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JP6468392B1 - エラストマーおよび成形体 - Google Patents

エラストマーおよび成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】低温環境下におけるゴム特性に優れたエラストマーを提供する。【解決手段】本発明のエラストマーは、下記の条件で測定される、((引張応力M100−引張応力M1000)/引張応力M1000)×100が、−20%以上100%以下という特性を有するものである。(条件)所定伸び引張応力M100:当該エラストマーに対して、−40℃で30分保持後、−40℃における、当該エラストマーのJIS K6251(2004)に準拠して測定される100%伸張時の応力とする。所定伸び引張応力M1000:当該エラストマーに対して、さらなる冷却処理を行わずに、25℃における、当該エラストマーのJIS K6251(2004)に準拠して測定される100%伸張時の応力とする。【選択図】なし

Description

本発明は、エラストマーおよび成形体に関する。
これまでウェアラブルデバイス用のエラストマーについて様々な検討がなされてきた。この種の技術としては、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、ウェアラブルデバイスの外ケース部材にポリウレタンが使用されることが記載されている(特許文献1の段落0031、図2等)。
特表2015−515287号公報
しかしながら、本発明者が検討したところ、上記特許文献1に記載のポリウレタンにおいては、低温環境下におけるゴム特性の点で改善の余地があることが判明した。
本発明者は、室温から低温に冷却したときのエラストマーの物性変化の度合い(冷熱物性変化)を指針とすることで、低温環境下におけるエラストマーのゴム特性の状態を適切に制御できることを見出した。さらに検討したところ、冷熱物性変化として、伸び引張り応力の変化度合いを指標をとして採用することで、低温環境下におけるエラストマーの屈曲や伸びなどのゴム特性を安定的に評価できることが判明した。
本発明者は、このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、冷却前後での伸び引張り応力の変化度合いを指標として採用し、当該伸び引張り応力の変化度合いを所定値以下に小さくすることで、低温環境下におけるエラストマーのゴム特性の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、
低温環境用の成形体に用いるエラストマーであって、
下記の条件で測定される、((引張応力M100−引張応力M1000)/引張応力M1000)×100が、−20%以上13%以下であ
シリコーンゴムを含む、エラストマーが提供される。
(条件)
所定伸び引張応力M100:当該エラストマーに対して、−40℃で30分保持後、−40℃における、当該エラストマーのJIS K6251(2004)に準拠して測定される100%伸張時の応力とする。
所定伸び引張応力M1000:当該エラストマーに対して、さらなる冷却処理を行わずに、25℃における、当該エラストマーのJIS K6251(2004)に準拠して測定される100%伸張時の応力とする。
また本発明によれば、上記エラストマーを備える、低温環境用の成形体が提供される。
本発明によれば、低温環境下におけるゴム特性に優れたエラストマーおよび成形体が提供される。
本実施形態のエラストマーの概要について説明する。
本実施形態のエラストマーは、下記の条件で測定される、((引張応力M100−引張応力M1000)/引張応力M1000)×100が、−20%以上100%以下という特性を有することができる。
(条件)
所定伸び引張応力M1000:当該エラストマーに対して、さらなる冷却処理を行わずに、25℃における、当該エラストマーのJIS K6251(2004)に準拠して測定される100%伸張時の応力とする。
所定伸び引張応力M100:当該エラストマーに対して、−40℃で30分保持後、−40℃における、当該エラストマーのJIS K6251(2004)に準拠して測定される100%伸張時の応力とする。
本発明者は、冷却したエラストマーにおいてゴム特性が低下することに着眼し検討を進めた結果、室温から低温に冷却したときのエラストマーの物性変化の度合い(冷熱物性変化)を指針とすることで、低温環境下におけるエラストマーのゴム特性の状態を適切に制御できることを見出した。さらに検討したところ、冷熱物性変化として、伸び引張り応力の変化度合いを指標をとして採用し、その指標の冷却条件を適切に選択することで、低温環境下におけるエラストマーの屈曲や伸びなどのゴム特性を安定的に評価できることが判明した。
本実施形態のエラストマーによれば、冷却前後での伸び引張り応力の変化度合い、すなわち((引張応力M100−引張応力M1000)/引張応力M1000)×100を上記上限値以下とすることにより、低温使用環境下におけるゴム特性に優れたエラストマーを実現することが可能になる。
また、このようなエラストマーは、低温環境用エラストマーであり、冷却による特性変動の抑制されるため、冷却処理が行われる用途や、低温環境下で使用される用途などの、様々な用途の成形体に好適に用いることができる。
また、本実施形態のエラストマーは、シート状、筒状、袋状などの各種の形状に加工成形され得る。
本実施形態のエラストマーを備える成形体としては、例えば、身体や衣服に装着可能なウェアラブルデバイスに適用することができる。ウェアラブルデバイスとして、例えば、心拍数、心電図、血圧、体温等の生体からの現象を検出する医療用センサー、ヘルスケアデバイス、折り曲げ可能なディスプレイ、伸縮性LEDアレイ、伸縮性太陽電池、伸縮性アンテナ、伸縮性バッテリ、アクチュエーター、ウエアラブルコンピュータ等が挙げられる。これらに用いる電極や配線、基板、伸縮や屈曲する可動部材、外装部材等を構成するための部材として、上記成形体を用いることが可能である。
とくに、本実施形態の成形体は、通常の室温環境のみならず、冷蔵設備内、寒冷地、冷気候などの低温環境下での使用も要求される用途に好適に用いることができる。
次に、本実施形態のエラストマーの特性について説明する。
本実施形態のエラストマーにおいて、((引張応力M100−引張応力M1000)/引張応力M1000)×100の上限値は、例えば、100%以下であり、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。これにより、低温環境下におけるエラストマーのゴム特性の低下を抑制できる。一方、上記((引張応力M100−引張応力M1000)/引張応力M1000)×100の下限値は、例えば、−20%以上であり、好ましくは−15%以上、より好ましくは−10%以上でもよい。これにより、低温環境下におけるエラストマーのゴム特性の低下を抑制できる。
(引張応力の測定条件)
所定伸び引張応力M100:当該エラストマーに対して、−40℃で30分保持後、−40℃における、当該エラストマーのJIS K6251(2004)に準拠して測定される100%伸張時の応力とする。
所定伸び引張応力M1000:当該エラストマーに対して、さらなる冷却処理を行わずに、25℃における、当該エラストマーのJIS K6251(2004)に準拠して測定される100%伸張時の応力とする。
本実施形態のエラストマーにおいて、((破断伸びBE−破断伸びBE0)/破断伸びBE0)×100の上限値は、特に限定されないが、例えば、20%以下、15%以下でもよく、10%以下でもよい。これにより、他の物性とのバランスを図ることができる。一方、上記((破断伸びBE−破断伸びBE0)/破断伸びBE0)×100の下限値は、例えば、−40%以上、好ましくは−30%以上、より好ましくは−15%以上である。これにより、低温環境下において、エラストマーの高伸縮性および耐久性の変化を抑制できる。
本実施形態のエラストマーにおいて、破断伸びBEの上限値は、例えば、1500%以下でもよく、好ましくは1200%以下でもよく、より好ましくは1000%以下でもよく、さらに好ましくは900%以下でもよい。これにより、低温環境下におけるエラストマーの機械的強度を向上させることができる。一方、上記破断伸びBEの下限値は、250%以上、好ましくは350%以上、より好ましくは400%以上である。これにより、低温環境下におけるエラストマーの高伸縮性および耐久性を向上させることができる。
(破断伸びの測定条件)
破断伸びBE:当該エラストマーに対して、−40℃で30分保持後、−40℃における、当該エラストマーのJIS K6251(2004)に準拠して測定される破断伸びとする。
破断伸びBE0:当該エラストマーに対して、さらなる冷却処理を行わずに、25℃における、当該エラストマーのJIS K6251(2004)に準拠して測定される破断伸びとする。
本実施形態のエラストマーにおいて、((引強度−引強度0)/引強度0)×100の上限値は、例えば、80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは40%以下であり、また30%以下である。これにより、低温環境下におけるゴム特性の変動を抑制できる。一方、上記((引強度−引強度0)/引強度0)×100の下限値は、例えば、−20%以上、好ましくは−15%以上、より好ましくは−10%以上でもよい。上記下限値以上とすることにより、低温環境下におけるエラストマーの機械的強度を向上させることができる。
(引張強度の測定条件)
引張強度:当該エラストマーに対して、−40℃で30分保持後、−40℃℃における、当該エラストマーのJIS K625(200)に準拠して測定される引強度とする。
強度0:当該エラストマーに対して、さらなる冷却処理を行わずに、25℃における、当該エラストマーのJIS K625(200)に準拠して測定される引張強度とする。
本実施形態のエラストマーにおいて、((引裂強度TS−引裂強度TS0)/引裂強度TS0)×100の上限値は、例えば、120%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下であり、また40%以下である。これにより、低温環境下におけるゴム特性の変動を抑制できる。一方、上記((引裂強度TS−引裂強度TS0)/引裂強度TS0)×100の下限値は、例えば、−20%以上、好ましくは−15%以上、より好ましくは−10%以上でもよい。上記下限値以上とすることにより、低温環境下におけるエラストマーの耐傷付き性や機械的強度を向上させることができる。
(引裂強度の測定条件)
引裂強度TS:当該エラストマーに対して、−40℃で30分保持後、−40℃℃における、当該エラストマーのJIS K6252(2001)に準拠して測定される引裂強度とする。
引裂強度TS0:当該エラストマーに対して、さらなる冷却処理を行わずに、25℃における、当該エラストマーのJIS K6252(2001)に準拠して測定される引裂強度とする。
本実施形態のエラストマーにおいて、さらなる冷却処理を行わずに、25℃において、JIS K6253(1997)で規定されるデュロメータ硬さ(硬度A0)の上限値は、80以下でもよく、好ましくは75以下でもよく、より好ましくは70以下でもよい。これにより、エラストマーの諸物性のバランスを図ることができる。一方、上記硬度A0の下限値は、例えば、20以上でもよく、好ましくは22以上でもよく、より好ましくは25以上でもよい。これにより、室温におけるエラストマーの機械的強度を向上させ、また、外力からの変形を抑制し、形状保持性を高めることができる。
本実施形態では、たとえばエラストマー中に含まれる各成分の種類や配合量、エラストマーを形成するための組成物の調製方法等を適切に選択することにより、上記硬度、引張応力、破断伸び、引張強度、引裂強度を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、エラストマーを構成する樹脂の種類や配合比率、樹脂の架橋密度や架橋構造等を適切に制御したり、無機充填材の配合比率や無機充填材の分散性を向上させること等が、上記硬度、引張応力、破断伸び、引張強度、引裂強度を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
以下、本実施形態のエラストマーの組成について説明する。
上記エラストマーとしては、化学的に安定であり、また、熱安定性にも優れる観点からシリコーンゴムを含むことができる。
上記熱硬化性エラストマーは、硬化性エラストマー組成物の硬化物で構成することができる。また、上記シリコーンゴムは、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物で構成することができる。
また、本実施形態の成形体は、各種の機能を発揮し得る、任意の成分が添加されていてもよい。例えば、機械的強度を高める観点から、エラストマーは、無機充填材を含むことができる。無機充填材としては、公知のものが使用できるが、例えば、シリカ粒子を用いることができる。
以下、本実施形態のエラストマーの一例であるシリコーンゴムとして、シリコーンゴム系硬化性組成物を用いた場合について説明する。
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を含むことができる。ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物の主成分となる重合物である。
上記ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、直鎖構造を有するビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を含むことができる。
上記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、直鎖構造を有し、かつ、ビニル基を含有しており、かかるビニル基が硬化時の架橋点となる。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)のビニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ15モル%以下であるのが好ましく、0.01〜12モル%であるのがより好ましい。これにより、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中におけるビニル基の量が最適化され、後述する各成分とのネットワークの形成を確実に行うことができる。本実施形態において、「〜」は、その両端の数値を含むことを意味する。
なお、本明細書中において、ビニル基含有量とは、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する全ユニットを100モル%としたときのビニル基含有シロキサンユニットのモル%である。ただし、ビニル基含有シロキサンユニット1つに対して、ビニル基1つであると考える。
また、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の重合度は、特に限定されないが、例えば、好ましくは1000〜10000程度、より好ましくは2000〜5000程度の範囲内である。なお、重合度は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
さらに、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の比重は、特に限定されないが、0.9〜1.1程度の範囲であるのが好ましい。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、上記のような範囲内の重合度および比重を有するものを用いることにより、得られるシリコーンゴムの耐熱性、難燃性、化学的安定性等の向上を図ることができる。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)としては、特に、下記式(1)で表される構造を有するものであるが好ましい。
Figure 0006468392
式(1)中、Rは炭素数1〜10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
また、Rは炭素数1〜10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1〜8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
さらに、式(1)中のRおよびRの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
なお、式(1)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。さらに、R、およびRについても同様である。
さらに、m、nは、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは0〜2000の整数、nは1000〜10000の整数である。mは、好ましくは0〜1000であり、nは、好ましくは2000〜5000である。
また、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の具体的構造としては、例えば下記式(1−1)で表されるものが挙げられる。
Figure 0006468392
式(1−1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基またはビニル基であり、少なくとも一方がビニル基である。
さらに、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)としては、ビニル基含有量が分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ0.4モル%以下である第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)と、ビニル基含有量が0.5〜15モル%である第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−2)とを含有するものであるのが好ましい。シリコーンゴムの原料である生ゴムとして、一般的なビニル基含有量を有する第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)と、ビニル基含有量が高い第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−2)とを組み合わせることで、ビニル基を偏在化させることができ、シリコーンゴムの架橋ネットワーク中に、より効果的に架橋密度の疎密を形成することができる。その結果、より効果的にシリコーンゴムの引裂強度を高めることができる。
具体的には、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、例えば、上記式(1−1)において、Rがビニル基である単位および/またはRがビニル基である単位を、分子内に2個以上有し、かつ0.4モル%以下を含む第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)と、Rがビニル基である単位および/またはRがビニル基である単位を、0.5〜15モル%含む第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−2)とを用いるのが好ましい。
また、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)は、ビニル基含有量が0.01〜0.2モル%であるのが好ましい。また、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−2)は、ビニル基含有量が、0.8〜12モル%であるのが好ましい。
さらに、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)と第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−2)とを組み合わせて配合する場合、(A1−1)と(A1−2)の比率は特に限定されないが、例えば、重量比で(A1−1):(A1−2)が50:50〜95:5であるのが好ましく、80:20〜90:10であるのがより好ましい。
なお、第1および第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)および(A1−2)は、それぞれ1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、分岐構造を有するビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(A2)を含んでもよい。
<<オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)を含むことができる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、直鎖構造を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐構造を有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)とに分類され、これらのうちのいずれか一方または双方を含むことができる。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖構造を有し、かつ、Siに水素が直接結合した構造(≡Si−H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分が有するビニル基とヒドロシリル化反応し、これらの成分を架橋する重合体である。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子量は特に限定されないが、例えば、重量平均分子量が20000以下であるのが好ましく、1000以上、10000以下であることがより好ましい。
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の重量平均分子量は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算により測定することができる。
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
以上のような直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)としては、例えば、下記式(2)で表される構造を有するものが好ましく用いられる。
Figure 0006468392
式(2)中、Rは炭素数1〜10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1〜10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
なお、式(2)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。Rについても同様である。ただし、複数のRおよびRのうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。
また、Rは炭素数1〜8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
なお、式(2)中のR,R,Rの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、分子内の架橋反応を防止する観点から、メチル基が好ましい。
さらに、m、nは、式(2)で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは2〜150整数、nは2〜150の整数である。好ましくは、mは2〜100の整数、nは2〜100の整数である。
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有するため、架橋密度が高い領域を形成し、シリコーンゴムの系中の架橋密度の疎密構造形成に大きく寄与する成分である。また、上記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)同様、Siに水素が直接結合した構造(≡Si−H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分のビニル基とヒドロシリル化反応し、これら成分を架橋する重合体である。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の比重は、0.9〜0.95の範囲である。
さらに、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)としては、下記平均組成式(c)で示されるものが好ましい。
平均組成式(c)
(H(R3−aSiO1/2(SiO4/2
(式(c)において、Rは一価の有機基、aは1〜3の範囲の整数、mはH(R3−aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である)
式(c)において、Rは一価の有機基であり、好ましくは、炭素数1〜10の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
式(c)において、aは、ヒドリド基(Siに直接結合する水素原子)の数であり、1〜3の範囲の整数、好ましくは1である。
また、式(c)において、mはH(R3−aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は分岐状構造を有する。直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、その構造が直鎖状か分岐状かという点で異なり、Siの数を1とした時のSiに結合するアルキル基Rの数(R/Si)が、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)では1.8〜2.1、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)では0.8〜1.7の範囲となる。
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有しているため、例えば、窒素雰囲気下、1000℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の残渣量が5%以上となる。これに対して、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖状であるため、上記条件で加熱した後の残渣量はほぼゼロとなる。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の具体例としては、下記式(3)で表される構造を有するものが挙げられる。
Figure 0006468392
式(3)中、Rは炭素数1〜8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基、もしくは水素原子である。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
なお、式(3)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
また、式(3)中、「−O−Si≡」は、Siが三次元に広がる分岐構造を有することを表している。
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)において、Siに直接結合する水素原子(ヒドリド基)の量は、それぞれ、特に限定されない。ただし、シリコーンゴム系硬化性組成物において、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中のビニル基1モルに対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の合計のヒドリド基量が、0.5〜5モルとなる量が好ましく、1〜3.5モルとなる量がより好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)および分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)と、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)との間で、架橋ネットワークを確実に形成させることができる。
<<シリカ粒子(C)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、シリカ粒子(C)を含むことができる。
シリカ粒子(C)としては、特に限定されないが、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ等が用いられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリカ粒子(C)は、例えば、BET法による比表面積が例えば50〜400m/gであるのが好ましく、100〜400m/gであるのがより好ましい。また、シリカ粒子(C)の平均一次粒径は、例えば1〜100nmであるのが好ましく、5〜20nm程度であるのがより好ましい。
シリカ粒子(C)として、かかる比表面積および平均粒径の範囲内であるものを用いることにより、形成されるシリコーンゴムの硬さや機械的強度の向上、特に引張強度の向上をさせることができる。
<<シランカップリング剤(D)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、シランカップリング剤(D)を含むことができる。
シランカップリング剤(D)は、加水分解性基を有することができる。加水分解基が水により加水分解されて水酸基になり、この水酸基がシリカ粒子(C)表面の水酸基と脱水縮合反応することで、シリカ粒子(C)の表面改質を行うことができる。
また、このシランカップリング剤(D)は、疎水性基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にこの疎水性基が付与されるため、シリコーンゴム系硬化性組成物中ひいてはシリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)の凝集力が低下(シラノール基による水素結合による凝集が少なくなる)し、その結果、シリコーンゴム系硬化性組成物中のシリカ粒子の分散性が向上すると推測される。これにより、シリカ粒子とゴムマトリックスとの界面が増加し、シリカ粒子の補強効果が増大する。さらに、ゴムのマトリックス変形の際、マトリックス内でのシリカ粒子の滑り性が向上すると推測される。そして、シリカ粒子(C)の分散性の向上及び滑り性の向上によって、シリカ粒子(C)によるシリコーンゴムの機械的強度(例えば、引張強度や引裂強度など)が向上する。
さらに、シランカップリング剤(D)は、ビニル基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シリカ粒子(C)の表面にビニル基が導入される。そのため、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化の際、すなわち、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)が有するビニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とがヒドロシリル化反応して、これらによるネットワーク(架橋構造)が形成される際に、シリカ粒子(C)が有するビニル基も、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)が有するヒドリド基とのヒドロシリル化反応に関与するため、ネットワーク中にシリカ粒子(C)も取り込まれるようになる。これにより、形成されるシリコーンゴムの低硬度化および高モジュラス化を図ることができる。
シランカップリング剤(D)としては、疎水性基を有するシランカップリング剤およびビニル基を有するシランカップリング剤を併用することができる。
シランカップリング剤(D)としては、例えば、下記式(4)で表わされるものが挙げられる。
−Si−(X)4−n・・・(4)
上記式(4)中、nは1〜3の整数を表わす。Yは、疎水性基、親水性基またはビニル基を有するもののうちのいずれかの官能基を表わし、nが1の時は疎水性基であり、nが2または3の時はその少なくとも1つが疎水性基である。Xは、加水分解性基を表わす。
疎水性基は、炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基等が挙げられ、中でも、特に、メチル基が好ましい。
また、親水性基は、例えば、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基またはカルボニル基等が挙げられ、中でも、特に、水酸基が好ましい。なお、親水性基は、官能基として含まれていてもよいが、シランカップリング剤(D)に疎水性を付与するという観点からは含まれていないのが好ましい。
さらに、加水分解性基は、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、クロロ基またはシラザン基等が挙げられ、中でも、シリカ粒子(C)との反応性が高いことから、シラザン基が好ましい。なお、加水分解性基としてシラザン基を有するものは、その構造上の特性から、上記式(4)中の(Y−Si−)の構造を2つ有するものとなる。
上記式(4)で表されるシランカップリング剤(D)の具体例は、例えば、官能基として疎水性基を有するものとして、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランのようなアルコキシシラン;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシランのようなクロロシラン;ヘキサメチルジシラザンが挙げられ、官能基としてビニル基を有するものとして、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランのようなアルコキシシラン;ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシランのようなクロロシラン;ジビニルテトラメチルジシラザンが挙げられるが、中でも、上記記載を考慮すると、特に、疎水性基を有するものとしてはヘキサメチルジシラザン、ビニル基を有するものとしてはジビニルテトラメチルジシラザンであるのが好ましい。
<<白金または白金化合物(E)>>
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、白金または白金化合物(E)を含むことができる。
白金または白金化合物(E)は、硬化の際の触媒として作用する触媒成分である。白金または白金化合物(E)の添加量は触媒量である。
白金または白金化合物(E)としては、公知のものを使用することができ、例えば、白金黒、白金をシリカやカーボンブラック等に担持させたもの、塩化白金酸または塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンの錯塩、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯塩等が挙げられる。
なお、白金または白金化合物(E)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<<水(F)>>
また、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物には、上記成分(A)〜(E)以外に、水(F)が含まれていてもよい。
水(F)は、シリコーンゴム系硬化性組成物に含まれる各成分を分散させる分散媒として機能するとともに、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)との反応に寄与する成分である。そのため、シリコーンゴム中において、シリカ粒子(C)とシランカップリング剤(D)とを、より確実に互いに連結したものとすることができ、全体として均一な特性を発揮することができる。
さらに、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、上記(A)〜(F)成分の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される公知の添加成分を含有していてもよい。例えば、珪藻土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ガラスウール、マイカ等が挙げられる。その他、分散剤、顔料、染料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱伝導性向上剤等を適宜配合することができる。
なお、シリコーンゴム系硬化性組成物において、各成分の含有割合は特に限定されないが、例えば、以下のように設定される。
本実施形態において、シリカ粒子(C)の含有量の上限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対し、例えば、60重量部以下でもよく、好ましくは50重量部以下でもよく、さらに好ましくは35重量部以下でもよい。これにより、硬さや引張強等の機械的強度のバランスを図ることができる。また、シリカ粒子(C)の含有量の下限値は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合計量100重量部に対し、特に限定されないが、例えば、20重量部以上でもよい。
シランカップリング剤(D)は、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、例えば、シランカップリング剤(D)が5重量部以上100重量部以下の割合で含有するのが好ましく、5重量部以上40重量部以下の割合で含有するのがより好ましい。
これにより、シリカ粒子(C)のシリコーンゴム系硬化性組成物中における分散性を確実に向上させることができる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)の含有量は、具体的にビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)及びシリカ粒子(C)及びシランカップリング剤(D)の合計量100重量部に対して、例えば、0.5重量部以上20重量部以下の割合で含有することが好ましく、0.8重量部以上15重量部以下の割合で含有するのがより好ましい。(B)の含有量が前記範囲内であることで、より効果的な硬化反応ができる可能性がある。
白金または白金化合物(E)の含有量は、触媒量を意味し、適宜設定することができるが、具体的にビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シリカ粒子(C)、シランカップリング剤(D)の合計量に対して、本成分中の白金族金属が重量単位で0.01〜1000ppmとなる量であり、好ましくは、0.1〜500ppmとなる量である。白金または白金化合物(E)の含有量を上記下限値以上とすることにより、得られるシリコーンゴム組成物を十分硬化させることができる。白金または白金化合物(E)の含有量を上記上限値以下とすることにより、得られるシリコーンゴム組成物の硬化速度を向上させることができる。
さらに、水(F)を含有する場合、その含有量は、適宜設定することができるが、具体的には、シランカップリング剤(D)100重量部に対して、例えば、10〜100重量部の範囲であるのが好ましく、30〜70重量部の範囲であるのがより好ましい。これにより、シランカップリング剤(D)とシリカ粒子(C)との反応をより確実に進行させることができる。
<シリコーンゴムの製造方法>
次に、本実施形態のシリコーンゴムの製造方法について説明する。
本実施形態のシリコーンゴムの製造方法としては、シリコーンゴム系硬化性組成物を調製し、このシリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることによりシリコーンゴムを得ることができる。
以下、詳述する。
まず、シリコーンゴム系硬化性組成物の各成分を、任意の混練装置により、均一に混合してシリコーンゴム系硬化性組成物を調製する。
[1]たとえば、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)と、シリカ粒子(C)と、シランカップリング剤(D)とを所定量秤量し、その後、任意の混練装置により、混練することで、これら各成分(A)、(C)、(D)を含有する混練物を得る。
なお、この混練物は、予めビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とシランカップリング剤(D)とを混練し、その後、シリカ粒子(C)を混練(混合)して得るのが好ましい。これにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)中におけるシリカ粒子(C)の分散性がより向上する。
また、この混練物を得る際には、水(F)を必要に応じて、各成分(A)、(C)、および(D)の混練物に添加するようにしてもよい。これにより、シランカップリング剤(D)とシリカ粒子(C)との反応をより確実に進行させることができる。
さらに、各成分(A)、(C)、(D)の混練は、第1温度で加熱する第1ステップと、第2温度で加熱する第2ステップとを経るようにするのが好ましい。これにより、第1ステップにおいて、シリカ粒子(C)の表面をカップリング剤(D)で表面処理することができるとともに、第2ステップにおいて、シリカ粒子(C)とカップリング剤(D)との反応で生成した副生成物を混練物中から確実に除去することができる。その後、必要に応じて、得られた混練物に対して、成分(A)を添加し、更に混練してもよい。これにより、混練物の成分のなじみを向上させることができる。
第1温度は、例えば、40〜120℃程度であるのが好ましく、例えば、60〜90℃程度であるのがより好ましい。第2温度は、例えば、130〜210℃程度であるのが好ましく、例えば、160〜180℃程度であるのがより好ましい。
また、第1ステップにおける雰囲気は、窒素雰囲気下のような不活性雰囲気下であるのが好ましく、第2ステップにおける雰囲気は、減圧雰囲気下であるのが好ましい。
さらに、第1ステップの時間は、例えば、0.3〜1.5時間程度であるのが好ましく、0.5〜1.2時間程度であるのがより好ましい。第2ステップの時間は、例えば、0.7〜3.0時間程度であるのが好ましく、1.0〜2.0時間程度であるのがより好ましい。
第1ステップおよび第2ステップを、上記のような条件とすることで、前記効果をより顕著に得ることができる。
[2]次に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)と、白金または白金化合物(E)とを所定量秤量し、その後、任意の混練装置を用いて、上記工程[1]で調製した混練物に、各成分(B)、(E)を混練することで、シリコーンゴム系硬化性組成物を得る。得られたシリコーンゴム系硬化性組成物は溶剤を含むペーストであってもよい。
なお、この各成分(B)、(E)の混練の際には、予め上記工程[1]で調製した混練物とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)とを、上記工程[1]で調製した混練物と白金または白金化合物(E)とを混練し、その後、それぞれの混練物を混練するのが好ましい。これにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応を進行させることなく、各成分(A)〜(E)をシリコーンゴム系硬化性組成物中に確実に分散させることができる。
各成分(B)、(E)を混練する際の温度は、ロール設定温度として、例えば、10〜70℃程度であるのが好ましく、25〜30℃程度であるのがより好ましい。
さらに、混練する時間は、例えば、5分〜1時間程度であるのが好ましく、10〜40分程度であるのがより好ましい。
上記工程[1]および上記工程[2]において、温度を上記範囲内とすることにより、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応の進行をより的確に防止または抑制することができる。また、上記工程[1]および上記工程[2]において、混練時間を上記範囲内とすることにより、各成分(A)〜(E)をシリコーンゴム系硬化性組成物中により確実に分散させることができる。
なお、各工程[1]、[2]において使用される混練装置としては、特に限定されないが、例えば、ニーダー、2本ロール、バンバリーミキサー(連続ニーダー)、加圧ニーダー等を用いることができる。
また、本工程[2]において、混練物中に1−エチニルシクロヘキサノールのような反応抑制剤を添加するようにしてもよい。これにより、混練物の温度が比較的高い温度に設定されたとしても、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)との反応の進行をより的確に防止または抑制することができる。
[3]次に、シリコーンゴム系硬化性組成物を硬化させることによりシリコーンゴムを形成する。
本実施形態において、シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物の硬化工程は、例えば、100〜250℃で1〜30分間加熱(1次硬化)した後、200℃で1〜4時間ポストベーク(2次硬化)することによって行われる。
以上のような工程を経ることで、本実施形態のシリコーンゴムが得られる。
本発明者が検討した結果以下の知見を得た。シリコーンゴム中のフィラー量を低減させると、硬度を小さくしたり、引張応力を低減することができるが、一方で、引裂強度が低下し、シリコーンゴムの耐久性が低下することが判明した。
そこで、鋭意検討した結果、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)などの樹脂組成物を適切に選択することにより、架橋密度や架橋構造の偏在を制御でき、幅広いひずみ領域における低応力や低硬度を実現しつつ、シリコーンゴムの引裂強度を高められることを見出した。また、シリコーンゴムの引張強度も高めることができることが分かった。詳細なメカニズムは定かでないが、高ビニル基含有オルガノポリシロキサンと低ビニル基含有ビニル基含有オルガノポリシロキサンの併用により、架橋構造の偏在を制御できるため、硬度を小さくしつつも、シリコーンゴムの引裂強度を高められると考えられる。このように、他の物性を維持しつつも、引裂強度を高めることにより、シリコーンゴムの破断エネルギーを高めることができる。
本実施形態では、たとえばシリコーンゴム系硬化性組成物中に含まれる各成分の種類や配合量、シリコーンゴム系硬化性組成物の調製方法やシリコーンゴムの製造方法等を適切に選択することにより、上記引張応力、破断伸び、引張強度、引裂強度、硬度を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)と高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−2)とを併用すること、末端にビニル基を有するビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を使用することにより樹脂の架橋密度や架橋構造の偏在を制御すること、また、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の添加タイミングおよびその比率、シリカ粒子(C)の配合比率、シリカ粒子(C)のシランカップリング剤(D)で表面改質すること、水を添加すること等のシランカップリング剤(D)とシリカ粒子(C)との反応をより確実に進行させること等が、上記引張応力、破断伸び、引張強度、引裂強度を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
本実施形態において、上記シリコーンゴム系硬化性組成物における、引張応力、破断伸び、引張強度、引裂強度の測定する場合、加熱対象および測定対象として、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を用いることができる。この硬化物として、例えば、シリコーンゴム系硬化性組成物を、160℃、10MPaで20分間プレスし、厚さ1mmのシート状に成形すると共に、1次硬化し、続いて、200℃で4時間加熱し、2次硬化することにより得られた、シート状シリコーンゴム(シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物を使用してもよい。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
表1に示す実施例および比較例で用いた原料成分を以下に示す。
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A))
・低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1):合成スキーム1により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(式(1−1)で表わされる構造でR(末端)のみがビニル基である構造)
・高ビニル基含有直鎖状オルガsノポリシロキサン(A1−2):合成スキーム2により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(式(1−1)で表わされる構造でRおよびRがビニル基である構造)
(オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B))
・モメンティブ社製:「TC−25D」
(シリカ粒子(C))
・シリカ粒子(C):シリカ微粒子(粒径7nm、比表面積300m/g)、日本アエロジル社製、「AEROSIL300」
(シランカップリング剤(D))
・シランカップリング剤(D−1):ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、Gelest社製、「HEXAMETHYLDISILAZANE(SIH6110.1)」
・シランカップリング剤(D−2):ジビニルテトラメチルジシラザン、Gelest社製、「1,3−DIVINYLTETRAMETHYLDISILAZANE(SID4612.0)」
(白金または白金化合物(E))
・モメンティブ社製:「TC−25A」
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合成)
[合成スキーム1:低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)の合成]
下記式(5)にしたがって、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)を合成した。
すなわち、Arガス置換した、冷却管および攪拌翼を有する300mLセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)、カリウムシリコネート0.1gを入れ、昇温し、120℃で30分間攪拌した。なお、この際、粘度の上昇が確認できた。
その後、155℃まで昇温し、3時間攪拌を続けた。そして、3時間後、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン0.1g(0.6mmol)を添加し、さらに、155℃で4時間攪拌した。
さらに、4時間後、トルエン250mLで希釈した後、水で3回洗浄した。洗浄後の有機層をメタノール1.5Lで数回洗浄することで、再沈精製し、オリゴマーとポリマーを分離した。得られたポリマーを60℃で一晩減圧乾燥し、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−1)を得た(Mn=2,2×10、Mw=4,8×10)。また、H−NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.04モル%であった。
Figure 0006468392
[合成スキーム2:高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−2)の合成]
上記(A1−1)の合成工程において、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)に加えて2,4,6,8−テトラメチル2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン0.86g(2.5mmol)を用いたこと以外は、(A1−1)の合成工程と同様にすることで、下記式(6)のように、高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1−2)を合成した。(Mn=2,3×10、Mw=5,0×10)。また、H−NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.93モル%であった。
Figure 0006468392
(実施例1:シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
実施例1において、次のようにしてシリコーンゴム系硬化性組成物を調整した。まず、下記の表1に示す割合で、90%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シランカップリング剤(D)および水(F)の混合物を予め混練し、その後、混合物にシリカ粒子(C)を加えてさらに混練し、混練物(シリコーンゴムコンパウンド)を得た。
ここで、シリカ粒子(C)添加後の混練は、カップリング反応のために窒素雰囲気下、60〜90℃の条件下で1時間混練する第1ステップと、副生成物(アンモニア)の除去のために減圧雰囲気下、160〜180℃の条件下で2時間混練する第2ステップとを経ることで行い、その後、冷却し、残り10%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を2回に分けて添加し、20分間混練した。
続いて、得られた混練物(シリコーンゴムコンパウンド)100重量部に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(TC−25D)1.81重量部および白金または白金化合物(TC−25A)0.5重量部を加えて、ロールで混練し、シリコーンゴム系硬化性組成物を得た。
(実施例2:シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
実施例2において、実施例1と同様にしてシリコーンゴム系硬化性組成物を調整した。まず、表1に示す割合で、90%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シランカップリング剤(D)および水(F)の混合物を予め混練し、その後、混合物にシリカ粒子(C)を加えてさらに混練し、混練物(シリコーンゴムコンパウンド)を得た。
ここで、シリカ粒子(C)添加後の混練は、実施例1と同様に行った。
続いて、得られた混練物(シリコーンゴムコンパウンド)100重量部に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(TC−25D)3.77重量部および白金または白金化合物(TC−25A)0.5重量部を加えて、ロールで混練し、実施例3のシリコーンゴム系硬化性組成物を得た。
(実施例3:シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
実施例3において、実施例1と同様にしてシリコーンゴム系硬化性組成物を調整した。まず、表1に示す割合で、90%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シランカップリング剤(D)および水(F)の混合物を予め混練し、その後、混合物にシリカ粒子(C)を加えてさらに混練し、混練物(シリコーンゴムコンパウンド)を得た。
ここで、シリカ粒子(C)添加後の混練は、実施例1と同様に行った。
続いて、得られた混練物(シリコーンゴムコンパウンド)100重量部に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(TC−25D)2.26重量部および白金または白金化合物(TC−25A)0.5重量部を加えて、ロールで混練し、シリコーンゴム系硬化性組成物を得た。
(実施例4:シリコーンゴム系硬化性組成物の調製)
実施例4において、実施例1と同様にしてシリコーンゴム系硬化性組成物を調整した。まず、表1に示す割合で、90%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シランカップリング剤(D)および水(F)の混合物を予め混練し、その後、混合物にシリカ粒子(C)を加えてさらに混練し、混練物(シリコーンゴムコンパウンド)を得た。
ここで、シリカ粒子(C)添加後の混練は、実施例1と同様に行った。
続いて、得られた混練物(シリコーンゴムコンパウンド)100重量部に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(TC−25D)4.53重量部および白金または白金化合物(TC−25A)0.5重量部を加えて、ロールで混練し、実施例4のシリコーンゴム系硬化性組成物を得た。
Figure 0006468392
(シリコーンゴムの作製)
実施例1〜4において、得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を、160℃、10MPaで20分間プレスし、厚さ1mmのシート状に成形すると共に、1次硬化した。続いて、200℃で4時間加熱し、2次硬化した。以上により、シート状シリコーンゴム(シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物)を得た。
得られたシート状シリコーンゴム(シート状のエラストマー)に対して、下記の評価項目に基づいて評価を行った。評価結果を表2に示す。引張応力、破断伸び、引張強度、については、3つのサンプルで行い、3つの平均値を測定値とした。引裂強度については、5つのサンプルで行い、5つの平均値を測定値とした。硬度については、2つのサンプルを用いて、各サンプルでn=5で測定を行い、計10個の測定の平均値を測定値とした。それぞれの平均値を表2に示す。
[比較例1]
アズワン株式会社で購入した天然ゴムのシート(厚さ1mm、幅500mm×長さ500mm、アズワン商品コード2−9289−02)を使用し、各特性評価に記載した試験片を作製し、下記の評価を行った。評価結果については、シリコーンゴムの作製に記載したサンプル数、評価回数と同様におこなった。
[比較例2]
アズワン株式会社で購入したクロロプレンゴムのシート(厚さ1mm、幅500mm×長さ500mm、アズワン商品コード2−9293−02)を使用し、各特性評価に記載した試験片を作製し、下記の評価を行った。評価結果については、シリコーンゴムの作製に記載したサンプル数、評価回数と同様におこなった。
[比較例3]
株式会社扶桑ゴム産業で購入したポリエステル系ウレタンのシート(厚さ1mm、幅500mm×長さ500mm、ゴム通商品コード10004−0001−2−0)を使用し、各特性評価に記載した試験片を作製し、下記の評価を行った。評価結果については、シリコーンゴムの作製に記載したサンプル数、評価回数と同様におこなった。
[比較例4]
株式会社ミスミで購入したフッ素ゴムのシート(厚さ1mm、幅500mm×長さ500mm、ミスミ商品コードRBLM1−500)を使用し、各特性評価に記載した試験片を作製し、下記の評価を行った。評価結果については、シリコーンゴムの作製に記載したサンプル数、評価回数と同様におこなった。
[比較例5]
アズワン株式会社で購入したエチレンプロピレンゴムのシート(厚さ1mm、幅500mm×長さ500mm、アズワン商品コード2−9301−02)を使用し、各特性評価に記載した試験片を作製し、下記の評価を行った。評価結果については、シリコーンゴムの作製に記載したサンプル数、評価回数と同様におこなった。
[比較例6]
アズワン株式会社で購入したニトリルゴムのシート(厚さ1mm、幅300mm×長さ300mm、アズワン商品コード2−9305−01)を使用し、各特性評価に記載した試験片を作製し、下記の評価を行った。評価結果については、シリコーンゴムの作製に記載したサンプル数、評価回数と同様におこなった。
Figure 0006468392
(硬度:デュロメータ硬さ)
得られた厚さ1mmの、各実施例のシート状シリコーンゴム、各比較例のシート状のエラストマーを6枚積層し、6mmの試験片を作製した。得られた試験片に対して、さらなる冷却処理を行わずに、25℃において、JIS K6253(1997)に準拠してタイプAデュロメータ硬さ(硬度A0)を測定した。
<引張強度>
得られた厚さ1mmの、各実施例のシート状シリコーンゴム、各比較例のシート状のエラストマーを用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、得られたダンベル状3号形試験片の引張強度を測定した。単位はMPaである。
(引張強度の測定条件)
引張強度S:ダンベル状3号形試験片に対して、−40℃で30分保持後、そのまま−40℃における、ダンベル状3号形試験片のJIS K6251(2004)に準拠して測定される引張強度とする。
引張強度S0:ダンベル状3号形試験片に対して、さらなる冷却処理を行わずに、25℃における、ダンベル状3号形試験片のJIS K6251(2004)に準拠して測定される引張強度とする。
<引裂強度>
得られた厚さ1mmの、各実施例のシート状シリコーンゴム、各比較例のシート状のエラストマーを用いて、JIS K6252(2001)に準拠して、クレセント形試験片を作製し、得られたクレセント形試験片の引裂強度を測定した。単位は、N/mmである。
(引裂強度の測定条件)
引裂強度TS:クレセント形試験片に対して、−40℃で30分保持後、そのまま−40℃における、クレセント形試験片のJIS K6252(2001)に準拠して測定される引裂強度とする。
引裂強度TS0:クレセント形試験片に対して、さらなる冷却処理を行わずに、25℃における、クレセント形試験片のJIS K6252(2001)に準拠して測定される引裂強度とする。
<破断伸び>
得られた厚さ1mmの、各実施例のシート状シリコーンゴム、各比較例のシート状のエラストマーを用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、得られたダンベル状3号形試験片の破断伸びを測定した。破断伸びは、[チャック間移動距離(mm)]÷[初期チャック間距離(60mm)]×100で計算した。単位は%である。
(破断伸びの測定条件)
破断伸びBE:ダンベル状3号形試験片に対して、−40℃で30分保持後、そのまま−40℃における、ダンベル状3号形試験片のJIS K6251(2004)に準拠して測定される破断伸びとする。
破断伸びBE0:ダンベル状3号形試験片に対して、さらなる冷却処理を行わずに、25℃(室温)における、ダンベル状3号形試験片のJIS K6251(2004)に準拠して測定される破断伸びとする。
<引張応力>
得られた厚さ1mmの、各実施例のシート状シリコーンゴム、各比較例のシート状のエラストマーを用いて、JIS K6251(2004)に準拠して、ダンベル状3号形試験片を作製し、引張速度:500mm/分で、得られたダンベル状3号形試験片の、所定%伸張時における引張応力Mを測定した。単位はMPaである。
(引張応力の測定条件)
引張応力M100:ダンベル状3号形試験片に対して、−40℃で30分保持後、そのまま−40℃における、当該ダンベル状3号形試験片の100%伸張時における引張応力とする。
引張応力M1000:ダンベル状3号形試験片に対して、さらなる冷却処理を行わずに、25℃における、ダンベル状3号形試験片の100%伸張時における引張応力とする。
<ウエアラブル基板>
実施例のシート状シリコーンゴム、各比較例のシート状のエラストマーを用いて、厚み:1mm×長さ:50mm×幅:20mmを有する板状部材(ウエアラブル基板)を作成した。得られた板状部材を、内部環境が−40℃である冷却機中に入れ、30分間保持した。冷却機中から板状部材を取り出し、両端を両手で持ち、次のような屈曲・伸び試験および耐久試験を行った。
・屈曲・伸び試験:
板状部材の両端を両手で持った状態で、90度に曲げる試験を実施し、曲げ開始から曲げ終わりまでの板状部材の曲げやすさによって、板状部材の変形容易性を判断した。板状部材を曲げる試験中、板状部材を曲げる時に負荷を感じない板状部材を○、板状部材を曲げる時に負荷を感じる板状部材を△、板状部材を曲げた際に割れた板状部材を×とした。評価結果を表3に示す。
・耐久試験:上記屈曲・
伸び試験(指を曲げる試験)を繰り返し50回行い、破損の有無によって、板上部材の耐久性を判断した。試験後に外観異常がなかった板状部材を○、試験後に亀裂や破損があるものを×、試験中に割れたものを−とした。評価結果を表3に示す。
Figure 0006468392
実施例1〜4のエラストマー(シリコーンゴム)は、比較例1〜6と比べて、低温環境下において、変形容易性に優れていることが分かった。また、実施例1〜4のエラストマー(シリコーンゴム)は、比較例1〜6と比べて、低温環境下において、繰り返し使用時における耐久性に優れることが分かった。このような実施例1〜4のエラストマー(シリコーンゴム)は、低温環境下におけるゴム特性の変動が抑制されているため、低温での使用特性が要求されるようなウェアラブルデバイスに好適に利用されることが期待される。

Claims (9)

  1. 低温環境用の成形体に用いるエラストマーであって、
    下記の条件で測定される、((引張応力M100−引張応力M1000)/引張応力M1000)×100が、−20%以上13%以下であ
    シリコーンゴムを含む、エラストマー。
    (条件)
    所定伸び引張応力M100:当該エラストマーに対して、−40℃で30分保持後、−40℃における、当該エラストマーのJIS K6251(2004)に準拠して測定される100%伸張時の応力とする。
    所定伸び引張応力M1000:当該エラストマーに対して、さらなる冷却処理を行わずに、25℃における、当該エラストマーのJIS K6251(2004)に準拠して測定される100%伸張時の応力とする。
  2. 請求項1に記載のエラストマーであって、
    下記の条件で測定される、((破断伸びBE−破断伸びBE0)/破断伸びBE0)×100が、−40%以上20%以下である、エラストマー。
    (条件)
    破断伸びBE:当該エラストマーに対して、−40℃で30分保持後、−40℃における、当該エラストマーのJIS K6251(2004)に準拠して測定される破断伸びとする。
    破断伸びBE0:当該エラストマーに対して、さらなる冷却処理を行わずに、25℃における、当該エラストマーのJIS K6251(2004)に準拠して測定される破断伸びとする。
  3. 請求項1または2に記載のエラストマーであって、
    下記の条件で測定される、((引張強度S−引張強度S0)/引張強度S0)×100が、−20%以上80%以下である、エラストマー。
    (条件)
    引張強度S:当該エラストマーに対して、−40℃で30分保持後、−40℃における、当該エラストマーのJIS K6251(2004)に準拠して測定される引張強度とする。
    引張強度S0:当該エラストマーに対して、さらなる冷却処理を行わずに、25℃における、当該エラストマーのJIS K6251(2004)に準拠して測定される引張強度とする。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載のエラストマーであって、
    下記の条件で測定される、((引裂強度TS−引裂強度TS0)/引裂強度TS0)×100が、−20%以上120%以下である、エラストマー。
    (条件)
    引裂強度TS:当該エラストマーに対して、−40℃で30分保持後、−40℃における、当該エラストマーのJIS K6252(2001)に準拠して測定される引裂強度とする。
    引裂強度TS0:当該エラストマーに対して、さらなる冷却処理を行わずに、25℃における、当該エラストマーのJIS K6252(2001)に準拠して測定される引裂強度とする。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載のエラストマーであって、
    下記の条件で測定される、硬度A0が、20以上80以下である、エラストマー。
    (条件)
    硬度A0:当該エラストマーに対して、さらなる冷却処理を行わずに、25℃における、当該エラストマーのJISK6253(1997)で規定されるデュロメータ硬さとする。
  6. 請求項1からのいずれか1項に記載のエラストマーであって、
    無機充填材を含む、エラストマー。
  7. 請求項1からのいずれか1項に記載のエラストマーであって、
    耐冷温度が−40℃の前記成形体に用いるエラストマー。
  8. 請求項1からのいずれか1項に記載のエラストマーであって、
    前記成形体がウェアラブルデバイスである、エラストマー。
  9. 請求項1からのいずれか1項に記載のエラストマーを備える、低温環境用の成形品。
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