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JP6475012B2 - 車両の制御装置及び車両の制御方法 - Google Patents

車両の制御装置及び車両の制御方法 Download PDF

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JP6475012B2 JP2014264667A JP2014264667A JP6475012B2 JP 6475012 B2 JP6475012 B2 JP 6475012B2 JP 2014264667 A JP2014264667 A JP 2014264667A JP 2014264667 A JP2014264667 A JP 2014264667A JP 6475012 B2 JP6475012 B2 JP 6475012B2
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  • Steering Control In Accordance With Driving Conditions (AREA)

Description

本発明は、車両の制御装置及び車両の制御方法に関する。
従来、例えば下記の特許文献1には、左右独立駆動が可能で、重心回りのモーメントをヨーレートで制御する走行安定制御を実施する電動車両において、ヨーレートセンサ値をヨーレートF/B値とする駆動制御装置が開示されている。
特開平10−271613号公報
しかしながら、車両が発生させているヨーレートを検出するヨーレートセンサの検出値には、ノイズ成分が含まれている。上記特許文献1に記載された技術では、ヨーレートセンサの検出値のノイズ成分がフィードバック制御に影響を与え、制御対象であるモータの駆動がノイズに起因して振動する等の問題が発生する。
一方、実ヨーレートにローパスフィルタ処理をすると、ノイズを抑制する代償としてフィルタ処理後の信号の位相が遅れる問題がある。このため、フィルタ処理によっては、フィルタ処理後のヨーレートが実車本来の挙動とは乖離したヨーレートになってしまう。そして、フィードバックするヨーレートの位相が遅れると、操舵時に補償する対象としてのヨーレートが増大する。この場合、例えば後輪のトルクベクタリングでヨーレートを補償しようとすると、後輪を駆動するためのモータトルク等の要求値が増大して旋回支援量が過剰になる問題がある。従って、ノイズ除去性能を優先したフィルタで実ヨーレートを処理した場合、車両挙動が不安定になりやすいという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、車両の目標ヨーレートと、車両が実際に発生している実ヨーレートとの偏差をフィードバックして車両を制御する際に、センサノイズの影響を確実に抑えてドライバビリティを向上させることが可能な、新規かつ改良された車両の挙動制御装置及び車両の挙動制御方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、操舵角と車両速度に基づいて車両の目標ヨーレートを取得する目標ヨーレート取得部と、車両モデルからヨーレートモデル値を算出するヨーレートモデル値算出部と、車両の実ヨーレートを検出するヨーレートセンサと、前記ヨーレートモデル値と前記ヨーレートセンサが検出したセンサ値との差分に基づいて前記ヨーレートモデル値と前記センサ値の配分比を変更することで前記ヨーレートモデル値と前記センサ値を配分して、前記ヨーレートモデル値及び前記センサ値からフィードバックヨーレートを算出するフィードバックヨーレート算出部と、前記目標ヨーレートと前記フィードバックヨーレートとの差分に基づいて車両の旋回を制御する車両旋回制御部と、を備える車両の制御装置が提供される。
前記フィードバックヨーレート算出部は、前記ヨーレートモデル値と前記センサ値との差分が小さいほど前記ヨーレートモデル値の配分を前記センサ値よりも大きくして前記フィードバックヨーレートを算出するものであっても良い。
また、前記フィードバックヨーレート算出部は、前記ヨーレートモデル値と前記センサ値との差分が大きいほど前記センサ値の配分を前記ヨーレートモデル値よりも大きくして前記フィードバックヨーレートを算出するものであっても良い。
また、前記車両旋回制御部は、前記目標ヨーレートと前記フィードバックヨーレートとの差分に基づいて左右の車輪のそれぞれを駆動するモータを個別に制御するものであっても良い。
また、左右の車輪の回転数差を取得する回転数差取得部と、前記回転数差に基づいて、路面の摩擦係数に応じたゲインを算出するゲイン算出部と、を備え、前記車両旋回制御部は、前記目標ヨーレートと前記フィードバックヨーレートとの差分と前記ゲインに基づいて左右の車輪のそれぞれを駆動する前記モータを個別に制御するものであっても良い。
また、前記回転数差取得部は、車両モデルから求まる左右の車輪の第1の回転数差と、左右の車輪のそれぞれを駆動する前記モータの回転数差から求まる第2の回転数差とを取得し、前記第1の回転数差と前記第2の回転数差との差分に基づいて前記左右の車輪の回転数差を算出するものであっても良い。
また、前記車両旋回制御部は、前記フィードバックヨーレートが前記目標ヨーレートとなるように、左右の車輪のそれぞれを駆動する前記モータを個別に制御するものであっても良い。
また、前記フィードバックヨーレート算出部は、前記ヨーレートモデル値と前記センサ値との前記差分に応じて設定された重み付けゲインを用いて前記ヨーレートモデル値と前記センサ値を配分するものであっても良い。
また、前記車両旋回制御部は、前記目標ヨーレートと前記フィードバックヨーレートとの差分に基づいて車体に付加するモーメントを算出する車体付加モーメント算出部と、
前記モーメントを前記ゲインに基づいて補正する補正部と、
補正された前記モーメントに基づいて左右の車輪のそれぞれを駆動する前記モータのトルク指示値を算出するモータ要求トルク算出部と、を有するものであっても良い。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、操舵角と車両速度に基づいて車両の目標ヨーレートを取得するステップと、車両モデルからヨーレートモデル値を算出するステップと、ヨーレートセンサにより車両の実ヨーレートを検出するステップと、前記ヨーレートモデル値と前記ヨーレートセンサが検出したセンサ値との差分に基づいて前記ヨーレートモデル値と前記センサ値の配分比を変更することで前記ヨーレートモデル値と前記センサ値を配分して、前記ヨーレートモデル値及び前記センサ値からフィードバックヨーレートを算出するステップと、前記目標ヨーレートと前記フィードバックヨーレートとの差分に基づいて車両の旋回を制御するステップと、を備える車両の制御方法が提供される。
以上説明したように本発明によれば、車両の目標ヨーレートと、車両が実際に発生している実ヨーレートとの偏差をフィードバックして車両を制御する際に、センサノイズの影響を確実に抑えてドライバビリティを向上させることが可能となる。
本発明の一本実施形態に係る車両を示す模式図である。 一般的なヨーレートフィードバック制御を説明するための模式図である。 ヨーレートセンサが検出した実ヨーレートγの特性に関し、フィルタ処理を行った場合(破線)と、フィルタ処理を行わない場合(実線)をそれぞれ示す特性図である。 目標ヨーレートと実ヨーレートγとの差分Δγについて、フィルタ処理を行った場合(破線)と、フィルタ処理を行わない場合(実線)をそれぞれ示す特性図である。 図4に示す差分Δγに基づいて算出した後輪のモータトルク指示値TvTrqについて、フィルタ処理を行った場合(破線)と、フィルタ処理を行わない場合(実線)をそれぞれ示す特性図である。 、本実施形態に係る制御装置とその周辺の構成を詳細に示す模式図である。 重み付けゲイン算出部が重み付けゲインaを算出する際のゲインマップを示す模式図である。 タイヤの動的特性を示す特性図である。 低μ判定出力ゲイン算出部が低μ出力ゲインμGを算出する処理を示すフローチャートである。 本実施形態の全体的な処理を示すフローチャートである。 図9のステップS122の処理を示すフローチャートである。 車両ヨーレート算出部がヨーレートモデル値γ_clcを算出する処理を示すフローチャートである。 付加トルクTvmotを算出する処理を示すフローチャートである。 本実施形態との比較のため、ヨーレートセンサが検出した実ヨーレートγ_sensをフィードバックヨーレートγ_F/Bとして制御を行った場合を示す特性図である。 図14に示す例において、ヨーレートセンサが検出した実ヨーレートγ_sens、目標ヨーレートγ_Tgt、目標ヨーレートγ_Tgtと実ヨーレートγ_sensとの差分Δγ、ヨーレートモデル値γ_clcを示す特性図である。 ヨーレートセンサが検出した実ヨーレートγ_sensの代わりに、ヨーレートモデル値γ_clcを使って目標ヨーレートγ_Tgtへのフィードバック制御を行った場合を示す特性図である。 本実施形態に係る制御を示しており、ヨーレートセンサ142が検出した実ヨーレートγ_sensとヨーレートモデル値γ_clcを重み付け係数で按分してフィードバックヨーレートγ_F/Bを求めた場合を示す特性図である 低μの路面(雪道等)をスラローム走行した場合を示す特性図であって、本実施形態に係る低μ出力ゲインμGを用いた制御を行わない場合を示す特性図である。 低μの路面(雪道等)をスラローム走行した場合を示す特性図であって、本実施形態に係る低μ出力ゲインμGを用いた制御を行わない場合を示す特性図である。 低μの路面(雪道等)をスラローム走行した場合を示す特性図であって、本実施形態に係る低μ出力ゲインμGを用いた制御を行わない場合を示す特性図である。 本実施形態に係る制御を示す特性図であって、図18〜図20と同様にスラローム走行を行った場合を示す特性図である。 本実施形態に係る制御を示す特性図であって、図18〜図20と同様にスラローム走行を行った場合を示す特性図である。 本実施形態に係る制御を示す特性図であって、図18〜図20と同様にスラローム走行を行った場合を示す特性図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る車両1000の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る車両1000を示す模式図である。図1に示すように、車両1000は、前輪100,102、後輪104,106、前輪100,102及び後輪104,106のそれぞれを駆動する駆動力発生装置(モータ)108,110,112,114、モータ108,110,112,114の駆動力を前輪100,102及び後輪104,106のそれぞれに伝達するギヤボックス116,118,120,122、モータ108,110,112,114のそれぞれを制御するインバータ123,124,125,126、後輪104,106のそれぞれの車輪速(車両速度V)を検出する車輪速センサ127,128、前輪100,102を操舵するステアリングホイール130、前後加速度センサ132、横加速度センサ134、バッテリー136、舵角センサ138、パワーステアリング機構140、ヨーレートセンサ142、インヒビターポジションセンサ(IHN)144、アクセル開度センサ146、制御装置(コントローラ)200を有して構成されている。
本実施形態に係る車両1000は、前輪100,102及び後輪104,106のそれぞれを駆動するためにモータ108,110,112,114が設けられている。このため、前輪100,102及び後輪104,106のそれぞれで駆動トルクを制御することができる。従って、前輪100,102の操舵によるヨーレート発生とは独立して、前輪100,102及び後輪104,106のそれぞれを駆動することで、トルクベクタリング制御によりヨーレートを発生させることができ、これによってステアリング操舵のアシストを行うことができる。つまり、本実施形態に係る車両1000では、旋回モーメント(以下、ヨーモーメントともいう)を車体旋回角速度(以下ヨーレート)で制御し、ステアリング操舵のアシストを行う旋回制御を実施する。
各モータ108,110,112,114は、制御装置200の指令に基づき各モータ108,110,112,114に対応するインバータ123,124,125,126が制御されることで、その駆動が制御される。各モータ108,110,112,114の駆動力は、各ギヤボックス116,118,120,122を介して前輪100,102及び後輪104,106のそれぞれに伝達される。
パワーステアリング機構140は、ドライバーによるステアリングホイール130の操作に応じて、トルク制御又は角度制御により前輪100,102の舵角を制御する。舵角センサ138は、運転者がステアリングホイール130を操作して入力した操舵角θhを検出する。ヨーレートセンサ142は、車両1000の実ヨーレートγを検出する。車輪速センサ127,128は、車両1000の車両速度Vを検出する。
なお、本実施形態はこの形態に限られることなく、後輪104,106のみが独立して駆動力を発生する車両であっても良い。また、外界認識手段170を搭載せず、操安制御のみを行う車両においても実現可能である。また、本実施形態は、駆動力制御によるトルクベクタリングに限定されるものではなく、後輪の舵角を制御する4WSのシステム等においても実現可能である。
図2は、一般的なヨーレートフィードバック制御を説明するための模式図である。目標ヨーレートγ_Tgtは、車両速度Vと操舵角θhから求まる。一方、ヨーレートセンサ142が検出した実ヨーレートγをフィルタリングし、目標ヨーレートγ_Tgtとフィルタリング後の実ヨーレートγとの差分Δγを車両諸元に基づいて車体付加モーメントMgに変換し、車体付加モーメントMgから後輪のモータトルク指示値(Frl(左後輪),Frr(右後輪))を算出する。このように、目標ヨーレートγ_Tgtに対して実ヨーレートγをフィードバックすることで、目標ヨーレートγ_Tgtに応じて車両1000の旋回を行うことができる。
ところで、図2に示すようなヨーレートフィードバック制御を行う場合に、フィルタによるデータ遅延で制御出力が大きくなると、特に路面抵抗(路面μ)が低い領域では車両1000の制御が困難になる。図3は、ヨーレートセンサ142が検出した実ヨーレートγの特性に関し、フィルタ処理を行った場合(破線)と、フィルタ処理を行わない場合(実線)をそれぞれ示している。図3に示すように、フィルタ処理を行った場合(破線)は、フィルタ処理を行わない場合(実線)と比較すると、実ヨーレートγの絶対値が小さくなる。特に、実ヨーレートγがピークに達する位置で、フィルタ処理を行った場合(破線)の実ヨーレートγの絶対値が顕著に小さくなっており、フィルタ処理を行った場合(破線)とフィルタ処理を行わない場合(実線)との誤差が大きくなっていることが判る。
図4は、目標ヨーレートγ_Tgtと実ヨーレートγとの差分Δγについて、フィルタ処理を行った場合(破線)と、フィルタ処理を行わない場合(実線)をそれぞれ示している。フィルタ処理の有無のそれぞれの場合において、目標ヨーレートγ_Tgtは同一である。このため、実ヨーレートγが小さいほどΔγ(フィードバックの偏差)は大きくなる。従って、フィルタ処理を行った場合(破線)の方が、フィルタ処理を行わない場合(実線)よりも、フィルタによる遅延で目標ヨーレートγ_Tgtと実ヨーレートγとの差分Δγの絶対値が大きくなる。そして、差分Δγに基づいて制御指示値(モータトルク指示値)が求まるため、フィルタ処理を行った場合の方が制御指示値(モータトルク指示値)は大きくなる。
図5は、図4に示す差分Δγに基づいて算出した車輪のモータトルク指示値TvTrqについて、フィルタ処理を行った場合(破線)と、フィルタ処理を行わない場合(実線)をそれぞれ示している。図5から明らかなように、フィルタ処理を行った場合(破線)は、フィルタ処理を行わない場合(実線)に比べて、モータトルク指示値がΔTrqだけ大きくなる。このため、路面のμが低い状態では、後輪のスリップの原因となる。
一般的に、ヨーレートセンサが検出した実ヨーレートに基づくヨーレートフィードバック制御は、スリップ防止装置(ESC)に適用されているが、極小値の精度は補償されていないため、センサノイズの影響を避けることができない。また、従来のエンジンを用いた車両では、ヨーレートセンサの検出値は、応答性が比較的緩やかなエンジンや、油圧ブレーキシステムへ適用されていたため、ノイズの影響が大きな問題になることはなかった。
しかしながら、ヨーレートフィードバック制御によりモータを制御しようとすると、制御の応答性の高さに起因して、ヨーレートセンサのノイズの影響が大きくなり、モータが振動するなどの弊害が生じる。このため、ヨーレートセンサの検出値にフィルタ処理を施す必要があった。この場合、上述したように、フィルタ処理を行った結果、制御指示値が増大し、車両の制御が困難になる場合が発生する。
そこで、本実施形態では、フィルタ処理を行わずにヨーレートセンサ142が検出した実ヨーレートγをそのまま用いるとともに、車両モデルの信頼度に応じて、実ヨーレートγと車両モデルから求まるヨーレートモデル値γ_clcを按分してフィードバックヨーレートγ_F/Bを求めるようにしている。そして、このような構成により、本実施形態では、車両1000の車体のヨーレートを制御し、極低速時の旋回アシストと中高速時の旋回アシストを両立させるとともに、時間遅れ分を補償してヨーレートセンサ142の検出値の精度を低下させることなく、高応答制御に対応させることを可能としている。以下、詳細に説明する。
図6は、本実施形態に係る制御装置200とその周辺の構成を詳細に示す模式図である。制御装置200は、車載センサ202、目標ヨーレート算出部204、車両ヨーレート算出部(車両モデル)206、ヨーレートF/B算出部208、減算部210,212,214,216、重み付けゲイン算出部218、理論左右差回転算出部(車両モデル)220、車体付加モーメント算出部222、低μ判定出力ゲイン算出部224、乗算部226、モータ要求トルク算出部228、を有して構成されている。
図6において、車載センサ202は、上述した車輪速センサ127,128、前後加速度センサ132、横加速度センサ134、舵角センサ138、ヨーレートセンサ142、アクセル開度センサ146を含む。舵角センサ138はステアリングホイール130の操舵角θhを検出する。また、ヨーレートセンサ142は車両1000の実ヨーレートγを検出し、車輪速センサ127,128は車両速度Vを検出する。
目標ヨーレート算出部204は、一般的な平面2輪モデルを表す以下の式(1)から目標ヨーレートγ_tgtを算出する。目標ヨーレートγ_tgtは、平面2輪モデルの式(1)における車両ヨーレートγに相当し、式(1)の右辺に各値を代入することによって算出される。
Figure 0006475012
なお、各式における変数、定数は以下の通りである。
<変数>
γ:車両ヨーレート
V:車両速度
δ:タイヤ舵角
θh:ハンドル操舵角
<定数>
l:車両ホイールベース
:車両重心点から前輪中心までの距離
:車両重心点から後輪中心までの距離
m:車両重量
:コーナリングパワー(フロント)
:コーナリングパワー(リア)
Gh:ハンドル操舵角からタイヤ舵角への変換ゲイン(ステアリングギヤ比)
目標ヨーレートγ_tgt(式(1)の左辺のγ)は、車両速度V、及びタイヤ舵角δを変数として、式(1)から算出される。式(1)のタイヤ舵角δは、直接センシングできないため、式(2)から、ハンドル操舵角θhに変換ゲインGhを乗じることで算出される。変換ゲインGhとして、ステアリングギア比が用いられる。また、式(1)における定数Aは車両の特性を表す定数であり、式(3)から求められる。目標ヨーレート算出部204が算出した目標ヨーレートγ_tgtは、減算部212へ入力される。
車両ヨーレート算出部206は、車両ヨーレートを算出するための以下の式から、ヨーレートモデル値γ_clcを算出する。具体的には、以下の式(4)、式(5)へ車両速度V、ステアリングの操舵角θhを代入し、式(4)、式(5)を連立して解くことで、ヨーレートモデル値γ_clc(式(4)、式(5)におけるγ)を算出する。なお、式(4)、式(5)から式(1)を導出することができるため、車両ヨーレート算出部206は、操舵角θhと車両速度Vとに基づき、目標ヨーレート算出部204と同様の手法により車両モデルの式(1)からヨーレートモデル値γ_clcを算出しても良い。ヨーレートモデル値γ_clcは、ヨーレートF/B算出部208へ出力される。また、ヨーレートモデル値γ_clcは、減算部210へ入力される。
Figure 0006475012
一方、ヨーレートセンサ142が検出した車両1000の実ヨーレートγ(以下では、実ヨーレートγ_sensと称する)は、減算部210へ入力される。減算部210は、実ヨーレートγ_sensからヨーレートモデル値γ_clcを減算し、実ヨーレートγ_sensとヨーレートモデル値γ_clcとの差分γ_diffを求める。差分γ_diffは重み付けゲイン算出部218へ入力される。
重み付けゲイン算出部218は、実ヨーレートγ_sensとヨーレートモデル値γ_clcとの差分γ_diffに基づいて、重み付けゲインaを算出する。
ヨーレートF/B算出部208には、ヨーレートモデル値γ_clc、実ヨーレートγ_sens、及び重み付けゲインaが入力される。ヨーレートF/B算出部208は、以下の式(6)に基づき、ヨーレートモデル値γ_clcと実ヨーレートγ_sensを重み付けゲインaによって重み付けし、フィードバックヨーレートγ_F/Bを算出する。算出されたフィードバックヨーレートγ_F/Bは、減算部212へ出力される。
γ_F/B=a×γ_clc+(1−a)×γ_sens ・・・・(6)
図7は、重み付けゲイン算出部218が重み付けゲインaを算出する際のゲインマップを示す模式図である。図7に示すように、重み付けゲインaの値は、車両モデルの信頼度に応じて0から1の間で可変する。車両モデルの信頼度を図る指標として、ヨーレートモデル値γ_clcと実ヨーレートγ_sensとの差分(偏差)γ_diffを用いる。図7に示すように、差分γ_diffの絶対値が小さい程、重み付けゲインaの値が大きくなるようにゲインマップが設定されている。重み付けゲイン算出部218は、差分γ_diffに図7のマップ処理を施し、車両モデルの信頼度に応じた重み付けゲインaを演算する。
図7において、重み付けゲインaは0〜1の値である(0≦a<1)。−0.05[rad/s]≦γ_diff≦0.05[rad/s]の場合、重み付けゲインaは1とされる(a=1)。
また、0.05<γ_diffの場合、またはγ_diff<−0.05の場合、重み付けゲインaは0とされる(a=0)。
また、0.05[rad/s]<γ_diff<0.1[rad/s]の場合、重み付けゲインaは以下の式より算出される。
a=−20×γ_diff+2
また、−0.1[rad/s]≦γ_diff<−0.05[rad/s]の場合、重み付けゲインaは以下の式より算出される。
a=+20×γ_diff+2
図7に示すゲインマップの領域A1は、差分γ_diffが0に近づく領域であり、実ヨーレートγ_sensのS/N比が小さい領域や、タイヤ特性が線形の領域(ドライの路面)であり、車両ヨーレート算出部206から算出されるヨーレートモデル値γ_clcの信頼性が高い。このため、重み付けゲインa=1として、式(6)よりヨーレートモデル値γ_clcの配分を100%としてフィードバックヨーレートγ_F/Bが演算される。これにより、ヨーレートγ_sensに含まれるヨーレートセンサ142のノイズの影響を抑止することができ、フィードバックヨーレートγ_F/Bからセンサノイズを排除することができる。従って、車両1000の振動を抑制して乗り心地を向上することができる。
ここで、実ヨーレートγと車両モデルから求まるヨーレートモデル値γ_clcとの間に乖離が生じる要因として、図8に示すタイヤの動的特性が挙げられる。図8に示すように、スリップ角と横加速度との関係を示す特性において、スリップ角に対して横加速度が線形となる線形領域(ステアリング操舵速度が比較的遅い領域)では、ヨーレートセンサ142のセンサノイズによる影響が発生する。上述した平面2輪モデルは、タイヤのスリップ角と横加速度との関係(タイヤのコーナーリング特性)が線形である領域を想定しており、この線形領域では、実ヨーレートγとヨーレートモデル値γ_clcは略一致する。
一方、タイヤのコーナーリング特性が非線形になる領域では、実車のヨーレートと横加速度が舵角やスリップ角に対して非線形になり、平面2輪モデルと実車でセンシングされるヨーレートとが乖離する。このような過渡的な非線形領域ではヨーレートセンサ142のセンサ特性上、ノイズが発生しないため、実ヨーレートγが使用可能である。非線形領域は、例えばステアリングの切り換えしのタイミングに相当し、図3の破線で囲んだ領域A5の特性に相当する。実ヨーレートγがヨーレートモデル値γ_clcを超える場合は、非線形領域に相当し、センサノイズの影響を受けないため実ヨーレートγを使用することで、真値に基づいた制御が可能である。なお、タイヤの非線形性を考慮したモデルを使用すると、ヨーレートに基づく制御が煩雑になるが、本実施形態によれば、ヨーレートモデル値γ_clcの信頼度を差分γ_diffに基づいて容易に判定することができ、非線形領域では実ヨーレートγの配分を多くして使用することが可能である。また、タイヤの動的特性の影響を受け難い領域はヨーレートモデル値γ_clcで対応可能である。
また、図7に示すゲインマップの領域A2は、差分γ_diffが大きくなる領域であり、ウェット路面走行時、雪道走行時、または高Gがかかる旋回時などに相当し、タイヤが滑っている限界領域である。この領域では、車両ヨーレート算出部206から算出されるヨーレートモデル値γ_clcの信頼性が低くなり、差分γ_diffがより大きくなる。このため、重み付けゲインa=0として、式(6)より実ヨーレートγ_sensの配分を100%としてフィードバックヨーレートγ_F/Bが演算される。これにより、実ヨーレートγ_sensに基づいてフィードバックの精度を確保し、実車の挙動を反映したヨーレートのフィードバック制御が行われる。従って、実ヨーレートγ_sensに基づいて車両1000の旋回を最適に制御することができる。また、タイヤが滑っている領域であるため、ヨーレートセンサ142の信号にノイズの影響が生じていたとしても、車両1000の振動としてドライバーが感じることはなく、乗り心地の低下も抑止できる。図7に示す低μの領域A2の設定については、設計要件から重み付けゲインκ=0となる領域を決めても良いし、低μ路面を実際に車両1000が走行した時の操縦安定性能、乗り心地等から実験的に決めても良い。
また、図7に示すゲインマップの領域A3は、線形領域から限界領域へ遷移する領域(非線形領域)であり、実車である車両1000のタイヤ特性も必要に応じて考慮して、ヨーレートモデル値γ_clcと実ヨーレートγ_sensの配分(重み付けゲインa)を線形に変化させる。領域A1(高μ域)から領域A2(低μ域)への遷移、ないし領域A2(低μ域)から領域A1(高μ域)へ遷移する領域においては、重み付けゲインaの急変に伴うトルク変動、ヨーレートの変動を抑えるため、線形補間で重み付けゲインaを演算する。
また、図7に示すゲインマップの領域A4は、実ヨーレートγ_sensの方がヨーレートモデル値γ_clcよりも大きい場合に相当する。例えば、車両ヨーレート算出部206に誤ったパラメータが入力されてヨーレートモデル値γ_clcが誤計算された場合等においては、領域A4のマップにより実ヨーレートγ_sensを用いて制御を行うことができる。なお、重み付けゲインaの範囲は0〜1の間に限定されるものではなく、車両制御として成立する範囲であれば任意の値を取れる様に構成を変更することも、本発明の技術で成し得る範疇に入る。
減算部212は、目標ヨーレート算出部204から入力された制御目標ヨーレートγ_tgtからフィードバックヨーレートγ_F/Bを減算し、制御目標ヨーレートγ_tgtとフィードバックヨーレートγ_F/Bとの差分Δγを求める。すなわち、差分Δγは、以下の式(7)から算出される。
Δγ=γ_Tgt−γ_F/B ・・・・(7)
差分Δγは、ヨーレート補正量として車体付加モーメント算出部222へ入力される。また、差分Δγは、低μ判定出力ゲイン算出部224へ入力される。
車体付加モーメント算出部222は、入力された差分Δγに基づいて、差分Δγが0となるように、すなわち、制御目標ヨーレートγ_tgtがフィードバックヨーレートγ_F/Bと一致するように、車体付加モーメントMgを演算する。具体的には、車体付加モーメントMgは以下の式(8)から算出される。これにより、車両1000の中心位置において、旋回に必要な車体付加モーメントMgが求まる。
Figure 0006475012
一方、理論左右差回転算出部220は、車両速度Vと操舵角θhに基づいて左右差回転理論値ΔNew_clcを算出する。左右差回転理論値ΔNew_clcは、回転半径に応じて幾何学的に求まる左右の後輪104,106の回転数差である。また、減算部214は、左後輪104の回転数と右後輪106の回転数との差である左右差回転実値ΔNew_realを算出する。なお、左右差回転実値ΔNew_realは、左右の車輪速センサ127,128の回転数差から求めることができる。なお、左右差回転実値ΔNew_realは、左右の前輪100,102から求めても良い。
左右差回転理論値ΔNew_clcと左右差回転実値ΔNew_realは、減算部216へ入力される。減算部216は、左右差回転理論値ΔNew_clcから左右差回転実値ΔNew_realを減算してΔNewを算出する。すなわち、ΔNewは以下の式から算出される。ΔNewは、低μ判定出力ゲイン算出部224へ入力される。
ΔNew=ΔNew_clc−ΔNew_real
低μ判定出力ゲイン算出部224は、入力された差分ΔγとΔNewに基づいて低μ出力ゲインμGを算出する。図9は、低μ判定出力ゲイン算出部224が低μ出力ゲインμGを算出する処理を示すフローチャートである。先ず、ステップS10では、低μ判定出力ゲイン算出部224に差分ΔγとΔNewが入力される。次のステップS11では、|ΔNew|≧150[rpm]であるか否かを判定し、|ΔNew|≧150[rpm]の場合はステップS12へ進む。ステップS12では、|Δγ|≧0.075[rad/s]であるか否かを判定し、|Δγ|≧0.075[rad/s]の場合はステップS14へ進む。ステップS14に進んだ場合は、左右差回転理論値ΔNew_clcと左右差回転実値ΔNew_realとの差分ΔNewの絶対値が所定値(=150[rpm])以上であり、且つ制御目標ヨーレートγ_tgtとフィードバックヨーレートγ_F/Bとの差分の絶対値が所定値(=0.075[rad/s])以上であるため、路面の摩擦係数μが低い状態(低μ状態)と判断し、低μ出力ゲインμGを0.1とする(μG=0.1)。
一方、ステップS11で|ΔNew|<150[rpm]の場合、またはステップS12で|Δγ|<0.075[rad/s]の場合はステップS18へ進む。ステップS18へ進んだ場合は、路面との摩擦係数μが高い状態(高μ状態)と判断し、低μ出力ゲインμGを1とする(μG=1)。
また、ステップS14の後はステップS16へ進む。ステップS16では、|Δγ|<0.075[rad/s]であるか否かを判定し、|Δγ|<0.075[rad/s]となった場合は、路面との摩擦係数μが低い状態から高い状態へ遷移したと判断し、ステップS18へ進んで低μ出力ゲインμGを1とする(μG=1)。一方、|Δγ|≧0.075[rad/s]の場合は、ステップS14へ戻り、μG=0.1の状態を継続する。
低μ判定出力ゲイン算出部224が算出した低μ出力ゲインμGは、乗算部226へ入力される。乗算部226には、車体付加モーメント算出部222が算出した車体付加モーメントMgも入力される。乗算部226は、車体付加モーメントMgに低μ出力ゲインμGを乗算して車体付加モーメントMgの補正値Mg’を算出する。これにより、低μ判定出力ゲイン算出部224により低μ状態と判定された場合には、車体付加モーメントMgが1/10の値に補正されることになる。
モータ要求トルク算出部228には、補正値Mg’が入力される。モータ要求トルク算出部228は、補正値Mg’を用いて、以下の式(9)からΔTvを算出する。そして、モータ要求トルク算出部228は、以下の式(10)から付加トルクTvmotを算出する。なお、式(9)のMgに補正値Mg’が代入されることになる。
Figure 0006475012
式(9)において、TrdRは後輪104,106のトレッド幅である。また、TireRは前輪100,102及び後輪104,106のタイヤ半径であり、Gratioは後輪104,106のギヤボックス120,122のギヤ比である。式(9)により、車両1000の中心位置における車体付加モーメントMgの補正値Mg’は、後輪104,106のモータトルクΔTvに変換される。そして、式(10)により、補正値Mg’を発生させるために必要な後輪104,106のそれぞれのモータトルクが求まる。
ところで、前輪100,102及び後輪104,106の駆動力は、車両1000の直進時には、ドライバーの要求駆動力(アクセルペダルの開度)から定まるモータトルク指示値reqTqによって定まる。ここで、モータトルク指示値reqTqは、以下の式(11)から算出される。
reqTq=reqF*TireR*Gratio ・・・(11)
式(11)において、reqFはアクセルペダルの開度から定まる要求駆動力である。
車両1000の直進時には、前輪100,102及び後輪104,106を駆動する4つのモータ108,110,112,114のそれぞれの駆動力は、ドライバーの要求駆動力reqFに基づくモータトルク指示値reqTqを4等分した値(=reqTq/4)となる。一方、車両1000の旋回時には、トルクベクタリング制御により、式(10)から算出された車体付加モーメントMgに基づく付加トルクTvmotが後輪104,106のモータトルク指示値reqTqに付加される。右旋回の場合は、左側の後輪104のモータトルク指示値は直進時のモータトルク指示値reqTq/4に付加トルクTvmotを加算した値となり、右側の後輪106のモータトルク指示値は直進時のモータトルク指示値reqTq/4から付加トルクTvmotを減算した値となる。同様に、左旋回の場合は、右側の後輪106のモータトルク指示値は直進時のモータトルク指示値reqTq/4に付加トルクTvmotを加算した値となり、左側の後輪104のモータトルク指示値は直進時のモータトルク指示値reqTq/4から付加トルクTvmotを減算した値となる。
従って、旋回時の各モータ108,110,112,114のモータトルク指示値は以下の式(12)〜式(15)で表すことができる。モータ要求トルク算出部228は、式(12)〜式(15)に基づいて、各モータ108,110,112,114のモータトルク指示値TqmotFl,TqmotFr,TqmotRl,TqmotRrを算出する。
TqmotFl(左前輪のモータトルク指示値)=reqTq/4 ・・・(12)
TqmotFr(右前輪のモータトルク指示値)=reqTq/4 ・・・(13)
TqmotRl(左後輪のモータトルク指示値)
=reqTq/4−(±Tvmot) ・・・(14)
TqmotRr(右後輪のモータトルク指示値)
=reqTq/4+(±Tvmot) ・・・(15)
なお、付加トルクTvmotの符号は、旋回方向に応じて設定される。
次に、本実施形態に係る制御装置200が行う処理について説明する。図10は、本実施形態の全体的な処理を示すフローチャートである。先ず、ステップS100では、イグニッションキー(イグニッションSW)がオンであるか否かを判定する。イグニッションキーがオンされた場合はステップS102へ進み、イグニッションキーがオンされていな場合はステップS100で待機する。
ステップS102では、インヒビターポジションセンサ(IHN)144がP(パーキング)又はN(ニュートラル)の位置を示しているか否かを判定し、P(パーキング)又はN(ニュートラル)の位置である場合はステップS104へ進む。また、ステップS102でP(パーキング)又はN(ニュートラル)の位置でない場合はステップS106へ進み、イグニッションキーがオンされているか否かを判定し、イグニッションキーがオンされている場合はステップS104へ進む。ステップS106でイグニッションキーがオフの場合はステップS108へ進み、車両の起動処理を終了してステップS100へ戻る。
ステップS104では車両1000の起動処理を行い、次のステップS110では、インヒビターポジションセンサ(IHN)144がD(ドライブ)又はR(後進)の位置を示しているか否かを判定する。そして、インヒビターポジションセンサ(IHN)144がD(ドライブ)又はR(後進)の位置を示している場合は、ステップS112へ進み、走行制御の処理を開始する。一方、ステップS110でインヒビターポジションセンサ(IHN)144がD(ドライブ)又はR(後進)の位置を示していない場合は、ステップS113へ進み、イグニッションキーがオンされているか否かを判定し、イグニッションキーがオンされている場合はステップS110へ戻る。ステップS113でイグニッションキーがオフの場合はステップS108へ進み、車両の起動処理を終了してステップS100へ戻る。
ステップS112の後はステップS114へ進み、アクセル開度センサ146の検出値からドライバーによるアクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出する。次のステップS115では、アクセルペダルの操作量が0.1以上であるか否かを判定し、操作量が0.1以上の場合はステップS116へ進む。ステップS116では、アクセルペダルの操作量に基づいて要求駆動力reqFを算出する。なお、要求駆動力reqFの算出は、例えばアクセル開度と要求駆動力reqFとの関係を規定したマップに基づいて行うことができる。一方、アクセルペダルの操作量が0.1未満の場合はステップS118へ進み、各モータ108,110,112,114の回生制動制御を行う。
ステップS116の後はステップS120へ進む。ステップS120では、舵角センサ138によって検出されるステアリング操舵角θhの絶対値が1[deg]以上であるか否かを判定し、操舵角θhの絶対値が1[deg]以上の場合はステップS122へ進む。ステップS122では、上述した手法により付加トルクTvmotを算出し、付加トルクTvmotに基づいて目標モーメントγ_Tgtへのフィードバック制御を行う。このため、次のステップS124では、付加トルクTvmotに基づいて各モータ108,110,112,114のモータトルク指示値を式(12)〜式(15)から算出し、各モータ108,110,112,114へ出力を指示する。次のステップS126では、前後加速度センサ132、横加速度センサ134により車両1000の加速度を検出する。ステップS126の後はステップS114へ戻る。
次に、図10の処理の主要な処理について詳細に説明する。図11は、図10のステップS122の処理を示すフローチャートである。ここで、図11は、重み付けゲイン算出部218が重み付けゲインaを算出する処理を示すフローチャートである。図11の処理は、重み付け係数aに基づいて実ヨーレートγ_sensとヨーレートモデル値γ_clcを按分してフィードバックヨーレートγ_F/Bを算出することで、ヨーレートセンサ142のノイズを除去する処理として機能する。先ず、ステップS200では、実ヨーレートγ_sensとヨーレートモデル値γ_clcを取得する。次のステップS201では、実ヨーレートγ_sensとヨーレートモデル値γ_clcとの差分γ_diffを算出する。次のステップS202では、図7のゲインマップに基づいて、重み付け係数aを算出する。次のステップS204では、上述した式(6)に基づいてフィードバックヨーレートγ_F/Bを算出する。算出されたフィードバックヨーレートγ_F/Bは、図13のステップS224で差分Δγの算出に用いられる。
図12は、車両ヨーレート算出部206がヨーレートモデル値γ_clcを算出する処理を示すフローチャートである。先ず、ステップS210では、操舵角θhと車両速度Vを取得する。次のステップS212では、式(4)、式(5)を連立して解くことで、ヨーレートモデル値γ_clcを算出する。
図13は、付加トルクTvmotを算出する処理を示すフローチャートである。先ず、ステップS220では、目標ヨーレート算出部204が操舵角θhと車両速度Vを取得する。次のステップS222では、操舵角θhと車両速度Vに基づいて、式(1)〜式(3)から目標ヨーレートγ_Tgtを算出する。次のステップS224では、式(7)に基づいて、制御目標ヨーレートγ_Tgtとフィードバックヨーレートγ_F/Bとの差分Δγを算出する。次のステップS226では、式(8)から車体付加モーメントMgを算出する。
次のステップS228では、低μ出力ゲインμGを算出する。低μ出力ゲインμGは、図9の処理に従って低μ判定出力ゲイン算出部224が算出する。次のステップS230では、式(9)に基づいてΔTvを算出し、式(10)に基づいて付加トルクTvmotを算出する。算出した付加トルクTvmotに基づいて、図10のステップS124において各輪のモータトルク指示値が算出される。
図14〜図17は、本実施形態に係る制御を行った場合に、目標ヨーレートγ_Tgtに基づいて車両1000が制御される様子を説明するための特性図である。ここで、図14は、本実施形態との比較のため、ヨーレートセンサ142が検出した実ヨーレートγ_sensをフィードバックヨーレートγ_F/Bとして制御を行った場合を示している。図14に示すように、実ヨーレートγ_sensを直接制御に適用すると、モータ108,110,112,114及びインバータ123,124,125,126が高応答な特性であるため、実ヨーレートγ_sensに含まれるノイズを操作値として認識してしまい,モータトルク指示値が発散してしまう。図14に示す例では、ステアリング操舵角θhが0で一定であり、直進状態(舵角操舵していない状態)にも関わらず,左右のモータトルク指示値が異なるように発生している。図14に示す例では、特に左後輪を駆動するモータのトルク指示値と右後輪を駆動するモータのトルク指示値にノイズに起因する振動が発生している。従って、ヨーレートセンサ142が検出したノイズがモータの制御量(操作量)となっていることが判る。なお、左前輪及び右前輪を駆動するモータにはトルクベクタリング制御による付加トルクTvmotをフィードバックしていないため、左前輪及び右前輪を駆動するモータのトルク指示値にはノイズに起因する振動は発生していない。
図15は、図14に示す例において、ヨーレートセンサ142が検出した実ヨーレートγ_sens、目標ヨーレートγ_Tgt、目標ヨーレートγ_Tgtと実ヨーレートγ_sensとの差分Δγ、ヨーレートモデル値γ_clcを示す特性図である。この場合、図13に示すように操舵角θhは一定であるため、目標ヨーレートγ_Tgtとヨーレートモデル値γ_clcの値は0で一定している。一方、ヨーレートセンサ142が検出した実ヨーレートγ_sensの特性にはノイズ成分により振動が発生している。このため、目標ヨーレートγ_Tgtと実ヨーレートγ_sensとの差分Δγにもノイズ成分に起因した振動が発生する。図15に示すように、γ_sensとΔγは方向が逆向であるため、Δγが0となるように左右輪のモータトルクをフィードバック制御すると、図14に示したように、左右輪のモータトルク指示値に振動が発生してしまう。この場合に、一般的なノイズ除去として1次遅れフィルタを使用することも考えられるが、高応答の制御対象であるモータ・インバータを制御するため、これらのフィルタを使用すると図3〜5で説明したように、却って弊害が生じてしまう。
一方、図16は、ヨーレートセンサ142が検出した実ヨーレートγ_sensの代わりに、ヨーレートモデル値γ_clcを使って目標ヨーレートγ_Tgtへのフィードバック制御を行った場合を示している。図16では、ヨーレートセンサ142が検出した実ヨーレートγ_sens、目標ヨーレートγ_Tgt、フィードバックヨーレートγ_F/B、ヨーレートモデル値γ_clcの特性を示している。なお、ヨーレートモデル値γ_clcを使って目標ヨーレートγ_Tgtへのフィードバック制御を行うため、フィードバックヨーレートγ_F/Bはヨーレートモデル値γ_clcと等しい。
図16に示す例では、ステアリングホイール130を操作してコーナーリングを行っている。この場合に、ヨーレートモデル値γ_clcを使ったフィードバック制御を行うことで、センサノイズの影響は除去することができる。しかしながら、破線で囲んだ領域A11に着目すると、ヨーレートセンサ142が検出した実ヨーレートγ_sensからヨーレートモデル値γ_clcが乖離しており、領域Aではヨーレートモデル値γ_clcが車両挙動を反映していないことが判る。従って、フィードバックヨーレートγ_F/Bに基づいて制御を行うと、実際の車両挙動を把握することができず、車両挙動を制御することができない。
図17は、本実施形態に係る制御を示しており、ヨーレートセンサ142が検出した実ヨーレートγ_sensとヨーレートモデル値γ_clcを重み付け係数で按分してフィードバックヨーレートγ_F/Bを求めた場合を示している。図17では、ヨーレートセンサ142が検出した実ヨーレートγ_sens、目標ヨーレートγ_Tgt、フィードバックヨーレートγ_F/B、ヨーレートモデル値γ_clcの特性を示している。なお、フィードバックヨーレートγ_F/Bは、実ヨーレートγ_sensとヨーレートモデル値γ_clcを重み付け係数aで按分して得られた値である。
図17に示す例では、ステアリングホイール130を左右に交互に操作してスラローム走行させた場合を示している。この場合、破線で囲んだ領域A12に着目すると、ステアリングの切り換えしの際にヨーレートセンサ142が検出した実ヨーレートγ_sensからヨーレートモデル値γ_clcが乖離し始めている。このため、重み付け係数aに基づいてヨーレートモデル値γ_clcの信頼度が低下したことが判定され、フィードバックヨーレートγ_F/Bにおける実ヨーレートγ_sensの比率が上昇していき、フィードバックヨーレートγ_F/Bは最終的に実ヨーレートγ_sensと一致する。これにより、フィードバックヨーレートγ_F/Bが車両挙動を反映したものとなり、フィードバックヨーレートγ_F/Bに基づいてフィードバック制御を行うことで、車両挙動を確実に制御することが可能となる。従って、本実施形態によれば、ヨーレートセンサ142のセンサノイズを除去することができるとともに、センサ値にフィルタ処理を施した場合の遅れを補償することができ、車両挙動に応じたフィードバックヨーレートF/Bを取得することができる。従って、車両1000の旋回性能を大幅に向上させることが可能である。
なお、ヨーレートモデル値γ_clcの信頼度が低下した場合に、ヨーレートモデル値γ_clcから実ヨーレートγ_sensへステップ切換を行うことも考えられるが、旋回中にドライバーが感じるフィーリング変化を抑えるためには、図7に示した重み付け係数aに基づくランプ切換を行うことが好適である。
また、実ヨーレートγ_sensにフィルタリング処理を施して式(6)へ代入すると、フィルタリングに伴う遅れによりモータ指示トルクの増大が生じ、特にγ_clcの配分が小さくなる領域(重み付け係数aが小さくなる領域)では、モータ指示トルクが増大してタイヤの空転が発生することが想定される。従って、式(6)にはフィルタリング処理を行っていないセンサ値(、実ヨーレートγ_sens)をそのまま代入することが望ましい。
次に、図18〜図23に基づいて、本実施形態に係る制御を行った場合に、路面状況が変化してもドライバビリティを向上できることを説明する。一般的に、路面摩擦係数(路面μ)が高い場合にドライバビリティを向上させる制御をすると、路面μが低い場合にタイヤの接地が飽和し、タイヤが空転してスピンしてしまう場合がある。このため、本実施形態では、上述したように、左右差回転理論値ΔNew_clcから左右差回転実値ΔNew_realを減算してΔNewを算出し、|ΔNew|≧150[rpm]の場合は低μ状態と判断し、低μ出力ゲインμGを0.1に設定する。これにより、式(10)から求まる付加トルクTvmotの値が路面μに応じて抑制された値となり、左右輪のトルクベクタリング量を抑制して、車輪の空転による空転を確実に抑制することが可能である。
図18〜図20は、低μの路面(雪道等)をスラローム走行した場合を示す特性図であって、本実施形態に係る低μ出力ゲインμGを用いた制御を行わない場合を示している。ここで、図18は、前後左右のモータ108,110,112,114の回転数を示している。また、図19は、操舵角θh、実ヨーレートγ_sens、目標ヨーレートγ_Tgtをそれぞれ示している。また、図20は、モータトルク指示値(TqmotFl,TqmotFr,TqmotRl,TqmotRr)、車両速度Vを示している。
図18に示すように、低μの路面でスラローム走行を行った場合、破線で囲んだ領域A3に着目すると、右側の後輪106の回転数が急激に上昇する一方、左側の後輪104の回転数が0となり、後輪の接地が飽和している(グリップが低下している)ことが判る。また、図19に示すように、破線で囲んだ領域A13では、実ヨーレートγ_sensが操舵角θh及び目標ヨーレートγ_Tgtとは逆方向に発生している。従って、車両がスピンしていることが判る。また、図20に示すように、破線で囲んだ領域A13では、左側の後輪104と右側の後輪106に逆向きのモータトルクが発生しており、スピンを助長する方向にトルクが発生していることが判る。
一方、図21〜23は、本実施形態に係る制御を示しており、図18〜図20と同様にスラローム走行を行った場合を示している。図18と同様に、図21は、前後左右のモータ108,110,112,114の回転数を示している。また、図19と同様に、図22は、操舵角θh、実ヨーレートγ_sens、目標ヨーレートγ_Tgtをそれぞれ示している。また、図20と同様に、図23は、モータトルク指示値TqmotFl,TqmotFr,TqmotRl,TqmotRr)を示している。
図21では、図18と比較すると左右のモータ回転数に差が生じておらず、接地が飽和していないことが判る。また、図22では、図19と比較すると、操舵角θhに追従するように目標ヨーレートγ_Tgt及び実ヨーレートγ_sensが同じ方向に変化しており、車両挙動が確実に制御されている。また、図23では、図20と比較すると、特に後輪のモータトルク指示値(TqmotRl,TqmotRr)が抑制されていることが判る。従って、車両挙動を確実に制御することが可能である。
以上説明したように本実施形態によれば、目標ヨーレートγ_Tgtに対してフィードバック制御を行う場合に、フィードバックヨーレートγ_F/Bとしてヨーレートセンサ142が検出した実ヨーレートγ_sensとヨーレートモデル値γ_clcを按分した値を用い、ヨーレートモデル値γ_clcの信頼度に応じて実ヨーレートγ_sensとヨーレートモデル値γ_clcの比率を変化させるようにした。これにより、ヨーレートモデル値γ_clcの信頼度が高い場合は、ヨーレートモデル値γ_clcを用いることでセンサノイズによる影響を確実に抑えることができ、ドライバビリティを向上させることができる。また、ヨーレートモデル値γ_clcの信頼度が低い場合は、ヨーレートセンサ142が検出した実ヨーレートγ_sensを用いることで車両挙動に応じた制御が可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
200 制御装置
204 目標ヨーレート算出部
206 車両ヨーレート算出部
208 ヨーレートF/B算出部
222 車体付加モーメント算出部

Claims (10)

  1. 操舵角と車両速度に基づいて車両の目標ヨーレートを取得する目標ヨーレート取得部と、
    車両モデルからヨーレートモデル値を算出するヨーレートモデル値算出部と、
    車両の実ヨーレートを検出するヨーレートセンサと、
    前記ヨーレートモデル値と前記ヨーレートセンサが検出したセンサ値との差分に基づいて前記ヨーレートモデル値と前記センサ値の配分比を変更することで前記ヨーレートモデル値と前記センサ値を配分して、前記ヨーレートモデル値及び前記センサ値からフィードバックヨーレートを算出するフィードバックヨーレート算出部と、
    前記目標ヨーレートと前記フィードバックヨーレートとの差分に基づいて車両の旋回を制御する車両旋回制御部と、
    を備えることを特徴とする、車両の制御装置。
  2. 前記フィードバックヨーレート算出部は、前記ヨーレートモデル値と前記センサ値との差分が小さいほど前記ヨーレートモデル値の配分を前記センサ値よりも大きくして前記フィードバックヨーレートを算出することを特徴とする、請求項1に記載の車両の制御装置。
  3. 前記フィードバックヨーレート算出部は、前記ヨーレートモデル値と前記センサ値との差分が大きいほど前記センサ値の配分を前記ヨーレートモデル値よりも大きくして前記フィードバックヨーレートを算出することを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
  4. 前記車両旋回制御部は、前記目標ヨーレートと前記フィードバックヨーレートとの差分に基づいて左右の車輪のそれぞれを駆動するモータを個別に制御することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の車両の制御装置。
  5. 左右の車輪の回転数差を取得する回転数差取得部と、
    前記回転数差に基づいて、路面の摩擦係数に応じたゲインを算出するゲイン算出部と、を備え、
    前記車両旋回制御部は、前記目標ヨーレートと前記フィードバックヨーレートとの差分と前記ゲインに基づいて左右の車輪のそれぞれを駆動する前記モータを個別に制御することを特徴とする、請求項4に記載の車両の制御装置。
  6. 前記回転数差取得部は、車両モデルから求まる左右の車輪の第1の回転数差と、左右の車輪のそれぞれを駆動する前記モータの回転数差から求まる第2の回転数差とを取得し、前記第1の回転数差と前記第2の回転数差との差分に基づいて前記左右の車輪の回転数差を算出することを特徴とする、請求項5に記載の車両の制御装置。
  7. 前記車両旋回制御部は、前記フィードバックヨーレートが前記目標ヨーレートとなるように、左右の車輪のそれぞれを駆動するモータを個別に制御することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の車両の制御装置。
  8. 前記フィードバックヨーレート算出部は、前記ヨーレートモデル値と前記センサ値との前記差分に応じて設定された重み付けゲインを用いて前記ヨーレートモデル値と前記センサ値を配分することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の車両の制御装置。
  9. 前記車両旋回制御部は、前記目標ヨーレートと前記フィードバックヨーレートとの差分に基づいて車体に付加するモーメントを算出する車体付加モーメント算出部と、
    前記モーメントを前記ゲインに基づいて補正する補正部と、
    補正された前記モーメントに基づいて左右の車輪のそれぞれを駆動する前記モータのトルク指示値を算出するモータ要求トルク算出部と、を有することを特徴とする、請求項5に記載の車両の制御装置。
  10. 操舵角と車両速度に基づいて車両の目標ヨーレートを取得するステップと、
    車両モデルからヨーレートモデル値を算出するステップと、
    ヨーレートセンサにより車両の実ヨーレートを検出するステップと、
    前記ヨーレートモデル値と前記ヨーレートセンサが検出したセンサ値との差分に基づいて前記ヨーレートモデル値と前記センサ値の配分比を変更することで前記ヨーレートモデル値と前記センサ値を配分して、前記ヨーレートモデル値及び前記センサ値からフィードバックヨーレートを算出するステップと、
    前記目標ヨーレートと前記フィードバックヨーレートとの差分に基づいて車両の旋回を制御するステップと、
    を備えることを特徴とする、車両の制御方法。
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