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JP6332805B2 - 不織布 - Google Patents

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Description

本発明は、不織布に関する。
近年、不織布について、繊維構造等の工夫により様々な機能を持たせたものが提案されている。
例えば、特許文献1には、液残り低減を目的とする、単層からなる不織布についての記載がある。該不織布において、親水化剤を有する熱伸長性複合繊維を用いて、熱処理で部分的に親水度を低下させ、親水度勾配をつける技術が示されている。
特許文献2には、第1層と第2層の2層からなり、第2層に螺旋状に捲縮した捲縮繊維を含む不織布が記載されている。該不織布では、液の引き込み性の観点から、第2層の捲縮繊維の繊維径が第1層のものよりも太くされ、第2層の見掛け密度が第1層のものよりも高くされている。
特許文献3には、液戻りを抑えることを目的に、2種類の高さから水滴を落下させたときの吸収時間を特定のものとした不織布が記載されている。また、特許文献4には、合成繊維の紡糸時に帯電防止剤成分または潤滑剤成分として用いられる合成繊維処理剤についての記載がある。
特開2010−168715号公報 特開2005−314825号公報 特開2004−256935号公報 特開2005−54333号公報
上記の特許文献1〜3に示すような不織布は、その液透過性により、生理用ナプキン等の表面シートなどに適用した場合、該物品の高い吸収性能の発現に寄与する。しかし、この場合においても、吸収体で吸収された経血等の赤みが使用後の廃棄時に表面シートから見えることがある。表面シートに液残りが無くても吸収体にある赤みが表面シートから透けて見えると、表面シートの汚れと混同しやすく、誤った不快な印象を使用者に与えかねない。このような誤解を解消して、使用者が好印象を持って使用でき、かつ吸収力の良い生理用ナプキン等であることを実感できるものが要望される。そのため、できるだけ吸収体の赤みは表面シート側から隠蔽されることが好ましい。
このような赤みの隠蔽性は、まず、吸収体上に積層されたシート、特に表面シートの構成繊維の繊維間距離(隙間)によって変化する。この繊維間距離は、例えば構成繊維の本数によって設定することができる。本数が多いほど繊維間距離は縮まり、赤みの隠蔽性は高まる。しかし、繊維間距離が縮まるだけ、表面シートの液透過性が阻害され、液残りを増加させる原因となってしまう。この場合、吸収体にある赤みは隠蔽できても、表面シートを透過できずに残った液の赤みが増してしまい、使用者への印象の改善には繋がらない。また、むしろ肌に触れる液が生じ、装着感まで低下させかねない。
このように、従来、液残りの抑制と赤みの隠蔽性との両立が難しかった。
本発明は、上記の問題点に鑑み、隠蔽性と液残り抑制を高いレベルで両立し、使用者に、吸収力の高いことを実感させることができる不織布に関する。
本発明は、少なくとも2層を有する不織布であって、該不織布の一方の面側の層は、繊維間距離を90μm以下とし、繊維処理剤が付着した熱融着性繊維を有し、前記繊維処理剤が(A)ポリオルガノシロキサン、(B)リン酸エステル型のアニオン界面活性剤、及び(C)アルキルヒドロキシスルホベタインを含有する、不織布を提供する。
本発明の不織布は、隠蔽性と液残り抑制を高いレベルで両立させることがでる。
本発明の不織布の好ましい一実施形態を模式的に示す断面図である。 繊維処理剤が熱融着性繊維に付着した状態を模式的に拡大して示す図である。 図1の不織布の第1層及び第2層をそれぞれ厚み方向に2区分にして示す断面図である。 (i)は本発明の不織布の別の好ましい一実施形態を示す斜視図であり、(ii)は(i)の不織布の厚み方向に沿う断面図の一部拡大図である。 本発明の不織布の製造に好適に用いられる製造装置を模式的に示す構成図である。
本発明の不織布の好ましい一実施形態について、図1に示す不織布10を参照しながら以下に説明する。なお、本発明の不織布は、複数の繊維層からなる積層構造体であり、図1の2層に限定されるものでなく3層以上であってもよい。3層以上である場合、後述する「一方の面側の層」であり、繊維間距離を90μm以下とした第2層2は、不織布10の厚みの中央位置ではなく、第2面10B側の最外層であることが好ましい。これは、第1層1と第2層2との間に中間層が介在し、繊維間の隙間を小さくした第2層2が中央に無い構成であり、液の隠蔽性と同時に、不織布内での液残り防止性を高める観点から好ましい。また同様の観点から、第2層2が最外層でない場合でも、不織布10の厚みの中央位置よりも、第2面10B側寄りに第2層2があることが好ましい。
本発明において、不織布の「隠蔽性」とは、該不織布を透かして見たときに、向こう側にある物の汚れなどが不織布で覆い隠されて見えにくくなっていることである。典型的には、本発明の不織布を吸収性物品の表面シートとして適用したときに、吸収体に吸収された経血等の赤みが表面シートで覆い隠され見えにくくなっていることである。
この隠蔽性は、例えば1つの方法として、明度(L値)で示すことができる。その測定には日本電色工業株式会社製の簡易型分光色差計NF333を用いることができる。L値は白色度であり、L値が高いほど白色に近いことを示す。したがって、本明細書で示すL値は、不織布が白色又は乳白色として測定された値である。「白色」とは、前記L値で80以上を意味し、「乳白色」とは前記L値で70以上を意味する。不織布に対して測定されるL値が上記の「白色」又は「乳白色」のL値に近いほど、経血等の汚れが不織布の表面からは認識されないことを示す。すなわち、表面シートとして適用した場合の本発明の不織布からは、吸収体に付着した経血等の赤みが薄れ、不織布の白さが強く認識されるのであり、隠蔽性が高いといえる。この場合の、汚れに対する隠蔽性を示すL値は、使用者に白さを認識させる観点から、65以上が好ましく、70以上がより好ましく、80以上が更に好ましい。
なお、前述の「隠蔽性」の定義のとおり、本発明の不織布は、繊維によって物理的に汚れ等を覆い隠すものである。そのため本発明の不織布は、この覆い隠しによる隠蔽性を有する限り、上記の白色や乳白色に限定されるものでなく、種々の色を有するものであってもよい。また、色も一色に限らず、多色でもよく、図柄等が配されていてもよい。
図1に示す不織布10は、第1面10A側の第1層1と第2面10B側の第2層2との2層からなる積層構造体である。両層ともに親水性を有する。不織布10において、一方の面側である第2面10B側の第2層2が、繊維間距離を90μm以下とし、繊維処理剤が付着した熱融着性繊維を有する。前記繊維処理剤は、(A)ポリオルガノシロキサン、(B)リン酸エステル型のアニオン界面活性剤、及び(C)アルキルヒドロキシスルホベタインを含有する(以下、第2層2に用いられる上記の繊維処理剤を、符号S1を付していうことがある。)。
第2層2の繊維間距離を90μm以下とすることは、繊維間の隙間を小さくすることである。これにより、隙間からの視認性が低下し、不織布10の隠蔽性が高まる。すなわち、不織布10を透かして見たときに、向こう側にある物の汚れ等が、第2層2の繊維で物理的に覆い隠され見えにくくなる。特に、不織布10を表面シートとして適用したときに、表面シートを透過して吸収体に吸収された経血の赤みが不織布10で覆い隠され見えにくくなる。
繊維処理剤S1は、熱融着性繊維の表面に付着して、該繊維の表面の親水度を、繊維処理剤を付着させる前に比して高めるものである。また、繊維処理剤S1に含有される前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を付着させたことで、後述するように、不織布10は第2層2の親水度を高くし、かつ、親水度に勾配のあるものとなる。
これにより不織布10は、第1面10A側を使用面(受液面)とした場合に、第1面10A側から第2面10B側への液透過性に優れ、液残り防止性に優れる。すなわち、第2層2において、繊維間距離が小さく(繊維密度が高く)、高い親水度と厚み方向の親水度勾配とにより、第1層1からの液に対する強い引き込み力を備える。これにより不織布10は、第1面10Aないし第1層1に液を残すことなく液透過性を高めたものとなる。同時に、前記の繊維間距離によって、不織布10は、第2面10B側から第1面10A側への液戻りに対する抑制効果が高いものとなる。
一方、不織布10は、第2面10B側を使用面(受液面)とした場合に、第2層2の繊維密度と親水度の高さゆえに液拡散性の高い不織布として用いることができる。
繊維処理剤S1が付着した熱融着性繊維は、第2層2のいずれかの部位に存在していればよい。また、第2層2は、繊維処理剤S1が付着した熱融着性繊維のみから構成されていてもよく、あるいは他の1種又は2種以上の繊維を付加的に含んでもよい。第2層2は、このような熱融着性繊維のみからなる、又は、熱融着性繊維を主成分として構成されることが好ましい。
不織布10は、上記の特性を生かして種々の用途に適用することができる。例えば、不織布10を吸収性物品の吸収体上に積層される部材、特に表面シートに用いることができる。不織布10を表面シートとして適用する場合、第1面10A側を着用者の肌面側に向け、第2面10B側を物品内部の吸収体(図示せず)側に向けて用いることが好ましい。この場合、第1面10A側が排泄液を受け取る受液面であり、第2面10B側が液を吸収体へと引き渡す排液面となる。表面シートは、経血等の排泄液の液透過性及び液残り防止性に優れ、その隠蔽性により物品の吸収性能の高さを適切に実感させることができる。
なお、本発明の不織布はこの形態に限定されるものではない。例えば、吸収性物品の表面シートと吸収体との間の液拡散性の中間シートとして配してもよい。また、吸収性物品以外の物品に適用してもよい。適用物品の用途に応じて、第2面10B側を受液面とし、第1面側10Aを排液層として用いてもよい。すなわち、第1面10A側を使用面にしてもよく、または第2面10B側を使用面にしてもよい。どちらの側を使用面にするかは、不織布の具体的な用途に応じて決定すればよい。
ここで、第1層1と第2層2とは、上記の繊維間距離や繊維処理剤の違いにより区別される層であり、両層間に明確な境界が無い場合であってもよい。不織布10の厚さ方向断面を電子顕微鏡で拡大すると、繊維間距離の違いに起因して両層の境界面を観察することができ、繊維を採取して繊維表面上の接触角を測定することで、両層の繊維処理剤の違いを判断することができる。なお、この区別は、不織布が3層以上の場合であっても同様に適用される。
本発明の不織布を2層以上の複数層からなるものとして製造する方法は、この種の物品に用いられる方法を特に制限なく採用できる。例えば、後述するように、各層をなす繊維ウエブ(繊維交点が融着する前のもの。すなわち不織布になる前のもの。)を積層して熱処理し、各層内の繊維同士及び隣接する層の繊維同士を熱融着して一体化する方法がある。または、各層の繊維ウエブを別々に不織布化して積層し、エンボスによる熱融着や接着剤による接合で一体化する方法などがある。液残りなく液透過性に優れた不織布とする観点から、繊維ウエブ同士を熱融着で一体化する方法が好ましい。
特に、肌触りや液透過性の観点から、エアスルー不織布であることが好ましい。ここでいう「エアスルー不織布」とは、50℃以上の流体、例えば気体や水蒸気を、ウエブ又は不織布に吹き付ける工程を経て製造された不織布をいう。本工程のみで製造される不織布のみならず、他の方法で作製された不織布に本工程を付加して製造した不織布あるいは本工程の後に何らかの工程を行って製造した不織布をも含む意味である。また、本発明の不織布は、エアスルー不織布のみからなるものに限らず、エアスルー不織布と他の不織布等の繊維シートやフィルム材とを複合化したものも包含する。
次に、第2層2及び第1層1それぞれについて詳述する。
(第2層2の繊維間距離)
第2層2は、液の隠蔽性の観点から、構成繊維の繊維間距離を90μm以下とされている。さらに同様の観点から、第2層2の繊維間距離は、80μm以下がより好ましく、70μm以下が更に好ましい。これは、従来の不織布が液透過性のため通常140μm程度としているのに比べてかなり短い繊維間距離である。例えば、従来の技術範囲である140μm程度の繊維間距離の表面シートを通して、吸収体に吸収された経血の赤みを測定するとL値が60程度であり、使用者に白色であると実感させることは難しい。しかしながら、繊維間距離を90μm以下まで低下させた不織布を表面シートとして用いると、L値が75以上にまで上昇し、表面シートを透過して吸収体に吸収された経血の赤みが不織布で覆い隠され、吸収性の高さを実感させることが可能となる。
なお、前記「構成繊維」とは、第2層2が前述の熱融着性繊維のみから構成されている場合は、熱融着性繊維を意味する。また、第2層2が該熱融着性繊維と他の1種又は2種以上の繊維との混合からなる場合は、熱融着性繊維と他の1種又は2種以上の繊維の全ての繊維を意味する。以下に示す「構成繊維」についても同様の意味である。
上記の繊維間距離は、構成繊維を細くして本数を増やすことで得られる。すなわち、細い繊維を用いて繊維密度を高めることで繊維間距離を短くすることができる。この場合、第2層2は、2.0dtex以下の繊維を主成分として含むことが好ましく、1.8dtex以下の繊維を主成分として含むことがより好ましく、1.5dtex以下の繊維を主成分として含むことがさらに好ましい。これは、従来の不織布における繊度が液透過性のため通常2.2dtex程度とされているのに比べ細いものである。これにより第2層2の繊維間の隙間(繊維間距離)が小さくなり、不織布10の隠蔽性が高められる。
また、上記の繊維間距離は、不織布10の液透過性を維持する観点から、50μm以上とすることが好ましく、55μm以上とすることがより好ましく、60μm以上とすることが更に好ましい。この場合の繊度は、0.8dtex以上が好ましく、1.0dtex以上がより好ましく、1.2dtexがさらに好ましい。
このように、繊維間距離を縮めるために繊維径を小さくする場合、第2層2の繊維密度は高まるものの、繊維の細さで不織布10全体の柔軟で柔らかい風合いが保持される。
そして、このようにして形成された不織布10は、液の隠蔽性が高い。これにより、不織布10が例えば経血等を透過させた後であっても、清潔感のあるものとの印象を与えることができる。また、不織布10を吸収性物品に組み込んだときに、物品の吸収性能の高さを適切に実感することができる。
(繊維間距離の測定方法)
繊維間距離は、次のようにして測定対象の不織布の厚みを測定し、式(1)に当てはめて求める。
まず、測定対象の不織布を長手方向50mm×幅方向50mmに切断し、該不織布の切断片を作製する。この切断片を、前記ナプキン吸収体上に載せ、測定対象の不織布を表面シートとして用いた生理用ナプキンを作成する。
前記不織布厚みを、前記ナプキン吸収体上に載せられた状態下、49Pa加圧で測定する。測定環境は温度20±2℃、相対湿度65±5%、測定機器にはマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX−1000)を用いる。まず、前記不織布断面の拡大写真を得る。拡大写真には、既知の寸法のものを同時に写しこむ。前記不織布断面の拡大写真にスケールを合わせ、不織布の厚みを測定する。以上の操作を3回行い、3回の平均値を乾燥状態の不織布の厚み[mm]とする。なお積層品の場合は、繊維径からその境界を判断し、厚みを算出する。
次いで、測定対象の不織布を構成する繊維の繊維間距離は、以下に示す、Wrotnowskiの仮定に基づく式により求められる。Wrotnowskiの仮定に基づく式は、一般に、不織布を構成する繊維の繊維間距離を求める際に用いられる。Wrotnowskiの仮定に基づく式によれば、繊維間距離A(μm)は、不織布の厚みh(mm)、坪量e(g/m)、不織布を構成する繊維の繊維径d(μm)、繊維密度ρ(g/cm)によって、以下の式(1)で求められる。
なお、繊維径d(μm)は、走査型電子顕微鏡(セイコーインスツルメンツ株式会社製DSC6200)を用いて、カットした繊維の繊維断面を10本測定し、その平均値を繊維径とする。
繊維密度ρ(g/cm)は、密度勾配管を使用して、JIS L1015化学繊維ステープル試験方法に記載の密度勾配管法の測定方法に準じて測定する(URLはhttp://kikakurui.com/l/L1015−2010−01.html、書籍ならJISハンドブック繊維−2000、(日本規格協会)のP.764〜765に記載)。
坪量e(g/m)は、所定(0.12m×0.06mなど)の大きさにカットし、重量測定後に、下記式で算出して坪量を求める。
重量÷所定の大きさから求まる面積=坪量(g/m
Figure 0006332805
(構成繊維の繊度の測定方法)
電子顕微鏡等により繊維の断面形状を計測し、繊維の断面積(複数の樹脂より形成されている繊維では各々の樹脂成分の断面積)を計測するとともに、DSC(示差熱分析装置)により、樹脂の種類(複数樹脂の場合は、おおよその成分比も)を特定して、比重を割り出し、繊度を算出する。
例えば、PETのみから構成される短繊維であれば、まず断面を観察し、その断面積を算出する。その後、DSCで測定することで、融点やピーク形状から単成分の樹脂から構成されており、それがPET芯であることを同定する。その後、PET樹脂の密度と断面積を用いて、繊維の重量を算出することで、繊度を算出する。
上述の繊維間距離及び構成繊維の繊度の測定に際し、測定対象の不織布が生理用品や使い捨ておむつなどの吸収性物品に組み込まれた部材(例えば、表面シート)である場合は次のように取り出して測定を行う。すなわち、吸収性物品において、測定対象の部材と他の部材との接合に用いられる接着剤などをコールドスプレー等の冷却手段で弱めた後に、測定対象の部材を剥がして取り出す。
なお、この取り出し方法は、後述する、繊維処理剤の付着量(含有量)の測定など、本発明の不織布に係る測定において適用される。
<第2層2に用いられる繊維処理剤S1>
加えて、第2層2は、(A)ポリオルガノシロキサン、(B)リン酸エステル型のアニオン界面活性剤、及び(C)アルキルヒドロキシスルホベタインを含有する繊維処理剤S1が付着した熱融着性繊維を有する。これにより第2層2は高い親水度を有する。また、後述のとおり、熱処理により親水度に勾配のあるものとなる。
成分(C)は、繊維径を小さくした熱融着性繊維に対し密に吸着することができ、高い親水度を繊維に付与することができる。通常、繊維に付着する繊維処理剤は、図2に示すように、繊維表面に5nmから10nm程度の薄膜83として存在する(繊維質量に対して約0.4質量%程度)。しかし、この薄膜は、繊維の繊度を低下させていくと薄くなる傾向にある。その結果、従来の繊維処理剤による処理では親水化が弱く疎水度が高くなる。
これに対し、成分(C)は、アニオン性基とカチオン性基の両方を有することから、繊維表面に吸着するときに、成分(C)同士の静電反発が抑えられ比較的密な状態となる。さらに、成分(C)は、アニオン性基とカチオン性基との間にヒドロキシ基を有するため、水素結合作用を奏し、成分(C)同士をさらに引き付けやすく密な状態となる。その結果、成分(C)は、繊維径の小さい熱融着性繊維に対して少ない添加量(薄い膜厚)であっても密に吸着して高い親水度を付与することができる。
なお、図2は、熱融着性繊維の一例として芯鞘構造(芯81、鞘82)のものを示している。しかし、本発明で用いられる熱融着性繊維はこれに限定されるものではない。
また、不織布10において、前記3つの成分を含む繊維処理剤S1が付着した熱融着性繊維を有する第2層2は、熱処理を施すことにより親水度に勾配を付けることができる。
すなわち、成分(A)であるポリオルガノシロキサンが、成分(C)であるアルキルヒドロキシスルホベタインの繊維内部への浸透を促進するため、繊維の表面の親水度が熱処理によって低い値へと変化する。これは、ポリオルガノシロキサンのポリシロキサン鎖と、アルキルヒドロキシスルホベタインの持つアルキル鎖が不相溶なため、アルキルヒドロキシスルホベタインが、より馴染みやすい疎水性の熱融着性繊維内部へ、繊維が加熱溶融した際に浸透するために起こると考えられる。これにより、例えば後述する製造工程の一工程であるウエブに熱風を吹きつける工程において、次のとおり熱量に応じて繊維の接触角の値が変わってくることになる。すなわち、ウエブ中の繊維が受ける熱量は、熱風吹き付け面とその反対側の面(ネット面)とにおいて自ずと異なっている。これにより、熱風吹き付け面の繊維とその反対側の面の繊維とでは受ける熱量が異なり、熱風吹き付け面の繊維が、その反対側の面の繊維よりも、親水度が低下し接触角の値が高いものとなる。このことを利用して、第2層2の第1面2A側から第2面2B側へ向かって親水度が高くなる親水度勾配をつけたものとすることができる。
上記の勾配とは、特に断らない限り、第2層2の厚み方向において、第1面2A側よりも第2面2B側の親水度が高い状態を意味する。この「勾配」は、第2層2における第1面2A側と第2面2B側との間に、親水度の差がある様々な態様を広く含むものであり、漸次高くなる態様でもよく、段階的に高くなる態様でもよい(以下、第1層1の親水度勾配、第1層1から第2層2に至る不織布10全体の親水度勾配においても同じ意味である。)。
また、上記の勾配の態様に代えて、第1面2A側と第2面2A側で親水度が逆転している(第2面2A側の方が、第1面2A側よりも親水度が低い)態様でもよい。
なお、第2層2における「第1面2A」は、図1に示すとおり、不織布10の第1面10A側に位置する面である。また、第2層2における「第2面2B」は、図1に示すとおり、不織布10の第2面10B側に位置する面である。
前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有する繊維処理剤S1の熱融着繊維への付着量(含有量)は、該繊維処理剤を除く熱融着性繊維の全質量に対する割合として、親水度を高める観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。また、その上限は、不織布加工機の汚染性を抑える観点から、1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。例えば、繊維処理剤S1の熱融着繊維への付着量は、該繊維処理剤を除く熱融着性繊維の全質量に対する割合として、0.1質量%以上1.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以上1.0質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上0.5質量%以下がさらに好ましい。
なお、本発明の、繊維処理剤が付着した不織布において、その付着した繊維処理剤を分析する場合は、次の手順に従って分析することが好ましい。先ず、分析対象の不織布を適切な溶媒で洗浄する。この洗浄用溶媒としては、例えば、エタノールとメタノールとの混合溶媒、エタノールと水との混合溶媒が挙げられる。次に、分析対象の不織布を洗浄するのに用いた溶媒(繊維処理剤を含む洗浄用溶媒)を乾燥させ、その残渣を定量することで、該不織布に付着していた繊維処理剤の総量が測定できる。また、この残渣を、その構成物に合わせて適切なカラム及び溶媒を選択した上で、それぞれの成分を高速液体クロマトグラフィーで分画し、さらに各画分についてMS測定、NMR測定、元素分析等を行うことで、各画分の構造を同定することが出来る。また、繊維処理剤が高分子化合物を含む場合には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの手法を併用することで、構成成分の同定を行うことがより容易になる。
上記の分析方法は、後述する繊維処理剤S1中の各成分、並びに第1層1に用いられる繊維処理剤S2〜S5及びその各成分に対しても同様に用いられる。
以下、それぞれの成分について説明する。
(成分(A))
ポリオルガノシロキサンとしては、直鎖状のもの、架橋二次元又は三次元網状構造を有するもののいずれも使用できる。好ましくは実質上直鎖状のものである。ここでいう「実質上」とは、ポリオルガノシロキサン骨格の一部を変性、または一部のアルキル基を長鎖にすることで、分岐した構造を有するポリオルガノシロキサンを含んでも良く、架橋構造を有するポリオルガノシロキサンの含有量が5%以下であることを意味する。
ポリオルガノシロキサンのうち好適なものの具体例は、アルキルアルコキシシランやアリールアルコキシシラン、アルキルハロシロキサンの重合物あるいは環状シロキサンである。アルコキシ基としては、典型的にはメトキシ基である。アルキル基としては炭素数1以上18以下、好ましくは1以上8以下、特に1以上4以下の側鎖を有してもよいアルキル基が適当である。アリール基としては、フェニル基やアルキルフェニル基、アルコキシフェニル基等が例示される。アルキル基やアリール基に代えて、シクロヘキシル基やシクロペンチル基等の環状炭化水素基、ベンジル基のごときアラルキル基であってもよい。
また、本発明でいうポリオルガノシロキサンは、成分(C)の浸透をより促進させ、加熱により繊維表面の接触角を成分(C)の付着した状態からより大きくする観点から、親水性の高いPOE鎖で変性したポリオルガノシロキサンを含まない概念である。
本発明において好ましい最も典型的なポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジプロピルシロキサン等が挙げられる。その中でもポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
ポリオルガノシロキサンの分子量は、高分子量であることが好ましく、具体的には、質量平均分子量で好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上である。その上限は、好ましくは100万以下、より好ましくは80万以下、更に好ましくは60万以下である。また、ポリオルガノシロキサンとして、分子量の異なる2種類以上のポリオルガノシロキサンを用いてもよい。分子量が異なる2種類以上のポリオルガノシロキサンを用いる場合、そのうちの一種類は、質量平均分子量が、好ましくは10万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上である。その上限は、好ましくは100万以下、より好ましくは80万以下、更に好ましくは60万以下である。他の一種類は、質量平均分子量が、好ましくは10万未満、より好ましくは5万以下、より好ましくは3万5千以下、特に好ましくは2万以下である。その下限は、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、更に好ましくは5000以上である。また、重量平均分子量が10万以上のポリオルガノシロキサンと重量平均分子量が10万未満のポリオルガノシロキサンとの好ましい配合比は、質量比で、好ましくは1:10から4:1、より好ましくは1:5から2:1である。
ポリオルガノシロキサンの質量平均分子量はGPC(東ソー社製、商品名CCPD)を用いて測定される。測定条件は下記のとおりである。また、換算分子量の計算はポリスチレンで行う。
分離カラム:GMHHR−H+GMHHR−H(カチオン)
溶離液:LファーミンDM20/CHCl
溶媒流速:1.0ml/min
分離カラム温度:40℃
成分(A)は、上記の剤のいずれか1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
ポリオルガノシロキサンの、第2層2の熱融着繊維に付着された繊維処理剤S1中の含有量は、熱処理による親水度の変化を大きくする観点から1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。また、第1層1からの液を吸収させやすくする観点から30質量%以下が好ましく、20質量%以下が更に好ましい。例えばポリオルガノシロキサンの、第2層2の構成繊維に付着された繊維処理剤S1中の含有量は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
更に、不織布10を吸収性物品に表面シートとして適用した際に、第2層2の親水度が低下しすぎることを防止する観点、つまり、不織布10中の液残りにより排泄液が肌に付着する量が増加することを防止する観点からも、ポリオルガノシロキサンの繊維処理剤S1中の含有量は上記の範囲内とすることが好ましい。
成分(A)としてのポリオルガノシロキサンとしては、市販品を用いることもできる。例えば、信越シリコーン社製の「KF−96H−100万Cs」、東レ・ダウコーニング社製の「SH200 Fluid 1000000Cs」、また2種類のポリオルガノシロキサンを含有するものとしては、信越シリコーン社製の「KM−903」や、東レ・ダウコーニング社製の「BY22−060」を用いることができる。
なお、成分(A)や後述の成分(B)及び成分(C)の如き、繊維処理剤の含有成分の含有量の基準となる「繊維処理剤」は、特に説明しない限り、「不織布に付着している繊維処理剤」であり、不織布に付着させる前の繊維処理剤ではない。繊維処理剤を不織布に付着させる場合は通常、繊維処理剤を水等の適当な溶媒で希釈したものを用いるため、繊維処理剤の含有成分の含有量、例えば成分(A)の繊維処理剤中の含有量は、この希釈した繊維処理剤の全質量を基準としたものとなり得る。
上記の分析方法は、後述する第1層1に用いられる繊維処理剤S2〜S5においても同様に適用される。
(成分(B))
成分(B)であるリン酸エステル型のアニオン界面活性剤は、原綿のカード機通過性やウエブの均一性などの特性を改良し、これによって不織布の生産性の向上と品質低下を防止することを目的として、繊維処理剤S1に配合される。具体的には、アルキルエーテルリン酸エステル、ジアルキルリン酸エステル、アルキルリン酸エステルなどが挙げられる。その中でも、アルキルリン酸エステルが加工性機能の面から好ましい。
アルキルエーテルリン酸エステルとしては、特に制限なく種々のものを用いることができる。例えば、ステアリルエーテルリン酸エステル、ミリスチルエーテルリン酸エステル、ラウリルエーテルリン酸エステル、パルミチルエーテルリン酸エステルなどの飽和の炭素鎖を持つものや、オレイルエーテルリン酸エステル、パルミトレイルエーテルリン酸エステルなどの不飽和の炭素鎖及び、これらの炭素鎖に側鎖を有するものが挙げられる。より好ましくは、炭素鎖が16以上、18以下のモノ若しくはジアルキルリン酸エステルの完全中和又は部分中和塩である。なお、アルキルエーテルリン酸エステルの塩としては、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属、アンモニア、各種アミン類などが挙げられる。アルキルリン酸エステルは、一種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
アルキルリン酸エステルの具体例としては、ステアリルリン酸エステル、ミリスチルリン酸エステル、ラウリルリン酸エステル、パルミチルリン酸エステルなどの飽和の炭素鎖を持つものや、オレイルリン酸エステル、パルミトレイルリン酸エステルなどの不飽和の炭素鎖及び、これらの炭素鎖に側鎖を有するものが挙げられる。より好ましくは、炭素鎖が16以上、18以下のモノ又はジアルキルリン酸エステルの完全中和又は部分中和塩である。なお、アルキルリン酸エステルの塩としては、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属、アンモニア、各種アミン類などが挙げられる。アルキルリン酸エステルは、一種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
第2層2の熱融着繊維に付着された繊維処理剤S1中の前記成分(B)の含有割合は、カード機通過性やウエブの均一性などの観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。また、熱処理に起因するポリオルガノシロキサンによる繊維の疎水化を妨げないようにする観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
(成分(C))
成分(C)であるアルキルヒドロキシスルホベタインは、上述したとおり繊維表面に密に吸着する性質を有する。このため、成分(C)は、繊維径を小さくした繊維に対し、通常の繊維処理剤では得難い高い親水化を実現できる。
アルキルヒドロキシスルホベタインは具体的には、下記の一般式(I)で表される界面活性剤である。
Figure 0006332805
式中、Rは炭素数6以上24以下のアルキル基を示す。その中でも、スルホベタイン基の密な吸着に加えて、繊維表面上で炭化水素基による疎水性相互作用でより密な吸着面を形成させる観点から、前記炭素数は8以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、そして、22以下がより好ましく、18以下がさらに好ましい。
より具体的には、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ミリスチルヒドロキシスルホベタイン、パルミチルヒドロキシスルホベタイン、ステアリルヒドロキシスルホベタインを用いることが出来る。
成分(C)は、上記の剤のいずれか1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
第2層2の熱融着繊維に付着された繊維処理剤S1中の前記成分(C)の含有割合は、好ましくは10質量%未満であり、より好ましくは9質量%未満であり、更に好ましくは8質量%未満である。これにより、前記成分(A)による親水度勾配がより明確に形成されやすく、不織布の低液残り性や低液戻り性を維持させることができる。また、その下限は、繊維に対して十分な親水性を付与する観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。
第2層2の熱融着性繊維に付着された前記繊維処理剤S1における、成分(A)のポリオルガノシロキサンと、成分(C)のアルキルヒドロキシスルホベタインとの含有比は、質量比で、好ましくは1:1.6から1:0.6、より好ましくは1:1.3から1:0.9である。また、前記繊維処理剤S1における、成分(A)のポリオルガノシロキサンと、成分(B)のリン酸エステル型のアニオン界面活性剤のとの含有比は、質量比で、好ましくは1:5から10:1、より好ましくは1:2から3:1である。
第2層2の熱融着性繊維に付着される繊維処理剤S1は、上述した成分(A)、成分(B)及び成分(C)に加えて、他の成分を含んでいても良い。この他の成分としては、アニオン性、カチオン性、両性イオン性及びノニオン性の界面活性剤等を用いることができる。
アニオン性の界面活性剤の例としては、アルキルホスフェートナトリウム塩、アルキルエーテルホスフェートナトリウム塩、ジアルキルホスフェートナトリウム塩、ジアルキルスルホサクシネートナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホネートナトリウム塩、アルキルスルホネートナトリウム塩、アルキルサルフェートナトリウム塩、セカンダリーアルキルサルフェートナトリウム塩等が挙げられる(いずれのアルキルも炭素数6以上22以下、特に8以上22以下が好ましい)。これらは、ナトリウム塩に代えてカリウム塩等の他のアルカリ金属塩を用いることもできる。
カチオン性の界面活性剤の例としては、アルキル(又はアルケニル)トリメチルアンモニウムハライド、ジアルキル(又はアルケニル)ジメチルアンモニウムハライド、アルキル(又はアルケニル)ピリジニウムハライド等が挙げられ、これらの化合物は、炭素数6以上18以下のアルキル基又はアルケニル基を有するものが好ましい。上記ハライド化合物におけるハロゲンとしては、塩素、臭素等が挙げられる。
両性イオン性の界面活性剤の例としては、アルキルベタインが挙げられる。アルキルベタインの中でも、アルキル(炭素数1以上30以下)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1以上30以下)アミドアルキル(炭素数1以上4以下)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1以上30以下)ジヒドロキシアルキル(炭素数1以上30以下)ベタイン、スルホベタイン型両性界面活性剤等のベタイン型両性イオン性界面活性剤や、アラニン型[アルキル(炭素数1以上30以下)アミノプロピオン酸型、アルキル(炭素数1以上30以下)イミノジプロピオン酸型等]両性界面活性剤、アルキルベタイン等のグリシン型[アルキル(炭素数1以上30以下)アミノ酢酸型等]両性界面活性剤などのアミノ酸型両性界面活性剤、アルキル(炭素数1以上30以下)タウリン型などのアミノスルホン酸型両性界面活性剤が挙げられる。中でもアルキル(炭素数1以上30以下)ジメチルベタインが好ましく、炭素数16以上22以下(例えばステアリル)のアルキルジメチルベタインが特に好ましい。
ノニオン性の界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリ(好ましくはn=2以上10以下)グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル(いずれも好ましくは脂肪酸の炭素数8以上60以下)、ポリオキシアルキレン(付加モル数2以上20以下)アルキル(炭素数8以上22以下)アミド、ポリオキシアルキレン(付加モル数2以上20以下)アルキル(炭素数8以上22以下)エーテル、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。中でもグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、グリセリンモノカプリレートがより好ましい。
第2層2に用いられる繊維処理剤S1には、変性シリコーン等の膠着防止剤等の処理剤が添加されていてもよい。
(繊維処理剤で処理される繊維)
第2層2を構成する熱融着性繊維は、繊維処理剤で処理され、少なくとも表面に繊維処理剤が付着したものである。付着する前の熱融着性繊維としては、不織布に用いられる繊維を特に制限なく用いることができる。例えば、熱融着性芯鞘型複合繊維、非熱伸長性繊維、熱収縮繊維、立体捲縮繊維、潜在捲縮繊維、中空繊維等を挙げることができる。本発明においては、熱融着性芯鞘型複合繊維を用いることが好ましい。
繊維処理された熱融着性芯鞘型複合繊維は、繊維処理剤を付着させる前の熱融着性芯鞘型複合繊維と同様に、熱融着性であり且つ芯鞘型の複合繊維である。芯鞘型の複合繊維は、同心の芯鞘型でも、偏心の芯鞘型でも、サイド・バイ・サイド型でも、異型形でも良く、同心の芯鞘型であることが好ましい。
繊維処理剤を付着させる熱融着性繊維としては、前述した繊維処理剤S1中の成分の繊維内部への浸透を阻害しないものを種々採用できる。例えば、特開2010−168715号公報に記載の「ポリエチレン樹脂を含む鞘部及び該ポリエチレン樹脂より融点が高い樹脂成分からなる芯部を有する芯鞘型複合繊維(以下、この繊維を芯鞘型複合繊維Pという)」が挙げられる。芯鞘型複合繊維Pの鞘部を構成するポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられ、密度が0.935g/cm以上0.965g/cm以下である高密度ポリエチレンであることが好ましい。芯鞘型複合繊維Pの鞘部を構成する樹脂成分は、ポリエチレン樹脂単独であることが好ましい。ただし、これに限定されるものではなく、ポリエチレン樹脂と他の樹脂をブレンドしたものであってもよい。ブレンドする他の樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられる。ただし、鞘部を構成する樹脂成分は、鞘部の樹脂成分中の50質量%以上が、特に70質量%以上100質量%以下がポリエチレン樹脂であることが好ましい。また、芯鞘型複合繊維Pの鞘部を構成するポリエチレン樹脂は、結晶子サイズが10nm以上20nm以下であることが好ましく、11.5nm以上18nm以下であることがより好ましい。
芯鞘型複合繊維Pの鞘部は、熱融着性芯鞘型複合繊維に熱融着性を付与するとともに、熱処理時に、前述した繊維処理剤S1を内部に取り込む役割を担う。これにより、前述した繊維処理剤S1中の成分の繊維内部への浸透が促進され、不織布10における親水化勾配がさらに形成されやすくなる。ただし、本発明で用いられる熱融着性繊維は、この芯鞘型複合繊維Pに限定されるものではない。例えば、芯部の樹脂成分に応じて、鞘部がポリプロピレン(PP)や共重合ポリエステルなどであってもよい。
他方、芯部は、熱融着性芯鞘型複合繊維に強度を付与する部分である。芯鞘型複合繊維Pの芯部を構成する樹脂成分としては、鞘部の構成樹脂であるポリエチレン樹脂より融点が高い樹脂成分を特に制限なく用いることができる。芯部を構成する樹脂成分としては、例えば、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂を除く)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂等が挙げられる。更に、ポリアミド系重合体や前述した樹脂成分の2種以上の共重合体なども使用することができる。複数種類の樹脂をブレンドして使用することもでき、その場合、芯部の融点は、融点が最も高い樹脂の融点とする。
繊維処理剤を付着させる熱融着性芯鞘型複合繊維は、芯部を構成する樹脂成分の融点と鞘部を構成する樹脂成分との融点の差(前者−後者)が、20℃以上であることが、不織布の製造が容易となることから好ましく、また150℃以下であることが好ましい。芯部を構成する樹脂成分が複数種類の樹脂のブレンドである場合の融点は、融点が最も高い樹脂の融点とする。
繊維処理剤を付着させる熱融着性繊維は、加熱によってその長さが伸びる繊維(以下、熱伸長性繊維ともいう。)であることが好ましい。熱伸長性繊維としては、例えば加熱により樹脂の結晶状態が変化して自発的に伸びる繊維が挙げられる。熱伸長性繊維は、不織布中において、加熱によってその長さが伸長した状態もしくは加熱によって伸長可能な状態、又は前記両方の状態で存在している。熱伸長性繊維は、加熱時に、表面の繊維処理剤が内部に取り込まれやすく、繊維やそれを用いて製造した不織布等に、加熱処理によって親水度の大きく異なる複数の部分を形成し易くなる。
好ましい熱伸長性繊維は、芯部を構成する第1樹脂成分と、鞘部を構成する第2樹脂成分とを有する複合繊維(以下、熱伸長性複合繊維ともいう。)である。第2樹脂成分は、第1樹脂成分より低い融点又は軟化点を有し、繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して存在している。第1樹脂成分は該繊維の熱伸長性を発現する成分であり、第2樹脂成分は熱融着性を発現する成分である。
第1樹脂成分及び第2樹脂成分の融点は、示差走査型熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製DSC6200)を用いた次の方法により測定される温度と定義する。すなわち、細かく裁断した繊維試料(サンプル重量2mg)の熱分析を昇温速度10℃/minで行い、各樹脂の融解ピーク温度を測定し、その融解ピーク温度で定義される。第2樹脂成分の融点がこの方法で明確に測定できない場合、その樹脂を「融点を持たない樹脂」と定義する。この場合、第2樹脂成分の分子の流動が始まる温度として、繊維の融着点強度が計測できる程度に第2樹脂成分が融着する温度を軟化点とし、これを融点の代わりに用いる。
熱伸長性複合繊維における第1樹脂成分の好ましい配向指数は、用いる樹脂により自ずと異なる。例えばポリプロピレン樹脂の場合は、配向指数が60%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下であり、更に好ましくは25%以下である。第1樹脂成分がポリエステルの場合は、配向指数が25%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下であり、更に好ましくは10%以下である。一方、第2樹脂成分は、その配向指数が5%以上であることが好ましく、より好ましくは15%以上であり、更に好ましくは30%以上である。配向指数は、繊維を構成する樹脂の高分子鎖の配向の程度の指標となるものである。そして、第1樹脂成分及び第2樹脂成分の配向指数がそれぞれ前記の値であることによって、熱伸長性複合繊維は、加熱によって伸長するようになる。
第1樹脂成分及び第2樹脂成分の配向指数は、特開2010−168715号公報の段落〔0027〕〜〔0029〕に記載の方法によって求められる。また、熱伸長性複合繊維における各樹脂成分が前記のような配向指数を達成する方法は、特開2010−168715号公報の段落〔0033〕〜〔0036〕に記載されている。
熱伸長性複合繊維は、第1樹脂成分の融点よりも低い温度において熱によって伸長可能になっている。そして熱伸長性複合繊維は、第2樹脂成分の融点(融点を持たない樹脂の場合は軟化点)より10℃高い温度での熱伸長率が0.5%以上20%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以上20%以下、更に好ましくは5.0%以上20%以下である。このような熱伸長率の繊維を含む不織布は、該繊維の伸長によって嵩高くなり、あるいは立体的な外観を呈する。繊維の熱伸長率は、特開2010−168715号公報の段落〔0031〕〜〔0032〕に記載の方法によって求められる。
熱伸長性複合繊維における第1樹脂成分と第2樹脂成分との比質量比は、質量比で、10:90から90:10、特に20:80から80:20、とりわけ50:50から70:30であることが好ましい。熱伸長性複合繊維の繊維長は、不織布の製造方法に応じて適切な長さのものが用いられる。不織布を例えば後述するようにカード法で製造する場合には、繊維長を30mmから70mm程度とすることが好ましい。
熱伸長性複合繊維の繊維径は、不織布の具体的な用途に応じ適切に選択される。不織布を吸収性物品の表面シート等の吸収性物品の構成部材として用いる場合には、10μm以上35μm以下、特に15μm以上30μm以下のものを用いることが好ましい。なお熱伸長性複合繊維は、伸長によってその繊維径が小さくなるところ、前記の繊維径とは、不織布を実際に使用するときの繊維径のことである。
熱伸長性複合繊維としては、上述の熱伸長性複合繊維のほかに、特許第4131852号公報、特開2005−350836号公報、特開2007−303035号公報、特開2007−204899号公報、特開2007−204901号公報及び特開2007−204902号公報等に記載の繊維を用いることもできる。
熱融着性繊維は酸化チタンを含んでいても良い。
酸化チタンは、例えば粒径が0.1μm以上2μm以下の範囲であることが好ましく、繊維紡糸工程で樹脂に含有させて紡糸することができる。
酸化チタンを含有させた繊維を用いることにより、不織布は白色度が高まり、隠蔽性が高くなる。特に、酸化チタンを含有させた繊維を用いた不織布を表面材等に使用した吸収性物品では、吸収体に吸収した経血や尿等の体液の隠蔽性が高く、使用後の外観からくる視覚的ドライ感が得られる。
酸化チタンは任意の含有量で加えることができる。隠蔽性を高める観点から、熱融着性繊維に含有させる酸化チタンの量は、繊維の全質量に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、生産性、繊維強伸度物性、不織布製造工程でのカード工程性、後加工工程でのカット性の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下である。
上記の熱伸長性繊維は、後述する熱風処理時に熱伸長して繊維間の隙間を広げ、嵩高い繊維層を形成できる。また、熱伸長性繊維は、熱風があたる部分で、繊維処理剤による親水度を低下させる。この特性を考慮すると、前記熱伸長性繊維は、特に、第1層1の構成繊維として多く第1面10A側に存在することが好ましい。一方、第2層2では、前記熱伸長性繊維を含まないことが好ましい。該熱伸長性繊維を含んでも、第2層2の構成繊維全体の質量に対して50質量%以下であることが好ましく、該熱伸長性繊維は第2層2の第1面2A側に偏在することが好ましい。これにより、不織布10は、第1面10A側が嵩高く、第2面10B側よりも疎水度の高いものとなる。不織布10は、第1層1を肌面に向けた表面シートとして吸収性物品に組み入れられると、液を速やかに第2層2へと引き継いで下層の吸収体に移行させ、肌に液を残しにくくする。
(第1層1の構成繊維)
一方、第1層1は、用途に合わせて種々の構成とすることができる。例えば、第1層1を肌に触れる側の層として吸収性物品の表面シートに用いる場合、液透過性及び液残り防止性に優れ、肌触りの柔らかい構成が好ましい。第2層2と同様に熱融着性繊維を含有して構成されることが好ましく、該熱融着性繊維は任意の繊維処理剤が付着したものであることが好ましい。該繊維処理剤の好ましい態様の具体例については後述する。
さらに第1層1は、荷重後の熱風による嵩回復性に優れ、繊維間の隙間を保って、上記の熱伸長性繊維による作用を持続させる観点から、熱伸長性繊維と非熱伸長性の熱融着性繊維とで混綿されていることが好ましい。より詳細には、加熱によってその長さが伸びる熱伸長性繊維と、融点の異なる2成分を含みかつ延伸処理されてなり加熱によってその長さが実質的に伸びない非熱伸長性の熱融着性繊維とで混綿されていることが好ましい。第1層1の構成繊維として、熱伸長性繊維と非熱伸長性の熱融着性繊維とを併用することで、第1層1に熱風を吹き付けたときの嵩の回復性が非常に良好になる。
上記の熱伸長性繊維と非熱伸長性の熱融着性繊維との組み合わせによる嵩高さ及び荷重後の熱風による嵩高回復性の特徴を生かした実施態様については、図4を参照して後述する。
前記熱伸長性繊維の具体例は前述したとおりである。これと組み合わされる非熱伸長性の熱融着性繊維としては、高融点成分と低融点成分とを含み、低融点成分が繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して存在している二成分系の複合繊維が好ましい。非熱伸長性の熱融着性繊維の形態には芯鞘型やサイド・バイ・サイド型などの様々な形態があり、いずれの形態であっても用いることができる。非熱伸長性の熱融着性繊維は原料の段階で延伸処理が施されていることが好ましい。ここで言う延伸処理とは、未延伸糸に対して通常行われる延伸倍率2倍から6倍程度の延伸操作のことである。
熱伸長性繊維と非熱伸長性の熱融着性繊維との混合比は、第1層1全体の親水性・疎水性に影響を与えるファクターの一つである。また第1層1に熱風を吹き付けたときの嵩の回復性しやすさのファクターの一つでもある。これらの観点から、第1層1中に含まれる熱伸長性繊維と熱融着性複合繊維との混合比を、質量比で10/90から90/10、特に30/70から70/30、とりわけ40/60から60/40に設定することが好ましい。これにより熱風で不織布の嵩を回復させることがより容易になり、それぞれの繊維を単独で用いるよりも、肌触りとドライ性の良好な不織布とすることができる。
第1層1において、熱伸長性繊維どうしの交点、非熱伸長性の熱融着性繊維どうしの交点、及び熱伸長性繊維と非熱伸長性の熱融着性繊維との交点がそれぞれエアスルー方式で熱融着していることが好ましい。これによって、第1層1に熱風を吹き付けたときの嵩の回復性が顕著になる。また、第1層1の表面における毛羽立ちが起こりにくくなる。繊維の交点が熱融着しているか否かは、第1層1を走査型電子顕微鏡観察することで判断する。
非熱伸長性の熱融着性繊維の融着温度は、熱伸長性繊維の融着温度に近いことが好ましい。それによって、熱伸長性繊維どうし、非熱伸長性の熱融着性繊維どうし、及び熱伸長性繊維と非熱伸長性の熱融着性繊維とを首尾良く融着することができる。この観点から、非熱伸長性の熱融着性繊維の融着温度をT1とし、熱伸長性繊維の融着温度をT2とした場合、T1とT2の温度差が20℃以内であることが好ましい。なお、繊維の融着温度を厳密に測定することは容易でないので、融着に関与する樹脂(すなわち低融点の樹脂)の融点をもって融着温度に代えることとする。融点の測定方法は前述のとおりである。
熱伸長性繊維と非熱伸長性の熱融着性繊維との融着を首尾良く行う観点からは、非熱伸長性の熱融着性繊維における低融点成分と、熱伸長性繊維における第2樹脂成分とが同種の樹脂であるか、又は異種の場合には相溶性を有することが好ましい。
<第1層1に用いられる繊維処理剤S2>
第1層1において、親水度の勾配をより明確に形成する観点から、構成繊維に付着させる繊維処理剤は、前述の(A)ポリオルガノシロキサンを含有することが好ましい(第1層1に用いられるこの繊維処理剤を、符号S2を付していうことがある。)。該成分(A)の、後述の熱風吹き付け処理時の作用により第1層1の親水度を部分的に低下させて、第1層1の第1面1A側から第2面1B側へ向かって親水度が高くなるように親水度勾配を形成することができる。また、前述のとおり、第2層2においても前述の(A)ポリオルガノシロキサンを熱融着性繊維に付着させており、該成分(A)の作用により第2層2の第1面2A側の親水度を低下させて、第2層2の第1面2A側から第2面側2Bへ向かって親水度が高くされる。この2層の親水度勾配により、不織布10全体として、厚み方向に親水度勾配の種々の態様を形成することができる。その具体的態様については後述する。
なお、成分(A)の含有量は、第2層2における成分(A)の含有量の範囲内と同様にすることが好ましい。この場合、成分(A)とともに含有される成分は、種々のものを採用でき、例えば第2層2の繊維処理剤S1で「他の成分」として示したものなどが挙げられる。
<第1層1に用いられる繊維処理剤S3>
さらに第1層1において、親水度の勾配をより明確に形成する観点から、構成繊維に付着させる繊維処理剤は、次の成分を含有したものであることが好ましい。
すなわち、前記繊維処理剤が、第2層2に用いられる(A)ポリオルガノシロキサン及び(B)リン酸エステル型のアニオン界面活性剤に加え、(D)下記の一般式(II)で表されるアニオン界面活性剤を含むことが好ましい(第1層1に用いられるこの繊維処理剤を、符号S3を付していうことがある。)。これにより、第1層1の第1面1Aから第2面1Bへ向かって親水度が高くなる親水度勾配がより明確に形成されやすくなる。
Figure 0006332805
式中、Zはエステル基、アミド基、アミン基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖を表わす。Zは、好ましくは炭素数1から8の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖であり、より好ましくは炭素数1から4の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖である。
及びRはそれぞれ独立に、エステル基、アミド基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数2以上16以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表わす。好ましくは炭素数4から14の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖であり、より好ましくは炭素数6から12の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖である。
Xは−SOM、−OSOM又は−COOMを表わし、MはH、Na、K、Mg、Ca又はアンモニウムを表わす。
成分(D)は、成分(B)であるアルキルリン酸エステルは含まない成分を指す。また、成分(D)は、一種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
一般式(II)中のXが−SOM、すなわち親水基がスルホ基又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホン酸又はそれらの塩を挙げることができる。ジアルキルスルホン酸の具体例としては、ジオクタデシルスルホコハク酸、ジデシルスルホコハク酸、ジトリデシルスルホコハク酸、ジ2‐エチルヘキシルスルホコハク酸などの、ジアルキルスルホコハク酸、ジアルキルスルホグルタル酸などのジカルボン酸をエステル化し、ジエステルのアルファ位をスルホン化した化合物や、2−スルホテトラデカン酸1−エチルエステル(又はアミド)ナトリウム塩や、2−スルホヘキサデカン酸1−エチルエステル(又はアミド)ナトリウム塩などの飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸エステル(又はアミド)のα位をスルホン化したアルファスルホ脂肪酸アルキルエステル(又はアミド)や、炭化水素鎖の内部オレフィンや不飽和脂肪酸の内部オレフィンをスルホン化することで得られるジアルキルアルケンスルホン酸などを挙げることができる。ジアルキルスルホン酸の2鎖のアルキル基それぞれの炭素数は、4以上14以下、特に、6以上10以下であることが好ましい。
親水基がスルホ基又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、より具体的には下記のアニオン界面活性剤を挙げることができる。
Figure 0006332805
Figure 0006332805
一般式(II)中のXが−OSOM、すなわち親水基がサルフェート基又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、ジアルキル硫酸エステルを挙げることができる。その具体例としては、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウム塩や、2−ヘキシルデシル硫酸ナトリウム塩などの分岐鎖を有するアルコールを硫酸化した化合物や、硫酸ポリオキシエチレン2−ヘキシルデシルや硫酸ポリオキシエチレン2−ヘキシルデシルなどの分岐鎖を有するアルコールと硫酸基の間にPOE鎖を導入したような化合物や、12−サルフェートステアリン酸1−メチルエステル(又はアミド)3−サルフェートへキサン酸1−メチルエステル(又はアミド)などのヒドロキシ脂肪酸エステル(又はアミド)を硫酸化した化合物などを挙げることができる。
親水基がサルフェート基又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、より具体的には下記のアニオン界面活性剤を挙げることができる。
Figure 0006332805
一般式(II)中のXが−COOM、すなわち親水基がカルボキシ基又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、ジアルキルカルボン酸を挙げることができる。その具体例としては、11−エトキシヘプタデカンカルボン酸ナトリウム塩や2−エトキシペンタカルボン酸ナトリウム塩などのヒドロキシ脂肪酸のヒドロキシ部分をアルコキシ化し、脂肪酸部分をナトリウム化した化合物や、サルコシンやグリシンなどのアミノ酸のアミノ基にアルコキシ化したヒドロキシ脂肪酸クロリドを反応させ、アミノ酸部のカルボン酸をナトリウム化させた化合物や、アルギニン酸のアミノ基に脂肪酸クロリドを反応させて得られる化合物などを挙げることができる。
親水基がカルボキシ基又はその塩である前記アニオン界面活性剤としては、より具体的には下記のアニオン界面活性剤を挙げることができる。
Figure 0006332805
本発明においては、成分(D)と成分(A)とが配合された繊維処理剤S3を用いることにより、この繊維処理剤S3で処理された熱融着性繊維は、熱処理により親水度が低下しやすい繊維となる。これは、第2層2について用いられた成分(A)と成分(C)とが配合された繊維処理剤S1よりも、親水度が低下しやすい。
その理由は、前述したポリオルガノシロキサンが、特に2鎖以上のアルキル鎖を有するアニオン界面活性剤の繊維内部への浸透をより促進するためである。これにより繊維表面の親水度が熱処理によって低下しやすい。これは、ポリオルガノシロキサンのポリシロキサン鎖と、アニオン界面活性剤の持つ、アルキル鎖が不相溶なため、より馴染みやすい疎水性の熱融着性繊維内部へ、繊維が加熱溶融した際に、アニオン界面活性剤が浸透するために起こると推定される。また、一般式(II)で表されるアニオン界面活性剤は、アルキル基が嵩高で、親水基を包み込むようにして、疎水性の熱融着性繊維内部へ浸透していくことが可能である。このように、アルキル鎖の違いにより、成分(D)と成分(A)との組み合わせは、成分(C)と成分(A)の組み合わせよりも繊維表面の親水度が熱処理によって低下しやすい。
繊維処理剤S3中の前記成分(D)の含有割合は、熱処理による親水度の変化を大きくする観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。また、親水性が高くなりすぎると、液を持ちやすくなりドライ性を損なう観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは13質量%以下である。また、前記成分(D)の前記含有割合は、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上13質量%以下である。
また、成分(A)及び成分(B)の含有量はそれぞれ、前述の第2層2について述べた成分(A)及び成分(B)それぞれの含有量の範囲とすることが好ましい。
特に、不織布10を、第1層1側を肌側に向けた表面シートとする場合、第1面10A上で液を吸収させやすくする観点から、成分(A)の含有量は上記の範囲内とすることが好ましい。さらに、液流れ距離が長くなり、排泄液が肌に付着する量が増加することを防止する観点からも、成分(A)の繊維処理剤S3中の含有量は上記の範囲内とすることが好ましい。
繊維処理剤S3における成分(A)のポリオルガノシロキサンと、成分(D)のアニオン界面活性剤との含有比は、質量比で、好ましくは1:3から4:1、より好ましくは1:2から3:1である。また、繊維処理剤S3における成分(A)のポリオルガノシロキサンと、成分(B)のアルキルリン酸エステルとの含有比は、質量比で、好ましくは1:5から10:1、より好ましくは1:2から3:1である。
<第1層1に用いられる繊維処理剤S4>
さらに第1層1において、親水度の勾配をより明確に形成する観点から、構成繊維に付着させる繊維処理剤が、前述の成分(A)及び成分(B)に、(E)ポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステルを加えたものを含むことが好ましい(第1層1に用いられるこの繊維処理剤を、符号S4を付していうことがある。)。
成分(E)であるポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステルは、前述の成分(D)よりもさらに熱融着性繊維内に浸透しやすい。そのため、成分(A)、成分(B)及び成分(E)の組み合わせが、成分(A)、成分(B)及び成分(D)の組み合わせよりも、不織布10に親水度勾配をより明確に形成することができる。これにより、第1層の第1面1A側から第2面1B側へ向かって親水度が高くなる親水度勾配がより明確に形成されやすくなる。
〔ポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステル:成分(E)〕
成分(E)であるポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステルは、不織布製造時における熱処理による親水度の低下をより顕著なものにすること、即ち、不織布中の所望の部分の親水性を顕著に低下させることができる、ノニオン界面活性剤の一種である。成分(E)は、多価アルコールの水酸基を脂肪酸でエステル化した多価アルコール脂肪酸エステルの一種であり、この多価アルコール脂肪酸エステルにアルキレンオキシドを付加させた変性物である。成分(E)は、常法に従って製造することができ、例えば特開2007−91852号公報に従って製造することができる。
成分(E)(あるいは多価アルコール脂肪酸エステル)の原料の1つである多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200以上11000以下)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(分子量250以上4000以下)、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン(重合度2以上30以下)、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、イノシトール、ソルビタン、ソルバイド、ショ糖、トレハロース、エルロース、ラクトシュクロース、シクロデキストリン、マルチトール、ラクチトール、パラチニット、パニトール、還元水飴等が挙げられる。好ましくは、ポリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ソルバイド、ショ糖であり、特に好ましくは、ソルビトール、ソルビタン、ソルバイドである。
成分(E)(あるいは多価アルコール脂肪酸エステル)の原料の他の1つである脂肪酸としては、例えば、炭素数6以上22以下の飽和又は不飽和の脂肪酸、これらを主成分とする混合脂肪酸、あるいは炭素数8以上36以下の分岐鎖脂肪酸が挙げられる。脂肪酸は、部分的に水酸基を含んでいても良い。具体的には、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、cis−9−オクタデセン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、2−エチルヘキシル酸、イソステアリン酸等が挙げられ、天然由来の混合脂肪酸であるヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸を用いてもよい、好ましくは炭素数8以上18以下の脂肪酸、特に好ましくは、ドデカン酸、オクタデカン酸、cis−9−オクタデセン酸である。
成分(E)を構成する多価アルコール脂肪酸エステルは、その主成分が、疎水鎖を大きくして疎水性を高めるときに、分子の形状を直線状に大きくするのでなく、3次元的に大きくすることで、繊維中へ取り込まれやすい形状にさせる観点から、3価以上のアルコールのエステル化物で且つアルコール成分のエステル化率が90%以上であるものが好ましい。ここで、主成分は、多価アルコール脂肪酸エステルの中で最も多い成分のことであり、多価アルコール脂肪酸エステルの全質量に対して50質量%以上含まれていることが好ましい。例えば、3価のアルコールとしてはグリセリン、4価のアルコールとしてはエリスリトール、5価のアルコールとしてはキシリトール等が挙げられる。
成分(E)を構成する多価アルコール脂肪酸エステルとして特に好ましいものは、ヒマシ油(硬化ヒマシ油)である。ヒマシ油は、ドウダイグサ科の植物であるヒマの種子を給源とするグリセリン脂肪酸エステルであり、構成脂肪酸の約90%がリシノレイン酸である。つまり、成分(E)としては、グリセリンとリシノレイン酸を主体とする脂肪酸とのエステル油が好ましい。
成分(E)において、多価アルコール脂肪酸エステルに付加するアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。成分(E)として特に好ましいものは、多価アルコール脂肪酸エステルに付加するアルキレンオキシドがエチレンオキシドである、ポリオキシエチレン(POE)変性多価アルコール脂肪酸エステルであり、とりわけ好ましいものは、多価アルコール脂肪酸エステルがヒマシ油(硬化ヒマシ油)である、POE変性ヒマシ油(POE変性硬化ヒマシ油)である。
成分(E)において、多価アルコール脂肪酸エステルに対するアルキレンオキシドの付加モル数は、不織布の液吸収性能の向上(液残り量のや液流れ量の低減等)の観点から、20モル超えることが好ましく、40モル以上が特に好ましい。但し、アルキレンオキシドの付加モル数が多すぎると、不織布の親水度が高まり過ぎてしまい、例えば、該不織布を吸収性物品において表面シートとして用いた場合に、液残り量の増大に繋がるおそれがあることから、該付加モル数は、好ましくは80モル以下、さらに好ましくは60モル以下である。
繊維処理剤中S4の成分(E)の含有割合は、不織布の親水度を高めて、不織布の製造時における熱処理による親水性の低下の効果を顕著に発現させる観点から、繊維処理剤の全質量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、強親水化による液残り量の増加を抑制する観点から、繊維処理剤の全質量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
成分(A)のポリオルガノシロキサンと、成分(E)のポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステルとの含有比は、質量比で、好ましくは1:2から3:1、より好ましくは1:1から2:1である。
また、成分(A)のポリオルガノシロキサンと、成分(B)のアルキルリン酸エステルとの含有比は、質量比で、好ましくは1:5から10:1、より好ましくは1:2から3:1である。
成分(A)及び成分(B)それぞれの含有量は、前述の第2層1について述べた成分(A)及び成分(B)それぞれの含有量の範囲とすることが好ましい。
<第1層1に用いられる繊維処理剤S5>
さらに第1層1において、親水度の勾配をより明確に形成する観点から、構成繊維に付着させる繊維処理剤が、前述の成分(A)、成分(B)、成分(D)及び成分(E)を含むことが好ましい(第1層1に用いられるこの繊維処理剤を、符号S5を付していうことがある。)。
繊維処理剤S5中の成分(D)と成分(E)の含有比は、質量比で、好ましくは4:1から1:4、より好ましくは2:1から1:2である。
上記の含有割合において、繊維処理剤S5中の成分(D)の含有割合は、熱処理による親水度の変化を大きくする観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。また、親水性が高くなりすぎると、液を持ちやすくなりドライ性を損なう観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。また、前記成分(E)の前記含有割合は、好ましくは5質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上15質量%以下である。
成分(A)及び成分(B)それぞれの含有量は、前述の第2層2について述べた成分(A)及び成分(B)それぞれの含有量の範囲とすることが好ましい。
繊維処理剤S5における成分(A)のポリオルガノシロキサンと、成分(D)である、下記の一般式(II)で表わされるアニオン界面活性剤との含有比は、質量比で、好ましくは1:3から4:1、より好ましくは1:2から3:1である。繊維処理剤S5における成分(A)のポリオルガノシロキサンと、成分(E)のポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステルとの含有比は、質量比で、好ましくは1:2から3:1、より好ましくは1:1から2:1である。
Figure 0006332805
式中、Zはエステル基、アミド基、アミン基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖を表わす。R及びRはそれぞれ独立に、エステル基、アミド基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数2以上16以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表わす。Xは―SOM、―OSOM又は―COOMを表わし、MはH、Na、K、Mg、Ca又はアンモニウムを表わす。
なお、前記Z、R、R及びXのより好ましい範囲は、前述の繊維処理剤S3において述べたものと同様のものとすることができる。
また、繊維処理剤S5における成分(A)のポリオルガノシロキサンと、成分(B)のアルキルリン酸エステルとの含有比は、質量比で、好ましくは1:5から10:1、より好ましくは1:2から3:1である。
上記の繊維処理剤S2、S3、S4及びS5においては、前述した含有成分に加え、第2層2の繊維処理剤S1で「他の成分」といて示したものを含んでもよい。
第1層1における繊維処理剤S2、S3、S4及びS5のいずれかの熱融着繊維への付着量(含有量)は、該繊維処理剤を除く熱融着性繊維の全質量に対する割合として、親水性を高める観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。また、その上限は、不織布加工機の汚染性を低減する観点から、1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。例えば、繊維処理剤S2、S3、S4及びS5のいずれかの熱融着繊維への付着量は、該繊維処理剤を除く熱融着性繊維の全質量に対する割合として、0.1質量%以上1.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以上1.0質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上0.5質量%以下がさらに好ましい。
不織布10の第1層1及び第2層2において、前述の繊維処理剤を繊維の表面に付着させる方法としては、各種公知の方法を特に制限なく採用することができる。例えば、スプレーによる塗布、スロットコーターによる塗布、ロール転写による塗布、親水性油剤への浸漬、等が挙げられる。これらの処理は、ウエブ化する前の繊維に対して行っても良いし、繊維を各種の方法でウエブ化した後に行っても良い。繊維処理剤が表面に付着した繊維は、例えば、熱風送風式の乾燥機により、エチレン樹脂の融点より十分に低い温度(例えば120℃以下)で乾燥される。
(親水度勾配の具体例)
不織布10の親水度勾配の具体例について、図3を参照して以下に説明する。ここでの不織布10は、エアスルー製法により得られた不織布として説明する。
不織布10は、第1層1と第2層2とを有している。第1層1と第2層2とは直接に接しており、両層間に介在する他の層は存在していない。第1層1及び第2層2は、それぞれ単一の繊維層であり、それ以上に細分化された複数層の積層体から構成されたものではない。第1層1と第2層2とはそれらの対向面の全域において結合しており、両層1,2間に空隙は生じていない。なお図3においては、第1層1と第2層2とが同じ厚さで表されているが、これは各層1,2を模式的に示したからであり、実際の不織布においては、第1層1と第2層2の厚さは異なっていてもよい。
第1層1及び第2層2はいずれもランダムに堆積された繊維から構成されている。第1層1を構成する繊維は、繊維の交点においてエアスルー方式で融着している。第2層2についても同様である。また、第1層1と第2層2との境界においては、第1層1を構成する繊維と、第2層2を構成する繊維との交点がエアスルー方式で融着している。付加的に、第1層1を構成する繊維は、エアスルー方式の融着以外の手段で結合していてもよい。例えば熱エンボス加工による融着、高圧ジェット流による絡合、接着剤による接着などの手段で付加的に結合していてもよい。第2層2についても同様であり、また第1層1と第2層2との境界においても同様である。
不織布10においては、第1層1をその厚さ方向に仮想的に二等分し、二等分した2つの部位のうち、第2層2から遠い側の部位を第1層第1部位11とし、第2層に近い側の部位を第1層第2部位12とする。また、第2層2をその厚さ方向に仮想的に二等分し、二等分した2つの部位のうち、第1層1に近い側の部位を第2層第1部位21とし、第1層1から遠い側の部位を第2層第2部位22とする。なお、第1層1及び第2層2はそれぞれ、単一層からなるので、第1層第1部位11と第1層第2部位12との間、第2層第1部位21と第2層第2部位22と間に境界は存在しない。
上記の区分において、不織布10が、2層積層状態で第1面10A側から熱布吹き付け処理して得られたものである場合、各部位の親水度を比較すると次のことが言える。
(11)第1層1において、第1層第1部位11よりも第1層第2部位12の方が、親水度が高い(第1層第1部位11<第1層第2部位12)。
(12)第2層2において、第2層第1部位21よりも第2層第2部位22の方が、親水度が高い(第2層第1部位21<第2層第2部位22)。
前記(11)及び(12)のような厚み方向の親水度勾配に起因して、不織布10は、第1面10A側に液が供給されると、その液は素早く不織布中を透過するようになる。したがって、第1面10A側の表面において、液が該表面を伝って流れにくくなる。その結果、液が供給された面(受液面)である第1面10A側の表面に液が残留しにくくなる。これらの顕著な効果は、不織布10を、第1面10A側を肌対向面として、吸収性物品の表面シートに適用した場合に特に顕著なものとなる。
前記(11)の親水度の勾配を設けるためには、前述したように、第1層1において、繊維処理剤S2〜S5のいずれかを付着させた熱融着性繊維が含まれることが好ましい。また、熱伸長性繊維と非熱伸長性の熱融着性繊維の混綿であることがより好ましい。一方、前記(12)の親水度の勾配を設けるためには、前述したように、第2層2において繊維処理剤S1を付着させた熱融着性繊維が含まれることが好ましい。同時に、後述のエアスルー法における熱風の吹き付け条件、すなわち熱風の温度や風量を適切に制御することが好ましい。
この場合、第1層1の親水度の「勾配」は、前述したとおり、第1部位11から第2部位12に向けて親水度が漸次高くなっていてもよく、あるいは、第1部位11から第2部位12に向けて親水度が段階的に高くなっていてもよい。同様に、第2層2の親水度の「勾配」は、前述したとおり、第1部位21から第2部位22に向けて親水度が漸次高くなっていてもよく、あるいは、第1部位21から第2部位22に向けて親水度が段階的に高くなっていてもよい。第1層1及び第2層2の何れの場合も、親水度が漸次高くなっていることが好ましい。
不織布における親水度は、構成繊維の接触角の相対比較によって示すことができる。接触角の値が小さいことは親水度が高いことを示し、接触角の値が大きいことは親水度が低いことを示す。
不織布10の第1層1においては、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角が70度以上、特に72度以上であることが好ましい。また85度以下、特に82度以下であることが好ましい。例えば第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角は、70度以上85度以下であることが好ましく、72度以上82度以下であることが好ましい。
一方、第1層第2部位12に含まれる繊維に対する水の接触角は、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角よりも小さいことを条件として、60度以上、特に65度以上であることが好ましい。また80度以下、特に75度以下であることが好ましい。例えば第1層第2部位12に含まれる繊維に対する水の接触角は、60度以上80度以下であることが好ましく、65度以上75度以下であることが好ましい。
不織布10の第2層2においては、第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角が50度以上、特に55度以上であることが好ましい。また78度以下、特に73度以下であることが好ましい。例えば第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角は、50度以上78度以下であることが好ましく、55度以上73度以下であることが好ましい。
一方、第2層第2部位22に含まれる繊維に対する水の接触角は、第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角よりも小さいことを条件として、20度以上、特に30度以上であることが好ましい。また75度以下、特に70度以下であることが好ましい。例えば第2層第2部位22に含まれる繊維に対する水の接触角は、20度以上75度以下であることが好ましく、30度以上70度以下であることが好ましい。
(接触角の測定方法)
不織布における厚み方向の所定の部位から繊維を取り出し、その繊維に対する水の接触角を測定する。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用いる。接触角の測定には蒸留水を用いる。
インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC−25)から吐出される液量を20ピコリットルに設定して、水滴を、繊維の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが好ましい。本測定では、17ms毎に画像が録画される。
録画された映像において、不織布から取り出した繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行う。これに基づいて、水滴の空気に触れる面と繊維のなす角を算出し、接触角とする。不織布から取り出した繊維は、繊維長1mmに裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。該繊維1本につき異なる2箇所の接触角を測定する。N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を接触角と定義する。
第1層1と第2層2との間の親水度の関係は、第2層2における繊維径や繊維処理剤の成分(A)及び成分(C)の付着量、第1層1における繊維径や繊維処理剤の成分(A)の付着量、成分(A)及び成分(D)の付着量、成分(A)及び成分(E)の付着量、又は、成分(A)、成分(D)及び成分(E)の付着量によって変わる。また、後述のエアスルー法における熱風の吹き付け条件、すなわち熱風の温度や風量などにより変わる。これらの条件を適宜調整することで、例えば、次のような関係の構成とすることができる。
(13)第1層第2部位12よりも第2層第1部位21の方が、親水度が高い。
(14)第1層第1部位11よりも第2層第1部位21の方が、親水度が高い。
(15)第2層第1部位21よりも第1層第2部位12の方が、親水度が高い。
(16)第1層第2部位12よりも第2層第2部位22の方が、親水度が高い。
(17)第2層第1部位21よりも第1層第1部位11の方が、親水度が高い。
(18)第2層第2部位22よりも第1層第2部位12の方が、親水度が高い。
前記(11)及び(12)に(13)の関係が加わると、第1層第1部位11<第1層第2部位12<第2層第1部位21<第2層第2部位22となる。このような親水度勾配があると、不織布10は、第1面10A側から第2面10B側へ繋がる親水度勾配ができ、第1面10A側に供給された液は、第2面10Bへと素早く導かれる。すなわち液を引き込む力が強まり、頂部の液が下層に引き込まれ、見た目の白さが高まる。
この場合、第1層第1部位11、第1層第2部位12、第2層第1部位21及び第2層第2部位22の好ましい接触角の範囲は、前述と同様の範囲とすることが好ましい。
第1層1から第2層2への液の透過を一層円滑に行う観点から、第1層第2部位12に含まれる繊維に対する水の接触角と、第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角との差(第1層第2部位12−第2層第1部位21)は、1度以上、特に10度以上であることが好ましく、30度以下、特に25度以下であることが好ましい。例えば前記の差は、1度以上30度以下であることが好ましく、10度以上25度以下であることが更に好ましい。
前記と同様の観点から、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角と、第2層第2部位22に含まれる繊維に対する水の接触角との差(第1層第1部位11−第2層第2部位22)は、上述した第1層第2部位12−第2層第1部位21の接触角の差よりも大きいことを条件として、2度以上、特に10度以上であることが好ましく、65度以下、特に50度以下であることが好ましい。例えば前記の差は、2度以上65度以下であることが好ましく、10度以上50度以下であることが更に好ましい。
前記(11)及び(12)に(14)から(16)の関係が加わると、第1層第1部位11<第2層第1部位21<第1層第2部位12<第2層第2部位22となる。この場合、第1層10側から第2層20側に向かうに連れて親水度が順次高くなっているのではなく、第1層第2部位12と第2層第1部位21との間で親水度の関係が逆転している。
このような親水度の関係を有する不織布10は、これまで説明してきた効果を奏することに加え次のような作用効果を奏する。すなわち、第1層第2部位12と第2層第1部位21との間で親水度の関係が逆転していることに起因して、不織布10を一旦透過した液が逆戻りしづらいという効果を奏する。さらに不織布10の平面方向に液が拡散しながら該不織布10を液が透過するという効果も奏する。液が逆戻りしづらいという効果は、不織布10を吸収性物品の表面シートとして用いた場合に、吸収体に一旦吸収された液が、着用者の体圧を受けても逆戻りしづらくなるという点で有利である。また、不織布10の平面方向に液が拡散しながら透過するという効果は、不織布10を吸収性物品の表面シートとして用いた場合に、吸収体の平面方向のすべての部位において液を吸収させることができ、吸収体の吸収性能を有効活用でき、結果として液残りを低減することが可能となり有利である。
この場合の第1層1においては、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角が70度以上、特に72度以上であることが好ましい。また85度以下、特に82度以下であることが好ましい。例えば第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角は、70度以上85度以下であることが好ましく、72度以上82度以下であることが好ましい。
一方、第1層第2部位12に含まれる繊維に対する水の接触角は、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角よりも小さいことを条件として、50度以上、特に55度以上であることが好ましい。また75度以下、特に70度以下であることが好ましい。例えば第1層第2部位12に含まれる繊維に対する水の接触角は、50度以上75度以下であることが好ましく、55度以上70度以下であることが好ましい。
また、第2層2においては、第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角が60度以上、特に65度以上であることが好ましい。また80度以下、特に75度以下であることが好ましい。例えば第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角は、60度以上80度以下であることが好ましく、65度以上75度以下であることが好ましい。
一方、第2層第2部位22に含まれる繊維に対する水の接触角は、第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角よりも小さいことを条件として、30度以上、特に40度以上であることが好ましい。また70度以下、特に65度以下であることが好ましい。例えば第2層第2部位22に含まれる繊維に対する水の接触角は、30度以上70度以下であることが好ましく、40度以上65度以下であることが好ましい。
上記の効果を一層顕著なものにする観点から、第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角と、第1層第2部位12に含まれる繊維に対する水の接触角との差(第2層第1部位21−第1層第2部位12)は、1度以上、特に2度以上であることが好ましい。また、30度以下が好ましく、特に25度以下であることが好ましい。例えば前記の差は、1度以上30度以下であることが好ましく、2度以上25度以下であることが更に好ましい。
また、第1層1から第2層2への液の透過を一層円滑に行う観点から、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角と、第2層第2部位22に含まれる繊維に対する水の接触角との差(第1層第1部位11−第2層第2部位22)は、2度以上、特に5度以上であることが好ましく、55度以下、特に45度以下であることが好ましい。例えば前記の差は、2度以上55度以下であることが好ましく、5度以上45度以下であることが更に好ましい。
前記(11)及び(12)に(17)と(18)の関係が加わると、第2層第1部位21<第1層第1部位11<第2層第2部位22<第1層第2部位12となる。この場合、第1層と第2層の各々の不織布中に親水度の勾配が存在し、かつ不織布10の第1面10A側にある第1層第1部位11と第2面10B側にある第2層第2部位22との間に親水度差が存在している。
このような親水度の関係を有する不織布10は、次のような作用効果を奏する。すなわち、第2層第1部位21の親水度が最も低いために、液の拡散面積と逆戻りを抑制する効果がより増大するという効果を有する。液が逆戻りしづらいという効果は、前記のように不織布10を吸収性物品の表面シートとして用いた場合に、吸収体に一旦吸収された液が、着用者の体圧を受けても逆戻りしづらくなるという点で有利である。
この場合の第1層1においては、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角が70度以上、特に72度以上であることが好ましい。また82度以下、特に78度以下であることが好ましい。例えば第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角は、70度以上85度以下であることが好ましく、72度以上82度以下であることが好ましい。
一方、第1層第2部位12に含まれる繊維に対する水の接触角は、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角よりも小さいことを条件として、45度以上、特に50度以上であることが好ましい。また73度以下、特に68度以下であることが好ましい。例えば第1層第2部位12に含まれる繊維に対する水の接触角は、50度以上73度以下であることが好ましく、55度以上68度以下であることが好ましい。
また、第2層2においては、第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角が70度以上、特に75度以上であることが好ましい。また85度以下、特に82度以下であることが好ましい。例えば第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角は、70度以上85度以下であることが好ましく、75度以上80度以下であることが好ましい。
一方、第2層第2部位22に含まれる繊維に対する水の接触角は、第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角よりも小さいことを条件として、55度以上、特に60度以上であることが好ましい。また75度以下、特に70度以下であることが好ましい。例えば第2層第2部位22に含まれる繊維に対する水の接触角は、55度以上75度以下であることが好ましく、55度以上70度以下であることが好ましい。
上記の効果を一層顕著なものにする観点から、第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角と、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角との差(第2層第1部位21−第1層第2部位12)は、1度以上、特に2度以上であることが好ましい。また、30度以下が好ましく、特に25度以下であることが好ましい。例えば前記の差は、1度以上30度以下であることが好ましく、2度以上25度以下であることが更に好ましい。
また、第1層1から第2層2への液の透過を一層円滑に行う観点から、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角と、第2層第2部位22に含まれる繊維に対する水の接触角との差(第1層第1部位11−第2層第2部位22)は、2度以上、特に5度以上であることが好ましく、55度以下、特に45度以下であることが好ましい。例えば前記の差は、2度以上55度以下であることが好ましく、5度以上45度以下であることが更に好ましい。
前記(11)及び(12)に(14)と(15)と(18)の関係が加わると、第1層第1部位11<第2層第1部位21<第2層第2部位22<第1層第2部位12となる。この場合、第1層と第2層の各々の不織布中に親水度の勾配が存在し、かつ不織布10の第1面10A側にある第1層第1部位11と第2面10B側にある第2層第2部位22との間に親水度差が存在している。
このような親水度の関係を有する不織布10は、次のような作用効果を奏する。すなわち、第1層第2部位12と第2層第1部位21との間で親水度の関係が逆転していることに起因して、不織布10を一旦透過した液が逆戻りしづらいという効果を奏する。さらに不織布10の内部で平面方向に液が拡散しながら該不織布10を液が透過するという効果も奏する。液が逆戻りしづらいという効果は、不織布10を吸収性物品の表面シートとして用いた場合に、吸収体に一旦吸収された液が、着用者の体圧を受けても逆戻りしづらくなるという点で有利である。また、不織布10の平面方向に液が拡散しながら透過するという効果は、不織布10を吸収性物品の表面シートとして用いた場合に、吸収体の平面方向のすべての部位において液を吸収させることができ、吸収体の吸収性能を有効活用でき、結果として液残りを低減することが可能となり有利である。
この場合の第1層1においては、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角が70度以上、特に72度以上であることが好ましい。また85度以下、特に82度以下であることが好ましい。例えば第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角は、70度以上85度以下であることが好ましく、72度以上82度以下であることが好ましい。
一方、第1層第2部位12に含まれる繊維に対する水の接触角は、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角よりも小さいことを条件として、30度以上、特に40度以上であることが好ましい。また75度以下、特に70度以下であることが好ましい。例えば第1層第2部位12に含まれる繊維に対する水の接触角は、30度以上75度以下であることが好ましく、40度以上70度以下であることが好ましい。
また、第2層2においては、第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角が70度以上、特に75度以上であることが好ましい。また83度以下、特に80度以下であることが好ましい。例えば第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角は、70度以上83度以下であることが好ましく、75度以上80度以下であることが好ましい。
一方、第2層第2部位22に含まれる繊維に対する水の接触角は、第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角よりも小さいことを条件として、55度以上、特に60度以上であることが好ましい。また78度以下、特に73度以下であることが好ましい。例えば第2層第2部位22に含まれる繊維に対する水の接触角は、55度以上78度以下であることが好ましく、55度以上73度以下であることが好ましい。
上記の効果を一層顕著なものにする観点から、第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角と、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角との差(第2層第1部位21−第1層第2部位12)は、1度以上、特に2度以上であることが好ましい。また、30度以下が好ましく、特に25度以下であることが好ましい。例えば前記の差は、1度以上30度以下であることが好ましく、2度以上25度以下であることが更に好ましい。
また、第1層1から第2層2への液の透過を一層円滑に行う観点から、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角と、第2層第2部位22に含まれる繊維に対する水の接触角との差(第1層第1部位11−第2層第2部位22)は、2度以上、特に5度以上であることが好ましく、55度以下、特に45度以下であることが好ましい。例えば前記の差は、2度以上55度以下であることが好ましく、5度以上45度以下であることが更に好ましい。
前記(11)及び(12)に(15)から(17)の関係が加わると、第2層第1部位21<第1層第1部位11<第1層第2部位12<第2層第2部位22となる。この場合、第1層と第2層の各々の不織布中に親水度の勾配が存在し、かつ不織布10の第1面10A側にある第1層第1部位11と第2面10B側にある第2層第2部位22との間に親水度差が存在している。
このような親水度の関係を有する不織布10は、次のような作用効果を奏する。すなわち、第2層第1部位21の親水度が最も低いために、液の拡散面積と逆戻りを抑制する効果がより増大するという効果を有する。液が逆戻りしづらいという効果は、前記のように不織布10を吸収性物品の表面シートとして用いた場合に、吸収体に一旦吸収された液が、着用者の体圧を受けても逆戻りしづらくなるという点で有利である。
この場合の第1層1においては、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角が70度以上、特に72度以上であることが好ましい。また82度以下、特に78度以下であることが好ましい。例えば第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角は、70度以上85度以下であることが好ましく、72度以上82度以下であることが好ましい。
一方、第1層第2部位12に含まれる繊維に対する水の接触角は、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角よりも小さいことを条件として、50度以上、特に55度以上であることが好ましい。また75度以下、特に72度以下であることが好ましい。例えば第1層第2部位12に含まれる繊維に対する水の接触角は、50度以上75度以下であることが好ましく、55度以上72度以下であることが好ましい。
また、第2層2においては、第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角が70度以上、特に75度以上であることが好ましい。また85度以下、特に82度以下であることが好ましい。例えば第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角は、70度以上85度以下であることが好ましく、75度以上80度以下であることが好ましい。
一方、第2層第2部位22に含まれる繊維に対する水の接触角は、第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角よりも小さいことを条件として、30度以上、特に40度以上であることが好ましい。また73度以下、特に70度以下であることが好ましい。例えば第2層第2部位22に含まれる繊維に対する水の接触角は、30度以上73度以下であることが好ましく、40度以上70度以下であることが好ましい。
上記の効果を一層顕著なものにする観点から、第2層第1部位21に含まれる繊維に対する水の接触角と、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角との差(第2層第1部位21−第1層第2部位12)は、1度以上、特に2度以上であることが好ましい。また、30度以下が好ましく、特に25度以下であることが好ましい。例えば前記の差は、1度以上30度以下であることが好ましく、2度以上25度以下であることが更に好ましい。
また、第1層1から第2層2への液の透過を一層円滑に行う観点から、第1層第1部位11に含まれる繊維に対する水の接触角と、第2層第2部位22に含まれる繊維に対する水の接触角との差(第1層第1部位11−第2層第2部位22)は、2度以上、特に5度以上であることが好ましく、55度以下、特に45度以下であることが好ましい。例えば前記の差は、2度以上55度以下であることが好ましく、5度以上45度以下であることが更に好ましい。
(不織布20)
次に、上記の親水度勾配及び高い隠蔽性を備えた不織布において、第1層1を熱伸長性繊維と非熱伸長性の熱融着性繊維との混綿とした場合の好ましい態様について説明する。
図4(i)及び図4(ii)に示すように、不織布20は、第1面側が凹凸形状を有する凹凸面51となっており、第2面側が平坦であるか又は前記凹凸面に比して凹凸の程度が小さい平坦面52となっている。すなわち、第1層1側に凹凸面51があり、第2層2側に平坦面52がある。不織布20における厚みの厚い部分59及び厚みの薄い部分58は、不織布20の凹凸面51に形成された凸部69及び凹部68の位置に対応する。凹部68は、互いに平行に延びる第1の線状凹部68Aと、互いに平行に延びる第2の線状凹部68Bとを有しており、第1の線状凹部68Aと第2の線状凹部68Bとが所定の角度をなして交差している。凸部69は、凹部69に囲まれた菱形状の閉鎖領域内に形成されている。
凸部69の頂部Pは、厚みの厚い部分59によって不織布の凹凸面51に形成された頂部である。不織布20において、前述のとおり、頂部Pに比して、厚みの薄い部分58及び平坦面52側の部分(第2層2の部分)の親水性が高くされている。これにより、凹凸面51側から液が入った場合に、平坦面52側に液が抜けやすく、不織布20中の液残りが少なくなる。また、厚みの厚い部分59の頂部Pから厚みの薄い部分(エンボス部)58及び平坦面52側の部分(第2層2の部分)に向かって漸次親水度が高くなっていることが好ましい。
また、厚みの厚い部分59及び厚みの薄い部分58の平坦面52側にある第2層2が繊維間距離を90μm以下としていることにより、液の隠蔽性が高い。これにより、経血等の排泄液を透過させると、その赤みが凹凸面51から見えにくく隠蔽され、不織布20の明度(L値)がより強く認識される。これにより、不織布20が清潔感のあるものとの印象を与えることができる。また、不織布20を吸収性物品に組み込んだときに、物品の吸収性能の高さを適切に実感することができる。
さらに、凹凸面51をなす第1層1が、熱伸長性繊維と非熱伸長性の熱融着性繊維との混綿からなることで、凸部69の嵩高回復性がよい。これにより、荷重があっても、凹凸面51の凸部69が回復されやすく、嵩高さをもたらす繊維間距離も維持される。その結果、受液面である凹凸面51の液引き込み性に優れ、液流れなく素早く液を平坦面52側へと引き渡すことができ、液残りを抑えることができる。このことがさらに不織布20の液の隠蔽性を高める。
不織布1の凹凸面51は、エンボス加工時にエンボスロール側に向けられ、且つエア−スルー方式で熱風処理を行う際に、ネット面(通気性の支持体)とは反対側に向けられ、熱風を直接吹き付ける側の面である。従って、不織布の構成繊維に熱伸長性複合繊維を用いた場合、その熱伸長性複合繊維は、平坦面52よりも凹凸面51において大きく伸長する。そのため、熱伸長性複合繊維は、凹凸面51の表面における繊維径より、平坦面52の表面における繊維径が大きくなる。また、厚みの厚い部分59における親水度は、凹凸面51側が平坦面52側に比して低くなる。
不織布20の製造において、エンボス加工時にウエブに加える温度は、エンボス部及びその近傍部(周辺部)、又はエンボス部及びその近傍部(周辺部)のいずれかにおける親水度の変化を抑制する観点から、前記鞘部を構成するポリエチレン樹脂の融点より20℃低い温度以上で、かつ芯部を構成する樹脂成分の融点未満であることが好ましい。他方、熱風処理時に加える温度は、親水度の変化を確実に生じさせる観点から、前記ポリエチレン樹脂の融点より10℃低い温度以上、特に前記ポリエチレン樹脂の融点以上、さらには、前記ポリエチレン樹脂の融点+5℃以上であることが好ましい。
不織布は、これを例えば吸収性物品の表面シートとして用いる場合には、その坪量が10g/m以上80g/m以下、特に15g/m以上60g/m以下であることが好ましい。同様の用途に用いる場合、不織布1における凸部69(厚みの厚い部分59)の厚みは、熱風による嵩回復後の状態において0.5mm以上3mm以下、特に0.7mm以上3mm以下であることが好ましい。一方、凹部68(厚みの薄い部分58)の厚みは0.01mm以上0.4mm以下、特に0.02mm以上0.2mm以下であることが好ましい。なお凹部68の厚みは、熱風の吹き付けの前後において実質的に変化はない。凸部69及び凹部68の厚みは、不織布20の縦断面を観察することによって測定される。まず、不織布を100mm×100mmの大きさに裁断し測定片を採取する。その測定片の上に12.5g(直径56.4mm)のプレートを載置し、49Paの荷重を加える。この状態下に不織布の縦断面をマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX−1000)で観察し、凸部69及び凹部68の厚みを測定する。なお、不織布に凸部(厚みの厚い部分)及び凹部(厚みの薄い部分)が形成されている場合、「不織布の厚み」とは、凸部(厚みの厚い部分)の厚みのことをいう。
不織布1における凹部68と凸部69との面積比は、エンボス化率(エンボス面積率、すなわち不織布1全体に対する凹部の面積の合計の比率)で表され、不織布1の嵩高感や強度に影響を与える。これらの観点から、不織布1におけるエンボス化率は、5%以上35%以下、特に10%以上25%以下であることが好ましい。エンボス化率は、以下の方法によって測定される。まずマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX−1000)を用いて不織布1の表面拡大写真を得、この表面拡大写真にスケールを合わせ、測定部の全体面積Tにおける、エンボス部分の寸法を測定し、エンボス部面積Uを算出する。
エンボス化率は、計算式(U/T)×100、によって算出することができる。
(不織布10及び不織布20の製造方法)
図5は、前述した不織布10及び不織布20を製造するために好適に用いられる製造装置が示されている。同図に示す製造装置100は、第1ウエブ製造部110、第2ウエブ製造部120、エンボス部130、エアスルー処理部140、カレンダー部150及び巻き取り部160を備えている。
第1ウエブ製造部110及び第2ウエブ製造部120はいずれもカード機から構成されている。第1ウエブ製造部110は、目的とする不織布における第1層1に対応するウエブを製造する部位である。一方、第2ウエブ製造部120は、目的とする不織布における第2層2に対応するウエブを製造する部位である。第1ウエブ製造部110及び第2ウエブ製造部120には、目的とするエアスルー不織布の具体的な用途に応じて適切な原料繊維が供給され、第1ウエブ111及び第2ウエブ122が製造される。原料繊維には、目的とするエアスルー不織布の具体的な用途に応じて、適切な量の繊維処理剤が付着している。
第1ウエブ製造部110及び第2ウエブ製造部120から繰り出された第1ウエブ111及び第2ウエブ122は、エンボス部130において重ね合わされてエンボス加工が行われる。このとき、第2ウエブ122上に第1ウエブ111が配されるように両ウエブ111,122が重ね合わされる。エンボス部130は例えば凹凸ロール131とアンビルロール132とから構成することができる。エンボス部130におけるエンボス加工の条件は、両ウエブ111,122の構成繊維どうしが加熱下に加圧されてエンボス融着部(図示せず)が形成される条件であればよい。また、熱融着繊維として熱伸長性繊維を用いる場合には、該熱伸長性繊維が伸長する温度条件下にエンボス加工を施すことが好ましい。
なお、このエンボス加工は、任意の工程である。例えば、熱伸長性繊維の熱伸長を利用して表面(片面又は両面)に複数の凸部を形成する場合に用いられる。特に、前述の不織布20を製造する際に必要な工程である。不織布20を製造する場合の凹凸ロール131は、第1の線状凹部68A、第2の線状凹部68Bの配置に合わせた格子状パターンのエンボス用凸部が周面に形成されたものが用いられる。したがって、不織布10の製造ではなくてもよい。
エンボス部130において両ウエブ111,122が一体化されて形成された重ね合わせウエブ101は、エアスルー処理部140へ搬送される。エアスルー処理部140は密閉されたチャンバ141を有している。チャンバ141内には周回する無端ベルト142が配置されている。無端ベルト142は通気性の材料、例えば金属ワイヤのメッシュベルトからなる。重ね合わせウエブ101は、無端ベルト142上に載置されて搬送される。チャンバ141内には、所定温度に加熱された空気(以下「熱風」とも言う。)の吹き出し口(図示せず)が設けられている。更にチャンバ141内には、吹き出された熱風の吸引口(図示せず)も設けられている。チャンバ141内に搬送された重ね合わせウエブ101が該チャンバ141内を通過する間に、重ね合わせウエブ101に対して熱風がエアスルー方式で吹き付けられる。熱風の吹き付けは、重ね合わせウエブ101における第1ウエブ111側から行われる。吹き付けられた熱風は、重ね合わせウエブ101における第2ウエブ122側から放出される。この目的のために、前記の吹き出し口(図示せず)は、重ね合わせウエブ101における第1ウエブ111と対向するように配置されており、かつ前記の吸引口(図示せず)は第1ウエブ122と対向するように配置されている。
先に述べたとおり、繊維処理剤S1からS5が付着している熱融着性繊維においては、該熱融着性繊維が受ける熱量に応じて繊維処理剤の繊維内部への浸透の程度が相違する。繊維処理剤の浸透の程度が大きくなるほど、繊維処理剤を付着させた初期状態に比べて繊維の親水度は低下する。本製造方法においては、この現象を利用して、目的とするエアスルー不織布に親水度の勾配を生じさせている。
詳細には、エアスルー法によれば、熱風吹き付け面に存在する繊維が最も大きな熱量を受け、かつ熱風吹き付け面と反対側、すなわち無端ベルト142との対向面に存在する繊維が最も小さな熱量を受けるようになる。したがって本製造方法においては、重ね合わせウエブ101における第1ウエブ111の表面に存在する繊維が最も大きな熱量を受け、第2ウエブ122の表面に存在する繊維が最も小さな熱量を受ける。その結果、重ね合わせウエブ101においては、第1ウエブ111側から第2ウエブ122側に向けて、繊維処理剤の繊維内部への浸透の程度が小さくなる。このことに起因して、重ね合わせウエブ101においては、第1ウエブ111側から第2ウエブ122側に向けて親水度が高くなる。
また、不織布20の製造においては、エンボス加工の際に、ウエブに加える温度を、熱融着性芯鞘型複合繊維の前記鞘部を構成する樹脂の融点以下に抑えておく。それに続く、熱風処理時に、該樹脂の融点以上で芯部の樹脂成分の融点以下の温度を加える。このエンボス加工時には、圧縮によりウエブのエンボス部に近いほど通気性が低下する一方、該エンボス部を構成するポリエチレン樹脂の溶融は圧力による溶融のみで済み、最低限に抑えられる。他方、熱風処理時には、主として、エンボスにより圧密化された部分(エンボス部)は、熱風の通過量がほとんど無いか、あっても少なため、親水度が低下しがたい。エンボス部以外の厚みの厚い部分(不織布2における符号59の部分)で頂部に近いほど、熱風が通過し易く親水性が低下する。これにより、エンボス加工により形成された厚みの薄い部分(不織布2における符号58の部分)及びその周辺部、又は厚みの薄い部分及びその周辺部のいずれかが親水部となり、それ以外の厚みの厚い部分に近くなるに従い、相対的に疎水性になり、最も厚みの厚い部分59の近傍が極大の疎水性を示す部分となっている不織布が得られる。また、前記熱風処理により、エンボス部以外の部分の鞘部の溶融が進行し、繊維の交点が熱融着して、強度のある不織布が得られる。
不織布10及び不織布20において、前述した(親水度勾配の具体例)のようにするには、各熱融着性繊維に付着させる繊維処理剤の種類や付着量、エアスルー処理部における熱風の吹き付け条件(熱風の温度や風量など)によって制御することができる。
例えば、第1層1側の繊維処理剤には、成分(A)、(B)、(D)を含む繊維処理剤を付与し、第2層2側の繊維処理剤には、成分(A)、(B)、(C)を含む繊維処理剤を付与することで、第2層2側の親水度が第1層1側に比べて高まり、不織布中に親水度勾配を付与することが可能となる。
以上の方法は、熱の付与によって、繊維処理剤が付与された熱融着性繊維の親水度を、不織布の厚み方向で部分的に低下させることで、親水度の勾配を発現させている。したがって以上の方法によれば、複数枚の不織布を重ね合わせて親水度に勾配を設ける必要がなく、一枚の単一の不織布の厚み方向に沿って親水度に勾配を設けることができる。
得られた不織布は、エアスルー処理部140から出た後にカレンダー部150に導入されてカレンダー加工が行われる。カレンダー加工によって、エアスルー不織布102の表面が平滑となり、毛羽立ち等が少なくなる。その後、不織布は、巻き取り部160において巻き取られる。また、その後、二次加工を施してもよい。二次加工としては、例えば公知の立体賦形加工が挙げられる。
以上、本発明の不織布の製造方法は、上述した実施形態に制限されない。例えば、不織布にエンボス部を形成する場合のエンボス部の形成パターンは、格子状に代えて、多列のストライプ状、ドット状、市松模様状、スパイラル状等任意のパターンとすることができる。ドット状とする場合の個々の点の形状としては、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、ハート型、任意の形状とすることができる。また正方形若しくは長方形の格子状や、亀甲模様をなす形状を採用してもよい。
また、エンボス加工を施す際にエンボスロール及びフラットロール、又はいずれかのロールを加熱し、エンボス部及びその周辺、またはエンボス部及びその周辺のいずれかの親水性が低下した不織布を製造することもできる。また、本発明の不織布を、おむつやナプキン、ワイパー、その他の製品に用いる場合において、製造の前、製造の途中、及び製品の形にした後のいずれの時点でも、所望の部分に熱を加えて、本発明の不織布の一部または全部について親水性を低下させることができ、または撥水性にすることもできる。
また、本発明の不織布の製造方法は、熱による親水度の勾配を形成することができる方法であれば、エアスルー法に限定されず、任意の方法を採用できる。
例えば、ウエブの形成方法として、カード法以外にも例えばエアレイド法、スパンボンド法等を用いることができる。また、親水度勾配をつける熱処理は、ウエブの形成時以外にも、ウエブを不織布化した後に行うこともできる。この場合、2枚の不織布を積層した状態で熱処理してもよい。
片面のみに熱処理を施す方法としては、搬送中のウエブ又は不織布の片面のみに、鞘部の樹脂の融点以上の温度に加熱したロールを接触させる方法や、搬送中のウエブ又は不織布の裏面側に熱風が貫通しないように工夫した上で、該ウエブ又は不織布の表面側に、鞘部の樹脂の融点以上の温度の熱風を吹き付ける方法等が挙げられる。この熱処理の温度も、親水度の変化を確実に生じさせる観点から、前記鞘部の樹脂の融点より10度低い温度以上、特に前記鞘部の樹脂の融点以上、さらには、前記鞘部の樹脂の融点+5℃以上であることが好ましい。
ウエブの不織布化方法としては、スパンレース、ニードルパンチ、ケミカルボンド、ドット状のエンボス加工等の各種公知の不織布化方法を採用できる。
本発明の不織布は、その厚み方向に沿った親水度の勾配を活かして、種々の分野に適用できる。例えば生理用ナプキン、パンティライナー、使い捨ておむつ、失禁パッドなどの身体から排出される液の吸収に用いられる吸収性物品における表面シート、セカンドシート(表面シートと吸収体との間に配されるシート)、裏面シート、防漏シート、あるいは対人用清拭シート、スキンケア用シート、更に対物用のワイパーなどとして好適に用いられる。本発明の不織布を吸収性物品の表面シートやセカンドシートとして用いる場合には、該不織布の第1層側を肌対向面側として用いることが好ましい。
本発明の不織布の製造に用いるウエブの坪量は、目的とする不織布の具体的な用途に応じて適切な範囲が選択される。最終的に得られる不織布の坪量は、10g/m以上80g/m以下、特に15g/m以上60g/m以下であることが好ましい。
身体から排出される液の吸収に用いられる吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。本発明に係る不織布を表面シートとして用いた場合の吸収体及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限無く用いることができる。例えば吸収体としては、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体又はこれに吸収性ポリマーを保持させたものを、ティッシュペーパーや不織布等の被覆シートで被覆してなるものを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液不透過性ないし撥水性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の不織布及び吸収性物品を開示する。
<1>
少なくとも2層を有する不織布であって、該不織布の一方の面側の層は、繊維間距離を90μm以下とし、繊維処理剤が付着した熱融着性繊維を有し、前記繊維処理剤が(A)ポリオルガノシロキサン、(B)リン酸エステル型のアニオン界面活性剤、及び(C)アルキルヒドロキシスルホベタインを含有する、不織布。
<2>
前記一方の面側の層の繊維間距離は、80μm以下がより好ましく、70μm以下が更に好ましく、50μm以上が好ましく、55μm以上がより好ましく、60μm以上が更に好ましい、前記<1>に記載の不織布。
<3>
前記成分(A)であるポリオルガノシロキサンが、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン及びポリジプロピルシロキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記<1>又は<2>に記載の不織布。
<4>
前記成分(A)であるポリオルガノシロキサンが繊維処理剤の全質量に対して1質量%以上30質量%以下の割合で含まれている前記<1>〜<3>のいずれか1に記載の不織布。
<5>
前記成分(B)であるリン酸エステル型のアニオン界面活性剤が、アルキルエーテルリン酸エステル、ジアルキルリン酸エステル及びアルキルリン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記<1>〜<4>のいずれか1に記載の不織布。
<6>
前記成分(B)であるリン酸エステル型のアニオン界面活性剤がアルキルエーテルリン酸エステルからなり、該アルキルエーテルリン酸エステルが、炭素鎖が16以上、18以下のモノ若しくはジアルキルリン酸エステルの完全中和又は部分中和塩である前記<5>に記載の不織布。
<7>
前記一方の面側の層の熱融着繊維に付着された繊維処理剤中の前記成分(B)の含有割合が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である、前記<1>〜<6>のいずれか1に記載の不織布。
<8>
前記成分(C)であるアルキルヒドロキシスルホベタインが、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ミリスチルヒドロキシスルホベタイン、パルミチルヒドロキシスルホベタイン及びステアリルヒドロキシスルホベタインからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記<1>〜<7>のいずれか1に記載の不織布。
<9>
前記成分(C)であるアルキルスルホベタインを繊維処理剤の全質量に対して10質量%未満の割合で含み、より好ましくは9質量%未満の割合で含み、更に好ましくは8質量%未満の割合で含み、また、好ましくは3質量%以上の割合で含み、より好ましくは5質量%以上の割合で含む、前記<1>〜<8>のいずれか1に記載の不織布
<10>
前記成分(A)と前記成分(C)との含有比が、質量比で1:1.6から1:0.6であり、より好ましくは1:1.3から1:0.9である、前記<1>〜<9>のいずれか1に記載の不織布。
<11>
前記成分(A)と前記成分(B)との含有比が、質量比で1:5から10:1であり、より好ましくは1:2から3:1である、前記<1>〜<10>のいずれか1に記載の不織布。
<12>
前記繊維処理剤がさらに、アルキルが炭素数6以上22以下、特に8以上22以下の、アルキルホスフェートナトリウム塩、アルキルエーテルホスフェートナトリウム塩、ジアルキルホスフェートナトリウム塩、ジアルキルスルホサクシネートナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホネートナトリウム塩、アルキルスルホネートナトリウム塩、アルキルサルフェートナトリウム塩及びセカンダリーアルキルサルフェートナトリウム塩、並びにこれらの他のアルカリ金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン性の界面活性剤を含む、前記<1>〜<11>のいずれか1に記載の不織布。
<13>
前記繊維処理剤がさらに、アルキル(又はアルケニル)トリメチルアンモニウムハライド、ジアルキル(又はアルケニル)ジメチルアンモニウムハライド及びアルキル(又はアルケニル)ピリジニウムハライド、並びにこれらの化合物で炭素数6以上18以下のアルキル基又はアルケニル基を有するものからなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオン性の界面活性剤を含み、前記のハライド化合物におけるハロゲンが好ましくは塩素又は臭素である、前記<1>〜<12>のいずれか1に記載の不織布。
<14>
前記繊維処理剤がさらに、アルキルベタインからなる両性イオン性の界面活性剤を含み、該アルキルベタインが、アルキル(炭素数1以上30以下)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1以上30以下)アミドアルキル(炭素数1以上4以下)ジメチルベタイン、アルキル(炭素数1以上30以下)ジヒドロキシアルキル(炭素数1以上30以下)ベタイン、スルホベタイン型両性界面活性剤等のベタイン型両性イオン性界面活性剤、アラニン型[アルキル(炭素数1以上30以下)アミノプロピオン酸型、アルキル(炭素数1以上30以下)イミノジプロピオン酸型等]両性界面活性剤、アルキルベタイン等のグリシン型[アルキル(炭素数1以上30以下)アミノ酢酸型等]両性界面活性剤などのアミノ酸型両性界面活性剤、アルキル(炭素数1以上30以下)タウリン型などのアミノスルホン酸型両性界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、前記<1>〜<13>のいずれか1に記載の不織布。
<15>
前記繊維処理剤がさらに、グリセリン脂肪酸エステル、ポリ(好ましくはn=2以上10以下)グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル(いずれも好ましくは脂肪酸の炭素数8以上60以下)、ポリオキシアルキレン(付加モル数2以上20以下)アルキル(炭素数8以上22以下)アミド、ポリオキシアルキレン(付加モル数2以上20以下)アルキル(炭素数8以上22以下)エーテル、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、アミノ変性シリコーンからなる群から選ばれる少なくとも1種のノニオン性の界面活性剤を含む、前記<1>〜<14>のいずれか1に記載の不織布。
<16>
前記不織布の一方の面側の層が主成分として2.0dtex以下の繊維を含んでなり、1.8dtex以下がより好ましく、1.5dtex以下がさらに好ましく、また、0.8dtex以上が好ましく、1.0dtex以上がより好ましく、1.2dtexがさらに好ましい、前記<1>〜<15>のいずれか1に記載の不織布。
<17>
前記不織布の一方の面側と反対の面側の層が、熱伸長性繊維と非熱伸長性の熱融着性繊維とで混綿されてなる前記<1>〜<16>のいずれか1に記載の不織布。
<18>
前記不織布の一方の面側と反対面側の層が、ポリオルガノシロキサンを含んでいる前記<1>〜<17>のいずれか1に記載の不織布。
<19>
前記不織布の一方の面側と反対面側の層が、繊維処理剤として、下記の成分(A)、(B)及び(D)を含有する前記<1>〜<17>のいずれか1に記載の不織布。
(A)ポリオルガノシロキサン、
(B)リン酸エステル型のアニオン界面活性剤、
(D)下記の一般式(II)で表わされるアニオン界面活性剤
Figure 0006332805
(式中、Zはエステル基、アミド基、アミン基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖を表わす。R及びRはそれぞれ独立に、エステル基、アミド基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数2以上16以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表わす。Xは―SOM、―OSOM又は―COOMを表わし、MはH、Na、K、Mg、Ca又はアンモニウムを表わす。)
<20>
前記一般式(II)で表されるアニオン界面活性剤が、該式中のXが−SOM、すなわち親水基がスルホ基又はその塩であり、ジアルキルスルホン酸又はそれらの塩がより好ましい、前記<19>に記載の不織布。
<21>
前記一般式(II)で表されるアニオン界面活性剤が、該式中のXが−OSOM、すなわち親水基がサルフェート基又はその塩であり、ジアルキル硫酸エステルがより好ましい、前記<19>に記載の不織布。
<22>
前記一般式(II)で表されるアニオン界面活性剤が、該式中のXが−COOM、すなわち親水基がカルボキシ基又はその塩であり、ジアルキルカルボン酸がより好ましい、前記<19>に記載の不織布。
<23>
前記反対面側の層における繊維処理剤中の、前記成分(D)の含有割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは13質量%以下である、前記<19>〜<22>のいずれか1に記載の不織布。
<24>
前記不織布の一方の面側と反対面側の層が、下記の成分(A)、(B)及び(E)を含有する前記<1>〜<17>のいずれか1に記載の不織布。
(A)ポリオルガノシロキサン、
(B)リン酸エステル型のアニオン界面活性剤、
(E)ポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステル
<25>
成分(E)をなす多価アルコール脂肪酸エステルがヒマシ油(硬化ヒマシ油)からなる前記<24>に記載の不織布。
<26>
成分(E)をなす多価アルコール脂肪酸エステルが、多価アルコール脂肪酸エステルに付加するアルキレンオキシドがエチレンオキシドである、ポリオキシエチレン(POE)変性多価アルコール脂肪酸エステルからなることが好ましく、多価アルコール脂肪酸エステルがヒマシ油(硬化ヒマシ油)である、POE変性ヒマシ油(POE変性硬化ヒマシ油)からなることがとりわけ好ましい、前記<24>に記載の不織布。
<27>
前記反対面側の層における繊維処理剤中の、成分(E)の含有割合は、繊維処理剤の全質量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、繊維処理剤の全質量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である、前記<24>〜<26>のいずれか1に記載の不織布。
<28>
前記一方の面側と反対面側の層が、下記の成分(A)、(B)、(D)及び(E)を含有する前記<1>〜<17>のいずれか1に記載の不織布。
(A)ポリオルガノシロキサン、
(B)リン酸エステル型のアニオン界面活性剤、
(E)ポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステル
(D)下記の一般式(II)で表わされるアニオン界面活性剤
Figure 0006332805
(式中、Zはエステル基、アミド基、アミン基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖を表わす。R及びRはそれぞれ独立に、エステル基、アミド基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数2以上16以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表わす。Xは―SOM、―OSOM又は―COOMを表わし、MはH、Na、K、Mg、Ca又はアンモニウムを表わす。)
<29>
前記一方の面側の層及びその反対側の層それぞれにおいて、繊維処理剤の熱融着繊維への付着量は、該繊維処理剤を除く熱融着性繊維の全質量に対する割合として、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましく、また、1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい、前記<1>〜<28>のいずれか1に記載の不織布。
<30>
前記熱融着性繊維に酸化チタンが含有されており、該熱融着性繊維に含有させる酸化チタンの量は、繊維の全質量に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下である、前記<1>〜<29>のいずれか1に記載の不織布。
<31>
前記不織布が、一方の面側からその反対面へ向かって親水度が高くなるように親水度勾配を有している前記<1>〜<30>のいずれか1に記載の不織布。
<32>
前記<1>〜<31>のいずれか1に記載の不織布を用いた吸収性物品。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、本実施例において「部」および「%」とは特に断らない限りいずれも質量基準である。なお、上述の説明における「一方の面側の層」を以下において「第1層」と呼び、「反対の面側の層」を「第2層」と呼ぶ。また、下記表1〜3に示す、「上層」は第1層を意味し、「下層」は第2層を意味する。
また、成分(A)〜(C)は実施例においては下記の剤を用いた。
・ポリジメチルシロキサン〔前記成分(A)、信越シリコーン社製のシリコーン「KM903」〕
・アルキルリン酸エステルカリウム塩〔前記成分(B)、花王株式会社製、グリッパー4131(商品名)の水酸化カリウム中和物〕
・ラウリルヒドロキシスルホベタイン〔前記成分(C)、花王株式会社製、アンヒトール20HD(商品名)〕
・ジオクチルスルホコハク酸〔前記成分(D)、花王株式会社製、ペレックスOT-P(商品名)〕
・ポリオキシエチレン(POE)変性多価アルコール脂肪酸エステル〔前記成分(E)、花王株式会社製、エマノーンCH60(商品名)〕
・ポリオキシエチレン(POE)ポリオキシプロピレン(POP)変性シリコーン〔前記成分(A)〜(E)以外の成分、信越化学工業株式会社製、X−22-4515(HLB5)(商品名)〕
・ポリオキシエチレン(付加モル数:2)アルキルアミド〔前記成分(A)〜(CE以外の成分、川研ファインケミカルズ社製、アミゾールSDE(商品名)〕
・アルキル(ステアリル)ベタイン〔前記成分(A)〜(E)以外の成分、花王株式会社製、アンヒトール86B〕
・ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート〔前記成分(A)〜(E)以外の成分、花王株式会社製、レオドールTW−S120V〕
(実施例1)
図5に示す製造装置100を用いて、第1層及び第2層の2層構造の不織布を作製した。ただしエンボス加工は行わなかった。第1層は、繊度3.3dtexの熱伸長性繊維と繊度2.2dtexの非熱伸長性の熱融着性繊維を構成比=50:50で混綿して得た。第1層の厚みは0.8mmであり、坪量は15g/mであった。第2層は、繊度1.8dtexの熱融着性繊維のみからなるものとした。第2層の厚みは0.8mmであり、坪量15g/mであった。
第1層の繊維に付着させた繊維処理剤は、成分(A):5.0質量%、成分(B):23.8質量%、成分(D):9.5質量%とし、残りを表1に示す「その他」の成分からなる構成とした。該繊維処理剤の付着量は、0.39質量%であった。
第2層の繊維に付着させた繊維処理剤は、成分(A):5.0質量%、成分(B):23質量%、成分(C):3.0質量%、成分(D):9.2質量%とし、残りを表1に示す「その他」の成分からなる構成とした。成分(A)と成分(C)の含有比は1:0.6であった。該繊維処理剤の付着量は、0.44質量%であった。
また、第1層及び第2層について、先に述べた方法で繊維間距離を測定した。第1層の繊維間距離は101μm、第2層の繊維間距離は84μmであった。
(実施例2)
第2層の繊維に付着させた繊維処理剤は、成分(A):5.0質量%、成分(B):22.3質量%、成分(C):6.0質量%、成分(D):8.9質量%とし、残りを表1に示す「その他」の成分からなる構成とした。成分(A)と成分(C)の含有比は1:1.2であった。該繊維処理剤の付着量は、0.45質量%であった。それ以外は実施例1と同様の条件で不織布を作製した。
(実施例3)
第1層の繊維に付着させた繊維処理剤は、成分(D)を含まず、成分(A):5.0質量%、成分(B):23.7質量%、成分(E):10.0質量%とし、残りを表1に示す「その他」の成分からなる構成とした。それ以外は実施例2と同様の条件で不織布を作製した。
(実施例4)
第1層の繊維に付着させた繊維処理剤は、成分(A):5.0質量%、成分(B):21.3質量%、成分(D):8.5質量%、成分(E):10.0質量%とし、残りを表1に示す「その他」の成分からなる構成とした。それ以外は実施例2と同様の条件で不織布を作製した。
(実施例5)
第2層の繊維の繊度を1.2dtexとした。そのため第2層の繊維間距離は69μmであった。第2層の繊維に付着させた繊維処理剤成分は、成分(A):5.0質量%、成分(B):21.8質量%、成分(C):8.0質量%、成分(D):8.7質量%とし、残りを表1に示す「その他」の成分からなる構成とした。成分(A)と成分(C)の含有比は1:1.6であった。該繊維処理剤の付着量は、0.43質量%であった。それ以外は実施例1と同様の条件で不織布を作製した。
(実施例6)
第2層の繊維に付着させた繊維処理剤の成分構成及び該繊維処理剤の付着量は、実施例2と同様のものとした。ただし、成分(A)と成分(C)の含有比は1:1.2とした。それ以外は実施例1と同様の条件で不織布を作製した。
(実施例7)
第2層の繊維に付着させた繊維処理剤は、成分(A):5.0質量%、成分(B):21.8質量%、成分(C):8.0質量%、成分(D):8.7質量%とし、残りを表1に示す「その他」の成分からなる構成とした。成分(A)と成分(C)の含有比は1:1.6であった。該繊維処理剤の付着量は、0.44質量%であった。それ以外は実施例1と同様の条件で不織布を作製した。
(実施例8)
第2層の繊維に付着させた繊維処理剤は、成分(A):5.0質量%、成分(B):21.3%、成分(C):10.0質量%、成分(D):8.5質量%とし、残りを表2に示す「その他」の成分からなる構成とした。成分(A)と成分(C)の含有比は1:2であった。それ以外は実施例1と同様の条件で不織布を作製した。
(実施例9)
第2層の繊維に付着させた繊維処理剤は、成分(A):10.0質量%、成分(B):21.8質量%、成分(C):5.0質量%、成分(D):8.7質量%とし、残りを表2に示す「その他」の成分からなる構成とした。成分(A)と成分(C)の含有比は2:1であった。該繊維処理剤の付着量は、0.43質量%であった。それ以外は実施例1と同様の条件で不織布を作製した。
(実施例10)
第1層は熱融着性繊維のみからなるものとし、繊度を2.2dtexとした。
第2層の繊維に付着させた繊維処理剤は、成分(A):5.0質量%、成分(B):22.3質量%、成分(C):6.0質量%、成分(D):8.9質量%とし、残りを表2に示す「その他」の成分からなる構成とした。成分(A)と成分(C)の含有比は1:1.2であった。該繊維処理剤の付着量は、0.45質量%であった。それ以外は実施例1と同様の条件で不織布を作製した。
(実施例11)
第1層の繊維に付着させた繊維処理剤は、成分(A)を含まず、成分(B):25質量%、成分(D):10質量%とし、残りを表2に示す「その他」の成分からなる構成とした。該繊維処理剤の付着量は、0.42質量%であった。
第2層の繊維に付着させた繊維処理剤の成分構成、成分(A)と成分(C)の含有比及び該繊維処理剤の付着量は、実施例2と同様のものとした。
それ以外は実施例1と同様の条件で不織布を作製した。
(実施例12)
第1層の繊維に付着させた繊維処理剤は、成分(D)を含まず、成分(A):5.0質量%、成分(B):26.4質量%とし、残りを表2に示す「その他」の成分からなる構成とした。
第2層の繊維に付着させた繊維処理剤の成分構成、成分(A)と成分(C)の含有比及び該繊維処理剤の付着量は、実施例2と同様のものとした。
それ以外は実施例1と同様の条件で不織布を作製した。
(比較例1)
第2層の繊維に付着させた繊維処理剤は、成分(C)を含まず、成分(A):5.0質量%、成分(B):23.8質量%、成分(D):9.5質量%とし、残りを表3に示す「その他」の成分からなる構成とした。該繊維処理剤の付着量は、0.39質量%であった。それ以外は実施例1と同様の条件で不織布を作製した。
(比較例2)
第2層の繊維に付着させた繊維処理剤は、成分(C)を含まず、成分(A):5.0質量%、成分(B):21.3質量%、成分(D):8.5質量%とし、残りを表3に示す「その他」の成分からなる構成とした。該繊維処理剤の付着量は、0.42質量%であった。それ以外は実施例1と同様の条件で不織布を作製した。
(比較例3)
第1層の繊維に付着させた繊維処理剤は、成分(A)を含まず、成分(B):25質量%、成分(D):10質量%とし、残りを表1に示す「その他」の成分からなる構成とした。該繊維処理剤の付着量は、0.42質量%であった。
第2層の繊維に付着させた繊維処理剤は、成分(A)及び成分(C)を含まず、成分(B):25質量%、成分(D):10質量%とし、残りを表3に示す「その他」の成分からなる構成とした。該繊維処理剤の付着量は、0.45質量%であった。
それ以外は実施例1と同様の条件で不織布を作製した。
(比較例4)
第2層の繊維に付着させた繊維処理剤の成分構成及び該繊維処理剤の付着量は、比較例3と同様のものとした。それ以外は実施例1と同様の条件で不織布を作製した。
(比較例5)
第2層を有さず、実施例1の第1層のみからなる不織布を実施例1と同様にして作製した。
(比較例6)
第2層の繊維の繊度を2.2dtexとした。そのため第2層の繊維間距離は93μmであった。第2層の繊維に付着させた繊維処理剤の成分構成は、比較例1と同様のものとした。該繊維処理剤の付着量は、0.43質量%であった。それ以外は実施例1と同様の条件で不織布を作製した。
(比較例7)
第2層の繊維の繊度を3.3dtexとした。そのため第2層の繊維間距離は114μmであった。第2層の繊維に付着させた繊維処理剤の成分構成は、比較例1と同様のものとした。該繊維処理剤の付着量は、0.42質量%であった。それ以外は実施例1と同様の条件で不織布を作製した。
(接触角の測定)
実施例1〜12及び比較例1〜7で得られた不織布について、先に述べた方法で繊維に対する水の接触角を測定した。それらの結果を表1〜3に示した。
測定対象とする繊維は、精密はさみとピンセットを用いて、第1層第1部位、第1層第2部位、第2層第1部位及び第2層第2部位の部位それぞれから繊維長1mmで裁断し、不織布から取り出したものである。また、第1層が熱伸長性繊維及び非熱伸長性の熱融着性繊維の混綿からなる場合は、それぞれの繊維を取り出した。
(不織布隠蔽率:赤色板隠蔽率)
赤色板隠蔽率は、実施例1〜12及び比較例1〜7で得られた不織布の第2面10B(第2層2のある面)に付属の標準板(赤色)を置いて、次のようにして測定を行った。
初めに、付属の標準板(赤色面を測定面とする)について日本電色工業株式会社製の簡易型分光色差計NF333を用いて測定した。得られた吸収波長の中でも特に500cm−1を選択し、この際の反射率を記録した(Ra)。次に赤色板を外して、試料台にサンプルを置き、更にサンプル裏面(測定面とは逆の面、第2面10B(第2層2のある面)と赤色板の赤色面が向き合うように赤色板を置いた。測定は1サンプルについて異なる部位で計5回測定し、500cm−1の反射率の平均値(Rb)を算出した。得られたRa、Rbの値より、赤色板隠蔽率を次式(1)により求めた。
赤色板隠蔽率(%)
=〔(Rb−Ra)/(100−Ra)〕×100 (1)
上記の結果得られた値が高い値であるほど、不織布の隠蔽性として高い性能を示し、液吸収後の白さ(L値)の向上や、白色の表面材越しに見た吸収体の赤みを隠蔽し、吸収体から透過した白さ(L値)の向上に繋がる。
(評価)
下記の評価は、吸収性物品の一例として生理用ナプキン(花王株式会社製:ロリエSpeed+肌きれいガード、2013年製)から表面シートを取り除き、その代りに不織布の試験体(以下、不織布試験体という)を積層し、その周囲を固定して得た評価用の生理用ナプキンを用いて行った。
(表面シート(不織布試験体)の液残り量)
各評価用の生理用ナプキンの表面上に、内径1cmの透過孔を有するアクリル板を重ねて、該ナプキンに100Paの一定荷重を掛ける。斯かる荷重下において、該アクリル板の透過孔から脱繊維馬血3.0gを流し込む。該脱繊維馬血を流し込んでから120秒後に更に脱繊維馬血(日本バイオテスト研究所製の馬脱繊維血液を8.0cPに調整したもの)3.0gを流し込む。東機産業のTVB10形粘度計にて、30rpmの条件下で調整した。馬血は、放置すると、粘度の高い部分(赤血球など)は沈殿し、粘度の低い部分(血漿)は、上澄みとして残る。その部分の混合比率を、8.0cPになるように調整した。合計6.0gの脱繊維馬血を流し込んでから60秒後にアクリル板を取り除く。次いで、不織布試験体の重量(W2)を測定し、予め測定しておいた、馬血を流し込む前の不織布試験体の重量(W1)との差(W2−W1)を算出する。以上の操作を3回行い、3回の平均値を液残り量(mg)とする。液残り量は、装着者の肌がどの程度濡れるかの指標となるものであり、液残り量が少ないほど程、良い結果である。
(液残り量(ウェットバック量)の評価)
前記各評価用の生理用ナプキンの表面上に、内径1cmの透過孔を有するアクリル板を重ねて、該ナプキンに100Paの一定荷重を掛けた。斯かる荷重下において、該アクリル板の透過孔から3分ごとに脱繊維馬血を3.0gずつ合計6.0g流し込む。前記馬血を流し込んでから300秒後にアクリル板を取り除き、次いで、ティッシュペーパーを前記不織布の表面上に重ね、更に、該ティッシュペーパーの上に重石を重ねて、該ナプキンに2000Paの荷重を掛けた。重石を重ねてから5秒後に該重石及びティッシュペーパーを取り除き、該ティッシュペーパーの重量(W4)を測定し、予め測定しておいた、前記不織布の表面上に重ねる前のティッシュペーパーの重量(W3)との差(W4−W3)を算出した。以上の操作を3回行い、3回の平均値を液戻り量(mg)とし、ウェットバック量が少ないほど、液戻りが起こり難く高評価となる。その結果を表1〜3に示した。
(不織布試験体のL値の測定;隠蔽性の測定)
前記各評価用の生理用ナプキンについて、表面シート(不織布試験体)表面のL値を測定した。具体的には、日本電色工業株式会社製の簡易型分光色差計NF333を用いて、脱繊維馬血を投入した位置とその周辺とにおけるL値を測定した。前者は、表面シートの赤みと吸収体の赤みが重なる部分のL値(明度)を測定した。後者は、上記の分光色差計を用いて、表面シートの赤みがない部分で、かつ、吸収体の赤みがある部分についてL値を測定した。なお、L値の測定は、該アクリル板の透過孔から3分ごとに脱繊維馬血を3.0gずつ合計6.0g流し込み、30分経過した時点で行った。
表1〜3では、前者の数値を単に「白さ(L値)」の欄に示し、後者の数値を「吸収体から透過したL値」の欄に示した。すなわち、「白さ」は表面シート自体と吸収体の赤みの隠蔽性を示し、「吸収体から透過した値」は吸収体の赤み隠蔽性を示す。
L値(明度)はその値が大きいほど、色が白に近づき、表面シート(不織布試験体)に赤みが見えにくいことを示す。すなわち、隠蔽性が高いことを示す。「白さ」は65以上、「吸収体から透過したL値」は75以上でれば、不織布の隠蔽性として高い性能を示すものとして合格とした。
(官能評価:吸収性の評価)
液残り評価と同様に、6.0gの脱繊維馬血を投入後、30分経過させたサンプルを、平らな台の上におき、吸収後の見た目だけで、以下の3段階の基準により判定した。結果は、10人のモニター(20代〜40代の成人女性)を対象として実施し、その平均で示した。
判定基準
3:見た目が白く、吸収性が良いと感じる。
2:見た目が赤く、やや吸収性が悪く感じる。
1:見た目の赤みが強く、吸収性が悪く感じる。
Figure 0006332805
Figure 0006332805
Figure 0006332805
表1〜3に示すとおり、実施例1〜12は、比較例1〜4と同じ程度に繊維間距離を小さくしたにも拘らず、比較例1〜4よりも液残り量及び液戻り量が低く抑えられていた。これは、実施例1〜12が成分(A)〜(C)を付着させたことで親水度が上がったことによる。これに対して、比較例1及び2では、第2層に成分(C)を付着させなかったことで、第2層第1部位は、その親水度が上がらず(接触角の値が小さくならず)、むしろ第1層第1部に対して相対的に疎水化する方向になっていた。そのため、好ましい親水度勾配が発現せず、液残り量及び液戻り量が高いままとなっていた。すなわち、第1層第1部位対する第2層第1部位の親水度の高さが液残り量を低下させる傾向にあり、このことは特に実施例1〜5、11、12及び比較例1、2の比較から確認できる。さらに比較例3及び4は、第2層で成分(A)を付着させなかったことで、第2層の第1部位と第2部位との間で好ましい親水度勾配が発現せず、液残り量及び液戻り量が高いままとなっていた。
また、実施例7及び8と実施例1〜5との比較で分かるように、第2層にヒドロキシスルホベタインの添加量を増やしていくと、親水度が高まると共に、第2層の第1部位と第2部位との間で親水度勾配が小さくなり、やや液残り量の増加が確認できる。このことから、親水度を高めたまま、不織布全体に親水度勾配を付与していくことが性能をより高めることに繋がり好ましい。
さらに、実施例1〜12は、第2層の繊維間距離を比較例6及び7よりも小さくして、「白さ(L値)」及び「吸収体から透過したL値」が比較例6及び7よりも高くなっていた。すなわち、隠蔽性が比較例6及び7よりも高いものとなっていた。また、吸収性の「官能評価」でも実施例1〜12は、比較例6及び7よりも吸収性の良いものと判断された。一方、液残り量や液戻り量に関しては、実施例1〜12は、これより繊維間距離の大きい比較例6及び7と同等程度またはそれ以下に抑えられていた。
加えて、実施例1〜12は、第1層しかない比較例5よりも「白さ(L値)」、「吸収体から透過したL値」及び「官能評価」の3つの結果が良いものであった。
10 不織布
10A (不織布の)第1面
10B (不織布の)第2面
1 第1層
1A (第1層の)第1面
1B (第2層の)第2面
2 第2層
2A (第2層の)第1面
2B (第2層の)第2面

Claims (11)

  1. 少なくとも2層を有する不織布であって、該不織布の一方の面側の層は、繊維間距離を90μm以下とし、繊維処理剤が付着した熱融着性繊維を有し、前記繊維処理剤が(A)ポリオルガノシロキサン、(B)リン酸エステル型のアニオン界面活性剤、及び(C)アルキルヒドロキシスルホベタインを含有する、不織布。
  2. 前記成分(A)であるポリオルガノシロキサンが繊維処理剤の全質量に対して1質量%以上30質量%以下の割合で含まれている請求項1記載の不織布。
  3. 前記成分(A)と前記成分(C)との含有比が、質量比で1:1.6から1:0.6である請求項1又は2に項記載の不織布。
  4. 前記成分(C)であるアルキルスルホベタインを繊維処理剤の全質量に対して10質量%未満の割合で含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の不織布。
  5. 前記不織布の一方の面側の層が主成分として2.0dtex以下の繊維を含んでなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の不織布。
  6. 前記不織布の一方の面側と反対の面側の層が、熱伸長性繊維と非熱伸長性の熱融着性繊維とで混綿されてなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の不織布。
  7. 前記不織布の一方の面側と反対面側の層が、ポリオルガノシロキサンを含んでいる請求項1〜6のいずれか1項に記載の不織布。
  8. 前記不織布の一方の面側と反対面側の層が、繊維処理剤として、下記の成分(A)、(B)及び(D)を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の不織布。
    (A)ポリオルガノシロキサン、
    (B)リン酸エステル型のアニオン界面活性剤、
    (D)下記の一般式(II)で表わされるアニオン界面活性剤
    Figure 0006332805
    (式中、Zはエステル基、アミド基、アミン基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖を表わす。R及びRはそれぞれ独立に、エステル基、アミド基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数2以上16以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表わす。Xは―SOM、―OSOM又は―COOMを表わし、MはH、Na、K、Mg、Ca又はアンモニウムを表わす。)
  9. 前記不織布の一方の面側と反対面側の層が、下記の成分(A)、(B)及び(E)を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の不織布。
    (A)ポリオルガノシロキサン、
    (B)リン酸エステル型のアニオン界面活性剤、
    (E)ポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステル
  10. 前記一方の面側と反対面側の層が、下記の成分(A)、(B)、(D)及び(E)を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の不織布。
    (A)ポリオルガノシロキサン、
    (B)リン酸エステル型のアニオン界面活性剤、
    (E)ポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステル
    (D)下記の一般式(II)で表わされるアニオン界面活性剤
    Figure 0006332805
    (式中、Zはエステル基、アミド基、アミン基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル鎖を表わす。R及びRはそれぞれ独立に、エステル基、アミド基、ポリオキシアルキレン基、エーテル基若しくは2重結合を含んでいてもよい、炭素数2以上16以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表わす。Xは―SOM、―OSOM又は―COOMを表わし、MはH、Na、K、Mg、Ca又はアンモニウムを表わす。)
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の不織布を用いた吸収性物品。
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