[概略構成]
先ず、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の概略構成について図1乃至図5に基づき説明する。図1は本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1の外観斜視図である。図2はシートベルト用リトラクタ1のプリテンショナユニット7側から見た下方斜視図である。図3はシートベルト用リトラクタ1のロックユニット9側から見た下方斜視図である。図4及び図5はシートベルト用リトラクタ1をユニット別に分解した斜視図である。
図1乃至図5に示すように、シートベルト用リトラクタ1は、車両のウエビング3を巻き取るための装置であって、ハウジングユニット5と、巻取ドラムユニット6と、プリテンショナユニット7と、巻取バネユニット8と、ロックユニット9とから構成されている。
ロックユニット9は、メカニズムカバー97(図10参照)に一体に形成された各ナイラッチ9A及び各係止フック9Bによって、ハウジングユニット5を構成するハウジング11の一方の側壁部12に固設されている。そして、ロックユニット9は、ウエビング3の急激な引き出しや車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング3の引き出しを停止するロック機構を構成する。また、巻取バネユニット8は、バネケース93に一体に形成された各係止フック8Aによってロックユニット9の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側に固設されている。
また、プリテンショナユニット7は、平面視略コの字状に形成されたハウジング11の側壁部12(第1側壁部)に相対向する他方の側壁部13(第2側壁部)に、プリテンショナユニット7の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側から挿通される各ネジ15によってネジ止めされる。また、プリテンショナユニット7は、プリテンショナユニット7の巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側から側壁部13に挿通されるストッパーピン16と、該ストッパーピン16に側壁部13の巻取ドラムユニット6の回転軸方向内側から挿入されるプッシュナット18によって固定される。
そして、ウエビング3が巻装される巻取ドラムユニット6は、ハウジングユニット5の側壁部12に固設されたロックユニット9と、側壁部13に固定されたプリテンショナユニット7との間に回転自在に支持される。また、巻取ドラムユニット6は、ロックユニット9の外側に固設された巻取バネユニット8によって、ウエビング3の巻取方向に常時付勢されている。
[ハウジングユニットの概略構成]
次に、ハウジングユニット5の概略構成について図4乃至図7に基づいて説明する。図6はハウジングユニット5の分解斜視図である。図7はシートベルト用リトラクタ1のロックユニット9を取り除いた状態の側面図である。
図4乃至図7に示すように、ハウジングユニット5は、ハウジング11と、ブラケット21と、プロテクタ22と、パウル23と、パウルリベット25と、センサカバー27と、車両加速度センサ28と、連結部材29と、押圧部材30と、固定部材32、33と、リベット61とから構成されている。
また、ハウジング11は、車体に固定される背板部31と、その背板部31の両側縁部から相対向する各側壁部12、13が延出されて、平面視略コの字状にスチール材等で形成されている。また、各側壁部12、13は、巻取ドラムユニット6の回転軸方向に長い横長細板状の各固定部材32、33によって互いに連結されている。また、背板部31の中央部には、開口部が形成され、軽量化及びウエビング3の収容量の規制等が図られている。
また、側壁部12には巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35が、所定隙間(例えば、約0.5mmの隙間である。)を形成しつつ挿入される貫通孔36が形成されている。この貫通孔36の内側周縁部は、巻取ドラムユニット6側へ中心軸方向内側に所定深さ窪んで、巻取ドラムユニット6のラチェットギヤ35に対向するように構成されている。
また、この貫通孔36の斜め下側(図6中、斜め左下側である。)には、パウル23の各係合歯23A、23Bを含む先端側の部分37が収容される深さに切り欠かれた切欠部38が形成されている。この切欠部38の背板部31側には、パウル23を回転可能に取り付けるための貫通孔41が形成されている。また、切欠部38の貫通孔41側のパウル23が当接する部分には、該貫通孔41と同軸に円弧状の案内部38Aが形成されている。
一方、スチール材等で形成されたパウル23の案内部38Aに当接して摺動する部分には、側壁部12の厚さにほぼ等しい高さで、この案内部38Aと同じ曲率半径の円弧状の段差部37Aが形成されている。また、パウル23の先端側の部分37には、ロックユニット9を構成するクラッチ111のガイド溝142(図11参照)に挿入される案内ピン42が立設されている。
また、パウル23の基端部(一端側)には、パウルリベット25が挿通される貫通孔43が形成されると共に、この貫通孔43の周縁部から側壁部12の貫通孔41に回動可能に挿通される円筒状のボス部45が、側壁部12の厚さ寸法にほぼ等しい高さで立設されている。そして、パウル23は、ボス部45が側壁部12の貫通孔41にハウジング11の内側から挿通された状態で、側壁部12の外側から貫通孔43に嵌入されたパウルリベット25によって、回動可能に固定される。これにより、パウル23の各係合歯23A、23Bとラチェットギヤ35の外周面に形成されたラチェットギヤの歯35Aとが、側壁部12の外側面とほぼ同一面になるように配置される。
また、捩りコイルバネ48は、第1腕部48Aと第2腕部48Bとが正面視略V字状になるように形成され(図12参照)、この第2腕部48Bは、巻き数が3巻きの弾性連結部48Cの側壁部12側の端部に連結されるように設けられ、第1腕部48Aは、弾性連結部48Cの側壁部12に対して反対側の端部に連結されるように設けられている。従って、第1腕部48Aと第2腕部48Bとの弾性連結部48Cの周方向における相対的な角度変化に伴って、弾性連結部48Cが巻き方向に弾性的に捩れ変形される。
また、捩りコイルバネ48の第2腕部48Bは、側壁部12上を摺接可能に配置され、第2腕部48Bの端部は、側壁部12の内側方向(図6中、側壁部12の裏側方向である。)へ略直角に折り曲げられて、側壁部12に形成された取付孔46(図13参照)に挿通されている。また、この第2腕部48Bの端部は、略U字形に折り曲げられて側壁部12の内側面に当接可能に形成され、抜け止め部を構成している。また、捩りコイルバネ48の第1腕部48Aは、後述のようにクラッチ111に取り付けられている(図12、図15参照)。
また、図4乃至図7に示すように、側壁部12の貫通孔36の下方(図6中、下方向である。)には、貫通孔36の中心軸の下方(図6中、下方向である。)から背板部31側の部分に、略四角形の開口部47が形成されている。また、この開口部47には、開口部47とほぼ同じ断面略四角形の浅い略箱体状のセンサカバー27が外側(図6中、手前側である。)から嵌入される。そして、樹脂製のセンサカバー27は、開口側周縁部に形成された鍔部が開口部47の外側周縁部(図6中、手前側周縁部である。)に当接されると共に、センサカバー27の図6中、上下方向両端面に突設された一対の係止爪27A(図6中、上側端面の係止爪27Aを図示している。)が開口部47の図6中、上下方向両端部の奥側に嵌入されて弾性的に係止される。
また、車両加速度センサ28は、鉛直方向上側(図6中、上側である。)に開放される略箱形で底面部にすり鉢状の載置部が形成された樹脂製のセンサーホルダ51と、スチール等の金属で球状体に形成されて載置部上に移動可能に載置された慣性質量体52と、慣性質量体52の鉛直方向上側に載置されてパウル23に対して反対側の端縁部(図6中、右端縁部である。)をセンサーホルダ51によって鉛直方向上下(図6中、上下方向である。)に揺動可能に支持される樹脂製のセンサレバー53とから構成されている。
そして、車両加速度センサ28をセンサカバー27へ嵌入して、センサーホルダ51のセンサカバー27内の両側壁部に対向する両側面部に設けられた一対の係止爪51A(図6中、一方の係止爪51Aを図示している。)をセンサカバー27の各係止孔27Bに嵌入して係止することによって、車両加速度センサ28がセンサカバー27を介してハウジング11に取り付けられる。
また、連結部材29は、スチール材等の線状の部材で形成されて、両端が相互に約180度ずれて対向するように略直角に折り曲げられて、クランク状に形成されている。この連結部材29の一端側の折曲部29Aは、押圧部材30の側壁部12側とは反対側の面に形成された溝部30D内に嵌入されて、相対回転不能に取り付けられている。また、連結部材29の他端側の略直角に折り曲げられたアーム部29Bは、後述のように、プリテンショナユニット7内に挿入されて保持される(図20参照)。この連結部材29の直線部29Cは、押圧部材30を側壁部12に回動可能に取り付けた際に、側壁部13の中央部に形成された貫通孔57の下端部に形成された支持溝57A内に嵌入されて、略V字状の支持溝57Aの奥で回転可能に支持される(図3、図8参照)。
また、押圧部材30は、ポリアセタール等の合成樹脂やアルミ材等で形成されて、略平板状の幅の狭い略扇形に形成されると共に、パウル23の基端部側と重ならない外周部分から側壁部12側に、パウル23の基端部の厚さよりも少し大きい高さのリブ30Aが直角に立設されることによって、図7に示すように、パウル23の基端部と押圧部材30とが重なった状態で配置されても、押圧部材30の側壁部12側面と、パウル23の基端部との干渉を回避する空間が形成されている。
また、押圧部材の一端部の側壁部12側には、溝部30D内に嵌入された連結部材29の直線部29Cと同軸で、リブ30Aよりも側壁部12側に突出するボス30Bが形成されている。そして図6、7に示すように、ボス30Bは、開口部47の貫通孔41側の角部に形成された、奥側が円弧状の切欠部47Aと、開口部47に嵌入されたセンサカバー27の外周部とによって形成される貫通孔49に嵌入される。
また、押圧部材30の他端部の側壁部12側には、リブ30Aよりも側壁部12側に突出して、切欠部38内に挿通されるボス30Cが立設されている。図7に示すように、このボス30Cは、通常時におけるパウル23のラチェットギヤ35に対して反対側の側面に当接又は、通常時におけるパウル23のラチェットギヤ35に対して反対側の側面の近傍に位置している。従って、車両の衝突時にプリテンショナユニット7が起動して、連結部材29が回転して押圧部材30が、ラチェットギヤの歯35A側へ回動された際には、ボス30Cはパウル23を押圧する押圧部として機能し、パウル23は、ボス30Cに押圧されてラチェットギヤ35側へ回動され、ラチェットギヤの歯35Aに係合する(図23〜図34参照)。また、連結部材29の直線部29Cは、アーム部29Bと押圧部材30のボス30Cとを連結する連結部の一部を構成する。
また、側壁部12には、上端縁部(図6中、上側端縁部である。)の両隅と、貫通孔36の下方(図6中、下方向である。)との3箇所に、ロックユニット9の各ナイラッチ9Aが嵌入されて取り付けられる各取付孔55が形成されている。また、側壁部12の左右側縁部の中央部(図6中、上下方向中央部である。)には、ロックユニット9の各係止フック9Bが弾性的に係止される各係止片56が、巻取ドラムユニット6の回転軸に対して直交するように張り出して形成されている。
また、側壁部13には、巻取ドラムユニット6が挿通される貫通孔57が中央部に形成されている。また、側壁部13には、下端縁部(図4中、下側端縁部である。)の略中央及び固定部材33側の角部と、上端縁部(図4中、上側端縁部である。)の略中央部に、各ネジ15がネジ止めされる各ネジ孔58がプリテンショナユニット7側方向へのバーリングによって形成されている。また、側壁部13には、上端縁部(図4中、上側端縁部である。)の固定部材32側の角部にストッパーピン16が挿通される貫通孔59が形成されている。また、貫通孔59の上側の上端部には、外側方向へ略直角に延出された延出部60が形成され、プリテンショナユニット7のパイプシリンダ182の上側を覆うように構成されている。
また、背板部31の上端縁部(図4中、上側端縁部である。)に各リベット61によって取り付けられるブラケット21は、スチール材等で形成されて、背板部31の上端縁部から略直角に固定部材32側方向に延出された延出部に、ウエビング3が引き出される背板部31の幅方向に長い横長の貫通孔62が形成され、ナイロン等の合成樹脂で形成された横長枠状のプロテクタ22が嵌め込まれている。また、背板部31の下端部(図4中、下端部である。)には、車両の締結片(不図示)に取り付ける際に、ボルトが挿通されるボルト挿通孔63が形成されている。
[巻取ドラムユニットの概略構成]
次に、巻取ドラムユニット6の概略構成について図4、図5、図8及び図9に基づいて説明する。図8はシートベルト用リトラクタ1の断面図である。図9は巻取ドラムユニット6の分解斜視図である。
図8及び図9に示すように、巻取ドラムユニット6は、巻取ドラム65と、トーションバー66と、ワイヤ67と、ラチェットギヤ35とから構成されている。
図4、図5、図8及び図9に示すように、巻取ドラム65は、アルミダイカストや亜鉛ダイカスト等により形成されて、プリテンショナユニット7側の端面部が閉塞された略円筒状に形成されている。また、巻取ドラム65の軸心方向のプリテンショナユニット7側の端縁部には、外周部から径方向外側に延出され、更に略直角外側方向(図8中、左側方向である。)に延出されたフランジ部68が形成されている。また、このフランジ部68の内周面には、車両衝突時に各クラッチパウル202(図16参照)が係合してピニオンギヤ185(図16参照)の回転が伝達される内歯ギヤ69が形成されている。
また、巻取ドラム65のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置には、円筒状のボス72が立設されている。このボス72は、ポリアセタール等の合成樹脂材により形成されたベアリング205に嵌入され、ボス72の基端部がベアリング205に当接される。そして、巻取ドラムユニット6の一端側は、ベアリング205を介してプリテンショナユニット7を構成するピニオンギヤ185のボス部185D(図16参照)に回転可能に支持される。
また、巻取ドラム65の内側には、中心軸に沿って徐々に細くなるように抜き勾配が形成された軸孔65Aが形成されている。この軸孔65A内のフランジ部68側端部には、スチール材等により形成されるトーションバー66の一端部に形成されるスプライン66Aが圧入されるスプライン溝74が形成されている。
また、トーションバー66は、スチール材等により形成され、断面円形の棒状をした軸部66Cと、この軸部66Cの両端部に形成された各スプライン66A、66Bとから構成されている。そして、トーションバー66のスプライン66A側を巻取ドラム65の軸孔65Aに挿入してフランジ部68に当接するまで圧入することによって、トーションバー66が巻取ドラム65内に相対回転不能に圧入固定される。
また、図9に示すように、巻取ドラム65のフランジ部68側端部の近傍には、巻取ドラム65の回転軸方向に対して交差する方向に所定深さ窪む断面略四角形の取付凹部71が形成されている。取付凹部71の底面部の略中央位置には、軸孔65A内に貫通する取付孔71Aが、巻取ドラム65の回転軸方向に対して交差する方向に形成されている。そして、スチール材等により形成された固定ネジ73を取付孔71Aにねじ込んで、トーションバー66のスプライン66Aを周方向に押圧して固定する。つまり、トーションバー66のスプライン66Aは、固定ネジ73によって、巻取ドラム65内に周方向及び軸方向に相対移動不能に固定される。
また、巻取ドラム65の軸方向のロックユニット9側の端縁部には、端縁部から少し軸方向内側の外周面から径方向に延出された正面視略円形のフランジ部75が形成されている。また、このフランジ部75から軸心方向外側の部分には、少し外径が細くなった円筒状の段差部76が形成されている。この段差部76は軸孔65A内に圧入されたトーションバー66の他端側のスプライン66Bを所定隙間を形成して囲むように設けられている。
また、フランジ部75の軸方向外側面に形成された正面視略円形の段差部76の外周部には、ステンレス材等の金属材からなる断面円形の線材状のワイヤ67の一端の屈曲部67Aが嵌入保持される保持側屈曲路77が一体形成されている。
また、ラチェットギヤ35は、アルミダイカストや亜鉛ダイカスト等により形成され、軸断面略リング状で外周部にラチェットギヤの歯35Aが形成され、その内側中央位置に円筒状の固定ボス82が立設されている。固定ボス82の内周面には、トーションバー66の他端側に形成されるスプライン66Bが圧入されるスプライン溝が形成されている。また、ラチェットギヤの歯35Aの内周部は、巻取ドラム65の段差部76が嵌挿可能な内径に形成されている。
また、ラチェットギヤ35は、ラチェットギヤの歯35Aの巻取ドラム65側の端面部から全周に渡って、該巻取ドラム65のフランジ部75の外径よりも半径方向外側へ正面視リング状に延出され、更に、外周部から斜め内側方向へ皿状に延出された正面視円形状のフランジ部83が形成されている。また、フランジ部83の外径は、巻取ドラム65のフランジ部68の外径とほぼ同じ大きさに形成されている。
また、このフランジ部83には、台形状部83Aが形成されている。台形状部83Aの巻取ドラム65側の内側面には、台形状部83Aから回転軸方向外側に突出して、ワイヤ67の正面視略逆U字状の屈曲部67Bが嵌め込まれる正面視略山形の凸部84(図11参照)が略中央部に形成されている。
また、フランジ部83の巻取ドラム65側の内側面には、巻取ドラム65のフランジ部75の外径よりも少し大きい内径で立設されると共に、台形状部83Aの外周部に沿って立設されたフランジ部85(図11参照)が形成されている。また、このフランジ部85の内周部と凸部84の外周部とによって、ワイヤ67が摺動案内されて引き出される正面視略逆U字状の変形付与屈曲路が形成されている。
ラチェットギヤ35の巻取ドラム65への取り付けは、ラチェットギヤ35の固定ボス82を巻取ドラム65の段差部76内に挿入して、トーションバー66の他端側に形成されたスプライン66Bを当該固定ボス82のスプライン溝に圧入する。これにより、巻取ドラム65のフランジ部75とラチェットギヤ35のフランジ部83との間に、ワイヤ67が配置されると共に、ラチェットギヤ35がトーションバー66を介して巻取ドラム65に対して相対回転不能に装着される。
[巻取バネユニットの概略構成]
次に、巻取バネユニット8の概略構成について図4、図5、図8、図10及び図11に基づいて説明する。図10及び図11は、ラチェットギヤ35を含む巻取バネユニット8及びロックユニット9の分解斜視図である。
図4、図5、図8、図10及び図11に示すように、巻取バネユニット8は、渦巻バネ91と、この渦巻バネ91の外側端91Aが内側周縁部の底面から立設されたリブ92に固定されると共に、この渦巻バネ91を収容するバネケース93と、渦巻バネ91の内側端91Bが取付溝94Cに連結されてバネ力が付勢されるバネシャフト94とから構成されている。
メカニズムカバー97の外周部の3箇所から背面側に突設された各弾性係止片98を、バネケース93の外周部の3箇所に設けられた各係止フック8Aに嵌入して弾性的に係止することによって、巻取バネユニット8がロックユニット9の背面側に当接された状態で固定される。また、バネシャフト94の断面四角形の筒孔94Bにロッキングギヤ107の回転軸部119の断面四角形の先端部119Aが嵌入されている。
[ロックユニットの概略構成]
次に、ウエビング3の急激な引き出しや車両の急激な加速度の変化に反応してウエビング3の引き出しを停止するロック機構10を構成するロックユニット9の概略構成について図8、図10乃至図15に基づいて説明する。図12はロックユニット9のロックアーム108を含む組立断面図である。図13はロックユニット9のメカニズムカバー97の底面部104等の一部を切り欠いた一部切り欠き断面図である。図14はロックユニット9のメカニズムカバーの底面部104等の一部を切り欠いた一部切り欠き断面図である。図15はクラッチ111に捩りコイルバネ48を取り付けた状態を示す斜視図である。
[ロックユニットの概略構成]
図8、図10乃至図14に示すように、ロックユニット9は、メカニズムカバー97、ロッキングギヤ107、ロックアーム108、センサスプリング109、クラッチ111、捩りコイルバネ48、及びパイロットレバー112で構成されている。尚、ロックユニット9を構成する各部材のうち、センサスプリング109及び捩りコイルバネ48を除いた部材は、合成樹脂で成形されており、互いに接触した場合の部材間の摩擦係数は小さなものである。
メカニズムカバー97は、ハウジング11の側壁部12側が開口された略円形の底面部104を有する略箱体状のメカニズム収容部113が形成され、ロッキングギヤ107やクラッチ111等を収容するように構成されている。また、メカニズムカバー97は、ハウジング11にセンサカバー27を介して取り付けられた車両加速度センサ28に対向する角部(図11中、左下角部である。)に、断面略四角形の凹形状に形成されたセンサ収容部114が、メカニズム収容部113に連続するように設けられている。
そして、メカニズムカバー97を各ナイラッチ9Aによって側壁部12に取り付けた際には、車両加速度センサ28のセンサーホルダ51がセンサ収容部114に嵌入されて、センサレバー53が鉛直方向上下(図14中、上下方向である。)に揺動可能に収納されるように構成されている。また、メカニズムカバー97のメカニズム収容部113の下端部略中央部(図10中、下端部略中央部である。)には、当該メカニズム収容部113とセンサ収容部114とが連通するように開設された開口部115が形成されている。
この開口部115は、車両加速度センサ28のセンサレバー53の先端縁部から上方向(図11中、上方向である。)に向けて突設されたロック爪53Aの先端部が鉛直方向上下(図14中、上下方向である。)に進退可能に形成され、通常時には、ロック爪53Aの先端部は、パイロットレバー112の受け板部148の近傍に位置している(図13参照)。そして、所定値を超える加速度によって慣性質量体52が移動してセンサレバー53が鉛直方向上側へ回動された場合には、ロック爪53Aは開口部115を介してパイロットレバー112の受け板部148に当接して、パイロットレバー112を鉛直方向上側へ回動させるように構成されている(図13参照)。
また、図11乃至図13に示すように、メカニズムカバー97は、ハウジング11に取り付けられたパウル23に対向する角部(図11中、右下角部である。)に、捩りコイルバネ48の弾性連結部48C内に挿通されて、当該弾性連結部48Cの大きな位置ずれを規制する挿入ピン116が立設されている。
また、図8、図10乃至図13に示すように、メカニズム収容部113の略円形の底面部104には、中央部に形成された貫通孔117の周縁部から円筒状の支持ボス118が立設されている。また、この支持ボス118には、ロッキングギヤ107の円板状の底面部121の中央部から突出する円筒状の回転軸部119が嵌入され、摺動回転可能に支持される。
ロッキングギヤ107は、円板状の底面部121の全周からクラッチ111側へ円環状に立設されて、外周部にパイロットレバー112に係合するロッキングギヤ歯107Aが形成されている。このロッキングギヤ歯107Aは、ロッキングギヤ107がウエビング引出方向へ回転した時のみ、パイロットレバー112の係合爪部112Aと係合するように形成されている。
また、ロッキングギヤ107の底面部121の中央部には、ラチェットギヤ35のロッキングギヤ107側端面の中央部に立設された軸部122が嵌入される断面円形状の軸孔部123Aが形成されている。また、円筒状の基台部123が、この貫通孔のメカニズムカバー97側の周縁部からロッキングギヤ歯107Aの軸方向高さとほぼ同じ高さに立設されている。そして、ロッキングギヤ107の円筒状の回転軸部119は、この円筒状の基台部123のメカニズムカバー97側端縁部から、この基台部123よりも小さいと共に、支持ボス118の内径にほぼ等しい外径でメカニズムカバー97側へ同軸に延設されている。また、回転軸部119には、断面矩形状の先端部119Aが同軸に延設されている。
また、回転軸部119の基端部の周囲には、円環状のリブ125が、クラッチ111の略円板状の板部126の厚さ寸法にほぼ等しい高さで同軸に立設されている。円環状のリブ125の外径は、クラッチ111の板部126の中央部に形成された貫通孔127の内径とほぼ同じ径に形成されると共に、基台部123の外径よりも小さい径に形成されている。
これにより、ロッキングギヤ107の円環状のリブ125をクラッチ111の貫通孔127に嵌入して、回転軸部119をメカニズムカバー97の支持ボス118に挿通して、円環状のリブ125の半径方向内側に形成された挿入溝の底面部に支持ボス118の先端部を当接させる。また、ロッキングギヤ107の円環状のリブ125は、貫通孔127に摺動回転可能に嵌入され、クラッチ111はロッキングギヤ107とメカニズムカバー97との間に一定の回転範囲内で回転可能に収容される。
また、図8、図10及び図11に示すように、ロッキングギヤ107のラチェットギヤ35側の端面には、4個の円柱状に突出した凸部129が、等中心角度で、回転軸107Bから半径方向外側へ所定距離(例えば、距離約14mmである。)離れた同心円上に位置するように立設されている。また、ロッキングギヤ107の底面部121には、円周方向に隣接する1組の凸部129の間のほぼ中央位置に、所定内径(例えば、内径約3.5mmである。)の位置決孔131が形成されている。
また、ラチェットギヤ35のロッキングギヤ107に対向する端面部には、ロッキングギヤ107の凸部129の外径とほぼ同じ内径に形成された断面円形の4個の貫通孔132が、等中心角度で、回転軸107Bから半径方向外側へ所定距離(例えば、距離約14mmである。)離れた各凸部129に対向する位置に形成されている。また、ラチェットギヤ35のロッキングギヤ107に対向する端面部には、円周方向に隣接する1組の貫通孔132の間で、位置決孔131に対向する位置に、位置決孔131の内径にほぼ等しい外径に形成された位置決めピン133が立設されている。
従って、ラチェットギヤ35の軸部122をロッキングギヤ107の軸孔部123Aに嵌入すると共に、ラチェットギヤ35の位置決めピン133をロッキングギヤ107の位置決孔131に嵌入し、同時に、ロッキングギヤ107の各凸部129をラチェットギヤ35の各貫通孔132に嵌入する。これにより、ラチェットギヤ35の回転軸方向外側の端面に、ロッキングギヤ107が当接された状態で、ラチェットギヤ35にロッキングギヤ107が同軸に相対回転不能に取り付けられる。
また、図10乃至図13に示すように、ロッキングギヤ107の底面部121のクラッチ111側の面には、基台部123に隣接して円柱状の支持ボス135が、ロッキングギヤ歯107Aよりも低い高さで立設されている。そして、基台部123を囲むように略弓形に形成された合成樹脂製のロックアーム108は、長手方向略中央部の基台部123側の端縁部に形成された貫通孔136に、この支持ボス135が回転可能に嵌挿され、回動可能に軸支される。
また、図12及び図13に示すように、ロッキングギヤ107は、基台部123の外周面から半径方向外側へ延出されたリブ部に、センサスプリング109の一端側が嵌め込まれるバネ支持ピン139が、該基台部123の軸心に対して直交するウエビング引出方向へ立設されている。また、ロックアーム108のバネ支持ピン139に対向する側壁には、センサスプリング109の他端側が嵌め込まれるバネ支持ピン141が立設されている。
従って、図10乃至図13に示すように、各バネ支持ピン139、141にセンサスプリング109の両端を嵌め込むことによって、ロックアーム108は支持ボス135の軸心に対してウエビング引出方向側(図12中、反時計方向である)へ回動するように所定荷重で付勢される。そして、ロックアーム108は、クラッチ111のクラッチギヤ143に係合する係合爪145側の端縁部が、ロッキングギヤ107の基台部123から半径方向外側に突出するように形成されたストッパ146に当接されている。
一方、後述のようにロックアーム108がセンサスプリング109の付勢力に抗してウエビング巻取方向(図12中、時計方向である)へ回動されてクラッチギヤ143に係合した場合には、係合爪145の係合部とは反対側の端縁部が、ロッキングギヤ107の底面部121に立設された断面紡錘形の回り止め147と所定隙間(例えば、隙間約0.3mmである。)を形成するように構成されている。
また、図10乃至図15に示すように、クラッチ111はロッキングギヤ107とメカニズムカバー97とに挟まれた状態で、メカニズム収容部113に一定の回転範囲内で回転可能に収容される。このクラッチ111のロッキングギヤ107側には、貫通孔127に対して同軸に、ロッキングギヤ107のロッキングギヤ歯107Aが外周部に形成された円環状のリブの内周径よりも少し小さい外径を有する円環状のリブ部149が立設されている。
このリブ部149の内周面には、ロックアーム108の係合爪145が係合するクラッチギヤ143が形成されている。このクラッチギヤ143は、ロッキングギヤ107が、貫通孔127の軸心に対してウエビング引出方向への回転した時のみ、ロックアーム108の係合爪145と係合するように形成されている。
また、クラッチ111の略円板状の板部126の外周部には、リブ部149を囲むように円環状の外側リブ部151が立設されている。また、この外側リブ部151のラチェットギヤ35側の端縁部には、貫通孔127の中心軸に対して半径方向外側へ延出されると共に、ラチェットギヤ35側へ少し傾斜するように延出されたフランジ部153がほぼ全周に渡って形成されている。
また、外側リブ部151のパウル23に対向する角部(図10中、左下角部である。)には、外側リブ部151の外周面から鉛直方向下方(図10中、下方向である。)へ延出されたガイドブロック部157が設けられている。このガイドブロック部157には、パウル23の各係合歯23A、23Bを含む先端部の側面に立設された案内ピン42がラチェットギヤ35側から遊嵌される略細長状のガイド溝142が形成されている。このガイド溝142は、図10に示すように、メカニズムカバー97側の端面部が閉塞されている。
また、ガイド溝142は、図13に示すように、クラッチ111のパウル23に対向する角部に、ウエビング引出方向(図13中、上下方向である。)とほぼ平行な長溝状に形成されている。これにより、クラッチ111がウエビング引出方向(図13中、反時計方向である。)へ回動された場合には、案内ピン42がガイド溝142に沿って移動され、パウル23の各係合歯23A、23Bがラチェットギヤ35のラチェットギヤの歯35Aへ近づくように回動される。
また、図10乃至図15に示すように、クラッチ111の外側リブ部151の下端縁部(図10中、下端縁部である。)には、ガイドブロック部157のラチェットギヤ35側端面部からセンサ収容部114の上方(図11中、上方向である。)に対向する部分まで、フランジ部153から半径方向外側へ略円弧状に延出された板状の延出部158が形成されている。また、延出部158のガイドブロック部157に対して反対側の端縁部の近傍位置には、パイロットレバー112の円筒状の軸部161に嵌挿される細い円柱状の取付ボス163が、外側リブ部151の高さとほぼ同じ高さでメカニズムカバー97側へ立設されている。
ここで、図12及び図13に示すように、パイロットレバー112は、円筒状の軸部161と、板状の係合爪部112Aと、薄板状の受け板部148と、薄板状の連結板部164とから構成されている。軸部161の軸方向長さは、延出部158に立設された取付ボス163の高さとほぼ同じ寸法に形成されている。また、板状の係合爪部112Aは、ロッキングギヤ107側へ先端部が斜めに屈曲された回動軸方向視略L字形に形成されている。また、板状の係合爪部112Aは、パイロットレバー112が自重により回動して、鉛直方向下方への回転規制がされた場合に、ほぼ水平になるように、軸部161の外周面からガイド溝142側へ、該軸部161の長さよりも短い幅で、所定長さ突設されている。
また、薄板状の受け板部148は、係合爪部112Aに対向するように軸部161の外周面から接線方向ガイド溝142側へ突設され、先端部が係合爪部112Aの先端側とほぼ平行になるように斜めに曲げられている。また、薄板状の連結板部164は、係合爪部112Aと受け板部148の先端部を連結するように形成されている。
また、係合爪部112Aの基端部の近傍には、パイロットレバー112のロッキングギヤ107側方向への回転、つまり、鉛直方向上側への回転を規制する上方向回り止め部165が、軸部161の外周面から半径方向外側へ突設されている。また、上方向回り止め部165は、係合爪部112Aの幅とほぼ同じ幅寸法で、係合爪部112Aの基端部に対してほぼ直角になるように所定高さ(例えば、高さ約1.5mmである。)突設されている。
また、軸部161の受け板部148に対して接線方向反対側には、パイロットレバー112のセンサレバー53側方向への回転、つまり、鉛直方向下側への回転を規制する下方向回り止め部166が、軸部161の外周面から半径方向外側へ突設されている。また、この下方向回り止め部166は、軸部161のラチェットギヤ35に対して反対側の端面側から受け板部148の回転軸方向の幅よりも狭い回転軸方向の幅寸法で、受け板部148の基端部の反対側に所定高さ(例えば、高さ約1.5mmである。)突設されている。
また、図12乃至図15に示すように、延出部158の取付ボス163に対向する端縁部には、パイロットレバー支持ブロック171が外側リブ部151とほぼ同じ高さでメカニズムカバー97側へ突設されている。また、パイロットレバー支持ブロック171の取付ボス163に対向する内側面は、取付ボス163と同軸で、且つ、パイロットレバー112の軸部161の外周面の半径よりも少し大きい(例えば、約0.1mm大きい。)曲率半径の正面視略半円形状の滑らかな曲面に形成されている。
また、外側リブ部151のパイロットレバー112の係合爪部112Aに対向する位置には、鉛直方向上下に貫通する開口部172が、周方向所定幅で、板部126の端縁部よりも内側まで所定寸法切り欠かれて形成されている。この開口部172は、係合爪部112Aがセンサレバー53のロック爪53Aに押圧されて回動された場合に、開口部172内に進入してロッキングギヤ歯107Aに係合可能に形成されている。
そして、図12乃至図14に示すように、パイロットレバー112が、自重により鉛直方向下側(図13中、下方向である。)へ回動した場合には、下方向回り止め部166がパイロットレバー支持ブロック171に当接して、鉛直方向下側(図13中、下方向である。)への回転角度が規制される。また、通常時には、パイロットレバー112の受け板部148とセンサレバー53のロック爪53Aとの間に隙間が形成されている。
また、センサレバー53が鉛直方向上側(図13中、上方向である。)へ回動されて、ロック爪53Aによってパイロットレバー112が鉛直方向上側へ回動された場合には、パイロットレバー112の係合爪部112Aが、ロッキングギヤ107に当接して、ロッキングギヤ歯107Aに係合する。また、パイロットレバー112の係合爪部112Aがロッキングギヤ歯107Aに係合された状態で、ロッキングギヤ107がウエビング引出方向(図13中、反時計方向である。)へ回転した場合には、係合爪部112Aには、取付ボス163側方向の荷重が加わる。
また、図10、図12、図13、及び図15に示すように、延出部158のガイドブロック部157側の端縁部には、バネ取付ピン173が、ガイドブロック部157と所定隙間(例えば、隙間約4mmである。)を形成して、延出部158の幅方向(図13中、上下方向である。)略中央部に、外側リブ部151の高さよりも少し低い高さで立設されている。
また、図12及び図13に示すように、クラッチ111のバネ取付ピン173に捩りコイルバネ48の第1腕部48Aの先端に形成された取付部48Dを取り付けた状態で、捩りコイルバネ48の第2腕部48Bの略U字形に折り曲げられた先端部を、第1腕部48Aと第2腕部48Bとの相対的な角度を少し広げながら、ハウジング11の側壁部12に形成された取付孔46に挿入する。
これにより、クラッチ111は、ガイド溝142に遊嵌されたパウル23の案内ピン42が、クラッチ111の回転半径方向で最もラチェットギヤ35から離反する位置にある端縁部(図13中、ガイド溝142の下側端縁部である。)に当接する状態の回転姿勢になるように、捩りコイルバネ48によって回動付勢され、ウエビング引出方向とは反対方向に回転付勢される。
つまり、捩りコイルバネ48は、クラッチ111がウエビング引出方向(図13中、反時計方向である。)へ回動した際に、第1腕部48Aと第2腕部48Bとの相対的な角度が広げられるのに伴って発生する、弾性連結部48Cによるウエビング巻取方向への回動付勢力によって、クラッチ111を図13に示す通常時の基準回転姿勢になるようにウエビング巻取方向(図13中、時計方向である。)へ回動付勢する付勢部材である。また、捩りコイルバネ48は、クラッチ111のガイド溝142を介してパウル23をラチェットギヤ35から離反する方向へ誘導する。
また、図14に示すように、パウル23は、通常時には、ガイド溝142において、クラッチ111の半径方向で最もラチェットギヤ35から離反する位置にある端縁部(図12中、ガイド溝142の下側端縁部である。)に、パウル23の案内ピン42が当接して回動を規制される。このため、パウル23のラチェットギヤ35に対して反対側の側面が、側壁部12に形成された切欠部38内に挿通された押圧部材30のボス30Cに当接した状態又は近傍に位置した状態で保持される。
[ロック機構の動作]
次に、巻取ドラムユニット6のウエビング引出方向への回転をロックするロック機構10の動作について図12乃至図14に基づいて説明する。ここで、ロック機構10は、ウエビング3の急な引き出しに対して作動する「ウエビング感応式ロック機構」と、車両の揺れや傾きなどに起因して生ずる加速度に感応して作動する「車体感応式ロック機構」との2種類のロック機構として動作する。また、「ウエビング感応式ロック機構」および「車体感応式ロック機構」では、共にパウル23の動作は共通である。
[ウエビング感応式ロック機構の動作説明]
先ず、「ウエビング感応式ロック機構」のロック動作について図12乃至図14に基づいて説明する。図12乃至図14に示すように、ロックアーム108は、ロッキングギヤ107の支持ボス135によって回動自在に支持されているため、ウエビング3の引出加速度が所定加速度(例えば、約2.0Gである。尚、1G≒9.8m/s2とする。)を超えた場合には、ロッキングギヤ107のウエビング引出方向(図13中、反時計方向である。)への回転に対してロックアーム108に慣性遅れが生じる。
このため、ロッキングギヤ107のストッパ146に当接していたロックアーム108は、センサスプリング109の付勢力に抗して初期位置を維持するため、当該ロッキングギヤ107に対して支持ボス135を中心に時計方向に回動され、回り止め147の近傍まで回動される。そのため、ロックアーム108の係合爪145は、ロッキングギヤ107の回転軸に対して半径方向外側へ回動されて、クラッチ111のクラッチギヤ143に係合する。
そして、ウエビング3の引き出しが所定加速度を超えて継続された場合には、ロッキングギヤ107が更にウエビング引出方向へ回転されるため、ロックアーム108の係合爪145は、クラッチギヤ143に係合した状態で、ウエビング引出方向へ回動される。
従って、ロックアーム108によってクラッチギヤ143がウエビング引出方向へ回動される。このため、クラッチ111は、バネ取付ピン173に第1腕部48Aの先端部が取り付けられた捩りコイルバネ48によるウエビング巻取方向への回動付勢力に抗して、ロッキングギヤ107のリブ125の軸心回り、つまり、回転軸部119の軸心回りにウエビング引出方向(図13中、反時計方向である。)へ回動される。つまり、クラッチ111は、第1腕部48Aと第2腕部48Bとの相対的な角度の広がりに伴って発生する弾性連結部48Cによるウエビング巻取方向への回動付勢力に抗して、回転軸部119の軸心回りにウエビング引出方向へ回動される。
これにより、クラッチ111のウエビング引出方向への回動に伴って、パウル23の案内ピン42は、当該クラッチ111のガイド溝142によって案内されるため、当該パウル23はラチェットギヤ35側へ回動される。このため、パウル23の案内ピン42は、当該クラッチ111のガイド溝142によって更に案内されて、当該パウル23はラチェットギヤ35に係合される。これにより、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされる。
[車体感応式ロック機構の動作説明]
次に、「車体感応式ロック機構」の動作について図12乃至図14に基づいて説明する。図12乃至図14に示すように、車両加速度センサ28の球状体の慣性質量体52は、センサーホルダ51のすり鉢状の底面部に載置されているため、車体の揺れや傾きなどによる加速度が所定加速度(例えば、約2.0Gである。)を超えた場合には、センサーホルダ51の底面部を移動してセンサレバー53を鉛直方向上側へ回動させる。
このため、センサレバー53のロック爪53Aが、クラッチ111の延出部158に立設された取付ボス163に回転自在に取り付けられているパイロットレバー112の受け板部148に当接して、当該パイロットレバー112を鉛直方向上側へ回動させる。従って、パイロットレバー112は取付ボス163の軸心回りに時計方向に回動され、当該パイロットレバー112の係合爪部112Aは、クラッチ111の開口部172内に進入して、ロッキングギヤ107の外周部に形成されたロッキングギヤ歯107Aに係合する。このとき、上方向回り止め部165とパイロットレバー支持ブロック171との間には、所定隙間(例えば、隙間約0.1mmである。)が形成されている。
そしてパイロットレバー112がロッキングギヤ107のロッキングギヤ歯107Aに係合した状態で、ウエビング3が引き出された場合には、当該ロッキングギヤ107がウエビング引出方向(図13中、反時計方向である。)へ回動される。また、ロッキングギヤ107のウエビング引出方向への回転は、パイロットレバー112、取付ボス163及びパイロットレバー支持ブロック171を介してクラッチ111へ伝達される。
このため、ロッキングギヤ107のウエビング引出方向への回転に伴って、当該クラッチ111は、バネ取付ピン173に第1腕部48Aの先端部が取り付けられた捩りコイルバネ48によるウエビング巻取方向への回動付勢力に抗して、ロッキングギヤ107のリブ125の軸心回り、つまり、回転軸部119の軸心回りにウエビング引出方向へ回動される。つまり、クラッチ111は、第1腕部48Aと第2腕部48Bとの相対的な角度の広がりに伴って発生する弾性連結部48Cによるウエビング巻取方向への回動付勢力に抗して、回転軸部119の軸心回りにウエビング引出方向へ回動される。
これにより、クラッチ111のウエビング引出方向への回動に伴って、パウル23の案内ピン42は、当該クラッチ111のガイド溝142によって案内されるため、当該パウル23はラチェットギヤ35側へ回動される。このため、パウル23の案内ピン42は、当該クラッチ111のガイド溝142によって更に案内されて、当該パウル23はラチェットギヤ35に係合される。これにより、巻取ドラムユニット6の回転がロックされてウエビング3の引き出しがロックされる。
[プリテンショナユニットの概略構成]
次に、プリテンショナユニット7の概略構成について図4、図5、図8、図16乃至図22に基づいて説明する。図16及び図17はプリテンショナユニット7の分解斜視図である。図18は移動部材の斜視図である。図19はカバー部材の内側斜視図である。図20はプリテンショナユニット7の内部構造を示す断面図である。図21はプリテンショナユニット7の通常時の状態を示す説明図である。図22は図21に対応するパウル23の通常時の状態を示す説明図である。
プリテンショナユニット7は、車両衝突時等の緊急時に巻取ドラム65をウエビング巻取方向に回転させて、ウエビング3の弛みを除去し、乗員を座席にしっかりと拘束するように構成されている。
図4、図5、図8、図16乃至図21に示すように、プリテンショナユニット7は、ガス発生部材181と、パイプシリンダ182と、ピストン183と、ピニオンギヤ185と、クラッチ機構186と、保持プレート187と、カバー部材188とを備えている。
ガス発生部材181は、火薬等のガス発生剤を含んでおり、図示省略の制御部からの着火信号によりガス発生剤を着火させて当該ガス発生剤の燃焼でガスを発生させるように構成されている。
また、パイプシリンダ182は、直線状のピストン案内筒部182Aの一端部にガス導入部182Bが連接されたL字状の筒部材に形成されている。このガス導入部182Bにはガス発生部材181が収納される。従って、ガス発生部材181により発生したガスは、ガス導入部182Bからピストン案内筒部182A内に導入される。また、ピストン案内筒部182Aのガス導入部182Bに対して直交する側面部における長手方向中間部には、開口部189が形成され、ピニオンギヤ185のピニオンギヤ歯185Aの一部が配設される。
このパイプシリンダ182は、断面略U字形の保持プレート187の奥側に下側から嵌入されて、ハウジング11の側壁部13に当接して固定されるベースプレート部187Aと、奥側の断面半円弧状の背板部187Bと、外側のカバープレート部187Cとによって保持プレート187の奥側に弾性的に挟持される。そして、パイプシリンダ182は、保持プレート187の開放側から奥側のパイプシリンダ182側へ嵌入されて係止されたカバー部材188によって保持プレート187の奥側方向へ押圧された状態で、各ネジ15によって側壁部13の外側面に取り付け固定される。
また、ピストン案内筒部182Aの上端部には、プリテンショナユニット7を側壁部13に取り付けると共に、ピストン183の抜け止め及びパイプシリンダ182の抜け止め、回転止めとして機能するストッパーピン16を挿通可能な一対の貫通孔182Cが相対向して形成されている。
ピストン183は、スチール材等の金属部材で形成されて、ピストン案内筒部182Aの上端側から挿入可能な断面略長方形状で、全体として長尺状の形状を有している。また、ピストン183のピニオンギヤ185側の側面には、ピニオンギヤ歯185Aに噛合するラック183Aが形成されている。また、ピストン183のガス発生部材181側の端面は、ピストン案内筒部182Aの断面形状に応じた円形端面183Bに形成されている。この円形端面183Bには、ゴム材等によって形成されたシールプレート191が取り付けられている。
このピストン183は、プリテンショナユニット7が作動する前、つまり、ガス発生部材181によりガスが発生しない通常時の待機状態の場合には、ラック183Aがピニオンギヤ歯185Aと非噛合状態となる位置まで、ピストン案内筒部182Aの奥側に挿入配置される。また、ピストン案内筒部182Aの奥側端縁部には、通常時にはピストン183のガス発生部材181側の端部外周面によって閉塞されるガス抜き孔182Dが、カバー部材188の下端部に対向するように設けられている。
ピニオンギヤ185は、スチール材等で形成された略円筒状部材であり、その外周部にはラック183Aに噛合可能なピニオンギヤ歯185Aが形成されている。また、ピニオンギヤ歯185Aの軸心方向におけるカバープレート部187C側の端部から外側方向に延出される円筒状の支持部185Bが形成されている。この支持部185Bは、ピニオンギヤ歯185Aの歯底円の直径を外径とすると共に、カバープレート部187Cの略中央部に形成された外側軸受孔192に回転可能に挿入されて、当該外側軸受孔192から僅かに外側へ突出する長さに形成されている。
また、ピニオンギヤ歯185Aの軸心方向ベースプレート部187A側の端部には、ピニオンギヤ歯185Aの歯先円の直径よりも若干大きい外径のフランジ状に形成されたフランジ部193が設けられている。更に、このフランジ部193から軸心方向巻取ドラムユニット6側へ、フランジ部193の外径よりも少し小さい外径で略円筒状に突出されるボス部185Dが設けられ、当該フランジ部193と所定高さ(例えば、ベースプレート部187Aの板厚にほぼ等しい高さである。)の段差が形成されている。
また、ボス部185Dの基端部には、フランジ部193とほぼ同じ外径で、当該フランジ部193に対してベースプレート部187Aの板厚にほぼ等しい隙間を形成するようにボス部185Dの外周面から半径方向外側へ全周に渡ってフランジ状に延出されたフランジ部194が設けられている。また、このボス部185Dのフランジ部194よりも軸心方向巻取ドラムユニット6側の外周面には、フランジ部194の外径よりも若干小さい外径を有する3個ずつのスプラインが、中心角120度間隔で軸心方向全幅に渡って形成されている。
図16及び図17に示すように、断面略U字形の保持プレート187の縦長平板状のベースプレート部187Aは、上下方向中央部が巻取ドラム65のフランジ部68をほぼ覆うように略円形に形成されると共に、その中央部にはピニオンギヤ185のピニオンギヤ歯185A及びフランジ部193を挿通可能な内側軸受孔195が形成されている。
図16及び図17に示すように、断面U字形の背板部187Bは、ベースプレート部187Aの側縁部から連続して形成されて、パイプシリンダ182のピストン案内筒部182Aの外径にほぼ等しい溝幅を有するように形成されている。また、背板部187Bの上部の相対向する側面部には、パイプシリンダ182の各貫通孔182Cに対向する位置に、ストッパーピン16が挿通される一対の貫通孔197が形成されている。
また、カバープレート部187Cは、背板部187Bの巻取ドラムユニット6の回転軸方向外側の側縁部から、ベースプレート部187Aに対して平行になるように連続して形成され、ベースプレート部187Aの上下端縁部とほぼ同じ幅の正面視縦長四角形の板状に形成されると共に、その中央部にはピニオンギヤ185の支持部185Bを挿通可能な外側軸受孔192が形成されている。
図16及び図17に示すように、クラッチ機構186は、スチール材等で形成されたパウルベース201と、スチール材等で形成された3個のクラッチパウル202と、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されて、パウルベース201のベースプレート部187A側に当接されてクラッチパウル202を挟持する略円環状のパウルガイド203と、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されて、パウルベース201の巻取ドラム65側に当接されて、ピニオンギヤ185のボス部185Dに嵌入される略円環状のベアリング205とから構成されている。
パウルベース201の中央部には、ピニオンギヤ185のボス部185Dが嵌め込まれるようにスプラインが圧入されるスプライン溝が中心角約120度間隔で3個ずつ形成された嵌合孔206が設けられている。そして、保持プレート187の外側軸受孔192と内側軸受孔195との間に挿通されたピニオンギヤ185の、内側軸受孔195から突出したボス部185Dが、パウルガイド203及び3個のクラッチパウル202を挟んでパウルベース201の嵌合孔206に圧入されることによって、パウルベース201がピニオンギヤ185に対して相対回転不能に取り付けられる。つまり、パウルベース201とピニオンギヤ185とは一体回転するように構成されている。
また、ベアリング205の中央部には、巻取ドラム65のボス72の外径にほぼ等しい内径の貫通孔205Aが形成されている。更に、この貫通孔205Aと同一内径で、且つ、ピニオンギヤ185のボス部185Dの内径にほぼ等しい外径の円筒状の軸受部205Bが、貫通孔205Aのパウルベース201側の周縁部から連続して突出するように立設されている。
そして、ピニオンギヤ185のボス部185Dが、パウルベース201の嵌合孔206に圧入された状態で、ベアリング205の中央部に立設された円筒状の軸受部205Bが、円筒状に形成されたボス部185D内に嵌め込まれて、ポリアセタール等の合成樹脂材により形成されたベアリング205が取り付けられる。
また、図8に示すように、ベアリング205には、巻取ドラム65のプリテンショナユニット7側の端面部中央位置に立設されたボス72が回転可能に嵌入される。パウルベース201には、各クラッチパウル202が収容姿勢で支持されている。収容姿勢は、各クラッチパウル202の全体をパウルベース201の外周縁部内に収めた姿勢である。
図16及び図17に示すように、パウルガイド203は、略円環状の部材であり、パウルベース201及び各クラッチパウル202に対向する位置に配設されている。このパウルガイド203のベースプレート部187A側の側面には、細長い3個の位置決突起207が半径方向に沿って中心角約120度間隔で突設されている。そして、各位置決突起207がベースプレート部187Aの内側軸受孔195の周縁部に形成された各位置決め孔208に嵌入され、待機状態においては、パウルガイド203がベースプレート部187Aに回転不能な状態で取付固定される。
これにより、クラッチ機構186とピニオンギヤ185とが、ベースプレート部187Aに配設固定されると共に、ピニオンギヤ185のピニオンギヤ歯185Aが、図20に示す位置に常に位置決め固定される。また、パウルガイド203のベースプレート部187A側の側面に立設された細長板状のピストン位置決めピン209が、内側軸受孔195に挿通されて、ピストン案内筒部182Aの開口部189内に位置するピストン183の上側端面、つまり、移動方向側の端面に当接される。
また、図8及び図20に示すように、パウルガイド203がベースプレート部187Aに回転不能な状態で取付固定された際には、ピニオンギヤ185の回転軸と巻取ドラムユニット6の回転軸とが一致する。また同時に、ピニオンギヤ185の支持部185Bの外周面が、カバープレート部187Cの外側軸受孔192に当接され、また、ボス部185Dの外周面がベースプレート部187Aの内側軸受孔195に当接されて、当該ピニオンギヤ185が回転可能に支持される。また、ピニオンギヤ歯185Aの一部が、ピストン案内筒部182Aの開口部189内に配設され、ピストン案内筒部182Aの開口部189内に位置するピストン183の上側端面、つまり、移動方向側の端面に当接されている。
また、パウルガイド203のパウルベース201側の面には、各クラッチパウル202に対応して各姿勢変更用突起部203Aが突設されている。そして、プリテンショナユニット7の作動によってパウルベース201とパウルガイド203とが相対回転すると、各クラッチパウル202が姿勢変更用突起部203Aにそれぞれ当接して、収容姿勢から係止姿勢に姿勢変更されるようになっている。係止姿勢は、クラッチパウル202の先端部をパウルベース201及びパウルガイド203の外周縁部外方へ突出させた姿勢である。
また、各クラッチパウル202が係止姿勢に姿勢変更すると、巻取ドラム65に係合する。具体的には、各クラッチパウル202がパウルベース201及びパウルガイド203の外周縁部外方へ突出した場合には、巻取ドラム65のフランジ部68の内周面に形成された内歯ギヤ69に係合可能とされている。
そして、各クラッチパウル202が係止姿勢に姿勢変更すると、各クラッチパウル202の先端部が内歯ギヤ69に係合し、これにより、パウルベース201が巻取ドラム65を回転させるようになる。尚、クラッチパウル202と内歯ギヤ69との係合は、巻取ドラム65をウエビング巻取方向へ回転させる、一方向のみへの係合構造である。
また、一度係合すると各クラッチパウル202が互いに変形を伴って内歯ギヤ69に噛み込むので、係合後、巻取ドラム65がウエビング引出方向へ回転すると、ピニオンギヤ185を、プリテンショナユニット7が作動する際とは逆の方向に、クラッチ機構186を介して回転させて、ピストン183を作動方向とは逆方向に押し戻す。そして、ピストン183のラック183Aと、ピニオンギヤ185のピニオンギヤ歯185Aとの噛み合いが外れる位置までピストン183が押し戻されると、ピニオンギヤ185はピストン183から外れるので、巻取ドラム65はピストン183に対して自由回転できるようになる。
図8、図16乃至図20に示すように、カバー部材188は、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されている。また、カバー部材188は、パイプシリンダ182のピストン案内筒部182Aのほぼ全長に渡って相対向する縦長の略箱体状に形成されて、保持プレート187のベースプレート部187Aとカバープレート部187Cとの間に嵌入されている。カバー部材188は、ベースプレート部187A側の側面部が開放されると共に、該ベースプレート部187A側の側面部が、ベースプレート部187Aで全面を覆われている。
また、カバー部材188のピニオンギヤ185に対向する上下方向略中央部分は、ピニオンギヤ歯185Aの回転軸方向の幅とほぼ同じ厚さに形成されると共に、ピニオンギヤ歯185Aの外径よりも少し大きい深さと上下高さで、パイプシリンダ182に対して内側方向へ側面視略U字状に窪むように形成されたギヤ収納部211が設けられている。ギヤ収納部211のカバープレート部187Cに対向する底面部は、ピニオンギヤ歯185Aの外径よりも少し大きい内径で半円形状に切り欠かれている。
また、カバー部材188内のギヤ収納部211から下側の部分には、略細長板状の移動部材216がカバー部材188の長手方向、つまり、図16及び図20中、上下方向に移動可能にピストン案内筒部182Aに対向するように配置されている。図18及び図20に示すように、移動部材216は、ポリアセタール等の合成樹脂で形成されて、略細長板状の本体部216Aと、本体部216Aの上端部からピニオンギヤ185側へ突出してピニオンギヤ歯185Aに噛合可能な断面略三角形状の突出部216Bと、本体部216Aの下端部から全幅に渡って本体部216Aの幅よりも大きい幅でピストン案内筒部182A側及び下方へ突出するように形成された略5角形状の当接部216Cと、から構成されている。
更に、移動部材216は、当接部216Cのピニオンギヤ185側の上側側縁部から上側方向へ本体部216Aに対して平行に所定長さ延出された後、ピニオンギヤ185側へ斜め外側方向へ延出されて、本体部216Aに対して内側方向へ弾性変形可能な係止片216Dが形成されている。また、移動部材216は、当接部216Cのベースプレート部187Aに対して反対側の端縁部、つまり、図18中、奥側の端縁部から全幅に渡って下方向に所定厚さ、例えば、厚さ約2mmで略半円板状に延出されて、中央部に本体部216Aの幅方向に長い横長略四角形状の位置決孔216Eが形成された位置決め部216Fが設けられている。
図19及び図20に示すように、カバー部材188内のギヤ収納部211の下側には、ピニオンギヤ185の回転軸方向外側の底面部から上下方向に短い案内リブ217と上下方向に長い案内リブ218とが、移動部材216の本体部216Aの幅にほぼ等しい距離で相対向するように立設されている。また、案内リブ217よりも少し下側には、案内リブ219が、移動部材216の位置決め部216Fの幅、つまり、当接部216Cの幅にほぼ等しい距離で案内リブ218に相対向するように立設されている。従って、各案内リブ217、218、219によって、移動部材216の移動を上下方向に案内するガイド部221が構成される。
案内リブ219のギヤ収納部211側の上端面から少し下側、例えば、約5mm下側には、移動部材216の係止片216Dの先端が係合可能なように、例えば、約1.5mmの深さで段差状に窪んだ係合部222が形成されている。また、案内リブ218と案内リブ219との間の上下方向略中央部には、移動部材216の位置決孔216Eに嵌入される位置決めピン223が立設されている。
従って、図20に示すように、移動部材216の本体部216Aを各案内リブ217、218間に嵌入すると共に、本体部216Aと係止片216Dを各案内リブ218と219間に嵌入し、更に、位置決め部216Fの位置決孔216Eに位置決めピン223を嵌入することによって、移動部材216がカバー部材188のガイド部221に保持されて通常位置に位置する。また、移動部材216の突出部216Bは、ピニオンギヤ歯185Aに噛み合って、ピニオンギヤ歯185Aに当接されている、又はピニオンギヤ歯185Aの近傍に位置している。尚、移動部材216の突出部216Bは、ピニオンギヤ歯185Aに噛み合って、ピニオンギヤ歯185Aに当接されるように配置されるのが好ましい。
また、図8、図16及び図17に示すように、保持プレート187のベースプレート部187Aには、側壁部13の支持溝57Aに対向する位置に、連結部材29のアーム部29Bが挿通される長孔状の挿通孔225が形成されている。保持プレート187が側壁部13に取り付けられた際に、挿通孔225の外周部が支持溝57Aの貫通孔57側を塞ぐように支持溝57Aと重なることで、略V字状の支持溝57Aの奥に回転可能に支持される連結部材29における、直線部29Cの貫通孔57側への移動が規制される(図8参照)。
また、図19及び図20に示すように、カバー部材188の係合部222の下方には、ベースプレート部187Aの挿通孔225から突出する連結部材29の直線部29C及びアーム部29Bの基端部が嵌入される断面が半円形状の挿入溝226が、ピニオンギヤ185の回転軸方向に対して平行に形成されている。
挿入溝226の奥側端面は、位置決めピン223の先端部よりも少し高くなるように、例えば、0.5mm〜2mm程度高くなるように形成されている。また、挿入溝226から位置決めピン223側方向に沿って、連結部材29のアーム部29Bの直径にほぼ等しい間隔で幅広の支持リブ227と隣り合う細長い一対の支持リブ228とが相対向するように立設されている。
従って、図20及び図21に示すように、ベースプレート部187Aの挿通孔225から突出する連結部材29の直線部29C及びアーム部29Bの基端部を挿入溝226に嵌入しつつ、アーム部29Bを支持リブ227と各支持リブ228との間に嵌入する。これにより、アーム部29Bが各支持リブ227、228によって初期回転位置に保持された状態で、アーム部29Bの先端部が、通常位置に位置する移動部材216の当接部216Cの下端面に当接又は当接部216Cの下端面の近傍に位置するように配置される。
また、図22に示すように、連結部材29の折曲部29Aに連結された押圧部材30は、通常位置に位置するパウル23のラチェットギヤ35に対して反対側の側面にボス30Cが当接又は近傍に位置するように配置される。尚、押圧部材30が、通常位置に位置するパウル23のラチェットギヤ35に対して反対側の側面にボス30Cが当接するように配置され、アーム部29Bの先端部が、通常位置に位置する移動部材216の当接部216Cの下端面に当接するように配置されるのが好ましい。
また、図16、図19及び図20に示すように、カバー部材188のパイプシリンダ182側の側面部の下端部には、正面視略四角形の貫通孔231が形成されて、更に、ギヤ収納部211のベースプレート部187A側の側縁部には所定幅の切欠部232が形成されている。また、ピストン案内筒部182Aの下端部に形成されたガス抜き孔182Dとカバー部材188の下端部に形成された貫通孔187が相対向して配置され、ガス抜き孔182Dが貫通孔231を介して、ギヤ収納部211に形成された切欠部232とベースプレート部187Aとによって形成される開口部に連通される。そして、カバー部材188は、保持プレート187に挟持された状態で、凹部212の上側と凹部213の下側に厚さ方向に沿って形成された各貫通孔233に挿通される各ネジ15によって側壁部13の外側面に取り付け固定される。
また、図16、図17、図19及び図20に示すように、カバー部材188は、上端部からカバー部材188の厚さと同じ幅寸法でパイプシリンダ182側へ所定長さ延出されて、パイプシリンダ182の先端部を全面に渡って覆う平面視略U字状の平板部235が形成されている。従って、カバー部材188を保持プレート187の開放側から奥側のパイプシリンダ182側へ嵌入して配置した場合には、図20に示すように、ピストン案内筒部182Aの先端部が平板部235によってほぼ覆われる。そして、カバー部材188及びパイプシリンダ182を保持プレート187に挟持された状態で各ネジ15によって側壁部13の外側面に取り付け固定した場合には、側壁部13の上端縁部から外側方向へ延出された延出部60が平板部235及びピストン案内筒部182Aの先端部の直上に位置する。
次に、車両衝突時等において、上記のように構成されたプリテンショナユニット7が作動してウエビング3を巻き取る動作について図21乃至図34に基づいて説明する。
図21、図23及び図25に示すように、車両衝突時等において、プリテンショナユニット7のガス発生部材181が作動した場合には、発生したガスの圧力によりピストン183が、ピストン位置決めピン209を破断してピストン案内筒部182Aの先端側に向けて(矢印237方向である。)移動すると共に、ラック183Aと噛み合ったピニオンギヤ歯185Aを有するピニオンギヤ185が回転する(矢印238方向である。)。
また、ピニオンギヤ歯185Aと噛み合った突出部216Bを有する移動部材216は、ピニオンギヤ185の回転に伴って、下方に向けて(矢印239方向である。)押圧される。このため、移動部材216は、位置決孔216Eに嵌入された位置決めピン223を破断して、本体部216A、当接部216C及び位置決め部216Fを各案内リブ217〜219によって案内されて下方へ直線的に移動する。そして、移動部材216の突出部216Bが、ピニオンギヤ歯185Aの刃先円よりも半径方向外側に位置するように押し出される。
その結果、移動部材216の係止片216Dは、本体部216Aに対して内側方向へ弾性変形されて、案内リブ219側へ移動する。そして、係止片216Dの先端部が、案内リブ219のギヤ収納部211側の上端面から少し下側に形成された係合部222内に進入する。また、移動部材216の当接部216Cの下端面がアーム部29Bの先端部を押圧して、各支持リブ228を破断し、アーム部29Bを連結部材29の直線部29Cを軸中心に下方へ回動させる(矢印241方向である。)。
これにより、図21、図23に示すアーム部29Bの回動に伴って、図22、図24に示すように、連結部材29の折曲部29Aに連結された押圧部材30は、ボス30Bを中心にラチェットギヤ35側へ(矢印242方向である。)回動する。このため、押圧部材30は、ボス30Cを介してパウル23をラチェットギヤ35側へ(矢印243方向である。)回動させて、図24に示すように各係合歯23A、23Bをラチェットギヤの歯35Aに係合させる。
そして、移動部材216が下方に移動し続けることにより、図25に示すように更にアーム部29Bが回動する。このとき、連結部材29の折曲部29Aに連結された押圧部材30は、既にパウル23をラチェットギヤの歯35Aに係合する位置まで回動させているため、連結部材29の直線部29C(連結部)が周方向に弾性的に捻れ変形する。
また、図21、図23及び図25に示すように、ピニオンギヤ185が回転すると、当該ピニオンギヤ185と一緒にパウルベース201が回転する。この際、パウルガイド203は、各位置決突起207がベースプレート部187Aの内側軸受孔195の周縁部に形成された各位置決め孔208に嵌入されているので、当該パウルガイド203に対してパウルベース201が相対回転することになる。このため、各クラッチパウル202が、パウルガイド203に形成された各姿勢変更用突起部203Aに当接して、各クラッチパウル202が係止姿勢に変更される。そして、この状態から各クラッチパウル202が各姿勢変更用突起部203Aを押圧することで、パウルガイド203の各位置決突起207が破断され、パウルガイド203がパウルベース201と一体的に回転する。
これにより、各クラッチパウル202の先端部が、巻取ドラム65の内歯ギヤ69に係合して、ピストン183がピストン案内筒部182Aの先端側へ移動しようとする力が、ピニオンギヤ185、パウルベース201、各クラッチパウル202及び内歯ギヤ69を介して巻取ドラム65に伝達されて、図24、図26に示すように巻取ドラム65とラチェットギヤ35が一体的にウエビング巻取方向(矢印245方向である。)へ回転駆動され、ウエビング3が巻取ドラム65に巻き取られる。
尚、パウル23とラチェットギヤ35のラチェットギヤの歯35Aとは、巻取ドラムユニット6のウエビング3引き出し方向への回転を抑止し、ウエビング3巻き取り方向への回転を許容するように、噛み合う形状とされている。従って、プリテンショナユニット7が作動している際に、パウル23の各係合歯23A、23Bがウエビング巻取方向へ回転するラチェットギヤの歯35Aに当接しても、巻取ドラム65は、ウエビング巻取方向へスムーズに回転する。
続いて、図27に示すように、移動部材216は、係止片216Dの先端部が係合部222内に進入した状態で、ピニオンギヤ歯185Aに押された慣性によって、位置決め部216Fが、案内リブ218と案内リブ219に渡って設けられた停止リブ220に当接されるまで、更に下方に向かって(矢印239方向である。)直線的に移動する。また、移動部材216の当接部216Cの下端面がアーム部29Bの先端部を押圧して、アーム部29Bを連結部材29の直線部29Cを軸中心に更に下方へ回動させる(矢印241方向である。)。
またこのとき、図28に示すように、 連結部材29の折曲部29Aに連結された押圧
部材30は、既にパウル23をラチェットギヤの歯35Aに係合する位置まで回動させているため、連結部材29の直線部29C(軸部)は、更に周方向に弾性的に捻れ変形する。そして、図29及び図31に示すように、位置決め部216Fが停止リブ220に当接して、移動部材216の下方への移動が停止すると、連結部材29の直線部29C(軸部)における周方向の捻れ変形の弾性的復元によって、アーム部29Bが上方向へ(矢印247方向である。)へ回動される。その結果、移動部材216は、係止片216Dの先端部が、案内リブ219に形成された係合部222に当接して係合するまで、各案内リブ217〜219によって案内されて、当接部216Cを介してアーム部29Bによって上方へ(矢印246方向である。)直線的に移動される。
尚、図29及び図31に示すように、移動部材216の係止片216Dの先端部が、上方に(矢印246方向である。)移動して、案内リブ219に形成された係合部222に当接して係合し、係止片216Dと係合部222とが、移動部材216の上方への移動を規制する位置規制手段として作用した際には、当接部216Cの下面に当接するアーム部29Bは、図23における押圧部材30がパウル23をラチェットギヤの歯35Aに係合させる回動位置よりも所定量下方へ回動されている。このため、図32に示す、パウル23の各係合歯23A、23Bがラチェットギヤの歯35Aに完全に係合した状態において、連結部材29の直線部29C(軸部)は、周方向へ所定量弾性的に捻れ変形して、押圧部材30をパウル23側へ(矢印242方向である。)回動付勢しており、これによりパウル23、はラチェットギヤの歯35Aに係合した状態に保持される。
また、移動部材216の係止片216Dの先端部が、上方に(矢印246方向である。)移動して、案内リブ219に形成された係合部222に当接して係合して、移動部材216がそれ以上の上方への移動を規制された際には、移動部材216の突出部216Bが、ピニオンギヤ歯185Aの刃先円よりも半径方向外側に位置している。また、ピストン183は、発生したガスの圧力によりピストン案内筒部182Aの先端側に向けて(矢印237方向である。)移動すると共に、ラック183Aと噛み合ったピニオンギヤ歯185Aを有するピニオンギヤ185がスムーズに回転する(矢印238方向である。)。
従って、図30及び図32に示すように、ピニオンギヤ185、パウルベース201、各クラッチパウル202及び内歯ギヤ69を介して、巻取ドラム65とラチェットギヤ35が一体的にウエビング巻取方向(矢印245方向である。)へ回転駆動され、ウエビング3が巻取ドラム65に巻き取られる。
また、移動部材216は、係止片216Dの先端部が係合部222に当接して係合した状態で上方への(矢印246方向である。)移動が規制されて停止している。このため、図30に示すように、パウル23の各係合歯23A、23Bがウエビング巻取方向(矢印245方向である。)へ回転するラチェットギヤの歯35Aを乗り越える際に、押圧部材30はパウル23によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動され、折曲部29Aを介して連結部材29の直線部29C(軸部)が弾性的に更に捻れ変形する。
従って、連結部材29の折曲部29Aに連結された押圧部材30は、ボス30Bを中心にラチェットギヤ35側へ(矢印242方向である。)回動付勢される。このため、パウル23の各係合歯23A、23Bがラチェットギヤの歯35Aを乗り越えると、図32に示すように押圧部材30は、ボス30Cを介してパウル23をラチェットギヤ35側へ(矢印243方向である。)回動させて、各係合歯23A、23Bをラチェットギヤの歯35Aに再度、係合させる。
その後、図33に示すように、ピストン183は、ラック183Aの先端部の背面に形成された段差部183Cがストッパーピン16に当接して、上方への移動が停止するため、巻取ドラム65及びラチェットギヤ35の回転が停止して、ウエビング3の巻き取りが終了する。つまり、プリテンショナユニット7の作動が終了する。
また、図34に示すように、連結部材29の直線部29C(連結部)は、図32に示す状態と同様に、周方向へ所定量弾性的に捻れ変形しており、押圧部材30は、連結部材29の直線部29C及び折曲部29Aを介して、ボス30Bを中心にラチェットギヤ35側へ(矢印242方向である。)回動付勢される。このため、押圧部材30は、ボス30Cを介してパウル23をラチェットギヤ35側へ(矢印243方向である。)回動させて、パウル23の各係合歯23A、23Bとラチェットギヤの歯35Aとの係合を維持する。
[エネルギー吸収]
続いて、車両衝突時等でプリテンショナユニット7の作動後、パウル23がラチェットギヤの歯35Aに係合可能な状態で保持されているので、乗員が車両に対して相対的に前側へ移動してウエビング3に荷重が掛かった場合には、即パウル23がラチェットギヤの歯35Aに係合結合して乗員を拘束し、これによりウエビング3に引出荷重が作用する。そして、ウエビング3に作用する引出荷重が予め設定された所定値を超えた場合には、ラチェットギヤ35はパウル23によって回転が阻止されているため、巻取ドラム65に作用するウエビング引出方向への回転トルクによって、トーションバー66の軸部66Cの捻れ変形が開始される。このトーションバー66の軸部66Cの捻れ変形に伴って巻取ドラム65がウエビング引出方向に回転しつつ、ウエビング3が引き出され、「第1のエネルギー吸収機構」としてのトーションバー66の捻れ変形による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
また同時に、巻取ドラム65が回転された場合には、パウル23とラチェットギヤ35とは係合されているため、このラチェットギヤ35と巻取ドラム65との相互間においても相対回転が生じる。それにより、巻取ドラム65の回転に伴ってワイヤ67とラチェットギヤ35との相互間においても相対回転が生じ、巻取ドラム65の保持側屈曲路77に屈曲部67Aが保持されたワイヤ67が、ラチェットギヤ35のフランジ部85の内周部と凸部84の外周部とによって形成された変形付与屈曲路を摺動案内されて、塑性変形されながら引き出される。これにより、「第2のエネルギー吸収機構」としてのワイヤ67の引き出し抵抗による衝撃エネルギーの吸収がなされる。
ここで、ガス発生部材181、パイプシリンダ182、ピストン183、シールプレート191、ピニオンギヤ185、クラッチ機構186、及び、保持プレート187は、プリテンショナ機構の一例を構成する。また、押圧部材30、連結部材29、カバー部材188、及び、移動部材216は、ロッキング機構の一例を構成する。また、係止片216Dと係合部222は、位置規制手段の一例を構成し、移動部材216とともに、回動手段の一例を構成する。また、ピニオンギヤ185は、被駆動体の一例として機能する。また、ピニオンギヤ歯185Aは、連動部の一例として機能する。また、ガス発生部材181、パイプシリンダ182、ピストン183、及び、シールプレート191は、駆動手段の一例を構成する。
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るシートベルト用リトラクタ1では、カバー部材188の内側には、移動部材216がガイド部221に嵌入されると共に、位置決孔216Eに位置決めピン223が嵌入されて位置決めされ、保持されている。また、移動部材216の当接部216Cの下端部は、連結部材29のアーム部29Bの先端部に当接又はアーム部29Bの先端部の近傍に位置している。
そして、プリテンショナユニット7の起動時に、移動部材216は、ピニオンギヤ185のピニオンギヤ歯185Aに押圧されて下方に移動し、連結部材29のアーム部29Bを下方へ回動させる。その結果、アーム部29Bが下方へ回動された場合には、回動方向において弾性的に捻れ変形可能な連結部材29の直線部29C及び折曲部29Aを介して、押圧部材30がウエビング巻取方向へ回転しているラチェットギヤ35側へ回動される。その結果、押圧部材30によって押圧されたパウル23がラチェットギヤ35のラチェットギヤの歯35Aに係合される。
また、移動部材216の係止片216Dが、係合部222に係止されて、連結部材29のアーム部29Bがパウル23をラチェットギヤ35に係合させるのに必要な回動量以上に下方へ所定量回動された状態で、移動部材216の逆方向への回動が規制される。このため、移動部材216の係止片216Dが、係合部222に係止された場合には、連結部材29の直線部29C(軸部)が周方向に弾性的に捻れ変形して、押圧部材30をパウル23側へ回動付勢する。この結果、パウル23が押圧部材30によってラチェットギヤ35側へ回動付勢されるため、パウル23をラチェットギヤ35に確実に係合した状態に保持するので、より確実にパウル23をラチェットギヤ35に係合した状態に保持することができる。
また、押圧部材30によって押圧されたパウル23の各係合歯23A、23Bがウエビング巻取方向へ回転するラチェットギヤの歯35Aを乗り越える際に、押圧部材30はパウル23によってラチェットギヤ35から離反する方向へ回動され、折曲部29Aを介して連結部材29の直線部29C(軸部)が弾性的に更に捻れ変形する。この結果、パウル23が押圧部材30によってラチェットギヤ35側との係合方向へ回動付勢された状態に保持される。
これにより、プリテンショナユニット7の作動によってウエビング3の巻き取りがスムーズに行われると共に、プリテンショナユニット7の作動完了後、即座にパウル23をラチェットギヤ35に係合させて、巻取ドラム65のウエビング3の引出方向への回転を阻止することができる。従って、従来のように、通常時に付勢力を発生可能な状態で付勢部材を保持しておく必要が無いので、移動部材216を保持するカバー部材188に必要な強度要件を低減できるため、カバー部材188、及び、移動部材216の小型化、軽量化が可能となり、従来よりもシートベルト用リトラクタ1の小型化及び軽量化を図ることができる。
また、カバー部材188の内側に、プリテンショナユニット7の起動時に移動する移動部材216と、移動する移動部材216に押圧されて所定の方向に回動する連結部材29のアーム部29Bとが、移動部材216の当接部216Cの下端部にアーム部29Bが当接又は近傍に位置するように保持され、移動した移動部材216の係止片216Dがカバー部材188の係合部222に係合することで、位置規制手段によって、移動部材216が反対方向へ移動しないように位置規制される。これにより、簡易な構造でアーム部29Bを回動させると共にアーム部29Bが回動した状態から逆方向へ回転するのを規制する回動手段の構造の簡素化が可能となり、その結果、従来よりもシートベルト用リトラクタ1の部品点数削減を図ることができる。
また、プリテンショナユニット7の作動によって、移動部材216の突出部216Bは、ピニオンギヤ185の回転に伴って、ピニオンギヤ歯185Aによって下方に向けて押圧されて移動する。その結果、移動部材216はアーム部29Bを下方に回動させて、プリテンショナユニット7の起動時に、連結部材29及び押圧部材30を介してパウル23をラチェットギヤ35に確実に係合する状態に保持することができる。
更に、連結部材29をスチール材等の線状の部材で形成し、両端を相互に約180度ずれて対向するように略直角に折り曲げることによって折曲部29Aとアーム部29Bを形成することができ、構造の更なる簡素化を図ることができる。
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。