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JP6379577B2 - 六方晶フェライト焼結体、及びこれを用いた高周波磁性部品 - Google Patents

六方晶フェライト焼結体、及びこれを用いた高周波磁性部品 Download PDF

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JP6379577B2 JP2014066298A JP2014066298A JP6379577B2 JP 6379577 B2 JP6379577 B2 JP 6379577B2 JP 2014066298 A JP2014066298 A JP 2014066298A JP 2014066298 A JP2014066298 A JP 2014066298A JP 6379577 B2 JP6379577 B2 JP 6379577B2
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Description

本発明は、数百MHzから数GHzの高周波までを含む広い周波数帯域での使用に適した六方晶フェライト焼結体、及びこの六方晶フェライト焼結体を用いたアンテナ、インダクタ、フィルタなどの高周波磁性部品に関する。
近年、携帯電話機や携帯情報端末等の無線通信機器に利用される周波数帯の高周波化が進行し、使用される無線信号周波数は、例えば携帯電話等で使用される800MHz帯から無線LAN等で使用される2.4GHz帯の高周波領域まで幅広くなっている。そのため、そのような広帯域で使用される電子部品、例えば、インダクタ、電子機器の高周波ノイズ対策用として用いられるEMIフィルタ、無線通信機器に用いられるアンテナなどに対して、特性の改善や寸法の小型化を図る目的で、高透磁率、且つ低磁気損失な磁性材料を適用する試みがなされている。
GHz帯を含む高周波領域で使用可能な軟磁性材料として、近年、スピネルフェライトよりも自然共鳴周波数が高周波となる六方晶フェライトを用いる検討がなされている。
例えば、特許文献1には、100MHzから1GHz程度の高周波まで高い透磁率を有する六方晶Z型フェライト焼結体、及びその製造方法について記載されている。
特許文献1によると、配向度の高い配向面を有し、焼結体の平均結晶粒径が4.0〜20.0μmの範囲にある六方晶Z型フェライトにおいて、配向面内方向の高い透磁率が1GHz程度の高周波まで維持されるとしている。
しかし、特許文献1では、1GHzにおいて22以上の透磁率を有する六方晶フェライト焼結体を提供することも可能とされているものの、1GHzよりも高い周波数においては透磁率実部μ´の低下が顕著であり、また透磁率虚部μ″については1GHzにおいても著しく高いため、低磁気損失な軟磁性材料の適用という見地からは好ましくないと考えられる。
また、特許文献2には、本出願人によりM型六方晶フェライトを主相として含む磁性酸化物焼結体、及びそれを用いたアンテナ、並びに無線通信機器について記載されている。
この特許文献2によると、Ba(Ti0.5Mn0.5Fe12−x19(式中のxは、3.5≦x≦7.0)で表されるM型六方晶フェライトを主相として95%以上含む磁性酸化物焼結体であって、該磁性酸化物焼結体の磁化容易軸と直交するa軸の格子定数(Å)が5.92≦a≦0.0125×x+5.89を満たす磁性酸化物焼結体においては、2GHzにおける磁気損失tanδμと誘電損失tanδεが0.01以下の十分小さい値をとり、且つ複素透磁率の実部μ´と複素誘電率の実部ε´が真空中の値よりも大きい値を取るとしている。
しかし、特許文献2では、2GHzにおける透磁率と誘電率について記載されているのみであり、この磁性酸化物焼結体が数百MHzから数GHzまでの高周波を含む広い周波数範囲において適用可能な磁性材料であるとは言えないという問題がある。
特開2008−50220号公報 特開2013−129582号公報
そこで、本発明はかかる事情に鑑み、数百MHzから数GHzの高周波までを含む幅広い周波数範囲において、低磁気損失と高透磁率を備える六方晶フェライト焼結体、及びそれを用いた高周波磁性部品を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の六方晶フェライト焼結体は、六方晶のc軸方向に磁化容易軸を有する六方晶フェライト焼結体であって、X線回折測定により2θが15°から80°の範囲で求めた結晶配向度Or=ΣI(00l)/ΣI(hkl)が0.80以上であり、磁化容易軸に垂直な方向に磁界を印加した際に得られる100MHz以上3GHz以下における磁気損失tanδμが0.010以下であり、且つ複素透磁率の実部μ´が1.50以上であることを特徴とする六方晶フェライト焼結体とする。
また、本発明の六方晶フェライト焼結体は、M型六方晶フェライトであることが好ましい。M型六方晶フェライトは他の六方晶フェライトと比較して六方晶のc軸方向の異方性磁界Hが大きいため、f=γH/2π(γはジャイロ磁気定数)で表される自然共鳴周波数fが高周波化し、高周波まで低磁気損失が維持される。
さらに、本発明の六方晶フェライト焼結体は、MAFe12−xMB19(式中、MAはBa、Sr、及びCaからなる群より選択される少なくとも一種であり、MBは、Ti、Zr及びSnからなる群より選択される少なくとも一種と、Ni、Zn、Mn、Mg、Cu及びCoからなる群より選択される少なくとも一種との等量混合物であり、xは1.5以上6.0以下である)で表されるM型六方晶フェライトであることがより好ましい。六方晶フェライト焼結体を前記組成とすることで、高周波での低磁気損失を維持しつつ、Hを効果的に減少させることができ、磁化容易軸に垂直な方向に磁場を印加した際の、μ=4πM/H(Mは飽和磁化)で表される磁化回転による透磁率を高めることができる。
また、本発明による高周波磁性部品は、本発明による前述の六方晶フェライト焼結体を用いることを特徴とし、例えば、インダクタや、ノイズ対策用として用いられるEMIフィルタ、無線通信機器に用いられるアンテナとして電子機器あるいは無線通信機器内で使用される。
本発明によれば、数百MHzから数GHzの高周波までを含む広い周波数範囲において、低磁気損失と高透磁率を備えた六方晶フェライト焼結体、及びそれを用いた高周波磁性部品を提供することができる。本発明の六方晶フェライト焼結体をインダクタ、EMIフィルタ、アンテナなどの磁性材料として適用することにより、それら電子部品を数百MHzから数GHzの高周波を含む広い周波数範囲で使用することが可能となる。
図1は、実施例と比較例における、六方晶フェライト焼結体とスピネル型フェライト焼結体の、複素透磁率の実部μ´と磁気損失tanδμの周波数特性を示すグラフである。
以下に、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
本実施形態の六方晶フェライト焼結体は、六方晶のc軸方向に磁化容易軸を有する。c軸方向に磁化容易軸を有するものであれば、M型フェライト、W型フェライト、またはZ型フェライトなどを用いることができる。一般的に知られているY型フェライト、またW型フェライトとZ型フェライトの中でCoを含むものは、六方晶のc軸に垂直な面(c面)が磁化容易方向(磁化容易面)となることが知られており、これらc面が磁化容易面となるものは、六方晶フェライトであっても本実施形態に含まれない。例えば、Coを含むZ型フェライトであるBaCoFe2441、またはCoを含むW型フェライトであるBaCoFe1627などはc面が磁化容易面となるため、本実施形態に含まれない。
本実施形態の六方晶フェライト焼結体は、必ずしも六方晶のc軸方向に磁化容易軸を有する六方晶フェライト単相である必要はない。製造過程のばらつき等により、Y型フェライトやFe、及びCaやSiを含む粒界成分等の異相が六方晶フェライト焼結体に生成する場合があり得る。したがって、本実施形態に係る六方晶フェライト焼結体は、c軸方向に磁化容易軸を有する六方晶フェライト焼結体を主相とするが、上述したような異相を含むことも許容する。
ただし、異相の存在に伴ってGHz帯の高周波領域における磁気損失tanδμが増加することを防ぐため、c軸方向に磁化容易軸を有する六方晶フェライトの比率は95%以上とする。ここでc軸方向に磁化容易軸を有する六方晶フェライトの比率とは、本実施形態に係る六方晶フェライト焼結体を構成する各相のX線回折(XRD)測定におけるメインピーク(強度が最も強いピーク)の強度の合計に対するc軸方向に磁化容易軸を有する六方晶フェライトのメインピ−ク強度の合計の割合である。
本実施形態の六方晶フェライト焼結体は、XRD測定により求めた結晶配向度Or=ΣI(00l)/ΣI(hkl)が0.80以上であり、好ましくは0.90以上である。ここで、ΣI(hkl)は、XRD測定により2θが15°から80°の範囲で得られる、c軸方向に磁化容易軸を有する六方晶フェライト焼結体の回折ピーク全ての強度の合計を示し、ΣI(00l)は、XRD測定により前記範囲で得られる、前記六方晶フェライト焼結体の(00l)ピークの強度の合計を示している。(00l)ピークは、例えば(006)ピーク、(008)ピークなどの六方晶のc面による回折に対応しており、Orの値が高いほど、六方晶のc面が揃っていること、すなわち配向度が高いことを表す。XRD測定は成形時に磁場印加する方向に垂直となる焼結体の面を研磨して行う。
本実施形態の六方晶フェライト焼結体は、磁化容易軸に垂直な方向に磁界を印加した際に得られる100MHz以上3GHz以下における磁気損失tanδμが0.010以下で、且つ透磁率の実部μ´が1.50以上、好ましくは2.00以上である。
磁化容易軸に平行な方向に交流磁場を印加した場合、磁壁の移動が顕著になり、それに伴って生じる比較的高いμ´が得られる。しかし、比較的低い周波数で磁壁共鳴が生じるため、その高いμ´はGHz帯の高周波領域までは維持されず低減し、同時にtanδμは増大する。一方、磁化容易軸に垂直な方向に交流磁場を印加した場合、磁壁移動は生じることがないため、高いμ´は得られないものの、磁壁共鳴も生じないためtanδμの増大も見られない。ところが、磁区内の磁化回転に伴って生じるμ´は得られるため、低周波側から自然共鳴が生じる数GHzの高周波領域まで磁気損失tanδμを低い値に維持しつつ、一定値のμ´を得ることができる。
また、本実施形態の六方晶フェライト焼結体は、六方晶フェライトとしてM型六方晶フェライトを用いることが好ましい。M型六方晶フェライトは異方性磁界Hと飽和磁化Mが共に高い値を取り、高周波領域までtanδμを低い値に維持しつつ、比較的μ’を高めることが可能である。
さらに、本実施形態の六方晶フェライト焼結体は、六方晶フェライトとしてMAFe12−xMB19(式中、MAはBa、Sr、及びCaからなる群より選択される少なくとも一種であり、MBは、Ti、Zr及びSnからなる群より選択される少なくとも一種と、Ni、Zn、Mn、Mg、Cu及びCoからなる群より選択される少なくとも一種との等量混合物であり、xは1.5以上6.0以下である)で表されるM型六方晶フェライトを用いることがより好ましい。そのような組成式で表されるM型六方晶フェライトにおいては異方性磁界Hが効果的に低減され、μ´をより高めることが可能となる。
本実施形態の六方晶フェライト焼結体は、平均結晶粒径が5.0μmから60μmであり、好ましくは10μmから50μmである。平均結晶粒径をそのような範囲に限定することで、透磁率の周波数特性を安定させることができ、100MHz以上3GHz以下の広い周波数範囲内においてtanδμが0.010以下で、且つμ´が1.50以上とすることが可能となる。ここで、本発明における「平均結晶粒径」とは、成形時に磁場印加した方向に垂直な焼結体の面を研磨して、走査型電子顕微鏡にて観察される各結晶粒に対して、結晶粒の面積と同一の面積を持つ円の直径の長さ(Heywood径)を求め、それを平均した値である。かかる平均結晶粒径を有する六方晶フェライト焼結体を得るため、本実施形態の六方晶フェライト焼結体は、例えば、以下のように作製される。
本実施形態の六方晶フェライト焼結体は、平均粒子径が1.5μmから5.0μmの範囲内にある六方晶フェライト粉末を磁場中で成形して得られる成形体を焼成することで得られる。平均粒子径をそのような範囲内に限定することで、焼成後に得られる焼結体の平均結晶粒径を5.0μmから60μmの範囲にすることができ、且つ結晶配向度Orを0.80以上にすることができる。平均粒子径が1.5μm未満の場合、焼成時に粒成長が促進され、60μm以上の粗大粒が生じ易くなり、結晶配向度が低下する。一方、平均粒子径が5.0μmよりも大きい場合は、十分な結晶配向度が得られないばかりか、焼結密度低下の原因にもなり、μ’は1.50未満の低い値となり易い。平均粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置HRA(日機装(株)製、X−100)を用いて粒度分布を測定して得られるD50(メジアン径)の値を平均粒子径とした。
前記六方晶フェライト粉末は、例えば、次のような通常のプロセスで作製することが可能である。まず、所望の組成となるように原料となる炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化マンガン(Mn)、酸化チタン(TiO)等を秤量し、ボールミル等の混合手段によって所定の時間配合し、配合粉を得る。電気炉等を用いて配合粉を大気中で適宜の温度、且つ適宜の時間仮焼し、仮焼粉を得る。仮焼粉を振動ミルやボールミル等を用いて所定の時間粉砕して粉末とすることで、六方晶フェライト粉末が完成する。
前記六方晶フェライト粉末を磁場中で成形して成形体を得る場合、成形の方法として乾式成形、または湿式成形のいずれの方法でもよいが、配向度を高めるためには、六方晶フェライト粉末がより配向し易い、湿式成形の方が好ましい。湿式成形により成形体を得る場合、例えば、上述した粉砕工程を湿式で行うことで六方晶フェライトを含むスラリーとし、そのスラリーを磁場印加中で加圧成形しながら液体成分を除去することで成形体が得られる。成形時の磁場印加方向と加圧方向は、同一方向でも直交方向であってもよい。スラリー中に含まれる六方晶フェライト粉末はスラリー全量に対して30から85質量%程度が好ましい。この範囲内であれば、成形時に配向度を高めつつ液体成分が十分に除去された成形体を得ることが可能である。
前記六方晶フェライト焼結体は、前記成形体を、例えば、電気炉等を用いて大気中で適宜の温度、且つ適宜の時間焼成することで得られる。この焼結体の平均結晶粒径は、焼成条件を適宜制御することにより、5.0μmから60μmの範囲に限定することができる。例えば、焼成の処理温度を高くするほど、また、処理時間を長くするほど、焼結体の平均結晶粒径が大きくなる傾向にある。さらに、SiO、CaCO、及びBiなどの副成分を所定の量添加することによって、結晶成長は促進され、且つ結晶粒径が均一化し易くなる傾向がある。
本実施形態の高周波磁性部品は、磁性材料として前記六方晶フェライト焼結体を用いる。前記六方晶フェライト焼結体は、100MHzから3GHzまでの広い周波数範囲においてtanδμが0.010以下で、且つμ´が1.50以上となることから、この周波数範囲で使用されるインダクタ、EMIフィルタ、アンテナ等の高周波磁性部品に好適である。
次に、上述した実施形態をより具体的に実施した実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。表1に、実施例、及び比較例に係るM型六方晶フェライト、W型六方晶フェライト、Y型六方晶フェライト、及びスピネルフェライトの組成、配向の状態、配向度、粉砕粉の平均粒子径、焼結体の平均結晶粒径、及び100MHzと3GHzでのμ´とtanδμの評価結果を示す。
Figure 0006379577
(実施例1)
実施例1として、炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、及び酸化スカンジウム(Sc)を原料とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量した。そして、秤量後の原料を湿式ボールミルで水を媒体として16時間配合した後、大気中において1200℃で2時間仮焼した。これによって得られた仮焼粉を振動ミルで10分間乾式粉砕した後、湿式ボールミルで水を媒体として16時間粉砕し、スラリーを得た。得られたスラリーについて、固形分濃度が74〜76質量%となるように水分量を調整し、湿式磁場成形機を用いて印加磁場を1.5Tとして磁場中成形し、18mm×20mm×26mmの直方体状の成形体を作製した。次に、得られた成形体を大気中、150℃で保持して十分乾燥させた後、大気中1200℃で10時間保持する焼成を行い、M型六方晶フェライト焼結体を得た。このようにして得られた実施例1のM型六方晶フェライト焼結体は、粉砕粉の平均粒子径が1.5μmから5.0μmの範囲にあるため、焼結体の平均結晶粒径が5.0μmから60μmの範囲の値となり、さらに結晶配向度が0.80以上であるため、100MHzと3GHzでのμ´が1.50以上、且つtanδμが0.010以下となっている。
(実施例2)
実施例2では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量した以外は実施例1と同様にしてW型六方晶フェライト焼結体を得た。このようにして得られた実施例2のW型六方晶フェライト焼結体においても、粉砕粉の平均粒子径が1.5μmから5.0μmの範囲にあるため、焼結体の平均結晶粒径が5.0μmから60μmの範囲の値となり、さらに結晶配向度が0.80以上であるため、100MHzと3GHzでのμ´が、実施例1のM型六方晶フェライト焼結体のμ´よりも小さい値ではあるものの1.50以上となり、且つtanδμが0.010以下となっている。
(実施例3、実施例6)
実施例3、及び実施例6では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量した以外は実施例1と同様にしてM型六方晶フェライト焼結体を得た。このようにして得られた実施例3及び実施例6のM型六方晶フェライト焼結体においても、粉砕粉の平均粒子径が1.5μmから5.0μmの範囲にあるため、焼結体の平均結晶粒径が5.0μmから60μmの範囲の値となり、さらに結晶配向度が0.80以上であるため、100MHzと3GHzでのμ´が1.50以上、且つtanδμが0.010以下となっている。図1に、実施例3に係るμ´とtanδμの周波数特性を示す。
(実施例4)
実施例4では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化コバルト(Co)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量した以外は実施例1と同様にしてM型六方晶フェライト焼結体を得た。このようにして得られた実施例4のM型六方晶フェライト焼結体においても、粉砕粉の平均粒子径が1.5μmから5.0μmの範囲にあるため、焼結体の平均結晶粒径が5.0μmから60μmの範囲の値となり、さらに結晶配向度が0.80以上であるため、100MHzと3GHzでのμ´が1.50以上、且つtanδμが0.010以下となっている。
(実施例5)
実施例5では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化ジルコニウム(ZrO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量した以外は実施例1と同様にしてM型六方晶フェライト焼結体を得た。このようにして得られた実施例5のM型六方晶フェライト焼結体においても、粉砕粉の平均粒子径が1.5μmから5.0μmの範囲にあるため、焼結体の平均結晶粒径が5.0μmから60μmの範囲の値となり、さらに結晶配向度が0.80以上であるため、100MHzと3GHzでのμ´が1.50以上、且つtanδμが0.010以下となっている。
実施例3から実施例6までのM型六方晶フェライト焼結体は、MAFe12−xMB19(式中、MAはBa、Sr、及びCaからなる群より選択される少なくとも一種であり、MBは、Ti、Zr及びSnからなる群より選択される少なくとも一種と、Ni、Zn、Mn、Mg、Cu及びCoからなる群より選択される少なくとも一種との等量混合物であり、xは1.5以上6.0以下である)で表されるM型六方晶フェライトであり、異方性磁界Hが効果的に低減されているため、μ´の値が実施例1、及び実施例2の六方晶フェライト焼結体のμ´よりも大きい値となっている。
(実施例7)
実施例7では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと、さらに湿式ボールミルで水を媒体として粉砕する時間を24時間としたこと以外は実施例1と同様にしてM型六方晶フェライト焼結体を得た。このようにして得られた実施例7のM型六方晶フェライト焼結体は、湿式ボールミルによる粉砕時間を実施例1から実施例6までの粉砕時間よりも長くしたことで、粉砕粉の平均粒子径がより細かくなったため、配向度がより高められている。そのため、100MHzと3GHzでのtanδμが0.010以下であり、且つμ´の値が実施例1から実施例6までのμ´の値よりも大きい値となっている。
(比較例1)
比較例1として、酸化鉄(Fe)、及び酸化ニッケル(NiO)を原料とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量した。そして、秤量後の原料を湿式ボールミルで水を媒体として16時間配合した後、大気中において900℃で3時間仮焼した。これによって得られた仮焼粉を湿式ボールミルで水を媒体として16時間粉砕した後、150℃で24時間乾燥させて、粉砕粉を得た。得られた粉砕粉にバインダーとしてPVAを添加して造粒し、この造粒粉をプレス機により100MPaの圧力で成形した後、大気中において1200℃で3時間保持する焼成を行い、スピネル型フェライト(NiFe)焼結体を得た。このようにして得られた比較例1のスピネル型フェライト焼結体は、自然共鳴周波数が低いため、図1に示した通り、100MHzと3GHzでのtanδμが過大な値となり、且つ3GHzでのμ´は1.0よりも小さい値となっている。
(比較例2)
比較例2では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、及び酸化亜鉛(ZnO)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量した以外は実施例1と同様にしてY型六方晶フェライト焼結体を得た。このようにして得られた比較例2のY型六方晶フェライト焼結体は、配向の状態が容易軸配向ではなく容易面配向であるため、共鳴周波数が十分に高い値とはならず、図1に示した通り、3GHzでのtanδμが過大な値となり、100MHzにおいてもtanδμは0.010よりも高い値となっている。
(比較例3)
比較例3では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、及び酸化コバルト(Co)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量した以外は実施例1と同様にしてW型六方晶フェライト焼結体を得た。このようにして得られた比較例3のW型六方晶フェライト焼結体は、配向の状態が容易面配向となり、同じW型六方晶フェライトであっても容易軸配向となる実施例2とは配向の状態が異なる。そのため、W型六方晶フェライト焼結体であっても、共鳴周波数が低周波側にあり、100MHzと3GHzでのtanδμが、0.010よりも高い値となっている。
(比較例4)
比較例4では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと、さらに湿式ボールミルで水を媒体として粉砕する時間を8時間としたこと以外は実施例1と同様にしてM型六方晶フェライト焼結体を得た。このようにして得られた比較例4のM型六方晶フェライト焼結体は、湿式ボールミルによる粉砕時間を実施例よりも短くすることで、粉砕粉の平均粒子径が実施例の値よりも増加し、5.0μmよりも大きくなったため、配向度が実施例よりも低められたと考えられる。そのため、3GHzでのμ´が実施例よりも小さい値となり、さらに、100MHzと3GHzでのtanδμが0.010よりも高い値となっている。
(比較例5)
比較例5では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと、さらに湿式ボールミルで水を媒体として粉砕する時間を48時間としたこと、またさらに、焼成温度を1300℃としたこと以外は実施例1と同様にしてM型六方晶フェライト焼結体を得た。このようにして得られた比較例5のM型六方晶フェライト焼結体は、実施例よりも湿式ボールミルによる粉砕時間を長くし、且つ焼成温度も高くすることで、実施例よりも粉砕粉の平均粒子径の値が小さい1.5μm未満となり、且つ焼結体の平均結晶粒径が粗大化して60μmよりも大きくなったため、配向度がより低められたと考えられる。そのため、100MHzと3GHzでのtanδμが0.010よりも高い値となっている。
(比較例6)
比較例6では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと以外は実施例1と同様にしてM型六方晶フェライト焼結体を得た。このようにして得られた比較例6のM型六方晶フェライト焼結体は、MAFe12−xMB19で表されるM型六方晶フェライト焼結体のxが1.0の組成であり、xが1.5以上6.0以下の範囲に入らないため、100MHzと3GHzでのμ´が1.50よりも小さい値となっている。
(比較例7)
比較例7では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと以外は実施例1と同様にしてM型六方晶フェライト焼結体を得た。このようにして得られた比較例7のM型六方晶フェライト焼結体は、MAFe12−xMB19で表されるM型六方晶フェライト焼結体のxが7.0の組成であり、xが1.5以上6.0以下の範囲に入らないため、100MHzと3GHzでのtanδμが0.010よりも高い値となっている。
(結晶配向度)
実施例、比較例の各試料について、焼結体の片面(成形時に磁場印加した方向に垂直な面)を平滑に研磨し、この平滑研磨面に対して、2θが15°から80°の範囲でXRD測定を行い、回折ピークを同定した。同定された回折ピークの面指数とピーク強度から、焼結体の結晶配向度Or(=ΣI(00l)/ΣI(hkl))を求めた。
(平均結晶粒径)
フッ酸(濃度36%)でエッチング後の焼結体表面(成形時に磁場印加した方向に垂直な面)を走査型電子顕微鏡で観察し、N=150個の結晶粒の結晶粒径を平均することにより、平均結晶粒径を求めた。その際、各結晶粒に対して結晶粒の面積と同一の面積を持つ円の直径の長さを結晶粒径とした(Heywood径)。
(複素透磁率の実部μ´、及び磁気損失tanδμ
10MHzから3GHzまでの複素透磁率の実部μ´、及び磁気損失tanδμは、6mm×6mm×0.8mmの板状に加工した試験片を使用し、ネットワークアナライザ(アジレント・テクノロジー(株)製、HP8753D)と超高周波帯域透磁率測定装置(凌和電子(株)製、PMF−3000)を用いて測定した。
実施例1〜実施例7、及び比較例4〜比較例7の六方晶フェライト焼結体の透磁率については、測定時に印加される磁場の向きと六方晶の磁化容易軸が直交するように試験片を設置して測定した。また、比較例2、及び比較例3の六方晶フェライト焼結体の透磁率については、測定時に印加される磁場の向きと六方晶の磁化容易面が平行となるように試験片を設置して測定した。
表1の結果から分かるように、実施例1〜実施例7に係る六方晶フェライト焼結体は、いずれも100MHzと3GHzのtanδμが共に、0.010以下であり、且つμ´が1.50以上となっている。これらの六方晶フェライト焼結体は全て、配向の状態が六方晶のc軸方向の容易軸配向となっており、配向度も0.80以上と高くなっている。そのため、磁壁移動に伴うtanδμがほぼ生じないことから、100MHzから3GHzまでの広い周波数範囲で低いtanδμが維持され、且つ磁化回転に伴う一定のμ´が高周波まで維持されている。
また、実施例7に係る六方晶フェライト焼結体は、同一組成の実施例3に係る六方晶フェライト焼結体と比較して、より高いμ´が達成されている。これは、この実施例に係る六方晶フェライト焼結体の配向度が0.90以上とより高められていることにより、μ´への磁化回転の寄与がより増加したことが原因と考えられる。
比較例1〜比較例5に係るスピネルフェライト焼結体、及び六方晶フェライト焼結体は、いずれも100MHzと3GHz両方のtanδμが0.010以上となっている。これらの焼結体は、それぞれ自然共鳴周波数が低いスピネルフェライトであること、Y型及びW型六方晶フェライトで配向の状態が容易面配向であること、またはM型六方晶フェライトであっても結晶配向度が0.80未満であることなどを理由に、100MHzから3GHzまでの広い周波数範囲で低いtanδμを維持することができなかったと考えられる。
また、比較例6、及び比較例7に係る六方晶フェライト焼結体は、MAFe12−xMB19で表されるM型六方晶フェライト焼結体のxが1.5以上6.0以下の範囲から逸脱する組成であるため、比較例6では100MHzと3GHz両方のμ´が1.50以下となり、比較例7では100MHzと3GHz両方のtanδμが0.010以上となっている。
以上説明した通り、本発明の六方晶フェライト焼結体は、100MHzから3GHzまでの幅広い周波数範囲で0.010以下の低いtanδμを維持しつつμ´を1.50以上とすることができる。そのため、本発明による六方晶フェライト焼結体を用いることにより、例えば、数百MHzから数GHzの高周波までを含む幅広い周波数範囲で使用可能なインダクタ、EMIフィルタ、アンテナなどを提供することができる。

Claims (4)

  1. 六方晶のc軸方向に磁化容易軸を有する六方晶フェライト焼結体であって、X線回折測定により2θが15°から80°の範囲で求めた結晶配向度Or=ΣI(00l)/ΣI(hkl)が0.80以上であり、磁化容易軸に垂直な方向に磁場を印加した際に得られる100MHz以上3GHz以下における磁気損失tanδμが0.010以下であり、複素透磁率の実部μ´が1.50以上であり、平均結晶粒径が5.0μmから60μmであることを特徴とする六方晶フェライト焼結体。
  2. 前記六方晶フェライト焼結体が、M型六方晶フェライトであることを特徴とする請求項1に記載の六方晶フェライト焼結体。
  3. 前記六方晶フェライト焼結体が、MAFe12−xMB19(式中、MAはBa、Sr、及びCaからなる群より選択される少なくとも一種であり、MBは、Ti、Zr及びSnからなる群より選択される少なくとも一種と、Ni、Zn、Mn、Mg、Cu及びCoからなる群より選択される少なくとも一種との等量混合物であり、xは1.5以上6.0以下である)で表されるM型六方晶フェライトであることを特徴とする請求項1または2に記載の六方晶フェライト焼結体。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の六方晶フェライト焼結体を用いることを特徴とする高周波磁性部品。
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