以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して液封入式防振装置10の構造について説明する。図1は本発明の第1実施の形態における液封入式防振装置10の軸方向断面図である。なお、図1では、エンジンを支持する前の状態(即ち、エンジンの重量が負荷される前の状態)を図示している。
液封入式防振装置10は、自動車のエンジン(振動体、図示せず)を支持固定しつつ、そのエンジン振動を車体フレーム(図示せず)へ伝達させないようにするための防振装置であり、図1に示すように、エンジン側に取り付けられる第1取付具11と、エンジン下方の車体フレーム側に取付けられる筒状の第2取付具13と、これらを連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体17と、第2取付具13に取付けられて防振基体17との間に液室(第1液室23及び第2液室24)を形成すると共にゴム状弾性体から構成されるダイヤフラム20とを備えている。
第1取付具11は、アルミニウム合金などの金属材料から略円柱状に形成される部材であり、その上端面にボルトが螺着されるねじ穴12が形成されている。ねじ穴12に螺着されるボルトを介して第1取付具11はエンジン側に取り付けられる。第2取付具13は、防振基体17が加硫成形される筒状金具14と、その筒状金具14の下方にかしめ加工により固着される底金具15とを備えている。筒状金具14は上広がりの開口を有する筒状に、底金具15は底部を有するカップ状に、それぞれ鉄鋼材料などから形成されている。底金具15の底部にボルト16が下向きに突設されている。このボルト16を介して第2取付具13は車体側に取り付けられる。
防振基体17は、ゴム状弾性体から円錐台形状に形成される部材であり、第1取付具11の下面側と筒状金具14の上端開口部との間に加硫接着されている。防振基体17の下端部には、筒状金具14の内周面を覆うゴム膜18,19が連なっている。ゴム膜19は、内径が、ゴム膜18の内径より大きい段差状に形成されている。
ダイヤフラム20は、ゴム状弾性体から蛇腹状に屈曲したゴム膜として形成されており、上面視円環状の取付板21に外周が加硫接着されている。ダイヤフラム20は、取付板21が、筒状金具14により底金具15と共にかしめ加工により狭持固定されることで、第2取付具13に取着される。その結果、ダイヤフラム20の上面側と防振基体17の下面側との間に液室が形成される。液室には、エチレングリコール等の不凍性の液体(図示せず)が封入される。
仕切体30は、液室を区画するための部材であり、防振基体17とダイヤフラム20との間に配設される。仕切体30は、仕切板31と、仕切板31の第1液室23側の面に配置された第1膜50と、仕切板31の第2液室24側の面に配置された第2膜60とを備えている。第1膜50及び第2膜60はゴム状弾性体から膜状に構成されている。仕切板31は、上面視円環状の固定板22と、ゴム膜18,19の境界(段差部分)との間に挟まれている。固定板22が、底金具15及びダイヤフラム20の取付板21と共に筒状金具14によりかしめ固定されることで、仕切体30の軸方向の位置が固定される。
仕切体30は、仕切板31の外周面がゴム膜19に密着することで、防振基体17が室壁の一部を構成する第1液室23と、ダイヤフラム20が室壁の一部を構成する第2液室24との2室に液室を仕切る。仕切板31の外周面がゴム膜19に密着することで、仕切板31と筒状金具14との間に第1液室23と第2液室24とを連通する第1オリフィス25が形成される。仕切板31は、仕切板31を軸方向(図1上下方向)に貫いて第1液室23と第2液室24とを連通する第2オリフィス26が形成されている。
次に図2から図4を参照して仕切板31、第1膜50及び第2膜60を備える仕切体30について説明する。図2(a)は仕切板31の平面図であり、図2(b)は図2(a)のIIb−IIb線における仕切板31の断面図である。仕切板31は硬質の合成樹脂製の部材であり、図2(a)及び図2(b)に示すように、円板状に形成された板部32と、板部32の外周に連接されると共に軸線O方向(図2(b)上下方向)へ延びる筒状の胴部33と、軸線Oと直交して胴部33の上端に連接される円環状の壁部34と、胴部33の下端から径方向外側へ向けてフランジ状に張り出す壁部36とを備えている。
壁部34は、外周がゴム膜19に密接される部位であり、外周から径方向内側へ向けて切り欠かれる第1切欠部35が形成されている。同様に、壁部36は、外周がゴム膜19に密接される部位であり、外周から径方向内側へ向けて切り欠かれる第2切欠部(図示せず)が形成されている。仕切板31は、胴部33及び壁部34,36を接続し第1切欠部35と第2切欠部とを隔てる縦壁(図示せず)が設けられている。そのため、第1オリフィス25(図1参照)は、縦壁により周方向に分断され、第1切欠部35を介して第1液室23(図1参照)に連通されると共に、第2切欠部を介して第2液室24に連通される。即ち、仕切板31により第1切欠部35から第2切欠部(図示せず)まで約1周の流路長をもつ第1オリフィス25が形成される。第1オリフィス25は、例えば車両走行時のシェイク振動を減衰するため、シェイク振動に対応した第1周波数域(例えば5〜15Hz程度)で減衰係数が大きくなるように断面積や流路長などが設定される。
板部32は、胴部33の径方向外側に壁部34が張り出した位置より壁部36側の胴部33の径方向内側に配置されている。板部32は、軸線O方向(図2(a)紙面垂直方向)に貫通する断面円形状の貫通孔37が中心に形成されており、貫通孔37の径方向外側に貫通孔37と間隔をあけて貫通孔37を同心円状に囲む円環状の突出部38が形成されている。突出部38は、板部32の板面から軸線O方向の両側へ突出しており、軸方向端面が平坦面状に形成されている。板部32は、所定の幅に形成されると共に軸線O方向から見て周方向へ延びる略円弧状の開口部39,40が、突出部38の径方向外側の板面にそれぞれ形成される。仕切板31は、第1オリフィス25を形成するための壁部34,36及び胴部33が、板部32の外周に一体に形成されているので、仕切体30の軸方向の長さを短くできると共に部品点数を少なくできる。本実施の形態では板部32に4つの開口部39,40が形成されている。
開口部39,40は第2オリフィス26(図1参照)を形成するための部位である。第2オリフィス26は、開口部39を介して第1液室23(図1参照)に連通されると共に、開口部40を介して第2液室24に連通される。即ち、仕切板31により板部32の軸線O方向の厚さの流路長をもち、開口部39,40の断面積をもつ第2オリフィス26が形成される。第2オリフィス26は、例えばアイドル時(車両停止時)のアイドル振動に対応した周波数域(例えば20〜40Hz程度)よりも高い周波数(第1周波数より高周波数の第2周波数域)で減衰係数が大きくなるように断面積や流路長などが設定される。
図3を参照して第1膜50について説明する。図3(a)は第1膜50の底面図であり、図3(b)は図3(a)のIIIb−IIIb線における第1膜50の断面図である。第1膜50はゴム状弾性体から一体に成形される部材であり、軸線O方向(図3(a)紙面垂直方向)から見て円板状に形成される中央部51と、中央部51の外周に連接されて径方向外側へ同心円状に広がる円環状の外周部52とを備えている。
中央部51は、厚さ(軸線O方向寸法)が、外周部52の厚さより大きく設定されている。外周部52の剛性より中央部51の剛性を大きくするためである。外周部52は中心部51より薄く作られているので、外周部52を曲げ変形し易くすることができ、第2オリフィス26を開閉し易くできる。
中央部51は、第1膜50が仕切板31(図2(a)参照)に装着された場合に、突出部38に囲まれた径方向内側の円形状の領域内に配置される部位である。よって中央部51は、外径が、突出部38の内径より小さく設定されている。また、中央部51は、外周部52の膜面からの高さが、板部32の板面からの突出部38の高さと略同一に設定されている。
中央部51は、軸線O方向へ延びる円柱状の連結部53が片面の中心に連接されている。連結部53は、第1膜50が仕切板31(図2(a)参照)に装着された場合に、貫通孔37に挿入される部位である。よって連結部53は、外径が、貫通孔37の内径と略同一に設定されており、長さが、貫通孔37の軸線O方向の長さより十分大きく設定されている。
連結部53は、径方向外側へ向かってフランジ状に張り出す張出部54が、軸線O方向の端部に連接されている。張出部54は、仕切板31(図2(a)参照)に第1膜50及び第2膜60が装着された場合に、第1膜50及び第2膜60を固定するための部位である。連結部53及び張出部54の軸線O方向の先端面は、中心から周囲へ向けて傾斜した円錐状に形成されている。連結部53及び張出部54を仕切板31の貫通孔37に挿入し易くするためである。
外周部52は、第1膜50が仕切板31(図2(a)参照)に装着された場合に弾性変形する部位であり、外径が、仕切板31の板部32の直径(胴部33の内径)より少し小さく設定されている。外周部52は、液封入式防振装置10への入力振動による第1液室23の液圧の変化によって弾性変形するように膜厚および剛性が設定されている。外周部52は、連結部53が突出する方向と同じ方向に突出する第1リップ部55、第2リップ部56及び突部57が、膜面に設けられている。第1リップ部55、第2リップ部56及び突部57は、第1膜50が仕切板31(図2(a)参照)に装着された場合に、仕切板31の板面に先端が密接する部位である。
第1リップ部55及び第2リップ部56は、それぞれ外周部52の全周に亘り連続する突条状に形成されており、軸線O方向から見て円形に形成されている。第1リップ部55、第2リップ部56及び突部57は、第1膜50が仕切板31(図2(a)参照)に装着された場合に、開口部39の径方向外側に密接するように、軸線Oからの径方向の距離が設定されている。第2リップ部56は、軸線Oからの径方向の距離が、軸線Oからの第1リップ部55の径方向の距離より小さく設定されている。第1リップ部55及び第2リップ部56は、膜面からの高さ(突出長さ)が、外周部52の膜面から中央部51の膜面までの高さ以上に設定されている。
突部57は、第2リップ部56の径方向内側に位置し、外周部52の周方向の複数箇所に断続的に設けられている。突部57は、膜面からの高さ(突出長さ)が、外周部52の膜面から中央部51の膜面までの高さと同一に設定されている。
図4を参照して第2膜60について説明する。図4(a)は第2膜60の平面図であり、図4(b)は図4(a)のIVb−IVb線における第2膜60の断面図である。第2膜60はゴム状弾性体から一体に成形される部材であり、軸線O方向(図4(a)紙面垂直方向)から見て円板状に形成される中央部61と、中央部61の外周に連接されて径方向外側へ同心円状に広がる円環状の外周部62とを備えている。
中央部61は、厚さ(軸線O方向寸法)が、外周部62の厚さより大きく設定されている。外周部62の剛性より中央部61の剛性を大きくするためである。外周部62は中心部61より薄く作られているので、外周部62を曲げ変形し易くすることができ、第2オリフィス26を開閉し易くできる。
中央部61は、第2膜60が仕切板31(図2(a)参照)に装着された場合に、突出部38に囲まれた径方向内側の円形状の領域内に配置される部位である。よって中央部61は、外径が、突出部38の内径より小さく設定されている。また、中央部61は、外周部62の膜面からの高さが、板部32の板面からの突出部38の高さと略同一に設定されている。
中央部61は、軸線O方向へ貫通する円柱状の孔部63が中心に形成されている。孔部63は、第1膜50及び第2膜60が仕切板31(図2(a)参照)に装着された場合に、第1膜50の連結部53が貫通する部位である。よって孔部63は、内径が、連結部53の直径と略同一に設定されている。
外周部62は、第2膜60が仕切板31(図2(a)参照)に装着された場合に弾性変形する部位であり、外径が、仕切板31の板部32の直径(胴部33の内径)より少し小さく設定されている。外周部62は、液封入式防振装置10への入力振動による第2液室24の液圧の変化によって弾性変形するように膜厚および剛性が設定されている。外周部62は、膜面から同一方向へ突出する第1リップ部65、第2リップ部66及び突部67が、膜面に設けられている。第1リップ部65、第2リップ部66及び突部67は、第2膜60が仕切板31(図2(a)参照)に装着された場合に、仕切板31の板面に密接する部位である。
第1リップ部65及び第2リップ部66は、それぞれ外周部62の全周に亘り連続する突条状に形成されており、軸線O方向から見て円形に形成されている。第1リップ部65、第2リップ部66及び突部67は、第2膜60が仕切板31(図2(a)参照)に装着された場合に、開口部40の径方向外側に密接するように、軸線Oからの径方向の距離が設定されている。第2リップ部66は、軸線Oからの径方向の距離が、軸線Oからの第1リップ部65の径方向の距離より小さく設定されている。第1リップ部65及び第2リップ部66は、膜面からの高さ(突出長さ)が、外周部62の膜面から中央部61の膜面までの高さ以上に設定されている。
突部67は、第2リップ部66の径方向内側に位置し、外周部62の周方向の複数箇所に断続的に設けられている。突部67は、膜面からの高さ(突出長さ)が、外周部62の膜面から中央部61の膜面までの高さと同一に設定されている。
次に図1及び図5を参照しながら液封入式防振装置10(図1参照)の製造方法について説明する。図5は第2オリフィス26を閉じた仕切体30の軸方向断面図である。第1取付具11(図1参照)と筒状金具14とが防振基体17により連結された第1成形体と、ダイヤフラム20が加硫成形されると共に取付板21が加硫接着された第2成形体とを、ゴム加硫金型によりそれぞれ加硫成形する。仕切板31、第1膜50及び第2膜60を液体中へ沈め、仕切体31の板面に第2膜60を密着させながら、第1膜50の連結部53及び張出部54を、仕切板31の貫通孔37及び第2膜面60の孔部63に挿入し、仕切体30を組み立てる(図5参照)。
液体中で、第1成形体の下方開口から仕切体30を第1膜50側から筒状金具14内へ挿入した後、筒状金具14内へ固定板22及び第2成形体を挿入する。筒状金具14を縮径加工して、筒状金具14に仕切体30及びダイヤフラム20を取り付ける。その後、第1取付具11が下方となる姿勢で、この部材を液体外へ取り出し、この姿勢を維持しつつ底金具15を被せ、筒状金具14の下方開口に底金具15をかしめ加工により固着する。これにより液封入式防振装置10の製造が完了する。
図5及び図6を参照して液封入式防振装置10の動作について説明する。図6は第2オリフィス26を開いた仕切体30の軸方向断面図である。なお、図5及び図6では仕切体30を保持する筒状金具14等の図示が省略されている。
図5に示すように、仕切板31の中央を軸方向に貫通孔37(図2(a)、図2(b)参照)が貫通し、第2膜60の中央を孔部63(図4(a)、図4(b)参照)が貫通する。第1膜50及び第2膜60は、孔部63及び貫通孔37に挿通される連結部53を介して互いに中央が連結されることで仕切板31を軸方向の両側から挟むので、仕切体30の構造を簡単にできる。連結部53に形成された張出部54により孔部63からの連結部53の抜け止めができるので、仕切体30の製造を容易にできると共に部品点数を少なくできる。
第1膜50及び第2膜60は、仕切板31側へ向かって環状の第1リップ部55,65及び第2リップ部56,66が膜面に突出する。連結部53は、液封入式防振装置10へ振動が入力されていないときに、第1リップ部55,65及び第2リップ部56,66による仕切板31の圧接荷重が0以上(ゼロタッチ以上)となるように長さが設定されている。これにより無荷重時は第2オリフィス26を液体が流通しないようにできる。シェイク振動が液封入式防振装置10へ入力されると、第1オリフィス25(図1参照)を流通する液体の共振現象によって周波数が5〜15Hz程度(第1周波数域)の振動が減衰される。
図6に示すように、液封入式防振装置10へ入力された振動による第1液室23及び第2液室24の液圧の変化によって、第1膜50及び第2膜60が弾性変形して第1リップ部55,65及び第2リップ部56,66と仕切板31の板面とが離れると、第1膜50及び第2膜60と仕切板31との隙間27,28を通って第2オリフィス26を液体が流通する。第2オリフィス26を流通する液体の共振現象によって、第1周波数域より高周波数の第2周波数域の振動が減衰される。第1オリフィス25及び第2オリフィス26によって広帯域(第1周波数域および第2周波数域)の振動を減衰できる。また、第2周波数域での動ばね定数を低減できる。
仕切板31は、開口部39,40より径方向の内側に位置する突出部38が、軸方向へ突出して第1膜50及び第2膜60に密接する。仕切板31の板面からの突出部38の高さは、第1膜50及び第2膜60の膜面からのリップ部55,56,65,66の高さと略同一に設定されているので、第1膜50及び第2膜60は、突出部38に密接した状態で第1リップ部55,65及び第2リップ部56,66を仕切板31の板面に密接させる。第1膜50及び第2膜60は、突出部38を支点にして突出部38より外周側に位置する外周部52,62を変形させることができるので、第1膜50及び第2膜60(外周部52,62)の弾性変形により第2オリフィス26を開閉し易くできる。
なお、第1リップ部55,65及び第2リップ部56,66の高さを一定にすれば、連結部53が短くなるにつれて第1リップ部55,65及び第2リップ部56,66による仕切板31の圧接荷重が大きくなるので、第1リップ部55,65及び第2リップ部56,66と仕切板31の板面とを離れ難くできる。連結部53の軸方向の長さを調整することにより、第2オリフィス26の開き易さや、第2オリフィス26の開口部39,40と第1膜50及び第2膜60との隙間、即ち第2オリフィス26の開口部39,40での損失を制御できるので、第2オリフィス26の振動応答や減衰係数を制御し易くできる。
孔部63は第2膜60に形成され、連結部53は第1膜50に一体に成形されているので、第1膜50や第2膜60とは別の部材で連結部を作る場合に比べて、部品点数を削減できる。なお、第1膜50及び第2膜60は、孔部63及び連結部53の周囲に中央部51,61が位置し、中央部51,61の径方向の外側に位置する外周部52,62が、中央部51,61より厚みが薄く形成されると共に開口部38,40と対面する。外周部52,62の剛性に比較して、孔部63及び連結部53の周囲の中央部51,61の剛性を高くできるので、孔部63や連結部53が設けられる中央部51,61を破損し難くして第1膜50及び第2膜60の耐久性を向上できる。また、外周部52,62を中央部51,61より薄くすることにより、外周部52,62を弾性変形し易くすることができ、第2オリフィス26を開閉し易くできる。
また、仕切板31側へ向かって突出する第1リップ部55,65及び第2リップ部56,66が仕切板31に当たって第2オリフィス26を閉じるので、第2オリフィス26を閉じるときの衝撃を緩衝できる。第2オリフィス26を閉じた後も第1リップ部55,65及び第2リップ部56,66は軸方向へ弾性変形できるので、第1リップ部55,65及び第2リップ部56,66の弾性変形による消費エネルギーの分だけ仕切板31への伝達エネルギーを低減できる。よって、第1膜50及び第2膜60が第2オリフィス26を閉じるときに生じる異音を抑制できる。
第1リップ部55,65及び第2リップ部56,66は、第1膜50及び第2膜60にそれぞれ2つずつ形成されているので、第1膜50及び第2膜60にリップ部がそれぞれ1つずつ形成される場合に比べて、第1リップ部55,65及び第2リップ部56,66が仕切体31に密接したときに第2オリフィス26を液体が流通することを阻止するシール性を向上できる。また、第1膜50及び第2膜60にリップ部がそれぞれ1つずつ形成されている場合に比べて、第1リップ部55,65及び第2リップ部56,66の弾性変形による消費エネルギーを大きくできるので、第1リップ部55,65及び第2リップ部56,66が仕切板31に当接するときの異音の抑制効果を向上できる。
第1膜50及び第2膜60は、第2リップ部56,66の径方向内側に開口部39,40を挟んで突部57,67が設けられている。第1膜50及び第2膜60の膜面からの突部57,67の高さは、第1膜50及び第2膜60の膜面からの第1リップ部55,65及び第2リップ部56,66の高さと略同一に設定されているので、突部57,67が仕切板31に密接することで、突部57,67が設けられていない場合と比較して、第1リップ部55,65及び第2リップ部56,66が仕切板31に密接したときの外周部52,62の撓み(反り)を小さくできる。その結果、第1膜50及び第2膜60(外周部52,62)の耐久性を向上できる。また、突部57,67の弾性変形による消費エネルギーを大きくできるので、第1リップ部55,65及び第2リップ部56,66が仕切板31に当接するときの異音の抑制効果を向上できる。
次に図7を参照して第2実施の形態について説明する。図7(a)は第2実施の形態における液封入式防振装置の第2膜70の平面図であり、図7(b)は図7(a)のVIIb−VIIb線における第2膜70の断面図である。第2膜70は、第1実施の形態における液封入式防振装置10の第2膜60に代えて仕切板31に取り付けられるので、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図7(a)及び図7(b)に示すように、第2膜70は、スリット71が、第2リップ部66と突部67との間の外周部62に形成されている。スリット71は、第1液室23の負圧を解消するための部位である。スリット71は、第2膜70の厚さ方向に貫通する切れ目であり、無荷重時は弾性により塞がっている。スリット71は、仕切板31の開口部40に対応する位置に形成されており、本実施の形態では、孔部63を挟む対向位置の2箇所に円弧状に形成されている。
図8及び図9を参照して第2膜70の動作について説明する。図8は第2オリフィス26を閉じた仕切体80の軸方向断面図であり、図9は第2オリフィス26を開いた仕切体80の軸方向断面図である。図8に示すように、通常の入力振動の下ではスリット71は塞がっているので、第1実施の形態と同様に、第1膜50及び第2膜70は入力振動による第1液室23及び第2液室24の液圧の変化によって弾性変形し、第2オリフィス26を開閉する。
大きな振動が入力されると、第1オリフィス25が目詰まりし、第1液室23が過度の負圧状態になることがある。第1液室23の圧力が液体の飽和水蒸気圧を下回るとキャビテーションが生じ、発生した気泡が消滅するときの衝撃音が異音となる。第1液室23が過度の負圧状態のときには、図9に示すように第1液室23内の第1膜50が弾性変形して開口部39が開放されると、第2膜70が第1液室23側へ吸引され、第2リップ部66及び突部67で支持された外周部62が折り曲げられてスリット71が開口する。第2液室24内の液体が、スリット71、開口部39,40を通って隙間27から第1液室23へ流入するので、第1液室23の負圧が解消される。よって、キャビテーションによる異音の発生を抑制できる。
次に図10を参照して第3実施の形態について説明する。第2実施の形態では、スリット71が形成された第2膜70を有する仕切体80について説明した。これに対し第3実施の形態では、第1膜90にスリット92が形成される場合について説明する。第1膜90は、第1実施の形態における液封入式防振装置10の第1膜50に代えて仕切板31に取り付けられるので、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図10(a)は第3実施の形態における液封入式防振装置の第1膜90の平面図であり、図10(b)は図10(a)のXb−Xb線における第1膜90の断面図である。
図10(a)及び図10(b)に示すように、第1膜90は、スリット91が、第2リップ部56と突部57との間の外周部52に形成されている。スリット91は、第1液室23の正圧を解消するための部位である。スリット91は、第1膜90の厚さ方向に貫通する切れ目であり、無荷重時は弾性により塞がっている。スリット91は、仕切板31の開口部39に対応する位置に形成されており、本実施の形態では、連結部53を挟む対向位置の2箇所に円弧状に形成されている。
図11及び図12を参照して第1膜90の動作について説明する。図11は第2オリフィス26を閉じた仕切体100の軸方向断面図であり、図12は第2オリフィス26を開いた仕切体100の軸方向断面図である。図11に示すように、通常の入力振動の下ではスリット91は塞がっているので、第1実施の形態と同様に、第1膜90及び第2膜60は入力振動による第1液室23及び第2液室24の液圧の変化によって弾性変形し、第2オリフィス26を開閉する。
大きな振動が入力されると、第1オリフィス25が目詰まりし、第1液室23が過度の正圧(加圧)状態になることがある。第1液室23が過度に加圧されると、防振基体17の寿命に影響を与えるおそれがある。第1液室23が過度の加圧状態のときには、図11に示すように第2液室24内の第2膜60が弾性変形して開口部40が開放されると、第1膜90が第2液室24側へ押し付けられ、第2リップ部56及び突部57で支持された外周部52が折り曲げられてスリット91が開口する。第1液室23内の液体が、スリット91、開口部39,40を通って隙間28から第2液室24へ流入するので、第1液室23の正圧が解消される。よって、防振基体17の耐久性を確保できる。
次に図13及び図14を参照して第4実施の形態について説明する。図13(a)は第4実施の形態における液封入式防振装置の第1膜110の底面図であり、図13(b)は図13(a)のXIIIb−XIIIb線における第1膜110の断面図である。図14(a)は第2膜120の平面図であり、図14(b)は図14(a)のXIVb−XIVb線における第2膜120の断面図である。第1膜110及び第2膜120は、第1実施の形態における液封入式防振装置10の第1膜50及び第2膜60に代えて仕切板31に取り付けられるので、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。第1膜110及び第2膜120は、それぞれ第1膜50及び第2膜60の第2リップ部56,66に代えて外側突部111,121が設けられている。
図13(a)及び図13(b)に示すように第1膜110は、外側突部111が、第1リップ部55と突部57との間の外周部52に形成されている。外側突部111は、外周部52の周方向に沿って複数が断続的に設けられており、膜面から突出している。外側突部111は、膜面からの高さが、突部57の膜面からの高さと同一に設定されている。
図14(a)及び図14(b)に示すように第2膜120は、外側突部121が、第1リップ部65と突部67との間の外周部62に形成されている。外側突部121は、外周部62の周方向に沿って複数が断続的に設けられており、膜面から突出している。外側突部121は、膜面からの高さが、突部67の膜面からの高さと同一に設定されている。
第1膜110及び第2膜120は、外側突部111,121が周方向に断続的に設けられているので、周方向に連続する環状のリップ部を設ける場合に比べて、リップ部の体積と外側突部111,121の体積との差分だけ材料を少なくできる。また、外側突部111,121が設けられているので、外側突部111,121の弾性変形による消費エネルギーによって、第1リップ部55,65が仕切板31に当接するときの異音の抑制効果を向上できる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、仕切板31に形成された開口部39,40の形状や大きさ、第1膜50,90,110及び第2膜60,70,120に形成された突部57,67や外側突部111,121の数や配置、大きさ等は、この実施形態に限定されるものではなく種々の変更が可能である。なお、第1膜50,90,110及び第2膜60,70,120に突部57,67や外側突部111,121を設けること自体は必須ではない。
上記各実施の形態では、第1膜50,90,110に連結部53を設け、第2膜60,70,120に形成された孔部63に連結部53を挿入して第1膜50,90,110と第2膜60,70,120とを連結する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、連結部53に代えて第1膜50,90,110にも孔部を設け、第1膜50,90,110や第2膜60,70,120とは別の部材(連結部)を用い、別の部材(連結部)を孔部に挿入して第1膜50,90,110と第2膜60,70,120とを連結することは当然可能である。連結部によって第1膜50,90,110と第2膜60,70,120とを機械的に結合するので、仕切体30,70,100の組立作業性を確保できる。
上記各実施の形態では、仕切板31によって第1液室23及び第2液室24が形成され、第1液室23と第2液室24との間が第1オリフィス25及び第2オリフィス26によって接続される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、要求される防振性能に応じて、第1液室23と第2液室24との間を接続するオリフィスを追加することは当然可能である。また、第1液室23及び第2液室24に加え、さらに1乃至複数の副液室を有する構成とすることは当然可能である。この場合には、第1液室23、第2液室24及び副液室の内の2つの液室間を、第1オリフィス25以外の他の1乃至複数のオリフィスによって連通させることができる。
上記各実施の形態では、自動車のエンジンを弾性支持するエンジンマウントとして液封入式防振装置10を用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ボディマウント、デフマウント等、任意の振動体の振動を抑制する防振装置に液封入式防振装置10を適用することは当然可能である。
上記第2実施の形態および第3実施の形態では、第2膜70、第1膜90にスリット71,91が2本形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、スリット71,91の数や長さは適宜設定できる。