以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る座屈拘束ブレース100が、柱200と梁300との接続部に取り付けられた状態を示す図である。図1においては、鉛直方向に沿って配置された柱200と、水平方向に沿って配置された梁300とが、複数のボルトBT1によって締結固定されている。
柱200は、内部に空間が形成された鋼製の角柱であって、ボルトBT1を挿通するための複数の貫通孔210がその側面に形成されている。
梁300は、互いに平行な一対のフランジ310、320と、これらを繋ぐウェブ330とを有するH形鋼である。梁300の長手方向端部には、フランジ310、320、及びウェブ330のいずれに対しても垂直なエンドプレート340が溶接固定されている。また、エンドプレート340には、柱200に形成された複数の貫通孔210にそれぞれ対応する位置において、複数の貫通孔341が形成されている。梁300は、エンドプレート340を柱200の側面に当接させた状態で、ボルトBT1を貫通孔210及び貫通孔341に挿入して締結することにより、柱200に対して固定されている。
図1に示したように、座屈拘束ブレース100は、柱200と梁300との接続部において方杖としてこれらの間に架設されることにより、当該接続部を補強するための部材である。座屈拘束ブレース100は、その上端部を梁300のフランジ320に対して下方側から当接させた状態で、ボルトBT2により梁300に締結固定されている。また、座屈拘束ブレース100は、その下端部を柱200の側面に対して当接させた状態で、ボルトBT3により柱200に締結固定されている。
図2は、座屈拘束ブレース100の分解組立図である。図2に示したように、座屈拘束ブレース100は、ブレース心材110と、ブレース心材110を間に挟み込むように配置される第一拘束材150と第二拘束材170とを有している。
ブレース心材110は、柱200や梁300よりも降伏点の低い鉄鋼材料で形成されており、薄板形状の軸部111と、軸部111の長手方向両端部にそれぞれ溶接固定されたフランジ部120、130とを有している。フランジ部120は、梁300のフランジ320に対して下方から当接するフランジである。フランジ部120には複数の貫通孔121が形成されている。これら貫通孔121にボルトBT2を挿通して締結することにより、ブレース心材110の上端部が梁300に対して固定される。
フランジ部130は、柱200の側面に対して当接するフランジである。フランジ部130には複数の貫通孔131が形成されている。これら貫通孔131にボルトBT3を挿通して締結することにより、ブレース心材110の下端部が柱200に対して固定される。
このように、ブレース心材110は一端が梁300に対して固定され、他端が柱200に対して固定される。このため、例えば柱200と梁300とのなす角度が変化するように建物が変形しようとした際においては、ブレース心材110の軸部111には、その長手方向に沿った圧縮力又は引っ張り力が加わる。換言すれば、ブレース心材110の軸部111は、柱200と梁300との接続部が変形してしまうことを抑制するように、上記の圧縮力又は引っ張り力に抵抗するような力を発生させるための部材であるということができる。
ところで、軸部111は長い板状の部材であるから、その長手方向に沿って上記のような圧縮力が加わると、当該圧縮力の大きさによっては軸部111が座屈してしまう可能性がある。具体的には、軸部111の表面に対して垂直な方向(図2において矢印AR1で示した方向)に沿って軸部111の中央部が変位するように、軸部111の全体が円弧状に変形してしまう可能性がある(全体座屈)。又は、軸部111の一部のみが矢印AR1で示した方向に変位するように、軸部111が局所的に変形してしまう可能性がある(局部座屈)。このような座屈が生じると、柱200と梁300との接続部を十分に補強することができない。ブレース心材110を間に挟み込むように配置される第一拘束材150及び第二拘束材170は、上記のような軸部111の座屈を抑制するための部材である。
以下の説明においては、軸部111の長手方向をz方向とする。また、z方向に垂直な面で軸部111を切断した場合の断面形状は長方形となるが、当該長方形の長辺に沿った方向をx方向とする。更に、x方向及びz方向のいずれに対しても垂直な方向をy方向とする。
第一拘束材150は鉄鋼材料によって形成された板であって、平板部155と、傾斜部152、154と、当接部151、153とを有している。第一拘束材150は、平板に対して曲げ加工を施すことによって形成されている。このため、第一拘束材150の上記各部の厚さは全て同一となっている。
平板部155は、第一拘束材150のうちx方向における中央の部分であって、その図2における上側の面が、軸部111に対向する対向面156となっている。平板部155は、軸部111に対して平行である。
傾斜部152は、平板部155よりも図2における奥側の部分であって、平板部155から遠ざかる程(図2においては奥側に行く程)第二拘束材170に近づくように、対向面156に対して傾斜している。また、傾斜部154は、平板部155よりも図2における手前側の部分であって、平板部155から遠ざかる程(図2においては手前側に行く程)第二拘束材170に近づくように、対向面156に対して傾斜している。
当接部151は、傾斜部152よりも更に(図2における)奥側の部分であって、対向面156に対して平行である。また、当接部153は、傾斜部154よりも更に(図2における)手前側の部分であって、対向面156に対して平行である。当接部151と当接部153とは、それぞれのx方向に沿った長さ(幅)が互いに同一であって、y方向における位置も互いに同一である。
当接部151のうち第二拘束材170側の表面と、当接部153のうち第二拘束材170側の表面とは、同一の平面上に配置されている。当該平面と対向面156との距離(当接部151及び当接部153の突出量といってもよい)は、軸部111の厚さの1/2よりも大きく、軸部111の厚さよりも小さい。
第一拘束材150は、対向面156を軸部111側に向けて、傾斜部152と傾斜部154との間に軸部111の一部を収納した状態となっている。換言すれば、第一拘束材150は、対向面156を有する平板部155以外の部分が、第二拘束材170側、すなわち図2における上側に向かって突出するような形状となっている。
当接部151には、そのx方向における中央部をy方向に沿って貫くように、複数の貫通孔157が形成されている。また、当接部153には、そのx方向における中央部をy方向に沿って貫くように、複数の貫通孔158が形成されている。
第二拘束材170は、第一拘束材150と同一の鉄鋼材料によって形成された板である。第二拘束材170の形状と、第一拘束材150の形状とは、y方向に垂直な平面について面対称となっている。第二拘束材170は、y方向に沿って見た場合において第一拘束材150と全体が重なるように配置されている。
第二拘束材170は、平板部175と、傾斜部172、174と、当接部171、173とを有している。第二拘束材170は、平板に対して曲げ加工を施すことによって形成されている。このため、第二拘束材170の上記各部の厚さは全て同一となっている。
平板部175は、第二拘束材170のうちx方向における中央の部分であって、その図2における下側の面が、軸部111に対向する対向面176となっている。平板部175は、軸部111に対して平行である。
傾斜部172は、平板部175よりも図2における奥側の部分であって、平板部175から遠ざかる程(図2においては奥側に行く程)第一拘束材150に近づくように、対向面176に対して傾斜している。また、傾斜部174は、平板部175よりも図2における手前側の部分であって、平板部175から遠ざかる程(図2においては手前側に行く程)第一拘束材150に近づくように、対向面176に対して傾斜している。
当接部171は、傾斜部172よりも更に(図2における)奥側の部分であって、対向面176に対して平行である。また、当接部173は、傾斜部174よりも更に(図2における)手前側の部分であって、対向面176に対して平行である。当接部171と当接部173とは、それぞれのx方向に沿った長さ(幅)が互いに同一であって、y方向における位置も互いに同一である。
当接部171のうち第一拘束材150側の表面と、当接部173のうち第一拘束材150側の表面とは、同一の平面上に配置されている。当該平面と対向面176との距離(当接部171及び当接部173の突出量といってもよい)は、軸部111の厚さの1/2よりも大きく、軸部111の厚さよりも小さい。
第二拘束材170は、対向面176を軸部111側に向けて、傾斜部172と傾斜部174との間に軸部111の一部を収納した状態となっている。換言すれば、第二拘束材170は、対向面176を有する平板部175以外の部分が、第一拘束材150側、すなわち図2における下側に向かって突出するような形状となっている。
当接部171には、そのx方向における中央部をy方向に沿って貫くように、複数の貫通孔177が形成されている。また、当接部173には、そのx方向における中央部をy方向に沿って貫くように、複数の貫通孔178が形成されている。
第一拘束材150と第二拘束材170とは、ブレース心材110の軸部111を間に挟み込んだ状態で、複数のボルトBTF(図2では不図示)により接合されている。具体的には、当接部151と当接部171とを重ね合わせた状態で、互いに重なる貫通孔157と貫通孔177とにそれぞれボルトBTFを挿通し、ボルトBTFを締結することにより接合されている。同様に、当接部153と当接部173とを重ね合わせた状態で、互いに重なる貫通孔158と貫通孔178とにそれぞれボルトBTFを挿通し、ボルトBTFを締結することにより接合されている。
図3は、座屈拘束ブレース100をその長手方向(z方向)に対して垂直な面で切断した様子を示す断面図であって、図1のA−A断面を示している。このうち、図3(A)は、座屈拘束ブレース100の構造を明確に示すことを目的として、ボルトBTFを締結する前において当接部151と当接部171とが(当接部153と当接部173とが)互いに離間している状態を示している。図3(B)は、ボルトBTFが締結され、当接部151と当接部171とが(当接部153と当接部173とが)互いに当接している状態を示している。
図3(B)に示したように、軸部111と対向面156との間、及び、軸部111と対向面176との間はそれぞれ僅かに離間している。このため、軸部111が変形していない状態においては、第一拘束材150及び第二拘束材170には軸部111からの力が加わっておらず、これらはいずれも変形していない。
軸部111の長手方向(z方向)に沿って圧縮力が加わり、軸部111が座屈するように変形しようとした際においては、軸部111の表面(y方向に対して垂直な表面)の一部が対向面156又は対向面176に対して内側から当接し、上記変形を抑制するような力(座屈拘束力)を受けることとなる。その結果、軸部111の座屈が抑制されるため、柱200と梁300との接続部が十分な強度で補強される。
このように、第一拘束材150及び第二拘束材170は、軸部111の周囲を包囲した状態で配置されることにより、軸部111の座屈を抑制している。すなわち、これらは柱200や梁300からの圧縮力等を直接受けるための部材ではなく、軸部111が座屈する方向に変形しようとした際において、軸部111からの力を受けるための部材である。換言すれば、軸部111の周囲から、軸部111の長手方向(z方向)に対して垂直な方向(y方向)の座屈拘束力を加えることで、軸部111の座屈を抑制するように配置された部材である。
本実施形態においては、第一拘束材150の全体が単なる平板形状とはなっているのではなく、ブレース心材110に対向する対向面156を有する平板部155と、対向面156よりもブレース心材110側に向けて突出するように形成された当接部151、153と、を有している。すなわち、平板の一部がブレース心材110側(第二拘束材170側といってもよい)に向けて突出した形状となっている。また、第一拘束材150は平板に対して曲げ加工を施すことによって形成されているのであるから、平板部155と当接部151、153とは、互いに独立に変形し得ないように全体が一体となっている。
また、第二拘束材170についても同様であって、第二拘束材170の全体が単なる平板形状とはなっているのではなく、ブレース心材110に対向する対向面176を有する平板部175と、対向面176よりもブレース心材110側に向けて突出するように形成された当接部171、173と、を有している。すなわち、平板の一部がブレース心材110側(第一拘束材150側といってもよい)に向けて突出した形状となっている。また、第二拘束材170は平板に対して曲げ加工を施すことによって形成されているのであるから、平板部175と当接部171、173とは、互いに独立に変形し得ないように全体が一体となっている。
第一拘束材150と第二拘束材170とが上記のように形成されているため、これらは、全体を平板形状とした場合に比べて、それぞれ断面二次モーメントが大きくなっている。このため、曲げに対する剛性が大きくなっており、変形が抑制されている。
ブレース心材110が圧縮力によって変形し、軸部111の一部が第一拘束材150又は第二拘束材170に当たった場合であっても、第一拘束材150等の剛性が大きいため、ブレース心材110には比較的強い座屈拘束力が加えられることとなる。その結果、圧縮力が加わった場合における軸部111の座屈が抑制され、柱200と梁300との接続部が強固に補強される。
また、第一拘束材150等の全体を厚い平板とするのではなく、平板の一部を突出させた形状としているため、第一拘束材150等の全体は大型化していない。このように、本発明に係る座屈拘束ブレース100では、座屈拘束材(第一拘束材150、第二拘束材170)を大型化することなくその変形を抑制することが可能となっている。
図3に示したように、ブレース心材110の長手方向(z方向)に対して垂直な断面において、第一拘束材150の断面形状と、第二拘束材170の断面形状とは、軸部111の軸心CAXを中心として互いに点対称となっている。尚、軸心CAXとは、軸部111の断面のうちx方向における中心となる位置であり、且つ、y方向における中心となる位置である。
上記のように断面形状が点対称となっているため、第一拘束材150と第二拘束材170の形状は互いに同一となっており、第一拘束材150と第二拘束材170とが互いに接合されている部分の形状は互いに同一となっている。すなわち、当接部151と当接部171とが当接する当接面の形状と、当接部153と当接部173とが当接する当接面の形状とが、互いに同一となっている。このため、一方の当接面における接合強度が、他方の当接面における接合強度よりも弱くなってしまうことが無い。その結果、座屈拘束材(第一拘束材150と第二拘束材170)全体としての剛性が大きくなっている。
また、当接部151と当接部171とが当接している当接面のy方向における位置、及び、当接部153と当接部173とが当接している当接面のy方向における位置は、いずれも、ブレース心材110の厚さ方向(y方向)における中央となっている。このため、ブレース心材110は、その周囲を第一拘束材150及び第二拘束材170によって均等に囲まれた状態となっている。その結果、ブレース心材110に対する拘束が偏ってしまうことがなく、ブレース心材110の座屈が適切に抑制されている。
図4は、本発明の第二実施形態に係る座屈拘束ブレース100aを、その長手方向(z方向)に対して垂直な面で切断した様子を示す断面図である。座屈拘束ブレース100aは、第一拘束材150aの断面形状、及び、第二拘束材170aの断面形状においてのみ座屈拘束ブレース100と異なっており、その他については座屈拘束ブレース100と同様である。
図4(A)は、座屈拘束ブレース100aの構造を明確に示すことを目的として、ボルトBTFを締結する前において第一拘束材150aと第二拘束材170aとが互いに離間している状態を示している。図4(B)は、ボルトBTFが締結され、第一拘束材150aと第二拘束材170aとが互いに当接している状態を示している。
図4(A)に示したように、第一拘束材150aは、平板部155aと、当接部151aとを有している。第一拘束材150aは、平板(平板部155a)に対して棒状の板材(当接部151a)を溶接接合することによって形成されている。
平板部155aは、軸部111に対して平行に配置された薄板状の部分であって、その図4(A)における上側の面である対向面156aの一部が軸部111に対向している。
当接部151aは、平板部155aの図4(A)における左側の端部に沿って形成された厚板状の部分であって、その図4(A)における上側の面が、対向面156aよりも第二拘束材170a側に向かって突出するように形成されている。当接部151aの先端面(上端面)は対向面156aと平行な面となっている。当接部151aの先端面と対向面156aとの距離(当接部151aの突出量といってもよい)は、軸部111の厚さよりも僅かに大きい。
第二拘束材170aは、第一拘束材150aと同一の鉄鋼材料によって形成されている。第二拘束材170aをy方向に沿って見た場合の外形は、第一拘束材150aをy方向に沿って見た場合の外形と同一形状となっている。第二拘束材170aは、y方向に沿って見た場合において、第一拘束材150aと全体が重なるように配置されている。
第二拘束材170aは、平板部175aと、当接部173aとを有している。第二拘束材170aは、平板(平板部175a)に対して棒状の板材(当接部173a)を溶接接合することによって形成されている。
平板部175aは、軸部111に対して平行に配置された薄板状の部分であって、その図4(A)における下側の面である対向面176aの一部が軸部111に対向している。
当接部173aは、平板部175aの図4(A)における右側の端部に沿って形成された厚板状の部分であって、その図4(A)における下側の面が、対向面176aよりも第一拘束材150a側に向かって突出するように形成されている。当接部173aの先端面(下端面)は対向面176aと平行な面となっている。当接部173aの先端面と対向面176aとの距離(当接部173aの突出量といってもよい)は、軸部111の厚さよりも僅かに大きい。
図4(A)及び図4(B)に示したように、第一拘束材150aの断面形状と第二拘束材170aの断面形状とは、軸部111の軸心CAXを中心として互いに点対称となっている。
図4(B)に示したように、第一拘束材150aと第二拘束材170aとは、ブレース心材110の軸部111を間に挟み込んだ状態で、複数のボルトBTFにより接合されている。具体的には、当接部151aの先端面を、対向面176aのうち図4(B)における左側の端部近傍の部分に当接させた状態で、当該当接面を貫くように挿入されたボルトBTFを締結することにより接合されている。同様に、当接部173aの先端面を、対向面156aのうちx方向側の端部近傍の部分に当接させた状態で、当該当接面を貫くように挿入されたボルトBTFを締結することにより接合されている。
図4(B)の状態において、当接部151aの右側端部から、当接部173aの左側端部までの距離は、x方向における軸部111の寸法(幅)よりも僅かに大きくなっている。
このように、座屈拘束ブレース100aにおいては、第一拘束材150a等の全体を平板形状とするのではなく、平板の一部に棒状部材を溶接接合して当接部151a等を形成することにより、第一拘束材150a等の断面二次モーメントを大きくしている。このため、第一拘束材150a等の曲げに対する剛性が大きくなっており、変形が抑制されている。
ブレース心材110が圧縮力によって変形し、軸部111の一部が第一拘束材150a又は第二拘束材170aに当たった場合であっても、第一拘束材150a等の剛性が大きいため、ブレース心材110には比較的強い座屈拘束力が加えられることとなる。その結果、圧縮力が加わった場合における軸部111の座屈が抑制され、柱200と梁300との接続部が強固に補強される。
図5は、本発明の第三実施形態に係る座屈拘束ブレース100bを、その長手方向(z方向)に対して垂直な面で切断した様子を示す断面図である。座屈拘束ブレース100bは、第一拘束材150bの断面形状、及び、第二拘束材170bの断面形状においてのみ座屈拘束ブレース100と異なっており、その他については座屈拘束ブレース100と同様である。
図5(A)は、座屈拘束ブレース100bの構造を明確に示すことを目的として、ボルトBTFを締結する前において第一拘束材150bと第二拘束材170bとが互いに離間している状態を示している。図5(B)は、ボルトBTFが締結され、第一拘束材150bと第二拘束材170bとが互いに当接している状態を示している。
図5(A)に示したように、第一拘束材150bは、平板部155bと、当接部151bと、当接部153bと、を有している。第一拘束材150bは、平板(平板部155b)に対して二つの棒状の板材(当接部151b、当接部153b)を溶接接合することによって形成されている。
平板部155bは、第一拘束材150bのうちx方向における中央の部分であって、その図5(A)における上側の面が、軸部111に対向する対向面156bとなっている。平板部155bは、軸部111に対して平行である。
当接部151bは、平板部155bの図5(A)における左側の端部に沿って形成された厚板状の部分であって、その図5(A)における上側の面が、対向面156bよりも第二拘束材170b側に向かって突出するように形成されている。当接部151bの先端面(上端面)は対向面156bと平行な面となっている。また、当接部153bは、平板部155bの図5(A)における右側の端部に沿って形成された厚板状の部分であって、その図5(A)における上側の面が、対向面156bよりも第二拘束材170b側に向かって突出するように形成されている。当接部153bの先端面(上端面)は対向面156bと平行な面となっている。
当接部151bと当接部153bとは、それぞれのx方向に沿った長さ(幅)が互いに同一であって、y方向における位置も互いに同一である。
当接部151bのうち第二拘束材170b側の表面と、当接部153bのうち第二拘束材170b側の表面とは、同一の平面上に配置されている。当該平面と対向面156bとの距離(当接部151b及び当接部153bの突出量といってもよい)は、軸部111の厚さの1/2よりも大きく、軸部111の厚さよりも小さい。
第一拘束材150bは、対向面156bを軸部111側に向けて、当接部151bと当接部153bとの間に軸部111の一部を収納した状態となっている。換言すれば、第一拘束材150bは、対向面156bを有する平板部155b以外の部分が、第二拘束材170b側、すなわち図5(A)における上側に向かって突出するような形状となっている。
第二拘束材170bは、第一拘束材150bと同一の鉄鋼材料によって形成されている。第二拘束材170bの形状と、第一拘束材150bの形状とは、y方向に垂直な平面について面対称となっている。第二拘束材170bは、y方向に沿って見た場合において第一拘束材150bと全体が重なるように配置されている。
第二拘束材170bは、平板部175bと、当接部171bと、当接部173bと、を有している。第二拘束材170bは、平板(平板部175b)に対して二つの棒状の板材(当接部171b、当接部173b)を溶接接合することによって形成されている。
平板部175bは、第二拘束材170bのうちx方向における中央の部分であって、その図5(A)における下側の面が、軸部111に対向する対向面176bとなっている。平板部175bは、軸部111に対して平行である。
当接部171bは、平板部175bの図5(A)における左側の端部に沿って形成された厚板状の部分であって、その図5(A)における下側の面が、対向面176bよりも第一拘束材150b側に向かって突出するように形成されている。当接部171bの先端面(下端面)は対向面176bと平行な面となっている。また、当接部173bは、平板部175bの図5(A)における右側の端部に沿って形成された厚板状の部分であって、その図5(A)における下側の面が、対向面176bよりも第一拘束材150b側に向かって突出するように形成されている。当接部173bの先端面(下端面)は対向面176bと平行な面となっている。
当接部171bと当接部173bとは、それぞれのx方向に沿った長さ(幅)が互いに同一であって、y方向における位置も互いに同一である。
当接部171bのうち第一拘束材150b側の表面と、当接部173bのうち第一拘束材150b側の表面とは、同一の平面上に配置されている。当該平面と対向面176bとの距離(当接部171b及び当接部173bの突出量といってもよい)は、軸部111の厚さの1/2よりも大きく、軸部111の厚さよりも小さい。
第二拘束材170bは、対向面176bを軸部111側に向けて、当接部171bと当接部173bとの間に軸部111の一部を収納した状態となっている。換言すれば、第二拘束材170bは、対向面176bを有する平板部175b以外の部分が、第一拘束材150b側、すなわち図5(A)における下側に向かって突出するような形状となっている。
図5(A)及び図5(B)に示したように、第一拘束材150bの断面形状と第二拘束材170bの断面形状とは、軸部111の軸心CAXを中心として互いに点対称となっている。
図5(B)に示したように、第一拘束材150bと第二拘束材170bとは、ブレース心材110の軸部111を間に挟み込んだ状態で、複数のボルトBTFにより接合されている。具体的には、当接部151bの先端面を、当接部171bの先端面に当接させた状態で、当該当接面を貫くように挿入されたボルトBTFを締結することにより接合されている。同様に、当接部153aの先端面を、当接部173bの先端面に当接させた状態で、当該当接面を貫くように挿入されたボルトBTFを締結することにより接合されている。
図5(B)の状態において、当接部151b及び当接部171bの右側端部から、当接部153b及び当接部173bの左側端部までの距離は、x方向における軸部111の寸法(幅)よりも僅かに大きくなっている。
このように、座屈拘束ブレース100bにおいては、第一拘束材150b等の全体を平板形状とするのではなく、平板のうちx方向に沿った両端部にそれぞれ棒状部材を溶接接合して当接部151b等を形成することにより、第一拘束材150b等の断面二次モーメントを大きくしている。このため、第一拘束材150b等の曲げに対する剛性が大きくなっており、変形が抑制されている。
ブレース心材110が圧縮力によって変形し、軸部111の一部が第一拘束材150b又は第二拘束材170bに当たった場合であっても、第一拘束材150b等の剛性が大きいため、ブレース心材110には比較的強い座屈拘束力が加えられることとなる。その結果、圧縮力が加わった場合における軸部111の座屈が抑制され、柱200と梁300との接続部が強固に補強される。
本実施形態においては、第一拘束材150bと第二拘束材170bとは、(これらのうち一方のみではなく)いずれもが平板部(155b、175b)と当接部(151b、153b、171b、173b)とを有している。また、第一拘束材150bから第二拘束材170bに向かって突出する当接部(151b、153b)の先端面と、第二拘束材170bから第一拘束材150bに向かって突出する当接部(171b、173b)の先端面とを当接させた状態で、それぞれの当接部(突出部)同士がボルト接合されている。
このような構成により、第一拘束材150bと第二拘束材170bとが当接している位置が、座屈拘束材のうち比較的深い位置(y方向において、座屈拘束ブレース100bの略中央となる位置)となっている。このため、第一拘束材150bのうち図5(B)における下側、第二拘束材170bのうち図5(B)における上側の表面において、ボルトBTFの頭部又はナットを収納するための座繰り部を深く形成するようなことが可能となる。その結果、第一拘束材150bの表面におけるボルトBTFの頭部又はナットの突出量を小さくすることができ、座屈拘束ブレース100b全体の形状を薄型化すること(y方向に沿った寸法を小さくすること)が可能となる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。