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JP2014239087A - 有機薄膜太陽電池の設置方法 - Google Patents

有機薄膜太陽電池の設置方法 Download PDF

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JP2014239087A
JP2014239087A JP2013119327A JP2013119327A JP2014239087A JP 2014239087 A JP2014239087 A JP 2014239087A JP 2013119327 A JP2013119327 A JP 2013119327A JP 2013119327 A JP2013119327 A JP 2013119327A JP 2014239087 A JP2014239087 A JP 2014239087A
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Kimiya Takeshita
公也 竹下
植松 卓也
Takuya Uematsu
卓也 植松
崇志 藤原
Takashi Fujiwara
崇志 藤原
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Abstract

【課題】バルクヘテロジャンクション型の光電変換層を有する有機薄膜太陽電池において、その性能を最大限に発揮するための設置方法を提供すること。
【解決手段】光電変換層を構成するバッファ層のうち、可視光の吸収率が小さいバッファ層の側を受光面として設置することで、課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、一対の透明電極、バッファ層、及び光電変換層を有する有機薄膜太陽電池を、被設置物に設置する方法に関する。
太陽電池では、光起電力効果を利用した光電変換素子を用いて、光エネルギーを直接電力に変換する。光電変換素子は、一般的に、一対の透明電極の間に光電変換層が保持されてなる構造を有する。
このような太陽電池の一態様として、シースルー型太陽電池が検討されている。シースルー型太陽電池は、入射した外光により発電するとともに、外光が太陽電池を透過するため透光性を確保することができる(例えば特許文献1、特許文献2、非特許文献1参照)。
特開平5−152593号公報 特開2002−299663号公報
OPTICS EXPRESS A513 Vol. 18, No. S4, 8 November 2010
本発明は、一対の透明電極、バッファ層、及び光電変換層を有する有機薄膜太陽電池において、その性能を最大限に発揮するための設置方法を提供することを課題とする。
上記非特許文献1では、シースルー型有機薄膜太陽電池素子の光学特性について検討している。具体的には、アノードとカソードで異なる材料を採用し、一方の電極の厚みを変化させて吸収率を変化させることで、光の入射方向によって発電量が非対称となる素子と、光の入射方向によっても発電量が良好なバランスとなる素子、とを製造できることが開示される。
一方で本発明者らは、有機薄膜太陽電池においてその性能を最大限に発揮すべく検討する過程において、吸収率が同様であっても発電量が大きく異なる場合があるという知見を得た。その知見に基づき、更に検討を進めたところ、有機薄膜太陽電池においてその発電量に大きく作用する要因は、有機薄膜太陽電池における入射光の吸収率ではなく、有機薄膜太陽電池のバッファ層の可視光の吸収率であることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の第一の実施態様は、
第一の透明電極、第一のバッファ層、光電変換層、第二のバッファ層、及び第二の透明電極を順次有する有機薄膜太陽電池を被設置物に設置する方法であって、
前記第一のバッファ層及び第二のバッファ層のうち、可視光の吸収率が小さいバッファ層の側を受光面として設置する、有機薄膜太陽電池の設置方法である。
また、本発明者らは、上記有機薄膜太陽電池における可視光の吸収率が同様であっても光の入射方向によって発電量が大きく異なる場合があるという知見に基づき、別の実施態様にも想到した。
本発明の第二の実施態様は、
第一の透明電極、第一のバッファ層、光電変換層、第二のバッファ層、及び第二の透明電極、
を有する有機薄膜太陽電池を被設置物に設置する方法であって、
前記有機薄膜太陽電池は、前記第一の透明電極方向から光を入射させた際の可視光の吸収率と、前記第二の透明電極方向から光を入射させた際の可視光の吸収率が略同一の値であり、
前記第一の透明電極方向から光を入射させた際の発電量と、前記第二の透明電極方向から光を入射させた際の発電量のうち、発電量が大きい透明電極側を受光面として設置する、有機薄膜太陽電池の設置方法である。
また、本発明においては、有機薄膜太陽電池が透光性を有することが好ましい。
本発明により、一対の透明電極、バッファ層、及び光電変換層を有する有機薄膜太陽電池において、その性能を最大限に発揮するための設置方法が提供される。
一般的な太陽電池素子の層構成を表す模式図である。 有機薄膜太陽電池の層構成を表す模式図である。 有機薄膜太陽電池の層構成を表す模式図である。
以下、本発明について、具体的な態様を示しながら詳細に説明するが、本発明は例示する具体的態様に限定されないことはいうまでもない。
本発明の第一の実施態様に係る有機薄膜太陽電池の設置方法は、有機薄膜太陽電池を被設置物に設置するものであり、その設置方法に特徴を有する。
本実施態様に用いる有機薄膜太陽電池は、第一の透明電極、第一のバッファ層、光電変換層、第二のバッファ層、及び第二の透明電極を順次有する。
本発明者らは、有機薄膜太陽電池において、その性能を最大限に発揮するため、バッファ層の可視光の吸収率に着目した。そして、アノード側のバッファ層とカソード側のバッファ層のうち、吸収率の小さなバッファ層側を受光面として被設置物に設置することで、その性能を最大限に引き出すことができることを見出した。このような設置方法により太陽電池の製造を最大限に引き出すことができる詳細なメカニズムは定かではないが、本発明者らは以下のように考えている。
有機薄膜太陽電池のうち、バルクヘテロジャンクション型の光電変換層を有する有機薄膜太陽電池では、バルクヘテロジャンクション層で光は吸収されてホールと電子が生じる。生じたホールと電子は、バルクヘテロジャンクション層からバッファ層を通過してカソードあるいはアノードに達し、電力として外部に取り出される。バッファ層に吸収があるとバルクヘテロジャンクション層に達する光量は減少し、生じるホールと電子の数は減少し、外部に取り出される電力量は減少する。
また、特に、光電変換層がバルクヘテロジャンクション型である場合には、以下のような事象も生じ得る。バルクヘテロジャンクション構造は、p型とn型の2種類の半導体を混合することでナノサイズのpn接合を無数に形成する構造を有する。一方で、それぞれの半導体化合物は固有の移動度を有しており、正孔や電子といった電荷の移動は当該移動度に依存する。そのため、両半導体間において移動度に差がある場合には、電荷の移動は移動度の小さい材料によって制限される。そのような場合には、取り出せる電流量は発生
する電荷量と移動度の積であるために、可視光吸収率の小さなバッファ層から光を照射する方が良い。
一方で、非特許文献1には、太陽電池の発電量はその吸収率に依存する旨の示唆がされている。しかしながら、本発明者らが検討したところ、太陽電池の一方の透明電極から光を入射させた際の可視光の吸収率と、太陽電池のもう一方の透明電極から光を入射させた際の可視光の吸収率が略同一である場合であっても、発電量が大きい受光面と発電量が小さい受光面が存在することに想到した。すなわち、太陽電池の一方の透明電極から光を入射させた際の可視光の吸収率と、太陽電池のもう一方の透明電極から光を入射させた際の可視光の吸収率が略同一の値であり、発電量が大きくなる透明電極側を受光面として設置することが、本発明の第二の実施態様である。このことについても、上述したバッファ層の可視光の吸収率の違いにより説明できる。
なお、第二の実施態様における略同一とは、可視光の吸収率の差が20%以内であることを意味し、好ましくは15%以内、より好ましくは10%以内、更に好ましくは5%以内、特に好ましくは3%以内である。
本発明の実施態様において、可視光の吸収率と、発電効率の測定方法は以下の通りである。
<可視光の吸収率>
測定対象物の透過率Tと反射率Rを、JIS R 3106:1998に準拠して測定し、次の式(1)にしたがって算出する。
式(1):A=1−R−T
なお、バッファ層の可視光の吸収率は、ガラス基板の上にバッファ層を所定の厚さで製膜して得たサンプルの透過率と反射率を測定し、吸収率を算出した後、前記所定の厚さが、有機薄膜太陽電池を構成するバッファ層の厚さと異なる場合には、実際に有機薄膜太陽電池を構成するバッファ層の厚さに補正することで求められる。
<有機薄膜太陽電池の発電効率>
有機薄膜太陽電池の一方の面を光源に向けて、JIS C 8935(アモルファス太陽電池モジュール出力測定方法)に基づいて測定し、発電効率を求める。他方の面も同様にして発電効率を求める。このようにして、それぞれの面を光源に向けた時の発電効率を比較する。
本実施態様に係る有機薄膜太陽電池は、透光性を有する(シースルー型ともいう)有機薄膜太陽電池であることが好ましい。透光性を有するとは、具体的には、JIS R 3106:1998に準拠して測定した可視光の透過率が通常1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上、特に好ましくは30%以上、中でも好ましくは40%以上であり、通常100%以下、好ましくは99%以下、より好ましくは98%以下である。
更に、透視性を有することが好ましい。透視性を有するとは、有機薄膜太陽電池の背面に存在する状況・様子が把握できることをいう。
また、本明細書における可視光の透過率は、JIS R 3106:1998に準拠して測定したものである。
以下、本実施態様に係る有機薄膜太陽電池の構成について図を用いて説明する。
本実施態様に係る有機薄膜太陽電池は、有機薄膜太陽電池素子が封止されてなる。
<1.有機薄膜太陽電池素子>
本実施態様に用いる有機薄膜太陽電池素子は、第一の透明電極、第一のバッファ層、光電変換層、第二のバッファ層、及び第二の透明電極を順次有する。図1は、有機薄膜太陽
電池素子の一般的な層構成を示す。図1に示される有機薄膜太陽電池素子107は、太陽電池素子基板106、カソードである第一の透明電極101、第一のバッファ層102、光電変換層103、第二のバッファ層104、アノードである第二の透明電極105が順次形成された層構造を有する。なお、第一の透明電極及び第二の透明電極は、それぞれカソード及びアノードのいずれかである。また、第一のバッファ層102、光電変換層103、第二のバッファ層104をまとめて有機層と称する場合がある。
<1−1.太陽電池素子基板>
有機薄膜太陽電池素子は、支持体となる太陽電池素子基板(以下、単に素子基板とも称する)を有する。すなわち、素子基板上に、一対の透明電極と、バッファ層と、光電変換層とが形成される。
素子基板の材料は、フィルム基板である限り特に限定されない。素子基板の材料の好適な例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル又はポリエチレン等のポリオレフィン;セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリノルボルネン又はエポキシ樹脂等の有機材料;紙又は合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン又はアルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料等が挙げられる。
本発明の好ましい実施態様であるシースルー型太陽電池の場合には、透光性が必要となり、透明性の高い材料を用いることが好ましい。
素子基板の形状はフィルム状である。素子基板の膜厚に制限はないが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、一方、通常1mm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは200μm以下である。基材の膜厚が5μm以上であることは、有機薄膜太陽電池素子の強度が不足する可能性が低くなるために好ましい。素子基板の膜厚が1mm以下であることは、コストが抑えられ、かつ重量が重くならないために好ましい。また、シースルー型太陽電池の場合には素子基板の膜厚が200μm以下であることが好ましい。また、素子基板の膜厚が前記上限以下であることにより、有機薄膜太陽電池が透光性および透視性を有しやすい。有機薄膜太陽電池が透光性および透視性を有しやすくするためには、素子基板の可視光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり、通常100%以下、好ましくは99%以下、より好ましくは98%以下である。
<1−2.透明電極>
透明電極は、光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有する。したがって、第一の透明電極および第二の透明電極として、正孔の捕集に適した透明電極(以下、アノードと記載する場合もある)と、電子の捕集に適した透明電極(以下、カソードと記載する場合もある)とを用いることが好ましい。透明電極の可視光の透過率は通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり、通常100%以下、好ましくは99%以下、より好ましくは98%以下であることが、透明電極を透過させて活性層103に光を到達させるために好ましい。
アノードとは、一般には仕事関数がカソードよりも高い導電性材料で構成され、活性層で発生した正孔をスムーズに取り出す機能を有する電極である。
アノードの材料を挙げると、例えば、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、インジウム−ジルコニウム酸化物(IZO)、酸化チタン、酸化インジウム又は酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;金、白金、銀、クロム又はコバルト
等の金属あるいはその合金が挙げられる。これらの物質は高い仕事関数を有するため、好ましく、さらに、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PSSで代表されるような導電性高分子材料を積層することができるため、好ましい。このような導電性高分子を積層する場合には、この導電性高分子材料の仕事関数が高いことから、上記のような高い仕事関数の材料でなくとも、AlやMg等のカソードに適した金属も広く用いることが可能である。ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PSSや、ポリピロール又はポリアニリン等にヨウ素等をドーピングした導電性高分子材料を、アノードの材料として使用することもできる。アノードが導電性金属酸化物である場合には、ITO、酸化亜鉛又は酸化スズ等が好ましく、特にITOが好ましい。
アノードは2層以上の積層構造を有していてもよい。積層構造は1種の材料の積層であっても2種以上の材料の積層であってもよい。2種以上の材料の組み合わせ及び比率は任意に選択できる。中でも、少なくとも導電性金属酸化物と金属との積層構造を含むと、導電性金属酸化物単層と比べてシート抵抗が抑えやすいため、薄膜化が可能になる。薄膜化により、アノードの形成速度が向上したり、耐熱性が向上するだけでなく、干渉光による発色を抑制できるため、有機薄膜太陽電池の意匠性の点で好ましい。積層する金属としては、金、銀及び銅が好ましく、銀が最も好ましい。銀は無彩色であり、凝集しづらいためである。一方、金や銅等の、薄膜が有色の金属を用いることで、意匠性を考慮して太陽電池の色を調整することができる。
アノードの膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは、50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下である。アノードの膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、アノードの膜厚が10μm以下であることにより、光透過率を低下させずに効率よく光を電気に変換することができる。アノードが透明電極である場合には、光透過率とシート抵抗とを両立できる膜厚を選ぶ必要がある。また、シースルー型太陽電池の場合にはアノードの膜厚は1μm以下であることが好ましい。
アノードのシート抵抗は、特段の制限はないが、通常1Ω/□以上、一方、1000Ω/□以下、好ましくは200Ω/□以下、さらに好ましくは50Ω/□以下である。
アノードの形成方法としては、蒸着法若しくはスパッタ法等の真空成膜方法、又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する湿式塗布法が挙げられる。
カソードは、一般には仕事関数が低い値を有する導電性材料で構成され、活性層で発生した電子をスムーズに取り出す機能を有する電極である。カソードは、電子取り出し層と隣接している。
カソードの材料を挙げると、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、スズ、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム又はマグネシウム等の金属及びその合金;フッ化リチウムやフッ化セシウム等の無機塩;酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化リチウム又は酸化セシウムのような金属酸化物等が挙げられる。これらの材料は低い仕事関数を有する材料であるため、好ましい。カソードについてもアノードと同様に、電子取り出し層として酸化亜鉛やチタニアのようなn型半導体で導電性を有するものを用いることにより、ITOなどの高い仕事関数を有する材料を用いることもできる。電極保護の観点から、カソードの材料として好ましくは、白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウム、カルシウム若しくはインジウム等の金属、又は酸化インジウムスズ等のこれらの金属を用いた合金の薄膜であり、通常20nm以下の膜厚である。
カソードは2層以上の積層構造を有していてもよい。積層構造は1種の材料の積層であ
っても2種以上の材料の積層であってもよい。2種以上の材料の組み合わせ及び比率は任意に選択できる。中でも、少なくとも導電性金属酸化物と金属との積層構造を含むと、導電性金属酸化物単層と比べてシート抵抗が抑えやすいため、薄膜化が可能になる。薄膜化により、カソードの形成速度が向上したり、耐熱性が向上するだけでなく、干渉光による発色を抑制できるため、有機薄膜太陽電池の意匠性の点で好ましい。積層する金属としては、金、銀及び銅が好ましく、銀が最も好ましい。銀は無彩色であり、凝集しづらいためである。一方、金や銅等の、薄膜が有色の金属を用いることで、意匠性を考慮して太陽電池の色を調整することができる。
カソードの膜厚は特に制限は無いが、通常10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上である。一方、通常10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下である。カソードの膜厚が10nm以上であることにより、シート抵抗が抑えられ、カソードの膜厚が10μm以下であることにより、光透過率を低下させずに効率よく光を電気に変換することができる。また、シースルー型太陽電池の場合にはカソードの膜厚は1μm以下であることが好ましい。
カソードのシート抵抗は、特に制限は無いが、通常1000Ω/□以下、好ましくは200Ω/□以下、さらに好ましくは50Ω/□以下である。下限に制限は無いが、通常は1Ω/□以上である。
カソードの形成方法としては、蒸着法若しくはスパッタ法等の真空成膜方法、又はナノ粒子や前駆体を含有するインクを塗布して成膜する湿式塗布法等がある。
また、アノード及びカソードに対して表面処理を行うことにより、特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。
アノード及びカソードは、前述の理由により、共に導電性金属酸化物と金属との積層構造を含むのが好ましく、金属としては前述の理由により銀が最も好ましい。
アノード及びカソードを積層した後に、有機薄膜太陽電池素子を通常50℃以上、好ましくは80℃以上、一方、通常300℃以下、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下の温度範囲において、加熱することが好ましい(この工程をアニーリング処理工程と称する場合がある)。アニーリング処理工程を50℃以上の温度で行うことにより、有機薄膜太陽電池素子の各層間の密着性、例えば電子取り出し層とカソード及び/又は電子取り出し層と光電変換層の密着性が向上する効果が得られるため、好ましい。各層間の密着性が向上することにより、有機薄膜太陽電池素子の熱安定性や耐久性等が向上しうる。
アニーリング処理工程を行うには、アノード及びカソードは、導電性酸化物と金属を積層したものが望ましい。薄膜であるため、アニーリンク処理工程中の加熱により亀裂が生じにくいからである。
アニーリング処理工程の温度を300℃以下にすることは、光電変換層内の有機化合物が熱分解する可能性が低くなるため、好ましい。アニーリング処理工程においては、上記の温度範囲内で段階的な加熱を行ってもよい。
加熱する時間としては、通常1分以上、好ましくは3分以上、一方、通常3時間以下、好ましくは1時間以下である。アニーリング処理工程は、太陽電池性能のパラメータである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることが好ましい。また、アニーリング処理工程は、常圧下、かつ不活性ガス雰囲気中で実施することが好ましい。
加熱する方法としては、特に限定されないが、熱風による加熱、遠赤外線および/また
は近赤外線の照射による方法が好ましく挙げられ、ホットプレート等の熱源に有機薄膜太陽電池素子を載せてもよいし、オーブン等の加熱雰囲気中に有機薄膜太陽電池素子を入れてもよい。また、加熱はバッチ式で行っても連続方式で行ってもよいが、連続方式で行うのが好ましい。
<1−3.バッファ層(電子取り出し層、正孔取り出し層)>
本発明の実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子は、カソードと光電変換層との間に電子取り出し層(バッファ層)を有する。また、光電変換層とアノードとの間に正孔取り出し層(バッファ層)を有する。
本実施態様においてバッファ層(電子取り出し層と正孔取り出し層)は、一対の透明電極間に、光電変換層を挟むように配置される。
電子取り出し層及び正孔取り出し層の材料や、膜厚、形成方法の例としては、例えば国際公開WO2012/102390に記載された電子取り出し層及び正孔取り出し層に用いられる材料が挙げられる。
具体的には、電子取り出し層の材料は、活性層からカソードへ電子の取り出し効率を向上させる材料であれば特段の制限はないが、無機化合物又は有機化合物が挙げられる。
無機化合物の材料の例としては、Li、Na、K又はCs等のアルカリ金属の塩;酸化チタン(TiOx)や酸化亜鉛(ZnO)のようなn型半導体酸化物等が挙げられる。なかでも、アルカリ金属の塩としては、LiF、NaF、KF又はCsFのようなフッ化物塩が好ましく、n型半導体酸化物としては、酸化亜鉛(ZnO)が好ましい。このような材料の動作機構は不明であるが、Al等で構成されるカソードと組み合わされれた際にカソードの仕事関数を小さくし、太陽電池素子内部に印加される電圧を上げる事が考えられる。
有機化合物の材料の例としては、例えば、トリアリールホスフィンオキシド化合物のようなリン原子と第16族元素との二重結合を有するホスフィン化合物;バソキュプロイン(BCP)又はバソフェナントレン(Bphen)のような、置換基を有してもよく、1位及び10位がヘテロ原子で置き換えられていてもよいフェナントレン化合物;トリアリールホウ素のようなホウ素化合物;(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)のような有機金属酸化物;オキサジアゾール化合物又はベンゾイミダゾール化合物のような、置換基を有していてもよい1又は2の環構造を有する化合物;ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)又はペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)のような、ジカルボン酸無水物のような縮合ジカルボン酸構造を有する芳香族化合物等が挙げられる。
また、正孔取り出し層の材料としては、活性層からアノードへの正孔の取り出し効率を向上させることが可能な材料であれば特に限定されない。
具体的には、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、トリフェニレンジアミン又はポリアニリン等に、スルホン酸及び/又はヨウ素等がドーピングされた導電性ポリマー、スルホニル基を置換基に有するポリチオフェン誘導体、アリールアミン等の導電性有機化合物、酸化銅、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム又は酸化タングステン等の金属酸化物、ナフィオン、後述のp型半導体等が挙げられる。その中でも好ましくは、スルホン酸をドーピングした導電性ポリマーであり、より好ましくは、ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングした(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)である。また、金、インジウム、銀又はパラジウム等の金属等の薄膜も使用することができる。金属等の薄膜は、単独で形成してもよいし、上記の有機材料と組み合わせて用いることもできる。
これらの材料のうち、一般にドーピングされた導電性ポリマーは可視光の吸収率が高く、金属酸化物は可視光の吸収率が低い。
また、バッファ層の可視光の吸収率は膜厚にも依存する。バッファ層の膜厚は、通常1nm以上であり、好ましくは5nm以上である。一方、通常500nm以下であり、好ましくは200nm以下である。
<1−4.光電変換層>
光電変換層は光電変換が行われる層を指し、通常、p型半導体化合物とn型半導体化合物とを含む。p型半導体化合物とは、p型半導体材料として働く化合物であり、n型半導体化合物とは、n型半導体材料として働く化合物である。有機薄膜太陽電池素子が光を受けると、光が光電変換層に吸収され、p型半導体化合物とn型半導体化合物との界面で電気が発生し、発生した電気が電極から取り出される。
本実施態様において光電変換層は、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層を有するバルクヘテロ接合型、p型半導体化合物層と、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層(i層)と、n型半導体化合物層とが積層されたもの、等が挙げられる。
バルクヘテロ接合型の場合には、p型有機半導体化合物の正孔移動度とn型有機半導体化合物の電子移動度のうち、移動度が小さい有機半導体化合物側を受光面として被設置物に設置することが好ましい。
バルクヘテロジャンクション構造は、p型とn型の2種類の半導体を混合することでナノサイズのpn接合を無数に形成する構造を有する。一方で、それぞれの半導体化合物は固有の移動度を有しており、正孔や電子といった電荷の移動は当該移動度に依存する。そのため、両半導体間において移動度に差がある場合には、電荷の移動は移動度の小さい材料によって制限される。
そのため、p型有機半導体化合物とn型有機半導体化合物のうち、移動度が小さい有機半導体化合物側を受光面とすることで移動度が小さい方の電荷の移動距離を短くすることができ、効率良く発電ができる。
<1−4−1.p型半導体化合物>
有機光電変換層103が含むp型半導体化合物としては、特に限定はないが、低分子有機半導体化合物と高分子有機半導体化合物とが挙げられる。
<1−4−1−1.低分子有機半導体化合物>
低分子有機半導体化合物の分子量は、上限、下限ともに特に制限されないが、通常5000以下、好ましくは2000以下であり、一方、通常100以上、好ましくは200以上である。
また、低分子有機半導体化合物は結晶性を有することが好ましい。結晶性を有するp型半導体化合物は分子間相互作用が強く、有機光電変換層103においてp型半導体化合物とn型半導体化合物との界面で生成した正孔(ホール)を効率よく上部透明電極へ輸送しうる。
本明細書において結晶性とは、分子間相互作用等によって配向の揃った3次元周期配列をとる、化合物の性質である。結晶性の測定方法としては、X線回折法(XRD)又は電界効果移動度測定法等が挙げられる。
特に電界効果移動度測定において、正孔移動度が1.0×10-5cm2/Vs以上であ
ることが好ましく、1.0×10-4cm2/Vs以上であることがより好ましい。一方、
正孔移動度が通常1.0×104cm2/Vs以下であることが好ましく、1.0×103
cm2/Vs以下であることがより好ましく、1.0×102cm2/Vs以下であること
さらに好ましい。
低分子有機半導体化合物としては、p型半導体材料として働きうるのであれば特段の制限はないが、具体的には、ナフタセン、ペンタセン又はピレン等の縮合芳香族炭化水素;α−セキシチオフェン等のチオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類;チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環及びベンゾチアゾール環のうち少なくとも一つ以上を含み、かつ合計4個以上連結したもの;フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン等のポルフィリン化合物及びその金属錯体、等の大環状化合物等が挙げられる。好ましくは、フタロシアニン化合物及びその金属錯体又はポルフィリン化合物及びその金属錯体である。
低分子有機半導体化合物の成膜方法としては、蒸着法及び塗布法が挙げられる。塗布成膜できるというプロセス上の利点からは後者が好ましい。塗布法を用いる場合、低分子有機半導体化合物前駆体を塗布後に低分子有機半導体化合物に変換する方法がある。塗布成膜がより容易である点で、半導体化合物前駆体を用いる方法がより好ましい。
(低分子有機半導体化合物前駆体)
低分子有機半導体化合物前駆体とは、例えば加熱や光照射等の外的刺激を与えることにより、その化学構造が変化し、低分子有機半導体化合物に変換される化合物である。低分子有機半導体化合物前駆体は成膜性に優れることが好ましい。特に、塗布法を適用できるようにするためには、前駆体自体が液状で塗布可能であるか又は前駆体が何らかの溶媒に対して溶解性が高く溶液として塗布可能であることが好ましい。このため、低分子有機半導体化合物前駆体の溶媒に対する溶解性は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。一方、上限に特段の制限はないが、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
溶媒の種類としては、半導体前駆体化合物を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン又はデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール又はプロパノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル又は乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。なかでも好ましくは、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類である。より好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類;シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等の非ハロゲン系ケトン類;テトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサン等の非ハロゲン系脂肪族エーテル類である。特に好ましくは、トルエン、キシレン又はシクロヘキシルベンゼン等の非ハロゲン芳香族炭化水素類である。なお、1種の溶媒を単独で用いてもよく、2種以上の溶媒を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに、低分子有機半導体化合物前駆体は、容易に半導体化合物に変換できることが好ましい。後述する低分子有機半導体化合物前駆体から半導体化合物への変換工程において、どのような外的刺激を半導体前駆体に与えるかは任意であるが、通常は、熱処理又は光処理等を行なう。好ましくは、熱処理である。この場合には、低分子有機半導体化合物前
駆体が、骨格の一部として、逆ディールス・アルダー反応によって脱離可能な、所定の溶媒に対する親溶媒性の基を有することが好ましい。
また、低分子有機半導体化合物前駆体は、変換工程を経て、高い収率で半導体化合物に変換されることが好ましい。この際、低分子有機半導体化合物前駆体から変換して得られる半導体化合物の収率は有機薄膜太陽電池素子の性能を損なわない限り任意であるが、分子有機半導体化合物前駆体から得られる低分子有機半導体化合物の収率は、通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは99モル%以上である。
低分子有機半導体化合物前駆体は上記の特徴を有するものであれば特に制限はないが、具体的には特開2007−324587号公報に記載の化合物等が用いられうる。
低分子有機半導体化合物前駆体は、位置異性体が存在する構造であってもよく、またその場合、複数の位置異性体の混合物であってもよい。複数の位置異性体の混合物は、単一の位置異性体成分からなる低分子有機半導体化合物前駆体と比較して溶媒に対する溶解度が向上するため、塗布成膜が行いやすく好ましい。複数の位置異性体の混合物の溶解度が高い理由は、詳細なメカニズムは明確ではないが、化合物そのものの結晶性が潜在的に保持されつつも、複数の異性体混合物が溶液内に混在することで、三次元規則的な分子間相互作用が困難になるためと想定される。複数の位置異性体混合物の、非ハロゲン性溶媒への溶解度は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。上限に制限は無いが、通常50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
<1−4−1−2.高分子有機半導体化合物>
高分子有機半導体化合物として、特に限定はなく、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリアセチレン又はポリアニリン等の共役ポリマー半導体;アルキル基やその他の置換基が置換されたオリゴチオフェン等のポリマー半導体;等が挙げられる。また、二種以上のモノマー単位を共重合させた半導体ポリマーも挙げられる。共役ポリマーとしては、例えば、Handbook of Conducting Polymers,3rd Ed.(全2巻),2007、Materials Science and Engineering,2001,32,1−40、Pure Appl.Chem.2002,74,2031−3044、Handbook of THIOPHENE−BASED MATERIALS(全2巻),2009等の公知文献に記載されたポリマーやその誘導体、及び記載されているモノマーの組み合わせによって合成し得るポリマーを用いることができる。p型半導体化合物として用いられる高分子有機半導体化合物は、一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
高分子有機半導体化合物のモノマー骨格及びモノマーの置換基は、溶解性、結晶性、成膜性、HOMOエネルギー準位及びLUMOエネルギー準位等を制御するために選択することができる。また、高分子有機半導体化合物が有機溶媒に可溶であることは、光電変換素子を作製する際に塗布法により有機光電変換層103を形成しうる点で好ましい。
p型半導体化合物としてなかでも好ましくは、低分子有機半導体化合物としては、ナフタセン、ペンタセン、ピレン等の縮合芳香族炭化水素、フタロシアニン化合物及びその金属錯体、又はテトラベンゾポルフィリン(BP)等のポルフィリン化合物及びその金属錯体であり、高分子有機半導体化合物としては、ポリチオフェン等の共役ポリマー半導体である。有機光電変換層103で用いられるp型半導体化合物は、一種の化合物でも複数種の化合物の混合物でもよい。
低分子有機半導体化合物及び/又は高分子有機半導体化合物は、成膜された状態において、何らかの自己組織化した構造を有していても、アモルファス状態であってもよい。
p型半導体化合物のHOMO(最高被占分子軌道)エネルギー準位は、特に限定は無く、後述のn型半導体化合物の種類によって選択することができる。特に、フラーレン化合物をn型半導体化合物として用いる場合、p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位は、通常−5.7eV以上、より好ましくは−5.5eV以上、一方、通常−4.6eV以下、より好ましくは−4.8eV以下である。p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−5.7eV以上であることによりp型半導体としての特性が向上し、p型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−4.6eV以下であることにより化合物の安定性が向上し、開放電圧(Voc)も向上する。
p型半導体化合物のLUMO(最低空分子軌道)エネルギー準位は、特に限定は無いが、後述のn型半導体化合物の種類によって選択することができる。特に、フラーレン化合物をn型半導体化合物として用いる場合、p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位は、通常−3.7eV以上、好ましくは−3.6eV以上である。一方、通常−2.5eV以下、好ましくは−2.7eV以下である。p型半導体のLUMOエネルギー準位が−2.5eV以下であることにより、バンドギャップが調整され長波長の光エネルギーを有効に吸収することができ、短絡電流密度が向上する。p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位が−3.7eV以上であることにより、n型半導体化合物への電子移動が起こりやすくなり短絡電流密度が向上する。
<1−4−2.n型半導体化合物>
n型半導体化合物としては、特段の制限はないが、具体的にはフラーレン化合物、8−ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体;ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド又はペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;ペリレンジイミド誘導体、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリノン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジン誘導体、ボラン誘導体、アントラセン、ピレン、ナフタセン又はペンタセン等の縮合多環芳香族炭化水素の全フッ化物;単層カーボンナノチューブ等が挙げられる。
そのなかでも、フラーレン化合物、ボラン誘導体、チアゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾチアジアゾール誘導体、N−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミド及びN−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体が好ましく、フラーレン化合物、N−アルキル置換されたペリレンジイミド誘導体及びN−アルキル置換されたナフタレンテトラカルボン酸ジイミドがより好ましい。上記のうち一種の化合物を用いてもよいし、複数種の化合物の混合物を用いてもよい。また、n型半導体化合物としては、n型高分子半導体化合物も挙げられる。
n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位は、特に限定はされないが、例えばサイクリックボルタモグラム測定法により算出される真空準位に対する値が、通常−3.85eV以上、好ましくは−3.80eV以上である。p型半導体化合物から効率良くn型半導体化合物へと電子を移動させるためには、p型半導体化合物とn型半導体化合物とのLUMOエネルギー準位の相対関係が重要である。具体的には、p型半導体化合物のLUMOエネルギー準位が、n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位より所定の値だけ上にあること、言い換えると、n型半導体化合物の電子親和力がp型半導体化合物の電子親和力より所定のエネルギーだけ大きいことが好ましい。開放電圧(Voc)はp型半導体化合物のHOMOエネルギー準位とn型半導体化合物のLUMOエネルギー準位の差に依存するため、n型半導体化合物のLUMOを高くすると、Vocが高くなる傾向がある。一方
、LUMOの値は通常−1.0eV以下、好ましくは−2.0eV以下、より好ましくは−3.0eV以下、更に好ましくは−3.3eV以下である。n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位を低くすることで、電子の移動が起こりやすくなり、短絡電流(Jsc)が高くなる傾向がある。
n型半導体化合物のLUMOエネルギー準位の算出方法は、理論的に計算値で求める方法と実際に測定する方法が挙げられる。理論的に計算値で求める方法としては、半経験的分子軌道法及び非経験的分子軌道法があげられる。実際に測定する方法としては、紫外可視吸収スペクトル測定法又はサイクリックボルタモグラム測定法が挙げられる。その中でも好ましくはサイクリックボルタモグラム測定法である。
n型半導体化合物のHOMOエネルギー準位は、特に限定は無いが、通常−5.0eV以下、好ましくは−5.5eV以下である。一方、通常−7.0eV以上、好ましくは−6.6eV以上である。n型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−7.0eV以上であることは、n型半導体化合物の光吸収も発電に利用しうる点で好ましい。n型半導体化合物のHOMOエネルギー準位が−5.0eV以下であることは、正孔の逆移動を阻止できる点で好ましい。
n型半導体化合物の電子移動度は、特段の制限はないが、通常1.0×10-6cm2
Vs以上であり、1.0×10-5cm2/Vs以上が好ましく、5.0×10-5cm2/Vs以上がより好ましく、1.0×10-4cm2/Vs以上がさらに好ましい。一方、通常
1.0×103cm2/Vs以下であり、1.0×102cm2/Vs以下が好ましく、5
.0×101cm2/Vs以下がより好ましい。n型半導体化合物の電子移動度が1.0×10-6cm2/Vs以上であることは、有機薄膜太陽電池素子の電子拡散速度向上、短絡
電流向上、変換効率向上等の効果が得られうる点で好ましい。電子移動度の測定方法としては電界効果トランジスタ(FET)法が挙げられ、公知文献(特開2010−045186号公報)に記載の方法により実施することができる。
n型半導体化合物の25℃でのトルエンに対する溶解度は、通常0.5重量%以上であり、0.6重量%以上が好ましく、0.7重量%以上がより好ましい。一方、通常90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下がさらに好ましい。n型半導体化合物の25℃でのトルエンに対する溶解度が0.5重量%以上であることは、溶液中でのn型半導体化合物の分散安定性が向上し、凝集、沈降、分離等を起こしにくくなるために、好ましい。
光電変換層の膜厚は特に限定されないが、通常10nm以上、好ましくは50nm以上であり、一方通常1000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下である。光電変換層の膜厚が上記下限以上であることは、膜の均一性が保たれ、短絡を起こしにくくなるため、好ましい。また、光電変換層の厚さが上記上限以下であることは、内部抵抗が小さくなる点、及び電極間が離れすぎず電荷の拡散が良好となる点で、好ましい。
光電変換層の作成方法としては、特段に制限はないが、塗布法が好ましい。塗布法としては、任意の方法を用いることができるが、例えば、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、スリットダイコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、パイプドクター法、含浸・コート法、カーテンコート法、フレキソ印刷、インクジェット等が挙げられる。
例えば、p型半導体化合物層及びn型半導体化合物層は、p型半導体化合物又はn型半
導体化合物を含む塗布液を塗布することにより作製しうる。また、p型半導体化合物とn型半導体化合物とが混合した層は、p型半導体化合物及びn型半導体化合物を含む塗布液を塗布することにより作製しうる。半導体化合物前駆体を含む塗布液を塗布した後で、半導体化合物前駆体を半導体化合物へと変換してもよい。
<1−5.光電変換特性>
有機薄膜太陽電池素子の光電変換特性は次のようにして求めることができる。有機薄膜太陽電池素子にソーラシュミレーターでAM1.5G条件の光を照射強度100mW/cm2で照射して、電流−電圧特性を測定する。得られた電流−電圧曲線から、光電変換効
率(PCE)、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、直列抵抗、シャント抵抗といった光電変換特性を求めることができる。
有機薄膜太陽電池素子の光電変換効率は、特段の制限はないが、通常1%以上、好ましくは1.5%以上、より好ましくは2%以上である。一方、上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。
また、有機薄膜太陽電池素子の耐久性を測定する方法としては、有機薄膜太陽電池素子を大気暴露する前後での、光電変換効率の維持率を求める方法が挙げられる。
(維持率)=(大気暴露N時間後の光電変換効率)/(大気暴露直前の光電変換効率)
有機薄膜太陽電池素子を実用化するには、製造が簡便かつ安価であること以外に、高い光電変換効率及び高い耐久性を有することが重要である。この観点から、1週間大気暴露する前後での光電変換効率の維持率は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、高ければ高いほどよい。
<2.有機薄膜太陽電池>
次に、本発明の実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子を含む有機薄膜太陽電池について、図を参照して説明する。図2は、有機薄膜太陽電池の構成を模式的に示す図である。図2に示すように、本実施態様の有機薄膜太陽電池14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、有機薄膜太陽電池素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、耐候性保護フィルム10とをこの順に備える。そして、耐候性保護フィルム1が形成された側(図中下方)から光が照射されて、有機薄膜太陽電池素子6が発電するようになっている。なお、用途により耐候性保護フィルム1及び/又は10、紫外線カットフィルム2、並びに/若しくはゲッター材フィルム4及び/又は8を用いなくてもよい。
なお、本発明の実施態様においては、図中下方から光が入射するため、有機薄膜太陽電池素子6において、第一のバッファ層及び第二のバッファ層のうち、可視光の吸収率が小さいバッファ層が下方となる層構成を有する。
<2−1.耐候性保護フィルム1>
耐候性保護フィルム1は天候変化から有機薄膜太陽電池素子6を保護するフィルムである。耐候性保護フィルム1で有機薄膜太陽電池素子6を覆うことにより、有機薄膜太陽電池素子6等を天候変化等から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。耐候性保護フィルム1は、有機薄膜太陽電池14の最表層に位置するため、耐候性、耐熱性、透明性、撥水性、耐汚染性及び/又は機械強度等の、有機薄膜太陽電池の表面被覆材として好適な性能を備え、しかもそれを屋外暴露において長期間維持する性質を有することが好ましい。
また、耐候性保護フィルム1は、有機薄膜太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過
率が80%以上であることが好ましく、上限に制限はない。さらに、有機薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、耐候性保護フィルム1も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、耐候性保護フィルム1の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
耐候性保護フィルム1を構成する材料は、天候変化から有機薄膜太陽電池素子6を保護することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド−イミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、シリコン系樹脂又はポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
なお、耐候性保護フィルム1は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、耐候性保護フィルム1は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
耐候性保護フィルム1の厚みは特に規定されないが、通常10μm以上200μm以下である。耐候性保護フィルム1の厚みが前記上限以下であることにより、太陽光発電フィルムが透光性を有しやすい。また、太陽光発電フィルムが透光性を有しやすくするためには、耐候性保護フィルム1の可視光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり、通常100%以下、好ましくは99%以下、より好ましくは98%以下である。
また耐候性保護フィルム1には、他のフィルムとの接着性の改良のために、コロナ処理及び/又はプラズマ処理等の表面処理を行ってもよい。
耐候性保護フィルム1は、有機薄膜太陽電池14においてできるだけ外側に設けることが好ましい。有機薄膜太陽電池14の構成部材のうちより多くのものを保護できるようにするためである。
<2−2.紫外線カットフィルム2>
紫外線カットフィルム2は紫外線の透過を防止するフィルムである。紫外線カットフィルム2を有機薄膜太陽電池14の受光部分に設け、紫外線カットフィルム2で有機薄膜太陽電池素子6の受光面6aを覆うことにより、有機薄膜太陽電池素子6及び必要に応じてガスバリアフィルム3、9等を紫外線から保護し、発電能力を高く維持することができるようになっている。
紫外線カットフィルム2に要求される紫外線の透過抑制能力の程度は、紫外線(例えば、波長300nm)の透過率が50%以下であることが好ましく、下限に制限はない。また、紫外線カットフィルム2は、有機薄膜太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率が80%以上であることが好ましく、上限に制限はない。
さらに、有機薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、紫外線カットフィルム2も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、紫外線カットフィルム2の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
また、紫外線カットフィルム2は、柔軟性が高く、隣接するフィルムとの接着性が良好であり、水蒸気や酸素をカットしうることが好ましい。
紫外線カットフィルム2を構成する材料は、紫外線の強度を弱めることができるもので
あれば任意である。その材料の例を挙げると、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系又はエステル系の樹脂に紫外線吸収剤を配合して成膜したフィルム等が挙げられる。また、紫外線吸収剤を樹脂中に分散あるいは溶解させたものの層(以下、適宜「紫外線吸収層」という)を基材フィルム上に形成したフィルムを用いてもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系のもの等を用いることができる。なお、紫外線吸収剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。上述のように、紫外線吸収フィルムとしては紫外線吸収層を基材フィルム上に形成したフィルムを用いることもできる。このようなフィルムは、例えば、紫外線吸収剤を含む塗布液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させることで作製できる。
基材フィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なフィルムが得られる点で、例えばポリエステルが挙げられる。
紫外線カットフィルム2の具体的な商品の例を挙げると、カットエース(MKVプラスティック株式会社)等が挙げられる。なお、紫外線カットフィルム2は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。
また、紫外線カットフィルム2は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。紫外線カットフィルム2の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。紫外線カットフィルム2の厚みが前記上限以下であることにより、太陽光発電フィルムが透光性を有しやすい。また、太陽光発電フィルムが透光性を有しやすくするためには、紫外線カットフィルム2の可視光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり、通常100%以下、好ましくは99%以下、より好ましくは98%以下である。
紫外線カットフィルム2は、有機薄膜太陽電池素子6の受光面6aの少なくとも一部を覆う位置に設ければよいが、好ましくは有機薄膜太陽電池素子6の受光面6aの全てを覆う位置に設ける。ただし、有機薄膜太陽電池素子6の受光面6aを覆う位置以外の位置にも紫外線カットフィルム2が設けられていてもよい。
<2−3.ガスバリアフィルム3>
ガスバリアフィルム3は水及び酸素の透過を防止するフィルムである。ガスバリアフィルム3で有機薄膜太陽電池素子6を被覆することにより、有機薄膜太陽電池素子6を水及び酸素から保護し、発電能力を高く維持することができる。
ガスバリアフィルム3に要求される防湿能力の程度は、有機薄膜太陽電池素子6の種類等に応じて様々であるが、単位面積(1m2)の1日あたりの水蒸気透過率が、通常1×
10-1g/m2/day以下であることが好ましく、下限に制限はない。
ガスバリアフィルム3に要求される酸素透過性の程度は、有機薄膜太陽電池素子6の種類等に応じて様々であるが、単位面積(1m2)の1日あたりの酸素透過率が、通常1×
10-1cc/m2/day/atm以下であることが好ましく、下限に制限はない。
また、ガスバリアフィルム3は、有機薄膜太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率は、通常60%以上であり、上限に制限はない。
さらに、有機薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、ガスバリアフィルム3も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ガスバリアフィルム
3の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
ガスバリアフィルム3の具体的な構成は、有機薄膜太陽電池素子6を水から保護できる限り任意である。ただし、ガスバリアフィルム3を透過しうる水蒸気や酸素の量を少なくできるフィルムほど製造コストが高くなるため、これらの点を総合的に勘案して適切なものを使用することが好ましい。
なかでも好適なガスバリアフィルム3としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)或いはポリエチレンナフタレート(PEN)等の基材フィルムにSiOxを真
空蒸着したフィルム等が挙げられる。
なお、ガスバリアフィルム3は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、ガスバリアフィルム3は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ガスバリアフィルム3の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。ガスバリアフィルム3の厚みが前記上限以下であることにより、太陽光発電フィルムが透光性を有しやすい。また、太陽光発電フィルムが透光性を有しやすくするためには、ガスバリアフィルム3の可視光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり、通常100%以下、好ましくは99%以下、より好ましくは98%以下である。
ガスバリアフィルム3は、有機薄膜太陽電池素子6を被覆して湿気及び酸素から保護できればその形成位置に制限は無いが、有機薄膜太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図2では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図2では上側の面)を覆うことが好ましい。有機薄膜太陽電池14においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いためである。本実施態様ではガスバリアフィルム3が有機薄膜太陽電池素子6の正面を覆い、後述するガスバリアフィルム9が有機薄膜太陽電池素子6の背面を覆うようになっている。
<2−4.ゲッター材フィルム4>
ゲッター材フィルム4は水分及び/又は酸素を吸収するフィルムである。ゲッター材フィルム4で有機薄膜太陽電池素子6を覆うことにより、有機薄膜太陽電池素子6等を水分及び/又は酸素から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。ここで、ゲッター材フィルム4は上記のようなガスバリアフィルム3とは異なり、水分の透過を妨げるものではなく、水分を吸収するものである。水分を吸収するフィルムを用いることにより、ガスバリアフィルム3等で有機薄膜太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間に僅かに浸入する水分をゲッター材フィルム4が捕捉して水分による有機薄膜太陽電池素子6への影響を排除できる。
ゲッター材フィルム4の水分吸収能力の程度は、通常0.1mg/cm2以上であり、
上限に制限は無いが、通常10mg/cm2以下である。また、ゲッター材フィルム4が
酸素を吸収することにより、ガスバリアフィルム3及び9等で有機薄膜太陽電池素子6を被覆した場合に、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間に僅かに浸入する酸素をゲッター材フィルム4が捕捉して酸素による有機薄膜太陽電池素子6への影響を排除できる。
さらに、ゲッター材フィルム4は、有機薄膜太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光(波長360〜830nm)の透過率は、通常60%以上であり、上限に制限はない。
さらに、有機薄膜太陽電池14は光を受けて熱せされることが多いため、ゲッター材フィルム4も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ゲッター材フィルム4の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
ゲッター材フィルム4を構成する材料は、水分及び/又は酸素を吸収することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、水分を吸収する物質としてアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルカリ土類金属の酸化物;アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;シリカゲル、ゼオライト系化合物、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム又は硫酸ニッケル等の硫酸塩;アルミニウム金属錯体又はアルミニウムオキサイドオクチレート等の有機金属化合物等が挙げられる。具体的には、アルカリ土類金属としては、Ca、Sr又はBa等が挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物としては、CaO、SrO又はBaO等が挙げられる。その他にZr−Al−BaOやアルミニウム金属錯体等も挙げられる。具体的な商品名を挙げると、例えば、OleDry(双葉電子社製)等が挙げられる。
酸素を吸収する物質としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、酸化マグネシウム又は酸化鉄等が挙げられる。またFe、Mn、Zn、及びこれら金属の硫酸塩・塩化物塩・硝酸塩等の無機塩も挙げられる。
なお、ゲッター材フィルム4は1種の材料で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。また、ゲッター材フィルム4は単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ゲッター材フィルム4の厚みは特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。ゲッター材フィルム4の厚みが前記上限以下であることにより、太陽光発電フィルムが透光性を有しやすい。また、太陽光発電フィルムが透光性を有しやすくするためには、ゲッター材フィルム4の可視光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり、通常100%以下、好ましくは99%以下、より好ましくは98%以下である。
ゲッター材フィルム4は、ガスバリアフィルム3及び9で形成される空間内であればその形成位置に制限は無いが、有機薄膜太陽電池素子6の正面(受光面側の面。図2では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図2では上側の面)を覆うことが好ましい。有機薄膜太陽電池14においてはその正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いため、これらの面を介して水分及び酸素が浸入する傾向があるからである。この観点から、ゲッター材フィルム4はガスバリアフィルム3と有機薄膜太陽電池素子6との間に設けることが好ましい。本実施態様ではゲッター材フィルム4が有機薄膜太陽電池素子6の正面を覆い、後述するゲッター材フィルム8が有機薄膜太陽電池素子6の背面を覆い、ゲッター材フィルム4,8がそれぞれ有機薄膜太陽電池素子6とガスバリアフィルム3,9との間に位置するようになっている。
<2−5.封止材5>
封止材5は、有機薄膜太陽電池素子6を補強するフィルムである。有機薄膜太陽電池素子6は薄いため通常は強度が弱く、ひいては有機薄膜太陽電池の強度が弱くなる傾向があるが、封止材5により強度を高く維持することが可能である。
また、封止材5は、有機薄膜太陽電池14の強度保持の観点から強度が高いことが好ましい。具体的強度については、封止材5以外の耐候性保護フィルム1や耐候性保護フィルム10の強度とも関係することになり一概には規定しにくいが、有機薄膜太陽電池14全体が良好な曲げ加工性を有し、折り曲げ部分の剥離を生じないような強度を有するのが望ましい。
また、封止材5は、有機薄膜太陽電池素子6の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。封止材5の可視光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり、通常100%以下、好ましくは99%以下、より好ましくは98%以下である。
封止材5の厚みは特に規定されないが、通常2μm以上700μm以下である。
封止材5の基板に対するT型剥離接着強さは通常1N/インチ以上通常2000N/インチ以下である。T型剥離接着強さが1N/インチ以上であることは、モジュールの長期耐久性を確保できる点で好ましい。T型剥離接着強さが2000N/インチ以下であることは、太陽電池を廃棄する際に、基材やバリアフィルムと接着材を分別して廃棄できる点で好ましい。T型剥離接着強さはJIS K6854に準拠する方法により測定する。
封止材5の構成材料としては、上記特性を有する限り特段の制限はないが、有機・無機の太陽電池の封止、有機・無機のLED素子の封止、又は電子回路基板の封止等に一般的に用いられている封止用材料を用いる事ができる。
具体的には、熱硬化性樹脂組成物又は熱可塑性樹脂組成物及び活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物とは例えば、紫外線、可視光、電子線等で硬化する樹脂のことである。より具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂組成物、炭化水素系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、又はシリコン系樹脂組成物等が挙げられ、それぞれの高分子の主鎖、分岐鎖、末端の化学修飾、分子量の調整、添加剤等によって、熱硬化性、熱可塑性及び活性エネルギー線硬化性等の特性が発現する。
また、有機薄膜太陽電池14は光を受けて熱せられることが多いため、封止材5も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、封止材5の構成材料の融点は、通常100℃以上350℃以下である。
封止材5中の封止材用構成材料の密度は、0.80g/cm3以上が好ましく、上限に
制限はない。なお、密度の測定と評価は、JIS K7112に準拠する方法によって実施することができる。
封止材5を設ける位置に制限は無いが、通常は有機薄膜太陽電池素子6を挟み込むように設ける。有機薄膜太陽電池素子6を確実に保護するためである。本実施態様では、有機薄膜太陽電池素子6の正面及び背面にそれぞれ封止材5及び封止材7を設けるようにしている。
<2−6.有機薄膜太陽電池素子6>
有機薄膜太陽電池素子6は、前述の有機薄膜太陽電池素子107と同様である。すなわち、有機薄膜太陽電池素子107を用いて有機薄膜太陽電池14を製造することができる。
有機薄膜太陽電池素子6は、有機薄膜太陽電池14一個につき一個だけを設けてもよいが、通常は2個以上の有機薄膜太陽電池素子6を設ける。具体的な有機薄膜太陽電池素子6の個数は任意に設定すればよい。有機薄膜太陽電池素子6を複数設ける場合、有機薄膜太陽電池素子6はアレイ状に並べて設けられていることが多い。
有機薄膜太陽電池素子6を複数設ける場合、通常は、有機薄膜太陽電池素子6同士は電
気的に接続され、接続された一群の有機薄膜太陽電池素子6から生じた電気を端子(図示せず)から取り出すようになっていて、この際、電圧を高めるため通常は太陽電池素子は直列に接続される。
このように有機薄膜太陽電池素子6同士を接続する場合には、有機薄膜太陽電池素子6間の距離は小さいことが好ましく、ひいては、有機薄膜太陽電池素子6と有機薄膜太陽電池素子6との間の隙間は狭いことが好ましい。有機薄膜太陽電池素子6の受光面積を広くして受光量を増加させ、有機薄膜太陽電池14の発電量を増加させるためである。
<2−7.封止材7>
封止材7は、上述した封止材5と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は封止材7と同様のものを同様に用いることができる。また、太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
<2−8.ゲッター材フィルム8>
ゲッター材フィルム8は、上述したゲッター材フィルム4と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はゲッター材フィルム4と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。また、有機薄膜太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
<2−9.ガスバリアフィルム9>
ガスバリアフィルム9は、上述したガスバリアフィルム3と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他はガスバリアフィルム9と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。また、有機薄膜太陽電池素子6よりも背面側の構成部材は必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
<2−10.耐候性保護フィルム10>
耐候性保護フィルム10は、上述した耐候性保護フィルム1と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は耐候性保護フィルム1と同様のものを同様に用いることができる。また、この耐候性保護フィルム10が水及び酸素を透過させ難いものであれば、耐候性保護フィルム10をガスバリア層として機能させることも可能である。
<2−11.寸法等>
本実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子を用いた有機薄膜太陽電池14は、通常、膜状の薄い部材である。このように膜状の部材として有機薄膜太陽電池14を形成することにより、有機薄膜太陽電池14を建材、自動車又はインテリア等に容易に設置できるようになっている。有機薄膜太陽電池14は、軽く、割れにくく、従って安全性の高い太陽電池が得られ、また曲面にも適用可能であるため更に多くの用途に使用しうる。薄くて軽いため輸送や保管等流通面でも好ましい。更に、膜状であるためロールトゥロール式の製造が可能であり大幅なコストカットが可能である。
有機薄膜太陽電池14の具体的な寸法に制限は無いが、その厚みは、通常300μm以上3000μm以下である。
また、有機薄膜太陽電池14が透光性を有する、すなわちシースルー型であることが、好ましい実施態様である。
また、ロール状の薄膜太陽電池素子を用いて、ロール状の薄膜太陽電池モジュールとするのも好ましい。
ロール状薄膜太陽電池モジュールの長さは、通常1m以上、好ましくは5m以上、より好ましくは10m以上、更に好ましくは100m以上であり、上限は特に制限されないが、通常10000m以下、好ましくは5000m以下、より好ましくは1000m以下、
更に好ましくは500m以下である。
<2−12.集電線>
本実施態様では、集電線を後述する電気取り出し部に接続して、有機薄膜太陽電池素子が発電した電気を取り出す。
集電線の材料としては、金属や合金などがよく用いられ、その中でも抵抗率の低い銅やアルミ、銀、金、ニッケルなどを用いることが好ましい。その中でも銅やアルミが安価であることから、特に好ましい。また、錆防止のため、集電線の周囲をスズや銀などでメッキしたり、表面を樹脂などでコートしてあったり、フィルムをラミネートしてあってもよい。集電線の形状としては、平角線、箔、平板、ワイヤー状のものがあるが、接着面積の確保などの理由から、平角線や、箔、平板状のものを用いることが好ましい。
なお、本明細書でいう「箔」は厚みが100μm未満のものをいい、「板」は厚みが100μm以上のものをいう。また「平角線」とは、断面が円形のワイヤーを圧延して、断面の形状を四角形にしたものをいう。
また集電線は、導電性を有する限り特段の限定はされないが、接続する透明電極または第二電極よりも抵抗値が低いものが好ましく、特に、透明電極または第二電極より厚みを厚くすることによって、抵抗値を低減させることが好ましい。集電線の厚みとしては、5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上である。また、2mm以下であることが好ましく、より好ましくは1mm以下、特に好ましくは300μm以下である。上記範囲より厚みが薄いと、集電線の抵抗値が上昇し、発電した電力を効率よく外部に取り出すことができない。また、上記範囲より厚みが厚いと、有機薄膜太陽電池の重量が増加するとともに可撓性が減少したり、太陽電池表面に凹凸が発生しやすくなったり、生産コストが増加するなどの問題が生じる恐れがある。
また、集電線の幅としては、0.5mm以上であることが好ましく、より好ましくは1mm以上、特に好ましくは2mm以上である。また、集電線の幅は、50mm以下であることが好ましく、より好ましくは20mm以下、特に好ましくは10mm以下である。上記範囲より集電線の幅が狭いと、集電線の抵抗値が上昇し、発電した電力を効率よく取り出すことができない。また、集電線の機械強度が減少し、破断等の原因になる恐れがある。また、上記範囲より集電線の幅が広いと、モジュール全体における開口率が減少し、モジュールの発電量の低下に繋がる恐れがある。
<2−13.電気取り出し部>
電気取り出し部は、有機薄膜太陽電池素子6から電気を取り出す部分であり、受光面上に設置しない限り有機薄膜太陽電池の任意の位置に設置できる。電気取り出し部と集電線とを接続することにより、有機薄膜太陽電池素子6から電気を取り出す。通常は電気取り出し部の最表面の構成部材と集電線とを接続する。
電気取り出し部の構成部材は、有機薄膜太陽電池素子6の構成部材(下部電極、電子取り出し層、活性層、正孔取り出し層、上部電極)のいずれでもよい。好ましくは下部電極または上部電極である。
通常、有機薄膜太陽電池素子6を複数個直列接続した場合は末端の有機薄膜太陽電池素子6を電気取り出し部とするが、任意の有機薄膜太陽電池素子6の下部電極または上部電極を、直列方向に対して直角に、直列方向に長くなるように形成して、電気取り出し部としてもよい。
また、複数個の有機薄膜太陽電池素子6とは別に、電気取り出し部を形成し、直列
化した有機薄膜太陽電池素子6の任意の素子の電極と接続してもよい。
<2−14.製造方法>
本実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子を用いた有機薄膜太陽電池14の製造方法に制
限は無いが、例えば、図2の形態の太陽電池製造方法としては、図2に示される積層体を作成した後に、ラミネート封止工程を行う方法が挙げられる。本実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子は、耐熱性に優れるため、ラミネート封止工程による劣化が低減される点で好ましい。
図2に示される積層体作成は周知の技術を用いて行うことができる。ラミネート封止工程の方法は、本発明の効果を損なわなければ特に制限はないが、例えば、ウェットラミネート、ドライラミネート、ホットメルトラミネート、押出しラミネート、共押出成型ラミネート、押出コーティング、光硬化接着剤によるラミネート、サーマルラミネート等が挙げられる。なかでも有機ELデバイス封止で実績のある光硬化接着剤によるラミネート法、太陽電池で実績のあるホットメルトラミネート又はサーマルラミネートが好ましく、さらに、ホットメルトラミネート又はサーマルラミネートがシート状の封止材を使用できる点でより好ましい。
ラミネート封止工程の加熱温度は通常130℃以上、好ましくは140℃以上であり、通常180℃以下、好ましくは170℃以下である。ラミネート封止工程の加熱時間は通常10分以上、好ましくは20分以上であり、通常100分以下、好ましくは90分以下である。ラミネート封止工程の圧力は通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上であり、通常0.2MPa以下、好ましくは0.1MPa以下である。圧力をこの範囲とすることで封止を確実に行い、かつ、端部からの封止材5,7のはみ出しや過加圧による膜厚低減を抑え、寸法安定性を確保しうる。なお、2個以上の有機薄膜太陽電池素子6を直列又は並列接続したものも上記と同様にして、製造することができる。
<2−15.用途>
本発明の実施態様に係る有機薄膜太陽電池素子を用いた有機薄膜太陽電池14の用途に制限はなく、任意の用途に用いることができる。有機薄膜太陽電池を適用する分野の例を挙げると、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、航空機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池等である。また、シースルー型太陽電池である場合には、部屋間の間仕切りとしても用いることが可能である。また外光を取り入れる窓に直接貼合するなどして設置することもでき、その場合には紫外線および/または赤外線を遮断するフィルムと積層することができる。
赤外線を遮断するフィルムと積層して遮熱効果をも奏する有機薄膜太陽電池とする場合には、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、航空機用太陽電池が好ましい。
シースルー型の有機薄膜太陽電池として用いる場合には、透明部材、具体的には、窓、採光屋根、透明な壁などに接着して設置することができる。すなわち、窓用遮熱フィルム、採光屋根用遮熱フィルム、壁用遮熱フィルムとして好適に用いることができる。特に自動車は室内の空間に対して窓の面積が広いため、室内温度の上昇に対して遮熱が効果的であり、自動車窓用遮熱フィルムとして好適に用いることができる。遮熱フィルムとしての機能を付与する場合には赤外線を遮断するフィルムと積層することができる。
<2−16.設置方法>
有機薄膜太陽電池は基材上に設置して用いる。基材とは、前記用途における被設置物である。例えば、図3に模式的に示すように、基材12上に有機薄膜太陽電池14を設置することで太陽電池一体型部材13が得られる。具体例を挙げると、基材12として建材用板材を使用する場合、この板材の表面に有機薄膜太陽電池14を設けることにより、有機薄膜太陽電池モジュール13を作製することができる。
基材12を形成する材料としては、例えば、ガラス、サファイア及びチタニア等の無機
材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂、塩化ビニル、ポリエチレン、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート及びポリノルボルネン等の有機材料;紙及び合成紙等の紙材料;ステンレス、チタン及びアルミニウム等の金属;ステンレス、チタン及びアルミニウム等の金属に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料;等が挙げられる。シースルー型太陽電池である場合には、基材12が透光性を有することが好ましく、ガラスなどの無機材料および有機材料が好ましく例示される。
なお、基材の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、これら有機材料あるいは紙材料に炭素繊維を含ませ、機械的強度を補強させてもよい。基材12の例を挙げると、アルポリック(登録商標;三菱樹脂製)等が挙げられる。
基材12の形状に制限はないが、通常は板材を使用する。また、基材12の材料、寸法等は、その使用環境に応じて任意に設定すればよい。
有機薄膜太陽電池を基材に設置しやすくするために、有機薄膜太陽電池の一方の面に接着層を形成し、太陽光発電フィルムとしてもよい。なお、接着層としては、公知の透明な接着剤を用いることができる。例えば、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、及びポリウレタン系接着剤などがあげられる。接着層の、可視光の透過率は、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり、通常100%以下、好ましくは99%以下、より好ましくは98%以下である。
この場合、基材に対して、前記太陽光発電フィルムの発電効率が高い側が受光面になるように設置できるように、接着層を形成する。
例えば基材に対して室内側に太陽光発電フィルムを設置する場合、すなわち基材を通った太陽光が太陽光発電フィルムに照射される場合には、前記太陽光発電フィルムは、
第一の透明電極、第一のバッファ層、光電変換層、第二のバッファ層、及び第二の透明電極、を順次有する有機薄膜太陽電池に対して、該有機薄膜太陽電池の、第一のバッファ層及び第二のバッファ層のうち、可視光の吸収率が小さいバッファ層の側の面に、接着層を形成した前記太陽光発電フィルム
となる。この太陽光発電フィルムは、透光性を有する基材に好適に適用される。
一方、例えば基材に対して室外側に太陽光発電フィルムを設置する場合、すなわち太陽光が基材を通らずに太陽光発電フィルムに照射される場合には、前記太陽光発電フィルムは、
第一の透明電極、第一のバッファ層、光電変換層、第二のバッファ層、及び第二の透明電極、を順次有する有機薄膜太陽電池に対して、該有機薄膜太陽電池の、第一のバッファ層及び第二のバッファ層のうち、可視光の吸収率が大きいバッファ層の側の面に、接着層を形成した前記太陽光発電フィルム
となる。この太陽光発電フィルムは、基材の種類によらず適用することができる。
これらの構成の太陽光発電フィルムは基材に対して容易に設置できるものである。接着層に、更に剥離層を形成することで取り扱いが容易になるため好ましい。
以下、実験例を示しつつ、本発明をさらに詳細に説明する。
<実験例1:有機薄膜太陽電池の製造1>
素子基板:厚さ125μmのポリエチレンナフタレートフィルム、
第一電極:厚さ40nmのITO、厚さ10nmの銀、厚さ40nmのITOを順に積層した透明電極、
第一バッファ層:厚さ100nmの酸化亜鉛ナノ粒子、
光電変換層:厚さ300nmであり、p型半導体としてポリ(3−ヘキシルチオフェン)を50重量%、n型半導体としてインデン付加フラーレンを50重量%を含む混合物、
第二バッファ層:厚さ100nmのPEDOT:PSS、
第二電極:厚さ10nmの銀、厚さ40nmのITOを順に積層した透明電極、
の順に積層した後、140℃10分間加熱し、有機薄膜太陽電池素子を得る。その後、有機薄膜太陽電池素子の両面を、熱硬化型エポキシ系接着シート(スリーボンド社製)とバリアフィルム(三菱樹脂社製ビューバリア)を用い、140℃30分間加熱して封止し、有機薄膜太陽電池を得る。有機薄膜太陽電池の第一電極側、及び第二電極側から光を入射し、その可視光の吸収率、及び変換効率を測定すると表1に示した結果が得られる。なお表1中の光吸収率とは可視光波長領域の平均光吸収率である。
有機薄膜太陽電池の可視光の吸収率Aは、透過率Tと反射率Rを、JIS R 3106:1998に準拠して測定し、次の式(1)にしたがって算出する。
式(1):A=1−R−T
<実験例2:有機薄膜太陽電池素子の製造2>
実験例1において、第一電極及び第二電極をITO/Ag/ITOに変更した以外は同様の手法で有機薄膜太陽電池素子を得る。その光吸収率、及び出力を測定すると表1に示した結果が得られる。
<バッファ層の吸収率測定>
厚さ0.7mmのガラス板上に、実施例1のバッファ層の形成方法と同様の方法で、酸化亜鉛バッファ層およびPEDOT:PSSバッファ層を製膜した後、透過率および反射率を測定して可視光波長領域の平均光吸収率を算出すると、それぞれ0.1%および10%である。
Figure 2014239087
表1から、可視光の吸収率が略同一であっても、その出力が大きく異なることが理解できる。一方で、実施例1では、電極の種類が異なるにもかかわらず、太陽電池の可視光の吸収率が略同一である。つまりは、バッファ層の可視光の吸収率が異なっており、第一電極側のバッファ層の可視光の吸収率が、第二電極側のバッファ層の可視光の吸収率よりも小さい。そして、実施例1および実施例2において、可視光の吸収率の低いバッファ層の側である第1電極側を受光面とすることで、変換効率が非常に高い結果が示されている。従って、本発明の構成により、同一の有機薄膜太陽電池を用いても、より高い変換効率が得られることがわかる。
101 下部電極
102 電子取り出し層
103 活性層
104 正孔取り出し層
105 上部電極
106 太陽電池素子基板
107 有機薄膜太陽電池素子
1,10耐候性保護フィルム
2 紫外線カットフィルム
3,9 ガスバリアフィルム
4,8 ゲッター材フィルム
5,7 封止材
6 有機薄膜太陽電池素子
12 基材
13 有機薄膜太陽電池モジュール
14 有機薄膜太陽電池

Claims (3)

  1. 第一の透明電極、第一のバッファ層、光電変換層、第二のバッファ層、及び第二の透明電極、
    を順次有する有機薄膜太陽電池を被設置物に設置する方法であって、
    前記第一のバッファ層及び第二のバッファ層のうち、可視光の吸収率が小さいバッファ層の側を受光面として設置する、有機薄膜太陽電池の設置方法。
  2. 前記有機薄膜太陽電池は、前記第一の電極方向から光を入射させた際の可視光の吸収率と、前記第二の電極方向から光を入射させた際の可視光の吸収率が略同一の値である、請求項1に記載の有機薄膜太陽電池の設置方法。
  3. 前記有機薄膜太陽電池が透光性を有する、請求項1または2に記載の有機薄膜太陽電池の設置方法。
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