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JP6413208B2 - 有機太陽電池の製造方法 - Google Patents

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JP6413208B2 JP2013136664A JP2013136664A JP6413208B2 JP 6413208 B2 JP6413208 B2 JP 6413208B2 JP 2013136664 A JP2013136664 A JP 2013136664A JP 2013136664 A JP2013136664 A JP 2013136664A JP 6413208 B2 JP6413208 B2 JP 6413208B2
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Description

本発明は、有機太陽電池に関するものである。
有機太陽電池は、塗布印刷技術およびロールtoロール製造プロセスによる、安価でフレキシブルな製品が期待されている一方で、従来のシリコン等の無機デバイスと比較して、耐久性に劣るという問題があった。具体的には、熱による劣化、水分や酸素等のガスによる劣化、デバイスの有機膜の強度不足による機械的な劣化、等が挙げられる。
このような問題を解決する方法として、例えば特許文献1では、有機太陽電池上にバリアフィルムを貼合することにより封止する方法が提案されている。また例えば、特許文献2では、有機デバイス上にプラズマCVDやスパッタ方式での直接製膜によるバリア層を設けることによって封止する方法が提案されている。
特開2012−080060号公報 特開2011−231357号公報
前記充分な封止性能を得るためには厚いフィルム部材を使用しなければならず、可とう性が損なわれる。本発明者らは、有機太陽電池上へのバリア層の直接製膜を、高い生産性で実施する方法を検討した。バリア層の封止性能を高めるためには緻密な膜質を得る必要がある一方で、バリア層が製膜される有機太陽電池へのダメージを防ぐ必要がある。これらの要求を満たすためにはバリア層の製膜速度を極めて低くする必要がある。また、有機太陽電池に固有の表面粗さや段差をカバーするためにバリア層厚を極めて厚くしなければならないという問題もある。しかし、そうすると生産速度が低くなり生産性が悪化するため、工業的な生産が困難となる。さらには、バリア層を緻密かつ厚くすると、その応力によって有機太陽電池が破壊される、バリア層と有機太陽電池との界面が剥離する、あるいはバリア層自体が屈曲変形によって割れやすくなるという品質上の問題も生じる。
更に、有機太陽電池に直接製膜によるバリア層を形成しても、光により光電変換性能が顕著に低下することを見出した。光に対する有機太陽電池の劣化には様々な要因が複雑に関係しており、そのメカニズムは未だ明らかになっていない。
本発明は、このような問題を解決するものであり、安価かつ耐久性に優れた有機太陽電池を提供することを課題とする。
本発明者らは、有機太陽電池素子をバリア層で封止する際に、有機太陽電池素子固有の問題があることを見出した。すなわち、シリコン等の無機デバイスと比較した場合の物理的な膜強度の低さを補うこと、および、有機太陽電池素子表面に塗布印刷等の有機膜の形成に起因する段差形状を回避することが有機太陽電池の耐久性を確保するために重要であることを見出した。
そこで、本発明者らは、基材上に少なくとも一対の電極と、該電極間に存在する活性層とを有する有機太陽電池素子と、該有機太陽電池素子上に積層されるバリア層とを有する
有機太陽電池において、該有機太陽電池素子と該バリア層との間にアンダーコート層を積層することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。本発明の概要は以下のとおりである。
本発明は、基材上に少なくとも一対の電極と、該電極間に存在する活性層とを有する有機太陽電池素子と、該有機太陽電池素子上に積層されるバリア層とを有する有機太陽電池において、該有機太陽電池素子と該バリア層との間にアンダーコート層が積層されていることを特徴とする、有機太陽電池である。
前記バリア層にさらにオーバーコート層が積層されていることが好ましく、さらにフィルム状部材が接着層を介して積層されていることが好ましい。
また、アンダーコート層の厚みが0.1〜20μmであることが好ましい。
また、アンダーコート層の23℃における弾性率が20GPa以下であり、かつオーバーコート層の23℃における弾性率が100MPa以上であり、さらにアンダーコート層の該弾性率がオーバーコート層の該弾性率の1/10以上2倍以下であることが好ましい。
また、アンダーコート層の材料が、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂から選択される一種以上を含み、かつオーバーコート層の材料が、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂から選択される一種以上を含むことが好ましい。
また、バリア層が、真空蒸着、化学蒸着(CVD)、およびスパッタリングのいずれか又はこれらの組み合わせによる真空製膜方式で形成され、かつ、アンダーコート層及び/又はオーバーコート層が大気圧下のウェット塗布方式で形成されることが好ましい。
また、基材が樹脂フィルムであることが好ましい。また、有機太陽電池を含む有機太陽電池モジュールとして用いることが好ましい。
本発明によれば、安価かつ耐久性に優れた有機太陽電池を得ることができる。
アンダーコート層を設けることで、バリア層を製膜する面の平坦性が向上し、薄いバリア層でも高い封止性能を発揮することができ、生産速度を向上させることができる。また、バリア層の下地としてアンダーコート層を用いることで、バリア層の緻密性が向上し、高い封止性能を発揮することができる。さらには、アンダーコート層を用いることで、バリア層との密着性が高くなり界面剥離を抑えることができる。加えて、アンダーコート層の適度な弾性率により、アンダーコート層がバリア層と有機太陽電池との間で応力緩和層として働き、有機太陽電池の破壊を防ぎ、有機太陽電池の耐久性を向上させる。また、フレキシブル性の向上も期待される。
有機太陽電池素子の一態様を示す概念図である。 本発明の有機太陽電池の一態様について示した概念図である。 本発明の有機太陽電池の一態様について示した概念図である。 本発明の有機太陽電池の一態様について示した概念図である。 本発明の有機太陽電池の一態様としての有機薄膜太陽電池モジュールの構成を模式的に示す図である。 本発明の有機太陽電池の一態様として、有機太陽電池を用いた太陽電池パネルの構成を示す概念図である。
本発明について、以下に具体的に説明する。
本発明は、基材上に少なくとも一対の電極と、該電極間に存在する活性層とを有する有機太陽電池素子と、該有機太陽電池素子上に積層されるバリア層とを有する有機太陽電池において、該有機太陽電池素子と該バリア層との間にアンダーコート層が積層されていることを特徴とする。
<有機太陽電池>
以下、本発明の有機太陽電池を説明する。
有機太陽電池は、基材上に少なくとも一対の電極と、該電極間に存在する活性層と、を有する有機太陽電池素子を有する。本発明の有機太陽電池には、有機太陽電池素子の電極及び活性層を積層した面に、アンダーコート層およびバリア層が積層される。
<1.有機太陽電池素子>
有機太陽電池素子は、基材上に少なくとも一対の電極と、該電極間に存在する活性層と、を有する。図1は、有機太陽電池素子の一態様を示す。図1に示される有機太陽電池素子は、一般的な有機太陽電池に用いられる有機太陽電池素子であるが、本発明に係る有機太陽電池素子が図1に示されるものに限られるわけではない。本発明の一実施形態としての有機太陽電池素子107は、基材106、カソード101、電子取り出し層102、活性層103(p型半導体化合物とn型半導体材料とを含む層)、正孔取り出し層104、アノード105が順次形成された層構造を有する。
[1−1.バッファ層(102,104)]
有機太陽電池素子107は、カソード101と活性層103との間に電子取り出し層102を有する。また有機太陽電池素子107は、活性層103とアノード105との間に正孔取り出し層104を有する。なお、本発明に係る有機太陽電池素子において電子取り出し層102および正孔取り出し層104は必須ではなく、任意に設けることができる層である。
電子取り出し層102と正孔取り出し層104とは、一対の電極(101,105)間に、活性層103を挟むように配置されることが好ましい。すなわち、有機太陽電池素子107が電子取り出し層102と正孔取り出し層104の両者を含む場合、電極105、正孔取り出し層104、活性層103、電子取り出し層102、及び電極101をこの順に配置することができる。有機太陽電池素子107が電子取り出し層102を含み正孔取り出し層104を含まない場合は、電極105、活性層103、電子取り出し層102、及び電極101をこの順に配置することができる。電子取り出し層102と正孔取り出し層104とは積層順序が逆であってもよいし、また電子取り出し層102と正孔取り出し層104の少なくとも一方が異なる複数の層により構成されていてもよい。
[1−1−1.電子取り出し層(102)]
電子取り出し層102の材料は、活性層103から電極101へ電子の取り出し効率を向上させる材料であれば特段の制限はないが、無機化合物又は有機化合物が挙げられる。
無機化合物の材料の例としては、Li、Na、K又はCs等のアルカリ金属の塩;酸化チタン(TiOx)や酸化亜鉛(ZnO)のようなn型半導体酸化物等が挙げられる。なかでも、アルカリ金属の塩としては、LiF、NaF、KF又はCsFのようなフッ化物塩が好ましく、n型半導体酸化物としては、酸化亜鉛(ZnO)が好ましい。このような材料の動作機構は不明であるが、Al等で構成されるカソード101と組み合わされれた
際にカソード101の仕事関数を小さくし、有機太陽電池素子内部に印加される電圧を上げる事が考えられる。
有機化合物の材料の例としては、例えば、トリアリールホスフィンオキシド化合物のようなリン原子と第16族元素との二重結合を有するホスフィン化合物;バソキュプロイン(BCP)又はバソフェナントレン(Bphen)のような、置換基を有してもよく、1位及び10位がヘテロ原子で置き換えられていてもよいフェナントレン化合物;トリアリールホウ素のようなホウ素化合物;(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)のような有機金属酸化物;オキサジアゾール化合物又はベンゾイミダゾール化合物のような、置換基を有していてもよい1又は2の環構造を有する化合物;ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)又はペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)のような、ジカルボン酸無水物のような縮合ジカルボン酸構造を有する芳香族化合物等が挙げられる。
電子取り出し層102の材料のLUMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−4.0eV以上、好ましくは−3.9eV以上である。一方、通常−1.9eV以下、好ましくは−2.0eV以下である。電子取り出し層102の材料のLUMOエネルギー準位が−1.9eV以下であることは、電荷移動が促進されうる点で好ましい。電子取り出し層102の材料のLUMOエネルギー準位が−4.0eV以上であることは、n型半導体材料への逆電子移動が防がれうる点で好ましい。
電子取り出し層102の材料のHOMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−9.0eV以上、好ましくは−8.0eV以上である。一方、通常−5.0eV以下、好ましくは−5.5eV以下である。電子取り出し層102の材料のHOMOエネルギー準位が−5.0eV以下であることは、正孔が移動してくることを阻止しうる点で好ましい。
電子取り出し層102の材料のLUMOエネルギー準位及びHOMOエネルギー準位の算出方法としては、サイクリックボルタモグラム測定法が挙げられる。例えば、公知文献(国際公開第2011/016430号)に記載の方法を参考にして実施することができる。
電子取り出し層102の材料が有機化合物である場合、DSC法により測定した場合のこの化合物のガラス転移温度(以下、Tgと記載する場合もある)は、特段の制限はないが、観測されないか、又は55℃以上であることが好ましい。DSC法によりガラス転移温度が観測されないとは、ガラス転移温度がないことを意味する。具体的には400℃以下のガラス転移温度の有無により判別する。DSC法によるガラス転移温度が観測されない材料は、熱的に高い安定性を有している点で好ましい。
また、DSC法により測定した場合のガラス転移温度が55℃以上である化合物の中でも、ガラス転移温度が、好ましくは65℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上である化合物が望ましい。一方、ガラス転移温度の上限は特に限定はないが、通常400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下である。また、電子取り出し層104の材料は、DSC法によるガラス転移温度が30℃以上55℃未満に観測されないものであることが好ましい。
本明細書におけるガラス転移温度とは、アモルファス状態の固体において、熱エネルギーにより局所的な分子運動が開始される温度とされており、比熱が変化する点として定義される。Tgよりさらに温度が上がると、固体構造が変化して結晶化が起こる(この時の温度を結晶化温度(Tc)とする)。さらに温度が上がると、融点(Tm)で融解し液体
状態に変化することが一般的である。但し、高温で分子が分解したり、昇華したりして、これらの相転移が見られないこともある。
DSC法とは、JIS K−0129"熱分析通則"に定義された熱物性の測定法(示差走査熱量測定法)である。ガラス転移温度をより明確に決める為には、一度ガラス転移点以上の温度に加熱したサンプルを急冷した後に測定することが望ましい。例えば、公知文献(国際公開第2011/016430号)に記載の方法により、測定を実施することができる。
電子取り出し層に用いられる化合物のガラス転移温度が55℃以上である場合、この化合物は、印加される電場、流れる電流、曲げや温度変化による応力等の外部ストレスに対して構造が変化しにくいため、耐久性の面で好ましい。さらに、化合物の薄膜の結晶化が進みにくい傾向も有すことから、使用温度範囲においてこの化合物がアモルファス状態と結晶状態との間で変化しにくくなることにより、電子取り出し層としての安定性が良くなるため、耐久性の面で好ましい。この効果は、材料のガラス転移温度が高ければ高いほど、より顕著に表れる。
電子取り出し層102の膜厚は特に限定はないが、通常0.01nm以上、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.5nm以上である。一方、通常400nm以下、好ましくは200nm以下である。電子取り出し層102の膜厚が上記下限以上であることでバッファ材料としての機能を果たすことになり、電子取り出し層102の膜厚が上記上限以下であることで、電子が取り出しやすくなり、光電変換効率が向上しうる。
アルカリ金属塩を電子取り出し層102の材料として用いる場合、真空蒸着、スパッタ等の真空成膜方法を用いて電子取り出し層102を成膜することが可能である。なかでも、抵抗加熱による真空蒸着によって、電子取り出し層102を形成するのが望ましい。真空蒸着を用いることにより、活性層103等の他の層へのダメージを小さくすることができる。n型半導体の金属酸化物については、例えば、酸化亜鉛ZnOを電子取り出し層102の材料として用いる場合には、スパッタ法等の真空成膜方法を用いることもできるが、塗布法を用いて電子取り出し層102を成膜することが望ましい。例えば、Sol−Gel Science、C.J.Brinker,G.W.Scherer著、Academic Press(1990)に記載のゾルゲル法に従って、酸化亜鉛で構成される電子取り出し層102を形成できる。膜厚は、通常0.1nm以上、好ましくは2nm以上、より好ましくは5nm以上であり、通常1μm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である。電子取り出し層102が薄すぎると、電子の取り出し効率を向上させる効果が十分でなくなり、厚すぎると、電子取り出し層102が直列抵抗成分として作用することにより素子の特性を損なう傾向がある。電子取り出し層102の材料が有機化合物である場合、一般的に、昇華性を有する材料を用いる場合には真空蒸着法等の真空成膜方法等を用いることができる。また、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、スピンコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、スリットダイコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法、フレキソ印刷、インクジェット法等の湿式塗布法等を用いることができる。
塗布法により電子取り出し層102を形成する場合は、塗布液にさらに界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤の使用により、微小な泡若しくは異物等の付着による凹み及び/又は乾燥工程での塗布むら等の発生が抑制される。界面活性剤としては、公知の界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤)を用いることができる。なかでも、ケイ素系界面活性剤、アセチレンジオール系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤が好ましい。なお、界面活性剤としては1種のみを用いてもよく、2
種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[1−1−2.正孔取り出し層(104)]
正孔取り出し層104の材料に特に限定は無く、活性層103からアノード105への正孔の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。具体的には、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン又はポリアニリン等に、スルホン酸及び/又はヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基に有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物、酸化銅、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム又は酸化タングステン等の金属酸化物、ナフィオン、後述のp型半導体等が挙げられる。その中でも好ましくは、スルホン酸をドーピングした導電性ポリマーであり、より好ましくは、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングした(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)である。また、金、インジウム、銀又はパラジウム等の金属等の薄膜も使用することができる。金属等の薄膜は、単独で形成してもよいし、上記の有機材料と組み合わせて用いることもできる。
正孔取り出し層104の膜厚は特に限定はないが、通常0.2nm以上である。一方、通常400nm以下、好ましくは200nm以下である。正孔取り出し層104の膜厚が上記下限以上であることでバッファ材料としての機能を果たすことになり、正孔取り出し層104の膜厚が上記上限以下であることで、正孔が取り出し易くなり、光電変換効率が向上しうる。
正孔取り出し層104の形成方法に制限はない。例えば、昇華性を有する材料を用いる場合は真空蒸着法等により形成することができる。また、例えば、溶媒に可溶な材料を用いる場合は、スピンコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、スリットダイコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法、フレキソ印刷、インクジェット法等の湿式塗布法等により形成することができる。正孔取り出し層104に半導体材料を用いる場合は、後述の有機活性層の低分子有機半導体化合物と同様に、前駆体を用いて層を形成した後に前駆体を半導体化合物に変換してもよい。
なかでも、正孔取り出し層104の材料としてPEDOT:PSSを用いる場合、分散液を塗布する方法によって正孔取り出し層104を形成することが好ましい。PEDOT:PSSの分散液としては、ヘレウス社製のCLEVIOSTMシリーズや、アグファ社製のORGACONTMシリーズ等が挙げられる。
塗布法により正孔取り出し層104を形成する場合は、塗布液にさらに界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤の使用により、微小な泡若しくは異物等の付着による凹み及び/又は乾燥工程での塗布むら等の発生が抑制される。界面活性剤としては、公知の界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤)を用いることができる。なかでも、ケイ素系界面活性剤、アセチレンジオール系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤が好ましい。なお、界面活性剤としては1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[1−2.活性層(103)]
活性層103は光電変換が行われる層を指し、通常、p型半導体化合物とn型半導体化合物をと含む。p型半導体化合物とは、p型半導体材料として働く化合物であり、n型半導体化合物とは、n型半導体材料として働く化合物である。有機太陽電池素子107が光を受けると、光が活性層103に吸収され、p型半導体化合物とn型半導体化合物との界
面で電気が発生し、発生した電気が電極101,105から取り出される。
活性層103の材料としては無機化合物と有機化合物とのいずれを用いてもよいが、簡易な塗布プロセスにより形成しうる層であることが好ましい。より好ましくは、活性層103は有機化合物からなる有機活性層である。以下では、活性層103が有機活性層であるものとして説明する。
活性層103の層構成としては、p型半導体化合物層とn型半導体化合物層とが積層された薄膜積層型、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層を有するバルクヘテロ接合型、p型半導体化合物層と、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層(i層)と、n型半導体化合物層とが積層されたもの、等が挙げられる。なかでも、p型半導体化合物とn型半導体化合物が混合した層を有するバルクヘテロ接合型が好ましい。
活性層103の膜厚は特に限定されないが、通常10nm以上、好ましくは50nm以上であり、一方通常1000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下である。活性層103の膜厚が上記下限以上であることは、膜の均一性が保たれ、短絡を起こしにくくなるため、好ましい。また、活性層103の厚さが上記上限以下であることは、内部抵抗が小さくなる点、及び電極101,105間が離れすぎず電荷の拡散が良好となる点で、好ましい。
活性層103の作成方法としては、特段に制限はないが、塗布法が好ましい。塗布法としては、任意の方法を用いることができるが、例えば、スピンコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、スリットダイコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法、フレキソ印刷、インクジェット法等が挙げられる。
例えば、p型半導体化合物層及びn型半導体化合物層は、p型半導体化合物又はn型半導体化合物を含む塗布液を塗布することにより作製しうる。また、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層は、p型半導体化合物及びn型半導体化合物を含む塗布液を塗布することにより作製しうる。後述するように、半導体化合物前駆体を含む塗布液を塗布した後で、半導体化合物前駆体を半導体化合物へと変換してもよい。
[1−2−1.p型半導体化合物]
活性層103が含むp型半導体化合物としては、特に限定はないが、低分子有機半導体化合物と高分子有機半導体化合物とが挙げられる。
[1−2−1−1.低分子有機半導体化合物]
低分子有機半導体化合物の分子量は、上限、下限ともに特に制限されないが、通常5000以下、好ましくは2000以下であり、一方、通常100以上、好ましくは200以上である。
また、低分子有機半導体化合物は結晶性を有することが好ましい。結晶性を有するp型半導体化合物は分子間相互作用が強く、活性層103においてp型半導体化合物とn型半導体化合物との界面で生成した正孔(ホール)を効率よくアノード105へ輸送しうる。本明細書において結晶性とは、分子間相互作用等によって配向の揃った3次元周期配列をとる、化合物の性質である。結晶性の測定方法としては、X線回折法(XRD)又は電界効果移動度測定法等が挙げられる。特に電界効果移動度測定において、正孔移動度が1.0×10-5cm2/Vs以上であることが好ましく、1.0×10-4cm2/Vs以上であ
ることがより好ましい。一方、正孔移動度が通常1.0×104cm2/Vs以下であることが好ましく、1.0×103cm2/Vs以下であることがより好ましく、1.0×102cm2/Vs以下であることさらに好ましい。
低分子有機半導体化合物としては、p型半導体材料として働きうるのであれば特段の制限はないが、具体的には、ナフタセン、ペンタセン又はピレン等の縮合芳香族炭化水素;α−セキシチオフェン等のチオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類;チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環及びベンゾチアゾール環のうち少なくとも一つ以上を含み、かつ合計4個以上連結したもの;フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン等のポルフィリン化合物及びその金属錯体、等の大環状化合物等が挙げられる。好ましくは、フタロシアニン化合物及びその金属錯体又はポルフィリン化合物及びその金属錯体である。
ポルフィリン化合物及びその金属錯体(図中のZ1がCH)、及びフタロシアニン化合物及びその金属錯体(図中のZ1がN)としては、例えば、以下のような構造の化合物が挙げられる。
ここで、Mは金属あるいは2個の水素原子を表し、金属としては、Cu、Zn、Pb、Mg、Pd、Ag、Co又はNi等の2価の金属のほか、軸配位子を有する3価以上の金属、例えば、TiO、VO、SnCl2、AlCl、InCl又はSi等も挙げられる。
11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上24以下のアルキル基である。炭素数1以上24以下のアルキル基とは、炭素数1以上24以下の飽和若しくは不飽和の鎖状炭化水素基又は炭素数3以上24以下の飽和若しくは不飽和の環式炭化水素である。その中でも好ましくは炭素数1以上12以下の飽和若しくは不飽和の鎖状炭化水素基又は炭素数3以上12以下の飽和若しくは不飽和の環式炭化水素である。
フタロシアニン化合物及びその金属錯体の中でも、好ましくは、29H,31H−フタロシアニン、銅フタロシアニン錯体、亜鉛フタロシアニン錯体、チタンフタロシアニンオキシド錯体、マグネシウムフタロシアニン錯体、鉛フタロシアニン錯体又は銅4,4',4'',4'''−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン錯体であり、より好ましくは、29H,31H−フタロシアニン又は銅フタロシアニン錯体である。上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。
ポルフィリン化合物及びその金属錯体の中でも、好ましくは、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンコバルト(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン銅(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン亜鉛(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンニッケル(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィンバナジウム(IV)オキシド、5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィン、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンコバルト(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン銅(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィン亜鉛(II)、29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンニッケル(II)又は29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンバナジウム(IV)オキシドであり、好ましくは、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン又は29H,31H−テトラベンゾ[b,g,l,q]ポルフィンである。上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。
低分子有機半導体化合物の成膜方法としては、蒸着法及び塗布法が挙げられる。塗布成膜できるというプロセス上の利点からは後者が好ましい。塗布法を用いる場合、低分子有機半導体化合物前駆体を塗布後に低分子有機半導体化合物に変換する方法がある。塗布成膜がより容易である点で、半導体化合物前駆体を用いる方法がより好ましい。
(低分子有機半導体化合物前駆体)
低分子有機半導体化合物前駆体とは、例えば加熱や光照射等の外的刺激を与えることにより、その化学構造が変化し、低分子有機半導体化合物に変換される化合物である。低分子有機半導体化合物前駆体は成膜性に優れることが好ましい。特に、塗布法を適用できるようにするためには、前駆体自体が液状で塗布可能であるか又は前駆体が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。このため、低分子有機半導体化合物前駆体の溶媒に対する溶解性は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。一方、上限に特段の制限はないが、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
溶媒の種類としては、半導体前駆体化合物を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン又はデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール又はプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル又は乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。なかでも好ましくは、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチル
ケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類である。より好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類;シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等の非ハロゲン系ケトン類;テトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサン等の非ハロゲン系脂肪族エーテル類である。特に好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類である。なお、1種の溶媒を単独で用いてもよく、2種以上の溶媒を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、低分子有機半導体化合物前駆体は、容易に半導体化合物に変換できることが好ましい。後述する低分子有機半導体化合物前駆体から半導体化合物への変換工程において、どのような外的刺激を半導体前駆体に与えるかは任意であるが、通常は、熱処理又は光処理等を行なう。好ましくは、熱処理である。この場合には、低分子有機半導体化合物前駆体が、骨格の一部として、逆ディールス・アルダー反応によって脱離可能な、所定の溶媒に対する親溶媒性の基を有することが好ましい。
また、低分子有機半導体化合物前駆体は、変換工程を経て、高い収率で半導体化合物に変換されることが好ましい。この際、低分子有機半導体化合物前駆体から変換して得られる半導体化合物の収率は有機太陽電池素子の性能を損なわない限り任意であるが、低分子有機半導体化合物前駆体から得られる低分子有機半導体化合物の収率は、通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上である。
低分子有機半導体化合物前駆体は上記の特徴を有するものであれば特に制限はないが、具体的には特開2007−324587号公報に記載の化合物等が用いられうる。なかでも好ましい例としては、下式で表される化合物が挙げられる。
上式において、D1及びD2の少なくとも一方はπ共役した2価の芳香族環を形成する基を表し、Z2−Z3は熱又は光により脱離可能な基であって、Z2−Z3が脱離して得られるπ共役化合物が低分子有機半導体化合物となるものを表す。また、D1及びD2のうちπ共役した2価の芳香族環を形成する基でないものは、置換又は無置換のエテニレン基を表す。
上式で表される化合物は、下記化学反応式に示すように熱又は光によりZ2−Z3が脱離して、平面性の高いπ共役化合物を生成する。この生成されたπ共役化合物が低分子有機半導体化合物である。この低分子有機半導体化合物が、p型半導体特性を有する材料として用いられる。
低分子有機半導体化合物前駆体の例としては、以下のものが挙げられる。以下において、t−Buはt−ブチル基を表し、Mは、ポルフィリン及びフタロシアニンについて説明したものと同様である。
低分子有機半導体化合物前駆体の低分子有機半導体化合物への変換の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
低分子有機半導体化合物前駆体は、位置異性体が存在する構造であってもよく、またその場合、複数の位置異性体の混合物であってもよい。複数の位置異性体の混合物は、単一の位置異性体成分からなる低分子有機半導体化合物前駆体と比較して溶媒に対する溶解度が向上するため、塗布成膜が行いやすく好ましい。複数の位置異性体の混合物の溶解度が高い理由は、詳細なメカニズムは明確ではないが、化合物そのものの結晶性が潜在的に保持されつつも、複数の異性体混合物が溶液内に混在することで、三次元規則的な分子間相互作用が困難になるためと想定される。複数の位置異性体混合物の、非ハロゲン性溶媒への溶解度は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。上限に制限は無いが、通常50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
[1−2−1−2.高分子有機半導体化合物]
高分子有機半導体化合物として、特に限定はなく、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン又はポリアニリン等の共役ポリマー半導体;アルキル基やその他の置換基が置換されたオリゴチオフェン等のポリマー半導体;等が挙げられる。また、二種以上のモノマー単位を共重合させた半導体
ポリマーも挙げられる。共役ポリマーとしては、例えば、Handbook of Conducting Polymers,3rd Ed.(全2巻),2007、Materials Science and Engineering,2001,32,1−40、Pure Appl.Chem.2002,74,2031−3044、Handbook of THIOPHENE−BASED MATERIALS(全2巻),2009等の公知文献に記載されたポリマーやその誘導体、及び記載されているモノマーの組み合わせによって合成し得るポリマーを用いることができる。p型半導体化合物として用いられる高分子有機半導体化合物は、一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
高分子有機半導体化合物のモノマー骨格及びモノマーの置換基は、溶解性、結晶性、成膜性、HOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位等を制御するために選択することができる。また、高分子有機半導体化合物が有機溶媒に可溶であることは、有機太陽電池素子を作製する際に塗布法により活性層103を形成しうる点で好ましい。高分子有機半導体化合物の具体例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されることはない。
p型半導体化合物としてなかでも好ましくは、低分子有機半導体化合物としては、ナフタセン、ペンタセン、ピレン等の縮合芳香族炭化水素、フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン(BP)等のポルフィリン化合物及びその金属錯体であり、高分子有機半導体化合物としては、ポリチオフェン等の共役ポリマー半導体である。活性層103で用いられるp型半導体化合物は、一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
低分子有機半導体化合物及び/又は高分子有機半導体化合物は、成膜された状態において、何らかの自己組織化した構造を有していても、アモルファス状態であってもよい。
p型半導体化合物のHOMO(最高被占分子軌道)エネルギー準位は、特に限定は無く、後述のn型半導体化合物の種類によって選択することができる。特に、フラーレン化合物をn型半導体化合物として用いる場合、p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位は、通常−5.7eV以上、より好ましくは−5.5eV以上、一方、通常−4.6eV以下、より好ましくは−4.8eV以下である。p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−5.7eV以上であることによりp型半導体としての特性が向上し、p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−4.6eV以下であることにより化合物の安定性が向上し、開放電圧(Voc)も向上する。
p型半導体化合物のLUMO(最低空分子軌道)エネルギー準位は、特に限定は無いが、後述のn型半導体化合物の種類によって選択することができる。特に、フラーレン化合物をn型半導体化合物として用いる場合、p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位は、通常−3.7eV以上、好ましくは−3.6eV以上である。一方、通常−2.5eV以下、好ましくは−2.7eV以下である。p型半導体のLUMOエネルギー準位が−2.5eV以下であることにより、バンドギャップが調整され長波長の光エネルギーを有効に吸収することができ、短絡電流密度が向上する。p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位が−3.7eV以上であることにより、n型半導体化合物への電子移動が起こりやすくなり短絡電流密度が向上する。
[1−2−2.n型半導体化合物]
n型半導体化合物としては、特段の制限はないが、具体的にはフラーレン化合物、8−
ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体;ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;ペリレンジイミド誘導体、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリノン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン誘導体、ボラン誘導体、アントラセン、ピレン、ナフタセン又はペンタセン等の縮合多環芳香族炭化水素の全フッ化物;単層カーボンナノチューブ等が挙げられる。
そのなかでも、フラーレン化合物、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド及びN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体が好ましく、フラーレン化合物、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体及びN−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミドがより好ましい。上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。また、n型半導体化合物としては、n型高分子半導体化合物も挙げられる。
n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位は、特に限定はされないが、例えばサイクリックボルタモグラム測定法により算出される真空準位に対する値が、通常−3.85eV以上、好ましくは−3.80eV以上である。p型半導体化合物から効率良くn型半導体化合物へと電子を移動させるためには、p型半導体化合物とn型半導体化合物とのLUMOエネルギー準位の相対関係が重要である。具体的には、p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位が、n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位より所定の値だけ上にあること、言い換えると、n型半導体化合物の電子親和力がp型半導体化合物の電子親和力より所定のエネルギーだけ大きいことが好ましい。開放電圧(Voc)はp型半導体化合物のHOMOエネルギー準位とn型半導体化合物のLUMOエネルギー準位の差に依存するため、n型半導体化合物のLUMOを高くすると、Vocが高くなる傾向がある。一方、LUMOの値は通常−1.0eV以下、好ましくは−2.0eV以下、より好ましくは−3.0eV以下、更に好ましくは−3.3eV以下である。n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位を低くすることで、電子の移動が起こりやすくなり、短絡電流(Jsc)が高くなる傾向がある。
n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位の算出方法は、理論的に計算値で求める方法と実際に測定する方法が挙げられる。理論的に計算値で求める方法としては、半経験的分子軌道法及び非経験的分子軌道法があげられる。実際に測定する方法としては、紫外可視吸収スペクトル測定法又はサイクリックボルタモグラム測定法が挙げられる。その中でも好ましくはサイクリックボルタモグラム測定法である。
n型半導体化合物のHOMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−5.0eV以下、好ましくは−5.5eV以下である。一方、通常−7.0eV以上、好ましくは−6.6eV以上である。n型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−7.0eV以上であることは、n型半導体化合物の光吸収も発電に利用しうる点で好ましい。n型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−5.0eV以下であることは、正孔の逆移動を阻止できる点で好ましい。
n型半導体化合物の電子移動度は、特段の制限はないが、通常1.0×10-6cm2/Vs以上であり、1.0×10-5cm2/Vs以上が好ましく、5.0×10-5cm2/Vs以上がより好ましく、1.0×10-4cm2/Vs以上がさらに好ましい。一方、通常
1.0×103cm2/Vs以下であり、1.0×102cm2/Vs以下が好ましく、5.0×101cm2/Vs以下がより好ましい。n型半導体化合物の電子移動度が1.0×10-6cm2/Vs以上であることは、有機太陽電池素子の電子拡散速度向上、短絡電流向上、変換効率向上等の効果が得られうる点で好ましい。電子移動度の測定方法としては電界効果トランジスタ(FET)法が挙げられ、公知文献(特開2010−045186号公報)に記載の方法により実施することができる。
n型半導体化合物の25℃でのトルエンに対する溶解度は、通常0.5重量%以上であり、0.6重量%以上が好ましく、0.7重量%以上がより好ましい。一方、通常90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下がさらに好ましい。n型半導体化合物の25℃でのトルエンに対する溶解度が0.5重量%以上であることは、溶液中でのn型半導体化合物の分散安定性が向上し、凝集、沈降、分離等を起こしにくくなるために、好ましい。
以下、好ましいn型半導体化合物の例について説明する。
[1−2−2−1.フラーレン化合物]
フラーレン化合物としては、一般式(n1)、(n2)、(n3)及び(n4)で表される部分構造を有するものが好ましい例として挙げられる。
上式中、FLNは、閉殻構造を有する炭素クラスターであるフラーレンを表す。フラーレンの炭素数は、通常60以上130以下の偶数であれば何でもよい。フラーレンとしては、例えば、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96及びこれらよりも多くの炭素を有する高次の炭素クラスター等が挙げられる。その中でも、C60又はC70が好ましい。フラーレンとしては、一部のフラーレン環上の炭素−炭素結合が切れていてもよい。また、フラーレンを構成する炭素原子の一部が、他の原子に置き換えられていてもよい。さらにフラーレンは、金属原子、非金属原子あるいはこれらから構成される原子団をフラーレンケージ内に内包していてもよい。
a、b、c及びdは整数であり、a、b、c及びdの合計は通常1以上であり、一方、通常5以下であり、好ましくは3以下である。(n1)、(n2)、(n3)及び(n4)中の部分構造は、フラーレン骨格中の同一の五員環又は六員環に結合している。一般式(n1)では、フラーレン骨格中の同一の五員環又は六員環上の隣接する2つの炭素原子
に対して、−R21と、−(CH2Lとがそれぞれ結合している。一般式(n2)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−C(R25)(R26)−N(R27)−C(R28)(R29)−が付加して5員環を形成している。一般式(n3)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して、−C(R30)(R31)−C−C−C(R32)(R33)−が付加して6員環を形成している。一般式(n4)では、フラーレン骨格中の同一の5員環又は6員環上の隣接する2つの炭素原子に対して−C(R34)(R35)−が付加して3員環を形成している。Lは1以上8以下の整数である。Lとして好ましくは1以上4以下の整数であり、さらに好ましくは1以上2以下の整数である。
一般式(n1)中のR21は、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルコキシ基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基又はイソブチル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。アルコキシ基としては、炭素数1以上10以下のアルコキシ基が好ましく、炭素数1以上6以下のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が特に好ましい。芳香族基としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基又はチエニル基が更に好ましい。
上記のアルキル基、アルコキシ基及び芳香族基が有していてもよい置換基としては特に限定されないが、ハロゲン原子又はシリル基が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。シリル基としては、ジアリールアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、トリアリールシリル基又はトリアルキルシリル基が好ましく、ジアルキルアリールシリル基がより好ましく、ジメチルアリールシリル基がさらに好ましい。
一般式(n1)中のR22〜R24は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基又はn−ヘキシル基が好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基としてはハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロオクチル基、パーフルオロヘキシル基又はパーフルオロブチル基が好ましい。
芳香族基としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基又はチエニル基が更に好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基は特に限定されないが、フッ素原子、炭素数1以上14以下のアルキル基、炭素数1以上14以下のフッ化アルキル基、炭素数1以上14以下のアルコキシ基又は炭素数3以上10以下の芳香族基が好ましく、フッ素原子又は炭素数1以上14以下のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、n−ブトキシ基又は2−エチルヘキシルオキシ基が更に好ましい。芳香族基が置換基を有する場合、その数に限定は無いが、1以上3以下が好ましく、1がより好ましい。芳香族基が置換基を複数有する場合、その置換基の種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
一般式(n2)中のR25〜R29は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルキル基として好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基又はオクチル基であり、より好ましくはメチル基である。アルキル基が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、ハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、パーフルオロオクチル基、パーフルオロヘキシル基又はパーフルオロブチル基が好ましい。
芳香族基としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基又はピリジル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、好ましくはフッ素原子、炭素数1以上14以下のアルキル基、又は炭素数1以上14以下のアルコキシ基である。アルキル基にはフッ素原子が置換されていてもよい。さらに好ましくは炭素数1以上14以下のアルコキシ基であり、さらに好ましくはメトキシ基である。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1以上3以下であり、より好ましくは1である。置換基の種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
一般式(n3)中のAr1は、置換基を有していてもよい炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基であり、好ましくはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基、ピリミジル基、キノリル基又はキノキサリル基であり、さらに好ましくはフェニル基、チエニル基又はフリル基である。
有していてもよい置換基として限定は無いが、フッ素原子、塩素原子、水酸基、シアノ基、シリル基、ボリル基、アルキル基で置換していてもよいアミノ基、炭素数1以上14以下のアルキル基、炭素数1以上14以下のアルコキシ基、炭素数2以上14以下のアルキルカルボニル基、炭素数1以上14以下のアルキルチオ基、炭素数2以上14以下のアルケニル基、炭素数2以上14以下のアルキニル基、炭素数2以上14以下のエステル基、炭素数3以上20以下のアリールカルボニル基、炭素数2以上20以下のアリールチオ基、炭素数2以上20以下のアリールオキシ基、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の複素環基が好ましく、フッ素原子、炭素数1以上14以下のアルキル基、炭素数1以下14以下のアルコキシ基、炭素数2以上14以下のエステル基、炭素数2以上14以下のアルキルカルボニル基又は炭素数3以上20以下のアリールカルボニル基がより好ましい。炭素数1以上14以下のアルキル基は1又は2以上のフッ素で置換されていてもよい。
炭素数1以上14以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基又はプロピル基が好ましい。炭素数1以上14以下のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が好ましい。炭素数1以上14以下のアルキルカルボニル基としては、アセチル基が好ましい。炭素数2以上14以下のエステル基としては、メチルエステル基又はn−ブチルエステル基が好ましい。炭素数3以上20以下のアリールカルボニル基としては、ベンゾイル基が好ましい。
置換基を有する場合、その数に限定は無いが、1以上4以下が好ましく、1以上3以下がより好ましい。置換基が複数の場合、その種類は異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
一般式(n3)中のR30〜R33は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキルチオ基である。R30又はR31は、R32とR33とのいずれか一方と結合して環を形成していてもよい。環を形成する場合における構造としては、例えば、芳香族基が縮合したビシクロ構造である一般式(n5)に示す構造が挙げられる。
一般式(n5)においてfはcと同義であり、Z4は、酸素原子、硫黄原子、アミノ基、アルキレン基又はアリーレン基である。アルキレン基としては炭素数1以上2以下が好ましい。アリーレン基としては炭素数5以上12以下が好ましく、例えばフェニレン基が挙げられる。アミノ基は、メチル基やエチル基等の炭素数1以上6以下のアルキル基で置換されていてもよい。アルキレン基は、メトキシ基等の炭素数1以上6以下のアルコキシ基、炭素数1以上5以下の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基で置換されていてもよい。アリーレン基は、メトキシ基等の炭素数1以上6以下のアルコキシ基、炭素数1以上5以下の脂肪族炭化水素基、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基で置換されていてもよい。
式(n5)に示す構造として特に好ましくは、下記式(n6)又は式(n7)で表される構造である。
一般式(n4)中のR34〜R35は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数1以上14以下のアルキル基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
アルコキシカルボニル基を構成するアルコキシ基としては、炭素数1以上12以下のアルコキシ基又は炭素数1以上12以下のフッ化アルコキシ基が好ましく、炭素数1以上12以下のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキソキシ基、オクトキシ基、2−プロピルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキシルメトキシ基又はベンジルオキシ基がさらに好ましく、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基又はn−ヘキソキシ基が特に好ましい。
アルキル基としては、炭素数1以上8以下の直鎖アルキル基が好ましく、n−プロピル基がより好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基には特に限定は無いが、好ましくはアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基を構成するアルコキシ基としては、炭素数1以上14以下のアルコキシ基又はフッ化アルコキシ基が好ましく、炭素数1以上14以下の炭化水素基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、n−ヘキソキシ基、オクトキシ基、2−プロピルペントキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキシルメトキシ基又はベンジルオキシ基がさらに好ましく、メトキシ基又はn−ブトキシ基が特に好ましい。
芳香族基としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基又は炭素数2以上20以下の芳香族複素環基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、チエニル基、フリル基又はピリジル基が好ましく、フェニル基又はチエニル基がさらに好ましい。芳香族基が有していてもよい置換基としては、炭素数1以上14以下のアルキル基、炭素数1以上14以下のフッ化アルキル基又は炭素数1以上14以下のアルコキシ基が好ましく、炭素数1以上14以下のアルコキシ基がさらに好ましく、メトキシ基又は2−エチルヘキシルオキシ基が特に好ましい。置換基を有する場合、その数に限定は無いが、好ましくは1以上3以下であり、より好ましくは1である。置換基の種類は異なっていても同一でもよく、好ましくは同一である。
一般式(n4)の構造として好ましくは、R34、R35が共にアルコキシカルボニル基であるか、R34、R35が共に芳香族基であるか、又はR34が芳香族基でありかつR35が3−(アルコキシカルボニル)プロピル基であるものが挙げられる。
フラーレン化合物としては、上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。
塗布法によりフラーレン化合物を成膜するためには、フラーレン化合物自体が液状で塗布可能であるか、又はフラーレン化合物が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。溶解性の好適な範囲をあげると、25℃でのトルエンに対する溶解度が、通常0.1重量%以上、好ましくは0.4重量%以上、より好ましくは0.7重量%以上である。フラーレン化合物の溶解度が0.1重量%以上であることは、フラーレン化合物の溶液中での分散安定性が増加し、凝集、沈降、分離等が起こりにくくなるために好ましい。
フラーレン化合物を溶解させる溶媒としては、非極性有機溶媒であれば特段に制限はないが、非ハロゲン系溶媒が好ましい。ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒を用いることも可能であるが、環境負荷の面等から代替が求められている。非ハロゲン系溶媒としては、例えば、非ハロゲン系芳香族炭化水素類が挙げられる。その中でも好ましくはトルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等である。
(フラーレン化合物の製造方法)
フラーレン化合物の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、部分構造(n1)を有するフラーレン化合物の合成は、国際公開第2008/059771号やJ.Am.Chem.Soc.,2008,130(46),15429−15436のような公知文献の記載に従って実施可能である。
部分構造(n2)を有するフラーレン化合物の合成は、J.Am.Chem.Soc.1993,115,9798−9799、Chem.Mater.2007,19,5363−5372及びChem.Mater.2007,19,5194−5199のような公知文献の記載に従って実施可能である。
部分構造(n3)を有するフラーレン化合物の合成は、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1993,32,78−80、Tetrahedron Lett.1997,38,285−288、国際公開第2008/018931号及び国際公開第2009/086210号のような公知文献の記載に従って実施可能である。
部分構造(n4)を有するフラーレン化合物の合成は、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,1997 1595、Thin Solid Films 489(2005)251−256、Adv.Funct.Mater.2005,15,1979−1987及びJ.Org.Chem.1995,60,532−538のような公知文献の記載に従って実施可能である。
[1−2−2−2.N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体]
N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体としては、特段の制限はないが、具体的には国際公開第2008/063609号、国際公開第2009/115553号、国際公開第2009/098250号、国際公開第2009/000756号及び国際公開第2009/091670号に記載されている化合物が挙げられる。これらの化合物は電子移動度が高く、可視域の光を吸収しうるために、電荷輸送と発電との両方に寄与しうる点から好ましい。
[1−2−2−3.ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド]
ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドとしては、特段の制限はないが、具体的には国際公開第2008/063609号、国際公開第2007/146250号及び国際公開第2009/000756号に記載されている化合物が挙げられる。これらの化合物は電子移動度が高く、溶解性が高く塗布性に優れている点から好ましい。
[1−2−2−4.n型高分子半導体化合物]
n型高分子半導体化合物としては、特段の制限はないが、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、ペリレンジイミド誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ビピリジン誘導体及びボラン誘導体のうち少なくとも一つを構成ユニットとするn型高分子半導体化合物等が挙げられる。
その中でも、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド及びN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体のうち少なくとも一つを構成ユニットとするポリマーが好ましく、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体及びN−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミドのうち少なくとも一つを構成ユニット
とするn型高分子半導体化合物がより好ましい。n型高分子半導体化合物として上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。
n型高分子半導体化合物として具体的には、国際公開第2009/098253号、国際公開第2009/098250号、国際公開第2010/012710号及び国際公開第2009/098250号に記載されている化合物が挙げられる。これらの化合物は可視域の光を吸収しうるために発電に寄与することができ、粘度が高く、塗布性に優れている点から好ましい。
[1−3.基材(106)]
有機太陽電池素子107は、支持体となる基材106を有する。すなわち、基材上に、電極101,105と、活性層103とが形成される。
基材106の材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されない。基材106の材料の好適な例としては、石英、ガラス、サファイア又はチタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル又はポリエチレン等のポリオレフィン;セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン又はエポキシ樹脂等の有機材料;紙又は合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン又はアルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料等が挙げられるが、フレキシブルで透明な基材を得やすいため、有機材料からなる樹脂フィルムが好ましい。
ガラスとしてはソーダガラス、青板ガラス又は無アルカリガラス等が挙げられる。ガラスからの溶出イオンが少ない点で、これらの中でも無アルカリガラスが好ましい。
基材106の形状に制限はなく、例えば、板状、フィルム状又はシート状等のものを用いることができる。また、基材106の膜厚に制限はないが、通常5μm以上、好ましくは20μm以上であり、一方、通常20mm以下、好ましくは10mm以下である。基材の膜厚が上記下限以上であることは、有機太陽電池素子の強度が不足する可能性が低くなるために好ましい。基材の膜厚が上記上限以下であることは、コストが抑えられ、かつ重量が重くならないために好ましい。
基材106の材料がガラスである場合の膜厚は、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上であり、一方、通常1cm以下、好ましくは0.5cm以下である。ガラス基材106の膜厚が上記下限以上であることは、機械的強度が増加し、割れにくくなるために、好ましい。また、ガラス基材106の膜厚が上記上限以下であることは、重量が重くならないために好ましい。
[1−4.電極(101,105)]
電極101,105は、光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有する。したがって、一対の電極には、正孔の捕集に適した電極105(以下、アノードと記載する場合もある)と、電子の捕集に適した電極101(以下、カソードと記載する場合もある)とを用いることが好ましい。一対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは、太陽光が40%以上透過することを指す。また、透明電極の太陽光線透過率は70%以上であることが、透明電極を透過させて活性層103に光を到達させるために好ましい。光の透過率は、通常の分光光度計で測定できる。
アノード105とは、一般には仕事関数がカソードよりも高い導電性材料で構成され、
活性層103で発生した正孔をスムーズに取り出す機能を有する電極である。
アノード105の材料を挙げると、例えば、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、インジウム−ジルコニウム酸化物(IZO)、酸化チタン、酸化インジウム又は酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;金、白金、銀、クロム又はコバルト等の金属あるいはその合金が挙げられる。これらの物質は高い仕事関数を有するため、好ましく、さらに、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PSSで代表されるような導電性高分子材料を積層することができるため、好ましい。このような導電性高分子を積層する場合には、この導電性高分子材料の仕事関数が高いことから、上記のような高い仕事関数の材料でなくとも、AlやMg等のカソードに適した金属も広く用いることが可能である。ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PSSや、ポリピロール又はポリアニリン等にヨウ素等をドーピングした導電性高分子材料を、アノードの材料として使用することもできる。アノード105が透明電極である場合には、ITO、酸化亜鉛又は酸化スズ等の透光性がある導電性金属酸化物を用いることが好ましく、特にITOが好ましい。
アノード105の膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは、50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下である。アノード105の膜厚が上記下限以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、アノード105の膜厚が上記上限以下であることにより、光透過率を低下させずに効率よく光を電気に変換することができる。アノード105が透明電極である場合には、光透過率とシート抵抗とを両立できる膜厚を選ぶ必要がある。
アノード105のシート抵抗は、特段の制限はないが、通常1Ω/□以上、一方、1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。
アノード105の形成方法としては、蒸着法若しくはスパッタ法等の真空成膜方法、又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する湿式塗布法が挙げられる。
カソード101は、一般には仕事関数が低い値を有する導電性材料で構成され、活性層103で発生した電子をスムーズに取り出す機能を有する電極である。カソード101は、電子取り出し層102と隣接している。
カソード101の材料を挙げると、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、スズ、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム又はマグネシウム等の金属及びその合金;フッ化リチウムやフッ化セシウム等の無機塩;酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化リチウム又は酸化セシウムのような金属酸化物等が挙げられる。これらの材料は低い仕事関数を有する材料であるため、好ましい。カソード101についてもアノード105と同様に、電子取り出し層102としてチタニアのようなn型半導体で導電性を有するものを用いることにより、高い仕事関数を有する材料を用いることもできる。電極保護の観点から、カソード101の材料として好ましくは、白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウム、カルシウム若しくはインジウム等の金属、又は酸化インジウムスズ等のこれらの金属を用いた合金である。
カソード101の膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下である。カソード101の膜厚が上記下限以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、カソード101の膜厚が上記上限以下であることに
より、光透過率を低下させずに効率よく光を電気に変換することができる。カソード101が透明電極である場合には、光透過率とシート抵抗を両立する膜厚を選ぶ必要がある。
カソード101のシート抵抗は、特に制限は無いが、通常1000Ω/□以下、好ましくは500Ω/□以下、さらに好ましくは100Ω/□以下である。下限に制限は無いが、通常は1Ω/□以上である。
カソード101の形成方法としては、蒸着法若しくはスパッタ法等の真空成膜方法、又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する湿式塗布法等がある。
さらに、アノード105及びカソード101は、2層以上の積層構造を有していてもよい。また、アノード105及びカソード101に対して表面処理を行うことにより、特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
アノード105及びカソード101を積層した後に、有機太陽電池素子を通常50℃以上、好ましくは80℃以上、一方、通常300℃以下、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下の温度範囲において、加熱することが好ましい(この工程をアニーリング処理工程と称する場合がある)。アニーリング処理工程を上記下限以上の温度で行うことにより、有機太陽電池素子の各層間の密着性、例えば電子取り出し層102とカソード101及び/又は電子取り出し層102と活性層103の密着性が向上する効果が得られるため、好ましい。各層間の密着性が向上することにより、有機太陽電池素子の熱安定性や耐久性等が向上しうる。アニーリング処理工程の温度を上記上限以下にすることは、活性層103内の有機化合物が熱分解する可能性が低くなるため、好ましい。アニーリング処理工程においては、上記の温度範囲内で段階的な加熱を行ってもよい。
加熱する時間としては、通常1分以上、好ましくは3分以上、一方、通常3時間以下、好ましくは1時間以下である。アニーリング処理工程は、太陽電池性能のパラメータである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることが好ましい。また、アニーリング処理工程は、常圧下、かつ不活性ガス雰囲気中で実施することが好ましい。
加熱する方法としては、特に限定されないが、熱風による加熱、遠赤外線および/または近赤外線の照射による方法が好ましく挙げられ、ホットプレート等の熱源に有機太陽電池素子を載せてもよいし、オーブン等の加熱雰囲気中に有機太陽電池素子を入れてもよい。また、加熱はバッチ式で行っても連続方式で行ってもよいが連続方式で行うのが好ましい。
[1−5.光電変換特性]
有機太陽電池素子107の光電変換特性は次のようにして求めることができる。有機太陽電池素子107にソーラシュミレーターでAM1.5G条件の光を照射強度100mW/cm2で照射して、電流−電圧特性を測定する。得られた電流−電圧曲線から、光電変換効率(PCE)、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、直列抵抗、シャント抵抗といった光電変換特性を求めることができる。
本発明に係る有機太陽電池素子の光電変換効率は、特段の制限はないが、通常1%以上、好ましくは1.5%以上、より好ましくは2%以上である。一方、上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。
また、有機太陽電池素子の耐久性を測定する方法としては、有機太陽電池素子を大気暴露する前後での、光電変換効率の維持率を求める方法が挙げられる。
(維持率)=(大気暴露N時間後の光電変換効率)/(大気暴露直前の光電変換効率)
有機太陽電池素子を実用化するには、製造が簡便かつ安価であること以外に、高い光電変換効率及び高い耐久性を有することが重要である。この観点から、1週間大気暴露する前後での光電変換効率の維持率は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、高ければ高いほどよい。
<2.アンダーコート層>
本発明の有機太陽電池は、上述した有機太陽電池素子と、後述のバリア層との間にアンダーコート層を積層する。アンダーコート層は、有機太陽電池素子の電極及び活性層を積層した面に積層する。アンダーコート層を設けることで、バリア層を製膜する面の平坦性が向上し、薄いバリア層でも高い封止性能を発揮することができ、生産速度を向上させることができる。また、バリア層の下地としてアンダーコート層を用いることで、バリア層の緻密性が向上し、高い封止性能を発揮することができる。そのため、有機太陽電池素子の劣化を抑えることができる。さらに、有機太陽電池素子とバリア層との間にアンダーコート層を用いることで、バリア層の密着性が高くなり界面剥離を抑えることができる。
アンダーコート層の材料は特に限定されないが、上記効果を得やすく、更には後述のウェットプロセスが適用できる材料として、熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物等の有機高分子組成物から成る被膜を形成する材料が挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物とは例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線などの照射で硬化反応を起こし高分子量化する樹脂組成物のことである。
熱可塑性樹脂組成物としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げる事が出来る。
熱硬化性樹脂組成物又は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としても、上記熱可塑性樹脂の重合時に共重合成分を導入する事、或いは、分子鎖末端や側鎖の改質によって熱硬化性や活性エネルギー線硬化性を備えたものを用いる事ができる。一例としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂の分子鎖末端、或いは側鎖にヒドロキシル基を導入し、イソシアネート系化合物等の添加による硬化反応を可能とする事で熱硬化性樹脂としたものや、アクリル系樹脂やポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等に同様に反応性アクリレート基を導入する事で、紫外線硬化型樹脂としたもの等である。
熱硬化性樹脂組成物および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物において、希望する硬化物性を確保するために、硬化性の官能基を有する単量体(モノマー)や、同じく硬化性の官能基を有するオリゴマー、或いはプレポリマー等と呼ばれる、それ単体ではポリマーとしての性質を発現し得ない程度の低い分子量の重合体を用いる事が好ましい。また、適宜これらの硬化性モノマー、硬化性オリゴマー、硬化性ポリマー、或いは非硬化性ポリマー等の少なくとも2種以上のブレンド組成物を用いる事により、良好な塗工性や硬化被膜物性を得る事が好ましい。
熱硬化性樹脂組成物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を主剤としてイソシアネート系架橋剤で硬化する一般的にドライラミネート用接着剤と呼ばれるものや、ビスフェノールA等のエポキシ樹脂とアミン、酸無水物、イミダゾール等の硬化剤の混合物を用いることが出来る。
ドライラミネート用接着剤は、各種が市販されており、アンダーコート層に耐湿熱性が求められる場合は、レトルト耐性グレードを選定する等、要求される性能に応じて、適宜
所望のものを入手する事が出来る。また、東洋紡社製の「バイロン(登録商標)」のように、汎用性の有機溶剤に可溶で、比較的分子量が低く、イソシアネート等の架橋剤との反応性を有する水酸基を含有するポリエステル系の樹脂を用いて、ポリエステル樹脂の分子量、ガラス転移温度、水酸基価、及び、イソシアネート硬化剤の構造を適宜調整する事で所望の物性を有するドライラミネート用接着剤としても良い。
紫外線硬化性樹脂組成物の場合は、分子内に活性エネルギー線の照射により重合反応を生起して硬化被膜を形成する常用のモノマーやオリゴマー、必要によってはポリマーに加えて、光重合開始剤、これも必要によっては光増感剤等が添加され、塗工性を確保する為に適宜有機溶剤で稀釈する等により調整される。ここで、モノマー、オリゴマー等の配合成分は単一の組成物であっても良く、2種以上から成っていても良い。
紫外線硬化性のモノマーとしては、単官能、二官能以上の多官能モノマーが挙げられる。単官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、アクリロイルモルフォリン、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジイソプロピルアクリルアミド、イソボニルアクリレート、2 −ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−ヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、二官能(メタ)アクリレートとしてはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。さらに、三官能以上の(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(テトラ)(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
紫外線硬化型のオリゴマーとしては、分子内に、アクリロイル基(CH2=CHCO−)、またはメタクリロイル基(CH2=CCH3CO−)を、一個〜数個有する分子量が数百〜千数百の化合物をいう。代表例として、エポキシ、エポキシ化油、ウレタン系オリゴマー、ポリエステル系オリゴマー、ポリエーテル系オリゴマー、(メタ)アクリル酸エステル系オリゴマーなどのモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレートおよび多官能の(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
本発明のアンダーコート層に用いる樹脂組成物は、被膜形成の容易さや、形成されたアンダーコート層の耐熱安定性等の点から、熱硬化性樹脂組成物または紫外線硬化性樹脂組成物であることが好ましい。これらの樹脂は、単独でも2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの樹脂に、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム等を含有させて有機無機ハイブリッド樹脂としてもよい。酸化ケイ素ハイブリッド樹脂としては、加熱によってシリカ構造を形成する珪素化合物を硬化性樹脂の分子鎖に共重合させた構造のものや、ナノサイズのシリカ粒子を硬化性樹脂マトリクス中で微分散させたもの等を用いる事が出来る。
中でも、アンダーコート層はバリア層の応力を緩和する機能を有するため、弾性率を比較的低い範囲で調整しやすいポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂から選択される一種以上を含むのが好ましい。
アンダーコート層を積層させる方法としては特に限定されないが、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、エアナイフコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、ダイコート、ロールコート、バーコート等の大気圧下のウェット塗布方式(ウェットプロセス)によるものが好ましく挙げられる。ウェット塗布方式は、層を形成する際に層の形成材料を溶液の形態で供給し、層形成を行うものである。大気圧下のウェット塗布方式を採用することで、有機太陽電池素子の塗工により生じた微細な凹凸に対し、平滑な膜面を安価かつ容易に形成できる。
例えば、上記の樹脂組成物と溶媒を用いた樹脂溶液を塗布した後、溶媒除去、熱硬化、紫外線硬化等により積層させることができる。溶媒は、用いる樹脂に応じて適切なものを選択する。例えば、アクリル系樹脂の場合、トルエン等を用いることができ、上記「バイロン」の如き溶剤可溶性のポリエステル系樹脂の場合、2−ブタノンを用いることができる。樹脂組成物が、常温域で流動性を有する硬化性モノマーや硬化性オリゴマーのみから成る場合は、溶剤無添加(無溶媒)で塗工しても良い。溶媒除去を行う場合には、除去速度点で溶媒の沸点以上で行うのが好ましく、かつ有機太陽電池素子の性能低下を抑制できる点で活性層の材料のTg以下の温度で行うのが好ましい。
また、スパッタリングやフラッシュ蒸着などのドライプロセスによる方法を用いてもよいし、上記の樹脂をフィルム状にしたものを加熱圧着等することで積層することもできる。更に被膜形成方法が同一、或いは組成物種類や組成物比率が異なる2種以上の層から成るアンダーコート層であっても良い。
アンダーコート層の常温域(23℃)で測定した弾性率は、通常10MPa以上、好ましくは100MPa以上、より好ましくは200MPa以上である。上限は、通常20GPa以下であり、10GPa以下が好ましく、5GPa以下がより好ましく、3GPa以下が特に好ましい。弾性率の測定方法は、例えば、JIS K 7171による。アンダーコート層を上記の弾性率にすることで、アンダーコート層がバリア層と有機太陽電池素子との間で応力緩和層として働き、有機太陽電池の破壊を防ぎ、耐久性やフレキシブル性を向上させる事が出来る。
また、アンダーコート層の弾性率が、バリア層の弾性率に対して低く、1/100以下、より好ましくは1/500以下であることが好ましい。
また、アンダーコート層の熱膨張率が、20ppm/℃以上が好ましく、50ppm/℃以上がより好ましい。一方、200ppm/℃以下が好ましく、100ppm/℃以下であることがより好ましい。
アンダーコート層の厚みは、通常0.1μm以上であり、0.2μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。一方、上限は、通常20μm以下であり、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。このような範囲にすることで、有機太陽電池のフレキシブル性を維持しつつ、応力緩衝効果を適切に発揮でき、また、平滑なバリア層の製膜面を作ることが可能になるため、バリア層の密着性を良好にすることができる。
本発明の有機太陽電池の前記バリア層側が光入射面(サブストレート構造)である場合には光吸収を妨げない観点から、アンダーコート層は光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、なかでも好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上である。太陽光をより多く電気エネルギーに変換するためである。
一方、有機太陽電池の基材側が光入射面(スーパーストレート構造)である場合には、上記の光を透過させるもの以外にも黒色や金属光沢等の不透明であってもよい。活性層を透過した光を再度活性層に向けて反射するものなど、目的に応じて任意に設定することができる。
<3.バリア層>
本発明の有機太陽電池は、有機太陽電池素子上に積層したアンダーコート層にバリア層を積層する。バリア層は、熱による有機太陽電池素子の劣化、水分や酸素等のガスによる有機太陽電池素子の劣化を防止する層である。
有機半導体を含む有機太陽電池素子は湿気及び酸素に弱い傾向があり、電極や有機半導体層が水分及び酸素により劣化することがある。そこで、バリア層で有機太陽電池素子を
被覆することにより、水及び酸素から保護することが好ましい。そうすることで、有機太陽電池の出力の低下等を防ぐことができる。
バリア層には、金属、酸化物、窒化物、酸窒化物等の無機化合物が好適に用いられる。具体的には、ケイ素、アルミニウム、インジウム、スズ、亜鉛、チタン、タンタル、タングステンからなる群の内の少なくともいずれか1つの金属の酸化物、窒化物、酸窒化物、またはこれらの混合物を主成分とすることが好ましい。なお、本発明の趣旨に反しない限り、他の成分が共存していてもよい。これら以外にもバリア性の高い樹脂、例えば、ポリビニルアルコール等を用いることもできる。上述した中では、高いバリア性と透明性という観点から、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛が好ましい。
バリア層を積層させる方法としては、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、化学蒸着(CVD)、フラッシュ蒸着等のいずれか又はこれらの組み合わせによる真空製膜方式(ドライプロセス)を用いることができる。真空製膜方式は、真空状態あるいは減圧下で薄膜を形成する方法を意味する。上記のような真空製膜方式により、緻密なバリア層の形成が可能となる。
バリア層の常温域(23℃)で測定した弾性率は、通常1GPa以上、好ましくは5GPa以上、より好ましくは10GPa以上である。上限は、通常500GPa以下であり、200GPa以下が好ましく、100GPa以下がより好ましい。
バリア層の厚みは、通常20nm以上であり、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。一方、上限は、通常10μm以下であり、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。このような範囲にすることで、十分なバリア性を確保しつつ、有機太陽電池の柔軟性を維持することができる。
なお、本発明に用いるバリア層は、以下に記載の水蒸気透過率を満たすものであることが好ましい。バリア層の1μm厚における水蒸気透過率Pdは、外部からの水分の浸入を遮断するため、40℃90%RH環境下で10-1g/m2/day以下である必要があるが、より好ましくは10-2g/m2/day以下、さらに好ましくは10-3g/m2/day以下、10-4g/m2/day以下とバリア性能が高い程好ましい。ただし、現状の技術では透明かつフレキシブルでバリア性能を上げていくと、製造コストもそれに連動して上がることになるので、通常は10-3g/m2/day〜10-4g/m2/dayの範囲にあることが現実的に最も好ましいバリア性能となる。水蒸気透過率は、JIS K7129に準じた感湿センサ、赤外線センサ、ガスクロマトグラフを備えた装置による測定、カップ法(JIS Z0208)により、40℃90%RH環境で測定する。
バリア層の酸素透過性の程度は、一般的には、25℃環境下で1μm厚での単位面積(1m2)の1日あたりの酸素透過率が、1cc/m2/day/atm以下であることが好ましく、1×10-1cc/m2/day/atm以下であることがより好ましく、1×10-2cc/m2/day/atm以下であることが更に好ましく、1×10-3cc/m2/day/atm以下であることが中でも好ましく、1×10-4cc/m2/day/atm以下であることがとりわけ好ましく、1×10-5cc/m2/day/atm以下であることが特に好ましい。酸素が透過しなければしないほど、有機太陽電池の酸化による劣化が抑えられる。なお、酸素透過率は、JIS K7126Aに準じた差圧法に基づく装置、あるいはJIS K7126Bに準じた等圧法に基づく赤外線センサ、ガスクロマトグラフを備えた装置で測定することができる。
また、本発明の有機太陽電池においては、光吸収を妨げない観点から、バリア層は可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率
は、通常75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。
<4.オーバーコート層>
本発明では、バリア層にオーバーコート層を積層することもできる。オーバーコート層を用いることで、バリア層を保護し、バリア性能をさらに向上させ、有機太陽電池素子の劣化を抑えることができる。
オーバーコート層には、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド等の樹脂を用いることができるが、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。オーバーコート層に用いる樹脂は、熱硬化性または紫外線硬化性であることが好ましい。これらの樹脂は、単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
オーバーコート層は、バリア層を保護する機能を有する。従って、オーバーコート層の材料としては、弾性率を比較的高い範囲で調整しやすい、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂から選択される一種以上を含むことが好ましい。
また、アンダーコート層の材料と、オーバーコート層の材料の組み合わせとしては、アンダーコート層の材料が、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂から選択される一種以上を含み、かつオーバーコート層の材料が、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂から選択される一種以上を含むのが好ましい。
オーバーコート層を積層させる方法としては、アンダーコート層と同様に、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ダイコート、ロールコート、バーコート等の大気圧下のウェット塗布方式によるものが挙げられる。また、スパッタリングやフラッシュ蒸着などのドライプロセスによる方法を用いてもよいし、上記の樹脂をフィルム状にしたものを、加熱圧着等で積層することや、接着層を介して積層することもできる。
オーバーコート層の常温域(23℃)で測定した弾性率は、通常10MPa以上、好ましくは100MPa以上、より好ましくは200MPa以上である。上限は、通常20GPa以下であり、好ましくは10GPa以下、より好ましくは5GPa以下、更に好ましくは3GPa以下である。オーバーコート層に求められる機能により、前述のアンダーコート層よりも高い弾性率を有するのが好ましい。
本発明では、アンダーコート層とオーバーコート層の弾性率の関係が、アンダーコート層の弾性率がオーバーコート層の弾性率の1/10以上2倍以下であることが好ましく、1/5以上1倍以下であることがより好ましい。
また、アンダーコート層の弾性率が20GPa以下であり、かつオーバーコート層の弾性率が100MPa以上であり、さらにアンダーコート層の弾性率がオーバーコート層の弾性率の1/10以上2倍以下であることが好ましい。
オーバーコート層の厚みは、通常0.1μm以上であり、0.2μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。一方、上限は、通常10μm以下であり、5μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましい。上記下限以上であることにより、バリア層の保護効果を向上させることができる。また、上記上限以下であることにより、有機太陽電池の可撓性を向上させることができる。
また、本発明において、有機太陽電池の光吸収を妨げない観点から、オーバーコート層は可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、その中でも特に好ましくは97%以上である。
また、オーバーコート層の熱膨張率が、20ppm/℃以上であることが好ましく、50ppm/℃以上がより好ましく、200ppm/℃以下であることが好ましく、100ppm/℃以下であることがより好ましい。さらに、オーバーコート層の鉛筆硬度がB以上であることが好ましく、H以上あることがより好ましい。そして、オーバーコート層の厚み10μm換算での透湿度が10g/m2/day以下であることが好ましく、10g/m2/day以下であることがより好ましい。
<5.フィルム状部材>
本発明では、バリア層やオーバーコート層にさらにフィルム状部材を設けることができる。フィルム状部材は温度変化、湿度変化、光、風雨などデバイス設置環境から有機太陽電池を保護し、劣化を防ぐ。
フィルム状部材は、有機太陽電池の最表層に位置するため、耐候性、耐熱性、透明性、撥水性、耐汚染性、機械強度などの、有機太陽電池の表面被覆材として好適な性能を備え、しかもそれを屋外暴露において長期間維持する性質を有することが好ましい。
さらに、有機太陽電池は、光を受けて熱せられることが多いため、フィルム状部材も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、フィルム状部材の構成材料の融点は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、通常350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下である。融点を高くすることで有機太陽電池の使用時にフィルム状部材が融解・劣化する可能性を低減できる。
フィルム状部材を構成する材料は、任意である。その材料の例を挙げると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
中でも好ましくはフッ素系樹脂が挙げられ、その具体例を挙げるとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3−フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリフッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。
なお、フィルム状部材は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていても良い。また、フィルム状部材は単層フィルムにより形成されていても良いが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
フィルム状部材の厚みは、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、通常200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。厚みを厚くすることで機械的強度が高まる傾向にあり、薄くすることで柔軟性が高まる傾向にある。このため、両方の利点を兼ね備える範囲として、上記範囲とするのが望ましい。
またフィルム状部材には、他のフィルムとの接着性の改良のために、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を行なってもよい。
また、フィルム状部材に紫外線遮断、熱線遮断、防汚性、親水性、疎水性、防曇性、耐擦性、導電性、反射防止、防眩性、光拡散、光散乱、波長変換、ガスバリア性等の機能を付与してもよい。特に、有機太陽電池は、太陽光からの強い紫外線にさらされることから、紫外線遮断機能を持つことが好ましい。
このような機能を付与する方法としては、機能を有する層を塗布成膜等によりフィルム状部材上に積層してもよいし、機能を発現する材料を溶解・分散させるなどしてフィルム状部材に含有させてもよい。
フィルム状部材を積層する方法としては特に限定されず、熱ラミネート法により加熱圧着する方法等が挙げられるが、接着層を介して積層することが好ましい。接着層の材質等は特に制限されないが、通常例えば、エチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、マレイン酸またはシラン等で変性した変性ポリエチレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、またエポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等の材料が用いられる。接着層の厚さは、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。一方、上限は100μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましい。
また、フィルム状部材や接着層は、有機太陽電池の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させるものが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の光の透過率は、通常75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、なかでも好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上である。
以下、本発明の有機太陽電池について図面を参照して説明するが、本発明はこのような実施態様のみに限定されるわけではない。
図2は、本発明の有機太陽電池の一態様を示す。図2では、基材106上に、一対の電極、活性層等(図1の101〜105)が形成された有機太陽電池素子107の上に、アンダーコート層221、バリア層222が積層され、有機太陽電池230を形成している。アンダーコート層221が有機太陽電池素子107の形成により生じた微細な凹凸を平滑にするため、緻密なバリア層222を形成することができる。また、適度な弾性率を有するアンダーコート層221が、有機太陽電池素子107とバリア層222との間で、応力緩和層として働く。
図3では、バリア層222にさらにオーバーコート層223が積層されている。オーバーコート層223によりバリア層222が保護され、優れたバリア性能を長期間維持することができる。
図4では、オーバーコート層223にさらにフィルム状部材225が接着層224を介して積層されている。フィルム状部材225により、耐候性や耐熱性が付与され、雨風や紫外線等に晒されるような過酷な環境下であっても耐用年数を高めることができる。
<6.本発明の有機太陽電池を用いた有機薄膜太陽電池モジュール>
本発明に係る有機太陽電池230は、有機太陽電池モジュール、なかでも有機薄膜太陽電池モジュールの有機太陽電池として使用されることが好ましい。
図5は本発明の有機太陽電池の使用例としての有機薄膜太陽電池モジュールの構成を模式的に示す断面図である。図5に示すように、本態様の有機薄膜太陽電池モジュール14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、有機太陽電池6と、封止材7と、ゲッター材フィル
ム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10とをこの順に備える。そして、耐候性保護フィルム1が形成された側(図中下方)から光が照射されて、有機太陽電池6が発電するようになっている。
なお、本発明の有機太陽電池6は基材とバリア層で上下面を挟まれており、それ自体で封止構造を有するため、ゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。また、ゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いる場合であっても、従来の有機薄膜太陽電池モジュールよりもこれらのフィルムの薄膜化や低性能なものの使用が可能になるため、有機太陽電池の薄膜化やフレキシブル性の向上が可能である。
さらに、特にガスバリア性を求められる用途においても、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、ゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
[6−1.耐候性保護フィルム(1)]
耐候性保護フィルム1は天候変化から有機太陽電池6を保護するフィルムである。耐候性保護フィルム1で有機太陽電池6を覆うことにより、有機太陽電池6等を天候変化等から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。耐候性保護フィルム1は、有機薄膜太陽電池モジュール14の最表層に位置するため、耐候性、耐熱性、透明性、撥水性、耐汚染性及び/又は機械強度等の、有機薄膜太陽電池モジュール14の表面被覆材として好適な性能を備え、しかもそれを屋外暴露において長期間維持する性質を有することが好ましい。
また、耐候性保護フィルム1は、有機太陽電池6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率が80%以上であることが好ましく、上限に制限はない。さらに、有機薄膜太陽電池モジュール14は光を受けて熱せられることが多いため、耐候性保護フィルム1も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、耐候性保護フィルム1の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
耐候性保護フィルム1を構成する材料は、天候変化から有機太陽電池6を保護することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、シリコン系樹脂又はポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
なお、耐候性保護フィルム1は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、耐候性保護フィルム1は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
耐候性保護フィルム1の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上200μm以下である。
また耐候性保護フィルム1には、他のフィルムとの接着性の改良のために、コロナ処理及び/又はプラズマ処理等の表面処理を行ってもよい。
耐候性保護フィルム1は、有機薄膜太陽電池モジュール14においてできるだけ外側に設けることが好ましい。有機薄膜太陽電池モジュール14の構成部材のうちより多くのものを保護できるようにするためである。
[6−2.紫外線カットフィルム(2)]
紫外線カットフィルム2は紫外線の透過を防止するフィルムである。紫外線カットフィルム2を有機薄膜太陽電池モジュール14の受光部分に設け、紫外線カットフィルム2で有機太陽電池6の受光面6aを覆うことにより、有機太陽電池6及び必要に応じてガスバリアフィルム3、9等を紫外線から保護し、発電能力を高く維持することができるようになっている。
紫外線カットフィルム2に要求される紫外線の透過抑制能力の程度は、紫外線(例えば、波長300nm)の透過率が50%以下であることが好ましく、下限に制限はない。また、紫外線カットフィルム2は、有機太陽電池6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率が80%以上であることが好ましく、上限に制限はない。
さらに、有機薄膜太陽電池モジュール14は光を受けて熱せられることが多いため、紫外線カットフィルム2も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、紫外線カットフィルム2の構成材料の荷重たわみ温度は、通常80℃以上350℃以下である。
また、紫外線カットフィルム2は、柔軟性が高く、隣接するフィルムとの接着性が良好であり、水蒸気や酸素をカットしうることが好ましい。
紫外線カットフィルム2を構成する材料は、紫外線の強度を弱めることができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系又はエステル系の樹脂に紫外線吸収剤を配合して成膜したフィルム等が挙げられる。また、紫外線吸収剤を樹脂中に分散あるいは溶解させたものの層(以下、適宜「紫外線吸収層」という)を基材フィルム上に形成したフィルムを用いてもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系のもの等を用いることができる。なお、紫外線吸収剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。上述のように、紫外線吸収フィルムとしては紫外線吸収層を基材フィルム上に形成したフィルムを用いることもできる。このようなフィルムは、例えば、紫外線吸収剤を含む塗布液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させることで作製できる。
基材フィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なフィルムが得られる点で、例えばポリエステルが挙げられる。
紫外線カットフィルム2の具体的な商品の例を挙げると、カットエース(MKVプラスティック株式会社)等が挙げられる。なお、紫外線カットフィルム2は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。
また、紫外線カットフィルム2は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。紫外線カットフィルム2の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。
紫外線カットフィルム2は、有機太陽電池6の受光面6aの少なくとも一部を覆う位置に設ければよいが、好ましくは有機太陽電池6の受光面6aの全てを覆う位置に設ける。
ただし、有機太陽電池6の受光面6aを覆う位置以外の位置にも紫外線カットフィルム2が設けられていてもよい。
[6−3.ガスバリアフィルム(3)]
ガスバリアフィルム3は水及び酸素の透過を防止するフィルムである。ガスバリアフィルム3で有機太陽電池6を被覆することにより、有機太陽電池6を水及び酸素から保護し、発電能力を高く維持することができる。
ガスバリアフィルム3に要求される防湿能力の程度は、有機太陽電池6の種類等に応じて様々であるが、単位面積(1m2)の1日あたりの水蒸気透過率が、通常1×10-1g/m2/day以下であることが好ましく、下限に制限はない。
ガスバリアフィルム3に要求される酸素透過性の程度は、有機太陽電池6の種類等に応じて様々であるが、単位面積(1m2)の1日あたりの酸素透過率が、通常1×10-1cc/m2/day/atm以下であることが好ましく、下限に制限はない。
また、ガスバリアフィルム3は、有機太陽電池6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率は、通常60%以上であり、上限に制限はない。
さらに、有機薄膜太陽電池モジュール14は光を受けて熱せられることが多いため、ガスバリアフィルム3も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ガスバリアフィルム3の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
ガスバリアフィルム3の具体的な構成は、有機太陽電池6を水から保護できる限り任意である。ただし、ガスバリアフィルム3を透過しうる水蒸気や酸素の量を少なくできるフィルムほど製造コストが高くなるため、これらの点を総合的に勘案して適切なものを使用することが好ましい。
なかでも好適なガスバリアフィルム3としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)或いはポリエチレンナフタレート(PEN)等の基材フィルムにSiOxを真空蒸着したフィルム等が挙げられる。
なお、ガスバリアフィルム3は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、ガスバリアフィルム3は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ガスバリアフィルム3の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。
ガスバリアフィルム3は、有機太陽電池6を被覆して湿気及び酸素から保護できればその形成位置に制限は無いが、有機太陽電池6の正面(受光面側の面。図5では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図5では上側の面)を覆うことが好ましい。有機薄膜太陽電池モジュール14においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いためである。本実施形態ではガスバリアフィルム3が有機太陽電池6の正面を覆い、後述するガスバリアフィルム9が有機太陽電池6の背面を覆うようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
[6−4.ゲッター材フィルム(4)]
ゲッター材フィルム4は水分及び/又は酸素を吸収するフィルムである。ゲッター材フィルム4で有機太陽電池6を覆うことにより、有機太陽電池6等を水分及び/又は酸素から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。ここで、ゲッター材フィルム4は上記のようなガスバリアフィルム3とは異なり、水分の透過を妨げるものではなく、水分を吸収するものである。水分を吸収するフィルムを用いることにより、ガスバリアフィルム3等で有機太陽電池6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間に僅かに浸入する水分をゲッター材フィルム4が捕捉して水分による有機太陽電池6への影響を排除できる。
ゲッター材フィルム4の水分吸収能力の程度は、通常0.1mg/cm2以上であり、上限に制限は無いが、通常10mg/cm2以下である。また、ゲッター材フィルム4が酸素を吸収することにより、ガスバリアフィルム3及び9等で有機太陽電池6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間に僅かに浸入する酸素をゲッター材フィルム4が捕捉して酸素による有機太陽電池6への影響を排除できる。
さらに、ゲッター材フィルム4は、有機太陽電池6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率は、通常60%以上であり、上限に制限はない。
さらに、有機薄膜太陽電池モジュール14は光を受けて熱せされることが多いため、ゲッター材フィルム4も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ゲッター材フィルム4の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
ゲッター材フィルム4を構成する材料は、水分及び/又は酸素を吸収することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、水分を吸収する物質としてアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルカリ土類金属の酸化物;アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;シリカゲル、ゼオライト系化合物、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム又は硫酸ニッケル等の硫酸塩;アルミニウム金属錯体又はアルミニウムオキサイドオクチレート等の有機金属化合物等が挙げられる。具体的には、アルカリ土類金属としては、Ca、Sr又はBa等が挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物としては、CaO、SrO又はBaO等が挙げられる。その他にZr−Al−BaOやアルミニウム金属錯体等も挙げられる。具体的な商品名を挙げると、例えば、OleDry(双葉電子社製)等が挙げられる。
酸素を吸収する物質としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、酸化マグネシウム又は酸化鉄等が挙げられる。またFe、Mn、Zn、及びこれら金属の硫酸塩・塩化物塩・硝酸塩等の無機塩も挙げられる。
なお、ゲッター材フィルム4は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、ゲッター材フィルム4は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ゲッター材フィルム4の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。
ゲッター材フィルム4は、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間内であればその形成位置に制限は無いが、有機太陽電池6の正面(受光面側の面。図5では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図5では上側の面)を覆うことが好ましい。有機薄膜太陽電池モジュール14においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成される
ことが多いため、これらの面を介して水分及び酸素が浸入する傾向があるからである。この観点から、ゲッター材フィルム4はガスバリアフィルム3と有機太陽電池6との間に設けることが好ましい。本実施形態ではゲッター材フィルム4が有機太陽電池6の正面を覆い、後述するゲッター材フィルム8が有機太陽電池6の背面を覆い、ゲッター材フィルム4,8がそれぞれ有機太陽電池6とガスバリアフィルム3,9との間に位置するようになっている。なお、後述するバックシート10としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム8及び/又はガスバリアフィルム9を用いなくてもよい。
[6−5.封止材(5)]
封止材5は、有機太陽電池6を補強するフィルムである。有機太陽電池6は薄いため通常は強度が弱く、ひいては有機薄膜太陽電池モジュールの強度が弱くなる傾向があるが、封止材5により強度を高く維持することが可能である。
また、封止材5は、有機薄膜太陽電池モジュール14の強度保持の観点から強度が高いことが好ましい。具体的強度については、封止材5以外の耐候性保護フィルム1やバックシート10の強度とも関係することになり一概には規定しにくいが、有機薄膜太陽電池モジュール14全体が良好な曲げ加工性を有し、折り曲げ部分の剥離を生じないような強度を有するのが望ましい。
また、封止材5は、有機太陽電池6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率は、通常60%以上であり、上限に制限はない。
封止材5の厚みは特に規定されないが、通常2μm以上700μm以下である。
封止材5の基材に対するT型剥離接着強さは通常1N/インチ以上通常2000N/インチ以下である。T型剥離接着強さが1N/インチ以上であることは、モジュールの長期耐久性を確保できる点で好ましい。T型剥離接着強さが2000N/インチ以下であることは、太陽電池を廃棄する際に、基材やバリアフィルムと接着材を分別して廃棄できる点で好ましい。T型剥離接着強さはJIS K6854に準拠する方法により測定する。
封止材5の構成材料としては、上記特性を有する限り特段の制限はないが、有機・無機の太陽電池の封止、有機・無機のLED素子の封止、又は電子回路基板の封止等に一般的に用いられている封止用材料を用いる事ができる。
具体的には、熱硬化性樹脂組成物又は熱可塑性樹脂組成物及び活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物とは例えば、紫外線、可視光、電子線等で硬化する樹脂のことである。より具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂組成物、炭化水素系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、又はシリコン系樹脂組成物等が挙げられ、それぞれの高分子の主鎖、分岐鎖、末端の化学修飾、分子量の調整、添加剤等によって、熱硬化性、熱可塑性及び活性エネルギー線硬化性等の特性が発現する。
また、有機薄膜太陽電池モジュール14は光を受けて熱せられることが多いため、封止材5も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、封止材5の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
封止材5中の封止材用構成材料の密度は、0.80g/cm3以上が好ましく、上限に
制限はない。なお、密度の測定と評価は、JIS K7112に準拠する方法によって実施することができる。
封止材5を設ける位置に制限は無いが、通常は有機太陽電池6を挟み込むように設ける。有機太陽電池6を確実に保護するためである。本実施形態では、有機太陽電池6の正面及び背面にそれぞれ封止材5及び封止材7を設けるようにしている。
[6−6.有機太陽電池(6)]
有機太陽電池6は、前述の有機太陽電池230と同様である。すなわち、有機太陽電池230を用いて有機薄膜太陽電池モジュール14を製造することができる。
有機太陽電池6は、有機薄膜太陽電池モジュール14一個につき一個だけを設けてもよいが、通常は2個以上の有機太陽電池6を設ける。具体的な有機太陽電池6の個数は任意に設定すればよい。有機太陽電池6を複数設ける場合、有機太陽電池6はアレイ状に並べて設けられていることが多い。
有機太陽電池6を複数設ける場合、通常は、有機太陽電池6同士は電気的に接続され、接続された一群の有機太陽電池6から生じた電気を端子(図示せず)から取り出すようになっていて、この際、電圧を高めるため通常は有機太陽電池は直列に接続される。
このように有機太陽電池6同士を接続する場合には、有機太陽電池6間の距離は小さいことが好ましく、ひいては、有機太陽電池6と有機太陽電池6との間の隙間は狭いことが好ましい。有機太陽電池6の受光面積を広くして受光量を増加させ、有機薄膜太陽電池モジュール14の発電量を増加させるためである。
[6−7.封止材(7)]
封止材7は、上述した封止材5と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は封止材7と同様のものを同様に用いることができる。また、有機太陽電池6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
[6−8.ゲッター材フィルム(8)]
ゲッター材フィルム8は、上述したゲッター材フィルム4と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はゲッター材フィルム4と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。また、有機太陽電池6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
[6−9.ガスバリアフィルム(9)]
ガスバリアフィルム9は、上述したガスバリアフィルム3と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はガスバリアフィルム9と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。また、有機太陽電池6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
[6−10.バックシート(10)]
バックシート10は、上述した耐候性保護フィルム1と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は耐候性保護フィルム1と同様のものを同様に用いることができる。また、このバックシート10が水及び酸素を透過させ難いものであれば、バックシート10をガスバリア層として機能させることも可能である。また、有機太陽電池6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
[6−11.寸法等]
本実施形態の有機薄膜太陽電池モジュール14は、通常、膜状の薄い部材である。このように膜状の部材として有機薄膜太陽電池モジュール14を形成することにより、有機薄膜太陽電池モジュール14を建材、自動車又はインテリア等に容易に設置できるようになっている。有機薄膜太陽電池モジュール14は、軽く、割れにくく、従って安全性の高い太陽電池が得られ、また曲面にも適用可能であるため更に多くの用途に使用しうる。薄くて軽いため輸送や保管等流通面でも好ましい。更に、膜状であるためロールトゥロール式の製造が可能であり大幅なコストカットが可能である。
有機薄膜太陽電池モジュール14の具体的な寸法に制限は無いが、その厚みは、通常300μm以上3000μm以下である。
[6−12.製造方法]
有機薄膜太陽電池モジュール14の製造方法に制限は無いが、例えば、図5の形態の太陽電池モジュールの製造方法としては、図5に示される積層体を作成した後に、ラミネート封止工程を行う方法が挙げられる。本実施形態の有機太陽電池は、耐熱性に優れるため、ラミネート封止工程による劣化が低減される点で好ましい。
図5に示される積層体作成は周知の技術を用いて行うことができる。ラミネート封止工程の方法は、本発明の効果を損なわなければ特に制限はないが、例えば、ウェットラミネート、ドライラミネート、ホットメルトラミネート、押出しラミネート、共押出成型ラミネート、押出コーティング、光硬化接着剤によるラミネート、サーマルラミネート等が挙げられる。なかでも有機ELデバイス封止で実績のある光硬化接着剤によるラミネート法、太陽電池で実績のあるホットメルトラミネート又はサーマルラミネートが好ましく、さらに、ホットメルトラミネート又はサーマルラミネートがシート状の封止材を使用できる点でより好ましい。
ラミネート封止工程の加熱温度は通常130℃以上、好ましくは140℃以上であり、通常180℃以下、好ましくは170℃以下である。ラミネート封止工程の加熱時間は通常10分以上、好ましくは20分以上であり、通常100分以下、好ましくは90分以下である。ラミネート封止工程の圧力は通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上であり、通常0.2MPa以下、好ましくは0.1MPa以下である。圧力をこの範囲とすることで封止を確実に行い、かつ、端部からの封止材5,7のはみ出しや過加圧による膜厚低減を抑え、寸法安定性を確保しうる。なお、2個以上の有機太陽電池6を直列又は並列接続したものも上記と同様にして、製造することができる。
[6−13.用途]
本発明の有機太陽電池の用途に制限はなく、任意の用途に用いることができる。有機薄膜太陽電池を適用する分野の例を挙げると、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池等である。
本発明に係る有機太陽電池、特には有機薄膜太陽電池モジュールはそのまま用いても、基材上に有機薄膜太陽電池モジュールを設置して太陽電池パネルとして用いてもよい。例えば、図6に模式的に示すように、基材12上に有機薄膜太陽電池モジュール14を備えた太陽電池パネル13を用意し、これを使用場所に設置して用いればよい。すなわち、有機薄膜太陽電池モジュール14を用いて太陽電池パネル13を製造することができる。具体例を挙げると、基材12として建材用板材を使用する場合、この板材の表面に有機薄膜太陽電池モジュール14を設けることにより、太陽電池パネル13として太陽電池パネル
を作製することができる。
基材12は有機薄膜太陽電池モジュール14を支持する支持部材である。基材12を形成する材料としては、例えば、ガラス、サファイア及びチタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂、塩化ビニル、ポリエチレン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート及びポリノルボルネン等の有機材料;紙及び合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン及びアルミニウム等の金属;ステンレス、チタン及びアルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料;等が挙げられる。
なお、基材の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、これら有機材料あるいは紙材料に炭素繊維を含ませ、機械的強度を補強させてもよい。基材12の例を挙げると、アルポリック(登録商標;三菱樹脂製)等が挙げられる。
基材12の形状に制限はないが、通常は板材を使用する。また、基材12の材料、寸法等は、その使用環境に応じて任意に設定すればよい。この太陽電池パネルは、建物の外壁等に設置することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明が以下の実施例にのみ限定されないことはいうまでもない。
<実施例1>
ガラス基板(厚さ:0.7mm)にITO(厚さ:80nm)、P3HT/PCBM(厚さ:400nm)、Ag(厚さ:50nm)を、それぞれスパッタ、溶液塗布、蒸着により順次積層した有機太陽電池素子に、汎用有機溶剤可溶性で、且つ、架橋性の水酸基を有するポリエステル系樹脂(商品名:東洋紡株式会社「バイロン(登録商標)・200」)をメチルエチルケトンに溶解し、イソシアネート硬化剤(商品名:日本ポリウレタン工業株式会社「コロネートHL」)を添加・攪拌し、スピンコート法により塗布し、80℃×5分間の溶剤乾燥の後、100℃×30分の加熱硬化処理を施し、アンダーコート層(厚さ0.2μm、弾性率2GPa)を形成した。
さらにアンダーコート層の上に、シリカ層をプラズマCVD法により蒸着させ、バリア層(厚さ0.5μm、弾性率100GPa)を積層し、有機太陽電池1を得た。
<実施例2>
アンダーコート層のポリエステル樹脂をイソシアネート架橋性のポリウレタン樹脂(商品名:東洋モートン「TM−K51」)とした以外は、実施例1と同様にして、有機太陽電池2(アンダーコート層の厚さ0.2μm、弾性率800MPa)を得た。
<実施例3>
アンダーコート層のポリエステル樹脂を有機シリケート樹脂(商品名:荒川化学「コンポセラン」)とし、また100℃×30分の加熱硬化処理をUV硬化処理に変更した(高圧水銀灯(ウシオ電機社製、型式:UVC−5035/1MNLC6−HGO)を使用し積算照射量500mJ/cm2に達するまで照射)以外は、実施例1と同様にして、有機太陽電池3(アンダーコート層の厚さ0.2μm、弾性率10GPa)を得た。
<実施例4>
アンダーコート層の厚みを2.0μmとした以外は、実施例1と同様にして、有機太陽電池4を得た。
<実施例5>
アンダーコート層を、メタアクリロイル基を有するアクリル酸エステル系オリゴマーと紫外線硬化性を有するアクリルモノマーのブレンド組成物を主成分とし、光重合開始剤を含むアクリル樹脂(商品名:三菱レイヨン社「レイクイーン・RQ−5005」)を酢酸エチル・トルエン混合溶媒により希釈し、スピンコート法により塗布した点と、100℃×30分の加熱硬化処理をUV硬化処理に変更した(高圧水銀灯(ウシオ電機社製、型式:UVC−5035/1MNLC6−HGO)を使用して、積算照射量500mJ/cm2に達するまで照射)以外は、実施例4と同様にして、有機太陽電池5(アンダーコート層の厚さ2μm、弾性率4GPa)を得た。
<実施例6>
バリア層上に、メタアクリロイル基を有するアクリル酸エステル系オリゴマーと紫外線硬化性を有するアクリルモノマーのブレンド組成物を主成分とし、光重合開始剤を含むアクリル樹脂(商品名:三菱レイヨン社「レイクイーン・RQ−5005」)を酢酸エチル・トルエン混合溶媒により希釈し、スピンコート法により塗布し、80℃×5分間の溶剤乾燥の後、高圧水銀灯(ウシオ電機社製、型式:UVC−5035/1MNLC6−HGO)を使用して、積算照射量500mJ/cm2に達するまで紫外線照射して硬化させ、オーバーコート層(厚さ2μm、弾性率4GPa)を積層した以外は、実施例1と同様にして、有機太陽電池6を得た。
<比較例1>
アンダーコート層を積層しなかった以外は、実施例1と同様にして、有機太陽電池7を得た。
<耐候性試験>
上記のようにして得られた実施例1,2,3,4および比較例1の有機太陽電池について、耐候性試験を行った。
(試験方法・結果)
ATLAS社製耐光性試験機(CI−4000)を使用し、温度55℃相対湿度55%の環境条件下で、1SUN(1.5AM相当)の光照射を行った。試験開始前、開始後120時間、240時間で素子効率の測定を行い、試験開始前に対する相対的な効率変化を求めることで素子劣化を評価した。その結果を表1に示す。
<ダンプヒート試験>
上記のようにして得られた実施例5,6および比較例1の有機太陽電池についてダンプヒート試験を行った。
(試験方法・結果)
温度55℃相対湿度55%の環境条件下で、光照射を行わずに保持した。試験開始前、開始後50時間、100時間で素子効率の測定を行い、試験開始前に対する相対的な効率変化を求めることで素子劣化を評価した。その結果を表2に示す。
アンダーコートを設けなかった比較例1に対して、実施例1〜3はアンダーコートも設けることで有意に劣化が抑制されており、また実施例4ではアンダーコートを厚くすることでさらに劣化が抑制されることが示されている。
ダンプヒート試験では湿熱によってバリア層が破壊され有機太陽電池に水分が浸透することで劣化が進行すると考えられるが、アンダーコートを設けなかった比較例1では素子が劣化し短絡に至ったのに対して、アンダーコートを設けた実施例5では有意に劣化が抑制されており、また加えてオーバーコートも設けた実施例6ではさらに劣化が抑制されることが示されている。
すなわち、これらの実施例により、本発明が効果を奏することは明らかである。
101 カソード
102 電子取り出し層
103 活性層
104 正孔取り出し層
105 アノード
106 基材(有機太陽電池素子の支持体)
107 有機太陽電池素子
221 アンダーコート層
222 バリア層
223 オーバーコート層
224 接着層
225 フィルム状部材
230 有機太陽電池
1 耐候性保護フィルム
2 紫外線カットフィルム
3,9 ガスバリアフィルム
4,8 ゲッター材フィルム
5,7 封止材
6 有機太陽電池
10 バックシート
12 基材(有機太陽電池モジュールの支持体)
13 太陽電池パネル
14 有機薄膜太陽電池モジュール

Claims (10)

  1. 基材上に少なくとも一対の電極と、該電極間に存在する活性層とを有する有機太陽電池素子を含み、該有機太陽電池素子上に、アンダーコート層を介してバリア層を有する有機太陽電池の製造方法であって、
    前記アンダーコート層が積層された有機太陽電池素子上にバリア層を製膜する工程、を有し、
    前記アンダーコート層は有機高分子組成物からなる被膜であり、23℃における弾性率が20GPa以下であり、アンダーコート層の弾性率がバリア層の弾性率に対して1/100以下であり、且つアンダーコート層の厚みが0.1μm以上20μm以下である、有機太陽電池の製造方法。
  2. 前記バリア層にさらにオーバーコート層が積層されていることを特徴とする、請求項1に記載の有機太陽電池の製造方法。
  3. さらにフィルム状部材が接着層を介して積層されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の有機太陽電池の製造方法。
  4. アンダーコート層の23℃における弾性率が20GPa以下であり、かつオーバーコート層の23℃における弾性率が100MPa以上であり、さらにアンダーコート層の弾性率がオーバーコート層の弾性率の1/10以上2倍以下であることを特徴とする、請求項2または3に記載の有機太陽電池の製造方法。
  5. アンダーコート層の材料が、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂から選択される一種以上を含み、かつオーバーコート層の材料が、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂から選択される一種以上を含むことを特徴とする、請求項2〜のいずれかに記載の有機太陽電池の製造方法。
  6. バリア層が、真空蒸着、化学蒸着(CVD)、およびスパッタリングのいずれか又はこれらの組み合わせによる真空製膜方式で形成される、請求項1〜のいずれかに記載の有機太陽電池の製造方法。
  7. アンダーコート層が、大気圧下のウェット塗布方式で形成される、請求項1〜のいずれかに記載の有機太陽電池の製造方法。
  8. オーバーコート層が、大気圧下のウェット塗布方式で形成される、請求項2〜のいずれかに記載の有機太陽電池の製造方法。
  9. 基材が樹脂フィルムであることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の有機太陽電池の製造方法。
  10. 前記アンダーコート層が、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂である、請求項1〜のいずれかに記載の有機太陽電池の製造方法。
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