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JP6388749B1 - 全芳香族ポリエステルアミド及びその製造方法 - Google Patents

全芳香族ポリエステルアミド及びその製造方法 Download PDF

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JP6388749B1 JP2018520215A JP2018520215A JP6388749B1 JP 6388749 B1 JP6388749 B1 JP 6388749B1 JP 2018520215 A JP2018520215 A JP 2018520215A JP 2018520215 A JP2018520215 A JP 2018520215A JP 6388749 B1 JP6388749 B1 JP 6388749B1
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Abstract

低融点化と耐熱性との両立が十分である全芳香族ポリエステルアミド及びその製造方法を提供する。本発明に係る全芳香族ポリエステルアミドは、必須の構成成分として、下記構成単位(I)〜(V)からなり、全構成単位に対して、構成単位(I)を61〜75モル%、構成単位(II)を1〜4.5モル%、構成単位(III)を10.25〜19モル%、構成単位(IV)を3.25〜18モル%、構成単位(V)を1〜7モル%含み、構成単位(I)〜(V)を合計で100モル%含み、溶融時に光学的異方性を示す。

Description

本発明は、全芳香族ポリエステルアミド及びその製造方法に関する。
液晶性ポリマーは、優れた流動性、機械強度、耐熱性、耐薬品性、電気的性質等をバランス良く有するため、高機能エンジニアリングプラスチックスとして好適に広く利用されている。液晶性ポリマーとしては、全芳香族ポリエステルとともに、全芳香族ポリエステルアミドが用いられている。例えば、特許文献1には、p−アミノフェノール、4−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、テレフタル酸、及びイソフタル酸を反応させて得られる芳香族ポリエステルアミドが開示されている。また、特許文献2には、p−アミノフェノール、4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、及びテレフタル酸を反応させて得られる芳香族ポリエステルアミドが開示されている。
特開平02−086623号公報 特開平05−170902号公報
しかしながら、特許文献1に記載の全芳香族ポリエステルアミドは、耐熱性が不十分であり、特許文献2に記載の全芳香族ポリエステルアミドは、低融点化と耐熱性との両立が不十分である。
本発明は、上記課題に鑑み、低融点化と耐熱性との両立が十分である全芳香族ポリエステルアミド及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、4−ヒドロキシ安息香酸から誘導される構成単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から誘導される構成単位、1,4−フェニレンジカルボン酸から誘導される構成単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから誘導される構成単位、及びN−アセチル−p−アミノフェノールから誘導される構成単位からなり、各構成単位の含有量が特定の範囲である全芳香族ポリエステルアミドにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的に、本発明は、以下のものを提供する。
(1) 必須の構成成分として、下記構成単位(I)〜(V)からなり、
全構成単位に対して構成単位(I)の含有量は61〜75モル%であり、
全構成単位に対して構成単位(II)の含有量は1〜4.5モル%であり、
全構成単位に対して構成単位(III)の含有量は10.25〜19モル%であり、
全構成単位に対して構成単位(IV)の含有量は3.25〜18モル%であり、
全構成単位に対して構成単位(V)の含有量は1〜7モル%であり、
全構成単位に対して構成単位(I)〜(V)の合計の含有量は100モル%である、溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルアミド。
Figure 0006388749
(2) 融点が350℃以下である(1)に記載の全芳香族ポリエステルアミド。
(3) 荷重たわみ温度が270℃以上である(1)又は(2)に記載の全芳香族ポリエステルアミドであって、
前記荷重たわみ温度は、前記全芳香族ポリエステルアミド60質量%と、平均繊維径11μm、平均繊維長75μmのミルドファイバー40質量%とを、前記全芳香族ポリエステルアミドの融点+20℃にて溶融混練して得られるポリエステルアミド樹脂組成物の状態で測定される全芳香族ポリエステルアミド。
(4) 前記全芳香族ポリエステルアミドの融点より10〜30℃高い温度、かつ、剪断速度1000/秒における溶融粘度が500Pa・s以下である(1)〜(3)のいずれかに記載の全芳香族ポリエステルアミド。
(5) 構成単位(III)のモル数が構成単位(IV)と構成単位(V)との合計のモル数の1〜1.2倍であり、又は、構成単位(IV)と構成単位(V)との合計のモル数が構成単位(III)のモル数の1〜1.2倍である(1)〜(4)のいずれかに記載の全芳香族ポリエステルアミド。
(6) 溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルアミドの製造方法であって、
前記方法は、脂肪酸金属塩の存在下、4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、及びN−アセチル−p−アミノフェノールを脂肪酸無水物でアシル化して、1,4−フェニレンジカルボン酸とエステル交換する工程を含み、
4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1,4−フェニレンジカルボン酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、及びN−アセチル−p−アミノフェノールからなり、前記方法に用いる全モノマーに対し、
4−ヒドロキシ安息香酸の使用量が61〜75モル%、
6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の使用量が1〜4.5モル%、
1,4−フェニレンジカルボン酸の使用量が10.25〜19モル%、
4,4’−ジヒドロキシビフェニルの使用量が3.25〜18モル%、
N−アセチル−p−アミノフェノールの使用量が1〜7モル%、
4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1,4−フェニレンジカルボン酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、及びN−アセチル−p−アミノフェノールの合計の使用量が100モル%
であり、
前記脂肪酸無水物の使用量が、4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、及びN−アセチル−p−アミノフェノールの合計の水酸基当量の1.02〜1.05倍である方法。
(7) 前記脂肪酸金属塩が酢酸金属塩であり、前記脂肪酸無水物が無水酢酸である(6)に記載の方法。
(8) 1,4−フェニレンジカルボン酸のモル数が4,4’−ジヒドロキシビフェニルとN−アセチル−p−アミノフェノールとの合計のモル数の1〜1.2倍であり、又は、4,4’−ジヒドロキシビフェニルとN−アセチル−p−アミノフェノールとの合計のモル数が1,4−フェニレンジカルボン酸のモル数の1〜1.2倍である(6)又は(7)に記載の方法。
本発明によれば、特定の構成単位よりなり溶融時に光学的異方性を示す、本発明の全芳香族ポリエステルアミドは、低融点化と耐熱性との両立が十分である。
また、本発明の全芳香族ポリエステルアミドは、成形加工温度があまり高くないために、特殊な構造を持った成形機を用いずとも射出成形、押出成形、圧縮成形等が可能である。
本発明の全芳香族ポリエステルアミドは、上記の通り、成形性に優れ、かつ、様々な成形機を用いて成形可能である結果、種々の立体成形品、繊維、フィルム等に容易に加工できる。このため、本発明の全芳香族ポリエステルアミドの好適な用途である、コネクター、CPUソケット、リレースイッチ部品、ボビン、アクチュエータ、ノイズ低減フィルターケース又はOA機器の加熱定着ロール等の成形品も容易に得られる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
<全芳香族ポリエステルアミド>
本発明の全芳香族ポリエステルアミドは、下記構成単位(I)、下記構成単位(II)、下記構成単位(III)、下記構成単位(IV)、及び下記構成単位(V)からなる。
Figure 0006388749
構成単位(I)は、4−ヒドロキシ安息香酸(以下、「HBA」ともいう。)から誘導される。本発明の全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(I)を61〜75モル%含む。構成単位(I)の含有量が61モル%未満であると、又は75モル%を超えると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(I)の含有量は、好ましくは61.5〜73.5モル%、より好ましくは62〜72モル%である。
構成単位(II)は、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(以下、「HNA」ともいう。)から誘導される。本発明の全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(II)を1〜4.5モル%含む。構成単位(II)の含有量が1モル%未満であると、又は4.5モル%を超えると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(II)の含有量は、好ましくは2〜4モル%、より好ましくは3〜3.6モル%である。
構成単位(III)は、1,4−フェニレンジカルボン酸(以下、「TA」ともいう。)から誘導される。本発明の全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(III)を10.25〜19モル%含む。構成単位(III)の含有量が10.25モル%未満であると、又は19モル%を超えると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(III)の含有量は、好ましくは11.5〜18.25モル%、より好ましくは12.5〜17.45モル%である。
構成単位(IV)は、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(以下、「BP」ともいう。)から誘導される。本発明の全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(IV)を3.25〜18モル%含む。構成単位(IV)の含有量が3.25モル%未満であると、又は18モル%を超えると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(IV)の含有量は、好ましくは6.5〜16モル%、より好ましくは10〜14.25モル%である。
構成単位(V)は、N−アセチル−p−アミノフェノール(以下、「APAP」ともいう。)から誘導される。本発明の全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(V)を1〜7モル%含む。構成単位(V)の含有量が1モル%未満、又は7モル%を超えると、低融点化及び耐熱性の少なくとも一方が不十分となりやすい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(V)の含有量は、好ましくは1.5〜6モル%、より好ましくは2〜5モル%である。
低融点化と耐熱性との両立の観点から、構成単位(III)のモル数(以下、「モル数1A」ともいう。)は、構成単位(IV)と構成単位(V)との合計のモル数(以下、「モル数2A」ともいう。)の1〜1.2倍であり、又は、構成単位(IV)と構成単位(V)との合計のモル数は、構成単位(III)のモル数の1〜1.2倍であることが好ましい。モル数1Aは、モル数2Aの1.01〜1.06倍であり、又は、モル数2Aは、モル数1Aの1.01〜1.06倍であることがより好ましい。モル数1Aは、モル数2Aの1.02〜1.03倍であり、又は、モル数2Aは、モル数1Aの1.02〜1.03倍であることが更により好ましい。モル数1Aは、モル数2Aの1.024〜1.030倍であり、又は、モル数2Aは、モル数1Aの1.024〜1.030倍であることが特に好ましい。
以上の通り、本発明の全芳香族ポリエステルアミドは、特定の構成単位である(I)〜(V)を、全構成単位に対して特定の量含有するため、低融点化と耐熱性との両立が十分である。なお、本発明の全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(I)〜(V)を合計で100モル%含む。
上記の耐熱性を表す指標として、荷重たわみ温度(以下、「DTUL」ともいう。)が挙げられる。DTULが、270℃以上であると耐熱性が高くなる傾向にあり好ましい。DTULは、前記全芳香族ポリエステルアミド60質量%と、平均繊維径11μm、平均繊維長75μmのミルドファイバー40質量%とを、前記全芳香族ポリエステルアミドの融点+20℃にて溶融混練して得られるポリエステルアミド樹脂組成物の状態で測定される値であり、ISO75−1,2に準拠して測定することができる。低融点化と耐熱性との両立の観点から、DTULは、好ましくは271℃以上320℃未満、より好ましくは272〜288℃である。
次いで、本発明の全芳香族ポリエステルアミドの製造方法について説明する。本発明の全芳香族ポリエステルアミドは、直接重合法やエステル交換法等を用いて重合される。重合に際しては、溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法、固相重合法等、又はこれらの2種以上の組み合わせが用いられ、溶融重合法、又は溶融重合法と固相重合法との組み合わせが好ましく用いられる。
本発明では、重合に際し、重合モノマーに対するアシル化剤や、酸塩化物誘導体として末端を活性化したモノマーを使用できる。アシル化剤としては、無水酢酸等の脂肪酸無水物等が挙げられる。
これらの重合に際しては種々の触媒の使用が可能であり、代表的なものとしては、ジアルキル錫酸化物、ジアリール錫酸化物、二酸化チタン、アルコキシチタン珪酸塩類、チタンアルコラート類、脂肪酸金属塩、BFの如きルイス酸塩等が挙げられ、脂肪酸金属塩が好ましい。触媒の使用量は一般にはモノマーの全質量に基づいて約0.001〜1質量%、特に約0.003〜0.2質量%が好ましい。
また、溶液重合又はスラリー重合を行う場合、溶媒としては流動パラフィン、高耐熱性合成油、不活性鉱物油等が用いられる。
反応条件としては、例えば、反応温度200〜380℃、最終到達圧力0.1〜760Torr(即ち、13〜101,080Pa)である。特に溶融反応では、例えば、反応温度260〜380℃、好ましくは300〜360℃、最終到達圧力1〜100Torr(即ち、133〜13,300Pa)、好ましくは1〜50Torr(即ち、133〜6,670Pa)である。
反応は、全原料モノマー(HBA、HNA、TA、BP、及びAPAP)、アシル化剤、及び触媒を同一反応容器に仕込んで反応を開始させることもできるし(一段方式)、原料モノマーHBA、HNA、BP、及びAPAPの水酸基をアシル化剤によりアシル化させた後、TAのカルボキシル基と反応させることもできる(二段方式)。
溶融重合は、反応系内が所定温度に達した後、減圧を開始して所定の減圧度にして行う。撹拌機のトルクが所定値に達した後、不活性ガスを導入し、減圧状態から常圧を経て、所定の加圧状態にして反応系から全芳香族ポリエステルアミドを排出する。
上記重合方法により製造された全芳香族ポリエステルアミドは、更に常圧又は減圧、不活性ガス中で加熱する固相重合により分子量の増加を図ることができる。固相重合反応の好ましい条件は、反応温度230〜350℃、好ましくは260〜330℃、最終到達圧力10〜760Torr(即ち、1,330〜101,080Pa)である。
本発明の全芳香族ポリエステルアミドの製造方法は、脂肪酸金属塩の存在下、4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、及びN−アセチル−p−アミノフェノールを脂肪酸無水物でアシル化して、1,4−フェニレンジカルボン酸とエステル交換する工程を含むことが好ましく、
4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1,4−フェニレンジカルボン酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、及びN−アセチル−p−アミノフェノールからなり、前記方法に用いる全モノマーに対し、
4−ヒドロキシ安息香酸の使用量が61〜75モル%、低融点化と耐熱性との両立の観点から、好ましくは61.5〜73.5モル%、より好ましくは62〜72モル%、
6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の使用量が1〜4.5モル%、低融点化と耐熱性との両立の観点から、好ましくは2〜4モル%、より好ましくは3〜3.6モル%、
1,4−フェニレンジカルボン酸の使用量が10.25〜19モル%、低融点化と耐熱性との両立の観点から、好ましくは11.5〜18.25モル%、より好ましくは12.5〜17.45モル%、
4,4’−ジヒドロキシビフェニルの使用量が3.25〜18モル%、低融点化と耐熱性との両立の観点から、好ましくは6.5〜16モル%、より好ましくは10〜14.25モル%、
N−アセチル−p−アミノフェノールの使用量が1〜7モル%、低融点化と耐熱性との両立の観点から、好ましくは1.5〜6モル%、より好ましくは2〜5モル%、
4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1,4−フェニレンジカルボン酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、及びN−アセチル−p−アミノフェノールの合計の使用量が100モル%
であることが好ましく、
前記脂肪酸無水物の使用量は、4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、及びN−アセチル−p−アミノフェノールの合計の水酸基当量の1.02〜1.05倍であることが好ましい。上記脂肪酸金属塩が酢酸金属塩であり、上記脂肪酸無水物が無水酢酸であることがより好ましい。また、1,4−フェニレンジカルボン酸のモル数(以下、「モル数1B」ともいう。)は、4,4’−ジヒドロキシビフェニルとN−アセチル−p−アミノフェノールとの合計のモル数(以下、「モル数2B」ともいう。)の1〜1.2倍であり、又は、4,4’−ジヒドロキシビフェニルとN−アセチル−p−アミノフェノールとの合計のモル数は、1,4−フェニレンジカルボン酸のモル数の1〜1.2倍であることがより好ましい。モル数1Bは、モル数2Bの1.01〜1.06倍であり、又は、モル数2Bは、モル数1Bの1.01〜1.06倍であることが更により好ましい。モル数1Bは、モル数2Bの1.02〜1.03倍であり、又は、モル数2Bは、モル数1Bの1.02〜1.03倍であることが一層更により好ましい。モル数1Bは、モル数2Bの1.024〜1.030倍であり、又は、モル数2Bは、モル数1Bの1.024〜1.030倍であることが特に好ましい。
次いで、全芳香族ポリエステルアミドの性質について説明する。本発明の全芳香族ポリエステルアミドは、溶融時に光学的異方性を示す。溶融時に光学的異方性を示すことは、本発明の全芳香族ポリエステルアミドが液晶性ポリマーであることを意味する。
本発明において、全芳香族ポリエステルアミドが液晶性ポリマーであることは、全芳香族ポリエステルアミドが熱安定性と易加工性を併せ持つ上で不可欠な要素である。上記構成単位(I)〜(V)から構成される全芳香族ポリエステルアミドは、構成成分及びポリマー中のシーケンス分布によっては、異方性溶融相を形成しないものも存在するが、本発明のポリマーは溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルアミドに限られる。
溶融異方性の性質は直交偏光子を利用した慣用の偏光検査方法により確認することができる。より具体的には溶融異方性の確認は、オリンパス社製偏光顕微鏡を使用しリンカム社製ホットステージにのせた試料を溶融し、窒素雰囲気下で150倍の倍率で観察することにより実施できる。液晶性ポリマーは光学的に異方性であり、直交偏光子間に挿入したとき光を透過させる。試料が光学的に異方性であると、例えば溶融静止液状態であっても偏光は透過する。
ネマチックな液晶性ポリマーは融点以上で著しく粘性低下を生じるので、一般的に融点又はそれ以上の温度で液晶性を示すことが加工性の指標となる。融点は、でき得る限り高い方が耐熱性の観点からは好ましいが、ポリマーの溶融加工時の熱劣化や成形機の加熱能力等を考慮すると、350℃以下であることが好ましい目安となる。なお、より好ましくは320〜350℃であり、更により好ましくは344〜349℃である。
本発明の全芳香族ポリエステルアミドの融点より10〜30℃高い温度、かつ、剪断速度1000/秒における前記全芳香族ポリエステルアミドの溶融粘度は、好ましくは500Pa・s以下であり、より好ましくは0.5〜300Pa・sであり、更により好ましくは1〜100Pa・sである。上記溶融粘度が上記範囲内であると、前記全芳香族ポリエステルアミドそのもの、又は、前記全芳香族ポリエステルアミドを含有する組成物は、その成形時において、流動性が確保されやすく、充填圧力が過度になりにくい。なお、本明細書において、溶融粘度とは、ISO11443に準拠して測定した溶融粘度をいう。
上記の耐熱性を表す指標として、融点とDTULとの差も挙げられる。この差が、85℃以下であると耐熱性が高くなる傾向にあり好ましい。低融点化と耐熱性との両立の観点から、上記差は、好ましくは0℃超79℃以下(例えば、50℃以上79℃以下)、より好ましくは61〜75℃である。
<ポリエステルアミド樹脂組成物>
上記の本発明の全芳香族ポリエステルアミドには、使用目的に応じて各種の繊維状、粉粒状、板状の無機及び有機の充填剤を配合することができる。
本発明のポリエステルアミド樹脂組成物に配合される、無機充填剤としては、繊維状、粒状、板状のものがある。
繊維状無機充填剤としてはガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、ウォラストナイトの如き珪酸塩の繊維、硫酸マグネシウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物等の無機質繊維状物質が挙げられる。特に代表的な繊維状充填剤はガラス繊維である。
また、粉粒状無機充填剤としてはカーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレー、硅藻土、ウォラストナイトの如き硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
また、板状無機充填剤としてはマイカ、ガラスフレーク、タルク、各種の金属箔等が挙げられる。
有機充填剤の例を示せば芳香族ポリエステル繊維、液晶性ポリマー繊維、芳香族ポリアミド、ポリイミド繊維等の耐熱性高強度合成繊維等である。
これらの無機及び有機充填剤は一種又は二種以上併用することができる。繊維状無機充填剤と粒状又は板状無機充填剤との併用は、機械的強度と寸法精度、電気的性質等を兼備する上で好ましい組み合わせである。特に好ましくは、繊維状充填剤としてガラス繊維、板状充填剤としてマイカ及びタルクであり、その配合量は、全芳香族ポリエステルアミド100質量部に対して120質量部以下、好ましくは20〜80質量部である。ガラス繊維をマイカ又はタルクと組み合わせることで、ポリエステルアミド樹脂組成物は、熱変形温度、機械的物性等の向上が特に顕著である。
これらの充填剤の使用にあたっては必要ならば収束剤又は表面処理剤を使用することができる。
本発明のポリエステルアミド樹脂組成物は、上述の通り、必須成分として、本発明の全芳香族ポリエステルアミド、無機又は有機充填剤を含むが、本発明の効果を害さない範囲であれば、その他の成分が含まれていてもよい。ここで、その他の成分とは、どのような成分であってもよく、例えば、その他の樹脂、酸化防止剤、安定剤、顔料、結晶核剤等の添加剤を挙げることができる。
また、本発明のポリエステルアミド樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法で、ポリエステルアミド樹脂組成物を調製することができる。
<ポリエステルアミド成形品>
本発明のポリエステルアミド成形品は、本発明の全芳香族ポリエステルアミド又はポリエステルアミド樹脂組成物を成形してなる。成形方法としては、特に限定されず一般的な成形方法を採用することができる。一般的な成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形、ガスインジェクション成形等の方法を例示することができる。
本発明の全芳香族ポリエステルアミド等を成形してなるポリエステルアミド成形品は、耐熱性、靱性に優れる。また、本発明のポリエステルアミド樹脂組成物を成形してなるポリエステルアミド成形品は、耐熱性、靱性に優れるとともに、無機又は有機充填剤を含むため、機械的強度等が更に改善される。
また、本発明の全芳香族ポリエステルアミド、ポリエステルアミド樹脂組成物は、成形性に優れるため、容易に所望の形状のポリエステルアミド成形品が得られる。
以上のような性質を有する本発明のポリエステルアミド成形品の好ましい用途としては、コネクター、CPUソケット、リレースイッチ部品、ボビン、アクチュエータ、ノイズ低減フィルターケース又はOA機器の加熱定着ロール等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
<実施例1>
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、脂肪酸金属塩触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)4−ヒドロキシ安息香酸10.41モル(62モル%)(HBA)
(II)6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸0.61モル(3.6モル%)(HNA)
(III)テレフタル酸2.93モル(17.45モル%)(TA)
(IV)4,4’−ジヒドロキシビフェニル2.01モル(11.95モル%)(BP)
(V)N−アセチル−p−アミノフェノール0.84モル(5モル%)(APAP)
酢酸カリウム触媒50ppm
無水酢酸1669g(HBAとHNAとBPとAPAPとの合計の水酸基当量の1.03倍)
原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから20分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧にして、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出した。
<評価>
実施例1の全芳香族ポリエステルアミドについて、融点、DTUL、溶融粘度、及び製造性の評価を以下の方法で行った。評価結果を表1に示す。
[融点]
DSC(TAインスツルメント社製)にて、ポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、(Tm1+40)℃の温度で2分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度、20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークの温度を測定した。
[DTUL]
ポリマー60質量%とガラス繊維(セントラル硝子(株)製EFH75−01、ミルドファイバー、平均繊維径11μm、平均繊維長75μm)40質量%を二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α型)を用いて、ポリマーの融点+20℃のシリンダー温度にて溶融混練し、ポリエステルアミド樹脂組成物ペレットを得た。
上記ポリエステルアミド樹脂組成物ペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製「SE100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、測定用試験片(4mm×10mm×80mm)を得た。この試験片を用いて、ISO75−1,2に準拠した方法で荷重たわみ温度を測定した。なお、曲げ応力としては、1.8MPaを用いた。結果を表1に示す。
〔成形条件〕
シリンダー温度:ポリマーの融点+15℃
金型温度:80℃
背圧:2MPa
射出速度:33mm/sec
[溶融粘度]
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B型を使用し、液晶性ポリマーの融点よりも10〜30℃高い温度で、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いて、剪断速度1000/秒で、ISO11443に準拠して、液晶性ポリマーの溶融粘度を測定した。なお、測定温度は、実施例1〜6、並びに比較例1、2、及び4については360℃、比較例3については370℃、比較例5及び6については380℃であった。
[製造性]
上述した重合容器の下部からポリマーを排出する際の挙動を観察し、以下の基準に従って製造性を評価した。結果を表1に示す。
○:ポリマーを問題なくストランドとして排出でき、このストランドをペレット状にカッティングできた場合、製造性は良好であると評価した。
×:重合途中に容器内で固化等を起こしてポリマーを排出できない場合、又は、ポリマーをストランドとして排出できてもこのストランドをカッティングできない場合、製造性は不良であると評価した。
<実施例2〜6、比較例1〜10>
原料モノマーの種類、仕込み比率(モル%)を表1及び2に示す通りとした以外は、実施例1と同様にしてポリマーを得た。また、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1及び2に示す。
Figure 0006388749
Figure 0006388749

Claims (10)

  1. 必須の構成成分として、下記構成単位(I)〜(V)からなり、
    全構成単位に対して構成単位(I)の含有量は62〜75モル%であり、
    全構成単位に対して構成単位(II)の含有量は1〜4.5モル%であり、
    全構成単位に対して構成単位(III)の含有量は10.25〜19モル%であり、
    全構成単位に対して構成単位(IV)の含有量は3.25〜18モル%であり、
    全構成単位に対して構成単位(V)の含有量は1〜7モル%であり、
    全構成単位に対して構成単位(I)〜(V)の合計の含有量は100モル%であり、
    構成単位(III)のモル数が構成単位(IV)と構成単位(V)との合計のモル数の1.01〜1.06倍であり、又は、構成単位(IV)と構成単位(V)との合計のモル数が構成単位(III)のモル数の1.01〜1.06倍である、溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルアミド。
    Figure 0006388749
  2. 全構成単位に対して構成単位(III)の含有量が10.25〜17.45モル%である請求項1に記載の全芳香族ポリエステルアミド。
  3. 融点が350℃以下である請求項1又は2に記載の全芳香族ポリエステルアミド。
  4. 荷重たわみ温度が270℃以上である請求項1〜3のいずれかに記載の全芳香族ポリエステルアミドであって、
    前記荷重たわみ温度は、前記全芳香族ポリエステルアミド60質量%と、平均繊維径11μm、平均繊維長75μmのミルドファイバー40質量%とを、前記全芳香族ポリエステルアミドの融点+20℃にて溶融混練して得られるポリエステルアミド樹脂組成物の状態で測定される全芳香族ポリエステルアミド。
  5. 前記全芳香族ポリエステルアミドの融点より10〜30℃高い温度、かつ、剪断速度1000/秒における溶融粘度が500Pa・s以下である請求項1〜4のいずれかに記載の全芳香族ポリエステルアミド。
  6. 構成単位(III)のモル数が構成単位(IV)と構成単位(V)との合計のモル数の1.02〜1.06倍であり、又は、構成単位(IV)と構成単位(V)との合計のモル数が構成単位(III)のモル数の1.02〜1.06倍である請求項1〜5のいずれかに記載の全芳香族ポリエステルアミド。
  7. 溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルアミドの製造方法であって、
    前記方法は、脂肪酸金属塩の存在下、4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、及びN−アセチル−p−アミノフェノールを脂肪酸無水物でアシル化して、1,4−フェニレンジカルボン酸とエステル交換する工程を含み、
    4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1,4−フェニレンジカルボン酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、及びN−アセチル−p−アミノフェノールからなり、前記方法に用いる全モノマーに対し、
    4−ヒドロキシ安息香酸の使用量が62〜75モル%、
    6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の使用量が1〜4.5モル%、
    1,4−フェニレンジカルボン酸の使用量が10.25〜19モル%、
    4,4’−ジヒドロキシビフェニルの使用量が3.25〜18モル%、
    N−アセチル−p−アミノフェノールの使用量が1〜7モル%、
    4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1,4−フェニレンジカルボン酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、及びN−アセチル−p−アミノフェノールの合計の使用量が100モル%
    であり、
    1,4−フェニレンジカルボン酸のモル数が4,4’−ジヒドロキシビフェニルとN−アセチル−p−アミノフェノールとの合計のモル数の1.01〜1.06倍であり、又は、4,4’−ジヒドロキシビフェニルとN−アセチル−p−アミノフェノールとの合計のモル数が1,4−フェニレンジカルボン酸のモル数の1.01〜1.06倍であり、
    前記脂肪酸無水物の使用量が、4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、及びN−アセチル−p−アミノフェノールの合計の水酸基当量の1.02〜1.05倍である方法。
  8. 前記全モノマーに対し、1,4−フェニレンジカルボン酸の使用量が10.25〜17.45モル%である請求項7に記載の方法。
  9. 前記脂肪酸金属塩が酢酸金属塩であり、前記脂肪酸無水物が無水酢酸である請求項7又は8に記載の方法。
  10. 1,4−フェニレンジカルボン酸のモル数が4,4’−ジヒドロキシビフェニルとN−アセチル−p−アミノフェノールとの合計のモル数の1.02〜1.06倍であり、又は、4,4’−ジヒドロキシビフェニルとN−アセチル−p−アミノフェノールとの合計のモル数が1,4−フェニレンジカルボン酸のモル数の1.02〜1.06倍である請求項7〜9のいずれかに記載の方法。
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