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JP6363331B2 - 電池電極用水系バインダー及びその製造方法 - Google Patents

電池電極用水系バインダー及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電池電極用水系バインダーに関し、さらにはその製造方法に関する。
繰り返し利用可能である二次電池の普及は目覚ましく、中でも、リチウムイオン二次電池は軽量でエネルギー密度が大きいことから、近年では自動車、あるいは住宅蓄電用としての活用が広がっている。自動車、あるいは住宅用蓄電池では、携帯電話やノートパソコンなどに用いられるリチウムイオン二次電池と比べ、より多くの容量、サイクル寿命といった性能が要求される。リチウムイオン二次電池の性能に大きく関わる因子の一つとして、ポリマーバインダーが挙げられる。ポリマーバインダーはリチウムイオン二次電池の電極作製において通常、結着剤として用いられる。リチウムを吸蔵、放出可能な活物質(負極活物質および正極活物質)をポリマーバインダーと配合して電極用組成物を調製し、その電極用組成物を金属基材(以下、集電体とする。)上に塗布、乾燥することにより、活物質と集電体とを結着させている。ポリマーバインダーが、活物質同士を接着させる強度(以下、合剤層内結着力とする。)、活物質と集電体とを接着させる強度(以下、界面結着力とする。)は電池の容量やサイクル寿命などの性能に大きく関わり、さらに、電池電極製造工程では電極の剥落などが原因による生産性にも影響する。このため、ポリマーバインダーの結着力(合剤層内結着力、界面結着力を意味する。)が重要となる。
ポリマーバインダーとして、従来からポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマーが用いられている。しかし、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマーでは有機溶媒を用いるため、電極用組成物の乾燥時に溶媒の揮散が生じ、人体、環境面へ大きな負担となることが問題視されている。このため、近年では環境面への配慮から、有機溶媒を用いない水系のポリマーバインダーが種々提案されており、主としてスチレン‐ブタジエン系共重合体ラテックスが用いられている。
上述の通り、ポリマーバインダーの結着力は電池性能を決める上で重要な因子であることから、水系バインダーにおいても結着力向上検討は盛んに行われている。例えば、特開平11−167921号(特許文献1)ではモノマー残量が30重量%以下となった時点でポリマーを架橋させる方法や、特開平10−302797号(特許文献2)では粒子内でポリマーのガラス転移点に差をつけることが提案されている。
特開平11−167921号公報
特開平10−302797号公報
しかしながら、これらの改良検討においても未だ十分な結着力は得られておらず、更なる改良検討が必要とされている。本発明では優れた結着力を有するポリマーバインダーを提供することを課題としており、それにより電池性能、および電池電極製造工程での生産性が改善される。
本発明者らは、種々検討した結果、共重合体ラテックスの製造方法を工夫することによって得られた、電池電極用水系バインダーを用いることで上記課題が改善されることを見出した。
すなわち、本発明の電池電極用水系バインダーは、脂肪族共役ジエン系単量体(a)を34.2〜50重量部、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(b)、およびこれらと共重合可能な単量体(c)から構成される単量体100重量部を、二段以上の多段重合により重合して得られ、かつその最終段が、脂肪族共役ジエン系単量体(a)およびアクリル酸アルキルエステル(b−1)を0〜5重量部、およびそれらと共重合可能な単量体(c2)10〜50重量部から構成される単量体混合物を重合することによって得られる共重合体ラテックスであって、ゲル含有量が94重量%以下である共重合体ラテックスを含有することを特徴とする。
本発明の電池電極用水系バインダーを用いることによって、合剤層内結着力にも界面結着力にも優れる強く接着した電極塗工層を得ることができ、このような電極を用いることで、電池性能、および電池電極製造工程での生産性が良好な電池を得ることができる。
本発明の電池電極用水系バインダーは、脂肪族共役ジエン系単量体(a)と、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(b)と、(a)及び(b)と共重合可能な単量体(c)とを含有する単量体組成物を乳化重合して得られる共重合体ラテックスを、含有している。
脂肪族共役ジエン系単量体(a)としては、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。特に1,3−ブタジエンが好ましい。
脂肪族共役ジエン系単量体(a)は、特に限定されないが、全単量体組成物100重量部中、1〜50重量部が好ましく、2〜45重量部がより好ましく使用できる。
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(b)としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなど、炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(b−1)の他、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなど、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、例えば、ジメチルマレエート、ジエチルマレエートなど、炭素数1〜4のアルキル基を有するマレイン酸アルキルエステル、例えば、ジメチルイタコネートなど、炭素数1〜4のアルキル基を有するイタコン酸アルキルエステル、例えば、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレートなど、炭素数1〜4のアルキル基を有するフマル酸アルキルエステル、例えば、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのヒドロキシル基を含有する不飽和単量体などが挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。好ましくは、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレートが挙げられる。 不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(b)は、特に限定されないが、全単量体組成物100重量部中、1〜45重量部が好ましく、2〜40重量部がより好ましく使用できる。
上記(a)及び(b)と共重合可能な単量体(c)は、エチレン性不飽和単量体であれば特に制限なく使用可能であるが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル系単量体、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸系単量体、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのエチレン系不飽和カルボン酸アミド系単量体、例えば、酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、例えば、メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ビニルピリジンなどのエチレン系不飽和アミン系単量体などが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。
(a)及び(b)と共重合可能な単量体(c)は、特に限定されないが、全単量体組成物100重量部中、5〜98重量部、より好ましくは15〜96重量部が使用できる。
本発明における共重合体ラテックスは、上記の単量体混合物100重量部を、二段以上の多段重合による乳化重合にて製造する。好ましくは三段以上の多段重合により乳化重合する。ここで、多段重合における最終段が、脂肪族共役ジエン系単量体(a)および/またはアクリル酸アルキルエステル(b−1)を0〜5重量部、およびこれらと共重合可能な単量体(c2)10〜50重量部から構成されることが必要である。
最終段の脂肪族共役ジエン系単量体(a)および/またはアクリル酸アルキルエステル(b−1)の量が5重量部を超えると、界面結着力、合剤層内結着力の双方が低下する。また、最終段における共重合可能な単量体(c2)の量が、10重量部を下回ると界面結着力が低下し、50重量部を超えると、合剤層内結着力が低下する。
なお、多段重合の最終段において使用する共重合可能な単量体(c2)とは、上記の共重合可能な単量体(c)および上記の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(b)におけるアクリル酸アルキルエステル(b−1)以外の単量体の中から選ばれる単量体を指し、1種または2種以上用いることができる。
中でも、そのホモポリマーが室温でガラス状態である成分が好ましく、具体的には、スチレン、メチルメタクリレート、アクリロニトリルなどが挙げられる。
上記単量体は、乳化剤、重合開始剤、還元剤、連鎖移動剤を初めとする公知の乳化重合に使用される各種化学物質の存在下に重合される。
乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩などのアニオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、アルキルエーテル型などのノニオン性界面活性剤などが挙げられ、1種または2種以上用いられる。好ましくは、アニオン性界面活性剤が挙げられ、より好ましくは、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩が挙げられる。
乳化剤は、単量体(合計)100重量部に対して、例えば、0.05〜5重量部、好ましくは、0.1〜3重量部の割合で用いられる。
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であって、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性重合開始剤、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドなどの油溶性重合開始剤が挙げられる。好ましくは、水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムが挙げられ、油溶性重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイドが挙げられる。
還元剤としては、例えば、硫酸第一鉄、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩、例えば、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸類およびその塩、例えば、デキストロース、サッカロースなどの還元糖類、例えば、ジメチルアニリン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。好ましくは、硫酸第一鉄、カルボン酸類およびその塩が挙げられ、より好ましくは、硫酸第一鉄、エリソルビン酸が挙げられる。
連鎖移動剤としては、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタンなど、炭素数6〜18のアルキル基を有するアルキルメルカプタン、例えば、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン化合物、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラム化合物、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノールなどのフェノール化合物、例えば、アリルアルコールなどのアリル化合物、例えば、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素化合物、例えば、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミドなどのビニルエーテル、例えば、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ターピノレン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。好ましくは、α−メチルスチレンダイマー、アルキルメルカプタンが挙げられ、より好ましくは、α−メチルスチレンダイマー、t−ドデシルメルカプタンが挙げられる。
連鎖移動剤は、例えば、単量体(合計)100重量部に対して、0〜5重量部、好ましくは、0.05〜3重量部の割合で用いられる。
また、乳化重合において、必要により、炭化水素系溶剤として、例えば、ペンタン、ヘ
キサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素、例え
ば、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン
、4−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセン等の不飽和炭化水素、例えば、
ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を使用することができる。特に、沸
点が適度に低く、重合終了後に水蒸気蒸留等によって回収、再利用しやすいシクロヘキセ
ンやトルエンが、環境負荷の観点から好適である。
その他の重合助剤として、必要により、例えば、老化防止剤、防腐剤、分散剤、増粘剤などを添加することができる。
本発明における共重合体ラテックスの重合方法としては、特に限定されず、バッチ重合、セミバッチ重合、シード重合などを用いることができる。また、各種成分の添加方法についても特に制限されるものではなく、分割添加方法、連続添加方法、パワーフィード法などを用いることができる。
本発明における共重合体ラテックスのゲル含有量については、94重量%以下であることが必要である。より好ましくは80重量%以下である。94重量%を超えると、バインダーは硬くなり結着力が劣る。
本発明における共重合体ラテックスの光子相関法による平均粒子径は、特に限定されないが、50〜200nmであることが好ましい。50nmを下回ると電極用組成物の粘度が増大し、集電体への塗布性が悪くなる傾向にあり、その結果、均一な電極塗工層が得られず、結着力が低下する場合がある。200nmを超えると共重合体ラテックスが活物質細部まで行き届かず、結着力が劣る傾向にあり、いずれも好ましくない。
本発明の電池電極用水系バインダーは、例えば、非水電解液二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などの二次電池の電極を形成するために用いられ、負極活物質または正極活物質の粒子同士、および、負極活物質または正極活物質と集電体とを結着させる。
具体的には、電池電極用水系バインダーを、負極活物質または正極活物質に配合することにより、電池電極用組成物が調製される。すなわち、電池電極用水系バインダーを負極活物質に配合することにより、二次電池の負極に用いられる負極用組成物が調製される。また、電池電極用水系バインダーを正極活物質に配合することにより、二次電池の正極に用いられる正極用組成物が調製される。
負極活物質は、リチウムを吸蔵、放出可能な材料であれば特に限定されず、非水電解液二次電池の場合、例えば、フッ化カーボン、黒鉛、炭素繊維、樹脂焼成炭素、リニア・グラファイト・ハイブリット、コークス、熱分解気層成長炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ系炭素、黒鉛ウィスカー、擬似等方性炭素、天然素材の焼成体、およびこれらの粉砕物などの導電性炭素質材料、例えば、ポリアセン系有機半導体、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性高分子、およびケイ素、スズなどの金属単体、もしくは金属酸化物、もしくはその金属の合金を含む複合材料などが挙げられ、1種あるいは2種以上用いることができる。
正極活物質は、リチウムを吸蔵、放出可能な材料であれば特に限定されず、非水電解液二次電池の場合、例えば、MnO、MoO、V、V13、Fe、Feなどの遷移金属酸化物、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiFePO、LiCoSnなどのリチウムを含む複合酸化物、例えば、TiS、TiS、MoS、FeSなどの遷移金属硫化物、例えば、CuF、NiFなどの金属フッ化物が挙げられ、1種あるいは2種以上用いることができる。
電池電極用組成物を調製する場合には、電池電極用水系バインダーを、負極活物質または正極活物質100重量部に対して、共重合体ラテックスの固形分が、例えば、0.1〜7重量部、好ましくは0.3〜5重量部となるように配合する。
負極活物質または正極活物質100重量部に対する共重合体ラテックスの固形分が、0.1重量部未満では、集電体などに対する良好な接着力が得られない傾向があり、7重量部を超えると、二次電池として組み立てたときに過電圧が著しく上昇し、電池特性を低下させる傾向がある。
また、電池電極用組成物には、必要により、水溶性増粘剤、分散剤、安定化剤などの各種添加剤を添加することができる。水溶性増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼインなどが挙げられ、分散剤としては、例えば、ヘキサメタリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダなどが挙げられ、安定化剤としては、例えば、ノニオン性、アニオン性界面活性剤などが挙げられる。
電池電極用組成物は、集電体に塗布、乾燥されることにより、集電体上に電極塗工層を形成し、電極シートを得る。そのような電極シートは、例えばリチウムイオン二次電池の正極板または負極板として用いられる。
集電体としては、負極用集電体として、例えば、銅やニッケルなどの金属箔が挙げられ、正極用集電体として、例えば、アルミニウムなどの金属箔が挙げられる。
電池電極用組成物を集電体に塗布する方法としては、リバースロール法、コンマバー法、グラビヤ法、エアーナイフ法などの公知の方法を用いることができ、乾燥には、放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが用いられる。乾燥温度は、通常、50℃以上である。
このような本発明の電池電極用水系バインダーによれば、合剤層内結着力にも界面結着力にも優れることから、活物質同士および集電体と活物質との結着力に優れる強く接着した電極塗工層を形成することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
共重合体ラテックス(イ)の作製
耐圧性の重合反応器に表1の1段目に示した物質を添加し十分攪拌した。内温を60℃まで上昇させ、重合開始による発熱を確認した。重合開始から60分後から240分後まで、表1の2段目に示す物質を66℃で連続添加した。その後も66℃で重合を継続し、重合開始から420分後から600分後まで71℃で表1の3段目に示す物質を連続添加し、さらに1020分まで重合を継続した。重合転化率が97%を超えていることを確認した後、重合停止剤を添加し、内温を35℃以下に冷却した。水酸化リチウム水溶液を用いて、pHを約7に調整した後、水蒸気蒸留により未反応単量体などを除去し、共重合体ラテックス(イ)を得た。
<実施例2〜10>
共重合体ラテックス(ロ)〜(ヌ)の作製
表1及び表2に示した組成とした以外は共重合体ラテックス(イ)と同様にして共重合体ラテックス(ロ)〜(ヌ)を得た。
<実施例11>
共重合体ラテックス(ル)の作製
耐圧性の重合反応器に表2の1段目に示した物質を添加し十分攪拌した。内温を66℃まで上昇させ、重合開始による発熱を確認した。重合開始から420分後より、表2の2段目に示す物質を、71℃で600分かけて連続添加した。その後も71℃で重合を継続した。重合転化率が97%を超えていることを確認し、重合停止剤を添加し、内温を35℃以下に冷却した。水酸化リチウム水溶液を用いて、pHを約7に調整した後、水蒸気蒸留により未反応単量体などを除去し、共重合体ラテックス(ル)を得た。
<実施例12>
共重合体ラテックス(ヲ)の作製
組成、重合温度を表2に示した通りとした以外は共重合体ラテックス(ル)と同様にして、共重合体ラテックス(ヲ)を得た。
<比較例1,3,4,5>
共重合体ラテックス(ワ),(ヨ),(タ),(レ)の作製
表3に示した組成とした以外は共重合体ラテックス(イ)と同様にして、共重合体ラテックス(ワ),(ヨ),(タ),(レ)を得た。
<比較例2>
共重合体ラテックス(カ)の作製
耐圧性の重合反応器に表3の1段目に示した物質を添加し十分攪拌した。内温を66℃まで上昇させ、重合開始による発熱を確認した。内温を66℃に保ちながら重合を継続した。重合転化率が97%を超えていることを確認し、重合停止剤を添加し、内温を35℃以下に冷却した。水酸化リチウム水溶液を用いて、pHを約7に調整した後、水蒸気蒸留により未反応単量体などを除去し、共重合体ラテックス(カ)を得た。
<比較例6>
共重合体ラテックス(ソ)の作製
表3に示した組成とした以外は共重合体ラテックス(ル)と同様にして、共重合体ラテックス(ソ)を得た。
得られた共重合体ラテックスの粒子径、ゲル含有量は以下に示す方法により測定し、結果を表1〜3に示した。
共重合体ラテックスの光子相関法による平均粒子径測定方法
共重合体ラテックスの光子相関法による平均粒子径を動的光散乱法により測定した。尚、測定に際しては、FPAR−1000(大塚電子製)を使用した。
共重合体ラテックスのゲル含有量の測定方法
温度80℃、湿度85%の雰囲気にてラテックスフィルムを作製した。作製したラテックスフィルムを約1g秤量し、これを400mlのトルエンに入れ48時間膨潤溶解させた。その後、これを300メッシュの金網で濾過し、金網に捕捉されたトルエン不溶分を乾燥後秤量した。そして、ラテックスフィルムの重量に対する、トルエン不溶分の乾燥重量の百分率を算出し、ゲル含有量(%)とした。
負極用組成物の作製
負極活物質として平均粒子径が20μmの天然黒鉛を使用し、天然黒鉛100重量部に対して、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬株式会社製セロゲンEP)水溶液(固形分)1重量部と、結着剤として、各実施例および各比較例で得られた共重合体ラテックス(固形分)2重量部とを、全固形分が40%となるように適量の水を加えて混練し、負極用組成物を調製した。
負極の作製
各々の負極用組成物を集電体となる厚さ20μmの銅箔に塗布し、130℃で5分間乾燥後、室温でロールプレスして、塗工層の厚みが100μmの負極を得た。
結着力の測定
(1)界面結着力
上記の方法で得られた負極を7cm×2cmの短冊状に切り出し、塗工層側にセロハン粘着テープを貼り付け、手で5mmほど塗工層と集電体を剥がし、剥がされた集電体を固定し、引張試験機にて100mm/min.の速さでセロハン粘着テープを、剥離面に対して垂直方向に引っ張った際の剥離にかかる応力を測定した。
(2)合剤層内結着力
上記の方法で得られた負極を7cm×2cmの短冊状に切り出し、集電体側に厚み1mmの鋼板を両面テープで接着し、塗工層側にセロハン粘着テープを貼り付け、引張試験機にて100mm/min.の速さで180°方向に剥離させる際の応力を測定した。
(1)、(2)で得られた結着力の結果を、表4及び表5に示した。
表4より、本発明の電池電極用水系バインダーはいずれも界面結着力、合剤層内結着力が良好であった。
表5より、比較例1は最終段における脂肪族共役ジエン系単量体(a)の量が5重量部を超え、かつ共重合可能な単量体(c2)の量が10重量部未満であり、界面結着力及び合剤層内結着力の双方が劣るが、中でも特に界面結着力が劣る。
比較例2は、一括重合であるため、界面結着力、合剤層内結着力がいずれも大きく劣る。
比較例3は、最終段の脂肪族共役ジエン系単量体(a)量およびゲル含有量が本願規定範囲を超えており、界面結着力、合剤層内結着力共に大きく劣る。
比較例4は、最終段における脂肪族共役ジエン系単量体(a)の量が5重量部を超え、かつ共重合可能な単量体(c2)の量が50重量部を超えており、界面結着力及び合剤層内結着力の双方が劣るが、中でも特に合剤層内結着力が劣る。
比較例5は、最終段における脂肪族共役ジエン系単量体(a)の量が本願規定範囲を超えており、界面結着力、合剤層内結着力がいずれも劣る。
比較例6は、ゲル含有量が本願規定範囲を超えており、界面結着力、合剤層内結着力がいずれも劣る。
上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれるものである。
上記の通り、本発明の電池電極用水系バインダーを用いることで、強く接着した電極塗工層を得ることが可能となり、品質の安定した電極を得ることが可能となる。ひいては、その結果として、電池性能、および電池電極製造工程での生産性が良好となり、非常に有用である。

Claims (4)

  1. 脂肪族共役ジエン系単量体(a)を34.2〜50重量部、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(b)、およびこれらと共重合可能な単量体(c)から構成される単量体100重量部を、二段以上の多段重合により重合して得られ、かつその最終段が、脂肪族共役ジエン系単量体(a)およびアクリル酸アルキルエステル(b−1)を0〜5重量部、およびそれらと共重合可能な単量体(c2)10〜50重量部から構成される単量体混合物を重合することによって得られる共重合体ラテックスであって、ゲル含有量が94重量%以下である共重合体ラテックスを含有する電池電極用水系バインダー。
  2. 共重合体ラテックスのゲル含有量が80重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の電池電極用水系バインダー。
  3. 共重合体ラテックスの光子相関法による平均粒子径が50〜200nmであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電池電極用水系バインダー。
  4. 脂肪族共役ジエン系単量体(a)を34.2〜50重量部、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(b)、およびこれらと共重合可能な単量体(c)から構成される単量体100重量部を、二段以上の多段重合により重合して得られ、かつその最終段が、脂肪族共役ジエン系単量体(a)およびアクリル酸アルキルエステル(b−1)を0〜5重量部、およびそれらと共重合可能な単量体(c2)10〜50重量部から構成される単量体混合物を重合する電池電極用水系バインダー用共重合体ラテックスの製造方法。
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