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JP6376352B2 - 車両の走行制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、操舵伝達比可変装置及びパワーステアリング装置を備えた車両の走行制御装置に係る。
自動車などの車両の走行制御装置として、ステアリングホイールと操舵輪との間の操舵伝達系に操舵伝達比可変装置及び電動パワーステアリング装置を有する走行制御装置は、従来よく知られている。操舵伝達比可変装置はアッパステアリグシャフトとロアステアリグシャフトとの間に配置され、アッパステアリグシャフトに対しロアステアリグシャフトを回転させることにより、操舵伝達比を変化させる。この種の走行制御装置によれば、運転者の操舵操作を要することなく操舵輪の舵角を制御したり、操舵伝達比、即ちステアリングホイールの操作量に対する操舵輪の舵角の変化量の比を車速などに応じて最適に制御したりすることができる。
更に、車両を所定の走行経路に沿って走行させるための操舵輪の目標舵角を演算し、操舵輪の実際の舵角が目標舵角になるように電動パワーステアリング装置及び操舵伝達比可変装置を制御する運転支援装置を備えた走行制御装置も知られている。運転支援装置を備えた走行制御装置によれば、運転者の操舵操作を要することなく車両を所定の走行経路に沿って走行させると共に、所望の操舵特性を達成することができる。
例えば、下記の特許文献1には、車両が所定の走行経路に沿って走行するように電動パワーステアリング装置を制御して操舵輪の舵角を制御する運転支援制御を行うと共に、運転支援制御中に生じる車両の挙動変化を抑制する走行制御装置が記載されている。特許文献1に記載された走行制御装置によれば、車両の挙動変化を抑制しつつ車両を所定の走行経路に沿って走行させることができる。
特開2011−31770号公報
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、上記公開公報に記載された走行制御装置のように、電動パワーステアリング装置が操舵輪と操舵伝達比可変装置との間にて操舵伝達系に設けられた従来の走行制御装置においては、以下のような問題がある。即ち、運転支援制御よって電動パワーステアリング装置が制御され、操舵輪の舵角が変化されると、電動パワーステアリング装置と操舵伝達比可変装置との間のロアステアリグシャフトのような操舵部材が回転される。操舵伝達比可変装置内の相対的に回転する部材の間には摩擦力が作用するため、それらの部材が摩擦力に起因して相対的に回転できない場合には、操舵伝達比可変装置に対しステアリグホイール側のアッパステアリングシャフト及び操舵輪側のロアステアリングシャフトは相対的に回転せずに一体的に回転する。
操舵伝達比などを制御するに必要な操舵角を検出する操舵角センサは、アッパステアリングシャフトに設けられているため、操舵角センサにより検出される操舵角は、アッパステアリングシャフトの回転に伴って変化する。操舵伝達比可変装置は変化する操舵角に基づいて所定の操舵伝達比を達成するように制御されるので、運転者は操舵していないが、操舵伝達比可変装置はアッパステアリングシャフトに対しロアステアリングシャフトを回転させようとする。しかし、電動パワーステアリング装置は操舵輪の舵角を変化させるよう操舵トルクを発生しているので、操舵伝達比可変装置はロアステアリングシャフトを回転させることができず、反力によりアッパステアリングシャフトが回転されてしまう。
特に、運転支援制御が行われている状況においては、運転者は積極的に操舵する必要がないので、運転者がステアリグホイールを把持する力が弱く、場合によっては所謂手放し状態になる。そのため、上記現象の繰り返しにより、アッパステアリングシャフトの往復回転が繰り返され、これに伴ってステアリグホイールの微振動及び操舵反力の振動変化が生じ易く、運転者が違和感及び煩わしさを覚えることがある。
なお、上記公開公報に記載された走行制御装置においては、公開公報の図8に示されているように、運転支援制御が行われているときには、運転支援制御が行われていないときに比して、操舵伝達比が全車速域に亘り小さい側(所謂スロー側)へ変化される。よって、運転者の操舵操作が操舵輪の舵角の変化に与える影響を低減して車両の走行安定性を向上させることはできるが、上記ステアリグホイールの微振動及び操舵反力の振動変化の問題を解消することはできない。
本発明の主要な課題は、操舵伝達比可変装置及びパワーステアリング装置を備えた車両において、運転支援制御によって操舵輪の舵角が制御される際に生じるステアリグホイールの微振動及び操舵反力の振動変化を低減することである。
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
本発明によれば、ステアリングホイールと操舵輪との間の操舵伝達系に設けられ、アッパステアリングシャフトに対しロアステアリングシャフトを回転させることにより操舵伝達比を変更する操舵伝達比可変装置と、目標操舵伝達比を達成するに必要なアッパステアリングシャフト及びロアステアリングシャフトの間の相対回転角度の目標値を演算し、実際の相対回転角度が目標値になるように操舵伝達比可変装置を制御する操舵伝達比制御装置と、操舵輪と操舵伝達比可変装置との間の操舵伝達系に設けられ、操舵アシストトルクを発生するパワーステアリング装置と、目標操舵アシストトルクを演算し、実際の操舵アシストトルクが目標操舵アシストトルクになるようにパワーステアリング装置を制御する操舵アシストトルク制御装置と、車両を所定の走行経路に沿って走行させるための操舵輪の目標舵角を演算し、操舵輪の実際の舵角が目標舵角になるように目標操舵アシストトルクを修正する運転支援装置と、を有する車両の走行制御装置が提供される。
操舵伝達比制御装置は、運転支援装置が作動しているときには、運転支援装置が作動していないときに比して、操舵伝達比可変装置により制御される相対回転角度の変化の大きさを小さくするようになっている。
上記の構成によれば、運転支援装置が作動しているときには、運転支援装置が作動していないときに比して、操舵伝達比可変装置により制御される相対回転角度の変化の大きさが小さくなる(0になることを含む)。よって、運転支援装置が作動している状況において、操舵伝達比可変装置がロアステアリングシャフトを回転させる際の反力によって回転されるアッパステアリングシャフトの回転角度の大きさを小さくすることができる。従って、ステアリグホイール側のステアリングシャフトの往復回転が繰り返される虞を低減し、これによりステアリグホイールの微振動及び操舵反力の振動変化を低減することができる。
〔発明の態様〕
本発明の一つの態様においては、操舵伝達比制御装置は、運転支援装置が作動しているときには、相対回転角度の目標値を0に演算する。
上記態様によれば、運転支援装置が作動しているときには、相対回転角度の目標値が0に演算され、操舵伝達系は操舵伝達比可変装置が設けられていない操舵伝達系と等価になる。よって、操舵伝達比可変装置は、アッパステアリングシャフトに対しロアステアリングシャフトを回転させようとしないので、その反力も発生しない。従って、ステアリグホイール側のステアリングシャフトの往復回転が繰り返されることを防止し、これによりステアリグホイールの微振動及び操舵反力の振動変化が生じることを防止することができる。
本発明の他の一つの態様においては、操舵伝達比制御装置は、運転支援装置が作動を開始したときに、相対回転角度の現在値を求め、運転支援装置が作動しているときには、相対回転角度の目標値を上記現在値に演算することにより、操舵伝達比可変装置により制御される相対回転角度の変化を0にする。
上記態様によれば、運転支援装置が作動を開始したときに、相対回転角度の現在値が求められ、運転支援装置が作動しているときには、相対回転角度の目標値がその現在値に演算される。よって、運転支援装置が作動しているときには、実際の相対回転角度が相対回転角度の目標値と同一になるので、操舵伝達比可変装置は、アッパステアリングシャフトに対しロアステアリングシャフトを回転させようとせず、その反力も発生しない。従って、ステアリグホイール側のステアリングシャフトの往復回転が繰り返されることを防止し、これによりステアリグホイールの微振動及び操舵反力の振動変化が生じることを防止することができる。
更に、本発明の他の一つの態様においては、操舵伝達比可変装置は、作動することにより二つのステアリングシャフトの相対回転を阻止するロック装置を有し、操舵伝達比制御装置は、運転支援装置が作動しているときには、ロック装置を作動させることにより、操舵伝達比可変装置により制御される相対回転角度の変化を0にする。
上記態様によれば、運転支援装置が作動しているときには、ロック装置が作動されることにより、操舵伝達比可変装置により制御される相対回転角度の変化が0にされる。よって、ステアリングホイール側及びロアステアリングシャフトは、操舵伝達比可変装置を介して一体的に連結された状態になるので、アッパステアリングシャフトに対しロアステアリングシャフトは回転されず、その反力も発生しない。従って、ステアリグホイール側のステアリングシャフトの往復回転が繰り返されることを防止し、これによりステアリグホイールの微振動及び操舵反力の振動変化が生じることを防止することができる。
更に、本発明の他の一つの態様においては、操舵伝達比制御装置は、相対回転角度の目標値と相対回転角度の現在値との差の大きさが小さくなるように、相対回転角度の目標値及び相対回転角度の現在値に基づいて操舵伝達比可変装置をフィードバック制御し、運転支援装置が作動しているときには、運転支援装置が作動していないときに比して、フィードバック制御のゲインを小さくする。
上記態様によれば、運転支援装置が作動しているときには、運転支援装置が作動していないときに比して、フィードバック制御のゲインが小さくなるので、操舵伝達比可変装置の制御量の大きさが小さくなり、操舵伝達比可変装置により制御される相対回転角度の変化の大きさが小さくなる。よって、運転支援装置が作動している状況において、操舵伝達比可変装置の制御によってアッパステアリングシャフトに対し回転されるロアステアリングシャフトの回転角度及びその反力の大きさを小さくすることができる。従って、ステアリグホイール側のステアリングシャフトの往復回転が繰り返される虞を低減し、これによりステアリグホイールの微振動及び操舵反力の振動変化を低減することができる。
更に、本発明の他の一つの態様においては、車両は、乗員により操作され、運転支援装置を作動させる作動位置と運転支援装置を作動させない非作動位置とに切り替わるスイッチを有し、操舵伝達比制御装置は、スイッチが作動位置にあるときに、運転支援装置が作動していると判定する。
上記態様によれば、スイッチが作動位置にあるときに、運転支援装置が作動していると判定される。よって、運転支援装置の作動状況を検出することなく、スイッチの位置の判定によって、運転支援装置が作動しているか否かを判定することができる。
更に、本発明の他の一つの態様においては、運転支援装置は、スイッチが非作動位置にあっても、緊急回避に必要な操舵輪の目標舵角を演算し、操舵輪の実際の舵角が目標舵角になるように目標操舵アシストトルクを修正する緊急回避操舵を行い、操舵伝達比制御装置は、緊急回避操舵が行われているときにも運転支援装置が作動していると判定する。
上記態様によれば、スイッチが非作動位置にあっても、緊急回避操舵が行われているときには、運転支援装置が作動していると判定される。よって、運転支援の一種である緊急回避操舵が行われている状況においては、操舵伝達比可変装置により制御される相対回転角度の変化の大きさを小さくすることができる。
本発明による車両の走行制御装置の第一の実施形態を示す概略構成図である。 第一の実施形態における操舵伝達比制御ルーチンを示すフローチャートである。 第一の実施形態における基本操舵アシストトルク制御ルーチンを示すフローチャートである。 第一の実施形態における運転支援制御ルーチンを示すフローチャートである。 本発明による車両の走行制御装置の第二の実施形態における操舵伝達比制御ルーチンを示すフローチャートである。 本発明による車両の走行制御装置の第三の実施形態における操舵伝達比制御ルーチンを示すフローチャートである。 本発明による車両の走行制御装置の第四の実施形態における操舵伝達比制御ルーチンを示すフローチャートである。 車速Vと目標増速比Rtとの関係を示すマップである。 車速Vと微分ゲインGdとの関係を示すマップである。 操舵トルクMTと基本操舵アシストトルクTabとの関係を示すマップである。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明の幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。
[第一の実施形態]
図1は、車両12に搭載された本発明の第一の実施形態にかかる走行制御装置10を示す概略構成図である。走行制御装置10は、操舵伝達比可変装置14及びこれを制御する操舵伝達比制御装置16と、電動パワーステアリング(EPS)装置18及びこれを制御する操舵アシストトルク制御装置としてのEPS制御装置20と、運転支援制御装置22とを含んでいる。図1に示されているように、車両12は転舵輪である左右の前輪19FL、19FR及び非転舵輪である左右の後輪19RL、19RRを有している。前輪19FL及び19FRは、運転者によるステアリングホイール24の操作に応答して駆動される電動パワーステアリング装置18によりラックバー18A及びタイロッド26L及び26Rを介して転舵される。
ステアリングホイール24は、ステアリングホイールステアリングシャフト(本願においては「アッパステアリングシャフト」と指称する)28、操舵伝達比可変装置14、ロアステアリングシャフト30、ユニバーサルジョイント32を介してパワーステアリング装置18のピニオンシャフト34に接続されている。操舵伝達比可変装置14は電動機36を含んでおり、電動機36は、ハウジング14Aの側にてアッパステアリングシャフト28の下端に連結され、回転子14Bの側にて図には示されていない減速機構を介してロアステアリングシャフト30の上端に連結されている。
操舵伝達比可変装置14は、アッパステアリングシャフト28に対し相対的にロアステアリングシャフト30を回転させることにより、操舵伝達比を変更する。よって、操舵伝達比可変装置14は、ステアリングギヤ比(操舵伝達比の逆数)を増減変化させるステアリングギヤ比可変装置(VGRS)として機能する。操舵伝達比制御装置16による操舵伝達比可変装置14の制御については、後に詳細に説明する。
操舵伝達比可変装置14は、ハウジング14Aに対する回転子14Bの回転を許容する非ロック位置と、ハウジング14Aに対する回転子14Bの回転を阻止するロック位置とに切り替わるロック装置38を有している。ロック装置38は、非ロック位置にあるときには、アッパステアリングシャフト28及びロアステアリングシャフト30の相対回転を許容するが、ロック位置にあるときには、二つのステアリングシャフト28及び30の相対回転を阻止する。
なお、ロック装置38は、アッパステアリングシャフト28及びロアステアリングシャフト30の相対回転の許容及び阻止を切り替えることができる限り、任意の構成の装置であってよい。例えば、ロック装置38は、特許第3758649号公報及び特許第4640395号公報などに記載された構造を有していてよい。
第一の実施形態においては、電動パワーステアリング装置18は、ラック同軸型の電動パワーステアリング装置であり、電動機40と、電動機40の回転トルクをラックバー18Aの往復動方向の力に変換する例えばボールねじ式の変換機構42とを有する。電動パワーステアリング装置18は、ハウジング44に対し相対的にラックバー18Aを駆動する補助操舵トルクを発生することにより、運転者の操舵負担を軽減すると共に、前輪19FL及び19FRを自動的に操舵するための駆動トルクを発生する。EPS制御装置20による電動パワーステアリング装置18の制御については、後に詳細に説明する。
以上の説明より解るように、アッパステアリングシャフト28、ロアステアリングシャフト30、ピニオンシャフト34、ラックバー18A及びタイロッド26L、26Rなどは、ステアリングホイール24と前輪19FL及び19FRとの間の操舵伝達系を形成している。操舵伝達比可変装置14はアッパステアリングシャフト28とロアステアリングシャフト30との間の操舵伝達系に設けられており、電動パワーステアリング装置18は、操舵伝達比可変装置14と前輪19FL及び19FRとの間にて操舵伝達系に設けられている。
なお、操舵伝達比可変装置14は、操舵伝達比を変更することができる限り、任意の構成の装置であってよい。また、電動パワーステアリング装置18は、運転者の操舵負担を軽減すると共に、左右の前輪19FL及び19FRを自動的に操舵するための操舵力を発生することができる限り、例えばコラムアシスト型のパワーステアリング装置のような他の構造の装置であってもよい。
第一の実施形態においては、アッパステアリングシャフト28には、該アッパステアリングシャフトの回転角度を操舵角θとして検出する操舵角センサ50が設けられている。ピニオンシャフト34には、操舵トルクMTを検出する操舵トルクセンサ52が設けられている。操舵伝達比可変装置14には、その相対回転角度θre、即ちアッパステアリングシャフト28に対するロアステアリングシャフト30の回転角度を検出する回転角度センサ54が設けられている。
操舵角θを示す信号及び相対回転角度θreを示す信号は、操舵伝達比制御装置16へ入力される。尚、ロアステアリングシャフト30又はピニオンシャフト34の回転角度が検出され、相対回転角度θreは、ロアステアリングシャフト30又はピニオンシャフト34の回転角度と操舵角θとの差として求められてもよい。
車両12には、車速Vを検出する車速センサ56が設けられており、電動パワーステアリング装置18の電動機40には、その回転角φを検出する回転角センサ58が設けられている。車速Vを示す信号、操舵トルクMTを示す信号及び回転角φを示す信号は、EPS制御装置20へ入力される。
車両12には、車両の前方を撮影するCCDカメラ60及び車両を車線に沿って走行させる軌跡制御(「LKA(レーンキープピングアシスト)制御」とも呼ばれる)を行うか否かを選択するための選択スイッチ62が設けられている。選択スイッチ62は、車両の乗員により操作され、運転支援制御装置22を作動させて運転支援制御としての軌跡制御を実行する作動位置(オン)と、運転支援制御装置22を作動させない非作動位置(オフ)とに切り替わる。CCDカメラ60により撮影された車両の前方の画像情報を示す信号及び選択スイッチ62の位置(オン又はオフ)を示す信号は、運転支援制御装置22へ入力される。
更に、運転支援制御装置22には、運動状態検出装置64より、車両12のヨーレート、前後加速度及び横加速度のように車両12の運転支援制御に必要な車両の運動状態量を示す信号が入力される。なお、車両の前方の画像情報や走行車線の情報は、CCDカメラ60以外の手段により取得されてもよく、CCDカメラ60と他の手段との組合せにより取得されてもよい。
操舵伝達比制御装置16、EPS制御装置20及び運転支援制御装置22は、それぞれCPU、ROM、RAM及び入出力ポート装置を有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続されたマイクロコンピュータを含んでいる。操舵伝達比制御装置16、EPS制御装置20及び運転支援制御装置22は、必要に応じて通信により相互に情報の授受を行う。操舵角センサ50、操舵トルクセンサ52及び回転角度センサ54は、それぞれ車両の左旋回方向への操舵又は転舵の場合を正として操舵角MA、操舵トルクMT及び相対回転角度θreを検出する。
後に詳細に説明するように、操舵伝達比制御装置16は、図2に示されたフローチャートに従って操舵伝達比可変装置14を制御することにより操舵伝達比制御を行う。EPS制御装置20は、図3に示されたフローチャートに従って電動パワーステアリング装置18を制御することにより操舵アシストトルク制御を行う。運転支援制御装置22は、図4に示されたフローチャートに従って電動パワーステアリング装置18を制御することにより運転支援制御を行う。なお、選択スイッチ62がオンであるときには、運転支援制御としてLKA制御が行われ、選択スイッチ62がオフであるときには、例えば車両12がその前方の障害物を迂回して走行するなどの緊急回避のための自動操舵(緊急回避操舵)が運転支援制御として行われる。
<操舵伝達比制御>
次に、図2に示されたフローチャートを参照して第一の実施形態における操舵伝達比制御ルーチンについて説明する。なお、図2に示されたフローチャートによる制御は、図1には示されていないイグニッションスイッチがオンの状態にあるときに所定の時間毎に繰返し実行される。このことは、図3乃至図6に示されたフローチャートによる他の制御についても同様である。
まず、ステップ110においては、車速Vに基づいて図8において実線にて示されたマップを参照することにより、目標操舵伝達比に対応する目標増速比Rtが演算される。図8に示されているように、目標増速比Rtは、微低速域においては正の一定の値であり、高車速域においては負の一定の値であり、低中車速域においては車速Vの増大につれて正の値にて大きさが漸次小さくなり、しかる後負の値にて大きさが漸次大きくなるように演算される。なお、ステップ110に先立って、種々の信号の読み込みが行われると共に、ロック装置38が非ロック位置に設定される。
ステップ120においては、車速Vに基づいて図9に示されたマップを参照することにより、微分ゲインGdが演算される。図9に示されているように、微分ゲインGdは、車速Vの増大につれて正の値にて大きさが漸次大きくなり、高車速域においては正の実質的に一定の値になるように演算される。
ステップ130においては、θdを操舵角θの時間微分値、即ち操舵速度として、下記の式(1)に従って、操舵伝達比可変装置14の目標相対回転角度θretが演算される。
θret=Rt・θ+Gd・θd …(1)
ステップ140においては、運転支援制御装置22による運転支援制御が行われているか否かの判別が行われる。否定判別が行われたときには操舵伝達比制御はステップ180へ進み、肯定判別が行われたときには操舵伝達比制御はステップ150へ進む。なお、後述のステップ170の実行によりロック装置38がロック位置に切り替えられている状況において否定判別が行われたときには、ロック装置38が非ロック位置に戻された後に操舵伝達比制御はステップ180へ進む。なお、下記の条件(a)又は(b)が成立しているときに、運転支援制御が行われていると判別される。
(a)選択スイッチ62がオンである。
(b)選択スイッチ62はオフであるが、緊急回避操舵が行われている。
ステップ150においては、目標相対回転角度θretを修正するための係数Ktが0であるか否かの判別、即ち、係数Ktの低減が完了したか否かの判別が行われる。否定判別が行われたときには、ステップ160において係数KtがΔKtデクリメントされる。これに対し、肯定判別が行われたときには、ステップ170においてロック装置38がロック位置に切り替えられる。なお、Nを正の一定の整数として、ΔKtは1/Nである。
ステップ180においては、係数Ktの漸増が完了したか否かの判別、即ち、係数Ktが1であるか否かの判別が行われる。否定判別が行われたときには、ステップ190において係数KtがΔKtインクリメントされる。これに対し、肯定判別が行われたときには、操舵伝達比制御はステップ200へ進む。
上記ステップ160、170又は190が完了したときにも操舵伝達比制御はステップ200へ進み、ステップ200においては、目標相対回転角度θretが係数Ktとステップ130において演算された目標相対回転角度θretとの積Kt・θretに修正される。
ステップ210においては、操舵伝達比可変装置14の相対回転角度θreを目標相対回転角度θretにするための操舵伝達比可変装置14への指令電流Ivgrstが、目標相対回転角度θretと実際の相対回転角度θreとの偏差Δθre(=θret−θre)に基づいて演算される。具体的には、Δθred及びΔθreiをそれぞれ回転角の偏差Δθreの時間微分値及び時間積分値とし、Kvp、Kvd及びKviをそれぞれ予め設定されたフィードバックゲイン(正の定数)として、下記の式(2)に従って指令電流Ivgrstが演算される。
Ivgrst=Kvp・Δθre+Kvd・Δθred+Kvi・Δθrei …(2)
ステップ210の次に実行されるステップ290においては、操舵伝達比可変装置14の電動機36へ指令電流Ivgrstが通電されることにより、操舵伝達比可変装置14の相対回転角度θreが目標相対回転角度θretに制御される。
<操舵アシストトルク制御>
次に、図3に示されたフローチャートを参照して第一の実施形態における操舵アシストトルク制御ルーチンについて説明する。
まず、ステップ310においては、操舵トルクMTに基づいて図10に示されたマップを参照することにより、基本操舵アシストトルクTabが演算される。図10に示されているように、基本操舵アシストトルクTabは、操舵トルクMTの絶対値が大きいほど大きさが大きくなると共に、車速Vが低いほど絶対値が大きくなるように演算される。なお、ステップ310に先立って、種々の信号の読み込みが行われる。
ステップ320においては、上記ステップ140の場合と同様の要領にて、運転支援制御装置22による運転支援制御が行われているか否かの判別が行われる。肯定判別が行われたときには操舵アシストトルク制御はステップ340へ進み、否定判別が行われたときにはステップ330において目標操舵アシストトルクTatが基本操舵アシストトルクTabに設定され、しかる後操舵アシストトルク制御はステップ370へ進む。
ステップ340においては、後述の図4に示されたフローチャートのステップ480において演算される電動パワーステアリング装置19の電動機40の目標回転角φtと、回転角センサ58により検出された実際の回転角φとの偏差Δφ(=φt−φ)が演算される。
ステップ350においては、Δφd及びΔφiをそれぞれ回転角の偏差Δφの時間微分値及び時間積分値とし、Kep、Ked及びKeiをそれぞれ予め設定されたフィードバックゲイン(正の定数)として、下記の式(3)に従って運転支援目標アシストトルクTdrが演算される。
Tdr=Kep・Δφ+Ked・Δφd+Kei・Δφi …(3)
ステップ360においては、ステップ310において演算された基本操舵アシストトルクTabと、運転支援目標アシストトルクTdrとの和Tab+Tdrが、目標操舵アシストトルクTatとして演算される。
ステップ370においては、電動パワーステアリング装置18により発生されるアシストトルクTaを目標操舵アシストトルクTatにするための電動パワーステアリング装置18への指令電流Iepstが目標操舵アシストトルクTatに基づいて演算される。
ステップ380においては、電動パワーステアリング装置18の電動機40へ指令電流Iepstが通電されることにより、電動パワーステアリング装置18により発生されるアシストトルクTaが目標操舵アシストトルクTatに制御される。特に、運転支援制御中には、アシストトルクTaは、それが目標操舵アシストトルクTatになると共に、回転角の偏差Δφの大きさが小さくなるように制御される。
<運転支援制御>
次に、図4に示されたフローチャートを参照して第一の実施形態における運転支援制御ルーチンについて説明する。
まず、ステップ410においては、選択スイッチ62がオンであるか否かの判別、即ちLKA制御が実行される状況であるか否かの判別が行われる。否定判別が行われたときには運転支援制御はステップ440へ進み、肯定判別が行われたときには運転支援制御はステップ420へ進む。なお、ステップ410に先立って、種々の信号の読み込みが行われる。
ステップ420においては、CCDカメラ60により撮影された車両の前方の情報などに基づいて、LKA制御の目標操舵角θlkt、即ち車両12を走行車線に沿って走行させるためのピニオンシャフト34の目標回転角が演算される。なお、目標操舵角θlktの演算自体は、本発明の要旨をなすものではないので、例えば特許第5737197号公報に記載された要領のように、当技術分野において公知の任意の要領にて実行されてよい。
ステップ430においては、ピニオンシャフト34の回転角を目標操舵角θlktにするために必要な電動パワーステアリング装置18の電動機40の目標回転角φtが、目標操舵角θlktに基づいて演算され、しかる後運転支援制御はステップ480へ進む。
ステップ440においては、緊急回避のための自動操舵が必要であるか否かの判別が行われる。否定判別が行われたときにはステップ450において電動機40の目標回転角φtが回転角センサ58により検出された現在の回転角φに設定され、しかる後運転支援制御はステップ480へ進む。これに対し、肯定判別が行われたときには運転支援制御はステップ460へ進む。
ステップ460においては、緊急回避のための自動操舵の目標操舵角θemt、即ち障害物を迂回して車両12を走行させるためのピニオンシャフト34の目標回転角が演算される。なお、目標操舵角θemtの演算自体は、本発明の要旨をなすものではないので、例えば特開2009−184675号公報に記載された要領のように、当技術分野において公知の任意の要領にて実行されてよい。
ステップ470においては、ピニオンシャフト34の回転角を目標操舵角θemtにするために必要な電動パワーステアリング装置18の電動機40の目標回転角φtが、目標操舵角θemtに基づいて演算され、しかる後運転支援制御はステップ480へ進む。
ステップ480においては、目標回転角φtを示す信号が運転支援制御装置22からEPS制御装置20へ出力される。
以上の説明から解るように、選択スイッチ62が作動位置(オン)にあるときには、操舵伝達比制御装置16、EPS制御装置20及び運転支援制御装置22がそれぞれ上述のように作動する。即ち、運転支援制御装置22によって図4に示されたフローチャートに従って運転支援制御が行われることにより、車両12を所定の走行経路に沿って走行させるための前輪19FL及び19FRの目標操舵角θlktが演算される。EPS制御装置20によって図3に示されたフローチャートに従って操舵アシストトルクが制御されることにより、運転者の操舵負担が軽減されると共に、前輪19FL及び19FRの舵角が目標操舵角θlktに対応する舵角になるように制御される。
更に、操舵伝達比制御装置16によって図2に示されたフローチャートに従って操舵伝達比制御が行われることにより、操舵伝達比可変装置14の目標相対回転角度θretの大きさが0に低減される。よって、操舵伝達比可変装置14はアッパステアリングシャフト28及びロアステアリングシャフト30を相対的に回転させないので、操舵伝達系は操舵伝達比可変装置14が設けられていない操舵伝達系と等価になる。
以上の制御は、図8に示された目標増速比Rtについて見ると、図8において一点鎖線にて示されたマップに従って目標増速比Rtを演算し、該目標増速比Rtに基づいて操舵伝達比を制御することと等価である。よって、操舵伝達比可変装置14はアッパステアリングシャフト28に対しロアステアリングシャフト30を回転させないので、その反力によってアッパステアリングシャフト28が回転されることもない。従って、アッパステアリングシャフト28の往復回転が繰り返されることを防止し、これによりステアリグホイール24の微振動及び操舵反力の振動変化が生じることを防止することができる。
なお、前述の特許文献1の公開公報に記載された走行制御装置においては、運転支援制御が行われているときには、目標増速比Rtが例えば図8において破線にて示されたマップに従って演算される。よって、この処理によってはアッパステアリングシャフト28及びロアステアリングシャフト30の相対回転角度の大きさを低減できないので、上記作用効果を得ることができず、ステアリグホイール24の微振動及び操舵反力の振動変化を防止することができない。
また、前輪19FL及び19FRの運転支援の目標舵角が変化しない状況において、運転者により操舵操作が行われると、運転支援の目標舵角と実際の舵角との偏差の大きさが大きくなり、これに比例するアシストトルクは運転者の操舵に抗する方向に作用する。よって、従来の走行制御装置においては、運転者は高い操舵反力を感じる。
これに対し、第一の実施形態によれば、操舵伝達比可変装置14の目標相対回転角度θretの大きさが0に低減されるので、目標相対回転角度θretの大きさが低減されない場合に比して運転支援の目標舵角と実際の舵角との偏差の大きさを小さくすることができる。よって、運転支援の目標舵角と実際の舵角との偏差に比例し運転者の操舵に抗する方向に作用するアシストトルクの大きさを低減し、これにより運転者が感じる操舵反力を低減することができる。なお、この作用効果は、後述の他の実施形態においても同様に得られる。
特に、第一の実施形態によれば、係数Ktは1と0との間にて変化される際に、漸増及び漸減される。よって、係数Ktが漸増及び漸減されることなく1と0との間にて変化される場合に比して、操舵伝達比の急変及びこれに起因する違和感の発生を回避することができる。
[第二の実施形態]
図5は、本発明による車両の走行制御装置の第二の実施形態における操舵伝達比制御ルーチンを示すフローチャートである。なお、図5において、図2に示されたステップと同一のステップには、図2において付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。このことは後述の図6及び図7についても同様である。
第二の実施形態においては、それぞれEPS制御装置20及び運転支援制御装置22により実行される操舵アシストトルク制御及び運転支援制御は、上述の第一の実施形態の場合と同様に、それぞれ図3及び図4に示されたフローチャートに従って実行される。これらのことは後述の第三及び第四の実施形態においても同様である。
図5と図2との比較から解るように、ステップ110〜130、210及び290は、それぞれ第一の実施形態の対応するステップと同様に実行され、ステップ210が完了すると、操舵伝達比制御はステップ220へ進む。
ステップ220においては、第一の実施形態のステップ140の場合と同様の要領にて、運転支援制御装置22による運転支援制御が行われているか否かの判別が行われる。否定判別が行われたときには操舵伝達比制御はステップ260へ進み、肯定判別が行われたときには操舵伝達比制御はステップ230へ進む。
ステップ230においては、目標相対回転角度θretを修正するための係数Kfが予め設定された最小値Kfmin(1よりも小さい正の定数)であるか否かの判別、即ち、係数Kfの低減が完了したか否かの判別が行われる。肯定判別が行われたときには、操舵伝達比制御はステップ280へ進み、否定判別が行われたときには、ステップ240において係数KfがΔKfデクリメントされる。なお、Mを正の一定の整数として、ΔKfは1/Mである。なお、ステップ250については後述する。
ステップ260においては、係数Kfの漸増が完了したか否かの判別、即ち、係数Kfが1であるか否かの判別が行われる。否定判別が行われたときには、ステップ270において係数KfがΔKfインクリメントされる。これに対し、肯定判別が行われたときには、操舵伝達比制御はステップ280へ進む。
上記ステップ240又は270が完了したときにも操舵伝達比制御はステップ280へ進み、ステップ280においては、操舵伝達比可変装置14への指令電流Ivgrstが係数Kfとステップ210において演算された指令電流Ivgrstとの積Kf・Ivgrstに修正される。
以上の説明から解るように、第二の実施形態によれば、運転支援制御が行われている状況においては、指令電流Ivgrstが1よりも小さい正の定数であるKf倍に低減される。よって、第二の実施形態によれば、操舵伝達比制御の悪影響をできるだけ低減することができる。即ち、操舵伝達比可変装置14はアッパステアリングシャフト28に対しロアステアリングシャフト30を大きい角度にて回転させることがないので、その反力によってアッパステアリングシャフト28が大きい角度にて回転されることもない。従って、アッパステアリングシャフト28の往復回転が繰り返されることを抑制し、これによりステアリグホイール24の微振動及び操舵反力の振動変化が生じる虞を低減することができる。
なお、以上の制御は、図8に示された目標増速比Rtについて見ると、図8において二点鎖線にて示されたマップに従って目標増速比Rtを演算し、該目標増速比Rtに基づいて操舵伝達比を制御することと等価である。
特に、第二の実施形態によれば、係数Kfは1とKfminとの間にて変化される際に、漸増及び漸減される。よって、係数Kfが漸増及び漸減されることなく1とKfminとの間にて変化される場合に比して、操舵伝達比の急変及びこれに起因する違和感の発生を回避することができる。
[第三の実施形態]
図6は、本発明による車両の走行制御装置の第三の実施形態における操舵伝達比制御ルーチンを示すフローチャートである。
図6と図2との比較から解るように、第三の実施形態においても、ステップ110〜130、210及び290は、それぞれ第一の実施形態の対応するステップと同様に実行される。ステップ110に先立ってステップ10が実行され、ステップ130が完了すると、操舵伝達比制御はステップ210へ進む。
ステップ10においては、第一の実施形態のステップ140の場合と同様の要領にて、運転支援制御装置22による運転支援制御が行われているか否かの判別が行われる。否定判別が行われたときには操舵伝達比制御はステップ110へ進み、肯定判別が行われたときには操舵伝達比制御はステップ20へ進む。なお、後述のステップ40の実行によりロック装置38がロック位置に切り替えられている状況において否定判別が行われたときには、ロック装置38が非ロック位置に戻された後に操舵伝達比制御はステップ110へ進む。
ステップ20においては、運転支援制御装置22による運転支援制御が開始されたか否かの判別、即ち運転支援制御が行われていない状況から運転支援制御が行われている状況へ変化したか否かの判別が行われる。否定判別が行われたときには操舵伝達比制御はステップ210へ進み、肯定判別が行われたときには操舵伝達比制御はステップ30へ進む。
ステップ30においては、操舵伝達比可変装置14の目標相対回転角度θretが、回転角度センサ54により検出された現在の相対回転角度θreに設定される。
ステップ40においては、ロック装置38がロック位置に切り替えられ、しかる後操舵伝達比制御はステップ210へ進む。
第三の実施形態においては、運転支援制御装置22による運転支援制御が開始されると、ステップ10及び20において肯定判別が行われ、ステップ30において目標相対回転角度θretが現在の相対回転角度θreに設定される。目標相対回転角度θretは、運転支援制御が行われている限り、ステップ30において設定された相対回転角度θreに維持される。
以上の説明から解るように、第三の実施形態によれば、運転支援制御が行われている状況においては、操舵伝達比可変装置14の制御量を0にすることができる。よって、上述の第一の実施形態と同様に、アッパステアリングシャフト28の往復回転が繰り返されることを防止し、これによりステアリグホイール24の微振動及び操舵反力の振動変化が生じることを防止することができる。
[第四の実施形態]
図7は、本発明による車両の走行制御装置の第四の実施形態における操舵伝達比制御ルーチンを示すフローチャートである。
図7と図2及び図6との比較から解るように、第四の実施形態においても、ステップ110〜130、210及び290は、それぞれ第一の実施形態の対応するステップと同様に実行される。ステップ10は第三の実施形態のステップ10と同様に実行される。ステップ10において肯定判別が行われたときには、ステップ40においては、ロック装置38がロック位置に切り替えられ、しかる後操舵伝達比制御は一旦終了する。
なお、第三の実施形態の場合と同様に、ステップ10において、なお、後述のステップ40の実行によりロック装置38がロック位置に切り替えられている状況にて否定判別が行われたときには、ロック装置38が非ロック位置に戻された後に操舵伝達比制御はステップ110へ進む。
第四の実施形態によれば、運転支援制御が行われている状況においては、ロック装置38がロック位置に切り替えられ、アッパステアリングシャフト28及びロアステアリングシャフト30は、操舵伝達比可変装置14を介して一体的に連結された状態になる。操舵伝達比可変装置14は、アッパステアリングシャフト28及びロアステアリングシャフト30は相対的に回転しない。従って、操舵伝達比可変装置14がアッパステアリングシャフト28に対しロアステアリングシャフト30を回転させようとすることに起因するアッパステアリングシャフト28の往復回転は発生せず、ステアリグホイール24の微振動及び操舵反力の振動変化も発生しない。
以上においては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば、上述の各実施形態においては、選択スイッチ62が非作動位置にあるときにも、緊急時には緊急回避操舵が行われ、緊急回避操舵が行われているときには、運転支援制御中であると判定される。しかし、本発明の走行制御装置は、緊急回避操舵が行われない車両に適用されてもよい。
また、第一の実施形態においては、運転支援制御中であるときには、係数Ktは0に低減されるようになっているが、係数Kfと同様に、1よりも小さい正の値に低減されるよう修正されてもよい。
また、第一及び第三の実施形態においては、それぞれステップ170及び40においてロック装置38が作動されるようになっている。しかし、これらのステップは省略されてもよい。
また、第二の実施形態においては、運転支援制御中であるときには、係数Kfが低減されることにより、上記式(2)のフィードバックゲインKvp、Kvd及びKviが一括して低減されるようになっている。しかし、運転支援制御中であるときには、フィードバックゲインKvp、Kvd及びKviが個別に低減されるよう修正されてもよい。
更に、上述の第二の実施形態においては、最小値Kfminは正の定数であるが、最小値Kfminは0であってもよい。その場合には、図5において仮想線にて示されているように、ステップ230において肯定判別が行われたときには、ステップ250においてロック装置38がロック位置に切り替えられ、しかる後操舵伝達比制御はステップ280へ進むよう修正されてよい。また、その場合には、ロック装置38がロック位置に切り替えられている状況にてステップ220において否定判別が行われたときには、ロック装置38が非ロック位置に戻された後に操舵伝達比制御はステップ260へ進む。
10…走行制御装置、12…車両、14…操舵伝達比可変装置、16…操舵伝達比制御装置、18…電動パワーステアリング(EPS)装置、19FL〜19RR…車輪、20…EPS制御装置、22…運転支援制御装置、24…ステアリングホイール、50…操舵角センサ、52…トルクセンサ、54…回転角センサ、56…車速センサ、60…CCDカメラ、62…選択スイッチ

Claims (7)

  1. ステアリングホイールと操舵輪との間の操舵伝達系に設けられ、アッパステアリングシャフトに対しロアステアリングシャフトを回転させることにより操舵伝達比を変更する操舵伝達比可変装置と、目標操舵伝達比を達成するに必要な前記アッパステアリングシャフト及び前記ロアステアリングシャフトの間の相対回転角度の目標値を演算し、実際の前記相対回転角度が前記目標値になるように前記操舵伝達比可変装置を制御する操舵伝達比制御装置と、前記操舵輪と前記操舵伝達比可変装置との間の前記操舵伝達系に設けられ、操舵アシストトルクを発生するパワーステアリング装置と、目標操舵アシストトルクを演算し、実際の操舵アシストトルクが前記目標操舵アシストトルクになるように前記パワーステアリング装置を制御する操舵アシストトルク制御装置と、車両を所定の走行経路に沿って走行させるための前記操舵輪の目標舵角を演算し、前記操舵輪の実際の舵角が前記目標舵角になるように前記目標操舵アシストトルクを修正する運転支援装置と、を有する車両の走行制御装置において、
    前記操舵伝達比制御装置は、前記運転支援装置が作動しているときには、前記運転支援装置が作動していないときに比して、前記操舵伝達比可変装置により制御される前記相対回転角度の変化の大きさを小さくする車両の走行制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両の走行制御装置において、前記操舵伝達比制御装置は、前記運転支援装置が作動しているときには、前記相対回転角度の目標値を0に演算する車両の走行制御装置。
  3. 請求項1に記載の車両の走行制御装置において、前記操舵伝達比制御装置は、前記運転支援装置が作動を開始したときに、前記相対回転角度の現在値を求め、前記運転支援装置が作動しているときには、前記相対回転角度の目標値を前記現在値に演算することにより、前記操舵伝達比可変装置により制御される前記相対回転角度の変化を0にする車両の走行制御装置。
  4. 請求項1に記載の車両の走行制御装置において、前記操舵伝達比可変装置は、作動することにより前記二つのステアリングシャフトの相対回転を阻止するロック装置を有し、前記操舵伝達比制御装置は、前記運転支援装置が作動しているときには、前記ロック装置を作動させることにより、前記操舵伝達比可変装置により制御される前記相対回転角度の変化を0にする車両の走行制御装置。
  5. 請求項1に記載の車両の走行制御装置において、前記操舵伝達比制御装置は、前記相対回転角度の目標値と前記相対回転角度の現在値との差の大きさが小さくなるように、前記相対回転角度の目標値及び前記相対回転角度の現在値に基づいて前記操舵伝達比可変装置をフィードバック制御し、前記運転支援装置が作動しているときには、前記運転支援装置が作動していないときに比して、前記フィードバック制御のゲインを小さくする車両の走行制御装置。
  6. 請求項1乃至5の何れか一つに記載の車両の走行制御装置において、前記車両は、乗員により操作され、前記運転支援装置を作動させる作動位置と前記運転支援装置を作動させない非作動位置とに切り替わるスイッチを有し、前記操舵伝達比制御装置は、前記スイッチが前記作動位置にあるときに、前記運転支援装置が作動していると判定する車両の走行制御装置。
  7. 請求項6に記載の車両の走行制御装置において、前記運転支援装置は、前記スイッチが前記非作動位置にあっても、緊急回避に必要な前記操舵輪の目標舵角を演算し、前記操舵輪の実際の舵角が前記目標舵角になるように前記目標操舵アシストトルクを修正する緊急回避操舵を行い、前記操舵伝達比制御装置は、前記緊急回避操舵が行われているときにも前記運転支援装置が作動していると判定する車両の走行制御装置。

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