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JP6391404B2 - 定着装置 - Google Patents

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Description

本発明は、シート(記録材)上のトナー像を定着する定着装置に関する。この定着装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの機能を複数備えた複合機等の画像形成装置に搭載され得る。
従来、電子写真式の画像形成装置においては、離型剤(ワックス)が含有されたトナーを用いてシートにトナー像を形成し、これを定着装置において加熱加圧することにより定着処理を行っている。
その定着処理の際に、トナーに含有されていたワックスが気化し、その直後、凝縮することが知られている。本発明者等の知見によれば、定着装置の定着部材付近に、凝縮後のワックス(数nm〜数百nm程度の微粒子、以下、ダストとも呼ぶ)の多くが存在、浮遊していることが分かっている。このような凝縮直後のワックスに対し何ら対処を行わないと、定着装置外にその多くが拡散し、画像に良くない影響を与えてしまう恐れがある。そこで、凝縮直後のワックスを大粒径化させて、定着装置外に拡散しないようにすることが求められている。
また、装置に使用可能な最大幅サイズのシートよりも幅の小さい小サイズシートを装置に連続導入した場合に、定着部材のシート非通過領域の表面が過度に昇温する。これは、小サイズシートが定着部材を連続的に通過すると、定着部材のシート非通過領域ではシートによる奪熱がない分だけ部分的に蓄熱されるためである。この現象は定着装置の端部昇温あるいは非通紙部昇温と称され、定着部材の端部が高温になると、定着部材が破損する恐れがある。
その対策として、特許文献1に記載の定着装置では、定着部材の回転方向左右両側に対向して、定着ケースに通気開口を設けている。通気開口を通して通気を行って定着回転体の回転方向左右両側を冷却する。
特開2008−298831号公報
しかしながら、特許文献1に記載の定着装置では、定着部材にエアを吹き込むために、定着部材付近に多く存在するダストを積極的に定着装置外へ排出してしまう。
本発明の目的は、離型剤に起因する所定の粒径の粒子がそのまま定着装置外に拡散してしまうのを抑制することができる定着装置を提供することである。
本発明の他の目的は、離型剤に起因する所定の粒径の粒子の大粒径化を促進することができる定着装置を提供することである。
本発明の他の目的は、添付図面を参照しつつ以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。
上記の目的を達成するための本発明に係る定着装置の代表的な構成は、離型剤を含有するトナーを用いてシートに形成された未定着トナー像をその間のニップ部にて定着する第1及び第2の回転体と、シート導入口とシート排出口を有し前記第1及び第2の回転体を収容する筐体と、ファンと、前記筐体の外側から前記筐体の内側に及んでおり、前記ファンによるエアーを前記第1回転体の長手方向一端部に向けて導くダクトと、前記筐体の内側に配設されており前記第1の回転体の外周面を覆うカバー部材と、を有し、前記第1の回転体の回転方向において、前記カバー部材の一端は前記シート導入口に対向しており、他端は前記ダクトに接していることを特徴とする。
本発明によれば、離型剤に起因する所定の粒径の粒子がそのまま定着装置外に拡散してしまうのを抑制することができる。離型剤に起因する所定の粒径の粒子の大粒径化を促進することができる。
(a)は実施例における定着装置の外観斜視図、(b)は(a)における(b)−(b)線の位置における概略断面図である。 定着装置の分解斜視図である。 加熱ユニットの分解斜視図である。 実施例における画像形成装置の概略断面図である。 (a)は定着ニップ部分の拡大図、(b)は定着ベルトの層構成を示す図、(c)は加圧ローラの層構成を示す図である。 (a)はダストの合体現象を説明する図、(b)はダストの付着現象を説明する図である。 ダストの発生箇所を説明するための定着装置の概略断面図である。 定着装置の概略断面図である。 定着装置の筐体内の気流を示す図である。 隙間と周速との関係を示すグラフである。 トナー像の通過領域と拡散抑制部材の位置関係を示す図である。 定着ベルトの高温領域を示す図である。 定着ベルト上のワックス付着領域と、ダスト発生領域を示す図である。
以下、本発明に係る定着装置の例について詳細に説明する。なお、特段の断りがない限り、本発明の思想の範囲内において、各種機器の構成を他の公知の構成に置き換えることは可能である。
<実施例>
(1)画像形成装置例の概略構成
図3は本実施例における画像形成装置1の概略構成を示す断面模式図である。この画像形成装置1は4色フルカラーの電子写真レーザービームプリンタであり、パーソナルコンピュータやイメージリーダ等の外部ホスト装置Bから制御回路部Aに入力される電気的画像信号に基づいてシートPにトナー画像形成を行う。シートPはトナー像を形成することができるシート状の記録媒体(記録材)であり、普通紙、OHPシート・コート紙、ラベル紙等である。以下、用紙と記す。
制御回路部Aは外部ホスト装置Bや操作部Cとの間で各種の電気的情報の授受を行うと共に、画像形成装置1の画像形成動作を所定の制御プログラムや参照テーブルに従って統括的に制御する。
この画像形成装置1は装置本体1A内のほぼ中央部に図3において左側から右側にかけてほぼ水平方向に順次に平行に配列されている第1から第4の4つの画像形成部5(Y、M、C、K)を備えている。各画像形成部5は互いに同様の電子写真プロセス機構であり、矢印の時計方向に所定の周速度で回転されるドラム型の電子写真感光体(以下、ドラムと記す)6を有する。また、このドラム6に作用する電子写真プロセス手段としての帯電ローラ7、現像ユニット9、クリーニング部材41を有する。
各画像形成部5の下側には、ドラム6に対する画像情報露光手段としてのレーザースキャナユニット8が配置されている。各画像形成部5の上側には、駆動ローラ10aと、テンションローラ10bと、この両ローラ間に懸回張設された中間転写ベルト(以下、ベルトと記す)10cと、を有する中間転写ベルトユニット10が配置されている。ベルト10cは矢印Rの反時計方向に所定の周速度で回転移動される。
ベルト10cの内側には各画像形成部5のドラム6に対向する一次転写ローラ11が配設されている。各画像形成部5のドラム6は上面部分が各一次転写ローラ11の位置においてベルト10cの下面に接している。その接触部が一次転写部である。駆動ローラ10aのベルト屈曲部の外側には二次転写ローラ12が配設されている。ベルト10cと二次転写ローラ12との接触部が二次転写部である。テンションローラ10bのベルト屈曲部の外側にはベルトクリーニング装置10dが配設されている。
第1の画像形成部5Yのドラム6には電子写真プロセスによりフルカラー画像のY(イエロー)色成分に対応するY色トナー像が形成される。そのトナー像がこの画像形成部5Yの一次転写部においてベルト10c上に一次転写される。第2の画像形成部5Mのドラム6には同じくフルカラー画像のM(マゼンタ)色成分に対応するM色トナー像が形成される。そのトナー像がこの画像形成部5Mの一次転写部において、ベルト10c上にすでに転写されているY色のトナー像に重畳されて一次転写される。
第3の画像形成部5Cのドラム6には同じくフルカラー画像のC(シアン)色成分に対応するC色トナー像が形成される。そのトナー像がこの画像形成部5Cの一次転写部において、ベルト10c上にすでに転写されているY色+M色のトナー像に重畳されて一次転写される。第4の画像形成部5Kのドラム6には同じくフルカラー画像のK(ブラック)色成分に対応するK色トナー像が形成される。そのトナー像がこの画像形成部5Kの一次転写部において、ベルト10c上にすでに転写されているY色+M色+C色のトナー像に重畳されて一次転写される。
一方、カセット2内の用紙Pが所定の制御タイミングで給送ローラ2aとリタードローラ2bによって1枚分給送され、用紙搬送路(縦パス)Dにあるレジストローラ対4へ搬送される。手差し給送モードである場合は、手差しトレイ3上の用紙Pが給送ローラ3aで繰り出され、搬送ローラ対3bで搬送路Dに入りレジストローラ対4へ搬送される。手差しトレイ3は不使用時には装置本体1Aに対して2点鎖線示のように縦起こして畳み込んだ閉状態(格納状態)にしておくことが出来る。使用時は実線示のように倒し開き状態にする。
本例の画像形成装置1において用紙Pの装置内搬送は中央基準搬送でなされる。この用紙搬送は、装置に使用可能(通紙可能)な大小どのような幅の用紙であっても、用紙の幅方向の中心線を用紙搬送路の幅方向中央に合わせて通紙する形態のことである。
用紙Pは、レジストローラ対4によって所定の制御タイミングで二次転写部へ搬送され、二次転写部で挟持搬送される過程において、ベルト10c上の4色重畳のトナー像が用紙Pの面に一括して二次転写される。二次転写部を出た用紙Pはベルト10cから分離され、定着装置103へ搬送されてトナー像が用紙P上に熱定着される。片面印字モードの場合は、定着装置103を出た用紙Pは実線示の第1の姿勢aに保持されている両面フラッパ15aの下側を通り、排出ローラ14によって排出トレイ16に排出される。
両面印字モードの場合は、定着装置103を出た片面側画像形成済みの用紙Pが破線示の第2の姿勢bに切り換えられた両面フラッパ15aの上面側を通り、スイッチバックローラ15により排紙トレイ16の側に搬送される。そして、用紙Pの搬送方向下流側の端部が両面フラッパ15aの上に到達すると、両面フラッパ15aが第1の姿勢aに戻されると共に、スイッチバックローラ15が逆転駆動される。
これにより、用紙Pは再循環搬送経路15b内を下向きに反転搬送され、搬送ローラ対15c、3bを経由して再びレジストローラ対4へ搬送される。以後は、片面側画像形成モードの場合と同様に、二次転写部、定着装置103、排出ローラ対14の経路を搬送されて、両面印字済みの用紙Pが排紙トレイ16に排出される。
(2)定着装置の構成
次に定着装置103について説明する。図1Aの(a)は本実施例における定着装置103の外観斜視図、(b)は(a)における(b)−(b)線の位置における概略断面図である。図1Bは定着装置103の分解斜視図である。
本実施例における定着装置103は、定着処理時に、用紙Pを挟持搬送しながら加熱・加圧するためのニップ部101bをその間で形成する一対の回転体(第1回転体及び第2回転体)105・102を有する構成となっている。例えば、加熱源としてセラミックヒータ等の面状(細板状)ヒータ101aを用いたベルト(フィルム)加熱方式の定着装置である。このタイプの定着装置は、例えば特開平4−44075号公報等で知られている。
また、図7は別例の定着装置103の概略断面図である。図7に示すように、ハロゲンヒータ101a−2と反射板104−2を内部に配置したベルト(フィルム)加熱方式の定着装置である。このタイプの加熱装置は例えば特開2013−195683号公報等で知られている。
定着装置103はニップ部101bにおける用紙搬送路面内において用紙Pの搬送方向Xに直交する方向に平行な方向を長手方向(幅方向)とする装置である。定着装置103は、大別して、定着ベルト105を備えた加熱ユニット101と加圧ローラ(加圧部材)102とを備えた定着ユニットと、それらを収容した筐体100と、を有する。定着ベルト105が用紙Pの未定着トナー像Sが形成される面と接触し得る第1回転体である。加圧ローラ102が用紙Pの未定着トナー像Sが形成される面とは反対側の面と接触し得る第2回転体である。
(2−1)筐体の構成
この筐体100には、図1Aの(b)に示すように、用紙Pが導入される部位に導入口(シート導入口)400が形成されており、用紙Pが排出される部位に排出口(シート排出口)500が形成されている。
また、筺体100には開口部124があり、定着装置103の外に設置されるファン127L・127Rからダクト(非通過部昇温対策ダクト:エアーフロー手段)128L・128Rを通してエアーFが開口部124を通過する。これにより、エアーFが定着ベルト105の幅方向(長手方向)の一端側と他端側の両端部に向けて流れる。即ち、ダクト128L・128Rはファン127L・127Rによるエアーを定着ベルト105の端部に向けて導く。上記の送風(エアーフロー)による冷却構成により、端部昇温(非通過部昇温)を抑制している。
(2−2)加熱ユニットの構成
図2は加熱ユニット101の分解斜視図である。なお、加圧ローラ102も描かれている。加熱ユニット101は、ヒータホルダ104、面状のヒータ101a、加圧ステー104a、加熱回転体(エンドレスベルト)である定着ベルト105、このベルトの幅方向一端側と他端側に位置するフランジ106L・106Rなどによる組立体である。
ヒータホルダ104は横断面ほぼ半円弧状樋型の横長の部材であり、液晶ポリマー等の耐熱樹脂により形成されている。ヒータ101aは通電により急峻に昇温するセラミックヒータ等の低熱容量の横長(細長)の板状発熱体であり、ヒータホルダ104に沿って配設されて保持されている。加圧ステー104aは横断面U字型で横長の剛性部材であり、鉄等の金属で形成されており、ヒータホルダ104の内側に配設されている。定着ベルト105は、ヒータホルダ104、ヒータ101a、加圧ステー104aの組立体に対してルーズに外嵌されている。
フランジ106L・106Rはそれぞれ耐熱樹脂による対称形状の成形品であり、ヒータホルダ104の長手方向一端側と他端側とに対称形状に装着されている。フランジ106L・106Rは、図2に示すように、それぞれ、フランジ部106aと棚部106bと被押圧部106cとを有する。
フランジ部106aは定着ベルト105の端面を受け止めて定着ベルト105のスラスト方向への移動を規制する部材であり、定着ベルト105の外形形状より大きい外形形状をしている。棚部106bはフランジ部106aの内面側に円弧状に設けられており、定着ベルト端部内面を保持して定着ベルト105の円筒形状を保形する。被押圧部106cはフランジ部106aの外面側に設けられており、付勢手段(不図示)による押圧力T(図1B)を受ける。
(2−3)定着ベルトの構成
図4の(a)は図1Aの(b)におけるニップ部101b部分の拡大図である。図4の(b)は本実施例における定着ベルト105の層構成を示す図である。定着ベルト105は、内側から外側に順に、エンドレス(円筒状)の基層105aと、プライマ層105bと、弾性層105cと、離型層105dと、を積層した複合層部材である。定着ベルト105は、全体的に可撓性を有する薄肉の低熱容量の部材である。自由状態においては自身の弾発性によりほぼ円筒形状(図2)を呈する。
基層105aはSUS(ステンレス)等の金属製のベース層であり、熱ストレスと機械的ストレスに耐えるために、30μm程度の厚みを有している。プライマ層105bは、基層105aの上に、プライマを5μm程度の厚みで塗布することによって形成されている。
弾性層105cは、トナー画像を圧接する際に変形することによって、離型層105dをトナー画像に密着させる役目を果たす。離型層105dはトナーや紙粉の付着防止性能を確保するために、離型性と耐熱性に優れたPFA樹脂を用いている。厚さは伝熱性を確保する観点から20μm程度である。
(2−4)加圧ローラの構成
図4の(c)は加圧ローラ102の層構成を示す図である。加圧ローラ102は、金属(アルミや鉄)の芯金102aと、シリコンゴム等で形成された弾性層102b、弾性層102bを被覆する離型層102cを有する弾性ローラである。離型層102cはPFA等のフッ素系樹脂で、チューブを被覆させたものである。
筐体100は、図1A、図1Bのように、ベース板109、ステー108、一端側板107L、他端側板107R、とで構成された横長の板金製内枠体を有する。また筐体100は、その内枠体の外側に装着された、カバー110、第1上カバー111、前カバー112、第2上カバー113、一端側カバー117L、他端側カバー117R、とで構成された横長の耐熱樹脂製に外枠体を有する。なお、図1Bにおいては、図の煩雑を避けるため、第2上カバー113等の一部部品は省略されている。
加圧ローラ102は上記内枠体の一端側板107Lと他端側板107Rの間において、芯金102aの一端側と他端側がそれぞれ保持部材である軸受(不図示)を介して回転可能に支持されて配設されている。加熱ユニット101は上記内枠体の一端側板107Lと他端側板107Rとの間において加圧ローラ102に対してヒータ101aの側を対向させて加圧ローラ102に平行に配列されている。
ここで、加熱ユニット101の一端側と他端側のフランジ106Lと106Rはそれぞれ内枠体の一端側と他端側の側板107Lと107Rに形成された加圧ローラ102に向かう方向のガイド穴(不図示)に対してスライド移動可能に嵌着されている。そして、その一端側と他端側のフランジ106Lと106Rはそれぞれ付勢手段(不図示)により加圧ローラ102に向かう方向に所定の押圧力T(図1B)をもって押圧されている。
上記の押圧力Tにより、フランジ106L・106R、加圧ステー104a、ヒータホルダ104の全体が加圧ローラ102の方向に移動する。そのため、ヒータ101aが定着ベルト105を介して加圧ローラ102に対して所定の押圧力Tで押圧され、定着ベルト105と加圧ローラ102との間に用紙搬送方向Xに所定幅のニップ部101bが形成される。
(2−5)定着シーケンス
定着装置103の定着シーケンス(定着処理)の動作は次のとおりである。制御回路部A(図3)は、所定の制御タイミングで加圧ローラ102を図1Aの(b)において回転方向R102に所定の速度で回転駆動させる。加圧ローラ102の回転駆動は加圧ローラ102と一体の駆動ギアG(図2)に駆動源(不図示)の駆動力が伝達されることでなされる。
加圧ローラ102が回転駆動されることで、ニップ部102bにおいて定着ベルト105に加圧ローラ102との摩擦力で回転トルクが作用する。これにより、定着ベルト105が、その内面をヒータ101aに密着させて摺動しながら、ヒータホルダ104と加圧ステー104aの外回りを加圧ローラ102の速度とほぼ対応した速度で回転方向R105に従動回転する。つまり、本例では、加圧ローラ102は、定着ベルト105を回転駆動する駆動ローラ(駆動回転体)としての機能も担っている。
また、制御回路部Aは電源部(不図示)からヒータ101aに対する通電を開始する。ヒータ101aに対する通電はヒータ101aの一端側と他端側に装着した通電コネクタ101dL・101dR(図2)を介してなされる。この通電によりヒータ101aは有効全長域に渡って急速に昇温する。その昇温がヒータ101aの裏面側(ニップ部101bと反対側の面)に設けられた温度検知手段としてのサーミスタTHによって検知される。
制御回路部AはサーミスタTHで検知されるヒータ温度に基づいてヒータ温度が所定の目標設定温度に昇温して温調されるようにヒータ101aに対する供給電力を制御する。本実施例における目標設定温度は約170℃である。
上記の定着装置状態において、画像形成部の二次転写部側から未定着トナー画像Sを担持した用紙Pが定着装置103側に搬送される。そして、用紙Pは導入口400のガイド部材110aにガイドされてニップ入口(シート入口)101cに導入されニップ部101bで挟持搬送される。
用紙Pはニップ部101bを挟持搬送される過程でヒータ101aの熱が定着ベルト105を介して付与される。未定着トナー画像Sはヒータ101aの熱によって溶融され、ニップ部101bにかかっている圧力によって用紙Pに定着される。ニップ部101bを出た用紙Pは定着排紙ローラ対118に中継ぎされて排出口500から定着装置103の外へ送出される。
(3)トナーに内包される離型剤
次に、トナーSに内包(含有)される離型剤、本例ではワックスについて説明する。定着処理時にトナーSが定着ベルト105に転移してしまうオフセットと呼ばれる現象を生じる恐れがあり、このようなオフセット現象は画像不良など問題を引き起こす要因となってしまう。
そこで、本例では、ワックスをトナーSに内包させている。つまり、定着処理時にトナーSからワックスが染み出るようにしている。その結果、加熱により溶融したワックスが定着ベルト105と用紙P上のトナー像の界面に介在することになり、オフセット現象を防止する(離型作用)ことが可能となる。
なお、ワックスの分子構造を含んだ化合物も、ここではワックスと呼ぶことにする。例えば、トナーの樹脂分子に炭化水素鎖等のワックス分子構造を反応させたものである。また、離型剤として、ワックスの他に、シリコンオイル等の離型作用を有する他の物質を用いることも可能である。本例ではパラフィンワックスを用いており、ワックスの融点Tmは約75℃前後である。ニップ部101bを目標設定温度170℃に保った場合、トナーS中のワックスが瞬時に溶融してトナー像と定着ベルト105の界面に染み出るように融点Tmは設定されている。
用紙P上のトナー像から染み出したワックスは定着ベルト105とトナー像の界面に介在するわけであるが、ワックスの一部は定着ベルト105に移行した後に定着ベルト105上で加熱される。これは、ニップ部101bにて用紙Pに熱を奪われて温度を低下させた定着ベルト105の表面が、ヒータ101aによって再び加熱される為である。
このとき、熱は定着ベルト105の内面がヒータ101aにより加熱された後、熱が定着ベルト105の表面まで移行するまで時間差が存在する。そのため、定着ニップ出口101d側より、ニップ入口101c側のほうが定着ベルト105表面温度は高くなる。定着ニップ出口101dより、ニップ入口101cのほうが定着ベルト105表面の温度が高くなる現象は、用紙Pを通紙するすべての定着装置103について同様のことが言える。
それは、定着ベルト105は回転しており、通紙された直後は必ず定着ベルト105表面の温度は低下するためである。さらに、定着装置103に搬送された用紙P上のトナー像を、シートPに定着するのに必要な温度以上に上昇させるため、ニップ入口101cの温度は高くなる。
ワックス中の低分子量成分等、ワックスの一部は図11に示す領域115、117で気化(揮発)する。領域115、117はニップ入口101cから定着ベルト回転方向上流側の定着ベルトほぼ半周面領域に対応する領域である。ワックスは長鎖分子成分から構成されているが、その長さは均一でなく一定の分布があり、鎖が短く沸点の低い低分子成分と、鎖が長く沸点の高い高分子成分を含んでいる。領域115、117でワックスが気化する際は、ワックスの一部である低分子成分が気化するものと考えられる。
気化したワックス成分は、空気中で冷やされて凝縮し、その直後では粒径が数nm〜数百nm程度の微粒子(ダスト)が存在し得る。但し、多くは、数nm〜数十nmの粒径の微粒子となっている。これは、ダストを測定することによって確認することができる。
なお、ダスト測定は米TSI社製の高速応答型パーティクルサイザー(FMPS)を用いて行った。このFMPSは、粒径分布と個数濃度(個/cm3)、重量濃度(μg/m3)を測定することができる。本発明では、FMPSで測定可能な粒径5.6nm以上560nm以下の微粒子をダストとしている。
(4)定着処理に伴う離型剤に起因する発生粒子(ダスト)について
(4−1)ダストの発生箇所
図12は定着ベルト105に付着したワックスが気化する過程を示す。図12はセラミックヒータ101aを用いた加熱方式を示しているが、例えばハロゲンヒータを用いた加熱方式のように定着ベルト105の内部に加熱源を持つ定着装置103(図7)であれば同様である。
図12の(a)の状態では、トナー像の先端部分だけがニップ部101bを通過しているため、定着ベルト105上のワックス付着領域は図中に示す領域135a(ニップ部出口から出た用紙部分のトナー像長さ領域に対応する定着ベルト周長領域)となる。この段階ではワックスは気化しない。
図12の(b)の状態では、用紙搬送の進行でワックス付着領域が図中に示す領域135bの範囲まで拡大している。定着ベルト105がワックスの気化温度に達した部分136ではワックスが気化し始めると同時にダストを生成する。
図12の(c)の状態では、用紙搬送の更なる進行でワックス付着領域が図中に示す領域135cの範囲まで拡大し、より広い範囲138でワックスが気化してダストを生成する。
このダストはワックス成分であるため粘着性を有しており、画像形成装置1の内部の各所に付着して問題を起こす恐れがある。例えば、ダストが定着排紙ローラ対118や排出ローラ対14(図3)に固着、堆積して汚れを生じさせると、その汚れが用紙Pに移行して画像に影響してしまう恐れがある。また、定着装置周辺の雰囲気を排気する排気(排熱)機構に設置されたフィルタ600(図3)に付着して目詰まりを起こす恐れがある。
(4−2)ダストの性質について
本発明者等の研究によれば、定着ベルト105から発生するダストの粒径は、定着ベルト105近辺の空間温度に依存することがわかっている。
図5の(a)に示すように、加熱源20aの上に沸点150〜200℃の高沸点物質20を置き、200℃前後に加熱すると、高沸点物質20の揮発物21aが発生する。揮発物21aは常温空気に触れると直ちに沸点温度以下になるので、空気中で凝集し、数nm〜数十nm程度の粒径の微粒子(ダスト)21bに変化する。この現象は、水蒸気が露点温度を下回ると、微小水滴になって霧を発生させる現象と同じものである。
この時、気中におけるガスの凝集/粒子化は、気中温度が高いほど阻害される。これは気中温度が高いほどガスの蒸気圧が上がり、ガス分子は気体状態を維持し易い為である。その結果、気中温度が高くなるにつれてダストの生成個数は少なくなっていく。さらに気中に存在する余剰ガスは生成したダストの周りに集まってダスト上に凝集する。これは、ガス分子が凝集して新たにダストを生成するのに必要なエネルギーに比べて、ガス分子がダストの周囲に凝集するのに必要なエネルギーの方が、より低いためである。
上記のような過程で生成したダスト21bは、ブラウン運動により空気中を移動しているので、互いに衝突して合体し、より大きな粒径のダスト21cに成長することが知られている。この成長は、ダストが活発に移動すればするほど、言い換えると気中温度が高温状態にあればあるほど、促進される。結果として、定着ベルト105から発生するダストの粒径と個数は、定着ベルト105近辺の空間温度が高い程、粒径が大きくなって個数は減少する。
また、粒径の成長は、ダストが一定サイズ以上になると次第に鈍化し、止まる。これは、合体によってダストが大型化するとブラウン運動による空気中の移動が不活発になるためと推定される。
さらに離型剤(ワックス)に起因するダストの性質として、周囲の固形物に付着する性質が知られている。図5の(b)において、微小ダスト21bとより大きなダスト21cを含んだ空気αが、気流22に沿って壁23に向かう場合を考える。この時、微小ダスト21bよりも大きなダスト21cの方が壁23に付着しやすく、拡散され難い。
これは、ダスト21cは慣性力が大きく、壁23に勢いよく衝突するためと推定される。この現象は、気流の速度が風速計の計測限界を下回る0.2m/s以下の場合、つまり気流が非常に遅い場合であっても同様である。従って、ダスト21cを大粒径化すればするほど、特に、数百nm程度の微粒子は定着装置内に留まり易く(多くは定着ベルトに付着)、定着装置外への拡散を抑制し得ることが分かる。
このように、ダストは気中温度の上昇とともに大型化(大粒径化)する性質と、大型化(大粒径化)につれて周辺の物体に付着し易くなるという二つの性質を持っている。従って、気中温度を上げてダストを大粒径化すれば、ダストが微粒子(凝縮直後の粒径)のまま定着装置外に拡散されてしまうのを抑制できることが分かる。なおダストの合体のし易さは、ダストの成分と温度、濃度に依存する。例えば、粘着しやすい成分が高温になって柔らかくなり、さらに高濃度下でダスト同士の衝突確率が上がると、合体し易くなる。
(5)ダストの拡散抑制機構
以上で述べたダストの性質に基づいて画像形成装置1の内部におけるダストの拡散抑制策を検討すると、図12の(c)に波線で示すダスト発生箇所138の近傍の気中温度を上げると良いことがわかる。
ダスト発生箇所を図11に基づいて説明すると、ダスト発生箇所は、定着ベルト105上の領域115に、領域115から定着ベルト105の回転方向R105方向に向かってニップ入口101cまでの領域を加えた領域になる。
拡散抑制機構は定着ベルト105の上記のダスト発生箇所138の近傍の気中温度を上げることでダストの拡散を抑制する機構である。図1Aの(b)に示すように、拡散抑制機構は、筐体100の導入口400の近傍に、抑制部として機能する拡散抑制部材120を備えている。拡散抑制部材120は定着ベルト105の外側表面(ダスト発生箇所138にほぼ対応する外側表面領域)を間隔を存して覆う部材(以下、カバー部材と称す)である。
カバー部材120は筐体100と定着ベルト105の間に位置する。また、カバー部材120のニップ入口101c側の端部(一端部)120aには、定着ベルト105に向って延在し、カバー部材120の幅方向に延在している突出部(リブ)122が設置されている。そして、突出部122とフランジ部106a(図2)が当接することで、突出部122と定着ベルト105との間に所定の間隔Tを確保することできる。
また、カバー部材120の端部120aは、図11のように、用紙Pの先端が定着ベルト105表面に接触し得る領域117の末端の箇所116の近傍まで延在している。領域117とは、用紙Pの先端がカールしている時、若しくは折れている時に、ニップ入口101cに導入された用紙Pの先端が定着ベルト105に接触し得る領域を意味する。
また、カバー部材120のニップ入口101c側の端部120aとは反対側の端部(他端部)120b側は、後述するように、ダクト128L・128Rに至るまで、または遮蔽部材125と接触する位置まで延在している。
カバー部材120の長手方向(幅方向)の幅W1は、図10の定着装置103の要部斜視図に示すように、用紙P上のトナー像121の通過領域の幅W2よりも幅が広くなるように設定されている。なお、幅W2は、画像形成装置で使用可能な最大幅の用紙Pを使用したとき、その最大幅の用紙に対して画像形成可能な領域の幅(最大画像幅)に相当する。その結果、カバー部材120と突出部122は、定着ベルト105がトナー像121と接触し得る領域よりも幅方向両外側に延在する位置関係となる。ダストは定着ベルト105のトナー像通過領域で発生するためである。
このように、カバー部材120は、定着ベルト105の表面近傍であって、ニップ部Nのシート入口近傍からダクト128L・128Rに至るまで、またはニップ部Nのシート入口近傍から遮蔽部材125に至るまで延在している。より具体的には、カバー部材120は、定着ベルト105の表面近傍であって、ニップ部101bに導入される用紙Pの先端と定着ベルト105が接触し得る箇所116からワックスが気化する領域115に配置される。そして、カバー部材120と突出部122の幅は、装置に使用可能な最大幅のシートの画像形成可能領域の幅よりも大きい。
係る構成において、カバー部材120は図12の(c)のダスト発生箇所118の大部分(図11に示す領域115)をカバーして、定着ベルト105近傍の気温を上げる役目を果たす。
カバー部材120は気温上昇によってダストの粒径を大径化させ、画像形成装置1の内部へのダスト拡散を抑制する。大径化したダストは、定着ベルト105の周辺に発生する上昇気流(熱対流)によって上昇し、定着ベルト105と筐体100内側に付着する。定着ベルト105に付着したダストは用紙Pに転写するが、ダストサイズが小さいので画像に影響を与えることはない。
(5−1)カバー部材120の配置(定着ベルト105との間隔T)について
(5−1−1)定着ベルト105の周辺気流
配置について述べる前に、導入口400(ニップ入口101c)の近傍で発生したダストが、機内に拡散してゆく経路を、図8に示す熱気流シミュレーションによる検証結果に基づいて説明する。この熱と気流についての検証は、表面温度170℃の定着ベルト105が速度Vで反時計回りR105に回転し、加圧ローラ102が同じく速度Vで時計回りR102に回転し、用紙Pが速度Vで図中の上方に移動すると仮定している。
そのため、この検証においては、
・定着ベルト105の周辺に発生する自然対流による上昇気流(CD1)
・定着ベルト105の表面移動に伴い発生するベルト表面の気流(RD1)
・用紙Pの移動に伴って用紙Pに沿って発生する気流26a
が考慮されている。
図8に示すように、ニップ入口101cにおいて行き場を失いニップ入口101cから噴き出してくるように見える気流26cの存在が確認された。この気流26cは、用紙表面の移動に伴ってその表面に発生する気流26aと気流RD1がニップ入口101cで衝突した結果、行き場を失ったエアーが噴き出したものと考えられる。
そして、気流26cは、気流RD1に合流して、気流RD1に隣接してそれとは逆方向に流れる気流CD1、つまり、定着ベルト105表面に沿って上昇する気流となる。なお、気流26cは、図8に示すように、定着ベルト105表面に沿うように発生していたが、これは定着ベルト105表面付近を上昇する自然対流に引き込まれた結果と推定される。
(5−1−2)カバー部材120の作用と間隔T
前述したように、カバー部材120はダスト発生箇所138(図12の(c))の周辺の気中温度を上昇させる作用を有する。この温度上昇作用を確保するには、温度の低い用紙表面の気流26aに起因する気流26cと気流CD1が、カバー部材120と定着ベルト105の間に侵入することを防がなければならない。そのため、カバー部材120と定着ベルト105の間に所定の間隔Tが設けられる。この間隔T(mm)は、0.5mm以上3.5mm以内(0.5≦T≦3.5)にすることで、気流26cと気流CD1を定着ベルト105から離間させる作用を確保することができる。
間隔Tを3.5mm以下とすることで、後述するように定着装置近傍のポイントB(図6)でのダスト濃度を70%未満に下げることができる。なお、下限値を0.5mmとした理由は、これ以上、定着ベルト105の表面にカバー部材120を接近させると、定着ベルト105に接触してしまう恐れがあるためである。
本例ではカバー部材120に突出部122を設けているが、間隔Tを定着ベルト105と突出部122との間で管理することでも同様の効果を得ることができる。突出部122があることによる利点は、カバー部材120全体を定着ベルト105に近づける必要がないことで、間隔Tを管理しやすいことがあげられる。
カバー部材120が配置される箇所、特に定着ベルト105表面に近づくにつれ、温度が高くなる。そのため、熱膨張によりカバー部材120が変形し、カバー部材120のすべての領域で間隔Tを管理することが困難となる。カバー部材120の一部である突出部122のみを近づける構成であれば、突出部122がない場合に比べ熱膨張による変形を抑えることができる。また、本実施例では、間隔Tを1mmとしている。定着ベルト105により近接する突出部105の存在により、気流(CF)と上昇気流(CD)を定着ローラ1から離間させる作用を高めている。
(5−1−3)カバー部材120の効果
カバー部材120を上記のように配置することにより、図6に示すポイントBで測定されるダスト濃度は、カバー部材120がない場合に比べて70%未満のダスト濃度に抑えることができる。測定誤差が30%あるため、効果有と判定できる目安を70%未満にした。ポイントBは定着ベルト105から発生するダストが熱対流による上昇気流によって排出される経路上に、定着ベルト105から20mm程度離間した位置に設定されている。ポイントBでのダスト濃度が70%未満になれば、定着装置103の外側の機内ワックス汚れを低減することができる。
このダスト濃度は上述した高速応答型パーティクルサイザー(FMPS)で測定することができる。測定は、以下の条件下で行っている。具体的には、印字率が5%の標準原稿を基に、A4サイズの普通紙を横送りする条件で、定着処理を11分間に亘り連続して行う。そして、その定着処理の終了前1分間に亘り(10分〜11分の間の1分間)、ダスト濃度の測定を行う。測定値は、1分間のダスト濃度を平均処理することにより求めた。
なお、測定位置は、図3に示す排紙ローラ対118、又はフィルタ600等のワックス汚れが発生する箇所としても良い。測定箇所によってダスト濃度は異なるが、ダスト濃度の低減率によって、ワックス汚れの防止効果を見積もることができるためである。
また、本例では、ダスト濃度とは、粒径が所定範囲の微粒子、つまり、粒径が5.6nm以上560nm以下の微粒子(所定の粒径の粒子)の個数濃度(個/cm3)のことを指す。つまり、ポイントBにおいて測定された個数濃度(個/cm3)が、本例のような抑制部である拡散抑制部材120を設けていない構成の場合に比べて70%未満となるようにするのが好ましい。なお、ダスト濃度として、個数濃度(個/cm3)の代わりに、重量濃度(μg/m3)としても構わない。
なお、本例では、カバー部材120と定着ベルト105表面との間隔T(図1Aの(b))について、4.0mm、3.5mm、2.5mm、2.0mm、1.5mmと段階的に狭くしていった。この時、狭くなるにつれてポイントBでのダスト濃度が低下することを検証した。その結果、間隔Tが3.5mm以下のとき、上記の条件(ポイントBのダスト濃度70%以下)を満足することを確認している。
(5−1−4)間隔Tを決定する他の方法
間隔Tは、定着ベルト105の周速V(mm/s)によって決定されても良い。図8示すtは、気流RD1の幅である。すなわちtは、気流RD1とCD1の境界から定着ベルト105までの距離を示している。このtについて検証(シミュレーション)を行った。図9はその検証結果を示すものである。
図9に示すように、定着ベルト105の表面周速Vが115mm/sである時はt=1.4mm、Vが200mm/sである時はt=1.9mmとなる。定着ベルト105に沿う気流RD1の流量は、定着ベルト105の表面速度(すなわち周速V)が大きくなるほど増える。周速Vが上がって気流RD1の流量が増えた結果、tの値も大きくなったと指定される。図9に示す二点を線形補完すると、以下のようになる。
t=0.0059×V+0.72
間隔Tが上記tを下回るように設定すると、拡散抑制部材120は、気流CD1を確実に止めることができる。その結果、定着ベルト105の周辺の気温の低下を防ぎ、ダストを低下させることができる。なお、tの下限値は、前述したように0.5mmである。上記式とこの下限値を組み合わせると、Tの範囲は以下式で表現されることができる。
0.5≦T≦0.0059×V+0.72
以上式は、定着ベルト105の周速Vが、115mm/s≦V≦200mm/s、の範囲にあるとき特に有効である。しかし、周速Vとtの関係は線形に近いと推定されるので、速度Vが上記範囲にない場合でも有効である。
(5−2)冷却機構
ファン127L・127Rは、小サイズ用紙を用いた連続プリントモードの実行時、あるいは定着ベルト105の端部昇温を検知する温度センサ(不図示)が所定温度以上の温度を検知した時に駆動される。このファン駆動によりダクト128L・128Rを通してエアーFが開口部124を通過する。これにより、エアーFが定着ベルト105の幅方向(長手方向)の一端側と他端側の両端部に向けて流れる。この送風冷却構成により、端部昇温(非通過部昇温)を抑制している。
ここで、ファン127L・127Rの駆動制御については次のようにすることもできる。たとえば、プリント開始から一定枚数プリントしたときにファン127L・127Rを駆動する制御としても良い。また、プリント開始から一定時間経過後にファン127L・127Rを駆動するする制御としても良い。その際、画像形成装置1の設置環境温度、用紙Pのサイズ、プリント時間に応じてファン127L・127Rの駆動量をあらかじめ決めておく。
上記のようにファ127L・127Rの駆動によるエアーFが定着ベルト105の幅方向両端部を冷却する際、エアーFの一部がカバー部材120外側と筐体100の内側の空間部に回り込んでニップ入口101c側に流入するおそれがある。そして、そのエアー流入が、ニップ入口101cに滞留しているダストを拡散させ、さらに、ニップ入口101c近傍が冷却されることで、ダスト化しなかったガス分子が、凝集し多くのダストが発生してしまうおそれがある。
そこで、本実施例においては、図1Aの(b)のように、カバー部材120をダクト128L・128Rに至るまで延在させている。これにより、ダクト128L・128R側においてカバー部材120の外側と筐体100の内側の空間部が閉鎖されることでその空間部へのエアーFの回り込みが抑制され、上記のダストの放散・発生を抑えることができる。
また、次のような装置構成にすることもできる。筺体100の開口部124のニップ入口101c側に設置され、定着ベルト105と筺体100の間を塞ぐことでニップ入口101c側(ニップ部のシート導入側)にエアーFが流れることを防ぐように遮蔽部材125が配設される。さらに、遮蔽部材125は屈曲部125bを持ち、この屈曲部125bから定着ベルト105に沿ってニップ出口101d方向(ニップ部102bのシート出口方向)に延在する延伸部125aが設けられている。
上記の遮蔽部材125の構成により、ニップ入口101c付近にエアーFが流入することを防ぎ、ダストの放散・発生を抑えることができる。
遮蔽部材125と定着ベルト105の間には所定の間隔L(mm)が設けられており、間隔Lは前述の間隔Tの範囲と同様であり、以下で表現することができる。
5≦L≦0.0059×V+0.72
間隔Lが設けられている理由は、定着ベルト105の表面に遮蔽部材125を接近させると、定着ベルト105に接触してしまう恐れがある。そのため、下限値を0.5mmとしている。さらに、ニップ入口101c付近(ニップ部Nのシート入口近傍)で発生したダストが、図8で示す上昇気流CD1により上昇し、ファン127によって拡散することを防ぐためである。
なお、間隔Lを上記範囲に限定しなくても本発明の効果を損することはない。その際、遮蔽部材125を設置前後のニップ入口101c側の風速を測定し、風速が20%以上減少していれば本発明の効果を確認することができる。
<その他の事項>
1)定着装置における第1回転体は実施例のベルト体に限られない。何らかかの加熱手段で加熱されるローラ体であってもよい。第2回転体は実施例のローラ体に限られない。ベルト体であってもよい。
2)定着装置には、未定着トナー画像を固着像として定着する装置以外にも、用紙に仮定着されたトナー画像あるいは一度加熱定着されたトナー像を再度加熱加圧して光沢度を向上させる画質改質装置(この定着装置と呼ぶ)場合なども包含される。
3)本発明に係る定着装置は、画像形成装置の内部に固設されている作り付けものに限られず、ユニット化されて画像形成装置の装置本体に着脱交換可能あるいは連結可能とされた装置形態ものであってもよい。また、画像形成装置とは独立して、定着装置単独で用いられる装置形態のものであってもよい。
4)画像形成装置において、用紙Pにトナー像を形成する画像形成部(作像機構部)は実施例の転写方式の電子写真画像形成部に限られない。例えば、用紙として感光紙を用いてこれにトナー像を直接方式で形成する電子写真画像形成部であってもよい。また、像担持体として静電記録誘電体や磁気記録磁性体を用いる転写方式の静電記録画像形成部や磁気記録画像形成部であってもよい。また、用紙として静電記録紙や磁気記録紙を用いてこれにトナー像を直接方式で形成する静電記録画像形成部や磁気記録画像形成部であってもよい。カラー画像形成部であってもよい。
103・・定着装置、105・・第1回転体(定着ベルト)、102・・第2回転体(加圧ローラ)、101b・・ニップ部、P・・シート(記録材、用紙)、S・・トナー像、120・・カバー部材、128L、128R・・ダクト

Claims (6)

  1. 離型剤を含有するトナーを用いてシートに形成された未定着トナー像をその間のニップ部にて定着する第1及び第2の回転体と、
    シート導入口とシート排出口を有し前記第1及び第2の回転体を収容する筐体と、
    ファンと、
    前記筐体の外側から前記筐体の内側に及んでおり、前記ファンによるエアーを前記第1の回転体の長手方向一端部に向けて導くダクトと、
    前記筐体の内側に配設されており前記第1の回転体の外周面を覆うカバー部材と、を有し、
    前記第1の回転体の回転方向において、前記カバー部材の一端は前記シート導入口に対向しており、他端は前記ダクトに接していることを特徴とする定着装置。
  2. 前記カバー部材と前記第1の回転体との間隔をT(mm)としたとき、次の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
    0.5≦T≦3.5
  3. 前記カバー部材と前記第1の回転体との間隔をT(mm)とし、前記第1の回転体の周速をV(mm/s)としたとき、次の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
    0.5≦≦0.0059×V+0.72
    115≦V≦200
  4. 前記カバー部材は一端において前記第1の回転体に向って突出する突出部を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の定着装置。
  5. 前記突出部の幅は装置に使用可能な最大幅のシートの画像形成可能領域の幅よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
  6. 前記第1の回転体はエンドレスベルトであり、前記第2の回転体は前記エンドレスベルトを回転駆動するローラであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の定着装置。
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