後方に設置されており、例えば、風向きによって方向が変わる風見鶏に相当する風向計を備えている。また、風向風速計4は風速に応じた速度で回転する回転体の回転速度から風速を計測する風速計を備えている。
レーザレーダ装置3の光発振部11はレーザ光を発振する光発振器である。
光カプラ12は光発振部11により発振されたレーザ光を送信光とローカル光に分配して、その送信光を光変調部14に出力するとともに、そのローカル光を受信カプラ18に出力する。
光変調ドライバ13は信号処理装置21から出力される制御信号にしたがって光変調部14によるパルス変調を制御するとともに、光アンプ15の増幅率を制御する。
また、光変調ドライバ13は光カプラ12から出力される送信光の漏れ込み光である内部反射光に対応する電気信号が信号処理装置21に入力されるのを抑えるためにRFスイッチ20のオンオフを制御する。
光変調部14は例えばAOM(Acousto−Optic Modulator)などの光学変調器で構成されており、光変調ドライバ13の制御の下で、光カプラ12から出力された送信光をパルス変調することで、大気観測用パルス(第1のパルス)を繰り返し出力するとともに、大気観測用パルスよりパルス幅が狭いブレード検出用パルス(第2のパルス)を出力する。
ここで、図3は光変調部14から出力される大気観測用パルス及びブレード検出用パルスの一例を示す説明図である。
図3では、大気観測用パルスを4回出力する度に、ブレード検出用パルスを1回出力する例を示している。
光アンプ15は光変調ドライバ13によって増幅率が制御され、光変調部14から出力されたパルス(大気観測用パルス、ブレード検出用パルス)を当該増幅率で増幅し、増幅後のパルスをサーキュレータ16に出力する。
サーキュレータ16は光アンプ15から出力されたパルス(大気観測用パルス、ブレード検出用パルス)を送受光学系17に出力する一方、送受光学系17により受信されたパルスの反射光である受信光を受信カプラ18に出力する。
送受光学系17は風車1のブレード2の後方に設置されており、サーキュレータ16から出力されたパルス(大気観測用パルス、ブレード検出用パルス)を大気に放射したのち、観測対象であるエアロゾル又はブレード2に反射されて戻ってきたパルス(大気観測用パルス、ブレード検出用パルス)の反射光を受信する。
受信カプラ18は光カプラ12から出力されたローカル光とサーキュレータ16から出力された受信光を合波することで、そのローカル光の周波数と受信光の周波数とを足し合わせた周波数を有する合波光を光検出器19に出力する。
光検出器19は例えばバランスドレシーバで構成されており、受信カプラ18から出力された合波光を電気信号に変換し、その電気信号をRFスイッチ20に出力する。
RFスイッチ20は光変調ドライバ13の制御の下で、内部反射光の影響が大きい時間帯ではオフになり、内部反射光の影響が小さい時間帯ではオンになるスイッチである。
信号処理装置21は光検出器19から出力されたのち、RFスイッチ20を通過してきた電気信号を解析することで、エアロゾルの移動速度である風速を算出するとともに、送受光学系17から放射されたパルスがブレード2によって遮光されている状態であることを検知するなどの処理を実施する。
図4はこの発明の実施の形態1によるレーザレーダ装置の信号処理装置21を示す構成図である。
図4において、長パルス幅射出制御部31は大気観測用パルスの出力を指示する制御信号を光変調ドライバ13及び大気スペクトル積算部34に出力する処理を実施する。
短パルス幅射出制御部32はブレード検出用パルスの出力を指示する制御信号を光変調ドライバ13及びH/Tスペクトル信号算出部36に出力する処理を実施する。
A/Dコンバータ33は光検出器19から出力されたのち、RFスイッチ20を通過してきた電気信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器である。
大気スペクトル積算部34は長パルス幅射出制御部31から大気観測用パルスの出力を指示する制御信号が出力されると、A/Dコンバータ33により変換されたデジタル信号を時間毎に区切り、時間毎に区切ったデジタル信号、即ち、レンジビン毎のデジタル信号をフーリエ変換することで、レンジビン毎のスペクトル信号を算出する処理を実施する。
また、大気スペクトル積算部34はレンジビン毎のスペクトル信号を加算するインコヒーレント積分を実施することで、受信SNR(信号対雑音比)が改善されているスペクトルデータを算出する処理を実施する。
大気スペクトル保存部35は例えばRAMやハードディスクなどの記憶装置から構成されており、大気スペクトル積算部34により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号を保存するとともに、受信SNRが改善されているスペクトルデータを保存する。
なお、大気スペクトル積算部34及び大気スペクトル保存部35からスペクトル積算部が構成されている。
H/Tスペクトル信号算出部36は短パルス幅射出制御部32からブレード検出用パルスの出力を指示する制御信号が出力されると、A/Dコンバータ33により変換されたデジタル信号を時間毎に区切り、時間毎に区切ったデジタル信号、即ち、レンジビン毎のデジタル信号をフーリエ変換することで、レンジビン毎のスペクトル信号を算出する処理を実施する。
H/Tスペクトル保存部37は例えばRAMやハードディスクなどの記憶装置から構成されており、H/Tスペクトル信号算出部36により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号を保存する。
なお、H/Tスペクトル信号算出部36及びH/Tスペクトル保存部37からスペクトル信号算出部が構成されている。
風速算出部38は大気スペクトル保存部35に保存されているスペクトルデータのピーク値を検出して、そのピーク値をとる周波数をドップラーシフト量として特定する処理を実施する。
また、風速算出部38はドップラーシフト量と大気観測用パルスの波長から、エアロゾルの移動速度である風速を算出する処理を実施する。
遮光状態検知部39はH/Tスペクトル保存部37に保存されているレンジビン毎のスペクトル信号のうち、ブレード2が存在しているレンジビン内のスペクトル信号、即ち、送受光学系17とブレード2の間の距離が含まれているレンジビン内のスペクトル信号を読み出して、そのレンジビン内のスペクトル信号における各周波数成分の受信SNR(信号対雑音比)を算出する処理を実施する。
また、遮光状態検知部39はブレード2が存在しているレンジビン内のスペクトル信号における各周波数成分の中に、受信SNRが事前に設定された閾値ThSNR1(第1の閾値)以上の周波数成分が存在していれば、ブレード2によってパルスが遮光されている状態であることを認定する処理を実施する。
遮光状態通知部40は遮光状態検知部39によりパルスの遮光状態が認定された場合、遮光状態が発生している旨を示す遮光状態信号を出力する処理を実施する。
異常検知部41は遮光状態通知部40から遮光状態信号が出力されていないとき、大気スペクトル保存部35に保存されているレンジビン毎のスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRを算出する処理を実施する。
また、異常検知部41はレンジビン毎のスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRと事前に設定された閾値ThSNR2(第2の閾値)を比較し、全てのレンジビンのスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2未満であれば、装置異常の発生を認定する処理を実施する。
異常通知部42は異常検知部41により装置異常の発生が認定された場合、装置異常が発生している旨を示す異常発生信号を出力する処理を実施する。
風車制御部43は遮光状態通知部40から遮光状態信号が出力されておらず、かつ、異常通知部42から異常発生信号が出力されていなければ、風速算出部38により算出された風速を用いて、風車1を制御する。
また、風車制御部43は遮光状態通知部40から遮光状態信号が出力された場合、あるいは、異常通知部42から異常発生信号が出力された場合、風向風速計4の計測値を用いて、風車1を制御する。
図4の例では、信号処理装置21の構成要素である長パルス幅射出制御部31、短パルス幅射出制御部32、大気スペクトル積算部34、H/Tスペクトル信号算出部36、風速算出部38、遮光状態検知部39、遮光状態通知部40、異常検知部41、異常通知部42及び風車制御部43のそれぞれが専用のハードウェアで構成されているものを想定している。専用のハードウェアとしては、例えば、CPUを実装している半導体集積回路や、ワンチップマイコンなどが考えられる。
ただし、信号処理装置21はコンピュータで構成されているものであってもよい。図5は信号処理装置21がコンピュータで構成される場合のハードウェア構成図である。
例えば、A/Dコンバータ33を除く信号処理装置21がコンピュータで構成される場合、大気スペクトル保存部35及びH/Tスペクトル保存部37をコンピュータのメモリ51上に構成するとともに、長パルス幅射出制御部31、短パルス幅射出制御部32、大気スペクトル積算部34、H/Tスペクトル信号算出部36、風速算出部38、遮光状態検知部39、遮光状態通知部40、異常検知部41、異常通知部42及び風車制御部43の処理内容を記述しているプログラムをメモリ51に格納し、コンピュータのプロセッサ52がメモリ51に格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
図6は信号処理装置21の処理内容を示すフローチャートである。
次に動作について説明する。
この実施の形態1では、風速を算出する装置として、レーザレーダ装置3と風向風速計4が、風車1のブレード2の後方に設置されている。
ただし、風車1のブレード2が高速に回転している等の状況化では、ブレード2の回転が巻き起こす後流の影響で風が撹拌されるため、風向風速計4では、風速や風向を正確に計測できないことがある。
これに対して、レーザレーダ装置3は、ブレード2によって風が撹拌されても、原理的に風速の算出に影響が及ぼされないため、風速を正確に算出することができる。しかし、ブレード2の回転角によっては、レーザレーダ装置3の送受光学系17から放射されたパルスがブレード2によって遮光されてしまうため、風速を算出することができない状況が発生する。
そこで、この実施の形態1では、風車1を制御するに際して、レーザレーダ装置3が風速を算出することができる状況下では、レーザレーダ装置3により算出された精度が高い風速を用いるようにする。一方、レーザレーダ装置3が風速を算出することができない状況下では、計測精度が低くても、風車1の制御を継続するために、風向風速計4の計測値を用いるようにする。
レーザレーダ装置3の処理内容を具体的に説明する前に、レーザレーダ装置3が放射するパルスについて説明する。
図7はレーザレーダ装置3から放射されるパルスのパルス幅と観測可能距離との関係を示す説明図である。
レーザレーダ装置3が風速を算出する際、パルスを大気に放射するが、そのパルスのパルス幅が広い程、エネルギー量が大きくなるため、図7に示すように、観測可能距離が長くなる。図7では、パルス幅が狭い下側の図より、パルス幅が広い上側の図の方が、観測可能距離を示す“→”の先端が、より右側まで伸びている。
一方、パルスのパルス幅が広い程、図7に示すように、光カプラ12から出力される送信光の漏れ込み光である内部反射光の時間が長くなる。内部反射光が生じている間は、観測を行うことができないため、最小観測距離が長くなり、近距離での風速観測が困難になる。ただし、風車1の制御にかける時間を鑑みると、可能な限り遠方での風速観測が必要であり、近距離での風速観測の必要性が低い。なお、内部反射光の時間幅は、概ねパルスのパルス幅(時間幅)の1.0〜1.3倍に相当する。
また、大気の後方散乱係数は小さいため、観測対象からのパルス反射光のスペクトルの積算回数を多くすることで受信SNRを高める必要があるが、ブレード2などのハードターゲットの場合、後方散乱係数が大きいため、少ない積算回数で十分な受信SNRが得られる。
そこで、この実施の形態1では、風速の観測に用いるパルスは、パルス幅が広い大気観測用パルスを用いるものとする。一方、ブレード2によるパルス遮断状態の検出に用いるパルスは、大気観測用パルスよりパルス幅が狭いブレード検出用パルスを用いるものとする。
以下、レーザレーダ装置3の処理内容を具体的に説明する。
まず、レーザレーダ装置3の光発振部11は、レーザ光を発振する。
光カプラ12は、光発振部11により発振されたレーザ光を送信光とローカル光に分配して、その送信光を光変調部14に出力するとともに、そのローカル光を受信カプラ18に出力する。
この実施の形態1では、図3に示すように、送受光学系17が大気観測用パルスを4回放射する毎に、ブレード検出用パルスを1回放射するものとしているので、信号処理装置21の長パルス幅射出制御部31が、大気観測用パルスの出力を指示する制御信号を光変調ドライバ13及び大気スペクトル積算部34に4回出力する毎に、短パルス幅射出制御部32が、ブレード検出用パルスの出力を指示する制御信号を光変調ドライバ13及びH/Tスペクトル信号算出部36に1回出力する。
ここでは、送受光学系17が大気観測用パルスを4回放射する毎に、ブレード検出用パルスを1回放射し、例えば、合計でパルスを5000回放射することを想定しているが、大気観測用パルスをM(Mは2以上の整数)回放射する毎に、ブレード検出用パルスを1回放射するものであればよい。
なお、大気観測用パルスの放射とブレード検出用パルスの放射との切替として、例えば、大気観測用パルスを4000回放射したのち、ブレード検出用パルスを1000回放射するようなシーケンス的な切替方式も考えられるが、このような切替方式では、大気観測用パルスを放射している期間中はブレード2に遮光されていないが、ブレード検出用パルスを放射している期間中はブレード2に遮光されているような状況が発生する。逆に、大気観測用パルスを放射している期間中はブレード2に遮光されているが、ブレード検出用パルスを放射している期間中はブレード2に遮光されていないような状況が発生する。
このような状況下では、ブレード検出用パルスの反射光に基づいて、パルスの遮光状態の検知を行っても、大気観測用パルスの反射光によって風速の算出が正確に行えているか否かを判断することができない。
この実施の形態1では、シーケンス的な切替方式ではなく、大気観測用パルスの繰り返し放射の間に、短い周期でブレード検出用パルスの放射を挿入しているので、上記のような状況が発生せず、パルスの遮光状態を正確に検知することができる。
光変調ドライバ13は、信号処理装置21から大気観測用パルスの出力を指示する制御信号を受けると、大気観測用パルスが得られるように光変調部14のパルス変調を制御するとともに、光アンプ15の増幅率を制御する。
また、光変調ドライバ13は、大気観測用パルスの出力を指示する制御信号を受けると、大気観測用パルスに係る内部反射光が生じている時間中、その内部反射光に対応する電気信号が信号処理装置21に入力されるのを抑えるため、その制御信号を受けた時点から、例えば、大気観測用パルスのパルス幅(時間幅)の1.2〜1.3倍に相当する時間中、RFスイッチ20がオフになるように制御する。
内部反射光の光量は、大気からの反射光の光量と比べて非常に大きいため、過剰な電圧値の電気信号が信号処理装置に流入することを防ぐ必要がある。ただし、A/Dコンバータ33の入力ダイナミックレンジが大きい場合、過剰な電圧値の電気信号が信号処理装置に流入しても問題ないが、風速を正確に算出する観点では、やはり、内部反射光に対応する電気信号が信号処理装置21に入力されるのを抑える必要がある。
光変調ドライバ13は、信号処理装置21からブレード検出用パルスの出力を指示する制御信号を受けると、ブレード検出用パルスが得られるように光変調部14のパルス変調を制御するとともに、光アンプ15の増幅率を制御する。
ブレード検出用パルスは、パルス幅が狭いため、ブレード2に反射されたブレード検出用パルスの反射光の光量が極めて大きくなることが危惧されるため、大気観測用パルスを放射する場合よりも、増幅率が小さくなるように光アンプ15の増幅率を制御する。
また、光変調ドライバ13は、ブレード検出用パルスの出力を指示する制御信号を受けると、ブレード検出用パルスに係る内部反射光が生じている時間中、その内部反射光に対応する電気信号が信号処理装置21に入力されるのを抑えるため、その制御信号を受けた時点から、例えば、ブレード検出用パルスのパルス幅(時間幅)に相当する時間中、RFスイッチ20がオフになるように制御する。
これにより、光変調部14は、信号処理装置21から大気観測用パルスの出力を指示する制御信号が出力されているときは、光カプラ12から出力された送信光をパルス変調することで、大気観測用パルスを生成して、その大気観測用パルスを光アンプ15に出力する。
光変調部14は、信号処理装置21からブレード検出用パルスの出力を指示する制御信号が出力されているときは、光カプラ12から出力された送信光をパルス変調することで、ブレード検出用パルスを生成して、そのブレード検出用パルスを光アンプ15に出力する。
光アンプ15は、光変調部14から出力されたパルス(大気観測用パルス、ブレード検出用パルス)を受けると、そのパルスを光変調ドライバ13によって制御された増幅率で増幅し、増幅後のパルスをサーキュレータ16に出力する。
サーキュレータ16は、光アンプ15からパルス(大気観測用パルス、ブレード検出用パルス)を受けると、そのパルスを送受光学系17に出力する。
送受光学系17は、サーキュレータ16からパルス(大気観測用パルス、ブレード検出用パルス)を受けると、そのパルスを大気に放射する。
送受光学系17は、パルス(大気観測用パルス、ブレード検出用パルス)を大気に放射したのち、観測対象であるエアロゾル又はブレード2に反射されて戻ってきたパルス(大気観測用パルス、ブレード検出用パルス)の反射光を受信する。
サーキュレータ16は、送受光学系17により受信されたパルス(大気観測用パルス、ブレード検出用パルス)の反射光を受信光として受信カプラ18に出力する。
受信カプラ18は、光カプラ12から出力されたローカル光とサーキュレータ16から出力された受信光を合波することで、そのローカル光の周波数と受信光の周波数とを足し合わせた周波数を有する合波光を光検出器19に出力する。
光検出器19は、受信カプラ18から合波光を受けると、その合波光を電気信号に変換し、その電気信号をRFスイッチ20に出力する。
RFスイッチ20は、光変調ドライバ13の制御によって内部反射光の影響が大きい時間帯ではオフになっているが、内部反射光の影響が小さくなると、光変調ドライバ13の制御によってオンになり、光検出器19から出力された電気信号が信号処理装置21に入力されるようになる。
信号処理装置21は、光検出器19から出力されたのち、RFスイッチ20を通過してきた電気信号を解析することで、エアロゾルの移動速度である風速vを算出するとともに、送受光学系17から放射されたパルスがブレード2によって遮光されている状態であることを検知するなどの処理を実施する。
以下、信号処理装置21の処理内容を具体的に説明する。
信号処理装置21のA/Dコンバータ33は、光検出器19から出力されたのち、RFスイッチ20を通過してきた内部反射光の影響が小さい電気信号が入力されると、その電気信号をデジタル信号に変換する(図6のステップST1)。
大気スペクトル積算部34は、長パルス幅射出制御部31から大気観測用パルスの出力を指示する制御信号が出力されると(ステップST2:YESの場合)、A/Dコンバータ33により変換されたデジタル信号を時間毎に区切り、時間毎に区切ったデジタル信号、即ち、レンジビン毎のデジタル信号をフーリエ変換することで、レンジビン毎のスペクトル信号を算出する(ステップST3)。
また、大気スペクトル積算部34は、レンジビン毎のスペクトル信号を加算するインコヒーレント積分を実施することで、受信SNRが改善されているスペクトルデータを算出する(ステップST4)。
なお、大気スペクトル積算部34により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号と、受信SNRが改善されているスペクトルデータは、大気スペクトル保存部35に保存される。
H/Tスペクトル信号算出部36は、短パルス幅射出制御部32からブレード検出用パルスの出力を指示する制御信号が出力されると(ステップST2:NOの場合)、A/Dコンバータ33により変換されたデジタル信号を時間毎に区切り、時間毎に区切ったデジタル信号、即ち、レンジビン毎のデジタル信号をフーリエ変換することで、レンジビン毎のスペクトル信号を算出する(ステップST5)。
なお、H/Tスペクトル信号算出部36により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号はH/Tスペクトル保存部37に保存される。
風速算出部38は、大気スペクトル積算部34がスペクトルデータを大気スペクトル保存部35に保存すると、そのスペクトルデータのピーク値を検出して、そのピーク値をとる周波数をドップラーシフト量fとして特定する。
風速算出部38は、ドップラーシフト量fを特定すると、下記の式(1)に示すように、そのドップラーシフト量fと大気観測用パルスの波長λから、エアロゾルの移動速度である風速vを算出する(ステップST6)。
Figure 0006429723

ここでは、スペクトルデータのピーク値をとる周波数であるドップラーシフト量fを特定し、そのドップラーシフト量fと大気観測用パルスの波長λから風速vを算出する例を示しているが、風速vの算出方法はこれに限るものではなく、例えば、以下の特許文献4のように、算出方法を動的に変更するものであってもよい。
[特許文献4] 国際公開第2014/041852号
遮光状態検知部39は、H/Tスペクトル信号算出部36がレンジビン毎のスペクトル信号をH/Tスペクトル保存部37に保存すると、H/Tスペクトル保存部37に保存されているレンジビン毎のスペクトル信号のうち、ブレード2が存在しているレンジビン内のスペクトル信号、即ち、送受光学系17とブレード2の間の距離が含まれているレンジビン内のスペクトル信号を読み出して、そのレンジビン内のスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRを算出する。
また、遮光状態検知部39は、ブレード2が存在しているレンジビン内のスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRを算出すると、そのレンジビン内のスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRと事前に設定された閾値ThSNR1を比較し、各周波数成分の中に、受信SNRが閾値ThSNR1以上の周波数成分が存在しているか否かを判定する(ステップST7)。
遮光状態検知部39は、各周波数成分の中に、受信SNRが閾値ThSNR1以上の周波数成分が存在していれば(ステップST7:YESの場合)、ブレード2によってパルスが遮光されている状態であることを認定する(ステップST8)。各周波数成分の中に、受信SNRが閾値ThSNR1以上の周波数成分が存在していなければ(ステップST7:NOの場合)、遮光状態の認定は行わない。
遮光状態通知部40は、遮光状態検知部39がパルスの遮光状態を認定すると、遮光状態が発生している旨を示す遮光状態信号を風車制御部43及び異常検知部41に出力する。
ここでは、遮光状態検知部39がパルスの遮光状態を認定すると、遮光状態通知部40が、遮光状態が発生している旨を示す遮光状態信号を出力する例を示しているが、例えば、事前に設定された時間だけ継続して、パルスの遮光状態が認定されたときに、遮光状態が発生している旨を示す遮光状態信号を出力するようにしてもよい。
異常検知部41は、各周波数成分の中に、受信SNRが閾値ThSNR1以上の周波数成分が存在していないとき(ステップST7:NOの場合)、即ち、遮光状態通知部40から遮光状態信号が出力されていないとき、大気スペクトル保存部35に保存されているレンジビン毎のスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRを算出する。
異常検知部41は、レンジビン毎のスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRを算出すると、各周波数成分の受信SNRと事前に設定された閾値ThSNR2を比較し、その閾値ThSNR2以上の周波数成分が存在しているか否かを判定する(ステップST9)。
異常検知部41は、全てのレンジビンのスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2未満であれば(ステップST9:NOの場合)、装置異常の発生を認定する(ステップST10)。装置異常としては、例えば、光アンプ15や受信系の故障などが考えられる。
異常検知部41は、閾値ThSNR2以上の周波数成分が存在している場合(ステップST9:YESの場合)、装置異常の発生の認定は行わない。
異常通知部42は、異常検知部41が装置異常の発生を認定すると、装置異常が発生している旨を示す異常発生信号を風車制御部43に出力する。
ここでは、異常検知部41が装置異常の発生を認定すると、異常通知部42が、装置異常が発生している旨を示す異常発生信号を出力する例を示しているが、例えば、事前に設定された時間だけ継続して、装置異常の発生が認定されたときに、装置異常が発生している旨を示す異常発生信号を出力するようにしてもよい。
図8は装置異常が発生しているときの受信SNRを示す説明図である。
装置異常が発生していなければ、無風状態でない限り、風速vに対応する周波数の成分がピーク値になるため、その周波数成分の受信SNRは、閾値ThSNR2より大きくなることが想定される。しかし、例えば、光アンプ15が故障しているような状況下では、送受光学系17から放射される大気観測用パルスの光量が極めて小さいため、図8に示すように、全ての周波数の成分の受信SNRが閾値ThSNR2より低くなることが想定される。
風車制御部43は、遮光状態通知部40から遮光状態信号が出力されておらず、かつ、異常通知部42から異常発生信号が出力されていなければ(ステップST11:YESの場合)、風速算出部38により算出された風速vを用いて、風車1を制御する(ステップST12)。
一方、遮光状態通知部40から遮光状態信号が出力された場合、あるいは、異常通知部42から異常発生信号が出力された場合(ステップST11:NOの場合)、風向風速計4により計測された風速を用いて、風車1を制御する(ステップST13)。
風速を用いる風車1の制御としては、例えば、発電機と直結されているブレード2の回転軸のトルク制御が考えられる。例えば、風速が速すぎてブレード2の回転数が高くなり過ぎると、発電機の発電量が飽和することが考えられるので、ブレード2の回転軸のトルクを大きくして、ブレード2の回転数が高くなり過ぎないようにする。
一方、風速が遅すぎてブレード2の回転数が低くなり過ぎると、発電機の発電量が低くなるので、ブレード2の回転軸のトルクを小さくして、ブレード2の回転数が高くなるようにする。
この実施の形態1では、風速算出部38により算出された風速v又は風向風速計4により計測された風速を用いて、風車1を制御する例を示しているが、風向きの急激の変化や、突風などに対処するため、風速算出部38により算出された風速vの平均値又は風向風速計4により計測された風速の平均値を算出し、その平均値を用いて、風車1を制御するようにしてもよい。
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、遮光状態検知部39が、H/Tスペクトル信号算出部36により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号のうち、ブレード2が存在しているレンジビン内のスペクトル信号における各周波数成分の中に、受信SNRが閾値ThSNR1以上の周波数成分が存在しているか否かを判定するように構成したので、風速vの算出が行えない原因として、ブレード2によってパルスが遮光されている状態であるか否かを確認することができる効果を奏する。
また、この実施の形態1によれば、遮光状態検知部39によりパルスの遮光状態が認定されていないとき、大気スペクトル積算部34により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRと閾値ThSNR2を比較し、全てのレンジビンのスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2未満であれば、装置異常の発生を認定する異常検知部41を備え、風車制御部43が、遮光状態検知部39によりパルスの遮光状態が認定されておらず、かつ、異常検知部41により装置異常の発生が認定されていなければ、風速算出部38により算出された風速vを用いて、風車1を制御し、遮光状態検知部39によりパルスの遮光状態が認定された場合、あるいは、異常検知部41により装置異常の発生が認定された場合、風向風速計4により計測された風速を用いて、風車1を制御するように構成したので、パルスの遮光状態が発生しておらず、装置異常が発生していなければ、風車1を高精度に制御することができる一方、パルスの遮光状態が発生している場合や、装置異常が発生している場合でも、風車1の制御を継続することができる効果を奏する。
この実施の形態1では、光変調部14が、光カプラ12から出力された送信光をパルス変調することで、パルス(大気観測用パルス、ブレード検出用パルス)を生成するものを示したが、光変調部14を図9のように構成してもよい。光変調部14を図9のように構成した場合、光変調ドライバ13を不要にすることができる。
図9はこの発明の実施の形態1によるレーザレーダ装置の光変調部14を示す構成図である。
図9において、直線位相変調信号発生部61は例えばファンクションジェネレータなどで構成されており、任意周期の鋸波を発生する。
光位相変調部62は直線位相変調信号発生部61により発生された鋸波にしたがって光カプラ12から出力された送信光の位相変調を行う。
パルス信号発生部63は信号処理装置21から出力された制御信号にしたがって光強度変調部64をオンオフするパルス信号を出力する。
なお、パルス信号発生部63は、信号処理装置21から大気観測用パルスの出力を指示する制御信号が出力されている場合より、信号処理装置21からブレード検出用パルスの出力を指示する制御信号が出力されている場合の方が、光強度変調部64のオン時間が短くなるパルス信号を出力する。
光強度変調部64は例えばLN(Lithium Niobate)変調器や、MEMS光スイッチなどから構成されており、光位相変調部62により位相変調が行われた送信光をパルス変調することで、パルス(大気観測用パルス、ブレード検出用パルス)を生成し、そのパルスを光アンプ15に出力する。
光変調部14を図9のように構成して、光変調ドライバ13を実装しない場合、光アンプ15の増幅率については、信号処理装置21から出力された制御信号によって制御されるようにする。
即ち、信号処理装置21から大気観測用パルスの出力を指示する制御信号が出力されている場合より、信号処理装置21からブレード検出用パルスの出力を指示する制御信号が出力されている場合の方が、増幅率が小さくなるように制御される。
実施の形態2.
上記実施の形態1では、信号処理装置21の風速算出部38が風速vを算出し、風車制御部43が、遮光状態検知部39によりパルスの遮光状態が認定されておらず、かつ、異常検知部41により装置異常の発生が認定されていなければ、風速算出部38により算出された風速vを用いて、風車1を制御するものを示したが、さらに、風向を算出し、その風向を用いて、風車1を制御するようにしてもよい。
図10はこの発明の実施の形態2によるレーザレーダ装置を示す構成図であり、図10において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
光スイッチ22はサーキュレータ16から大気観測用パルスを受けると、送受光学系17−1〜17−Nに対して、その大気観測用パルスを順番に出力し、送受光学系17−1〜17−Nにより受信された大気観測用パルスの反射光をサーキュレータ16に出力する。
この実施の形態2では、説明の簡単化のため、光スイッチ22がサーキュレータ16からブレード検出用パルスを受けると、そのブレード検出用パルスを送受光学系17−1に出力し、送受光学系17−1により受信されたブレード検出用パルスの反射光をサーキュレータ16に出力することを想定しているが、大気観測用パルスと同様に、送受光学系17−1〜17−Nに対して、ブレード検出用パルスを順番に出力するようにしてもよい。
送受光学系17−1〜17−Nは図1の送受光学系17と同様に、風車1のブレード2の後方に設置されており、光スイッチ22から出力されたパルス(大気観測用パルス、ブレード検出用パルス)を大気に放射したのち、観測対象であるエアロゾル又はブレード2に反射されて戻ってきたパルス(大気観測用パルス、ブレード検出用パルス)の反射光を受信する。
ただし、送受光学系17−1〜17−Nにより送受信されるパルスの方位角方向が異なっている。なお、Nは2以上の整数であり、送受光学系17が少なくとも2以上あればよい。
図11はこの発明の実施の形態2によるレーザレーダ装置の信号処理装置21を示す構成図であり、図11において、図4と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
大気スペクトル積算部71は図4の大気スペクトル積算部34と同様に、長パルス幅射出制御部31から大気観測用パルスの出力を指示する制御信号が出力されると、A/Dコンバータ33により変換されたデジタル信号を時間毎に区切り、時間毎に区切ったデジタル信号、即ち、レンジビン毎のデジタル信号をフーリエ変換することで、レンジビン毎のスペクトル信号を算出する処理を実施する。
また、大気スペクトル積算部71は図4の大気スペクトル積算部34と同様に、レンジビン毎のスペクトル信号を加算するインコヒーレント積分を実施することで、受信SNRが改善されているスペクトルデータを算出する処理を実施する。
なお、大気スペクトル積算部71は図4の大気スペクトル積算部34と異なり、送受光学系17−1〜17−Nのうち、いずれかの送受光学系17が大気観測用パルスの反射光を受信する毎に、レンジビン毎のスペクトル信号を算出して、スペクトルデータを算出する。
大気スペクトル保存部72は例えばRAMやハードディスクなどの記憶装置から構成されており、送受光学系17−1〜17−Nのうち、いずれかの送受光学系17が大気観測用パルスの反射光を受信する毎に、大気スペクトル積算部71により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号を保存するとともに、受信SNRが改善されているスペクトルデータを保存する。
したがって、大気スペクトル保存部72には、パルスの方位角方向が異なる送受光学系17別に、大気スペクトル積算部71により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号とスペクトルデータが保存される。
なお、大気スペクトル積算部71及び大気スペクトル保存部72からスペクトル積算部が構成されている。
風速算出部73は大気スペクトル保存部72から各方位角方向に係るスペクトルデータをそれぞれ読み出し、各スペクトルデータのピーク値を検出して、そのピーク値をとる周波数をそれぞれドップラーシフト量として特定する処理を実施する。
また、風速算出部73は特定した各ドップラーシフト量と大気観測用パルスの波長から、エアロゾルの移動速度である風速をそれぞれ算出する処理を実施する。
風向算出部74は風速算出部73により算出された各方位角方向に係る風速から風向を算出する処理を実施する。
風車制御部75は遮光状態通知部40から遮光状態信号が出力されておらず、かつ、異常通知部42から異常発生信号が出力されていなければ、風速算出部73により算出された風速及び風向算出部74により算出された風向を用いて、風車1を制御する。
また、風車制御部75は遮光状態通知部40から遮光状態信号が出力された場合、あるいは、異常通知部42から異常発生信号が出力された場合、風向風速計4により計測された風速及び風向を用いて、風車1を制御する。
図11の例では、信号処理装置21の構成要素である長パルス幅射出制御部31、短パルス幅射出制御部32、大気スペクトル積算部71、H/Tスペクトル信号算出部36、風速算出部73、風向算出部74、遮光状態検知部39、遮光状態通知部40、異常検知部41、異常通知部42及び風車制御部75のそれぞれが専用のハードウェアで構成されているものを想定している。専用のハードウェアとしては、例えば、CPUを実装している半導体集積回路や、ワンチップマイコンなどが考えられる。
ただし、信号処理装置21はコンピュータで構成されているものであってもよく、例えば、A/Dコンバータ33を除く信号処理装置21がコンピュータで構成される場合、大気スペクトル保存部72及びH/Tスペクトル保存部37を図5に示すコンピュータのメモリ51上に構成するとともに、長パルス幅射出制御部31、短パルス幅射出制御部32、大気スペクトル積算部71、H/Tスペクトル信号算出部36、風速算出部73、風向算出部74、遮光状態検知部39、遮光状態通知部40、異常検知部41、異常通知部42及び風車制御部75の処理内容を記述しているプログラムをメモリ51に格納し、コンピュータのプロセッサ52がメモリ51に格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
次に動作について説明する。
この実施の形態2では、風向を算出することができるようにするために、放射パルスの方位角方向が異なる送受光学系17−1〜17−Nが設けられる。
光スイッチ22は、上記実施の形態1と同様にして、サーキュレータ16が大気観測用パルスを出力すると、送受光学系17−1〜17−Nに対して、その大気観測用パルスを順番に出力し、送受光学系17−1〜17−Nにより受信された大気観測用パルスの反射光をサーキュレータ16に出力する。
この実施の形態2では、説明の簡単化のため、光スイッチ22がサーキュレータ16からブレード検出用パルスを受けると、そのブレード検出用パルスを送受光学系17−1に出力することを想定している。この場合のH/Tスペクトル信号算出部36及び遮光状態検知部39の処理内容は、上記実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
送受光学系17−1〜17−Nは、光スイッチ22から大気観測用パルスを受けると、その大気観測用パルスを大気に放射する。
ただし、送受光学系17−1〜17−Nから放射される大気観測用パルスの方位角方向が異なっている。
送受光学系17−1〜17−Nは、大気観測用パルスを大気に放射したのち、観測対象であるエアロゾル又はブレード2に反射されて戻ってきた大気観測用パルスの反射光を受信する。
光スイッチ22は、送受光学系17−1〜17−Nのいずれかが大気観測用パルスの反射光を受信すると、その大気観測用パルスの反射光をサーキュレータ16に出力する。
即ち、光スイッチ22は、例えば、送受光学系17−1が大気観測用パルスを大気に放射すると、送受光学系17−1により受信された大気観測用パルスの反射光をサーキュレータ16に出力し、送受光学系17−Nが大気観測用パルスを大気に放射すると、送受光学系17−Nにより受信された大気観測用パルスの反射光をサーキュレータ16に出力する。
サーキュレータ16は、光スイッチ22から大気観測用パルスの反射光を受ける毎に、その大気観測用パルスの反射光を受信光として受信カプラ18に出力する。
受信カプラ18は、サーキュレータ16から受信光を受ける毎に、その受信光と光カプラ12から出力されたローカル光を合波することで、そのローカル光の周波数と受信光の周波数とを足し合わせた周波数を有する合波光を光検出器19に出力する。
光検出器19は、受信カプラ18から合波光を受ける毎に、その合波光を電気信号に変換し、その電気信号をRFスイッチ20に出力する。
RFスイッチ20は、上記実施の形態1と同様に、光変調ドライバ13の制御によって内部反射光の影響が大きい時間帯ではオフになっているが、内部反射光の影響が小さくなると、光変調ドライバ13の制御によってオンになり、光検出器19から出力された電気信号が信号処理装置21に入力されるようになる。
信号処理装置21のA/Dコンバータ33は、光検出器19から出力されたのち、RFスイッチ20を通過してきた電気信号が入力されると、上記実施の形態1と同様に、その電気信号をデジタル信号に変換する。
大気スペクトル積算部71は、長パルス幅射出制御部31から大気観測用パルスの出力を指示する制御信号が出力されると、図4の大気スペクトル積算部34と同様に、A/Dコンバータ33により変換されたデジタル信号を時間毎に区切り、時間毎に区切ったデジタル信号、即ち、レンジビン毎のデジタル信号をフーリエ変換することで、レンジビン毎のスペクトル信号を算出する。
また、大気スペクトル積算部71は、図4の大気スペクトル積算部34と同様に、レンジビン毎のスペクトル信号を加算するインコヒーレント積分を実施することで、受信SNRが改善されているスペクトルデータを算出する。
なお、大気スペクトル積算部71は、図4の大気スペクトル積算部34と異なり、送受光学系17−1〜17−Nのうち、いずれかの送受光学系17が大気観測用パルスの反射光を受信する毎に、レンジビン毎のスペクトル信号を算出して、スペクトルデータを算出する。
これにより、大気スペクトル保存部72には、パルスの方位角方向が異なる送受光学系17別に、大気スペクトル積算部71により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号とスペクトルデータが保存される。
風速算出部73は、大気スペクトル保存部35から各方位角方向に係るスペクトルデータをそれぞれ読み出し、各スペクトルデータのピーク値を検出して、そのピーク値をとる周波数をそれぞれドップラーシフト量fdn(n=1,・・・,N)として特定する。
風速算出部73は、各方位角方向に係るドップラーシフト量fdnを特定すると、下記の式(2)に示すように、そのドップラーシフト量fdnと大気観測用パルスの波長λから、各方位角方向に係る風速vdn(n=1,・・・,N)を算出する。
Figure 0006429723
風向算出部74は、風速算出部73が各方位角方向に係る風速vdnを算出すると、各方位角方向に係る風速vdnを、各方位角方向を示す方向ベクトルの大きさとして取り扱い、各方向ベクトルを合成する。
風向算出部74は、各方向ベクトルを合成すると、その合成ベクトルが示す方向を風向の算出結果として風車制御部75に出力する。
風車制御部75は、風速算出部73が各方位角方向に係る風速vdnを算出すると、風車1の制御に用いる風速として、風速算出部73により算出された各方位角方向に係る風速vdnの平均値あるいは中央値を算出する。
あるいは、風車1の制御に用いる風速として、風向算出部74により求められた合成ベクトルの大きさを取得する。
風車制御部75は、風車1の制御に用いる風速を特定すると、遮光状態通知部40から遮光状態信号が出力されておらず、かつ、異常通知部42から異常発生信号が出力されていなければ、その風速を用いて、風車1を制御するとともに、風向算出部74により算出された風向を用いて、風車1を制御する。
一方、遮光状態通知部40から遮光状態信号が出力された場合、あるいは、異常通知部42から異常発生信号が出力された場合、風向風速計4により計測された風速及び風向を用いて、風車1を制御する。
風向を用いる風車1の制御としては、例えば、風車1の向きを風向に合わせる制御が考えられる。
この実施の形態2では、風速算出部73により算出された風速及び風向算出部74により算出された風向、あるいは、風向風速計4により計測された風速及び風向を用いて風車1を制御する例を示しているが、風向きの急激の変化や、突風などに対処するため、風速算出部73により算出された風速の平均値及び風向算出部74により算出された風向の平均値、あるいは、風向風速計4により計測された風速及び風向の平均値を算出し、それらの平均値を用いて、風車1を制御するようにしてもよい。
以上で明らかなように、この実施の形態2によれば、風速算出部73により算出された各方位角方向に係る風速から風向を算出する風向算出部74を備え、風車制御部75が、風速算出部73により算出された風速だけではなく、風向算出部74を算出された風向を用いて、風車1を制御するように構成したので、上記実施の形態1よりも、風力発電の効率を高めることができる効果を奏する。
実施の形態3.
上記実施の形態1,2では、遮光状態通知部40から遮光状態信号が出力されていないとき、異常検知部41が、大気スペクトル保存部35に保存されているレンジビン毎のスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRと閾値ThSNR2を比較し、全てのレンジビンのスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2未満であれば、装置異常の発生を認定するものを示したが、装置異常の発生の認定精度を高めるために、風車1のブレード2の回転角度を示す角度情報を用いて、装置異常の発生を認定するようにしてもよい。
図12はこの発明の実施の形態3によるレーザレーダ装置の信号処理装置21を示す構成図であり、図12において、図11と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。また、図13はブレード角度検出装置が実装されている風車を示す説明図である。
ブレード角度検出装置5は例えばエンコーダから構成されており、風車1のブレード2の回転角度を検出し、その回転角度を示す角度情報をレーザレーダ装置3に出力する。
異常検知部80は図11の異常検知部41と同様に、全てのレンジビンのスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2未満であれば、装置異常の発生を認定する処理を実施する。
ただし、異常検知部80は図11の異常検知部41と異なり、予め、ブレード2によってパルスが遮光される回転角度の範囲を記憶しており、ブレード角度検出装置5から出力された角度情報が示す回転角度が、その記憶している回転角度の範囲内であれば、全てのレンジビンのスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2未満であっても、装置異常の発生を認定しないようにする。
図12の例では、信号処理装置21の構成要素である長パルス幅射出制御部31、短パルス幅射出制御部32、大気スペクトル積算部71、H/Tスペクトル信号算出部36、風速算出部73、風向算出部74、遮光状態検知部39、遮光状態通知部40、異常検知部80、異常通知部42及び風車制御部75のそれぞれが専用のハードウェアで構成されているものを想定している。専用のハードウェアとしては、例えば、CPUを実装している半導体集積回路や、ワンチップマイコンなどが考えられる。
ただし、信号処理装置21はコンピュータで構成されているものであってもよく、例えば、A/Dコンバータ33を除く信号処理装置21がコンピュータで構成される場合、大気スペクトル保存部72及びH/Tスペクトル保存部37を図5に示すコンピュータのメモリ51上に構成するとともに、長パルス幅射出制御部31、短パルス幅射出制御部32、大気スペクトル積算部71、H/Tスペクトル信号算出部36、風速算出部73、風向算出部74、遮光状態検知部39、遮光状態通知部40、異常検知部80、異常通知部42及び風車制御部75の処理内容を記述しているプログラムをメモリ51に格納し、コンピュータのプロセッサ52がメモリ51に格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
次に動作について説明する。
ただし、異常検知部80以外の処理内容は、上記実施の形態1,2と同様であるため、ここでは、異常検知部80の処理内容だけを説明する。
全てのレンジビンのスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2未満であれば、装置異常が発生している可能性が高いと考えられるが、この実施の形態3では、さらに、装置異常の発生の認定精度を高めるために、風車1のブレード2の回転角度を示す角度情報を用いて、装置異常の発生を認定する。具体的には、以下の通りである。
異常検知部80は、ブレード2とレーザレーダ装置3の物理的な位置関係から、パルスが遮光されるブレード2の角度範囲θsmall〜θlargeを事前に特定して、パルスが遮光されるブレード2の角度範囲θsmall〜θlargeを記憶する。
異常検知部80は、ブレード角度検出装置5が風車1のブレード2の回転角度θを検出すると、ブレード角度検出装置5からブレード2の回転角度θを示す角度情報を収集する。
そして、異常検知部80は、下記の式(3)に示すように、その角度情報が示す回転角度θが、事前に記憶しているブレード2の角度範囲θsmall〜θlarge内であるか否かを判定する。
θsmall≦θ≦θlarge (3)
異常検知部80は、全てのレンジビンのスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2未満であるとき、角度情報が示す回転角度θが、ブレード2の角度範囲θsmall〜θlargeの範囲外であれば(式(3)が成立しない場合)、ブレード2によってパルスが遮光されている可能性がないため、装置異常の発生を認定する。
一方、全てのレンジビンのスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2未満であるとき、角度情報が示す回転角度θが、ブレード2の角度範囲θsmall〜θlargeの範囲内であれば(式(3)が成立する場合)、ブレード2によってパルスが遮光されているために受信SNRが低下している可能性が高いため、装置異常の発生を認定しないようにする。
風車制御部75は、ブレード2の回転角度θが角度範囲θsmall〜θlargeの範囲内であるため、異常検知部80が、装置異常の発生を認定していない場合、ブレード2がずれるように風車1を制御して、ブレード2によってパルスが遮光されないようにする。
異常検知部80は、ブレード2がずれても、全てのレンジビンのスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2未満である状態が継続している場合、ブレード2によってパルスが遮光されている可能性がないため、装置異常の発生を認定する。
以上で明らかなように、この実施の形態3によれば、異常検知部80が、予めパルスが遮光されるブレード2の角度範囲θsmall〜θlargeを記憶しており、ブレード角度検出装置5から出力された角度情報が示す回転角度θが、その記憶しているブレード2の角度範囲θsmall〜θlarge内であれば、全てのレンジビンのスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2未満であっても、装置異常の発生を認定しないように構成したので、装置異常の発生の認定精度を高めることができる効果を奏する。
実施の形態4.
上記実施の形態1,2では、遮光状態通知部40から遮光状態信号が出力されていないとき、異常検知部41が、大気スペクトル保存部35に保存されているレンジビン毎のスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRと閾値ThSNR2を比較し、全てのレンジビンのスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2未満であれば、装置異常の発生を認定するものを示したが、装置異常の発生の認定精度を高めるために、送受光学系17の集光距離を近距離側に変更しても、全てのレンジビンのスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2未満である場合に限り、装置異常の発生を認定するようにしてもよい。
図14はこの発明の実施の形態4によるレーザレーダ装置を示す構成図であり、図14において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
集光距離変更部81は送受光学系17の集光距離を変更する装置である。例えば、送受光学系17内のレンズの位置を変えることで、送受光学系17の集光距離を変更することができる。
図14では、図1のレーザレーダ装置における送受光学系17に対して集光距離変更部81を適用する例を示しているが、図10のレーザレーダ装置における送受光学系17−1〜17−Nに対して集光距離変更部81を適用するようにしてもよい。
図15はこの発明の実施の形態4によるレーザレーダ装置の信号処理装置21を示す構成図であり、図15において、図11と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
異常検知部82は図11の異常検知部41と同様に、装置異常の発生を認定したのち、集光距離変更部81により送受光学系17の集光距離が近距離側に変更されても、全てのレンジビンのスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2未満であれば、装置異常の発生を最終的に認定するが、送受光学系17の集光距離が近距離側に変更されることで、いずれかのレンジビンのスペクトル信号における周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2以上になれば、装置異常の発生を認定しないようにする。
図15の例では、信号処理装置21の構成要素である長パルス幅射出制御部31、短パルス幅射出制御部32、大気スペクトル積算部71、H/Tスペクトル信号算出部36、風速算出部73、風向算出部74、遮光状態検知部39、遮光状態通知部40、異常検知部82、異常通知部42及び風車制御部75のそれぞれが専用のハードウェアで構成されているものを想定している。専用のハードウェアとしては、例えば、CPUを実装している半導体集積回路や、ワンチップマイコンなどが考えられる。
ただし、信号処理装置21はコンピュータで構成されているものであってもよく、例えば、A/Dコンバータ33を除く信号処理装置21がコンピュータで構成される場合、大気スペクトル保存部72及びH/Tスペクトル保存部37を図5に示すコンピュータのメモリ51上に構成するとともに、長パルス幅射出制御部31、短パルス幅射出制御部32、大気スペクトル積算部71、H/Tスペクトル信号算出部36、風速算出部73、風向算出部74、遮光状態検知部39、遮光状態通知部40、異常検知部82、異常通知部42及び風車制御部75の処理内容を記述しているプログラムをメモリ51に格納し、コンピュータのプロセッサ52がメモリ51に格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
ただし、集光距離変更部81及び異常検知部82以外の処理内容は、上記実施の形態1,2と同様であるため、ここでは、集光距離変更部81及び異常検知部82の処理内容だけを説明する。
全てのレンジビンのスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2未満であれば、装置異常が発生している可能性が高いと考えられるが、送受光学系17の集光距離を近距離側に変更すれば、ブレード2が存在しているレンジビン付近の観測精度を高めることができる。即ち、装置異常の発生の認定精度を高めることができる。
この実施の形態4では、ブレード2が存在しているレンジビン付近の観測精度を高めた上で、装置異常の発生を再度判定することにより、装置異常の発生の認定精度を高めるようにする。具体的には、以下の通りである。
異常検知部82は、図11の異常検知部41と同様にして、装置異常の発生を認定すると、装置異常の発生を最終的に認定する前に、送受光学系17の集光距離を近距離側に変更する指令を集光距離変更部81に出力する。通常は、大気の観測精度を高めるため、送受光学系17の集光距離は遠距離側に設定されている。
集光距離変更部81は、異常検知部82から集光距離を近距離側に変更する指令を受けると、例えば、送受光学系17内のレンズの位置を変えることで、送受光学系17の集光距離を近距離側に変更する。
ここでは、送受光学系17の集光距離をどの程度変更するかは、予め設定されているものとする。
異常検知部82は、集光距離変更部81によって送受光学系17の集光距離が近距離側に変更された後に、送受光学系17により大気観測用パルスの反射光が受信されて、大気スペクトル積算部71により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号を取得する。
異常検知部82は、レンジビン毎のスペクトル信号を取得すると、レンジビン毎のスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRを算出して、各周波数成分の受信SNRと閾値ThSNR2を比較し、その閾値ThSNR2以上の周波数成分が存在しているか否かを判定する。
異常検知部82は、全てのレンジビンのスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2未満であれば、装置異常の発生を最終的に認定する。
一方、いずれかのレンジビンのスペクトル信号における周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2以上になれば、装置異常の発生を認定しないようにする。
以上で明らかなように、この実施の形態4によれば、集光距離変更部81により送受光学系17の集光距離が近距離側に変更されても、全てのレンジビンのスペクトル信号における各周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2未満であれば、装置異常の発生を最終的に認定するが、送受光学系17の集光距離が近距離側に変更されることで、いずれかのレンジビンのスペクトル信号における周波数成分の受信SNRが閾値ThSNR2以上になれば、装置異常の発生を認定しないように構成したので、装置異常の発生の認定精度を高めることができる効果を奏する。
実施の形態5.
上記実施の形態1〜4では、光変調ドライバ13が、信号処理装置21から大気観測用パルスの出力を指示する制御信号を受けると、大気観測用パルスが得られるように光変調部14のパルス変調を制御するとともに、光アンプ15の増幅率及びRFスイッチ20のオンオフを制御し、信号処理装置21からブレード検出用パルスの出力を指示する制御信号を受けると、ブレード検出用パルスが得られるように光変調部14のパルス変調を制御するとともに、光アンプ15の増幅率及びRFスイッチ20のオンオフを制御するものを示している。
しかし、光変調ドライバ13が、光変調部14、光アンプ15及びRFスイッチ20を制御するための電気信号を生成するには、ある程度の時間を要する。
この実施の形態5では、信号処理装置21から制御信号を受ける毎に、光変調部14、光アンプ15及びRFスイッチ20を制御するための電気信号を生成する手間を省いて、処理の高速化を図ることができるものについて説明する。
図16はこの発明の実施の形態5によるレーザレーダ装置を示す構成図であり、図16において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
大気観測用電気信号格納部91は例えばRAMやハードディスクなどの記憶装置から構成されており、大気観測用パルスを放射する際に、光変調部14、光アンプ15及びRFスイッチ20を制御するための電気信号として、事前に大気観測用電気信号を格納している。
ブレード検出用電気信号格納部92は例えばRAMやハードディスクなどの記憶装置から構成されており、ブレード検出用パルスを放射する際に、光変調部14、光アンプ15及びRFスイッチ20を制御するための電気信号として、事前にブレード検出用電気信号を格納している。
選択スイッチ93は信号処理装置21から大気観測用パルスの出力を指示する制御信号を受けると、大気観測用電気信号格納部91に格納されている大気観測用電気信号を読み出して、その大気観測用電気信号を光変調部14、光アンプ15及びRFスイッチ20に出力し、信号処理装置21からブレード検出用パルスの出力を指示する制御信号を受けると、ブレード検出用電気信号格納部92からブレード検出用電気信号を読み出して、そのブレード検出用電気信号を光変調部14、光アンプ15及びRFスイッチ20に出力する。
次に動作について説明する。
光変調ドライバ13の代わりに、大気観測用電気信号格納部91、ブレード検出用電気信号格納部92及び選択スイッチ93が設けられている点以外は、上記実施の形態1〜4と同様である。
大気観測用電気信号格納部91には、大気観測用パルスを放射する際に、光変調部14、光アンプ15及びRFスイッチ20を制御するための電気信号として、事前に大気観測用電気信号が格納されている。
ブレード検出用電気信号格納部92には、ブレード検出用パルスを放射する際に、光変調部14、光アンプ15及びRFスイッチ20を制御するための電気信号として、事前にブレード検出用電気信号を格納している。
選択スイッチ93は、信号処理装置21から大気観測用パルスの出力を指示する制御信号を受けると、大気観測用電気信号格納部91に格納されている大気観測用電気信号を読み出して、その大気観測用電気信号を光変調部14、光アンプ15及びRFスイッチ20に出力する。
これにより、光変調部14、光アンプ15及びRFスイッチ20が上記実施の形態1〜4と同様に動作し、大気観測用パルスが放射されたのち、大気観測用パルスの反射波が受信されて、大気の観測が行われる。
選択スイッチ93は、信号処理装置21からブレード検出用パルスの出力を指示する制御信号を受けると、ブレード検出用電気信号格納部92からブレード検出用電気信号を読み出して、そのブレード検出用電気信号を光変調部14、光アンプ15及びRFスイッチ20に出力する。
これにより、光変調部14、光アンプ15及びRFスイッチ20が上記実施の形態1〜4と同様に動作し、ブレード検出用パルスが放射されたのち、ブレード検出用パルスの反射波が受信されて、パルスの遮光状態の検出が可能になる。
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
1 風車、2 ブレード、3 レーザレーダ装置、4 風向風速計、5 ブレード角度検出装置、11 光発振部、12 光カプラ、13 光変調ドライバ、14 光変調部、15 光アンプ、16 サーキュレータ、17,17−1〜17−N 送受光学系、18 受信カプラ、19 光検出器、20 RFスイッチ、21 信号処理装置、22 光スイッチ、31 長パルス幅射出制御部、32 短パルス幅射出制御部、33 A/Dコンバータ、34 大気スペクトル積算部(第1のスペクトル積算部)、35 大気スペクトル保存部(スペクトル積算部)、36 H/Tスペクトル信号算出部(スペクトル信号算出部)、37 H/Tスペクトル保存部(スペクトル信号算出部)、38 風速算出部、39 遮光状態検知部、40 遮光状態通知部、41 異常検知部、42 異常通知部、43 風車制御部、51 メモリ、52 プロセッサ、61 直線位相変調信号発生部、62 光位相変調部、63 パルス信号発生部、64 光強度変調部、71 大気スペクトル積算部(スペクトル積算部)、72 大気スペクトル保存部(スペクトル積算部)、73 風速算出部、74 風向算出部、75 風車制御部、80 異常検知部、81 集光距離変更部、82 異常検知部、91 大気観測用電気信号格納部、92 ブレード検出用電気信号格納部、93 選択スイッチ。

Claims (7)

  1. レーザ光をパルス変調して第1のパルスを生成するとともに、前記第1のパルスよりパルス幅が狭い第2のパルスを生成する光変調部と、
    風車のブレードの後方に設置され、前記第1及び第2のパルスを大気に放射したのち、観測対象又は前記ブレードに反射されて戻ってきた前記パルスの反射光を受信する送受光学系と、
    前記送受光学系により受信された第1のパルスの反射光から、レンジビン毎のスペクトル信号を算出して、前記レンジビン毎のスペクトル信号を積算するスペクトル積算部と、
    前記送受光学系により受信された第2のパルスの反射光から、レンジビン毎のスペクトル信号を算出するスペクトル信号算出部と、
    前記スペクトル積算部により積算されたスペクトル信号から前記観測対象の速度である風速を算出する風速算出部と、
    前記スペクトル信号算出部により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号のうち、前記ブレードが存在しているレンジビン内のスペクトル信号における各周波数成分の中に、信号対雑音比が第1の閾値以上の周波数成分が存在していれば、前記ブレードによってパルスが遮光されている状態であることを認定する遮光状態検知部と
    前記遮光状態検知部によりパルスの遮光状態が認定されていない場合、前記風速算出部により算出された風速を用いて、前記風車を制御する風車制御部と
    を備えたことを特徴とするレーザレーダ装置。
  2. パルスの放射方向が異なる前記送受光学系を複数設置し、
    前記スペクトル積算部は、各々の送受光学系が前記第1のパルスの反射光を受信する毎に、前記第1のパルスの反射光から、レンジビン毎のスペクトル信号を算出して、前記レンジビン毎のスペクトル信号を積算し、
    前記風速算出部は、各々の送受光学系が前記第1のパルスの反射光を受信する毎に、前記スペクトル積算部により積算されたスペクトル信号から前記観測対象の速度である風速を算出し、
    各々の送受光学系が前記第1のパルスの反射光を受信する毎に、前記風速算出部により算出された風速から風向を算出する風向算出部を備え、
    前記風車制御部は、前記遮光状態検知部によりパルスの遮光状態が認定されていない場合、前記風向算出部により算出された風向を用いて、前記風車を制御することを特徴とする請求項記載のレーザレーダ装置。
  3. 前記風車制御部は、前記遮光状態検知部によりパルスの遮光状態が認定されている場合、前記風車に取り付けられている風向風速計の計測値を用いて、前記風車を制御することを特徴とする請求項または請求項記載のレーザレーダ装置。
  4. 前記遮光状態検知部によりパルスの遮光状態が認定されていないとき、前記スペクトル積算部により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号における各周波数成分の中に、信号対雑音比が第2の閾値以上の周波数成分が存在していなければ、装置異常の発生を認定する異常検知部を備え、
    前記風車制御部は、前記異常検知部により装置異常の発生が認定された場合、前記遮光状態検知部によりパルスの遮光状態が認定されていない場合でも、前記風向風速計の計測値を用いて、前記風車を制御することを特徴とする請求項記載のレーザレーダ装置。
  5. 前記異常検知部は、前記風車のブレードの回転角度を示す角度情報を収集し、前記角度情報が示す回転角度が、前記ブレードによってパルスが遮光される回転角度の範囲内であれば、前記スペクトル積算部により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号における各周波数成分の中に、信号対雑音比が前記第2の閾値以上の周波数成分が存在していなくても、装置異常の発生を認定しないことを特徴とする請求項記載のレーザレーダ装置。
  6. 前記送受光学系の集光距離を変更する集光距離変更部を備え、
    前記異常検知部は、前記集光距離変更部により前記送受光学系の集光距離が近距離側に変更されても、前記スペクトル積算部により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号における各周波数成分の中に、信号対雑音比が前記第2の閾値以上の周波数成分が存在していなければ、装置異常の発生を認定し、前記送受光学系の集光距離が近距離側に変更されることで、前記スペクトル積算部により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号における各周波数成分の中に、信号対雑音比が前記第2の閾値以上の周波数成分が存在していれば、装置異常の発生を認定しないことを特徴とする請求項記載のレーザレーダ装置。
  7. 光変調部が、レーザ光をパルス変調して第1のパルスを生成するとともに、前記第1のパルスよりパルス幅が狭い第2のパルスを生成し、
    風車のブレードの後方に設置されている送受光学系が、前記第1及び第2のパルスを大気に放射したのち、観測対象又は前記ブレードに反射されて戻ってきた前記パルスの反射光を受信し、
    スペクトル積算部が、前記送受光学系により受信された第1のパルスの反射光から、レンジビン毎のスペクトル信号を算出して、前記レンジビン毎のスペクトル信号を積算し、
    スペクトル信号算出部が、前記送受光学系により受信された第2のパルスの反射光から、レンジビン毎のスペクトル信号を算出し、
    風速算出部が、前記スペクトル積算部により積算されたスペクトル信号から前記観測対象の速度である風速を算出し、
    遮光状態検知部が、前記スペクトル信号算出部により算出されたレンジビン毎のスペクトル信号のうち、前記ブレードが存在しているレンジビン内のスペクトル信号における各周波数成分の中に、信号対雑音比が第1の閾値以上の周波数成分が存在していれば、前記ブレードによってパルスが遮光されている状態であることを認定し、
    風車制御部が、前記遮光状態検知部によりパルスの遮光状態が認定されていない場合、前記風速算出部により算出された風速を用いて、前記風車を制御することを特徴とする
    観測方法。
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