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JP6401094B2 - 太陽電池の製造方法 - Google Patents

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JP6401094B2
JP6401094B2 JP2015065382A JP2015065382A JP6401094B2 JP 6401094 B2 JP6401094 B2 JP 6401094B2 JP 2015065382 A JP2015065382 A JP 2015065382A JP 2015065382 A JP2015065382 A JP 2015065382A JP 6401094 B2 JP6401094 B2 JP 6401094B2
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Description

本発明は拡散層を形成する工程を含む太陽電池の製造方法に関する。
単結晶n型シリコン基板を用いた場合の、一般的な高効率型の太陽電池の一例を示した概略図を図2に、断面構造の一例を示した模式図を図3に示す。図2、3に示すように、太陽電池200は、一般に、受光面にフィンガー電極201とバスバー電極202から成る受光面電極203を有している。フィンガー電極201は、受光面の集電電極であり、その幅は数十〜百μmとされるのが一般的であり、受光面上に多数配設される。また、このフィンガー電極201同士の間隔は1mm〜3mm程度が一般的である。また、バスバー電極202は、太陽電池200を構成するセルを連結するための集電電極であり、受光面に一般に2本〜4本配設される。これら受光面電極203の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法などが挙げられるが、コストの面から、Agなどの金属微粒子を有機バインダーに混ぜた金属ペーストを、スクリーン版などを用いて印刷し、数百度で熱処理を行って基板と接着する方法が広く利用されている。
また、図3に示すように、太陽電池200の受光面の受光面電極203以外の部分はSiN等から成る反射防止膜204で覆われている。単結晶n型シリコン基板205の表面の表層部は基板の導電型と反対のp型拡散層206が形成されている。また、受光面と反対の面(以下、裏面とも呼称する)には、n型拡散層208、裏面パシベーション膜209、及び裏面電極210が形成されている。特に受光面電極203の直下には、p型拡散層206と受光面電極203の接触抵抗を低下させる目的で、p型拡散層206よりも高濃度のp型拡散層207が形成されている。この高濃度と低濃度のp型拡散層(p型の選択エミッタ)206、207を形成させるための方法がいくつか開示されている。
特許文献1には、ドーパントの濃度が互いに異なる2種類の印刷ペーストを用いて拡散層にドーパント濃度の濃淡を形成する技術が開示されている。特許文献1に開示された技術では、互いに濃度が異なる印刷ペーストを作成するために2種類の材料を用意する必要があり、また、2回の印刷工程が必要である。そのため、特許文献1の方法を実施するには手間がかかる。また、特許文献2、特許文献3には、シリコン基板中のボロンが、熱酸化膜中に移動する性質を利用して、拡散層にドーパント濃度の濃淡を形成する技術が開示されている。特許文献2、特許文献3に開示された技術では、一旦ドーパントを拡散したのち、マスクして酸化熱処理するという手間がかかる。
特許文献4には、シリコンの微細粒子にドーパントを混合した材料を印刷し、レーザーでドーピングする技術が開示されている。この場合、特殊な材料を用意する必要がある。また、レーザーによる基板へのダメージが不可避であり、製品として不良となってしまい歩留まりが悪化する可能性が有る。特許文献5には、基板表面のダメージ層がドーパントを高濃度に拡散させる性質を利用した技術が開示されている。しかしながら、ダメージ層を選択的に形成する方法が難しく、また、光生成キャリアは、少なからずダメージ層で再結合してしまう。
特開2014−197578号公報 特開2013−219080号公報 特開2010−186900号公報 特開2012−178546号公報 特開2012−49424号公報
上記のように、太陽電池の製造において、半導体基板の表面の表層部に、例えば選択エミッタ等のような、ドーパントの濃度が高い部分とドーパント濃度が低い部分を有する拡散層を形成しようとすると、従来のいずれの製造方法も一定の手間や材料が必要であったり、製造した太陽電池の性能が劣ったり、歩留まりが悪化するなどの問題があった。
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、煩雑な工程や特殊な材料を用意する必要がなく、簡便な方法でドーパントの濃度が高濃度の部分と低濃度の部分を有する拡散層を形成でき、性能の良い太陽電池を低コストで歩留まり良く得られる太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、半導体基板の表面にホウ素を含む塗布剤を塗布する工程と、前記半導体基板の前記塗布剤が塗布された表面の表層部に前記ホウ素を拡散させる拡散熱処理を施す工程とを有する太陽電池の製造方法であって、前記拡散熱処理工程より前に、前記塗布剤を塗布した表面上に酸化物系セラミックス微粒子を含むペーストをパターン状に塗布する工程と、前記拡散熱処理の温度よりも低い温度まで昇温し、該昇温後に降温する熱サイクルを含む低温熱処理を、前記ペーストを塗布した後の半導体基板に1回以上施す工程を有し、前記低温熱処理を1回以上施した後の半導体基板に前記拡散熱処理を施すことを特徴とする太陽電池の製造方法を提供する。
ホウ素源の塗布後、パターン状に酸化物系セラミックス微粒子を含むペースト(以下単に「酸化物ペースト」とも称する)を塗布し、その後、低温熱処理を加えることでホウ素源は酸化物ペースト側に移動する。その後、拡散熱処理を加えることで、半導体基板の表面に酸化物ペーストが塗布された部分では低濃度、非塗布部は高濃度のホウ素拡散層を形成できる。本発明の方法であれば、煩雑な工程や特殊な材料を用意する必要がなく、簡便な方法でホウ素の濃度が高い部分と低い部分を有する拡散層を形成でき、性能の良い太陽電池を低コストで得ることができる。
このとき、前記酸化物系セラミックス微粒子を、シリカ微粒子又は酸化アルミニウム微粒子とすることができる。
酸化物系セラミックス微粒子の中でも、これらのような微粒子が汎用で扱いやすいため好ましい。
またこのとき、前記低温熱処理工程における前記熱サイクルの最高温度を300℃以上600℃以下、最低温度を15℃以上300℃未満とすることが好ましい。
このような温度範囲にて、低温熱処理を加えることで、その後の拡散熱処理においてより確実にホウ素の濃度が高い部分と低い部分を有する拡散層を形成できる。
また、本発明の太陽電池の製造方法は、前記半導体基板をn型半導体基板とし、前記半導体基板の前記ホウ素を拡散させた表面を受光面とし、さらに、該受光面上に受光面電極を形成する工程と、前記半導体基板の前記ホウ素を拡散させた表面の反対の表面上に裏面電極を形成する工程とを含むことができる。
太陽電池の製造において、半導体基板としてn型半導体基板を使用する場合、本発明の太陽電池の製造方法を利用すれば、受光面にホウ素を拡散したp型の選択エミッタを有する高効率型の太陽電池を簡便な方法で製造できる。
また、本発明の太陽電池の製造方法は、前記半導体基板をp型半導体基板とし、前記半導体基板の前記ホウ素を拡散させた表面の反対の表面を受光面とし、さらに、該受光面の表層部にn型拡散層を形成する工程と、該n型拡散層上に受光面電極を形成する工程と、前記半導体基板の前記ホウ素を拡散させた表面上に裏面電極を形成する工程とを含むことができる。
太陽電池の製造において、半導体基板としてp型半導体基板を使用する場合、本発明の太陽電池の製造方法を使用すれば、p型半導体基板の受光面の反対の面である裏面にホウ素濃度の高い部分と低い部分を有する拡散層を簡便に形成できる。これにより、例えば、ホウ素濃度の高い部分に電極を局在させ、非電極部をBSF(Back Surface Field:裏面電界)層とした太陽電池などを容易に製造できる。
本発明の太陽電池の製造方法であれば、煩雑な工程や特殊な材料を用意する必要がなく、簡便な方法でドーパントの濃度が高濃度の部分と低濃度の部分を有する拡散層を形成でき、性能の良い太陽電池を低コストで歩留まり良く得られる。
本発明の太陽電池の製造方法において、シリカペースト(酸化物ペースト)をパターン状に印刷塗布した後のn型半導体基板の概観図である。 一般的な太陽電池の構成の一例を示した概略図である。 一般的な太陽電池の断面構造の一例を示した模式図である。
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下に説明する本発明の太陽電池の製造方法の具体例では、n型半導体基板を使用して太陽電池を製造する場合を主に説明する。しかしながら、本発明の太陽電池の製造方法は以下に説明する具体例に限定されず、p型半導体基板を使用して太陽電池を製造してもよい。
(半導体基板の準備工程)
太陽電池の製造に使用できるn型半導体基板として、高純度シリコンにリン、ヒ素、又はアンチモンのようなV族(15族)元素をドープし、比抵抗0.1〜5Ω・cmとしたアズカット単結晶{100}n型シリコン基板(以下、単にn型シリコン単結晶基板と呼称することも有る)を用意することができる。n型シリコン単結晶基板は、CZ(Czochralski)法、FZ(Floating Zone)法などの方法によって作製されたものでよい。また、基板は必ずしも単結晶シリコンである必要はなく、多結晶シリコンでもかまわない。
(ダメージ除去工程)
次に、インゴットからスライスされる際及び研削される際にシリコン単結晶基板に形成される表面の機械的ダメージを、濃度5〜60%の水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような高濃度のアルカリ、又はふっ酸と硝酸の混酸などを用いてエッチングすることができる。ダメージ除去工程は、次工程のテクスチャ形成条件によっては、必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。
(テクスチャ形成工程)
引き続き、n型シリコン単結晶基板の表面にテクスチャと呼ばれる微小な凹凸形成を行う。テクスチャは太陽電池の反射率を低下させるための有効な方法である。テクスチャは、加熱した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ溶液(例えば、濃度1〜10%、温度60〜90℃)中に、n型シリコン単結晶基板を10分から30分程度浸漬することで作製できる。上記溶液中に、所定量の2−プロパノールを溶解させ、反応を促進させることが多い。
(洗浄工程)
n型シリコン単結晶基板の表面にテクスチャを形成した後、塩酸、硫酸、硝酸、ふっ酸等、もしくはこれらの混合液の酸性水溶液中で洗浄する。
(ホウ素を含む塗布剤の塗布工程)
次に、ホウ素を含む塗布剤をn型シリコン単結晶基板の表面に塗布する。この説明では、半導体基板をn型半導体基板としているため、半導体基板のホウ素を拡散させる表面を受光面とすることができる。塗布剤は、少なくともホウ素源と、溶媒から成るものとできる。ホウ素源としては、メタホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩が使用できるが、特にこれらに限定されることは無く、ホウ酸などを使用しても良い。溶媒としては、水、エタノール、又はメタノール等のアルコールが使用できる。さらに、溶媒にポリビニルアルコール等を添加して増粘させてもよい。塗布方法は、n型シリコン単結晶基板の表面に塗布剤を塗布できれば良く、スクリーン印刷や、スピン塗布等のいずれでもよい。また、塗布剤の塗布後、適宜乾燥させても良い。
(酸化物系セラミックス微粒子を含むペーストの塗布工程)
次に、n型シリコン単結晶基板の塗布剤を塗布した表面上、すなわち太陽電池としたときに受光面となる面上に酸化物系セラミックス微粒子を含むペーストをパターン状に塗布する。酸化物ペーストは酸化物系セラミックス微粒子、有機バインダー、有機溶剤から構成されるものとすることができる。
酸化物系セラミックス微粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、フェライト、フォルステライト、ムライト、ステアタイト、コーディエライト等からなる微粒子が挙げられ、いずれの微粒子を用いてもかまわない。この中でも特に、シリカ微粒子及びアルミナ(酸化アルミニウム)微粒子が汎用で扱いやすく好ましい。以下、酸化物系セラミックス微粒子としてシリカ微粒子を使用する場合を説明する。
有機バインダーの具体例としては、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂(ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー)、ポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルアセテート又は加水分解度が60質量%以上、好ましくは80質量%以上である加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール)、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂(ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー)、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴム(アラビアゴム)等が挙げられる。
固形分である微粒子シリカと上記の物質から1種以上選択される有機バインダーを組み合わせることで、チクソ剤としても機能する。これにより、高剪断応力発生時と低剪断応力発生時におけるペースト粘度の比を大きくすることができる。
また本発明において、有機溶剤は、その沸点が100℃以上の高沸点溶剤であることが好ましい。これは、溶剤の揮発が抑制されてペーストの組成変化が少なくなり、安定した印刷を行うことが可能となるためである。
特に、好適な有機溶剤の具体例を挙げるなら、高沸点溶剤としてTPM(イソブチル酸3−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチルペンチルエステル:Isobutylic Acid 3−Hydroxy−2,2,4−trimethylpentyl Ester)を用いることができる。しかしながら、高沸点溶剤として使用可能な化合物はこれに限定されない。
例えば、高沸点溶剤としては、脂肪族炭化水素系溶剤、カルビトール系溶剤、セロソルブ系溶剤、高級脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。カルビトール系溶剤としては、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等が挙げられ、セロソルブ系溶剤としては、エチルセロソルブ、イソアミルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ等が挙げられる。また、高級脂肪酸エステル系溶剤としては、ジオクチルフタレート、ジブチルコハク酸イソブチルエステル、アジピン酸イソブチルエステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2エチルヘキシル等が挙げられ、高級アルコール系溶剤としては、メチルヘキサノール、オレイルアルコール、トリメチルヘキサノール、トリメチルブタノール、テトラメチルノナノール、2−ペンチルノナノール、2−ノニールノナノール、2−ヘキシルデカノール等が挙げられる。また、高級脂肪酸系溶剤としては、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸が挙げられ、芳香族炭化水素系溶剤としては、ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ジイソプロピルナフタレン等が挙げられる。
これらの有機溶剤は、単独で用いることができるが、粘度の調整等、固形分である微粒子シリカの有機バインダーへの分散性、テクスチャの付いたシリコン結晶基板との濡れ性等を調整するため、適宜複数種を併用して用いることもできる。
ペーストの塗布方法としてはスクリーン印刷法が最も簡便で好ましいが、その他にも、インクジェット法なども使用できる。ペーストの塗布方法は特に限定されることは無く、パターンが描ければ、そのような方法でも使用できる。
図1に示すように、n型シリコン単結晶基板10の受光面となる面におけるペーストのパターンは、ペーストが印刷されていない非印刷部12の幅が0.1mm〜0.5mmのライン状になるようにすると、高いセル特性が得られるため好ましい。すなわち、ペーストのパターンは、図1に示すペーストの印刷部11の周期cが1mm〜3mm、印刷部11の幅dが0.5mm〜2.9mmであるライン状とすることが好ましい。
(低温熱処理工程)
続いて、パターン状にペーストが塗布されたn型シリコン単結晶基板10を低温熱処理する。本発明における低温熱処理とは、後工程である拡散熱処理の温度よりも低い温度まで昇温し、昇温後に降温する熱サイクルを含む熱処理である。また、昇温後、温度を一定温度に保持した後、降温を行っても良い。
本発明では、低温熱処理工程における熱サイクルの最高温度を300℃以上600℃以下、最低温度を15℃以上300℃未満とすることが好ましい。ここでいう最高温度とは昇温終了後、降温開始前の温度のことであり、最低温度とは降温終了時の温度のことである。例えば、低温熱処理は、この最高温度を300℃〜600℃として昇温し、n型シリコン単結晶基板10を数分〜数十分間加熱し、最低温度を室温付近として降温するといった熱サイクルを有する熱処理とすることができる。低温熱処理の際の雰囲気は酸素雰囲気又は空気であることが望ましい。また、低温熱処理は複数回繰り返して行っても良い。
(拡散熱処理工程)
低温熱処理の後、低温熱処理よりも高温の、例えば、900℃〜1000℃の拡散熱処理を施す。これにより、シリカペースト印刷部、すなわち、図1における印刷部11付近のn型シリコン単結晶基板10の受光面となる面の表層部では比較的低濃度のホウ素拡散層が形成される。一方で、シリカペースト非印刷部、すなわち、図1における非印刷部12付近のn型シリコン単結晶基板10の受光面となる面の表層部では比較的高濃度のホウ素拡散層が形成される。
拡散層におけるホウ素の濃度の差は、以下のように生じると考えられる。低温熱処理によりホウ素は酸化ホウ素に変化する。酸化ホウ素は融点が低いため、300℃〜600℃程度の温度下では液体として存在する。液体の酸化ホウ素にシリカ(二酸化ケイ素)が接触していると、接触部での二酸化ケイ素の溶解が進行する。そして、降温冷却時にシリカ−酸化ホウ素の中間相が形成され、シリカ印刷部での純粋な酸化ホウ素濃度は減少する。この状態で、900℃〜1000℃の拡散熱処理を施すと、シリカ印刷部では、シリカ非印刷部に比べ基板中に拡散するホウ素濃度を小さくすることができる。さらに、昇温〜降温の熱サイクルを繰り返す、すなわち低温熱処理を繰り返し施すことで、この反応はさらに進行する。すなわち、低温熱処理を繰り返し施せば、シリカ印刷部・非印刷部の濃度差をより大きくすることができる。シリカを他の酸化物系セラミックスに置き換えても同様の現象が発現する。
また、拡散熱処理は以下のような態様で行ってよい。まず、一般的なシリコン太陽電池は、pn接合を受光面にのみ形成する必要がある。受光面にのみpn接合を形成するために、拡散熱処理時に2枚の基板の受光面となる面同士を重ね合わせた状態で拡散熱処理したり、拡散熱処理前に裏面(受光面となる面とは逆の面)にSiO膜やSiN膜などを拡散マスクとして形成したりして、裏面にPN接合ができないような工夫を施してもよい。特に、n型シリコン単結晶基板の受光面となる面同士を重ね合わせ2枚1組として、拡散熱処理を行い、その際に、例えば、オキシ塩化リンガスを炉内に導入することができる。このような方法であれば、ホウ素の拡散と同時に、n型シリコン単結晶基板の裏面上にn型拡散層も形成することができる。
(ガラス除去工程)
次に、熱処理によって生成した、基板の表面のガラスをふっ酸などで除去する。
(反射防止膜形成工程)
次いで、受光面の反射防止膜形成を行う。反射防止膜としては、シリコン窒化膜やシリコン酸化膜が利用できる。シリコン窒化膜を形成する場合は、プラズマCVD(Plasma−enhanced Chemical Vapor Deposition)装置を用い約100nmの膜厚で製膜することが好ましい。シリコン窒化膜の原料となる反応ガスとして、モノシラン(SiH)及びアンモニア(NH)を混合して用いることが多いが、NHの代わりに窒素を用いることも可能である。また、プロセス圧力の調整、反応ガスの希釈のため、反応ガスに水素を混合することもある。シリコン酸化膜を形成する場合は、CVD法でもよいが、熱酸化法により得られるシリコン酸化膜の方が高いセル特性が得られる。
(裏面電極形成工程)
次いで、裏面電極として、例えば、Agを含有するペーストをスクリーン印刷法で形成する。電極形成領域は裏面全面でもよいが、シリコン窒化膜やシリコン酸化膜で裏面全面を被覆し、一部をレーザー等で開口して開口部のみ電極を形成する局在電極方式でもよい。また、裏面電極形成方法はスクリーン印刷に限らず、蒸着やスパッタを用いて形成してもかまわない。
(受光面電極形成工程)
受光面電極形成にはスクリーン印刷法を用いることが好ましく、Ag粉末とガラスフリットを有機物バインダーと混合したAgペーストを印刷することが好ましい。この際、最初に印刷したシリカペースト非印刷部と同じ箇所にAgペーストを印刷する。具体的には、開口が40μm〜100μmであり、シリカペースト印刷部の周期(図1参照)と同じ周期の開口を有するスクリーン製版を用意しておき、シリカペースト非印刷部と受光面電極が重なるよう基板位置を調整して印刷すればよい。受光面電極の形成方法はスクリーン印刷法に限定されることは無く、シリカペースト非印刷部と同じ場所に電極形成できれば、インクジェット法でもよく、また、マスクを用いたスパッタ法や蒸着法でもかまわない。
以上のように、Agペーストを印刷した後、焼成して電極を形成する。AgペーストをSiN膜上に形成しても、熱処理によりSiN膜にAg粉末を貫通させ(ファイアースルー)、電極とシリコンを導通させることができる。裏面電極および受光面電極の焼成は一度に同時に行うことも可能である。焼成は、通常700〜800℃の温度で5〜30分間処理することで行うことができる。受光面電極と裏面電極の形成は順序を逆にしても良い。このようにして、n型半導体基板を使用して太陽電池を製造することができる。
以上、n型シリコン単結晶基板を使用して太陽電池を製造する例を説明した。一方、p型基板を使用する場合、基板の表面にホウ素を拡散させる手順は、n型シリコン単結晶基板を使用した場合と同様とすることができる。また、p型基板を使用する場合、ホウ素を拡散させた表面を裏面、その反対の表面を受光面とできる。
この場合、上述の半導体基板の準備工程から拡散熱処理工程までに加えて、受光面となる面の表層部にn型拡散層を形成する工程、n型拡散層上に受光面電極を形成する工程、半導体基板の裏面上に裏面電極を形成する工程を加えることができる。本発明の製造方法を、n型シリコン単結晶基板を使用した太陽電池の製造に適用する場合、基板の裏面にホウ素濃度の高い部分と低い部分を有する拡散層を形成することができるため、裏面電極を局在させ、非電極部をBSF(裏面電界)層とした構造の太陽電池を製造することが可能である。
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本発明の有効性を確認するため、以下に説明するような実施例1、2、比較例3にて製造した太陽電池の特性の比較を行った。まず、厚さ200μm、比抵抗1Ω・cmの、リンドープ{100}n型アズカットシリコン基板18枚を準備した。続いて、全基板の受光面となる表面に対しホウ酸2%水溶液をスピン塗布した。
(実施例1)
上記のように準備したホウ酸塗布後の基板を、6枚取り出し、取り出された基板に対し、シリカペーストをパターン印刷した。シリカペーストとして、ポリビニルアルコール23%、シリカ23%、エタノール47%、水7%の混合物を用いた。印刷にはスクリーン印刷機を用いた。シリカペーストの印刷部の幅は1.6mm、周期は2.0mmとした。
これらをベルト炉に投入し、最高温度400℃で5分ほどの熱処理を施して室温まで冷却した(低温熱処理)。
次いで、横型炉にて低温熱処理後の基板を拡散熱処理した。拡散熱処理条件としては、950℃まで昇温して30分維持とした。この際、ホウ酸塗布面(受光面となる面)同士を重ね合わせ2枚1組とし、横型炉内にオキシ塩化リンを導入して裏面側にはリンの拡散層を形成した。拡散熱処理後、濃度12%のふっ酸に浸漬することで表面ガラスを除去した。
以上の処理の後、プラズマCVD装置を用いて受光面となる面に反射防止膜としてSiN膜を形成した。次いで裏面にも同じ条件でSiN膜を形成した。次に、裏面電極としてAgペーストを裏面全面に櫛歯状にスクリーン印刷し乾燥した。次いで、受光面となる面のシリカペースト非印刷部に重なるようにAgペーストを印刷して乾燥し、780℃の空気雰囲気下で焼成して太陽電池を完成させた。
このように製造した太陽電池の擬似太陽光下での電流電圧特性を測定した。特性評価は、25℃の雰囲気の中、ソーラーシミュレーター(照射強度:1kW/m、スペクトル:AM1.5グローバル)の下で電気測定(短絡電流密度、開放電圧、曲線因子(形状因子)、変換効率)を行った。
(実施例2)
上記のホウ酸塗布後の基板のうち実施例1とは別の6枚の基板を取り出して使用し、基本的に実施例1と同様の手順で太陽電池を製造した。ただし、実施例2では実施例1で行ったベルト炉を用いた熱処理を2回行うことで、低温熱処理を2回施した。このように製造した太陽電池の擬似太陽光下での電流電圧特性を、実施例1と同様に測定した。
(比較例1)
上記のホウ酸塗布後の基板うち、残りの6枚の基板を使用し、基本的に実施例1と同様の手順で太陽電池を製造した。ただし、比較例1では、基板の表面へのシリカペーストの印刷を行わず、ベルト炉を用いた低温熱処理も行わなかった。
表1に、実施例1、2、比較例1における実施結果をまとめたもの示す。表1に示す数値は、全て平均値である。
Figure 0006401094
実施例1、2では、本願の太陽電池の製造方法により選択エミッタが形成されたため、短絡電流及び開放電圧が大きく改善し、変換効率も改善した。このように、簡便な方法で選択エミッタを形成でき、容易に性能の良い太陽電池が得られることが確認された。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
10…n型半導体基板、 11…印刷部、 12…非印刷部。

Claims (5)

  1. 半導体基板の表面にホウ素を含む塗布剤をスピン塗布する工程と、前記半導体基板の前記塗布剤が塗布された表面の表層部に前記ホウ素を拡散させる拡散熱処理を施す工程とを有する太陽電池の製造方法であって、
    前記拡散熱処理工程より前に、
    前記塗布剤を塗布した表面上に酸化物系セラミックス微粒子を含むペーストをパターン状に塗布する工程と、
    前記拡散熱処理の温度よりも低い温度まで昇温し、該昇温後に降温する熱サイクルを含む低温熱処理を、前記ペーストを塗布した後の半導体基板に1回以上施す工程を有し、
    前記低温熱処理を1回以上施した後の半導体基板に前記拡散熱処理を施すことを特徴とする太陽電池の製造方法。
  2. 前記酸化物系セラミックス微粒子を、シリカ微粒子又は酸化アルミニウム微粒子とすることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
  3. 前記低温熱処理工程における前記熱サイクルの最高温度を300℃以上600℃以下、最低温度を15℃以上300℃未満とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の太陽電池の製造方法。
  4. 前記半導体基板をn型半導体基板とし、前記半導体基板の前記ホウ素を拡散させた表面を受光面とし、さらに、該受光面上に受光面電極を形成する工程と、前記半導体基板の前記ホウ素を拡散させた表面の反対の表面上に裏面電極を形成する工程とを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
  5. 前記半導体基板をp型半導体基板とし、前記半導体基板の前記ホウ素を拡散させた表面の反対の表面を受光面とし、さらに、該受光面の表層部にn型拡散層を形成する工程と、該n型拡散層上に受光面電極を形成する工程と、前記半導体基板の前記ホウ素を拡散させた表面上に裏面電極を形成する工程とを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
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