本発明の実施形態に係る止水装置の要旨は、ヒンジを介して開閉する止水扉と、止水扉を囲繞する枠体とからなり、浸水領域と保護領域とを区画して止水する止水装置であって、止水扉は外周側端面に可撓性材料からなる中空のシール部を有し、シール部は内部へのエア流入により膨張し枠体の内周壁と水密状に当接することで浸水領域から保護領域への水の侵入を防止するように構成したことを特徴とする。すなわち、戸当りを必要とせず常に床面を平担に保持でき、しかも、止水作業を簡易な操作で行うことができる止水装置の提供を図ろうとするものである。
以下、本発明に係る止水装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。また、本説明中において左右同一又は左右対称の構造や部品については、原則として同一の符号を付し、左右何れか一方のみを説明して、他方については説明を適宜省略する。
また、止水装置はビル等の建物の出入口や通路、特に地下街や地下鉄の駅等の地下通路に設置され、止水装置を境界として水が侵入して来る側を浸水領域とし、水の侵入を阻止したい側を保護領域として説明する。
また、止水装置は左右壁と床面と天井を一体に閉塞する装置として説明するが、これに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の本発明の要旨の範囲内において種々の変形・変更が可能である。
また、本実施形態で説明するエアは窒素エアを用いているが、安全に使用できるものであればエアの種類は問わないものとする。
なお、本説明においては第1実施形態で片開き式の止水装置の説明をした後、第2実施形態で両開き式の止水装置の説明を行う。
[第1実施形態]
本発明の実施形態に係る止水装置1は、図1〜図3に示すように、ヒンジ102を介して開閉する止水扉2と、止水扉2を囲繞する枠体101とからなり、浸水領域Sと保護領域Hとを区画して止水する止水装置1であって、止水扉2は外周側端面3に可撓性材料からなる中空のシール部4を有し、シール部4は内部へのエア流入により膨張し枠体101の内周壁106と水密状に当接することで浸水領域Sから保護領域Hへの水の侵入を防止するよう構成している。
また、止水扉2の保護領域H側には、シール部4に供給するエアの送出を制御する機械式のエア送出切替部5と、エアタンク6と、を備え、シール部4は、エア送出切替部5を介してエアタンク6と連通連設している。
このように構成された止水装置1は、止水の必要のない通常時には開蓋した止水扉2を凹設した通路Tの側壁B内に収納して略固定することで止水装置1を意識することなく通路Tを歩行することができ、止水時には止水扉2を閉蓋し、エア送出切替部5の操作によりエアタンク6内のエアをシール部4内に供給するだけで枠体101の内周壁106にエアにより膨張したシール部4を水密に密着当接させることができ、浸水領域Sから保護領域Hへの水の侵入を極めて容易に防止することができる。
以下、本実施形態に係る止水装置1の構成について具体的に詳述する。
止水扉2は、図3(b)、図4、図5、図6(a)に示すようにコ字状の溝鋼7を格子状に溶接して組み上げ、外観視縦長矩形状に形成し、浸水領域S側の側面には止水板8を溶接している。また、外形をなす角部9は面取りの如く滑らかに湾曲し、外周側端面3には可撓性材料からなる中空の保護領域側シール部10と浸水領域側シール部11の2本のシール部4を隣接して平行に配設している。
止水扉2の骨格をなす溝鋼7は、左右を長手方向として浸水領域S側に開口を向け、所定間隔に上下に配置した上横溝鋼12と中横溝鋼13と下横溝鋼14と、上下を長手方向として所定間隔で対向配置すると共に対向側に開口を向け、各横溝鋼12,13,14の上下面の略中央部に溶接した縦溝鋼15a〜15hと、各横溝鋼12,13,14の左右端部に上下を長手方向として内側に開口を向けた縦枠溝鋼16a,16bと、上下の縦溝鋼15a,15b,15g,15hの端部に左右を長手方向として内側に開口を向けた横枠溝鋼17a,17bと、で主とする骨格を形成している。
また、角部9には略扇状の角鋼18を配置して、角鋼18の各側面に縦枠溝鋼16a,16bと横枠溝鋼17a,17bの端部を溶接固定することで、角部9が面取りされた外観視縦長矩形状の止水扉2の外形を現出している。この外形をなす外周側端面3にシール部4が配設される。
また、図6(a)に示すように、外周側端面3の保護領域H側の端部からは、外方に突出した帯状の目隠し板25を全周に渡り環状に形成している
なお、シール部4の材質は可撓性を有するゴム材料であればよく、例えば、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、VMQ(シリコーンゴム)、FKM(フッ素ゴム)等を主原料として使用でき、環境や使用方法により適宜選択することができる。
また、保護領域側シール部10と浸水領域側シール部11は、止水扉2の外周側端面3を全周に渡り囲繞するよう環状に形成している。これらシール部4は図6(a)、(b)に示すように、膨張時に円環状となるエア流通部19と、扁平状の接続基部20と、これらを連結する連結部21とで断面視略Ω状に形成している。連結部21は、エア流通部19と接続基部20の外形よりも幅狭に形成することで左右に凹状部22が現出した首状とし、全体として一体に形成している。
このような形状の保護領域側シール部10と浸水領域側シール部11は、連結部21の左右の凹状部22に係止片23と係止押圧片24とを介して止水扉2の外周側端面3に固定している。
具体的には、止水扉2の外周側端面3の保護領域H側の端部から外方に突出した目隠し板25、及び外周側端面3の浸水領域S側全面に接合され同じく外方に突出した後述する止水板8の端部から各々対向して内側に略直角に突設した帯状の係止片23を保護領域側シール部10と浸水領域側シール部11の連結部21に挿入係合している。
すなわち、外周側端面3を介して対峙する目隠し板25と止水板8の端部は互いに平行に形成され、これらに連設する係止片23,23がシール部4の連結部21をなす一方の凹状部22に挿入され係止片23,23と係合している。
また、近接する保護領域側シール部10と浸水領域側シール部11の他方の凹状部22,22間には、帯状で長手方向に所定間隔にボルトを挿通可能な挿通孔(図示せず)が穿設された係止押圧片24を挿入すると共に止水扉2の外周側端面3に溶接されたナット26と連通状態とし、ボルト27により外周側端面3に押圧固定している。
ボルト27は一端面に工具係合孔(図示せず)を有し、中途部にドーナツ状の押圧片28が接合されたセットスクリューである。従って、ナット26に対してボルト27を螺入することでナット26と一体の押圧片28が係止押圧片24を外方から押え込み、更に、連結部21の他方の凹状部22に挿入された係止押圧片24が接続基部20を外周側端面3に押し付ける付勢力を付与する。
このようにして保護領域側シール部10と浸水領域側シール部11とは止水扉2の外周側端面3に固定される。固定されたシール部4は、エア流通部19内にエアが供給されると外方に大きく膨張して枠体101の内周壁106と密着当接し、接続基部20は大きく変形することなく止水扉2の外周側端面3に底部を当接したまま該位置に留まる。
すなわち、膨張によりエア流通部19が枠体101に与える外力は、接続基部20が外周側端面3に与える外力に等しく、接続基部20と外周側端面3との間においても水密な当接を可能としている。従って、止水時のシール部4の膨張により図7の如く止水扉2と枠体101との間隙を確実に止水することになる。なお、外周側端面3は研磨により滑らかに形成することが望ましい。
また、浸水領域S側の側面には図1に示すように、止水扉2の一方の側面の全てを被覆する1枚板で形成された止水板8を保護領域H側で格子状に組み上げた溝鋼7と溶接し一体に形成している。すなわち、浸水領域S側から止水扉2を視認した際、止水扉2の骨格をなす溝鋼7を視認することができないよう形成している。なお、止水板8には止水扉2の開閉蓋を容易とするよう、手指が入る程度の凹部を形成して該部分を取手部29としている。
また、止水板8の変形例として、図14(a)、(b)に示すように、止水扉2の一部に透明部材からなる確認用窓30を形成することもできる。止水板8の一部には確認用窓30を形成するための窓用孔(図示せず)を穿設すると共に、確認用窓30は、止水扉2の厚みと略同厚みで矩形板状に形成された強化ガラス31と、止水板8の表裏から強化ガラス31の外周縁と止水板8を図示しないパッキンを介して同時に押圧して被覆するロ字状の固定フランジ32、32で形成している。なお、固定フランジ32は、ボルト等により止水板8に固定される。
このように形成することで、増水時に閉蓋した止水扉2の保護領域H側から浸水領域S側の水嵩を確認することができるので、様々な判断を可及的に行うことができる。
保護領域H側には、図7、図8に示すように、止水扉2の中央部に位置する中横溝鋼13上に1次バルブ35を備えたエアタンク6を載置固定し、止水扉2の開閉蓋時の基部33となるヒンジ102側には、上横溝鋼12と中横溝鋼13と縦枠溝鋼16aと縦溝鋼15cとで形成された矩形状の凹部空間34内にエア送出切替部5を内設している。エアタンク6とエア送出切替部5とは第1配管39a,39bを介して連通連設しており、第1配管39a,39bの間には、2次バルブ36と一体となった第1・第2ゲージ37,38を配設している。
エアタンク6の1次バルブ35はエアタンク6内のエアを開放状態とするバルブであり、2次バルブ36は、エアタンク6から送出されエア送出切替部5を介してシール部4内に供給されるエア圧力を可変自在とするバルブである。また、第1ゲージ37は、エアタンク6内のエアの元圧を表示するゲージであり、第2ゲージ38は、2次バルブ36により可変させたエア圧力を表示するゲージである。なお、2次バルブ36からエア送出切替部5に至る第1配管39bは縦溝鋼15cに穿設した配管挿通孔40を通りエア送出切替部5の第1継手41と連通連設している。
第1継手41は第2配管42と連通連設しており、第2配管42は機械式の押釦スイッチであるエアONスイッチ43と連通連設している。なお、本実施形態ではエアONスイッチ43は該スイッチ43を人手で押している間だけエアが流通するタイプのスイッチを用いているが、これに限定されるものではない。
従って、エアONスイッチ43を所定時間押し続けることでエアタンク6内のエアをシール部4内に供給することができる。
エアONスイッチ43は第3配管44を介して流路切換レバー45と連通連設すると共に、第3配管44は中途部で分岐し、分岐した配管は手動ポンプ(図示せず)を接続自在とした補助配管46としている。補助配管46の開放端部48側にはエアON/OFF切換レバー47を連通連設しており、エアタンク6からエアの供給を行う通常時には該レバー47を補助配管46と直交するように回動してエアの流通を遮断する。
補助配管46の開放端部48には、空気入れの態様である手動ポンプを連通連設自在に形成しており、万一エアタンク6内のエアが空になった場合や、意図せずエアが流通しない事態となった場合でも手動ポンプを接続し、人手によりシール部4内にエアを供給することができるように構成している。
流路切換レバー45は、保護領域側シール部10に連通する第4配管49と、浸水領域側シール部11に連通する第5配管50と、に連通連設しており、エアタンク6から送出されたエアを2本のシール部10,11内に各々供給するために流路を分岐するものである。従って、シール部4内に同時に略均等にエアを供給する場合には、該レバー45を鉛直下向きに回動操作させる。なお、通常使用時には該位置で略固定している。
また、流路切換レバー45は、第4配管49と平行となるように回動することで第4配管49側に流通するエアを遮断することができ、第5配管50と平行となるように回動することで第5配管50側に流通するエアを遮断することができる。
第4配管49は第2継手51を介して第6配管52と連通連設しており、第6配管52は第3継手53介して第7配管54と第9配管67とに分岐し連通連設している。また、第7配管54は保護領域側シール部10内に送出されるエア圧を表示する第3ゲージ55と連通連設しており、第3ゲージ55と連通連設する第8配管56は、第6継手78を介して第1エア供給口金57と連通連設し、第1エア供給口金57の先端部は保護領域側シール部10内に連通連設している。なお、第8配管56は中横溝鋼13に穿設した配管挿通孔58を通して第1エア供給口金57側と接続している。
具体的には、第1エア供給口金57は、図9に示すように内部にエア流通孔98を有する両端開口に形成しており、先端部を保護領域側シール部10に形成されたエア流入孔60に挿通すると共に、第1エア供給口金57を挿通した保護領域側シール部10と共に縦枠溝鋼16aに穿設された第1エア供給口金挿通固定孔59に挿通固定している。
また、第6継手78と接続される第1エア供給口金57の一方の端部61には、シール材としてOリング62が外嵌され、該部分でのエア漏れを防止している。また、他方の端部63は断面視T字状の抜け止め突起64を形成している。
また、保護領域側シール部10に形成されたエア流入孔60は、接続基部20の底部側と中空のエア流通部19内とを連通状態とし、挿通した第1エア供給口金57の周面に付勢力を付与して水密状となる内径に形成している。また、接続基部20の底部側の開口部は断面視台形状で先端縮径の挿入突起65を形成している。また、エア流通部19内の開口部は開口端を全周に渡り内側に屈曲したフランジ66を形成している。
このように形成することで、外周側端面3の第1エア供給口金挿通固定孔59には保護領域側シール部10の挿入突起65が挿入され、エア流入孔60に挿通された第1エア供給口金57の先端部の抜け止め突起64はフランジ66と係合するように構成している。
また、図8に示すように、第3継手53から分岐した第9配管67は、エアONスイッチ43と同型の機械式の押釦スイッチである第1エアOFFスイッチ68と連通連設している。なお、本実施形態では第1エアOFFスイッチ68は該スイッチ68を人手で押している間だけエアが流通するタイプのスイッチを用いているが、これに限定されるものではない。
また、第1エアOFFスイッチ68は一方の端部側を開放端部69とした第10配管70と連通連設している。なお、第10配管70は縦溝鋼15cに穿設した配管挿通孔71を通り開放端部69をエアタンク6側に向けて配設している。
従って、第1エアOFFスイッチ68を所定時間押し続けることで保護領域側シール部10内のエアを外気に放出させ膨張したシール部4を収縮させることができる。
第5配管50は第4継手72を介して第11配管73と連通連設しており、第11配管73は第5継手74を介して第12配管75と第14配管85とに分岐し連通連設している。また、第12配管75は浸水領域側シール部11内に送出されるエア圧を表示する第4ゲージ76と連通連設しており、第4ゲージ76と連通連設する第13配管77は、第7継手79を介して第2エア供給口金80と連通連設し、第2エア供給口金80の先端部は浸水領域側シール部11内に連通連設している。なお、第13配管77は中横溝鋼13に穿設した配管挿通孔58を通して第2エア供給口金80側と接続している。
具体的には、第2エア供給口金80は、図9に示すように内部にエア流通孔98を有する両端開口に形成しており、先端部を浸水領域側シール部11に形成されたエア流入孔820に挿通すると共に、第2エア供給口金80を挿通した浸水領域側シール部11と共に縦枠溝鋼16aに穿設された第2エア供給口金挿通固定孔81に挿通固定している。
なお、第2エア供給口金80と浸水領域側シール部11との接続方法や構成は、上述した第1エア供給口金57の場合と同様のため説明を省略する。
このように形成することで、外周側端面3の第2エア供給口金挿通固定孔81には浸水領域側シール部11の挿入突起65が挿入され、エア流入孔82に挿通された第2エア供給口金80の先端部の抜け止め突起64はフランジ66と係合するように構成している。
また、図8に示すように、第5継手74から分岐した第14配管85は、エアONスイッチ43と同型の機械式の押釦スイッチである第2エアOFFスイッチ83と連通連設している。なお、本実施形態では第2エアOFFスイッチ83は該スイッチ83を人手で押している間だけエアが流通するタイプのスイッチを用いているが、これに限定されるものではない。
また、第2エアOFFスイッチ83は一方の端部側を開放端部84とした第15配管86と連通連設している。なお、第15配管86は縦溝鋼15cに穿設した配管挿通孔87を通り開放端部84をエアタンク6側に向けて配設している。
従って、第2エアOFFスイッチ83を所定時間押し続けることで浸水領域側シール部11内のエアを外気に放出させ膨張したシール部4を収縮させることができる。
また、保護領域H側には図2、図4、図7に示すように、基部33側に1つ、基部33側と対向する側に3つの閂88を備えている。具体的には、閂88は丸棒状の閂部89と閂部89を案内する3つの案内片90a,90b,90cとで構成しており、閂部89の先端側には長方形状の板材の中央部を矩形状に穿設して開口部91を形成しロ字状とした抜け止め片92を溶接している。抜け止め片92はロ字状の一方の短辺側を閂部89の軸線方向に倣って溶接している。
また、案内片90a,90b,90cは、略四角形状の板材の略中央部に閂部89の外径よりも若干大きな内径で穿設した挿通孔93を有し、閂部89を水平方向に往復動できるよう挿通孔93を水平方向に向け所定間隔で上中下横溝鋼12,13,14、及び縦枠溝鋼16a,16bに溶接している。
また、真ん中に位置する中央案内片90bの垂直方向の開放辺には、抜け止め片92の厚みよりも若干だけ広く切欠した切欠部94を形成し、切欠部94は挿通孔93と連通している。
このように形成された閂88は、抜け止め片92を中央案内片90bの切欠部94を介して左右に移動でき、更に、閂部89が両外側の案内片90a,90cから離脱することがないよう形成している。しかも、抜け止め片92が中央案内片90bと最外の案内片90cとの間にあるときは止水扉2の外形を越えて閂部89が外方に突出した状態を保つことができるように構成している。
従って、後述する枠体101に形成された閂受部103に閂部89を係合させれば、抜け止め片92を切欠部94に挿通する操作を自発的にしない限り閂88により係合した閂部89と閂受部103との係合は維持されるので、万一、浸水領域S側からの水圧により止水扉2に開蓋する付勢力が付加されても止水扉2の閉蓋状態を安全に維持することができる。
また、各閂88の下方である縦枠溝鋼16a,16bの側面には、該側面に直角で両面を水平方向に向けた矩形板状の係合片95を突設し、抜け止め片92を閂部89の下方として最外の案内片90cに近接させた際、抜け止め片92の開口部91に係合片95が挿通係合自在となるように形成している。
このように挿通係合させることで、閂受部103からの閂部89の脱落を更に確実に防止できる。なお、係合片95には鍵挿通孔(図示せず)を穿設することができ、抜け止め片92の開口部91に係合片95を挿通した後、カギ挿通孔に錠前(図示せず)を施錠することで、止水扉2の長期間の閉蓋や侵入禁止を確実なものとすることができる。
次に枠体101について具体的に詳述する。
枠体101は、図1〜図4に示すように、止水扉2の外周側端面3を全周に渡り囲繞するロ字状で外観視矩形縦長に形成している。枠体101を構成する4つの辺は、通路Tの左右側壁Bと床Fと天井Uにその大部分を埋設して設置される。従って、止水扉2を開蓋していれば枠体101は通路Tの一部となり歩行時に枠体101を意識することはない。
また、保護領域H側の外側面に3つのヒンジ102と4つの閂受部103を備えている。ヒンジ102は止水扉2の保護領域H側の外側面と接続され、止水扉2を開閉蓋自在とし、閂受部103は止水扉に配設された閂88の閂部89と係合して止水扉2の閉蓋状態を確実なものとする。
枠体101は、ロ字状を形成する内側面、すなわち、閉蓋時に止水扉2の外周側端面3が最も近接する側面にロ字状の内側枠104を形成し、内側枠104の外周側端面を囲繞するようにコ字状の4つの枠溝鋼105を溶接により接合している。
内側枠104は、その内周壁106がなす開口形状を止水扉2の縦横比と同比率で同形とし、止水扉2の外形よりも若干だけ大きく、しかも、止水扉2の厚みよりも幅員を広く形成している。また、内周壁106は全周に渡り研磨され、可能な限り平滑に形成しており、閉蓋時の止水扉2の外周側端面3との距離が略均一となるように、閉蓋した止水扉2に対して内周壁106が略直角となるように、すなわち、図6(b)に示すように、保護領域側シール部10内と浸水領域側シール部11内とに均等に送出されたエアにより膨張したエア流通部19が内周壁106と密着当接する際、シール部4の断面形状が共に同形状となるように形成している。
図3に示すように、内側枠104の上下辺107,108に接合される上下枠溝鋼109,110の長さは上下辺107,108の長さと同長さに形成され、上下枠溝鋼109,110の長手方向の開口側を各々外側に上下に向け内側枠104と一体に形成している。また、内側枠104の左右辺111,112に接合される左右枠溝鋼113,114の長さは上下辺107,108に接合された上下枠溝鋼109,110の高さを含めた長さ、すなわち、2本の上下枠溝鋼109,110と2本の左右枠溝鋼113,114とで縦長の外観視矩形状の枠形状を呈する長さとしている。
また、上下左右枠溝鋼109,110,113,114には、内部に複数の仕切補強板115を溶接により接合している。具体的には、上下枠溝鋼109,110には所定間隔で2つの仕切補強板115を形成し、左右枠溝鋼113,114には所定間隔で3つの仕切補強板115を形成している。
なお、この仕切補強板115は、枠体101を通路Tの左右側壁Bと床Fと天井Uに埋設する際、左右側壁B等の内部に形成した図示しないアンカーと溶接され、通路Tと止水装置1との設置固定を強固なものとしている。
ヒンジ102は、保護領域H側において、枠体101の左枠溝鋼113の外側面にヒンジ102の一方側を溶接により接合し、他方側を止水扉2の縦枠溝鋼16aの外側面に穿設した複数の雌ネジ孔96にボルトを螺着することで接続し、止水扉2を枢支連結して開閉蓋自在としている。なお、ヒンジ102は枠体101の上部側に上下に隣接して2つ、下部側に1つ配設している。
また、ヒンジ102は、鉛直方向に軸線を有する2つの枢支軸116a,116bを水平方向に並列して備えた2軸ヒンジを用いている。図5、図10に示すように、枠体101側に接続されるヒンジ102の端部側に近い一方の外枢支軸116aは、止水扉2を開閉蓋するために機能する軸であり、他方の内枢支軸116bは、止水扉2の開蓋時に浸水領域S側の止水扉2の止水板8の側面117が通路Tの側壁Bと略面一となるように側壁Bに形成された止水扉収納部Cに止水扉2を収納自在に機能する軸である。
止水扉収納部Cは、図10に示すように、側壁B内に止水扉2が余裕を持って収納できる程度の矩形立方状に切欠して形成している。また、側壁B内に収納された止水扉2は、止水板8に形成された取手部29を把持することで、人手による止水扉2の開閉蓋を容易とする。また、止水扉収納部Cの底部には扉係止部Vを上下摺動自在に立設し、止水扉2を止水扉収納部C内に簡易的に固定・解除自在となるように構成している。
なお、本実施形態に係る止水装置1では2軸ヒンジを用いているが、止水扉2を止水扉収納部C等に収納する必要がない場合や、枠体101の左右枠溝鋼113,114を側壁方向に長く形成することで大型の1軸ヒンジを採用できる場合等、ヒンジ102の構造や数については本実施形態に限定されるものではなく、種々の変形・変更が可能である。
また、閂受部103は上述した案内片90a,90cと同形状に形成された2枚の案内受片118で構成され、左右に所定間隔で枠体101の左右枠溝鋼113,114に溶接固定されている。従って、案内受片118に穿設した挿通孔(図示せず)に閂部89の先端部を挿通することで閂88の機能を果たす。
また、ヒンジ102側に位置する閂受部103は、止水扉収納部C内に位置し、ヒンジ102と対向する側に位置する3つの閂受部103は、例えば、図2、図10に示すように止水装置1を広間Lと通路Tとの境界に設置した場合であれば広間L側の壁面から突出するように設置し、図11に示すように通路T内に設置した場合であれば少なくとも閂受部103が機能する程度に側壁Bを切欠して設置する。
以上、説明したように本実施形態に係る止水装置1の主要部分は構成されている。従って、図5、図6(a)に示すように、保護領域側シール部10と浸水領域側シール部11の2本のシール部は、これらシール部4内にエアが供給されない限り、枠体101の内側枠104の内周壁106とシール部4の外表面97との間に所定の間隙を有するので、ヒンジ102に形成された外枢支軸116aを回動中心として止水扉2を枠体101内に回動させても枠体101と接触することなく負荷なく容易に止水扉2を閉蓋位置に移動させることができる。
また、閉蓋位置に移動させた止水扉2は、図6(b)、図7に示すように、シール部4内にエアを供給することで枠体101の内周壁106に向けてエア流通部19を膨張させることができるので、内周壁106とエア流通部19とは水密状に密着当接され、浸水領域S側から迫る水を保護領域H側に流出させることなく阻止することができる。
また、枠体101の内周壁106にはエア流通部19の膨張による多大な付勢力が付与されるため、閂88により止水扉2と枠体101とを係合しなくても止水機能を発揮させることができる。なお、閂88は、エアの漏出や止水装置1の不具合が万一発生した場合でも止水扉2が一気に開蓋してしまうことを防止することができるため、閂88を使用することが望ましい。
また、枠体101の内周壁106は、図12(a)に示すように、保護領域Hから浸水領域Sに向けて全周を拡開状に形成してもよい。具体的には、保護領域Hから浸水領域Sに向けて内周壁106を略2°の傾斜角αで形成している。なお、傾斜角αは製造上の観点からは略1°〜2°が望ましいが、膨張したシール部4のエア流通部19が内周壁106に充分な付勢力を付与することができれば、傾斜角αは特に限定されるものではない。
このような傾斜角αを有する内周壁106は、閉蓋時の止水扉2の外周側端面3との距離が保護領域H側では近接し、浸水領域S側では離間する。従って、図12(b)に示すように、シール部4内に均等に送出されたエアにより膨張したエア流通部19が内周壁106と密着当接する際、これらシール部4の断面形状は相違し、保護領域側シール部10に比して浸水領域側シール部11の方がより大きく膨張する。
従って、浸水領域Sから保護領域Hに向かう水圧が止水扉2に付与されても、膨張したシール部4のエア流通部19の大きさが傾斜角αにより小さくなる方向に水圧が印加されることになるので、エアの流入により膨張したシール部4が内周壁106との間でクサビの役割を果たし、閂88により止水扉2と枠体101とを係合しなくても、上述した内周壁106の傾斜角αが略0°である止水装置1に比して充分な止水機能を発揮させることができる。なお、閂88は、エアの漏出や止水装置1の不具合が万一発生した場合でも止水扉2が一気に開蓋してしまうことを防止することができるため、閂88を使用することが望ましい。
また、傾斜角αを形成した内周壁は、図13に示すように、保護領域から浸水領域に向けて拡開状に湾曲して形成してもよい。シール部4内へのエアの流入により膨張したシール部4が内周壁106との間でクサビの役割を果たし、しかも、拡開状に湾曲していることで膨張したシール部4の外表面97と内周壁106との密着力が向上し、浸水領域Sから保護領域Hに向かう水圧に対して止水扉2を止水位置で強固に保持することができる。
また、内周壁106には膨張したエア流通部19の外表面97と嵌合する嵌合溝(図示せず)を内周壁106の全周に渡り形成してもよい。この場合、内周壁106の傾斜角αの有無は問わない。
次に、枠体101に関する付加機能について説明する。
地下鉄の駅の構内や地下通路は、天井や壁面を通って地下水が浸み出してくるため、多くの場合、図1等に示すように通路脇に排水溝Zを形成しており、通路Tが地下水で浸されることを防止している。この場合、排水溝Zは通路Tの両側、若しくは片側に形成される。また、一般的な排水溝Zには、着脱自在で複数の排水孔wを穿設した蓋体Wを備えている。
しかしながら、排水溝Zの存在を考慮しない止水装置の場合、通路Tに枠体101を埋設すると枠体101の下部に位置する下枠溝鋼110が排水溝Zと干渉し、該位置で排水溝Zが分断されてしまう。すなわち、排水溝Zを流通する水は、下枠溝鋼110により遮断され、浸水領域Sまたは保護領域Hのいずれかに溢れ出てしまう。
また、排水溝Zの存在を考慮した止水装置であっても、枠体101の下部に位置する下枠溝鋼110を排水溝Zと干渉しないように形成しただけでは、増水時に浸水領域Sに滞留する多量の水が排水溝Zを流通して勢いよく保護領域Hに侵入して来るため、止水装置の止水機能が充分に発揮されず、やがて保護領域Hも浸水してしまう。
そこで、本実施形態に係る止水装置1の枠体101には、図14(a)、(b)、図15(a)〜(c)に示すように、左右下端部近傍の少なくとも一方に水の流通と止水を切替え自在とする排水コック部131を形成することができる。
具体的には、排水コック部131は、床Fに埋設する枠体101の下部をなす下枠溝鋼110の左右端部側に形成され、保護領域Hと浸水領域Sとを連通する管状のバイパス管132と、レバー134と連動連結した止水弁135を備えた止水栓133と、で構成している。
バイパス管132は軸線方向を排水溝Zに沿って配設し、バイパス管132の両端開口が排水溝Z内に位置するように形成している。また、浸水領域S側のバイパス管132の開口端136は下枠溝鋼110の外側面と面一となるように挿通固定し、保護領域H側のバイパス管132の開口端137は下枠溝鋼110の外側面から突出させて挿通固定している。なお、排水溝Z内に位置するバイパス管132の両端開口の位置は、排水溝Zの底部xに近付けることが望ましい。
下枠溝鋼110の側面から保護領域H側へ突出したバイパス管132には、その中途部に止水栓133を配設している。止水栓133を構成するレバー134は、バイパス管132の上部から鉛直上方に向かい水平方向に屈折したL字状に形成しており、レバー134の下端部はバイパス管132の内部に位置しバイパス管132の内径と略同径で水密とする円盤状の止水弁135の上端部と連設している。
従って、レバー134の回動により止水弁135を同時に回動でき、バイパス管132内を流通する水を止水弁135により遮断したり流通状態とすることができる。
また、レバー134は排水溝Zの内部に収まる程度の大きさとし、通常時は蓋体Wにより外部から視認できないように形成し、増水時の止水操作において蓋体Wを開蓋してレバー134を操作する。
このように構成することで、例えば、止水装置1を地下通路Tに設置した際、通常時に排水コック部131を開放しておけば、地下通路Tの脇に形成された排水溝Zの水の流れを遮断することがないので、通常時であっても地下通路Tに浸み出す地下水の排水機能を阻害することがない。
しかも、止水が必要な浸水時には、止水扉2の閉蓋と共に排水コック部131を閉止すれば、浸水領域Sの排水溝Zから保護領域Hの排水溝Zに流通する多量の水を遮断することができるので保護領域Hの浸水防止対策を確実なものとすることができる。
なお、本実施形態に係る排水コック部131は、上述したシンプルな構成としているが、例えば、バイパス管132の形状や止水栓133の構造等、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
ここで、枠体101の変形例について説明する。
図16に示すように、変形例に係る止水装置1aの枠体101aは、枠体101aの下部をなす下枠溝鋼110を有しておらず、下部には内側枠104をそのまま形成している。また、下部の下枠溝鋼110を有さないことで、左右の左右枠溝鋼113,114の長さは内側枠104の下端部と面一となる長さに形成している。
このように、枠体101aの下部をなす下枠溝鋼110を有さないことで、通路Tの床Fを深く切削する必要が無いので施工が極めて容易となる。
また、止水装置1aの部材数が減少することで経費的に有利となり、しかも、重量を抑えることができるので施工時の作業性を向上させることができる。
なお、変形例に係る止水装置1aの枠体101aは、枠体101aの下部をなす下枠溝鋼110だけでなく、下部側の内側枠104も形成しない枠体(図示せず)、すなわち、下方開口の門型に形成することもできる。この場合、止水扉2の下端側の外周側端面3に配設されたシール部4は床Fと当接して止水することになる。
従って、止水扉2と当接する床F面は、目地のあるタイル張り等凹凸のある床F面ではなく、該部分に継ぎ目の無いステンレス等の金属製で、しかも、研磨により平滑に磨かれた床F面とすることが望ましい。
このような門型の枠体からなる止水装置は、施工時に床Fを切削する必要が無いので工事を容易とし、更に、床F面に段差が生じないので保護領域Hと浸水領域Sを行き来する際、極めて安全に歩行することができる。
以上説明したように、第1実施形態に係る止水装置1は、ヒンジ102を介して開閉する止水扉2と、止水扉2を囲繞する枠体101とからなり、浸水領域Sと保護領域Hとを区画して止水する止水装置1であって、止水扉2は外周側端面3に可撓性材料からなる中空のシール部4を有し、シール部4は内部へのエア流入により膨張し枠体101の内周壁106と水密状に当接することで浸水領域Sから保護領域Hへの水の侵入を防止するように構成したことより、止水扉2を閉蓋しシール部4内にエアを供給するだけで止水機能を発揮させることができるので、止水作業を非常に簡易な操作で行うことができる。
また、止水扉2の外周側端面3と枠体101の内周壁106との間を水密として止水するため、戸当りを必要とせず、床F面と枠体101の下部側の内周壁106とは面一の略平担に形成できるので歩行時に障害となることはない。
更に、通路Tの幅を可能な限り広げられるので、歩行の邪魔になったり、台車等による運搬作業に影響を与えることがない。
また、枠体101の内周壁106は、保護領域Hから浸水領域Sに向けて拡開状に形成したことより、エアの流入により膨張したシール部4が内周壁106との間でクサビの役割を果たし、浸水領域Sから保護領域Hに向かう水圧に対して止水扉2を止水位置で強固に保持することができる。
また、枠体101の内周壁106は、保護領域Hから浸水領域Sに向けて拡開状に湾曲して形成したことより、エアの流入により膨張したシール部4が内周壁106との間でクサビの役割を果たし、しかも、拡開状に湾曲していることで膨張したシール部4の外表面97と内周壁106との密着力が向上し、浸水領域Sから保護領域Hに向かう水圧に対して止水扉2を止水位置で強固に保持することができる。
また、枠体101は、左右下端部近傍の少なくとも一方に水の流通と止水を切替え自在とする排水コック部131を形成したことより、例えば、本止水装置1を地下通路に設置した際、通常時に排水コック部131を開放しておけば、地下通路の脇に形成された排水溝Zの水の流れを遮断することがないので、通常時であっても地下通路に浸み出す地下水の排水機能を阻害することがない。
しかも、止水が必要な浸水時には、止水扉2の閉蓋と共に排水コック部131を閉止すれば、浸水領域Sの排水溝Zから保護領域Hの排水溝Z側に流通する多量の水を遮断することができるので保護領域Hの浸水防止対策を更に確実なものとすることができる。
また、止水扉2の保護領域H側には、シール部4に供給するエアの送出を制御する機械式のエア送出切替部5と、エアタンク6と、を備え、シール部4は、エア送出切替部5を介してエアタンク6と連通連設したことより、止水扉2の閉蓋後にエア送出切替部5を操作するだけでエアタンク6内のエアをシール部4内に供給することができ、シール部4の膨張による枠体101の内周壁106との密着当接により浸水領域Sから保護領域Hへの水の侵入を水密に止水することができる。
また、止水扉2の開蓋の際もエア送出切替部5を操作するだけでシール部4内に充填されたエアを排出できるので、止水状態の解除作業を容易に行うことができる。
また、エア送出切替部5には、手動ポンプを接続自在とする補助配管46を形成したことより、予期せずエアタンク6内のエアが空であったり不足していた場合であっても、人手による手動ポンプの操作によりシール部4内にエアを供給することができ、止水装置1の信頼性を高めることができる。
更に、止水扉2の一部に透明部材からなる確認用窓30を形成したことより、保護領域H側から浸水領域S側の水嵩を確認することができるので、様々な判断を可及的に行うことができる。
次に、第2実施形態として両開き式の止水装置201について説明をするが、上述した第1実施形態に係る止水装置1,1aで説明した構成と同様の構成については共通の符号を用いて説明を適宜省略する。
また、上述した枠体101の内周壁106の形状や枠体101の形状、排水コック部131や確認用窓30の形成等、第1実施形態において説明した構成は全て第2実施形態においても同様に採用できるものとする。
[第2実施形態]
本発明の実施形態に係る止水装置201は、図17(a)、(b)、図18に示すように、第1実施形態に係る止水扉2を略左右対称に2枚用いて観音開き状に構成している。
また、枠体101の下部側の内周壁106及び上部側の内周壁106の略中央部に突設した正面視略三角形状の下補助内周壁部202と上補助内周壁部203とを備え、少なくとも下補助内周壁部202は着脱自在に構成している。
このように構成された止水装置201は、止水の必要のない通常時には開蓋した左・右止水扉2L,2Rを凹設した通路Tの両側壁B内(止水扉収納部C)に収納して略固定することで止水装置201を意識することなく通路Tを歩行することができ、止水時には左・右止水扉2L,2Rを閉蓋し、エア送出切替部5の操作によりエアタンク6内のエアをシール部4に供給するだけで枠体101の内周壁106等にエアにより膨張したシール部4を水密に密着当接させることができ、浸水領域Sから保護領域Hへの水の侵入を極めて容易に防止することができる。
以下、本実施形態に係る止水装置201の構成について具体的に詳述する。
左止水扉2Lの構成は第1実施形態に係る止水扉2と同様であり、右止水扉2Rはヒンジ102と対向する側の縦枠溝鋼16bの外側面に閂88を形成しておらず、代わりに閂受部103を形成して左止水扉2Lの閂88と係合自在としている。
また、左・右止水扉2L,2Rの閉蓋時には、通路Tの中央部で左・右止水扉2L,2Rの外周側端面3,3同士が近接し、シール部4内へのエアの供給により互いのシール部4が膨張して水密に当接する。
また、左・右止水扉2L,2Rの当接部の上下、すなわち、枠体101の内側枠104の下部側の内周壁106及び上部側の内周壁106との間に現出する略三角形状の空間は、下補助内周壁部202と上補助内周壁部203とにより該空間を閉塞して、止水装置201全体として浸水領域Sの水が保護領域Hに侵入することを防止する。
下補助内周壁部202は、図17(b)に示すように、扁平状の底部204と互いに内側に湾曲した2つの傾斜壁205,205により、厚みを有する正面視略三角形状のブロック状に形成している。また、下補助内周壁部202の厚みは枠体101の内側枠104の幅員と同厚みに形成し、傾斜壁205は左・右止水扉2L,2Rの角部9と同曲率に形成している。なお、収縮状態のシール部4の外表面97と傾斜壁205とは間隙を有するように形成している。
また、傾斜壁205,205には、内側枠104の下部側の内周壁106に下補助内周壁部202を着脱自在とするため、シール部4の膨張時にシール部4が干渉しない位置に鉛直方向の固定用ボルト挿通孔206,206を穿設している。
これに伴い、内側枠104の下部側の内周壁106及び下方に重設する下枠溝鋼110には、下補助内周壁部202をボルト207により螺着固定するために固定用ボルト挿通孔206と連通する雌ネジ孔208を螺設している。
なお、内側枠104の上部側の内周壁106に配設される上補助内周壁部203の構成も上述した下補助内周壁部202と同様の構成であるため説明を省略する。
以上説明したように、第2実施形態に係る止水装置201は、第1実施形態に係る止水装置1による効果以外に、止水扉2L,2Rを、略左右対称に2枚用いて観音開き状に構成したことより、幅広の通路等であっても止水作業を容易に行うことができ、更に、閉蓋時に左右の止水扉2L,2Rの互いの当接面に配設されたシール部4同士により水密に止水機能を発揮するため、当該箇所に枠体101を設ける必要が無くシンプルな構成とすることができるので部材コストを低廉に抑えることができる。
しかも、1つの枠体101で構成することができるので、通路等に歩行を阻害する部材を配設する必要がなく空間を有効に活用することができる。
また、枠体101の下部側の内周壁106及び上部側の内周壁106の略中央部に突設した正面視略三角形状の下補助内周壁部202と上補助内周壁部203とを備え、少なくとも下補助内周壁部202は着脱自在に構成したことより、水密状に形成することが難しい止水扉2L,2Rの角部9を湾曲状に形成しても上・下補助内周壁部202,203により水密に止水することができる。
更に、止水を必要としない通常時に下補助内周壁部202を取り外しておけば、床F面と枠体101とは面一の略平担に形成できるので歩行時に障害となることはない。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。