JP6324327B2 - パッシブレーダ装置 - Google Patents
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Description
以下の特許文献1には、既存の電波送信源として、パルスを発信するパルスレーダが用いられているパッシブレーダ装置が開示されている。
図1はこの発明の実施の形態1によるパッシブレーダ装置を示す構成図である。
図1において、パルスレーダ1は観測対象である目標2に向けて、パルスを繰り返し発信する既存のレーダである。
目標2は例えば飛行機や船舶などの移動体が該当する。ただし、停止中の飛行機や船舶なども観測対象に含まれる。
Ref受信系4はRef受信系アンテナ3の受信信号から、その直接波の到来時刻TOA(Time of Arrival)を推定して、その到来時刻TOAを示す時刻情報を送信する。
なお、Ref受信系アンテナ3及びRef受信系4から直接波受信系が構成されている。
図1の例では、Sur受信系アンテナ5は、パルスレーダ1との間に遮蔽物が存在しているために、パルスレーダ1から発信されたパルスの直接波を受信することができない位置に設置されているが、パルスレーダ1から発信されたパルスの直接波を受信することができる位置に設置されていてもよい。
Sur受信系6はRef受信系4から送信された時刻情報を受信し、その時刻情報が示す到来時刻TOAと、配置情報が示すパルスレーダ1、Ref受信系アンテナ3及びSur受信系アンテナ5の設置位置とから、直接波がSur受信系アンテナ5に到来する時刻TOAを推定する。
また、Sur受信系6は推定した直接波の到来時刻TOAとSur受信系アンテナ5により受信された反射波を用いて、目標2を観測する。
なお、Sur受信系アンテナ5及びSur受信系6から反射波受信系が構成されている。
RF部12は局部発振器11から出力された周波数fLOの局部発振信号を用いて、Ref受信系アンテナ3の受信信号の周波数を変換する周波数変換器である。例えば、RF部12は受信信号の周波数をダウンコンバートする。
また、RF部12はRef受信系アンテナ3の受信信号又は周波数変換後の受信信号を必要に応じて増幅する。
ADC13はRF部12による周波数変換後の受信信号をA/D変換して、デジタルの受信信号(デジタル信号)を出力するアナログデジタル変換器である。
TOA推定部15は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、パルス圧縮器14から出力されたパルス圧縮後の受信信号から直接波の到来時刻TOAを推定し、その到来時刻TOAを示す時刻情報を出力する処理を実施する。
送信部16はSur受信系6の受信部25と無線又は有線で接続されており、TOA推定部15から出力された時刻情報をSur受信系6の受信部25に送信する通信機器である。
RF部22は局部発振器21から出力された周波数fLOの局部発振信号を用いて、Sur受信系アンテナ5の受信信号の周波数を変換する周波数変換器である。例えば、RF部22は受信信号の周波数をダウンコンバートする。
また、RF部22はSur受信系アンテナ5の受信信号又は周波数変換後の受信信号を必要に応じて増幅する。
ADC23はRF部22による周波数変換後の受信信号をA/D変換して、デジタルの受信信号(デジタル信号)を出力するアナログデジタル変換器である。
なお、局部発振器21、RF部22、ADC23及びパルス圧縮器24から信号受信部が構成されている。
補正TOA生成部26はパルスレーダ1、Ref受信系アンテナ3及びSur受信系アンテナ5の設置位置を示す配置情報を入力し、その配置情報が示す設置位置を用いて、受信部25から出力された時刻情報が示す到来時刻TOAを補正することで、直接波がSur受信系アンテナ5に到来する時刻である補正TOAを算出する処理を実施する。
なお、受信部25及び補正TOA生成部26から第1の到来時刻推定部が構成されている。
また、レンジング部27はパルスヒット毎、即ち、TOA推定部15により直接波の到来時刻TOAが推定されて、補正TOA生成部26により直接波の到来時刻が補正される毎に、バイスタティックレンジRBiを算出すると、各パルスヒットに対応するバイスタティックレンジRBiを示すレンジプロファイルを生成する処理を実施する。なお、レンジング部27は目標観測部を構成している。
目標検出測位部28はレンジング部27により生成されたレンジプロファイルを参照して、目標2の検出処理や測位処理を実施する。
図2はRef受信系4又はSur受信系6の一部がコンピュータで構成される場合のハードウェア構成図である。
なお、Ref受信系4の構成要素であるパルス圧縮器14及びTOA推定部15についても、コンピュータで構成されていてもよく、コンピュータで構成される場合には、パルス圧縮器14及びTOA推定部15の処理内容を記述しているプログラムを図2に示すコンピュータのメモリ31に格納し、当該コンピュータのプロセッサ32がメモリ31により格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
パルスレーダ1は、観測対象である目標2に向けて、パルスを繰り返し発信する。
Ref受信系アンテナ3は、パルスレーダ1を見通せる位置に設置されており、パルスレーダから発信されたパルスの直接波を受信する。
Ref受信系4は、Ref受信系アンテナ3の受信信号から、その直接波の到来時刻TOAを推定して、その到来時刻TOAを示す時刻情報をSur受信系6に送信する。
以下、Ref受信系4の処理内容を具体的に説明する。
図3はRef受信系4における信号の遷移を示す説明図である。
RF部12は、局部発振器11から周波数fLOの局部発振信号を受けると、その局部発振信号をRef受信系アンテナ3の受信信号に乗算することで、Ref受信系アンテナ3の受信信号の周波数を変換し、周波数変換後の受信信号をADC13に出力する。
なお、RF部12は、Ref受信系アンテナ3の受信信号又は周波数変換後の受信信号を必要に応じて増幅する。
ADC13は、RF部12から周波数変換後の受信信号を受けると、その受信信号をA/D変換して、デジタルの受信信号をパルス圧縮器14に出力する。
図3(a)は、ADC13から出力されたデジタルの受信信号を示しており、送信源であるパルスレーダ1がアンテナ装置の電子制御や機械回転によって、電波照射方位が時間変動する場合、Ref受信系アンテナ3により受信されたパルス毎に振幅(電力)が変動する。
パルス圧縮器14による受信信号のパルス圧縮処理は、レプリカ信号による整合フィルタ(Matched Filter)処理が該当し、時間領域でのシフト相関演算処理や周波数領域でのスペクトル乗算処理などで実現することができる。
図3(b)は、パルス圧縮器14から出力されたパルス圧縮後の受信信号を示している。
即ち、TOA推定部15は、予め設定された閾値と、パルス圧縮後の受信信号であるパルスの振幅(電力)とを比較し、その閾値より電力が大きいパルスの立ち上がり時刻を到来時刻TOAとして抽出し、その到来時刻TOAを示す時刻情報を送信部16に出力する。
送信源であるパルスレーダ1の空中線電力やアンテナパターン、パルスレーダ1とRef受信系アンテナ3の間の距離、Ref受信系4における利得や雑音、パルス圧縮の利得等から容易に計算されるRef受信系アンテナ3の受信パルスのSNR(Signal to Noise Ratio)を考慮し、上記の閾値は、パルス圧縮後の受信信号であるパルスだけが、所望のSNRを上回るような値に設定される。
図3(c)は、TOA推定部15により推定された到来時刻TOAを示している。
送信部16から送信される時刻情報は、到来時刻TOAとして、各パルスの立ち上がり時刻を示す情報であり、各時刻の複素振幅のサンプリング情報であるパルス圧縮後の受信信号と比較して、データ量が大幅に削減されているため、高速な通信回線を用いなくても通信可能である。
Sur受信系6は、Ref受信系4から送信された時刻情報を受信し、その時刻情報が示す到来時刻TOAと、配置情報が示すパルスレーダ1、Ref受信系アンテナ3及びSur受信系アンテナ5の設置位置とから、Sur受信系アンテナ5の設置位置で直接波を受信した場合と等価な直接波の到来時刻TOAを推定する。
また、Sur受信系6は、その推定した直接波の到来時刻TOAとSur受信系アンテナ5により受信された反射波を用いて、目標2を観測する。
以下、Sur受信系6の処理内容を具体的に説明する。
図4はSur受信系6における信号の遷移を示す説明図である。図4では説明の便宜上、目標2の反射波のみを記載している。
Sur受信系6のRF部22は、局部発振器21から周波数fLOの局部発振信号を受けると、その局部発振信号をSur受信系アンテナ5の受信信号に乗算することで、Sur受信系アンテナ5の受信信号の周波数を変換し、周波数変換後の受信信号をADC23に出力する。
なお、RF部22は、Sur受信系アンテナ5の受信信号又は周波数変換後の受信信号を必要に応じて増幅する。
図4(a)は、ADC23から出力されたデジタルの受信信号を示しており、送信源であるパルスレーダ1がアンテナ装置の電子制御や機械回転によって、電波照射方位が時間変動する場合、Sur受信系アンテナ5により受信されたパルス毎に振幅(電力)が変動する。
パルス圧縮器24は、ADC23からデジタルの受信信号を受けると、Ref受信系4のパルス圧縮器14と同様に、デジタルの受信信号をパルス圧縮し、パルス圧縮後の受信信号をレンジング部27に出力する。
図4(b)は、パルス圧縮器24から出力されたパルス圧縮後の受信信号を示している。
ただし、この時刻情報は、Ref受信系アンテナ3の設置位置で直接波を受信した場合の直接波の到来時刻TOAを示すものであって、Sur受信系アンテナ5の設置位置で直接波を受信した場合の直接波の到来時刻TOAを示すものではない。このため、この時刻情報が示す直接波の到来時刻TOAをそのまま用いて、目標2の距離等の算出を行うと、Ref受信系アンテナ3とSur受信系アンテナ5の設置位置の違いに依存する誤差が生じる。
そこで、補正TOA生成部26は、Ref受信系アンテナ3とSur受信系アンテナ5の配置の関係に基づいて、その時刻情報が示す到来時刻TOAを補正することで、直接波がSur受信系アンテナ5に到来する時刻である補正TOAを算出する。
以下、補正TOA生成部26の処理内容を具体的に説明する。
即ち、補正TOA生成部26は、下記の式(1)によって遅延時間τを算出する。
式(1)において、RTx−Surはパルスレーダ1とSur受信系アンテナ5の間の距離、RTx−Refはパルスレーダ1とRef受信系アンテナ3の間の距離である。
また、pTxはパルスレーダ1の位置ベクトル、pSurはSur受信系アンテナ5の位置ベクトル、pRefはRef受信系アンテナ3の位置ベクトルである。
cはパルスレーダ1から発信されたパルスの伝搬速度、||・||はユークリッドノルムである。
実際には、Sur受信系アンテナ5ではパルスの直接波を受信することができないが、補正後の到来時刻TOAである補正TOAは、Sur受信系アンテナ5の設置位置で直接波を受信した場合と等価な直接波の到来時刻である。
補正TOA=到来時刻TOA+τ (2)
図4(c)は、補正TOA生成部26により算出された補正TOAを示している。
即ち、レンジング部27は、Ref受信系4のTOA推定部15と同様に、予め設定された閾値と、パルス圧縮後の受信信号であるパルスの振幅(電力)とを比較し、その閾値より電力が大きいパルスの立ち上がり時刻を反射波の到来時刻として抽出する。
送信源であるパルスレーダ1の空中線電力やアンテナパターン、パルスレーダ1とSur受信系アンテナ5の間の距離、Sur受信系6における利得や雑音、パルス圧縮の利得等から容易に計算されるSur受信系アンテナ5の受信パルスのSNRを考慮し、上記の閾値は、パルス圧縮後の受信信号であるパルスだけが、所望のSNRを上回るような値に設定される。
即ち、レンジング部27は、下記の式(3)に示すように、反射波の到来時刻と補正TOAとの時刻差ΔTOAにパルスの伝搬速度cを乗算することで、バイスタティックレンジRBiを算出する。
式(3)において、PTgtは目標2が存在している可能性がある位置の位置ベクトルである。
即ち、モノスタティックレーダで観測されるレンジは、レーダを中心として、目標が円周上に存在する円(球)の情報であるのに対し、パッシブレーダのバイスタティックレンジRBiは、送信源であるパルスレーダ1とSur受信系アンテナ5を焦点として、目標が円周上に存在する楕円(球)の情報である。
ただし、バイスタティックレンジを観測する場合でも、通常のモノスタティックレーダと同様に、目標2の方位情報等と組み合わせることで、目標2の位置推定を容易に行うことができる。
図4(d)では、パルス圧縮後の受信信号であるパルス毎に、補正TOAが基準時刻(時刻=0)に設定されており、←→は各パルスヒットでのバイスタティックレンジを示している。
目標2の検出処理や測位処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略するが、目標2の検出処理や測位処理を実施する際、送信源であるパルスレーダ1の各パルスヒットでのビーム指向方位の情報を使用するようにしてもよい。また、各パルスヒットのレンジプロファイルをノンコヒーレントに加算する処理を適用することが可能である。
即ち、Sur受信系アンテナ5の設置位置が、パルスの直接波を受信できる位置に制限されないため、目標2の観測に適している位置に設置することができるため、バイスタティックレンジRBiの算出精度を高めることができる。
上記実施の形態1では、Sur受信系アンテナ5の設置位置から目標2が存在している可能性がある位置までの距離であるバイスタティックレンジRBiを算出するものを示したが、この実施の形態2では、さらに、目標2のドップラ周波数を示すバイスタティックドップラ周波数を算出するものを説明する。
図5はこの発明の実施の形態2によるパッシブレーダ装置を示す構成図であり、図5において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
Sur受信系6のヒット間積分部41はパルスヒット毎、即ち、TOA推定部15により直接波の到来時刻TOAが推定されて、補正TOA生成部26により直接波の到来時刻が補正される毎に、パルスヒット間で、パルス圧縮器24から出力されたパルス圧縮後の受信信号を積分することで、バイスタティックレンジRBi及びバイスタティックドップラ周波数からなるレンジドップラマップを生成する処理を実施する。なお、ヒット間積分部41は目標観測部を構成している。
目標検出測位部42はヒット間積分部41により生成されたレンジドップラマップを参照して、目標2の検出処理や測位処理を実施する。
例えば、パルス圧縮器24、補正TOA生成部26、ヒット間積分部41及び目標検出測位部42がコンピュータで構成される場合、パルス圧縮器24、補正TOA生成部26、ヒット間積分部41及び目標検出測位部42の処理内容を記述しているプログラムを図2に示すコンピュータのメモリ31に格納し、当該コンピュータのプロセッサ32がメモリ31により格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
ただし、ヒット間積分部41及び目標検出測位部42以外は、上記実施の形態1と同様であるため、ここでは、ヒット間積分部41及び目標検出測位部42の処理内容だけを説明する。
図6はSur受信系6における信号の遷移を示す説明図である。図6では説明の便宜上、目標2の反射波のみを記載している。
以下、ヒット間積分部41の処理内容を具体的に説明する。
図6(b)では、パルス圧縮後の受信信号であるパルス毎に、基準時刻が設定されていることを示している。
そして、ヒット間積分部41は、隣接している補正TOAの間のパルス圧縮後の受信信号の時間サンプルを縦方向に並べた2次元データのマップとして、レンジヒットマップを生成する。
図6(c)は、レンジヒットマップを示している。なお、t’の単位は時間であるが、t’を距離に変換することが可能であり、図6(c)では、説明の便宜上、t’をレンジとして記述している。例えば、t’にパルスの伝搬速度を乗算することで距離に変換することができる。
このパルスヒット間の積分処理は、パルスヒットをサンプルタイミングとする以下の離散フーリエ変換として処理することができる。
式(4)において、y(t’,fd)はドップラ周波数fdについてのヒット間積分結果、x(t’,i)はiヒット目におけるパルス圧縮後の受信信号、Nはヒット数、TOAiはiヒット目における反射波のTOAの値である。
例えば、パルスレーダ1から発信されるパルスの間隔がT1からT2に切り替えられた場合、パルス圧縮後の受信信号を、T1の間隔でパルスが発信されているときの受信信号と、T2の間隔でパルスが発信されているときの受信信号とにグループ分けする。
そして、T1の間隔でパルスが発信されているときの受信信号を高速フーリエ変換し、また、T2の間隔でパルスが発信されているときの受信信号を高速フーリエ変換するようにする。
目標2の検出処理や測位処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略するが、この実施の形態2では、目標検出測位部42が、レンジドップラマップを参照して、目標2の検出処理や測位処理を実施するので、例えば、ドップラ周波数が非ゼロの成分のみを検出対象とすることで、移動している目標2のみを検出する等の処理も可能である。
上記実施の形態2では、Sur受信系6の局部発振器21が、基準信号である周波数fLOの局部発振信号を出力するものを示しているが、その局部発振信号の周波数に誤差が含まれている場合、その誤差の影響で、目標2のドップラ周波数fdの算出結果にも誤差が生じる。
この実施の形態3では、局部発振信号の周波数に含まれている誤差を推定して、目標2のドップラ周波数fdの算出結果を補正するものについて説明する。
Sur受信系6の局部発振器51は基準信号である局部発振信号を出力する発振器である。この局部発振信号の周波数には周波数誤差Δf2が含まれているため、この局部発振信号の周波数は(fLO+Δf2)になっている。
周波数誤差推定部52はヒット間積分部41により生成されたレンジドップラマップを参照して、静止クラッタ源であるグランドクラッタ50のドップラ周波数を探索し、グランドクラッタ50のドップラ周波数から周波数誤差Δf2を推定する処理を実施する。なお、周波数誤差推定部52は第1の周波数誤差推定部を構成している。
ドップラ周波数補正部53は周波数誤差推定部52により推定された周波数誤差Δf2を用いて、ヒット間積分部41により生成されたレンジドップラマップを補正する処理を実施する。
例えば、パルス圧縮器24、補正TOA生成部26、ヒット間積分部41、目標検出測位部42、周波数誤差推定部52及びドップラ周波数補正部53がコンピュータで構成される場合、パルス圧縮器24、補正TOA生成部26、ヒット間積分部41、目標検出測位部42、周波数誤差推定部52及びドップラ周波数補正部53の処理内容を記述しているプログラムを図2に示すコンピュータのメモリ31に格納し、当該コンピュータのプロセッサ32がメモリ31により格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
この実施の形態3では、Sur受信系6の局部発振器51から出力される局部発振信号の周波数に周波数誤差Δf2が含まれており、局部発振器51から周波数(fLO+Δf2)の局部発振信号が出力される点で、上記実施の形態2と相違している。
また、局部発振信号の周波数に含まれている周波数誤差Δf2の影響で生じる目標2のドップラ周波数fdの算出結果の誤差を補償する点で相違している。
ただし、局部発振器51から出力される局部発振信号の周波数に周波数誤差Δf2が含まれているため、その周波数誤差Δf2の影響で、レンジドップラマップから得られる目標2のドップラ周波数fdは誤差を含んでいるものとなる。
図8はSur受信系6における信号の遷移を示す説明図である。図8では、目標2の反射波のほかに、グランドクラッタ50の反射波も記載している。
グランドクラッタ50は静止物であるため、グランドクラッタ50のドップラ周波数は、本来0であるが、局部発振器51から出力される局部発振信号の周波数に周波数誤差Δf2が含まれているため、図8(a)に示すように、グランドクラッタ50のドップラ周波数が非ゼロの領域に発生している。
このとき、レンジドップラマップ上には、目標2の反射波の成分も存在しているが、一般的に、グランドクラッタ50の反射波の電力は、目標2の反射波の電力より大きいので、単純にレンジドップラマップ上で、最も電力が大きいピークの探索を行い、そのピークの電力をグランドクラッタ50の反射波の電力として扱うようにすればよい。
即ち、ドップラ周波数補正部53は、図8(b)に示すように、局部発振信号の周波数に含まれている周波数誤差Δf2だけ、レンジドップラマップのドップラ周波数軸の原点をシフトさせることで、レンジドップラマップを補正する。
これにより、グランドクラッタ50のドップラ周波数が0になるようにレンジドップラマップが補正されるので、補正後のレンジドップラマップから得られる目標2のドップラ周波数fdも補正されて、ドップラ周波数fdの誤差が補償される。
上記実施の形態3では、局部発振器51から出力される局部発振信号の周波数に含まれている周波数誤差Δf2を推定して、目標2のドップラ周波数fdの算出結果を補正するものを示したが、この実施の形態4では、更に、Ref受信系4の局部発振器から出力される局部発振信号の周波数に含まれている周波数誤差Δf1を推定して、TOA推定部15により推定された直接波の到来時刻TOAを補正するものについて説明する。
Ref受信系4の局部発振器61は基準信号である局部発振信号を出力する発振器である。この局部発振信号の周波数には周波数誤差Δf1が含まれているため、この局部発振信号の周波数は(fLO+Δf1)になっている。
直接波探索部63はヒット間積分部62により生成されたレンジドップラマップを参照して、パルスレーダ1から発信された直接波のドップラ周波数を探索し、直接波のドップラ周波数から、局部発振器61から出力された局部発振信号の周波数に含まれている周波数誤差Δf1を推定する処理を実施する。
なお、ヒット間積分部62及び直接波探索部63から第2の周波数誤差推定部が構成されている。
到来時刻補正部64は直接波探索部63により推定された周波数誤差Δf1を用いて、TOA推定部15により推定された直接波の到来時刻TOAを補正する処理を実施する。
例えば、パルス圧縮器14、TOA推定部15、ヒット間積分部62、直接波探索部63及び到来時刻補正部64がコンピュータで構成される場合、パルス圧縮器14、TOA推定部15、ヒット間積分部62、直接波探索部63及び到来時刻補正部64の処理内容を記述しているプログラムを図2に示すコンピュータのメモリ31に格納し、当該コンピュータのプロセッサ32がメモリ31により格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
この実施の形態4では、Ref受信系4の局部発振器61から出力される局部発振信号の周波数に周波数誤差Δf1が含まれており、局部発振器61から周波数(fLO+Δf1)の局部発振信号が出力される点で、上記実施の形態3と相違している。
また、局部発振信号の周波数に含まれている周波数誤差Δf1の影響で生じる直接波の到来時刻TOAの誤差を補正する点で相違している。
レンジドップラマップを生成する処理自体は、Sur受信系6のヒット間積分部41の処理内容と同様であるため詳細な説明を省略する。
図10はRef受信系4における信号の遷移を示す説明図である。図10では、説明の便宜上、直接波のみを記載している。
直接波もグランドクラッタ50と同様に、本来はドップラ周波数が0となる信号成分であるが、局部発振器61から出力される局部発振信号の周波数に周波数誤差Δf1が含まれているため、図10(a)に示すように、直接波のドップラ周波数が非ゼロの領域に発生している。
図10(a)には、反射波の成分を記載していないが、レンジドップラマップ上には、目標2の反射波の成分も存在することがある。一般的に、直接波の電力は、目標2の反射波の電力より大きいので、単純にレンジドップラマップ上で、最も電力が大きいピークの探索を行い、そのピークの電力を直接波の電力として扱うようにすればよい。
即ち、到来時刻補正部64は、例えば、パルスレーダ1から発信されるパルスの信号波形、パルスの信号時間長T、パルスの周波数帯域幅Bなどから容易に決定される時間ずれ関数d(・)を用いて、到来時刻TOAの時間ずれd(Δf1)を算出し、その時間ずれd(Δf1)をTOA推定部15により推定された直接波の到来時刻TOAに加算することで、直接波の到来時刻TOAを補正する。下記の式(5)は、時間ずれd(Δf1)の算出例を示している。
図10(b)(c)は到来時刻補正部64による補正前後の到来時刻TOAを示している。
送信部16は、Sur受信系6の受信部25と無線又は有線で接続されており、到来時刻補正部64により補正された到来時刻TOAを示す時刻情報をSur受信系6の受信部25に送信する。
Sur受信系6の処理内容は、上記実施の形態3と同様であるため詳細な説明を省略する。
ただし、ドップラ周波数補正部53が、上記実施の形態3と同様に、レンジドップラマップにおけるバイスタティックドップラ周波数を補正するほかに、レンジドップラマップにおけるバイスタティックレンジを補正することもできる。
即ち、ドップラ周波数補正部53が、到来時刻補正部64と同様の方法で、局部発振器51から出力される局部発振信号に含まれている周波数誤差Δf2の影響で生じる反射波の到来時刻TOAの時間ずれd(Δf2)を算出する。
そして、ドップラ周波数補正部53が、その時間ずれd(Δf2)にパルスの伝搬速度cを乗算することで、その時間ずれd(Δf2)に伴うレンジずれを算出したのち、そのレンジずれをバイスタティックレンジRBiに加算することで、バイスタティックレンジRBiを補正することができる。
図11(b)は、バイスタティックドップラ周波数とバイスタティックレンジを補正している様子を示している。
この場合、局部発振器51から出力される局部発振信号の周波数に周波数誤差Δf2が含まれている場合でも、バイスタティックドップラ周波数とバイスタティックレンジの双方を正確に算出することができる。
上記実施の形態1のパッシブレーダ装置に適用した場合、局部発振器61から出力される局部発振信号の周波数に周波数誤差Δf1が含まれている場合でも、バイスタティックレンジを正確に算出することができる効果を奏する。
また、上記実施の形態2のパッシブレーダ装置に適用した場合、局部発振器61から出力される局部発振信号の周波数に周波数誤差Δf1が含まれている場合でも、この実施の形態4と同様に、バイスタティックドップラ周波数及びバイスタティックレンジを正確に算出することができる効果を奏する。
上記実施の形態1〜4では、Ref受信系アンテナ3と別に位置に、1つのSur受信系アンテナ5が設置されて、そのSur受信系アンテナ5とSur受信系6が接続されているものを示したが、Ref受信系アンテナ3と別に位置に、複数のSur受信系アンテナ5が設置されて、複数のSur受信系アンテナ5がSur受信系6とそれぞれ接続されているものであってもよい。
このとき、Ref受信系4の送信部16は、到来時刻TOAを示す時刻情報を2つのSur受信系6に送信し、2つのSur受信系6は、その時刻情報が示す到来時刻TOAを用いて、上記実施の形態1〜4と同様の処理を実施する。
これにより、上記実施の形態1〜4と同様の効果を奏するほか、複数のSur受信系6を設置しても、Sur受信系6毎に、Ref受信系4を設置する必要がないため、Ref受信系4の設置数を削減することができる効果も奏する。
Claims (9)
- パルスを発信するパルスレーダを見通せる位置に設置され、前記パルスレーダから発信されたパルスの直接波を受信する直接波受信系と、前記直接波受信系と別の位置に設置され、前記パルスレーダから発信されたのち、観測対象である目標に反射されたパルスの反射波を受信する反射波受信系とから構成されており、
前記直接波受信系は、前記直接波の到来時刻を推定して、前記到来時刻を示す時刻情報を送信し、
前記反射波受信系は、
前記反射波の受信信号を出力する信号受信部と、
前記直接波受信系から送信された時刻情報を受信し、前記時刻情報が示す到来時刻と、前記パルスレーダ、前記直接波受信系及び前記反射波受信系の設置位置とから、前記直接波が前記反射波受信系に到来する時刻を推定する第1の到来時刻推定部と、
前記第1の到来時刻推定部により推定された直接波の到来時刻と前記信号受信部から出力された受信信号を用いて、前記第1の到来時刻推定部により直接波の到来時刻が推定される毎に、隣接している到来時刻の間で、前記信号受信部から出力された受信信号を積分することで、前記反射波受信系の設置位置から前記目標が存在している可能性がある位置までの距離であるバイスタティックレンジ及び前記目標のドップラ周波数であるバイスタティックドップラ周波数を算出し、前記目標を観測する目標観測部とを備え、
前記信号受信部は、
局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、
前記第1の局部発振器から出力された局部発振信号を用いて、前記反射波の周波数を変換する第1の周波数変換器と、
前記第1の周波数変換器により周波数が変換された反射波をデジタル信号に変換する第1のアナログデジタル変換器と、
前記第1のアナログデジタル変換器により変換されたデジタル信号をパルス圧縮し、パルス圧縮後のデジタル信号を前記反射波の受信信号として出力する第1のパルス圧縮器とを具備し、
前記目標観測部による受信信号の積分結果から静止物のドップラ周波数を探索して、前記静止物のドップラ周波数から前記局部発振信号の周波数誤差を推定する第1の周波数誤差推定部と、
前記第1の周波数誤差推定部により推定された周波数誤差を用いて、前記目標観測部により算出されたバイスタティックドップラ周波数を補正するドップラ周波数補正部とを備えたことを特徴とする
パッシブレーダ装置。 - 前記目標観測部は、前記信号受信部より出力された受信信号から前記反射波の到来時刻を推定し、前記反射波の到来時刻と前記第1の到来時刻推定部により推定された直接波の到来時刻との時刻差から、前記反射波受信系の設置位置から前記目標が存在している可能性がある位置までの距離であるバイスタティックレンジを算出することを特徴とする請求項1記載のパッシブレーダ装置。
- 前記直接波受信系は、
局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、
前記第2の局部発振器から出力された局部発振信号を用いて、前記直接波の周波数を変換する第2の周波数変換器と、
前記第2の周波数変換器により周波数が変換された直接波をデジタル信号に変換する第2のアナログデジタル変換器と、
前記第2のアナログデジタル変換器により変換されたデジタル信号をパルス圧縮し、パルス圧縮後のデジタル信号を前記直接波の受信信号として出力する第2のパルス圧縮器と、
前記第2のパルス圧縮器より出力された直接波の受信信号から、前記直接波の到来時刻を推定する第2の到来時刻推定部と、
前記第2の到来時刻推定部により直接波の到来時刻が推定される毎に、隣接している到来時刻の間で、前記第2のパルス圧縮器から出力された直接波の受信信号を積分し、前記受信信号の積分結果から前記直接波のドップラ周波数を探索して、前記直接波のドップラ周波数から、前記第2の局部発振器より出力された局部発振信号の周波数誤差を推定する第2の周波数誤差推定部と、
前記第2の周波数誤差推定部により推定された周波数誤差を用いて、前記第2の到来時刻推定部により推定された直接波の到来時刻を補正する到来時刻補正部と、
前記到来時刻補正部により補正された直接波の到来時刻を示す時刻情報を送信する送信部とから構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のパッシブレーダ装置。 - パルスを発信するパルスレーダを見通せる位置に設置され、前記パルスレーダから発信されたパルスの直接波を受信する直接波受信系と、前記直接波受信系と別の位置に設置され、前記パルスレーダから発信されたのち、観測対象である目標に反射されたパルスの反射波を受信する反射波受信系とから構成されており、
前記直接波受信系は、前記直接波の到来時刻を推定して、前記到来時刻を示す時刻情報を送信し、
前記反射波受信系は、
前記反射波の受信信号を出力する信号受信部と、
前記直接波受信系から送信された時刻情報を受信し、前記時刻情報が示す到来時刻と、前記パルスレーダ、前記直接波受信系及び前記反射波受信系の設置位置とから、前記直接波が前記反射波受信系に到来する時刻を推定する第1の到来時刻推定部と、
前記第1の到来時刻推定部により推定された直接波の到来時刻と前記信号受信部から出力された受信信号を用いて、前記第1の到来時刻推定部により直接波の到来時刻が推定される毎に、隣接している到来時刻の間で、前記信号受信部から出力された受信信号を積分することで、前記反射波受信系の設置位置から前記目標が存在している可能性がある位置までの距離であるバイスタティックレンジ及び前記目標のドップラ周波数であるバイスタティックドップラ周波数を算出し、前記目標を観測する目標観測部とを備え、
前記直接波受信系は、
局部発振信号を出力する第2の局部発振器と、
前記第2の局部発振器から出力された局部発振信号を用いて、前記直接波の周波数を変換する第2の周波数変換器と、
前記第2の周波数変換器により周波数が変換された直接波をデジタル信号に変換する第2のアナログデジタル変換器と、
前記第2のアナログデジタル変換器により変換されたデジタル信号をパルス圧縮し、パルス圧縮後のデジタル信号を前記直接波の受信信号として出力する第2のパルス圧縮器と、
前記第2のパルス圧縮器より出力された直接波の受信信号から、前記直接波の到来時刻を推定する第2の到来時刻推定部と、
前記第2の到来時刻推定部により直接波の到来時刻が推定される毎に、隣接している到来時刻の間で、前記第2のパルス圧縮器から出力された直接波の受信信号を積分し、前記受信信号の積分結果から前記直接波のドップラ周波数を探索して、前記直接波のドップラ周波数から、前記第2の局部発振器より出力された局部発振信号の周波数誤差を推定する第2の周波数誤差推定部と、
前記第2の周波数誤差推定部により推定された周波数誤差を用いて、前記第2の到来時刻推定部により推定された直接波の到来時刻を補正する到来時刻補正部と、
前記到来時刻補正部により補正された直接波の到来時刻を示す時刻情報を送信する送信部と具備いることを特徴とする
パッシブレーダ装置。 - 前記目標観測部は、前記信号受信部より出力された受信信号から前記反射波の到来時刻を推定し、前記反射波の到来時刻と前記第1の到来時刻推定部により推定された直接波の到来時刻との時刻差から、前記反射波受信系の設置位置から前記目標が存在している可能性がある位置までの距離であるバイスタティックレンジを算出することを特徴とする請求項4記載のパッシブレーダ装置。
- 前記目標観測部は、前記信号受信部から出力された受信信号の積分処理として、前記受信信号を離散フーリエ変換することを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のパッシブレーダ装置。
- 前記目標観測部は、前記パルスレーダから等間隔でパルスが発信される場合、前記信号受信部から出力された受信信号の積分処理として、前記受信信号を高速フーリエ変換することを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のパッシブレーダ装置。
- 前記目標観測部は、前記パルスレーダから等間隔で発信されるパルスの間隔が途中で切り替えられる場合、前記信号受信部から出力された受信信号を同一間隔のパルスに対応する受信信号単位にグループ分けし、前記信号受信部から出力された受信信号の積分処理として、同一グループに属する受信信号毎に、当該受信信号を高速フーリエ変換することを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のパッシブレーダ装置。
- 前記直接波受信系と別の位置に、前記反射波受信系が複数設置されており、
前記直接波受信系は、前記直接波の到来時刻を推定して、前記到来時刻を示す時刻情報を前記複数の反射波受信系に送信することを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載のパッシブレーダ装置。
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