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JP6390534B2 - 静電潜像現像用トナー - Google Patents

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Description

本発明は、静電潜像現像用トナーに関する。
省エネルギー化、および画像形成装置の小型化の観点から、定着ローラーを極力加熱することなく良好に定着可能なトナーが望まれている。一般に、低温定着性に優れるトナーの調製には、融点もしくはガラス転移温度の低い結着樹脂又は低融点の離型剤が使用されることが多い。しかしながら、このようなトナーを高温で保存する場合には、トナーに含まれるトナー粒子が凝集しやすいという問題がある。トナー粒子が凝集した場合、凝集しているトナー粒子の帯電量が、他の凝集していないトナー粒子の帯電量と比較して低下しやすい。
また、トナーの低温定着性、および耐熱保存性を向上させることを目的として、コア−シェル構造のトナー粒子を含むトナーが使用されることがある。例えば、特許文献1には、親水性熱硬化性樹脂を含む薄膜でトナーコアの表面が被覆されており、トナーコアの軟化温度が40℃以上150℃以下であるトナー粒子を含むトナーが記載されている。
特開2004−138985号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術だけでは、静電潜像現像用トナーの耐熱保存性、低温定着性、および転写効率を向上させ、静電潜像現像用トナーの電荷減衰およびドラム付着を抑制することは困難である。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、耐熱保存性、低温定着性、および転写効率を向上させ、電荷減衰およびドラム付着を抑制することができる静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。
本発明の静電潜像現像用トナーは、トナーコアと、前記トナーコアの表面を被覆するシェル層とを含むトナー粒子を含有する。前記シェル層は、第1シェル樹脂と第2シェル樹脂とを含む。前記第1シェル樹脂は、疎水性熱可塑性樹脂である。前記第2シェル樹脂は、親水性熱硬化性樹脂である。前記トナーコアと前記シェル層との界面発生率は3.78×106-1以上7.02×106-1以下である。前記トナーコアに対する前記第1シェル樹脂の比率は0.40質量%以上1.55質量%以下である。
本発明によれば、静電潜像現像用トナーの耐熱保存性、低温定着性、および転写効率を向上させ、静電潜像現像用トナーの電荷減衰およびドラム付着を抑制することができる。
本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーに含まれるトナー粒子の一例を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーについて、シェル層の構造の一例を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーのシェル層形成過程を示す模式図である。 電界放出形走査型電子顕微鏡を用いて、静電潜像現像用トナーを撮影したSEM写真を示す図である。 本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーのトナー粒子表面の輝度値を示すグラフである。 サンプルトナーA〜Dの透過スペクトルの測定結果を示すグラフである。 サンプルトナーA〜Dの透過スペクトルを規格化したグラフである。 本発明の実施形態に係るトナーに用いる熱可塑性樹脂の重量比率の検量線を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定しない。
本実施形態に係るトナーは、静電潜像現像用トナー(以下、単に「トナー」と記載することがある)である。本実施形態のトナーは、多数のトナー粒子から構成される粉体である。本実施形態に係るトナーは、例えば電子写真装置(画像形成装置)で用いることができる。
以下、電子写真装置による画像形成方法の一例について説明する。まず、画像データに基づいて感光体に静電潜像を形成する。次に、形成された静電潜像を、キャリアとトナーとを含む2成分現像剤を用いて現像する。現像工程では、帯電したトナーを静電潜像に付着させる。そして、付着したトナーを転写ベルトに転写した後、さらに転写ベルト上のトナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、トナーを加熱して、記録媒体にトナーを定着させる。これにより、記録媒体に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、およびシアンの4色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。
本実施形態に係る静電潜像現像用トナーはトナー粒子を含有する。本実施形態に係る静電潜像現像用トナーは、次に示す構成(1)〜(3)を有する。
(1)トナー粒子は、トナーコアと、トナーコアの表面を被覆するシェル層とを含み、シェル層は、第1シェル樹脂と、第2シェル樹脂とを含む。第1シェル樹脂は疎水性熱可塑性樹脂である。第2シェル樹脂は親水性熱硬化性樹脂である。
(2)トナーコアとシェル層との界面発生率は3.78×106-1以上7.02×106-1以下である。
(3)トナーコアに対する第1シェル樹脂の比率は0.40質量%以上1.55質量%以下である。
構成(1)は、静電潜像現像用トナーの耐熱保存性および低温定着性の両立を図るために有益である。トナーコアがシェル層で覆われることで、静電潜像現像用トナーの耐熱保存性を向上できる。また、トナーコアがシェル層で覆われるため、トナーコアの融点またはガラス転移温度を低くでき、低温定着性を向上させることができる。なお、詳細は後述するが、本実施形態に係る静電潜像現像用トナーにおいて、トナーコアの表面の一部の領域はシェル層に覆われている一方、トナーコアの表面の別の領域はシェル層に覆われていない。
シェル層内の親水性熱硬化性樹脂により、静電潜像現像用トナーの耐熱保存性を向上させるとともに静電潜像現像用トナーのドラム付着が抑制される。また、シェル層内の疎水性熱可塑性樹脂により、静電潜像現像用トナーの低温定着性を向上できる。さらに、シェル層内の疎水性熱可塑性樹脂により、シェル層が水分を吸着しにくくなり、静電潜像現像用トナーの電荷減衰を抑制でき、静電潜像現像用トナーの転写効率を向上できる。
構成(2)は、静電潜像現像用トナーの耐熱保存性および低温定着性の両立を図るために有益である。トナーコアとシェル層との界面発生率が3.78×106-1以上であることにより、トナーコアの表面上のシェル層の数が少なすぎないため、トナーコアの露出面と他のトナーコアの露出面とは直接接触しにくい。したがって、比較的高い温度においてもトナー粒子同士の凝集を抑制でき、耐熱保存性を向上できる。また、トナーコアの表面上のシェル層の数が少なすぎると、トナーが感光体ドラムから記録媒体に適切に転写せず、転写効率が低下することがある。しかしながら、トナーコアとシェル層との界面発生率が3.78×106-1以上であることにより、転写効率を向上させることができる。
一方、トナーコアとシェル層との界面発生率が7.02×106-1以下であることにより、トナーコアの表面上のシェル層の数が多すぎないため、比較的低い温度においても記録媒体に静電潜像現像用トナーを定着させることができ、低温定着性を向上できる。以上のように、適度な数のシェル層がトナーコア表面上に分散していることから、静電潜像現像用トナーの耐熱保存性、低温定着性がさらに向上する。
なお、典型的には、第1シェル樹脂に対して第2シェル樹脂の量が多すぎると、シェル層の数が増大してしまい、さらに、電荷減衰定数が低下してしまう傾向がある。しかしながら、トナーコアとシェル層との界面発生率が7.02×106-1以下であることにより、シェル層には第1シェル樹脂に対して適度な量の第2シェル樹脂が存在しているため、静電潜像現像用トナーの電荷減衰が抑制されて電荷保持性を向上できるとともに転写効率を向上できる。
なお、トナーコアとシェル層との界面発生率は、トナー粒子表面において、直線状に延びた測定対象領域の長さに対して、シェル層とシェル層に覆われていないトナーコアとの界面の発生数の比率を示す。例えば、測定対象領域は、撮像された画像におけるトナー粒子の中心を通過してトナー粒子の両端を結ぶ直線上の領域である。典型的には、トナー粒子の対象領域において、トナーコアの表面に島状の1つのシェル層が存在している場合、界面の発生数(界面頻度)は2つとなる。界面発生率は、例えば、染色したトナーを拡大して撮像することによって求められる。
トナーコアとシェル層との界面発生率は、任意の手法で制御できる。特に限定されないが、トナーコアとシェル層との界面発生率は、シェル層形成工程におけるための昇温開始前の保持温度、上記昇温開始前の保持時間、上記昇温開始前の混合物の攪拌条件および/又は昇温時のピーク温度のいずれかを変更することにより、制御可能である。
構成(3)は、静電潜像現像用トナーの耐熱保存性および低温定着性の両立を図るために有益である。トナーコアに対する第1シェル樹脂の比率が少なすぎると、シェル層がトナー粒子同士の凝集を抑制するために有効に機能しないことがある。このため、トナーコアに対する第1シェル樹脂の比率が0.40質量%以上であることにより、トナーコアの表面上の第1シェル樹脂の量が少なすぎないため、比較的高い温度においてもトナー粒子同士の凝集を抑制でき、耐熱保存性を向上できる。
一方、トナーコアに対する第1シェル樹脂の比率が1.55質量%以下であることにより、トナーコアの表面上の第1シェル樹脂の量が多すぎないため、比較的低い温度においても記録媒体に静電潜像現像用トナーを定着させることができ、低温定着性を向上できる。また、トナーコアに対する第1シェル樹脂の比率が1.55質量%以下であることにより、トナーコアの表面上の第1シェル樹脂の量が多すぎないため、ドラム付着を抑制できると考えられる。さらに、トナーコアの表面上のシェル層に、適度な量の第1シェル樹脂が存在することにより、電荷保持性を向上させ、電荷減衰が抑制される。
以上のように、本実施形態に係る静電潜像現像用トナーは、構成(2)および(3)を有しており、適度な量の第1シェル樹脂を含有するシェル層が適度な大きさでトナーコア表面上に分散している。
上述したように、本実施形態のトナーは、構成(1)〜(3)を有しており、これにより、耐熱保存性、低温定着性、および転写効率性を向上させ、さらにトナーの電荷減衰およびドラム付着を抑制することができる。なお、構成(1)〜(3)を有する本実施形態のトナーは、構成(1)〜(3)のいずれかを有しない他のトナーと混合して用いられてもよい。構成(1)〜(3)を有する本実施形態のトナーと構成(1)〜(3)のいずれかを有しないトナーとが混合される場合、混合トナーは、80質量%以上の割合で本実施形態のトナーを含むことが好ましく、90質量%以上の割合で本実施形態のトナーを含むことがより好ましく、100質量%の割合で本実施形態のトナーを含むことがさらに好ましい。
なお、トナーの低温定着性と耐熱保存性との両方をさらに向上させるためには、例えば、静電潜像現像用トナーが、構成(1)〜(3)に加えて、次に示す構成(4)を有することが好ましい。
(4)シェル層では、実質的に疎水性熱可塑性樹脂(第1シェル樹脂)からなる複数のブロックが、実質的に親水性熱硬化性樹脂(第2シェル樹脂)からなる境界部を介して相互に接続されている。なお、ブロックに含まれる疎水性熱可塑性樹脂の量は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。また、境界部に含まれる親水性熱硬化性樹脂の量は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
シェル層内の疎水性熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度Tg以上の温度まで加熱されると軟化する。しかし、構成(4)を有するトナーのシェル層では、疎水性熱可塑性樹脂(ブロック)が親水性熱硬化性樹脂(境界部)で仕切られている。このため、シェル層の温度が疎水性熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに到達しても、トナー粒子は変形しにくくなる。トナーの製造条件を調整することで、トナー内のトナー粒子に熱と圧力とを同時に加えた時に初めてトナー粒子の変形が始まるようにすることが可能になる。こうしたトナーでは、トナーに力が加わっていない状態においてトナー粒子同士の凝集が抑制される。したがって、構成(4)を有するトナーは耐熱保存性と低温定着性との両方に優れる。
以下、図1および図2を参照して、本実施形態のトナーの一例について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーに含まれるトナー粒子100の一例を示す模式図である。図2は、トナー粒子100におけるシェル層20の構造の一例を示す図である。
図1に示すように、トナー粒子100は、トナーコア10と、トナーコア10の表面を被覆するシェル層20とを含む。トナーコア10は、複数のシェル層20によって被覆されている。シェル層20は、トナーコア10の表面上に島状に分離されている。図2に示すように、シェル層20は、境界部21と、ブロック22とを含む。境界部21は、実質的に親水性熱硬化性樹脂からなる。ブロック22は、実質的に疎水性熱可塑性樹脂からなる。
1つのシェル層20は複数のブロック22から構成されていてもよい。この場合、シェル層20には、親水性熱硬化性樹脂の境界部21によって区画された複数の領域のそれぞれに、疎水性熱可塑性樹脂の微小なブロック22が形成されている。疎水性熱可塑性樹脂のブロック22と親水性熱硬化性樹脂の境界部21とにより、トナーコア10の表面には、海島構造のシェル層20が複数形成されている。
1つのシェル層20は1つのブロック22から構成されていてもよい。この場合、シェル層20には、親水性熱硬化性樹脂の境界部21によって区画された1つの領域に、疎水性熱可塑性樹脂の微小なブロック22が形成されている。
典型的には、シェル層20において、ブロック22は、トナー粒子の表面に露出している。ただし、トナー粒子の表面に露出しないブロック22がシェル層20に含まれていてもよい。
ここで、主に図2を参照して、シェル層20の構造をさらに説明する。図2に示すように、シェル層20が複数のブロックから構成されている場合、境界部21は、ブロック22と他のブロック22との間に形成される。ブロック22の各々は、ブロック22と他のブロック22との間に位置する境界部21(境界部21の壁)により仕切られている。また、境界部21は、ブロック22とトナーコア10との隙間にも形成されている。ブロック22とトナーコア10との隙間に位置する境界部21(境界部21の膜)は、境界部21の壁と他の境界部21の壁とを相互に接続して、境界部21全体を一体化している。ただし、これに限られず、境界部21は、部分的に分離していてもよい。
また、図2に示すように、シェル層20が1つのブロックから構成されている場合、境界部21は、このブロック22の表面を除く周囲を囲むように構成されている。この場合も、境界部21は、ブロック22とトナーコア10との隙間にも形成されている。
なお、トナー粒子100(トナー母粒子)の表面には、必要に応じて添加された外添剤が存在していても良い。本明細書において、外添剤の添加される前のトナー粒子をトナー母粒子と記載する場合がある。また、トナーコアの表面上に位置するシェル層は積層構造を有していてもよい。
トナーは、1成分現像剤として使用されてもよい。また、トナーを所望のキャリアと混合された2成分現像剤として使用されてもよい。
[トナーコア]
トナーコアは、結着樹脂を含む。また、トナーコアは、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、又は磁性粉)を含んでもよい。なお、本明細書において、化合物名の後に「系」を付けて、化合物およびその誘導体を包括的に総称することがある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリルおよびメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
(結着樹脂)
結着樹脂は、一般に、トナーコアの大部分(例えば、85質量%以上)を占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。例えば、結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強い。また、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。結着樹脂が強いアニオン性を有するためには、結着樹脂の水酸基価(OHV値)および酸価(AV値)がそれぞれ10mgKOH/g以上であることが好ましく、それぞれ20mgKOH/g以上であることがより好ましい。
結着樹脂としては、エステル基、水酸基、エーテル基、酸基、メチル基からなる群から選択される1以上の官能基を有する樹脂が好ましく、水酸基および/又は上記酸基のうちのカルボキシル基を有する樹脂がより好ましい。このような官能基を有する結着樹脂は、シェル材料(例えば、メチロールメラミン)と反応して化学的に結合し易い。こうした化学的な結合が生じると、トナーコアとシェル層との結合が強固になる。また、結着樹脂としては、活性水素を含む官能基を分子中に有する樹脂も好ましい。
結着樹脂のガラス転移温度Tgは、シェル材料の硬化開始温度以下であることが好ましい。こうしたガラス転移温度Tgを有する結着樹脂を用いる場合には、高速定着時においてもトナーの定着性が低下しにくいと考えられる。
結着樹脂のガラス転移温度Tgは、例えば示差走査熱量計を用いて測定できる。より具体的には、示差走査熱量計を用いて試料(結着樹脂)の吸熱曲線を測定することで、得られた吸熱曲線における比熱の変化点から結着樹脂のガラス転移温度Tgを求めることができる。
結着樹脂の軟化温度Tmは100℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましい。結着樹脂の軟化温度Tmが100℃以下であることで、高速定着時においてもトナーの定着性が低下しにくくなる。また、結着樹脂の軟化温度Tmが100℃以下である場合には、水性媒体中でトナーコアの表面にシェル層を形成する際に、シェル層の硬化反応中にトナーコアが部分的に軟化し易くなるため、トナーコアが表面張力により丸みを帯び易くなる。なお、異なる軟化温度Tmを有する複数種の樹脂を組み合わせることで、結着樹脂の軟化温度Tmを調整することができる。
結着樹脂の軟化温度Tmは、例えば高化式フローテスターを用いて測定できる。より具体的には、高化式フローテスターに試料(結着樹脂)をセットし、所定の条件で結着樹脂を溶融させ、流出させる。そして、結着樹脂のS字カーブを測定する。得られたS字カーブから結着樹脂の軟化温度Tmを読み取ることができる。得られたS字カーブにおいて、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度が、測定試料(結着樹脂)の軟化温度Tmに相当する。
結着樹脂は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、又はポリメタクリル酸メチル(PMMA)等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂等)、ビニル樹脂(より具体的には、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、又はN−ビニル樹脂等)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、もしくはウレタン樹脂のような単独重合体、又はこれら単独重合体のいずれかの繰返し単位と同一のモノマーに由来する繰返し単位を1種以上含む共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂等)を好適に使用できる。中でも、トナー中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、および記録媒体に対するトナーの定着性を向上させるために、スチレン−アクリル酸系樹脂又はポリエステル樹脂を用いることが特に好ましい。
熱可塑性樹脂は、1種以上の熱可塑性モノマー(より具体的には、アクリル酸系モノマー又はスチレン系モノマー等)を縮重合又は共縮重合させることで得られる。
以下、結着樹脂として用いることのできるスチレン−アクリル酸系樹脂について説明する。なお、スチレン−アクリル酸系樹脂は、スチレン系モノマーとアクリル酸系モノマーとの共重合体である。スチレン−アクリル酸系樹脂を合成するためには、例えば以下に示すような、スチレン系モノマーおよびアクリル酸系モノマーを好適に使用できる。アクリル酸系モノマーを用いることで、スチレン−アクリル酸系樹脂にカルボキシル基を導入できる。また、水酸基を有するモノマー(より具体的には、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等)を用いることで、スチレン−アクリル酸系樹脂に水酸基を導入できる。アクリル酸系モノマーの使用量を調整することで、得られるスチレン−アクリル酸系樹脂の酸価を調整できる。また、水酸基を有するモノマーの使用量を調整することで、得られるスチレン−アクリル酸系樹脂の水酸基価を調整できる。
スチレン系モノマーの好適な例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、又はp−エチルスチレンが挙げられる。
アクリル酸系モノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。
結着樹脂がスチレン−アクリル酸系樹脂である場合、トナーコアの強度およびトナーの定着性を両立させるためには、スチレン−アクリル酸系樹脂の数平均分子量(Mn)が2000以上3000以下であることが好ましい。スチレン−アクリル酸系樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は10以上20以下であることが好ましい。スチレン−アクリル酸系樹脂のMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
以下、結着樹脂として用いることのできるポリエステル樹脂について説明する。ポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸とを縮重合又は共縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示すような、2価アルコール(より具体的には、ジオール類又はビスフェノール類等)又は3価以上のアルコールを好適に使用できる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示すような、2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸を好適に使用できる。
ポリエステル樹脂を調製するために用いることができる2価アルコールの例としては、ジオール類又はビスフェノール類が挙げられる。
ジオール類の好適な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノール類の好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、又はポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテルが挙げられる。
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸)又はアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸)が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
上記2価又は3価以上のカルボン酸を、エステル形成性の誘導体(例えば、酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステル)に変形して用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1〜6のアルキル基を意味する。
ポリエステル樹脂を調製する際に、アルコールの使用量とカルボン酸の使用量とをそれぞれ変更することで、ポリエステル樹脂の酸価および水酸基価を調整することができる。ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価および水酸基価は低下する傾向がある。
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合、トナーコアの強度およびトナーの定着性を両立させるためには、ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1000以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は9以上21以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂のMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
(着色剤)
トナーコアは、着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
トナーコアは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、およびシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナーコアは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
イエロー着色剤の例としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、又はアリールアミド化合物が挙げられる。イエロー着色剤の好適な例としては、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローが挙げられる。
マゼンタ着色剤の例としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、又はペリレン化合物が挙げられる。マゼンタ着色剤の好適な例としては、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)が挙げられる。
シアン着色剤の例としては、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、又は塩基染料レーキ化合物が挙げられる。シアン着色剤の好適な例としては、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーが挙げられる。
(離型剤)
トナーコアは、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えばトナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
離型剤の好適な例としては、脂肪族炭化水素系ワックス(例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックス)、脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物(例えば、酸化ポリエチレンワックス、又は酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体)、植物系ワックス(例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックス)、動物系ワックス(例えば、みつろう、ラノリン、又は鯨ろう)、鉱物系ワックス(例えば、オゾケライト、セレシン、又はペトロラタム)、脂肪酸エステルを主成分とするワックス類(例えば、モンタン酸エステルワックス又はカスターワックス)、又は脂肪酸エステルの一部もしくは全部を脱酸化したワックス(例えば、脱酸カルナバワックス)が挙げられる。
なお、結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナーコアに添加してもよい。
(電荷制御剤)
トナーコアは、電荷制御剤を含んでいてもよい。電荷制御剤は、例えばトナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。また、トナーコアに負帯電性の電荷制御剤を含ませることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
(磁性粉)
トナーコアは、磁性粉を含んでいてもよい。磁性粉の例としては、鉄(より具体的には、フェライト又はマグネタイト)、強磁性金属(より具体的には、コバルト又はニッケル)、鉄および/又は強磁性金属を含む化合物(より具体的には、合金)、強磁性化処理(例えば、熱処理)が施された強磁性合金、又は二酸化クロムが挙げられる。
磁性粉からの金属イオン(例えば、鉄イオン)の溶出を抑制するため、磁性粉を表面処理することが好ましい。酸性条件下でトナーコアの表面にシェル層を形成する場合に、トナーコアの表面に金属イオンが溶出すると、トナーコア同士が固着し易くなる。磁性粉からの金属イオンの溶出を抑制することで、トナーコア同士の固着を抑制することができる。
[シェル層]
シェル層は、第1シェル樹脂と第2シェル樹脂とを含む。第1シェル樹脂は、第2シェル樹脂の官能基(例えば、メチロール基又はアミノ基)と反応し易い官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、又はグリシジル基)を有することが好ましい。アミノ基は、カルバモイル基(−CONH2)として第1シェル樹脂中に含まれてもよい。
第1シェル樹脂は、疎水性熱可塑性樹脂である。疎水性熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル酸系樹脂、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、もしくはポリエステル樹脂のような単独重合体、又はこれらの単独重合体と同一のモノマーを含む共重合体(例えば、スチレン−アクリル酸系共重合体、シリコーン−アクリル酸系グラフト共重合体、又はエチレン−ビニルアルコール共重合体)が好ましい。
シェル層へ疎水性熱可塑性樹脂(第1シェル樹脂)を導入するために用いることができる熱可塑性モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、又は(メタ)アクリル酸n−ブチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルのような(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリル酸のエチレンオキシド付加物;(メタ)アクリル酸エステルのエチレンオキシド付加物のアルキルエーテル(より具体的には、メチルエーテル、エチルエーテル、n−プロピルエーテル、又はn−ブチルエーテル等)が挙げられる。
第2シェル樹脂は親水性熱硬化性樹脂である。第2シェル樹脂(親水性熱硬化性樹脂)の好適な例としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、スルホンアミド樹脂、グリオキザール樹脂、グアナミン樹脂、アニリン樹脂、ポリイミド樹脂、又はこれら各樹脂の誘導体が挙げられる。ポリイミド樹脂は、窒素元素を分子骨格に有する。このため、ポリイミド樹脂を含むシェル層は、強いカチオン性を有し易い。ポリイミド樹脂の例としては、マレイミド系重合体、又はビスマレイミド系重合体(より具体的には、アミノビスマレイミド重合体又はビスマレイミドトリアジン重合体)が挙げられる。
第2シェル樹脂としては、アミノ基を有する化合物とアルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド)との重縮合によって生成される樹脂が特に好ましい。なお、メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合物である。尿素樹脂は、尿素とホルムアルデヒドとの重縮合物である。グリオキザール樹脂は、グリオキサールと尿素との反応生成物と、ホルムアルデヒドとの重縮合物である。
第2シェル樹脂に窒素元素を含ませることで、第2シェル樹脂の架橋硬化機能を向上させることができる。第2シェル樹脂(メラミン樹脂、尿素樹脂、又はグリオキザール樹脂)の反応性を高めるためには、メラミン樹脂では40質量%以上55質量%以下に、尿素樹脂では40質量%程度に、グリオキザール樹脂では15質量%程度に、窒素元素の含有量を調整することが好ましい。
シェル層へ第2シェル樹脂(親水性熱硬化性樹脂)を導入するために用いることができるモノマーの例としては、メチロールメラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、スピログアナミン、又はジメチロールジヒドロキシエチレン尿素(DMDHEU)が挙げられる。
シェル層は、破壊箇所(機械的強度の弱い部位)を有していてもよい。破壊箇所は、シェル層に局所的に欠陥等を生じさせることにより形成することができる。シェル層に破壊箇所を設けることで、シェル層が容易に破壊されるようになる。その結果、低い温度でトナーを記録媒体に定着させることが可能になる。破壊箇所の数は任意である。
[外添剤]
トナー粒子の表面には、必要に応じて外添剤を付着させてもよい。外添剤としては、金属酸化物(例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム)、又はシリカの粒子が挙げられる。
外添剤の粒子径は、0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。外添剤の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
本実施形態のトナーを所望のキャリアと混合することで、2成分現像剤を調製できる。2成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いることが好ましい。
好適なキャリアの例としては、キャリアコアが樹脂で被覆されたキャリアが挙げられる。キャリアコアの具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、又はコバルトの粒子;これらの材料とマンガン、亜鉛、又はアルミニウムのような金属との合金の粒子;鉄−ニッケル合金、又は鉄−コバルト合金の粒子;セラミックス(酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、又はニオブ酸リチウム)の粒子;高誘電率物質(リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、又はロッシェル塩)の粒子が挙げられる。樹脂中に上記粒子を分散させて樹脂キャリアを調製しても良い。
キャリアコアを被覆する樹脂の例としては、アクリル酸系重合体、スチレン系重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、又はポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、又はポリフッ化ビニリデン)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、又はアミノ樹脂が挙げられる。これらの樹脂の2種以上を組み合わせても良い。
キャリアの粒子径は、20μm以上120μm以下であることが好ましく、25μm以上80μm以下であることがより好ましい。
トナーおよびキャリアを用いて2成分現像剤を調製する場合、トナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
[界面発生率の測定]
トナー粒子におけるトナーコアとシェル層との界面発生率は以下のように求められる。
界面発生率=測定対象領域内の界面数/測定対象領域の長さ
トナー粒子内の直線状の測定対象領域は複数の測定単位に分けて測定される。隣接する2つの測定単位の測定結果の変化が大きい場合、上記2つの測定単位のいずれかにトナーコアとシェル層との界面が存在している。
例えば、測定単位の輝度を測定する場合、隣接する2つの測定単位のいずれかにトナーコアとシェル層との界面が存在しなければ、2つの測定単位の輝度の差は比較的小さい。一方、隣接する2つの測定単位のいずれかにトナーコアとシェル層との界面が存在していると、2つの測定単位の輝度の差は比較的大きくなる。
例えば、トナーコアとシェル層との界面発生率は、トナー粒子を撮像した画像から測定される。トナー粒子の画像を撮像する顕微鏡として電界放出形走査型電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope:FE−SEM)が好適に用いられる。トナー内のトナー粒子は外添剤を備えていないことが好ましい。例えば、トナー粒子に外添剤が付与されていなくてもよく、あるいは、界面発生率の測定前に、外添剤が付与されたトナー粒子から外添剤を予め除去してもよい。
なお、トナー粒子表面において、トナーコアとシェル層とを容易に見分けるために、トナー粒子を撮像する前に、トナーをルテニウムで染色することが好ましい。この場合、トナー粒子におけるシェル層内の疎水性熱可塑性樹脂を含む部分は、トナーコア部分と比べて、ルテニウムによって染色されやすい。したがって、シェル部分は高い輝度値を示す一方で、トナーコア部分は比較的低い輝度値を示しやすい。
次に、得られた画像について、ソフトウェアを用いて画像解析を行う。まず、画像内の測定対象となる1つのトナー粒子に対して、トナー粒子の中心を通過する直線状の線を描き、この線を測定対象領域とする。なお、必要に応じて、直線を描く前に、画像に対して平滑化処理を行ってもよい。
測定対象領域は、直線状に配列された複数の測定単位に分離されている。例えば、直線状に沿った測定単位の長さは、5nm以上40nm以下であることが好ましく、10nm以上25nm以下であることがさらに好ましい。例えば、トナー粒子の粒径が約10μmである場合、測定単位数は約250個以上約2000個以下である。
上述したようにトナーをルテニウムで染色した場合、疎水性熱可塑性樹脂の存在する領域は他の領域よりも明るくなる。例えば、画像を255階調で表す場合、疎水性熱可塑性樹脂の存在する領域の輝度値は、他の領域の輝度値よりも10階調レベル以上大きくなる。このため、ある測定単位の階調レベルが、隣接する測定単位の階調レベルよりも10階調レベル以上大きければ、2つの測定単位のいずれかにトナーコアとシェル層との界面が存在しているといえる。このようにして、測定対象領域内の界面の発生数(界面頻度)の数を数えることができる。トナーコアとシェル層との界面発生率は、直線状の延びた測定対象領域の長さ(測定単位の数)に対して、シェル層と、シェル層に覆われていないトナーコアとの界面の発生数の比率から求めることができる。
[第1シェル樹脂比率の測定]
本実施形態のトナーにおいて、トナーコアに対する第1シェル樹脂の比率は以下のように求められる。なお、第1シェル樹脂の量は、シェル層形成材料内への第1シェル樹脂の添加量ではなく、トナー粒子内に存在する第1シェル樹脂の含有量であることが好ましい。
例えば、トナーコアに対する第1シェル樹脂の比率は、測定対象のトナーとは別に予め作製したサンプルトナーを基準として求めてもよい。この場合、トナーコアに対する第1シェル樹脂の比率は、複数のサンプルトナーに基づいて作成された検量線を用いて測定してもよい。
例えば、サンプルトナーは、トナーコアと第1シェル樹脂を均一に分散させて作製される。なお、測定対象のトナーは、洗浄されても、洗浄されていなくてもよいが、サンプルトナーは洗浄しないことが好ましい。
また、同一含有量のトナーコアに対して、異なる含有量の第1シェル樹脂を含有させた複数のサンプルトナーを作製することが好ましい。例えば、4つのサンプルトナーを作製する場合、サンプルトナー0にはトナーコアに対して第1シェル樹脂を添加せず、サンプルトナー1には100質量部のトナーコアに対して0.5質量部の第1シェル樹脂を添加し、サンプルトナー2には100質量部のトナーコアに対して1.5質量部の第1シェル樹脂を添加し、サンプルトナー3には100質量部のトナーコアに対して2.5質量部の第1シェル樹脂を添加する。
次に、サンプルトナーの透過スペクトルを測定する。透過スペクトルは吸光度計を用いて測定される。複数のサンプルトナーを測定する場合、サンプルトナーごとに透過スペクトルを規格化することが好ましい。透過スペクトルの規格化は、例えば、透過スペクトルのうちのベースを示す値とピークを示す値との両方が一致するように行われる。
次に、透過スペクトルのうち、第1シェル樹脂由来の所定の波数に対応する透過率を比較する。例えば、第1シェル樹脂がスチレンを含有する場合、第1シェル樹脂の含有量に応じて、スチレン由来の波数698cm-1の透過率が変動する。このため、検量線は、波数698cm-1の透過率に基づいて形成される。
測定対象のトナーの透過スペクトルを測定し、第1シェル樹脂由来の所定の波数の透過率を求める。先に形成された検量線に対して、測定対象のトナーの測定結果から、測定対象のトナーにおけるトナーコアに対する第1シェル樹脂の比率を測定することができる。
[トナーの製造方法]
以下、本実施形態に係る静電潜像現像用トナーの製造方法について説明する。本実施形態に係る静電潜像現像用トナーの製造方法は、トナーコア製造工程と、シェル層形成工程とを含む。トナーコア製造工程では、トナーコアを製造する。シェル層形成工程では、液(例えば、水性媒体)に、トナーコア製造工程で得られたトナーコアと、第1シェル樹脂と、第2シェル樹脂前駆体とを添加する。また、シェル層形成工程では、液を加熱して、トナーコアの表面に、第1シェル樹脂と第2シェル樹脂とを含むシェル層を形成する。第1シェル樹脂は、疎水性熱可塑性樹脂である。第2シェル樹脂は、親水性熱硬化性樹脂である。
(トナーコア製造工程)
トナーコア製造工程としては、例えば、粉砕法、凝集法が好ましい。
粉砕法では、結着樹脂と、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、又は磁性粉)とを混合する。続けて、得られた混合物を溶融し、混練する。続けて、得られた混練物を粉砕する。続けて、得られた粉砕物を分級する。その結果、所望の粒子径を有するトナーコアが得られる。粉砕法によれば、比較的容易にトナーコアを調製できる。
凝集法は、例えば、凝集工程および合一化工程を含む。凝集工程では、トナーコアを構成する成分を含む微粒子を水性媒体中で凝集させて、凝集粒子を形成する。合一化工程では、凝集粒子に含まれる成分を水性媒体中で合一化させてトナーコアを形成する。凝集法によれば、形状が均一であり、粒子径の揃ったトナーコアを得やすい。
(シェル層形成工程)
シェル層形成工程では、トナーコアの表面にシェル層を形成する。シェル層は、第1シェル樹脂および第2シェル樹脂前駆体を用いて形成される。結着樹脂の溶解又は離型剤の溶出を防ぐためには、水のような水性媒体中でシェル層を形成することが好ましい。本実施形態に係るトナーの製造方法では、液(例えば、水性媒体)に、トナーコア製造工程で得られたトナーコアと、アルコール性水酸基を有するモノマーを含む第1シェル樹脂と、第2シェル樹脂前駆体とを添加する。
以下、主に図3を参照して、本実施形態に係るトナーの製造方法において、第1シェル樹脂として疎水性熱可塑性樹脂を使用し、第2シェル樹脂前駆体として親水性熱硬化性樹脂前駆体を使用した場合のシェル層形成工程の一例について説明する。
シェル層形成工程では、水性媒体に、トナーコアと、親水性熱硬化性樹脂前駆体と、疎水性熱可塑性樹脂とを添加する。これにより、水性媒体中で、トナーコアの表面に粒子状の疎水性熱可塑性樹脂が吸着する。また、粒子状の疎水性熱可塑性樹脂が付着したトナーコアの表面を覆うように、親水性熱硬化性樹脂前駆体が形成される。例えば、シェル層形成工程では、水性媒体に、粒子状の疎水性熱可塑性樹脂の懸濁したサスペンションおよび親水性熱硬化性樹脂前駆体を添加して粒子状の疎水性熱可塑性樹脂を覆うように親水性熱硬化性樹脂前駆体を付着させ、その後、上記水性媒体にトナーコアを添加することにより、トナーコアの表面に、親水性熱硬化性樹脂前駆体の付着した粒子状の疎水性熱可塑性樹脂を吸着させてもよい。
詳しくは、図3に示すように、トナーコア10の表面に、親水性熱硬化性樹脂前駆体の膜21aと、疎水性熱可塑性樹脂の粒子22aとが形成される。膜21aおよび粒子22aはそれぞれ、トナーコア10の表面に付着している。疎水性熱可塑性樹脂は、疎水性を示すため、水性媒体中に広がらず、凝集して粒子22aを形成すると考えられる。粒子22aの各々は、トナーコア10と膜21aとに囲まれて、水性媒体に露出しないと考えられる。
続けて、水性媒体(詳しくは、膜21aおよび粒子22aが形成されたトナーコア10の分散液)を攪拌しながら、水性媒体の温度を所定の温度まで上昇させて、その温度に所定の時間保つ。これにより、トナーコア10の表面に付着したシェル材料の親水性熱硬化性樹脂前駆体が重合反応し、親水性熱硬化性樹脂が形成される。また、粒子22aは軟化してブロック形状に変形する。その結果、トナーコア10の表面に、親水性熱硬化性樹脂の膜21aと疎水性熱可塑性樹脂の粒子22aとを含むシェル層が形成される。
シェル層を硬化させる前に、シェル材料(疎水性熱可塑性樹脂および親水性熱硬化性樹脂前駆体)がそれぞれトナーコアに付着しているために、シェル層を加熱して硬化させてもトナーコアの表面上で、疎水性熱可塑性樹脂の粒子同士とは融着しないと考えられる。また、加熱前の親水性熱硬化性樹脂前駆体は、強い親水性を有するため、水性媒体と疎水性熱可塑性樹脂の粒子との界面に存在すると考えられる。しかし、シェル層の硬化反応が進むにつれて、親水性熱硬化性樹脂前駆体の親水性は弱まる傾向がある。このため、シェル層の硬化反応中においては、親水性熱硬化性樹脂前駆体が、キャピラリー効果によって、疎水性熱可塑性樹脂のブロック間、さらには疎水性熱可塑性樹脂のブロックとトナーコアとの間に移動すると考えられる。
水性媒体のpHは、シェル層を形成するための材料を添加する前に、酸性物質を用いて4程度に調整されることが好ましい。水性媒体のpHを酸性側に調整することで、シェル層を形成するための重合反応が促進される。
シェル層の形成を良好に進行させるためには、トナーコアの表面でシェル層を形成する際の温度は、40℃以上95℃以下であることが好ましく、50℃以上80℃以下であることがより好ましい。
上記のようにして、トナーコアの表面にシェル層を形成することで、トナー母粒子の分散液が得られる。続けて、得られたトナー母粒子の分散液を常温まで冷却する。その後、必要に応じて、トナー母粒子を洗浄する工程(洗浄工程)、トナー母粒子を乾燥する工程(乾燥工程)、およびトナー母粒子の表面に外添剤を付着させる工程(外添工程)を経て、トナー母粒子の分散液からトナーが回収される。
洗浄工程では、水を用いてトナー母粒子を洗浄する。好適な洗浄方法としては、トナー母粒子を含む分散液から、固液分離によりウェットケーキ状のトナー母粒子を回収し、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子を、水を用いて洗浄する方法;分散液中のトナー母粒子を沈降させ、上澄み液を水と置換し、置換後にトナー母粒子を水に再分散させる方法が挙げられる。
乾燥工程では、トナー母粒子を乾燥させる。トナー母粒子を乾燥させる好適な方法としては、乾燥機(例えば、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥機、又は減圧乾燥機)を用いる方法が挙げられる。これらの方法の中では、乾燥中のトナー母粒子の凝集を抑制するため、スプレードライヤーを用いる方法が好ましい。スプレードライヤーを用いる場合、トナー母粒子の分散液と共に、シリカ粒子のような外添剤の分散液を噴霧することによって、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させることができる。
外添工程では、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる。外添剤を付着させる好適な方法としては、外添剤がトナー母粒子の表面に埋没しないような条件で、混合機(例えば、FMミキサー、ナウターミキサー(登録商標))を用いて、トナー母粒子と外添剤とを混合する方法が挙げられる。
なお、上記トナーの製造方法は、要求されるトナーの構成又は特性等に応じて任意に変更することができる。例えば溶媒にシェル層の材料を溶解させてから、溶媒中にトナーコアを添加してもよい。また、溶媒中にトナーコアを添加してから、溶媒にシェル層の材料を溶解させてもよい。シェル層の形成方法は任意である。例えば、in−situ重合法、液中硬化被膜法、およびコアセルベーション法の何れの方法を用いて、シェル層を形成してもよい。また、トナーの用途に応じて、各種工程は割愛してもよい。トナー母粒子の表面に外添剤を付着させない(外添工程を割愛する)場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。効率的にトナーを製造するためには、多数のトナー粒子を同時に形成することが好ましい。
本発明の実施例について説明する。表1に、実施例1〜9および比較例1〜9のトナー(それぞれ静電潜像現像用トナー)を示す。
(第1シェル樹脂のサスペンションIの作製)
温度計および攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコに、イオン交換水815mLおよびアニオン界面活性剤(花王株式会社製「ラテムル(登録商標)WX」、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩)75mLを入れた後、ウォーターバスを用いてフラスコ内温を80℃に昇温した。その後、スチレン68mL、およびアクリル酸ブチル12mLの混合液、それとは別に過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30mLに溶かした溶液を各々5時間かけてフラスコに滴下した。さらに80℃で2時間保持して重合を完結させて、第1シェル樹脂のサスペンションI(固形分濃度:8%)を得た。透過型電子顕微鏡を用いて、得られたサスペンションIに含まれる第1シェル樹脂の粒子を測定したところ、粒子の体積中位径(D50)は32nmであった。また、示差走査型熱量計を用いて測定したサスペンションIに含まれる第1シェル樹脂の粒子のガラス転移温度Tgは72℃であった。
(第1シェル樹脂のサスペンションIIの作製)
アニオン界面活性剤の添加量を75mLから25mLに変更した以外は、第1シェル樹脂のサスペンションIと同様に第1シェル樹脂のサスペンションII(固形分濃度:8%)を作製した。透過型電子顕微鏡を用いて、得られたサスペンションIIに含まれる第1シェル樹脂の粒子を測定したところ、粒子の体積中位径(D50)は107nmであった。また、示差走査型熱量計を用いて測定したサスペンションIIに含まれる第1シェル樹脂の粒子のガラス転移温度Tgは68℃であった。
(第1シェル樹脂のサスペンションIIIの作製)
アクリル酸ブチルを加えることなく、スチレンの添加量を68mLから100mLに変更した以外は、第1シェル樹脂のサスペンションIと同様に第1シェル樹脂のサスペンションIII(固形分濃度:8%)を作製した。透過型電子顕微鏡を用いて、得られたサスペンションIIIに含まれる第1シェル樹脂の粒子を測定したところ、粒子の体積中位径(D50)は30nmであった。また、示差走査型熱量計を用いて測定したサスペンションIIIに含まれる第1シェル樹脂の粒子のガラス転移温度Tgは103℃であった。
(水溶液IVの作製)
水溶性熱可塑性樹脂(水溶性ポリアクリルアミド:DIC株式会社製「BECKAMINE(登録商標) A−1」)の水溶液IV(固形分濃度11%)を用意した。水溶液IVに含まれる水溶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは110℃であった。
(第1シェル樹脂のサスペンションVの作製)
アクリル酸ブチルを加えることなく、ジビニルベンゼン5mLを添加し、スチレンの添加量を68mLから95mLに変更した以外は、第1シェル樹脂のサスペンションIと同様に第1シェル樹脂のサスペンションV(固形分濃度:8%)を作製した。得られたサスペンションVに含まれる第1シェル樹脂の粒子の体積中位径(D50)は30nmであった。また、示差走査型熱量計を用いてサスペンションVに含まれる第1シェル樹脂の粒子のガラス転移温度Tgを測定したが、ガラス転移温度は観測されなかった。この試験結果から、サスペンションVに含まれる第1シェル樹脂は熱硬化性樹脂であることが確認された。
実施例1
(トナーコアの作製)
低粘度ポリエステル樹脂(Tg=38℃、Tm=65℃、花王株式会社製)750gと、中粘度ポリエステル樹脂(Tg=53℃、Tm=84℃、花王株式会社製)100gと、高粘度ポリエステル樹脂(Tg=71℃、Tm=120℃、花王株式会社製)150gと、離型剤(カルナバワックス、株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)55gと、着色剤(フタロシアニンブルー、DIC株式会社製「KET BLUE 111」)40gとをFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて2400rpmで混合した。得られた混合物を、二軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、材料投入速度5kg/時、軸回転数160rpm、設定温度範囲100℃以上130℃以下で溶融し、混練した。得られた混練物を冷却した後、混練物を粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)で粗粉砕した。次いで、得られた粗粉砕品を、ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製「超音波ジェットミルI型」)で微粉砕した。続けて、得られた微粉砕品を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)で分級した。その結果、トナーコアが得られた。
(シェル層形成工程)
温度計および攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコに、イオン交換水300mLを入れた後、ウォーターバスを用いてフラスコ内温を30℃に保持した。次いで、フラスコ内に希塩酸を加えて、フラスコ内の水性媒体のpHを4に調整した。pH調整後、フラスコ内に、シェル層の原料として、15mLの第1シェル樹脂のサスペンションIと、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液(昭和電工株式会社製「ミルベン(登録商標)レジンSM−607」、固形分濃度80質量%)0.35mLとを添加した。シェル層の原料を水性媒体に溶解させ、シェル層の原料の水溶液を得た。得られた水溶液に、300gのトナーコアを添加し、30℃でフラスコ内容物を、200rpmの速度で60分間(以下、30℃保持時間という)攪拌した。次いで、フラスコ内に、イオン交換水300mLを追加した。その後、フラスコ内容物を100rpmで攪拌しながら、1℃/分の速度で、フラスコ内温を70℃まで上げた。昇温後、70℃、100rpmの条件でフラスコ内容物を2時間攪拌し続けた。その後、フラスコ内に水酸化ナトリウムを加えて、フラスコ内容物のpHを7に調整した。次いで、フラスコ内容物を常温まで冷却して、トナー母粒子を含む分散液を得た。
(洗浄工程)
ブフナーロートを用いて、トナー母粒子を含む分散液から、ウェットケーキ状のトナー母粒子をろ取した。続けて、ウェットケーキ状のトナー母粒子を再度イオン交換水に分散させてトナー母粒子を洗浄した。こうしたイオン交換水によるトナー母粒子の洗浄を5回繰り返した。
(乾燥工程)
洗浄工程で得られたウェットケーキ状のトナー母粒子を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させてスラリーを調整した。得られたスラリーを連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)に供給することにより、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させてトナー母粒子を得た。乾燥条件は、熱風温度45℃、ブロアー風量2m3/分とした。
(外添工程)
乾燥工程で得られたトナー母粒子100質量部と、乾式シリカ(日本アエロジル株式会社製「REA90」)1.0質量部とを、容量10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて5分間混合して、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させた。その後、得られたトナーを、200メッシュ(目開き75μm)の篩により篩別して、実施例1のトナーを得た。
実施例2
シェル層形成工程において、30℃保持時間を60分間から45分間に変更した以外は、実施例1のトナーと同様に実施例2のトナーを得た。
実施例3
シェル層形成工程において、30℃保持時間を60分間から90分間に変更した以外は、実施例1のトナーと同様に実施例3のトナーを得た。
実施例4
シェル層形成工程において、第1シェル樹脂のサスペンションIの添加量を15mLから30mLに変更した以外は、実施例1のトナーと同様に実施例4のトナーを得た。
実施例5
シェル層形成工程において、第1シェル樹脂のサスペンションIの添加量を15mLから10mLに変更した以外は、実施例1のトナーと同様に実施例5のトナーを得た。
実施例6
シェル層形成工程において、15mLの第1シェル樹脂のサスペンションIに代えて、15mLの第1シェル樹脂のサスペンションIIを使用した以外は、実施例1のトナーと同様に実施例6のトナーを得た。
実施例7
シェル層形成工程において、15mLの第1シェル樹脂のサスペンションIに代えて、15mLの第1シェル樹脂のサスペンションIIIを使用した以外は、実施例1のトナーと同様に実施例7のトナーを得た。
実施例8
シェル層形成工程において、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液の添加量を0.35mLから0.60mLに変更した以外は、実施例1のトナーと同様に実施例8のトナーを得た。
実施例9
シェル層形成工程において、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液の添加量を0.35mLから0.10mLに変更した以外は、実施例1のトナーと同様に実施例9のトナーを得た。
比較例1
シェル層形成工程において、30℃保持時間を60分間から35分間に変更した以外は、実施例1のトナーと同様に比較例1のトナーを得た。
比較例2
シェル層形成工程において、第1シェル樹脂のサスペンションIの添加量を15mLから30mLに変更し、30℃保持時間を60分間から80分間に変更した以外は、実施例1のトナーと同様に比較例2のトナーを得た。
比較例3
シェル層形成工程において、第1シェル樹脂のサスペンションIの添加量を15mLから30mLに変更し、30℃保持時間を60分間から50分間に変更した以外は、実施例1のトナーと同様に比較例3のトナーを得た。
比較例4
シェル層形成工程において、第1シェル樹脂のサスペンションIの添加量を15mLから50mLに変更した以外は、実施例1のトナーと同様に比較例4のトナーを得た。
比較例5
シェル層形成工程において、第1シェル樹脂のサスペンションIの添加量を15mLから5mLに変更した以外は、実施例1のトナーと同様に比較例5のトナーを得た。
比較例6
シェル層形成工程において、15mLの第1シェル樹脂のサスペンションIの代わりに、15mLの水溶液IVに変更した以外は、実施例1のトナーと同様に比較例6のトナーを得た。
比較例7
シェル層形成工程において、15mLの第1シェル樹脂のサスペンションIの代わりに、15mLの熱硬化性樹脂のサスペンションVに変更した以外は、実施例1のトナーと同様に比較例7のトナーを得た。
比較例8
シェル層形成工程において、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液の添加量を0.35mLから1.20mLに変更した以外は、実施例1のトナーと同様に比較例8のトナーを得た。
比較例9
シェル層形成工程において、ヘキサメチロールメラミン初期重合体の水溶液を添加しなかった以外は、実施例1のトナーと同様に比較例9のトナーを得た。
[測定方法]
第1シェル樹脂比率およびトナーコアとシェル層との界面発生率は、以下のように測定した。
(トナーコアとシェル層との界面発生率)
密閉容器内に5質量%の四酸化ルテニウム水溶液2mLを加えた。密閉した容器内の大気雰囲気下に、外添する前の実施例1〜9および比較例1〜9のトナーを5分間静置した。続いて、電界放出形走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製「JSM−7600F」)を用いて、外添する前の実施例1〜9および比較例1〜9のトナーのSEM画像を撮影した。なお、SEM観察条件は、加速電圧10.0kV、照射電流70μA、撮影条件5000倍、コントラスト5000に設定した。ブライトネスは任意に設定した。
次に、得られたSEM画像について、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて画像解析を行い、界面発生率を測定した。図4は、電界放出形走査型電子顕微鏡を用いて撮影したトナーのSEM写真を示す図である。
得られたSEM画像の画像ファイルを3×3ガウシアンフィルター処理をして、画像を平滑化した。続いて、図4に示したように、SEM画像上で1つのトナー粒子の中心を通過し、トナー粒子を8等分するような4本の直線を引き、この4本のそれぞれについて、長さ1/54μmの正方形の測定単位マスごとに輝度値を測定した。測定対象マスの輝度値が、測定対象マスのどちらか両隣のマスの輝度値よりも10以上大きければ、界面が1つ存在するとした。下記式により、トナーコアとシェル層との界面発生率を求めた。
(トナーコアとシェル層との界面発生率)=(界面発生数)/(直線上の測定対象領域の長さ)
図5は、実施例1のトナーにおける1つの直線についてのトナー粒子表面の輝度値を示すグラフである。ここでは、界面発生数は32であった。直線上のマス目の個数は342であった。したがって、この直線において、トナーコアとシェル層との界面発生率は5.08×106-1であった。同様に、少なくとも20個のトナー粒子についてトナー粒子ごとに4本の直線を引き、直線ごとに界面発生率を測定し、その平均を求めた。また、実施例2〜9および比較例1〜9のトナーのそれぞれついても同様に界面発生率を測定した。
(第1シェル樹脂比率)
実施例1のトナーの作製に用いたトナーコアを乾燥させてサンプルトナーAを作製した。また、実施例1のトナーの作製に用いたトナーコアに、第1シェル樹脂のサスペンションIに含まれる第1シェル樹脂の粒子を異なる量だけ添加して均一に分散し、乾燥させてサンプルトナーB、C、およびDを作製した。サンプルトナーBにおける、第1シェル樹脂の粒子の添加した重量比率は0.493%であった。サンプルトナーCにおける、第1シェル樹脂の粒子の添加した重量比率は1.48%であった。サンプルトナーDにおける、第1シェル樹脂の粒子の添加した重量比率は2.47%であった。なお、サンプルトナーA〜Dは、洗浄せずに、第1シェル樹脂の含有比率は変化させなかった。
フーリエ変換赤外分光分析装置(FT−IR)(PerkinElmer株式会社製「Frontier FT−IR」)を用いて、サンプルトナーA〜Dの透過スペクトルを測定した。図6は、サンプルトナーA〜Dの透過スペクトルの測定結果を示すグラフである。
次に、波数650cm-1の透過率が100%となり、波数730cm-1にあるピークトップが透過率20%となるように透過スペクトルの大きさを比例調整して規格化した。図7は、サンプルトナーA〜Dの規格化された透過スペクトルを示すグラフである。
次に、サンプルトナーA〜Dのそれぞれについて、規格化された透過スペクトルのうちのスチレン由来と考えられる波数698cm-1の透過率を求め、添加した重量比率と透過率との関係に基づいて検量線を作成した。図8は、サンプルトナーA〜Dを用いて作成した検量線を示すグラフである。
なお、第1シェル樹脂のサスペンションIだけでなく、第1シェル樹脂のサスペンションII〜Vについても同様に検量線を形成した。得られた検量線から、実施例1〜9および比較例1〜9のトナーについて、トナーコアに対する第1シェル樹脂の質量比率を測定した。
[評価方法]
実施例1〜9および比較例1〜9のトナーについて以下のように評価した。
(耐熱保存性)
試料(トナー)2gを容量20mLのポリ容器に秤量し、65℃に設定された恒温器内に3時間静置することで、耐熱保存性評価用の試料を得た。その後、耐熱保存性評価用の試料を、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)のマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5、時間30秒の条件で、100メッシュ(目開き150μm)の篩を用いて篩別した。篩別後に、篩上に残留した試料の質量を測定した。篩別前の試料の質量と、篩別後に篩上に残留した試料の質量とから、下記式にしたがって凝集度(質量%)を算出した。算出された凝集度から、下記基準にしたがって耐熱保存性を評価した。
凝集度(質量%)=(篩上に残留した試料の質量/篩別前の試料の質量)×100
◎(非常に良い):凝集度が40質量%未満である。
○(良い) :凝集度が40質量%以上50質量%未満である。
×(良くない) :凝集度が50質量%以上である。
(低温定着性)
現像剤用キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5550ci」用キャリア)100質量部と、10質量部のトナーとを、ボールミルを用いて30分間混合し、評価用の2成分現像剤を調製した。
評価機としては、Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着器(ニップ幅8mm)を有するカラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。上記のようにして調製した2成分現像剤を評価機の現像器に投入し、試料(トナー)を評価機のトナーコンテナに投入した。
試料(トナー)の定着性を評価する場合には、上記評価機を用いて、線速200mm/秒(ニップ通過時間40m秒)、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、90g/m2の紙(A4サイズの印刷用紙)に、大きさ25mm×25mm、印刷率100%のソリッド画像を形成した。続けて、画像が形成された紙を定着器に通した。定着温度の設定範囲は100℃以上200℃以下であった。詳しくは、定着器の定着温度を100℃から徐々に上昇させて、トナー(ソリッド画像)を紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を測定した。
最低定着温度の測定においてトナーを定着させることができたか否かは、ソリッド画像がオフセットすることなく、記録媒体に定着できる最低温度を、最低定着温度とした。下記基準にしたがって低温定着性を評価した。
◎(非常に良い):最低定着温度が145℃以下である。
○(良い) :最低定着温度が145℃超150℃以下である。
×(良くない) :最低定着温度が150℃超である。
(電荷減衰定数)
トナーの電荷減衰定数α(トナー粒子の電荷減衰定数)は、静電気拡散率測定装置(株式会社ナノシーズ製「NS−D100」)を用いて、JIS規格(JIS C 61340−2−1)に準拠した方法で以下のように測定した。
測定セルにトナーを入れた。測定セルは、内径10mm、深さ1mmの凹部が形成された金属製のセルであった。スライドガラスを用いて試料を上から押し込み、セルの凹部に試料を充填した。セルの表面においてスライドガラスを往復移動させることによって、セルから溢れた試料を除去した。試料の充填量は0.04g以上0.06g以下であった。
続けて、試料が充填された測定セルを、温度32℃、湿度80%RHの環境下で12時間放置した。続けて、接地させた測定セルを静電気拡散率測定装置内に置き、コロナ放電によって試料にイオンを供給して、帯電時間0.5秒の条件で試料を帯電させた。そして、コロナ放電終了後0.7秒経過した後から、温度32℃、湿度80%RHの環境下で試料の表面電位を連続的に測定した。測定された表面電位と、式「V=V0exp(−α√t)」とに基づいて、電荷減衰定数(電荷減衰速度)αを算出した。式中、Vは表面電位[V]、V0は初期表面電位[V]、tは減衰時間[秒]をそれぞれ示す。
各試料(トナー)の低温定着性、転写効率およびドラム付着性を、以下の方法にしたがって調整した2成分現像剤を用いて評価した。下記基準にしたがって、算出された電荷減衰定数αを評価した。
◎(非常に良い):試料の電荷減衰定数αが0.014未満である。
○(良い) :試料の電荷減衰定数αが0.014以上0.015未満である。
×(悪い) :試料の電荷減衰定数αが0.015以上である。
(転写効率およびドラム付着)
トナーの転写効率およびドラム付着の評価には、評価機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5550ci」)を使用した。評価機に上記の現像剤をセットし、試料(トナー)を補給しながら印刷率5%の画像を温度32℃、湿度80%RHの環境下で出力を開始した。
トナーのドラム付着を評価するために、上記出力中に、感光体ドラムの表面にトナーによる着色が生じたか否か、およびソリッド画像にダッシュマークが生じたか否かを適宜観察した。なお、1万枚出力するまでにソリッド画像にダッシュマークが生じた場合は、その時点で出力を止めた。1万枚出力できなかった場合には、出力を止めた時点の出力枚数を示した。試料のドラム付性は、下記基準にしたがって評価した。
○(良い):感光体ドラムの表面にトナーによる着色が観察されず、ソリッド画像にダッシュマークが観察されなかった。
×(悪い):感光体ドラムの表面にトナーによる着色が観察され、ソリッド画像にダッシュマークが観察された。
そして、1万枚出力が終了した後、消費トナー重量および回収トナー重量を測定して、下記式から試料の転写効率を算出した。下記基準にしたがって、試料の転写効率を評価した。
式:転写効率(%)={(消費トナーの質量−回収トナーの質量)/(消費トナーの質量)}×100
◎(非常に良い):試料の転写効率が85%超である。
○(良い) :試料の転写効率が80%超85%以下である。
×(良くない) :試料の転写効率が80%以下である。
なお、トナーコンテナにセットされた試料(トナー)のうち、トナーコンテナから排出されたトナーを消費トナーとした。また、消費トナーのうち、記録媒体に転写されなかったトナーを回収トナーとした。
[評価結果]
実施例1〜9および比較例1〜9のトナーの各々についての評価結果は以下の通りである。表2に、実施例1〜9および比較例1〜9のトナーの耐熱保存性、低温定着性、電荷減衰定数、ドラム付着および転写効率の評価結果を示す。
表2に示されるように、比較例1のトナーは、界面発生率が低かったため、耐熱保存性および転写効率が充分ではなかった。比較例2のトナーは、界面発生率が高かったため、低温定着性が充分ではなかった。比較例3のトナーは、界面発生率が低かったため、耐熱保存性が充分ではなかった。比較例4のトナーは、トナーコアに対する第1シェル樹脂の比率が高かったため、低温定着性が充分ではなく、ドラム付着が生じた。比較例5のトナーは、トナーコアに対する第1シェル樹脂の比率が低かったため、耐熱保存性が充分ではなかった。
比較例6のトナーは、第1シェル樹脂として水溶性熱可塑性樹脂を用いたため、電荷減衰定数が低く、転写効率が充分ではなかった。比較例7のトナーは、第1シェル樹脂として疎水性熱硬化性樹脂を用いたため、低温定着性が充分ではなかった。比較例8のトナーは、界面発生率が高かったため、低温定着性が充分ではなく、また、電荷減衰定数が低く、転写効率が充分ではなかった。比較例9のトナーは、シェル層が第2シェル樹脂を含有しなかったため、耐熱保存性が充分ではなく、ドラム付着が生じた。
これに対して、実施例1〜9のトナーは、耐熱保存性、低温定着性、および転写効率を向上し、トナーの電荷減衰およびドラム付着を抑制することができた。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、例えば複写機又はプリンターにおいて画像を形成するために用いることができる。
10 トナーコア
20 シェル層
21 境界部
21a 膜
22 ブロック
22a 粒子

Claims (2)

  1. トナーコアと、前記トナーコアの表面を被覆するシェル層とを含むトナー粒子を含有する静電潜像現像用トナーであって、
    前記シェル層が、第1シェル樹脂と第2シェル樹脂とを含み、
    前記第1シェル樹脂が、スチレン及びアクリル酸ブチルから重合された樹脂、又はスチレン樹脂からなる群より選択される熱可塑性樹脂であり、
    前記第2シェル樹脂が、メチロールメラミンから重合された熱硬化性樹脂であり、
    前記シェル層は、前記第1シェル樹脂からなる複数のブロックと、隣り合う前記複数のブロック間に形成され、前記第2シェル樹脂からなる境界部と、を含み、隣り合う前記複数のブロックは、前記境界部を介して相互に接続され、
    前記トナーコアと前記シェル層との界面発生率は3.78×106-1以上7.02×106-1以下であり、
    前記トナーコアに対する前記第1シェル樹脂の比率は0.40質量%以上1.55質量%以下である、静電潜像現像用トナー。
  2. さらに、前記複数のブロックと前記トナーコアとの隙間に、前記第2シェル樹脂からなる境界部が形成されている、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
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