[第1実施形態]
以下に、本発明の第1実施形態のキーレスエントリー装置100について図面を参照しながら説明する。
まず、キーレスエントリー装置100の概略構成について、図1を用いて説明する。また、車両側装置10と携帯機20それぞれの各要部の構成、及びその働きについて、図2を用いて説明する。
図1は、キーレスエントリー装置100の概略的な構成を示す図であり、車両側装置10を備えた車両50及び携帯機20を所持した車両ユーザ55を上方から見た時の平面図である。また、図2は、キーレスエントリー装置100に用いられる車両側装置10及び携帯機20それぞれの要部構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両側装置10は、車両50に搭載され、車両側装置本体10aと車両側送信アンテナ11aと車両側受信アンテナ12aとで構成されている。キーレスエントリー装置100では、車両側送信アンテナ11aが車両50内の所定の位置に配置された3本のアンテナで構成され、1本の車両側受信アンテナ12aが車両側装置本体10aの近辺に配置されている。但し、ここで挙げた車両側送信アンテナ11a及び車両側受信アンテナ12aの配置は一例であり、その他の配置であってもよい。また、車両側送信アンテナ11aは少なくとも1本あれば良く、4本以上あっても良い。上述した車両側送信アンテナ11aや車両側受信アンテナ12aは、図示しない配線を通じて車両側装置本体10aに接続されている。
携帯機20は、車両ユーザ55により所持されると共に内蔵された電池29によって動作する。キーレスエントリー装置100では、携帯機20が、車両50に搭載された車両側装置10からのリクエスト信号を受信した後に該リクエスト信号に対応したアンサー信号を送信して車両側装置10との間で無線通信を行う機能を有している。携帯機20側では、通常該リクエスト信号を受信できるように待ち受け状態とされている。
キーレスエントリー装置100は、上記のように車両側装置10と携帯機20との間で無線通信を行ない、IDコード等のデータを用いた認証を行うことでドアのロック(施錠)・アンロック(解錠)を自動的に行う機能(いわゆるパッシブ機能)を有している。またキーレスエントリー装置100は、携帯機20を所持した車両ユーザ55(運転者)が車両50内に入ると、キーシリンダにキーを差し込むことなくメインスイッチの操作を許可することもできる。更に、車両側装置10からIDコードと共に距離測定用信号を周期的に送信して、その距離測定用信号の携帯機20における受信強度によって距離を算出し、その距離情報をアンサー信号に載せて車両側装置10へ送り返し、その距離が所定の距離以下であると車両側装置10側で判断したら解錠するように構成されている。
図2に示すように、前述した車両側送信アンテナ11aと車両側受信アンテナ12aと車両側装置本体10aとで、車両側装置10が構成される。車両側装置本体10aは、車両側送信部11(LF−TX)と、車両側受信部12(RF−RX)と、車両側制御部15(CPU)と、車両側発振回路16(LF−OSC)と、車両側記憶部17(MEM)と、駆動信号送信部18(DS−TX)とから構成されている。車両側装置本体10aの中で、車両側制御部15がその中央に位置し、車両側制御部15に接続される各部を制御している。
車両側送信部11は、入力端が車両側制御部15に接続され、出力端が車両側送信アンテナ11aに接続されている。車両側受信部12は、入力端が車両側受信アンテナ12aに接続され、出力端が車両側制御部15に接続されている。車両側発振回路16はリクエスト信号用の搬送波信号LFを生成させるものであり、この搬送波信号LFを出力する出力端が車両側制御部15に接続されている。車両側記憶部17は、車両側装置10に割り当てられた第1のIDと、この車両側装置10と共に使用される携帯機20に割り当てられた第2のIDとを格納していて、入出力端が車両側制御部15に接続されている。また、駆動信号送信部18は、入力端が車両側制御部15に接続されている。
車両側発振回路16から出力された搬送波信号LFは、車両側制御部15に供給される。車両側制御部15は、搬送波信号LFが供給された時、車両側記憶部17から第1のIDを読み出し、読み出した第1のIDを含む必要な情報を、変調することによって搬送波信号LFに付加し、所定のフォーマットに従ってリクエスト信号を形成する。尚、リクエスト信号のフォーマットについては後に説明を行う。次に、リクエスト信号の送信タイミングが設定されると、車両側制御部15の制御により、このリクエスト信号が車両側送信部11に供給される。車両側送信部11内では、供給されたリクエスト信号を送信に適した信号レベルまで増幅し、リクエスト信号は車両側送信アンテナ11aから無線送信される。
車両側受信部12は、携帯機20から無線送信された当該携帯機20の第2のIDや指令信号を含んだアンサー信号を、車両側受信アンテナ12aを介して受信し、受信したアンサー信号を増幅回路(図示せず)で所定信号レベルに増幅し、増幅したアンサー信号を車両側制御部15に供給する。車両側制御部15は、アンサー信号に含まれた第2のIDを、車両側記憶部17から読み出した第2のIDを用いて認証し、その認証が成立すると、アンサー信号に含まれた指令信号から駆動信号を形成し、この駆動信号を駆動信号送信部18に供給する。駆動信号送信部18は、駆動信号が供給されると、対応するドアロックの施錠及び解錠を行うモータ(図示せず)、あるいはエンジン始動回路等の被制御機構(図示せず)にその駆動信号を伝送し、その被制御機構を駆動信号に従って制御する。
一方、携帯機20には、図2に示すように、携帯機側送信アンテナ21aと、携帯機側送信部21(RF−TX)と、携帯機側受信アンテナ22aと、携帯機側受信部22(LF−RX)と、携帯機側制御部25(CPU)と、携帯機側発振回路26(RF−OSC)と、携帯機側記憶部27(MEM)と、電源用の電池29(BAT)とが備えられている。携帯機20の中では、携帯機側制御部25がその中央に位置し、携帯機側制御部25に接続された各部を制御している。
携帯機側送信部21は、入力端が携帯機側制御部25に接続され、出力端が携帯機側送信アンテナ21aに接続されている。携帯機側受信部22は、出力端が携帯機側制御部25に接続されている。携帯機側発振回路26は、出力端が携帯機側制御部25に接続されている。携帯機側記憶部27は、入出力端が携帯機側制御部25に接続されている。電池29は上述した携帯機20内の各部に接続されており、携帯機側送信部21、携帯機側受信部22、携帯機側制御部25等に電力を供給している。
携帯機側発振回路26は、高周波信号を発振するもので、発振した高周波信号が携帯機側制御部25に供給される。この時、携帯機側制御部25は、この高周波信号を搬送波とし、第2のIDや指令信号等の必要な情報信号を周波数変調により付加してアンサー信号を形成する。このアンサー信号は、携帯機側送信部21を介して携帯機側送信アンテナ21aに供給され、無線送信される。
携帯機側記憶部27には、車両側装置10に割り当てられた第1のIDや自己の携帯機20に割り当てられた第2のID、それに各種の指令信号が記憶されているもので、携帯機側制御部25の制御により、第1のID又は第2のIDや各種の指令信号が適宜読み出される。
携帯機側送信部21は、携帯機側制御部25から第2のIDや指令信号を含んだ高周波信号即ちアンサー信号が供給されると、そのアンサー信号を無線送信に適した信号レベルまで増幅し、増幅したアンサー信号を、携帯機側送信アンテナ21aを介して無線送信する。
携帯機側受信部22には共振回路23が接続されている。共振回路23は携帯機側受信アンテナ22aを含めて構成されている。また、共振回路23は所定のアンテナインピーダンスを形成している。尚、共振回路23の構成については後に説明を行う。携帯機側受信部22は、車両側装置10から無線送信された第1のIDを含んだリクエスト信号を、携帯機側受信アンテナ22aを含む共振回路23を介して受信し、受信したリクエスト信号を携帯機側制御部25に供給する。
次に、パッシブキーレスエントリー装置の仕組みを悪用したリレーアタックが行なわれた場合の例について、図3を用いて説明する。図3は、リレーアタックが行なわれた場合のブロック図である。
リレーアタックは、図3に示すように、第1中継器60と第2中継器70との2台の不正な中継器を用意し、第1中継器60は車両50の近傍に配置されて、車両50からのリクエスト信号を受信する。このリクエスト信号を基に、隔離した位置に配置させた第2中継器70より偽のリクエスト信号を送信させ、それを受信した携帯機20からアンサー信号を車両に送信させ、それを車両50が受信して車両ユーザ55の意図しないところで車両のドアが解錠されるというものである。
本発明のキーレスエントリー装置100では、リクエスト信号の搬送波の波形パターンとして正弦波だけを送信することで、車両側装置10で受信するアンサー信号の歪率の大きさ、言い換えれば、リクエスト信号又はリクエスト信号と同一の周波数を有する不正な中継機を介した信号である不正信号に含まれる基本波の受信強度と高調波の受信強度とを基に、通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを判定するものである。
次に、車両側装置10から送信されるリクエスト信号の送信フォーマットの構成、及び携帯機20で受信した信号に含まれる基本波の受信強度と高調波の受信強度とについて、図2乃至図7を用いて説明する。
図4は、キーレスエントリー装置100におけるリクエスト信号のLF送信フォーマットの構成を示す模式図である。また、図5は、携帯機側受信部22に接続される共振回路23の回路図であり、図6は、携帯機側受信部22における、受信アンテナインピーダンスを示すグラフである。また、図7(a)は、リレーアタックが行なわれなかった場合の携帯機20における、受信した信号の生の波形パターンを示す模式図である。また、図7(b)−(1)は、リレーアタックが行なわれた場合の携帯機20における、受信した信号の生の波形パターンを示す模式図であり、図7(b)−(2)は、この受信した信号の波形パターンを周波数毎に分解した模式図である。
キーレスエントリー装置100では、図2に示した携帯機側受信部22がリクエスト信号又はリクエスト信号と同一の周波数を有する不正信号を含む通信信号を受信した場合、携帯機側制御部25は、共振回路23を介して受信したリクエスト信号又は不正信号を含む通信信号の基本波の受信強度と通信信号の高調波の受信強度を検出し、基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報を含むアンサー信号を作成すると共に携帯機側送信部21より送信させる。そして車両側制御部15は、基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報に基づいて、通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを判定する。上記の、基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報には、基本波の受信強度及び高調波の受信強度を含むのは勿論、基本波と高調波との間の受信強度差、受信強度比、及び歪率を含む場合もある。尚、基本波と高調波との間の受信強度差、受信強度比、及び歪率等の算出は、アンサー信号を送信する前に携帯機側制御部25で行われても良いし、アンサー信号を受信した後に車両側制御部15で行われても良い。従って、上記受信強度差、受信強度比、及び歪率の算出等を携帯機側制御部25で行なった場合、基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報には、受信強度差、受信強度比、及び歪率等が含まれるため、アンサー信号を受信し、これらを抽出することによってこれらを車両側制御部15で得ることができる。一方、上記受信強度差、受信強度比、及び歪率等の算出を車両側制御部15で行なった場合、基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報には、受信強度差、受信強度比、及び歪率等が含まれず、これらはアンサー信号を受信後の車両側制御部15内での演算で得られる。
図4に示すように、リクエスト信号のLF送信フォーマットは、前述した車両側装置10に割り当てられた第1のID及び携帯機20に割り当てられた第2のID等を含む情報フレームと、車両側装置10と携帯機20との間の距離を測定するための距離測定用フレームとを有して構成されている。情報フレームの搬送波周波数は所定の周波数f1であり、その波形パターンは正弦波である。
キーレスエントリー装置100では、リクエスト信号の距離測定用フレームの搬送波の波形パターンとして正弦波を用いる。即ち、車両側制御部15は、リクエスト信号の搬送波の波形パターンを正弦波として送信するように車両側送信部11を制御する。正弦波は、車両側発振回路で生成され、車両側制御部15に入力された後、車両側送信部11に送られる。正弦波の搬送波周波数は、情報フレームの搬送波周波数と同様に所定の周波数f1である。
携帯機側制御部25は、距離測定用フレームの搬送波の受信強度を測定し、測定した受信強度に基づいてアンサー信号を作成し、作成されたアンサー信号を携帯機側送信部21に送信させる。そして、アンサー信号を受信した車両側制御部15は、距離測定用フレームの携帯機20における受信強度によって、図1に示した車両50と携帯機20との間の距離を測定することができる。
前述したように、携帯機側受信部22には共振回路23が接続されている。共振回路23は、図5に示すように、携帯機側受信アンテナ22aに含まれているインダクタL21と、キャパシタC21と、キャパシタC22とスイッチSW21との直列接続回路と、キャパシタC23とスイッチSW22との直列接続回路とが、互いに並列接続されて構成されている。このように構成されることによって、携帯機側受信アンテナ22aを含む共振回路23は、所定のインピーダンスを有した受信アンテナとして機能する。共振回路23の両端間には、携帯機側受信部22が接続される。共振回路23では、スイッチSW21とスイッチSW22とを、オン又はオフすることによって共振周波数が可変可能となっている。尚、ここでは共振回路23が携帯機側受信アンテナ22aと共に構成されているが、共振回路23の機能が携帯機側受信部22の内部に構成されていても良い。
スイッチSW21とスイッチSW22とが共にオンとされた時、インダクタL20にキャパシタC21とキャパシタC22とキャパシタC23とが並列に接続される。この時、共振周波数は、キャパシタC21とキャパシタC22とキャパシタC23それぞれのキャパシタンスを足し合わせたキャパシタンスと、インダクタL20のインダクタンスとによって決定される周波数になる。この周波数は、図4に示した第1波形パターンとしての正弦波の周波数f1に設定されている。
スイッチSW21がオンとされ、スイッチSW22がオフとされた時、インダクタL20にキャパシタC21とキャパシタC22とが並列に接続される。この時、共振周波数は、キャパシタC21とキャパシタC22それぞれのキャパシタンスを足し合わせたキャパシタンスと、インダクタL20のインダクタンスとによって決定される周波数になる。この周波数は、図4に示した第1波形パターンとしての正弦波の周波数f1の2倍、即ち2*f1に設定されている。
スイッチSW21とスイッチSW22とが共にオフとされた時、インダクタL20にキャパシタC21だけが並列に接続される。この時、共振周波数は、キャパシタC21のキャパシタンスとインダクタL20のインダクタンスとによって決定される周波数になる。この周波数は、図4に示した第1波形パターンとしての正弦波の周波数f1の3倍、即ち3*f1に設定されている。
共振回路23で共振周波数を正弦波の搬送波周波数f1と同一とした時、図6(A)に示すように、受信アンテナインピーダンスは、周波数f1において最大となると共に、所定の受信アンテナインピーダンスZ21となり、搬送波周波数f1の前後の周波数域において最適な値となっている。従って、搬送波周波数f1においてリクエスト信号を最も効率良く受信することができる。
同様に、共振回路23で共振周波数を正弦波の搬送波周波数f1の2倍とした時、図6(B)に示すように、受信アンテナインピーダンスは、周波数2*f1において所定の受信アンテナインピーダンスZ21となる。また、共振回路23で共振周波数を正弦波の搬送波周波数f1の3倍とした時、図6(C)に示すように、受信アンテナインピーダンスは、周波数3*f1において所定の受信アンテナインピーダンスZ21となる。従って、それぞれ周波数2*f1及び周波数3*f1の周波数の信号を最も効率良く受信することができる。
共振回路23は、前述した周波数f1の正弦波、周波数2*f1の正弦波、及び周波数3*f1の正弦波を抽出するために用いられる。即ち、周波数f1の正弦波を抽出する時には、共振回路23の共振周波数を周波数f1に切り替え、周波数2*f1の正弦波を抽出する時には、共振回路23の共振周波数を周波数2*f1に切り替え、周波数3*f1の正弦波を抽出する時には、共振回路23の共振周波数を周波数3*f1に切り替える。その結果、共振回路23を用いることによって、携帯機側制御部25は、基本波の受信強度と高調波の受信強度を検出することができる。
上述したように、携帯機側受信部22では、リクエスト信号又はリクエスト信号と同一の周波数を有する不正信号を受信した場合、受信した信号の基本波及び高調波を抽出するため、共振回路23の共振周波数が周波数f1、周波数2*f1又は周波数3*f1に切り替えられる。しかし、リレーアタックが行なわれなかった場合、図7(a)に示すように、通常周波数f1の正弦波の基本波だけが携帯機側制御部25で検出される。即ち、高調波は検出されない。
一方、リレーアタックが行なわれた場合、図7(b)に示すように、周波数f1の正弦波の基本波だけでなく、高調波も検出される。図3に示したようなリレーアタックが行なわれた場合、車両側装置10と携帯機20との間の通信経路に、第1中継機60及び第2中継機70が入ることになる。第1中継機60には、受信したLF信号をRF信号に変換するための周波数変換回路や増幅回路等が備えられており、また、第2中継機70には、受信したRF信号をLF信号に変換するための周波数変換回路や増幅回路等が備えられている。
一般的に周波数変換回路では、入力された信号がダイオード等の非線形素子を介して周波数変換されるため、その信号の歪率は通常悪化して出力される。従って、リレーアタックが行なわれた場合、即ち第1中継機60及び第2中継機70が車両側装置10と携帯機20との間の通信経路に入った場合には、第1中継機60で受信したリクエスト信号に対して、第2中継機70から送信される不正信号の歪率は必然的に大きくなる。言い換えれば、第1中継機60で受信した信号が正弦波であっても、第2中継機70から送信される不正信号には、図7(b)に示すように高調波が含まれる。そのため、リレーアタックが行なわれた場合、携帯機20で検出される高調波の受信強度は大きくなる。
従って、キーレスエントリー装置100において、車両側制御部15は、アンサー信号内にある、基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報に基づいて、通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを判定することができる。その結果、簡易な構成でリレーアタックが行なわれたかどうかを明確に判定することができる。
具体的には、アンサー信号内にある、基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報に含まれている高調波の受信強度の値を所定の値と比較することによって、通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを判定する。即ち、この情報に含まれる高調波の受信強度の値が閾値より大きければ不正であると判定し、高調波の受信強度が閾値より小さければ正規であると判定する。上記所定の値、即ち閾値は、例えば、増幅回路や周波数変換回路で発生する歪による高調波の受信強度より低く設定するなど、適宜設定することができる。この方法によれば、車両側送信部11からは正弦波を送信するだけで良く、また、受信した通信信号の受信した通信信号の高調波の受信強度を判定に用いるため、通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを、非常に簡易な構成で容易に判定することができる。
また、別の判定方法として、基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報によって得られた基本波と高調波との間の受信強度差又は受信強度比を基に、通信信号が不正な中継機を介した信号か、中継機を介さない正規の信号かを判定することもできる。前述したように、基本波と高調波との間の受信強度差及び受信強度比の算出は、アンサー信号を送信する前に携帯機側制御部25で行われても良いし、アンサー信号を受信した後に車両側制御部15で行われても良い。携帯機側制御部25又は車両側制御部15で得られた、基本波と高調波との間の受信強度差又は受信強度比が、所定の値より小さければ不正であると判定し、所定の値より大きければ正規であると判定する。上記所定の値は、例えば、基本波の受信強度と通常増幅回路や周波数変換回路で発生する歪による高調波の受信強度との間の受信強度差又は受信強度比より大きく設定するなど、適宜設定することができる。この方法によれば、車両側送信部11からは正弦波を送信するだけで良く、また、受信した通信信号の基本波と高調波との間の受信強度差又は受信強度比を判定に用いるため、通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを、非常に簡易な構成で明確に判定することができる。
尚、これまでの説明では、受信した信号の基本波及び高調波を抽出するため、共振回路23を使用し、共振回路23の共振周波数を周波数f1、周波数2*f1又は周波数3*f1に切り替えるようにした。このように共振周波数を切り替えることにより、受信強度を高くして、判定精度を高めることができるが、本発明では、共振周波数を切り替える機能を必ずしも有さなくても良い。共振周波数を切り替える機能を有さない場合、受信強度は低くなるが、それでも通信信号の基本波の受信強度と前記通信信号の高調波の受信強度とを検出することは可能である。このことにより、キーレスエントリー装置の構成を簡単にすることができ、装置のコストを削減することができる。
このように構成されたキーレスエントリー装置100は、受信した通信信号の基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報を含むアンサー信号を作成し、この基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報に基づいて通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを判定するため、簡易な構成でリレーアタックが行なわれたかどうかを明確に判定することができる。
また、第1中継機60及び第2中継機70を経由させることによって正弦波が歪むことを利用して判定を行うため、車両側送信部11からは正弦波を送信するだけで良く、また、受信した通信信号の高調波の受信強度を判定に用いるため、通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを、非常に簡易な構成で容易に判定することができる。
また、第1中継機60及び第2中継機70を経由させることによって正弦波が歪むことを利用して判定を行うため、車両側送信部11からは正弦波を送信するだけで良く、また、受信した通信信号の基本波と高調波との間の受信強度差又は受信強度比を判定に用いるため、通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを、非常に簡易な構成で明確に判定することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態のキーレスエントリー装置200について、図1、図3、図5乃至図10を用いて説明する。尚、キーレスエントリー装置100とキーレスエントリー装置200との相違点は、リクエスト信号の送信フォーマットが異なることと、車両側制御部35の中に矩形波信号生成部39が設けられていることだけであり、その他の構成は全て同一である。そのため、キーレスエントリー装置100と同一の構成については説明を省略することがある。
本発明のキーレスエントリー装置200では、リクエスト信号の搬送波の波形パターンを切り替え、アンサー信号内にある、基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報から得られる歪率の大きさに関する情報を基に、通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを判定するものである。
図1は、キーレスエントリー装置200の概略的な構成を示す図であり、車両側装置10を備えた車両50及び携帯機20を所持した車両ユーザ55を上方から見た時の平面図である。また、図8は、キーレスエントリー装置200に用いられる車両側装置30及び携帯機20それぞれの要部構成を示すブロック図である。図9は、キーレスエントリー装置200におけるリクエスト信号のLF送信フォーマットの構成を示す模式図であり、距離測定用フレームの搬送波信号の波形パターンが正弦波と矩形波である場合を示す。図10(a)−(1)は、リレーアタックが行なわれなかった場合の携帯機20における、受信した信号の生の波形パターンを示す模式図であり、図10(a)−(2)は、この受信した信号の波形パターンを周波数毎に分解した模式図である。また、図10(b)−(1)は、リレーアタックが行なわれた場合の携帯機20における、受信した信号の生の波形パターンを示す模式図であり、図10(b)−(2)は、この受信した信号の波形パターンを周波数毎に分解した模式図である。
図1に示すように、車両側送信アンテナ31aと車両側受信アンテナ12aと車両側装置本体30aとで、車両側装置30が構成される。車両側装置本体30aは、図8に示すように、車両側送信部31(LF−TX)と、車両側受信部12(RF−RX)と、車両側制御部35(CPU)と、車両側発振回路16(LF−OSC)と、車両側記憶部17(MEM)と、駆動信号送信部18(DS−TX)とから構成されている。車両側装置本体30aの中で、車両側制御部35がその中央に位置し、車両側制御部35に接続される各部を制御している。
車両側送信部31は、入力端が車両側制御部35に接続され、出力端が車両側送信アンテナ31aに接続されている。車両側制御部35内には、矩形波信号生成部39(SQU)が設けられている。矩形波信号生成部39は、車両側発振回路16で生成された搬送波信号である正弦波を、波形整形回路(図示せず)を使用して矩形波を生成させる回路であり、生成された矩形波はリクエスト信号のLF送信フォーマットで使用される。
図9に示すように、リクエスト信号のLF送信フォーマットは、車両側装置30に割り当てられた第1のID及び携帯機20に割り当てられた第2のID等を含む情報フレームと、車両側装置30と携帯機20との間の距離を測定するための距離測定用フレームとを有して構成されている。情報フレームの搬送波周波数は所定の周波数f1であり、その波形パターンは正弦波である。
キーレスエントリー装置200では、車両側制御部35は、リクエスト信号の距離測定用フレームにおける搬送波の波形パターンとして、所定の第1波形パターンと第1波形パターンとは歪率の異なる所定の第2波形パターンとを切り替えて送信するように制御する。
図9に示すように、距離測定用フレームは、上述した第1波形パターンとしての正弦波及び第2波形パターンとしての、正弦波よりも歪率の大きな波形で構成されている。具体的には、キーレスエントリー装置200における第2波形パターンは矩形波である。第1波形パターンとしての正弦波、及び第2波形パターンとしての矩形波の周波数は、共に所定の周波数f1である。正弦波と矩形波との切り替えは、車両側送信部31において、前述した矩形波信号生成部39を介するか、矩形波信号生成部39を介さないかによって行うことができる。尚、キーレスエントリー装置200では、第1波形パターンを正弦波とし、第2波形パターンを矩形波としたが、この順番は逆であっても良い。また、第1波形パターンを正弦波と第2波形パターンとの間が空いていても良い。
一般的に、矩形波には基本波の他に、2倍・3倍等の高調波が多く含まれる。言い換えれば、矩形波は歪率が大きくなる。基本波の受信強度をV1、2倍の高調波の受信強度をV2、3倍の高調波の受信強度をV3、n倍の高調波の受信強度をVnとすると、矩形波の歪率は、以下のように表すことができる。
矩形波の歪率=√(V2^2+V3^2+―――+Vn^2)/V1
従って、矩形波信号又は正弦波よりも歪の大きな波形の信号の歪率は、基本波の受信強度V1、及び高調波の受信強度V2、V3等によって求めることができる。尚、V1,V2、V3等の電圧値は、それぞれの信号の実効電圧値である。
携帯機側受信部22は、リレーアタックが行なわれた場合でも、リレーアタックが行なわれなかった場合でも、リクエスト信号又はリクエスト信号と同一の周波数を有する不正信号を含む通信信号を受信し、携帯機制御部25は、受信した通信信号の基本波の受信強度と通信信号の高調波の受信強度を検出する。そして、基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報を含むアンサー信号を作成すると共に携帯機側送信部21より送信させる。車両側制御部35は、基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報に基づいて、通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを判定する。
具体的には、車両側制御部35は、携帯機側制御部25又は車両側制御部35で得られる第1波形パターン及び第2波形パターンそれぞれにおける基本波と高調波との間の受信強度差又は受信強度比を基に、通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを判定する。
この場合、第2波形パターン、即ち矩形波受信時における基本波と高調波との間の受信強度差又は受信強度比が閾値より小さければアンサー信号が正規であり、受信強度差又は受信強度比が所定の閾値より大きければアンサー信号が不正であると判定する。尚、上記所定の閾値は、通常の矩形波による歪による高調波の場合よりも小さく設定され、通常の周波数変換器等によって発生する歪による高調波の場合よりも大きく設定される。
また、車両側制御部35は、携帯機側制御部25又は車両側制御部35で得られる第1波形パターンにおける高調波の受信強度と第2波形パターンにおける高調波の受信強度との間の受信強度差又は受信強度比を基に、通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを判定するようにしても良い。
この場合、第1波形パターンにおける高調波の受信強度と第2波形パターンにおける高調波の受信強度との間の受信強度差又は受信強度比が、所定の閾値より小さければアンサー信号が不正であると判定し、所定の閾値より大きければアンサー信号が正規であると判定する。尚、上記所定の閾値は、通常の矩形波による歪による高調波の場合よりも小さく設定され、通常の周波数変換器等によって発生する歪による高調波の場合よりも大きく設定される。
前述したように、携帯機側制御部25が基本波の受信強度と高調波の受信強度を検出するためには、携帯機側受信部22において、周波数f1の正弦波、周波数2*f1の正弦波、及び3*f1の正弦波を抽出する必要がある。携帯機側制御部25は、受信したリクエスト信号に対して、基本波の受信強度と高調波の受信強度とを、前述した共振回路23を用いて検出する。尚、本説明では、第2波形パターンを矩形波であるとしているが、第2波形パターンの波形を、矩形波よりも歪率の小さな波形であり且つ正弦波よりも歪率の大きな波形としても良い。また、必ずしも共振回路23を用いなくとも良い。共振周波数を切り替える機能を有さない場合、受信感度は低くなるが、それでも基本波の受信感度と高調波の受信強度とを検出することは可能である。
リレーアタックが行なわれなかった場合、図9に示したリクエスト信号を構成する距離測定用フレームの第1波形パターンとしての正弦波が受信された後に、第2波形パターンとしての矩形波が、携帯機側受信部22で受信される。
リクエスト信号を構成する距離測定用フレームの第1波形パターンとしての正弦波が受信された時、キーレスエントリー装置100の場合と同様に、携帯機側受信部22では、図7(a)に示した、周波数f1の正弦波のみが抽出される。
一方、図10(a)−(1)に示す、距離測定用フレームの第2波形パターンとしての矩形波が受信された時、携帯機側受信部22では、図10(a)−(2)に示すように、基本波である周波数f1の正弦波、2倍の高調波である周波数2*f1の正弦波、及び3倍の高調波である3*f1の正弦波が抽出される。その後、携帯機側制御部25において、それらの受信強度が検出される。尚、4倍以上の高調波については、その受信強度が小さいため特に考慮しないが、通信環境によってその受信強度が得られる場合には、必要に応じて考慮しても良い。
従って、リレーアタックが行なわれなかった場合、車両側装置30が受信するアンサー信号において、基本波と高調波との間の受信強度差又は受信強度比は、所定の閾値より小さくなる。その結果、アンサー信号が正規であると判定することができる。また、第1波形パターン即ち正弦波における高調波の受信強度と第2波形パターン即ち矩形波における高調波の受信強度との間の受信強度差又は受信強度比が、それぞれ所定の閾値より大きくなる。その結果、アンサー信号が正規であると判定することができる。
一方、図3に示したようなリレーアタックが行なわれた場合でも、車両側装置30から第1中継機60にも第1波形パターンとしての正弦波が送信されると共に、第2波形パターンとしての矩形波も送信される。しかし、第1中継機60ではこの矩形波を認識できないため、第1中継機60から第2中継機70に送信される信号は、矩形波ではない。従って、第2中継機70から携帯機20に送信される信号、即ち図10(b)−(1)に示す受信信号の波形パターンには、矩形波の成分は含まれない。従って、第2波形パターンとしての矩形波の成分の一部である2倍の高調波及び3倍の高調波は抽出されない。
従って、リレーアタックが行なわれた場合、アンサー信号内にある基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報によって得られる歪に関する情報には、第1中継機60及び第2中継機70内で発生する歪以外の歪の情報は含まれていない。通常、矩形波による歪率は、第1中継機60及び第2中継機70内の増幅器や周波数変換器等において発生する波形の歪率よりも大きい。従って、リレーアタックが行なわれた場合、図10(b)−(2)に示すように、携帯機側受信部22では、第1中継機60及び第2中継機70内の増幅器や周波数変換器等で発生する歪による高調波(2*f1、3*f1等)だけである。尚、これらの高調波(2*f1、3*f1等)の受信強度は、図7(b)で示した、キーレスエントリー装置100における高調波(2*f1、3*f1等)の受信強度とほぼ同一である。
そのため、リレーアタックが行なわれた場合、車両側装置30が受信するアンサー信号内にある基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報において、図10(b)−(2)に示すように、基本波と高調波との間の受信強度差又は受信強度比は、所定の閾値より大きくなる。その結果、アンサー信号が不正であると判定することができる。また、第1波形パターン即ち正弦波における高調波の受信強度と第2波形パターン即ち矩形波における高調波の受信強度との間の受信強度差又は受信強度比が、それぞれ所定の閾値より小さくなる。その結果、アンサー信号が不正であると判定することができる。
このように、本発明のキーレスエントリー装置200は、第1の波形パターンを正弦波とし、第2の波形パターンを正弦波よりも歪率の大きな波形とし、それぞれの波形パターンに占める高調波の受信強度に差を生じさせることができるため、通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを、明確に判定することができる。
また、第2の波形パターンを矩形波とすることによって、第2波形パターンに占める高調波の受信強度を極めて大きくさせることができるため、通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを、極めて明確に判定することができる。
また、車両側制御部35は、基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報によって得られる第1波形パターン及び第2波形パターンそれぞれにおける基本波と高調波との間の受信強度差又は受信強度比を判定に用いるため、通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを、簡易な構成で明確に判定することができる。
また、車両側制御部35は、基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報によって得られる第1波形パターンにおける高調波の受信強度と第2波形パターンにおける高調波の受信強度との間の受信強度差又は受信強度比を判定に用いるため、通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを、簡易な構成でより明確に判定することができる。
以上説明したように、本発明のキーレスエントリー装置は、受信した通信信号の基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報を含むアンサー信号を作成し、この基本波の受信強度と高調波の受信強度とに関する情報に基づいて通信信号が不正な中継機を介した信号か中継機を介さない正規の信号かを判定するため、簡易な構成でリレーアタックが行なわれたかどうかを明確に判定することができる。
本発明は上記の実施形態の記載に限定されず、その効果が発揮される態様で適宜変更して実施することができる。