以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1の実施形態のプレスブレーキの斜視図、図2は図1のA−A矢視断面図である。図1に示すように、プレスブレーキ1の説明においては、左右方向をXとし、左右方向Xに直交する方向のうち水平方向を前後方向Y、左右方向Xに直交する方向のうち鉛直方向を上下方向Zとする。左右方向Xは、後述する上部テーブル7と下部テーブル9の長手方向に相当する。
プレスブレーキ1は、左右の側板3,5の上部に昇降自在に垂直板状の上部テーブル7を備え、左右の側板3,5の下部に垂直板状の下部テーブル9を固定的に備えている。上部テーブル7と下部テーブル9は上下方向Zに対向配置されている。
上部テーブル7の下部テーブル9に対向する位置には、パンチ取付金具となるパンチホルダ10を介して上型となるパンチが着脱可能に取り付けられている。下部テーブル9の上部テーブル7に対向する位置には、ダイ取付金具となるダイホルダ12を介して下型となるダイが着脱可能に取り付けられている。パンチとダイの取付については、図1には図示しないが、図26及び図27に示すものと同様である。
上部テーブル7と下部テーブル9は、左右方向Xに沿って直線状に延びている。パンチとダイは一対の型に相当し、上部テーブル7と下部テーブル9は一対の型支持部材に相当する。
上部テーブル7の左右両袖部7aの上方には、上部テーブル7を昇降させるための、昇降用駆動機構(例えば昇降シリンダ)11,13がそれぞれ配置されている。昇降用駆動機構11,13は、左右の側板3,5に装着してあり、上部テーブル7の左右方向Xの両側の左右両袖部7aに下向きの移動圧力を加えることによって、上部テーブル7を下降させ、それによりダイとパンチとの間でワークを曲げ加工させる働きをなす。即ち、昇降用駆動機構11,13は、左右方向の両側に一対の型支持部材が互いに向かう方向の移動力を加えることによって、一対の型支持部材を相対的に接近移動させ、一対の型間でワークを曲げ加工させる一対の駆動機構を構成している。
ワークの曲げ加工の際に、加工反力の大きさによって、上部テーブル7及びパンチと下部テーブル9及びダイに、加工部位を中心として左右方向の中央部が凹むような撓み変形が発生することがある。そこで、プレスブレーキ1は、このような撓み変形を補正するための撓み補正機構50を備えている。撓み補正機構50は、昇降用駆動機構11,13が設けられた上部テーブル7側と反対の下部テーブル9側に備えられている。
撓み補正機構50は、曲げ加工時における下部テーブル9の撓みを補正するために、左右の昇降用駆動機構11,13の中間部に対応する位置で、下部テーブル9の左右方向Xの中央に対して左右対称となる位置に2つ設けられている。
下部テーブル9側には、図2に示すように、下部テーブル9を前後方向Yの間に挟むように、下部テーブル9の前側に前板39が配置され、下部テーブル9の後側に後板41が配置されている。下部テーブル9と前板39及び後板41は、それらの左右方向Xの両端において互いにピン20により結合されており、下部テーブル9の左右方向の中間部が、前板39及び後板41に対して上下方向に撓み可能な状態とされている。
下部テーブル9と前板39及び後板41とが互いにピン結合された両端間の中間における、前板39及び後板41と下部テーブル9との間に2つの撓み補正機構50が設けられている。前板39及び後板41は、撓み補正機構を備える型支持部材の、左右方向X及び一対の型支持部材の接近移動方向(Z方向)をそれぞれ含む一平面に対して直交するY方向の側部に配置され、左右方向Xに沿った方向の両側位置で型支持部材に取り付けられる保持板を構成している。
撓み補正機構50は、下部テーブル9に対して、下部テーブル9のダイを支持する側(上端側)と反対側(下側)からダイに向けた押圧力(上向きの押圧力)を加えることにより、曲げ加工時における下部テーブル9の撓みを補正する機能を果たす。以下に撓み補正機構50を詳しく説明する。
図3は図1の撓み補正機構50の全体構成を示す斜視図、図4は取付対象の部材を断面で追加した図3のB矢視図、図5は図3のC矢視図、図6は図4のD−D矢視断面図、図7は図5のE−E矢視断面図、図8は図5のF−F矢視断面図である。
第1の実施形態における撓み補正機構50は、図3または図8に示すように、回転軸60と、回転軸60を回転自在に支持する一対のベース板51,51と、回転軸60を回転駆動する減速機92付きのサーボモータ90と、下部テーブル9に撓み補正のための押圧力を加える可動部材55と、可動部材55に撓み補正のための押圧力の補助となる付勢力を加える押圧補助バネ80と、を備えている。
一対のベース板51,51はベース部材を構成し、サーボモータ90は回転軸60を回転させる回転駆動機構を構成し、押圧補助バネ80は弾性部材を構成している。さらに弾性部材は、型支持部材に対する押圧力を補助する押圧力補助部材を構成する。
その他、撓み補正機構50は、図3〜図8に示す各構成を備えている。例えば、撓み補正機構50は、前板39、後板41、突片56、ブラケット部材70、上部連結ピン72、下部連結ピン73、バネ支持ボルト81等を備えている。
回転軸60は、自身の回転中心軸線Rの方向を、下部テーブル9に対して撓み補正のための押圧力を加える方向(下から上に向けた方向)と直交する前後方向Yとした状態で、回転中心軸線R回りに回転自在にベース板51に支持されている。
図8に示すように、回転軸60上には円形偏心部63が形成されている。円形偏心部63は、回転軸60の回転中心軸線Rに対して偏心量δだけ偏心した偏心軸線Qを中心とする円筒外周面63aを有する。円形偏心部63は、回転軸60の中心軸線に対して偏心した位置を中心とする外周面を有するように回転軸60上に形成された偏心部を構成している。また、回転軸60上の円形偏心部63の軸方向両側には、直胴部61,62が形成されている。直胴部61,62は、回転中心軸線Rを中心とする円筒外周面61a,62aを有する。
一対のベース板51,51は、図4に示すように、下部テーブル9の前後の前板39及び後板41の下端に、4枚の帯板状のブラケット部材70を介して、前後方向に間隔をおいて取付けられている。図8に示すように、各ベース板51に形成された軸受孔51bの内周に、スリーブ52及び軸受53を介して回転軸60上の各直胴部61,62の円筒外周面61a,62aが嵌合されている。これにより、回転軸60が一対のベース板51,51に対して回転自在に支持される。
ベース板51に支持された回転軸60の軸端には、カップリング94を介して減速機92付きサーボモータ90の出力軸が連結されている。図3、図4に示すように、減速機92付きサーボモータ90は、サポート部材98を介してベース板51に固定されている。
4つのブラケット部材70は、前後方向Yに対をなし左右方向Xで組をなしている。前後に対をなす左右のブラケット部材70の上部が、図4及び図7に示すように、上部連結ピン72により前板39及び後板41に対して連結されている。この場合、上部連結ピン72は、下部テーブル9の撓み変形の際に下部テーブル9と干渉しないように、下部テーブル9の挿通孔9aを通して前板39と後板41とに連結されている。
また、4つのブラケット部材70のうち前後に対をなす左右のブラケット部材70の下部が、図7に示すように、一対のベース板51,51の各貫通孔51aを貫通する下部連結ピン73によって互いに連結されている。下部連結ピン73は、一対のベース板51,51の各貫通孔51aに嵌合固定されている。これにより、一対のベース板51,51は、互いに結合されると共に前板39及び後板41に取付けられている。上部連結ピン72は保持板側連結ピンを構成し、下部連結ピン73はベース部材側連結ピンを構成している。
ここでは、前後対のブラケット部材70の下部同士を連結する下部連結ピン73が、前後一対のベース板51,51を連結する連結部材を兼ねている。図5及び図6に示すように、4本の連結ピン72,73は、回転軸60を間にして左右対称に配置されており、可動部材55の左右両端に位置している。可動部材55は、図6に示すように、下部連結ピン73を介して、ベース板51により回転不能、かつ、鉛直面内で変位自在に支持されている。
図7に示すように、ブラケット部材70の貫通孔70aと上部連結ピン72及び下部連結ピン73の嵌合部には、上部連結ピン72及び下部連結ピン73とブラケット部材70を相対回転可能にするためのスリーブ71が配置されている。即ち、ブラケット部材70は、保持板及びベース部材に、左右方向X及び一対の型支持部材の接近移動方向をそれぞれ含む一平面に対して直交する方向を支持軸として回転自在に支持されている。
図8に示すように、可動部材55は一対のベース板51,51の間に配置されている。また、一対のベース板51,51に回転自在に支持された回転軸60上の円形偏心部63は、円筒外周面63aが、可動部材55に形成された円形開口部58の内周に軸受54を介して相対的に回転自在に嵌合されることで、一対のベース板51,51の間に位置している。
ここで、撓み補正のために下部テーブル9に押圧力を加える方向(上方向)をプラス方向、その反対方向(下方向)をマイナス方向とする。上述のように円形偏心部63と可動部材55が組み合わされていることにより、可動部材55は、円形偏心部63の回転位置に応じて押圧力を受ける。即ち、円形偏心部63が回転中心軸線R回りに偏心回転することで、回転中心軸線Rに対する円形偏心部63の偏心軸線Qの位置に応じて、可動部材55は、円形偏心部63の円筒外周面63aから、プラス方向の押圧力あるいはマイナス方向の押圧力を受ける。
可動部材55は、少なくともそのプラス方向の押圧力を下部テーブル9に伝える部材である。第1の実施形態では、可動部材55は下部テーブル9とは別体に設けられている。図4に示すように、可動部材55の上端面に押圧面55aが設けられ、下部テーブル9の下端面に被押圧面9cが設けられている。下部テーブル9の被押圧面9cは、可動部材55の押圧面55aが接触することで、可動部材55からプラス方向の押圧力を受ける。
また、図6に示すように、可動部材55の左右両端には、上下方向の貫通孔56aを有する突片56が設けられている。これら左右の突片56は、下部連結ピン73の長手方向中間部(可動部材55のある位置)に設けたボルト連結部74の下側に位置している。下部連結ピン73のボルト連結部74には、ねじ孔を有する上下方向の貫通孔74aが設けられており、貫通孔74aに、頭部81aを下にした弾性部材支持ロッドとしてのバネ支持ボルト81の先端(上端)81bがねじ込まれている。図6及び図7に示すように、ボルト連結部74にナット83でバネ支持ボルト81の先端81bが結合されている。
また、バネ支持ボルト81は、下部連結ピン73の下側において、可動部材55の突片56の貫通孔56aを軸方向及び直径方向に相対移動自在に貫通している。突片56とバネ支持ボルト81の下端(ボルト81の頭部81a)との間に、押圧補助バネ80が圧縮状態で介装されている。これにより、押圧補助バネ80が、突片56を介して、可動部材55に上向きの付勢力を付与している。貫通孔56aの内径は、バネ支持ボルト81の貫通孔56aに挿入される部分の直径よりも充分大きく形成されている。
押圧補助バネ80は、可動部材55に、自身の変形量に応じたプラス方向の付勢力を与える。押圧補助バネ80は、固定端である下端が、バネ支持ボルト81及び下部連結ピン73を介してベース板51に支持され、自由端である上端が、可動部材55に付勢力を付与可能に可動部材55の突片56に係合している。
可動部材55は、後述するように型支持部材である下部テーブル9と一体化していてもよい。従って、ベース部材側連結ピンの軸方向中央に一端を連結した弾性部材支持ロッドが、ベース部材側連結ピンに対し保持板側連結ピンと反対側で型支持部材を貫通し、弾性部材支持ロッドが貫通した部分の型支持部材と弾性部材支持ロッドの他端との間に、弾性部材が配置されている。
この場合の押圧補助バネ80は、圧縮状態で反発力を発生する多数の皿バネの積層体により構成されている。皿バネの積層体は、バネ支持ボルト81の外周に嵌挿してある。
次に作用を説明する。
プレスブレーキ1は、昇降用駆動機構11,13により上部テーブル7を下降させてワークを曲げ加工する。その際、上部テーブル7及びパンチと下部テーブル9及びダイに加工反力の大きさにより撓み変形が生じることがある。その撓みを補正するために、曲げ加工の進行に合わせて撓み補正機構50を作動させる。
撓み補正機構50のサーボモータ90を駆動して、図6の矢印Sで示すように、回転軸60を回転させると、回転軸60上に設けられた円形偏心部63が、可動部材55の円形開口部58の中で偏心回転する。円形偏心部63の回転位置に応じて、ベース板51によって回転不能に支持された可動部材55が、矢印Tで示すように上下方向に変位する。
円形偏心部63の回転位置に応じて、少なくとも次の3つの状態のいずれかが作り出される。
(1)円形偏心部63から可動部材55にマイナス方向の押圧力が加わる状態。
(2)円形偏心部63から可動部材55にプラス方向及びマイナス方向のいずれにも押圧力が加わらない状態。
(3)円形偏心部63から可動部材55にプラス方向の押圧力が加わる状態。
いま、例えば、上記(3)のように、可動部材55が上方向(プラス方向)に変位すると、下部テーブル9の前板39と後板41を支えにして、可動部材55から下部テーブル9に対し上向きの押圧力が加えられる。これにより、加工時に発生する下部テーブル9の撓みが補正される。
その際、押圧補助バネ80の付勢力が可動部材55にあらかじめ加えられているので、撓み補正のために必要な押圧力が、円形偏心部63の回転により発生する力と押圧補助バネ80の付勢力との合力で賄われることになる。
そのため、押圧補助バネ80の付勢力の分だけ、円形偏心部63の回転により発生させる押圧力を小さく抑えることができ、回転軸60のサーボモータ90による回転駆動力を軽減することができる。その結果、サーボモータ90や減速機92の容量の低減や回転軸60の支持のための軸受53などの容量の低減を図ることができる。
以下、より具体的に説明する。
第1の実施形態の撓み補正機構50の円形偏心部63の偏心量はδであるから、円形偏心部63の回転によって、可動部材55を最大で2δだけ上下方向に変位させることができる。従って、可動部材55の最下位位置を基準にすると、可動部材55を基準位置より2δだけ上方に変位させることができる。
つまり、下部テーブル9の被押圧面9cに最大で2δの変位を与えることができ、これにより、下部テーブル9の撓みを補正することができる。このときの上向きの押圧力は、円形偏心部63の回転により発生する上向きの押圧力と、押圧補助バネ80のそのときの変形量に応じた付勢力との和となる。
また、可動部材55を最下位位置(基準位置)まで変位させるのに必要な力(円形偏心部63の回転により発生するマイナス方向の最大の押圧力)は、押圧補助バネ80を最大に圧縮変形させるのに要する力であり、押圧補助バネ80が最大に圧縮変形した際に発生する付勢力(復元力)に拮抗する力である。ここで、可動部材55が最下位位置(基準位置)にあるとき、可動部材55は下部テーブル9に上向きの押圧力を及ぼさない。
図9(a)〜(c)の模式図を用いて説明する。
上記(1)の状態を作り出すとき、最終的には、図9(a)に示すように、円形偏心部63の偏心軸線Qが回転中心軸線Rの鉛直下方に位置することになる。その位置となるまでの間は、押圧補助バネ80の力の方向に対して円形偏心部63の発生する力の方向が逆になる。つまり、押圧補助バネ80の力を円形偏心部63の力で押さえ込む形になる。
従って、図9(a)の状態になったときには、下部テーブル9に作用するプラス方向の押圧力が最小(ゼロ)となり、下部テーブル9に対して撓み補正力をほとんど及ぼさない状態になる。
この場合、押圧補助バネ80の力を相殺するには、円形偏心部63の発生する力を円形偏心部63の回転による押圧補助バネ80の最大変形量に対応させるようにすればよい。円形偏心部63の偏心量がδである場合、図9(b)の中立位置から最大でδだけ押圧補助バネ80の変形量(圧縮量)が増すことになり、それに応じて押圧補助バネ80の付勢力が増加する。よって、その増加する押圧補助バネ80の付勢力に対抗できる押圧力を、最終的に円形偏心部63に発生させる必要が生じる。
具体的な数値例として、押圧補助バネ80を最大変形量まで圧縮するために、サーボモータ90により円形偏心部63に300kNの力を加える必要がある場合を想定する。この場合、圧縮変形量が増加した状態の押圧補助バネ80は合計で300kN(=150kN+150kN)の付勢力を発生することになる。しかし、押圧補助バネ80による上向きの力と円形偏心部63による下向きの力は相殺するため、外部出力はゼロになり、下部テーブル9に押圧力は加わらない。
図9(a)に示す状態のときの可動部材55の位置を基準位置とすると、その基準位置から、図9(b)に示すように、可動部材55が上下方向の中立位置に変位すると、円形偏心部63の偏心軸線Qが回転中心軸線Rと同一水平線上に並ぶ。図9(b)の状態では、基準位置からの可動部材55の上下方向の変位量h1がh1=δになるので、押圧補助バネ80の付勢力が、δだけ押圧補助バネ80の変形量が減少したときのバネ力の大きさに減少する。
このとき、円形偏心部63は可動部材55に上下方向の押圧力を加えていないので、可動部材55には押圧補助バネ80の付勢力250kN(=125kN+125kN)のみが加わることになる。つまり、上記(2)の状態のときであり、押圧補助バネ80の力だけが可動部材55を介して下部テーブル9に作用することになり、下部テーブル9に対しては小さな撓み補正力を及ぼすことになる。
また、図9(c)に示すように上記(3)の状態になったときは、最終的に、円形偏心部63の偏心軸線Qが回転中心軸線Rの鉛直上方に位置することになり、基準位置からの上下方向の変位量h2がh2=2δになる。それまでの間、押圧補助バネ80の力の方向と円形偏心部63の発生する力の方向が一致するので、図9(c)に示す状態になったときには、下部テーブル9に作用するプラス方向の押圧力が最大となり、下部テーブル9に対して最大の撓み補正力を及ぼすことになる。
つまり、図9(a)に示す状態を作るのに、サーボモータ90の駆動力を最大で300kNとする必要があるので、300kNの力を発揮できるサーボモータ90を使用したとする。このときの外部出力は、円形偏心部63の回転による上向きの力300kNと押圧補助バネ80によるそのときの変形量に応じた付勢力(100kN+100kN)の合力である500kNとすることができる。
このように、押圧補助バネ80がない場合は、撓み補正のための500kNの押圧力を発生するのに、サーボモータ90の駆動力を500kNに設定する必要がある。しかし、第1の実施形態のように押圧補助バネ80を設けた場合は、押圧補助バネ80の付勢力(100kN+100kN)を補助力として利用できるので、その分だけ、サーボモータ90の要求駆動力を小さく抑えることができる。
つまり、サーボモータ90だけで500kNの力を発生させなければならない場合でも、押圧補助バネ80を設けることによって、サーボモータ90の駆動力を300kNに抑えることができる。
なお、図9(a),(b),(c)の各状態を作り出した段階で、サーボモータ90のモータトルクをゼロにしても、円形偏心部63からサーボモータ90側にトルクが逆進することがないので、各状態をそのまま維持することができる。
以上説明したように、第1の実施形態のプレスブレーキ1によれば、下部テーブル9の撓みを自在にコントロールすることができるので、経年的に安定した曲げ加工を行うことができる。その際、下部テーブル9の撓みを補正するために最大の押圧力が必要なときに、押圧補助バネ80の付勢力をプラス方向の押圧力として、可動部材55を介して下部テーブル9に加えることができる。
よって、その加えた押圧力の分だけ、回転軸60上の円形偏心部63を回転させて発生させるべき押圧力を軽減することができ、回転駆動機構である減速機92付きサーボモータ90の必要駆動力を減らすことができる。
そのため、減速機92付きサーボモータ90の容量の低減を図ることができると共に、回転軸60を支持する軸受53の容量なども低減することができて、小型化やコストダウンを図ることができる。その際、第1の実施形態では、押圧力補助部として弾性部材である押圧補助バネ80を使用しているので、簡素で安価な構成により小型化やコストダウンを図ることができる。
また、プレスブレーキ1では、2つの撓み補正機構50を左右対称に2つ配置しているので、バランスよく正確に下部テーブル9の撓み補正を行うことができる。
また、プレスブレーキ1では、昇降用駆動機構11,13を設けるテーブル側と撓み補正機構50を設けるテーブル側とを別にしている、つまり、上部テーブル7側に昇降用駆動機構11,13を設け、下部テーブル9側に撓み補正機構50を設けることで、下部テーブル9の加工時の撓みを補正している。よって、昇降用駆動機構11,13と撓み補正機構50が同じテーブル側にあることによる機構のレイアウトの複雑化を避けることができる。
特に、上部テーブル7側に昇降用駆動機構11,13を設け、下部テーブル9側に撓み補正機構50を設けることで、下部テーブル9の加工時の撓みを補正するようにしている。このため、下方から上方に向かって撓み補正のために押圧力を加えればよく、撓み補正機構50を下部テーブル9の下方に邪魔にならないように配置することができる。
また、プレスブレーキ1では、可動部材55が下部テーブル9とは別体に設けられており、可動部材55の押圧面55aと下部テーブル9の被押圧面9cの接触により、可動部材55から下部テーブル9に撓み補正のための押圧力を伝えている。このため、下部テーブル9の下端面に、可動部材55の接触する被押圧面9cを設けることで、下部テーブル9に、図28に示す従来例のように剛性低下を招く開口部を設ける必要がない。つまり、下部テーブル9の剛性向上が図れて、曲げ加工時の撓み変形を減らすことができる。
プレスブレーキ1では、一対のベース板51,51の間に配置された可動部材55に円形偏心部63から押圧力を加え、その押圧力を、可動部材55の上端面の押圧面55aと下部テーブル9の下端面の被押圧面9cの接触を介して下部テーブル9に伝達する。このため、前後方向においてバランスよく、撓み補正に必要な押圧力を下部テーブル9に加えることができる。
プレスブレーキ1では、下部テーブル9に対し左右方向両側のピン20にて結合される前板39及び後板41と、ベース板51とをブラケット部材70を介して連結する構成としている。このため、可動部材55が上方に押圧されて下部テーブル9が撓み補正される際に、円形偏心部63の可動部材55に対する上方に向かう押圧力の反力を、ベース板51及びブラケット部材70を介して前板39及び後板41で受けることができる。
その際、一対のベース板51,51の左右両端は、4つのブラケット部材70を介して前板39及び後板41に連結されている。可動部材55は、一対のベース板51,51を相互連結するために左右両端に対称配置された下部連結ピン73を介して回転不能、かつ、鉛直面内で変位自在に支持されている。このため、可動部材55をバランスよく支持することができる。
可動部材55と連結部材を兼ねた下部連結ピン73との間に押圧補助バネ80が介装されているので、簡単な構成で押圧補助バネ80の付勢力を可動部材55に円滑に伝達することができる。
可動部材55の左右両端に、上下方向の貫通孔56aを有した突片56が設けられている。ベース板51の左右両端に配置された下部連結ピン73にバネ支持ボルト81の上端が結合されている。下部連結ピン73のボルト連結部74の下側に位置するように配置された突片56の貫通孔56aに、バネ支持ボルト81が挿通されている。
バネ支持ボルト81の下端の頭部81aと突片56との間に圧縮状態で押圧補助バネ80が介装され、押圧補助バネ80が突片56を介して可動部材55に上向きの付勢力を付与している。このため、バランスよく押圧補助バネ80の付勢力を可動部材55に付与することができる。
4つのブラケット部材70は、前板39及び後板41と一対のベース板51,51とにそれぞれピン(上部連結ピン72及び下部連結ピン73)で連結されている。このため、ピンをブラケット部材70に回動可能に装着することで、無理な応力が各部材に発生しないようにすることができる。また、下部連結ピン73が一対のベース板51,51同士を連結する連結部材を兼ねることで、構成の単純化が図れ、部品点数の削減に寄与することができる。
ブラケット部材70は、下部テーブル9の回転軸60の軸方向両側に少なくとも一対設けられ、一対のブラケット部材70は、前板39、後板41及びベース板51に対し、上部連結ピン72及び下部連結ピン73を介してそれぞれ連結されている。下部連結ピン73の軸方向中央に一端を連結したバネ支持ボルト81が、下部連結ピン73に対し上部連結ピン72と反対側で可動部材55を貫通し、バネ支持ボルト81が貫通した部分の可動部材55とバネ支持ボルト81の他端との間に、押圧補助バネ80が配置されている.
この場合、下部連結ピン73の軸方向中央において、押圧補助バネ80が可動部材55に付勢力を与えることができる。その結果、可動部材55は安定した姿勢で下部テーブル9を押し上げることができ、撓み補正を効率よく実施することができる。
押圧補助バネ80が、圧縮状態で反発力を発生する複数の皿バネの積層体により構成されているので、小さい変形量で強大な付勢力を発生することができる。
ところで、図9(a)から図9(b)を経て図9(c)の状態に移行する際には、円形偏心部63が、可動部材55に対し、上方に向かう押圧力だけでなく、水平方向を含む図9中で右側に向かう横方向押圧力を付与する。
具体的な数値例で詳述したように、可動部材55は、外部出力として最大で500kNという大きな力によって下部テーブル9を押し上げる。このため、可動部材55が横方向押圧力を受けると、可動部材55の押圧面55aと下部テーブル9の被押圧面9cとの間に大きな摩擦力が発生することになり、サーボモータ90が大きな負荷を受けるなど各部に悪影響を及ぼす。
しかし、第1の実施形態では、図4、図7等に示すブラケット部材70が、前板39及び後板41に対し上部連結ピン72を介して回転自在に連結され、ベース板51に対し下部連結ピン73を介して回転自在に連結されている。即ち、ブラケット部材70は、保持板及びベース部材に、左右方向X及び一対の型支持部材の接近移動方向をそれぞれ含む一平面に対して直交する方向を支持軸として回転自在に支持されている。
可動部材55が横方向押圧力を受けたときの押圧面55aと被押圧面9cとの間の摩擦力は、ブラケット部材70が上部連結ピン72及び下部連結ピン73を介して回転するときの摩擦力よりも充分大きい。このため、可動部材55が受ける横方向押圧力に対し、押圧面55aと被押圧面9cとの間の摩擦力が対抗して踏ん張り、可動部材55の水平方向への移動が抑えられる。
一方、円形偏心部63が図9(b)の状態のとき、回転軸60の回転中心軸線Rは、図9(a)に比較して、円形偏心部63の偏心軸線Qに対して相対的に左側へ移動する。回転軸60の左側への移動によって、回転軸60を支持しているベース板51が、図10(b)の二点鎖線で示すように図10(a)に対して左側へ移動する。
ベース板51の左側への移動に伴って、ブラケット部材70は、下部が左側へ移動するようにして上部連結ピン72を中心として図10中で時計回り方向に揺動回転する。このとき、ブラケット部材70は、前板39及び後板41とベース板51との間でリンク部材の役割を果たすことになる。
ベース板51の可動部材55に対する左側への相対移動は、バネ支持ボルト81が挿入される貫通孔56aの内径が、バネ支持ボルト81の貫通孔56aへの挿入部分の直径よりも充分大きいので可能となる。
図10(a)〜(c)は、図9(a)〜(c)に対応した可動部材55及びブラケット部材70の動きを示す。ベース板51が移動することで、図10(b)から図10(c)に示すように、可動部材55は、水平方向への移動が抑えられた状態で上方へ二点鎖線で示すように移動する。ベース板51が水平方向に移動する際には、ベース板51にサポート部材98を介して取付けられているサーボモータ90も一体となって移動する。
このように、可動部材55が円形偏心部63により横方向押圧力を受けても、ブラケット部材70が回転してベース板51が移動することで横方向押圧力を吸収する。このため、サーボモータ90に大きな負荷が作用することを抑制し、各部材に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
図11は、第2の実施形態に係わるプレスブレーキ1Aの図1に対応する斜視図、図12はプレスブレーキ1Aにおける撓み補正機構50Aの図3に対応する斜視図である。図13は図11のH−H断面図、図14は図11のI−I断面図である。第2の実施形態は、図10で示したような可動部材55の水平方向の移動を抑制する構造として、第1の実施形態におけるブラケット部材70を廃止している。
ブラケット部材70を廃止する代わりに、回転軸60と一対のベース板51Aとの間に、偏心環状部材としての偏心リング91を回転自在に設けている。ベース板51Aは、図12に示すように、上部の左右両端に左右方向に突出する取付部51Aaを備えている。取付部51Aaを、図14に示すように、前板39及び後板41の下端に左右一対のボルト93により締結固定することで、ベース板51Aが前板39及び後板41に固定される。これにより、撓み補正機構50Aが、下部テーブル9にベース板51A、前板39及び後板41を介して取り付けられる。
図15は、図13における撓み補正機構50Aを拡大した断面図であり、第1の実施形態の図8に対応している。撓み補正機構50Aの偏心リング91は、回転軸60の直胴部61に設けられた軸受53と、ベース板51Aの内周側に設けられた円筒形状のブッシュ95との間に回転自在に設けられている。偏心リング91は、図16に示すように、第1の実施形態と同等の円形偏心部63と同様に外周面が円形である。図16(a)〜(b)は図9(a)〜(b)に対応している。
図15及び図16(a)に示すように、円形偏心部63の偏心軸線Qが回転中心軸線Rの鉛直下方に位置する状態で、偏心リング91の偏心軸線Uは回転中心軸線Rの鉛直上方に位置する。円形偏心部63の偏心軸線Qが、回転軸60の回転中心軸線Rに対して偏心量δだけ偏心しているのに対し、偏心リング91の偏心軸線Uは、回転軸60の回転中心軸線Rに対して偏心量γだけ偏心している。偏心リング91の偏心量γは、円形偏心部63の偏心δよりも大きくしている(γ>δ)が、大きくなくても(γ≦δ)よい。
即ち、回転軸60の回転中心軸線Rに対し、円形偏心部63の偏心軸線Qとは異なる位置に偏心した位置を中心とする外周面を有するように、偏心リング91が、前板39、後板41に取り付けられたベース板51Aと回転軸60との間に回転自在に設けられている。
図16(a)では、前述したように、円形偏心部63の偏心軸線Qが回転中心軸線Rの鉛直下方に位置する状態で、偏心リング91の偏心軸線Uが回転中心軸線Rの鉛直上方に位置している。しかし、偏心リング91の偏心軸線Uは、図16(a)の位置に対し、偏心リング91が左右に多少回転した位置であってもよい。
図15に示すように、減速機92付きサーボモータ90を支持するサポート部材98Aは、先端に取付具96を備えている。取付具96をボルト97により偏心リング91の側面に締結することで、減速機92付きサーボモータ90は偏心リング91に固定される。偏心リング91が回転する際には、サーボモータ90の全体が一体となって回転する。
図12に示すように、一対のベース板51Aは、下部の左右両側に左右方向に突出する突出部51Abが形成されている。一対のベース板51Aの互いに対向する位置にある各突出部51Abは、図14にも示すように、連結具99によって互いに連結されている。
連結具99は、ベース板51Aに対応する部分が円形の軸形状となってベース板51Aに嵌合し、軸方向端部が取付板100によってベース板51Aに固定される。
連結具99の軸方向中央で一対のベース板51A相互間は、水平面に平行な板状に形成され、その板状部分の中央に、図14に示すようにボルト挿入孔99aが上下方向に貫通して形成されている。ボルト挿入孔99aには、バネ支持ボルト81Aの先端の細径部81Aaが移動自在に挿入される。
バネ支持ボルト81Aは、細径部81Aaよりさらに先端のネジ部81Abが連結具99より下方に突出し、突出したネジ部81Abにナット201が締結される。ナット201は締結によりバネ支持ボルト81Aに固定される。ナット201は、バネ支持ボルト81Aに固定されて緩まないように、例えばダブルナットにする。
図12に示すように、可動部材55Aは、上部の左右両端部に左右方向に突出するバネ支持部55Abが形成され、バネ支持部55Abの下面に、バネ支持ボルト81Aの頭部81Acが図14のように接触している。バネ支持ボルト81Aの頭部81Acと連結具99との間には、弾性部材としての押圧補助バネ80が設けられている。押圧補助バネ80は、バネ支持ボルト81Aの頭部81Acを上方に向けて押し付けている。
円形偏心部63が図16(a)のように回転中心軸線Rの鉛直下方に位置する状態では、可動部材55Aが下方に位置して押圧補助バネ80を圧縮している。このとき、ナット201は、図14のように連結具99から離れて下方に位置し、連結具99との間に隙間が形成される。従って、図16(a)の状態から円形偏心部63が回転して図16(b)及び図16(c)の状態に移行すると、押圧補助バネ80の伸長に伴って、ナット201が連結具99に近づき、バネ支持ボルト81Aが連結具99に対して上方に移動する。
これにより、押圧補助バネ80は、第1の実施形態と同様に、可動部材55Aに対し上方のプラス方向に向けた押圧力を与える。可動部材55Aの上面には、第1の実施形態と同様に、下部テーブル9の被押圧面9cを押圧する押圧面55Aaが形成されている。
次に、第2の実施形態の作用を説明する。
プレスブレーキ1Aによってワークを曲げ加工する際には、第1の実施形態と同様に、撓み補正のために撓み補正機構50Aを作動させる。撓み補正機構50Aのサーボモータ90を駆動して、回転軸60を図16(a)中で矢印V方向に回転させると、回転軸60上に設けられた円形偏心部63が、可動部材55Aの円形開口部58の中で偏心回転する。
円形偏心部63の偏心回転により、ベース板51Aによって回転不能に支持された可動部材55Aが、円形偏心部63の回転位置に応じて、上下方向に変位して撓み補正を実施する。撓み補正の際には、押圧補助バネ80が、バネ支持ボルト81Aの頭部81Acを介して可動部材55Aを上方に向けて押圧しているので、サーボモータ90の駆動力が軽減される。
可動部材55Aが、上下方向に変位する際には、左右の水平方向にも変位する。可動部材55Aの基準位置となる図16(a)の状態から、回転軸60が矢印V方向に90度回転して中立位置となる図16(b)の状態に移行すると、円形偏心部63の偏心軸線Qが回転軸60の回転中心軸線Rと同一水平線上に並ぶ。
このとき、可動部材55Aは円形偏心部63によって上方に向けて押圧されて変位量h1だけ上昇移動する。さらに可動部材55Aは、図16中で右側の水平方向に円形偏心部63によって横方向押圧力を受ける。しかし、可動部材55Aの押圧面55Aaと下部テーブル9の被押圧面9cとの間には、曲げ加工時での反力が作用して大きな摩擦力が発生する。この摩擦力をf1とする。
一方、偏心リング91は、回転軸60側の軸受53とベース板51A側のブッシュ95との間で回転自在となっている。ここで、偏心リング91の軸受53及びブッシュ95に対する回転時の摩擦力の総和をf2とする。偏心リング91側の摩擦力f2は可動部材55A側の摩擦力f1より充分小さい(f1>f2)。このため、可動部材55が受ける横方向押圧力に対し、押圧面55Aaと被押圧面9cとの間の摩擦力が対抗して踏ん張り、可動部材55Aの水平方向への移動が抑えられる。
円形偏心部63が図16(b)の状態のとき、回転軸60の回転中心軸線Rは、図16(a)に比較して、円形偏心部63の偏心軸線Qに対して相対的に左側へ移動する。回転軸60の左側への移動によって、回転軸60の直胴部61の外側に位置する偏心リング91が押されるようにして矢印Vとは逆の矢印W方向に回転する。
換言すれば、円形偏心部63による可動部材55Aに対する右方向への押圧力の反力が、回転軸60及び軸受53を介して偏心リング91の内周面に対し図16(a)中で左方向に作用し、偏心リング91が矢印W方向に回転する。つまり、円形偏心部63による可動部材55Aに対する右方向への押圧力を、偏心リング91が回転することによって吸収する。
サーボモータ90は、回転軸60を中心とした状態で偏心リング91の側面に取り付けてあり、偏心リング91の回転に伴って図16中で左方向へ移動する。
図16(b)の状態から、さらに回転軸60が矢印V方向に90度回転すると、図16(c)の状態となる。図16(b)の状態から図16(c)の状態に移行する際には、可動部材55Aは円形偏心部63によって上方に向けてさらに押圧されて変位量h2だけ上昇移動する。
可動部材55Aが変位量h2だけ上昇移動することによって、その分可動部材55Aは下部テーブル9を上方に向けて押圧して撓み補正する。このとき、下部テーブル9に対して最大の撓み補正力を及ぼすことになる。その際、第2の実施形態においても、押圧補助バネ80が可動部材55Aを上方に向けて押し付けるように弾性力を付与しており、その弾性力がサーボモータ90の駆動力を補助することになる。
よって、その補助する弾性力の分だけ、回転軸60上の円形偏心部63を回転させて発生させるべき押圧力を軽減することができ、サーボモータ90の必要駆動力を減らすことができる。
図16(b)のように、円形偏心部63の偏心軸線Qが回転中心軸線Rと同一水平線上に並んだ状態では、回転軸60はこれ以上左方向へは移動せず、円形偏心部63が可動部材55Aを水平方向右側へ押し付ける力はほとんどなくなっている。このため、可動部材55Aの押圧面55Aaと下部テーブル9の被押圧面9cとの間の摩擦力f1もほとんどなくなっている。
図16(b)の状態から、さらに回転軸60が矢印V方向に回転して図16(c)の状態に移行すると、円形偏心部63の偏心軸線Qは回転中心軸線Rの鉛直上方に位置する。この移行時に回転軸60(回転中心軸線R)は、図16中で水平方向右側に移動し、水平方向に関しては図16(a)と同じ位置に戻る。
回転軸60の円形偏心部63に対する、図16(c)中で上下方向位置に関しては、図16(a)の状態よりも下方となる。これに伴い偏心リング91は、図16(b)の状態から、矢印Wと反対方向に回転して、図16(a)の状態に戻る。
図16(a)、図16(b)、図16(c)の各状態では、偏心リング91の偏心軸線Uと円形偏心部63の偏心軸線Qとは、常に図16中で上下方向(鉛直方向)の同一直線上にある。
第2の実施形態では、円形偏心部63が図16(a)の状態から90度回転して図16(b)の状態に移行するときに、可動部材55Aの水平方向右側への移動が抑制されて、回転軸60(サーボモータ90)が偏心リング91の回転によって水平方向左側へ移動する。
つまり、可動部材55Aが水平方向右側に移動しようとする力を、回転軸60(サーボモータ90)が水平方向左側に移動することによって、吸収する。これにより、回転軸60を回転させるサーボモータ90に大きな負荷が掛かることを抑制することができる。
第2の実施形態は、第1の実施形態におけるリンク部材の役割を果たすブラケット部材70を廃止し、その代わりに偏心リング91を設けている。このため、第1の実施形態に比較して、全体として構成を簡素化することができる。
図17は、第3の実施形態に係わるプレスブレーキ1Bの図11に対応する斜視図、図18は図17のJ−J断面図、図19は図17のK−K断面図である。第3の実施形態は、図11の第2に実施形態におけるベース板51Aを廃止し、前板39B及び後板41Bに、回転軸60の偏心リング91を設けた直胴部61を直接取り付けている。前板39B及び後板41Bは、図11の前板39及び後板41に対し、ベース板51Aに対応する部分を下方に向けて突出させるように、大きく形成している。
可動部材55Aは、第2の実施形態と基本的には同等であり、バネ支持部55Abの下面にバネ支持ボルト81Aの頭部81Acが接触し、押圧補助バネ80がバネ支持ボルト81Aの頭部81Acを上方に向けて押し付けている。バネ支持ボルト81Aの細径部81Aaが挿入される連結具99は、軸方向両端が前板39B及び後板41Bにそれぞれ固定される。
図11の第2の実施形態は、前板39及び後板41の下部に固定してあるベース板51Aに、回転軸60を取り付けている。これに対して図17の第3の実施形態は、前板39B及び後板41Bに、回転軸60を直接取り付けている。第3の実施形態における撓み補正機構50Bのサーボモータ90を駆動することによる各部の動きは、第2の実施形態と同様である。
即ち、サーボモータ90の駆動により回転軸60が回転し、これに伴い円形偏心部63が回転して可動部材55Aを押し上げて撓み補正を実施する。撓み補正の際には、押圧補助バネ80が可動部材55Aを上方に向けて押圧しているので、サーボモータ90の駆動力が軽減される。
さらに、偏心リング91が円形偏心部63と逆方向に回転する。このとき、回転軸60の回転中心軸線Rが、図16(b)で示したように、水平方向左側に移動して可動部材55Aの水平方向右側への移動が抑えられる。
よって、第3の実施形態は、回転軸60を回転させるサーボモータ90に大きな負荷が掛かることを抑制できるうえ、第2の実施形態に対し、一対のベース板51Aを廃止できるので、その分部品点数を削減でき、構造の簡素化を図ることができる。
一方、図11の第2の実施形態では、回転軸60を回転自在に支持する回転軸支持部材としてのベース板51Aが、保持板としての前板39及び後板41に取り付けられている。このため、前板39及び後板41を、図1の実施形態とほぼ同等のもの使用でき、第3の実施形態に比較して前板39及び後板41の大型化を抑制できる。
図20は、第4の実施形態に係わるプレスブレーキ1Cの図11に対応する斜視図、図21は図20のL−L断面図、図22は図20のM−M断面図である。第4の実施形態は、図17の第3の実施形態における可動部材55Aを廃止し、回転軸60の円形偏心部63を設けた部位を、下部テーブル9Cに直接取り付けている。
前板39C及び後板41Cは、前板39B及び後板41Bと同様に、図11の前板39及び後板41に対し、ベース板51Aに対応する部分を下方に向けて突出させるように、大きく形成している。回転軸60は、前板39C及び後板41Cの上下方向ほぼ中央部に取り付けている。
バネ支持ボルト81Aの頭部81Acは、下部テーブル9Cの下面に接触し、押圧補助バネ80によって下部テーブル9Cに向けて押し付けられている。バネ支持ボルト81Aの細径部81Aaが挿入される連結具99は、図17の第3の実施形態と同様に軸方向両端が前板39C及び後板41Cにそれぞれ固定される。
第4の実施形態は、撓み補正機構50Cのサーボモータ90の駆動により回転軸60が回転し、これに伴い円形偏心部63が回転することによって、下部テーブル9が直接上方に向けて押上げられる。これにより、下部テーブル9Cに対し曲げ加工時での撓み補正が実施される。撓み補正の際には、押圧補助バネ80が、バネ支持ボルト81Aの頭部81Acを介して下部テーブル9を上方に向けて押圧しているので、サーボモータ90を駆動力が軽減される。
円形偏心部63の回転に伴って、偏心リング91が第3の実施形態と同様にして円形偏心部63とは逆方向に回転する。これにより、回転軸60の回転中心軸線Rが図16(b)で示したように、水平方向左側に移動する。このとき、円形偏心部63は、下部テーブル9Cに対して水平方向右側へ押し付ける横方向押圧力を付与している。
ところが、回転中心軸線Rの水平方向左側への移動によって、円形偏心部63の下部テーブル9Cに対する水平方向右側への横方向押圧力を吸収し、下部テーブル9Cに無理な力が付与されることを抑制できる。
従って、第4の実施形態においても、回転軸60を回転させるサーボモータ90に大きな負荷が掛かることを抑制できるうえ、図11の第2の実施形態に対し、一対のベース板51A及び可動部材55Aを廃止できるので、その分部品点数を削減でき、構造の簡素化を図ることができる。
一方、図11、図17の第2、第3の実施形態では、円形偏心部63は、型に向かう押圧力を型支持部材とは別体の可動部材55Aに与えるものであり、可動部材55Aの押圧面55Aaが接触することで可動部材55Aから押圧力を受ける被押圧面9cが、型支持部材に設けられている。このため、型支持部材である下部テーブル9を、図1の実施形態とほぼ同等のもの使用でき、図20の第4の実施形態に比較して、可動部材55Aを備える分、下部テーブル9の大型化を抑制できる。
図23は、第5の実施形態に係わるプレスブレーキ1Dの図11に対応する斜視図、図24は図23のN−N断面図である。第5の実施形態は、図20の第4の実施形態に対し、押圧補助バネ80を廃止している。従って、第4の実施形態で使用しているバネ支持ボルト81A及び連結具99も廃止している。
第4の実施形態は、下部テーブル9Cに対する撓み補正の際に、押圧補助バネ80が下部テーブル9Cに対して上方に向けた付勢力を与えている。これに対して第5の実施形態は、押圧補助バネ80を設ける代わりに、下部テーブル9C自体を、撓み補正する方向とは逆の下方に向けて、あらかじめ弾性変形させる。その他の構成は、図24に示すように、回転軸60の円形偏心部63を備える部位が下部テーブル9Cに位置し、回転軸60の偏心リング91を備える直胴部61及び62が前板39D及び後板41Dに位置するなど、第4の実施形態と同様である。
下部テーブル9C自体を、撓み補正する方向とは逆の下方に向けて、あらかじめ弾性変形させる作業は、以下のようにして行う。
図16(b)のように、円形偏心部63の偏心軸線Qが、回転中心軸線Rと同一水平線上に並んだ状態で、回転軸60を備えるサーボモータ90を、前板39D及び後板41Dを含む下部テーブル9Cに組み付ける。このとき、偏心リング91は、図16(b)と同様に、図16(a)の状態から矢印W方向に回転した位置となっている。
図16(b)の組み付け状態から、サーボモータ90を駆動して、回転軸60を矢印Vとは逆方向に回転させて図16(a)の基準位置とする。基準位置では、回転中心軸線Rの鉛直方向下部に円形偏心部63の偏心軸線Qが位置し、回転中心軸線Rの鉛直方向上部に偏心リング91の偏心軸線Uが位置している。即ち、回転中心軸線R、偏心軸線Q、偏心軸線Uの三つの軸線が、鉛直方向の同一直線上に位置する。
図16(a)の基準位置では、円形偏心部63が下部テーブル9Cに対し下方に向けて押し付けることになる。このため、下部テーブル9Cの上面は、図25の二点鎖線で示すように、左右方向中央が下方に凹となるように弾性変形する。逆に、前板39D及び後板41Dの上面は、破線で示すように上方に凸となるよう弾性変形する。前板39D及び後板41Dの下部テーブル9Cと反対方向への弾性変形は、回転軸60による下部テーブル9に対する下方へ押し付ける力の反力が、回転軸60を介して前板39D及び後板41Dに上向きに作用することによる。
下部テーブル9Cは、上面が下方に凹となるように弾性変形した状態で、上面が平坦に戻ろうとする弾性力が備えているが、図16(a)の状態の円形偏心部63によって、下方に凹となる状態が維持される。このため、図16(a)でのサーボモータ90による外部出力はゼロ(0kN)となり、下部テーブル9Cに上方への押圧力は加わらない。
曲げ加工するにあたり、ダイホルダ12を含む下部テーブル9Cの上面が下方に凹となっているので、この凹形状に合わせるべく上部テーブル7の左右方向中央の下面を、図25の二点鎖線で示すように下方に凸としておく必要がある。下部テーブル9Cの上面の凹形状に上部テーブル7の下面を凸形状として合わせることで、ワークに対する曲げ加工を精度よく行える。
上部テーブル7の下面を下方に凸とするには、図25に示す左右方向に沿って複数設けてあるパンチホルダ10を、下方に向けて突出移動させることで対応する。具体的には、複数のパンチホルダ10に関し、左右方向中心部の突出量を最大とし、中心部から左右方向の両側に沿って突出量を徐々に小さくする。
下部テーブル9Cの上面が下方に凹となるように弾性変形した状態は、第1〜第4の実施形態における押圧補助バネ80が最大圧縮された状態に相当する。この状態から、サーボモータ90の駆動によって、回転軸60を図16の例と同様に図16(a)中で矢印V方向に回転させることで、下部テーブル9Cは円形偏心部63によって上方に向けて押圧される。
このとき、下部テーブル9Cには、下方に向けて弾性変形した状態の復元力によって上方に向けて戻ろうとする力が働き、この力が押圧補助バネ80と同様にサーボモータ90の駆動による円形偏心部63を回転させる際の補助力となる。
曲げ加工時に、下部テーブル9Cが上方に向けて押圧されることで、加工初期には、下部テーブル9Cの上面及び上部テーブル7の下面がほぼ平坦となり、撓み補正が実施される。このとき、図16の例と同様に、円形偏心部63の回転に伴って、偏心リング91が円形偏心部63とは逆方向に回転する。これにより、回転軸60の回転中心軸線Rが図16(b)で示したように、水平方向左側に移動する。このとき、円形偏心部63は、下部テーブル9Cに対して水平方向右側へ押し付ける横方向押圧力を付与している。
ところが、回転中心軸線Rの水平方向左側への移動によって、円形偏心部63の下部テーブル9Cに対する水平方向右側への横方向押圧力を吸収し、下部テーブル9Cに無理な力が付与されることを抑制できる。
円形偏心部63及び偏心リング91が図16(c)と同様な状態では、回転軸60の円形偏心部63が最大押圧力で下部テーブル9を上方に向けて押圧する。このとき前板39D及び後板41Dは、下部テーブル9を上方に向けて押圧する力の反力を、回転軸60を介して下向きに受けることによって、上面が下方に向けて凹となるよう弾性変形する。
従って、第5の実施形態においても、回転軸60を回転させるサーボモータ90に大きな負荷が掛かることを抑制できるうえ、第2の実施形態に対し、一対のベース板51A及び可動部材55Aを廃止できるので、その分部品点数を削減でき、構造の簡素化を図ることができる。
第5の実施形態は、押圧力補助部材が、曲げ加工時での撓む方向と反対方向に弾性変形させた型支持部材である下部テーブル9Cとなっている。このため、第1〜第4の実施形態における押圧補助バネ80が不要となり、その分部品点数が削減できて構成をより簡素化できる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されずに各種の変形が可能である。
例えば、各実施形態では、撓み補正機構50〜50Dを下部テーブル9,9C側に設け、昇降用駆動機構11,13を上部テーブル7側に設けた場合を示した。その逆に、撓み補正機構50〜50Dを上部テーブル7側に設け、昇降用駆動機構11,13を下部テーブル9,9C側に設けてもよい。あるいは、昇降用駆動機構11,13と撓み補正機構50〜50Dを同じテーブル側(上部テーブル側あるいは下部テーブル側)に設けてもよい。
各実施形態では、偏心部として円形偏心部63を設けた場合を示したが、周方向の一部に円弧状の外周面を有するカム状の偏心部を設けてもよい。
各実施形態では、回転駆動機構として減速機付きサーボモータ90を使用した場合を示したが、それ以外の回転駆動機構を使用してもよい。
回転軸60の軸線方向を向ける方向は、撓み補正のための押圧力の方向に直交する方向であれば、前後方向以外であってもよい。
各実施形態では、押圧補助バネ80を皿バネの積層体で構成した場合を示したが、それ以外の強力なバネを用いることも可能である。
各実施形態では、型支持部材である上部テーブル7と下部テーブル9,9Cが上下方向に対向するプレスブレーキ1を曲げ加工装置の例として示したが、型支持部材の方向性は問わないし、他の形式の曲げ加工装置にも本発明は適用することができる。