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JP5760956B2 - フィンガー電極の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、長期信頼性の高い太陽電池を生産性よく作製するためのフィンガー電極の形成方法に関し、更に詳しくは、多層印刷により形成される2回目以降の電極印刷の方法を変更するだけで、高い変換効率を維持したまま、低コストでフィンガー電極を形成することができる方法に関する。
従来の技術を用いて作製された太陽電池の断面図(図1)と、その表面(図2)及び裏面の構造(図3)を用いて説明すると、一般的な太陽電池セルは、シリコン等のP型半導体基板(100)に、N型となるドーパントを拡散して、N型拡散層(101)を形成することによりPN接合が形成されている。N型拡散層(101)の上には、SiNx膜のような反射防止膜(102)が形成されている。P型半導体基板(100)の裏面側には、ほぼ全面にアルミニウムペーストが塗布され、焼結することによりBSF層(103)とアルミニウム電極(104,304)が形成される。また、裏面には集電用としてバスバー電極とよばれる太い電極(106,306)が、銀等を含む導電性ペーストが塗布され、焼成されることで形成される。一方、受光面側には集電用のフィンガー電極(207)と、フィンガー電極から電流を集めるために形成されたバスバー電極(105,205)とよばれる太い電極が、ほぼ直角に交わるように櫛形状に配置される。
この種の太陽電池を製造する際、電極形成の方法としては、蒸着法、メッキ法、印刷法等が挙げられるが、表面フィンガー電極(207)は形成が容易で低コストである等の理由のため、一般的には、以下に示すような印刷・焼成法で形成される。すなわち、表面電極材料には、一般に銀粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルと、有機溶媒とを主成分として配合した導電性ペーストが用いられ、スクリーン印刷法等によりこの導電性ペーストを塗布した後、焼成炉中で高温焼結して表面フィンガー電極を形成するものである。
このような方法により形成された表面フィンガー電極(207)とSi基板(100)とのコンタクト抵抗(接触抵抗)と電極の配線抵抗は、太陽電池の変換効率に大きな影響を及ぼし、高効率(低セル直列抵抗、高フィルファクターFF(曲線因子))を得るためには、コンタクト抵抗と表面フィンガー電極(207)の配線抵抗の値が十分に低いことが要求される。
また、受光面においてはできるだけ多くの光を取り込めるように電極面積を小さくしなければならない。前記FFを維持したまま短絡電流(Jsc)を向上させるために、フィンガー電極は細く、断面積は大きく、つまり高アスペクト比のフィンガー電極を形成しなくてはならない。
太陽電池の電極を形成する手法のうち、高アスペクト比、超細線を形成する手法としては、セルに溝を作ってペーストを充填する方法(特許文献1:特開2006−54374号公報)や、インクジェット法による印刷手法等が開示されている。しかし、前者は基板に溝を作る工程を含むために基板にダメージを与える可能性があるため好ましくない。後者のインクジェット法は圧力をかけて細いノズルから液滴を噴射する仕組みのため、細線を形成するには適した手法であるが、高さを稼ぐことは難しい。また、特開平11−103084号公報(特許文献2)では、導電性ペーストを複数回スクリーン印刷することで、電極表面の凹凸を低減し、更には電極厚みを増加させて、電極の配線抵抗を低くする方法が開示されている。
しかしながら、複数回印刷を繰り返すと以下の3つの問題が発生する。
一つ目は位置ズレによるフィンガー幅の増加である。フィンガー幅の増加は、受光面積が小さくなるためJscの減少や、変換効率の減少を引き起こす。更に太陽電池は、屋根や壁など人目につくところに設置されるので、外観も重要とされる。フィンガー幅太りが発生した基板は、白味を帯びて見え、美観を損ねるため、好んで使用されない。結果として、フィンガー太りは歩留りの低下を引き起こす。
二つ目はスクリーン製版の厚みよりも大きな電極膜厚が得られないという問題である。スクリーン製版の厚みより大きい電極に対して印刷しようとすると、焼成前の電極は印圧により簡単に押しつぶされてしまい、元の膜厚以上の膜厚が得られないだけでなく、図4,5に示したように電線表面が凸凹になり、配線抵抗が高くなってしまう。なお、図4,5中、408はスキージ、409はメッシュ、410は乳剤、507はフィンガー電極である。
三つ目は、製造工程数やタクト、製造コストの増加である。量産機で多層印刷を行うためには高価な印刷装置や、高価かつ消耗品のスクリーン製版が複数台、複数組必要となるため、製造工程数やタクトタイムが増加し、製造コストの増加を引き起こす。
第一の問題を解決するために、位置合わせ機構を設け、精度よく印刷する方法が報告されている(特許文献3:特開2010−208317号公報)。この方法を用いれば、1層目と2層目のパターンを合わせることができる。しかしながら、この手法の場合には、印刷前に位置合わせのための時間が必要となってタクトタイムが増加してしまうという問題があった。
特開2006−54374号公報 特開平11−103084号公報 特開2010−208317号公報
従って、本発明は、太陽電池のフィンガー電極を多層印刷によって形成するときに発生する位置ズレの防止や、位置合わせの時間の省略によって生産性を著しく向上させ、更に、高価な微細パターンを有する版を使用する工程を極力省略して製造コストを減少させて、高効率の太陽電池を製造することができるフィンガー電極の形成方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る太陽電池におけるフィンガー電極の形成方法では、基板にフィンガー電極の元となる導電性ペーストでフィンガー基礎電極を形成したのち、その基礎電極に対して選択的に導電性ペーストを付着させるようにしたものである。
なお、本発明において、フィンガー基礎電極とは、その上に重ねて電極ペーストを塗布し、これと共に焼成したときに一体となって集電電極(フィンガー電極)になり得るものをいい、これには、後述する通り、導電性ペーストを塗布、乾燥しただけで未焼成のもの、更にこれを焼成した電極も含まれる。
より詳しくは、第一の工程では、導電性ペーストを用いて、太陽電池受光面側に基礎電極を形成し、続く第二の工程以降では、前記基礎電極が支持体に保持された流動性のある導電性ペーストに接触することにより、膜厚を増加させることができる。第二の工程で用いられる支持体は、ほぼ全面が導電性ペーストによって覆われていることを特徴とする。
本発明で用いる導電性ペーストを保持するために必要な支持体として、板状又は円筒もしくは円柱状の形状を用いることが好ましい。
前記第一工程で形成される基礎電極の膜厚は5μm以上であれば十分であるが、上限は15μm以下であることが望ましい。なぜなら、第二の工程において、基礎電極の膜厚が上記範囲であれば、より選択的に導電性ペーストに接触することができるためである。
また、円筒もしくは円柱状の支持体を用いて太陽電池の電極を形成する場合、前記基礎電極と導電性ペーストの接触、分離工程において、その方向は、太陽電池受光面のフィンガー電極の長手方向に対して平行であることが望ましい。
従って、本発明が下記フィンガー電極の形成方法を提供する。
<1> 太陽電池基板の受光面上にフィンガー電極を形成する方法であって、上記受光面上にフィンガー基礎電極をスクリーン印刷によって形成し、その上端面に支持体の表面ほぼ全面に保持した導電性ペーストを接触、移行させて、上記基礎電極に積層電極を形成した後、焼成することを特徴とする太陽電池におけるフィンガー電極の形成方法。
<2> 支持体が円筒状又は円柱状形状を有し、この支持体を回転させると共に、太陽電池基板と支持体とを相対移動させながら、上記支持体の外周面ほぼ全面に保持した導電性ペーストをフィンガー基礎電極上端面に接触、移行させるようにした<1>記載のフィンガー電極の形成方法。
<3> 太陽電池基板と支持体との相対移動方向が、フィンガー基礎電極の長手方向である<2>記載のフィンガー電極の形成方法。
<4> 支持体が板状であり、この板状支持体の一面に保持した導電性ペーストをフィンガー基礎電極の上端面に接触、移行させた後、板状支持体をフィンガー基礎電極の長手方向に沿ってフィンガー基礎電極から分離するようにした<1>記載のフィンガー電極の形成方法。
<5> フィンガー基礎電極の膜厚が5μm以上である<1>〜<4>のいずれかに記載のフィンガー電極の形成方法。
<6> フィンガー基礎電極の膜厚が5〜15μmであり、その上に積層される積層電極の厚さが1〜135μmであり、フィンガー電極総厚さが6〜150μmである<1>〜<4>のいずれかに記載のフィンガー電極の形成方法
本発明の方法は、位置合わせを必要としないため、生産速度を高めることができる。また、基礎電極へ選択的にペーストを転写することができるため、位置ズレが発生せず、線幅太り等の不良を抑制する。また、パターンを有する製版は一つでよいため、低コストで電極形成することができる。更には、基板へのダメージがほとんどなく、薄型基板のような破損し易い基板であっても印刷することが可能である。
一般的な太陽電池の電極の断面図である。 一般的な太陽電池の表面形状を示す平面図である。 一般的な太陽電池の裏面形状を示す裏面図である。 従来のスクリーン製版の印刷中の様子を示す説明図である。 従来のスクリーン製版を用いて印刷した後の電極形状を示す断面図である。 本発明のフィンガー電極形成中の様子の一例を示す図2のA−A線に沿った部分の一部省略断面図である。 本発明を用いて作製されたフィンガー電極を示す一部省略断面図である。 本発明の電極形成中の様子の他の例を示す一部省略断面図である。
本発明の太陽電池の作製方法の一例を以下に述べる。但し、本発明はこの方法で作製された太陽電池に限られるものではない。
高純度シリコンにホウ素あるいはガリウムのような13族元素をドープし、比抵抗0.1〜5Ω・cm2としたアズカット単結品(100)p型シリコン基板表面のスライスダメージを、濃度5〜60質量%の水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような高濃度のアルカリ、もしくは、フッ酸と硝酸の混酸等を用いてエッチングする。単結晶シリコン基板は、CZ法、FZ法のいずれの方法によって作製されてもよい。
引き続き、基板表面にテクスチャとよばれる微小な凹凸形成を行う。テクスチャは太陽電池の反射率を低下させるための有効な方法である。テクスチャは、加熱した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ溶液(濃度1〜10質量%、温度60〜100℃)中に10〜30分間程度浸漬することで容易に作製される。
上記溶液中に、所定量の2−プロパノールを溶解させ、反応を促進させることが多い。テクスチャ形成後、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸等、もしくはこれらの混合液の酸性水溶液中で洗浄する。経済的及び効率的見地から、塩酸中での洗浄が好ましい。清浄度を向上するため、塩酸溶液中に、0.5〜5質量%の過酸化水素を混合させ、60〜90℃に加温して洗浄してもよい。
この基板上に、オキシ塩化リンを用いた気相拡散法によりエミッタ層を形成する。一般的なシリコン太陽電池は、PN接合を受光面にのみ形成する必要があり、これを達成するために基板同士を2枚重ね合わせた状態で拡散したり、拡散前に裏面にSiO2膜やSiNx膜等を拡散マスクとして形成して、裏面にPN接合ができないような工夫を施す必要がある。拡散後、表面にできたガラスをフッ酸等で除去する。
次に、受光面の反射防止膜形成を行う。製膜にはプラズマCVD装置を用い、SiNx膜を90〜115nm程度、通常約100nm製膜する。反応ガスとして、モノシラン(SiH4)及びアンモニア(NH3)を混合して用いることが多いが、NH3の代わりに窒素を用いることも可能であり、また、プロセス圧力の調整、反応ガスの希釈、更には、基板に多結晶シリコンを用いた場合には基板のバルクパッシベーション効果を促進するため、反応ガスに水素を混合することもある。
次いで、裏面電極をスクリーン印刷法で形成する。上記基板の裏面に、銀粉末とガラスフリットを有機物バインダで混合したペーストをバスバー状にスクリーン印刷したのち、アルミニウム粉末を有機物バインダで混合したペーストをバスバー以外の領域にスクリーン印刷する。印刷後、5〜30分間,700〜800℃の温度で焼成して、裏面電極が形成される。
裏面電極形成は印刷法によるほうが好ましいが、蒸着法、スパッタ法等で作製することも可能である。
次に、フィンガー基礎電極の形成工程である表面電極の第一工程について説明する。
本発明では、第一工程で形成される太陽電池受光面のフィンガー基礎電極(613)は、フィンガー電極幅が30〜120μm、フィンガー開口間隔0.5〜4.0mmの櫛型構造をなし、蒸着法、めっき法、スクリーン印刷法、凹版印刷法、インクジェット法、フォトレジスト法で形成したり、導電性フィルムを貼付して形成したり、太陽電池基板に溝を形成する等して形成することができる。
それぞれの特徴を以下に述べる。
蒸着法は、金属や酸化物を蒸発させて、表面に付着させる方法である。一方、めっき法は、金属等の材料の表面に、金属の薄膜を被覆した表面処理方法を指す。これらの方法で形成する場合、後工程を必要とせず、それだけで電極として機能することができる。
スクリーン印刷法は孔版印刷の代表例であり、スクリーン製版の開口部に導電性ペーストを充填し、太陽電池基板に押し出すことで、基礎電極を形成することができ、その膜厚はスクリーン製版の厚さに依存し、1〜100μmまで様々である。幅広いペーストに対応でき、生産性が高く、太陽電池の電極形成に一般的に用いられる方法である。凹版印別法はグラビア印刷に代表されるように、生産性に優れた印刷方法である。板状又は円筒状の製版に凹部が形成されており、その凹部にのみ導電性ペーストを充填し、シリコーンゴム製等の吸着性と剥離性を有する転写材に転写した後、太陽電池基板に再転写することで、基礎電極を形成する。この方法により1〜10μm程度の膜厚が得られる。
インクジェット法は無版印刷の代表的な例であり、圧力をかけて細いノズルから液滴を噴射する仕組みである。この手法は、パターンの自由度が高く、細線を形成することも可能である。
フォトレジスト法は、レジスト塗布、乾燥、露光、現像、エッチング等の工程を経て基礎電極が形成され、レジスト膜の厚みによって任意に膜厚を設定することや、露光箇所の精密な設定により任意で線幅を設定することが可能である。
導電性フィルムを貼付して基礎電極を形成する場合には、導電性フィルム作製時にパターン幅や厚みを任意に変更することが可能である。
太陽電池基板の基礎電極となる箇所以外を削り取り、基礎電極状に残して基礎電極を形成することができる。しかし、物理的に削り取る場合には基板へのダメージが大きく、歩留りが低下してしまったり、化学的に溶出させる場合には、基礎電極の保護、脱保護の工程が必要となるため好ましくない。
基礎電極は、以上いずれかの方法で形成が可能であるが、スクリーン印刷によって形成することが望ましい。なぜなら、スクリーン印刷は他の印刷方法に比べて大きな膜厚が得られやすく、第二工程以降において前記基礎電極の膜厚が大きいほうが、より選択的に印刷することができるためである。
また、極細線でパターンを形成したい場合には、凹版印刷によって第一工程を行うことが好ましい。凹版印刷はスクリーン印刷に比べて極細線を描くことに適しているためである。
次に第二工程について説明する。
アスペクト比の大きな電極を得るためには、上記で説明したような印刷方法を複数回繰り返し行う方法がある。しかしながら、多層印刷を行うと位置ズレが発生してフィンガー幅が増加して変換効率や歩留りが低下したり、基礎電極の厚みがスクリーン製版の厚みより大きい状態で印刷を行うと、スクリーンの印圧によって基礎電極が押しつぶされて、抵抗率が高くなったり、製造工程数やタクト、コストの増加等の問題が発生する。
本発明では、図6に示したように、第一工程で形成された基礎電極(613)に、一部又は全部が流動性のある導電性ペースト(612)によって覆われている支持体(611)を接触させ、導電性ペースト(612)が基板の基礎電極(613)に転写されることを利用して、これらの問題を解決することができる。
第二工程に用いる支持体は金属、プラスチック(熱可塑性、熱硬化性)、セラミックス、木材のいずれか、又はこれらの組み合わせから形成することができる。耐久性の面から、耐溶剤性を備えたものが望ましい。
この支持体は基礎電極形成の際に使用するような特別なパターンは持たず、一部にペーストを塗り広げるようにして使用する。太陽電池基板は、支持体と平行な位置に置かれたステージに固定することが好ましい。支持体をステージと平行を保ったまま太陽電池基板に接近させ、支持体に充填されたペーストと基礎電極を接触させる。このときの接触圧力は0.5MPa以下が好ましく、また0MPaでも可能である。接触圧力が小さいため、太陽電池基板が破損する危険性が減少するという利点もある。
本発明において基礎電極の厚みtは、5μm以上150μm以下、より好ましくは10〜100μmが望ましい。基礎電極の厚みが5μm未満の場合、基礎電極のない部分にペーストが付着するおそれが高まるためである。一方、基礎電極の厚みが大きいと、電極総厚に対する転写増加分の厚みの割合は小さくなり、変換効率向上効果が小さくなるため基礎電極の厚みは150μm以下が望ましい。
また、このときの太陽電池基板の表面と、支持体に塗布されているペースト表面の距離(ギャップg)は、1〜150μm、より好ましくは1〜50μmであることが望ましい(図6)。
なぜなら、ギャップgが1μmより小さいときは充填されたペーストが流れ落ちて太陽電池基板に接触してしまい、基礎電極以外の部分にもペーストが付着してしまう可能性があるためである。一方、本発明の原理は基礎電極とペーストが接触することにより初めて実現できるものであり、ギャップの上限は基礎電極の厚み以下にする必要がある。
基礎電極とペーストを接触させたのち、1〜30秒間静止させて、分離を行う。又は、1〜30秒間かけて徐々に分離する。時間をかけて徐々に分離していくと、ペーストが基礎電極側から徐々に乾燥していくため、静止時間をおく方法よりも高いアスペクト比の電極が得られる。図7に示したように、このようにして、太陽電池基板の基礎電極(713)上に選択的にペーストを移行して積層電極(714)を転写することができる。
また、分離は太陽電池基板と支持体の平行を保ちながら行ってもよいし、1辺から徐々に分離してもよい。なお、支持体をフィンガー電極に平行な方向に傾けるようにして分離すると、基礎電極以外にペーストが付着することがなく、より好ましい。
支持体と太陽電池基板の位置関係は、支持体の塗布面を重力方向にして太陽電池基板を支持体の下側に配置してもよいし、反対に、支持体の塗布面を上方向に向け、太陽電池基板を支持体の上方に配置してもよい。前者のように支持体の塗布面を重力方向に向けると、ペーストが流れ落ちて、太陽電池基板の基礎電極以外の場所に付着するおそれがある。これを回避するため、支持体のペースト塗布面に凹凸を持たせ、ペーストを保持しやすくする方法もある。また、このような不安定性をなくすためには、後者のように支持体の塗布面を上方向に向け、太陽電池基板を支持体の上方に配置する方法が有効である。
また、支持体の形状は上記のような板状に限らず円筒もしくは円柱状のものも使用することができる。この方法の場合も、基礎電極の厚みtは5μm以上150μm以下、より好ましくは10〜100μmであることが望ましい。なぜなら基礎電極の厚みが5μm未満の場合、基礎電極のない部分にペーストが付着するおそれが高まるためである。
一方、基礎電極の厚みが大きいと、電極総厚に対する転写増加分の厚みの割合は小さくなり、変換効率向上効果が小さくなるため基礎電極の厚みは150μm以下が望ましい。
また、太陽電池基板をステージに固定し、太陽電池基板表面とペースト塗布表層の距離(ギャップg)は、1〜150μm、より好ましくは1〜50μmであることが望ましい。なぜなら、ギャップgが1μmより小さいときは充填されたペーストが流れ落ちて太陽電池基板に接触してしまい、基礎電極以外の部分にもペーストが付着してしまう可能性があるためである。一方、本発明の原理は基礎電極とペーストが接触することにより初めて実現できるものであり、ギャップの上限は基礎電極の厚み以下にする必要がある。
図8に示したように、導電性ペースト(812)を外周面全面に塗布した円筒もしくは円柱状の支持体(811)を1〜10m/minの周速度で回転させ、太陽電池基板をその下側に通過させる。被印刷物の速度は、支持体の周速度とほぼ同じであることが望ましい。このようにしてペーストの接触、転写を行う(図8)。支持体の回転速度が1m/min未満の場合には、流動性のあるペーストが流れ出して、基礎電極以外の場所に付着してしまったり、連続運転中にペーストが乾燥してしまったりする。また、10m/min超の高速で回転させると、遠心力によりペーストが飛散し、上記同様、基礎電極以外の場所にペーストが付着してしまう。
また、基礎電極と導電性ペーストの接触、分離方向は、基礎電極のフィンガー電極に対して平行であることが好ましい。直角方向でペーストを塗布しようとすると、基礎電極とは直角方向にペーストが引き伸ばされるために、フィンガー幅が増加する可能性があるためである。
円筒もしくは円柱の大きさは直径1〜30cm、より好ましくは10〜15cmが望ましい。直径が1cmより小さい場合には剛性が低く、塗布工程の太陽電池基板の通過前後において、回転軸と太陽電池基板の水平が保たれずに、ペーストの塗布が不均一になってしまうためである。
また、直径が30cmより大きい場合にはペーストが充填されてから、転写されるまでの時間が長くなるため、ペーストが乾きやすい。ペーストが乾燥すると、基礎電極に付着することができず、転写が行われなくなってしまう。
このような円筒もしくは円柱状の支持体の場合には、太陽電池基板への転写を行いながら、同時にペーストを充填することが可能であり、生産性を高くすることができる。これにより、図8に示したように、基礎電極(813)上に積層電極(814)を形成することができる。
本発明の機構は、第一工程で作製された基礎電極に対し、上記導電性ペーストが均一に塗布された上記支持体を接触させることにより、基礎電極にのみペーストを付着させるものである。本発明の方法を用いれば、上記基礎電極にのみペーストが付着して電極積層体が形成されるので、位置ズレがなくなり、線幅太りは発生しない。また、位置合わせの時間を省略できるため生産速度を向上させることができる。
本発明の方法は繰り返し実施することも可能である。これにより、位置ズレを発生させることなく、フィンガー電極の膜厚を大きくすることができ、変換効率を向上させることができる。
なお、積層電極の厚さは1〜135μm、特に5〜50μmとすることが好ましく、基礎電極と積層電極からなるフィンガー電極の厚さは6〜150μm、特に6〜50μmとすることが好ましい。
スクリーン製版は高張力で張られたメッシュであるから、割れた基板等の異物が混入した際には破れやすい。本手法では、製版は第一工程のみに必要であるため、製版が破れるリスクが減少する。また製版パターンを変更するときなどには、製版一式を交換する必要はなく、印刷第一工程に使用する製版のみを作製すればよいため、低コストでパターン変更することができるという利点もある。
更に次のような効果もある。
昨今、太陽電池の材料コスト削減のために、Si基板の薄型化が望まれる。基板が薄くなるにつれて、製造中のダメージを受けて割れやすくなる。しかし、本発明の手法は、太陽電池基板にかける印圧が他の印刷方法に比べて小さいため、薄型基板等でも印刷することが可能である。
このように、基礎電極を有する太陽電池受光面に対し、導電性ペーストが均一に塗布された支持体を接触させることで、積層印刷体を形成することにより、位置ズレによる幅太りの抑制、タクトタイム短縮、コスト低減をすることができる。
上記のような手法を用いて積層印刷体形成後、大気下、700〜800℃で5〜30分間熱処理することにより焼結させる。裏面電極及び受光面電極の焼成は一度に行うことも可能である。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
[実施例、比較例]
本発明の有効性を確認するため、以下の工程を半導体基板150枚について行い、太陽電池を作製した。
試験は、フィンガー電極開口幅(以下Wf)80μmの櫛型パターンを有するスクリーン製版を用いて行った。
水準Aは従来の方法により、スクリーン製版で5回印刷を行った(比較例)。水準B,Cは、上記パターンを有するスクリーン製版で1回印刷したのち、更に本発明の円筒状の支持体を用いる方法で4回印刷を行った(実施例)。
円筒状の支持体と基礎電極が接触、分離する方向が、水準Bはフィンガー電極の長手方向に対して直角、水準Cは平行として実験を行った。
まず、15cm角、厚さ250μm、比抵抗2.0Ω・cm2の、ホウ素ドープのP型アズカットシリコン基板(100)を用意し、濃水酸化カリウム水溶液によりダメージ層除去工程を経て、テクスチャを形成、オキシ塩化リン雰囲気下、850℃で熱処理したエミッタ層(101)を形成し、フッ酸にてリンガラスを除去し、洗浄、乾燥させた。次にプラズマCVD装置を用い、SiNx膜(102)を製膜し、裏面に、銀粉末とガラスフリットを有機物バインダで混合したペーストをバスバー状にスクリーン印刷したのち(106)、アルミニウム粉末を有機物バインダで混合したペーストをバスバー以外の領域にスクリーン印刷した(104)。有機溶媒を乾燥して裏面電極を形成した半導体基板を作製した。
次に、この半導体基板上に、銀粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルと、有機溶媒とを主成分とし、添加物として金属酸化物を含有した導電性ペーストを、上記印刷パターンを有するスクリーン製版を用いて、水準Aは5回、水準Bは1回、半導体基板上に形成された反射防止膜上に塗布した。
印刷条件は、スキージ硬度70度、スキージ角度70°、印圧0.33MPa、印刷速度50mm/secである。印刷後、それぞれ150℃のクリーンオーブンで有機溶媒の乾燥を行ったのち、水準Bは、図8で示されるような印刷方法で、かつ、円筒状の支持体と基礎電極が接触、分離する方向が、フィンガー電極の長手方向に対して直角とした後に、更に4回ペーストの塗布を行った。
すなわち、スクリーン印刷で形成した既設の電極に、導電性ペースト(812)で覆われた支持体(811)を押し付け、ペーストの転写を行った。また、水準Cは前記接触、分離方向がフィンガー電極の長手方向に対して平行として更に4回ペーストの塗布を行った。その後、水準A,B,C共に800℃の空気雰囲気下で焼成した。
このように作製した太陽電池150枚について、光学顕微鏡による電極表面観察とソーラーシミュレーター(25℃の雰囲気の中、照射強度1kW/m2、スペクトル:AM1.5グローバル)による評価を行った。また、光学顕微鏡にて印刷後のフィンガー幅を表面状態を観察し、観察結果により第1電極の幅に対して±10μmを超えるものを不良とした。
以上の結果平均を表1に示す。
Figure 0005760956
従来法による比較例である水準Aでは、不良枚数は50枚中38枚であるのに対し、本発明に係る方法(水準BとC)において、水準Bでは不良が大幅に減少し、水準Cでは不良は確認されなかった。
上記実施例では円筒状の支持体の例を例示したが、同様に板状支持体を用いても類似の不良率が得られた。
水準B,Cでは短絡電流と曲線因子が増加した。短絡電流の増加は水準Aに比べてフィンガー幅の不良がなくなって受光面積が増加したためであり、曲線因子の増加は電極厚みが増したためである。
100 P型半導体基板
101 N型拡散層(エミッタ層)
102 反射防止膜(SiNx膜)
103 BSF層
104、304 アルミニウム電極
105、205 表面バスバー電極
106、306 裏面バスバー電極
207、507 フィンガー電極
408 スキージ
409 メッシュ
410 乳剤
611、811 支持体
612、812 導電性ペースト
613、713、813 第1工程で形成された電極(基礎電極)
714、814 第2工程で形成された電極(積層電極)
t 基礎電極の厚み
g ギャップ

Claims (6)

  1. 太陽電池基板の受光面上にフィンガー電極を形成する方法であって、上記受光面上にフィンガー基礎電極をスクリーン印刷によって形成し、その上端面に支持体の表面ほぼ全面に保持した導電性ペーストを接触、移行させて、上記基礎電極に積層電極を形成した後、焼成することを特徴とする太陽電池におけるフィンガー電極の形成方法。
  2. 支持体が円筒状又は円柱状形状を有し、この支持体を回転させると共に、太陽電池基板と支持体とを相対移動させながら、上記支持体の外周面ほぼ全面に保持した導電性ペーストをフィンガー基礎電極上端面に接触、移行させるようにした請求項1記載のフィンガー電極の形成方法。
  3. 太陽電池基板と支持体との相対移動方向が、フィンガー基礎電極の長手方向である請求項2記載のフィンガー電極の形成方法。
  4. 支持体が板状であり、この板状支持体の一面に保持した導電性ペーストをフィンガー基礎電極の上端面に接触、移行させた後、板状支持体をフィンガー基礎電極の長手方向に沿ってフィンガー基礎電極から分離するようにした請求項1記載のフィンガー電極の形成方法。
  5. フィンガー基礎電極の膜厚が5μm以上である請求項1〜4のいずれか1項記載のフィンガー電極の形成方法。
  6. フィンガー基礎電極の膜厚が5〜15μmであり、その上に積層される積層電極の厚さが1〜135μmであり、フィンガー電極総厚さが6〜150μmである請求項1〜4のいずれか1項記載のフィンガー電極の形成方法
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