本実施形態の自動火災報知システム100の子機1は、図1に示すように、受信回路15と、電源回路12と、スイッチ18と、コンデンサ19とを備えている。受信回路15は、一対の電線51,52に電気的に接続され、一対の電線51,52間に印加される電圧V1の電圧値を検出することで親機2からの信号を受信する。電源回路12は、一対の電線51,52に電気的に接続される入力端121と、受信回路15に電気的に接続される出力端122とを有する。また、電源回路12は、一対の電線51,52間に印加される電圧V1を受けて受信回路15に供給する動作用の電力を生成する。スイッチ18は、電源回路12の入力端121に電気的に接続され、電源回路12を動作状態と停止状態とで択一的に切り替える。コンデンサ19は、電源回路12の出力端122に電気的に接続され、電源回路12から供給される電力により充電される。
電源回路12の入力端121は、一対の電線51,52と受信回路15との接続点に対し、スイッチ18を介して電気的に接続されている。そして、コンデンサ19は、受信回路15に動作用の電力を供給するように構成されている。
また、本実施形態の自動火災報知システム100の子機1において、電源回路12は、一対の電線51,52からの電力でコンデンサ19を充電するように構成されているのが好ましい。そして、受信回路15は、スイッチ18により電源回路12が停止状態に切り替わると、コンデンサ19から動作用の電力を供給されるように構成されているのが好ましい。
また、本実施形態の自動火災報知システム100の子機1において、スイッチ18は、少なくとも受信回路15が親機2からの信号を待ち受ける期間において電源回路12を停止状態に切り替えるのが好ましい。
また、本実施形態の自動火災報知システム100の子機1において、スイッチ18は、親機2からの同期信号により規定される特定期間において電源回路12を動作状態に切り替えるのが好ましい。
つまり、本実施形態の自動火災報知システム100は、上記の子機1と、一対の電線51,52間に電圧V1を印加する親機2とを備えているのが好ましい。親機2は、一対の電線51,52間の電圧V1を変化させることで子機1に信号を送信する送信部24を備えているのが好ましい。
以下、本実施形態に係る自動火災報知システム100、子機1、および親機2について詳しく説明する。ただし、以下に説明する構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、下記の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
<全体構成>
以下では、本実施形態の自動火災報知システム100が集合住宅(マンション)に用いられる場合を例示する。もちろん、本実施形態の自動火災報知システム100は、集合住宅に限らず、たとえば商業施設、病院、ホテル、雑居ビル等、様々な建物に用いられてもよい。
本実施形態の自動火災報知システム100においては、図2に示すように1棟の集合住宅6に対して、1台の親機2と、複数台の子機101,102,103…とが設けられている。なお、複数台の子機101,102,103…の各々を特に区別しないときには単に「子機1」という。
さらに、この自動火災報知システム100では、一対の電線51,52が1〜4階の階(フロア)ごとに配線されている。要するに、2本1組(2線式)の電線51,52は、集合住宅6全体で4組設けられている。
ここでは、各組の電線51,52に対して最大40〜80台の子機1が接続可能である。さらに、1台の親機2には、一対の電線51,52は最大で50〜200回線(50〜200組)接続可能である。したがって、たとえば各組の電線51,52に最大40台の子機1が接続可能で、1台の親機2に最大で50回線の一対の電線51,52が接続可能である場合、子機1は、1台の親機2に対して最大で2000(=40×50)台まで接続可能である。ただし、これらの数値は一例であって、これらの数値に限定する趣旨ではない。
なお、一対の電線51,52の終端(親機2と反対側の端部)においては、一対の電線51,52間が終端抵抗4を介して電気的に接続されている。そのため、親機2は、一対の電線51,52間に流れる電流を監視することで、一対の電線51,52の断線を検知
することが可能である。ただし、終端抵抗4は必須の構成ではなく、省略されていてもよい。
自動火災報知システム100は、基本的には、熱感知器や煙感知器や炎感知器等からなる子機1にて火災の発生を検知し、子機1から受信機である親機2へ火災発生の通知(火災報)がなされるように構成されている。ただし、子機1は、火災の発生を検知する感知器に限らず、発信機などを含んでいてもよい。発信機は、押しボタンスイッチを有し、人が火災を発見した場合に押しボタンスイッチを手動で操作することにより、親機2へ火災発生の通知(火災報)を行う装置である。
また、自動火災報知システム100は、他装置3を連動させるための通知(連動報)を子機1から親機2が受けた際、防排煙設備や非常用放送設備等の他装置3を連動させる連動機能を有している。そのため、自動火災報知システム100は、火災の発生時に、防排煙設備の防火扉を制御したり、非常用放送設備にて音響または音声により火災の発生を報知したりすることが可能である。
他装置3は、たとえば有線接続により親機2との間で通信可能に構成されており、親機2からの指示を受けて自動火災報知システム100と連動するように構成されている。ここでいう他装置3は、防火扉や排煙設備などの防排煙設備、非常用放送設備、外部移報装置、およびスプリンクラーなどの消火設備等、様々な装置を含んでおり、特定の装置(設備)には限定されない。なお、外部移報装置は、自動火災報知システム100が設置されている施設の外部の関係者、消防機関、警備会社等へ通報する装置である。
ここで、本実施形態の自動火災報知システム100では、子機1は、一対の電線51,52を流れる電流(ひいては、一対の電線51,52間の電圧V1)を火災報レベルまたは連動報レベルに調節することができる。したがって、本実施形態の自動火災報知システム100では、親機2は、火災報と連動報とを区別することができる。また、子機1は、一対の電線51,52を流れる電流(ひいては、一対の電線51,52間の電圧V1)を第1レベルと第2レベルとで交互に切り替えることにより、信号を送信することができる。また、親機2は、子機1と同様に、信号を送信することができる。
次に、親機2および子機1の構成について図1を用いて説明する。なお、図1は、1台の子機1が一対の電線51,52を介して1台の親機2に電気的に接続されている状態を示している。したがって、図1では、他の複数の子機1および他の一対の電線51,52の図示は省略されている。
<親機の構成例>
親機2は、子機1から火災発生の通知(火災報)、並びに他装置3を連動させるための通知(連動報)を受けるP型受信機である。親機2は、建物(集合住宅6)の管理室に設置される。
親機2は、図1に示すように、印加部21の他、抵抗22と、受信部23と、送信部24と、各種の表示を行う表示部25と、ユーザからの操作入力を受け付ける操作部26と、各部を制御する処理部27とを有している。
印加部21は、所定の電圧を一対の電線51,52に対して印加する。ここでは一例として、印加部21が一対の電線51,52間に印加する電圧は直流24Vとするが、この値に限定する趣旨ではない。
抵抗22は、印加部21と一対の電線51,52の少なくとも一方との間に接続されている。図1の例では、抵抗22は、一対の電線51,52のうち一方(高電位側)の電線51と印加部21との間に挿入されている。ただし、この例に限らず、抵抗22は、他方(低電位側)の電線52と印加部21との間に挿入されていてもよいし、一対の電線51,52の両方と印加部21との間にそれぞれ挿入されていてもよい。
また、抵抗22は、抵抗22を流れる電流を電圧降下により抵抗22の両端間の電位差(電圧)に変換する第1の機能と、一対の電線51,52間が短絡したときに一対の電線51,52に流れる電流を制限する第2の機能との2つの機能を有している。要するに、抵抗22は、電流−電圧変換素子としての第1の機能と、電流制限素子としての第2の機能とを兼ね備えている。ここでは一例として、抵抗22の抵抗値は470Ωとするが、この値に限定する趣旨ではない。
受信部23は、抵抗22と一対の電線51,52との間に電気的に接続されている。受信部23は、一対の電線51,52間の電圧V1に基づいて、子機1から送信される信号を受信する。具体的には、子機1が後述するように一対の電線51,52を流れる電流を引き込むと、抵抗22を流れる電流の電流値が変化し、一対の電線51,52間の電圧V1が変化する。受信部23は、この一対の電線51,52間の電圧V1の電圧値を検出することにより、子機1から送信される信号を受信する。
送信部24は、抵抗22と一対の電線51,52との間に電気的に接続されている。送信部24は、一対の電線51,52を流れる電流を変化させることで、信号を子機1に送信する。具体的には、送信部24が印加部21から抵抗22に流れる電流を引き込むと、一対の電線51,52間の電圧V1が変化する。つまり、送信部24は、印加部21から抵抗22に流れる電流の引き込みにより、一対の電線51,52間の電圧V1を変化させることで、信号を子機1に送信する。
表示部25は、たとえばLED(Light Emitting Diode)や液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネセンスディスプレイ等を備えている。表示部25は、処理部27に制御されることで、子機1から受信した信号に含まれるデータに応じた内容を表示する。表示部25は、たとえば火災の発生や、火災の発生した階(フロア)を表示する。また、表示部25は、火災を検知した子機1の固有の識別情報(たとえば、アドレス)を取得できる場合は、当該子機1の設置場所を表示することも可能である。
処理部27は、マイコン(マイクロコンピュータ)を主構成とし、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより所望の機能を実現する。なお、プログラムは、予めメモリに書き込まれていてもよいが、メモリカードのような記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、電気通信回線を通じて提供されてもよい。
また、親機2は、他装置3を連動させるための連動部28をさらに有している。これにより、親機2は、子機1から連動報を受けると、連動部28から他装置3へ指示を出し、他装置3を連動させることができる。
親機2は、上述したように印加部21から一対の電線51,52間に電圧を印加することにより、一対の電線51,52に接続されている子機1を含め、自動火災報知システム100全体の動作用の電源として機能する。
さらに、親機2は、停電に際しても自動火災報知システム100の動作用の電源を確保できるように、蓄電池を用いた予備電源29をさらに有している。親機2は、商用電源、自家発電設備等を主電源とする。印加部21は、電力の供給元を、主電源の停電時に主電源から予備電源29に自動的に切り替え、主電源の復旧時には予備電源29から主電源に自動的に切り替える。予備電源29は、省令で定められる基準を満たすように容量等の仕様が決められている。
<子機の構成例>
子機1は、図1に示すように、ダイオードブリッジ(Diode Bridge:DB)11と、電源回路12と、センサ13と、送信回路14と、受信回路15と、処理部16と、記憶部17と、スイッチ18と、コンデンサ19とを有している。
ダイオードブリッジ11は、入力端に一対の電線51,52が電気的に接続され、出力端に送信回路14、受信回路15が電気的に接続されている。また、ダイオードブリッジ11の出力端には、スイッチ18を介して電源回路12、コンデンサ19が電気的に接続されている。
電源回路12の入力端121には、スイッチ18を介してダイオードブリッジ11の出力端が電気的に接続されている。言い換えれば、電源回路12の入力端121は、一対の電線51,52と受信回路15との接続点に対し、スイッチ18を介して電気的に接続されている。また、電源回路12の出力端122には、電源端子PT1が電気的に接続されている。電源端子PT1は、たとえばセンサ13、受信回路15、処理部16、記憶部17に電気的に接続されている。電源回路12は、一対の電線51,52から電力を供給されることで子機1の動作用の電力を生成する。そして、電源回路12は、電源端子PT1を介してセンサ13、受信回路15、処理部16、記憶部17などに動作用の電力を供給する。言い換えれば、電源回路12は、一対の電線51,52間に印加される電圧を受けて受信回路15に供給する動作用の電力を生成する。
ここで、電源回路12の具体的な回路の一例について説明する。電源回路12は、図3に示すように、半導体素子123,124と、抵抗125,126とを備えている。半導体素子123,124は、いずれもnpn型のバイポーラトランジスタである。もちろん、半導体素子123,124は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等の他の半導体素子で構成されていてもよい。
半導体素子123のコレクタは、高電位側の電線51に電気的に接続されている。半導体素子123のベースは、半導体素子124のコレクタに電気的に接続されている。半導体素子123のエミッタは、半導体素子124のベースおよび抵抗126の第1端に電気的に接続されている。抵抗125は、半導体素子123のコレクタとベースとの間に電気的に接続されている。半導体素子124のエミッタは、抵抗126の第2端に電気的に接続されている。
以下、電源回路12の動作について説明する。なお、以下の説明では、スイッチ18がオンであると仮定する。電源回路12に一対の電線51,52間の電圧V1が印加されると、半導体素子123のベース−エミッタ間に電圧が印加される。すると、半導体素子123がオンに切り替わり、抵抗126を介して電流が流れる。抵抗126に流れる電流の電流値が、所定の電流値よりも大きくなると、半導体素子124のベース−エミッタ間電圧が閾値(VBE)よりも大きくなることで、半導体素子124がオンに切り替わる。すると、半導体素子123のベース−エミッタ間電圧が低下して閾値(VBE)を下回ることにより、半導体素子123がオフに切り替わる。したがって、電源回路12の出力電流は、半導体素子123,124が交互にオン/オフを繰り返すことにより、ほぼ一定になる。
センサ13は、たとえば煙の濃度の変化、温度の変化、一酸化炭素等のガス濃度の変化を検出することで、火災や煙の発生を検知する。
送信回路14は、一対の電線51,52に電気的に接続されている。送信回路14は、一対の電線51,52を流れる電流を変化させることで、信号を親機2に送信する。具体的には、送信回路14が一対の電線51,52に流れる電流を引き込むと、一対の電線51,52間の電圧V1が変化する。つまり、送信回路14は、一対の電線51,52に流れる電流の引き込みにより、一対の電線51,52間の電圧V1を変化させることで、信号を親機2に送信する。
受信回路15は、一対の電線51,52間の電圧V1の変化に基づいて、親機2から送信される信号を受信する。具体的には、親機2が一対の電線51,52を流れる電流を引き込むと、抵抗22を流れる電流の電流値が変化し、一対の電線51,52間の電圧V1が変化する。受信回路15は、この一対の電線51,52間の電圧V1の電圧値を検出することにより、親機2から送信される信号を受信する。
ここで、受信回路15の具体的な回路の一例について説明する。受信回路15は、図4A,図4Bに示すように、フィルタ用のコンデンサ151と、抵抗152,153と、半導体素子154と、プルアップ抵抗155とを備えている。また、受信回路15は、受信用スイッチS1を介して電源端子PT1に電気的に接続されている。
半導体素子154は、npn型のバイポーラトランジスタである。もちろん、半導体素子154は、MOSFET等の他の半導体素子で構成されていてもよい。半導体素子154のエミッタは、回路グランド(ダイオードブリッジ11の低電位側の出力端)に電気的に接続されている。半導体素子154のベースは、コンデンサ151および抵抗153を介して一対の電線51,52の一方(ここでは、電線51)に電気的に接続されている。半導体素子154のコレクタは、プルアップ抵抗155および受信用スイッチS1を介して電源端子PT1に電気的に接続されている。また、コンデンサ151および抵抗153の接続点15Aと、プルアップ抵抗155および受信用スイッチS1の接続点との間には、抵抗152が電気的に接続されている。
接続点15Aは、コンデンサ151を介して一対の電線51,52の一方(ここでは、電線51)に電気的に接続されている。接続点15Aの電位は、電源端子PT1に印加されている電圧と、半導体素子154のベース−エミッタ間電圧との差分を、抵抗152,153で分圧した電圧である。一対の電線51,52間の電圧V1が変化すると、接続点15Aの電位が変化する。半導体素子154は、いわゆるオープンコレクタ方式で用いられている。この半導体素子154のコレクタ−エミッタ間電圧が、受信信号の電圧V2となる。
受信用スイッチS1は、たとえばバイポーラトランジスタやMOSFETなどの半導体素子で構成されており、処理部16の制御によりオン/オフが切り替えられる。受信回路15は、受信用スイッチS1がオンのときに、電源端子PT1と電気的に接続されることにより起動する。また、受信回路15は、受信用スイッチS1がオフのとき、電源端子PT1と電気的に切り離されるため、起動しない。
以下、受信回路15の動作について説明する。なお、以下の説明では、受信用スイッチS1がオンであると仮定する。一対の電線51,52間の電圧V1の電圧値が第1レベルのとき、接続点15Aの電位は、半導体素子154の閾値(VBE)を上回っている。このとき、半導体素子154はオンとなるので、受信信号の電圧V2はローレベルとなる。一方、一対の電線51,52間の電圧V1の電圧値が第2レベルのとき、接続点15Aの電位は、半導体素子154の閾値(VBE)を下回る。このとき、半導体素子154はオフとなるので、受信信号の電圧V2はハイレベルとなる。
このように、受信回路15は、一対の電線51,52間の電圧V1の変化に応じて、半導体素子154のオン/オフが切り替わることにより、親機2から送信される信号を受信する。
なお、図4Aに示すように、受信回路15において半導体素子154がオンのときに流れる消費電流I1は、主に抵抗153を流れる電流I11と、プルアップ抵抗155を流れる電流I12との和である。また、図4Bに示すように、受信回路15において半導体素子154がオフのときに流れる消費電流I2は、主に抵抗152を介してコンデンサ151に流れ込む電流である。そして、半導体素子154がオンのときの消費電流I1は、半導体素子154がオフのときの消費電流I2よりも大きい。
処理部16は、送信回路14および受信回路15を制御する。処理部16は、センサ13の出力に応じて電流の引き込み量を調節することで送信回路14から親機2に信号を送信させたり、親機2からの信号を受信回路15で受信させたりする。ここでは、処理部16はマイコン(マイクロコンピュータ)を主構成とし、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより所望の機能を実現する。なお、プログラムは、予めメモリに書き込まれていてもよいが、メモリカードのような記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、電気通信回線を通じて提供されてもよい。
処理部16は、センサ13の出力(センサ値)を定期的に読み込み、センサ13の出力が第1閾値を超えると、火災と判断する。そして、処理部16は、送信回路14を制御して一対の電線51,52を流れる電流の引き込み量を調節することにより、一対の電線51,52間の電圧V1を火災報レベルに変化させる。これにより、処理部16は、火災報を親機2に通知する。
また、処理部16は、センサ13の出力が第2閾値(>第1閾値)を超えると、他装置3を連動させると判断する。そして、処理部16は、送信回路14を制御して一対の電線51,52を流れる電流の引き込み量を調節することにより、一対の電線51,52間の電圧V1を連動報レベル(<火災報レベル)に変化させる。これにより、処理部16は、連動報を親機2に通知する。
また、処理部16は、送信回路14を制御して、一対の電線51,52間の電圧V1の電圧値を第1レベルと第2レベルとで交互に切り替えることにより、親機2に信号を送信する。信号には、たとえば子機1単位で発報元を特定するための情報(識別情報)や、自動試験のための情報などが含まれる。なお、自動試験の項目としては、たとえば生存確認(キープアライブ)、子機1の自己診断等が含まれている。
記憶部17は、子機1に予め割り当てられている識別情報(たとえば、アドレス)を少なくとも記憶する。つまり、複数台の子機101,102,103…には、それぞれ固有の識別情報が割り当てられている。各識別情報は、複数台の子機101,102,103…の各々の設置場所(たとえば部屋番号)と対応付けられて親機2に登録される。
スイッチ18は、電源回路12の入力端121に電気的に接続されている。スイッチ18は、処理部16に制御されることにより、電源回路12が動作する状態と、電源回路12の動作が停止する状態とを択一的に切り替える。言い換えれば、スイッチ18は、電源回路12の入力端121に電気的に接続され、電源回路12を動作状態と停止状態とで択一的に切り替える。
ここで、スイッチ18の具体的な回路の一例について説明する。スイッチ18は、図3に示すように、半導体素子181と、抵抗182,183,184とで構成されている。半導体素子181は、npn型のバイポーラトランジスタである。もちろん、半導体素子181は、MOSFET等の他の半導体素子で構成されていてもよい。
半導体素子181のコレクタは、電源回路12の抵抗125および半導体素子123のベースに電気的に接続されている。半導体素子181のエミッタは、抵抗182を介して回路グランドに電気的に接続されている。半導体素子181のベースと回路グランドとの間には、抵抗183,184の直列回路が電気的に接続されている。また、抵抗183と抵抗184との接続点は、制御端子185に電気的に接続されている。制御端子185は、処理部16の入出力ポート(I/Oポート)に電気的に接続されており、処理部16から制御信号が入力される。
以下、スイッチ18の動作について説明する。制御端子185に処理部16から制御信号が入力されていないとき、半導体素子181のベース−エミッタ間電圧が閾値(VBE)を下回っているので、半導体素子181はオフとなる。このとき、電源回路12の半導体素子123,124の両方がオンに切り替わることで、電源回路12が動作する。一方、制御端子185に処理部16から制御信号が入力されているとき、半導体素子181のベース−エミッタ間電圧が閾値(VBE)を上回るので、半導体素子181はオンとなる。このとき、電源回路12の半導体素子がいずれもオフに切り替わることで、電源回路12の動作が停止する。
つまり、スイッチ18は、処理部16からの制御信号により、オン/オフが切り替えられる。そして、スイッチ18がオン(半導体素子181がオフ)の場合、電源回路12が動作する。言い換えれば、スイッチ18がオンの場合、電源回路12が動作状態に切り替わる。また、スイッチ18がオフ(半導体素子181がオン)の場合、電源回路12の動作が停止する。言い換えれば、スイッチ18がオフの場合、電源回路12が停止状態に切り替わる。
なお、抵抗182の抵抗値は、抵抗182を流れる電流が、受信回路15が信号を受信している間に受信回路15などに流れる電流よりも十分に小さくなるように調整されているのが好ましい。
また、スイッチ18は、処理部16からの制御信号が入力されていないときにオンとなり、入力されているときにオフとなる構成であるが、他の構成であってもよい。たとえば、スイッチ18は、半導体素子181としてpnp型のバイポーラトランジスタを採用することにより、処理部16からの制御信号が入力されていないときにオフとなり、入力されているときにオンとなる構成であってもよい。
また、本実施形態の子機1では、スイッチ18がオンの場合に電源回路12が動作状態に切り替わり、スイッチ18がオフの場合に電源回路12が停止状態に切り替わる構成であるが、他の構成であってもよい。すなわち、本実施形態1の子機1は、スイッチ18がオンの場合に電源回路12が停止状態に切り替わり、スイッチ18がオフの場合に電源回路12が動作状態に切り替わる構成であってもよい。この構成は、たとえば電源回路12において、半導体素子123としてpnp型のバイポーラトランジスタを採用することにより実現可能である。
もちろん、スイッチ18は、上記の回路に限定されず、他の構成であってもよい。たとえば、スイッチ18は、電磁リレーで構成されていてもよい。その他、スイッチ18は、たとえばダイオードブリッジ11と電源回路12とを繋ぐ電路を開閉する構成であってもよい。つまり、スイッチ18は、一対の電線51,52と電源回路12との間の電路を閉じることにより、電源回路12を動作状態に切り替える。また、スイッチ18は、一対の電線51,52と電源回路12との間の電路を開くことにより、電源回路12を停止状態に切り替える。
コンデンサ19は、電源回路12の出力端122に電気的に接続されている。コンデンサ19は、電源回路12から出力電流を供給されることにより、充電される。言い換えれば、コンデンサ19は、電源回路12から供給される電力により充電される。また、コンデンサ19は、電源端子PT1に電気的に接続されている。したがって、コンデンサ19は、たとえば一対の電線51,52を流れる電流が増加して一対の電線51,52間の電圧V1が低下した際に、蓄えた電力を電源端子PT1を介して子機1の動作用の電力として供給する。また、コンデンサ19は、電源回路12の動作が停止している間、蓄えた電力を子機1の動作用の電力として供給する。
<一対の電線間の電圧の低下>
ここで、同じ回線(一対の電線51,52)に接続されている複数台の子機1が親機2からの信号を受信する際に、1台の子機1が信号を受信する場合と比較して、一対の電線51,52間の電圧V1が低下する可能性があった。以下、親機2から同じ回線(一対の電線51,52)に接続されている複数台の子機1に対して同期信号を送信する場合を一例として説明する。なお、同期信号は、たとえば子機1が自動試験を行うタイミングを規定するために用いられる信号である。また、以下では、スイッチ18およびコンデンサ19を備えない自動火災報知システムを、本実施形態の自動火災報知システム100の比較例とし、この比較例について説明する。
比較例の自動火災報知システムの等価回路を図5に示す。この等価回路は、印加部21と、抵抗22と、親機2の送信部24と、複数台の子機1の受信回路15とを有している。送信部24は、インピーダンスZ2および送信用スイッチS2の直列回路で表される。受信回路15は、インピーダンスZ1および受信用スイッチS1の直列回路で表される。
送信部24は、送信用スイッチS2のオン/オフを切り替えることにより、一対の電線51,52から引き込む電流を変化させる。つまり、送信部24は、送信用スイッチS2のオン/オフを切り替えることにより、一対の電線51,52間の電圧V1を変化させることで、同期信号を子機1に送信する。
受信回路15は、受信用スイッチS1がオンになると起動する。そして、受信回路15の起動時には、インピーダンスZ2に電流が流れる。つまり、受信回路15の起動時には、一対の電線51,52から電流が引き込まれるため、一対の電線51,52を流れる電流が大きくなる。すると、抵抗22における電圧降下も大きくなるため、一対の電線51,52間の電圧V1も低下する。そして、一対の電線51,52間の電圧V1は、起動する受信回路15の数が増えると、より大きく低下する。
たとえば、1台の子機1の受信回路15のみが起動しているときに、親機2が子機1に対して同期信号を送信すると仮定する。この場合、図6Aに示すように、一対の電線51,52間の電圧V1の電圧値は、送信部24が電流を引き込まないときに電圧値v1、送信部24が電流を引き込むときに電圧値v2(<v1)となる。一方、複数台の子機1の受信回路15が起動しているときに、親機2が複数台の子機1に対して同期信号を送信すると仮定する。この場合、図6Bに示すように、一対の電線51,52間の電圧V1の電圧値は、送信部24が電流を引き込まないときに電圧値v3(<v1)、送信部24が電流を引き込むときに電圧値v4(<v2)となる。
ここで、既に述べたように、受信回路15では、半導体素子154のオン時とオフ時とで消費電流が異なるため、電圧V1の電圧降下も異なる。つまり、半導体素子154のオン時における電圧V1の電圧降下(電圧値v1と電圧値v3との差分)は、半導体素子154のオフ時における電圧V1の電圧降下(電圧値v2と電圧値v4との差分)よりも大きい。したがって、複数台の子機1の受信回路15が起動している場合、図6Bに示すように、一対の電線51,52間の電圧V1の振幅が小さくなり、信号のS/N比が低下する可能性があった。
そこで、本実施形態の自動火災報知システム100の子機1は、スイッチ18およびコンデンサ19を備えることにより、上記の問題を解決している。
<動作例>
以下、同期信号を受信する場合における本実施形態の子機1の動作例について説明する。まず、受信回路15を起動していないとき、すなわち受信用スイッチS1がオフのとき、処理部16は、スイッチ18をオン状態で維持するように制御する(図7参照)。この状態では、電源回路12が動作しているので、電源端子PT1には、電源回路12から電力が供給される。また、この状態では、電源回路12の出力電流により、コンデンサ19が充電される。
次に、処理部16は、親機2から送信される同期信号を受信するために、受信回路15を起動する、すなわち受信用スイッチS1をオンに切り替える。ここで、受信回路15を起動する(すなわち、受信用スイッチS1をオンにする)タイミングは、前回受信した同期信号に基づいて決定される。つまり、処理部16は、前回の同期信号を受信した時点を起点として、同期信号の送信間隔に応じた所定時間をタイマで計時することにより、今回の同期信号が到来するタイミングを想定して受信回路15を起動する。
そして、処理部16は、図7に示すように、受信用スイッチS1をオンに切り替える前に、スイッチ18をオフに切り替える。なお、受信用スイッチS1をオンに切り替えるタイミングと、スイッチ18をオフに切り替えるタイミングとは、殆ど同時であってもよい。スイッチ18がオフの状態では、電源回路12の動作が停止する。そして、受信回路15には、電源端子PT1を介してコンデンサ19から電力が供給される。つまり、スイッチ18がオフの状態では、受信回路15の消費電流は、一対の電線51,52から流れる電流ではなく、コンデンサ19から流れる電流となる。
その後、所定時間が経過すると、処理部16は、図7に示すように、受信用スイッチS1をオフに切り替えるとともに、スイッチ18をオンに切り替える。なお、受信用スイッチS1をオフに切り替えるタイミングと、スイッチ18をオンに切り替えるタイミングとは、殆ど同時であってもよい。スイッチ18がオンになると、電源回路12が再び動作する。そして、電源端子PT1には、電源回路12から電力が供給される。
つまり、本実施形態の子機1では、スイッチ18がオンのとき(電源回路12が動作状態にあるとき)、電源回路12が子機1(とくに、受信回路15)に動作用の電力を供給する。また、本実施形態の子機1では、スイッチ18がオフのとき(電源回路12が停止状態にあるとき)、コンデンサ19が子機1(とくに、受信回路15)に動作用の電力を供給する。
<効果>
上述のように、本実施形態の自動火災報知システム100の子機1は、スイッチ18およびコンデンサ19を備えている。このため、本実施形態の子機1では、受信用スイッチS1をオンに切り替えて受信回路15を起動している間、電源回路12を停止状態に切り替えることができる。そして、本実施形態の子機1では、電源回路12が動作を停止している間でも、コンデンサ19から受信回路15に動作用の電力を供給することができる。
つまり、本実施形態の子機1では、受信回路15が起動している間に受信回路15に電流が流れても、一対の電線51,52から電流が引き込まれることがない。したがって、複数台の子機1の受信回路15が同時に起動した場合でも、一対の電線51,52間の電圧V1が低下し難く、結果として信号のS/N比が低下し難い。本実施形態の自動火災報知システム100も、上記と同様の効果を奏することができる。
とくに、本実施形態の子機1では、電源回路12は、一対の電線51,52からの電力でコンデンサ19を充電するように構成されている。そして、受信回路15は、スイッチ18により電源回路12が停止状態に切り替わると、コンデンサ19から動作用の電力を供給されるように構成されている。この構成では、電源回路12によりコンデンサ19を充電することができるので、受信回路15の起動時に必要な電力をコンデンサ19に蓄えることが可能である。なお、当該構成を採用するか否かは任意である。
また、本実施形態の子機1では、処理部16は、受信用スイッチS1をオンに切り替えている間、スイッチ18をオフに切り替えている(図7参照)。つまり、スイッチ18は、少なくとも受信回路15が親機2からの信号を待ち受ける期間において電源回路12を停止状態に切り替えるように構成されている。この構成では、電源回路12が停止する期間、すなわちコンデンサ19から電力を供給する期間を、受信回路15が信号を待ち受ける期間に限定することができるので、コンデンサ19の必要となる静電容量を抑えることができる。したがって、この構成では、比較的に静電容量の小さいコンデンサ19を採用することが可能であるため、コストの低減化を図ることができ、かつ、コンデンサ19が実装される基板の小型化を図ることができる。なお、当該構成を採用するか否かは任意である。
また、本実施形態の子機1において、スイッチ18は、親機2からの同期信号により規定される特定期間において電源回路12を動作状態に切り替えるように構成されているのが好ましい。特定期間は、たとえば親機2と子機1とのいずれもが信号を送信しないガードインターバル期間である。この構成では、たとえばガードインターバル期間などの親機2と子機1との間での通信に支障が生じない期間において、コンデンサ19を充電することができる。